令和6年9月17日(火曜日)15時00分~17時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【天笠座長】 それでは、ただいまから第15回今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会を開催いたします。
皆様、大変御多忙中、御参加いただいたことにつきまして、ありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。
前回は、約2年にわたるこれまでの御議論を踏まえまして、論点整理骨子案について皆様方に御議論いただきました。今回は、前回の議論を踏まえまして、論点整理(案)について意見の交換を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
流れとしましては、整理された論点整理(案)の内容について、事務局から説明をお願いしたいと思います。その後、残りの時間で意見交換の時間とさせていただきたいと思います。
それでは、最初に、事務局より説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。教育課程企画室長の栗山でございます。私のほうから御説明をさせていただきます。
本有識者検討会では、令和4年11月に設置されまして、約2年にわたり御議論いただいてまいりました。前回は、これまで御議論いただいた内容を基に、論点整理骨子案について意見交換をしたところでございます。今回は、各委員のこれまでの御発表や意見交換における御意見、また、前回骨子案に対していただいた御意見を基に骨子に具体化させていただきまして、資料1、論点整理(案)を用意いたしましたので、御議論をいただきたいと思っております。
それでは、御説明させていただきますが、まず、目次については、前回骨子案でお示ししたものとほぼ同様のものでございます。
次に、2ページ目でございます。2ページ目に「はじめに」を入れさせていただいてございます。全体を読み上げたいところでございますけれども、時間の関係で、下から2つ目のパラグラフから、特にこの論点整理(案)の性質を表しておりますので、読み上げさせていただきます。
下から2つ目のパラグラフでございますけれども、本検討会における議論と時期を同じくして、中央教育審議会においても、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方や、デジタル学習基盤の在り方、質の高い教師の確保に向けた環境整備の在り方など、様々な視点から多角的に議論が深められてきた。そうした中央教育審議会における議論にも参画している有識者が多く本検討会に委員として参画し、それぞれが持つ知見や議論の動向を互いに共有しながら、教育課程、学習指導及び学習評価に関わる現状の課題や今後の点について、令和4年12月以降、整理を進めてきた。
最後のパラグラフでありますけれども、本論点整理は、そのような議論や整理を経て、本検討会に参画した委員間で一定の共通認識を得たものを中心として、教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関し今後検討を深めるべき具体的な論点等について、有識者としての意見をまとめたものであり、これからより多くの関係者や様々な識見を有する方々の参画を得つつ、具体的な検討を行っていくことが望まれる。今後、本論点整理については、教育課程の改善の検討を行っていく際の基礎的な資料として活用されることを期待したい、とさせていただいております。
3ページ以降でございますけれども、1ポツの(1)については、前回の骨子案でお示ししたものとおおむね同様でございます。
4ページに参りまして、前回の御議論におきまして、学校の本質的な役割について御議論を多数賜りまして、この部分を追記しておりますので、御紹介いたします。
新型コロナウイルス感染症拡大の防止のための臨時休業や様々な接触防止の対策等を経る中、学力の保障のみならず、全人的な発達・成長を保障するという役割、他者と安全・安心につながることができる居場所・セーフティネットとしての福祉的役割など、学校が持つ様々な役割が改めて実感を伴って理解された。
学校は、学年・学級という生活を共にする集団の中で、多様な他者に出会い、共感や軋轢の中で自己を知り、高めるとともに、他者とどのように共存するかという、社会を形成していく上で不可欠な人間同士のリアルな関係づくりを子供たち相互の関係で学ぶ貴重な場となっている。
このような多様な背景を持つ児童生徒が学ぶ場所としての学校の役割は、包摂的で、他者への信頼に基づく民主的・公正な社会を実現していく基盤として一層重要となっており、社会の分断や格差を防ぎ、持続可能な社会の創り手を育てる観点からも更なる充実が必要。この点について考える際、教育基本法、学校教育法等の教育関係法規に加え、令和5年度から施行されているこども基本法の趣旨・内容も踏まえることが重要、とさせていただいているところでございます。
次に、(2)、そして、5ページ、6ページまで行きまして、(3)の指摘されている課題までは、前回の骨子案とほぼ同様でございます。
その上で、7ページに行きまして、(3)に、指摘されている課題に加えまして、検討すべき方策を追記させていただいております。
概念間の関係性の整理や、用語の定義の明確化などを前提としつつ、理念が学校現場で実装されるまでのシステムを全体として捉えて、理念の具体化をさらに図る方策を検討する必要。
複雑な要因があるが、現実として不登校児童生徒数が小・中学校で30万人、高等学校で6万人にのぼる現状。普通教室にいる多様な子供の実態が顕在化する中で、多様な子供たちを一層包摂する方向で学校教育を改善する観点から、学習指導要領の在り方を検討する必要。
教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合う必要性はあるが、その負担感がどのような構造により生じているのか精緻に議論すべき。その際、教師の「ワーク・オーバーロード」と、いわゆる「カリキュラム・オーバーロード」との呼称で指摘されている諸課題は区別して議論し、学習指導要領や同解説の在り方に加え、厚い教科書・入試の影響・教師用指導書も含めた授業づくりの実態などを全体として捉えて対応し、教育課程の実施に伴う過度な負担感が生じにくい仕組みを検討すべきとしております。※印で、OECDによる「カリキュラム・オーバーロード」の意味について注記をしております。
次に、8ページでございます。最後に、1ポツの最後の部分、こうしたことも踏まえながら、子供一人一人への包摂性を高めつつ、資質・能力の育成により効果的な教育課程の基準の在り方を追求すべきと、最後に1ポツの部分を締めております。
2ポツの部分でございます。これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力、(1)学習指導要領における資質・能力の枠組みについての部分でございます。
「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱で資質・能力を整理したことは、これからの社会像や現状の課題を踏まえても基本的には妥当。
しかし、これらの資質・能力については、理解のブレが見られ資質・能力の育成の障害ともなっているため更なる整理・具体化が必要。
例えば、「知識及び技能」については、個別的知識及び技能と概念的知識・方略の関係性をより整理すべき。また、「学びに向かう力、人間性等」については「今の学びに向かう力なのか、その先の学びに向かう力なのか」といった視点や、さらには「学び自体に向かう力なのか、学びの先に社会に向かう力なのか」といった視点から多義的な解釈がなされており、更に整理すべき。
さらに、「資質・能力の3つの柱」と「教科固有の見方・考え方」、「主体的・対話的で深い学び」、「習得・活用・探究」に加え、学習指導要領改訂後の令和3年1月26日中央教育審議会答申で補足的に提起された「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」等、重要なコンセプト間の関係性についてはより分かりやすく整理して示すことが必要。
続いて、9ページでございます。(2)学習の基盤となる資質・能力についてです。
言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力といった「学習の基盤となる資質・能力」については重複する部分も多く、現場の具体的な実践に繋がっていない場合もある。
この「学習の基盤となる資質・能力」については、各教科等における学びを進めていく上で共通的に必要となる重要な資質・能力であるという点を改めて明確にしつつ、これらの3つで求められる資質・能力が十分に表現されているかどうか、デジタル学習基盤との関係も含め、関係性の整理と具体化を図ることが必要。
このうち特に情報活用能力については、生成AIの加速度的発展によりSociety5.0のリアリティが増す中、教育課程全体での扱いに加え、各教科等を通じた具体的な充実方策も併せて検討すべき。その際、情報活用能力の向上とそれによる探究的な学びの充実を一体的に考えていくべき。
(3)学校におけるデジタル学習基盤の整備を踏まえた学びの在り方についてです。
手軽に回答を得られるデジタル時代であるからこそ、人間中心の発想で生成AI等を使いこなしていくためにも、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」といった各教科等で身に付ける資質・能力が一層重要となるという認識に立ち、体験活動の充実をはじめとして、デジタルとリアルのバランスを取りながら資質・能力の育成に取り組むことに留意が必要。
GIGAスクール構想の下、クラウド環境やアクセシビリティ機能を含むデジタル学習基盤を効果的に活用している学校では、多様な子供たちを包摂する実践が進むとともに、多様な教材の活用や思考過程の可視化などにより、個別最適な学びと協働的な学びが促進され、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善が進んでいる例も見られている。一方で、従前からの指導においても同様であるが、育成すべき資質・能力を十分に意識しない実践が行われることにより、ICT等のツールが先に述べたような役割を果たすことなく、「深い学び」に繋がっていない例も見られることに留意する必要。
デジタル学習基盤は、今後の学習者主体の学びを支える極めて重要なインフラである。このため、教師の指導のツール(教具)としての側面のみならず、学びやすさの提供や合理的配慮の基盤であることなど、学習者のためのツール(文房具)という側面にも十分な目配せをして、課題に向き合いつつ積極的な活用を推進することが重要。
このため、既存の学習基盤と何が異なるのか、それによってどのような学びが実現できるのかを踏まえつつ、デジタル学習基盤を前提とした学びのデザインの方向性として何を示すべきかを検討すべき。一方で、デジタルツールを用いた具体的な教育方法を示すことについては、テクノロジーの進化が速い点や、各教科の領域固有性があるかどうかという点を踏まえ、その適否も含めて検討すべき。
情報技術など変化の速い領域については、技術の変化に即応して最新の状況に応じた学びを確保するためにどのような方策が考えられるか検討すべき。
生成AIが教育にどのようなインパクトを与え、資質・能力の在り方や教育方法にどういった影響を及ぼすのかを踏まえた検討が行われるべき。
ここまでが2ポツでございます。
3ポツ、各教科等の目標・内容、方法、評価です。
(1)資質・能力の育成に向けた効果的な目標・内容の構成方法です。
