質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会(第2回)議事要旨

1.日時

令和5年1月16日(月曜日)13時30分~15時30分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果概要について
  2. 委員からの発表
  3. その他

4.出席者

委員

青木委員、植村委員、鍵本委員、齊藤委員、貞広委員、戸ヶ﨑委員、藤原委員、善積委員

文部科学省

寺門大臣官房学習基盤審議官、堀野初等中等教育企画課長、村尾財務課長、樫原教育人材政策課教員免許企画室長、北川財務課教職員配置計画専門官、廣石財務課課長補佐、栗山財務課課長補佐、一色初等中等教育企画課課長補佐
 

5.議事要旨

  • 資料1に基づき、村尾財務課長より説明。その後、質疑応答。
  • 資料3及び資料4に基づき、鍵本委員、戸ヶ﨑委員より発表。その後、意見交換。主な意見は以下のとおり。
  • ※資料2は委員欠席により欠番

●議題1.令和4年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果概要について

〇時間外勤務が指針の上限以内に収まっている教師の割合に着目すれば、働き方改革が各地域、学校で着実に進展していると言うことができる一方で、勤務時間が極めて長い層は依然として残っており、こうした層が勤務時間の平均値を大きく押し上げていることから、引き続き注目し、適切な取組をしていく必要があるのではないか。また、勤務時間が極めて長い層が残っている背景には、校長による勤務時間管理や教育委員会による監督が不十分である状況が存在していることが推察されるため、文部科学省による引き続きの指導・助言が必要ではないか。

〇客観的な勤務時間の把握の状況が大きく改善していることについては、高く評価することができる一方で、例えば、教職員それぞれの出退勤時刻をエクセルに記入し、教頭が取りまとめるという方法を採用している場合もあると聞く。これは、かえって管理職のコストが増えることにつながるので、今後は、ほぼ自動的に勤務時間が把握され、一定の水準を超えた場合には認識できるというような方向になることが望ましいのではないか。

 〇一般の市区町村と比べると政令市の方が、3分類に基づく取組がより進んでいることが概ね示されているが、この取組の進捗度の差と在校等時間等との関連の有無についても注目すべきではないか。また、今後の魅力ある環境づくりの検討に当たっては、規模が大きく政策実行能力の高い政令市とそれ以外の市区町村との置かれている状況の差も踏まえて考える必要があるのではないか。


●議題2.委員からの発表について

〇給特法が制定された当時と現在とでは、教師の勤務の状況は大きく異なっており、引き続き、働き方改革の取組を進めることが第一であるが、給特法や人確法の精神は生かしつつ、現状を踏まえて、給与面で何らかの見直しは必要ではないか。
 
〇教員採用試験の倍率低下が大きな課題であり、教職の魅力を感じてもらい、教職を希望する学生を増やすために、教師の業務の明確化・適正化や教職員体制の充実による働き方改革を進め、教師の業務負担の軽減を図ることが必要ではないか。
 
〇教師の職務は、給特法の制定過程においても指摘されたように、教師の自発性、創造性によるところが大きく、どこまでが職務であるかを判断することが難しい。このことは、現在に至るまで変わっておらず、教師の給与の在り方を検討する際には、勤務時間の内外を切り分けることが難しいという教師の職務の特殊性について十分な議論が必要ではないか。
 
〇現在の教師の勤務の状況を基に、給料月額の4%という教職調整額の割合を変更するのみとした場合、教師の現状の勤務実態を容認することにつながり得ること、また、勤務の状況が個々の教師により異なっている中で、一律に教職調整額の割合を高く引き上げるのみとした場合、国民からの理解が得られるかということも課題ではないか。
 
〇一般公務員と同様に、時間外勤務手当を支給する仕組みを採用しようとすれば、現在の学校現場の体制の中では、管理職による時間外勤務の命令や勤務時間管理の在り方が課題となるのではないか。
 
〇服務監督権者である市町村教委間の時間外勤務の考え方の違いによって、地域による給与面での差が生じ得ることも考慮する必要があるのではないか。同様に、個人間でも差が生じることになるが、効率的に仕事を進め、時間外勤務をしない教師ほど給与が少なくなることへの理解が得られるかという課題もあるのではないか。
 
