今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会(第9回)議事録

1.日時

令和6年1月31日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 研究開発学校へのヒアリング
  2. その他

4.議事録

 【天笠座長】  それでは、ただいまから第9回今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会を開催いたします。皆様におかれましては、大変御多忙中のところ、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 本有識者検討会につきましては、報道関係者より、撮影及び録音の申出があった方について、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 前回になりますけども、第8回の会議では、「諸外国の動向等について」をテーマに、国立教育政策研究所、OECDの教育スキル局より御発表をいただき、意見交換を行いました。本日は、研究開発学校へのヒアリングを行いたいと思います。
 まずは、本日の議題に先立ちまして、まず、事務局より本日の流れと、配付資料について御説明をお願いいたします。
【石田教育課程企画室長】  事務局でございます。資料1としてお配りしております「本日の議題について」を御覧いただければと思います。
 次のスライドをお願いします。こちらにございますように、第4回で委員の皆様からお示しいただきました課題を踏まえまして、前回の諸外国の動向等に引き続きまして、今回は右のほうの赤でございますけれども、国内における参考となる知見を共有いただくということで、研究開発学校で研究に取り組まれている教育委員会、学校から御発表いただきたいと考えてございます。
 次のスライドをお願いします。本日、御発表いただく研究開発学校、この制度でございますけれども、教育課程の基準の改善、すなわち学習指導要領の改善に資する実証的資料を得ると、こういうことを目的とする制度でございまして、教育課程の特例を活用しながら、各学校において創意工夫を凝らした教育課程の編成、実施を行っていただいているところでございます。
 本日は、研究開発学校として教育課程の実証研究に取り組んでいただいております3つの学校、または当該学校の設置者より、資料2から資料4を提出いただいておりまして、それぞれの取組につきまして、15分ずつ御発表いただきまして、全ての御発表が終了した後、残りの時間で質疑応答、意見交換をお願いしたいと思います。
 次のスライドをお願いします。御発表をお願いする方々を御紹介させていただきます。まず、目黒区教育委員会の教育指導課長でいらっしゃいます、寺尾千英様でいらっしゃいます。よろしくお願いします。目黒区では、授業の1単位時間の見直しによりまして生み出された時間を生かして、子供たちの主体的な学びを引き出すと、こういった取組をお進めいただくなど、教育課程編成に関わる裁量を柔軟に活用しながら、学校ごとの特色ある教育課程の編成、実施の取組を進めていらっしゃる、この辺りが特徴でございます。
 お二方目でございます。春日井市教育委員会の教育研究所教育DX推進専門官をお務めの水谷年孝様でいらっしゃいます。よろしくお願いします。春日井市では、情報活用能力の育成を目指したカリキュラム開発の取組に加えまして、1人1台端末の効果的な活用、これを通しまして、生徒一人一人が自分に合った学び方を工夫する中で、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた取組を進めておられるのが特徴と存じます。
 お三方目でございます。愛媛大学附属高等学校の校長でいらっしゃる吉村直道様と、副校長の八木昌生様でいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。愛媛大学附属高等学校では、大学という外部リソースとの連携によりまして、生徒一人一人に応じた探究的な学びを可能とするシステム、あるいは教育課程の開発に取り組んでおられるのが特徴かと存じます。このお三方から御発表いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、参考資料1としてお配りしておりますのは、令和5年12月28日に、奈須委員が座長を務めていただいております、義務教育の在り方ワーキンググループ中間まとめでございます。委員の皆様方には、当該中間まとめを御説明し、昨年の中央教育審議会教育課程部会の動画を事前に御送付しておりますので、時間の関係上、本日の、御説明は割愛いたします。
 事務局からは以上でございます。
【天笠座長】  それでは、ヒアリングに入りたいと思いますけども、その前に、私のほうから今回の御案内となりますが、本有識者検討会は、現行の学習指導要領の実施状況を検証しつつ、今後の教育課程、学習指導要領、学習評価等の在り方も見据えた検討の論点を整理し、まとめることをその役割としているということであります。
 したがいまして、今回のヒアリングを踏まえた意見交換も、有識者検討会としての考えを論点としてまとめる形での運営を行っていきたいと思いますので、御理解、御協力のほどよろしくお願いをいたします。
 それでは、議題に入りたいと思いますが、まずは、目黒区教育委員会より、資料2を提出いただいております。寺尾様、御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【寺尾氏】  よろしくお願いいたします。東京都目黒区教育委員会事務局教育指導課長の寺尾でございます。
 それでは、目黒区における授業時数の工夫や、それを生かした取組について、御報告させていただきます。
 目黒区では、令和元年度から今年度までの5年間、区立小学校22校のうち、17校が文部科学省研究開発学校の指定を受けまして、研究を進めてまいりました。研究開発課題は、児童の学びの質と生活の質の向上を図るため、学校教育法施行規則第51条の規定によらず、1単位時間を40分とし、創意工夫ある教育課程、各教科等の指導方法、適切な授業時数の在り方について提言するというものでございます。
 目黒区研究開発学校が受けております特例は、1単位時間が40分、これを1コマとしている点でございます。学校教育法施行規則第51条では、例えば、第4学年から第6学年の場合、1単位時間45分とした年間1,015コマ分の授業を標準授業時数と定めておりますが、本区では、1単位時間40分とした年間1,015コマ分の授業を授業時数と定めまして、残りの5分掛ける1,015コマ分に当たります、5,075分の時間を生み出しております。生み出しました5,075分は、40分1コマに換算いたしますと、127コマ分にも相当いたします。この特例を生かしまして、検証1にございます、1単位時間を40分としても、授業内容、これは主に活動や教材を指しますが、この精選、重点化を図ることで、学力は維持、向上出来ること。そして、検証2と示してございますが、生み出した時間を活用することで、学校独自の創意工夫ある教育課程の編成を一層推進できること、この2点について、検証を行いました。
 目黒区の研究全体の概要は、こちらのスライドのとおりでございます。1単位時間40分での授業と生み出した時間の活用について、これからお伝えいたします。
 まず、生み出した時間の活用でございます。生み出した時間を活用した各学校の取組は、大きく分けますと御覧の4点に分類することができるかと思います。この4つの点は、今後の学校の在り方として、一層求められるものではないかと考えております。本日はいただいたお時間の中で、3校の取組を例に説明させていただきたいと思います。
 まず、1校目でございますが、こちらは、個別最適な学びの充実を図った中目黒小学校の取組になっております。中目黒小学校の取組といたしましては、単元内自由進度学習と個人探究の取組を新たに導入いたしまして、その取組の充実を図るために、生み出した時間を活用して、講師を招いての研修であるとか教材研究、教材準備を行うなど、教員間で共通理解を図りながら、授業改善を進めたということでございます。教員研修であるとか授業準備などを十分行うことで、今年度からは、2教科同時単元内自由進度学習にもチャレンジしております。2教科を同時に取り組むということで、児童にとって、自己選択の幅がさらに広がりまして、自己調整を図りながら、学習に取り組む児童の姿がより一層見られるようになりました。
 単元内自由進度学習は、教材コーナーを開設したり、児童用の学びの手引を作成するなど、準備段階から教員に負荷がかかりましたが、教員の時間外在校時間が抑えられているという意識調査結果も載せてございますが、このように生み出した時間を有効に活用することができていると捉えております。
 また、中目黒小学校では、このほか金曜日の6時間目に、マイタイムという学校裁量の時間を位置付けまして、その中で、児童一人一人が自分で興味ある学びを追究していくという個人探究、それから児童が自身の学習の状況から必要な補充、もしくは発展的な学習を選択して行うという自学自習の活動の2種類を実施しております。これらの取組の成果は、全国学力・学習状況調査の結果及び児童、教員の声にも表れていると捉えております。
 次に、油面小学校の取組についてでございます。油面小学校では、肢体不自由特別支援学級の児童や、他学年の児童同士の交流の充実、これを課題と捉えまして、生み出した時間の55時間分を多様な他者と関わりを深める活動の時間に活用しております。
 スライドの左側の表、週時程の位置付けとございますが、こちらのように、昼休みの後に関わりを深める時間というのを設定することで、児童集会や教員が開きます講座を児童が選択して参加する活動などを行いまして、通常の学級と特別支援学級の児童が同じ時間に一緒に活動に取り組むことが可能となりました。この取組の成果は、他者意識を問う項目の肯定的な回答の割合が全国平均より高い傾向にあること。それから中休みに通常学級の児童が肢体不自由特別支援学級に遊びに行きまして、交流する姿が増えてきたということなどにも表れております。
 3校目、中根小学校でございます。こちらでは児童の在校時間を少なくし、生み出した時間、これを教員に裁量のある時間として、授業準備や児童理解に取り組んでおります。令和5年度の教員対象意識調査では、放課後は教材研究や学年会、会議、研修の時間等に有効活用できていると肯定的に回答した割合が100%となりました。
 また、中根小学校では、生み出した時間を児童の学習の素地を高めるための時間としても活用しております。児童の姿勢保持や視覚機能と認知機能を向上させることで、児童が学習に集中して取り組みやすくなると考えまして、月に2回、目の追従性、跳躍性を高めるビジョントレーニングや、記憶力・言語理解力向上につながるコグニッショントレーニング等の活動に取り組んでおります。
 以上、3校の取組を御紹介させていただきましたが、目黒区の研究開発学校では1単位時間を40分といたしまして、生み出した時間を活用することで、標準授業時数にプラスすることなく、学校独自の創意工夫ある教育課程を編成、実施することというのができております。
 紹介いたしました3校を含めまして、17校の学校の取組の背景には、研究開発学校の共通のフォーマットを用いました学校グランドデザインの作成と共有を図ったということがございます。フォーマットを共通にすることで、学校を越えて共有した際に、自校の特色である取組というのが明確になりまして、他校の取組も参考としやすくなり、また、区内で異動した場合でも、フォーマットが共通であるため、前任校との違いが速やかに理解できて大変有効であると捉えております。
 第2といたしましては、教員一人一人が生み出した時間の活用を考えるということをかなり行っておりますので、このことを通して、教育活動の意義であるとか教育課程に対する理解、参画意識というのが深まったというところがございます。こちらの写真は11月に開催いたしました、研究発表会における各学校のポスターセッションの様子です。ここでは、本当に教員一人一人が自校の取組を生き生きと語る姿が見受けられました。教員対象等調査結果におきましても、肯定的な回答というのが上昇しております。
