令和7年5月28日(水曜日)9時30分~12時
ZoomによるWeb会議
事務局:文部科学省 5F2会議室
耳塚座長、石田委員、礒部委員、大津委員、川口委員、斉田委員、貞広委員、髙瀬委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、寺尾委員、福沢委員、冨士原委員、益川委員、松谷委員
・資料1に基づき事務局より説明があった。
・資料2-1に基づき、事務局より令和6年度委託研究の概要についての説明があった。
・資料2-2に基づき、全国学力・学習状況調査の国語の結果を活用した専門的な分析について、安田女子大学より説明があった。
・資料2-3に基づき、全国学力・学習状況調査の算数・数学の結果を活用した専門的な分析について、宮城教育大学より説明があった。
・資料2-4に基づき、特別の教科 道徳等の学校の取組と児童生徒の自己有用感等の関係に関する調査研究について、株式会社リベルタス・コンサルティングより説明があった。
・各報告について、説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。
【委員】
資料2-2の25・26ページにある解答時間についての分析だが、令和6年度全国学力・学習状況調査は紙で実施されたと理解しているが、追加でデータ収集をされたのか。
資料2-2の25・26ページの性差に関する考察の仕方や介入可能性についてだが、女子と男子の平均正答率の比較だけでなく女子と男子の分布図全体、散らばりも含めた分析も必要と考えているが、その辺りはどのようにお考えか。
【松下教授】
1点目の資料2-2の25ページの無回答についての分析は、別途調査したのではなく、試験の直後に児童生徒が回答する質問の中の1つに、解答時間が十分だったかという設問があり、それとの関係を見た。
性差の分析について、おっしゃるとおりだと思う。一方で、参考資料3-1に載せてあるヒストグラムからは、得点の分布の山の形が男子と女子でどのぐらいずれているのか、確認できる。山が少しずれているだけで重なりも大きいので、全体として数ポイントの違いがあるということで合っている。
【委員】
資料2-2の24ページについて、A層、B層、C層、D層と分けて、その出題の分野と、それぞれA層、B層の間、C層、D層の間で差が大きい分野はどこであったかという記載がある。資料2-2の24ページの上部に書いてあるような結果になったということは、分野の固有の特徴なのか、たまたま分析した年の問題の難しさによるものなのか、の感触を持っていれば、お聞きしたい。
【大滝教授】
今回の報告が単年度の調査結果で、本来であるならば今回の結果と問題そのものとの関わりについてもう少し考察ができればよかったが、時間的、物理的な労力の関係で複数年度の比較分析は難しかった。ご指摘のように問題の内容と結果とを関係づけてさらなる分析ができればよかったが、単年度の結果であることから、結論的に大きな傾向を持つものだとは、考えていない。
【松下教授】
資料2-2の24ページで例えばA層とB層の差が最大なのは「話すこと・聞くこと」と書いてあるが、会話と、その会話の基になった資料を見比べる等、複数の資料を読み比べて読み解くという操作が必要なことが関係している可能性が実はあるのかと思う。もう少し複数年度にわたって分析をしないと詳しくは分からないが、個別の問題の特徴が関係していた可能性は結構あるのではないか。
【委員】
資料2-3の11ページの分析結果の3点目に、教科によらない思考力・判断力・表現力の育成活動が、算数・数学の学力形成に影響を与えている可能性がある、とあるが、その活動がどのように影響を与えているのかという要因分析も含めて教えていただきたい。
【田端教授】
資料2-3の11ページの表6-5のように、こういった思考力・判断力・表現力にかかわる活動をする児童生徒が多ければ多いほど、小学校も中学校も学力の伸び、正答率が高いという結果になっている。結局、資料2-3の11ページの表6-5の質問項目にあるこのような活動は様々な教科にわたって何かに取り組んでいるということだと思う。いろんな教科で満遍なくこのような活動を行うことが、結果的にいろんな教科に効果を及ぼしていると、考える。いわゆる21世紀型スキルなどあるが、どのように使うのかなども自分で考えることで使える知識になっていると思う。
【座長】
資料2-3の15ページ、都道府県単位の施策を非常にシンプルな手法で特徴を浮かび上がらせることができた点に、驚いた。スコア以外に、都道府県の施策の特徴の類型は見えてきたか。
【田端教授】
この時点では、かなり明確に学力観の違いが、この都道府県の施策のワーディングに表れていると思った。スコアが高い部類に属するところでは、学力向上を目指して子どもの知的好奇心をくすぐるために、子どもの自主性を発揮させるために教師が教材を自作するなど、どのような教材を与えるのかを工夫している。どの学年でも、全教科で現行の学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」の実現や思考力・判断力・表現力を重視する傾向がある。テスト勉強をし、テストで確認して、家庭学習を徹底させるという方向性の記述との大きな差を感じた