〇現在のいわゆる超勤4項目をどう整理するのかという課題もあるのではないか。
 
〇学校現場で、真に忙しい職務を担っている教師に対し、その職位や職務の負荷に応じた処遇の改善についての検討も必要ではないか。
  様々な課題が複雑化する学校において、多様な教職員集団を抱え、組織的、機動的なマネジメントが求められる校長や教頭等の管理職や、管理職の下で、学校組織マネジメントの一部を担う主幹教諭や指導教諭等、さらに、学級担任や特別支援教育コーディネーター、担当などについて、その職位や職務の負荷に応じた適切な処遇の検討が必要ではないか。
 
〇働き方改革の取組が着実に進展している一方で、市町村間や学校間で差があることが課題である。平成31年1月の中教審答申で示された3分類の整理に基づく業務の明確化、適正化の学校現場における進捗状況を明らかにした上で、学校や教師が担う業務を更に明確化して、その適正化を図る方策の検討が必要ではないか。
 
〇市町村や学校によって働き方改革の推進への意識に差があることから、その取組状況を自己点検し、やるべきことを明確化できるようにする仕組みの検討が必要ではないか。その際、ICT技術を活用して、保護者への連絡や入試に係る業務、採点業務等のデジタル化など業務の効率化を図ることについても、併せて検討すべきではないか。
 
〇支援スタッフの配置が、働き方改革を進める上で大きな効果をもたらすと考えており、全国での効果的な活用の状況を踏まえた上で、例えばガイドラインのようなものを策定するなど、更に効率的、効果的に活用するための方策の検討が必要ではないか。
 
〇教育が最大限の効果を上げるためには、教師が余裕を持って一人一人の児童生徒に向き合える環境が必要であり、そのために、教職員定数の改善、充実の検討が必要ではないか。小学校において35人学級を進めているように、一人の教師が対応する児童生徒数を見直すことが必要であり、中学校における35人学級の実施や通級指導教室における配置教員数の更なる改善についても検討が必要ではないか。
 
〇各学校が抱える課題は一様ではなく、地域や学校の実情に合わせて、学校の体制が構築できるような柔軟な仕組みの検討も必要ではないか。例えば、多くの中山間地域を抱える県では、急速な少子化への対応は大きな課題であり、ICTを活用した遠隔授業を進めたり、不登校児童生徒に対して校内の別室で指導したりする必要がある。児童生徒数が減少する地域にあっても、教育の質が確保できる方策の検討が必要であり、こうした多様な課題に対応できるよう、柔軟な教員配置の在り方について検討が必要ではないか。
 
〇スクールカウンセラー等の専門家や教育支援のためのスタッフなど、学校がより多様な人々で構成される組織になっていく中、管理職や主幹教諭等を含めた組織的、機動的なマネジメント体制の在り方の検討も必要ではないか。
 
〇多様で優秀な人材に教職に就いてもらえるようになる仕組みの検討が必要ではないか。特別免許状の積極的な活用等はもちろん進めるべきだが、それ以外にも、例えば、かつて行われていた教職に就いた者への奨学金返還免除制度のように、教職に就くことへのメリットを得られる仕組みの導入を検討できないか。
 
〇教師が学校で教えるべき内容の検討や、児童生徒や教師の負担も考慮した教育課程の在り方についても検討が必要ではないか。
 
〇日本の教育は、教師一人一人の献身性などによって支えられてきた。今後も、全人的な教育などの日本型教育の強みを維持していくには、献身的な教師の努力だけに頼ることはできず、働き方改革、処遇改善、少人数学級をはじめとする定数改善、様々なスタッフの充実などによる総合的・一体的な改革が必要ではないか。
 
〇給特法こそが、学校の長時間労働の元凶とする見方には疑問がある一方、給特法の制定当時と現在とでは、教師の置かれた状況等が大きく異なっていることから、何らかの給特法の見直しは必要であると考えるが、給特法や人確法の精神は今後も残していく必要があるのではないか。
 
