全国的な学力調査に関する専門家会議 調査結果の取扱い検討ワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

令和7年2月26日(水曜日)15時~17時

2.場所

ZoomによるWeb会議(公開)
事務局:文部科学省 15F1会議室

3.議題

  1. 令和7年度以降の全国学力・学習状況調査の調査結果の取扱いについて
  2. その他

4.出席者

委員

耳塚主査、足羽委員、磯部委員、大津委員、川口委員、貞広委員、佐藤委員、垂見委員、土屋委員、福沢委員、冨士原委員

5.議事要旨

【議事1】令和7年度以降の全国学力・学習状況調査の調査結果の取扱いについて
・資料1~3に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。
 
【委員】
〇これまでの全国学力・学習状況調査では、調査問題の難易度は示されていなかったが、設問の難易度の観点からも児童生徒の習得状況を学校が分析できるようになるとよいのではないか。また、設問の難易度だけではなく、その設問がどの点において児童生徒にとって難しかったのかについても示すことが考えられるのではないか。
【事務局】
〇IRTの導入により、個々の設問の難易度に着目できるようになる。また、これまで提供してきたS/P表の読み取りには、前提として教師の経験が必要な場合があったが、IRTに基づく設問の難易度を示せるようになれば、調査結果を解釈する際の教師の負担軽減も期待できる。
 
【委員】
○児童生徒質問調査の結果を児童生徒本人にフィードバックすることには反対。フィードバックすることとすると、児童生徒は正直に回答するのではなく、より望ましい内容を回答しようとするのではないか。学校や学級単位で児童生徒の意識や学習状況を一覧できる散布図で示すなど、学校・学級に対してフィードバックする形が考えられる。
  
【委員】
○調査結果をシンプルに分かりやすく示せば示すほど、教師が解釈を加える余地がなくなり、調査結果についてあまり考えなくなってしまうのではないか。例えば散布図など、学級全体の状況と児童生徒一人一人の状況が見えるような示し方が考えられる。児童生徒一人一人に質問調査の結果を返すのは望ましくない。結果を見た児童生徒が「自分はダメだ」と思ってしまうおそれもある。
 
【委員】
○論点の1つ目の柱のCBT及びIRTの意義を最大限反映させること、2つ目の柱の児童生徒一人一人の学習状況がきめ細やかに分かることは、リンクした課題である。IRTの導入によって新たに示されるIRTバンドについて、各段階が持つ意味について教師はどう読み取り、保護者や子供にどう伝えていけば励ましや課題提示になるのか。また、IRTスコアはどういう意味を持つのか。IRTバンドやIRTスコアについて、学校の教師自身が分かりやすく発信できるようにすることが重要。
 
【委員】
○都道府県別の結果を示す際に、教科調査の正答率だけが独り歩きしないように、正答率と他のデータをセットで出すことが重要ではないか。例えば、正答率と主体的・対話的で深い学びの実施状況をセットで出せば、文部科学省からのメッセージを示すことができる。正答率と組み合わせるデータは、年度によって違うかもしれないが、このように両者を連動させて見ればいいのだということが分かる。正答率と質問調査結果等を教師らが自分で組み合わせる時間もないと思われるので、文部科学省がデータをどう読めばいいかが分かる形で調査結果を示すことが重要。
 
【委員】
○都道府県別の平均正答率の比べ合いが起こっているのが問題だという議論の文脈であれば、平均正答率ではなく、分布を公表すべきではないか。そのような公表方法とすることで、学力は平均で捉えるものではなく、分布で捉えるものだということを示せる。
 
【委員】
○分布を見ることが重要なのはその通りだが、指標として平均正答率を使っている自治体も多い。平均正答率と分布の両方を公表して、少しずつ分布も重視する方向に移行するのがよいのではないか。平均正答率も含め、様々なデータがあるからこそ見えるものがある。また、平均正答率が必要な場面は出てくると思われる。平均正答率のみに着目するのは問題だが、平均正答率の公表は引き続き必要ではないか。
  
【主査】
○代表値の代表である平均正答率を示さないというのは、調査結果の公表の在り方として不自然である。他のデータも示して、平均正答率のみに注目が集まらないようにすることが重要ではないか。
 
