今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会(第14回)議事録

1.日時

令和6年8月19日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 論点整理骨子案について
  2. その他

4.議事録

【天笠座長】  それでは、ただいまから第14回今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会を開催いたします。
 皆様、大変御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 会議に先立ちまして、事務局に異動がありましたので、御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【日向初等中等教育局審議官】  7月に着任いたしました初等中等教育担当審議官の日向と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  また、本日、不在としておりますが、初等中等教育局長に望月が着任しておりますので、どうぞよろしくお願いします。
【天笠座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、本有識者検討会では、前回まで合計13回にわたり議論を重ねてきました。これまでの議論を踏まえて、本日は論点整理(骨子案)について、皆様に議論いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 流れとしましては、骨子案の内容について、最初に事務局より説明をいただきます。その後、残りの時間、意見交換の時間といたしたいと思いますけれども、こういうふうな流れをさせていただければと思います。
 今日御出席いただいている委員の方、順次、私のほうから名簿に従いまして発言をお願いしますので、それぞれ御発言をお願いできればと思います。
 時間の関係もあるかと思うんですけれども、できましたら2巡ということでお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 ということで、まずは事務局のほうから説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  教育課程企画室長の栗山でございます。私のほうから御説明させていただきます。
 本有識者検討会は、令和4年11月から設置をされまして、これまで13回にわたり、ヒアリングなども行いながら御議論いただいてまいりました。本日お示ししている資料1、論点整理(骨子案)は、本有識者検討会におきます議論は中途の段階にございますものの、これまで委員の皆様の間で御議論されてきた内容を踏まえて論点整理の骨格をお示ししたものでございます。項目ごとに委員の皆様からの関連の御発表と、その簡単な要旨を記載しております。
 1ポツの「これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況」の部分につきましては、事実や現状認識に係る部分でございますため、委員の皆様からの御発表を踏まえて事務局にて記載をさせていただいておりますが、それ以外の項目につきましては、本日の御議論を踏まえて、さらに具体化させていただきたいと考えているところでございます。
 また、参考資料といたしまして、これまでの議論の検討経過を簡単にまとめたものを御用意しておりますので、御参考いただければと思っております。
 それでは、骨子案について御説明をさせていただければと思っております。
 まず一番上部でございますけれども、※として、この論点整理(骨子案)は、本有識者検討会における議論は中途の段階にあるものの、これまで、委員間で議論されてきた内容を踏まえ、作成したもの、ということを改めて記載をさせていただいてございます。
 また、目次でございます。1ポツとして、これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況とし、(1)これからの社会像、(2)現行学習指導要領の目指したものとその趣旨の実現状況、(3)現行指導要領の実施上の課題というふうにさせていただいております。先ほど申し上げましたように、この1ポツにつきましては、骨子案段階で、既に内容についても記載をさせていただいているところでございます。
 そして、2ポツは、これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力として、(1)学習指導要領における資質・能力の枠組み、(2)学習の基盤となる資質・能力、(3)学校におけるデジタル学習基盤の整備を踏まえた学びの在り方とさせていただいているところでございます。
 3ポツでございます。各教科等の目標・内容、方法、評価でございます。(1)として、資質・能力の育成に向けた効果的な目標・内容の構成方法、(2)として、学習評価の現状と育成すべき資質・能力を踏まえた今後の対応とさせていただいております。
 4ポツでございます。多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程とさせていただいております。(1)として、現行の「個に応じた指導」の記述と充実の在り方、(2)として、教育課程の柔軟性の在り方、(3)として、学校段階間の連携・接続の在り方とさせていただいております。
 5ポツとして、学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備とさせていただいております。(1)として、教育課程を実施する上での学校現場の過度な負担を防ぐための在り方、(2)として、教科書・教材の在り方、(3)として、カリキュラム・マネジメントの実態と今後の推進の在り方、(4)として、教育課程の円滑な実施に向けた学校への支援と環境整備とさせていただいております。
 最後に6ポツとして、学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開としております。(1)として、学習指導要領・解説等の形態、(2)として、学習指導要領の改訂プロセス、学校や教育委員会への浸透の在り方、(3)として、社会的ニーズとの整合性とさせていただいているところでございます。
 以上が目次としてお示しをさせていただいております。
 2ページ目にお進みいただければと存じます。
 1ポツの、これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況、(1)これからの社会像でございます。
 まず1つ目として、人口減少・少子高齢化や地球環境の有限性を踏まえた持続可能な社会づくりとさせていただき、具体的には、一人一人が可能性を開花させなければ国が立ち行かない状況、資源や環境の有限性を踏まえつつ、環境・福祉と経済を両立していく必要性、また、コミュニティ存続が現実問題となる中、地域におけるヒト・モノ・カネの循環や幸福・福祉(well-being)の向上も喫緊の課題。当事者意識を持った社会の創り手を育てる必要とさせていただいております。
 2つ目でございます。公正な社会における多様な子供たち一人一人の豊かで幸福な人生の実現とさせていただき、具体には、不登校児童生徒や特別支援教育の対象となる児童生徒、外国人児童生徒など、特異な才能を有する子供を含め、教育的支援を要する子供が増加し、子供たちの多様性が顕在化。そして、子供の貧困など、世帯の経済的困窮等を背景に教育や体験の機会に乏しく、様々な面で不利な状況に置かれてしまう傾向にある子供たちの存在。こうした多様な子供たちを学校教育の中で包摂し、一人一人の強みを伸ばしつつ、より良く資質・能力を育んでいくことにより、豊かで幸福な人生を送ることができるようにすることが重要とさせていただいております。
 3つ目として、グローバルな協働としております。グローバルな競争が進む中にあって、国内外で異なる価値観を持った人々と、協働による課題解決も求められる。一方、国際的な分断や対立等も鮮明となっており、インターネットやSNSを通じてアルゴリズムで選別された自分の好む情報のみを取得することになる現象、フィルターバブルやエコーチェンバーとさせていただきつつ、そうした現象がそうした分断や対立を加速化しているとの見方もあるとさせていただいております。
 4つ目として、生成AIの加速度的発展など変化の加速化・非連続化。具体には、生涯に亘って学び続ける資質・能力がこれまで以上に重要に。そして、テクノロジーと持続可能な社会の実現が重なる部分で価値を生み出せる社会へ。そして、既存の情報を整理・分析するだけであればAIのほうが有能。AIやデータを十全に使いこなすことは前提としつつ、豊かな人間性を育むこと、個々の情報の意味を理解し問題の本質を問うこと、課題を発見したり設定したりすることの重要性が高まる。そして、そうした中で得られる質の高い知識が社会をよりよい方向に革新していく重要な基礎や基盤となるとさせていただいております。
 そして、最後に、前回改訂時に2030年頃の未来として描いた社会像が想像以上のスピードで現実化。これを危機と捉える議論に正対しつつも、むしろ未来を切り拓く絶好のチャンスと考える必要。その際、非連続的な変化が予想される未来に向き合って教育の在り方を考えることと、学校の現在の課題に向き合って連続的な今を生きる子供たちのよりよい学びや幸福を確かなものにしていくことの両面を大事にする必要がある旨を記載させていただいているところでございます。これが(1)これからの社会像の関係でございます。
 関連する御発表として、第2回の広井氏、第3回の安宅氏の発表、また3ページでございますけれども、第5回の天笠座長の御発表を記載させて、言及させていただいております。
 (2)でございます。現行学習指導要領の目指したものとその趣旨の実現状況でございます。
 現行学習指導要領は、先ほど御説明した(1)のような時代状況を一定程度踏まえて策定されたものであり、以下のような前文と総則のコンセプトは優れており、現在においてもおおむね妥当との意見とさせていただいた上で、具体には、「生きる力」の理念や「習得・活用・探究」の学習過程に関する考え方。学力観を「内容」中心から「資質・能力」を基盤としたものへと拡張。「資質・能力」の育成に向けた授業改善の視点として「主体的・対話的で深い学び」を提起。深い学びの視点を契機に、知識相互の関連や概念形成に言及し「知識の質」の考え方を提起。各教科等の「見方・考え方」の提起により、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方を明らかにし、各教科等を学ぶ本質的な意義を明確化。「社会に開かれた教育課程」の理念により、社会の変化に目を向けて柔軟に受け止めつつ、求められる教育課程の在り方を不断に探究し続けることの重要性を提起。「カリキュラム・マネジメント」の考え方を打ち出し、カリキュラムを改善し続けることの意義とその方向性を明確化と記載させていただいております。
 次に、「主体的・対話的で深い学び」に取り組んだ児童生徒は、社会経済的背景が低い状況にあっても、各教科の正答率が高い、自己有用感が高いといった傾向。現場の授業改善に一定の効果が見られているが、知識の概念としての理解や、自分の考えや根拠等を説明するといった思考力・判断力・表現力等の育成には課題も見られるとの調査結果。PISA2022では、世界トップレベルの学力を維持し、社会経済文化的背景による学力の格差が最も小さい国の一つであるとの評価も受けているが、感染症等により再び休校になったときに自律的に学習を行う自信が低いといった状況も見られると記載させていただいているところでございます。
 関連する御発表として、第13回の冨士原委員、第13回の国立教育政策研究所教育課程研究センターによる発表を記載させていただいているところでございます。
 また、次のページになりますが、関連するデータとして、参考1として、PISA2022調査、参考2として、全国学力・学習状況調査の関係のデータについて御紹介をさせていただいております。
 次に、(3)でございます。現行学習指導要領の実施上の課題として、指摘されている課題として記載をさせていただきました。