 次に、1単位時間40分としても学力を維持向上できているかということについて、検証の結果をお伝えいたします。本研究開発では、スライドにございます、全国学力・学習状況調査をはじめまして、東京都や本区独自で実施しております調査等の複数の教育データに基づき検証を行っておりますが、本日は主に、全国学力・学習状況調査結果を用いて御説明いたします。
 スライドに記載の数値は、国語科及び算数科における全国平均値と、研究開発学校の平均値を示しておりまして、研究第1年次に当たります令和元年度は、40分が1単位時間になる前の研究開発学校の学習状況となります。研究開発学校の正答率は、令和元年度、令和5年度ともに全国平均値を上回っておりまして、特に算数科は令和5年度の全国平均値との差が令和元年度より広がっているということから、5年間で同等程度以上の学力を維持しているということが分かります。
 また、学びへの意識につきましても、自己調整や学びへの主体性を問う質問に対しまして、「当てはまる」と回答した研究開発学校の児童の割合は、全国平均値よりも高い水準となっております。現に、児童対象調査における主体的、対話的で深い学びに係る質問項目では「当てはまる」と回答している児童の割合が、東京都の平均値を上回っているということからも、授業改善の推進が図られていると確認しております。
 1単位時間を40分とした授業におきましても、全国学力・学習状況調査から見る学力や学びの意識が維持できておりますのは、各学校の校内における研究による40分授業デザインの研究の成果であると捉えております。例えば、烏森小学校では個別最適な学びと協働的な学びの視点で、ICTを効果的に活用し、児童が主体的に学習方法などを選択しながら、教科等横断的な学びを実現するためのカリキュラムについて研究を進めてまいりました。
 また、目黒区といたしまして、研究の機会を設けるということも効果があったと捉えております。本区では、自治体として研究開発に取り組んでいるという特徴を生かしまして、研究開発学校の校長と教育委員会事務局で構成いたします、目黒区研究開発学校推進委員会を令和元年度から継続的に開催いたしまして、研究の方向性や取組内容の検討を行うとともに、こちらのスライドにもございます、丸1から丸3のように、学校間の情報交換の仕組みを構築することで、授業改善を図ってまいりました。これも学力学習への意欲が維持できた要因の一つであると捉えております。
 授業時間が40分の小学校から50分の中学校への進学についてでございます。中学校では、1単位時間が50分になり、授業時間が10分増えるということへの懸念、それから、それに関する御質問をいただくことがございます。目黒区立中学校の第1学年を対象にアンケート調査を行いました結果、45分授業実施校の出身の生徒と、大きな違いというのはございませんでした。また、時間を守って行動することや、学び方に関する意識を問う項目につきまして、40分授業出身校の生徒の肯定的評価が高いことから、40分授業で身につけた学び方が中学校生活でも生かすことができていると捉えております。
 最後に、令和6年度からの研究開発学校につきましては現在、申請中ではございますが、今後さらに取り組もうと考えてございます点を3点、説明いたします。
 第1は、自己選択学習の推進でございます。児童一人一人の自己調整力を高める時間を安定的に確保いたしまして、継続的に取り組む必要があると認識しております。令和6年度以降は生み出した時間を活用して、児童が自己のカリキュラム・マネジメントを図る、自己選択学習を目黒区研究開発学校の共通の取組として、推進いたします。
 第2は、一部の区立中学校における1単位時間45分授業の導入でございます。一部の区立中学校におきましても、1単位時間を50分から45分とすることで生み出した時間を活用して、自己選択学習や学校独自の教育活動に取り組みたいと考えております。
 第3は、他地区小学校と連携した研究です。他地区小学校においても同様の実践を行いまして検証していくことで、本研究開発の特例には汎用性があるということを示しまして、次期学習指導要領の改定のよき材料としていただければと思っております。
 以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、春日市教育委員会より資料3を提出いただいております。水谷様、御発表をお願いいたします。
【水谷氏】  よろしくお願いいたします。資料を共有いたします。本日は機会をありがとうございます。春日市教育委員会の水谷でございます。愛知県春日井市での1人1台端末とクラウドを活用した授業の様子と、そして研究開発学校として取り組んでいる情報活用能力の育成について、このような3点で、これから御説明をしたいと思います。
 こちらは、昨年度まで私が校長をしておりました、研究開発学校の高森台中学校の少し前の休み時間の様子ですが、ごく普通の公立の中学校です。もちろん今でも基礎となる人間関係づくりに力を入れて、その上でいろいろなことの取組を行っております。
 最近は、GIGAの環境のおかげで、日常的にこのような学びに変わってまいりました。具体の様子ですが、少し動画がかくかくかもしれませんけど、これは3年生の社会の授業の様子です。自分で教科書などから集めたものを資料にして、そして、クラウドで情報共有しています。今日は、第一次世界大戦が終わって、なぜ第二次世界大戦が始まったかという学びを、各自情報を集めて整理したものを共有して、そして相手を見つけて、席を離れてディスカッションをしています。もちろんいつもの仲間としている子もいますが、ちゃんと自分で探している子、そして、この後、少し後に出てきますが、1人で黙々とやりたい子は1人でそのままやっていいよという、このような形の学びに変わってきました。
 そして、これで終わりではなくて、終わった後は、下の黒枠の部分、アウトプットをします。時間内に終わらない子も当然います。この子は、ごく普通の生徒ですが、10分ぐらいで時間内に打ちました。終わらなかった子は持ち帰って、この後、家庭でこの続きを取り組みます。このようなことができるようになったのも、学習過程のそれぞれの部分で必要なことを繰り返し指導してきて、できるようになったことが非常に大きいと思います。
 情報の収集では、各自で教科書などから情報を集めて整理しますので、形はそれぞればらばら、しかし、必要な情報はきちんと集めています。これも教科書の読み方等をきちんと指導したことによります。
 美術では、見本になる動画を活用しています。もともと個別最適な教科だった美術、さらにこういうものを使って、作品の質がとても向上するようになりました。今までも紙媒体で学びの記録は先生との間で行われてきましたが、クラウドで共有することで、クラスの仲間と共有し、先ほどのディスカッションのときには誰が何を考えているかこれで見つけていく場合もよくあります。さらに、授業中のチャットもそれぞれの教科でよく使われるようになり、教室内のコミュニケーションが非常に増大しました。
 しかし、コミュニケーションが増大するためには基本的な人間関係がなければなりません。先生の板書も大きく変化し、学びの道筋を示すことが中心になりました。もちろん、クラウドでもこの情報は共有していますが、板書していくことも行われています。このような学びにより、これは最近の高森台中学校の中一の生徒が書いたレポートですが、このようなレポートを書くようになりました。2時間アフリカについて、先ほど御紹介したような学びを行った後、3時間目に1時間で書きました。自分だったらとても書けなかったなと思います。こちらは別の生徒です。
 このような子供たちの学び、どんなことをしているか、今20倍速で御覧いただいております。40分の授業、子供たちの活動のところを20倍速にして見ていただいていますが、最初にGoogle Classroomで何をするか確認した後、教科書から情報を集めて、ある程度集めたら、このように場所を変えたり線でつないだりして整理をしています。そして、ある程度整理したところで、まだ足らないなと思った情報をさらに教科書、資料集、NHK for Schoolの動画などから順番に集めていきます。子供たちの情報の収集、そして整理の仕方はもう人それぞれですが、自分の頭がすっきりするように自分で取り組んでいます。
 2回目の情報の収集が終わって、同じように線でつないだり整理をしています。3回目、この子は最後に何かタイトルになるような情報を集めて、そして前のところとつなげたりしているようです。時々ぱぱっと右側に映ってくるのが、ほかの子のチャットつぶやきです。ある程度、情報の収集と整理が終わりましたので、この子は頭にあった、この日の仮説を今、入力して、そして、根拠になる資料を今度は探しに行きます。検索をして、グラフを見つけてコピペしますが、どこから引用したかをきちんとURLを張っています。こういうことも指導してまいりました。2つ目のグラフです。
 3つ目のグラフは、教科書を使うことを最初から決めていたみたいで、それをちゅうちょなく貼り込む。少しまだ足らないなと思って検索を続けるわけですが、なかなか気に入ったものがないということで、画面が止まりました。このとき、ディスカッションしています。そして、ディスカッションが終わったら、この日の振り返りとアウトプットをこのような形で入力をしていくという、このような形の学びに変わってきました。
 もちろん、教室にはいろいろな子供たちがいます。例えば海外にルーツのある生徒もいますが、全く日本語ができなかった生徒もグーグル翻訳と、そしてほかの子たちの文字情報を自分で翻訳しながら、英語と日本語を行き来して、完全日本語を1年半でマスターをしました。また、写真はありませんが、教室に入ることができない、春日井市の場合は全ての中学校に校内登校支援室がありますが、そこに来ている子が自分のクラスのクラスルームを見て、そして、仲間がやっているものを見て少し参加したりといったこともできるようになりました。
 こちらは、保護者の了解を得て、公開をしておりますが、特別な支援が必要かもしれないということで親子で悩んだ生徒の手記ですが、手書きで書くと、とても自分の言いたいことを表せないけど、このようなものがあって、自分の考えをちゃんと表現することができるようになったし、クラスルームのおかげで見通しを持つことができる。そして、チャットでほかの子たちが何を考えているか、視覚優位の子が多いですよね。ということで、非常にそのことで迷わなくなったということをこの子は言っていて、この子の学びも進んでいます。
 こちらはごく普通の生徒の正直な感想ですが、下のURLのところに掲載していただいています。先生の説明を聞いて、板書を取る授業は自分が理解しているのか分からないまま進んでいたけど、自分なりにインプットしていくことで学びが変わってきた、そして深まったということを言っております。
 両方の研究開発学校の子供たちにずっと調査をしておりますが、以前の学びに比べて、このような変化があったと捉えています。また、どのような学びの場面が多いかというと、私たちが狙っている、自分でインプットしてアウトプットする時間が大変増えていると子供たちも捉えています。
 私たちが、このような学びをすることとなったきっかけは、3年前の休校のときの子供たちの学びの様子でした。学びではなく、ただ宿題をやっているだけの様子を見て、とにかく自分で学ぶことができるようにということで、大きな目標を共有して、小さなチャレンジを取り組んできました。
 まとめると、このような変化になります。いろいろな教科で意図的に育ててきたことが大きいわけですが、これまでは、どちらかというと、それぞれができることをやってきたので再現性がないのではないかということにぶつかりました。そこで、今は、研究開発学校として、これまで育ててきたようなことをきちんとまとめて、教科の時間ではなく、取り出してきちんと指導することで、さらに学びが進んでいくのではないかということで、私たちはこの図のようなことを考えて取り組んでいます。
 特に、情報活用能力をこのように分類をして、もちろん基礎操作の部分もやりますが、ここまで見ていただいた学びのように、問題解決の基礎の部分を中心に取組を進めています。このことができるように、研究開発学校として私たちは2年目ですが、カリキュラム編成をして、週1時間相当、年間35時間の「情報の時間」を新設し、これまで各教科で育ててきたことをまとめて育てるということに取り組んでおります。
