今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会(第13回)議事録

1.日時

令和6年7月10日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 学習指導要領の目標に照らした実現状況とカリキュラム・マネジメントの実態について
  2. 「今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会」に係る検討状況について
  3. その他

4.議事録

【天笠座長】  それでは、ただいまから、第13回今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会を開催いたします。
 皆様大変御多忙の中、御参加いただきましたことにつきまして、お礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
 本日は、学習指導要領の目標に照らした実施状況とカリキュラム・マネジメントの実態、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会における検討状況を議題として議論をしたいと思います。
 流れといたしましては、国立教育政策研究所の大金教育課程研究センター長と、本有識者検討会の委員であります冨士原委員、秋田委員の順にそれぞれ関連する御発表をいただいた後、残りの時間で意見の交換をしたいと思っております。
 それでは、御発表に先立ちまして、事務局より本日の議題に関して、説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  教育課程企画室長の栗山でございます。本日の議題に関して御説明を差し上げます。資料の1を御覧ください。
 まず、改めて本日の議題でございますが、次のページお願いします。改めて本日の議題と関連する発表でございますけれども、まず、議題1として、学習指導要領の目標に照らした実現状況とカリキュラム・マネジメントの実態について、2つ、御発表を御用意しております。一つが、国立教育政策研究所の大金教育課程研究センター長から、令和4年度の小学校学習指導要領実施状況調査の観点から御説明をいただきます。2つ目でございますが、冨士原紀絵委員のほうから、全国学力・学習状況調査などの観点から御発表をいただく次第でございます。
 続いて、議題2でございますけれども、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会に係る検討状況について、秋田喜代美委員のほうから、検討会の中間整理案について、御説明をいただく次第でございます。
 次のページをよろしくお願いいたします。この議論に当たりまして、本日の議論の視点ということで、事務局で御用意させていただきました。1つ目が、全国学力・学習状況調査や、学習指導要領実施状況調査といったデータから、現行の学習指導要領の実現状況等をどのように評価できるか。例えば、資質・能力の3つの柱、主体的・対話的で深い学び、見方・考え方など、学習指導要領の総則に定める基本的な考え方は学校にどのように受け止められ、授業改善にどのような影響を与えているか。
 2つ目、学習指導要領が目指す資質・能力の育成について、ペーパーテストの結果等に基づけば、子供たちの達成状況にどのような成果や課題が見られるか。
 3つ目、児童生徒質問紙調査の結果から、子供たちの授業や学校生活における考え方や行動にどのような変化が見られているか。
 4つ目、学習指導要領に基づくカリキュラム・マネジメントの実現状況について、学校はどのように受け止めており、どのような成果や課題が見られるか。
 そして、5つ目でございますが、教育課程の編成における学校の裁量の在り方について、学校はどのような考え方を有しているかということを例示させていただいております。
 2ポツとして、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会におけます検討状況から、幼児教育と小学校教育との円滑な接続のために必要な方策についてどのようなものが考えられるかということを本日の視点(案)としてお示しさせていただいております。
 事務局からは以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。既に御案内のとおり、本日はこれから国立教育政策研究所、大金教育課程研究センター長より御発表いただき、続きまして、冨士原委員、そして秋田委員と3件続けて発表いただくということで、およそ時間的な見積りとしましては、全体を通しまして60分前後ぐらいということを予定したいと思っております。そして、その後、残りの時間、60分前後ぐらいを委員の方からの意見の発表と、そういうことで進めさせていただきたいと思います。
 早速でございますけども、国立教育政策研究所、大金教育課程研究センター長より、資料2を御提出いただいております。これに基づきながら、御発表をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大金氏】  失礼いたします。国立教育政策所教育課程研究センターでございます。小学校の学習指導要領実施状況調査の検討状況について、資料2により報告をさせていただきます。
 まず、資料の2-1を御覧いただければと思います。この調査の目的でございますが、指導要領の次期改訂に資するため、今次改訂の改善事項を中心に、各教科等の目標や内容に照らした児童の学習の実現状況について調査研究を行い、検討の基礎となるデータを得るということを目的に実施しているものでございます。
 調査の時期や対象学年及び教科等でございますけれども、小学校の本調査は令和5年2月6日から令和5年3月3日にかけて実施をいたしました。調査対象につきましては無作為抽出を行いまして、公立小学校1,170校、延べ人数で12万378人の児童を対象に調査を実施しました。
 調査内容につきましては、各教科のペーパーテスト調査を行いますとともに、一部の教科では実技調査を行っております。このほか、児童、教師、学校長を対象としたアンケート調査も実施しております。各教科のペーパーテスト調査につきましては、一つには今回の指導要領改訂の基本方針に関する事項、2つ目といたしまして、今回の指導要領の改訂で新設された事項や、学年及び学校種を超えて指導事項が移行した事項、3つ目といたしまして、従来より課題とされている事項、こういった3つの視点に基づいて調査を実施しました。
 2ページに移らせていただきまして、実施状況調査の検討状況ですとか、この資料の性格について、先に説明をさせていただければと思います。小学校調査の結果につきましては、現在、各教科等ごとに具体的な分析作業を進めているところでございます。しかし、そのような中で、本検討会において可能な限り早いタイミングで御検討に当たっての参考にしていただけるようにということで、調査結果の中でも特に重要と考えられる点について、先行して重点的に分析を行い、速報版として取りまとめましたのが資料2-2と資料2-3ということでございます。なお、中学校につきましては、令和5年11月から本年3月にかけて本調査を実施しました。高等学校につきましては、本年度に本調査を実施する予定でございます。
 それでは、1ページに戻りまして、ただいま申し上げたような前提で取りまとめました資料からうかがわれるポイントというのを、1ページの下半分に記載しております。まず、各教科のペーパーテスト調査の結果の全般的な傾向としましては、知識・技能については、事実的な知識は一定程度の定着が見られるものもある一方、知識の概念としての習得や、習得した知識を日常生活に当てはめたり、現実の事象と関連づけて理解することには一部に課題があると考えられること。また、思考力・判断力・表現力等の育成につきましては、例えば、児童が具体的な問いを見いだす点等については定着が見られるものもあると考えられる一方、目的に応じた課題解決や、自分の考えや根拠を明確に説明するといった点については課題があると考えられること、といったことがうかがわれたところでございます。
 次に、生活科や特別の教科・道徳などについてはペーパーテスト調査を実施せず、児童や教師に対してアンケート調査を実施しましたが、その全般的な傾向としては、学習状況や学校生活等について、おおむね肯定的な回答が多く見られるが、同様の趣旨の項目において、教師の認識と児童の受け止めに差があるなど、課題が一部で見られる、といったことがうかがわれたところでございます。
 また、学校長等を対象に行った教育課程全体に係るアンケート調査の全般的な傾向としましては、主体的・対話的で深い学びや、資質・能力の3つの柱、見方・考え方などの指導要領が提唱する基本的な考え方については、現場の教育課程や学習指導の改善等によい効果を与えたとの回答が多く見られること、また、指導要領の趣旨実現を妨げる要素としては、多忙化や人員確保、研修の時間の確保などの回答が多いこと、標準授業時数について、教育課程編成に係る学校の裁量を広げることについては多くの学校で賛成で、年間授業時数を確保した上で、教科間の授業時数の調整を可能とするような取組を行ってみたいとする学校が多いこと、といったことなどがございます。
 それでは、資料2-2で、教科のペーパーテスト調査等の結果のポイントを簡単に説明させていただければと思います。
 資料2-2の1ページに、次のページ以降の資料の見方を説明しております。教科等ごとに、1でその教科等の指導要領の主な改訂のポイントを示し、2で調査で明らかになった成果と課題のうち、特に重要と思われるものを記載し、3でそうした結果を踏まえた改善の方向性を記載しています。そして、4で、2で示した成果と課題のうちの幾つかについて、関連する調査問題例がどのようなものかを記載し、別紙でその問題を添付しております。
 それでは、各教科ごとの状況をごく簡単に説明させていただきますと、まず、2ページの国語につきましては、現行の指導要領では、自分の考えを形成する学習過程が重視されておりますが、文学的な文章を読む際に自分の考えを持つことについては、相当数の児童ができている設問もある一方で、説明的な文章を読む際に、自分の考えを持つことについては課題が見られるなどの状況がございました。
 次に、6ページの社会でございますが、資料から問いを見いだしたり、情報を読み取ったりすることは相当数の児童ができている一方で、資料から読み取ったことを基に、図や文にまとめることについては課題が見られるなどの状況がございました。
 8ページの算数につきましては、現行の指導要領では、割合や統計に関する内容が充実されましたが、単に代表値を求めるといったことについては相当数の児童ができている一方で、割合を用いて比べ方を説明したり、代表値を用いて問題の結論について判断したりすることに課題が見られるなどの状況がございました。
 12ページの理科につきましては、得られた結果から、より妥当な考えをつくり出し、その考えを選択することなどについては相当数の児童ができている設問がある一方で、差異点や共通点が明らかな状況において、問題を見いだし、その問題を表現することや、習得した知識を日常生活との関わりの中で捉え直すことに課題が見られるなどの状況がございました。
 17ページの音楽につきましては、つくったリズムの特徴や、我が国や郷土の音楽のよさなどを言葉で表すことなどについては相当数の児童ができている一方で、音楽表現の工夫についての根拠を言葉で適切に表すことなどに課題が見られるなどの状況がございました。
 次に、22ページの図画工作でございますが、想像したことから表したいことを見付けることなどについては、相当数の児童ができている一方で、我が国などの親しみのある美術作品の表現の意図や特徴について感じ取ったり考えたりすることなどに課題が見られるなどの状況がございました。
 28ページの家庭につきましては、日常生活を見つめ、物の使い方などの問題を見いだし、解決すべき課題を設定することについては、相当数の児童ができている一方で、知識及び技能の習得に関して、材料に適したゆで方について、ゆで方という事実的な知識の習得に加え、そうしたゆで方をする理由という学習内容の本質を深く理解するための概念としての習得にも課題が見られるなどの状況がございました。
 31ページの体育の運動領域につきましては、互いの動きや考えのよさを認め合うことの理解を問う問題につきましては相当数の児童ができている一方で、クロールにおける自己の能力に適した課題の解決の仕方を工夫することなどについては課題が見られるなどの状況がございました。