 前回改訂による前文と総則の優れた趣旨の実現に向けた学校現場の積極的な取組により、授業改善に一定の効果をもたらした一方、地域や学校によって差があるなど、趣旨の浸透は道半ばであり、以下のような課題も指摘とさせていただき、具体には、新教育課程実施のタイミングがコロナ禍と重なり、「主体的・対話的で深い学び」の実践の妨げとなったのではないか。学習指導要領における記載に分かりにくい側面があることが趣旨の浸透の妨げになっているのではないか。例として、曖昧な用語、多義的な用語、誤解を招く用語とさせていただいております。前文や総則の理念を第2章の各教科の目標・内容や検定教科書においてさらに実質化していくことが必要ではないか。文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、学校という固定的経路での情報伝達や、指導資料を中心とした情報発信のみでは学習指導要領の趣旨やねらいが必ずしも十分に伝わらないのではないか。入試が必ずしも十分に変わっていない中で、授業改善の方向性と入試の出題傾向にズレが生じ、結果として教科書の内容も授業も変わりづらいのではないか。学習指導要領の趣旨やねらいが保護者や産業界などの社会的ニーズと整合している必要。その乖離が大きいと、学校が取組を実施しにくくなったり、公立学校離れを招いたりするなど、意図せざる結果を招きかねないのではないか。一方で、保護者や社会のニーズ自体に課題がある場合もあり得る点に留意が必要。次のページにまいりまして、教師の多忙化が学習指導要領の趣旨実現を阻害しているとともに、教育課程の実施に伴う負担感が大きいのではないかと記載させていただいているところでございます。
 関連する御発表として、第7回の戸ヶ﨑委員、第7回の貞広委員、同じく第7回の市川委員の御発表を記載させていただいております。また、再掲として、第13回の国立政策研究所による発表も記載させていただいているところでございます。
 ここまでが1ポツとして、具体の記載をさせていただいた部分でございます。
 ここからは、2ポツ以降に関しましては、骨組み、(1)から(3)といったところまではお示しをしておりますが、具体の内容については、関連する御発表のみを記させていただき、本日、さらに御議論を深めていただきたい部分でございます。
 2ポツのこれからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力。
 (1)学習指導要領における資質・能力の枠組みの部分でございますが、関連する御発表として、第12回の石井委員の御発表を記載させていただいているところでございます。
 次のページに行きまして、(2)として、学習の基盤となる資質・能力でございます。関連する御発表として、第10回の今井氏、第10回の藤森氏、また、同じく第10回の高橋委員による御発表について記載をさせていただいているところでございます。
 また、(3)として、学校におけるデジタル学習基盤の整備を踏まえた学びの在り方についてという項目を設けさせていただいております。関連する御発表としては、第12回の奈須座長代理の御発表、また、第10回の再掲でございますけれども、高橋委員の御発表について記載をさせていただいているところでございます。
 以上が2ポツの骨子でございます。
 3ポツでございますけれども、各教科等の目標・内容、方法、評価でございます。
 (1)として、資質・能力の育成に向けた効果的な目標・内容の構成方法とさせていただいているところでございます。関連する御発表といたしましては、再掲となりますが、第12回の石井委員の御発表、また、同じく第12回の奈須座長代理の御発表について記載をさせていただいております。また、第8回のOECD教育スキル局、東京学芸大学からの御発表についても記載させていただき、同じく第8回の国立教育政策研究所教育課程研究センター、また下村氏、福本氏からの御発表についても記載をさせていただいているところでございます。
 (2)として、学習評価の現状と育成すべき資質・能力を踏まえた今後の対応でございます。関連する御発表として、第11回の西岡氏による御発表について記載をさせていただいております。
 次のページでございます。
 4ポツとして、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程とさせていただいておりまして、(1)として、現行の「個に応じた指導」の記述と充実の在り方とさせていただいております。関連する御発表として、第7回の戸ヶ﨑委員の御発表、また、第12回の奈須座長代理の御発表について、いずれも再掲でございますが、記載をさせていただいております。
 また、(2)の教育課程の柔軟性の在り方でございます。関連する御発表として、第5回の荒瀬委員の御発表、第6回の秋田座長代理の御発表、第9回の研究開発学校指定校からの、また教育委員会からの御発表について、目黒区、春日井市、愛媛大学附属高等学校からの御発表について記載をさせていただいているところでございます。また、再掲でございますが、第12回の奈須座長代理の御発表についても記載をさせていただいているところでございます。
 次に、(3)学校段階間の連携・接続の在り方でございます。関連する御発表として、第6回の秋田座長代理の御発表、再掲でございます。また、第13回の秋田座長代理からの幼児教育に関する御発表についても記載させていただいております。
 5ポツでございます。学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備でございます。
 (1)として、教育課程を実施する上での学校現場の過度な負担を防ぐための在り方という項目を設けさせていただいております。関連する御発表として、第12回の奈須座長代理の御発表、第12回の石井委員の御発表を掲載として記載をさせていただいているところでございます。
 また、(2)として、教科書・教材の在り方という項目を記載しております。関連する御発表として、第12回の天笠座長の御発表、第7回の貞広委員の御発表を再掲として記載をさせていただいているところでございます。
 (3)として、カリキュラム・マネジメントの実態と今後の推進の在り方という項目を設けさせていただいております。関連する御発表として、第5回の天笠座長の御発表、第13回の冨士原委員の御発表をいずれも再掲として記載させていただいております。
 (4)として、教育課程の円滑な実施に向けた学校への支援と環境整備という項目を設け、関連する御発表として、第7回の貞広委員の御発表、第7回の戸ヶ﨑委員の御発表、いずれも再掲として記載させていただいております。
 そして、最後に6ポツとして、学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開とさせていただいております。
 (1)が学習指導要領・解説等の形態、そして、(2)が学習指導要領の改訂プロセス、学校や教育委員会への浸透の在り方、そして、(3)として、社会的ニーズとの整合性という項目を3つ設けさせていただいております。
 関連する御発表として、第7回、貞広委員の御発表、第7回、戸ヶ﨑委員の御発表、また、同じく第7回の市川委員の御発表、いずれも再掲ではございますけれども、関連として記載をさせていただいております。
 以上のように論点整理の骨子案をお示しさせていただいておりまして、また、本日の議論も踏まえまして、さらに記載を具体化できればと考えているところでございます。
 事務局からは以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明のあった本検討会の論点整理(骨子案)につきまして、今後、具体化していくに当たって、これまでの議論を踏まえて、特に盛り込むべき内容等について、委員の皆さんからの御意見を頂戴したいと思います。
 それで、こういうふうに進めさせていただきたいと思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、委員の方それぞれに私のほうから指名させていただきますので、御発言をお願いしたいと思います。
 そういう場合に、いつもですと名簿のあいうえお順ですから、秋田委員からということなんですが、今日は名簿順のあいうえお順でいきますと、一番下から、冨士原委員から順次上がっていくようにいきたいと思いますので、まず冨士原委員からということですけれども、申しましたように、できましたら2巡をしたいと思っているんですけれども、まずは1巡目でそれぞれ御意見いただいて、それについて、特に事務局に答えをお願いしたいところがありましたら事務局にお願いし、もう一回、2巡目ということで回せればと思っておりますけれども、時間の限りということでお許しいただくということになるかと思いますけれども、まず冨士原委員、続きまして奈須委員、戸ヶ﨑委員、高橋委員、この順でお願いしたいと思いますので、まず冨士原委員からお願いいたします。
【冨士原委員】  よろしくお願いいたします。
 骨子案ということで、項目につきましては、私としては漏れなくまとめられているものと拝見いたします。今までの、これまでの議論も十分に踏まえられて、この枠組みを検討されたと思っております。
 各項目の具体的な中身につきましては、まだ検討の余地もあるのかなと感じておりますけれども、この会議でずっと問題にしてきたような点はきちんと踏まえられていると拝見いたしました。
 ただ、全体として、「各教科等」という3番目のところに柱がございますけれども、私自身の発表もそうだったんですけれども、どうしても学力、ある意味、教科の資質・能力の内容に偏っている印象も若干ございます。例えば、これからの社会像、1のところで、豊かな人間性を育むことなどということを第3回の安宅さんが大変強調しておりましたけれども、指導要領は教科だけではございませんので、そうしたところの部分は少し弱いかなという気がいたします。
 例えば、そういうことが、この4番の個に応じた指導、これも教科のところにすごく特化したものにならざるを得ないといいますか、もう少し協働性といいますか、人間性みたいな部分で、教科以外の部分にも、若干、もう少し言及があってもいいのかなということを感じております。
 最後に全然別な観点で一言なんですけれども、石井委員とか奈須委員が発表なさった、指導要領をシンプルで理解しやすいものにする工夫というのは、ぜひ次回の指導要領では実現していただきたいなと思っております。
 私からは、取りあえず以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。
 項目の仕立てとかボリュームは、本当にこれで適切だなと思って拝見をしました。
 1点だけなんですけど、目次でいうと3ポツの各教科等の目標・内容、方法、評価となっていて、これは近代的なカリキュラム・メイキングの議論が始まった、最初のラルフ・タイラーの4つの原則でしたっけ、あの中にもありますけど、カリキュラムというのは、目標論、内容論、方法論、評価論と、この4つを含むのがカリキュラムだというのが最初からあるわけで、当然、ここもそうなっていたかと思いますが、その次のところを見ていくと、(1)は目標・内容の構成ですね。(2)は評価になっていて、これ方法という項目が、ここでは出てこない形になっているんですね。前から私、申し上げているんですけど、結局、学習指導要領とか日本の教育課程の基準で教育方法を、どう扱うかというのは本当に悩ましいですね。
 教育課程というのは、かつては本当に目標と内容の編成、何を教えるかのことだったと思うんですが、さらにカリキュラム・マネジメントということにおいて、海外でよく言われるカリキュラム評価というような概念がしっかり出てきた。それによってカリキュラムを子供の事実に即して見直して、よりよいものにしていくという話が、いわゆるカリキュラム評価の話ですよね。それがちゃんと出てきた。こうして、方法というのをどう扱うかというのが最後に残っている難問だと思っています。
 前も個人的にも申し上げましたが、あまり国が方法の具体について言及するのは、現場の創意工夫を抑え込むようなことにもなりかねないし、言われたことだけやればいいんでしょうということにもなりかねないので、あまり望ましくはないと常々思っております。
