「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第1回)議事録

1.日時

令和4年1月31日(月曜日)15時00分から17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 論点(案)について
  2. 地方教育行政の充実に向けた方策等について(委員からの発表)
  3. その他

4.議事録

【伊藤初等中等教育企画課専門官】  それでは、時間になりましたので、始めさせていただければと思います。
 本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第1回)を開催いたします。私は、事務局を務めます文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課の伊藤と申します。
 本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をオンラインにて配信しておりますので、御承知おきください。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、本検討会の開催要項・構成員につきまして御説明いたします。資料1を御覧ください。
 開催要項でございますが、1ポツの趣旨のところで記載しておりますとおり、令和3年1月の中央教育審議会答申におきまして挙げられた地方教育行政の在り方に係る検討事項その他当面する課題等を踏まえまして、地方教育行政の充実改善に向けた検討を行うこととしております。
 検討事項は、2ポツに記載しておりますとおり、教育委員会の機能強化・活性化のための方策、教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方、小規模自治体への対応・広域行政の推進のための方策、学校運営支援のために教育委員会が果たすべき役割などを想定しております。
 3ポツ、実施方法でございますが、二つ目のポツに記載しておりますとおり、本会議は、原則として公開することとしておりますが、座長が、公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認める場合につきましては、議事の全部又は一部を非公開とすることができるとしております。
 資料についても、同様の整理としております。
 また、一番下でございますが、本会議は、原則として議事録を作成し、公開することとしております。
 続きまして、検討会の委員の皆様を御紹介いたします。資料1に名簿をおつけしておりますので、それに沿って御紹介をさせていただければと思います。
 東北大学教育学研究科・教育学部教授、青木栄一様。
【青木委員】  青木でございます。よろしくお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、島根県教育魅力化特命官、岩本悠様。
【岩本委員】  岩本です。どうぞよろしくお願いします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  大分県玖珠町教育長、梶原敏明様。
【梶原委員】  梶原でございます。よろしくお願いします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  杏林大学客員教授、ルーテル学院大学客員教授、前東京都三鷹市長、清原慶子様。
【清原委員】  皆様、こんにちは。清原です。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  清原様には、事務局から座長をお願いしております。
 奈良教育大学教職大学院准教授、小﨑誠二様。
【小﨑委員】  小﨑でございます。よろしくお願いします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  埼玉県戸田市教育委員会教育長、戸ヶ﨑勤様。
【戸ヶ﨑委員】  戸ヶ﨑です。よろしくお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  戸ヶ﨑様には、事務局より座長代理をお願いしております。
 大阪府箕面市教育委員会教育長、藤迫稔様。
【藤迫委員】  藤迫です。どうぞよろしくお願いします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  東京大学大学院教育学研究科准教授、村上祐介様。
【村上委員】  村上と申します。このたびはよろしくお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  埼玉県本庄市長、全国市長会社会文教委員長、吉田信解様。
 以上の皆様に御参加いただいております。
 続きまして、事務局を紹介させていただきます。
 まず、伯井美徳初等中等教育局長、本日遅参される予定でございます。
 淵上孝審議官は、本日欠席です。
 水田功初等中等教育企画課長。
【水田初等中等教育企画課長】  よろしくお願いします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  片柳成彬地方教育行政専門官は、本日欠席です。
 そして、私、初等中等教育企画課専門官の伊藤でございます。よろしくお願いいたします。
 また、文教施設企画・防災部施設企画課、施設助成課がオブザーバーとして参加しております。
 それでは、これからの進行は、清原座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【清原座長】  皆様、改めまして、こんにちは。清原でございます。
 このたび、本調査協力者会議の座長を務めさせていただくことになりました清原慶子です。皆様と御一緒に本会議の目的を果たすために、率直で建設的な意見交換ができますような進行に努めたいと思います。皆様の積極的な御参画をどうぞよろしくお願いいたします。
 まず、議事に入る前に、初等中等教育企画課長の水田様より御挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。
【水田初等中等教育企画課長】  初等中等教育企画課長の水田でございます。「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 委員の皆様におかれましては、御多用の中、本調査研究協力者会議に御参加いただき、誠にありがとうございます。
 御案内のとおり、平成26年に、教育行政の責任体制の明確化や首長との連携を促進するために、地方教育行政法が改正され、令和元年4月には、全ての自治体において新制度に移行しております。
 今後は、改正の運用状況を踏まえつつ、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や、Society5.0時代の到来など、複雑化する社会においても子供たちが豊かな人生を切り開くことができるよう、令和の時代にふさわしい教育を実現するための地方教育行政の在り方について検討を行う必要がございます。
 こうした背景を踏まえまして、本検討会では、教育委員会委員会の機能強化、首長部局との効果的な連携、小規模自治体への対応や広域行政の推進のための方策等について検討を行っていただく予定です。
 委員の皆様におかれましては、専門的な知見をもとに、忌憚のない御意見を頂ければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【清原座長】  ありがとうございます。初等中等教育企画課長の水田様より、今回設置されました調査研究協力者会議につきまして、趣旨等を御説明いただきました。今後とも、事務局として、よろしくお願いいたします。
 それでは、次に、事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  本日の配付資料でございますけれども、資料1といたしまして、先ほど御説明いたしました開催要項、資料2といたしまして、論点(案)、資料3、資料4といたしまして、委員の御発表資料を御用意しております。また、参考資料1といたしまして、昨年7月8日の初等中等教育分科会資料、また、参考資料2といたしまして、その関連データを配付しております。不備等ございましたら、御連絡ください。
【清原座長】  ありがとうございます。皆様、資料、お手元におそろいでしょうか。
 それでは、議事に入ります。本日の議事は、(1)論点(案)について、(2)地方教育行政の充実に向けた方策等について、そして、(3)その他、の3点となります。
 それでは、早速議事(1)の「論点(案)について」に入りたいと思います。
 初めに、『「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた検討(論点(案))』を資料2として準備しておりますので、事務局の伊藤専門官に説明していただきます。
 それでは、よろしくお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  それでは、資料2をお手元に御用意いただければと思います。
 本検討会の論点(案)としてお示しをしておりますけれども、まず令和3年1月の中教審の答申におきまして、点線枠囲みの記載でございますが、今後さらに検討を要する事項として挙げられておりますのが、学校を積極的に支援し、社会の変化に素早く的確に対応するための教育委員会の在り方、特に、教育委員会事務局の更なる機能強化や首長部局との連携の促進、外部人材の活用等をはじめとする社会の連携等を含む教育行政の推進体制の在り方です。
 また、参考資料1も御覧いただければと思いますが、昨年7月8日の初等中等教育分科会資料におきまして、この令和答申の検討事項を踏まえました検討の視点として、1から4の事項を示しております。
 具体的には、1.社会の変化に素早く的確に対応するための方策、2.新型コロナウイルス感染症事案等を踏まえた機動的、自立的な学校運営を支援するための方策、3.平成26年地方教育行政法改正の施行状況を踏まえた首長部局との効果的な連携のための方策、4.年少人口減少とデジタル化を踏まえた広域行政の推進のための方策、こういった検討の視点が示されております。
 これを踏まえまして、本調査研究協力者会議では、これらの視点に対応する論点として、主に教育委員会及び教育委員会事務局の在り方に着目して、教育委員会の機能強化・活性化のための方策、教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方、小規模自治体への対応・広域行政の推進のための方策、教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方、小規模自治体への対応・広域行政の推進、学校運営支援のための教育委員会が果たすべき役割、こういった論点を中心に検討を行っていきたいと考えております。
 それぞれ想定される論点につきまして、(1)から(4)ということで示しておりますので、順次御説明をさせていただければと思います。
 (1)の教育委員会の機能強化・活性化のための方策についてでございますが、教育行政自体がより社会の変化に素早く的確に対応するために、教育委員会の機能強化・活性化についてどのような方策が考えられるかという観点から、以下、論点を例示しております。
 枠囲みの中、まず一つ目のポツでございますが、教育長の職の特殊性ですとか、教育行政を取り巻く状況の変化を踏まえまして、教育長に求められる資質、能力、人材確保をどのように考えるかといった観点から論点をお示ししております。