 34ページの体育の保健領域につきましては、身近な生活における健康・安全に関する基礎的な内容については相当数の児童ができている一方で、日常生活において捉えにくい内容に関することや、健康の原則や概念と具体的な生活・行動等を結び付けて考えることについては、課題があると考えられる設問があるなどの状況がございました。
 次に、39ページの英語でございますが、日常生活の簡単な事柄について、短い話を聞いて概要を捉えること、メモなどを読んで概要を捉えること、音声で慣れ親しんだ語句を自分の気持ちに合わせて語群から選ぶなどして書くこと、簡単な語句や表現を用いて伝え合うことなどは相当数の児童ができている一方で、伝えようとする内容を整理した上で話すことについては、通過率が他の問題より低いなどの状況がございました。
 次に、ペーパーテスト調査を実施せず、児童や教師に対してアンケート調査を実施した教科等の状況を説明させていただきます。
 45ページの生活科でございますが、幼稚園や保育所等と連携したスタートカリキュラムの作成について、改善傾向が見られるが、他の質問と比較して、肯定的な回答が低いなどの状況がございました。
 46ページの特別の教科・道徳につきましては、道徳の目標に係る教師への質問については肯定的な回答が90%以上あった一方で、そのことについて、教師の指導に関する認識と児童の受け止めに10ポイント以上の差があったこと、特別の教科・道徳に関する児童への質問項目と、自己肯定感や多様な考え方を理解しようとする態度、成長の実感等に関わる質問等との間に相関が見られたなどの状況がございました。
 47ページの外国語活動につきましては、「英語の学習が好き」については、学年を経るごとに肯定的な回答が下がる傾向があるが、英語を学ぶことへの意欲はどの学年でも高く、第6学年でさらに増加していること、「英語の授業が分かる」についても、高学年で肯定的な回答の割合が増え、第6学年で最も高くなること、授業で自分の考えなどを伝え合うなどの活動については、教師の指導に関する認識と児童の受け止めに差があることなどの状況がございました。
 48ページの総合的な学習の時間については、前回調査で課題とされていた「整理・分析」、「まとめ・表現」に関する児童への質問の肯定的な回答が7割以上であった一方、「課題の解決に向けて、友達や地域の人と進んで関わっている」ことについての児童の肯定的な回答が他よりも低かったこと、総合的な学習の時間の質問項目と、粘り強く課題に取り組む態度に関わる質問等との間に相関が見られることなどの状況がございました。
 49ページの特別活動につきましては、育成を目指す資質・能力の視点の6項目の質問のうち、5項目で児童の肯定的な回答が80%を超えたが、「社会参画」に関する「自分のがんばりで学級や学校をよりよくすることができる」については、肯定的な回答が70%程度であったこと、学級活動に積極的に取り組んでいる児童は、自己肯定感や自他理解等に関する質問に肯定的な回答をする傾向が見られるなどの状況がございました。
 次に、アンケート調査のうち、主に学校長に対する教育課程全体に係るアンケートについて、ポイントと思われる部分を取り急ぎまとめましたのが、資料2-3の資料でございます。このデータを見るに当たって留意していただきたい点を、資料2-3の1ページで書かせていただいております。
 1つ目の白丸でございますけれども、この調査は、児童の学習状況を把握することを目的として実施しており、ペーパーテスト調査は児童が受検しますことから、無作為抽出をするに当たって、調査対象の抽出を学校ではなく児童を単位として実施しております。そのため、統計的な同一性を確保する観点から分析についても学校単位ではなく、児童の割合で行っております。そのようなことから、次ページ以降のグラフに示した各項目の割合は、そのように回答した学校に在籍する特定学年の児童生徒の割合を示したものになっています。
 2つ目の白丸でございますが、先ほども申し上げたとおり、中学校の本調査は昨年11月から本年3月にかけて実施しました。ペーパーテスト調査については、現在、データの精査を行っているところですが、質問調査については、全てオンラインで実施しており、自動集計された仮の数値をお示しすることが可能であるため、参考値として中学校の数字もお示ししております。
 ただし、中学校調査につきましては、調査当日に欠席した生徒の数の確定の作業を現在行っているところであり、ペーパーテスト調査を受けた生徒の数が確定した段階で、本日お示しした参考値については正確な数値となることは御承知おきいただければと思います。
 次ページ以降でお示ししているデータにつきましては、小学校よりも中学校の方が肯定的に回答している割合が高い場合が見られます。これは、小学校の本調査は、令和5年2月から3月にかけて、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行する前に実施されたのに対し、中学校の本調査は新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した後で実施されたことが影響していると考えられます。中学校のアンケート調査は、学校の学習環境への新型コロナウイルス感染症の影響が小学校調査時と比べて少なくなっていると見られます。
 説明の冒頭で、教育課程全体に係るアンケートについて、ポイントと思われる点を3点お示ししました。ここでは、その点を中心にデータを紹介させていただければと思います。
 まず、8ページを御覧いただければと思います。「今回の学習指導要領の改善事項に関して、あなたの学校での教育課程や学習指導の改善に与えた効果」についての質問に対する回答でございますが、「主体的・対話的で深い学びの視点を示したこと」が効果的だったと回答したのが小学校で95.9%、中学校で89.3%。同じく、「目標、内容を資質・能力の3つの柱で整理し示したこと」が、小学校で93.3%、中学校で87.3%、「見方、考え方を示したこと」が小学校で91.8%、中学校で84.9%となっており、主体的・対話的で深い学びや資質・能力の3つの柱、見方・考え方などの指導要領が提唱する基本的な考え方については、現場の教育課程や学習指導の改善等によい効果を与えたとの回答が多く見られます。
 次に、戻りまして、7ページを御覧いただければと思います。「あなたの学校では、学習指導要領の趣旨・内容の実現に向けて課題となっているのはどのようなことですか」という質問に対する回答です。「小学校」、「中学校」の欄は、その質問に対する学校長の回答、「小学校3年担任」以下4つの欄は、その質問に対する教師の回答です。この質問に対し、「教師の多忙化」と回答した小学校が73.1%、中学校が78.3%、「必要な人員の確保」と回答した小学校が72.4%、中学校が62.0%、「教職員の研修時間の確保」と回答した小学校が57.2%、中学校が51.2%となっており、指導要領の趣旨実現を妨げる要素としては、多忙化や人員確保、研修時間の確保などの回答が多くなっております。
 次に、9ページを御覧ください。「標準授業時数について、あなたの学校において、教育課程編成に係る学校の裁量を広げることについてどう思いますか」という質問に対する回答ですが、小学校では71.2%、中学校では79.5%が「賛成」と回答しております。
 また、「賛成」と回答した学校に取り組んでみたいことを質問したところ、「年間総授業時数を確保した上で、一定の範囲で教科等間での授業時数の調整を可能とする」と回答した割合が小・中学校ともに高く、小学校で62.7%、中学校で57.2%となっており、標準授業時数について、教育課程編成に係る学校の裁量を広げることについては多くの学校が賛成で、年間授業時数を確保した上で、教科間の授業時数の調整を可能とするような取組を行ってみたいとする学校が多くなっております。
 このほか、2ページでは、カリキュラム・マネジメントの実現状況、3ページでは、教育の質の向上の実現状況、4ページでは、資質・能力の育成や授業改善の取組の実現状況、5ページでは、学校間の接続・連携や地域との連携に関する実現状況、6ページでは、指導要領の趣旨・内容の実現に向けて取り組んだことによる変容に関することについてのデータを掲載しておりますので、御覧をいただければと思います。
 私からの説明は以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、冨士原委員から発表をお願いしたいと思います。冨士原委員よりは、資料3を提出していただいております。発表をお願いいたします。
【冨士原委員】 それでは、発表させていただきます。私のほうは全国学力・学習状況調査から見る学習指導要領の実施状況、それから示唆されることということで発表させていただきます。
 発表の目的とアウトラインですけれども、目的は、令和5年度、まだ令和6年度の結果は公表されておりませんので、令和5年度となりますが全国学力・学習状況調査、以下、学調と略させていただきます、その本体調査、それと、お茶の水女子大学で行いました追加調査の結果から、学習指導要領の実施状況と課題を確認したいと思います。
 アウトラインとしましては、まず、第1番目に、学習指導要領の成果の一部を学調の本体調査を基に確認いたします。2番目には、お茶大で行っております保護者調査を活用した追加分析を基に、格差の取組に成果が上がっている学校の特徴を紹介したいと思っております。3つ目といたしまして、特に2番目を踏まえまして、カリキュラム・マネジメントに関わっての見解を述べさせていただきます。
 まずは、全国学調の概況といたしまして、後述する追加分析で全国の学校訪問調査をしておりますけれども、そこでよく言われますのが、全国学調の設問を見ることで国が求めている学力はこういうものかということが分かるということを伺ってまいりました。つまり、全国学調の設問が学習指導要領の資質・能力の一部の習得状況を測定するものとして、現場では一部理解されているということが分かります。
 初年度からの継続的な経年変化ができる設計になっていないので、平均点の上下ということはお話はできないんですけれども、試みに取り組まれていました令和3年度の経年分析調査結果から見ると、平成28年度調査と令和3年度調査の中で、平均点の大幅な変更は見られないということがデータとして出ております。全国規模でも各教科の例年の平均点の大幅な変動は見られませんので、学調で測定し得る資質・能力、あくまでも学調で測定し得るというところがポイントですけれども、資質・能力については、現場はその定着のために相当頑張り続けているということがうかがえます。
 引き続きまして、令和5年度の学校質問紙・児童生徒質問紙調査結果から見る現行学習指導要領の特徴に関する実施状況につきましてです。既に、以下からいろいろなデータはお示ししますが、全て国研のホームページで公開されております。次の3点、A、B、Cの3点にわたって見ていきたいのですが、結論を先取りしますと、経年データで見ますと横ばい、あるいは向上しております。AとBにつきましては、児童生徒の質問調査から分かるんですけれども、その回答結果から学校が着実に取り組んでいることが分かりますし、A、B、Cとも学校質問紙調査からは学校としても積極的に取り組んでいる自覚があるということが分かります。
 また、追加ということですけれども、お茶大ではないんですけれども、別な組織が委託した追加分析では、主体的・対話的で深い学びというのは、学校に行くのが楽しい、あるいは自分にはよいところがあるといった児童生徒の自己有用感と大変高い相関があると。また、その計数はSES、これは後ほどお話ししますが、家庭の状況や学力を統制しても変化がないということが示されております。
 以下、一部の具体的データをお示ししておりますけれども、赤で囲ったところです。中学校のところで、前回、9回前との比較というところで矢印が上向いております。これは向上しているということです。なお、大変申し訳ございません。これスケールの回答の項目を示すことをしそびれたんですけれども、棒グラフの左側ほど肯定的な回答で、右側にいくと否定的な回答ということになります。特に赤の太字で囲ったところですけれども、「小学校5年生まで(中学校1、2年生のとき)に受けた授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいましたか」というところで向上が、特に中学校では見られることが分かります。それ以外のデータは時間の都合上で、後ほど御参照ください。
