通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議(第3回)議事録

1.日時

令和4年9月9日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、WEB会議にて開催

3.議題

  1. 都道府県教育委員会からのヒアリング
  2. 市町村教育委員会からのヒアリング
  3. 小枝委員からの報告
  4. その他

4.出席者

委員

荒瀬克己座長 池田彩乃委員 市川宏伸委員 市川裕二委員  氏間和仁委員 奥住秀之副座長 喜多好一委員 小枝達也委員 櫻井秀子委員 笹森洋樹委員 滝川国芳委員 竹内哲哉委員 中田寛委員 野口晃菜委員 平野真理子委員 藤井和子委員 馬飼野光一委員  宮﨑英憲委員

文部科学省

山田泰造特別支援教育課長 生方裕特別支援教育課特別支援教育企画官 菅野和彦初等中等教育局視学官 

オブザーバー

独立行政法人国立高等専門学校機構
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害児・発達障害者支援室
国立障害者リハビリテーションセンター

5.議事録

【荒瀬座長】  皆さん、定刻となりましたので、ただいまから、第3回通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議を開催させていただきます。御多忙の中、御出席いただきまして、有り難うございます。
 本日も現下の情勢を踏まえて、ウェブ会議システムを活用しての開催とさせていただきます。
 本日は、梅田委員が御欠席であるとお聞きしております。
 まず、事務局の体制に変更がございましたので、御報告をお願いしたいと思います。引き続き、資料の説明もお願いいたします。
【生方企画官】  事務局でございます。本日の事務局の体制につきましては、座席表に替えさせていただきますが、前回の会議より体制に変更がございましたので、御挨拶させていただきたいと思います。
 前任の小林に代わりまして、9月1日付で特別支援教育企画官に着任いたしました生方でございます。私は平成15、16、17年、3年間、特別支援教育課に在籍しておりまして、当時、15年3月に、「今後の特別支援教育の在り方について」という提言がなされて、まさに特殊教育から特別支援教育への転換といった時期に経験をさせていただきました。それからもう十数年たってございまして、かなり特別支援教育が進んできているのを実感しているところでございます。まだまだアップデートしないと分からないことがございますが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、資料の説明をさせていただきます。
 まず、会議の進め方についてでございます。本日もウェブ会議システムを活用することから、委員の皆様には御発言、御発表等に当たってお願いしたい事項を送付しておりますので、そちらを御参照いただきますようお願いいたします。
 続いて、本日の配付資料でございますが、議事次第、資料1から4と参考資料をお送りさせていただいております。不足がありましたら事務局まで御連絡ください。
【荒瀬座長】  資料はよろしいでしょうか。
 では、議事に入りますが、本日の流れにつきまして、生方さんから御説明をお願いいたします。
【生方企画官】  まず、資料1は、前回、委員の皆様から頂いた御意見の概要を議事要旨としてまとめ、委員の皆様にも御確認いただいてございます。また、野口委員から頂いた意見については、ホームページに議事録と併せて掲載予定でございます。
 資料の議事次第を御覧ください。
 本日は、前回会議で御報告させていただきましたとおり、通級による指導のさらなる充実に向け、議事の(1)として、小枝委員から「医療現場からみた小中学校等の通級による指導の課題と期待」について御報告いただきます。
 続きまして、議事の(2)、(3)といたしまして、各自治体の取組の工夫などについてお伺いするため、長野県教育委員会及び東京都目黒区教育委員会からヒアリングをさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  有り難うございました。本日は3つのヒアリングがあるということであります。また、進行に御協力をよろしくお願いいたします。
 では、議事の1に入ります。
 まず、「医療現場からみた小中学校等の通級による指導の課題と期待」につきまして、小枝委員より御説明をお願いいたします。
【小枝委員】  国立成育医療研究センターにおります小枝と申します。お時間をいただきましたので、こういったタイトルで少しお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 最初に、こういった場でなぜ医者が話をするのかということと絡めまして、私の経歴です。医者として過ごした時代から、教員養成のところにおりまして、こういった特別支援教育に関わる学生の教育に携わってきたということが1つ大きいかと思っております。今は、また医療者に戻りまして、こういった仕事を、また、特別支援教育とか、通常にいる診断名のつくようなお子さんの医療を主にやっているということでございます。
 今日は、この4つの話題をお話しさせていただこうと思っています。
 最初、子供の心の診療といったものが、特別支援教育、あるいは通常の学級にいる障害のあるお子さんと絡んでいますので、子供の心の診療といったものの概要を、まず御説明させていただきます。
 最初は、私の認識では、2007年の母子保健課から、『「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会報告書』というものが出ているのですが、これが、私が知る限りは最初ではなかったかと思っています。当然、それまでに発達障害のお子さん等の問題は、医療現場ではあったわけですが、それを主に診る診療医をどう育てていったらよいのかということの考え方が、これで出されたと認識しています。こういった子供と家族に対して、まずは、やはり一般の小児科医、精神科の方、医師が関わって、そして定期的に診療を行っている医師が関わって、更に、問題が複雑で専門性が高い場合には、専門的に関わっている医師が関わる、この3つの段階の医師の養成・研修をしていったらいいのではないかということで、2007年にこういった考え方が出されておりまして、大体、児童精神科関係の学会でありますとか小児科関係の学会は、こういった考えに基づいて、それぞれの専門性を追求してきた15年になるのではないかと思っています。
 今、こういった厚生労働省の研究班で、子供の心の診療の実態を調べさせていただきました。大体が児童精神科の病院、医療機関からの、1,000人を超える方のカルテ調査と、400の医療機関からのアンケート調査結果でございます。
 平均年齢は大体11歳、児童精神科が多いので、ここがピークですが、小児科が多いともう少し下がるのかと思います。男女比は6対4です。
 診ている疾患はどういったものが多いかといいますと、Fというのは、ICDというWHOが出している診断の基準があるわけですが、それの番号です。F8は心理発達の障害、これが42%。F4がいわゆる身体表現性障害、いわゆる心身症のようなものですが、これが22%。あと、情緒及び行動の障害、例えばADHD、多動なお子さんです、こういった方が19%。F7が知的障害で7%なので、合計で、これら4つで大体90%が、我々が診ている患者さんだということになります。
 それから、これは医療機関へのアンケート、400か所に聞いた感じで、全体と精神科と小児科で分けていきますと、大体F2とかF5までのところは精神疾患が多いので、精神科の先生がたくさん診ておられます。発達障害等になると、小児科も増えてくるということですが、意外だったのが、不登校がR468ですけれども、これが全体で最も多かった。だから、結構、精神科の先生も小児科の先生も、不登校のお子さんを外来でたくさん診ていらっしゃるということが分かりましたし、それからT74は虐待症候群なので、これもやはり結構医療機関の中では診ておられるということも分かりました。
 それから、継続期間はどうなのかということですが、初診をゼロとしたときに、47%の方が2年以上継続です。5年以上継続している方も27%おられますので、一度外来に御紹介いただきますと、やはりその後の経過は長い。よく医療機関に行ってもなかなか初診を取ってもらえないという理由は、こういった、1人患者さんになるとお付き合いが長い、長いとどうしても再診の方がたくさんおられますので、初診を簡単に取っていくわけにはなかなかいかないといったことがあるのかと思います。
 それから、入院となる疾患はどこが多いかといいますと、やはりこういった精神疾患の方が、割合が多いということです。
 それから、他機関との連携ですが、連携が大事と言われていて、教育機関との連携がやはり一番多いということです。次が福祉機関、児童相談所等との連携が多いということが分かりましたので、医療機関と、教育、福祉、そういったところの連携は取れている方ではないかと思っております。
 あと、これは私ども成育で「子どもの心の診療ネットワーク事業」を行っていまして、全国で今21の自治体が入ってくださっていますが、そこで初診の男児の疾患の分布、初診女児の疾患の分布を経年的に見ています。今ここに出したのは、この4年間の経過ですけれども、これだけでも少し傾向が変わってきておりまして、見てお分かりのように、2017年度は就学前のお子さんが一番多かったのですが、2020年になると、小1~小3、あるいは小4~小6といったところが増えてきて、幼児を超えていたりします。ですので、こういった外来で診ているお子さんは、以前は幼児が多かったけれども、最近は学齢期の方が増えてきている。女児も同じです。女児も、就学前と、1~3年生が多かったのが、最近では、女児は中学生ぐらいが一番多いということになっているので、だんだんと外来においでになる方の年齢は高まってきているという傾向があるのかと思います。
 それから、医療から見た学校不適応ということで、せん越ですが、随分前ですけれども厚労省の研究班で保健室登校をしているお子さんの背景に何があるかを調べました。そうしますと、だるい、疲れやすいという主訴の場合には、心の問題があるというのが、オッズ比が2.55と高かったということが分かりましたし、頭が痛いといっておいでになる方はオッズ比が2.42、おなかが痛いという場合はオッズ比が2.03と、やはりこういっただるいとか頭が痛い、おなかが痛いというと、何らかの疾患ではなくて心の問題が影響して、そういった訴えになっているのではないかということが分かりました。
 ちょうどこの平成10年頃には、保健室登校がすごく増えていて、不適応で、なかなか行き場がないといったお子さんを保健室で見てくださっていた時代に、医療側から何か情報提供できるかということで、こういった研究班がつくられたということでございます。
 だるい、頭痛、腹痛の3つがあると、オッズ比は5.44とすごく高くなりますので、こういったものがある場合には、やはり何か、体の病気ももちろん診た後で、こういった心のケアも必要になるのではないかと思います。
 一方、吐くといったときには、オッズ比は高くないです。ですので、吐くというお子さんをいつまでも心の問題と思っていると、脳腫瘍とか別の問題を見逃すことになるということで、注意が必要かと思います。
 あと、病院調査で二次的に派生してくる問題、ADHDとLDだけですけれども、心身症の合併、対人の問題、睡眠障害、不適応、こんなに多くなるのだと。ですので早めに気づくということが大事なのではないかということが、こういった医療機関からの調査での御提案といったことでございます。
 この特性に対する気づきの遅れで、保護者も教師も一生懸命なのだけれども、どうもその方向が違っていて、子供の立場で見ると、大人たちの一生懸命さが、「追い詰められた」という感じになって、それが不安、不全感、不信感につながって、不登校、保健室登校という形になっているのではないかということを、こういった研究を通じて感じたところでございます。
 それから、一時期私、教員養成の職場におりまして、その頃から特別支援教育導入をお手伝いさせていただいたものですから、学校の先生方の変化を間近に見ることができました。
 それで見ていきますと、私の考えでございますけれども、どうも特別支援教育が始まってから、鳥取県から毎年4人ずつ現場を離れて、一歩頭の抜け出た、発達障害等に解釈もでき、見立てもでき、指導もできる教員を養成してくれということで、現場の先生をお預かりして40人ほど、10年ぐらい関わらせていただいたものですから、その人たちとのやり取りで感じたのは、子供の問題が教室の中に閉じ籠もりがちだったのが、校内でいろいろな相談ができるようになったというのが、一番大きいのではないかと思います。これが始まるまでは結構、教室で先生が抱えていらっしゃった。それが、やはり学校の中で相談していいのだという形になっていったというのが大きかったかと思っています。
 それから、特別支援教育コーディネーターの校務分掌化で、こういった役割をした人が配置されたのが大きくて、担任の先生が相談しやすくなったというのがあって、これは非常にいい一手ではなかったかと思っています。
 それから、校長先生、教頭先生の集まりで講演させていただくことも多かったのですが、年々理解が浸透してきたと思います。これもやはり効果が大きくて、こういった特別支援教育コーディネーターの先生方が管理職に話すと、話がすっと通るようになってきたのも、開始されて以後、こういったことが出てきたと思いますし、こういった管理職も含めて、教室で悩んでいた教師の相談相手が学校の中にできたというのが、非常に大きかったのではないかと思います。