 2ページの一番上でございますが、今度は教育委員会事務局に着目しておりまして、教育行政職員が求められる資質・能力を着実に身に着けるために、どのような方策が考えられるかということで、一般に、教育委員会事務局は一般行政職出身者や教職員出身者により構成されていることを踏まえ、それぞれの立場から検討する必要があるのではないかというような論点もお示ししております。
 続きまして、教育に関する専門性の観点からは、職員に対して大学や大学院での修学の機会を提供したり、あるいは、学校に派遣して教育現場での経験を積む機会を提供することが重要ではないかというような問題提起もさせていただいております。また、行政職員の専門性の観点からは、首長部局など教育・学校以外の部局の経験を積む機会を積極的に提供することが重要ではないかといった論点もお示ししております。
 その下でございますが、教育委員会事務局の構成についてでございますが、教職員出身者と事務職員の役割分担に応じた適正な構成をどのように考えるか。
 また、困難を抱える児童生徒への支援の観点から、これは福祉部局との連携とも関わってきますけれども、教育委員会にどういった機能が求められるのかといった点でございます。
 今度は、外部人材の登用についてでございますが、専門的知見を有する外部人材を教育委員会事務局に登用・活用することについてどのように考えるかといった論点を提示させていただいております。
 教育委員会会議の活性化を含めまして、教育委員会の重要事項の意思決定を行う責任者として、教育委員の教育行政への関わり方についてどのように考えるべきか。
 その下でございますが、民間企業等の外部機関との連携の在り方についてどのように考えるか。
 こういった論点について、例示として提示をさせていただいております。
 その下、(2)でございますが、教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方についてでございます。
 論点の例といたしましては、総合教育会議について、その趣旨・目的をより一層実質化するために、どのように活用することが有効か。
 児童福祉行政との連携ですとか、公共施設の効果的・効率的な整備・管理など首長部局を含めた関係部局等との一体的な行政の推進の観点から、連携の在り方についてどのように考えるべきかといった論点を挙げさせていただいております。
 (3)でございますが、小規模自治体への対応・広域行政の推進のための方策ですが、論点の例といたしまして、デジタル技術の活用ですとか、自治体をまたがった教育委員会の共同設置など、小規模市町村における教育事務を持続可能とするための方策の在り方についてどのように考えるべきか。
 その下、都道府県教育委員会が担うべき役割をどのように考えるか。都道府県教育委員会と市町村教育委員会、市町村教育委員会同士の連携の更なる促進を図るためにどのような方策が考えられるか。
 教育事務所について、高度専門化など、在り方の見直しを検討すべきではないかといった問題提起もさせていただいております。
 最後、(4)でございます。学校運営の支援のために教育委員会が果たすべき役割ですが、論点の例といたしまして、学校現場の様々な課題に迅速に対応しつつ、教職員が目の前の教育課題に集中できる環境を整備するために、例えば、学校管理業務の一部を教育委員会が分担すると、そういった取組もあり得るのではないかといった問題提起をさせていただいております。
 また、学校運営協議会でございますが、その機能を充実させるために、設置者である教育委員会による伴走支援が必要ではないか。
 このほか、感染症や災害等の非常時において機動的・自立的な学校運営を支援するためにどのような方策が考えられるか。
 こういった論点についてお示ししております。
 非常に多岐にわたる論点ですが、本会議で検討を深めていきたい内容についてまとめさせていただいたものです。先生方の御意見、御発表を踏まえまして、深掘り、充実させていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【清原座長】  伊藤さん、ありがとうございました。
 今御説明いただきましたように、私たちの会議がどのような経過で設置されたか、そして、求められている検討課題四つにつきまして論点を整理して、私たちの検討の準備として御用意いただいた資料の御説明でございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、皆様から御質問、御意見等がございましたら、頂きたいと思います。
 恐縮ですが、画面の前でこのように挙手をしていただければ、私から順次指名をさせていただきます。皆様、御質問、御意見等、この論点(案)についてございますか。いかがでしょうか。
 出発点の論点(案)ということでございますので、今後、皆様の御報告や意見交換でこれが深められていくということになると思いますが、現時点でいかがですか。
 岩本委員、お願いいたします。どうぞ。
【岩本委員】  岩本です。よろしくお願いします。
 論点も整理されていて、大体見えておるんですが、ちょっと質問というか、答えにくい部分もあるのかなと思うんですけど。
 議論に入っていくに当たって伺えたらと思うのが、この議論の出口というか、例えば、この論点(例)とかで書かれている、教育委員会による伴走支援とかあったらいいですよねとか、こういう方策も考えられますよねという、考えられることとかが出たときに、こういうことが考えられるでしょうみたいにまとめる気なのか、ここでの議論が一体何を変えていくものにつながっていくのか、何に結実していく可能性があるのかみたいなところがイメージできると、ある程度、どのレベルでの議論だとか、事例の話だとか、制度論なのかという、議論のレイヤーというのか、焦点を見出すために、例えばこういう出口、例えばこういう出口というのがあるのであれば、ちょっとイメージとか例とかでも頂けると、この後の議論、質問しやすくなるなと思ったところです。
【清原座長】  ありがとうございます。
 すなわち、論点に示されている内容が、私たちが検討した結果、例えば、望ましい方向性を示していくのか、具体的な取組案を示していくのか。政策のレベルの具体性についての、「レイヤー」とおっしゃいましたが、「階層」ですが、これは課長さんに伺ったほうがよろしいですかね。水田さん、イメージがありましたら、お答えをよろしくお願いします。
【水田初等中等教育企画課長】  ありがとうございます。
 論点では、少し方向性みたいなものが大体御理解いただけるような形に示させていただいておりますけれども、当然、これから様々な事例なども御発表いただいていくわけでございますので、方向性のみならず、具体的にこういう取組があり得るのではないかというところはまず入ってくると思います。
 さらに、それだけではなくて、全国の自治体の方などが知りたいというのは、そのために、やっていくために、どういったところに注意したほうがいいのかとか、そういった若干失敗事例みたいなものも、もし回っていただければと思うんですけれども。そういった中で、こういう工夫をすると、こういった方向の取組というのが有効にできると、そういったものをお示しいただければと思っております。
 そうすることによって、これは当然、自治体の中での人事とか組織の話になりますので、最終的には自治体さんのほうで御判断いただくわけでございますけれども、そういった様々な取組がある中で、この会議の協力者の皆様方が一つの方法としてお示しいただくことで、可能であれば、そういったものもチャレンジしていただくとか、そういうきっかけになればと考えております。
 また、もちろん議論の中で、そうやっていくためには、実は今のここの部分はもう少しこうしたほうがいいのではないかという議論が出てくれば、そういったものも併せてお示しいただければと考えているところでございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 岩本さん、いかがでしょうか。
【岩本委員】  分かりました。なので、この議論の終着点の一つは、各市町村や都道府県の教育委員会さんが、こういう方向性がこれから大事なのねとか、こんな具体例とか方策があるのねと言って、各教育委員会の参考になるものを、議論の中で事例とかを含めて作っていくというイメージが基本だということなわけですね。
【水田初等中等教育企画課長】  さようでございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 おそらく、論点の大きな四つの項目がございますが、それぞれにおいて具体化の程度にはもちろん少し差が出てくるかもしれませんけれども、今課長さんがお答えされたのは、私たちができる限りより良くしていくための具体的な方向性、また、それをしていくために現状で何らかの阻害要因があれば、そのことについて、阻害要因を取り除くような提案についても踏み込んでさせていただくことなども柔軟に受け止めていただけるような、そんな感じとして私は受け止めましたが、皆様よろしいでしょうか。
 ほかに御質問や確認事項ございますか。いかがでしょう。この論点(案)については大体よろしいでしょうか。
 今、岩本委員の御質問で、私たちが、かなり率直に望ましい方向性を求めつつ、現状の課題を直視して、そして、それを克服していくという、具体的で、各自治体の教育委員会の皆様の、あるいは、教育行政に関わる皆様のお役に立てるような方向性を、できる限りチャレンジして提起していこうというようなことでございます。水田課長さんもうなずいてくださっていますので、そこをまず共有してから、本日、2名の方に御発表いただくことになっていますが、そこに移ってもよろしいでしょうか。いかがでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、また戻って論点(案)について最後のほうで御意見を頂いてもいいと思いますので、これからこの論点(案)を私たちの取組で充実をしていきたいと思います。
 それでは、次に、議事(2)、「地方教育行政の充実に向けた方策等について」に入りたいと思います。
 本日は、小﨑委員と戸ヶ﨑委員に御発表資料を御用意いただいております。新年早々、本当にお二人の皆様には、御準備ありがとうございます。それぞれ恐縮ですが20分程度で御発表いただき、御発表ごとに質疑の時間を設けたいと思います。
 それでは、最初に小﨑委員、よろしくお願いします。
【小﨑委員】  よろしくお願いいたします。今回、最初の提案者として御指名いただきましたので、まずは論点を広げていく視点で、提案させていただきたいと思います。
 この後に、戸ヶ﨑委員が教育長としての立場も含めた教育委員会の組織のお話をしてくださいますので、私は、教育行政の中で管理職も数年やりましたが、10年以上指導主事を経験しましたので、それを踏まえた資料を作成しましたので、共有させていただきたいと思います。
 今、清原座長から建設的・具体的にと、何度かおっしゃっていただきました。この協力者会議が調査研究ということがテーマになっているということもありますので、まず、現状を直視するという意味で、三つ整理させていただきました。組織を横断して連携する課題と、学校と教育行政との関係の課題と、指導主事の業務についての課題です。
 この協力者会議の論点の中では、主に(1)と(3)というところのウエートで進めていこうと思います。
 今回、自分なりの考えとか経験をまとめようとしたのですが、やはり身近な指導主事にも意見を聞いておこうと思いまして、インターネット上で投げかけました。1月23日ですから、つい数日前です。すると、何人かが回答してくださって、ついでにいろいろ意見を言いたいメンバーもいるだろうから、知り合いも紹介するよということで、答えていただく人数が広がりまして、最終的には、たった2日間で298名もの指導主事、もしくは管理職に当たる方々が、私の疑問とか論点について意見をくださいました。そのアンケートの結果と、奈良県が県域で、県と市町村の教育委員会が共同して調達し、組織をつくったときの、データを合わせて、教育行政のあり方について考えてみたいと思います。