 引き続きまして、これは学校質問紙調査です。できるだけ児童と学校を抱き合わせで見ていきたいと思うんですけれども、赤で囲った部分です。こちらは主体的・対話的で深い学びにかかるところですけれども、最大で9回前との比較では、向上印が二重ついておりますので、大幅に伸びているということがお分かりかと思います。ちなみに、下のところですけれども、「前年度に本やインターネット、図書館資料を活用した授業を計画的に行いましたか」というところも二重向上矢印がついておりますので、大変頑張っているという状況がお分かりになるかと思います。
 引き続きまして、こちらも学校の質問紙調査ですけれども、こちらも大変学校は熱心に、主体的・対話的で深い学びに取り組んでいるという状況がうかがえるかと思います。
 引き続きまして、個別最適な学びと協働的な学びに関する項目です。児童質問紙調査をまず見ますと、左側はいわゆる個別最適な学びにかかるところで、ここは横ばいなんですけれども、むしろ注目すべきが右側の協働的な学びの部分で、二重の向上印がついているので、大変協働的な学びに向けて頑張っているということが分かります。これはもしかすると、対話的な学びというところとも関わっているのかなとみられるところです。
 次も引き続き児童質問紙調査ですけれども、ここは個別最適な学びというよりかは、教師が個の子供に注目しているかどうかというところで、ここも大変伸び幅が高いということが分かります。特に下の赤で囲ったところの下のグラフですけれども、先生は授業やテストで間違えたところや理解していないところについて、分かるまで教えてくれるという回答が出ております。
 学校質問紙調査についてですけれども、こちらの個別最適化された学びと協働的な学びは過去と比較ができないんですけれども、おおむね順調に取り組まれているということがうかがえます。
 引き続きまして、カリキュラム・マネジメントに関する項目ですが、こちらは学校質問紙調査からのみになります。特に、赤で囲っていない左側の上ですけれども、教育課程に、教科横断的な学びなどに学校が大変力を注いでいることが分かりますし、右側の赤で囲ったところですけれども、PDCAサイクルの確立にも小中とも大変尽力していることが分かります。
 引き続きまして、先ほどお茶大以外のところで、令和5年度の追加調査ということで、三菱UFJリサーチ&コンサルティング会社の行った調査の、もう既に概要は申し上げましたので、詳しい説明は省きますけれども、主体的で、対話的で深い学びが学力、あるいはSES、家庭の状況に対する格差が深刻なバイアスには関わらず、とにかく自己有用感を高めているということがうかがえます。
 引き続きまして、今度は私も実際に調査を行っております保護者調査を活用した追加分析につきまして、ここからうかがえる知見ということを御説明していきたいと思います。
 ここまでは全国の学調のデータを使った分析ですけれども、ここからは学調に加えて、追加調査として実施されている保護者調査を活用した分析です。これまで平成25年度、平成29年度、令和3年度の3回、この調査が実施されております。目的はそこに書かれているとおりでして、抽出調査でこちらは実施しております。対象数につきましても、下に書かれているとおりです。
 お茶の水女子大学では、過去3回、分析チームを組みまして、統計分析、それと学校訪問調査を行って、二本立てでその目的を生かした分析を行ってまいりました。特に私どもが注目したのは、格差社会において家庭に起因する学力格差克服のために学校でできること、あるいは、教育委員会でできることはないのかということの検討です。まずは、統計分析結果から、格差を克服している学校の特徴を幾つか述べさせていただきたいと思います。
 なお、格差を克服している学校という学校の定義でございますが、そこに下線部、2つ目のポチの下線のところですけれども、以下の学校を含んでおります。1つは成果の上がっている学校、子供の社会経済的地位、SES、ソーシャル・エコノミック・ステータスと申しますけれども、そこから予測される学力を大きく上回っている。もう一つは校内格差を克服している。通塾の有無、あるいはSESの高低に関係なく一定の学力を保障している学校、これ両方含んで格差を克服している学校と定義いたしました。これを、格差を克服していない学校のデータと比較したということになります。
 下のアスタリスクの部分ですけれども、SESの指標は、私どもでは、お茶大では、家庭の所得、あと学歴を合わせて作成しましたが、家庭の本の冊数という指標が、より今世界では広く使われているかと思います。いずれにしても、家庭の社会経済状況や文化資本を反映する指標となっております。
 まずは、統計分析結果から得られる知見ということで、カリキュラム・マネジメントの観点から御説明させていただきたいと思います。まず、大変注目されるのが、カリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルの確立の取組の有無でした。それに関わりまして、学習指導と学習評価の計画の作成に当たって、教職員同士が協力し合っている点に、成果の上がっている学校と上がっていない学校で最大の差が見られました。ここから予測されるのは、一部の教員の頑張りに依存するのではなくて、計画、実践、評価に学校全体として取り組むことが機能しているということです。
 さらに、その下ですけれども、指導計画の作成に当たって、地域等の外部の資源を含めて活用することにも大変成果が見られるところと見られないところの差がございました。とりわけ小学校では、学校支援ボランティアの仕組みづくり、あるいは授業サポートで効果が見られております。
 一番下になりますけれども、小学校の場合は、教科等横断的な視点でカリキュラムを組織することで効果が見られまして、一方、中学校では言語活動に重点を置いた指導計画で効果が見られております。小中で効果あるカリキュラム・マネジメントの取組で違いが見られるのが、何に起因しているのかまでは分析し切れておりません。様々な予測や解釈はあり得ると思います。
 続きまして、主体的・対話的で深い学びの観点からということで、キーワードは大変明確で、効果のある学校では言語活動、話し合う、発言、発表ができるように指導する、分かりやすく文章に書かせる、振り返る、書く習慣など、言語で表現させるアウトプットさせる活動が多いです。小中とも傾向としまして、深い学びに教師が指導を焦点化することで差が開いております。あとは、学び合いを重視する授業が継続的に効果ある取組のキーワードとしても上がっております。
 以上が教科を超えて、繰り返しになりますけど、学校全体の取組として意識されていることで効果が見られると思います。つまり、校内での実践の共有化を図るためのカリキュラム・マネジメントの取組と深く関係していることが示唆されます。
 以下、17枚目からは、今、御説明したことの具体的なデータになりますので、飛ばさせていただきます。
 引き続きまして、今のところまでは統計分析でしたけれども、ここからは訪問調査の結果を御紹介させていただきたいと思います。訪問調査対象校数ですけれども、3か年の調査、6か年となっていますが、3か年の調査のうち、小学校43校、中学校29校、訪問調査校を管轄する54の市区町村の教育委員会を訪問調査いたしました。こちら、下のグラフですけども、訪問調査対象校選定のイメージでございます。横軸が学校の平均的な社会経済的地位で、縦軸が学校の全国教科平均正答率となっております。黒で直線が引いてありますけれども、この直線というのは、社会経済的地位から予測される学力です。それを上回っている、黒の直線よりも上回っている学校で、できるだけ社会経済的地位が平均、つまりはゼロよりも下の学校を調査することを私どもは心がけてまいりました。
 これまでの調査全て、小中で共通で高い成果を上げている学校の特徴は、以下の10点にまとめております。
 1番目に、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進ということで、直近の令和3年度の調査では、訪問した学校全てが校内研究のテーマを主体的・対話的で深い学びの授業づくりをテーマとしておりました。それと、特徴的なのは特別支援の視点を入れた学校授業づくりです。こちらは統計分析でも確認することができます。
 以下、3から10までございますけれども、引き続き、直近の追加調査の分析報告ということに、ごく簡単にまとめたものになりますが、こちらは学校は8点ですけれども、先ほどの10点とほとんど内容は変わっておりません。下のほうに教育委員会で何ができるかということも書いておりますけれども、教育委員会は結構、学校に様々な運用や活用、様々な情報は提供するんですけれども、運用、活用は学校に任せているというのが一つ特徴的だったかなというところです。
 以上までの調査結果を踏まえた知見ということで、まずはカリキュラム・マネジメントに関わってです。こちらを令和5年6月1日の全国学調の専門家会議で成果発表したときですが、参加されていた中学校の関係者から、挙げている項目全てをやり尽くさねばならぬのかという御意見を、私にはそれは悲鳴とも感じられましたが、受けました。挙げた特徴、8点、あるいは10点を全て当たり前としてやり尽くすには相当なカリキュラム・マネジメントが必要で、とりわけ管理職の負担は大変大きいと思います。過年度調査の訪問調査対象校では、たまたま条件が重なったというような意見も受けております。重要なのは一番下の矢印ですけれども、各学校の置かれた環境や条件、あるいは小中に、もしかすると特徴に応じてカリキュラム・マネジメントの重点の置き方に違いがあってしかるべきではないかと思います。よりよい取組とは、数多くあり様々な場面で言われると思うんですけれども、それを網羅的に、緻密的に企画、計画することよりも、一度何らか立ててみた計画を途中で柔軟に変更したり、あと、効果をもたらすであろう点にマネジメントを注力するということがあってもいいのかなと思います。それを教育委員会は支援することが重要かと思います。
 2番目です。これもカリキュラム・マネジメントに関わってということになりますが、統計調査と訪問調査結果からは、複数の取組の相乗効果で成果が見られたということが分かります。単一の特定の取組で成果を上げているわけでは決してございません。ただ、訪問調査で、敢えて、ですけれども、学校に何が一番学力向上の取組として効いているかと尋ねますと、十中八九、予習より復習、基礎基本の徹底、補充学習等も行い、できるまでやり切らせる指導、あとは家庭学習と宿題という声が上がってまいります。追加分析の調査の目的からしましても、学力下位層の底上げ、それを目的として、復習、あるいは基礎基本を重視するために、補充、補習学習と家庭学習に力を入 れざるを得ない状況が浮かび上がってまいります。
 とりわけ中学校の場合は、本当に先生が休みなく、学校にいる間、あるいは放課後も含めて、学校にいる間ずっと付き添って徹底してやり切らせるということをしております。これは、いずれも教師の献身さがなければ成立しないというふうに、今まで調査をしてきて感じてまいりました。持続可能な観点から大変な課題ではないかということを感じます。なぜそうなってしまうのかという背景ですけれども、いろいろな考え方はあると思います。いろいろあると思うんですけれども、敢えて、3点を挙げさせていただきました。
 一つには、市販のテスト、あるいはハイステイクスなテスト、特に中学校は高校受験を控えているものですから、そういう場合、実際に基礎基本の部分、知識技能は点数が取れやすい、つまり、実際に点数が取れているという結果や実感がまず一つあるということ。もう一つは社会全体に根強い基礎基本感だと思います。やっぱり学力の基礎基本は3Rsや知識、特に常識、教養と同義として捉えられておりますので、学校としては、その習得に力を入れ続けざるを得ない、つまり、もうやめることはできないという状況かと思います。さらに、現行の学習指導要領の総則編、総則の部分、第1章総則の部分で、「(1)基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ」と書かれていることも関連しているかと思います。
 ただし、学習指導要領には一方で、あくまで一例ですけれども、小学校国語には以下のような記載もございます。黄色で、マーカーで抜いたところですけれども、「知識及び技能に示す事項については、思考力、判断力、表現力等に示す事項の指導を通して指導することを基本とし」と書かれています。既に見てきた調査結果から、学校では主体的・対話的で深い学びの授業改善に大変力を入れていることは明らかで、思考力、判断力、表現力等の形成に大きく寄与していることは想定されます。ですけれども、一方で3Rs等への過度な重視が根強く、黄色のマーカーで示したような授業の実現が、とりわけ厳しい環境の学校の中では取り組みにくく、復習と反復重視の宿題、家庭学習に注力する結果になっているのではないかと思われます。