 昭和33年の学習指導要領改訂の私なりの理解は、国は目標と内容はかなり細かく、しっかり規定する。それによって学力を保障ということを政策的に取り組むけれども、だからこそ、方法については現場に委ねるというバランスの取り方をしてきたのかなと私は理解しております。ただ、このところ、学びの質、学びの在り方という表現が今回も出てきますけど、ただ教えればいいのではなくて、学びの質、学びの在り方ということを問わざるを得なくなってきている。昭和33年当時のカリキュラムは本当にコンテンツベースですので、指導事項が網羅的に学べていればよしと。本当はそんなことないんでしょうけど、割とそういうところも多かった。ところが今日、学びの質、学びの在り方ということが問われるようになってきて、見方・考え方、資質・能力ということも打ち出してきたわけですけど、すると、それを今後、教育課程の基準でどんなふうに言及していくかというのが難しくて、それがここの方法というところが載り切らなかったりしていることにもあるのかもしれません。だから、学びの在り方、学びの質ということで、いろんなところに記述もされているし、ここにも出てくるのだろうと思いますけれども、そうなってくると、今度は学びの在り方、学びの質というのは、結果的に子供のほうにおける出来事であって、教育の方法というのは、それを目指して教師や学校が行う、計画的に行っていくことですが、その両方をどんなふうな関係として、少なくとも僕らは押さえ、共通理解をして、それが効果的に表せるように出していくかということを考えなきゃいけないんだろうなと思うんですね。
 私自身は、もはや見方・考え方とか、資質・能力とか、あるいは主要な概念なんていう言葉も出てきていますけど、学びの質にはかなり言及はしている。統合的な意味理解ということを期待するなんていうこともあるわけですよね。すると、その学びの在り方、学びの質ということは既に言及もしているし、むしろ石井委員の御発表にもありましたけれども、内容の示し方を、もっと主要な概念を中心に構造的にしていくということは、まさにその学びの在り方をより強く打ち出していくと。その学びの在り方、例えば、主要な概念の獲得とか、見方・考え方の感得が行われれば、そのために用いる、いわゆる指導事項は入替え可能でもいいのじゃないかという御提案を、石井先生がしてくださっている。私もとてもいいなと思っておりますけれども、そうなってくると、それは学びの在り方を示すことにもなるけれども、その在り方を実現するために、どういう方法を取るのかというところまでは言及するのかしないのか、しなくて実現できるのか、でも、してしまうとやり過ぎにならないかというあたりのことですね。
 もう繰り返し申し上げていることですけど、方法ということをどう扱うか。それとの関係で、学びの在り方、学びの質ということを、私は示さざるを得ないし、示してきているし、もっと、むしろ強く示す。それが内容の構成にも係る形で示せると思いますけれども、それとの関係で方法にまで言及するのか。だから、この辺りが悩ましい問題として残っていて、またデジタル学習基盤との関係、あるいは個に応じた指導、個別最適との関係もありますけれども、ちょっと全体、その辺りをどう統合的に整理して、着実で分かりやすいメッセージとして出していくかということが、ちょっとまた考えなきゃいけないなと思っておりました。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、戸ヶ﨑委員、続いて高橋委員、貞広委員の順にお願いしたいと思います。
 戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  まず、ここまでまとめていただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げたいと思います。
 私も大きく2点ほど申し上げたいと思います。
 1点目は、「多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程」という柱が1本大きく立ったということは非常に重要であると考えています。
 その具体は様々ですけれども、不登校の子や、特異な才能を有する子、さらには個別の支援や特別の配慮を要する子などの指導は、よさを見抜いて、それを着実に伸ばしていくという視点が大切であるということは言うまでもありません。現在、そうした子供たちは、特別支援学級などに在籍すれば、個々のニーズに応じた指導や支援が得られるわけですけれども、通常学級における指導・支援体制を構築すべく、まずは通常の学級の在り方自体を、多様な子供がいることを前提としたインクルーシブな場に変えていく必要があるのではないかなと思っています。
 例えば、通常の学級における教育課程を、より柔軟に編成できるようにするとか、そのための環境を整備するなども考えられます。通常の学級の在り方が変わらないと多様な子供たちが別の場で学ばざるを得ないことが増えてしまうのではないかと思います。そのことで、通常の学級における同質性が高まってしまうと、無意識のうちに多様な他者と協働的な学びをする機会が失われてしまうことが危惧されます。
 加えて、不登校の子などが学校内外の教育支援センターで学習を含む支援を受けている実態がありますが、資質・能力の育成につなげるための教育課程における取扱いや、その際、学校にさらなる負担を求めることにならないよう十分配慮した環境整備の在り方というものも、そろそろ検討すべき時期に来ているのではないかなと思っております。
 2点目に、今回の骨子案では、議題として、「学習指導要領における記載に分かりにくい側面がある」と指摘されていますけれども、現場に近い立場からすると、極めて大切な指摘がされていると有り難く捉えています。
 国の答申や審議のまとめというのは、どうしても教師の実感と経験に基づいたアクチュアルな言葉が希薄になっていると感じます。霞が関文学や行政文書の言葉は、どうしても性格上、抽象的になりがちで、分かりそうで意味が掴めないところがあります。聞き心地のよい汎用性の高い言葉が過剰に浸透し始めると、現場の教師たちは、自らの教育を語る言葉を失ってしまう可能性があります。こだわりやオーナーシップを持って、授業づくりをしていくという、教師の在りようが阻害されてしまう可能性もあるのではないでしょうか。
今後の学習指導要領は、中核的な概念や方略を中心にして一層の構造化を目指していくという観点からも、テキストだけではなくて、図表を活用することも有効ですし、時にはデジタル技術も活用して、学習指導要領やその解説を自在に移動できるような在り方が重要であろうと思っています。文科省のホームページには、デジタル版の学習指導要領が掲載されていますが、目次から見たいページに簡単に飛べなかったり、キーワードや専門用語については脚注が十分なかったり、見やすさや分かりやすさの観点から改善の余地はあるように思います。
いつも申し上げていることですけれども、伝えることと伝わることは違うので、学習指導要領の趣旨を教室の中に浸透させていくためには、分かりやすさが非常に重要です。これまでは教師を中心とした教育関係者が主な読者だったわけですけれども、今後は保護者や、できれば子供たちにも学習指導要領の趣旨が伝わるようにしていく必要があると思います。
 学習指導要領は神棚に上げて奉っていくものではなくて、日常的に使われてこそ意味があるんだろうと思います。これまでの「全部乗せの堅いマニュアル」から脱して、「日常使いする分かりやすい手引き」へと変えていく必要があると思っています。
 学習指導要領側の歩み寄りとして、図や表を使うということで、教師が学習指導要領を自分事として捉えて授業づくりに欠かせないものとなるためにも、現場を預かる身としては、ぜひとも重要であるように考えています。
 【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】  ありがとうございました。
 今回のまとめは、私自身、非連続という言葉が、かなりキーワードかなと、とても思っております。令和の答申の冒頭のほうにも非連続という言葉がかなり強調されて書かれているように思っています。
 とはいえ、お話の中にもありましたけど、連続的に人は生きていますので、連続をどう捉えていくのかということなんだと思いますが、結果的に、今回の、今の学習指導要領も資質・能力の書き方を、僕は非連続的な変化を遂げたと思いますし、コンピテンシー・ベースというのは、これまでと随分非連続性は高いと思いますし、コロナが途中で起こったことも、非常に我々、いろんな物の考え方、非連続に対応しなきゃいけなかったと思いますし、GIGAもやっぱり非連続なんだと、GIGA端末もそうだと思います。
 だから、非連続なことに対応を本当にできているかどうかとか、しようとしているのかとか、そういうことについて点検をしていく必要が僕はあるかなと思います。そういった意味で、教科書とか、入試とか、そういったことが非連続な変化に対応、非連続な学習指導要領に対応できていない、変化に対応できていないんじゃないのかという指摘が書かれているのかなと思います。
 関係ないかもしれませんけど、僕は教員研修とか校内研修なんて、非常に伝統的に古いやり方で、GIGAの端末の研修を、みんな紙と鉛筆で受けるなんていうことは平気で行われていますので、その辺りが一つ一つ点検していかなきゃいけないということかなと思います。
 この非連続に対応した世界観というか、非連続に対応してしまった世界というのは、僕はずっと非連続の前にいる人たちから見たら、気持ち悪く感じる、違和感をすごく感じるんだと思うんですね。だから、我々なんかも、情報端末を活用したからこそ実現できるような授業を実施すると、必ず、これが授業なのかというふうに批判されます。だから、しようがないので、これは長篠の戦いで鉄砲が入ったときの、全く従来の騎馬戦との戦い方と、価値観が違うから、本質は変わらないけど見た目が変わっているのだと説明します。だから、やっぱりそこが突破できるのかということと、ただし、本当に駄目な場合もあるので、本当に違和感で駄目な場合もあるので、非常にそこは難しいなと思っています。だから、この辺は、まず非連続なことということに一つ一つ対応していくということが、まず1つ目に感じたことです。
 2つ目は、資質・能力の高さが非常に重要で、PISAの調査の結果でも、知識の概念としての理解とか、思考、判断、表現力とかが弱いとか、自律的な学習が弱いみたいなことが示されていたと思います。こういったことは、結果的に学習者一人一人、子供一人一人が自ら学んで、主体的にとか自律的に学んでいくということだと思うんですけれども、こういったときの教育方法ってどうなるのかと考えていくと、具体的にこうやって指導していけばいいと書けることはないと思います。結果的に書けないんだと思っています。前もって、こういう基盤となる力をつけておくとか、そういう子供が勉強しようと思ったときに必要なものが学習材として手に入るような学習環境を整備していくみたいな意味になっていくんだと思います。そういった意味で、僕はこの2番目の大きな2のところの資質・能力の枠組みのところがまずあって、その後に基盤となる資質・能力という、こういうふうに高い資質・能力をつけるために、一人一人がつけなきゃいけない資質・能力というのがこういうふうに書かれていて、そのときに、一人一人の求めに応じて、動的に、無駄な手順もほとんどなく、いつでもどこでも何度でも誰でも繰り返し勉強ができるような、そういうデジタル学習基盤というのが示されているというのが、僕はこの辺りが非常にある意味で指導というか学び方を、子供一人一人の学びを成立させるための教育方法に見えるかなというように感じています。
 私が学生だったときですけど、90年代、よく大学でこれからの学校は指導より支援とかいうようなことで、私、学生のとき、とてもそういう指導を受けていまして、そのときに学習環境という環境づくりが非常に重要だと言われていました。今は子供に学びを委ねると言われ、環境という言葉より場という言葉がよく使われるようになっていて、似たようなことが、今ちょっとまた繰り返されているかもしれないと。そういうときに、当時と何が違いますかと言われたら、基盤となる資質・能力みたいなものがしっかり示されていたり、子供に応じて学習材が提供できるデジタル学習基盤みたいなものが用意されているということが非常に大きいんじゃないかと。この辺りは、もう少しこのPISAで弱みとなった個人の資質・能力を育成する上で非常に強調しておく必要があるんじゃないかと思っています。これが2つ目です。
 すいません。3つ目で、これでやめますけど、生成AIの技術は、まさにそのとおりだと思いますし、AIに超えられたら困るとか、超えなきゃいけない、AIを超えて人間の能力をつけなきゃいけないかと言われたら、それは無駄な抵抗だし、そうなのかと思わなくてもいいんじゃないのかと。何となく世の中では、自分より能力の高い部下を巧みに使いこなすという上司がいないわけでもないということを考えれば、今示されているような、本質的な人間味とか人間性みたいなこととか資質・能力みたいなものが重要だという示され方というのは、すごくあり得るかなと。同じ土俵で戦ってもしようがないのかなという意味で、そういうふうに書かれているのかなと思いました。
