全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ(令和5年4月28日~)(第1回)議事要旨

1.日時

令和5年10月27日(金曜日)10時~12時

2.場所

Web会議(文部科学省 13F2会議室)
※YouTube配信にて公開

3.議題

  1. 令和7年度以降の全国学力・学習状況調査(悉皆調査)の CBT 化の方向性について

4.出席者

委員

大津主査、石田委員、礒部委員、宇佐美委員、川口委員、柴山委員、寺尾委員、三浦委員、耳塚座長
 

5.議事要旨

議事:令和7年度以降の全国学力・学習状況調査(悉皆調査)の CBT 化の方向性について

 資料2・3に基づき、事務局から報告があった。主な意見は以下のとおり。

1  悉皆調査においてCBTIRTを活用する意義について
【主査】  悉皆調査において、問題が非公開となることに対する学校や教育委員会の反応をどのように予測されているか。
【事務局】  児童生徒によって解く問題が異なり、その中には非公開問題が含まれることについて、これまでとは違うという感覚があることは予想するところである。他方で、個々の学校での指導改善や個々の児童生徒の学習状況の改善といった悉皆調査の目的を考えると、これまでと同様の形式での公開問題も一定量設定し、これらの公開問題についてはこれまでと同様の結果分析を行い公表することは必要であると考える。さらに、非公開問題を使いIRT分析を行うことで、これまでは分からなかった情報についても付加して学校や教育委員会に返せるように、今後も検討を進めていく必要があると考える。
 
【委員】  これまでも全国学力・学習状況調査の結果公表の取扱い等については、過度な競争を引き起こさないように注意してきた。IRTを活用することで、学校や教育委員会へのフィードバックに関しても様々なメリットがあるが、これまで以上に過度な競争を引き起こさないように注意し、競争に勝つがための非公開問題の意図的な漏洩事案が生じないように配慮する必要がある。また、故意ではなくても問題が漏洩していく可能性はあるので、対策は何らか考えることが重要。医療系大学間共用試験においても、項目パラメータを管理し、漏洩が起こっていないか確認しているので、そういった観点も検討してほしい。
 
【委員】  悉皆調査でも経年変化を追うに当たって、推定誤差については注意が必要である。自治体や学校、個々の児童生徒といった小規模なレベルになるほど、誤差は顕著になる。経年変化があったように見えても、偶発的に発生するエラーである可能性もあるので、経年変化の示し方については引き続き慎重な検討が必要である。他にも、IRT活用に向けて、一次元性の仮定や問題の漏洩対策、予備調査の実施をどうするかなどについても継続的に検討できるとよい。
 
【委員】  国からIRTを使った学力測定のメリットを生かした活用例・分析例を提案されるとよいのではないか。また、自治体や学校においても、特色ある分析をされているような事例があれば積極的に取り上げるとよい。そうすることで、学校や教育委員会においても、どのように経年変化を追うのかが分かってよいのではないか。
 
【委員】  CBTについては、学校や教育委員会でも比較的イメージしやすいが、IRTについてはイメージが難しいと思う。事前に情報提供をしっかりと行い、IRTがどういったものかという周知を図っていくことが必要である。
 
【主査】  試験の結果そのものにも誤差が含まれるという事実が、中々共通理解を図れないところである。例えば、81点は80点より上ということは確かであるが、別の試験を行うと、また結果が変わることはあり得る。IRTの理解を浸透させるにも、そういった試験の得点の曖昧さに関する共通理解が改めて大切だと思う。
 
 
〔2  悉皆調査でのCBT・IRT活用の方向性について〕
【委員】  悉皆調査を毎年行うにあたってアダプティブ方式の実施も考えられているのであれば、問題作成や出題のためのプログラム作成など、準備のスケジュールをどのようにお考えか教えていただきたい。
【事務局】  まず、問題内容や問題数、全体の公開、非公開問題の割合などは、現段階で検討中である。また、最終的な実施の段になっても、調査設計全体にかかわることはお示しできるものではない。今言えるのは、アダプティブ方式による実施は、技術的にも時間的にも、少なくとも令和7年度では難しい。問題セットは、あらかじめ組まれた問題セットを複数セット用意する。その組合せの数などは、今後技術的に検討していく。結果返却のスケジュールも検討しているが、少なくとも現行と同様の7月末に結果を返却することを目安に、具体的なスケジュールのシミュレーションを組んでいくことになる。それに基づいて、IRT分析や採点の工程でかけられる時間も考えていく必要がある。
【委員】  スケジュールがある程度決まっており、人材等も限られている以上、あまり複雑なことはできないので、今の体制でできることを踏まえて詰めていった方が良い。
 
【委員】  CBT実施のプラットフォームとして、MEXCBTを使用するが、MEXCBTの現状の機能、及び今後、実装しようとしている機能等についてまとめたものはあるのか。また、特別な配慮が必要な児童生徒に対応するための、CBTプログラムもつくるべきだが、現時点で、拡大文字やルビ振り問題は、どのようになっているか。時間延長については、合理的配慮に基づき、児童生徒ごとの対応になると思うが、それは、そのような対応に必要な機能をMEXCBTに今後実装する予定になっているか。また、全国学力・学習状況調査は大規模調査なので、実施管理をしっかりとしなければならないが、それらの機能もMEXCBTに載せるのか、別の管理システムとして用意するのかについても伺いたい。
【事務局】  MEXCBTに関する機能の状況については、MEXCBTの運用支援サイトにおいて、MEXCBTで現在どのようなことができるのかといった情報を記載している。その上で、特別な配慮が必要な児童生徒への対応として、拡大文字に関しては、1人1台端末を用いて、画面上で拡大することもできるようにしていきつつ、ユニバーサルデザインのフォントを使った状態で、最初から文字が拡大された状態の形で、別のプログラムとして準備しておくことを想定している。ルビ振りに関しては、MEXCBTの機能の中で、ルビをオン、オフにすることが可能になっている。時間延長については、プログラムの中で時間制限をかける際に、設定する時間を変更した形で、別のプログラムとして配信することを想定している。さらに今後の機能開発のスケジュールに関しては、MEXCBT担当者とも相談し検討していきたい。
 実施管理については、基本的にはMEXCBTの機能をベースに考えていく。MEXCBTや端末の機能で解決できることと、実施上のオペレーションの工夫で解決できることもあるので、これら2つの部分で進めていきたい。
 