 ここで、SESと授業外学習と学力の関係について、これもお茶大の令和3年度の分析結果から少し知見を御紹介したいと思うんですけれども、授業外学習時間、これを子供の努力としまして、これが学力格差を緩和するかということにつきましてです。表の見方ですけれども、SESをブロックに分け、Lowest、一番左側がLowest SESブロックで、3時間以上勉強するから全くしていない。一番右端は、大変家庭環境が恵まれているHighest SESブロックで、こちらも同じく3時間以上から全くしていないという4分割してみたものでございます。
 どのブロック、4ブロックどこにおいても、やらないよりは長時間やったほうがいい成果が出ているというのは一目瞭然かと思います。それはそうなんですけれども、家庭の社会経済的背景による影響が強く存在しているのも事実でして、最後のスライドに参りますけれども、特に赤丸の部分を御覧いただきたいんですけれども、つまり、一番右端と左端を御覧いただき、比べていただきたいんですけれども、Lowest SESの箱ひげ図の一番右の3時間以上勉強している子供と、Highest SESで全く勉強していないという子供の広がりの部分になりますけれども、特に箱ひげ図のトップを見ていただくと、Lowest SESの子供の努力が通じていないということが、残酷なデータのようなんですけれども、明らかかと思います。
 その理由として、こちらも様々な解釈が成り立つと思います。本質的には、Aの部分だというのは、いろいろな諸研究からも言われているところです。やはりSESの高い家庭の保護者の乳幼児期からの子供への関わり方、あるいは家庭の文化資本、こういった家庭環境の影響が大きいということです。ただし、これは小学校、中学校になってからではどうにでもできるものではございません。
 もう一つ、そう考えられるのが、SESの低い家庭の子供が取り組んでいる家庭学習の質、あるいは学習方法の問題も考えられます。例えば、塾、家庭教師、ICTを活用した学習環境が整っていない中で、先ほど申し上げました教師の手厚いサポートの下で、学校から出される宿題、反復学習に丁寧に時間をかけて行っている可能性です。それによって基礎的、基本的とされている知識や技能は確実に習得する子供が多くて、その点での学力は定着していると見られますが、SESの低い家庭の子供にこそ、もちろん基礎的、基本的な知識技能の確実な習得ももちろんですけれども、思考力、判断力、表現力等の資質・能力を高めるという、そういう方策が必要ではないかと思います。
 そうした子供たちにこそ、復習とか基礎反復学習で基礎基本を確実に定着させることこそが重要とする研究者の方々もおられることは承知しておりますが、私はそういう立場には立ちません。改めて、各教科固有の見方、考え方を発揮するような活動を通して学ぶという学習指導要領の記載に基づく授業づくりを定着させていくとともに、教師の過度な負担によって成立するような補充学習、家庭での学習に頼らないで済むよう、あくまでも授業を中心として資質・能力の3つの柱を着実に習得させるカリキュラム・マネジメントを行っていく必要がある。つまりは、宿題、家庭学習の在り方もカリキュラム・マネジメントに含めて、学校全体で計画的に検討する必要があるのではないかと考えております。
 早口になりましたが、以上で終わらせていただきます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、秋田委員から発表をお願いします。秋田委員より、資料4を提出していただいております。秋田委員、どうぞ発表をお願いいたします。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。本日、資料4-1と4-2をこの内容に関連して出させていただいておりますが、今は4-1を中心にお話をさせていただきます。こちらの今後の幼児教育の教育課程、指導評価の在り方に関する有識者検討会は、無藤隆委員を座長として、この委員会からは奈須委員と秋田のほうが出させていただいておりまして、第8回までの論点のまとめの論点を今、これから御報告をさせていただくところになります。
 全体としましては、中間整理案全体の目次がこのような形で出ております。その中で、今日は特に、赤字の「幼児教育と小学校教育との円滑な接続」というところでございます。先ほど大金センター長からも、スタートカリキュラムや、幼小接続連携の実施状況がほかの項目と比べて低いということを、お話をいただきました。それから冨士原委員からも長い目で見るという連携の重要性というお話がございましたので、そこに関連してお話をさせていただきたいと思うところでございます。
 まず、中間整理案のところ、1につきましては、非常に細かく書かれてございますけれども、左側で、「幼児教育の重要性というのは、全ての生涯にわたる人格形成の基礎を培う」ということが言われているわけでございますが、特に幼児期の発達の特性というところで、2つ目の丸を見ていただきますと、「生活に必要な能力や態度などの獲得においては、大人に教えられた通りに幼児が覚えていくという側面が強調されることも過去にはあったが、幼児期は、幼児自身が自発的、能動的に環境と関わりながら、生活の中で状況と関連づけて身につけていく時期である」という、「遊びを中心とした生活の中で、自らの生活と関連づけていく」という子供観、有能な子供の在り方がここで書かれております。
 また、特に下3つの丸の中では、「直接的、具体的な体験を通して、自分にとって大切なことを学び、身につけていく」というところでありまして、特に、「幼児期の学びは身体の諸感覚を通して、対象に関わることが重要であること。」また、最後の丸のところでも書かせていただいておりますけれども、「人や物との環境と主体的に関わり、多様な体験をするという特定の体験ではなく、多様な体験が重要な時期だ」ということが報告で書かれております。
 そして、右側に行きまして、こちらは3要領に基づくと同時に、2018年から幼児教育が3歳から全て無償になっております。そういう中で、基本的な考え方として、「幼児期の発達を促す、環境を通して行う教育」というのが、これ平成元年の要領の改訂からですけれども、基本となっていることが、ここで改めて書かれているところでございます。
 そして、3つ目の丸ですけれども、特に「幼児期の特徴は、一人一人の特性や発達の課題等に応じた教育」というのが、特に月齢差などが、この時期は大きいものでございますから、それが書かれているということです。
 そして一番下のところですけれども、「幼児は、構成された環境の下で、知的好奇心や探求心を持って遊びを展開する」ということが示されておりまして、「様々な能力や態度を身につけていくという、遊びを通しての指導を中心に行うことが大事」ということが基本として書かれている上で、幼児期と小学校の円滑な接続というところにつきまして、特に、右側が委員の意見でございますが、「円滑な接続を進めるということの一層の普及啓発が必要である」ということは、先ほどからのデータでも出てきているところでございます。「特に管理職や教師や保育士の両者の連携の意識を持って、互いに見合うなどのことが重要」という、園と学校の校長や管理職のリーダーシップということが書かれていると同時に、「小学校低学年の子供の発達の特性に応じた教育として、どのような改善を期待するのかということを議論する必要がある」だろうということです。円滑な接続ということで、5歳前半、4月から1年生の終わりまでを架け橋期と呼ぶということを決めておりますけれども、そこにおいて、安定した形で、担任が子供たちと関わっていくような、そういう在り方が議論されるということになります。
 4つ目の青いところにも書いてありますが、「小学校の前倒しをするような指導が一部で見られていて、かえって小学校における学習の妨げになっている」というような声もありまして、この辺りについて、「保護者に対しても一層の普及啓発ということが必要である」ということでございます。
 また、今、不登校の問題が小学校でも議論されているわけですけれども、特に小学校低学年の不登校の増加につきまして、左側のところに出ておりますように、「幼児教育施設と小学校での学びや生活の段差が大きいと、子供が不安や戸惑いを持って主体的に、これまで自己を発揮してきたのが、学校が変わるところで、非常にここにギャップができる」ということでございます。「小学校からはゼロからのスタートではない。小学校での学習が退屈でつまらないものになってしまうことが、おそれがある」ということも指摘されておりまして、そういう意味での連続性というものを考えていくことの必要性というものが報告では出されているところになります。
 続きまして、5ページ目でございますけれども、こちらにおきましても、「小学校の教科の学習において、幼児期の自発的な活動を通しての遊びで培われたものを持って、そこから実感を持ってこそ、資質・能力が育まれる」ということ、それから環境を通した教育というのが、現在、デジタル学習基盤の中でも、そこではICTの環境が中心でございますが、教師が一方的に指導するというところから、環境を通しての教育ということが一層重要になってきていると考えられます。
 そうした中で、「幼児に限らず、子供は生まれながらにして、周囲の環境に対して自ら能動的に働きかけ、環境と関わっていく有能な学び手である」というような発想を、「小学校においても環境を通した教育という発想を、より強調していくことが重要であろう」というようなことが意見として出ております。
 小学校以上の個別最適な学びと協働的な学びが、実は子供は幼児期に遊ぶときには自分で遊びたいものを選んで、自発的に自己選択しながら環境に働きかけていき、友達と必要があれば協同しているわけなので、個別最適な学びと協働的な学びの基盤が幼児教育に培われている、特にデジタル化学習基盤が整備されつつあることを考えますと、小学校からの環境を通した教育とのつながりということが重要であるということと同時に、左側にありますが、ICTの環境や先端技術も活用しつつ、環境を通した教育を、幼児教育においても、いわゆる直接体験だけではなく、ただし、詳細は今日、お配りしてございませんが、そちらのほうの資料1-2に出ていますが、あくまでも「直接的な体験を重視しながら、そこで必要なときにICT複数台を、端末等を利用しながら、さらに深めていくようなことが望まれるのではないか」ということが書かれているということになります。
 そして、それ以外のその他の主な意見というところは、全てを読み上げるというようなことはいたしませんけれども、まずは中間整理で「全ての幼児が対象である」ということで、「病気の幼児とか、それから現在も無償になっているにもかかわらず、園に通っていないお子さんがおられますので、そこへの対応は議論すべきである」ということや、それからICTについてはここにも書いてございますが、「幼児教育においてのデジタル基盤の整備ということが立ち後れておりますので、デジタル環境と具体的、直接的な体験の双方向、両方の環境を生かした環境を通して行う教育が重要ではないか」というところが特にメインになるかと思います。
 また、地域における幼児教育施設の役割ということで、少子化になってきますと、幼児教育が果たす役割ということが非常に重要でございまして、乳幼児がその地域で園に通うということが、その後の地域での小学校、中学校通学につながっていくことでございますので、保護者や地域の人々のウエルビーイングの向上にこれがつながっていくのだというような認識が必要であろうということでございます。
 そして、教師や保育士、専門性の研修につきましては、研修ネットワークというようなものがこれから設置や施設形態だけではなく、これは小学校以上もそうかもしれませんが、研修のネットワーク形成が重要になっていく。また、幼保小の接続や学校種間の連携接続についても、ぜひ独立行政法人教職員支援機構との連携が重要なのではないだろうかというところになっております。
 就学前の教育において、学校教育の専門的な知見を有する教育委員会が所管を果たすということは今、一体化によって、むしろ首長部局に移っている場合も多いんですけれども、幼小接続連携については重要であろうという意見が出てございます。
 その次からのところにつきましては、幼保小の架け橋プログラムということで、私立や民営も含めて今、推進がなされているということや、今年の4月に、「遊びは学び、学びは遊び、“やってみたいが学びの芽”」という動画や冊子が作られているということが8ページ目に記されております。