【委員】
資料2-3の21・22ページのPISA2022の結果に基づいた分析・考察について。数学的推論と21世紀的な数学に対する経験が、実は落ち込んでいることは非常に大きな課題だと捉えている。このことと全国学力・学習状況調査の児童生徒質問調査を関連づけるような分析は今回行われたのか。例えば「学力調査の記述式の問題では時間が足りましたか」というような質問項目もあったと思うが、そのような児童生徒質問調査とこのPISA2022の結果を結びつけることはされたか。
【田端教授】
PISA2022の結果と全国学力・学習状況調査の児童生徒質問調査との関連づけは直接的にはやっていない。この分析の中で全国学力・学習状況調査とも連動して、今さらに調査しているところ。学びに向かう力を表す、「国・学・向」とか「数・学・向」という合成変数をつくったが、それと学力との相関係数が0.2前後と弱い。学びに向かう力の内実は、算数・数学が好きということや大事だということ、社会に出て役立つということだと考える。そう思う子供の学力が高くなるはずだが、思った以上にそれが低いということとこの結果とは、かなり関連していると考えている。資料2-3の21・22・23ページに記載の8か国において、学びに向かう力、自己効力感と学力との相関を取ると、やはり日本の相関係数は他国に比べてやや低めに出ている。つまり、日本の子供は教科の重要性や意味、意義を感じなくても勉強できてしまっていて、日本の学校教育はそういった意味、意義を、高学年になるにつれて感じないような教え方になっている。しかし、ペーパーテストの点数は取れるようになっているという傾向があると捉えている。
【委員】
資料2-3の15ページからの都道府県単位の施策分析のことについて。
この分析、ある県が非常に好事例ということで、資料2-3の16ページに分析がされているが、平均正答率で非常に高い実績を誇っている県は、全国の1つのモデル、模範として本当に各都道府県が参考にしているのではないかと思っている。ただ、同時に、各都道府県も各現場で、資料2-3の15ページにあるように、それぞれの教育ポリシーやその手法をもって、子供たちの資質・能力の育成に取り組んでいる中で、どうしてもそこに差が出てきてしまうということが、1つの分析結果ではないかと思う。この好事例の県を基に、都道府県ごとにも分析をされたのか。都道府県ごとに毎年度様々な施策を講じている中で、このような部分の強化が必要だという指摘も分析結果からいただけるとありがたい。
【田端教授】
個々の都道府県については、調べるところまで力と時間が及んでいない。各都道府県が、どのように、この以後、教育施策を改善していったかは、今後の課題とさせていただきたい。
【委員】
各県がやはり自分たちの取組に信念を持ってそれぞれ取り組んでいると思っている。それについてこういうところが重点であるべきという指摘があると、各都道府県の取組もより焦点化されて、全国学力・学習状況調査の目指す、子供たちの資質・能力の育成につながる生きた取組になると思っているので、また支援・指導をいただければありがたい。
【田端教授】
今回の調査を行って、やはり全国学力・学習状況調査のスコアが、かなり奥深いものを表現しているという捉えを、各自治体、都道府県、市町村においてしていただきたいと思った。例えば国語や算数・数学のこの問題は弱いから、この問題は解けるようにする、というだけではなく、そういった子供が苦手とする問題が解けるということは、家庭のSES、学校のSESの高さが大きく影響しているということ。子供の勉強も、広い意味での文化として関心を持ってもらい、主体的・対話的で深い学びを推進していくことが大事ではないか、と感じた。
【委員】
資料2-4のパス解析について。
まず、誤差間相関、誤差間共分散の相関の値について、修正が必要ではないかと考える点について確認をしたい。
また、学校の直接効果について。今は学校の「主・対・深」、児童の「主・対・深」で、自己有用感や挑戦心のパスを考えていると思うが、別のモデルの検討をされたのかその点について教えていただきたい。
3つ目は、小学校と中学校の他母集団分析をされているのか。
最後に、資料2-4のまとめのところで、児童から児童への直接の影響に比べて、学校から児童生徒への影響は相対的に低いため、このように模式図の形で主張することに懸念が残る。
【八田氏】
誤差間相関、誤差間共分散の係数が高いと認識しており、この3つのまとめた分析も行っているが、その場合でもこういった関係は検証している。今回、委託調査研究として道徳を分析しなければいけないということもあり、誤差間相関が高いことは認識しつつ、こちらのモデルを採用している。つけてしまうと結果が出ないということではないことは、検証している。