目標・内容の構成と括弧しておりまして、既存の知識から大量のアウトプットを出すことが得意な生成AIの実現なども踏まえ、単なる個別知識の集積ではない深い意味理解を促すことや、学ぶ意味や社会とのつながりの更なる明確化が求められる。
平易かつ端的で、学年を超えた教科の系統性や単元の本質的な問い・探究課題などをイメージしやすく、日々の授業づくりや授業改善、教師の力量形成に直結する理解しやすいものとすることが重要。
各教科等の本質的な内容についての深い理解を伴う資質・能力の育成を前提としつつ、子供たちが個性・特性を活かして多様な学び方ができるようなものとしていく必要性。
次のページです。こうした観点から、各教科等における目標・内容を中核的な概念や方略を中心にして分かりやすく一層構造化することについて、その意義や具体的方法を検討するべき。その際、理解すべき「概念」をイメージしやすい教科等と、習得すべき「方略」をイメージしやすい教科等との特性の違いに留意して検討する必要。また、発達段階の異なる小学校低学年と中学年以降、中学生・高校生の違い等にも留意して検討する必要。
単に学習指導要領の内容の量を削減すればよいといった短絡的な議論とならないようにすべき。
その際、他国でのカリキュラム・スタンダードの好事例を踏まえ、図表の形式を活用して示すことや、カリキュラム文書やその解説等を一体的に確認できるようデジタル技術を活用することなど学習指導要領及び同解説の形態の工夫の在り方を検討すべき。
教育方法の取扱いとしています。
教育方法の記述は具体のイメージを豊かにする一方で、深い納得を伴う実践とならず結果的に十分に効果が見込めない恐れもある点に留意が必要。
「主体的・対話的で深い学び」の基本的な考え方は維持し、学習指導要領の趣旨の実現に向けた教育課程の編成や授業改善における指導観や教材観等は明確にできるようにしつつも、個々の指導方法に関する制約や留意点を増やすことは避け、教師に様々な裁量が生まれるよう目標・内容の示し方を工夫すべき。
次の部分は再掲でございます。
次のページ、12ページです。(2)学習評価の現状と育成すべき資質・能力を踏まえた今後の対応です。
現状です。
資質・能力の育成につながるよう学習評価の質を高めていくことは、教師の力量形成や授業改善に直結するものであり、「指導と評価の一体化」を一層進めることが重要。
学習評価を「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で行うこととした現行の観点別評価は、授業改善に重要な役割を果たすものである一方、特に「主体的に学習に取り組む態度」の観点については、「主体性」の意味が具体的に整理されていないこともあり、依然としてノート提出の頻度などの「勤勉さ」の評価に留まっている学校もある。
また、毎回の授業で3観点全てを見取らないといけないといった誤解により、評価材料を集めることのみを目的に毎時間振り返りを書かせるなど、評価のための指導に追われるいわゆる「指導の評価化」の状況が生まれるなど、教師・子供にとって息苦しくなっている場合もある。
さらに、見取り・形成的評価・総括的評価が区別されず、学習評価の全てが総括的評価(評定の対象)として行われることにより、評価の結果が学習の改善に結び付きにくいという課題も指摘されている。
今後の対応です。
こうした現状を踏まえた上で、教師の力量形成や授業改善に効果的で、子供の学習の改善に資するよう、学習評価の観点や頻度の在り方、また形成的評価と総括的評価の効果的な使い分けの在り方を検討すべき。
特に「主体的に学習に取り組む態度」の観点については、資質・能力としての「学びに向かう力、人間性等」の整理の状況を踏まえつつ、子供がより主体性を発揮できるようにする観点から検討すべき。
各教科等の目標・内容の構成の在り方自体も、学習評価の効果的な実施の在り方と適切に連携が図れるよう、一体的に検討することが重要。
ここまでが3ポツの部分でございます。
続きまして、4ポツ、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程です。
(1)現行の「個に応じた指導」の記述と充実の在り方です。
現行の学習指導要領においても、児童生徒の発達の支援の観点から「個に応じた指導」は重要視され、個別学習やグループ別学習など、一定の指導方法の具体例の記載もあるが、令和3年1月26日中央教育審議会答申の趣旨等も踏まえると、学習者自身が主体的に学習を調整していく観点からの記述が不足。
子供が興味・関心や能力・特性等に応じて自ら教材・方法・ペース等を選択できる学習環境を教師が適切にデザインすることなど、学習者が主体的に学ぶ中で自ら学習を調整しつつ資質・能力を身につけることの重要性やその中で教師が発揮すべき指導性について、具体的に議論し、位置付けを検討すべき。
多様な個性・特性を有する全ての子供に資質・能力を育成する上で子供一人一人を見取り、適切な指導や関わりを行う教師の指導性はより積極的かつ高度なものが求められるし、時には教師が主導することが重要な場面もある。「教師は教えなくてもいい」、「全て子供に委ねればよい」といった誤ったメッセージとして伝わることのないよう、最大限の注意を払うべき。
(2)教育課程の柔軟性の在り方です。
教育課程の編成・実施の柔軟性。
多様な個性・特性を有する子供たちに応じた適切な支援・指導を行う観点から、学校が教育課程を編成する際の柔軟性、子供一人一人に応じて教育課程を実施する際の柔軟性の両面から具体的な方策を検討すべき。
14ページです。学校の教育課程編成の柔軟性の視点からは、現行の教育課程の特例制度(教育課程特例校、授業時数特例校、小中一貫、中高一貫など)をより活用しやすくするとともに、各教育委員会の判断や学校のカリキュラム・マネジメントにより、各教科等の標準授業時数についてどのような柔軟性を持たせられ得るのかなど、各学校の教育課程編成に係る教育委員会(学校)の裁量拡大の在り方について検討すべき。括弧は例示ですので、省略いたします。
年間の最低授業週数(35週以上)や、単位授業時間(小学校1単位45分、中学校1単位50分)については、現在でも学校に裁量が認められているが、当該規定が硬直的な教育課程編成を助長しているとの指摘もあり、取扱いを検討すべき。
子供一人一人に応じた教育課程の実施の柔軟性の観点からは、子供が興味・関心や能力・特性等に応じて自ら教材・方法・ペース等を選択できることを改めて整理しつつ、どのような実施上の課題があるのか丁寧に検討し、示していくことが考えられる。
その他です。
高等学校については、全日制・定時制・通信制の3つの課程に区分されているが、それぞれの課程の特質を組み合わせて実施したいというニーズもあることから、3つの課程の区分の在り方やその一体的運用の在り方を検討すべき。
不登校児童生徒など、個別の支援や特別な配慮を要する子供への指導について、「困難に着目」するだけでなく、「良さを伸ばす」視点を踏まえて考えることが重要。特に学校が編成する一つの教育課程では包摂が難しい多様な子供についても、その良さを伸ばしつつ資質・能力の育成に繋げていくための教育課程における取扱いの在り方やそれに付随する環境整備の在り方を検討すべき。
次に、15ページです。(3)学校段階間の連携接続の在り方。
学校段階間の連携・接続については、幼児教育から高等学校段階までの発達を連続的に支えるものとして重要であり、義務教育9年間を通した教育課程・指導体制等の在り方や高大接続の観点も含め、引き続きその在り方について検討すべき。
特に幼児教育と小学校教育の連携・接続については、「架け橋プログラム」の成果も踏まえつつ、資質・能力の育成に向けて、幼児教育の学びと連続性のある学びを小学校教育でも実現するといった観点のみならず、小学校教育以降の資質・能力の育成に繋がる多様な体験をいずれの幼児教育施設でも経験できるようにするといった観点も含め、幼児教育と小学校教育が相互にその教育の良さを取り入れていくためにはどうすればよいか検討すべき。
ここまでが4ポツの部分です。
5ポツ、学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備です。
(1)教育課程を実施する上での学校現場の過度な負担を防ぐための在り方です。
最初のポツは、1ポツで読み上げた部分の再掲ですので、割愛いたします。
16ページにお進みください。
2つ目のポツからですが、学習指導要領の分量や、教職員定数といった教育環境のいずれか一方で全てを解決するといった短絡的な議論に陥ることなく、負担が生じる原因に丁寧にアプローチし、教育課程と教育環境整備が全体として機能するようにすべき。
その上で、総授業時数については、現在以上に増やすことがないよう検討すべき。
次のポツは単元に関するものですが、最初の幾つかの行を飛ばしまして、下から5行目の部分から紹介いたします。「あらためて」の部分からですが、3(1)で述べた目標・内容の構造化との関連も踏まえつつ、単元をベースとして授業を構想することの重要性や示し方を検討すべき。その際、単元という単位で授業を構想することの具体的な意義や単元という概念の指し示すところについて整理し、学校現場に分かりやすく伝わるように示していくことが重要。
(2)教科書・教材の在り方です。
発展的内容の充実や、新しい学習指導要領への対応などにより教科書の内容は格段に充実し、ページ数が大幅に増えている現状。
入試の在り方に関連し、教科書の内容を全て教えなくてはいけないという考え方は依然として根強く、教科書のページ数の多さが、授業進度の速さや教育課程の実施に当たっての負担感を生んでいる実態も指摘されている。
教科書が経験の浅い教師でも充実した指導ができるように工夫されていることが、かえって教師の創意工夫や教師の指導力向上を阻んでいるのではないか、といった指摘もある。校内の研修や教育委員会の支援等を通じて、単に教科書を教えるのではなく、どのような資質・能力を育みたいかという視点から、一人一人の教師が教育計画を立てられるようにしていくことが重要。
17ページです。一人一台端末の整備により、子供たちが多様な学習材に自らアクセスできるようになってきたという状況の変化も踏まえて、新しい学びにふさわしい教科書に掲載する内容や分量のほか、デジタル教科書の在り方等についてあらためて検討すべき。
教科書のみならず、多様な学びの充実を図るための教材の充実も重要。その際、AI等のデジタル教材をはじめ、学校用家具や学校施設(学校図書館や特別教室等を含む)など子供の学ぶ環境全体に目を向けて、資質・能力の育成に必要な教材等の整備を行っていくことが求められる。
(3)カリキュラム・マネジメントの実態と今後の推進の在り方です。
教職員同士が協力して、学校全体でカリキュラムの編成・実施・評価・改善のPDCAサイクルを確立していくことは、子供の社会経済的背景を乗り越えて学力を向上させていく学校の特色の一つとして指摘されている。
学校におけるカリキュラム・マネジメントについては、学校における実施の認識が高まってきているが、計画を立ててそれを遵守することに注力してしまい、子供や学校の実態に応じ年度途中でも柔軟に見直しながら実施していくことに課題があるとの指摘もある。
学習指導要領が変化しても学校を取り巻くシステムや組織文化が旧来の状態に留まる、という状況を脱却するのが現行学習指導要領におけるカリキュラム・マネジメントの提起の趣旨の一つであったが、十分に具現化するところにまでは至っていない。学校の「組織原理・文化」等も含めて、学校のシステム・組織全体のマネジメントの観点からも、カリキュラム・マネジメントの充実の在り方について検討すべき。
18ページです。(4)教育課程の円滑な実施に向けた学校への支援と環境整備です。
指導主事を配置していない基礎自治体があることも踏まえ、教育委員会や学校がそれぞれの地域や学校の実情を踏まえつつ、自主的・自律的に取組を進めることができるよう、地方教育行政を充実させ、学校への支援体制の強化を図ることが重要。