 この298名という数は、すごい多い数だと思うのですが、実は、全都道府県が入っています。北海道から沖縄まで、口コミで広がっていったわけですが、結局、全国から集まりました。率直な感想を述べさせていただきますと、見事に北海道から沖縄まで、どこも共通でした。つまり、データを集めてみて、それをまとめた状態で一覧したときに、これは北海道の課題だなとか、これは関東の課題だなということはなく、もうほぼみなさん共通の課題を持っているということが見えました。
 ということは、それぞれの指導主事の努力とか、個人的な能力とかに影響された課題というよりは、組織、行政の仕組みであるところに原因があり、何らかの課題があると感じている、指導主事はそう捉えているのではないかというのが、大ざっぱな私の感想です。
 幾つか質問をしたわけですけれども、まず、教育委員会の事務局、御自身の仕事に関して、「権限とか責任の所在はどうですか」と尋ねました。実はこれは、フラットな質問方法ではなくて、課題と感じるところを言ってくださいというニュアンスでの問いかけですので、基本的にはネガティブなウエートで回答されていると思います。実際は、今回、回答されている方々は、今回の回答に協力しようということも含めて、間違いなく前向きで、教育行政の中でもすごく積極的に働いていこう、どんどん変えていこうという気持ちをお持ちの方ばっかりのはずです。図の見方としては、右側に寄るほどネガティブ、私から「こういう課題がありますよね」と聞いたことに対して、「課題があります」と強く思うとどんどん右へ寄っていきます。「いやいや、そうでもないですよ」ということであれば、左に寄ります。そういう見方をしていただくと、教育行政の責任とか権限のことについては、まあまあこんなもんじゃないのかなというように見えます。
 「教育行政のスピード感、機動性とか対応力はどうですか」と尋ねたら、7割あたりのところにピークが来ている。ということは、やや硬直化しているととらえているのかもしれません。それが、下の図の、組織の硬直や形骸化を感じるかというところにつながってくると思うんですけど、ぐっと右寄りになっているというのは、仕事自体が、公務員としての行政組織ですから当然のことなんでしょうけど、いろいろな人がいろいろなところで決定したことを、黙々と遂行するという役割があって、自らが考えて、立案して、企画して、何かをやっていくというクリエイティブな要素を求められていないような気がしていますよね、ということが、記述していただいたコメントからもわかります。
 その課題を解決しようとして、みなさんの言葉からは、やっぱりデジタル化のこととか、クラウドベースでいくこと、そもそも守備範囲が広すぎる、一人でいろいろなこと全部やらされるという負担感がある。これについては、教育行政を経験していない方でも、多分そうだろうなという想像ができることと、ほぼ一致しているのかなと思いました。
 奈良県の場合、まず、統合型校務支援システムといって、子供たちの学籍を管理したり、成績をつけたり、公簿を作ったりするシステムを県で統一しましょうと提案したわけです。統一するというのは、単に同じ製品を使うということではなくて、この図にありますように、幼稚園あたりから小中高とデータをつなげていく。その間に、高校入試、大学入試への出願なんかも含めてつなげようという提案をしました。これは、今、いろんなところで話題になっている教育データを何かに生かそうとか、そういう発想ではなくて、そもそも名前一つにしても、給食のアレルギーの情報にしても、すでにデジタルでデータを持っているのに、紙でやりとりしてまたデータ入力する手間がある、それなら最低限共有できることというのを県の中でデータでやりとりできる流れをつくりませんかという、そういう提案でした。それに付随して、出退勤のデータとか、公金の管理とか、図書の本を借りるとか。子供たちが本を借りるのも、うちの学校の図書館だけからしか借りられないが、もしかしたらシステムを共通化すれば、検索することで、隣の小学校にあるから借りよう、そういう発想か生まれてもいいんじゃないのという議論をしながら、構想を創り上げたわけです。これが5年前にスタートしました。これは文部科学省さんの事業でリードしていただいて支援を受けたおかげで実現したことです。自分たちだけではできなかったと思います。
 システムを導入するときのコンセプトとしては、ここに挙げたような内容です。これはシステムを導入する学校の先生方には、必ず見て理解していただくために、意見をいただいた。県教委としてはこれでいきたいという宣言はしているんですが、これからシステムをみんなで考えていきましょう、県内すべての学校に広まらないと意味がないですよね。それから、ムリ・ムダ・ムラも、みんななくしたいと思っていますよね。正確な情報を保つためにすべての学校の環境を同じにしておいて、例えば、私たちが先週、何時間働いたのかいうことなんかは、自分で管理できるようにして、先生は、パソコンではなく子供たちの指導に向かいましょう、という提案です。この6点を示しました。
 概ね、このような内容については、大きな反対というのはないですし、そもそもそれを実現するために具体は一緒に考えましょうという投げかけでした。そうこうしているうちに、コロナ禍のことで、GIGAスクールの端末が導入される、ネットワークの構築もしないといけないとなったときに、奈良県では、真ん中に子供たちと先生を据えて、環境をつくるために誰が何をするのか、いう点を整理したイメージがこの図なんですけれども、それぞれの自治体の今ある環境については、否定もしないし、駄目だとか悪いとかいう評価はしないでおきましょうと。これまで努力してやってきたんだから、現状のことはまずはOK。OKというのは、諦めているとか認めているということではなくて、まず、現状をきっちり把握してから、それぞれの現状をさらに一歩進めるためには何ができるだろうということについて、教育内容、整備、研修は、県域でみんなで一緒にやりませんかという呼びかけだったわけです。
 トップダウンで決めて、その目標に向かって物事が流れるというイメージではなくて、下から支えよう、下に行くほど大きい組織となって支えていこうという、支え型のイメージで進めるつもりだということを、共通認識として提案してきたわけです。これは、県の教育委員会が、市町村教育委員会に対して、これでどうでしょうという提案をして、みんなで、まあそうですよね、という合意を得た内容になります。これに基づいて、じゃ、端末を一緒に買おうか、という話になったということですよね。
 教員の研修機会も、各自治体ごとにばらばらでやっているということを、県教委がまとめて全部やりましょう、ではないんです。各自治体個々にいろいろなことをやりたい、やる予定だというのを、お互いがそれを見たり参加したりできるようにしましょうという提案です。いろんなメニューを県域全体としてあちこちで経過を立てたものを、どこの自治体にいようが受講できる。それを、県立教育研究所で「先生応援プログラム」と名づけたんですけれど、この研修には、県内の教員なら誰でも参加できますと。
 研修の数は、当初計画は、半年で、200から400ぐらいありました。できるできないではなく、してみたいという夢で計画をしてみたわけです。もちろん、それを全部受けてほしい、ということではなく、このたくさんのメニューの中から御自身に合ったものだけを選んで勉強しましょうと。小さくて見えにくいと思いますが、星型のポイント制になっているんです。受講した研修によって、5ポイントもらえるとか、2ポイントもらえるとかいう、そういう楽しみの要素なんかも含めながら、先生たちが自分自身で、自分がどういう研修を受けたかということなんかもつかみながら、それぞれのペースで受けてくださいということにしてみました。これはある指導主事の発想を生かしてみたものです。これらの研修は、基本的に放課後の時間、3時半ごろから5時までの時間を使ってやっていきま
しょうということを企画したたわけです。
 それがどういう影響を与えた、というと、全国の令和元年度と令和2年度の教員のICT活用指導力の状況という文部科学省の調査、この赤丸が、奈良県の全国順位です。平成30年度までは、全ての項目が47位というような状況もあった奈良県が、たった1年で、順位が大きく変わったわけです。
 教育委員会としては、研修の機会をさきほどまでの説明のように増やしたわけです。ただ、今までも、別に奈良県は研修の機会が少なかったわけではなく、確かに今回、受講した人の割合は増えてはいますけれど、劇的に研修を受けた先生が増えたわけでもない。それなのに、先生たちの「できるようになりました」という回答が一気に伸びた。全国平均を目指して頑張ろうねと言っていたのが、もう平均どころか、ベスト10を狙いましょうという位置に来ている。
 これはどうしてなのか、ということを考えたときに、学校独自の素晴らしい取組とか、ある自治体の素晴らしい取組とかでは、このデータは変化しないです。県平均ですから。これはやっぱり、県域で教育行政が手をとりあって取り組んだことによって、状況が動いたということではないかと思っていますので、ここはもうストレートに、私たち教育行政が行ったことによる成果だと感じています。
 
 教育の情報化推進に貢献した要素というのは、リーダーシップもありますし、同じ立場の担当者同士がしっかり連絡を取り合って、悩み相談をし合って進んできたというのもあります。ということを考えると、やっぱりコミュニケーションです。リーダーシップという点では二つあって、一つは、トップが明確なビジョンを示す。そして、単に示すだけではなく、担当者にしっかり任せるということ。それが、一番下の項目ですが、自由度というところです。担当者に、「しっかりやれ。応援するから頑張れ。」とはっきり伝える。それは、担当者に個人的に言うわけではなくて、奈良県の場合でしたら、奈良県の教育長が、全市町村の教育長を全員集める臨時教育長会を開いて、そこで、「県としても担当者にしかり頑張らせる。みなさんのところの担当者もしっかりリードして進めていこうと思っていますから、ぜひ協力を。これまでの奈良県の現状は良くないから、別に順位にこだわるわけではなく、先生たちが自信を持って教育できるような環境というのをつくるために、みなさんで支えてあげてください」ということを宣言しています。そして、あとはみんなに任せたからと言って、チャレンジさせてくれる。そこには自由度があるから、担当者たちが知恵を絞ってクリエイティブに協力していけるという、そういう要素が大きかったと、現時点では思っています。少なくともここまでの短期的にはそうでした。
 逆に、うまく進まない点についてです。こちらもコミュニケーションに関わるところなんですが、お金、知識、経験…。不足という言葉がどうしても並びますが、その背景には、資料の下のほうにある、ルールがこうだからとか、習慣がこうだからということがあって、すでに決められていることがあって新しいことができないわけです。となると、逆に、今までのたくさんの知見を積んでできあがっているルールや、これまでこの分野をリードしてきた人が、新しいことをやろうとしたときにブレーキになっていることがあるということになります。今までこうだったから、これでうまくいっているから、新たにトラブル事を起こしたくないと考えると、前向きな気持ちであっても、安心・安全・安定ということを求めると、場合によっては、進めようとしていることに対する阻害する要因になる。阻害というのは、邪魔したとかいうことではなくて、そこに大きな課題があって、労力を注がないと解決しないという状況が生じることになる。