〇頑張っている教師が報われるよう、メリハリのある給与体系にすることが必要ではないか。教職調整額の多少の増額のみでは不満の解消にはつながらないのではないか。また、時間外勤務手当化についても、管理職の事前承認においてトラブルが予想されたり、仕事の効率化を実践している教師ほど給与が相対的に減少してしまうなど働き方改革へのブレーキになるおそれがあったりする。そのように考えると、職位や職務の負荷に応じたメリハリのある給与体系にすることが、優先度としては高いのではないか。
 
〇学級担任や特別支援教育コーディネーター、道徳教育推進教師、授業改善の推進役である研修主事、さらにはGIGAスクール構想の推進の中核を担っている情報主任に対する手当の新設も考えられるのではないか。また、管理職の成り手が不足しているため、管理職手当の拡充も検討が必要ではないか。
 
〇学校規模や生徒指導の困難度によらず、主任手当の額が一律であることに学校現場から疑問の声が挙がっているところ、教師は、他の公務員と異なり新卒者もベテランも同等の職責となる現状も、今後在り方を検討していく必要があるのではないか。
 
〇業務改善を本気で進めるためには、校長自らが主体的に、教職員と一丸となって取り組んでいく必要があるとともに、基礎自治体の教育委員会による取組が重要ではないか。
 
〇働き方改革を進めるにあたっては、「子供のため」という想いで教師の仕事が無尽蔵に広がらないよう留意するとともに、子供と直接向き合わない時間を意識的に確保するといった視点も重要ではないか。
  また、働きやすくなったとしてもやりがいを失ってしまったら本末転倒であり、上手く両立させるようなインセンティブ設計が必要ではないか。
 
〇令和3年に、40年ぶりに小学校の学級編制の標準が35人に引き下げられたことは画期的であり、中学校も、令和8年度から35人となるような法改正を検討すべきではないか。また、例えば、主幹教諭の定数算定を、校長や教頭のように一般の教諭とは分けて行うなど、学校のマネジメントが組織的、機動的に行われる体制を構築する必要があるのではないか。
 
〇事務の共同実施の促進や事務職員の質の向上などと並行して、教師が教師でなければできないことに全力投球できるよう、特に教員業務支援員の全校配置が必要ではないか。
 
〇将来的には、義務教育免許や特別支援学級の免許、理数免許や技術家庭科を一体で教えられる免許の新設も考えられ、そうしたことが、STEAM教育等の新たな教育課題に対応できる教師の養成につながるのではないか。
 
〇景気動向や他の公務員における人材確保の状況、都道府県間の違い等を踏まえながら、採用倍率の低下の原因について分析することが必要ではないか。
 
〇優秀な人材についての定義が必要ではないか。現在求められている人材は、変化を前向きに捉えて、挑戦しながら学び続けるような教師であり、そのような教師にとって必要な魅力ある環境というのはどういうものか、検討する必要があるのではないか。
 
〇給特法には、「教育職員の健康と福祉を害することとならないように勤務の実情について十分な配慮がされなければならない。」と規定されており、勤務時間管理の必要性は給特法制定当時以来何ら変わっておらず、令和元年の改正給特法に基づく上限指針もある中で、依然として長時間勤務の実態があることについて、学校や服務監督権者である教育委員会の責任は非常に大きいと認識すべきではないか。
 
〇負担が大きい教頭をはじめ管理職の業務を補助する職員を配置するという方策も検討すべきではないか。
 
〇コミュニティ・スクールが学校を支援する機能を果たすことを期待されていることは理解する一方、業務を削減するに当たっては、保護者や地域住民との摩擦が生じる場合には、首長や教育長が先頭に立って対応するべきではないか。
 
〇小学校教員は持ちコマ数が多く、学習評価の充実や多様な教育活動に向けての準備が学習指導要領において求められている中、1コマにかけるコストが大きくなっている。教師の本来業務の中核である授業がおろそかにならないようにするためにも、持ちコマ数を軽減する必要があり、教職員定数の在り方を検討するに当たって考慮すべきではないか。
 
〇メリハリのある給与体系を構築し、学級担任手当を新設することは良い工夫である一方、学級担任は務めていなくとも他の業務を頑張っている教師の処遇の在り方についても考えていく必要があるのではないか。
 