学校での学びを社会に繋げ、「社会に開かれた教育課程」を持続可能な形で実現できるよう、コミュニティ・スクールの充実を含む地域と学校、産学官と学校の連携促進方策を検討すべき。
資質・能力を育成するための教育課程の改善・充実と教職員定数の改善をはじめとする教育条件整備は一体的に行っていく必要がある。
ここまでが5ポツでございます。
最後に、6ポツ、学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開です。
(1)学習指導要領・解説等の形態。
例えば「学びに向かう力、人間性等」のように、用語が多義的に解釈され結果的に誤解を招くといった事例が見受けられる。用語の解説を設けるなど、用語間の関係や関連性など全体の構造を分かりやすくするにはどうすればよいか検討すべき。
次のポツは再掲ですので、割愛いたします。
19ページです。(2)学習指導要領の改訂プロセス、学校や教育委員会との共有・浸透の在り方です。
最初のポツは再掲ですので、割愛いたします。
2つ目のポツ、中央教育審議会等における改訂の審議の最中においても、資料を学校や教育委員会にとって徹底的に分かりやすいものとしたり、審議状況をウェブサイト・動画等で積極的に発信したりするなど、改訂プロセス自体を通じて子供や保護者等を含む多くの関係者を巻き込み、学校や教育委員会と趣旨や内容を共有しつつ、浸透を図っていくことが重要。
令和5年度から施行されているこども基本法について、同法に定める基本理念を含め、その趣旨を踏まえることが重要。
改訂後においても、教師一人一人が自らの課題に引きつけて当事者意識を持って理解できるよう、より対話的な関係の中で趣旨を伝えることができるような機会など、趣旨の共有・浸透の方法にどのような工夫が可能か検討する必要。
(3)社会的ニーズとの整合性です。
この部分は再掲でありますので、割愛させていただきます。
2つ目のポツ、新たな社会で求められる資質・能力やそれを育成する学びの在り方、それに対する支援について、学校関係者だけでなく、幅広く社会的合意を調達していくことが重要。
また、最初から関連する御発表について、適宜掲載させていただいているところです。
以上、論点整理(案)として、これまでの議論を踏まえて用意させていただいたものでございます。
以上でございます。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
これからは、ただいま御説明がありました本検討会議の論点整理(案)につきまして、委員の皆さんからの御意見を頂戴したいと思います。
それで、その進め方についてなんですけれども、最近取らせていただいている手だてとしまして、委員の皆さんに相応に御発言いただくということで、今日のあとの時間等々を考えていきますと、お一人当たりおよそこのぐらいの時間でということを含めましてお願いしたいと思うんですけれども、基本的に、この間、御発言を二巡させていただくという形を取らせていただきましたので、最初の発言を、およそ大体時間にしますと七、八分程度という心積もりでお願いできればということで、もう一回の時間というのは、それぞれの残りの時間ということになるかと思うんですけれども、目算しますと、およそ大体2分程度ぐらいになるのではないかと思いますので、あらかじめその時間配分等々も頭の隅に置いていただきながら、それぞれ御発言いただければということで、まずはよろしくお願いいたします。
ということで、順次発言をお願いする前に、私の手元にあります委員の皆さんからのメモというのが大体アイウエオ順になっていまして、いつも秋田委員からお願いするということなんですけれども、今日は、こういう席順も席順ですので、石井委員にまずトップバッターを切っていただいて、その後、順次、市川委員、貞広委員の順にということでお願いしたいと思いますので、まずは石井委員から御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【石井委員】 それでは、失礼します。最初に発言するということで、非常に緊張するところもありますけれども。
それでは、この論点整理(案)を見せていただいて、それで感じたことを述べさせていただきたいと思います。でも、もうさんざんこの会議の中でいろいろ発言してきたので、それを踏まえて、この整理案も提起されているので、もうこの段階でそれほど特段申し上げることもないかなというふうなことも思っているところです。
本当にそれくらい、今回のこの論点整理の案に関しては、かなり様々なところに目配りをして、かなりバランスよくまとめられているということが、前回もそのバランスということ言ったかと思いますけれども、そのように思っています。
何より、基本的な教育政策、学習指導要領の在り方ということもそうですし、こういった教育政策文書の在り方として、伝達ベースといいますか、周知徹底という論理というよりも、この文書を基に対話・議論を活性化して、それから参画につなげていくと。それで当事者意識を構成していくというふうな、伝達から参加ではないですけれども、そういった文書として取り扱っていくといいますか、受け止めていくことが大事なのかなと思います。
そういう点に関しても、本当にまさに論点整理。だから、こうしましょうというような提案もありますけれども、それ以上に、こういったところが議論になりますよと。一つ一つ、これまでのこの議論を基に読み解いていきますと、この一行一行にかなりのいろいろな議論が詰まっているというところかと思います。ですから、それが濃縮されたこの文書を、ぜひこれをたたき台にして、今後の教育課程の在り方であるとか学校教育の在り方について議論していければいいのかなということを改めて思った次第です。
その上で、今回の論点整理(案)を読ませていただいて、そのトーンとして、新しい○○な学びとか、そういったものを継ぎ足してとかというのではなく、新しく何かリニューアルしていくということよりも、もともとの現行の学習指導要領の趣旨をどう再確認し熟成させていくのかと、そういった論調だと思っているところです。
論点整理(案)の中にも「補足的に」という言葉がありましたけれども、「令和の日本型学校教育」答申等、この間出てきた様々な文書は、改めて重要な問題提起をしているわけですけれども、大本はやっぱり学習指導要領なわけで、そこがこの間、「主体的・対話的で深い学び」が「個別最適な学び」に上書きされたかのような、そういう論調も目にするところがありまして、ここは改めてこの学習指導要領が大本ですよということに戻っていく、これは今すぐにでもしっかりと共有していけるといい点かなと思ったりします。
先述のバランスということとも関係しますけれども、デジタルとアナログ、この辺もスイッチできることが重要だと思いますし、さらに言いますと、論点整理(案)の真ん中くらいのところでも記されていた、教えることを躊躇する云々というか、子供に放任しておけばいいよみたいな、そういった論調も確かに最近結構心配しているところでもあります。
個別最適な学びであるとか、子供に委ねるとか、あるいは、自由進度学習とかいろいろあるわけですが、それはそういう意味ではないと思うんですけれども、それが曲解されて、委ねておけばいいと。しまいに、その中で何が起こっているかということで言えば、保護者の側からも、ちょっとこれでいいんだろうかというふうな声が上がり、学校への信頼が失われていく。さらに言うと、それで先生方の力量が積み上がっていかないということになると、これ、かなり深刻な状況になるかと思います。
ですので、改めて、もともとの学習指導要領の趣旨、その辺を再確認するということが大事かと思いますし、その一方で、やっぱり積み残しの課題があって、それはコンピテンシー・ベース、資質・能力ベースは決してコンテンツ・フリーではなかったということですね。だから、内容論のところの問い直しがやっぱり重要であって、そこで本質的な内容をまさに深く学んでいく、それによって資質・能力を育てていくということが根本であったわけですが、深めていく上で、内容の重点化・構造化、この辺が重要かと思いますし、そのためには長いスパンで育てていくということで、単元を基軸にして考えていくと。この辺りの、もともとの現行学習指導の中にその芽はあるわけですが、それをさらに徹底していく。さらに、概念ベースといいますか、重要な内容、中核的な内容を軸にした内容の重点化・構造化、それを基にしたより深い学び、そこにつなげていくような、そういった展開ができるといいのかなと思いながら見せていただきました。 以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、市川委員から御発言をお願いしたいと思います。
【市川委員】 私も、今、石井委員がおっしゃったように、かなり全体的に目配りして、配慮の行き届いた論点整理になっているなと思っています。
私のほうから、今回の論点整理の一つの特徴かと思っているんですけれども、結構、指導要領をつくってきた側としても反省があるわけですよね。コンセプトとしては非常によかったと思っているけれども、実際これが出来上がって7年たっても分かりにくいという声を非常によく聞きます。やはり用語の曖昧さがあったり、すごく難しい学術用語的なものが入ってきたり、言葉としては非常に大切で、美しい言葉なんですが、その意味するところが分からないと言われて、結局、分からないと学校現場のほうでも動けない。動くにしても非常に形骸的なもので、形だけ取り入れたようなものになってしまう。そういうことが実際、この7年の間に起こっているのではないかなと思います。
現場としても困っていると思いますし、これを質問された教育委員会も困っていると思いますし、教育委員会から質問が来たときにも、恐らく文科省も相当困るのではないかと思います。
今回はそういう用語の分かりにくいところをもっと分かりやすいものにしていこうということと、それからさらに、出た後も、いろんな出てきた質問などに対してホームページでQ&Aのようなものを公開したりして、分かりやすいものとして共有・浸透していく。周知徹底という言葉をやめて、共有・浸透、私はいい言葉だと思いますけれども、この趣旨が伝わるように努力していく必要があるということが盛り込まれているのは、すごく大事なことだと思っています。
それから、議論全体の流れとしては、私は最初から少し申し上げていたんですけれども、例えば、30年後どういう社会になるという未来像を語っていただいたのですが、そこから一足飛びに、今の学習指導要領をどうするかと、ここに来てしまったような気がして、やはり現状の教育の何が問題なのかということは、改めてこれからの議論でも取り上げていただきたいと思います。
学力の格差の問題であるとか、それから、学習意欲の低下の問題であるとか、これは今現実に起きている問題で、そういう問題に対してどういう対応を取っていく必要があるのか。それはやっぱり過去の分析から始まると思いますけれども、この50年くらい、どういうことを日本の教育がやってきて、その結果として、もちろんいい面がたくさんあるんですが、こういう問題も起こってきた。そういう問題を洗い出して、これはもう短期的・中期的にでもできるようなことは始めていくと。それから、さらに20年後、30年後の教育ということを、展望を持って進めていくというような議論をぜひこれからしていただければと思います。
もう1点は、細かい点です。10ページ目の下から3つ目のポツ、「既存の知識から大量のアウトプットを出すことが得意な生成AI」とあるんですが、この中の議論で、知識と情報は使い分けたほうがいいのではないかということがちょっとありました。知識というのは、やはり外の情報が取り込まれて、そして人間の中に構成されたものを指すというようなことにそのときなったかと思うんですが、それから言うと、ここは既存の知識というより、既存の情報かなという気はいたします。これは非常に細かい点ですが、御検討いただければと思います。