 それから最近では、特別支援学校がセンター化して、地域の園とか小中学校に出かけていかれることが多くて、これも結構、最初見ているお子さんが違うので、どのぐらい効率的に効果が上がってくるかと思って見ていたのですが、やはりそれなりに、連携できると現場の意識も変わってきますし、随分とこういったのは効果があったのではないかと、私見でございますけれども思っています。
 最後、医療から見た学びと居場所ということですが、当然、学校は学びの場ですが、ある程度、居場所といったものも必要なのかと感じることがあるものですから、そういうお話をさせていただきます。
 「通級指導教室に期待すること」と書いたのですが、最近は、「みんなが同じじゃないとダメ」とおっしゃる先生が減って、随分と子供たちが学校に行きやすくなったかと思っています。ただ、具体的にどうしたらいいのかを、あまり御存じではないのかとも感じています。
 何でそういうふうに思うかというと、どういうふうにしたらいいですかとよく問われるものですから、まだなかなか具体的な、教える引き出しまでたくさんお持ちの先生もおられるのでしょうが、そうではない方もまだおられるかと思っています。
 例えば1つ、私専門でやっていますのはディスレクシアという学習障害の読み障害ですが、これは音読の評価法とか音読アプリとか、それから通級指導教室での学びみたいなものを先生方に御提案させていただいています。こういったアプリもつくって無料で提供しています。それから、新しくつくったウェブサイトもありますので、こういったところで、通級指導担当の先生方がこういったものをタブレットにダウンロードして、御指導できるといったツールをつくっていますので、これを是非御活用いただけたらと思っています。
 今、世田谷区を中心に、都内の学校とか、区とか、そういった、教育関係の研修会で、こういったことをさせていただいていて、だんだんとこういったものが広がってきていて、通級指導教室でこういった御指導、読みの指導をやっていただけるようになって、本当に子供たちに力がついてきていますので、是非こういったものを活用していただけたらいいかと思っています。
 それからもう一つ、通級指導教室で、こんなのもあるといいなという1つは、社会的コミュニケーション障害という概念が1つできています。これは自閉スペクトラム症が社会的コミュニケーション障害と興味・関心の偏りの2本柱ですが、この社会的コミュニケーション障害、「語用論的」と書いてありますが、これは興味・関心の偏りがなくて、社会的コミュニケーション障害だけという方です。意外とこちらの存在に気づかれていないということがあるものですから、是非こういったお子さんたちが、ほかの子供たちとのやり取りがずれて、ほかの子たちからひんしゅくを買ったりして、学校に行けなくなっているということもあるものですから、こういったお子さんたちにコミュニケーションの取り方を教えていただくといいのかと思います。
 これは、別の言葉では特異的言語発達障害と言うこともあります。行間にある意図が読めないとか、比喩、皮肉の理解が苦手で、そして疑問形で叱るということが学校でよくあるのですが、これが分からないので、疑問形で先生が叱ると、訊かれたと思って真面目に答えてしまう。すると先生方は、いや、聞いたつもりはなくて、叱った、注意したつもりなのだけれども、真面目に答えてしまうので、「先生は聞いてないのだよ」と言うと、「いや、先生訊いたじゃないですか」というやり取りになってしまい、そのボタンの掛け違いみたいなことが起きて、勘違いをして、他者とトラブるということがあるので、こういったことなどは通級指導教室で1つ1つのロールプレイをしながら、誤解を解いていくような御指導をいただくと、随分とまた通常の学級に戻れるお子さんが増えていくのではないかと思っています。
 こういった、本当に適応をよくするための何か具体的な、教えるための引き出しが増えていくといいのかと思って、例を2つ挙げさせていただきました。
 それからもう一つ、学びの場としての通級指導教室は、こういった教える引き出しを増やしてほしいということですが、もう一つ、居場所という捉え方、あまりないのかもしれませんが、私自身は、結構、学校は居場所として大事かと思っていて、学びの場にはこういったものがあるわけですが、こういう、いわゆる昔でいうと適応指導教室、今は教育支援センターと言うそうですが、こういったところで居場所を用意して、学校に行けなくなった子に、まずはこうした場においでなさいといったことをしてくださっているといいなと思います。
 こういったのは、学びの場と居場所というのは、やはり互換性があるもので、特別支援学校から特別支援学級、それから通常の学級も、この行き来が可変的にできるといいのかと思います。
 例えば、通級指導教室にしか行けない子がいて、そして居場所としてある、通常の学級にはなかなか入れない。週に1回の通級指導教室の日だけ学校に行くという子は私の外来にたくさんいます。しかし、そういったことを介して、ここが居場所だったのが、だんだんと元気が出てきて学びの場になっていくということが十分あります。ですから、こういったところの必要な学びの場は設置することが必要と思います。例えば、うちの区では特別支援学級とかはつくらないということではなく、こういったものが制度上ありますから、必要な学びの場は設置していただいて、ここの往来も可能に、もっと柔軟に往来できるようにしていただいて、居場所が必要なお子さんはここが居場所のこともありますので、居場所として、元気が出てきたら通常の学級に戻す、そういった考え方があっていいのではないかと思っている次第です。
 学びの場でこういったところがあるわけですけれども、居場所として、具体的に言えば通級指導教室とか、こういったところも居場所として活用できればいいのかと思っています。
 それから、教育支援センターは、せん越ですが、小中学校別がいいと前から思っていまして、ここは学校に行けない中学生のお子さんが幅を利かしていて、小学生はなかなか行けないのですよね。大きいお兄ちゃんたちがいるので、少しビビッてしまって、小学生の不登校の子はなかなか行けないので、小学生用、中学生用があるといいのかと思ったりします。
 鳥取県にいましたときは、5歳児健診で、ほとんどの子は通常の学級、布置の力がついていない子は特別支援学級とかに行くのですが、布置の力が備わって、見通しが持てるようになると通常の学級へということを就学指導委員会に私も入らせてもらってやっておりました。
 布置の力というのは、これは鳥取でやっていた、すくすくコホートの研究成果なのですが、俯瞰(ふかん)してみる力です。これが備わるまで、学校はゆりかごとしての役割があるのではないかと思っています。
 この布置という力は、せんだって幼稚園の教育要領が改訂になりましたが、その解説本の中に、こうやって序章のところに入れさせていただいています。
 要点は、幼児は徐々に過去と今、今と未来の関係に気づくようになって、見通しが持てるようになっていきます。そうなると、ちょっとしたことで泣いたり怒ったりという情緒的な反応をすることが減ってきますので、非常に適応がよくなるのだろうと考えています。
 それから、東京に参りまして、有り難いことに全ての小中学校に通級指導教室ができました。これは本当に有り難くて、活用させていただいているのですが、最近、情緒障害の特別支援学級ができ始めたのです。これは随分と待ち望んでおりまして、この会議、委員会にも入っておられます市川先生に成育に来ていただいて、情緒障害があって通常の学級になかなか入れない、逃げ出すお子さんなどを見に来ていただいたことがありますけれども、そのときに情緒の特別支援学級ができるといいですよ、などとお話をさせていただいたことを覚えています。今だんだんとでき始めたものですから、居場所ができたんのす。もう何人も、見違えるように元気になって、うそのように楽しんで登校しています。通常の学級にいて、なかなか行きづらいというときには、病院に行くから学校を休めると喜んで来ていた子が、情緒の特別支援学級に入ると、学校があるから、先生、今日は病院に行かないといって、子供が来なくなったのです。こんなに変わるものかと驚きました。
 だから、学校の中に居場所をつくるということは、私みたいな医者が束になってもかなわないぐらい、非常に大きな、子供たちへのメリットがあると思っています。ですので、居場所のある学校は宝船ではないかと、最近思っているところでございます。
 医療者として純粋にお願いしたいことは、こういった書類とか診断、診断書で結構込むことがありますので、東京は本当に少ないのですが、地方に行くと、診断書で秋以降の外来はいっぱいになってしまいますので、こういったものがなくても行けるといいということを、医療者としては考えているところでございます。
 以上でございます。お時間いただきまして、有り難うございました。
【荒瀬座長】  小枝先生、有り難うございました。とても丁寧に御説明いただきました。とりわけ最後の部分は、令和答申の中で学校の持つ福祉的機能という言及がございましたけれども、安全安心の居場所というのを本当に全ての子供たちに、いかにしっかりと広げていくかということの大切さについて、改めて考えさせていただきました。有り難うございました。
 それでは、ただいま御発表いただきました内容につきまして、意見交換を行いたいと思います。御質問や御意見ございましたら、お願いいたします。
 市川先生ですか。市川先生、お願いいたします。
【市川(裕)委員】  有り難うございます。今、名前を挙げていただいたので、そのときのことを。
【小枝委員】  こんにちは。どうもお世話になっております。
【市川(裕)委員】  有り難うございます。
 現在、文部科学省の調査だと、知的障害学級の数と自閉症情緒障害学級の数というのは、同じぐらいになっている。ただ、東京の場合は伝統的に自閉症情緒障害学級が少なかったので、先生がお話ししていただいたように、東京都の教育委員会では、意図的にこれはつくっていかなくてはいけないという取り組みをして、今少し増えてきているというお話ではないかと思います。
 私も、居場所という観点もそうですが、障害のあるお子さんの、その障害の状況に応じて、行く場所が連続的に多様であるべきだと思っているので、通常の学級があって、特別支援教室、通級による指導があって、特別支援学級、特別支援学校みたいに、連続する体制づくりというのが大切になるのかと、お話を聞かせていただいて思いました。
 ですから、通常の学級の支援だけではなくて、やはり区市町村の特別支援教育体制というのをいかに充実させていくかが大切であり、これが通常の学級の支援にもつながっていくのかと、お話を聞いていて思いました。
 以上です。有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございました。
 ほかには。氏間先生、どうぞお願いいたします。
【氏間委員】  データに基づいたお話を伺えて、私自身非常に勉強になりました。
 最後の方で御提起されていたことで少しお伺いしたいことがあるのですが、全ての教育的措置を検討するのに、あるいは合理的配慮を考えるときに、診断書がないといけないというのはそろそろ卒業してはどうかといったような趣旨のことをおっしゃっていただいたかと思うのですが、私もそのことは本当に大賛成でして、明らかにエビデンスに基づいた指導をしているのに、やはり、小学校2年生以降の漢字がどうしても定着しないような子供に対して、毎年診断書を持ってこないと通級指導教室に入れないとか、合理的配慮の校内委員会を開けないなどというのは、非常に負担が大きいと思っています。
 それに対して、もしそういったことを実現しようと思ったときに、何かほかの国などで事例があるのか、あるいは何かしらアイデアがあるのかといったことがもしおありでしたらば、少しそこのところ、お伺いできると有り難いと思ったところです。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 小枝先生、いかがでしょうか。
【小枝委員】  今、国としてということでしたので、事務局へのお問合せかと思ったのですが。
【荒瀬座長】  すみません。
【氏間委員】  いえいえ、小枝先生にお願いいたします。すみません。
【小枝委員】  先生がおっしゃるように、その子の実情に合わせてやれるといいと思います。
 その子の実情に合わせるというアセスメントがなかなか皆さんでき切らないので、何かそういう根拠があって、そこに委ねて決めさせてもらいたいみたいな、そういう感じでおられるのかと思います。ですので、1つは、もう少し、1学級の子供の人数も減ったり、1人1人を見れていくようなスキルだったり、そういったものが、どの先生にもついていくといいのかと思います。
 私どもも、今、例として挙げたディスクレシアに対する読みのアプリの提供とか、それから、会話のずれなどで不適応を起こしてしまうお子さんについてのロールプレイなどもいいのだよということは、実は医療もだんだんと、日々勉強させてもらいながら築いてきていることなので、我々からも何かしっかりと子供たちを見て、これはそのエッセンスを学校に提供できるものができたら、順々に1つずつ、また提供を続けさせてもらえたらということを考えています。
 氏間先生、その辺りでよろしいでしょうか。
【氏間委員】  非常に参考になるサジェスチョン、有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございました。
 ほかにはいかがでしょうか。喜多先生、どうぞ。
【喜多委員】  全特協の喜多です。小枝先生、有り難うございました。すごく勉強になりました。新たな知見を得られました。有り難うございます。
 1点、医療から見た学校不適応に関わってですが、スライドの15にある文章、すごく、現場にいて感じるところでもあるのです。子供の特性への気づきの遅れから、教師も子供も一生懸命なのだけれども、その方向性が違って、ずれてしまって、子供が追い詰められてしまって、不安定になって、不登校になる、あるいは不適応になっていくというような状況はあるという感じはします。