 私からは以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、貞広委員にお願いしたいんですけど、貞広委員、途中からお入りになってということですが、大体要領はお分かりになられたんじゃないかと思いますので、御発言をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【貞広委員】  ありがとうございます。冒頭、変則的な出席となりまして、申し訳ありませんでした。
 バランスよく、目配りが利いた骨子を御作成いただきまして、ありがとうございます。
 私、教育方法やコンテンツは全く専門ではないのですけれども、そういう立場から見ると、柱立てとして、4、5、6が入ったというのは、すごく大きなことだと思っています。
 まず、5と6についてコメントしたいと思いますけれども、先ほど奈須委員が、学習指導要領というのは、もともと目標と内容から成っていて、方法は取扱い難問で、ここら辺は現場に委ねたほうがいいというお話はありましたけれども、そうはいいながら、前回の学習指導要領では、主体的・対話的、深い学びというのが入ったことで、方法論に学習指導要領が踏み込んだみたいな受け止めがされていました。
 それのつながりでいうと、今回は学習指導要領に関連する論点整理(骨子案)に条件整備と政策の実装、浸透の部分が1本の柱立てとして、それぞれ入ったというのは、私の目から見ると、かなりの大事件かなと思っています。今までは、ここら辺は現場の先生方が頑張ってくださるでしょうということで、やっていたわけですけれども、なかなか頑張りだけだとうまくいかなかったとか、現場の余力が、これもうお任せだけだと足りないということで、しっかりと5とか6ということを柱立てして書き込んでくださっているというのを高く評価したいと思います。ありがとうございます。
 ちょっと細かいことを言うと、6、学習指導要領の趣旨の実現に向けた政策形成・展開となっていますけど、政策実装・展開なのかなと思ったりしたんですけど、この辺りは恐らく戦略的に言葉選びをされているのかなと思いますので、細かいこととして聞いていただければと思います。
 2点目でございます。先ほど戸ヶ﨑委員もおっしゃったように、4番の多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程、これが入ったということも非常に大きな出来事だと思いますし、歓迎をします。
 そのときに、これをどう書くかということを、期待も込めて、意見として申し上げたいんですけれども、コメントの中にもありましたとおり、例えば、学校に足が向かない不登校の子供たちであるとか、外国にルーツがある子供たち、または発達に特定の特性を持つお子さんたちということを想定しているようなことでもありましたが、もちろんそれは重要なんですけれども、それだけではなくて、もう少し広い社会的公正ということに配慮した書きぶりをしていただけるといいかなというふうに思います。
 今日の骨子の御紹介の中にもありましたけれども、学校が個別最適な学びと協働的な学びを一体で実践をしていると、SESの低い子供たちも自己肯定感が上がっていき、二次的に学力もついてくるとか、人間力がついてくるということがあるかと思うんですけれども、学校は決して格差を拡大する場ではなく、下支えをして、社会的公正の実現につなげていく場ですので、その辺りをしっかりと書き込んでいただくということを希望します。
 私、悲観的なので悲観的に見ちゃうんですけど、せんだって、全国学力・学習状況調査の令和6年度の結果が報告されましたけれども、いまだに平均値とランキングを見て、一喜一憂している教育現場があります。何度も宣伝していますけど、私、人員一員で平均値ランキング撲滅運動をやっているんですけど、いまだに撲滅できない、またそれかという感じなんですね。そういうデータの見方をしている限り、下支えをし、格差を是正していこうという思考って、なかなか教育活動に実際には結びついていかないんだと思うので、この辺りは、できれば可能な限り強調して書き込んでいっていただきたいなと思っている部分です。
 以上2点申し上げました。ありがとうございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、市川委員、その後、石井委員、荒瀬委員、秋田委員という順にお願いしたいと思います。
 市川委員、お願いいたします。
【市川委員】  市川です。私のほうからは、さらにこういうことを書き込んでほしいということではなくて、ちょっと補足的なコメントということになります。
 3点なんですが、1つは、3ページ目に、真ん中辺ですが、「感染症等により再び休校になったときに、自律的に学習を行う自信が低いという状況も見られる」とあります。確かに質問項目が、たしかそうなっていたと思うので、それが低いというのは、そのとおりだと思うんですけれども、これを矮小化して見てしまうと、感染症等により再び休校というようなことが起こらなければいいのかと、大丈夫なのかと。私はそこが問題だったような気がします。たまたま感染症で休校というようなことが起こってしまったので、学習を主体的に回していくということの自信のなさが露呈してしまったのであって、ふだんから子供たちが、自分が主体的に学習を回しているというようなことがおろそかになっていたんではないかという気がしてしまうからです。
 つまり、ふだんから、できれば子供たちが主体的であると言うならば、教員とか、あるいは授業というのは、あくまでも自分が学ぶための一つのリソースなのであるととらえてほしい。それを利用しながら自分たちが主体的に学んでいくんだくらいの気持ちになってくれればいいと思うんですが、実際には、先生の言うとおり、あるいは授業でこういう課題をやることになっているからというので、そのとおりやっているだけであって、そして、休校になって、そういう指示とか場がなくなると、途端に何をやっていいか分からなくなる。ということは、やっぱりふだんからそういう主体的に学んでいくと、あくまでも授業も先生もそのための材料なんだくらいに考える、利用していくんだくらいの主体性というのが育っていなかったので、こういうことになってしまったんではないかと思います。やはりふだんの日本での授業の在り方の問題が、ここに潜んでいるのではないかという気がいたしました。これが1つです。
 それから、次のページの一番下ですが、ここで社会的ニーズということとの関連を書きました。指導要領、非常に理想的なものを作って、確かに公立学校を理想に近づけるということが文科省や教育委員会にもできます。しかし、入試をはじめとした社会的な条件が変わらないと、公立学校がこういう理想に近づけば近づくほど現実とのギャップが大きくなってしまって、かえって公立離れが起こってしまうとか、そういう問題を指摘したものです。
 これは現実には、例えば、PBL重視とか、探究重視とかいうようなことは非常にいいことで、理想に近いんですけれども、実際には、そうなってしまうと、とても受験に対応できないからということで、大量の子供たちが、特に首都圏などを中心にして、塾に行って私学に行かざるを得ない。別に塾や私学が悪いわけではなくて、そういう社会的なニーズに応じているだけだと思うんですね。でも、子供の学びの姿としてトータルに捉えた場合、本当にそれは理想的になっていると言えるのか。
 どうすればいいのかということになるんですが、私もここに少し書き加えていただいたのは、社会的なニーズのほうに、むしろ課題がある場合もあるんだと。何も社会的なニーズに合わせましょうとか、それに迎合するという意味ではないということです。社会的ニーズ、何とか志望校に行きたい。そのために、かなりの受験勉強的な学習をしなくてはいけないという、そういう社会的ニーズがあるわけですが、そちらのほうに問題があることもあるわけです。
 じゃあ、どうすればよいかということになると、これは指導要領をどう改訂するかということだけで決して解決する問題ではありませんし、もっと大きく言えば、中教審とか文科省が、こうすれば、すぐにこうなるということでもないので非常に難しいです。ただ、やはり教育政策の影響を受けることは確かなので、なぜ首都圏が、例えば、小学校中学年くらいから塾に通って私学に行かざるを得ないような状況になってしまったかというと、これまでの教育政策が影響しています。それは東京都であったり、あるいは文科省であったりということの影響を受けてそうなっているわけで、この辺りのことを、ここに書き込んでほしいということではないですけれども、そういう意味で申し上げたということです。
 それから、3番目は評価の件なんですが、7ページに出ています。評価について、特にこの観点別の評価についてとか、また、その中でも「主体的に学習に取り組む態度」をどうやっていくかというようなことについては、学習評価のワーキンググループの中で、かなり議論いたしました。そこで結局言及することができなかったのは、これは調査書とかいう形で、入試に組み込まれるときにどうするのが望ましいのかということです。高校入試にしても、大学入試にしても、これをこういうふうに使うといいという議論はしたんですけれども、報告書に盛り込みませんでした。そう簡単に意見が一致することではないので盛り込まれなかったのです。でも、実際には、これが今、高校入試でもものすごく困っていると思います。都道府県によって対応がまちまちで、調査書を重視するというところもありますし、むしろあまり重視しないという方向になっているところもあります。
 主に2つのことが問題になっていると思うんですが、観点別評価を調査書にもつけるのがいいのか、あるいはもう観点別評価はつけないで評定のみにするのがいいのかということが一つの論点になり得るかと思います。
 それから、次に、何らかの形で出されたとして、それを受け入れる側、高校なり大学なりがどう使うのかということですね。現実的には、結局、学校ごとに目盛り合わせができていないといいますか、ばらばらなので、これを使うことは、かえって不公平になると。かといって、無理に全国で一致した目盛りをつくると、つまり規準、基準をつくると、かえって学校の中で、例えば、高校でしたら全員がAになる学校とか、全員がCになる学校などできてしまう。これではもう全然指導に生かせないということになってしまいます。どう動いても非常に問題が大きい中で、じゃあ、いっそのことあまり使わないことにしようとか、恐らく大学の一般入試ではほとんど使っていないというようなことにもなります。この問題については全く棚上げになっているんですけれども、今のところ言及はされていません。私はそう簡単に言えないので、ぜひ、こう入れてくれなどと、とても言えないんですけれども、少なくとも現場では非常に困っている問題で、棚上げにされていた問題をどうするかということは議論しておいたほうがいいような気がいたします。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、石井委員、お願いいたします。
【石井委員】  それでは、失礼します。
 まずは、この骨子案については、ここまでの議論のポイントをかなり踏まえて、バランスよく構成されているなと思いました。
 それで、先ほど貞広委員もおっしゃったことでいいますと、もともと私、アメリカのスタンダード運動の研究をしてきたのですが、そういったものを検討しておりますと、スタンダードには、内容スタンダードという、日本で言うと学習指導要領のような教育の目標・内容といった中身に係るもの、それだけではなくて、特にアメリカの民主党政権下においては、学習機会スタンダードといったものも併せて設定するということが、カリキュラム開発においては重要であると。つまり、こういう内容とか目標を実現することを期待するのであれば、その裏づけとなる環境とか条件整備が必要ですよねと。その両面を併せて示すことによって、改革を進めていくということがなされていたところがあるんですよね。
 そうしますと、今回、目標、内容、それで方法の扱いといったものはいろいろと議論があるところかと思いますけれども、さらに、条件整備、環境整備、この辺にまで踏み込んでいる、実際、政策に関しては計画するだけではなくて実施していくということ、実装していくということが重要になってくると思うんですが、そこを踏まえた提案になっているということは非常に重要かなと思いました。