 来年度、3年目になります。大変見にくいですが、このようなカリキュラムを作成をしておりますが、子供たちには、情報の時間の学びが、どの教科のどの部分につながっているかということを必ず伝えています。図で示すとこのような関係です。情報の時間で身に付いたことを各教科の学習、そして総合的な学習の時間、そして授業以外の場面で活用します。中学校では、この学びの姿を利用してルールメイキングもスムーズに進むようになりました。
 小学校の例ですが、情報の時間の学びが各教科につながっている具体例です。例えば、小学校2年では、最初は先生がつくった枠で整理をしていますが、情報の時間で情報の収集、整理の方法を身につけます。そうすると、枠なしでも自分で整理をしようとすることができるようになります。
 また、こちらは、4年の実践ですが、データを活用してグラフや表にするということを繰り返し練習しました。そのことを使って、国語の新聞作りのところではグラフを入れた新聞をつくるといったような、教科で指導しなくても、できるようになってきたということになります。
 中学校の例を簡単に御紹介したいと思います。高森台中学校の良さを動画で紹介しようということですが、こういうタイトルを御覧になると、動画づくりのことをするのかと思われるかもしれませんが、そうではなくて、動画の特性を生かした問題解決ができるようにとカリキュラムをつくっております。ですので、一度動画をつくったら終わりではなくて、何度か動画をつくって、その動画を見ながらみんなで学んでいくということをしています。当然動画をつくるためには情報を集めなければなりませんし、整理をしなければなりません。そして、さらにいろいろなアンケートを取って、データを集めて、それを根拠にするような活動が当然入り、取りあえず作ったものをみんなで見て、そこから得られるものは何か、何を変えるといいかということをみんなで議論して、また、つくっていきます。
 ということで、子供たちの振り返りには、このようなことが出てきます。要するに、他のものをつくるときにもみんな言えることだということが子供たちに伝わっています。いろいろなアウトプットをするとき、何を気をつけて、どんなことをすればいいかということがだんだん身についてくるようになっています。
 子供たちに、どんなことができるようになったか、調査をしておりますが、こちらは出川小学校の子供たちの振り返りです。当然、キーボードを早く打つことができるようになりましたが、情報を比較して分類したり、共通点を見つけたり関連付けたりすること、相手の考えや主張を自分と比べて、そして、アウトプットに心がけているというようなことが出てきております。
 こちらは中学校のほうです。生成AIを使ってまとめていますので、このような5つのことが多くの生徒から出ているとまとめることができています。また、情報の時間で学んだことをほかの学びに、どのような場面で使いますかについてですが、こちらは小学校です。総合、国語、社会などで情報の収集の仕方や整理分析の仕方が使える。また、グラフのつくり方、分かりやすいスライド、特にアウトプットをいつもしていますから、まとめる力が身についたというようなことを子供たちは言っております。
 こちらは中学校の生徒です。コミュニケーションや発表の仕方を各教科で生かしている。グラフを書くこと、情報が正しいかなど吟味して活用するというようなこともできるようになったと子供たちは自覚をしております。
 こちらは教員に聞いたものです。時間がなくなってきますので読み上げませんが、やはり各教科でやっていたときに比べて、まとめて指導することによって、非常に教科の授業がやりやすくなっている、そして子供たちの学びも変わっていると、そのような教員の感想も多く見られます。
 また、最後にありますが、こういうことで教科の時間の時間短縮になる場合も出てきたということも実感しております。
 以上、簡単に御報告させていただきましたが、このような学びをしていることによって、総合の探究では、各自で考えて深い学びにつながるようになりましたし、例えば、養護教諭が保健指導する場合も、何も養護教諭が説明しなくても、いつものようにやろうねということで、子供たちはちゃんと活動することができるようになりました。
 現在、2年目、そして3年目に向けてカリキュラムの見直しを進めております。各学年で繰り返し取り組んできたことで、問題解決の部分については、かなり各自でできるようになってまいりましたが、B2の情報手段の基礎的な操作については、基礎的なことには指導してきましたが、細かな操作や関数の活用など、データを活用するようになりましたので、その辺りの指導は見直さなければいけないということで、カリキュラムに手を入れているところになります。
 最後になります。最初に御紹介したような学びの姿は、ごく普通にビジネスパーソンが日常業務でやっていることばかりだと思います。今までであれば、教科書に書いていなかったり、体験的、そして系統的にまとめていなかったり、また、教員自身もよく分かっていなかったりということで、こういうものを教科の時間ではなく取り出して指導することが非常に有効だということを私たちは感じているところになります。
 早口になりましたが、愛知県春日井市で取り組んでいる現在の授業の様子と、研究開発学校で取り組んでいる情報活用能力育成について、御説明をいたしました。どうもありがとうございました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 続きましてということで、春日井市教育委員会より資料4を提出していただいております。吉村様、八木様、御発表をお願いいたします。
【吉村氏】  失礼します。愛媛大学附属高等学校です。学校長をしております、吉村です。八木副校長には……。
【天笠座長】  どうも失礼いたしました。愛媛大学附属高等学校様より、御発表をお願いいたします。どうも失礼いたしました。よろしくお願いいたします。
【吉村氏】  改めまして、愛媛大学附属高等学校です。よろしくお願いします。学校長の吉村です。八木副校長先生には、質疑応答のほうで具体の説明をさせていただきます。
 発表の流れですが、大きく3つを考えております。本校の教育課程等を含めて、学校の基礎情報をお知らせした後、学習の個性化に関わる生徒たちの頑張り事例の報告をさせていただきます。3つ目として、最後に、それらを支える仕組みと課題について報告をさせていただきます。
 まず、学校情報です。本校は、1学年定員120名の小規模校になります。総合学科の学校です。研究実績として、SGH、WWL事業をつないで、令和3年度から6年度まで、4年間で研究開発学校の指定を受けております。
 表示が本校の教育課程となります。右にあります紫色の部分、ここのところが、高大連携科目というところになっております。実際には、この教育課程の他に、並行して部活動といった正課外活動と、個人での独自な活動、取組によって学校生活に取り組んでいる、頑張っているというのが本校の生徒たちの動きになります。教育課程表ではなかなか分かりませんので、教育課程表の特徴などを分かりやすくポンチ絵にしたものが次の表示のものになります。
 その中でも、1年生では、課題発見のプログラムというのを中心に置いております。2年生で自分で見つけた課題を追求する、3年生において成果集約、そして成果の発信を考え、1年、2年、3年と本校では学びを継続しております。
 まず、1年生、どうやって学びをつくっていくかということなんですが、SDGs伊豫学という名称で、生徒たちが、愛媛大学7学部全ての協力を得ながら、いろいろな先生方から多様な学びを受けております。専門家の先生に先進的な学び、講義をしていただいて、多様な関心の種をまいていただいているというのが、1年生での特徴になります。
 2年生になります。2年生では、課題研究1として、生徒たちが自分たちで見つけた課題、または、大学の先生方に紹介していただいて、これやってみたいなという課題を見つけて、それらに取り組んでいます。1年生全員119名が、51グループをつくって、SDGs1からSDGs17まで、多岐にわたる内容について、それぞれの分野の先生方の協力をいただきながら、研究に取り組んでいるというのが2年生です。
 3年生は選択の授業にはなるんですが、課題研究1で研究に取り組んだあと、希望制で、さらに継続して研究に取り組んでおります。人数では45人の生徒たちが自分たちで継続してまだ研究したいと申し出まして、それを40テーマの中で、また、いろいろな研究に取り組んでいます。
 この課題研究2では、なるべく学会発表とか、いろいろな研究発表の機会を見つけて、どんどんそれを発信していこうという取組になっています。学会の発表ということに限定すると、この2つですが、ほかにもいろいろなコンテストとか、研究発表という事例はたくさんこの中から生まれております。
 ここからは、各事例について、少し紹介をしていきます。まず、1つ目が、プラガールズというチームによる研究です。海洋性細菌による海洋マイクロプラスチック問題の解決ということで、海に住みます微生物からプラスチックをつくると、海の生物からつくることによって、海の中で自然に分解ができるというものを考えて、その生成にチャレンジをしています。この取組は、本当に多く、いろいろなメディアからも注目を受けまして、いろいろなところで発表の機会をいただいております。
 また、研究助成もいろいろなところから注目を受けまして、高校生なんですが、100万円以上の研究助成を獲得して、今、この研究に取り組んでいます。左上に緑色のマークをつけておりますが、これは課題研究2の成果として、結びついているものという表示になります。
 次、2つ目です。2つ目も課題研究2の成果ということですが、学会で発表したというものになります。
 次、3つ目、これは、これも3年の課題、波及事例ということになります。自分の地元といいますか、双海という町、ここの町の活性化を図るというので、自分でそれに取り組んで、いろいろな人の協力を得ながら、そこに向けてチャレンジをしているというものになります。
 次は、トビタテ留学JAPANに採択をされまして、本校の生徒たちがチャレンジをしています。これは2年生の「グローバルスタディーズ1」という授業の波及の成果と我々は思っております。トビタテに行ってその後、地域の小学校とか中学校にも回りながら、高校生たちが、中学生とか小学生に向けて、モザンビークの状況を報告をして、海外交流の魅力というものを伝える、そんな活動に今、どんどんチャレンジをしているところです。
 次は、1年生のSDGs伊豫学という授業に触発をされて、高校生たちがこういうものに参加したいと、自分たちで見つけてきて、そこにチャレンジをして、海外の清掃活動に取り組みながら、また、こういう大会にも出て、いろいろなところで啓蒙活動をしているという事例になります。
 今度はフードロス問題の解決へのチャレンジです。これも1年生の授業、これが一つ種になっていると考えております。
 それから、7つ目として、本校、少し前の事例にはなるんですが、高校生起業家として、高校生の間に社長という肩書を持って、いろいろな商品をつくって販売をすることにもチャレンジした生徒もおりました。
 最後になりますが、これも1年生の授業で勉強を積んで、ドローンとかを使いながら、データを取りながら農業の研究に取り組んでいくというものです。これもまた、いろいろなところから賞をもらって活躍をしている事例です。
 ここからは、その事例はどのようにして生み出されたかということについて、少しお話をさせてください。愛媛大学では、高大接続推進室というものがありまして、そこの下に附属高等学校連携委員会があります。そこで、愛媛大学から、附属高校で行う連携授業の計画、そして実施、そして運営などに協力をいただいております。
 さらにその下に、連絡調整の具体的な機関として、課題研究コーディネーター会議という組織がありまして、ここに7学部、代表の先生方が集まってこられ、今年度、どのように運営をしていくかという相談をして、我々、本校教員と実際に協力をして、生徒の学びをつくっていくというシステムをつくっております。
 ほかにも、実はALネットワーク、学外の他大学との連携だとか他校との連携、そういうものもネットワークを結びまして、そこの協力を得ながら、本校の生徒たち、いろいろな活動の機会を見つけて、そこにチャレンジをしながら、先ほどまでのような事例をつくり上げています。
