令和7年5月19日(月曜日)15時~17時
ZoomによるWeb会議
事務局:文部科学省 5F4会議室
耳塚座長、大津委員、磯部委員、川口委員、貞広委員、佐藤委員、垂見委員、土屋委員、冨士原委員
【議事1】令和7年度以降の全国学力・学習状況調査の調査結果の取扱いについて
・資料1、2、3、4に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。
【委員】
○ 資料3のP.19の図3-5は重要。「現在のばらつきの状況は極めて狭い範囲内にまとまっている」ということがわかりやすくなった。これを踏まえて都道府県・指定都市別結果をどう取り上げるか。マスメディアの対応に期待。
○ 資料3のP.19に「教育の機会均等の観点からは、ばらつきがより大きい個々の児童生徒に着目し、学力の下支えに資する分析を重視」という記述が良い。これを誰が分析するのかという点は気になった。
○ 資料3のP.22の表3-1の例示は、学級間の競争や教師評価のようなことにつながるのではないかという懸念を抱いた。
【委員】
○ 資料3のP.6などに「ビッグデータ」とあるが、データの規模が大きければ様々な分析ができるというわけではない。適切な説明ぶりを検討してほしい。
【事務局】
○ 「ビッグデータ」という言葉は、100万人程度の児童生徒が調査に参加するという規模感を示す趣旨で使った。指摘を踏まえて精査していく。
【委員】
○ 資料3のP.18に自治体の主体的な分析を支援する策として「ツール開発」とあるが、これを国で実施するのは厳しいのではないか。それよりは、教員養成系大学等においてIRT、教育測定などを学生に指導することを記載するなど、関係者を巻き込みながら主体的な分析を進めていく方向としてはどうか。
【委員】
○ 以前の調査結果の取扱い検討ワーキンググループでも伝えたように、全国学力・学習状況調査の趣旨を多くの方に理解いただき、本当の目的が伝わるような工夫をすることが、今回の発端になった全国知事会からの問題提起に答えることになるのではないかと考える。資料3の報告書(案)の随所にそのことの発信がなされている。これをしっかり全国に発信していくことが必要だと思う。
○ 資料3のP.15にあるとおり、段階を追って、第1弾、第2弾で公表する内容が、全国学力・学習状況調査のねらいとするところの発信であり、この点を公表時にいかに強調できるか。合わせて、各都道府県が自分たちなりの分析の発信を尽くした上で、第3弾の都道府県別が出ることに意義がある。そしてP.14のとおり、公表される調査結果にCBT化、IRT化した意味が溶け込んで発信されていくことが重要。国の発信を受けて、県内にその意図をどのように伝えていくか、しっかり検討したい。
【座長】
○ 資料3のP.13に「IRTバンドで表示・返却する」「評定との違いを丁寧に周知する」、P.14に「リーフレットや動画などの説明資料を用いながら、わかりやすく丁寧な周知を行う」とある。今回の資料3では、IRTスコア、バンドについての説明はされていない。現場にどのように提示するか、委員からも今後御意見をいただきたい。
【事務局】
○ IRTに通じた教育人材の育成についてご意見があったが、学力調査室だけではなく、関係課とも連携しながら、追記を検討する。
○ IRTの意味合いも併せて本調査の趣旨が理解されて伝わっていくよう、事務局も腐心している。段階的に公表することからも、この趣旨を適切にお伝えすることができるのではないかと考えている。国の発信は重いと捉えており、報道関係者、保護者など広く理解いただけるように、細心の注意を払いたい。
○ IRT自体はこの調査結果の取扱い検討ワーキンググループで議論いただいたものではなく、前提として進めてきたもの。複数の委員からIRTの意義の説明が必要という御意見があったことを踏まえ、報告書(案)には記載した。この専門家会議には全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループなどもあるので、そちらの有識者の御知見もいただきながら検討していきたい。
【委員】