【委員】
○平均より分散が重要と考えているが、散布図の読み込みは難しいので、総数をコントロールした状態で平均値とともにヒストグラムで示す方法が考えられる。正答率だけを独立して示すと、正答率が低い自治体・学校が努力していないという見え方になる。実際には、学校が置かれた状況ゆえ良い指導を行えない学校もある。SESなど学校の状況に比してどの程度成果を上げているかを示すことが重要ではないか。
 
【委員】
○調査の結果が国が意図している以上に教育委員会や学校に深刻に受け止められているのも問題。調査で測れるのは学力の一側面であり、その結果が示すものは限定的であること、そしてその結果を必要以上に深刻に扱うことは適切でないことを理解してもらう必要があるのではないか。
 
【主査】
○そもそも国は都道府県別の結果を示すべきか。理論的には都道府県別を示さないという選択肢がありうるが、国が実施した調査の結果として、平均や分布を示すのは当然のこと、それらを示す際に、都道府県ごと、地域規模ごとという単位は重要。教育委員会という単位もありうる。さらには、SES別、性別という示し方もありうる。そのように考えても、本調査の結果を都道府県別に示すのは、ごく当然のことではないか。
 
【委員】
○都道府県別で示す方向性には同意するが、問題は示し方だと考える。全国学力・学習状況調査の結果を分析した研究においてよく示されるのは、都道府県間や地域間のバラツキは大したことはなく、それより個人間、学校間のバラツキの方が大きいということ。それにも関わらず、大したことがない都道府県間の差があたかも大きいかのように捉えられているのが問題。分布を公表するなどして、都道府県間の格差が大きくないことを示す必要があるのではないか。
 
【委員】
○学校現場においては四分位を活用している。全国の状況、都道府県の状況を、自分の学校、さらには児童生徒個人に落とし込むことで、全国学力・学習状況調査の結果を生かしている。そのことにより、自校の生徒の状況が分かったり授業改善につながったりしている。平均正答率だけでなく分布も公表されると、現場としては調査結果をより活用できると日頃実感している。
 
【委員】
○平均正答率が都道府県別に示されると、たとえ「大きな差はない」と説明されても、社会はそうは受け取らない。「大きな差がない」という考え方をどのように説明するか。発信の工夫が必要と思っている。
○全国学力・学習状況調査のねらいがどこにあるのかを考えたとき、全国としての結果から見られる成果と課題が何で、各県はどのような状況にあるかを国の方で説明してほしい。それを受けて、県でも結果を分析して学校現場に伝えていく。
○公表の順番も、学校現場に伝えたいことを先に公表し、平均正答率は最後の段階で出すのがいいのではないか。
 
【委員】
○本調査の目的がEBPMなら、都道府県別の結果は公表せざるを得ない。公表の仕方が重要。都道府県ごとに正答率を箱ひげ図にすることで、各県における分布を示せるとともに、都道府県間の平均の差が大きくないことも伝わるのではないか。
○数値は大小関係がはっきりし、比較ができるものである。数値を示す以上、比較からは逃れられない。しかし、何と比較するかが重要。他の都道府県と比較するのではなく、過去の結果と比較するなど、比較の対象は様々。ちょうどIRT導入によって経年比較も可能になろうとしているところ。何との比較が重要かという方向で考えるのがいいのではないか。
 
【委員】
○都道府県別の結果の公表はやむを得ないと思う。ただし、平均正答率だけでなく、バラツキを示すものとセットで示すべきだろう。学校ごとのバラツキがどれだけあるのかも、資源配分を考えるにあたっては重要な情報になるのではないか。
○また、SESや性別による格差の検証も重要。現在、SESは自宅にある本の冊数という簡易指標で見ているが、SESについて分析する上で最低限必要な指標は何かという議論も改めて必要。
 
【委員】
○OECDがPISA結果を公表するときも、国ごとにスコアとSESによる説明率をセットで示していた。都道府県別の平均正答率を公表するなら、他のデータとセットで示すのがいいのではないか。
  
【主査】
○データの示し方は様々な形があるが、人によって見やすいもの、見にくいものが異なることから、同時に色々な形で示した方がいい。具体的には、①従来と同じような表、②視覚的に見せる結果チャート、箱ひげ図など、③文章の3つが重要と考える。すぐには無理かもしれないが、将来的には、OECDのカントリーノートのように調査結果を文章で示すことも考えていくべき。
 