 この資料のコメントは、290名を超える、全国の指導主事の方々がコメントとして書いてくださったことを整理したものですが、上位の部分を見ると、自分にはしたいことがある、活用したら、もっとこうなったらいいのにと考えていることがあるんだけれども、それを実現させるためにどうしたらいいか分からない、難しさを感じているということが多いです。
 ほとんどの場合、横並び意識を働かせて、ほかの自治体はどうなのとか、前例主義に則って今まではどうだったのか、ということを確認してこれまでどおりにやれば問題ないんだけど、新しいことに踏み込んだときには、課題そのものの難しさというよりも、どうも周りのことが理由で進まないと指導主事は感じていますね。自分の問題もあるけれど、周りの影響でやりたいことが進みにくくなっているように感じている、そういう捉え方でしょうか。
 次に、学校との関係性のことでは、「学校のニーズに応えられていますか」と聞くと、まあまあという感じでしょうか。「地方の行政としての役割はどうですか」と聞くと、「周りを見ながら、やるべきことはそれなりにできていると思います」というようなニュアンスです。「教員との関係性」については、普段から関わることが多い管理職とはスムーズだという実感は持つものの、教員となると、やや難しさを感じている。それは単に、普段から接していないから疎遠だということだけではなさそうで、どうも指導主事という役職に対する印象が悪い、誤解されているという言葉までは出てこなかったですけれども、指導主事が話すことはトップダウンのイメージで、なかなか教員に寄り添っている感が伝わっていないような気がする、というのが指導主事の実感です。この点についても、特に指導主事でない人たちが想像しているところから大きく外れているということはなく、たぶんそうだよねという内容になっています。
 ざっくりとした言葉で言うと、指導主事になると、「みんな一度は教育委員会を経験してみたらいいよね。」と感じているんです。それは決して投げやりな思いではなくて、やっぱり指導主事のしていることを知ってもらって、自分たちがやっていることとか、なぜそうなのかを、学校の先生は知る機会がないから、知ってほしいということです。
 教育委員会事務局で働いている自分自身は、例えば、資料の黒四角のところなんですけど、自分たちが勉強する機会があまりにもなくて、学校で今、一人一台端末がとかネットワークがとか言っているけれど、自分が学校に通っていたときや先生として教えていたときにはそんなものはなくて、それについて指導してほしいと言われても、さすがにそれは難しいと思っていると。だから、先ほどの論点(1)の中での提案もありましたように、教職大学院で学ぶとか、文部科学省の指導主事会のアーカイブをオンラインでも見直すとか、指導主事の自分自身にも学ぶ機会があって、学校にいる先生たちと一緒になってチャレンジしながら関わっていきたいという、その思いが強いのかな、ということが感じられます。
 次に、教育委員会事務局の組織のことではなく、御自身のことだけ見ていただいた場合にはどうですか、ということも聞いてみました。質問の仕方が「課題感」なので、「ご自身の考えは組織ですることに反映されていないと思いますか」という、あえて課題感が浮き出しやすいように、ネガティブに寄った聞き方をしています。「自分の考えが反映されていないと思う」という方もいるし、「いやいや、こんなものです。大丈夫」とか、むしろ、「受け入れてもらえていて、頑張っています。楽しいです。」という人もいます。
 業務量が多いことについては、「強くそう思う」にかなり寄っていますから、現状として、学校の先生だけが多忙だということだけではなく、教育委員会の中も同じだということです。これも改めて課題として見えたということではなく、多分そうだろうなと感じてきたことです。
 「指導主事として勉強する機会が不足している」というのは、全くないということではなくて、もうちょっと工夫すれば、何とかできそうなこともあるでしょう。市長部局に対する外との調整のことが大変ですよ、というのは、当然そのとおりかなと。
 通知内容がうまく伝わっていないような気がすると感じている。先生との関係性については、まあまあ、良くもないんだけど、悪くもないみたいな感じだなと。
 外部との連携の点では、こうやって見ると、教育の担当者とはうまくいっているんだけど、財政担当とはやっぱりかなり厳しい関係にあるよねという感じでしょうか。そういうニュアンスとしては出ているんですけど、概ね、これも、関係性が難し過ぎて混乱しているということではないということが見えます。
 保護者や地域の方の対応については、学校に丸投げでは解決しないとよく言われていて、やはりどこまで関わるべきなのかということについては、たたき台でいいので、指針はどんどん出していかないと、個別対応がむしろ混乱を招くことになってしまいます。そういうことも含めて考えていくと、今回、(1)から(4)で挙げていた論点については、具体的に例示していけば、運用面も含めて、改善できることはあるような気もします。
 あとは、1点だけ、ここの論点にないこととして私が感じたことです。現在、奈良県では、教員養成系の大学と県教育委員会が組織を作って、高校生から大学生、就職した1年目、2年目も含めて長い目でしっかりと教員を育てよう、教員になろうとしている人を育てようということをやっています。これについては、大学と教育委員会の連携というのがかなり密でないと、なかなかうまくいかない。教員養成についても、先ほどの教職大学院での修学の機会ということなんかが一つのきっかけにはなるのかなとは思いますけれど、教育行政が関わる一つの問題解決方法としてある、と考えています。
 私からの提案というか、今感じていることのまとめとしては、以上です。
【清原座長】  小﨑先生、どうもありがとうございます。
 最新のオンライン調査に基づく、主に指導主事の視点から見た教育行政に関する御発表をいただきました。調査に基づく生の声を御紹介いただきましたので、地方教育行政の充実に向けて存在する現在の具体的な課題が多く提起されているように受け止めました。
 それでは、ただいまの御発表を踏まえまして、御質問、御意見等を頂きます。時間の目安は20分程度ですが、御質問等ある方は、画面の前で挙手をお願いいたします。私から順に指名をさせていただきます。その際、ミュートを解除して御発言ください。
 皆様、いかがでしょうか。どうぞ、どなたからでも。
 今、指導主事の視点からということで、指導主事の経験のある小﨑先生のネットワークで、指導主事を中心とした方の生の声を伺うことができました。
 それでは、岩本委員、お願いします。
【岩本委員】  岩本です。あまり発言するのがすごく申し訳ない感じですね。2回連続で申し訳ないんですけれども。
【清原座長】  もう遠慮なくどうぞ。
【岩本委員】  若気の至りだと思って。二つ質問です。すばらしい、あんな簡単にすぐ調査ができるのかとか、もう本当に目からうろこでした。
 ちょっとお伺いしたかったのが2点あって、1点目が、奈良県の事例の中で、推進の貢献要因と阻害要因と両方出されていたかと思うんですけれども。その推進要因の中に、自治体の担当部局との連携というところを書かれていたかと思います。そこは今回の論点の中でも出てきているポイントなので、具体的に、自治体の担当部局との連携、何によってそれはうまく機能したのかみたいなあたりは、ちょっと御説明いただけるとありがたいなというのが1点目です。
 2点目は、指導主事のところで、私、勉強不足なんですけれども、指導主事としての資質・能力というのは明確化されていて、自分は今どうなっているのか、何が足りないのか、足りないのであれば、何をこれから経験したり学んだりしたほうがいいのかということが分かるようになっているのか、そういった資質・能力は、いろんな指導主事がいるからばらばらですとか、全くそういう基準というのがなかったり、指導主事としての学びの仕組みというのが今どの程度あるのか。
 私もいろんな指導主事研修とかへ行って、ほぼ事業とか、やっていることの伝達事項とかで、資質・能力を育成するというようなものをほぼ見たことがなくて、なので、指導主事に関しては、資質・能力の明確化とか、そういったものはされているのか、あるのか、認知されているのかということと、その資質・能力育成って一体今どうなっているのかというところが質問です。
【清原座長】  ありがとうございます。
 小﨑先生、いかがでしょう。推進の要因としての自治体担当者との関係、そして、指導主事の資質・能力とその育成について、二つ質問いただきました。よろしくお願いします。
【小﨑委員】  最初の質問ですけれど、奈良県の場合は、教育庁ではなく教育委員会ですので、いわゆる公立だけを対象としている事務局です。私立は、自治体側の組織の中にある教育振興課が担当しています。
 そこと、「公立も私立も一緒にやりましょう」というそこに相談に行くわけです。私立もどうしましょうとか。これは一緒にやりましょうという話の中で、そもそも教育というのはこうあるべきだよね、奈良県はこういう状況なんだから、もうちょっとこうなっていくべきだよね、せっかくだから思い切って日本一目指してみるのもおもしろいね、なんていう会話が出でくる。そうなると、課題(2)にもなっている「教育総合会議のテーマにしようよ」とか、教育振興大綱にもしっかり書き込もうとか、そういう提案が、首長部局から来るわけです。
 もちろん、教育委員会しっかりせえよもあるし、逆に、教育委員会にこういうところを助けてもらってやっていこうということもあるし、ということで、教育委員会がやりたいことを後押ししてくださって、全体が動くということがありました。そうなると、財政的なことについても後押しもしてくれますよね。こういうことをやっているんだから、県の課題として教育委員会に予算つけてあげてよ、みたいな話にもなる。今回、奈良県の場合は、そこもすごく大きかった。首長部局の中の教育担当の部署が、理解して、教育委員会を支えてくれた。ものすごく仲よくもしていただきましたし、前向きではありながらもそれはおかしいとか意見の違いによる言い合いもすごかったですけどね。それも含めて、結果として大きな推進力になったということです。
 もう一つのご質問、指導主事のことについては、あくまでも個人の実感として言わせていただくと、勉強する機会というのはあります。ありますというのは、文部科学省の指導主事会などは、伝達事項が多いとか、そういう一方的学びもあるんですが、たくさんの学校に行く中で、いろんなことを先生たちと議論して、自分をどんどん磨いていくこともできる。ただそれは、あくまでも自分自身の行動から生じることであって、仕組みとして誰にでもあるということではありません。なので、資質・能力をどう測るのかということに関しては、実は、職員の評価がありますよね、自分自身で目標を立てて、自己評価していく。あれで、すごく確かめているところがあるなあ、振り返っているなあ、とすごく自覚しています。そもそも他人が決めた標準的な基準に私を当てはめたらこうだよね、じゃなくて、自分は何をしたいのか、今年は何をするとって上司に言ったのか。年度の途中でも終わりでも、忙しい中で自己評価をして、そこで、「ああ、自分のしている仕事はこういうことなんだな」ということを振り返っている。
 ただ、岩本先生がおっしゃるように、そこが組織的な仕組みであって、お互いが何をしているかが共有できれば、また違うステージへいくような気もするんですけれど。現時点でも、私は、自己評価を通して、自分自身の頑張りも含めて、評価できる仕組みは存在していると、そのように感じています。
 以上です。
【清原座長】  岩本さん、いかがでしょうか。
【岩本委員】  ありがとうございました。