 この具体的な状況、先生が感じられている状況と、あと、これをどう改善していけばいいのか辺り、少し、事例があれば教えていただきたいと思って質問しました。よろしくお願いします。
【小枝委員】  そうですね、親の一生懸命さというのが、いわゆる伸びるように伸びるように、それから学校の先生方もできるようにできるようにと、おっしゃるのですよね。よく褒めて育てろとおっしゃるので、そのとおりでいいと思うのですが、何を褒めるかがポイントになります。やはり学校の先生も保護者さんも、少し認識が違っているというか、できたら褒めるのですね。しかし、できないことも結構あったりするので、褒められにくくなるのですが、そういう状態で褒められると子供は、うそで褒めているだろうと分かるのです、子供は。ですので、できたことを褒めるのではなくて頑張ったことを褒めるといいと思います。できたかなんかはどうでもいいので、頑張ったことを褒めるようになっていくと、子供は頑張る子に育つと思います。どうしてもお母さんたちは、できないことばかり外来でおっしゃるので、そうではなくて、一生懸命頑張ったら褒めてあげてくださいみたいなことをお伝えするようにしています。割と、こういった褒めるところ少し違っているというようなことを思ったりします。
 それから、以前は多かったですが、今は減りましたが、やはり宿題を出したので、みんなと同じ量をやらないと駄目だということがよくあって、だけれど、その子の特性に応じて、1時間、家で本当に一生懸命努力したなら、しかし、ほかの子の半分しかできなかったら、お母さんがそれでいいと、きちんと先生に伝えるから、一生懸命頑張ったことを伝えるので、学校の先生に、それで頑張ったことを認めてあげてもらえたら、随分とその子の励みになったりもすると思います。どんなに頑張っても、半分しかやっていないじゃないかって言われると、そこで不全感とか不信感が出てくるのだろうと思ったりします。そんなことを具体的には感じています。
【喜多委員】  有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございました。
 ほかにはいかがでしょうか。野口委員、お願いいたします。
【野口委員】  野口です。小枝先生、有り難うございました。
【小枝委員】  有り難うございます。
【野口委員】  非常に勉強になりました。
 先ほどの氏間先生の御質問に近いかもしれないのですが、やはり私も、医学での診断があって就学支援委員会にかけて、ようやく支援が始まるという状況に対して、その子に支援が必要なときにすぐ支援が届けられる仕組みというよりは、かなりタイムラグが空(あ)いてしまってから支援にようやくつながるというような状況があるということに問題意識を持っています。
 やはり、そうなると、その間に学校に行けなくなってしまうという方もいらっしゃると思います。
【小枝委員】  おっしゃるとおりです。
【野口委員】  もし、小枝先生の方で、例えば、海外とかだとスクリーニングの読み書きの検査が全員に対してされるような仕組みやなるべく早く支援をするような仕組みなど、どういった仕組みがあったらラグみたいなものが改善されるのかもしおありでしたらお伺いしたいのが1点。
 あともう1点が、やはり居場所があることの大切さということを先ほどお話しいただいて、本当にそのとおりだと思って、医療から見たときにやはり、今通級指導教室は、東京の場合はどの学校もありますけれども、特別支援学級については、なかなかまだ、どの学校にもあるという状態ではないのですが、やはり医療から見たときに、どの学校にも、やはり同じように、いろいろな多様な場があった方がいいとお感じになるのか、医療の必要性とか頻度とか期間で、なかなか決めるのも難しいと思うのですが、そこら辺に対するヒントがありましたら教えていただけたらと思います。お願いします。
【小枝委員】  有り難うございます。
 最初の御質問の、もっと頻度を短い期間で、その子に必要なものを提供できるといいというのは、まさにそういったことで、これはやはり学校関係の方が経験値を増やしていくといいかと思います。ただ、そのときに、少し妨げになっていると思うのが、何か決定しなければいけないという、話合いの場をカチッと持って、決定しないといけないと思い込んでいると、その場を開くのに皆さんの都合を聞いて、委員会を開いて決めないと動かないので、そうではなくて各学校単位で、こういう特別支援教育コーディネーターの先生とか通級指導担当の先生、それから特別支援学級の先生もおられると、担任さんとそういった方が集まって、やはりこの子にはこれがいいのではと、校内で話して、決定して動けるといいと思うので、その決定機関を少し少人数で機動力を高めるということをすると、間が空(あ)かずに、その子に応じたサービスが提供できるのではないか。そこに診断書をと言い始めるので、時間がかかるのだと思います。
 それからもう一つ、学校の中で何かそういうスクリーニングみたいなものは、実は読み書きについては、私ども1年生のうちに3回ほど、平仮名がどのくらい読めるかというのを全員のお子さんにやって、苦手と分かったら、僕がつくったアプリで練習、よくなれば卒業だし、それでもやはり次のチェックで苦手と分かったら、また、すぐに練習というのを、今、鳥取県で大体7割の小学校は、全ての1年生にそれをやっています。あと、松江市の全ての小学校もやっていると思います。だんだんと少しずつ、そういったことをやってくださる学校が出てきています。都内でも幾つかの学校が出てきていますので、早く気づくということが大事で、そういったことを御家庭でもさせていただくし、通級による指導なんかでも手伝っていただくみたいに、親なんかもどんどんと、学ぶということには参加させていっていいのではないかと思ったりします。
 そんなところでよろしかったでしょうか。
【野口委員】  有り難うございます。スクリーニングのテストを、是非全国でやれるようになるといいと思います。
【小枝委員】  今一生懸命、これを広めるために、学校からの御要望によって、ワークショップをやったりもしているのです。有り難うございます。
【野口委員】  有り難うございます。非常に参考になりました。有り難うございます。
【荒瀬座長】  有り難うございました。
 今、何人か手を挙げていらっしゃるのですが、大変申し訳ありませんが、ほかのヒアリングもございまして、笹森委員、平野委員、中田委員までで、一旦切らせていただいてよろしいでしょうか。申し訳ありません。
 あと、また時間の関係で、後からまた、お願いするということで、大変失礼ですが、よろしくお願いいたします。
 では、申し訳ありませんが手短に、笹森委員、平野委員、中田委員の順でお願いいたします。
【笹森委員】  国立特別支援教育総合研究所の笹森です。小枝先生、有り難うございました。
【小枝委員】  いつもお世話になっています。
【笹森委員】  お世話になっております。質問というよりは、先生のお話を伺って改めて感じたところがあったので。
 まず、喜多委員もおっしゃっていた15ページの、保護者と教員と、それから子供の思いが必ずしも一致していないということがとても大事だと思っていて、大人は子供ができないことをできるようにしたいと一生懸命に指導していくわけですけれども、子供自身が、そのことを、やはり自分もできるようになりたいという思いがないと擦れ違いがあるので、いかに子供と大人が意見をすり合わせていくか、それが通級による指導の目的意識とつながる話であると思って、伺っていました。
 教育支援センターも例に出していただいたので、不登校と通級による指導の役割みたいなところで、通級指導教室にしか行けない子供がいて、通級指導教室が居場所になる一方で、通級による指導に対しての不安感、抵抗感というのですか、教育支援センターは、不登校を悪いことにしないというまとめを今回したと思いますが、そういった意味では、通級指導教室に通うことも決して悪いことではなくて、通級指導教室が居場所になり、学びの場になるという、そんな流れになっていくのがいいのだろうと思いました。
 それについて、幼稚園の教育要領の解説をしっかり見ていなかったのですが、布置、俯瞰(ふかん)してみる力ですね。その辺りは、子供に共通であると思っていて、特に発達に偏りのある子、あるいは弱さがある子は、これができるとすごく対外的な力がつくと思います。
【小枝委員】  先生、そのとおりだと思います。
【笹森委員】  感想みたいな話ですが、共有したくてお話をさせていただきました。
【小枝委員】  先生、有り難うございます。特に自閉症圏のお子さんと、ADHDのお子さんは刹那的な生き方をしているので、過去と今、今と未来というところが、全体像が俯瞰(ふかん)して見えると、すごく行動がまとまってくるのですよね。こういったところの練習なんかも、実は通級による指導で、1年生、2年生のあたりでしっかりやると、3年生ぐらいから見違えるように伸びてきますと思っています。有り難うございます。
【笹森委員】  どうも有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございました。
 では、すみません、平野委員、中田委員の順にお願いいたします。平野委員。
【平野委員】  平野卓球スクールの平野真理子です。お願いします。
 うちのチームにも、発達障害の子供、それから不登校の子、それからそれを支える、特別支援学級の補助をしているような保護者、そんなお仕事をしている保護者の方とか、いろいろいらっしゃるのですが、今日の小枝先生の実例とか、データに基づくお話、それからロールプレイとか、本当に参考になりました。
 私も、お話を聞いていて、教師時代にこの話を知りたかった、聞きたかったと思いました。すごく分かりやすいお話だし、考え方だったので、これは感想でもあり私の要望というか希望ですが、教育委員会とか、校長先生、教頭先生など管理職の方だけでなく、こういう先生方、通常の学級を担任している先生方も、それから、特別支援学校や特別支援学級の先生方も、みんなにこのお話を是非一度、小枝先生のお話を聞く機会をつくっていただきたいと正直思いました。先生が全国を回っていたら時間がかかってしまうので、せっかく今の世の中こういう、今私たちがやっているようなリモートというすばらしい機械が発達しているので、この機械を使って全国一斉に、小枝先生のお話をリモートで発信するという時間を文科省で例えばつくっていただいて、個別に更に詳しく知りたいという方は、もう1回小枝先生にアポを取ればいいわけですので、これを本当に全国の子供たちに関わっている全ての方に一度聞いていただくような機会をつくっていただけないかということを私としては要望したいと思います。
 有り難うございました。よろしくお願いします。
【小枝委員】  有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 では、中田委員、お願いいたします。
【中田委員】  失礼します、中田でございます。小枝先生、お話しいただきまして、有り難うございました。
【小枝委員】  有り難うございます。
【中田委員】  鳥取県の紹介をしていただきました。その中で、機動的な支援ということだとか、それから、1年生、2年生の低学年のうちから、読み書きに困難を持っているような子供たちを、どんなふうにというお話いただきましたので、鳥取県の実践の状況について、簡単に報告をします。
 機動的な支援ということで、診断書の話が出てきました。鳥取県の通級指導教室も、最初は診断書を要するという形でスタートしたところが多かったのですが、最近は、きちんと調査はしてないのですが、ほとんど全てが診断書なしで、そして、校内の支援委員会と、そして庁の主事等を交えた会議で、診断認定をしていくような流れになってきております。かなり機動的な形に修正をしてきて、支援が必要な子供たちに、支援がすぐ届くような体制が取れるようになってきております。
 また、低学年の子供たち、できるだけ早いうちにという取組も、これは意識の検査だとか、それからMIMの検査だとかが、小枝先生おっしゃっておられましたが、たくさんの市町村で取り組まれて、その検査を基に、担任がチェックをして、個別に指導に当たっていくというような取組を毎年進めております。
【小枝委員】  有り難うございます。
【中田委員】  やはり、早いときにこういう検査をして、そして支援を早めにしていくということは、子供たちにとって、その後の学校生活がスムーズに送っていける大きな要因になっているのではないかと思っておりますので、紹介させていただきました。
【荒瀬座長】  有り難うございました。
【小枝委員】  お知らせいただいて、有り難うございました。
【荒瀬座長】  小枝先生も本当に丁寧な御説明と、それからまた御質問に対する御対応有り難うございました。
 先ほど、是非全国の皆さんにというお話もありましたので、また、小枝先生、御検討いただくとともに、文科省でも考えていただきたいと思います。
 宮﨑委員と滝川委員につきましては、大変申し訳ありません。後ほどまた、時間の関係で、御発言をいただける機会がありましたら、お願いしたいと思います。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。
 長野県教育委員会の事務局の特別支援教育課、勝又和彦教育幹から、資料3に基づきまして、御説明をお願いしたいと思います。勝又教育幹、大変お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。
【勝又教育幹】  長野県教育委員会事務局特別支援教育課の教育幹、勝又和彦です。私からは、長野県における小中学校の通級による指導の充実に向けた取組の一端と課題について報告をさせていただきます。