 その上で、こういう内容を盛り込むべきということは、もう既にいろいろと報告の中で申し上げたところもあるので、本当、ポイントだけということとなりますが、全体のこの骨子案のスタンスといいますか、ニュアンスとしては、現場、本当にかなり厳しい状況だと思います。ですから、そういった余裕がない中において、しかし、学習指導要領の大きな枠組みといったものは、確かによく構成されたところがあると。その目指すべきところをしっかりと確実に実行していくというんですか、実装していくということが大事なのかなと思います。そうしますと、改革の熟成というんですか、しっかりとポイントを絞って実を上げていくと、議論すべき部分は議論しつつ、確かに確実に進めるということが大事なのかなと思います。そういった面においては、改めて、この現行の学習指導要領の趣旨を再確認していくことが重要かなと思います。それが一つ。
 もう一つは、確実にそれを実装し進めていくということでいいますと、現場の側での分かりやすさということもそうですが、単に周知徹底するというんじゃなくて、現場の側がこうやってみようというオーナーシップですよね。実践のオーナーシップをどれだけ高めていけるのか。○○力や○○な学びといったものは、触発する意味はあるんですが、あまりたくさん出てきてしまいますと、こなす感じになってしまうと。ですから、この辺の○○な学びというのは、もう既に十分なキーワードはあると思うので、そこを整理することにとどめて、あまり濫発せずに、確実に、ここをしっかりやっていきましょうというふうに方向性を打ち出していくということが大事かなと思います。
 その中で、現場におけるオーナーシップ、実践のオーナーシップを高めていく。そこが徒労感ではなくて、確実にやることによって手応えがあって、それで先生自身が育っていく。現場が育つような、そういった視点を持って考えていくことが大事だと思うんです。
 それで、学習指導要領の趣旨の再確認ということでいいますと、コンピテンシー・ベースって何か。これはコンテンツ・フリーではなくて、今の世の中の世界観をどう学習指導要領に実装していくのかということだと思います。これは繰り返し申し上げてきたところでありますけれども、コンピテンシー・ベースの核心は世の中ベースであると。ですから、今回、それでいいますと、社会像が明確に示されたというあたりは、非常に重要で、実際に、こういった世界観を子供たちも、それからそれを取り巻く大人たちの中にもどう実装していくのかということだと思うんですよね。まさにこの現代社会をよりよく生きていく子供たちの成長、それをどう実現していくのか。それでいいますと、もともと資質・能力ベースというのは、これは日本の全人教育の意味の再確認であり、教科課程経営ではなくて教育課程経営というのが、これがカリキュラム・マネジメントということかと思います。ですから、その点から申しますと、先ほど冨士原委員がおっしゃったように、日本の強みでもある全人教育、教科と教科外トータルに、いかに成長目標を実現していくのかという、こういった教育課程経営としての側面から、改めて資質・能力ベースということの意味を捉え直していくと、再確認するということが一つ。
 もう一つは、各教科において、先ほども奈須委員のほうから学びの質というお話もあったかと思いますけれども、それでいいますと、この資質・能力の3つの柱のそれぞれにおいて、どのような質を目指すのかと。
 前回の会議の中でも、知識と思考を分断するような、そういった素朴学力観にまた戻ってはいないかということを少し申し上げたかと思うんです。知識にも質があるし、思考にも質があるし、主体性にも質があると。知識に関して言いますと、事実的な知識以上に、概念的な知識、それの理解を重視する。思考・判断・表現ということでいうと、この辺は有意味な学びが重要になる。 昨今、ICT活用とかデジタルトランスフォーメーションということで、学び方の話は結構あるんですが、それこそ最近の話でいえば、日本の男子バレーがなぜ強くなったのかと。これはまさにDXのたまものですよね。そのようにこの社会を見ている大人、あるいは子供たちがどれだけいるのかと。まさにこういうことで、この社会とか生活の中に溶け込んでいる、このDXの世界観といったものが重要になってくるんじゃないかなと思います。
 そういった現代社会のリアルを教材などに取りながら授業を進めて、それで思考力を育て、さらに、主体性ということでいいますと、先ほど市川委員のお話もありましたように、それこそ勉強とか学びに向かう主体性ということもあれば、教科に向かう主体性もあれば、さらに言うと社会に向かう主体性、この辺がごっちゃになっているということもあって、いろいろと混乱も起こっているんじゃないかなと思います。これらは教科学習のみに解消できるものではなくて、それこそ全人教育といいますか、教育課程全体の中でその育成を考えていく必要があるのかなと思います。そういう面においても、資質・能力ベースということでいうと、トータルな教育課程経営として教育課程全体で主体性等の育成を考えるということ、さらに言うと教科の学力観がぶれていないか。教科の学力や学びの質ですね。そこを再確認するという意味で、オーセンティックなんていうことを私も言ったりもしますけれども、それで深さ志向につなげていくということが大事なのかなと思います。
 ICTもそうですし、さらにこの間の受験学力もそうですけれども、一つ間違うと浅さ志向に行ってしまうと。網羅する、浅い、やり方主義。そうではなくて、物事を深く捉えていく、これがこの今回のまとめの中にもありますように、知識の質ということにもつながってきて、その良質の知識といったものが、物事を批判的に捉えていく、あるいはデジタルを使いこなしていく、その基盤になってくると思うんですね。ですから、そういった深さ志向ということが大事になってくるかなと思います。
 さらに実際に、それを実装していくというときに、前にも報告させていただきましたように、授業の方法に踏み込むのは、今の現場の先生方の状況からすると、少しそこを手取り足取りみたいな形になってしまうと、なかなかしんどいのかなという気はします。各自治体においても、様々なスタンダード等で底上げといいますか、先生方の、若い先生方の支援といったことをされているわけですけれども、一つ間違うと、こなしていくということになってしまう。その辺は創意工夫を励ますような、そういった手だてが必要かなと思うわけです。一方で、ここ一番というところでいえば、単元というスパンで考えること、今回の学習指導要領でも単元とか主題とか、それらを意識して目標・内容等が示されたかと思いますが、その趣旨を再確認して、一時間一時間主義ということでしんどくなっているところを、もう少し単元というくくりで考えていく。それがカリキュラムを自分たちでつくっていくということの出発点にもなると思いますし、これまで1時間単位で考えてきた授業研究の在り方を少しリニューアルしていく、そのきっかけにもなればいいのではないかなと思います。
 そうしたときに、分かりやすさということでいえば、学習指導要領が単元を組んでいくための手引き書としての意味を持ってくる、この辺が重要かなと思います。それで、前にも申しましたように、ビッグアイデアとか、いろいろありますけれども、諸外国を見ても、そういう内容の枠で大くくりにしていると。それによって扱う内容の柔軟性を高めて、裁量も高めていくということになるわけですけれども、概念であるとか方略を基に重点化していく。だから内容の重点化といったことが非常に重要になってくるかなと思います。
 そういったものをベースにしながら、結局、先生方にある程度、単元とかカリキュラムをつくっていくことを委ねていく、オーナーシップを高めていくといったときには現場サイドの先生方を励ましていく伴走者としての教育委員会の役割といったものとかが重要になってくるかと思います。ですから、現場のオーナーシップを高めていって、それで自分たちの授業なんだ、自分たちの学校経営なんだという、その思いを強めていけるような流れをつくる。だから周知徹底ということよりは、方向性をしっかり示した上で、条件整備の一環として、現場への伴走体制といったものを確立していくということが大事かなと思います。
 すいません。長くなりましたが以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 発言の順でいきますと、次、荒瀬委員なんですけど、荒瀬委員、現在移動中でありまして、御発言が難しいということをあらかじめお伝えいただいております。ということで、秋田委員、お願いいたします。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
 皆様も言われましたように、非常にバランスの取れた目次に全体としてはなっているのではないかと思いました。
 ただ、例えば、1のところなんですけれども、これが主に、例えば、これからの社会の在り方というところを議論しましたのが令和4年の12月頃でありました。しかし、その後、1点加えていただきたいと思うのは、日本はこども基本法ができまして、子供の意見表明権や社会的に参画する機会の保障ということが、日本で初めて、この間にできています。
 学校の内容につきましても、もちろん教育課程がつくられるわけですけれども、子供がそこにどのように参画するのか。そこにチルドレンライツ・ベースド・ソサエティーというのが国際的には今動いているわけです。そうした中で学校の活動は教師が組むというだけではなくて、子供が様々校則の見直しなどでは参画されていますけれども、そうした意識が、今後は重要である、そういう社会になっていくのだということです。そういう社会で育った子供が、またそういう子供たちも育てていくような民主主義の社会を構成していくという方向が、今、国際的にも求められていると思います。
 そういう意味で、子供の参画や権利の保障という内容が、どこかこども基本法の理念や、それからその内容を子供自体が、大人が知っているだけではなくて、内容のどこかに入るべきです。それは総則なのか、それが各教科ではなくて、各教科等の「等」のところだと思うんです。子供自体がそういうことを学ぶ内容の一つとして入れていただくことが、どういう資質・能力や、どういう大人になってほしいのかということを考えたときに入れていただく必要のあることではないかと考えているところになります。
 それと関連しては、先ほど戸ヶ﨑委員が、分かりやすい学習指導要領であると同時に、保護者や子供たちもその内容が理解できるようにというお話がありました。まさに子供のための分かりやすい版ではありませんけれど、周知のときに何を伝えたいのか、学習指導要領とは何が伝えられるような在り方も射程に入れながら考えていくことが、これからの社会における学習指導要領の在り方として、国のナショナル・カリキュラムとして重要なものではないのかと考えます。子供も保護者も皆が参加交渉し、了解し、カリキュラムがつくられていくという発想や形がトップダウンの周知、浸透ではなくて参画なんだと思うんですけれども、それが必要ではないかなと考えております。
 それを、今回のまとめの文章のどこかに入れるのか否かどうかということは、最終の御判断はお任せしたいと思います。ただこの最初の部分を議論したときになく、でも、今は既に存在していて、こども家庭審議会では、多くの皆さんが学校教育の中に、この学習指導要領の中に、子供の権利に関して子供に知ってもらえるような内容を盛り込んでほしいと、皆さんが声を強くして言っておられましたので、こども家庭審議会の会長として、一言、まずその内容については共有しお話しをさせていただきたいと思います。
 そして、2点目でございますけれども、先ほど奈須委員が言われました、ほかの委員も言われました、各教科等の目標・内容、方法、評価というところです。私も目次との対応を見たときに、ここだけ方法というのが、3のところだけ、どこに入るのかというのが見えにくいと思っています。また、ほかが皆、3章構成、3節構成でつくられているのに、据わりが悪いなと考えています。
 一方で、皆様が言われるように、細かな方法で縛るべきではないと思います。教師や学校の自律的な判断が重要だと思うわけです。