○ 補足の説明が可能であればお願いしたい。資料3のP.15~の長期欠席児童〔生徒〕、特別な配慮を必要とする児童〔生徒〕、外国人児童〔生徒〕等についての部分について、これまでにない、「誰一人取り残さない」というメッセージを出すうえでも、このような児童生徒の実態の把握と分析は重要。表記について、「外国人児童生徒等」がいいのか、「日本語指導が必要な児童生徒」がいいのか。
○ 資料3のP.18の⑤の「各学校・自治体の主体的な分析の支援」について、従来から国研でも成果を上げた学校について調査研究していると思う。このようなデータを授業改善や学校の教育活動、教育施策にどのように生かしていくかという観点から、国研等を通じて調査研究をしていくことも重要ではないか。先進的な学校の取組について発信していくと、学校に安心感を与えることができるのではないか。
【委員】
○ 資料3のP.13の「1. CBT・IRTを活用する意義を最大限反映させた、児童生徒一人一人の学力・学習状況がより細やかに分かる」は非常に重要。しかし、児童生徒に返却される個人票では、これまで正答数の素点で例えば21段階あったものがIRTバンドの5段階になると、形式的には「より粗く」見えてしまう。どのようにしたらより細やかに分かるかを説明する必要がある。
○ 資料3のP.14の図3-1個人票(イメージ)内のIRTバンドに関する表現について、「5が最も良い」という表現になっているが、この表現がよいか検討してほしい。
【委員】
○ 長期欠席児童生徒について、資料2のとおり関係団体からの意見も多数あった。資料3のP.16にある「まずは実態の把握を行う必要がある」というのは、長期欠席児童生徒とそれ以外の児童生徒をグルーピングして学力の差を見るという意味での実態把握なのか、実施後アンケートでの把握のことか。
【事務局】
○ 外国人児童生徒等という表現については、質問調査を検討した際に、調査・分析の際に「日本語指導が必要」、「外国ルーツ」のいずれに重きを置くのかという御議論があり、「外国ルーツ」の方に重きを置くべきという結論になったことを踏まえたもの。また、担当課とも調整した結果、この表記となった。
○ 資料3のP.18の分析の支援について、効果がある学校の具体的な取組や最新の分析方法を現場に伝えるのは非常に有効な取組だと認識している。
○ P.13のIRTバンドの設定によって形式的には逆に粗くなるとのご指摘に関し、P.8-9において、IRTの意義を整理した中での下線部の内容やそれを踏まえた改善の取組を記載している。特に令和7年度の中学校理科の結果分析・示し方についても、国研と連携して取り組んでいきたい。
○ 資料3のP.14の図3-1のIRTバンドの説明ぶりは、精査したい。
○ 資料3のP.16の長期欠席児童等の把握については、実施後アンケートを通じて、参加の状況、日々の学習の状況の把握にまずは注力する。アンケートと長期欠席児童生徒の解答をつなげることで、選り分けた結果も分析したいが、公表するかどうかは慎重に検討する。
【委員】
○ 資料3のP.19の図3-5が分かりやすくビジュアル化されており、これだけ都道府県のバラツキが小さいのは素晴らしいこと。「現在の都道府県のばらつきの状況は極めて狭い範囲内にまとまっている」という文言の後に、可能であれば、「これは日本の先生方のご尽力のおかげである」という一文を加えてほしい。また、教育振興基本計画を策定している自治体の一部では、学力向上の指標として全国学力・学習状況調査の平均正答率を成果指標に掲げている。しかし、これらはファクトであって、エビデンスではない。エビデンスではないものを成果指標にしている限り、ランキングは撲滅されないと思う。「学力の下支えに資する分析を重視すべきことが明らかである」という文言の後に、「例えば、教育施策の成果検証、目標設定においても、平均値を上げるということではなく、D層を減少させるなど、下支えをすることや分散を小さなくすることを目標にする」というように、目標とすべき内容を例示してはどうか。