 そして、9ページ目には、これまで幼小の接続連携が生活科が中心ではございますが、合科、関連的と書かれていましたが、全ての教科において、幼児教育と小学校教育がつながっていくのだという具体的な実践事例の事例集も発刊してございますので、こうしたことも今後、重要であろうということで御報告させていただきます。
 以上で、私からの報告は終わりです。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。3人の方からの発表ということで、ここまでそれぞれお願いいたしました。改めまして、3人の方にお礼申し上げたいと思いますけども、これからそれぞれの委員の方からの意見交換という時間にさせていただきます。例によって、御発言がある方は挙手していただき、私のほうで指名させていただきたいと思います。
 例によってですけども、それぞれの方から意見をいただきたいと思っておりますので、それぞれの方の発言の時間というのは、およそ、それぞれ、ほどほどにというところでお願いできればと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。どなたからでも結構ですけども、いかがでありましょうか、早速、戸ヶ﨑委員から手が挙がっておりますけれども、それでは、まず、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  すいません。ちょっとしゃべり過ぎたら御勘弁いただけたらと思うんですが、3人の方々の御発表本当にありがとうございました。大変勉強になりました。
 まず、大金センター長のお話の中で、この資料で感想や意見はたくさんあるんですけれども、一つだけに絞らせていただくと、冒頭に各教科のペーパーテスト調査の結果にある知識の概念としての習得ですとか、習得した知識、これを日常生活に当てはめたり、現実の事象と関連づけて理解することには一部課題があると、こういう記載があるわけですけども、このことは、振り返ってみると、私自身が教師になった約半世紀前からこれは言われ続けていることで、そろそろ学校中の学力というものを真に生かす学びを広げるということに本腰を入れていくべきなんだろうなと考えています。もし時間があれば、具体的な問題例で、どのようなところにそれが表れているのかというようなことを、具体例でぜひ幾つか御紹介いただけますと、助かります。
 冨士原委員の御発表も大変勉強になりました。本当は幾つか御質問したいんですけれども、これは、もしお時間があればということで後ろに回させていただければと思っています。
 秋田先生の御発表も大変ありがとうございました。非常に刺激があって勉強になりました。特に環境を通して行う教育など、小学校が幼児教育から学ぶべきものというのはもう既にたくさんあるんだということは指摘されてきています。
 当然、幼小中高18年間の学びの連続性を考えたときに、幼児教育というのは、その根幹に当たる部分であって、小学校が幼児教育から学ぶべき内容というのが多いのはもう明らかだろうと思います。ただ一方で、幼児教育側も小学校教育から学ぶべき内容というのも少なくないはずなんですけれども、これまであまりそういうことが議論されてきていないというか、注目されてきていないという現状もあるのかなと思っています。
 これはドッジボールのように一方的にボールを投げていくのではなくて、キャッチボールのように互いにキャッチし合って、互いのよさというものを取り入れながら、相互に充実を図っていくということが望ましいわけで、小学校教育から幼児教育が学ぶことについて、これは私の声というより、たまたま両方の現場を園長として、また、校長として、園長、校長で小学校、幼稚園を経験している人の話、複数の人の話を聞く機会がちょうどたまたまありましたので、そのことで幾つか御紹介申し上げたいと思います。
 1つ目は、教員研修の在り方だとか連続性を踏まえた指導支援についてということで、小学校では校内研修についてのノウハウを含めて多くの研修に関する知見を有していると。こうした知見を幼児教育側が学ぶことで、教職員集団としての研修が充実していくんじゃないか。また、幼児教育施設では、子供の興味関心ではなくて、SNSローカルの偏った情報だとか、その影響を受けた保護者のニーズをどうしても優先してしまって、発達にふさわしくない教育活動があるとの御指摘もあると。
 また、遊びを通した総合的な指導を十分に行うためにも、小学校で何を学ぶのか、また、学習指導要領で育成を目指している資質・能力について研修する機会というのも必要だと。
 また、卒園後の小学校での学びの姿、学習内容を理解した上で、目の前の子供の支援に当たるということは、学びの連続性を考えた際に極めて重要であると、こういうことの指摘がありました。
 ここは、私の私見なんですけれども、秋田先生が、発達の段階というのは学びや発達、また、生活の連続性によって支えられているということの共有が重要であると述べられておりましたけれども、発達段階を踏まえた指導の連続性ですとか、また、小学校の学びへ発展する様子を幼児教育側もよりイメージして、小学校と連携するということが大事なんだろうなと思います。
 もう一つがICTの記載もありますけれども、活用の仕方ということで、幼児教育の施設でのICT活用についての議論というのが始まっているわけですけれども、なかなか活用は広がりを見せていても、まだその方法については、小学校のほうに1人1台端末が整備されて実践知というのがあるわけですから、ぜひ効果的な活用方法など、幼児の実態に応じた活用に、ぜひ小学校側を参考にしてもらうというのもありなのではないかなということ。
 さらに、3つ目の柱として、特別な配慮を要する子供への支援ということで、ここへの指導というのは、小学校教育も幼児教育でも基本は同じなんだろうと思います。しかし、特別支援教育と幼児教育は別として捉えて、園の中で障害のある児童だけを対象とした特別な支援を行う必要があるとの思い込みが少なくないという実態があると。また、幼児期は発達の個人差が大きくて、一人一人の実態に応じて支援することから、特別支援教育の視点や専門性は必要ないんじゃないかと考える傾向もあると聞いていると。個別の指導計画ですとか、また家庭や医療、福祉等の業務を行う関係機関との連携の切れ目のない支援のための個別の教育支援計画の作成活用について、体制づくり、指導での専門知識の向上を図るためにも、小学校側から学ぶべきことが多いのではないかと。
 最後ですけれども、地域における施設の在り方ということで、幼児教育施設というのは地域の幼児教育の中核的な存在として、在園児のみならず、地域の子供に幼児教育の機能と施設、それを積極的に開放する必要があるのではないかと。小学校ではコミュニティースクールの導入で、地域とともにある学校づくりが進んでいるんじゃないかと、こうした知識、知見を学んで、積極的に地域に開いていく必要があるのではないかということで、ここは最後の最後で本当に私見なんですけど、一方通行ではなくて、双方向になるということができるように、子供の資質・能力、学びの連続性などを一層確保して、幼児教育、小学校教育のそれぞれがともに互いのよさを取り入れながら、幼児教育と小学校教育の円滑な接続を図っていくということが重要なのかなと思います。長くなって申し訳ございません。以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。例によりまして、今の御質問等々も御発言の中にあったかと思いますけども、一問一答は控えさせていただき、時間の終わりの頃にお三方にそれぞれ御発言をお願いし、そのときにお答えいただけるところをお答えいただくという、そのやり方を取らせていただきたいと思いますので、御了解いただければと思います。
 それでは、戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございました。続きまして、いかがでしょうか。荒瀬委員いかがですか。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。貞広委員が手を挙げていらっしゃるんじゃないでしょうか。
【天笠座長】  荒瀬委員、お久しぶりですので、ちょっと声を聞きたいなと思いまして、振らせていただいたんですが、いかがですか。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。御配慮頂きまして、先日はどうもありがとうございました。今日は、先日はどうもとか、今朝はどうもとか、謝らなければならない方がいっぱいいらっしゃって非常に話しづらいですが、よろしくお願いします。
 お三方のお話を聞いていまして、いずれも大変勉強になりました。ありがとうございました。秋田先生がおっしゃいましたけれども、教職員支援機構との連携というのが幼児教育に関して、架け橋期の教育に関して御意見が出たということで、これは委員をなさっておられる鈴木みゆき先生が当機構の会議でも常にご指摘いただいていることでもありますが、研修との関連からお話を聞かせていただきました。そういうところからの、感想みたいな話になって申し訳ありませんが、申し上げたいと思います。
 まず、大金センター長からのお話の中では、これは研修ということではないんですが、資料の2-3の8ページでありますけれども、ここのところで、どういう事柄がとりわけ学校教育に影響があったかというお話でありました。これは比較の問題なのかもしれませんけれども、一番下に来ていたのが前文をつけたことということで、なんかとても残念でならないです。私、前文には大いに共感しておりまして、とりわけ教育課程がどうあってほしいかという願いが書かれている中で、一人一人の子供が自分のよさや可能性を認識することができるというところからスタートして、持続可能な社会の創り手となっていくという、この一連の流れというのは非常に大事なことで、自己肯定感や自己有用感、自己効力感を養うことが本当に生きていく上で、あるいは、社会の中で様々な課題を乗り越えていく上で、大変大事だということが示されているので、こういったことについて、このデータ、比較の問題かもしれませんけど、少し気になったということでございます。
 それから、冨士原先生のお話は、教育委員会の支援の在り方ということが非常に重要であるということを改めて感じさせていただきました。どういう形で教育委員会が学校に関わっていくのかということ、これは本当に重要であるということはもともと思っておりましたけれども、こういう形で出てきて、非常にまた、その意を強くしたところであります。また、その際、学校が教師の努力によるということのお話でありましたけれども、献身的な努力が、結果的に基礎、基本に終始するのみで終わってしまってはいけないということも改めて分かったといいますか、教えていただいたわけで、これも非常に重要な御指摘であったと聞いておりました。
 秋田先生のお話の中で、これ今日、午前中、秋田先生とは別の会議でお話をしていたんですけれども、私が意識しましたのは、私どもが今模索しております探究型の研修についてです。今のところ、こういったテーマを持ってこられる参加者の方がいらっしゃるのではありませんが、まさに架け橋期の教育をどうしていくのかということで、小学校の校長先生にはしっかり問いを立てて取り組んでいただきたいテーマだと思います。幼児教育との継続性を持った上で、一人一人の子供が本当に自分のよさや可能性を認識しながら学べる環境をどのように創るか、子供それぞれが安心して学べる場をどう調えるか、それらを考えていただいて、関係者が協働し共有することができる、そういう場を、我々としてもつくっていかなければならないなということを非常に強く感じました。
 いずれも感想で申し訳ありませんが、大変勉強になりました。ありがとうございました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、貞広委員、御発言お願いいたします。
【貞広委員】  御指名いただきまして、ありがとうございます。千葉大学の貞広でございます。私から3点申し上げたいと思います。
 その前に、今日の3つの御報告は本当に関連していて、こういう形で同じ日にこの御報告を聞けた事務局のお取りはからいに心からお礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 まず、冨士原委員の発表に関連してなんですけれども、ページで言うと、4ページ目の一番下のところです。「SESや学力が深刻な交絡要因となっている可能性は低く、どの層にも主体的・対話的で深い学びがポジティブ影響を与えることが示唆」と指摘されていますが、これは社会的公正の実現という点からして、このフレーズにしびれてしまいました。もうすばらしいということです。