【清原座長】  今の御質問のやり取りを含めて、小﨑委員の御発表について、そのほか、皆様、御質問、御意見等ございませんか。いかがでしょう。
 戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  次の発表がありますので、私はできるだけ黙っていようかと思ったのですが、小﨑委員の日常的な御健闘を存じているものですから、そのこともあって、御質問させていただきます。
 一般的に都道府県の教育委員会と市町村の教育委員会の関係というのは、言葉は悪いのですが押しつけ型、丸投げ型、強要型などと揶揄される中にあって、今回のGIGAスクール構想の推進において、奈良県は大成功というか、全国のトップランナーに躍り出てきたように思います。
 その背景には、小﨑指導主事のようなアーリーアダプターというか、名プレーヤーというか、そういう方がいらしたということは、紛れもない事実なのだろうと思いますが、ここまで市町村の支援に成功した決定打はこれだというのがありましたら、もう一度教えていただくと、それはほかの自治体にも参考になるのかなと思ったことが1点です。
 もう一つは、先ほど来、市町村とのやり取りの中で、我が道を行くというか、わがままというか、そういう自治体が多くなると、県としては困るわけで、ある程度自走の許容と言いますか、そういうものが県の立場からすると、あったほうがよいと思われているかどうかです。県としての役割や立ち位置は難しいんだろうなと伺いながら感じたので、答えられる範囲内でお教えいただけるとありがたいなということと思います。
【清原座長】  ありがとうございます。
 戸ヶ﨑委員から重要な視点が提起されました。すなわち、都道府県教委と市区町村教委の関係ですね。これについて、伴走という言葉も出てきましたが、自走という言葉と、両者の関係はどうでしょうかということですが、小﨑委員、いかがでしょうか。
【小﨑委員】  ここはもうさんざんあちらこちらで聞かれるところです。実際はどうだったの、なぜそんなことができてどうなったのという質問です。
 背景としては、環境面でまず二つあって、一つは、奈良県全体が環境が整っていなかったということです。前を走って突き抜けている自治体がなかった。だから、建物で例えていうと、全自治体が新築できた、つまり、すでに自分たちで立てているから、まあついでに耐震工事で済ませることは考えているけれど、とか、悪い意味でいう付き合わされる自治体ということがなかった。全くなかったということではないんですが、そういうところがあっても、そこも許容してやっていく。
 環境面の二つ目は、自治体の担当者同士の会議を、最終的には月1回から月2回まで増やして、とにかく短時間でもいい、出席ができない回があってもいいから、連絡を取り合いましょうといういわゆる顔見知り作戦をしました。担当者が、組織の上にも声を届け、学校にも目が向くという、いわゆるトップダウンでもボトムアップでもない、真ん中から上下に目が届くミドルの立場にいる人たちが集まった。その人たちは、あっちの愚痴もこっちの愚痴も散々聞きながらということになるので、同じ悩みの相談をベースにして、これはみんなで上に持っていきましょう、このことはみんなで学校に持っていきましょうという相談をする。それが、先ほどの図でいう「調整部会」というところなんですけど、そこに実務担当者を集めたということですね。
 集まった人たちは、最初はみんな、腕組んでいますよね。県が偉そうに言うてるとか、小﨑さんが何か好き勝手なこと言うてるな、って。そういうところからのスタートですが、一人ずつ、じゃ、このことは〇〇さんお願いします、そのことは〇〇さんお願いしますと言って頼んでいく。先ほど、戸ヶ﨑教育長がおっしゃったことですが、自走を始めたところが出てきたら、そこに、県全体を合わせにいくのが県の役割といいますか、県の方針としてはこう、じゃなくて、例えば、戸田市がこんないいことをやって、こういう方針をやっているよね、という話になったら、じゃ、それを県の標準にしちゃいましょう、ということで、みなさん一緒に動いてみませんかと提案すると、ばーっと乗ってくるんですよね。だから、奈良市が進んだ実践をしたときなんかも、独り占めさせずに、そうやって私たち県も周りの自治体もみんなで乗っていっているわけです。県の方針か、〇〇市の方針か、〇〇町の方針かとか、それはテーマテーマによって、一番いいところを選んで、みんなでここに乗りましょうということで進んできました。
 実は、奈良県のGIGAスクール構想が成功している一例だと言われる裏話として、県立学校の端末は一緒に入っていないんです。県と政令指定都市と中核市では、調達のルールが違うので、県立学校の端末は入っていなくて、市町村の義務教育の端末のだけで共同調達しているものですから、見方によっては、小﨑は県の職員なのに、なぜ市町村のことに関わっているのか、県立のことはどうなっているのかって言われもしましたけれど、いやいや、市町村は奈良県〇〇市、奈良県ですよね。そこで育った子たちが県立に入学してきますよねという話をする。
 だから、基本的には、県が何かを提案したということはほとんどなくて、奈良市でやってます、何々町でやってます、何々村でやってますという事例をどんどん取り上げて、共有して、みなさんのところではどうですかという意見を伺って、全体のものにしていく。何か策があったとか、名プレーヤーがいたということが一番ではなくて、環境を同じにするというコンセプト。今回は、奈良県の場合は県域ドメインですけれども、これがもう全てですね。みんな同じドメインで、アカウントを持って、同じメールアドレスで、さあ仕事できますよと言った瞬間に、それが一斉に動きだしたということなので、やっぱりそこは県の仕事かなと思います。
 もちろん、前に出て牽引するプレーヤーは欲しいですから、埼玉県の戸田市とか、奈良県の奈良市とか、熊本県の熊本市とか、茨城県のつくば市とか、進んでいるところがあるとしたら、そこを目がけてみんなで寄っていって、飲み込んでみんなのものにしてしまうという、そんなイメージです。
【清原座長】  戸ヶ﨑委員、よろしいでしょうか。
【戸ヶ﨑座長代理】  ありがとうございます。
【清原座長】  あとお一人ぐらいと思うんですが、青木委員、指名させていただいて恐縮ですが、今の質疑などを聞かれていて、御意見等がございましたら、どうぞ御発言をお願いいたします。
【青木委員】  御指名ありがとうございます。青木です。
 小﨑委員、御報告ありがとうございました。二つ伺いたいと思います。
 私も、働き方改革の関係で、東松島市という自治体で校務システムの導入に係る実証実験に関わったことがありました。そこを通じて感じたのは、やはり政府調達の規模が大きくなっていくと難しい。特に、個別の自治体でやるのはいいんですけれども、それは首長さんがうんと言えばやれますけれども、それをどんどん広域化する必要は、どうやら学校の働き方改革ではあると言われているわけですけれども、自治体の範囲を超えた調達というのは非常に難しいというふうに理解しています。その中で、奈良県の事例を伺うと、どうしてそういうことができたんだろうかという、この1点をまず伺いたいと思います。
 2点目は、今回のアンケートを拝見していますと、やはり指導主事になる方のキャリア形成の仕方の問題がやや過剰に反映されている結果ではないかなと思いました。というのは、やはり学校というのは、学級王国とかつて言われていたように、組織で動くと言われつつも、やはりどうしても自分の一人親方的な働き方がまだ許容されている傾向があると思います。
 それに対して、教育委員会の事務局の勤務というのは組織で動くという縛りがより強くなりますので、そうすると、どうしても思いどおりに働けないというフラストレーションがやや過剰に表明されているかなと思います。
 翻って、冒頭申し上げたように、アンケートの自由記述にもあったように、キャリアの早い段階で教育委員会の事務局に勤務させるとか、多様な教育委員会と学校の間のいわば回転ドアを設けたほうがいいのではないかというふうにも敷衍できると思うんですが、この点についてコメントいただければと思います。
【清原座長】  御質問ありがとうございます。
 調達の成功の秘訣と、それから、指導主事のキャリア形成についての御質問です。よろしくお願いします。
【小﨑委員】  青木先生、ありがとうございます。
 まずは、今の最初の質問に関してですが、奈良県というサイズ感があると思います。一番大きなところで中核市が一つ。これがまた、大阪とか東京というところと同じ話になるはずもなく、まず奈良県という規模感の中で、ちょうど良かったという背景は確かにあります。
 共同調達に当たっては、実は、奈良県では、以前から、各自治体が調達するパソコンを、市役所とか県庁のパソコンを、まとめて買いましょうという共同調達を、数年前から奈良県が主体でやってきたんです。そのやり方を見ると、県が仕様を固めて、こういうことで入札をかけますから、共同で買いたい人は手を挙げてくださいと呼びかけて、手を挙げさせる。みんなの数を合わせて、価格だけ決めて、「では、奈良県はここまで」あとはそれぞれ勝手に契約してくださいね、ということで、手を離して終わりという方式です。
 それをヒントにして、同じように、この統合型校務支援システムも、まずはプロポーザルで、こういう仕様で考えました。こうやろうと思っていますと宣言する。すでにシステムを導入している自治体もありますから、契約が切れたら、そのときに、参加するかどうか決めてもらってもいいので、参加の意思はありますか、という合意だけは取っておくやり方です。そして、予算が確保できたところから順番に入っていきましょうということにして、業者提案のプロポーザルをみんなで審査して調達して乗っかる。GIGAの端末も、方針を決めて、プロポーザルで入札して、契約とか運用とかいうことについては、今までどおり何も変わらないルールで進める。今までどおりのルールにのっとって各自治体でやってもらって大丈夫ですよ、という仕組みをつくりました。
 共同調達を考えたときに、全部が同じルールで、同じタイミングで買って、県が取りまとめて調達するというルールだったら、うまくいかなかっただろうなと思っていて、あくまでも物と価格を決めただけというところまで共同でいくので、そこから先のアレンジはオプションとしてみなさん自由にされていたと思います。うちはこのソフトも入れたいとか、そんなことは自由でしたので。とにかく幅を持たせた。統合型校務支援システムも、必ず入らなくていいですからとアナウンスした。現在の契約が終わってからでもいいので、御検討ください。それまでにいいのをつくり上げて待っていますからというような呼びかけをして、幅を持たせたということが効いたかなと思います。それが一つ目ですね。
 次に、指導主事のキャリア形成のこと、まさにおっしゃるとおりで、今回の簡易なアンケートも、私の周りからスタートしていますから、基本的に非常に前向きな、「小﨑さんがこんなことやるみたいだから、協力しようよ。教育委員会変えようよ」みたいな人たちが、まず最初は2人、そして30人ぐらいに広がって、さらに友達にも紹介しておきますという流れですから、これ、答えている人たちは、ものすごくやる気がある側にバイアスがかかっていて、前向きだと思います。大半はそうじゃない人たち、まだまだバックにいるので、これでもまだ指導主事全体の傾向ではないと思っています。