 では、次のスライドをお願いいたします。
 本県の実態の1つとして、発達障害の診断のある児童生徒数の推移ですが、本県も他の自治体と同様に、小中学校における発達障害のある児童生徒の数は年々増加し続けております。
 次のスライドをお願いします。
 こうした実態を踏まえまして、本県では、平成19年度にLD、ADHD、自閉症、情緒障害を対象とするLD等通級指導教室を設置し、以来、徐々に教室数を増やしてまいりました。棒グラフが通級による指導を利用している児童生徒数、折れ線グラフの下の濃い色が本県の利用率、薄い色は全国の利用率を、LD等に関わってのみ取り出して、数値化したものです。
 御覧のとおり、利用者はどんどん増えておりますが、現在長野県の利用状況は、全国の利用状況に比して、まだ低い水準にはあります。
 では、次のスライドをお願いします。
 今年度の本県の通級による指導の実施状況は、そこに示したとおりです。LD等通級指導教室に視点を当ててお示ししますと、県全体で、小学校41校、中学校22校、計63校に94教室、すなわち94人の指導担当教員を配置しております。このうち2人配置校、2人の指導員を配置できている学校は31校、1人の配置校は32校となっています。
 これに加えて、巡回指導の実施形態で指導をしている教室が66校あります。
 合計、小中学校合わせて1,269人が通級による指導を受けている現状です。この1,269人のうち、大体4分の1、24%程度の310人は、他校通級の形態で、他校へ通って学んでいる、そんな実態であります。
 では、次をお願いします。
 さて、本県における通級による指導の実施上の課題ですが、課題を挙げれば切りがありませんけれども、本県特有の課題としては、この3点が挙げられると考えています。
 本県の地理的特徴としましては、北は新潟県、それから南は愛知県や静岡県、東は群馬県、埼玉県、山梨県、また、西は富山県や岐阜県と接しているという県土でありますので、かなり広域でありまして、また、その県土の大部分を山林地帯が占めるというような環境であります。小規模な集落が点在するような、中山間地が多く存在しています。
 こうした実情から、第1に、中山間地への通級指導教室の設置の困難さがあります。人口密度の低い地域では、どうしても広範囲なエリアに1つとか2つとか、少数の教室しか設置ができないことになります。
 関連して、2つ目として、近隣の通級指導教室に通うために、片道1時間以上を要するような地域も多数あります。地図で、円で囲ってあるようなエリアは、特にそのような傾向があるエリアです。保護者の送迎の負担もかなり大きいものがございます。
 また、課題3として、課題1と関連いたしますが、単独の市町村単位で通級指導教室を開設できない自治体も依然多くあります。市町村を越えた教育資源として、複数の市町村同士が連携協力して、通級指導教室を運営していく必要があります。
 こうした実情は、本県では特に顕著ですけれども、全国の多くの都道府県でも、類似した課題は結構あるのではないかと考えています。
 次のスライドをお願いいたします。
 こうした課題への対応としまして、まず1つは、県内の地域を、自治体を超えた地理的なまとまりや人口規模、生活圏や他校通級の利便性などを考えて、便宜的にまず28のエリアに細分化して考えました。細分化したエリアごとに、ニーズの把握と配置の計画を立てるようにすると、学校単位、自治体単位ではなく、地域の教育資源としてのバランスを考慮しながら設置活用することにつながっているように思います。
 本県では、この15年ほどの整備の経過を見ますと、まずは小学校から未設置地域をなくしていくように、県内全域への整備を進め、その後、複数の教員を配置する拠点校をつくり、続いて同様に、中学校も拡大させてきたところで、今現在まできている実情です。
 次のスライドをお願いします。
 次に、他校通級の困難性に配慮して、巡回指導の実施を拡大してきました。本県では、兼務発令を行い、兼務発令を受けた職員が他校で、いわゆる巡回の形態で指導するケース、これをサテライト教室と呼んでおります。そこに記載のとおりの目的で、令和元年度から積極的に拡大してきたところです。現在は、全県に66教室、サテライト教室があり、284人、およそ通級による指導を受けている子の2割強、22%程度がサテライト教室で学ぶことができています。
 次のスライドをお願いします。
 サテライト教室については、担当教員の過度な負担が生じることを避け、また、本務校だけでなく、兼務校においても一職員として着実に指導の業務ができるように、以下のような設置の条件を設定いたしました。そこに記載のとおりです。
 ただし、同一の市町村に通級指導教室がない場合ですとか、保護者送迎が極端に困難な場合などは、2名以下でも兼務し、サテライト教室を設置できるよう、自治体の意向に沿って弾力的に運用をしております。
 サテライト教室で効果を感じる点としましては、担当教員が1日若しくは半日、定期的に勤務することを原則としておりますことで、兼務校内での通級指導教室の位置づけですとか、兼務職員の位置づけというものが明確になりまして、兼務校内で児童生徒の実態把握や職員間の連携が図りやすくなっているところです。
 では、次のスライドをお願いします。
 課題3への対応としましては、通級指導教室連絡会という組織を市町村教育委員会に立ち上げていただくよう依頼していることです。通級指導教室連絡会というのは、市町村教育委員会と、本務校やサテライト校の校長、また、担当教員が参画して、通級指導教室の運営に関する諸事項について、情報共有や調整などを行うことを想定している組織です。市町村を越えてサテライト教室を設置する場合には、当然、関係市町村の関係者が加わって実施するよう依頼しております。行政区を越えた連携を図る仕組みとして、徐々に位置づけつつあるように思います。
 では、次のスライドを御覧ください。
 こうした対応により、中山間地の自治体においても、工夫して、通級による指導の充実を図っている取組も幾つかあります。
 例えば、中心地区から北部地区の間ぐらいにある中北部の山村エリアでの取組ですが、このエリアは3つの村から成っており、人口規模は3村合わせて1万人程度というような小規模な地域です。各村にはそれぞれ小学校、中学校が1校ずつあるのですが、通級による指導の該当児童生徒数を見ますと、このエリア全体で小学校1教室、中学校1教室分の通級指導教室の配置しかできませんでした。
 そこで、3村の教育委員会が協力して、通級指導教室連絡会を開催し、全ての村で必要な支援が受けられるように、全ての学校にサテライト教室を置いて、共同で運営するという体制を整えています。こうすることで、必要な支援が中北部の学校でも実現するという例であります。
 また、例えば、南部にある、ある郡では、郡内の中心の市、ここの通級指導教室連絡会の担当者会に、他の市町村の通級指導教室担当者も参加して、合同で情報交換や事例検討などを実施しています。このように、合同で研修会などを行えるような体制を組むことで、小規模な町村単独では難しい、担当教員同士の日常的な連携とかOJTが可能となり、通級指導教室の専門性向上につながっているというような例もございます。
 では、次のスライドを御覧ください。次に、通級による指導に係る人材育成の取組について、簡単に報告をします。
 まず、通級担当教員のための取組としては、通級指導教室の担当教員の指導力が非常に重要であるということは全国共通の課題だと思いますが、他の都道府県においても、もっと優れた取組が多々あると思いますけれども、本県においても、ここに示したような新任担当教員を対象にした研修ですとかスキルアップ研修、スキルアップ研修は以前、笹森先生にも講師をお願いしたことがあります。それから、ICTの利活用の実践研究などの取組を今進めているところです。また、地区ごとに担当者会の開催を促しておりまして、担当教員同士、相互の専門性を生かし合って、自主的に研修を実施できるよう支援しているところです。
 では、次のスライドをお願いします。通級指導教室以外の教職員への理解啓発に関わってです。
 通常の学級での支援の在り方ですとか、校内での特別支援教育の体制整備の在り方、また、校内教育支援委員会での学びの場の検討の手順など、そうしたものや好事例を示した「適切な学びの場ガイドライン」という資料を県で作りまして、小中学校、特別支援学校全ての教員に配付し、校内研修で活用できるよう紹介をしております。
 では、次のスライドをお願いします。この「適切な学びの場ガイドライン」の中身を一部紹介しますと、例えば、適切な学びの場の検討手順としまして、特別支援学級への入級や、通級による指導の利用の検討をするわけですが、まずその前に、通常の学級での支援の見返しをして、支援の工夫や検討をすること、あるいは外部の専門家と連携して、障害の状態の理解を深めた上で、再度、通常の学級において実践できる支援について見返して実践することなど、そうした必要性を丁寧に伝え、校内での検討プロセスを見直していただくように、このガイドラインの中では促しております。
 では、次、お願いします。最後です。
 本県の取組の一端を報告させていただいたところですけれども、まだまだ課題は山積しております。課題についてですが、まず、通級指導教室担当教員の専門性については、今後、通級指導教室の増加がやはり見込まれ、新たな担当教員が必要となると思われますので、一定の指導力を担保できる研修体制や、担当できる教員を継続的に育成していく仕組みというものが必要だと考えています。また、通級による指導の成果を通常の学級で生かす、これが非常に重要だと考えておりますが、在籍学級担任との連携のさらなる充実を図る取組、これも必要だと考えています。更に、子供たち一人一人の教育的ニーズに応じた連続性のある多様な学びを適切に提供していくためには、今後も通級指導教室やサテライト教室などの体制整備を継続していきたいと考えています。あわせて、特別支援学級も含め、それぞれの学びの場を適切に判断し、実態に応じて柔軟に見直す、そのことを支える仕組みや教育支援の力量の向上というものも必要だと考えています。今後も他の都道府県の先進的な取組に学びながら、本県の実情に応じたシステムを目指して、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 本日は、発表の機会をいただき有り難うございました。この機会に、また本県の取り組むべき方向について御教示いただければ幸いです。
 以上で発表を終わります。
【荒瀬座長】  有り難うございました。地域の状況に根差して、その課題を丁寧に克服していこうとなさっておられる御様子がとてもよく分かりました。また、13ページにお示しの今後の課題というのは、これはよそにも通じるところがあるのではないかと思いながらお聞きしておりました。
 それでは、今、長野県から御発表いただいたことに関しまして、御質問や御意見を頂戴したいと思います。また、お手をお挙げいただけますでしょうか。
 では、池田委員、お願いいたします。
【池田委員】  山形大学の池田です。御発表いただき有り難うございました。広域な地域での取組というところで、大変勉強になりました。有り難うございます。
 私からは2点お伺いしたいのですけれども、1点目は、スライドの5にお示しいただきました、県を28のエリアに細分化しといった取組のところなのですけれども、この細分化する観点といったところで工夫点があれば、教えていただきたいと思います。多分単純に距離といったところではなく、こちらにもお示しいただいていますけれども、様々な御事情を踏まえて、このエリアに細分化されたかと思います。例えば、山形県もそうなのですけど、雪の事情とか道路の整備の状況とか、そういった具体的なところも非常にエリアを細分化する際の観点としては重要かなと思いまして、何かそういった工夫点などがあれば教えていただきたいと思います。
 それが1点目で、2点目は少し具体的なのですけれども、教員が巡回する場合に、やはり移動にかかる費用とか、そういったところが現実としてかかってくると思うのですけれども、そのような財源のところの工夫なども教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】  それでは、勝又教育幹、よろしくお願いいたします。2点お願いいたします。
【勝又教育幹】  御質問有り難うございました。まず、エリアの分け方の工夫ということですが、観点はそこに記載したとおりなのですけれども、やはりもともと自治体ごとのまとまりというのが長野県の中でも、地理的な要因を背景にあります。そういった自治体ごとのまとまりを1つの単位として考えていくと、自治体ごとの連携が取りやすいという面が一番大きいと思いますので、地域ごとに色々な呼び方があったり、サイズがあったりするのですが、そういったものは大事に考えながら組んでいます。エリアを分けています。
 あと巡回指導の移動に関わる費用についてですが、まず兼務発令を行うことによって、本務校にも、それからサテライト校にも、通勤手当として、基本的なものはそこで出ますので、それぞれ1日単位でその学校に勤務するということであれば、特に移動にかかる費用は生じません。ただ、やはり半日単位で移動する場合ですとか、そのほかに教育相談として、周りの学校をある程度、支援の必要なお子さんがいれば、回っていって相談に応じるというようなことがありますので、そうした際はやはり旅費が必要になります。そちらは普通の一般の旅費として、既存の予算の中でやりくりしてやっているのが現状で、特別な予算は、まだ今のところはありません。
 以上です。
【池田委員】  有り難うございます。
【荒瀬座長】  池田委員、よろしいですか。
 それでは、宮﨑委員、お願いいたします。
【宮﨑委員】  有り難うございます。勝又先生、有り難うございました。全国の通級による指導に、とても大切な視点を御教示いただいたというふうに思っています。