あとは、もう座長、事務局のほうで、ぜひおまとめいただければと思います。
ありがとうございました。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。
石井委員も市川委員もおっしゃっていましたけれども、20回に及ぶ議論を丁寧にくみ上げてつくり上げてくださって、適切な論点整理にまとめていただいていると思います。ありがとうございます。全体的に、これだけの内容にしては分量もコンパクトで精選されている印象もありまして、この量なら読んでいただけるのではないかという期待も持てたところでございます。
幾つか、その上でということで、修正ということではなく、評価したい点を申し上げたいと思います。
まず1点目は、お礼でございますけれども、せんだっての会議で、学校のそもそもの本質的な役割の記載をお願いしたい、特に包摂性であるとか社会的な公正の実現という点をぜひ踏まえていただきたいというお話をさせていただいたところ、4ページ目のところに、学校の本質的な役割の再認識というところを特出ししていただいたことにお礼を申し上げたいと思います。
もしかしましたら、学校の先生方は、この辺り、4ページ目ぐらいまで飛ばして読んでしまわれるかもしれないんですが、さはさりながら、もろもろの御判断に迷うときこそ、こうした原理原則に立ち返ってもろもろの御判断をいただくということが必要だと思いますので、こういう形で書いていただけましたことを改めてお礼を申し上げたいと思います。
2点目です。これも前回申し上げたことですけれども、学習指導要領をめぐるもろもろの文書の中に、こういう、今回はこれは論点整理ですので、学校現場や教育委員会の方々、いろいろ一緒に考えてくださる方々にボールをまず投げるということだと思うんですけれども、このボールを投げる際に、学校や現場の先生方の頑張りに全部依存しますというていで投げるのではなく、具体的な柱で言いますと、5や6のように、どういう条件整備をこちらでするのかということや、実際にその実装、浸透のプロセスにまで目配りを、それも柱を立てた形で明示されているという点は、一緒にちゃんとやっていきます、本気ですということも見えますし、非常に優れているところだと思います。
また、例えば、16ページの一番上の丸でしょうか、教育課程と環境整備が全体として機能するように、どちらか一方だけちゃんとうまくやっていれば全部よかったねというふうになるのではなく、教育課程も考えなければいけないけれども、同時に環境整備も考えて、全体として機能するようにということを幾つかの箇所でお書きいただいている、これは、政策というのは全体性を持っているものですので、この辺りもしっかり書いていただいているのもいいかと思います。
また、関連して、19ページのところに、上から4つ目に、教師一人一人が自らの課題に引きつけて当事者意識を持って理解できるようというところがございます。もし可能であればということですけれども、ここも、実はこういう自ら先生方が学んでいただくためには学びのリソースが必要で、そのためにも、働き方改革と指導運営体制の充実というものがあって下支えができてこそこれができるというところなので、場合によってはそれを書いていただくというのもあるかもしれません。これが2点目です。
そして、関連して、3点目ですけれども、これも今回かなり踏み込んで書いていただいたなと思っているところが、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程の、14ページの一番下の丸のところに、特に学校が編成する一つの教育課程では包摂が難しい多様な子供についても云々というところで、教育課程における取扱いの在り方だけではなく付随する環境整備の在り方も検討するべきと。こうした、なかなかオーダーメード的ではないと応えられない子供たちにしっかりと環境整備で応えていくということも、ちらっと一行で書いていますが、これ、相当踏み込んでくださった文章だと受け止めていますので、この辺りもぜひ、こういう提案のような形で本当に実現できたらという、ちょっとうれしい夢を描くような一文でした。
雑駁ですが、以上でございます。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】 ありがとうございました。本当に、ほかの委員の先生方の感想と同じように、非常にすばらしくまとめていただいたなと思っております。その上で、私のほうから最初に感想というか、大きなまとめみたいなコメントをさせていただきたいなと思っております。
私自身は、現行の学習指導要領は、特に資質・能力について大きな変化があって、コンテンツ・ベースからコンピテンシー・ベースで、深く学ぶということが書かれたこと、そして、主体的・対話的で深い学びという、そういう学習の仕方の考え方が具体的に示されたことということが大きいなと思っております。
続いて、その後に中教審答申、令和の答申において、個別最適と協働で、先ほど上書きという話がありましたが、これはどちらかというと子供一人一人を主語にする学校教育というメッセージから考えて、多様性を包摂するというか、多様性に対応するんだと。つまり、深く学ぶべきだし、幅広く様々な全ての子供に対応すべきという、深くと広くの両方をやるということが今求められているんだと。
このときに、こういったことは今急に言われたことなのかと。過去の50年、60年前の本を読んでも、やはり似たことは書かれておりますし、場合によっては、日本国憲法にもそれと似たことが書かれているという指摘も当時の本にございました。
こういうふうにして考えていくと、これはやはり実現が何十年たってもなかなか難しいことなのではないかというふうに考えるわけです。そのときに、私、今回は、このデジタル学習基盤と学習の基盤となる資質・能力に大きな期待をしております。やはり同じやり方では、これまで以上に高い資質・能力と、これまで以上に様々な子供たちに対応するというのは非常に難しいのではないかと思っていることです。
やはりこのデジタル学習基盤というのは、一人一人の子供の状況や求めに応じて対応できるということが私は非常にみそだと思っていて、大量の情報が来て学べないのではないのかという指摘もあるんですが、それはやはり一斉指導的で量が調整しにくいんだという、誰かが一方的に情報を送りつけるという考え方に基づけばそうかもしれませんが、それぞれの子供の状況や求めに応じて適切な量で、動的に情報が提供できる。教材や学習材が提供できる。その結果、いつでもどこでも何度でも繰り返し学習ができるような基盤が、一人一台コンピュータであるとか、コンピュータネットワークであるとか、デジタル教材等で今が完成しつつあるんだなというふうに思っています。
これは、この後、クラウドの進展とかAIの技術の進展も速いですから、指導要領が次に出るより前にも大きな変化があるでしょうし、その後、実施された後も大きな変化が起こるはずで、そういうことを前提に考えていくんだなというふうに思っていることがまず一つです。
2つ目は、もう一つの柱である学習の基盤となる資質・能力というのは、私はやっぱり非常に重要だと思っています。高い資質・能力を子供に育もうとか探究的な活動を行おうと考えれば、子供一人一人が主体的に学びを進めていかなければいけなくて、一人一人が独立した学び手なんだというふうに考えれば、やはり子供自身にそういう問題解決の方法であるとか学び方そのものを教えていかなければいけないと。
今、子供に委ねて学びが成立していないという状況の問題は、ICTに責任を求める方もいらっしゃいますけれども、私は、そもそもこういうような学習の基盤となる資質・能力が十分に備わっておらず、調べたりまとめたり伝えたり問題を解決したりするような力に欠けていることが多いのではないかというふうに思っております。こういったことは各教科においても共通の基盤として必要になると私は思っておりますので、むしろこれが特出しでしっかり指導されたならば、各教科における探究的な学びについても一定程度進みがよくなるのではないかと思っております。
最後に、少し具体的な記述に対してのコメントですが、10ページの最初の丸のところ、4行目ぐらいからのところに、教具と文房具、ツールを使い分けてございます。まさに教具より文房具という言い方で私も納得はいたしますが、最近、ツールなのか、コンテンツなのか、区別がつかないことも増えています。昔からICTのものはツールとコンテンツを分けて考えてきましたが、実はツールのようでコンテンツのようなものが生まれているというのがやはり一般的な見方になっているかなと思います。
だからこそ、例えば、ハンディキャップをお持ちの方が、そのツールを用いることで、自分にとって分かりやすいコンテンツに変えるとか、ツールを用いて自分が欲しい情報にアクセスするからこそ、自分の求めに応じた情報が手に入るということで、この辺りの既存の文房具と既存の図書みたいな、そういう分け方の概念から、やはりデジタルトランスフォーメーションですから、それらが混ざって新しい概念も生まれつつあるなと思います。記述としては、後半にコンテンツの記述もありますので、これらが実は一体的につながっているんだというような見え方がすると、なお様々な子供に対応したいろいろな学校教育が行えるのではないかなというふうに思った次第です。
私からは以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
冒頭申し上げた御発言の順でいきますと、Zoomで参加されております戸ヶ﨑委員ということになりますけれども、戸ヶ﨑委員、御準備のほどよろしいでしょうか。発言お願いできればと思うんですが、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 議会中のため、そちらにお伺いできず、失礼いたします。
今まで委員の方々からお話あったように、広範な意見をしっかりとまとめていただいて、座長並びに事務局の方々、委員の方々に改めて敬意と感謝を申し上げたいと思います。
まずは感想ですけれども、2と3の部分で、学習指導要領をさらに発展・進化させる方向を盛り込みつつ、4から6で、時代や学校現場の状況を踏まえた新しい方向性というものも取り込んで、内容、バランスともに大変優れているのではないかなと思います。今後、この方向性に沿ってぜひ検討を深め、より具体化していっていただけることを願っています。
この「発展・進化の方向性」と「新しい方向性」は、決して相反するものではなくて、相互に補完して統合していくことで、メリットを最大化して、デメリットを最小限にすることができるようになるはずではないかと思います。一人一台端末を活用した柔軟な教育課程が、中核的な概念や方略によるさらなる構造化と相まって、児童生徒一人一人における深い意味理解、および学ぶ意味や社会との接続の明確化をもたらすよう立体的なシステムの構築につなげていってほしいなと思っているところであります。
また、5番で、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことが盛り込まれたということは非常に重要だと思いますけれども、これによって、結果として教科指導がファストフード化して、味つけに深みがなくなってしまうことですとか、好みに合わずに画一的で、いわゆる安価ですぐに食べられる、そういうようなものにならないように、十分に今後気をつけなければならないと思っています。
また、負担へ向き合うということは、質の高い授業づくりのためにこそであり、限られた授業時間の中で、本当に何をやるべきなのかということと向かい合って、学びの有意味性というものを重視していく、まさにその「真正な学び」の実現を目指していくことが何よりも大切だと思っています。