 ただその一方で、これができている学校とできていない学校があるんだというお話で、同じ御報告の23ページに、学校はこういうこと、教育委員会はこういうことをやっているというお示しがあり、また、私は条件整備を研究しているので、どうしても教育委員会のほうに目が行くんですけれども、このお示しいただいた結果と、大金センター長が御報告をいただきました、資料2-3の7ページ、「あなたの学校では学習指導要領の趣旨内容の実現に向けて課題となっているのはどのようなことですか」というものを見ますと、上からいくと教職員の多忙化、支援員などの必要な人員の確保、研修時間の確保とか、この辺りのいわゆるやりたいけれども条件整備も不足しているし、リソースもない、けれども、本気の首長がいて、大人をたくさんつけてくれると、主体的・対話的で深い学びが実現できて、社会的公正の実現に近づいているというように本日、見えてしまったのですけれども、こうした解釈でいいのかという点が一つでございます。
 2つ目、これは秋田委員の御報告に関連してのところですけれども、環境を通した教育というのは、冨士原委員が最後にSESの低い子供たちこそに活動を通して学ぶという学習指導要領の記載に基づく授業づくりが重要だという御指摘ともつながって、非常に説得性があると伺いました。環境を通した教育というと、単に周りの、周囲の物理的な環境を想定するように思われるかもしれませんけれども、私の解釈としては、人というものも環境ですし、または少しずつ小さな失敗を繰り返して試行錯誤していく、小さな失敗のような経験も環境だと思いまして、伺いました。
 その上で、小学校でもとてもそれが重要だという御指摘を、今日、これも大金センター長が御報告くださった中に、幾つもそうだなと思わせる裏づけになるものがあったんですけれども、例えば、資料2-2の社会のところ、6ページのところで、資料から問いを見いだすことはできるんだけれども、読み取ったことを基に図や文にまとめることができないという御指摘があって、これ恐らくは、抽出をして知識として蓄積はできるけれども、自分の中で再構築する力がないということだと思うんですよね。インと、そのままのアウトはできるんだけど、自分の中で再構築とか咀嚼とか言ってもいいのかもしれませんけれども、恐らくそういうことは、先ほど小さな失敗というふうに申し上げましたけれども、秋田委員が御指摘の環境を通した教育というものによってこそ、培われるのだということで、今回の中間まとめをさらに大変重要なものとして受け止めさせていただきました。
 3番目でございます。さはさりながら、今日の御報告を全て伺っていて、前文がなかなか注目されていなかったという残念なお知らせはあったんですけれども、その一方で、私、しびれましたと言っていた、SESと学力が交絡要因になっている可能性が低いとか、主体的・対話的で深い学びが少しずつ定着しているということも見えました。コロナ禍の様な大きな物事があれば、ICTが急激に定着するということも教育界は起こると思うんですけど、一般的に教育の領域っていわゆる漸進主義と申しますか、ちょっとずつの改革で穏健的な改革で地道に改革を進めていくことでしか変わり得ないと私は思っています。
 そういう観点からすると、重要な初めの一歩として、今回の学習指導要領でも十分学校の皆さん、先生方、努力してくださったと思っています。次の学習指導要領で、次のさらに一歩ならず、長足の進歩が期待できるような土壌は十分、漸進的な改革にならざるを得ない教育の分野では、認められるのではないかという、3番目は感想でございます。
 長くなりました。ありがとうございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に高橋委員にお願いして、その次に石井委員という順でお願いしたいと思います。高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】  ありがとうございました。非常に3件の御発表を聞いて、いろいろ考えさせられることが多くありました。私からコメントというか感想を申し上げさせていただきたいなと思っております。特にICTというか、そっちの関係からお話しできればと思っています。
 まず、議題1のほうですが、大金センター長と冨士原委員の御発表についてです。こういう学習指導要領の実施状況のほうのアンケートを見ると、多忙化とかなかなか実施が大変というところが一番の課題に挙げられていたかなと思います。先ほど貞広委員がなかなか変化を大きくするのは難しいという話はありましたけども、これまでと同じやり方でやっていけば当然パンクすると。やはりGIGA環境を活用してやり方を少し変えていかないと、今の指導要領、次の指導要領は持ちこたえられないんじゃないかなと思います。
 例えば、ルーブリックの活用があまりされていなかったじゃないかと、何かの会議のときに、市川委員が申し出ていたと思いますが、ああいうふうにPDFみたいな報告書で配って、皆さん使ってくださいよというのでは難しくて、今、GIGAスクール構想とかで配布されているコンピューターの中には、ルーブリックをそのまま活用可能な状態で配布して共有するような仕組みを持ったものが40%ぐらいの学校に入っています。
 そういうようなすぐに活用可能なセットとして流通させていくとか、指導案もそういうふうに流通させて、指導案というか、多分今の様式の指導案も不要になると私は思っていますけども、新しく、すぐに活用可能な様式での指導資料として流通させていくみたいなことで、GIGAの端末をフル活用していけば、今回の次の指導要領は、本当に端末があることが前提ですので、考え方は変えられるんじゃないのかなと思うところがあります。
 また、資質・能力の評価に関して、どれも個別の知識、基礎基本みたいなことは十分だというような報告が続いたと思います。一方で、実際的なことで問題解決活動が求められるみたいな、必要な情報を取り出したり、整理したり、まとめたりするみたいな、どこの教科でもこういうものは低めであり、課題として挙げられていると思います。この向上は学習の基盤となる資質・能力であり、問題発見解決能力であるとか情報活用能力であるとか、こういったことをもう少ししっかり鍛えていかないと、私は難しいのかなと思っております。
 報告の中では触れられませんでしたけど、資料の中で、PISAの2022のポイントというのがございますが、17ページのところに、ICTを用いた探究型教育の頻度というのは、この報告だけを見ると、かなり世界でも下なほうというか、かなり平均を下回っているような状況にあるということだと思いますし、その上には、ICTの利用頻度がOECD諸国と比べるとまだ低いというような問題で、こういうことにしっかり取り組んでいくということが僕は大事なんじゃないかと思っております。
 また、この手の資質・能力の確認の方法なんですけど、僕は紙のテストでやって、紙でいい点を取ろうと思ったら、紙で基礎基本を徹底的にやり抜くということが効果的なんだと思うんです。でも、紙でいい点を取ったところで、現実社会は紙じゃないですから、やはりどうかということですよね。主体的・対話的で深い学びが意味があったというんであれば、それを確かめる場合も、主体的・対話的で深い学びの中で活動させて、そのアウトプットを見ていくしかないと思います。それをやると、対話的とかいうと、いわゆる紙のテストの世界ではカンニングみたいになってしまいますから、こういうような紙のテストで1人で悶々と考えてやって評価していくこととは、構造的に違うんだと思います。いろいろな改革が難しいのであれば、まずはテストにおける出題で動画を使ってはどうか。シチュエーションを文章で説明し、説明がとても長い問題がある。現実の状況を文章で把握をすることが現実と離れていて問題の理解自体が難しい。何をテストしているか分かりにくい問題もある。そういうのはGIGA端末を活用して動画で出題してみるとか、やり方はいろいろあるかなと思っております。
 最後に、幼児教育との連携、小中のつながりの部分に関して、小学校側が中心ですが、今回の1人1台コンピューターが入ったことや、個別最適で協働的な学びというメッセージから、非常に学習が個別化、個性化することが実際に行いやすくなって、実際にやっている学校が多くなってきたと思います。そういう学校では、インプットというんですか、先生が一生懸命しゃべったものを一生懸命聞くことが、アウトプット中心に、まず、アウトプットする前提で非常にできるようになってきている。アウトプット量が従来に比べて大幅に増えている。どうしてそのようなアウトプットできるようになったかというと、個別にいろいろことをアウトプットできるように、実は環境として、非常にその子の思いや願いがかないやすいような、物をたくさん置いたり、コンピューターの中で学習材を提供したり、幼児教育で、環境で学ぶという大事な部分が、小学校のほうにもかなり浸透し始めている。幼児教育との連携として上手につなげていくことができると思っています。個別最適とか協働の話とICTの話というのは、非常に親和性が高いんじゃないのかなと聞いていた、伺っていたところになります。
 私からは以上です。ありがとうございました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、石井委員お願
いいたします。
【石井委員】  失礼します。本日も大変勉強になってありがとうございます。いろいろと、特に冨士原委員のご発表など、私は割としんどい学校と関わることも多いので、かなりリアルに感じたところもあります。
 一つ、それでいいますと、冨士原委員の御発表にもあったんですけども、やはり現場としては、相当に、資質・能力とか主体的・対話的で深い学びということでいうと頑張っていると。実施をしている自覚はある。しかし、一方で、この会議の中でも繰り返し指摘されてきたように、でも学習指導要領は教室とか学校の校門の前まで行っても中に入っていないんじゃないかと、そういう感覚もある。これは一体何なのかということです。ですから、そこをもう少し掘り下げていく必要があるんじゃないかなと思います。
 ですから、それは前回の議論とも関係するわけですけれども、キーワードとしては、いろいろと入っているんだけれども、何か取組はしているんだけども、何かそれがちゃんと学びの充実、変革というところにつながり切っているかどうか、あるいは先生方の手応えといったものにつながり切っているかどうか、もう一歩深めた分析といったものが必要になってくるんじゃないかなと個人的には思っています。
 それはもう一段、実態に即した分析が必要なのかなということを思うんですけども、それとも関連することかもしれませんが、今、学習指導要領実施状況調査、その結果を見ていてふと思ったことですけれども、実は学力観が前回の学習指導要領、つまり言語活動の充実とか活用といっていたときと比べて、そこから若干ぶれてきている部分もあるのかなということを思ったんです。と申しますのも、ここで挙がっている、概念としての理解、あるいは現実とか日常生活に知識・技能を当てはめる、これら課題とされている点はまさに、言語もそうですね、言語活動の充実、活用という形で言っていたときの学力観の強調点そのものなんですよね。
 かつ、知識を習得することと思考力とか、ここを逆に最近、ちょっと切り分け過ぎてはいないかということを思っていたりします。実は、暗黙のうちに、どこかで学力観が知らず知らずのうちに、学力観って知らず知らずのうちにみんな持っているんですが、それが、ある方向にぶれている可能性はあるんじゃないかということです。
 それで言うと、知識と思考を切り分ける。実はこれは構造的に起こっている可能性もあって、前は知識・理解、技能、思考・判断・表現とあって、今回は知識・技能、思考・判断・表現、それから態度とかという形で、要素としてはシンプルになったわけですけれども、しかし、そこに落とし穴もある。実はもともと私が研究している、ブルーム・タキソノミーというのが、実はこのわなにはまっていたんですが、もともとブルーム・タキソノミーというのは知識、理解、応用、分析、総合、評価という形なんですが、ここに問題がありまして、知識と、それから理解以上が、これ名詞と動詞のずれがあるんです。知識は名詞なんですが、理解以上は理解する、応用する、分析するとかというように動詞なんです。これが弱点を持っていて、つまり知識は思考を伴わないのという批判があり、逆に言うと、それ以上、高次の思考とかといったものは、逆に知識は要らなくていいのという二元論に陥ったわけです。