 その中で、私が御質問させていただきたいのは、自校通級、巡回指導、それから他校通級というふうにあって、現在3割弱の方が他校通級をされているというようなところなのですけど、4ページに、この送迎の負担というのがかなり重くのしかかっていて、先ほどの御説明では保護者の送迎というようなことがお話として出ていたのですけど、この辺りについて、通級による指導は要望が高くて、増えていくんだと思うのですが、通級による指導についての入級の基準ですとか、それから退級などについての対応というのが非常に重要になると思うのですが、その辺りについては、この通級による指導の仕組みの中でガイドライン等をお作りになっているかどうかというのがまず1点です。
 それで、今後他校通級は恐らく巡回指導等に、ここで言うとサテライト教室の方へ移行されていくんだろうというふうには思っているのですが、この辺りの方向性、県教委としてお考えになっている点があれば、お教えいただきたいということです。
 それから、先ほどガイドラインの話をしましたが、全国で通級指導担当の先生方の専門性向上というのがかなり大きな課題になっていることは私も承知しているのですけれども、特に東京都で通級指導教室を設置するときに、できるだけ新任担当教員を通級指導担当の教員に配置しないようにというようなことで書き込みだけはしてあると思うのですが、その辺りについて、通級による指導の対象児童生徒の決まりというか、決定が少し遅れたりするので、やむを得ない部分もあるのですが、この辺りについての県教委としてのお考えがあれば、それも含めてお話しいただけると有り難いです。よろしくお願いします。
【勝又教育幹】  有り難うございました。まず、入級や退級対応についてのガイドラインというものについての有無ですけれども、県独自でそういったものはまだ作成できていません。やはり文科省の756号通知ですとか教育支援の手引、こういったものを基準にして、それぞれの自治体が教育支援委員会で判断している段階です。特に退級なんかについては、やはり担当者会の中でも時々話題になりますけれども、一定程度、始めるときに目安を決めて、小まめに見返しをしていくというようなことは大切に取り組んでいるというふうに承知しています。
 それから、専門性の向上の課題で、教員の配置についてですけれども、OJTでの教員育成というものも非常に重要だと考えて、2人以上配置できる学校を少しずつ増やしていきたいと考えています。それはやはり、拠点となるような地域であれば、2人以上の教員が1つの学校にいて、サテライトも含めて周りをカバーしていくと、そんな対応ができるといいのかなということで来ています。また、今現在は、まだまだ通級指導教室が少ないものですから、通級指導教室を計画的に増設している段階なので、各教室配置に当たっては、校長先生たちに、特別支援学級の経験があるとか特別支援学校での教員経験があるとか、一定のスキルや知識を持っている先生方を充てていただくようにしています。もともと通級指導教室自体があまりなかった長野県ですので、皆さん通級による指導を実際に担当するのは初めてという方が多いですので、どうしても新任の担当教員の一定のスキルアップといいますか、研修は必要になってきます。
 以上です。
【宮﨑委員】  有り難うございました。
【荒瀬座長】  2つ目の部分、宮﨑先生、よろしいですか、今の。
【宮﨑委員】  はい、結構です。有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 では、今、笹森先生と氏間先生、手を挙げていらっしゃいますので、お二人までということにさせていただきます。
 笹森先生、どうぞお願いいたします。
【笹森委員】  国立特別支援教育総合研究所の笹森です。1点だけお伺いしたいと思っていて、長野県さんが実施しているサテライト教室ですけれども、目的は十分、スライドの6のところに図も書いていただいて、よく分かったのですけれども、担当の先生は、設置校で自校と他校の通級をされていて、もう一つ、サテライト教室に出向かれて、そこでもやはり自校通級と他校通級をしているということですね。ですから、お一人の先生が2つの設置校というか拠点校で、そこで自校通級も他校通級も実施している形ということですね。ブランチみたいなことを設けていかれたということですね。それでよろしいですか。
【勝又教育幹】  そのとおりです。
【笹森委員】  例えば東京都さんが始められているように、たくさんの学校に先生が回っていくスタイルとは少し違う感じですね。
【勝又教育幹】  そうですね、細かく回っていくというよりは、少しそれぞれ地域の中で通いやすい場所にサテライトも設けているという形で今はやっています。
【笹森委員】  拠点校とサテライト校で自校、他校の通級指導がやっているようなイメージですね。有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 では、氏間先生、お願いいたします。
【氏間委員】  お時間いただき有り難うございます。端的に。
 非常にこういう地域は多いと思うので、参考になりました。それで、今回は主にLD等ということに絞られてのお話だったのですけれども、やはり気になるのは、弱視とか難聴とか言語等の通級指導教室の状況になりますが、その辺りも同じようにサテライト化しているのか。あるいは、例えば視覚障害であれば、盲学校の教諭を兼務発令するというアイデアもあろうかと思うのですけれども、その辺りについてもLD等と同様に、こういった利便性向上ということがあるのであれば、その辺りについて少し情報をいただけると助かります。
【勝又教育幹】  有り難うございます。言語障害通級指導教室については以前からありまして、LD等通級指導教室と同じスキームでやっています。それから、視覚と聴覚につきましては、やはり県内の盲学校、ろう学校、それぞれ県内に2校あるのですが、そちらで通級による指導を行っています。ただ、盲学校、県立の職員を市町村立と兼務をかけるということは今していませんので、ただ、子供たちにそれぞれ遠くのろう学校、盲学校へ通ってきてもらうというのは現実的ではありませんので、盲学校やろう学校の職員がそれぞれ教育相談という形で出向いて、それぞれの学校で、そこにいらっしゃる担当の教員と一緒に指導するというような形式を取って、通級指導教室の指導と、内容的には補完するような指導をしています。
 以上です。
【氏間委員】  有り難うございます。私、広島なのですけれども、高知の盲学校の先生なども、四万十まで教育相談に行くと1日で1人指導するなんて話もありましたが、やはり教育ですので、そういった効率性とは違うところでの価値観というのは大事にしたいなと思いました。非常にすばらしいなと思ってお伺いしました。有り難うございます。
【荒瀬座長】  有り難うございました。勝又教育幹も本当に丁寧に御対応いただきまして、有り難うございました。
 それでは、長野県教育委員会からの御発表に関する意見交換はここまでとさせていただきます。勝又教育幹、本当に有り難うございました。
 それでは、3つ目に入ります。東京都目黒区教育委員会事務局の教育支援課工藤邦彰統括指導主事と、久野歩指導主事のお二人から、資料4に基づきまして御説明いただくということでございます。お願いいたします。
 それでは、お二人、よろしくお願いいたします。
【工藤統括指導主事】  目黒区教育委員会事務局教育支援課統括指導主事の工藤と申します。当課の指導主事久野とともに、本区の取組を御報告いたします。
 本日は、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議において、本区の取組を御報告する機会をいただきましたこと、大変有り難く思っております。委員の皆様から御意見をいただき、本区の取組を更に充実させていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 目黒区立学校の概況でございます。本区は、小学校22校、中学校9校を設置しておりまして、令和4年5月1日現在、1万3,067人の児童生徒が在籍しております。通常の学級に在籍する子供たちのうち、490人の児童生徒が通級による指導を受けております。本区では、平成19年3月に特別支援教育推進計画を策定し、以降、障害のある幼児・児童生徒の自立や社会参加に向けて、一人一人の持つ能力や可能性を最大限に伸ばす特別支援教育の推進に取り組んでおります。現在は第四次の計画期間となっておりまして、本日御報告する通級による指導の充実は、本計画の方向2「一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導・支援の充実」に位置づけて取組を進めているところでございます。
 本区における通級による指導の状況についてでございます。スライドに紹介しているもののほかに、通級による日本語指導にも取り組んでおりますが、本日は割愛しております。
 本区では、障害のある児童生徒、難聴障害、言語障害、自閉症、情緒障害、注意欠陥多動性障害、学習障害による困難の解消を目指し、一人一人の教育的ニーズに適切に対応するための学びの場を設置し、通級による指導を行っております。難聴障害、言語障害については、小学校1校に通級指導学級を設置しております。こちらの通級指導学級は、いわゆる他校通級が中心となっているものでございまして、保護者又は保護者の代替となる方に児童を送迎していただく必要があり、送迎が難しいために通級による指導を受けることができていない、そういう児童もいらっしゃいます。一方で、自閉症、情緒障害、注意欠陥多動性障害、学習障害の4つの障害及びその傾向がある児童生徒については、区立小中学校全校に特別支援教室を設置しておりまして、こちらは拠点校の教員が巡回して指導を行うため、いわゆる自校通級による指導となっておりまして、保護者送迎の必要はございません。この特別支援教室は東京都の事業で、都内の区市町村立学校は基本的に同じ環境となっております。本日は、通級による指導の一形態である、この特別支援教室における取組を中心に御報告いたします。
 特別支援教室では、東京都から、児童生徒12人につき1名の教員を配置していただいております。本区では、小学校巡回指導教員として31人、中学校巡回指導教員として8人の教員を配置していただいています。中学校では現在、拠点校を1校としておりますが、小学校では拠点校を7校としています。小学校では拠点校によって教員の配置数が異なっておりまして、配置人数が少ない拠点校ではOJTが課題の一つとなっております。
 本区における特別支援教室事業は、東京都からの委託を受け、小学校は平成24年度から26年度までモデル事業として実施し、平成27年度から本格的に実施しています。中学校は平成27年度から平成29年度までモデル事業として実施し、平成30年度から本格的に実施しています。特別支援教室の入室者数は、本事業の開始から増加傾向が続いておりまして、令和4年度当初には、小学校372名、中学校85名が特別支援教室に入室しております。指導を受ける児童生徒が大幅に増加した要因としては、教員、児童生徒、保護者等の特別支援教室に関する理解が深まったこと、特別支援教育コーディネーターを中心とした校内委員会で対象となる児童生徒の実態を把握し、学校から保護者に入室について案内するなど、組織的な取組につながったこと、巡回指導教員による授業観察等の実施によって、支援が必要な児童生徒への気づきの機会が増加したこと、小学校で特別支援教室に入室していた子供が中学校でも入室を希望したことなどと分析しているところでございますが、これらの要因の大前提としても、自校通級に転換したことが大きいと考えております。
 令和3年3月、東京都は、令和3年4月に都内公立小中学校全校に特別支援教室の導入が完了することから、本事業のさらなる充実のため、特別支援教室導入ガイドラインを改訂しまして、特別支援教室の運営ガイドラインを作成し、配付しています。本区においても、この東京都のガイドラインに基づき、本事業のさらなる充実に取り組んでいるところです。
 自校通級の仕組みを整えていく上での取組でございます。目黒区では、原則月曜日と水曜日を拠点校勤務とし、ほかの曜日は巡回校に1日勤務するものとして、巡回指導教員に対し兼務発令を行っております。巡回指導の体制を整備するため、特別支援教室には東京都の会計年度任用職員である特別支援教室専門員を別に配置しておりまして、巡回指導教員の巡回日でない日の児童生徒の行動観察や、関係者との連絡・調整等の役割を担っています。心理の専門家からの助言を受けるため、巡回相談心理士が1校につき年間40時間巡回しています。児童生徒が感じている困難さに応じた指導の実現を、これによって目指しているところです。また、特別支援教室の巡回指導教員が可能な限り校内委員会に参加することで、各校の特別支援教育の質の向上を図っているところです。
 特別支援教室の入室の流れでございます。入室には大きく2つのケースがあります。画像が小さくて申し訳ございませんが、新就学や転入学に当たって、通級による指導の希望がある場合と、ない場合がございます。希望がある場合は、教育委員会における就学相談を御利用いただきます。就学支援委員会で通級による指導が適当であると判定する場合には、区立学校就学時から特別支援教室による指導を開始しております。希望がない場合と、希望があっても就学支援委員会において通級による指導の判定がなかった場合は、通常の学級に就学することとなります。就学後、在籍学級の担任の気づきや、保護者との面談等を通して何らかの気づきがある場合は、校内委員会で通級による指導を保護者に提案するかどうかを検討していきます。校内委員会で提案が適当であろうと判断する場合は、保護者への提案、校内委員会における指導目標等の検討などを経て、特別支援教室による指導を開始しております。