○ 平均値とランキングはエビデンスではない。エビデンスを用いることは、どういう学習指導をしたら子供の学力・学習状況が改善するのか、因果関係と強く言えないまでも、因果関係としてこのようなことが言えるのではないか、ということ。P.26の図3-12の散布図において、正答数と掛け合わせるx軸は、主体的・対話的で深い学びに取り組んでいるかなど、指導に関係する指標を挙げるべきではないか。それで初めてEBPMのような使い方に近づくのではないか。
【委員】
○ 資料3のP.22の表3-1のような示し方をすると、学級間の競争や教員評価につながるのではないかというコメントがあったが、自身の自治体では個人の評価にはつながっていないということをお伝えしておきたい。
○ 資料3のP.19の図3-5から、「全国的な差はほとんどない」ことが分かる。また、「ばらつきが大きい個々の児童生徒に着目し、学力の下支えに資する分析を重視」という記述もとてもよい。さらに、上位に位置する児童生徒をどう伸ばすかという記述が入るとなお良いと考える。
【委員】
○ 資料3のP.22の表3-1の示し方には懸念がある。成績が悪いのは担任のせいと言う人もいる。小学校については、力量がある先生が学力的に厳しい児童生徒をまとめて指導するケースもある。単純に表3-1のように示すと、特に第三者に誤った伝わり方をするのではないか。
○ 資料3のP.19の図3-5において都道府県のバラツキが非常に小さいこと、P.20の図3-6・図3-7においてSESと学力に関連があることを示すのは意義がある。以前はこのような議論ができなかったことを踏まえると大きな変化。全国学力・学習状況調査の目的が単なる競争ではないことを示していきたい。
○ 資料3P.15の「外国人児童生徒等」について、「外国にルーツのある」という意の表現になったのはよい。日本語の指導が必要な子供だけではなく、様々な背景の子供に焦点を当てられる。今後もマスコミへの公表等でも発信してほしい。
【座長】
○ 都道府県間の格差が小さいことについて。昭和時代の学力調査の結果を見ると、今とは比べものにならないくらい格差がある。この事実とともに、現在は格差が小さくなったことを伝えると、教育行政、学校現場の尽力の程度についてよくわかる。
【事務局】
○ 資料3のP.19の図3-5とその表記に関して、大変重要な指摘をいただいた。学校・自治体の規模が小さいと、A層やD層の変動も毎年大きく、扱いに困っているところもあると聞く。その中でどのような目標の立て方が適切かの受け止めの違いはあるかもしれないが、IRTバンドをうまく活用していくことはCBT化のメリットの一つだと思う。これらをうまく組み合わせながら、具体的な分布を見て、その中で学力の下支えをエビデンスとしてしっかり捉えていく仕組みを広げていけるようにすべきと考える。その点がにじむような記載ぶりを検討していきたい。
○ 資料3のP.26の図3-12の散布図に関するご指摘について。7月末の結果公表の全国的な分析においては多様な分析をしてきたものの、都道府県というラベルを通しては発信してこなかった内容を、これまでの知見を総動員して、意味のある組み合わせ方・見せ方で示せるよう努めたい。
○ 将来的な意欲目標として、上位を伸ばすという指摘もあった。自治体の判断を尊重しつつ、上位の位置付けを続けている自治体ではさらに向上させる具体の目標設定は難しいという議論もあると思うので、引き続きどのような目標設定が良いか、自治体関係者と議論していきたい。
○ 資料3のP.22の表3-1について複数のご指摘があった。散らばりを箱ひげ図でとらえることを説明する趣旨だったが、意図せぬ見方もできうるという指摘を受け止め、誤解のない素材に修正する。そのような課題をうまくクリアされている自治体もあるとのことで、参考にさせていただきたい事例としてお聞きした。
○ P.19に関して、過去の学力調査との比較について、公的に継承されている記録からも、今は地域規模別の差はあまりないが、かつては都市部とそれ以外との差がかなりあったことは認識している。現状が極めて狭い範囲内にあることを示すような記載ぶりについて引き続き検討したい。
【委員】
○ 資料3のP.23の図3-8について。四分位の算出方法や箱ひげ図の書き方は様々あるので、適切な方法を検討してほしい。
総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室