 これは学内に流れるBBSメールです。研究助成とかがこのように流れますので、生徒や教員が自発的にそれらを見つけて、自分たちの取組というものをつくっているということになります。
 このような形をで実践するにあたり、少し課題もあります。子供たち、生徒たちはいろいろな受賞をしたり、いろいろなところで頑張れば頑張るほど、闇も強くなると、そんなことが言えると思います。こだわりを持って、一生懸命頑張る子もおれば、それについていけなくなる子がいたりします。また、先ほどのプラガールズなんかも、月に多いときでは三、四回、県外出張といいますか、県外に出ていろいろな研究発表するということになります。高校生の段階で、月に三、四回、県外に出ていくというのも、大分小さな体に負担をかけているところがあります。それから、特別視扱いされるということもありますし、自分自身の中で、ここは強いというのは思えるんですが、思えば思うほど、例えば、ほかの分野がおろそかになっている、そこのところを強く意識してしまい悩んでしまうということもあります。
 あと一つ、3年生です。こういう活動を取り組んだ3年生たちが進路に向かうわけですが、一つの成果、そこだけに絞って進路ができればいいわけですが、なかなか日本の、特に国公立大学への進学を考えた場合、満遍なく学力というのを見られますので、どうしても頑張ってきたことだけでは、そこの進路実績は果たせないということになります。一度、自分の強みである得意な分野をやめて、ほかのところもまた力をつけなければと苦労している実態はあるということでございます。
 最後になりますが、頑張れば頑張るほど、いいからといって、必ずそこに何もかもが順調にいくというわけではありません。今、ここのスライドにありますが、日頃のテスト、そういうものが、例えば観点別テストでA、A、B、日常の観点別評価で、A、A、Bとか、例えばある小テストとかで高得点を取っていたとしても、心のところではストレスを感じていたりすることがあります。ですので、いい成績を取っていても、心にストレスを感じる生徒もいると思いますので、本校では月に1度「心のアンケート」をしまして、そういう生徒たちをピックアップをしながら声かけをしています。
 本当に頑張っている子たちが多いんですが、頑張れば頑張るほど、いろいろなところにストレスも感じたり、また、そこに大人が群がって、ここでも発表してくれとかということがあって、どんどんどんどん負担がかかっている実態もございます。これらに注意しながら本校では取り組んでいるというところが、今回の本校の事例紹介になります。
 以上です。終わります。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの3つの研究開発学校の御発表を踏まえまして、委員の皆様から御意見、御質問をいただき、進めていきたいと思います。それに当たりまして、いつものように、御発言のある方は挙手、あるいは、何がしかの意思表示をお願いできればと思います。
 それぞれ、御意見と、それから、その御意見をいただくに当たって、確認の意味を込めて御質問ということもあるかと思いますので、委員の方から、それぞれお願いできればと思います。
 それでは、どなたかということですけども、市川先生、御所用があるということをあらかじめ伺っておりますので、まず、市川先生からお願いできればと思います。市川先生、いかがでしょうか。
【市川委員】  どうもありがとうございます。少し早めに失礼いたしますので、一言感想なんですけれども、春日井市の中学校の事例、非常にすばらしいと思いましたので、少し感想だけ言わせていただきます。
 何がすばらしかったかと思いますと、3年前ぐらいと比べると、コンピューターの学校での使い方というのが随分進化してきたなというのを改めて感じました。3年ぐらい前、とにかくコンピューターが入ったというときですと、これだけ、例えば、先生が時間を短縮できましたとか、子供がどれだけの時間使っていますとか、使って何をやっているのかというような発表が、実はあまりなかったと思うんですけれども、今日のを見まして、子供たちの学習の質がすごく高まっているというのを感じることができました。
 まず、コンピューターの使いどころというのは非常にいいなと思います。これまでにないような学習の質が上がっているということと、それによって、子供たちの資質能力が伸ばされているということを感じました。
 それから、2番目として、これは情報の時間とか総合の時間を使いながらかなりやっていらっしゃると思うんですが、ほかの教科の中でも、かなり力が生かされているということがすばらしいと思いました。
 3番目に、教師の役割ということについてなんですけれども、教師がそんなに教えるということをしなくても子供たちが学んでいくという言い方もされていたと思うんですが、実際には、先生がいろいろなところで陰から支えているという面がたくさんあるんだろうと思います。コンピューターを最初に使うときには、もちろん基本的な操作であるとか情報収集の仕方とか、どうやってまとめるかということはしっかり御指導なさっている。その上に、子供たちが自発的にいろいろなやり方を考えるようになっていると思いますので、先生の役割というのもそこであるのかな。
 それからまた、ただ作品をつくって終わりではなくて、先生がコーディネートして、発表とか討論の場で学習者同士が関わるようにするということも、先生の授業のオーガナイズの仕方というのは大事だと思います。ですから、ぱっと見ると、コンピューターが入ればこういうふうになりますよとほかの学校が捉えてしまうと、これだけの質の高い学びにはなっていかないと思うので、教師もしっかり押さえるところは押さえているというようなことも改めて伺えるといいと思いました。
 私からは以上です。
【天笠座長】  今の市川先生のコメントについて、水谷様、もし何かありましたら、お願いできればと思いますけど、いかがでしょうか。
【水谷氏】  市川先生、ありがとうございます。確かに教師の役割は変わっていて一斉で教えるということではなくて、個別に動いているところの支援が非常に大事で、そういう意味では教師の引出しがたくさんないと、ぱっと見てぱっと支援してということと、誰かと誰かをつなぐということで、非常に今まで以上にいろいろなものが要求されるなということは感じておりますが、全体に一斉に指導するということは本当に減ってきたなと思っております。ありがとうございました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。また委員の方からいろいろ御意見、御質問等々があるかと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 そして、続けさせていただきますけど、今、発言を求められている委員の方、戸ヶ﨑委員と、それから秋田委員ということで続いております。それから、その後、荒瀬委員からもありますので、戸ヶ﨑委員、秋田委員、荒瀬委員の順でお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  3人の方々の先進的な御発表本当にありがとうございました。大変参考になりました。私からは、義務教育所管の立場から目黒区と春日井市に対して意見と質問をさせていただきます。
 まず、目黒区の御発表ですが、40分で授業は成立するのか、また、働き方改革に有効などの観点に注目されがちなわけですが、言うまでもなく「リソースの再配分」等により生み出された時間を有効活用して、特色ある教育課程編成に取り組むことに本質があります。
 本市の授業時数特例校においても、一部を総合的な学習の時間に振り替えることで、戸田型PBLの学びを進めており、相応の成果を上げています。
教育課程の重要な資源である授業時数については、学校裁量の幅を拡大することは、メリットとして、教育課程の編成主体としての自覚、すなわち学校のカリキュラム・マネジメントに係る学校自身のオーナーシップの発揮を期待することができると考えます。
 一方で、懸念されるのは、学校任せとなり、成果が見いだせなくなりことや、教師が主語となる時間の使い方になるなど、なかなか横展開できないことも想像に難くありません。
 御発表の中では、あまり、触れられていませんでしたが、恐らく目黒区は教育委員会としての伴走支援をしっかりと行っているものと推察いたします。
 単に学校裁量の幅を広げれば、学校の主体性を引き出せるわけではなく、支援する教育委員会に加えて、校長会の役割も問われてくると思います。このようなものを他自治体で取り組むに当たって、安易に40分にすればよいとなってしまわないように留意するという点で質問をさせていただきます。
一つ目は、学校が自ら生み出した時間を生かして、特色ある教育課程に臨むことができるように、教育委員会はどのようなサポート、ないしは主体性を引き出す工夫をなさったのか、加えて、教育委員会として苦慮した点や、現在課題と思っている点についてもお聞かせください。
 二つ目は、資料の6ページの下段の円グラフで、9%の先生が、あまり肯定的な評価をしていません。イノベーター理論でも16%のラガードがいると言われているので、多様性を考えると、決して多いわけではないのですが、その9%の先生がどのような感想を持っているのか、もしお分かりになれば、お伺いしたいです。
 また、1単位時間の変更という「リソースの再配分」にトライするのであれば、なぜ5分短縮の40分なのかという疑問が生まれます。現場の感覚であれば、大きな混乱なく進めるために40分にすることは、最適解であると思います。一方で、義務教育の在り方というもう一歩進めた視点で考えると、発達段階の大きく違う1年生から6年生までが、全く同じ授業時間でよいのかという疑問も感じています。
【天笠座長】  ちょっと今の件でというところで一区切りさせていただいて、少しやり取りさせていただいて、お答えを目黒区からお願いして、その後、春日市ということでお願いしたいと思いますので、今の件、戸ヶ﨑委員の御意見と御質問について、お答えできる点について、お願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【寺尾氏】  目黒区の寺尾でございます。1点目、区としての関わりというところで、特に初めて実施していく学校につきましては、学校づくりとしては、非常に基本的なことになりますが、その学校の持っている課題の整理、それから地域、保護者、願い、何より子供の実態を踏まえて、どういうことに時間を一番割きたいかというところ、一緒に対話しながら考えていくということを、管理職の先生と考え、中核の先生と考え、あと、学校全体と一緒に考えていくというところに結構時間をかけます。
 それから、時間ができたら本当はチャレンジしたかったことというのも掘り起こしというところは心がけております。このことをしっかり整理しておくことで、保護者、地域もしっかりと説明ができるということで安心感を持って、また、学校に送り出していただけるというところにつながっていると捉えております。
 それから、教員の意識についてでございます。確かに会議や研修の時間に有効活用できているかどうかというところは、そのことそのものだけではなく、今、学校の組織体制、それぞれの学年の状況、教員間の仕事分担というのがどうなっているかというところも含めまして、まだまだ改善の余地がある、もう少し何とかならないかと思っていらっしゃる先生がこれぐらいはいらっしゃると捉えております。
 以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。戸ヶ﨑委員、引き続き、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  ありがとうございました。次に、春日井市におけるGIGA端末の活用のお話についてです。水谷先生から、別の会議でも幾度となく伺ってきましたが、本日は改めて生徒目線で御発表いただき、お話を新鮮に伺うことができました。
 国の会議での発表は、きらびやかな実践や成果が語られることが多いですが、私は政策波及の観点からすると、その実践に至るまでの苦労や失敗談こそが非常に重要と考えています。