 なお、先ほど話題になっておりました入室に関してですけれども、診断書というのは必須としておりません。また、目黒区では自閉症・情緒障害特別支援学級も設置しておりますが、そちらも診断書を必須というようにはしておりません。
 特別支援教室の入室の流れそれぞれに、引き続き取り組むべき課題はございます。就学相談を経るケースの課題といたしましては、保護者が通級による指導の内容への理解が十分でなく、特別支援教室については特に、授業で分からなかったところを補習する補習教室として利用することを希望する場合がございます。これは特別支援教室を全校設置したことによって、より顕著となった課題と考えております。また、知的発達の遅れが課題であるものの、知的障害特別支援学級ではなく、特別支援教室による指導を希望する場合などがございます。通級による指導の対象となるのは知的発達に遅れのない児童生徒であることなど、引き続き保護者や区民への理解啓発が必要であると考えています。詳細は割愛いたしますが、本区では、区民向けの講演会を年に2回、取り組んでおります。
 また、校内委員会を経るケースでは、校内委員会の検討内容に課題がある場合がございます。特別支援教室で行う自立活動について教員の理解が不足していることが要因であり、教員へのさらなる理解啓発が必要であると考えています。取組については後ほど御説明いたします。
 通級による指導の充実のための方向性として、次の3点を考えております。
 校内委員会の役割は、発達障害等のある児童生徒の在籍学級での支援状況等の情報を集約して、その実態を把握し、支援の方策の検討等を行うことであります。そのため、支援レベルの適切な判定や特別支援教室での指導目標等について、巡回指導教員や巡回相談心理士等の意見も踏まえ、適切に行うことができるようにしていく必要があると考えています。
 2、特別支援教室における指導が、在籍学級での困難さ、つまずきの軽減、改善につながっているかという観点から、巡回指導教員と在籍学級担任とがそれぞれに評価をする必要があると考えています。そして、指導の成果が在籍学級で般化されているかという視点から総合的に評価し、関係者で共通理解を図る必要があると考えています。
 3、特別支援教室で指導を受ける児童生徒数の増加に伴い、巡回指導を担当する教員数も増加していることから、経験が浅い教員も通級による指導を担当している現状がございます。指導の質の確保・向上を図るための研修を充実させていく必要があると考えています。そこで本区では、次に紹介するような取組を行っております。
 方向性の1に対する取組でございます。これは私個人の話でございますが、特別支援教育に長く携わってきた今だからこそ様々な支援の手立てを立案することができますが、特殊教育の時代、特別支援教育になってからも、私自身が通常の学級の担任であったときは、特別支援教育は自分事ではありませんでした。文部科学省の季刊誌「特別支援教育」の86号では、特別支援教育は一部の教員に任され、管理職も特別支援教育の理念を実現していく具体策に戸惑いを感じているという課題の指摘がございましたが、それは取組を進めている本区においても少なからずありまして、過去の自分の反省もあるところですが、特別支援教育を学校の中心に据えていく取組が必要であるとの思いが私自身にもございます。
 そこで本区では、校内委員会の機能強化、これを第一に取り組んでいます。校長のリーダーシップの下、校内委員会は、特別支援教室による指導を検討するだけでなく、特別支援教室の指導目標を設定したり、指導の達成状況の確認をしたり、目標達成に伴う退室の検討、退室後の在籍学級における支援方法を確認することができる組織へと機能を強化していく必要があると考えています。この最終判定は教育委員会の判定委員会が行いますが、校内委員会の判断が教育委員会の最終判定と何ら変わりのないものとなるまでに、その機能を強化していきたいと考えております。
 個別の教育課程の作成もその一つと考えています。通級による指導における児童生徒の個別の教育課程については、これまで担当教員がそのほとんどを作成してきました。校内委員会の機能強化に当たっては、個別の教育課程の作成に当たり、指導目標や指導の基本方針については校内委員会で適切に定めることができるようにしていきたいと考えています。全教員が自立活動について理解を深め、自分の学校に通う児童生徒に必要な自立活動を考えることができるようにしていきたいと考えています。そして、特別支援教室の巡回指導教員は、当該児童生徒の在籍校の校内委員会が定めた目標、指導方針に沿って具体的な指導内容を立案するといった流れを整えていきたいと考えております。
 方向性の2に対する取組でございます。他校通級では指導の成果が在籍学級での生活に般化されにくいというのが最も大きな課題であったと考えています。そこで、在籍学級担任と巡回指導教員の連携強化に取り組んでおります。自校通級のメリットを最大限に生かすため、連携型個別指導計画を作成しています。これは、指導対象である児童生徒が在籍学級で実際どのように生活しているか巡回指導時に確認し、一人一人に合ったプログラムを立案、指導をした際の評価を伝えることや、学級担任からの報告・要請に基づくプログラムを立案、指導後の学級での様子を評価して伝えるといった流れをスムーズにしていくためのものでございます。また、連携型個別指導計画の記録を活用して、特別支援教室の終了、退室の判定資料の一つにしていきたいと考えています。
 方向性の3に対する取組でございます。特別支援教室の指導効果を高めるため、様々な研修に取り組んでおります。教職員の特別支援教育に係る資質能力の向上に向け、通常の学級を担当する教員を対象とした特別支援教育研修、伝達しっ皆研修として位置づけ、年3回実施しています。自立活動に対する理解を深めたり、授業や学級経営のユニバーサルデザイン化を進めるための知識を得たりすることができるようにしているところです。
 ①は各校・園の代表者1名を対象とした研修でございますが、②は全教員が毎年履修する研修です。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律への理解を深めるとともに、合理的配慮について考える機会としております。③は、特別支援学級等を担当する教員を対象とした障害種別の専門研修です。特別支援教室を担当する教員を対象とした専門研修にも取り組んでおります。そのほかにも、学識経験者を招へいするなどして、各学校・園で特別支援教育に関する研修を行うことができるよう、予算を確保しております。
 これらの教員研修のほか、小学校で特別支援教室による指導を受けていた児童が中学校でも指導を希望するケースが増加していることから、円滑な引継ぎに向けた取り組み、特別支援教室の指導を充実させるための指導主事による巡回指導、特別支援学級設置校・特別支援教室拠点校主任会や特別支援教育コーディネーター連絡会において、情報交換の時間を設定し、各校・園のよりよい取組を共有する機会を確保するなどの取組を行っております。
 以上、雑ぱくではございますが、目黒区の取組の報告を終わります。
【荒瀬座長】  有り難うございました。御自身の御経験に基づいて大変真摯に取り組んでこられたことで、様々な充実の方策をお考えになって取り組んでいらっしゃるということでありました。
 今御説明いただきました内容につきまして、また御質問、御意見等いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 市川裕二委員、お願いいたします。
【市川(裕)委員】  有り難うございます。10ページ、6-1の校内委員会の機能強化のところなのですが、特別支援教室における原則指導期間が1年であると。ということは、1年たったら特別支援教室を利用しなくなるのか、在籍学級の方に行かれるのか、若しくは状況によっては自閉症・情緒障害学級に行かれるのかの流れがもし分かれば教えていただきたいということと、1年ということであれば、先ほど御説明があった8ページの中で、小学校でも通級指導教室、特別支援教室を利用していた方が中学校でも利用を引き続き求めるというのは、そこが分からないのですね。小学校で、1年で終わっている方であれば、中学校はもうやらなくていいということの御判断なのではないかなと思うので、そこが少しお話として分からなかったところで、教えていただければと思っています。
 それと、先ほどの長野県のこととも関わるのですが、目黒区さんの場合には、弱視のお子さんへの通級による指導が必要な方については、通級指導教室がないので、こちらはどちらの方で御支援をいただくような形をしているか、教えていただければと思います。
 以上です。
【荒瀬座長】  有り難うございます。いかがでしょうか。
【工藤統括指導主事】  1点目、1年間というものでございますけれども、これは1年間たったところで、校内委員会等できちんと判定をして、必要があれば、その翌年、指導内容をきちんと定めて翌年も指導するということがございます。
 2点目の小学校で中学校はということですけれども、私たちは在籍学級で過ごす時間を長くしていくこと、可能な限り在籍学級のみでの支援に切り替えていくこと、これを目指しています。ということは、これは環境による要因が非常に大きいというふうに考えています。小学校のところで指導を終えて、うまく在籍学級の中で過ごせるようになったとしても、中学校になったら環境が変わって、指導が再度必要になってくるということも考えられます。そういった経験があるが故に、子供たちも中学校でも指導を受けたいと、そういうふうな希望が出ることがございます。
 3点目、弱視でございますが、これは課題ではあるのですけれども、近隣区の弱視の通級指導教室にお世話になっていまして、そちらにいわゆる他校通級をさせていただくという協力を要請して、そのような形で指導を行っております。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  有り難うございました。よろしいでしょうか、市川先生。
 では、今手を挙げてくださっていらっしゃるのが、野口委員、氏間委員、馬飼野委員、櫻井委員です。この後の時間を見ますと、4人の方で多分時間が来るんじゃないかと思いますので、大変申し訳ありませんが、まず4人お願いしまして、その後、時間がありましたら、またお尋ねをいたします。
 では、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】  有り難うございます。非常に東京都、目黒区さんの今の実態に応じて、いろいろな課題の解決策というのを示していただき、勉強になりました。
 2点質問があります。1点目は、校内委員会の機能を強化されていくという点です。今後、校内委員会で入室について検討していって、判定委員会との判定が一致するようになっていくことを目指すというふうにおっしゃっていたのですけれども、現在は、校内委員会で検討してから、判定委員会を踏まえて支援を開始するまで、通級による指導を利用するまでにどのくらいの時間がかかるのかというのを、まずお聞きできればと思います。
 それを踏まえて、もし校内委員会の判定と判定委員会の判定が一致するようになったら、判定委員会は不要だと考えていらっしゃるのかという点です。そのためには校内で、判定に当たって必要な材料というのは現状では足りていらっしゃるのか、どういったことを判定材料にされているのかという点が1点です。
 もう1点は、やはり巡回型の一番難しいところは、在籍学級の担任の先生との連携方法だと思います。校内委員会の機能を強化していくということと、連携型の個別指導計画を作成されていくというところでそれをクリアされていらっしゃるということなのですけれども、現実的に、通常の学級の先生の担任が個別の指導計画を作るに当たって、ケース会議をしたり、通級指導担当の先生とゆっくり話したりみたいなことがなかなか難しいのかなというふうに思っているのですが、物理的に巡回指導の先生と担任の先生がお話しする時間ですとか、共に計画を作成する時間をどういうふうに取っていらっしゃるのかという点についてお聞きできればと思います。
 以上です。お願いいたします。
【荒瀬座長】  有り難うございました。いかがでしょうか。
【工藤統括指導主事】  まず、校内委員会の判定結果が、最終的には教育委員会の判定委員会の結果と変わらないようにしていきたいというふうに申し上げています。これは、学校の判定が正しいかどうかというふうなチェックを今、判定委員会で行っていますので、多分このチェックは続けないといけないのかなというふうに思っております。ただ、指導が始まる期間なのですけれども、現時点では、校内委員会で指導が適当であるというふうに判断があって、判定委員会までの期間については、いわゆる体験というような言い方をしているのですけれども、試行的に指導は始めているので、校内委員会で指導が適当であろうというような判断があった場合は、そのときの巡回指導教員の時間割にもよるのですけれども、可能な限り速やかに、まずは体験から指導が開始されるようにしているところでございます。
 2点目の巡回指導教員と在籍学級の教員が話す時間、これは働き方改革の話とも非常に絡んできてしまうのですけれども、話す時間というのを特別に設定していることは、申し訳ありません、ありませんが、放課後の時間等、可能な限り時間を取って、巡回指導教員は1日勤務になっていますから、話ができる時間をうまく確保しながら、各校で工夫して時間を取って話合いをしているところでございます。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  有り難うございました。よろしいでしょうか。
【野口委員】  有り難うございます。特に体験の部分、非常に参考になりました。有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 では、氏間委員、お願いいたします。