 これが改訂版タキソノミーにおいては、知識次元と認知過程次元とを分けて、それぞれ階層構造を示したわけなんです。だから、要は認知過程に関していうと、知識の位置にあったカテゴリーを記憶すると記述し直して、理解する、応用する、分析する、評価する、創造するというふうに動詞で統一したわけなんです。逆に知識については、事実的知識、概念的知識、手続的知識、メタ認知的知識というふうに、知識も階層的に類型化したということがあります。
 そうすると、知識と思考といったものは常にセットだということが明確になるんですよね。だから、それでいいますと、前回の学習指導要領で知識・理解とあった場合は、整合性がもう一つ取れていなかった。知識するとは言いませんが、でも理解することは言うと。名詞と動詞が混在していた状況なんですけども、逆に理解するということが入っていたから、だからそこに知識習得の豊かさといったものを一定担保するところはあったと。
 しかし、この間、知識・技能等、要素としては明確化されたんですけども、そうすると逆に切り分けが起こってしまって、知識は機械的に暗記するものでという割り切り学習観が入り込む余地が生じている。それで、一方において、思考というのは内容を伴わないという形で抽象化する。そういった根本の学習観において、少しぶれてしまっているところがないのかなということです。
 これを解決する上では、前回の発表で、学力の階層性について述べたと思いますが、3つの要素は常に一体で、それぞれどの質の・・・と考えていくことで、知識といっても事実よりも概念、概念であれば理解しますよねというふうに、知識・技能、思考・判断・表現、態度、それぞれの階層性と質といったものを考えていって、知識と思考といったものを切り離さずに考えるという、そういう見方を改めて再確認していくことなどが大事なのかなと思いました。
 ですから、改めて、何でこんな状況に陥っているかなということをもう少し現場の実態、それから概念的な分析も含めて検討していくことが必要ではないかということもそうですし、今回、興味深いのは、実施状況調査の中で、いわゆる非認知に当たる部分です。自己肯定感であるとか粘り強さ、これと何か相関があったのかということでいうと、教科外の総合であるとか特活あたりは結構相関があったと。ということは逆に言うと、これらを育てる上で適した領域はどこかという、その辺も実態に即して考えていくということが大事かなということを思います。
 ちなみに、一つ、冨士原委員の御発表に関して、基礎を入れきるまでやらせきる指導というのは、それだけ見ると基礎を徹底しているように見えるんですが、その裏にある豊かさといったものは、多分、冨士原委員は最初に、複雑な複合的な要因と言っているわけですが、基礎基本の徹底と言っているときに、しんどい学校では、そのイメージって割と豊かなところがあるんです。ただ、それは入り口で、かつそれは学習習慣とかにつながってくると。だからそれこそ、家でがちゃがちゃしていて、もう学習習慣どころではないと。ずっとざわざわしているわけです、だから文化的な環境が本当に全然ないという状況で言うと、学校ぐらいしか子供扱いしてくれない、保護されない。だから、そういった中において、ぎりぎりのところでしんどい学校の先生方はやっておられるわけです。
 だから、そこにおける基礎基本の徹底ということは、全体像の一部であって、実は様々な情動的な経験と結びついていますし、集団づくり、あるいは、学び方の指導、さらに言うと、その先に分かる授業ということを成立させていく。それらを複合的にやっているところがありまして、なので、実践しているご本人たちは学力向上の要因と言われたら、まず、ここからと言うと思うんですけども、その裏とか背景を複合的にしっかりと見ていくことが必要だと思いますし、もう一つは、時系列で見たときに、学校づくりの最初のところはそこから入るけども、実は、その後、局面が変わると、全体の文化、それこそ学校の文化環境が上がりますから、そうすると語彙が変わってくるんです。そうしますと、局面が変わると次、思考・判断・表現を重視して分かる授業とか、そういったものが絶対不可欠、最初からそういうこともやっていますけど、そっちのウエートが大きくなるということがあると思いますし、逆に最初はここから入った、補習から入ったけども、その後、逆に校内研修の時間が取れなくなって、何年か後にそれが逆に問題になっているという状況もあると思います。
 ですから、時系列の中で、ここで切り取った部分じゃない時系列で見たときに、違った見え方がするんじゃないかというあたりも、その辺の可能性とかもお聞かせいただけないかなと思います。
 すいません。あともう一つは秋田先生、発達の視点ってすごく大事だと思っておりまして、ICTとかコンピテンシーとかもそうなんですけども、発達の適切性という観点から見たときに、特にICTとか個別最適もそうですし、そういったあたり、ここをどういうふうに考えていけばいいのかというあたりも御意見があればお聞かせいただければと思います。
 すいません、長くなりましたが、以上です。
【天笠座長】  それぞれの委員の方から御発言をいただきました。ということで、申し上げたように、御発表いただいたお三方から、これまでのところの委員の方からの発言、問いについて、応答していただければということでお願いしたいと思うんですけども、その際に戸ヶ﨑委員、いらっしゃいますか。
【戸ヶ﨑委員】  はい、すいません。
【天笠座長】  戸ヶ﨑委員、冒頭の発言の中で、少し時間があるならば、このことについてお尋ねしたい云々というような、そういう御発言があったかと思うんですけども、もしよろしかったら、そのことについて、短い時間で恐縮でございますけども、お願いできればと思いますけど、いかがでしょうか。
【戸ヶ﨑委員】  これは、冨士原先生のほうにお伺いしたいという件で、時間の関係で先ほど省略しちゃったんですけれども、今、石井委員が言われたこととも若干関係するんですけれども、25ページにある資料の部分というのが、記事を切り取られたり、また独り歩きするというのが、見ていて危険な部分もあるのかななんて私、勝手に捉えたんですけれども、というのは、特に傍聴している方だとか、冨士原委員のプレゼンの趣旨というものをしっかりと理解していただくために、あえて質問させていただきたいというのは、SESが低い児童生徒には、補充学習だとか家庭学習に力を入れざるを得ないということで、このことにやり切らせるとか、献身さという言葉なんかも付随してあるわけですけれども、これは、あくまでも事実的な知識というものを教え込むことが重要なんだと、こういうことではなくて、むしろ前回の有識者会議のときに、石井委員の御発表の中にもあったように、資質・能力を育むことができる授業づくり、また、主体的・対話的で深い学びだとか協働的な学び、個別最適な学び、そういったものこそが本質であって、補充的な学習については、働き方改革の観点からも、教育の質という観点からも、言うなれば、量的な多寡を問題とすべきではないと、こういうふうに、私はその背景にあるものというのを理解したんですけども、もしお時間あれば、その辺のところを改めて、お話を伺えればなと思っていました。以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございます。この後、それぞれ委員の方から応答していただけるかと思います。ということですけども、私は今日の一つは、カリキュラム・マネジメントということが、ようやくデータとして表に出てきたなという、そんな受け止め方を今日、お二方の発表から受け止めさせていただきました。その上で、いずれも現場では、随分頑張られているのではないかという、率直な印象として持ちました。
 もう少しそれぞれのデータが、非常に消極的であったりですとか、あるいはまだそこまで至っていないという、そういう状態が浮かび上がってくるのかなと思ったんですけども、相応に取り組まれている姿というのが表れてきたということで、このこと自体が、また今度は改めて取り組まれている実践の場に、一つまた提起していただいて、その往還が生まれるといいかなと思っております。データ自体が、また一つの次への提起ということに、そういう意味を持ったのかなと今日、受け止めさせていただいたのが一つです。
 それから、秋田委員の御発表の中に、環境の問題、デジタル、ICTの環境というのを、幼児の段階でどういうふうに解釈、理解するのかどうなのかという大きなテーマがあるかなと受け止めさせていただきました。私の認識ですと、今の子供たちはデジタルという視点で、その環境の中にどっぷり漬かっているんじゃないかという、そういう環境の下にあるからこそ、どういうICT、デジタルの対応というのが幼児期においては必要なのかということがテーマなんじゃないかと思うわけですけども、まだそういう点からすると、子供たちが触れていないから、だから何とかするかと、そういう話じゃなくて、もうある意味でいうと、そういう中で生まれ育っている、その姿において、デジタル、ICTということについて、幼児期の段階、あるいは小学校低学年において、どういうスタンスで対応していくのかどうなのかと、そこのところにむしろ突き詰めていくべき課題があるんじゃないかなと捉えておりまして、もしよろしかったらその点について、御見解を聞かせていただければということでありますけども、まず、大金センター長、そして冨士原委員、そして秋田委員、この順に御発言をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大金氏】  失礼いたします。様々な御意見、御指摘をいただきましてありがとうございました。小学校調査については、冒頭申し上げましたように、さらに具体的な分析作業を進めてまいりますので、まとめ方を含めて、本日いただいた御意見を参考に、さらに検討を進めてまいりたいと思っております。
 また、高橋委員のほうから評価の方法につきまして、例えば、動画を出題してみてはといった御指摘もいただきました。小学校調査につきましては、教科調査は全て紙で行いましたけれども、中学校、高校につきましては、一部の教科・科目で、今回初めてオンライン形式で調査を実施するみたいなこともやっておりますので、引き続き、今後のICTの技術の動向を見ながら、多様な評価の仕方ということについては、検討を深めてまいりたいと思っております。
 冒頭、戸ヶ﨑委員のほうから、資料2-1の1ページに書いてあった成果や課題についての問題例を幾つか紹介してほしいということがございましたので、それについてお答えをさせていただければと思います。
 最初に、知識の概念としての習得といったことについての問題例ということでございます。幾つかございますが、時間の関係もありますので、1つだけ御説明させていただきますと、例えば、30ページを御覧いただければと思います。別紙2でございますが、これは家庭科の問題でございます。適切に材料をゆでる方法や、冷ます方法を理解しているかという問題でございます。御覧いただきますと、ゆで方、冷まし方という事実的な知識につきましても、一部に課題が見られるところでございますが、その上で、さらに、そうしたゆで方とか冷まし方をする理由を正答できていない児童も多く見られたところでございます。
 このようなことから、学習内容の本質を深く理解するための概念の習得にも課題が見られるのではないかなということが考えられます。30ページの赤枠にございますように、そうしたことの理由を適切に説明できるようにすることが、個別の事実的な知識を概念として習得するためにも重要であろうと。ここではジャガイモやほうれん草を取り上げておりますけれども、そういったことが他の材料のゆで方とか冷まし方の理解にもつながるのではないかといったことをここで書かせていただいております。
 また、知識を日常生活に当てはめることということにつきましては、今回の問題例には入れていないのですけれども、理科で、燃焼の仕組みで学習した、「物が燃える時には、空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができること」という知識を日常に当てはめるということで、建物で火事が起きたというときに、火事が広がらないように部屋の窓を閉めるようにするのはなぜかということを問う問題を出しましたところ、そういったものにも課題が見られたといったことがございます。
 また、ここで問題例でもつけておりますが、別紙4の16ページというところ、理科でございますけれども、直列つなぎという習得した知識を、扇風機という日常生活との関わりの中で捉え直す問題なども出題いたしましたが、それにつきましても課題が見られたところでございます。
 最後に、知識を現実の事象と関連づけて理解することということに関連しまして、問題例を紹介させていただきますと、38ページの体育の保健領域の問題でございますが、心と体の密接な関係に関する概念について、習得した知識を基に、体から心への影響の具体例や心から体への影響の具体例を答えさせる問題を出しましたが、このようなことに課題が見られたところでございます。