【委員】   CBT化ワーキングの最終まとめにおいても言及しているが、大規模調査特有の機能はあるのか。
【事務局】  ある程度、マニュアルで対応せざるを得ない。実施日については、まずは、各教育委員会、学校から、実施日の希望を伺い、調整の上、適切に問題を配信していくというところになる。問題の配信について、どこまで自動化して、進めていけるかということに関しても、MEXCBTの機能開発の中で、今後、検討が必要になってくる。
 
【委員】  調査問題の公表の仕方は、現行と同じようにPDFで公表するのか、もしくは、HTMLの形で、表示の部分も再現するような形で公表するのか。あるいは、後々、解くことも考え、MEXCBTにも掲載するのか。
また、調査の分散を行うにあたって、自治体のネットワーク状況の把握を踏まえた柔軟な配置を行うのも重要ではないか。
【事務局】  公表の仕方については、現在のところ決まり切っていない。様々な公表の仕方はあると思うが、どのような形が最も有効か引き続き検討していく。公開問題についてはMEXCBTに搭載をし、後々活用していただきたいと考えている。
ご指摘いただいた自治体のネットワーク状況を踏まえた調査の分散については、CBT、IRTのメリットを生かしながら検討していく。
 
3  令和7年度悉皆調査においてCBTで実施する教科について
【委員】  令和7年度悉皆調査において、CBTで実施する教科が理科であることは賛成である。実験のシミュレーション動画を使った問題等、CBTならではの問題の開発もあると思うが、進捗状況は、どの程度か。また、先ほど委員のご発言にもあったが、そういった問題はPDFでの公開では意味がなく、ウェブ上で再現できることで授業改善へのメッセージとなる。結果返却の方法は、何らか工夫が必要である。
【事務局】  問題内容や出題の仕方については、今回の資料では取り上げていないが、令和7年度に向けて様々準備を進めている。確かに、CBTならではの問題の出題が考えられるが、コンテンツによるネットワーク負荷なども考慮して考える必要はある。現実的には令和7年度は、PBTをCBTに置き換えた問題が中心になるとは思うが、並行してネットワークの改善やCBTでの問題への慣れ、学校現場の受け止めも見ながら、問題も徐々に進化していくものだと思っている。現在、予備的な試行・検証も進めている。
 
【委員】  CBTの実施日時が学校単位で同一とのことだが、ネットワーク負荷はどのように考えているか。よく事前検証をしていただきたい。また、令和7年度悉皆調査においては、中学校国語、数学に関する結果の返却・公表は、これまでと同様だが、中学校理科はIRTスコアをベースに行うことについて、結果の見方をしっかりと説明しておかないと、結果を上手く授業改善に生かすことができないのではないか。結果の返却・公表については、検討が必要。
 
【委員】  CBTでの実施の場合、解答の仕方が分からない等、操作性の面で生徒にかかる負荷は、何らか軽減できるようにするべき。
【事務局】  御指摘の通り、令和7年度の実施前に、MEXCBTにサンプル問題や操作性を練習できるものを搭載することが必要であり、一定の期間を設けて行うことも考えていきたい。
 
【委員】  CBTとIRTの導入は、かなり大きな変化であり、ある程度トラブルが起こることを前提として運用をするのが良い。また、CBTとIRTの導入について、実施方法の変化だけがいきなり提示されるのではなく学校現場や教育委員会、更には教員養成も含めて関係者が学び、準備できるような場を整備してほしい。
【事務局】  ご指摘いただいたようにネットワークトラブルというのは、必ずあり得るということを念頭に置き、公平性だけを求めるのではなく、この調査の目的を達成するためには、何を優先すべきかを考え検討していきたい。今回の英語「話すこと」調査では、ネットワークや端末のトラブル等により、1回目で正常に全ての音声データが登録されていない場合も、再実施が可能としていたが、そのような形も十分考える必要がある。
 
【委員】  調査の見た目の公平性だけをただ追い求めて、本来の調査の目的を達成できないことがあってはならないのはその通りである。また、IRTの情報も、正確さのみを重視するのではなく、今回の参考資料のような分かりやすさを重視して発信するのがよい。教育委員会や学校が、どういう情報を求めているのかを聞きながら、必要情報を分かりやすく発信してほしい。
 
【委員】  令和8年度以降のCBTの導入の考え方について、もう少し整理しておいた方がよい。令和7年度に理科をCBTで実施した後、どう歩みを進めていくか、検討する必要がある。
【事務局】  現段階では、具体的に説明することができないが、教科を順次拡大していきながら、いずれ全てがCBTに置き換わるというような段階を描いたときに、どの教科からどのように進めていくのがよいか検討していく。
 
【主査】  特別な配慮が必要な児童生徒に関連することとして、令和7年度に理科の教科調査をCBTで行う場合、カラー画像の資料等が提示されると思うが、カラーユニバーサルデザインに配慮した対応が必要である。

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総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

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