本市の非同期の学びを行った子供の学びを振り返ると、要所要所に基幹となる複数の課題があるものの、課題と課題の間は決して大人が決めたような、安定的な等間隔ではなく、その間にも子供が思いついた小さなタスクが満たされていました。教師は、このような学びの足跡が見られるような学びのコーディネートをしていく力が必要であると強く感じています。
 そこで、二つ質問があります。一つ目は、本日御発表のあった、学習の基盤となる情報活用能力の育成という観点から、GIGA端末を子供たちが使いこなすことができる環境整備は極めて重要です。そのような環境整備については、端末や通信回線といったハード面だけではなくて、教職員のマインドセットや授業改善の共通理解といったソフト面が極めて重要と考えます。そのような観点から、どのような取組をされてきたのか伺いたいです。
 二つ目は、全国的には、取組を始める8年前の高森台中学校と同様の状況にある中学校が、未だ全国的に多く存在しているように思います。私は、かねてより、総合的な学習の時間の充実や各教科の授業改善、そしてGIGAスクール構想の推進については、一般的に中学校に課題が多くあると考えています。
 高森台中学校だからできるのではなく、いわゆる普通の中学校でもできる教育課程の管理の秘訣や広く一般化するためのアーキテクチャーについて、何か先生なりに御示唆があればお教えいただきたいです。
 以上です。
【天笠座長】  今の戸ヶ﨑委員の御発言について、いかがでしょうか。
【水谷氏】  戸ヶ﨑先生、ありがとうございました。1つ目の進めていくに当たってのことですが、一番大きかったのはコロナで休校になったときに、動画とプリントはありましたけど、結局、学びには全くなっていなかったということです。常に自分たちが導かないとできないということを薄々は感じていましたが、それが現実に来てがんときました。
 ですので、まず最初に取り組んだことは、他でもお話したかもしれないですけど、とにかくアウトプットを子供たちに積極的にさせようということで、それをちょうどGIGA端末が来る前だったので、紙媒体でアウトプットさせようとしましたが、結局先生がインプットしているばかりでは、うまくアウトプットができなかったということが大きかったと思います。
 それと、端末が来てクラウドでいろいろな共有ができるようになったことです。先生たちの休校時代に、離れ離れでクラウドで情報共有をすると、お互いにコミュニケーションが離れていてもできることを体験し、授業をやっていなかったときなので「これ、授業で使ったら授業でもっとコミュニケーションがよくなるね」ということを感じて、その後にそれをそのまま授業に移したのです。それと同時に、今までもやってきたつもりだったことですが、教科書をしっかり読んで情報を集めて、それを整理すると、もちろん紙の付箋のときも同じようなことはやっていましたが、それよりも手軽なので、すごく進みやすい、さらに読み方をちゃんと指導すればできるという、その2つのところから進んだかと思います。
 だから、クラウドを使ってコミュニケーションがよくなる体験を先生たちがして、そして、それを教室で同じようにやろうとしたことと、従来もやっていた教科書の読み方とか情報の集め方をもう一度やり直して、それがデジタル上でやりやすくなったことから動き出したかなと思います。やり出した後は、今までは、ほかの子を見ていけないよと言っていた自分たちは反省をして、ほかの子たちからも、よく見て学んだほうが進むということを気がついて、積極的に見ようねということで、今も進めているところが大きいかなと思います。
 2つ目の中学校のことですが、実は以前から、委員の高橋先生にずっと御指導いただいていて、学んだことをつなげて考えようという授業づくりをしてきました。それは教科関係なく一緒だから、みんな教科を超えて検討しようということをしtえきました。通常、中学校ですと教科部会単位での授業研究が多いと思うのですが、そうではなくて、学年単位の授業研究ということで、小学校みたいな形で、しかも教科にこだわらずに、教えることは教えるけど、その後は、つなげて考えるということをずっと取り組んでいたことをしてきました。教科の壁が低くなっていたことが大きかったと思います。
 さらに、最初にお話したような活動は、どの教科でも共通ですので、まず、今までやったことないから、みんな同じことを各教科でやろうということで広まっていったことが大きいです。また、そういう学びが動いているということを紹介していますし、さらに、市内の教科間のつながりがありますので、自分の学校の教科でもやってみようかということで授業を見に来た先生は多くいます。
 そして、自分の学校へ戻って、自分の学校の教科でやると、今度は中学校ですので1人の先生が多くのクラスに入りますから、その波及効果は大きいわけです。そんな感じで授業が動くということが分かったら、みんな取り組むと、言わば偶然もありますけど、好循環で動き出したと思います。
 さらにいいのは、中学校の先生は教えたいことはあるのですが、自分の教科でこんなことができる生徒になってくれるといいなという願いも強いので、そちらのほうが前面に出てきたことが大きいのかと思います。市内に中学校は16校ありますが、現時点で小学校よりも中学校の実践のほうが進んでいることは明らかだと思います。
 以上です。
【天笠座長】  それでは、次に、秋田委員お願いしたいと思うんですけども、その後、荒瀬委員、その後、高橋委員、石井委員、この順でお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。秋田委員、お願いいたします。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田です。お三人とも、非常にわくわくするような御発表をありがとうございました。特に、私は義務教育のところで、目黒区と春日井市について、伺いたいと思います。
 まず、目黒区についてです。3点、伺いたいと思います。私自身が子供の学びの質をいかに上げていくような時間をつくっていくのか、また、学校だけではなく子供が自発的に家庭の学習等とつながっていくことができるかということが極めて重要だと考えています。その観点から、まず、1つ目ですけれども、先ほど戸ヶ﨑委員からも出ていましたけれど、図では6年生の話が出ていたんですけれども、40分授業というものが1年から6年まで通してやっていくということについて、どう考えられるのかということです。
 そして、2つ目には、例えばその場合、時間割の編成を40分連続して、モジュールじゃないですけれども、逆に80分休みは取るけれど連続というような、そういう組み方などを教科ではしたほうがいいというような、そういう知恵が生まれてきているのかどうかというようなところが伺いたいというのが1点目です。
 それから、最初に目黒区全体で、学校で独自の教育の裁量をしていくということで、4タイプあったというお話でございました。そして、最後の今後の課題として、さらに推進していきたいというところでは、個別最適ということと、それから地域とつながる学習ということが挙げられておりました。どちらかというと、学習の素地を生かすとか、それから特定の子供に向き合う時間を増やすというような話よりは、その2つのほうに力点が置かれているような印象を受けました。都として、今後、学校の裁量をさらに独自性を生かしていくということなのか、都としていろいろな試みをした上で、やはり個別最適であったり、地域との連携の時間をうまく使っていくことを普及していくことが、学びの質を同じ40分にしたときの、余裕時間の活用として有効であると考えておられるのかというのが2点目です。
 そして、3点目としては、都としてのグランドデザインというものをつくることによって、全体として分かりやすいというような支援をされるというようなことを言われていましたけれども、これがどのような形で生まれ、どれだけ有効なものとして機能しているのかということは、目黒区だけではなく、他区や他自治体でも有効なことかと思うので、まず、目黒区については、その3点を伺いたいと思っております。
 続けていきましょうか。
【天笠座長】  そうですね。先ほど来、一対一で質問が集中して、応答するのも大変かと思いますので、今のことについて整えていただければということで、続いて、春日井市のほうについてお願いします。
【秋田座長代理】  春日井市のほうは、高森台中学校や、小学校の事例を水谷先生が校長先生であられたときからの御報告や、それから先生の動画等で学ばせていただき、教職の学生などに紹介をしてまいりました。
 そういう意味で、それがさらに展開していることを大変興味深く聞かせていただきました。これは、開発学校としては、高森台中学校と小学校が指定を受けているわけなんですけれども、春日井市として、情報の時間とか情報というものの取り出しを行うということについて、どう考えたり、取り組んでおられるのか、それから、2つ目として、いいなと思ったのは、情報の時間とそれぞれの教科がどうつながっているかを教員だけではなく、生徒に見える化をしているというようなお話がございました。
 このようなことをどのようにしてアイデアが生まれてきたのか、今後、この学校だけではなく、他の学校などに時間とのつながりというものを見える化していくような方策というもののアイデアがあれば、ぜひ御教示いただきたいと思います。
 以上になります。
【天笠座長】  それでは、もう1人、委員の方の御発言を進めさせていただいた後にということで、荒瀬委員、お願いできますでしょうか。御発言をお願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬と申します。お三方、本当にありがとうございました。
 私は質問もあるんですけれども、基本的には小学校、中学校、高校ということの話を聞いていて、改めて思いましたのは、教育課程というのが一つの教育計画というだけではなくて、学習者と指導者との間でつくられていく、本当に生き物のようなものなんだなあということを改めて感じたということです。
 水谷先生がよくおっしゃいますけれども、信頼関係というのは非常に大事なんだということを改めて思いました。それぞれのお取組というのは信頼関係が確立していく過程、ないしは、信頼関係を大切にして取り組んでこられたことが今日の御発表になっているのかなと思いました。その意味で言いますと、愛媛大学の附属高等学校で、光が輝くと闇もまた濃くなるというのは、本当に気をつけなければいけないことだなと感じます。ついつい光ばかりが目に入ってしまいます。我々も、私は高等学校に長らくいたんですけれども、私のいた学校もSSHとかSGHとか受けて、目立つ生徒たちというのはどんどん目立っていくんです。けども、はたと考えてみたら、この生徒たちが光っている分だけ、光を見てまぶしく思っている生徒もたくさんいるんじゃないかなという気がいたしまして、学校としては、コンクールに出すということを止めたからいいというものではないんですけれども、学校としてコンクール、コンクールというのはやめようということにしたことがあります。
 そういったようなことをするというのも一つの方法であったんだと思うんですが、ここでは丁寧に心のアンケートなんかをお取りになって、生徒をちゃんと見ていらっしゃる。これは本当にすばらしいと思いました。
 それから、春日井の水谷先生のお話も、本当にすばらしいなといつも思いながらお聞きしていますけれども、今日もおっしゃった中で、問題解決の基礎を生徒が学んでいくんだと。それが、だから汎用性があって、いろいろなものにつながっていく。まさに教育課程がぶつ切りに行われているんじゃなくて、つながっているんだということを改めて思ったということです。
 これは多分、次の学習指導要領も展望されるわけですけれども、どういう学習指導要領になったとしても、こういう形で生きるような学びにしていくということが、学習者と指導者によってつくられていかなければならないんだなということを思いました。
 先日、ある学校の発表を聞いていまして、先生はとにかく話したいと、そういう性質を強く持っていると。準備したことは全部やりたいんだと。ところが、子供が思索し出したらそれを邪魔しないという、そういう見識も先生は持っている。だから、子供が考える時間がたくさん出てくると邪魔しない先生が増えてきて、結果的に子供はどんどん学び進めているんだと、そういう話を聞きましたが、高森台のお取組というのはまさにそうなんだと思いました。