【氏間委員】  すみません、有り難うございました。特に在籍学級のところ、パフォーマンスまで評価に入れていらっしゃるとか、特別支援教育を学校の中心に据える取組というのは非常に大賛成だなと思って拝聴しました。そこで、3点、お願いできたらと思います。
 1つは、校内委員会でスタートするということになっているのですが、その頻度とか、開催するきっかけみたいなのはどういう具合になっているのかということを少し知りたいなと思いました。あと、小中の連携はすごくうまくなっているなと思って拝見したのですけれども、中高のところではどういうふうな工夫があるのかということを知りたいということ。
 3点目は、在籍学級でパフォーマンスを上げていくということ、そこへ戻していくということが重要で、それには環境因子がすごく関係しているというお話だったと思うのですけれども、中学校になってくると、今度は教科担任制になってくるので、学級担任の話だけでは収まらないんじゃないかなと思うので、その辺りきっと何か工夫があるんだろうなと思いましたので、その辺りについてお伺いできたらと思います。お願いいたします。
【荒瀬座長】  有り難うございます。3点、お願いいたします。
【工藤統括指導主事】  1点目、校内委員会の頻度でございますが、これは各校によって違うというのが実態でございます。週1回の学校もあれば、月に1回の学校もありますし、ほかの生活指導委員会等と一緒に行って、時間を工夫している学校もございます。
 2点目、小中の連携、中高の連携の方ですけれども、個別指導計画と、それから個別の教育支援計画、東京都では学校生活支援シートというように呼んでいるのですが、それに関しては、保護者の承諾を得て、高等学校に資料の送付をするようになっております。高等学校における通級による指導が東京都でも始まっているのですが、それがどのように生かされているかというのは、すみません、把握はしておりません。
 3点目、中学校になると、御指摘のとおり、教科担任制になるので、連携がかなり難しくなっていく部分は実際問題ございます。各中学校では、それも学校によって少し違うのですけれども、各学年に特別支援教育コーディネーター、サブであったり主であったりというのを置いていまして、その特別支援教育コーディネーターと調整をして、学級担任とうまくつないでいく。あとは、先ほど申し上げましたけれども、特別支援教室専門員という会計年度任用職員がおりますので、その者と教科の時間のときの様子を確認しながら、教科担任の先生とつないでいただきながら情報共有しているというような取組も行っているところでございます。
 以上でございます。
【氏間委員】  有り難うございました。特に合理的配慮が定まった後であると、やはり教科担任の先生でそこにむらがあるというのはかなりまずいかなと思ったので、そのような工夫をお伺いできて非常に勉強になりました。有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 では、馬飼野委員、お願いいたします。
【馬飼野委員】  よろしくお願いいたします。
 本日はどうも有り難うございました。私は都立荻窪高校という高等学校に所属しておりまして、どうしても高校の視点というのもあるのですが、中学校と小学校というのは非常に連携が深いというふうに見ているのですが、これが高校になりますと、どうしても中学校から高校へというところの連携というのが密ではないような、そういう状況があります。私は、高等学校で通級による指導をするに当たって、やはりそういった連携というのは非常に大切になっていくだろうなというふうに思っております。
 実際、学校説明会などを行いますと、個別の相談なんかで、中学生や、その親御さんから、今通級による指導を受けているのですけど、高校でもやっていただけますかと、引き続きお願いできますよねというようなお話もあったりするのですね。ですから、やはり中学校で実際やってきたものがどんなふうに高校でつながっていくかというのは、とても大切だというふうに思っていて、そういった意味で、これからも、ほかのことではいろいろ連携は取れてはいるのですけど、更に通級による指導について連携を取れたらいいなというふうに思っております。
 すみません、質問させていただきたいのですが、実は3つぐらいあったのですが、担任との連携、それから校内委員会、それに教科担当の連携について実は私も気になりまして、お聞きしたかったのですが、これについては野口委員、氏間委員の方で聞いていただいたので、大変よく分かりました。有り難うございました。
 ということで、1つだけなのですが、通級による指導ですが、1年で終えるというのが基本になっているかなと思うのです。先ほど、1年たったところで、そこで校内委員会で改めて判定をしてということだったのですけど、実際に1年間で通級による指導を終えることができている生徒さんというのは、小学校あるいは中学校でそれぞれどれぐらいいらっしゃるのかなというのを教えていただけると有り難いなというふうに思います。
 以上です。
【荒瀬座長】  有り難うございます。いかがでしょう。
【工藤統括指導主事】  すみません、1年間で指導を終えた児童・生徒の公表資料はないため、指導期間にかかわらず特別支援教室の入室時の目標を達成した児童・生徒の割合をお伝えさせていただければと思うのですが、令和3年度は4.7%となってございます。詳細なことを申し上げられず、申し訳ございません。
【馬飼野委員】  有り難うございました。
【荒瀬座長】  よろしいですか。そういったことでございます。
【馬飼野委員】  はい。有り難うございました。
【荒瀬座長】  では、櫻井委員、お願いいたします。
【櫻井委員】  本日は有り難うございました。全小中学校に支援の場が設置されているということ、とても参考になりました。
 1点だけ教えてください。担当する教員ですが、恐らく段階的に育成をしているとは思うのですけれども、40名近い通級指導担当の先生をどういうふうに、どんな人材を持ってきているのか。本採用の先生なのか、再任用の先生なのか、通常の学級で管理職が発掘して見つけてきているのか、免許を取らせているのか、そんなところをお聞かせいただければ有り難いなと思います。よろしくお願いします。
【荒瀬座長】  お願いいたします。
【工藤統括指導主事】  担当する教員でございますが、基本的には、これは正規の常勤の教員でございます。経験によってかなりばらつきがあるというのは、もう御指摘のとおりなのですけれども、初めて特別支援教室、通級による指導を担当する者や、そういった指導に不安がある場合については、回数は多くないのですけれども、本課の特別支援教育を担当している指導主事が巡回をして、必要に応じて私も行って指導しているところでございます。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  よろしいですか。
【櫻井委員】  有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 まだ少し時間がございます。宮﨑先生も手を挙げていらっしゃいますので、どうぞ宮﨑先生、お願いいたします。
【宮﨑委員】  有り難うございます。工藤先生、有り難うございました。東京都の先陣を切って特別支援教室の仕組みをおつくりになって、日々御苦労されていると思うのですが、2点だけ御質問させてください。
 先ほどの終了判定のことなどもあって、なかなか1年で終了というのは難しいというようなこともあるのですが、小枝先生のお話の中で、学びの場と居場所づくりという視点で考えていくと、目黒区は自閉症学級を非常に早い段階からおつくりになった区でもあるのですけど、情緒障害の特別支援学級との連携のようなことがもしあれば、教えていただきたいというのが1点です。
 2点目は、野口委員からお話あったように、在籍学級の担任と巡回指導の教員の連携強化というのがすごく重要だというので、先ほどお答えも頂いたのですが、私は、この中で重要なのは、特別支援教育コーディネーターの連絡会が非常に大きな、重要な位置を占めていると思うのですけど、この連絡会で各学校の状況というのが判断できるわけですが、情報交換は年間でどのくらいで、どんな頻度で行われているかというようなことがもしあれば、教えていただきたいと思います。
 以上です。
【荒瀬座長】  有り難うございます。よろしいでしょうか。
【工藤統括指導主事】  1点目ですけれども、委員の御指摘のとおり、1年間で終わるというのはなかなか難しいところでは確かにあります。ただ、先ほど申し上げたとおり、在籍学級で過ごす時間、適応力を上げていくことが一番の目的でありますので、基本的には、1年間たったら、できれば、在籍の学級で長く時間を過ごせるでしょうというような目標を立てて、その目標が達成できるかどうか、1年間で達成できる目標を立てながら指導を見ているというようなところでございます。
 本区では、今御指摘いただいたとおり、自閉症・情緒障害特別支援学級、かなり早い段階で設置をしております。令和3年度には小学校にも設置をして、中学校は長く、昭和50年代からやっているのですけれども、併せて小中の体制整備を行ったところなのですが、本区においては、基本的には、情緒障害といいましても、選択性かん黙のお子さんの困難を改善することを第一にしています。自閉症のお子さんも対象とはしているのですけれども、選択性かん黙のお子さんのように、コミュニケーションが少しうまくいかないというようなお子さんを対象としております。それなので、本区では自閉症・情緒障害特別支援学級を、目標としては通常の学級に学びの場を移していくということを目標にしているのですけれども、自閉症・情緒障害特別支援学級から通常の学級の方に学びの場が移った後、何らかのサポートを、在籍学級だけでは難しいときに特別支援教室を使う、そういった連携はあるのですけれども、その逆はあるかというと、ないというのが実情でございます。
 2点目については、久野の方からお話をさせていただきます。
【久野指導主事】  特別支援教育コーディネーター連絡会については、年4回、本区では実施しております。また、毎回様々な、本課からの事務連絡もございますし、特別支援学校との連携等もございまして、内容につきましては回によって違うのですけれども、ただ、情報交換の時間は必ず設定するようにしております。また、テーマにつきましては、昨年度までは合理的配慮が中心だったのですが、今年度から、特別支援教室の運営ガイドラインに基づきまして、校内委員会についてどのような取組をしているのか、また、よりよい取組、先進的な取組を情報共有するようにしております。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  よろしゅうございますでしょうか。
【宮﨑委員】  有り難うございました。
【荒瀬座長】  有り難うございます。
 それでは、喜多委員、手短によろしくお願いいたします。申し訳ありません。
【喜多委員】  すみません、時間がないところで。質問ではないです。東京都の校長として今回、様々特別支援教室に関わっておりますので、意見であるとか、感想であるとかを述べさせていただきます。3点です。
 1点は、シートの5枚目にあります特別支援教室運営ガイドライン、東京都が策定しましたが、私、そこに、2年かけたか、1年かけたか、関わりました。この背景なのですが、やはり特別支援教室が増えてきた関係で、入退室の基準をしっかりと定めていこうというのが背景にあります。ですので、今回原則1年となりました。ただ、振り返りをする中で、最長、指導延長は2年までで、退室した後もまた再入室はありますよというような体制を取っているところです。全国的にも増えていますので、この運営ガイドラインはすごく参考になるのかなというふうに感じているところです。
 2点目は連携型個別指導計画ですが、東京都、これは特徴的な取組なのですが、通常の学級に通級による指導を生かす、通常の学級の適応を図るというのが大きな目的でありますので、学級担任は、この連携型個別指導計画に書き込むのですね。3学期であれば、1、2、3学期と、目標、内容を書いて、評価も書いていきます。すごく、通級指導教室でやっていることと、やっていたことを通常でどう生かしていくのかというのが明らかになっていきます。非常に活用できる計画かなと思います。個別指導計画はもちろん別に作っていくのですが、この連携型は活用できるかというふうに思います。
 3点目は、特別支援教室、通級による指導の担当の先生方が増えているというところで、専門性向上の点ですが、目黒区さんも特別支援教室の先生方対象に研修もされています。先ほど長野県さんも、勝又先生から、各地区で自主的な研修をされているという話があったかと思います。先生方が、どうしても1名だったり2名だったり、研修する場がないので、そういうのを意図的に行政が整備をしていくということがとても大事かなというふうに感じるところです。
 以上です。長くなりました。有り難うございます。
【荒瀬座長】  いえ、有り難うございました。御指摘いただきまして有り難うございました。御紹介も有り難うございました。
 それでは、時間がもう過ぎてしまいました。進行が十分でなくて申し訳ありませんでした。また、宮﨑委員と滝川委員におかれましては、御発言を止めていただいたということで、大変申し訳ありません。メール等で事務局の方にお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では、次回の日程につきまして、生方企画官、よろしくお願いいたします。
【生方企画官】  次回は、10月18日14時から16時に開催させていただきたいと思います。お忙しいところ大変恐縮ではございますが、よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】  それでは、本日はこれで閉会といたします。御出席いただきまして有り難うございました。
 