そのためには、まず教師自身が教育課程や授業をデザインするという、「教育課程や授業づくりのオーナーシップ」の感覚を持っていく必要があります。「子供が学ぶために私がいる」と本気で覚悟できて、また、子供観、教材観といった授業づくりの肝の部分に、オーナーシップの時間とスキルが費やせるようにしていく必要があると思っています。
そこで重要になるのが、これまでも議論されてきた、4の(2)にある裁量の拡大という部分だろうと思っています。教育課程に係る裁量が拡大して、教師一人一人がより裁量を生かした授業づくりができるようになることが非常に重要なことですけれども、それを実装するに当たって、学校がその裁量を使いこなせるようにしていくためには、教育委員会によるサポートが今後不可欠になってくるだろうと思っています。
単に裁量の幅を広げれば主体性が引き出せるわけでありませんし、子供と一緒で、手をかけないようにすれば主体性が高まるというものではなくて、指導すべきことはきちっと指導すべきだろうというふうに思っています。
カリキュラム・マネジメントの在り方に対する指導・助言とか、本時主義から単元主義への転換を行う授業研究に向けた積極的・継続的な指導など、こういったことは、教育委員会事務局としてまさに啐啄同時的な役割が一層問われてくるのはもう明らかです。
一方で、これも発言したかもしれませんけれども、指導主事が一人も配置されていない市町村というのが全国に23.3%あります。そういう自治体においては、やっぱり近隣自治体間での連携によって指導主事を共同配置することや、学校管理職経験者等を「指導主事に準ずる者」として配置するなどして、学校の指導運営体制を構築していくことが今後急務になるだろうと思っています。
また、指導主事が配置されていたとしても数人しかいないという自治体も多いですが、そうなると、指導業務より管理業務を優先せざるを得ないという傾向もあり、授業への指導・助言は手薄になってしまいがちです。さらに、全ての教科の指導主事が配置されている自治体というのはおおむね中核市以上の規模の自治体に限られるために、全国大多数の自治体においては、一部の指導主事は自分の専門外の教科を指導・助言せざるを得ない現状も抱えています。かつては、「指導主事一人で教師10人分ぐらいの効果がある」とよく言われていましたが、その指導主事の全体的なスキルやプレゼンスの低下も危惧されています。
現在、文科省では、小規模自治体の指導主事をつなぐ取組を昨年から開催していただいており、これに大変期待をしているところであります。そうした取組を発展させつつ、新たな教育課程の学校裁量を真に生かすため、学校の自走に伴走して、適時適切な指導・助言のできる教育委員会の力量形成に向けた具体的な取組が急務であると思っています。教育委員会のスキルアップなくして、新学習指導要領の趣旨の定着はないのではないかと強く思っております。そのためにも、僭越ではありますけれども、教育課程課だけではなくて、教育委員会制度も所掌している初中企画課が一体となって、この点も視野に入れた展開に期待してやみません。
最後、もう一点、ちょっと短めに申し上げますが、研究開発学校の充実等についてということで、話題になっているわけですが、授業時数などの学校裁量を存分に生かして、カリキュラム・メイキングの好事例を創出したり、教科等横断的な学びや個別最適な学びの具体的な実践ビジョンなどカリキュラム・マネジメント推進・強化のロールモデルを示したりする研究開発学校の拡充および成果等の横展開に期待します。全国の自治体や学校へ勇気や元気を与えるメッセージ性を高めたり、家庭や地域にも学校の目指す教育目標や本制度を活用する狙いを伝えたりしながら、教育課程等を積極的に公表していただきたいと思っています。
教育課程の編成に関して、より多様で高次な教育課程の編成に向けて、各学校が自律的、可変的、動的に考えて運営して見直していく、そういう自走のサイクルを実現していくためには、やはり特例的な取組を今後も推奨していく必要があると思います。その際に、自治体内で尖った一校を創るのではなくて、教育委員会がイニシアチブを取って、域内の学校管理職等の様々な知見を取り入れながら、教育課程創出のプロセスを逐次共有できるようにしていくことが大切なのかなと考えております。
以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、冨士原委員、御発言お願いいたします。
【冨士原委員】 冒頭部分はこれまでの委員の先生方の御発言に重なることになりますけれども、私、こういう委員会に出るのは初めてですが、こういう形でまとまるんだということに、ある意味、大変驚きとともに、ここまでまとめて練り上げてくださいました事務局の皆様の御尽力に、本当に私も敬意を表したいと思います。委員の先生方からの様々な御意見に私自身勉強になるところもございまして、加えていただいて、改めて本当に光栄でした。
思い起こせば、当日は欠席していたんですが、最初の回の方に、どういった点を論点として話し合いたいかということを出したときに、私は、ギャップを埋めるという、特に格差と、あと多様な子供が増えているということで、そういうギャップを埋めるための指導要領の在り方を考えたいみたいなことを、たしか希望として提出した記憶がございます。
その点で言いますと、今回、冒頭のほうに、子供一人一人への包摂性を高めるという、この包摂性というところに大変目配せをされているというところは大変うれしいと思っております。
私自身、すごくそういうギャップというところを格差とか多様な子供だけにすごく絞って考えていたんですけれども、こうやって全体を今回通して改めてこの論点整理(案)を見ますと、実はやっぱり様々なギャップについて議論してきたんだなということを改めて感じました。リアルとデジタルということのギャップとか、指導要領と令和答申のギャップとか、あるいは、学習環境と学習指導要領のギャップとか、そういうことについて様々議論してきたんだなということが改めて分かりましたし、そういうことを書き込んでいるということが、すごいなと改めて思っているところです。
大局的に言えば、実のところ、やっぱり現場と指導要領の間のギャップを埋めるにはどうしたらいいのかということが今回の検討会の大きな目的だったんだなということを、今回の取りまとめを読んですごく感じさせていただきました。これを基に、本当にこれから様々なギャップを埋める議論が深まることを大変期待しております。
以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
では、続きまして、秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】 委員の皆様、それから、事務局の皆様、ここまできちっとおまとめいただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。様々な観点からの委員の意見がどう着地点を持つのかというところで、これまでの論点整理にはなかったまとめ方になっているのではないかと思います。
現行の学習指導要領改訂以降に、今委員の皆様も言われましたように、令和の日本型の学校教育で、コロナによってGIGAスクールが実施され、そして、令和の日本型の学校教育に併せて、新しい学びという、教師の在り方も検討され、学習指導要領と教師の側の両輪が同時に回る形の体制の中で、より教育の質の向上のための議論がなされてきたと思っています。
その意味で、先ほどからもありましたが、これからの社会と同時に、これからの学校教育、公教育がどういう責任を果たすのかということが、ここに最初に明確に書かれています。また、そこに新たにこども基本法も入りましたので、子供が学ぶ権利を全ての子供が持っているという理念が保障されるとして書き込んでいただいていることをありがたく思っています。
その上で、私は現行の学習指導要領改訂時の委員ではなかったので、逆に、現行指導要領では「熟成」と石井委員が言われるように、何を明確にしたらいいのかということが、まだ何が曖昧かということを改めて明確にできた点、それをより深掘りをこれからしていくというところと、もう一つは、実施上何をしたらいいのかというところを今回新たに明確にできた点、特に教科書であったり、教育委員会制度のこともそうですけれども、要するに、教育課程を行っていく上で、それは教育課程を変えるだけのことではない、公教育のシステム全体は何にどう関わっているのか、それ全体がやはりよりよくなっていくためには何が必要かということが、このまとめをよく読むことによって分かりますし、それから、保護者等の参画も含め、そうした全体像がこの中に出ていると思って私は読ませていただきました。
その意味で、これが単純に、1ページ目の終わりにありますように、基本資料、基礎的な資料としても活用されるでしょうけれども、先ほどからお話がありましたように、その間にいろいろな対話が行われて、やっぱりこれが論点のまとめであると同時に、論点を一般の社会の人に触発していく基本になって、いろいろな御意見の声を入れながら、今後の在り方の実際が検討されていくことが重要なことだと思っています。
特に私自身は丁寧に議論をしていただきたいなと思うのは、教育課程の中でカリキュラム・マネジメントという画期的な発想が入ったにもかかわらず、十分にまだ理解がされていない。それから、柔軟な在り方ということで、学校の授業時数の柔軟性とか子供にあわせた柔軟性という、その柔軟ということの幅であったり、それは具体的に何をどのようにしていくことかということの議論は、ここでは必ずしも十二分な時間を割いてできなかったと思います。そこを詰めていかないと、やはり今後実現していくために、この論点であったりをより深掘りしていくためには、まだまだ議論が必要なところなのではないだろうかとも感じているところであります。
しかしながら、このように一つ、14回を経てまとまったことによって、今後への一歩が出てきたということを大変ありがたく思っているというところでございます。
以上になります。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
それぞれ委員の方から一巡目ということで御発言いただきましたけれども、私も発言に加えさせていただければと思いますけれども、論点整理に従いまして、3つ申し上げさせていただきたいと思います。
まず1つ目なんですけども、6ページのところに、既に御指摘も委員の方からあったかと思いますけれども、曖昧な用語とか、多義的用語とか、誤解を招く用語とかということで、学習指導要領の改訂、そして、現場に伝えていく、それについての一連の提起の仕方等々というのは、指摘されたような、どうしてもこういう用語とまつわらざるを得ないようなことというので、既にこれは委員の方からもこの間、様々な御指摘があったかと思います。そういう点では、これから審議が始まるに当たって、この点についてはぜひ詰めていただいた議論をお願いしたいと思うんですけれども、その点について、今回の学習指導の関わりでいきますと、既に御指摘がありましたように、現場のお立場からするととても難しいということが既に御指摘されているとおりだと思うんですが、難しいという意味は、恐らくいろんな意味がそこには込められているのではないかと思いますし、一つは、用いられる言葉ということで、現場サイドから日常的に使われている言葉とは随分距離の遠いものが学習指導要領に込められた、あるいは、その解説書に込められて伝えられるというようなことですけれども。
この辺りのところをどのように捉えていくのかどうなのかということですけれども、一つは、学習指導要領の一つの使命というのは、時代の変化に応じて教育内容を改編していくということで、ある意味でいうと、常に時代の変化と向き合っていくという、そして、そこで生成された新しい概念ですとか、そういうものを学習指導要領に込めていくというふうな、こういう側面はあるかと思うんですけども。そのことは、反面、今申し上げたような、ある意味で言うと、それまでとは分かりづらいとかというふうなことで出てくると思うし、とりわけ、それが学問を背景にした新しい分野ということがそこに加わってくるという、インターディシプリナリーなんていう言い方は随分昔からありますけれども、学習指導要領そのものがそういう様々な分野の研究的知見とか、そういうものを背景にしながらというと、その学習指導の難しさの中には、常にそういうものを必然として抱え込んでいるというふうなことであるわけです。