 しかしながら、先ほどから出ていますデジタル学習基盤でありましたり、学習の環境というようなものに主体的に子供が関わっていく、学習環境のデザインを教師がしていくという意味合いを方法の中で入れていくことは今後あり得るのではないだろうかと考えます。細かな指導法を何かスタンダードをつくるとか、何とか法をつくるということではなくて、教師や教育課程の意図を、どのように学校の学びの環境の中に埋め込むのかという方法として、デジタルも含め、アナログも含め、学校という学舎の中に教育課程を実現するのかということは、いわゆる学習環境整備という予算の話だけではなくて、実際の教育課程の中の問題として、本時主義を超えるためのその場の空間の問題と思います。それから先ほど石井委員が言われましたが、教育課程というのを本時主義から単元へ、あるいは単元からさらに長い目で3年間とか6年間という形の中の連続性、系統性の中で見ていくことの大切さとか、そういうことを方法の内容として、どこか、ここに節を立てるのか、全体に埋め込むのかというのは今後議論があろうかと思いますけれども、そういう形で細かく縛ったり、指導法を議論するのではなく、そういう教育課程を実現するための方法というもの、学校の教育方法を、教師の負担を大きくするのではなくて、むしろ軽減をしていくために考える必要があります。今後、過疎になっていって、学校規模が小さくなればなるほど、そういう中で、どのように教育課程の実現のための方法を考え得るのかということが重要な問題ではないかと思いまして、この辺り、何らかの形で補足ができるとよろしいのではないかと考えたところでございます。
 そして、3点目のところであります。先ほどのご指摘にもありましたように、最後の政策の内容が入ったということは、私も画期的ですばらしいと思いながら、その中で、学習指導要領改訂のプロセス、学校や教育委員会への浸透の在り方という言葉の「浸透」という意味合いが、もう少し何らかの別の用語によって、何か上から染み込んでいくというイメージだけではなくて、骨子はきちんと全員が核心を押さえながらも、委員会や学校が自律的に創意工夫しながら参画して、自分たちの学校の教育課程にナショナル・カリキュラムから実現していくという、そういう意味合いの入るワーディングになるといいなとは感じたところであります。ぜひ、子供の参画や、それから教師の参画とか参加というものが、この教育課程の中でより伝わるといいのではないかと考えたというところになります。
 以上です。ありがとうございます。
【天笠座長】  委員の方、それぞれ御発言ありがとうございました。そういう流れですので、もう一巡、時間的にも大丈夫かと思いますので、お願いしたいと思いますけれども、私のほうからも少し申し上げさせていただきます。
 まず、配付していただいた2ページのところですけれども、既に委員の方、何人の方、もう御発言がありましたけれども、これからの社会像をどういうふうに描いていくのかどうなのかということは、引き続き検討になるんじゃないかなと思っております。取りあえず、この論点整理の中では、こういうまとめ方というのがあるかと思っておりますけれども、どちらかというと、それぞれこういう未来があるだろうということですけれども、私どもとして、こういう未来でありたいという、将来社会というのは、こうありたいという、そのありたいという部分ということについて、どういうふうな扱い方をしていくのかどうなのかというふうな、デジタルが支配し、コンピューターが云々ということですけれども、現行の学習指導要領のときの中教審の答申に大変強いインパクトを持ったのが、いずれコンピューターが私どもの仕事を置き換えていくというか、奪っていくだろうという、とてもそういう学説というのは、とても大きなインパクトと、現にそういうふうに進行中の部分と、必ずしもそうじゃない部分とがありながら、今、世の中、世界が動いているという、こういうことであるわけですけれども、現在、この論点整理の中で出ている、これというのは、どちらかというと、ある意味でいうと受け止めながら、さらにそれを詳細に示しているようなというか、描いているような、そういう部分もあると思うんで、確かにそういう方向性、社会があるかと思うんですけれども、学習指導要領との関係において、将来の社会を描いていくというんでしょうか、描き方というあたりのところということについても、また一つ検討すべき点というのがあるんじゃないかと。で、申し上げたのが、ありたい未来というんでしょうか、私どもとしてというのをどう描いていくのかどうなのかというようなことですけれども、既に御発言もあったかと思うんですけれども、それは結局のところ、私どもの世界観というんでしょうか、社会観ということの投影ということになるんじゃないかと思いますし、その点においては、先ほども既に御案内ありましたけれども、パリで活躍した20代を中心とした、あの世代が、これからいろんな意味で、この国の様々な分野にも影響を及ぼしていくことも考えられるんじゃないかと思うんですけれども、そういう方々の社会における存在感とかありようというふうなことというのは、将来の社会像を描くということにおいて、どういう意味を持つのかどうなのかということも、また検討していい、あるいはそうされていくべき課題なんじゃないかと思うんですけれども、そういうことについての検討を深めていただきたいという意味において、この論点整理というのをこういう形で記述していくというふうなことがあるかと思います。
 その一つは、例えば、豊かな幸福な人生を送る云々とありますけれども、well-beingという言葉を使わなくても、これで十分、意は呈しているんじゃないかというふうに思うんですけれども、やはり今後、well-beingという言葉を使いながら話を深めていくのかどうなのか、そういうあたりのところについても一つの検討の視点という提起するということもあるのかと思うんですが、繰り返しますが、いずれにしましても、ありたい未来ということですとか、あるいはバランスの取れた世界観というんでしょうか、社会観というあたりのところというのが、御承知のように、今、この国を取り巻く状況というのは非常に厳しい状況があるわけであって、その中でバランスを取っていくということ自体が非常に大きな課題になるわけですし、そういう中に生きていくという、そういうことを見据えたときの社会の在り方という、社会像をどう描いていくのかどうなのか、これ自体が大変大きな論点になってくるんじゃないかなと思います。
 少し、それから細かな部分になりますけれども、4ページのところには、既に御指摘もあるかと思うんですけれども、今回の改訂、資質・能力ベース、コンピテンシー・ベースということで、それを総則ですとか、前文ですとか、そういうところに記述したと。ところが、それが各教科の目標とか内容のところに十分受け止め切れてないんじゃないかと、そういう御指摘がこの中にあって、さらに実質化をしていく必要があるんじゃないかという、そういう指摘があるわけですけれども、この辺りのところは、実は現行の学習指導要領自体が、それに挑戦したということで、どこまでそれが行っているのか、何がそれを難しくしているのかどうなのか、その辺りのところというのは今後さらに深めていかなければいけないところの一つじゃないかと思いますので、そういうことについての検討を深めていただくという視点において、この部分の課題の指摘というのは、とても大切な部分なんじゃないかと思いますので、ぜひ、この論点整理の中には、それをしっかりと位置づけていただくということが必要なのではないかと。
 それから、その文章の次のところには、既に御指摘がありましたように、文科省から各学校までの趣旨の伝達というんでしょうか、伝えという、これ自体が大きな課題であるということは、既にそれぞれの委員の方から様々言われているわけでありますけれども、この点についての課題の整理の仕方というんでしょうか、というあたりのところで、どちらかというと今日の段階ですと、唐突にこれが出ているようなあれがするんですけれども、その辺りのところも、実は学習指導要領が抱えているいろんな課題というのを含んでいて、そういう状況になっているというようなあたりのところで、既にそれは様々な委員の方の御指摘があったんじゃないかと思いますので、その辺りのところを丁寧に記述していただくということが、この論点整理にとって非常に必要なんじゃないかと思います。
 それから、5ページの冒頭のところには、先生方の多忙化ということが学習指導要領の趣旨の実現を阻害しているんじゃないかと。これもまさに御指摘ですね。ということであり、それ自体が学習指導要領の趣旨の実現を阻んでいると、ここのところというのは、この辺りのところ、大変丁寧に、その状況ということを記すことと、それがそういうものなのかどうなのかというあたりのところというのが、さらに引き続いて議論を深めていただかなくちゃならないんじゃないかということで、この辺りのところを丁寧に記していかないと、大変だから学習指導要領の授業時数を減らせとかというふうな、とかくそういうふうなことになりがちというところについては、既に、これはまた委員の方から様々ありましたように、学校の実態、先生方の現状と教育課程の在り方というのをそれぞれ整理しながら、その在り方ということを整えていくという、論点整理は、その辺りのところの指摘というのをしっかりと押さえておく必要があるんじゃないかということを申し上げたいと思います。
 その上で、私の最後ですけれども、改めて目次の論点整理の点ということで、6つ、こういう形で整理されたということであって、ということのこれまでの委員の方の、それをこういう形でおまとめになったということについては敬意を表させていただきたいと思うんですけれども、その中で、例えば、こういう文言が出てくるんですね。デジタル学習基盤の整備という。それから何々の方策や条件整備等々ということ、それから環境整備ということなんですけど、学習基盤の整備ということと条件整備ということと環境整備ということ、これが組んずほぐれつのような状態になっているということなんですけれども、今回の次の学習指導要領の一つの検討の課題というのは、言うと、この条件整備とか、環境整備とか、基盤の整備ですとか、この辺りのところをもう少し丁寧に整理、腑分けをして、そしてそれをしっかりと明定して整えていくということの必要性ということが、よりここのところで鮮明に浮かび上がってきているんじゃないかと、こういうことだと思うんですけれども。
 例えば、デジタル学習基盤の整備という場合の私の捉え方ですと、デジタルとアナログを、どういう脈絡の中で、どういう環境の整備をしていくのかどうなのか、その点において、どういう条件を整えていくのかどうなのかというあたりの、そういう描き方というか、整理の仕方というのもあるんじゃないかと思うわけでありますけれども、この辺りのところが、各章のそれぞれのつながりの中で、相互の関係の中で、全体としての整備の在り方のそれを、また浮かび上がらせていくということも、また必要なんじゃないかと思っております。
 ということで、以上ということにさせていただきたいと思うんですけれども、ここまでのところについて、事務方のほうで何かありますでしょうか。
 よろしいですか。なければ、お約束の時間があと30分前後ということになりますけれども、それぞれの委員の方の意見等々も踏まえて、もう一巡、発言を冨士原委員以下、秋田委員までお願いしたいと思いますので、冨士原委員、どうぞお願いいたします。
【冨士原委員】  ありがとうございます。
 まず1点目は、先ほど私申し上げたことの繰り返しになってしまうのですけれども、改めて石井委員と秋田委員の発言を伺い、日本の一つの教育課程の特色の一つは全人教育という石井委員からの発言にもありましたし、秋田委員からの、例えば、子供の学校教育への参画といったときに、もしかすると「各教科等」の「等」のほうに、まずはそこからというところに重点を置くことになるかもしれません。その辺について、全人的な教育をしている、それを支える教育課程というところが、もう少し浮かび上がると、改めて考えさせられた次第です。
 それと方法をどうするかというお話に関わるのが、私などは石井委員がずっと強調されていた単元のお話だと思うんですが、よく奈須委員が過去の学習指導要領の例を引かれますけれども、よく過去の中に未来を見るというような、そういう意味では、1951年の指導要領では単元について、日本の教師が単元というのがよく理解できてないんじゃないかということで、単元とは何ぞや、そして、どう教育活動を展開するのかということをある程度書き込んでいます。それで実際に、それで単元をつくる活動、単元づくりがその当時は大変進んでいたわけですね。熱心に教師たち取り組んでいたわけです。教科書も今回、踏み込んだ議論がなされたというのは、私としては、この会議のすごく大きな点の一つだったと思うんですけれども、教科書、教材、そしてその単元をつくるカリキュラムの関係、こういうことを、今、柱の中では5の(2)のところにありますけれども、こういうところを3ポツなどのところにも、もう少し絡めながら検討できるといいのかなと改めて思いました。
 以上です。
【天笠座長】  奈須委員、よろしくお願いいたします。