 それで、目黒区のお話なんですけど、こちらもとても勉強になりました。質問がありまして、8ページのスライドです。生み出した時間の活用ということで、成果という話があって、ここで子供の声が、失敗してもいいことを知って失敗から学ぶことができたと。友達の個性を知ることができた、様々なことに興味関心を持つようになったと。これは、時間を生み出すという大きな枠組みを変えることによって、先生も子供さんも意識が変わることによって、こういうことが具体的に生まれてきた。あるいは、具体的な何らかの手だてがあって、これは45分を40分にしたら、必ずこうなるということでは決してないと思うんです。だから、ここにお示しになっていらっしゃらない具体の工夫がいろいろあったと思うんです。それについては、ぜひお聞かせいただきたいなということを思います。
 質問はその1点でございます。以上です。ありがとうございました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。もう1人、高橋委員の御発言の後に、今の先ほど秋田委員、荒瀬委員の問いにお答えできるところについて、お願いしたいと思います。高橋委員、御発言をお願いいたします。
【高橋委員】  高橋でございます。私からはコメントということでお願いさせていただきたいと思います。私、目黒区で言えば、同じく烏森小学校に関わらせていただいておりますし、先ほどから御紹介いただいていますように、高森台中学校には8年、校長先生も今は3人目ということで、ずっと関わらせていただいております。その観点から、少しコメントさせていただきたいと思います。
 市川先生からも教師の役割が変わってきたんじゃないのかというお話がありましたけど、私自身も長く学校に関わりながら、教員研修の考え方であるとか指導案づくりとか、当時と比べたら全く変わってきているなと思います。キーワードとして、子供一人一人を主語にしていくとか、探究が増えていきますと、1コマ1コマの単位で考えていくよりかは、単元単位で授業づくりを考えていかなきゃいけないとか、そういったことに、細かく見れば大きな変化があるなと思っています。
 また、時系列で見ていきますと、学習指導要領を柱にしているということについては全然変わりはないんですけども、高森台であれば、先生方の実態を考えて、先生に学んでいただきたい順番を、順番に見せていったなということはあるなと思います。指導要領、大切な言葉がたくさんあるんですけど、一遍に取り組もうと思うとなかなか難しいところがありますので、その都度、その都度、トピックを持ち上げて、取り組んできたと思っています。
 いずれにしましても、校長先生、先ほど申し上げたとおり、3人目なんですが、学習指導要領が柱になっているということで、継続性がこれで保たれているなと私は思っておりますし、先ほど失敗はというお話がありましたけど、こういった取組は到達目標とか達成目標としてではなくて、方向目標とか向上目標として捉えてきていますので、そういう失敗みたいなことも、認識可能な失敗というのはなくて、それも含めて前に向かっていっているというようなことで、ああいうすばらしい学校が生まれてきているんだと思っております。
 私からは、こういう学校と関わりまして、特に先生方とお話していて感じることは、学習指導要領とは別に、無自覚にも意識的にもと言ったらいいんでしょうか。教科はこうあるべきとか、授業はこうあるべきという思いが、非常に伝統的な思いとして私は強いと思っております。学校や先生、特に現場を離れている教育委員会から見て、授業はこうあるべきという伝統的な姿が、僕は学習指導要領よりも無意識に優先されているのではないかと思っております。
 つまり、授業がこうあるべきという伝統的な姿に、いかに学習指導要領を、のり面をパーツ、パーツに切り取って、テクニカルな用語として、いかにこう実装していくかみたいな、そういう取組がすごく強く行われていると。基本学校現場はPDCAが強く推奨されていますので、そういうやり方にどうしてもなる。根本的な変化が求めにくいわけです。PDCAで考えている、もともとの筋のところは正しくて、そこの筋をよりよくする、改善する。改良するために指導要領の用語をパーツとして入れていくみたいなことになると。そうなると、当然従来よりも指導時間はかかりますし、学校や準備もどんどん忙しくなって、うまくいかないというようなことだと思います。
 私、両校に関わらせていただいて、指導要領の理念をしっかり捉えて、フリーハンドで学校経営とか授業づくりを見直していくということ、その際に一人一人、1人1台の端末のつけを借りていくということが、僕は非常に重要だったと思っています。特に、受験学力的と言ったら弊害があるかもしれませんけども、個別の知識・技能みたいな指導方法に関しては、ここは伝統的な準備の得意分野ではございますが、今後、AIドリルであるとか動画といった学習ツールに変わっていく可能性がありますので、教科の中でいかに高次の資質、能力を育んでいくか、つまり探究的な学習の時間、探究的な学習を、どのように伝統的な準備を変えてやっていくかということをかなりやってきたなと思っております。
 この際、私は非常に大きなキーワードだと思っているのは、見方、考え方とか学習過程、学習指導要領や解説に書かれている用語だと思いますが、この見方、考え方や、学習過程、特に教科固有に教科ごとに書かれておりますが、先ほど水谷先生からも御説明あったとおり、これをある意味、教科共通のものとして最初に捉えて、どこの教科の先生ともアイデアを出しながらやっていったということが非常に大きいと思っています。
 さらに、その基盤として、いわゆる問題を解決したり、言語、言葉を使ったり、情報をうまく使ったりするような学習の基盤となる資質能力というのが、非常に僕は大きかったなと思います。
 結局、探究の活動は調べてまとめて伝えるといった活動の繰り返しになりますから、これはどこの教科でもやるわけで、それがしっかり背骨で動くぐらいできるようになっていると、非常にうまくいくのではないかなと思っております。
 ただ、こういうことは、実は大して難しいことを言っているわけではなくて、一般的な企業でも問題解決活動の繰り返しで、それをデジタルでふだんから使っているわけですから、こういう準備をすることがそのまま校務の改善にもつながりますし、実は校務の改善が授業の改善にもつながっているみたいな、こういうことになっているかなと思っております。
 従来程度の知識技能の習得であれば、驚くほど短い時間で準備が終わりますし、よく奈須先生がおっしゃる一斉指導は無駄が多いという言葉も、私、身に染みてよく分かりまして、ある意味、従来程度の知識、技能の習得は通り道、入試学力との二項対立ではなくて通り道だと思っていますので、こういったことを学習の基盤となる資質能力やデジタルを生かしていくことで、各自の資質能力の指導が充実していくということで、指導要領の理念に少しでも近づいていく、こういった取組だったんじゃないのかなと思っています。
 私も思いが強くてすいません。長くなりました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、先ほどの秋田委員と、それから荒瀬委員がそれぞれ御質問等々があったかと思いますので、簡潔にお答えというんでしょうか、御発言をお願いできればと思います。寺尾様からお願いいたします。
【寺尾氏】  寺尾でございます。それでは、御質問ですが、40分1コマの件でございますが、こちら、40分1コマではございますが、2時間続きで行うとか、60分に編成し直して行うとか、そういった弾力的運用というのは、それぞれの学校の教育活動に併せて行っているところでございます。
 2点目の4タイプ、おおよそ分けると4タイプの中から個別最適な学びの充実というところで、自己選択学習の推進というところを今後の取組の中で、一つ大きく打ち出しております。こちらにつきましては、そのほかの学習の素地を高める、それから子供たちと向き合う時間、地域の特色を生かすといったことにつきましては、それぞれの学校の生み出した時間の活用をどういった時間配分で行っていくかというところは、これからもそれぞれの学校に任せて、相談に乗りながら進めていくところではありますが、ともすればなかなか時間もかかり、先生たちの指導力も上げていかないと、それから、考え方も変えていかないと、なかなか授業改善に向かえないという意味では、自己選択学習というところに腰を据えて一緒に取り組んでいきましょうという意味も込めて、全校でしっかり取り組んでいきましょうと打ち出しているというところがございます。
 グランドデザインについてでございますが、これは、新しい学習指導要領になりましたときにグランドデザインをつくりましょうというお話がありまして、これって何をどうすればいいんだろうということに全校が、悩んでおりました関係もあり、御指導いただきながら、カリキュラム・マネジメントに生かせるグランドデザインの形を、目黒区なりにつくってきたところでございます。
 これをどう活用しているかといいますと、お話したことに加えましては、先ほどお話があったとおり、学校が主体としての自覚をしっかり持って、どういうことをやっていきたいんだということをかなり真剣に考えてつくっていかないといけない部分ですので、特に、校長先生がしっかりと整理し、教員にも、それから地域、保護者にも説明できるというぐらいの精度を上げられるいい機会になるということと、行政といたしましては、その校長先生の取組というところをしっかりとこちらもつかんで、必要な支援を行っていかれると、そういう活用の部分もございます。
 それから、子供たちの声、先生方の声というところ、こういう声が上がった背景につきましてですが、おっしゃるとおり、生み出した時間を子供たちの裁量部分を多くするということで、なかなか通常の授業ですと、全員がB基準以上に行くように本当に丁寧に支援をしていくというところがあるのですが、少し離れて見守って、試行錯誤や失敗も許容していくという時間が、個人探究の中等では許されることから、資料のような「失敗してもよいことを知った」という声が出てきたと思います。何しろ自分の興味・関心からやるとなると、自分は何が好きかという自己内対話といいますか、自分探しを徹底的にやらないと進めないので、そういった部分でも「自分の個性だったり、友達の良いとこだったりを知ることができた」という声にもつながっていると思います。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、春日井市の。
【水谷氏】  お願いします。今後、春日井市としてどう取り組んでいくかということですが、取りあえず、今、研究開発学校が2年目で、来年度3年目です。2校は、実を言うとつながっていない学校です。出川小学校の子たちが行く中学校は高森台中学校ではなくて別のところに行く。高森台中学校に来る小学校の子は違うので、大体このぐらいのことは、まず、総合の時間とか、それから意識的に、国語か社会の時間でできるだろうということがだんだん分かってきたので、最低限、まず、つながった学校で少し取り組んでみようということが、動き始めています。
 将来的には、当然35時間というのは研究開発学校の特例ですので、ほかの特例を使ってやれないかなということを、頭の中に描きつつあります。そして、校長たちにはこんな活動することが非常に学びの変化というか、子供たちの学びが変わっているので、今やれることを、まず、それぞれの教科でやってくださいねというようなメッセージを出して、取り組み始めているところになります。
 いずれにしても、まとめて最低限これぐらいはやったほうがいいのではないかということを、最後のスライドに出したような系統性とか、そういうものを出して取り組みたいなと思っております。