―― 了 ――
(会議後に事務局に寄せられた意見と発表者からの回答)
<議事(1)小枝委員からの報告について>
【滝川委員】  資料2-8枚目の内容に関連して、特別支援学校(病弱)の中学部・高等部に在籍する生徒の疾患の多くを占めるのが、ICD-10 F 精神及び行動の障害です。そして、発達障害との診断がなされている生徒も、特別支援学校(病弱)に在籍しています。発達障害の診断だけでは、特別支援学校(病弱)の対象ではありませんので、ICD-10 F 精神及び行動の障害の疾患を併せ有しているということになります。
今回の検討会議で、通級指導教室の充実を目指す際に、セットで、学校での対応がうまくいかず、【資料2-15枚目】にあるように、発達障害の二次的に派生して内在化障害である心身症合併症などの精神性疾患を発症した児童生徒への対応の充実も、(本検討会議ではないかもしれませんが、)考える必要があると思っています。
発達障害の二次的障害として内在化障害した、学校に行くことができなくなった児童生徒は、運がよければ、特別支援学校(病弱)につながりますが、かなり多くの児童生徒は、長期欠席児童生徒となっているのが実情ではないかと推測しています。「発達障害の児童生徒のニーズに応じた教育、発達障害の二次障害にならないための」教育の充実はもちろんのこと、「発達障害の二次障害になってしまった児童生徒の」教育の充実も検討の余地があると思うのです。小枝先生のお考えをぜひ、お伺いしたかったので、挙手させていただきました。
特別支援学校(病弱)の対象は、各自治体が独自に定めているのが現状で、病院に入院している児童生徒に限っている自治体では、上に書いた発達障害の二次的に派生した内在化障害(精神及び行動の障害)によって、入院治療を必要としない状況で、長期欠席している児童生徒への教育対応はあまり行われていないのが実情だと思います。以上です。
【小枝委員】  残念ながら、滝川委員からのご質問にお答えできるデータを持っておりません。ご指摘の通り、発達障害があって身体化した症状が出て不登校になり、学力も身につかないままに中学卒業を迎えてしまった発達障害の方の行き場がありません。実態すら把握されていないと思います。
【滝川委員】  ご提示いただきました、理由別長期欠席者のうち、「病気を理由とする」長期欠席者の疾患等の把握と、その児童生徒への小中学校の現在の教育対応について把握することは、重要だと考えています。ありがとうございました。
 

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課企画調査係

(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課企画調査係)