【奈須委員】  2点ほどと思います。
 天笠先生おっしゃったことなんですけど、今回の学習指導要領の出発点の確認のような話ですけど、私も最初、教育課程企画特別部会、お邪魔したときに、どういう形だったか、もう記憶がないですけど、現行指導要領の作業に入る、ある種の前提条件みたいな話で、現行の学力を維持するという表現だったと思いますが、具体的には、だから、指導事項レベルについては、あまり触らないということが、小・中学校ですね。高等学校は教育科目を大分変えたんですけど、小・中学校については時数と指導事項についてはあまり議論しない、触らない。その代わりに、それを通して、どんな資質・能力を実現するかということを今回やるんだというモチーフが最初に共有されていたように記憶をしているんですけど。だから、その学習、その前提でつくられてきた学習指導要領が今回どう実現されてきたかという感じがするんです。だから、石井先生がおっしゃったように、それをさらに内容のところ、だから指導事項を増加して、どんな深い、あるいは内容的な学力の質を転換するかという話が、ずっとこのところ出ているわけですけど、だから今回の指導要領は学力論は変えたし、目指そうとしたことは明らかなんだけれども、指導事項そのものは触らないという前提で資質・能力をどう実現するかという、かなり無茶な作業をした気が私はしているんです。それはそれでよかったと思うんですよ。そこまでは絶対、1回ではやりきれなかったんだと思うんですよ、今から振り返ればね。だからあのときの文科省の御担当の皆さんとか、あるいは委員会の議論のベースをおつくりになった皆さんの判断、私は正しかったと思っていますけれども、そういうことだったんじゃないかということを、一つ押さえておきたいことです。
 それからもう一つ、貞広先生おっしゃったことで、私は一番最初のところの目次が、これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況、それから2番目は、これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力となっているんだけど、この社会像と指導要領の間に、貞広先生がおっしゃったことを私なりに解釈すると、学校像というんですかね、あるいは学校の任務というんですかね。学校というのは、そもそもどういうことを実現する任務を負うているのかということですよね。公正さを実現するとかいう話が、まさにそうだと思いますけれども、それが社会像との関係で動くところもあるし動かないところもあるんだけれども、ちょっとそこがひょっとしたら抜けているのかもしれません。これは企画特別部会のときも、社会像の議論をした後、学校の任務という話があって、そして教育課程の任務という話があって、そして各教科の役割という話があった気がするんです。それは過去の指導要領は残念ながら各教科がまずあって、各教科をバインドしたものが教育課程になって、それでできることを学校でやっていこうと、すごく悪く言えば、そういうことになっていたと思うんですけど、それをひっくり返したと思っているんですね、現行指導要領の議論の仕方は。それはとてもよかったと思うんですけど、すると、ここで社会像がこうだということと指導要領の間に本当は学校というのは何をするところなのかという理念的な議論があるんだけど、でも、この会ではあまりしなかった気もがします。だから、それは書きようがないという気もします。
 いろんな会議体が今動いているわけで、義務教育ワーキングというところでは、それをとってもしてますよね、実はね。公正で民主的な社会を実現する場としての学校という表現を出したり、それはまさに貞広先生がおっしゃったようなことに私はつながると思うんです。学校というのは何をするところなんだ、本来というところを議論した。その絡みでいうと、今、いろんな会議体がいろんな議論をしているので、それぞれの会議体が、その特徴に応じた議論のまとめをしていて、それを全部集めたときに、次の指導要領に向けて、どんな課題意識を整理するかということが出てくるのかなと思っていて伺っておりました。
 以上です。ありがとうございます。
【天笠座長】  どうありがとうございました。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  先ほどの天笠先生の、将来の社会はこうありたいというお言葉に刺激されて、また、学校、社会がこうなるから学校はそれに合わせろという社会的効率主義と言われるものから、今後はまさに社会構造主義というものを推進するという意味でも、一言申し上げたいなと思いました。
 これは先ほどの高橋委員の意見に全面反論するわけではなくて、また懐古主義に陥るわけでもなく、さらにはGIGA端末などの、これはもう大いに活用するということは大前提で当たり前であると、また積極的に学びの改革とか教育DX、こういったものも進めていくべきだというマインドを強く持っているという前提に、その連続性という視点の重要さについて申し上げます。非連続という言葉があったわけですけれども、先ほどの資料の2ページの下のほうにも書いてありますけれども、どうも学習指導要領の改訂ということになると、今後の社会というのは文化の時代になるだとか、これからの学校、これからの教師、またこれからの子供についても非連続性のみを強調した、言うなれば未来志向中心の議論に終始してしまうということがありがちなわけですけど、これは、ある意味、ちょっと危険なことでもあって、一度立ち止まっていくということも大切なんではないかなと。というのは、この資料にも書いてありますけれども、次期学習指導要領を受け止めていく学校も教師も子供も、今この瞬間、日々の連続性の中で生活しています。彼らの未来は現在の延長線上にあるのであって、それを断ち切って未来だけを語ったり考えたりすることは不可能であろうと思います。あまり未来志向を強調すると、現場の大変さを知らない偉い人たちが考えた夢物語が学習指導要領になっているんではないかなというふうに捉えられてしまう懸念があります。継往開来という言葉がありますけれども、これは課題のある部分については思い切って断ち切って改めていく必要がありますが、「よいもの」はしっかりと受け止めて、受け継いでいくべきなんではないかなと考えています。
 令和の時代にあって、これまでの日本型学校教育のよさを引き継いでいくということは、令和答申の趣旨にも、当然あったであろうと思います。例えば、最近、気になっていることとして、学級活動だとか生徒会活動だとか学校行事などの教科外指導の術や学級経営力、こういったスキルが低下していると感じています。このことは、教師の教科指導の力量にも大きく影響していくと思いますし、子供の学習や、また生活の充実にも大きく影響していると感じています。
 教科と教科外を含めた教育課程丸ごとで子供を育てていくという日本の教育課程の強みを改めて捉え直して、学級経営など教科外の活動もアップデートしていくということも同時に考えていく必要があると考えた次第であります。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】  何か最後に話そうと思っていたところで、難しい指摘が来ましたけれども、私は戸田市の取組を例にすれば、ほかの市町村の教育委員会に比べたら非常に非連続な取組をされていて、だからお客さんがたくさんいらっしゃるんだと思うんですね。多分、それを非連続と言うと、戸ヶ﨑教育長としては、全然連続だと思っているとおっしゃると思うんですけど、私が言っている非連続も、まさにその程度ぐらいで、ある意味で本質を追えば気がつけば自然と起こっていることかなと思っています。
 この委員会が一番最初に行われたときに宿題が出たときに、ビッグヒストリーという動画を見てレポートを書けという、すごい宿題が出て、それはビッグバンから説明されるビデオを見て、次の指導要領をどう思うか、あなたの意見を書けみたいな、すごい壮大な宇宙から始まるんだな、これはということを感じて、あのビデオを見ているときに、必ず行き詰まったときにはイノベーションが起こるんだという説明が繰り返しされていて、本当にせっぱ詰まって行き詰まったときにはイノベーションに頼るしかないんだということ。だから、それは僕の中のイメージでは今や近未来が非連続な世界なんだということ、だからこそAIとかクラウドとか革新的で非連続な技術が次々と出現しているのだということになります。
 ただ、人間がずっと生きているように、連続というのは当然あるし、私の先ほどの発言の中で、一応、みんな生きているわけで連続だと言いましたけど、非連続、将来どうなりますかと言われたら、予想がつかないとか、予測不能な社会とか、ああいうふうに言うわけですから、もうそれは非連続として捉えるしかないんじゃないのかと思っているということになります。
 これを申し上げようと思ったんですけれども、私のイメージでは、今の学習指導要領はコンピテンシー・ベースみたいなことで、非常に深く学んでいこうということがうたわれていたと思いますし、その後の令和の答申というのは、多様な子供たちや多様な人たちをどういうふうにインクルーシブみたいなことも含めて、多様性をどういうふうに受け止めるかということで、深く広げていくという、深くと広くの両方が話題にずっとなってきているんだと私は理解しています。
 そのときに、ただでさえ忙しいのに、深さと広さの両方を求めろというのは、やはり無理な話で、そのときにイノベーションとか何かツールが要るんだと思うんです。そのときに僕はGIGAスクール構想つまりデジタル学習基盤というものが発揮されて、深さを得るためにももちろん使えるし、多様な、いろんな障害をお持ちの方とか、いろいろな特性をお持ちの方々も、このツールを使って自分なりに学んでいったり、生きていくような、そういうものにも使えるという考えなのかなと思っております。
 ほかにも、このデジタルの影響で、僕はこの後、いろんなことが起こるんじゃないかなと思っています。例えば、ちょっと話題でしたけど、特に小学校中心のああいう業者のテストみたいなものが、どこまで有効性を持つのか。それがなくなったときに小学校教育どうやっていくのか。もう今、買わなくなってきているところ、すごくあります。AIドリルで十分だとか、もう習得が確認できているものを、わざわざテストする必要があるのかとか、本当に指導要領どおり深く学習が進んだときに、ああいう白いテストで、カラーテストで資質・能力が測定できるのかって、本気に進んでいるところも逆にあるかなと思います。そういうところでは、単元ベースでの学習が行われています。これまた単元ベースと言うと、いろいろな理解がまたあったりして、非常に難しいんですけれども、大きな目標、大きな資質・能力として目指しているので、内容のステップとしての単元構成みたいなのはあると思うんですけど、大きな資質・能力を目指すに当たっては、ある程度の時間幅が必要という、そういう意味で捉えているところは比較的うまくいくかなと思っています。
 いずれにしても、非常に多様ないろいろなニーズを受け止めていくような学校や教育課程って何ですかと言われると、私、結構、学校建築の方々と関わるときが最近多いと、空間とか場をどういうふうに設定するかという。だから、結局、建築の人たちというのは、多様な人たちの多様なニーズを受け止めるための空間をつくって、空間という言葉とか場という言葉を非常に使ってくるんですけれども、僕はそういうような考え方になるのかなと。
 今、例えば、私が関わる教科書会社とかで何かやると、モデルの授業をつくって、そのモデルにぴったりな、ある意味、指導を教科書で実現していこうみたいな、そういうような考え方から、非常にいろいろなルートがあって、いろいろな勉強の仕方があるんだということを大前提に進めていくような、そういう意味で、これ、カリキュラム・マネジメントとか、そういう言葉が今回の指導要領で入っていると思うんですけれども、そういうような、もう少し自由度を持たせていくようなことも、少し空間みたいな場の支援みたいなこともあり得るのかななんていうふうに思っていたところになります。
 私からは以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、貞広委員、市川委員、石井委員の順にお願いいたします。
 貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】  ありがとうございます。時間がないようですので、簡単に。
 まず、奈須委員、御退席されたようですけれども、私の拙い発言を翻訳していただきまして、ありがとうございます。確かに学校の役割、学校の使命ということを書き込んでいただくというのはあるかなと思います。