その辺りのところどういうふうにしていくのかどうなのか、システムとしてですとか、仕組みとしてですとかということを議論として深めていただくというふうなことですので、解説書を作られるとか、大きな解説書とかという御提案もあって、それもまた一つではないかと思うんですけれども、今言ったような、こういう新たに加わってくる、そういう学問的な背景も含めて加わってくるということに、どう向き合いながら、受け止めながら、それを現場とどう対応していくかどうか、先ほどありました、現場とこういう発信していく立場の関係をどう埋めていくかどうかという辺りのところについては、いろんな知恵とか工夫とか、そういうものというのが必要だと思いますし、この間そういう御提言が委員の中からおありだったのではないかと思うんですけれども、それをぜひ受け止めていただいて、深めていただければということをお願いしたいということがまず一つあります。
2つ目につきましては、論点整理の11ページのところなんですが、そこに取り上げられているのが教育方法の取扱いということなんですけれども、学習指導要領において教育方法をどういう形で位置づけ扱っていくかという、このこともまたとても大切なテーマではないかと思うんですけれども、今回こういう形で論点というんでしょうか、それをこのように挙げたということは、とても重要な提起ではないかと思っておりまして、これをぜひ、そういう点で、これからの検討の過程の中に深めていただき、議論を深めていただいて成案を得る、その方向ということですけれども。
ある意味で言うと、方法の扱いというのは年来の課題だったかというふうにも、常なる課題であったわけですけれども、ここにさらにデジタルというそれが加わってきたということが、今日的、新しい事態ということであって、デジタルに向かい合うということというのは、このテーマとある意味で言うと避けられないような状況になってきているわけですし、あるいは、これまでの議論の仕方でいいのかどうなのかも含めて、検討が求められている、そういう点で、この11ページの教育方法の取扱いというのはとても大切な論点整理の提起ではないかと受け止めておりますので、これをさらに深めていただくことを御期待申し上げたいなと思います。
3点目、もう一つ、これが最後でありますけれども、19ページのところでありまして、それは、学習指導要領改訂のプロセスですとか、学校ですとか教育委員会への伝え方という部分に当たる部分で、4つ目の丸のところですけれども、そこに、改訂後においても、先生方お一人お一人が自らの課題に引きつけて当事者意識を持って云々ということがそこのところで書かれている、まさにそういうことだと思うんですけれども。
ただ、ここのところで1点、学習指導要領の改訂後ということよりも、むしろまさに今なのではないかなという、現在進行形というんでしょう、要するに、学習指導要領の改訂というのは、改訂を重ねることによって、伝える側と現場と一つの形が出来上がっているとすると、その一つというのは、現場の立場からすると、出来上がったものを待つというんでしょうか、待って、出来上がったものについてという形が、これまでの、まさにそういう意味で言うと改訂後のそれだったと思うんですけれども、まさに私は、この次の姿形を見せるまでのこの間こそ、実はとても大切なのではないかなと思い、それ自体が次の改訂の一つの姿としてあるべきなのではないかということなんですけれども。
それは既に御指摘の現行の学習指導要領の実践というんでしょうか、取組を実践を通して発信していただくということが、次へのステップとか飛躍ということになるのではないかと思いますので、ですから、次の学習指導要領のありようを展開するということは、実は、現場のお立場の方が、その実践を通すことによってという意味においては、既に、そういう意味において大きな存在感と役割があって、また、そういうところに期待する部分が非常にあるのではないかということで。
ですから、これまでそういう形での繰り返し行ってきた学習指導要領の発信と受け止めと改訂という、その辺りのところで、次のところまでの今からのそれのというときに、この論点整理(案)自体が、実は大きなその間の提起するものを持っているのではないかということで、これを、先ほども既に御発言がありましたけれども、論点整理が広く共有されていくということが、社会的にもとても大切なことなのではないかなと思います。
もちろん、専門筋の人が深めていただくというのも言うまでもないんですけれども、多くの方々にこれを受け止めていただく、共有していただくという意味において、この論点整理自体が広く社会的に共有されるということも、ある程度社会に開かれた教育課程ということとつながりを持つものでもまたあるのではないかと思うわけですけれども。
ということで、3つ申し上げさせていただきましたということであります。
ということで、先ほど冒頭申し上げましたように、それぞれ委員の方から、私を含めまして一巡ということで御発言いただきましたけれども、もう一回御発言をいただいて、それでということでこの会を閉じさせていただくというんでしょうか、そういう進め方をさせていただきたいと思いますので、先ほど御発言いただいたことに加えてということでも結構ですし、あるいは、それぞれの委員の方からの御発言を耳にした上でということでも結構ですし、それぞれ、限られた時間でありますけれども、御発言をいただいてということで、発言の順につきましては、先ほどと同じ順番でということで、石井委員からお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【石井委員】 ほかの委員の皆様の発言にもありましたけれども、この会は参加するたびに非常に私自身が勉強になる会でありまして、いつでも私はたくさんメモを取るんですけども、今日もたくさんメモを取って、それで大変学ばせていただいているところがあるわけです。改めてそうやってほかの委員の先生方のお話を伺いながら感じましたが、これまでの学習指導要領であるとか、それをめぐる議論とは少し違った視点が、今回のこの論点整理(案)にはあるのかなと思います。
それは、私、カリキュラム研究を専門にやっているんですけれども、その基本的なところがしっかりと実装されたような内容になっていると。つまり、これまで質を追求するということがある一方で、先ほど包摂性とありましたが、教育改革の基本は、質と平等、あるいは公正、それの両全、統一的実現であるということですよね。
それで言いますと、成長と分配の問題とも関連するところでもありますが、子供たちの学びとして質を追求するということと、それから、この包摂性、この辺を両立可能な形でどう実現していくのか。これはとても重要な課題であり、かつ、そこが今回肝になってくるし、令和の日本型学校教育は、まさにそういう部分を、エクイティ(equity)の問題を提起しているというのが大きいのかなと思います。ですから、私自身は、オーセンティックとインクルーシブ、この辺を両立させ統一的に実現させていくということを言ったりするわけですけれども、この両方が統一的に実現される在り方を改めて探っていくということが大事かなと思います。
もう一つは、教育の質を追求していく、目標・内容の質を追求していくということが示されても、それは条件整備がなければ、やはり絵に描いた餅になる。特に子供に委ねるような、いわゆる進歩主義教育に近いようなカリキュラムを実装するといった場合には、これは間違いなく条件整備、特に教師への投資が不可欠である。この辺りが、この間、日本の議論においては、やっぱり十分でなかった。子供中心については委ねるみたいな形になってしまって、そうではなくて、むしろ教師への投資を、歴史的にも、多くの進歩主義教育はそこを大事にしてきたわけですね。
そういう部分で言いますと、条件整備、特にその場合に教師への投資というか、様々な環境整備を進めていく。そこが、教育課程に関わるこの文章の中に盛り込まれたということはかなり重要なことでありますし、まさに先ほど貞広委員もおっしゃったように、事務局の様々な覚悟であるとか、そういったものを感じるところでもあります。
そのときに、この条件整備の在り方としても、システムによって学校や教師の仕事を代替していく、それで様々な学校教育の機能を分散的に、いろんな学びの場によって担っていくということも重要ですが、やはりそのセンターにあるのは学校であろうということですよね。そうしたときに、どこに投資していくのかということで言えば、やっぱり教師への投資。だから、そこに手厚くということがやっぱりすごく大事になってくるかなと。そうすると、システム構築といったときも、代替とか分散していくということももちろん重要ですが、先生方を励ましていくような、そういうシステムの在り方ということが大事になってくると思います。そうすると、この論点整理(案)の中でも、実は随所に教師の力量形成に資するという言葉が入っているわけなんですね。
日本の文化といったものもそうなんですが、全然違う話になるかもしれませんが、先日、生け花体験ということをやることがありまして、そこでちょっと勉強したんです。西洋のフラワーアレンジメントは、それ自体が完成形として作る。花束ですね。しかし、生花というのは、その後、変化することを前提にして作るわけです。ですから、空間とか余白的なものが結構大事になるんですよね。その後、つぼみが花になるとか、そういったものも計算して作っているということです。まさにこれは幼児教育においても実のなる木を植えると同じ発想で、それが季節の移ろいの中で変化していくということが、様々な学びの機会を生み出している。まさにそういう動的なシステム設計ということが重要になってきて、それで言いますと、まさにこのカリキュラムというのは、教師が育つということと、それとセットで考えていくということが大事なのかなと思います。
状況は変化していきます。局面は変わっていきます。ですから、そういったものを考えながら、まさにカリキュラムを実装していく上での一番中核になる先生方を育てていくことによって、もちろん働き方改革によって余裕を生み出していくということも重要でありますけれども、その一方で、育てていくことによって余裕が生まれるということもあります。この両方をしっかりと設計していかないと、それこそ先生方の余裕は実質的に生まれてこないと。ですから、教師の育ちと環境の変化から生まれてくるまさにオーナーシップ、現場のオーナーシップといったものが、これがカリキュラム・オーバーロード、そういったものにも好循環を生み出していくというふうなことを思いますし、さらに、まさにこの質の追求を実質的に担っていく、元気のある学校文化、学校現場につながっていく、そういう好循環がうまく生まれてくるといいのかなと思っています。
その点において、教育委員会の伴走型支援の在り方も重要であると。伴走とは、ただ横についているとか見守るというだけではなくて、同じ問題を共に一緒に考えていく、その中で言うべきことは言うというふうな、私は共同注視関係という言葉を使いますけれども、同じものを共に見るという三角形の関係性がとても大事、それで共に学び合うということですよね。だから、改めて先生方とか現場をしっかり支えていく、そういう体制づくりというのが併せてできてくるといいのかなと思ったりしました。
以上です。ありがとうございます。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
市川委員、お願いいたします。