 それから、2つ目の教科とのリンクを子供たちに伝えているのはどうしてかというのは、これはもともと国語とか社会の時間を大きく削って35時間使っていますので、そこを削った、そこでやっていたことをここで取り出してやって、それがほかにも生きるよということを子供たちに、小学生にはあまり説明していないですけど、小学校高学年、そして中学生にはある程度説明していかないと、これは保護者にもまた伝わるので、大事なことかなと思って言っています。意識的にこの学習を取り出して、まとめてやっていくことが、ほかの教科にもつながって、みんなのためになるよということを常に意識させると、情報の時間の取組もかなり気合が入ってきますし、教科につながることでいいことがあるんだということを子供自身が分かると、さらに頑張ると、そのようなことで、このことをしています。これはずっとこの後も続けていきたいなと思っております。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、石井委員お願いしたいと思いますけども、石井委員の後、冨士原委員、貞広委員、奈須委員の順で御発言をお願いしたいと思います。石井委員、お願いいたします。
【石井委員】  では、限られた時間でありますので、聞こえておりますでしょうか。大丈夫ですか。3つのそれぞれの先進的な取組から非常に学ばせていただいて、それぞれ重要な問題提起をされているなということを思いました。既に各委員から出ていることでもあるんですけれども、こういった先進的な取組といったものを、改革の規模の問題といいますか、横展開していくといったときに何が重要になってくるかというところですよね。
 やはり、一つには、先ほどから出ていますように、光もあれば影もあるという辺り、ここをしっかりと見ていくことも大事かなと思います。様々に本当挑戦しながらやっている。でも挑戦していると当然迷いがあると思うんです。だから、迷いの部分も幾つか出てきたかなと、課題の部分とかそういった難しさみたいなものとかも。難しさがどういったところに生まれてきて、それをどういうふうに乗り越えたのかというストーリーが非常に重要だと思うんですけれども、そういったところは幾つか出てきていたかなと思います。
 特に愛媛大学附属高校さんの最後に出てきた辺りは、私は非常に共感するところです。幾つか、中学校を含めて、そういう状況はあるかなと思います。特に高校で課題研究とかをしていますと、青春を謳歌できているかなというか、マルチタスク過ぎるみたいな、青天井になっている状況が最近見られると思うんです。特にそれが、最近の年内入試、総合型選抜の拡大と、そことリンクしますと、授業、それから部活、それから学校外の塾に加えて課題研究とか探究となって、それが結構青天井化しがちなところがあって、その中で様々、尖ることはいいことだと思うんですけども、そこでいろいろな苦労も出てきているという辺りを率直に示していただいたことはとても重要かなと思いますし、個性化ということは、つまるところは子供たちの学校での生きやすさですよね。そこにつながっていってなんぼだと思うんですが、それが逆に機能することもあると。だから、この辺をどういうふうに克服していくのかという辺り、そこを、認知的なところだけじゃなくて心の部分を含めて、学校の居心地の良さみたいなものを見ておられるのは重要な視点かなと。その上で、さらにどういった取組を考えておられるかなということは伺ってみたいなと思いました。
 さらに、目黒区さんと春日井市さんの、春日井の水谷先生とは何度か御一緒することもあって、いつもすごいなと思って見ているところがあるんですが、横展開していくときには、往々にして、特色を打ち出すところがあって、逆にそれは一面化ということが起こったりするんですよね。だから、一面的なところが受け取られてしまうと逆に形骸化してしまって、実を上げられないということもあったりすると思います。ですから、目黒区さんにしてもそうですし、春日井市さんにしてもそうなんですけども、語られていない側面というか、幾つか委員の先生方から引き出されているところがあると思うんですが、ジレンマの部分があると思うんです。改革とか実践というのは必ず。そのジレンマを少し教えていただけたらなと思います。
 目黒区さんであれば、充分に語られていないことでいうと、聞きたいところは、40時間にするときの内容の重点化をどう行ったのかとか、そういったところの工夫とか、それによって教科の授業の40分の質といったものはどのようになっているのかということ。春日井市さんで言えば、一方で、教科を横断、特に中学校は確かに教科の壁がありますから、そこで横串を通すことは非常に重要項だと思うんです。しかし、一方で、教科の専門性あってこその横串というところ、そのバランスってあったりしますよね。矛盾があるからこそ強くなるというところがあると思います。だから、ある種、教科、アナログ、それから教師の役割、この辺が落とされて、教科横断、それからデジタル、それから子供中心ということだけが光を当てられてしまうと、何かちょっと違うかなと思います。
 実際、授業を見せていただいて思うことは、結局、教科の専門性が媒介となってデジタルな部分が生かされ、さらにそれが教科の学びの新しい形を生んでいるということです。それから、黒板とかもそうですけど、めっちゃたくさん書くとかもそうですけども、アナログな部分があってのデジタルと、そこのバランス。あるいは、教師の役割という、先ほども出てきましたけども、この辺のジレンマといいますか、なかなか光を当てられづらいところですけども、それをどのように捉えておるのかということをお伺いしたいなと思います。
 最後に一つだけ。今回、教育課程ということで言うと授業時数の捉え方についてです。この標準授業時数といったものについて、それぞれの先生方はどういうふうに捉えておられて、こうあったらいいなということを思っておられたら、伺ってみたいなと思います。つまり、この間、標準授業時数でもって、学校の機能である一定の学習水準を保障することと保護機能、この2つを担保するというのがあったと思います。
 一定水準を担保するということ、これがいわゆる修得主義の発想、それに対して保護機能、学校での在校時間を確保するということによって子供たちを保護すると。生活の保障みたいなものです。それらを標準授業時数を定めることによってやっていたということがあるわけです。しかし、自由進度学習とかそういったことをやっていくと、それぞれの子どもが時間をかけている各教科の学習時間といったものが個性化されていくというか、それで、授業時数、いわば授業のコマ数と学習時間が必ずしもイコールにならないと。だから、そこをどのように運用していくのかと。授業時数ではなくて学習時間という観点からも捉えていく必要があって、事実上、目黒区さんの取組というのは授業時数もさることながら、学習実数時間としてどうするかと、そういう発想かなと思いました。
 さらに言うと、それらが在校時間と必ずしもイコールではない。授業時数、それから学習時間、それから在校時間、これは区別して捉えるべきものだと思うんです。それらを区別した上でどのように水準保障と、それから保護機能、この辺を公教育としてどのように考えていけばいいのかという観点で考えていく必要があるように思うんですが、それでいうと、それぞれの先生方、現行の標準授業時数による様々な機能の保障のシステムをどう捉え、必要ならどのように変えていけばいいのかとか、そういうアイデアがあれば教えていただけたらと思います。
 すいません、長くなりましたが以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、委員の方のそれぞれの御発言の後、もしお答えできるところがありましたらお答えしていただくというようなことで進めさせていただきたいと思います。
 次に、冨士原委員、お願いいたします。
【冨士原委員】  よろしいでしょうか。本日は本当にたくさん学ばせていただきまして、ありがとうございました。私は全ての学校が初めて発表を伺うもので大変勉強になりましたし、伺ってみたいこともたくさんあるんですけれども、もうお時間がないということで、あと、ほとんどの先生方の質問とも重なりましたので、一つだけ、もう本当お時間がないので一つだけ、愛媛大の附属高校さんに確認、お尋ねなんですが、今やっていることは普通科では駄目で、総合学科でないと、こういう取組はできないでしょうか。総合学科であることで成り立っているのかどうかと、そこら辺が私のほうでつかめなかったので、御意見があれば伺えればと思いました。
 以上です。
【天笠座長】  今の御質問、後ほど愛媛の附属さんにお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】  時間のない中、ありがとうございます。大変優れた3つの取組について御報告をいただきまして、ありがとうございます。本日、愛媛大学附属高校の校長先生の光が強ければ影も濃くなるというのが、バズりワードに若干なっている感じですけど、本当になるほどと考えさせられて、そういう不都合な真実もしっかりと出してくださった御報告に改めて感謝を申し上げたいと思います。
 印象論ですけど、私、実は春日井の小中学校にわがままを言ってお邪魔させていただいて、実際に見せていただいているんですけれども、それと関連すると、例えば何か、何にも書いてみましょうと先生が言ったときに、何の取っかかりもなく何も書けない子供が、ほかの子供たちのものをちょんちょんと参照して、それをきっかけとして何か書けるようになるという場面を見せていただきました。これは光が強くて影をつくらないという相互参照だなと見せていただいたところです。
 意見一つと質問一つです。すいません、長くなって。1つは、春日井の授業を見せていただいて、今日の御報告とか、御報告が悪いということではなくて、御報告や高橋先生が時々共有してくださる動画では想像がつかないぐらいすばらしい授業で、実物のほうがすごいですと私が宣伝したいぐらいなんですけれども、ただ、ここで定型の授業が全く成立しないんです。全く1時間、1時間、完全に新規の事業なので、相当の準備も必要ですし、1時間授業をやる先生がすごく疲れると思います。
 あの授業をずっとやるということを想定すると、今の先生の持ちコマ数ということ自体も考え直さないと、働いている時間は短いけれども、先生の疲労度がまずいみたいなことになるんじゃないかと思うんですが、もしここに御意見があったらということです。
 3つになっちゃうかな。2つ目です。目黒区さんが40分に授業短縮されたということで、教科書は45分授業を想定して作られているわけですよね。また、もちろん教科書だけで教えるわけではないと思いますけれども、5分短縮するというのはハードルが低いものだったんでしょうか。また、今後、中学校に展開されるということですけれども、素人考えで言うと、中学校のほうが系統的な知識が多く、時間の短縮はそれほど容易ではないのではないかと想像するのですが、この辺りの工夫があったら教えてください。
 もし可能であればということで、スライドの目黒区さんの11枚目のところにある、4から6年の生み出した時間から学校裁量の時間を引いた平均から算出というのがよく分からなかったので、時間外でいいのと、そのうち教えてください。
 以上です。すいません、時間のない中、申し訳ありませんでした。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、奈須委員お願いいたします。
【奈須座長代理】  よろしくお願いします。目黒の中目黒小、それから春日井の高森台中はお邪魔して拝見もしたので、そういうバックグラウンドがあったんだなということでとてもよく分かりました。
 一つ確認なんですけど、40分授業ということを実施すること自体は、現行の学習指導要領でどこでもできますよね。45分というのは別に規定はないので、例えば立教小学校とか筑波大学附属小学校も40分授業をやっています。全然できると思いますけれども、目黒は40分を累積して、総時間数が別表第1よりも減っているというところ、それで学力も保障できているというところが新機軸なんだろうと思います。
 いろいろなところで授業を拝見したときに、必要な活動の時間を積み上げて45分になっている場合もあるけれども、45分という枠の中で習い性でやっていて、本当は別に30分でもできる授業を45分でやっていることも、ままあるんだろうなということを目黒の取組から気づかされました。
 時間数を浮かせたことの使い方、先ほど秋田先生もおっしゃいましたが、子供に使うのと先生が使うというアプローチがあって、先生が使うというアプローチがとても斬新だと思います。それによって授業の質が上がったり、先生方がやりたい授業を思う存分できたり、子供に丁寧に関わったりと、つまり、時間単位の仕事の質が上がるので、結果的に授業の質が上がり、学力が上がり、多分何よりもあると思うのは、夕方、電話が鳴らなくなっているんじゃないかと思います。学校が一番疲弊しているのは、夕方保護者から電話がかかって対応すること。これで一番疲れていると思うんです。