また、学校の直接効果の検討も同じく、直接パスを引いた検証もやっているが、報告のとおりを採用した。
小学校の中学校の他母集団分析については行っていない。
資料2-4の模式図について、ご指摘のとおりだと思う。それぞれ別に出すか、くっつけた1個の変数で出したほうがよいかとは思っている。このあたりは文部科学省の考えもあるので、また文部科学省と相談する。
【委員】
誤差間共分散があることで、モデルの適合度も影響していると思う。恐らく誤差間共分散を引かないで正直に分析すると、適合度が下がることや、パラメーターを増やしているという可能性もあるので、その辺りも検討をお願いしたい。
【委員】
資料2-4のパス解析のところで、対象学年の児童生徒数という項目で、都市部かそうではないかという、地域特性によるのではないかという説明があった。全国学力・学習状況調査は、子供の学力の到達度の評価だけではなく、文部科学省を中心とする教育政策や条件整備の基準などの適合性や妥当性も評価をするということを考えると、対象学年の児童生徒数、すなわち学習集団ではなく学校規模になると思うが、学校規模が小さな学校ほどよいというような誤解を生まないかと考える。規模が小さい学校が駄目だと思っているわけではなく、むしろそういうものをパワーアップしたほうがいいと考えているものの、この対象学年の児童生徒数が統制変数の形で出るだけではなく、ここに都市部か都市部ではないかという統制変数で再分析したものも、しっかりと載せていただくといいのではないか。
【八田氏】
そこまでは分析できていないが、ご指摘のとおりかと思う。
【委員】
資料2-4の時系列分析は非常に重要な分析だと思う。注意しないといけないのは、全国学力・学習状況調査の児童生徒質問調査は、質問の表現が微妙に変わるものがある。例えば資料2-4の「地域や社会をよくする何かをしてみたいと思いますか」、は高くなっているが、令和4年までは「何をすべきかを考えることがある」という表現になっているので、ダイレクトに比較はできないのではないか。表現が微妙に変わることがよくあるので、それらも注意しながら、何を比較できるか慎重になったほうがいいと思った。
【八田氏】
ご指摘の内容について、固定効果分析の方に関してはきちんと確認できていたが、細かい表現まで確認したい。
・資料3-1、3-2、3-3に基づいて事務局より説明があった。
・説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。
【委員】
資料3-2の13ページ末からのIRTに基づく結果の提供・説明の部分、特に14ページのところに、生徒には5段階のIRTバンドで表示・返却する旨、そして児童生徒の課題把握、指導改善に生かす内容であること、そして、バンドの意味は、問題の難易度等と関連づけて説明するという方向性で書いていることがありがたいと思う。例えばその下の図3-1を見ると、学校単位でIRTスコアの500の持つ意味と505の意味の違いは何なのか、そして、15ページに、結果が各個人に返るときの個人のバンドは3である場合、4との違いはどこにあるのかについての内容が、14ページで書いてある難易度等と関連づけて説明することの具体例になると思う。我々が学校現場、あるいは各市町村教育委員会に、このバンドの持つ意味を伝え、さらに学校を通して保護者、そして児童生徒に分かりやすく伝えていくためにこの説明の工夫を具体的な形でお願いしたい。
【事務局】
私どもも今回の取りまとめを受け、次のステージとして、具体的なIRTを用いた返し方に関して、さらに具体化して示していけるように努めたい。
【委員】
お話があったように、やはりIRTを導入することで今後教員が授業改善のために使えるような、具体的なものをお示しいただき、児童生徒あるいは保護者についても、IRTの見方については分かりやすく説明ができるようご検討いただきたい。
さらに、CBTがこれから進んでいくことで、容易に学校側、教員がCBTで実施した調査の結果を使えるよう、具体的に説明をお願いしたい。
・資料3-2について、座長一任となった。
・参考資料1-3「4.実施期間」に基づき、「調査結果の取扱い検討ワーキンググループ」を廃止した。
【座長】
ワーキンググループでの議論がこれで終わるが、主査を務めた私から一言だけ申し上げたい。
こういう学力調査結果の公表というものの性質上、課題が生じれば、今後、改定を速やかに進めるべきだというふうに思うが、ここまでの検討を通じて、現時点では、基本的な公表方法の考え方については整理ができたと私自身は考えている。
調査である以上、都道府県別平均スコアは引き続き公表することになったが、そのほかの内容については、相当変化があるというふうに思う。何のための調査かという点をよくお考えいただき、結果を御活用いただきたいと考えている。
短期集中審議ではあったが、委員諸氏の御助力に感謝を申し上げたい。
・資料3-4に基づいて事務局より説明があった。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室