〇学習指導要領はあくまで大綱であるという意識を持ち、各学校や教育委員会が教育課程を運用する能力を学校や教育委員会が持つことが必要ではないか。ただし、学校や教育委員会だけでできることには限りもあるため、産学官と連携した外部人材の活用や校内組織の再編等により、組織力を強化することで学習指導要領が求める教育活動の在り方に柔軟に対応することが必要ではないか。
 
〇勤務実態調査においても、授業時間自体は増えており、子供と向き合う時間という言葉の使い方には慎重になるべきではないか。今後は、単に子供と向き合う時間の量のみではなく、その質についても考えていく必要があるのではないか。
 
〇校長をはじめとした教職員と地域や保護者のコミュニケーションの一層の充実が重要ではないか。学校が地域に対して意見することが必ずしも容易ではないならば、学校運営協議会を中心として、PTA会長や町会長等との対話を日常から活性化していくことも重要ではないか。
 
〇標準授業時数を含めたカリキュラムの在り方についても、今後検討が必要ではないか。その際には、子供たちのためにも、教師の働き方改革のためにも、内容を精選していくことが必要ではないか。
 
〇学校や教育委員会の取組のみでは、在校等時間の更なる削減が難しい側面もあり、制度面での取組も必要ではないか。
  教師の頑張りを具体的な成果として現すこと、さらには、優秀な人材が持っている力をいかんなく発揮させることが大切であり、それらは当然、まず校長が取り組むべきことである一方、その裏づけとして法令等の様々な制度の整備も併せて必要になってくるのではないか。
 
〇教員を養成する大学と、学校あるいは当該地域の教育委員会が連携をして、大学の教員養成カリキュラムの中で学校現場における実地経験を十分に積むことなどが人材育成の上では重要であり、具現化していく必要があるのではないか。

〇持ち帰り業務についても把握が必要であり、どのような業務を持ち帰っているのかについて整理することも必要ではないか。
  保護者対応や生徒指導は負担感が非常に大きいと考えており、そのような部分は手当上も評価をすることも検討すべきではないか。
 
〇各教師の持ちコマ数については学校内で差が大きいが、その背景には、適切な人事配置ができていないという課題があり、更にその背景には、そもそもの人手が足りないという実態がある。学校現場における人繰りに委ねるのではなく、教育委員会において必要な人員を客観的に把握できるようにすべきではないか。
 
〇業務改善をして魅力ある職場にしようとしても、一部の発言力の大きい教師の主張が通ることで、自らが取り組みたい業務改善を実践しづらい雰囲気になり、ストレスを感じる教師も少なくないのではないか。
  また、学校現場の教師に真に業務改善が必要だと感じてもらう事が重要であり、そういった考え方を定着させるためにも、求められている人材像を明確に示す必要があるのではないか。
 
〇新規採用職員は、魅力ある職場の条件として、自分が成長できる環境を求めているため、体系的に若手の育成ができる仕組みを整え、自分自身が成長しているという実感を持ちながら、仕事のやりがいを見いだせるような職場環境にすることが重要ではないか。
 
〇義務標準法制定当時と比較すれば、加配定数の充実も進んでいるため、教員定数1人当たりの持ちコマ数は減少していると考えているが、1コマ当たりの負担の重さについては、別途考える必要があるのではないか。
 
〇取組状況調査の結果においても、自治体間、学校間における取組の進捗度の差が明らかになっており、勤務時間が極めて長い層の勤務時間が減少しないのか、組織全体として取組を進めていてもなお減少が難しいのか、留意する必要があるのではないか。

〇教師が受けうる手当には多様なものがあり一括して扱うとイメージがしづらいため、報われるべき頑張っている優秀な教師をどのように処遇に結びつけていくべきなのかの検討に当たっては、例えば、諸手当のうち、このような性質のものであれば適当そうである、などと特定して検討できると、今後更に議論を深めていきやすいのではないか。
 
〇ICTの活用により学習評価を効率化できる可能性はあるが、評価すること自体が目的化することのないよう効果的に活用して、子供たち一人一人を多面的に評価することが重要ではないか。

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文部科学省初等中等教育局財務課企画調査係

(文部科学省初等中等教育局財務課企画調査係)