 そこを好循環に変えるためには授業の質を上げるとか、先回り先回りで子供に対応するということが大事だと思いますが、そのためには、先生に余剰の時間、自由に使える時間が必要で、だから、子供に使うのもいいんですけど、先生が使うということがとてもいい提案だと思います。子供の授業時間と学力は必ずしも相関しないということはとても大事なことで、質を上げてしまうということが一つの手かな。
 それから時数全体でいうと、福岡の附属が以前、内容を削減したり授業を効率化して、どこまで時数が浮くかということをやって、6学年で873時数という削減に成功しています。目黒は、雑な計算ですが、127を6掛けすれば762なので、そのぐらいはいろいろなやり方をしていけば、現行の授業時数の圧縮というのは可能なんだということが証明されつつある。圧縮すればいいものではないですけど、圧縮は可能なんだなということが見えてきたような気がしております。
 それから、高森台のほうですけど情報の時間という、これがないと結局動かないので、ある意味で、取り出しでこれまでなかったコンテンツを積み増しすることになるとは思うんですけれども、それを補って余りあるだけの授業の効率、質の向上、子供の自立性の確保ということをカリキュラム全体で構造的に実現しているということだろうと思います。これはとても、次の指導要領に向けて学ぶことが多いだろうと。
 教科等横断的な資質・能力といったときに、現行の教科をただ関連で結んでもやはり無理というか足りない部分があって、そこは外枠で準備しなきゃいけない。するとカリキュラムオーバーロードになる。それをどうしようということがありますけれども、それについて、いろいろな示唆を与えてくださったと思います。
 それから、もう一つは、情報の時間というのをコンテンツとして新たに設定するだけではなくて、それが各教科等の内容ときちんとリンクするということだと思います。これは以前の研究開発で山口附属が作る科というのをやって、作る科というのが情報の時間に近いんです。問題解決とか探究の作法、方法を特出しで教えるんですが、その際に教科学習とリンクさせていく。これはOECDなんかも言っていますけど、汎用的なコンピテンシーというのは脱文脈的に教えても駄目で、具体の文脈とリンクさせる。できれば複数の表面的には違う文脈で、それを使う。そして、表面的には違うんだけども、同じことだと気づくということが、転移可能性を考える上でもとても大事なことですが、そこを春日井の研究開発は目指しておられるんだと思います。
 山口附属も同じやり方をして、転移が効くということを確認していますけれども、これもすごく学ぶところが多い。ただ、これを各学校の独自なカリマネではなくて、学習指導要領で何か工夫するとすれば、かなり難しいだろうな、何かそんなことを今後考えなきゃいけないんだろうなと思います。
 それから高森台にお邪魔して、とても思ったのは、単位時間当たりの子供の情報処理量、さっきもありましたけれども、情報の処理の量と情報の処理の質がとても高い。私の感覚ですけれども、通常の学校の2倍か3倍の速度で進む。それは追い立てられるんじゃなくて、子供の情報処理の速度が早くなっているので、結果的に情報処理量が多くて、それが結果的に学びの深化につながっているという理解ですが、そうしていかないと、脱文脈的に情報の時間として最初教えたものがいろいろな文脈で使われるということにもなっていかないので、ベースの情報処理の量、あるいは情報の処理速度が上がってくるということと、情報の時間のような教科等横断的な積み増しの新たなコンテンツというもののシナジー効果ということを考える上では大事なことかな。
 これも本当にアナログではできなかったことで、ICTやクラウドについて高橋先生がずっとおっしゃっている、とても効果的な利用というのが効くんだなということを思いました。結局トータルで動いているんだということを、3つの学校のご報告から伺ったなと思います。ありがとうございました。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、今日の各委員からの御発言等々について、それぞれ御意見、御質問等々があったと思うんですけども、今日発表いただいた3つの研究開発学校、それぞれお答え、簡略で結構ですので、コメントをいただければということで、愛媛大学附属高等学校から順に、その後春日井市、そして、目黒区と、この順にお願いしたいと思います。まず、愛媛大学の附属高等学校さんいかがでしょうか。一言お願いいたします。
【八木氏】  失礼いたします。声、届いていますでしょうか。
【天笠座長】  もう一回、最初から発言をというか、今、声が届きましたので、もう一回お願いいたします。
【八木氏】  ありがとうございます。先ほどの石井先生からの御質問に対しまして、副校長の八木が回答させていただきます。
 本校の取組、さらに、その上でどういった取組を今後行っていくかという御質問かと思います。現在のところ、月1回程度、アンケート調査、心のアンケートを実施しているんですけれども、例えばこれを増やし過ぎても、生徒、それから教員、負担、増えてまいりますので、現在の取組を継続していくという方向で考えております。
 今後、先生方の指導を本当に信頼いたしまして、また、生徒が相談しやすい環境を整えることに力を注いでいき、継続してまいりたいと思っております。
 以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。
【吉村氏】  すいません、引き続き、私のほうからよろしいでしょうか。
【天笠座長】  どうぞ。
【吉村氏】  冨士原先生からいただいた総合学科でないと駄目なのかということについてでございます。
 私の考えでは、それはノーだと思います。普通科の学校でも十分できると思っております。それは、うちの学校の多分核になるところは、生徒、教員がいろいろなチャレンジをしたいというのを見つけてきて、それをやりたいと言っていることです。それを本当に、その環境をどうやって整えるかということですので、それは普通科でも、そういう関心は十分に持てると思います。それは、我々は1年生に、大学の協力をいただきながら授業はしていますが、社会全体の中に関心というものが落ちていますので、普通科の人たちも、そこの中から自分でそれを見つけてくるということは十分できると思います。
 あとは、それを支える仕組みとして、課題研究、課題学習というのはどの学校にもありますので、そこの中でそれらを支えていく、そういうプロセスをつくっていただければ、十分普通科の中でもやれると考えております。
 以上です。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、春日市さん。
【水谷氏】  お願いします。石井先生からいただいたことですが、今、私たちは何が必要かということを考えながら取り組んでいますが、これが横展開、例えば市内の学校に伝えたときでも、結局、動画をつくればいいんだとか、そういうコンテンツで終わってしまう可能性があるので、どんな学びを子供たちにさせたいのか、どんな子供を育てたいのかということとセットで、いかにどうしたら伝えられるかということが一番自分たちが悩んでいることです。そして、この先ですが、まだまだ自分たちは歩み出したところで、それぞれの教科から見ると、まだ質のことについては、確かにいろいろな問題点があると思います。
 ただ、質を上げようと思うと、今のことがまた崩れてしまうので、取りあえず、今のことをどんどんどんどん繰り返して量を重ねる中で、改善していくことしかないかなと思っています。
 なお、時間については、こういうことを取り出してやっているので、教科の時間は短くなるというのは先ほど御説明したとおりです。
 それから、もう一つ、貞広先生からありましたが、いや、そんなに取り組んでいる、研究開発学校だけじゃなくて、春日井市の先生の授業の取組はそんなに疲れているわけではなくて、なれてきたこともありますが、1時間1時間で授業を考えるのではなくて、単元単位で授業準備をするので、負担は減っていると思っています。
 子供たちは授業中に動いていますので、その見とりは大変なのですが、全員をあるひとつの方向に向けていくというような、そこで使っていたパワーとはまた違って、さらに、子供たちが学んでいる様子はすごく教師にとっては心地よい部分があって、あまり負担と考えたことがなく、今までやっていました。ただ、このようにやってきましたが、先生達に一度聞いてみたいと思います。
 以上です。
【天笠座長】  目黒区さん、お願いいたします。
【寺尾氏】  重点化と45分のハードルというところ、一緒のお答えになるかと思うのですが、学習指導要領の内容そのものはそのままやっていくということで、教科書を使っていく中のどの教材をどう使っていくかというところで重点化を図るということと、何より大きいのは、ICTがこれだけ進んできて、かなりこれだけでも時短が図れるということ。
 先ほど価値付けていただきましたが、先生に時間を配分している中で、授業準備がかなりしっかりと進んでいるという中での質の保障というところがあるかと思います。
 それから、標準授業時数につきましては、子供の滞在時間というのは、学校そのものには短くはなっているのですが、その受皿として学童であるとか、児童館であるとか、そういった福祉の部局との連携というところが欠かせず、安全安心できる居場所というところを確保しながらも、進めているという実情がございます。
 以上でございます。
【天笠座長】  どうもありがとうございました。それぞれ大変貴重な御発表と、それから、また委員のお一人お一人の方の御質問と、それから御意見、大変貴重なそれではなかったかなと思っております。
 1点、授業時数、それから、標準授業時数、学習の時間、それから学校の在籍の時間ということですけども、時間という委員の中の方には、からは、リソースという、資源の配分という、そういう指摘もまたあったかと思うんですけども、改めて学校の時間と授業時数の時間という捉え方というのも、それぞれ深く考えていかなければいけないと、そういう提起も委員の方からの御発言にあったかなと思っております。
 学校における時間ということについての我々、哲学が問われているようにも思えてならないんですけども、時間の操作という、そのレベルということもさることながら、学校における時間というのはどういうものなのか、どうあるのと考えるのかということも、今日の御発表の中の提起としてあったのではないかと思っております。
 いずれにしましても、研究開発学校というのは、学習指導要領の改訂に寄与する実証的なデータを提起すると。そして、振り返れば、これまでもそういうことについては折々に貢献があっての今日かと思っておりますけども、改めまして、このたびの改定の方向に向けてという意味における研究開発学校の提起というのは、まさにその方向だと思うんですけども、改めて、論点の提起というんでしょうか、研究開発学校の取組が、そういう取組を投げかけている、提起しているというのが今回の大きな位置付けになるのかなと思っております。
 したがいまして、今日の3校の発表を委員の皆さん、どんなふうに受け止められて、それが次の改定に向けて、どういう論点として、それぞれ実践から提起されているのかどうなのか、改めて、今日の過程をもう一度振り返っていただいて、その辺りところということをまた今後に引き継いで、進めていきたいと思っております。
 いずれにしましても、3つの研究開発学校、それぞれ大変貴重な取組を提起されたことについて、心より感謝申し上げたいと思いますし、今申し上げたような形で、私どもでさらにそれを深めていきたいというふうに思っておりますので、本日改めましての発表について、御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、今日はここまでということにさせていただきたいと思います。次回以降の有識者検討会の日程については、事務局と相談の上、改めて連絡をさせていただきます。
 どうもありがとうございました。閉会といたします。
 
―― 了 ――
 

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)