 2つ目です。私、今回の新しい学習指導要領で、ぜひ学校の先生方にも子供たちにもわくわくしてほしいと思います。また新しいの来たかじゃなくて、おお、こんなこと勉強できる。教えられる。こういうことできるんだって、わくわくするような仕掛けを何かできないかなと思っています。あほじゃないかという発言ですけど。
 例えば、天笠先生が課題対応じゃなくて、こんな社会になってまずいので、こういう力必要だという書きぶりじゃなくて、こうありたい社会から逆算して、資質・能力を語る。それもまさに一つの方法で、まさに元気が出るやり方だと思いますし、子供たちにとっては、秋田先生の御発言にもありましたけれども、権利主体としての子供が自ら学びの価値を握るような、君たちが自分の学びを切り開いていく主体なんだということをちゃんと伝えて、こういうふうに学んでいくと自分がこんなふうになるんだって思ってもらえるようなしつらえにならないかなと事務局に無茶振りをしてみたりしました。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 市川委員、お願いいたします。
【市川委員】  委員の方のお話伺っていて、一つは奈須委員もおっしゃったことなんですけれども、私もメモで、ここに「社会像だけじゃなく学校像」と書いたんですよね。ただ、学校像ということの意味は、奈須委員が言ったことと少し違うんです。学校が、これからどういう役割を果たすかというときに、どういう資質・能力を育てるかという学校の中での目的だけではなくて、ほかのいろんな教育リソースというのが社会の中にあるわけですよね。それとの関係を踏まえた上で、学校はこういう役割があるんじゃないかという意味での学校像なんです。
 どうしても教育課程課ですと、学習指導要領で学校をどうするかという議論になりがちですけれども、学校が何を担うかということは、ほかの教育機関、たとえば民間教育もあれば、地域教育もあれば、ほかにもいろんなリソースが社会の中にある中で、これからの学校はどういうことを担うべきかと。こういう学校像の話というのは、これまでゲストでおいでいただいた未来学者と言われるような人たちでも、あまり学校がどうなるという話は出てこなかったように思います。それはまさに学校を考える、それから学校のほかの教育リソースのことも考えている文科省のほうで、あるいはこの中教審のほうで考えないといけないことかなと思います。
 それから、もう一つは、これは秋田委員もおっしゃったし、この浸透という言葉です。これまでの周知徹底という言葉をやめて浸透にしたのかもしれないなと思ったんですけど、周知徹底って、すごい言葉ですよね。
 結局、これまでの指導要領を見ていますと、中教審なり教育課程部会なりで一番コアとなる総則に当たるような理念をどんと決めて、そしてそれを各教科のワーキンググループに下ろしていく。下ろしていくなんて言ったら怒られそうですね。でも、基本的には、まず一番大きな理念を決めて、今度こういうふうにやりますから、各教科ではお願いしますというふうに頼んでいくと。
 ところが、ここでもう齟齬が実際起きているわけです。各教科にしてみると、うちの教科には教科なりの論理とか、これまでの伝統というのもあって、何も親部会がそう決めたからといって、そのとおりになるわけではないという気持ちを持つと思います。それももっともだと思うんですね。
 すると、天笠先生がおっしゃったように、私は指導要領の問題、さらには指導要領をつくるときの問題というのがあるのかなと思いました。やはりつくる過程において、各教科とも、こういう考え方を共有しながら、教科のロジックというのをちゃんと聞きながら、親部会のほうでつくっていくとか、それから秋田先生もおっしゃったような、子供なりの思いやロジックもあるだろうし、保護者のほうもあるだろうし、そういうことを聞きながら親部会がつくっていかないといけないのではないかと。親部会だけがクローズにつくって、それを下ろしていく、周知徹底、浸透という形では、かえってひずんでしまって、全体としての建築物、構造物のようにならないんじゃないかということです。途中でぎくしゃくしてしまうということが起こってしまうので、これはどう書くという問題ではないですけれども、これから議論をしていくときに、やはりそういう全体、ボトムアップ的な意見も吸い上げた上で、みんなでつくっていくというものにしないといけないのかなということを強く感じました。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 石井委員、お願いいたします。
【石井委員】  そうしましたら、時間も限られているのですけれども。先ほど出た学校像ということでいいますと、もともと、令和の日本型学校教育においても中心的な議論になっていた、履修主義と修得主義とかは、カリキュラム上の論点になるわけですよね。履修主義というのは、基本的には学校の保護機能を重視すると。それに対して修得主義というのは、能力形成の機能を重視するというところがもともとあると。それでいうと、これまでも教育改革においては質と平等、あるいは質と公正の両輪で考えていくという議論もあったりするわけですけれども、改めて学校の在り方ということでいえば、この会議の中でも様々に、質の側面と、共生というふうな、公正とか平等に係る側面、この2つをどういうふうにバランスを取っていけばいいのかということで議論もされてきたと思いますし、何より、学校って何をするところなのかなといったときに、単に子供たちを保護し居場所を提供するというだけではなくて、最終的には学びを保障していく、子供たちが育つ場である、さらに言うと先生方も育つ場であるということが大事だと思うんですよね。そうしましたら、改めて発達の適切性であるとか、あるいは育つということの観点から、逆に現代社会の様々な要求にふるいをかけていくということが大事になってくるのかなと思います。
 バランスといったことが、この間、いろいろと委員の中からも出てきているかと思いますが、バランス感覚をもって、それこそ持続可能性ということと、この発展というか、新しいものを生み出していくというところ、この辺のバランスを取っていくということもありますし、先ほどの戸ヶ﨑委員のお話の中にもありましたけれども、連続、非連続、これも両面考えていくという、不易と流行とか、あるいは土の人と風の人ではないですけれども、この両面の視点から考えていく。しかし、特に人が育つということに関しては一朝一夕にいくものではないので、自然界の法則にある程度沿っていかなければいけないというところがあります。ですから、じっくりと、ICTとの付き合い方といったものに関しても、発達段階とかも踏まえながら考えていく必要があると思いますし、GIGAスクール構想のゴールは全てデジタル化ということとかDXということではなくて、DXというのは、デジタルとアナログ、この2つをうまくミックスし、必要に応じてスイッチしていけるということかと思うんです。ですから、その辺のバランス。
 さらに言うと、最近は、個別最適な学びといったものが、一つ間違うと、子供に委ねるということは、それは結構なことかもしれませんが、それが子供任せにしちゃうとか、先生が何かやっては駄目なんだとかとなってしまうことへの危惧があります。これまでとの非連続を言い過ぎてしまうと、何が起こるかというと、今までやってきたことは駄目なんだというふうに逆に日本のよさみたいなものに蓋をしてしまうということも起こったりするかもしれないわけです。ですから、もちろん進めるべきところは進めるし、新しいイノベーションの中でわくわくするということは大事なんですけれども、しかし、そこで立ち止まるべきところであるとか、子供任せにしちゃうというんじゃなくて、本当の意味で先生の役割って逆に大事になりますよというあたり、その辺のバランスを取って考えていくことが大事なのかなと思いますし、この間の現場の状況とかも見ながら、その辺のバランス感覚といったことを見失わないような、そういう記述であるとかがあるといいのかなと思いました。
 すいません。以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、秋田委員、お願いいたします。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。
 先ほど天笠先生が言われた5ページ目の教員の多忙化というものが、学習指導要領の実践の実施の妨げになっているというところも、正確に言うと「人手が足りない」というのが国研の調査だと多忙化と併せて書かれています。きちんと教員が配置されればできるということだと思うんです。そういうところを正確に書いていただくことが必要です。また、多忙化によって教員は学習指導要領の実現ができないみたいな感じに5ページ目が読めるのですが、私は今回の国研の調査の中でなるほどと思ったのは、先生方が学習指導要領の改訂によって、「教員の資質が向上した」と思うという質問項目に結構な割合が丸をついているわけです。学習指導要領の改訂というものが負担だけではなくて、そこで学びの専門家として教師が教える専門家であると同時に、学びの専門職として、より子供たちの学びを丁寧にみとっていく、そういう一つの機会になっているんだという、そういうメッセージや、ありたい学校像と同時に、これからの教師が行うことがどういうことであるから、教育課程というものが、どう機能するのだというところについての説明が、我々、時間があれば議論して、こう書き込めるとよいと思います。ありたい学校像。大きなこれからの社会像だけではなくて、学校の役割、そして教師がどういう専門家としてあるから、この教育課程を実現するのに教師がどうすればいいのかというところがより明確に出るといいんだろうなと、14回目になって、自分なりに気づいてきたというところであります。
 今後、学習指導要領を考えていくときに、参加ということが、それぞれの人の主体的な参加をどう巻き込むかということが、市川委員も言われて、なるほどと思いました。各教科と、それから総則のところの全体の部会の関係もまたそうかもしれませんし、いろいろなところで、いろいろな意見を取り込みながらつくっていくプロセスというものが、今回の改訂では求められるのではないかなと、現行の内容から思ったところです。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 ということで、2巡、以上ということにさせていただきますけれども、今の中で、学校という存在というんでしょうか、ということですけれども、先ほどちょっと申し上げた環境の整備と条件の整備と学習基盤の整備、ここら辺のところを整理したり構造化していくと、そこから学校の姿というのが浮かび上がってくる可能性というのが結構あるんじゃないかなと捉えております。その辺りも含めまして、既に先ほどありましたけれども、学校の在り方ということは、それぞれ様々な形で委員の方から御発言があったとも聞いておりますので、それを整理して、うまく位置づけていただけるといいかなと思います。
 それから、もう一点、この論点整理を程なくして、何とかまとめていくというところまで達してきているんじゃないかと思うんですけれども、その上で、次の学習指導要領の姿を見るまでには、もう少し時間を必要としているというのが、この改訂のスケジュールというんでしょうか、そういうシステムだと認識しております。とすると、その次の学習指導要領の姿形が見えるまでの、実は論点整理が、その間の時間がすごく大切なのかな。どういう意味の大切かというと、現場の実践、それをどういうふうに、より充実したものにしていくのかどうなのかという、その辺りのところの働きかけというか、整備ということも、ぜひお願いしたいなということと、恐らくそのことが次の学習指導要領のありようとか考え方に大きな私は影響力を持ってくるんじゃないかなと思っておりますので、ぜひ、この間の時間ということと現場とのキャッチボールというんでしょうか、ということも、また大切にしていただければと思いますし、この論点整理自体が、そういう一つの呼び水になってくるものというんでしょうか、そういうものを持つのではないかなと思っております。
 ということで、今日はここまでということにさせていただきたいと思います。次回以降の日程につきましては、事務局と相談の上、改めて御連絡させていただきます。
 それでは、本日は以上をもちまして閉会といたしたいと思います。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)