【市川委員】 これは今後議論していくときに、ぜひ念頭に置いていただければというようなお願いです。学習指導要領というのをつくるということが取りあえず作業目標としてあるんだと思いますけれども、学習指導要領には非常に崇高なことが書かれていて、それは日本の子供たちにどんな学びをしてほしいか、どんな育ちをしてほしいかというような理念が書かれているわけですね。ただ、子供の学びとか育ちというのは学校だけが担うものではないということは、私は大事なことで、むしろこの中教審に関わるようになって、あるいは、学校に関わるようになって、思っています。
やっぱり限界があります。ですから、そのためには、これは学習環境の一環として、2つのことを申し上げたいんですけれども、一つは、学校以外のリソース、地域のいろんな教育であるとか、あるいは、大学もそれに協力するとか、もちろん民間もあります。NPOなどもたくさんある。そういうところと合わせての学習環境の中で子供は育っていくので、そちらとの連携をどう取るかということです。
今回、並行して文科省の中でも、特定分野に特異な才能を持った子供たち、これをどうやって支援していくかという議論もありました。私もその中で加わりましたけれども、やはり学校だけでできることではとてもないと。個別最適な学びとかを実現しようとしたら、学校だけで何とかやってくださいといっても、私はとてもできるはずはないだろうと思います。子供一人一人が自分の思いに沿った学習をしたいとなったら、学校という組織とか学校の先生というスタッフだけでは限界があると。そのためには、社会のほかのリソースとどうつながるかということも念頭に置きながら、子供の学習環境をつくっていくという視点は不可欠だろうと思います。
これはリソースの活用ということで、どちらかというとポジティブな部分なんですが、ネガティブな部分というのもあるわけで、子供たちの学習環境として、例えば、大学受験であるとか、最近は、首都圏であれば中学受験であるとか、こういうことが社会的なニーズとしてもあると。今回、社会的なニーズということを入れていただきましたけれども、それは社会的ニーズに必ずしも合わせればいいというのではなくて、社会的ニーズのほうにちょっと問題がある場合もあります。日本のそういう社会的ニーズというのがかなりひずんでいるという場合もありますが、でも、そういうニーズがあることは確かですね。
その中で、学校教育だけが指導要領を基に非常に理想的な像を描いても、かえって子供や保護者は大変な思いをするということにもなりかねないわけです。例えば、先ほど首都圏と言いましたけれども、これからの学校で探究がどんどん入ってくる、私は結構なことだと思います。やはり習得・活用に加えて、探究ということがニーズとしてはあったけれども、なかなか入ってこなかった。これが今回、ICTのサポートということもあって、かなり大きく入ってくる。学校の授業も変わっていくというのはいいと思います。
すると、中にはというか、少なくない保護者や子供たちは、これは学校で行っているととても中学受験、大学受験には適応できないということになって、ダブルスクール状態になるというわけですね。そうなると、学校では6時間、それは学校のカリキュラムで学ぶ。それから塾に行って3時間、合計9時間というのが例えば実質的な子供たちのカリキュラムになっていて、その中で学んでいくことになります。
これは子供たちにとっては相当負担ですし、また、そのカリキュラム、実質カリキュラムの中での子供たちの学びとか育ちというのが、本当に指導要領が狙っているようなものになっているのかどうかというと、ならないかもしれないんですね。かえってマイナスの面というのもあるかもしれない。ですから、学校だけが指導要領に沿って理想的な教育をつくればいいとも言えない。でも、学校は理想を追求したい。
そのときに、では、社会全体としてはどういう学習環境をつくっていくことができるのかという視点は、やはり議論のときに必要になってくるのではないかと思います。それはぜひ今後の議論に期待したいと思います。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】 ありがとうございます。
先ほど天笠座長が最後におっしゃった現場との対話の問題です。改訂前もというお話が座長からありましたけれども、私は、当然改訂前も、この論点整理の後にそういう対話があるという想定で一巡目の発言で、ボールを投げるというふうに申し上げました。ぜひそういう対話が成立すればいいなと思っています。
特に、いろいろな御反応をいただけるかと思うんですけれども、そうした反応は今後の検討プロセスの中では宝の山になってくると思います。対話自体に意味があるというのも、当事者性を持っていただくというのもあると思いますけれども、文科省さんの側からすると、そこが宝の山ということで、それはそのまま受け止める云々ということもさることながら、今、学校の現場の先生たちがやりたくてもできないとか、変わりたくても変われない諸要因がそこのコメント等や反応の中に立ち現れてくるのではないかと思っていますので、この部分を精査することによって、学習指導要領の本体自体だけではなく、または条件整備やその実装の段階の検討に結びつけていただきたいなと思っています。
2点目は、本当に個人的な意見なんですが、4ページ目の学校の本質的な役割の再認識というところの2つ目のポツのこの文章、とてもいいなと思っていて、多様な他者に出会い、共感やあつれきの中で自己を知り、高めるとともに、他者とどのように共存するかという、社会を形成していく上での不可欠な人間関係のリアルな関係づくりを子供たち相互の関係で学ぶという、この一文は、本当に日本の学校の今後の行く末も含めて、これまでいいものも含めて、つないでいくというのはとてもいい文だなと思っています。
いろいろ委員の方々の御報告多々あって、本当にとても勉強になる会だったんですけど、その中でも、特に、私、第3回の安宅先生の御報告の中で、もろもろのものがデジタルになり、AIも出てきて、一体何が一番最後に重要なものだと残りますかという御質問に、自由で多様な実体験が残りますとおっしゃっていたのが、もうとても印象的です。やはり何らかの形で自由で多様で、かつ、恐らく、実体験ですから、リアル、人間関係も含めて、このリアルをどう子供たちの育ちの中で確保していけるのかということの重要性というものが再度認識されると思いつつ、ここの文章、とてもいい文だなと思って、何か上から目線みたいですか、そういうつもりではないんですけれど、拝見しました。
どうもありがとうございます。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 よろしくお願いします。
学習指導要領が難しいであるとか、現場と指導要領のギャップということが話題かなというふうに思います。ただ、実際に私も全国いろいろな学校の先生とお話ししてみると、全国的にはすごく理解に差があるなという感じがしています。ある地域では、もうみんな指導主事なんじゃないのみたいな教諭の先生の集まりみたいなところもありますし、全く逆のところもございます。いずれにしても、どうしてそんなにお詳しいのかといったら、やはり勉強されていますし、改訂プロセスをすごく追いかけていて、やはりこういう会議と共に学んでいらっしゃる方、そこは伝統的に、その地域の伝統みたいになっているところがとてもあるなと思います。
先ほど天笠先生もおっしゃったとおり、やはり学習指導要領というのは最新の理論や考え方というのが入りがちですから、私は、何も勉強していなければ幾らプロの先生であっても、一生懸命学習指導要領だけを読んでも理解はやっぱり相当困難なんだというふうに思います。この10年間の新しくアップデートされた理論や考え方みたいなことを理解していることを前提に学習指導要領を書くのか、一方、それが理解されていないことを前提に書けば、当然分厚い解説書みたいにどんどんならざるを得ないですし、この辺りは、もちろん分かりやすく書くという努力は怠ってはいけないものの、先生方との関係で書きぶりというのは変わっていくんだなというふうに思っています。
だから、そうすると、すぐ研修という話になってしまうんですけども、研修も、今までの集合研修を単にビデオに置き換えて1時間も2時間も、それを4コマも5コマもやって、1日中やるような研修をオンライン研修と考えているところもありますし、1日数分ぐらいのビデオに通過テストみたいなものを入れたものを毎日やってみたり、そのビデオを基に議論してみるとか、毎日のようにチャットを通して少しずつ、研修とは先生方は思っていないんですけど、自分たちの考えを披露していくことを繰り返しながら前に進んでいっている。そういう先生がいらっしゃる学校は、3か月に一遍ぐらい行く学校ですけど、劇的に変わっている様子が分かったり、今回のGIGAの環境で研修の考え方も随分変わってきたなと思っています。
もう一つですが、教育課程の柔軟さとか時数は柔軟にしたほうがいいとか、評価も多彩で多様でとか、要は、子供の学び方の多様性もすごく重要ですし、先生方も様々な御事情を抱えながら働いていらっしゃいますから、先生の働き方の柔軟さも、教育課程の会議ではないかもしれませんが、非常に求められていて、こういうことの柔軟と柔軟が混ざっていくと、これまでの時数計算の仕方とか処理の仕方ではやっぱり難しくて、やはり英国みたいなスクールマネジメントシステムみたいなものが要求されるんだなと。これは私の仕事だと思いますが、そういった時数や単位数、先生や子供を柔軟に扱えるようにする、さらに例えば、ギフテッドの子向けに外部講師を呼んで指導するような、そういう柔軟な学校マネジメントをしていく。こうした場合、情報システムがない限り、非常に実現が難しいんだなということを、先生方のお話を聞きながら考えました。
いずれにしましても、私、デジタルの話ばっかりで、その役割で来ていると思いますが、デジタルによって最近2つ統計の調査を聞いて驚いたものがありまして、一つは、シチズンが行ったビジネスパーソンに対する調査で、1週間の読書時間(電子書籍を含む)の合計はどれくらいですかというふうに聞いたアンケートの調査があるんですけれども、これが衝撃的に、本年度47.8%が読まないというふうに回答したらしく、25年前、50年前は10%、いや、10%弱なんですけど、今はそれぐらい本を読まない人がビジネスパーソンで増えている。
もう一つ、新聞一世帯当たりの購読部数というものが、昨年度の段階で0.49ということで、東京都なんかは0.38と。2000年には1を超えていたんですけど、急速に新聞を購読しない家庭が増えている。ほぼ半分ぐらいになってしまうと、新聞離れとか読書離れといっても、もはやそういうレベルではなく、この影響は非常にデジタルが大きいと思いますので、これについて適切に向き合う方法を、発達段階に応じて適切に向き合う方法をやはり考えなくてはならないんだなということを感じたところです。
私からは以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
戸ヶ﨑委員、いらっしゃいますか。どうぞ、御発言をお願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 一つは、これまで伺っているところ、多様性とか包摂性というような言葉が登場してきているので、可能であれば大きな柱の4番の中に、D&Iの視点からインクルーシブ教育あるいはインクルーシブ教育システムの文言が入るといいのかなと感じました。
もう一つは、今日まで15回の会議の中で一度も話題に上らなかったことで、最後に一つ申し上げておきたいなと思っているのが、先ほど天笠先生のほうからも現在が大事というようなお話がありましたけれども、学習指導要領の特例を定める件の期間、いわゆる移行期間の在り方について、私は現場感覚から疑問を抱いていました。