 その中でも、もうまさにおっしゃるとおりで、こうあるべき、あああるべきというのが、教育委員会という組織と学校とではあまりにも違っている、縦の流れとか、書類を上げていく順番にルールがあるとか、頼まれて挨拶文を書いても、全部書き直されてあとかたもなくなって戻ってきたり。もうそういうことを繰り返されると、こんな仕事は私の仕事じゃないという気持ちになったりする中でストレスを感じる。また、世間の人からは、「先生たちのやり方は非常識だよね、井の中の蛙だよね」と言われたりする。多くの場合、やはりお互いがわかっていない、だから、丁寧にこうなんですよ、という説明をしたら、周囲も教員も分かってくれる。行政にも個人にもコミュニケーションが重要であることは間違いない。組織の在り方ということを考えると、多分、この後の第2回、3回と委員のみなさんが御提案いただく中に、いろいろなヒントが出てくるんじゃないかなととても期待しているところです。
【清原座長】  ありがとうございます。
 青木委員、いかがですか。
【青木委員】  2点とも、とてもよく分かりました。ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、ここで小﨑委員との質疑応答、意見交換を一旦閉じさせていただいて、戸ヶ﨑委員の御発表に移りたいと思います。
【小﨑委員】  ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございました。
 では、20分程度で、戸ヶ﨑委員、よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  まず、このような機会を頂きまして、感謝申し上げたいと思います。小さな自治体の小さなささやかな実践ということですので、お聞きいただければと思います。
 
 まず、埼玉県戸田市ですが、全国的な少子高齢化の中にあって、子育て世帯が増加し、26年連続で県内一若い街になっています。その一方で、教室不足が深刻な状況です。特色ある取組、当面する教育課題は、画面のとおりでございます。
 まず順番に、テーマに沿いながらお話し申し上げていきますと、1番目の教育委員会の機能強化・活性化のための方策について、四つほど考えてございます。
 一つは、教育行政職員の採用・異動・研修の充実という観点です。教育行政の遂行には、専門的な知識、経験が求められます。メインキャリアが教育行政というプロの人材が、必要ではないかと思っていました。併せて、教育委員会事務局職員の定数変更は、難しいので、課題に応じて戦略的な人事配置を行う必要もあります。また、指導主事だけではなくて、行政職員にも中教審の答申だとか、学習指導要領の理解を促す必要もあります。
 二つ目は指導主事の採用・研修です。本市ではできるだけ若いうちから採用して、経験を積ませるということに努めているところであります。
 三つ目ですが、教育行政の推進のために、戦略的な人事配置とともに、組織の見直しも必要になります。本市では、それまでの指導課から、教育政策室へ組織変更をしました。特にICTの利活用やEBPMの推進等においては、知見のある人材登用、また、指導主事と行政職の日常的な連携も不可欠だと考えています。
 四つ目の外部人材の活用です。その活用に向けては、教育委員会だけではなくて、各学校の自律的な教育意思に加えて、ある程度の時間的なスパン、そういうサポートも必要であろうと考えています。
 ただいまの4点に関して、順番に本市での例を述べていきたいと思います。まず戦略的な人事配置ですが、平成30年から3年間、この会議の委員でもあられる東大の村上先生の御指導を頂きながら、教育行政のプロ採用というものを行いました。村上先生の下で教育行政学を学んだ者、データサイエンスを学んだ者、教育産業に従事していた者、特別支援・社会教育に専門性のある職員などを順次採用していきました。今年度、そのうちの3名に、指導主事発令を行いました。全員のびのびと良い仕事をしてくれています。
 また、文科省と県の教育委員会から各1名が戸田市教育委員会に出向中で、また逆に、本市からも文科省へ1名、県教育局へ4名が出向しています。
 研修の内容については、教育委員会と学校が同じテーマで研修をすることが大切です。こちらは、昨年の1月の「令和の日本型学校教育」の答申の趣旨を落とし込むために行った「Toda Education Weeks」という取組です。私の講義からスタートし、約2週間をかけて教育委員会内や各学校での答申の熟議や様々な主体的な研修を行いました。目標等を共有するという意味でも、とても意義があったと思っています。今年度も、つい先日まで実施しました。
 こちらは、毎年全教職員と教育委員会職員が参加する「教育フェスティバル」を開催し各界の教育の有識者をお招きして、御講演等を頂いております。この2年間は、オンラインで、県内外にも積極的に発信をしています。今年度は、中教審の荒瀬先生にお願いをいたしました。
 こちらは、私が毎年指導主事に話している資料の一部です。地教行法18条のしっかりとした理解、また、専門的事項において市内でトップであるという自覚と責任、また、指導の際、個人的な経験・勘ではなくて、時流や動向、またエビデンスに基づいた最新の指導を行うということ、さらに、行政職としてのスキル、これは勝手にVSOPというふうに呼んでいますが、それの育成と3rを目指してほしいと。また、どんなときも「さ・し・す・せ・そ」を忘れないというようなことを強調しています。担当の内部の中でも定期的に研修を行っております。
 指導主事は、各学校の授業研究会等の活性化に向けても、日々努めているところであります。その際、7年前から、ICTをフル活用して、ICT活用の範たる姿を教職員に見せてきました。こちらは、GIGAスクール構想に、関して、全国の自治体からお問合せいただいてきたわけですけれども、これまでの歩みを簡単にまとめたものです。
 大きく三つのことがあって、連携、研修、サポートという視点から、それぞれ、1番目の連携ということでは、教育委員会内に指導主事と行政職によるGIGAチームをつくったこと。
また、ICT活用が手段の目的化とならないようにしたこと。
そして、また、人的な支援を行ってきたことなどが挙げられます。
 こちらは、教育長就任時から貫いてきた四つの教育改革のコンセプトであります。
 一つは、AIでは代替できない能力や、AIを活用できる能力、つまり、21世紀型、汎用的、非認知スキルを育成するということ。
 そのために、広く産官学と連携した知のリソースの活用が必要で、それも、ファーストペンギンを目指して、最先端の質の高い教育の提供を目指していくことです。
 それから、三つ目が、「経験と勘と気合い」という、この3Kから脱して、エビデンスを重視した教育に転換すると。いわゆるepsode-basedからevidence-basedへ。さらに、Evidence Informedへ。また、EBPMからEIPPということで、質的なエビデンスや実践を今後重視していきたいということで考えております。
 最後ですが、データサイエンス等を導入して、教師の匠の指導技術や生徒指導などを科学してくこと。一言で言うと、教師の暗黙知を共有化していきたいということです。
 では、そうした教育改革のコンセプトをどのように学校へ落とし込んでいったのかということですが、こちらのほうのスライドは、後ほど時間があれば触れたいと思います。
 先ほどの四つのコンセプトを実現していくために、産官学との連携は必須でありました。当初はゼロから始めて、現在、ここにありますように、産官学合わせて70を超えるところと共同研究等の連携をしているところです。ただ、これまでの道のりというのは、平坦ではありませんでした。
 こちらのほうは、本市の教育の特色の一つでありますSEEPプロジェクトです。このSEEPというのは、四つの文字のアクロニムでありまして、そもそもの意味は「浸透する」という意味があります。教育業界の用語で言うと、薫習という意味も込めてあります。
 こちらは、外部人材の活用で、民間企業の方々を各種アドバイザーとして委嘱して、学校訪問、研究発表会、また、校内研究会などで積極的活用を図っています。
 校長会議等で、変化する社会の動きをとにかく教室の中に入れてほしいということを繰り返していることと、「教育委員会では、新たな学び等の原材料、コンテンツ等や、人材を用意するので、ぜひ料理は各学校で」ということで依頼をしてきました。各学校の教育意思やニーズに応じて、様々な方々に直接御指導を頂いております。
 このほかにも、最近は、学校がどんどん自走していて、私ども教育委員会の知らないところで様々な人脈が構成されていっているということです。
 こちらは、EBPMを推進する核ということで、教育政策の立案・企画などの推進をしていくための核となる組織編成の見直し例で、本市では、「教育政策シンクタンク」、を令和元年に教育委員会内に立ち上げました。必要に応じて、専門領域の研究者によるアドバイザリーボードを設置するとともに、弁護士2名を教育委員会ロイヤーとして委嘱しております。
 また、そもそもICTを活用すると本当に学力は伸びるのか、または、どんな学級風土が学力向上に適しているのかといったことなど、多くの産官学とは連携して、共同研究を図っているところです。
 その中核の取組、の一つが、国立情報学研究所の新井教授の指導によるリーディング・スキルの育成です。AI時代を生きる子供たちのために、生涯学び続けるための基礎的読解力、を身につけることを目標に、6年前から取り組んでいます。毎年、研究集録の中にまとめておりまして、全文がダウンロードすることが可能になっています。
 もう一つの取組は、エビデンスに基づく教育施策の一つとして、同じく6年前から継続しているのは、慶應義塾大学の中室教授等との共同研究で、埼玉県の学力・学習状況調査と教員の質問紙調査等の分析と活用ということで、こちらも毎年、研究集録として掲載しております。
 次に、教育委員会の活性化についてです。2015年4月、私の着任と地教行法の一部の改正が同時にスタートして、新たな教育委員会制度が動き出しました。これまでの取組の中から大きなものを三つだけ申し上げます。一つは、教育委員提案制度というのを設けました。これまでは、事務局の説明を聞いて、多少の質問をする。追認傾向であったものを、委員自らが提案を行う教育委員提案制度を導入して、毎回行っています。
 二つ目は、校長面談です。毎回校長から各学校の学校経営方針だとか特色ある取組について説明して、教育委員の学校現場の理解を深めています。
 三つ目は、学校訪問などへの同行や開かれた教育委員会です。学校訪問、研究発表会、教職員向けの研修会など、教育委員の皆様にも同行してもらっております。その他として、傍聴人数の増員、また、詳細な会議録の作成と公開、SNSや教育広報等での積極的な広報活動などがあります。
 特に、教育委員会活性化10の心構えということを、事務局、教育委員、学校が共有化しながら、教育委員会会議の運営が大きく変わりました。会議が大変活発化するに伴って、時間も非常に長くなって、事務局にとっては、議会の常任委員会よりも緊張すると言っています。詳細については、29年1月の文科省から発行された提言集にも掲載されております。
 こちら、資料にありませんけれども、これまでの教育委員提案の内容です。
 こちらは今年のものです。教育委員会委員の提案に基づいて、次回会議の議題を決定することになります。委員自らが議題を提案するということで、自ずから議論が深まって、事務局も委員の提案を実現しようという前向きな姿勢になっております。最近、提案が増えすぎて、先送りになってきています。
 こちら、校長面談の様子です。校長から、画面にあるような内容のプレゼンをしてもらって、各委員から質問などを通しながら、各学校の一層の理解とともに、校長の悩みを傾聴したり、助言をしたりしています。
 こちらは教育委員の研修内容の一覧です。写真のように、教育委員向けの研修会にも積極的に参加いただいております。
 学校訪問、研究発表会へも同行いただいて、教育委員もまさに学び続けるということを行っています。
 開かれた教育委員会ということで、私の挨拶も含め、詳細な会議録を作成して、ホームページ及び窓口でも公開をしています。