 そのようなことから、1ページのように、成果や課題を書かせていただきました。
 私からは以上でございます。
【天笠座長】  私から最初に確認をすべき点だったかなと思うんですが、今日、御報告いただいたのは速報版ということでありますので、この後、確定版という形で出るのか、あるいは、今日、速報版、多分この会のためにおまとめいただいて、御報告いただいたと、そのように理解しているんですけれども、そういうことを含めまして、位置付けとか御発表というのをお願いできればと思います。
【大金氏】  ありがとうございます。資料2-1の2ページに書かせていただいておりますとおり、今、小学校の調査につきましては、各教科ごとに、具体的な分析作業を進めているところでございますけれども、この検討会に、まずはエビデンスとして報告させていただければということで、それぞれの教科で調査結果を概観して、特に重要と思われる点を先行して分析しまして、報告させていただいたのが本日の資料と御理解いただければと思います。さらに引き続き、具体的な作業を進めさせていただいて、取りまとめを行わせていただきたいと考えています。
【天笠座長】  そういうことで、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。また、どうもありがとうございます。
 それでは、冨士原委員、お願いいたします。
【冨士原委員】  先生方、皆様ありがとうございました。大変貴重な御意見ばかりで、私も改めて勉強していきたいと思いました。お時間もないですので、ごく簡単に答えられるところ、感想などになりますけれども、貞広先生から社会的公正の実現という点で、これからの学校や学習指導要領の在り方を考えるということがやはり大事じゃないかという御意見をいただきまして、私も全く同感です。私のほうでは、社会的公正を実現するために学校、あるいは教育委員会に何ができるのかということに、特に関心がございますので、先生にそのメッセージが伝わったというのが、私としては最大限にうれしい次第でございます。
 それと、荒瀬委員のほうからもございましたけれども、実は今日の発表で省いてしまったところが、教育委員会がどういう支援をしているのかというところで、これをざっくり省いてしまいました。例えば資料2-3のところで、「あなたの学校では指導要領の実現に向けて課題となっているのはどのようなことですか」で、2番目と3番目に必要な人員の確保(支援員など)、あと、教職員の研修時間の確保が挙がっておりますけれども、実は私どものお茶大で行った調査では、教育委員会が大変こういうところで手厚い支援をしておりました。
 そして、あと今日、もう一つお話ししなかったのが、管理職といいますか、校長のリーダーシップのお話ですけれども、教育委員会がどういう人をどういう学校に校長として配置するか、これも大変すごく配慮をしておりました。そういう意味で、教育委員会の在り方というのも、指導要領と関わって、極めて重要であると理解をしております。
 石井先生には前回の御発表からむしろ大変学ばせていただいておりました。それ以前からも学ばせていただいております。根本の学習観に揺れがあるのではというところですけれども、私も先生と同じく、そこを整理していく必要性をとても感じております。また、これからも議論させていただければと願っております。
 そして、石井先生が最後に、当面は大変な学校で、知識・技能みたいなところの習得に力を入れているけれども、そこで力がつくと局面が変わっていくということをおっしゃっていただきまして、実は今日、発表資料の中にある文献の中で、その局面が変わっていくことにつきましても、報告をした学校の事例が載ってございます。
 私ではなくて耳塚寛明という人が追跡調査をしたんですけれども、最初はすごく大変だったところが、年を追っていくと、どんどん学校の取り組むべき課題が変わってきたというような調査結果も載っておりますので、本日は省いてしまいましたが、そういうことも今後も着目しておきたいと思っている次第です。
 戸ヶ﨑委員から最後にいただきました、御質問といいますか、確認といいますか、先生のおっしゃるとおりです。誤解を招くと、ということでしたけれども、私はしんどい学校ではとにかく補習を一生懸命やらせろみたいな、ただ、それが先生たちの負担になっていいのかと、そういうことだけを言いたいわけではありません。やらざるを得ない現状がある中で、量的な過多ではなくて、もっと知識・技能の獲得の習得の仕方、あるいは家庭学習の在り方、そういうことの本質の部分をカリキュラム・マネジメントでも検討すべきじゃないかということをお伝えしたかったということです。
 最後に、高橋委員がおられますので、ICTについてなんですけれども、これは私自身が格差の研究をしておりますので、むしろ高橋委員にこれからお願いしたいのは、家庭にICT機器の何があるかで学力格差が広がっていくということは大変懸念されるところです。これは幼児教育についても同じだと思いまして、スマホはもうどういう家庭でもあると思うんですけども、家庭にコンピューターがあるかないかというのは、もしかすると今後、大変子供の学力に何らかの影響を与える可能性もありまして、そこら辺の充実もぜひ御検討いただきたいというのはお願いでございます。以上です。
【天笠座長】  続きまして、秋田委員お願いいたします。
【秋田座長代理】  6名の先生方、ありがとうございました。
 まず、戸ヶ﨑委員から、割と小学校が園から学ぶという話は多いけれども、小学校のほうに園が学ぶことも必要ではないかというご指摘です。私は相互参観、双方向的な対話というのが重要ですが、何より小学校の校長先生が学区の子供たちを全て、私立民営も含めて全ての園や子供に声がかけられるのは小学校なんです。園はお互いは、園児の取り合いではないけど、そういう状況の中で、地域のまさにプラットフォームを小学校や中学校が学区になって、あらゆる子供が、先ほどの貞広先生が言われた社会的公正を、乳幼児期から小中高とつくっていくためには、連携接続ということが極めて重要であろうと思います。
 実際に園の先生方は、小学校を見たことがなく、今は先生が教えるだけではなくてペア学習があるんですねとか、ICTはこうやっているんですねとか、特にペア学習は、私たち園の保育でも一斉と個別はやっていたけど、こういうふうにやってみますとか言われることもあります。実は園の先生は、小学校の教科書を、1年生の教科書を見た先生はほとんどいなく、1年生は今、教科書ってこうなっているんですねと、せめて教科書だけでも園の先生が全部見られるようになったら随分違うのにというような現状があることも分かっております。そういう意味で、お互いが今後さらに深く学びあえることが重要だと思います。
 そして、荒瀬委員が言われましたように、架け橋期も含め、探究型の研修が今後必要になってきます。子供が探究できるためには、保育者も教師も探究を経験することが重要になります。これは園も小学校も中学校も同じだと思うんですけれども、探究とは何かというのは教育の質でありまして、園でもやっているところもあれば、小学校でも深くやれるところもあれば、全く分かっていないところもある。ぜひ教職員支援機構が、これからモデルを示しながら、探究型の研修とは何なのか、それを学校や園間も含めてどうつないでいくことができるのかということを、ぜひモデルを示しながら一緒に進めていただけたらいいなと考えているところでございます。
 貞広委員が環境を通しての教育ということを話してくださいましたが、私も環境というものを大人側がつくるだけではなく、子供が共に再構成したり、それによって自分たちの学校の環境を、自分たちが参画しながら学習の環境もつくっていくというのが、子供も教師もお互いがco-agency、すなわち共主体になって環境をつくり出していくために重要なことではないかと考えているところでございます。
 高橋委員が、ICTだけじゃなくて、ICTの中にもいろいろな環境をつくれるし、それからICTとほかの環境もつないでいくことができるのではないかと話されました。私は、園小の連携接続などにも関わらせていただきながら、小学校の先生に、生活科の教材室とか理科の教材室の倉庫に眠っているものは、子供たちがその単元以外でも、事前に出しておけば、自ら環境を通した教育をしながら、それから単元に入るとか、必要なときだけしまってあるのを出すのをやめて、もっと学校全体の環境を考え直すということが、これからの学習基盤を考えていく上で重要じゃないかとお伝えしています。
 そういう意味での環境ということを深めていくことが重要であろうと思いますし、ICTに関して、先ほど天笠先生のほうからもお話がありました。デジタルというよりも、私はデジタルも絵本もですけれど、メディアというものを子供にどのように学習対象に対する媒体を入れることが、その年齢において重要なのかということを考えていくことが重要だとお伝えしています。ICTだけじゃなくて、例えば電子顕微鏡を入れるとか、それから落ち着きのない子もプロジェクターで大写しをした途端に、自分がその世界に入り込んで、いろいろなことを学習で考えるようになるというようなことは、幼稚園や保育園でも、それから生活科で、自分の見ているアサガオがこんなに大きく見るとこうなんだとか、虫がこういうからだなんだというような、そういう学びの対象とメディアの在り方でしょうか。そこに図鑑や学校図書館もそうですし、様々な形のメディアをどう環境として構成していくのかという議論が必要だろうと思っています。
 その上で、先ほど石井委員が言われました、発達に応じたというところは重要であります。園と小学校の2年ぐらいまでというのは、世界中を見ても幼か小かどちらにいれるか、園に入れるのか、小学校がどこから始まるのかというのは、国際的に年齢がずれるんです。幼年教育という思想が日本にもありましたけれども、ずっと小学校低学年と園はつながっていく。それに対して、書き言葉でより自覚的になっていく小学校3、4年からの在り方と共に考えるべきであり、そうしますと、今後は生活科が、教科書ができて定式化されていったがゆえに、逆に実践が面白みがなくなってきていないか。もう一度、教科設置当初の目的に照らしてその在り方を考えていくことが必要だと思っております。
 それから、学級担任、教科担任は3年までは降りていく方向が議論されています。けれども、低学年には幼年教育とか、世界中の動向を見ても、落ち着いて子供が安心して特定の人と、愛着だけではありませんが、信頼したケアの関係を基盤につくりながら、学んでいくことが重要なところになる、そういう意味では学級担任が必要だろうと考えます。ただし一方で、学級担任が丸抱えとなるのは問題があるとも思います。チーム担任という発想が重要だと私は考えています。幼少連携は人生の分かれ目で、教師に隷属する従順な、教師に都合のいい子供を育てるのか、民主的市民を育てるために、それぞれ違う学習経験をしている子供たちを、あなたはどの園でどういう経験してきたのと言いながら、一緒に対話をしながら学級をつくっていくあり方なのかの分かれ目が、園から小学校への入学のところで起こるんですとお伝えしています。あなたたちはどちらの市民を育て、どういう資質を育てたいですかとお伝えをしています。そういう意味で、今後が大事かなと思っています。
 以上、ありがとうございます。
 【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 予定していた時刻にほぼなりましたので、今日はここまでということにさせていただきたいと思いますけども、今日の議題にもありましたように、カリキュラム・マネジメントということを、このたびの学習指導要領では導入したわけです。それがどんなふうに受け止められて、どんなふうに展開して、そして現在、どういう状況にあるのかどうなのか、そういうことを今日、私どもとして、その一端を確かめさせていただいたということかと思っております。
 その確かめ自体が、次の学習指導要領の在り方ということを検討していく上で、とても大きな意味、意義を持っていると、また、そういうことも今日確認できたのではないかと思いますので、今日の議論をさらに精査し、次に反映させていくという形で持っていければと思っております。
 ということで、今日はここまでということにさせていただきたいと思います。
 次回以降につきましては、事務局と相談の上、改めて連絡をさせていただきます。
 それでは、本日は以上をもちまして、閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)