【委員】
○数値が公表されると比較されてしまうということを踏まえると、国が都道府県別の結果を数値で公表するのは避けるべきと考える。しかし、公表せざるをえないのであれば、都道府県の学力コンテストのような状態にならないような示し方をしてほしい。
○全国学力・学習状況調査へのIRTの導入に伴って、その意義がまだ教育委員会や学校現場まで浸透しないのではないかと危惧している。IRTは教師の評価観を変えうるものだが、学習指導要領の評価観と足並みをそろえないと浸透しないのではないか。
【事務局】
○IRTの導入により、全員が同じ問題を解くわけではないことを前提に、幅広い問題をもとに測定できるようになる。ただし、算出されるスコアには一定の誤差もあるという前提。これからは特定の問題だけに焦点化された素点の積み上げではなく、より幅広く学力を測りにいくのだという転換が起こっている。
○学校現場でこれまで見取ってきた学力と本調査で測る学力の違いについて、しっかり説明していくべきと思うが、学校における日々の教育活動の成果をどう見取り評価するのかを、全国学力・学習状況調査へのIRT導入により変えようというものでもない。よい形で発信できるように努めていきたい。
 
【委員】
○学習指導要領の目指す資質・能力の評価と、全国学力・学習状況の評価が一致している方が望ましい。普段の教育活動ではこのようにしか見えていなかったものが、調査から別の見え方をして新たな気付きを得て、学びとは何かを考えることができるような示し方が目指されるべき。
○OECDのカントリーノートのような示し方は必要な要素と考える。そのデータが何を示しているのか教師がパッとわかるのは重要。
 
【委員】
○IRTの前提である一次元性については、幅広い学力というよりもむしろ限られたものを測る面もあると捉えている。
○IRTの結果を子供に直接返却する学校の先生がIRTを理論的なことも含めて理解していく必要がある。教育委員会の指導主事への研修などにより、調査結果を受け止め伝える側の力量形成をしなければならない。
 
【主査】
○都道府県別の平均正答率が整数で示されてきたこと、各都道府県の平均正答率±10ポイント以内であれば大きな差はないと評価してきたことについて、改めて整理し、検討する必要があると考えている。
 
【委員】
○児童生徒の月齢の違いによる学力への影響を分析することも考えられる。先行研究において、月齢の違いが学力にも影響している可能性が指摘されている。
○都道府県間の格差をどう評価するかについては、一般論で語れるものではなく、この調査におけるローカルルールとして決めるしかないのではないか。
 
【委員】
○地域の規模や都道府県の状況を示すグラフは、相対度数分布ではなく、累積度数分布を示すものとすべきではないか。前者は格差が分かりにくい。
○各都道府県の平均正答率±10ポイント以内であれば大きな差はないと評価してきたことについては、都道府県ごとに正答率の箱ひげ図を47個書いて、それに基づいて議論してはどうか。
 
【事務局】
○公表スケジュールについて。これまでは7月末に一斉に公表することとなっていたが、都道府県において公表までに分析する時間を十分にとれていない状況だった。公表スケジュールの改善について、さらにご意見をいただきたい。
 
【委員】
○CBTを導入すれば、児童生徒の解答結果はローデータの形なら短期間で返却できるようになるのではないか。国における集計・分析には時間を要するので、公開問題の正誤、質問調査の回答状況など、早く返せるものを返していく方向で検討することが考えられる。
 
【委員】
○現状の公表スケジュールは、県として結果を分析し、正答率だけでなく学校へのメッセージと併せて公表するには時間的に難しい。県としては学校現場や子供にしっかり調査結果を還元していきたいという思いもある。例えば、第一段階として全国の状況を、第二段階として都道府県別の状況を示すといった流れになれば、夏以降に県が分析した結果と第二段階として国が示す結果を合わせて学校現場に伝えることができる。
 
【委員】
○公開問題については、早く結果を返却してもらった方が学習改善に生かせるのではないか。現状の公表スケジュールだと、県と学校への結果提供が同時期なので、学校として主体的に分析に取り組むことができなかった。児童生徒個人のデータも含めて早く学校に返却できれば、調査結果を生かした学校としての取組を1学期のうちから開始できるのではないか。先行して学校に結果返却することに賛同する。
 
【委員】
○学校によっては、先行して結果返却されるだけでは、単に子供に返却するだけで、十分に分析・活用できないままになるおそれもある。自身の学校としては、都の平均と比べてみることなどを通じて結果活用していきたいと考えている。
 
【議事2】その他について
・資料4に基づき、事務局から説明があった。

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