 こちら、今年度から5年間の戸田市の教育振興計画です。これまでは厚い冊子になっていましたが、簡潔明瞭に、A3の両面1枚ということで、シンプルに作りました。この計画の中では、モニタリング指標を設定していますが、無理に数値目標を設定するのではなくデータをもとに現状を把握して、施策の効果検証をしていくということを重視しているところです。
 紙面では簡潔に行う一方で、できるだけ分かりやすく市民に伝えるというために、この計画の動画も作りました。こちら、市のホームページにアップしておるところでございます。
 教育委員会委員会の会議録は詳細に作っていますが、なかなか広く市民の皆さんに読んでいただけるものではありません。そこで、定期的に、教育の特集記事を市の広報に掲載することとしました。全戸配布の広報という形で、定期的に教育の特集号も掲載しています。そのほかにも、臨時の特集を組んだり、小中学生の保護者向けに「教育広報とだ」も発行しています。
 また、新たに教育委員会や学校のFacebookも開設いたしました。現在は、教育委員、教育委員会事務局、校長・教頭全てがFacebookでつながっています。私自身も、個人のFacebookで、戸田市の取組を中心に、土日も含め、一日も休まず発信を続けております。
 最近コロナ禍で止まりましたが、多くの教育委員会が本市の定例教育委員会を視察に訪れているところであります。
 こちらは、教育委員会制度に移行して変わったことについて、傍聴人や教育委員にインタビューをしたコメントが載っています。
 次に、教育委員会と首長部局との効果的な連携について大きく二つございます。
 一つは、総合教育会議の活性化です。会場の場はもちろん、日常的に教育課題などが首長へ分かりやすく丁寧に説明される機会を持つことが大切です。首長部局と連携した本市の取組としては、「いじめ重大事態対応訓練」、また、「生徒指導アクションプラン」の作成と実践、さらには、文教担当の市議会議員や他部局の職員なども出席しての拡大総合教育会議などがございます。
 二つ目は、データの利活用の連携です。学びのセーフティネットの構築を首長部局と連携することが不可欠です。現在構想しているのは、各種の相談情報や子供・家庭の情報等のデータ連携を積極的に行うことによって、円滑なプッシュ型の支援、人的なエラーの縮減に資するようにしたいと考えています。
 こちら、そのデータ利活用の促進のために立ち上げた、教育政策シンクタンクのアドバイザリーボードであります。各領域の研究者によるアドバイザリーボードの中には、教育学の専門家でもある弁護士や、個人情報保護の専門の弁護士、そういった方々を教育委員会ロイヤーとして委嘱をしています。
 具体的には、データベースを軸として、関係機関の情報共有や相互連携を円滑にして、困難を抱える子供に対する適時適切な支援が強化されること等が期待されるのではないかと考えております。
 子供たちの教育効果や影響を検証する上で、国では行わない子供に関わるデータの一元化が重要になります。教育委員会だけではなく、他部局が持っている様々なデータを突合させて、支援につなげていきたいと考えています。
 こういったデータを活用したり、取組を全国の自治体にも共有したいとの思いで、昨年度、クラウドファンディングにも挑戦いたしました。結果は、予想外に反応が悪かったので、いつかまたリベンジをしようと考えています。
 大きな三つ目のテーマの小規模自治体への対応・広域行政のための方策ということです。三つございます。
 一つは、これは文部科学省のほうにお願いということですけれども、僭越ではありますけれども、ぜひ出向の際に、業務経験にとどまらず、小規模自治体への支援や広域的な連携を担うなど、国として推進すべき施策の実例を創り上げていく、いわゆる「戦略的な出向の在り方」、この検討も必要かと思っています。
 それから、都道府県の教育委員会の機能強化ということで、やはり小規模自治体への支援や広域行政の推進に向けての戦略の実践は急務であります。都道府県の指導主事等の資質向上を図ることも必要と思います。
 3番目、デジタル技術の活用です。デジタル技術を活用して自治体間の距離を縮めることは、GIGAで十分容易になっています。教員研修の共有など、様々な可能性があると思います。
 その具体例として、こちらは、福島県西会津町と本市との連携の様子です。こちらは協定を締結したときの様子、こちらは教育委員同士が意見交換をしている様子、こちらは私が同町に出向いて、教育委員の皆さんや教職員の方々に話をしている様子、こちらのほうは、議員の方が本市に訪れたときの様子で、こちらは本市の指導主事が教職員の皆さんに講義をしているところ、最後、こちらは本市の教職員研修に同町の先生方もオンラインで参加しているときの様子です。
 その他の地方支援策として、地方支援指導主事ボランティア制度やオンラインサークル活動、また、特別地方交付金制度などが考えられると思います。特に①については、私も以前から中教審等で提案させていただいていますが、テーマコミュニティづくり、また、②については、次のような取組を継続的にトライしています。これまで、4回開催しておりますが、全国各地から教育関係者の方、企業の方々が集まって熱い議論を交わしています。来週2月5日にも第5回目を予定しております。ぜひ、お時間があれば参加していただきたいなと思っています。
 最後に、学校運営支援のために果たすべき役割ということですが、大きく三つ考えています。
 一つは、学校管理職の在り方です。今後は、データを収集・分析する「アセスメント力」や教職員の意見を集約して組織力を強化する「ファシリテーション力」が管理職に求めらます。そういったスキルアップの支援に加えて、学級経営、また授業力向上に向けた指導・助言の力というのも不可欠です。
 また、機動的・自立的な学校運営の支援です。通常時から教育委員会が域内の一律の取組ではなくて、各学校の自走を許容させるといったマインドセットも重要であると考えています。
 また、最後の教育行政DXの推進です。教育委員会のベストプラクティスを広域化、また、過疎地、小規模自治体における教育行政の充実や持続可能な在り方について検討する際には、デジタル技術のフル活用とともに、そういった取組を単なる事例集とかではなくて、一般化・抽象化して、ストラクチャーやパターンを見出し、暗黙知を共有化して形式知へ転換したり、アーキテクチャを共有化したりすることが大切だと思っています。
 最後ですが、このスライドの青枠は、昨年1月の中教審答申の最終ページの文言です。これまで特に努力してきたのは、今までの話に重複しますが、赤の破線の内容、多様な人材を得て機能を最大化し、社会に開かれた教育行政を実現すること、戦略的な人事配置、教育委員会と学校との距離を縮小すること。つまり、管理から支援への転換等々、まだまだ課題は山積しておりますけれども、引き続き学校に伴走して、適切にサポートできる元気な教育委員会でありたいと思っております。
 少し時間をオーバーしました。ありがとうございました。
【清原座長】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございました。
 戸ヶ﨑委員におかれましては、本会議の論点の四つの項目に沿って、それぞれ実践に基づいた御発表を頂きました。
 さて、この会議には教育長がほかにも2名いらっしゃいまして、ぜひ。まず手が挙がりました。藤迫委員、どうぞ、御質問、御意見をどうぞ。
【藤迫委員】  戸ヶ﨑教育長、どうもありがとうございます。
 西のほうでは我々も結構好き勝手にやっている市の一つだったと思うんですけれども、言葉は悪いですけれども、遠くから戸ヶ﨑さんを見させていただいて、本当にいろんなことをやられているということで、結構刺激を受けています。Facebookもよく見させていただいておりますし、特に産官学の連携ですとか、外部人材の登用・活用については、そんなことがうちでできるのかなというほど、すごい進んで、成果も出されているということで、またまねをしたいなと思っています。
 二つ質問がありまして、一つは、先ほども指導主事の話もありましたけれども、我々も教育委員会、学校園所も含めて、スキルアップ、力をつけていくためには、やっぱり事務局の職員が力をつけていかないとだめだと思っているんですね。やっぱりその中心は指導主事であるべきだなと私は思っているんですが、残念ながら、これは我々だけの課題なのか分かりませんけれども、悲しいかな、管理職候補がどうしても少なくて、育てようと思った指導主事が、十分に力をつける、その前に管理職として出さなければならないということで、そこが非常に課題だなと思っています。
 私の課題は、組織というものは学校だけではなくて、必ず理想となる上司、あんな上司になりたいなという上司がいてるかどうかで、その組織の力というのが測れるのかなと思っています。
 若い教職員の目先にある理想の上司は教頭だと思っているんですね。その教頭が、残念ながら、今、箕面の場合は、理想の上司と言えるのかというと、そうではない。はっきり言いますと、あんな教頭になりたくないなと、こういうことになっていますので、私たちは、働き方改革も含めて、今何を目指しているかというと、理想の教頭をつくろうと。そのために何をするか、分かりやすい目標をつくりまして、校長ではなくて、理想の教頭、我々がなりたい教頭、みんながなりたい教頭をつくる。そのためには、教頭はどんな姿でなかったらだめなのかということを日々悩んでいるんですが、その辺で何かアドバイスを頂けたらというのが1点と。
 もう1点は、これも今聞いて興味深くて、事前に調べていたらよかったなと思ったんですが、教育委員会、教育委員さんの活動ですけれども、これも今日びっくりしてすごいなと思ったんですけれども。ちなみに、この教育委員さんは、市長さんともお話しされて選任されていると思うんですが、どういう観点で、どういう方々を今教育委員さんに就いていただいているのか。その2点、申し訳ないんですが、教えていただけるとありがたいです。
【清原座長】  教頭の在り方、そして、教育委員の選任の在り方についての御質問です。よろしくお願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  まず一つ目の教頭の在り方ということですが、教頭職は職員を束ねる扇の要です。学校改革に貪欲であれ、先読みや気配りこそが校長の意を体することである、などと様々な場面で話しています。ひたすら仕事に追いまくられて、日々疲弊しているような姿を教師に見せていたら、当然のことながら、あのようにはなりたくないなというふうにも思ってしまいます。仕事に追いまくられるのではなくて、自ら仕事を追いかけるぐらいなことをやって、仕事を楽しむというような教頭であってほしいということは、繰り返し述べています。
 また、そうは口だけで言っていても、なかなか簡単にはできないので、教育委員会が教頭を支援するというような取組、つまり、
 教頭の自主的な研修会を自走してもらい、指導主事やその上席も一緒になって関わって、その中で、悩みを共有したり、具体的な指導助言をしたりしています。
 それから、二つ目の教育委員の構成ですけれども、箕面市さんのように、広く公募しているわけではなく、大学教員等の学識経験者、保護者の代表、民間企業等の方、学校教育経験者の方がそれぞれ1名ずつという構成になっています。
 以上です。
【清原座長】  藤迫さん、よろしいですか。
【藤迫委員】  はい。ありがとうございます。
【清原座長】  私が、学校における働き方特別部会で検討していたときに、教頭、副校長の激務というのもやはり問題提起がありました。学校において、校長を支え、そして、教員を指導し、大変事務的にも仕事が多い副校長、教頭の仕事の在り方というのも大変重要であるということは今日も確認させていただきました。ありがとうございます。