というのは、この移行期間の趣旨、いわゆる基本方針というのは、新たな学習指導要領の円滑な移行ができるよう内容を一部加えていく等の特例を設けるとともに、指導内容の移行がないなど教科書の対応を要しない場合などは、積極的に新学習指導要領による取組が先行的にできることが推奨されていますが、現実は2年間の移行期間は、教科書会社等が出されている一覧表に基づいて、教育委員会や学校が、漏れなく「こなしていく」ことにどうしても傾注してしまっています。示された授業時数とコンテンツ・ベースの移行のみに終始していると言っても、正直過言ではないだろうと思います。特に中学校の場合には入試の出題範囲に影響を及ぼすため、補助教材等を含めて、内容面に神経を使ってしまっています。
実は、この移行期間の取組こそが非常に重要で、コンテンツ・ベースからコンピテンシー・ベースの考え方に基づいていくと、学校現場の現状の課題分析とその解決、さらには、これまで話題になったビッグアイデアを生かした授業展開ができるカリキュラム・マネジメントの在り方の検討など、カリキュラムの柔軟性と学校の自律的な権限で教科等横断的な学びなどをつくり出していく、教育課程づくり、授業づくりを行う絶好のチャンスとして、2年間を意識する必要があると思います。
というのは、新学習指導要領が全面実施してしまってから考えるのは困難を伴うのはもう明らかです。趣旨が校門から教室に入っていくことが大事ですので、そのための鍵を握っている2年間であるということをしっかりと認識して、今からそのことを視野に入れた移行期間の方策を考えていく必要があり、同じ轍を踏むようなことがあってはいけないなと思っているところであります。
以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
冨士原委員、お願いいたします。
【冨士原委員】 失礼いたします。委員の方々の意見を聞いていて、またいろいろ考えたいことが出てきたという感じなんですけれども、簡単に収めたいと思います。
秋田委員のほうから、やはり今回の指導要領の大きな特徴として、カリキュラム・マネジメントという言葉が入ったということを御指摘いただきましたが、17ページで、学校は計画を立てて遵守することに注力してしまって、柔軟に見直しながら実施していくことに課題があるという、そういう分析の取りまとめがなされていまして、私もそのとおりだと思っているところです。これを指導要領に置き換えてみたらどうだろうかということを、天笠座長のコメントからちょっと考えました。
やっぱり指導要領ができてしまいますと、ある意味、現場にとっては計画なわけですけれども、とにかくそれをこなすことに注力するというだけに終わってしまいがちで、対応できないというような問題が出てくるなんていうことがあると思います。
一番最後の改訂後にこれをやりなさいという、ある意味計画としてドンと示すことしか指導要領はできないのかもしれないですけれども、このたびのような有識者検討会の議論などが、ぜひ現場の先生方に触れていただけると、この次の改訂に向けてのプロセスの議論、例えば、市川委員のほうから、前回の指導要領で評価のところで反省があるとか、そういう言葉が載っているということを知ることだけでも、現場の先生方は、評価の在り方はこれからどういうふうに変わっていくか注視していこうとか、いろいろな動向を勉強してみようとか、そういうきっかけにもなるのだろうと思います。
そういう意味では、指導要領の性格上、かなり難しいこともあるかもしれないのですが、やはりこうした改訂のプロセスというのを、特に現場の先生が今悩んでいるところなどで、何らかの形で伝えていく仕組みがあるといいのかなということを本日、痛感いたしました。
以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】 ありがとうございます。
皆さんのお話を伺いながら、あと、私自身の反省もあります。例えば、やっぱり発達的に幼小中高というところで、私は義務教育制度の在り方のワーキングに出ていましたので、義務教育の在り方がこれからどうあったらいいかということと、それから、例えば、高校の教育課程とは違います。学習指導要領が、高校は現行の改訂で変わっているわけです。その辺りがどういうふうにそれぞれの学校種や教員に受け止められたのかというのは、もちろん調査等でのデータはあると思うんですけど、もう少し生でいろいろなところで、今回の論点だけではなくて、現場発で、高校の学習指導要領はどう受け止められているのかということと、義務段階はどう受け止められているのかというようなところを考えておく必要は、学校種によって変化の在り方が違っているので、必要なのではないかと思ったりするところです。
例えば、今度、小学校の教科担任制が3、4年生からという話がありまして、私は昨日まで学会に行っていて、ある会員の方から質問を受けたんですけれど、小学校でも教科担任制になっていくと、中学校と似ていって、教科の知識は強まっていくんですが、小学校のよさとしての一人の学級担任が全てを教えたり、それから、知・徳・体で日本型の教育を生かしていくのがどうなるんでしょうかという質問を受けたのですが、この方みたいな受け止めをしている人もいるんだということを、私自身は、別に教科担任制が入ることでそんなに大きく変わっていくわけではなくて、逆にそこの専門性をより深めることとチームで取り組むことが子供の教育の質を高めていくんですよと思いますとお話ししました。やっぱり学校の現場にいろんな情報が流れると、小学校は中学校と同じようなところで、特にそういう特化した教科では、教科担任だとどう変わるのか、日本の小学校教育のよさはどうなるんだろうと思う人もいる。それは、でも、実は、こういう今打っている別の政策、教育課程とは別の教員政策がどういうふうに学習指導要領を行っていくときに、影響を与えていくのかということも議論しなければならないだろうとは思いました。
私は、この夏に随分、いわゆる僻地とか今後統廃合になるという学校現場の授業研にたまたま入れていただくことがありました。やっぱり本当に小規模で1学級が10人以下のようなところの授業の在り方と、それから、都市部で今後もまた人口集中するところであろうところでの学校での学習指導要領の実施運営の在り方というのはかなり違ってくると思います。ここにいるメンバーは、どちらかというと人口集中地域に詳しい人たちが多くて、やっぱり本当にこれからどうなるんだろうというのに、オンラインは便利ですから遠隔教育に使えますよねとか、そういう制度を変えればいいだけの話ではないので、学校体制そのものが地域によって変わっていく中で、学習指導要領の実施をどうしていくのかということも、今後、今回の論点には入れられていないんですけれど、考えていくことは、今後の公教育を維持しながら、質をどこの地域でも保障し高めていくためにはどうなのかということを考える必要はあると思っているところでございます。
以上です。
【天笠座長】 どうもありがとうございます。
今の秋田委員の御発言については、論点整理の15ページのところで学校段階間の連携・接続ということで記されていますので、次の議論のときには、ぜひ今の秋田委員の趣旨を踏まえた、そういう議論の進め方、あるいは取上げ方ということも、要するに、学校間の連携というのは、どうしても学習指導要領というのは学校ごとの検討が比較的多くエネルギーを注いできているというのがこれまでであったわけですけども、常に学校間のそれに目配せしながら学習指導要領の在り方を検討していただくというのをお願いしたいということで、その点についての論点整理については、こういう記し方を15ページでしているという辺りのところをまた受け止めて、生かしていただければというふうにも、今の秋田委員の御発言を踏まえまして受け止めた次第です。
ということで、委員の方からの発言はここまでということにさせていただきたいと思います。
今回も含めまして、この間、貴重な御意見をいただきましたことにつきまして、ありがとうございました。本論点整理(案)につきましては、骨子案の議論も踏まえ、事前に委員の皆様には御相談をさせていただいたということでもあります。さらに、本日も様々な御意見や御所見を承りました。
ということでありますけれども、論点整理(案)の基本的な内容については御了解をいただけるということでお諮りさせていただきたいと思いますけれども、皆様の御同意をいただければ、本日の御意見を踏まえさせていただきまして、事務局と相談しながら、必要に応じて内容を修正し、委員の皆様にも御確認いただいた上で、論点整理として確定したいと考えております。そして、その取りまとめにつきましては、私に一任いただければと思いますけども、いかがでありましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【天笠座長】 御了解いただいたということで受け止めさせていただきます。委員の方からも了解、どうもありがとうございました。
ということで、委員の皆様には、これまで15回にわたり、活発な意見の交換のほど、どうもありがとうございました。今回が会議の最後となりますので、座長の私から一言、もう挨拶ということよりもお礼を申し上げさせていただきたいと思いますし、また、それぞれの委員の方からの御発言というのがぜひ次の検討に生かされるように、よろしくお願いしたいと思います。
ということで、私のほうから、委員の皆様を代表しましてというか、御一緒にということで、望月初等中等教育局長から御挨拶をお願いできればと思いますので、よろしくお願いします。
【望月初等中等教育局長】 改めまして、本日を含めまして、令和4年12月から教育課程等に関する専門的な第一人者の先生方にお集まりいただきまして、濃密な御議論をいただきまして、どうもありがとうございました。
今、天笠座長からもございましたけれども、この教育課程に関する議論をすると、学校の在り方そのもの、あるいは、公教育の全体に関わることそのものということになります。本日の御意見でも、この論点整理の文言ということに全くとどまらず、これまでの経緯、あるいは、今の現行の学習指導要領に関することも含めまして、多角的な視点から幅広く、お時間があればもっともっとたくさんお聞きをして今後に生かしたい御意見がたくさんございましたけれども、議論を深めていただきました。どうもありがとうございました。
いずれ、そう遠からず、次の学習指導要領に関する議論も専門的に始まりますが、2年弱のこの論点整理自体も、たくさん御意見出ていましたけれども、これまでのプロセスの中で、本日も含めまして、多くの方が御拝聴いただきまして、学校現場の先生方もこういった議論を聞いていただいて、また、我々もそうですけれども、一人一人がまた自分自身、あるいは、先生方同士でのいろんな共有と、それからまた、学びというものを深める機会になっているのではないかと考えてございます。今回いただきました論点整理、今後の検討、それから現在の論点整理の共有ということも含めまして、自分としてもしっかり進めてまいりたいと思っております。
本日御欠席になっていらっしゃいます荒瀬先生、そして奈須先生も含めまして、2年弱、大変お世話になりました。また引き続き御指導、また御支援もいただきますようお願いを申し上げまして、一言、お礼の御挨拶に代えさせていただきます。
どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
【天笠座長】 どうもありがとうございました。
論点整理をここまでまとめ上げていただきました事務局の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。その上で、事務局を代表しましてということで今、望月局長に御挨拶いただいたということで、どうもありがとうございました。
それでは、本日の会議はここまでということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
―― 了 ――