【藤迫委員】  ありがとうございます。
【清原座長】  梶原委員も、教育長としての御経験から御質問があると思います。どうぞよろしくお願いします。
【梶原委員】  戸ヶ﨑教育長さん、改めて御指導ありがとうございました。私もプラットフォームで御一緒に参加させていただきまして、本当に感謝申し上げます。それから、よくFacebook等でお勉強させていただいています。
 今日御説明いただきました内容は、何ももう完璧ですばらしいなという一言でございますが、二、三、ちょっとお聞きしたいことがございますので、よろしいでしょうか。
 まず、5ページの資料のところで、教育行政のプロを採用していますということで、先ほど御説明ありました、3名を指導主事へ発令したというところと、各種、教育委員会から出向、また入れているということなので、非常に関心があります。いろんな目で教育行政をパワーアップしていくのは非常に大事であると思っています。私も、以前、文科省に出向させていただいた経験もございまして、非常に大事だなと思っていますが、この辺の手続とか、市長部局にどのようにお願いし、このようなことができるのかなと思いました。
 もう一つは、35ページの教育政策シンクタンク・アドバイザリーボードの関係でございますが、これにつきましても、非常にすばらしいな。私もこういう組織ができないかなと思いました。これは年間どのくらいの回数で、具体的な内容はどのようなことをして、学校に還元しているかという点をちょっとお聞きしたいと思います。よろしいでしょうか。
【清原座長】  ありがとうございます。
 人事の面と、シンクタンク・アドバイザリーボードの件です。
【戸ヶ﨑座長代理】  まずは、教育行政プロ採用ということは、後ほど村上先生から具体的には御指導いただければと思っていますけれども、村上先生からいろいろお知恵を拝借して進めていきました。
 首長部局とのやり取りというのは簡単ではなく、基本的に定数を増やすことは簡単ではないので教育委員会事務局内でほかを減らしてでもこちらは増やすという戦略的な人事配置について首長部局の理解等に努めてきました。あとは、専門的知見を持った人材を外からいかに獲得するかということは、様々なところに知恵をお借りしながら進めてきました。
  それから、二つ目のシンクタンクのことですけれども、こういう方々が全員が集まるわけではなくて、その都度その都度のテーマに応じながら意見交換や指導助言をいただいています。皆さんが一堂に集まったというのは、まだ1回しかありません。それもコロナ禍で、皆さんに来ていただくわけにいかないので、オンラインと対面を併用して開催しました。
 その内容についてですが、例えば、弁護士の方には、学校からの依頼等に応じて頻繁に、御相談申し上げています。また、他部局と連携したデータの利活用については、どのような連携をしていけばこのプッシュ型支援ができるのかというような観点から、データの標準化の在り方等についてお知恵を拝借しています。
 さらに授業や生徒指導を科学していくという観点からは、教育工学の御専門の方などからも様々な御相談を申し上げながら進めています。よろしいでしょうか。
【清原座長】  ありがとうございます。
 梶原さん、よろしいですか。
【梶原委員】  ありがとうございます。
【清原座長】  村上先生、本日の戸ヶ﨑教育長の御発表をお聞きになって、さらに補足、あるいは、今のやり取りの中で、人事面などで御意見がございましたら、御発言をお願いいたします。
【村上委員】  ありがとうございます。2点お伺いしたいと思います。
 1点目は、教育行政職員のプロ採用ということが、この会議に関わる大きな取組かなと思います。当初はお話をいろいろ聞いてはいたんですけど、その後数年経ってみて、その後どういう新しい課題であるとか、あるいは、新しい発見みたいなのがあったとお考えか、ここ数年の運用とか実態を見て、どのようにお感じかということを、やはり人事は中長期的なものなので、その後のことをお伺いしたいというのが1点目です。
 2点目はもう少し大きな話で、今回の会議の論点に沿って、それに合わせる形でいろんな問題点とか取組を御説明いただいて、私自身も非常に勉強になったんですけれども、肝はどこかというか、特に戸ヶ﨑委員の中で重要性が高いとか、緊急性が高いと思われることは何か。それは制度の問題なのか、あるいは、専ら運用の問題になるのか。どこが重要とお考えなのかということをお伺いできればと思います。
 この会議は、いろいろ幅広く議論ができる一方で、どこがポイントなのかということもメッセージとして打ち出していかないといけないような気もしているので、どのあたりが重要とお感じかということをお伺いしたいと思います。
【清原座長】  大変重要なポイントを御質問いただきました。この間、当初は村上委員が関わられたようですが、人事面での現況、そして、今回四つの論点に沿って御発表いただきましたが、特に重要と思われる点、特に集中して制度あるいは仕組みを変えていくことを望ましいと感じていらっしゃる点は何か、その2点についてです。お願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  1点目は、村上先生からいろいろ御指導いただきながら進めており、全員が、先ほど申し上げましたように、大変生き生きとして、自分のスキルアップを図っています。時に大学で講義をしたり、自分自身の課題を新たに認識しながら、お互いで切磋琢磨したりしています。
 今後の課題としては、キャリアアップしていくときに、どのようなポジションに配置していくか。新たなプロの採用をいつどの程度行っていったらよいか、などについて思案中です。
 また、新たな発見としては、一番勉強になっているのは、多分、本人もそうなのでしょうが、私は指導主事だと思っています。専門的な知見があって若いプロ採用の職員が、生き生きと働いている姿を見て、あそこまで仕事ができるのかということを目の当たりにして、指導主事が日々刺激を受けています。
 それから、重要性が高い課題についてですが、なかなか難しいですが、市町村の教育委員会と都道府県の教育委員会は、当然役割が異なるので、それぞれの役割をどのように明確に機能的にしていったらよいか、ということです。もう一つは、御存じのとおり、そもそも教育委員会不要論というのがあるぐらいなので、教育委員会のそもそもの役割などについて、一般の方々に理解していただく必要性を感じます。
 さらに、都道府県の教育委員会と市町村の教育委員会の役割といったものとともに、私は、それぞれ市町村教育委員会はもっともっと自走すべきと考えていますが、そうではなくて、都道府県教育委員会の主導のもとで、一体感を持った取組を推進していくべきなのか。両者は対等だと言われてはいますが、その辺の共通理解もまだ不足していると感じます。
 このことは、小規模自治体への支援や広域行政の推進にも関連することだろうと思っています。
 
【清原座長】  村上委員、いかがですか。
【村上委員】  ありがとうございました。問題意識が非常によく分かりました。ありがとうございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 皆様、申し訳ございません。間もなく予定していただきました17時に近づいてまいりましたけれども、ぜひ、戸ヶ﨑委員の発表を聞かれて、御意見、御質問のある方がもしいらしたら、多少延長してもよろしいでしょうか。どうでしょうか。
 ほかに御質問、御意見がおありになる方がいらっしゃいましたら、どうぞ。よろしいでしょうか。大丈夫でしょうか。
 本日は、小﨑委員、戸ヶ﨑委員から御発表を頂きましたけれども、お二人それぞれの質疑にお答えになって、もう一言まとめとして言っておきたいということがございましたら、一言ずつ御発言いただいてもよろしいんですが、小﨑委員、いかがですか。
【小﨑委員】  ありがとうございました。
 戸ヶ﨑教育長から御質問いただいて、ちょっとふわっと答えたことなんですけど、結局、その規模は何なのよというときに、一番大きく働いたのは、結果的に、やっぱりトップが自由な場をつくってということが大きいです。だから、うちの場合は、県の教育長が全体を見て発言したことが一番大きい原動力になっていて、その中で、私たちに自由を与えてくれて動けたということで、それぞれの歯車が全部動いたので回ったのであって、どこかがだめだったら、結局全体がだめになったなと、そんなふうに感じています。
【清原座長】  ありがとうございます。
 戸ヶ﨑委員は、いかがですか。
【戸ヶ﨑座長代理】  先ほどのプレゼンの中でも触れましたけれども、一つは、GIGAスクールの推進でも温度差が出たように、端末が整備されても活用が十分ではないという自治体があります。今までの文科省が出しているような事例集を見て、その事例集で学びなさいというやり方をやっていく時代ではないと思っています。どうしたら全国にそのグッドプラクティスが共有できるかということをもっと本気に考えていくべきだと思います。自治体間格差が生まれてはよくないので、大いに自走を促しつつ、支援が必要な自治体も適切な形で支援する在り方というのはどうしたらいいのかということが一つです。
 もう一つは、先ほど触れられませんでしたけれども、教育委員会がこうしたいああしたいと言っても、学校にその教育委員会のコンセプトを落とし込んでいくというのが、学校村、教育村と揶揄されるように、なかなか難しいわけです。学校間格差も生まれてくるわけですけれども、そこを教育委員会と学校とのコンセプトを共有する在り方のグッドプラクティスを全国展開できるようになればよいなと考えております。そうなれば、様々、文科省の考えや中教審の答申などが、より円滑に学校現場に浸透できるようになるのではないか思っております。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。
 戸ヶ﨑委員が、スライドの最後で、「教育委員会とは学校に伴走し、積極的な自走を支援し、逸走や暴走を軌道修正するところである」というふうに書かれていたんですが、今回、都道府県教育委員会と市区町村教育委員会の関係についても、皆様の意見交換の中で重要なポイントであるということが分かってまいりました。
 本日は、初回でございましたけれども、小﨑委員、そして、戸ヶ﨑委員の御発表を頂きまして、皆様の積極的な御参画によりまして、重要な質疑応答、意見交換ができたと思います。時間が足りないぐらいでございますが、予定の時間が過ぎましたので、この辺でまとめとさせていただきます。
 本日頂きました御意見を踏まえて、次回以降の本会議でさらに議論を深めてまいりたいと思います。
 ほかに特段ございませんでしたら、本日の議論は以上にしたいと思いますが、皆様よろしいですか。
 ありがとうございます。うなずいていただきました。
 事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課専門官】  本日は、充実した御議論、どうもありがとうございました。
 次回の本検討会につきましては、3月7日月曜日13時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 次回は3名の委員の先生方から御発表いただく予定でございます。詳細につきましては、また改めて御案内いたしますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
【清原座長】  それでは、以上をもちまして、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第1回)を終了とさせていただきます。
 委員の皆様、事務局の皆様、そして、傍聴してくださった皆様、本日はどうもありがとうございます。
 どうぞ、2回目以降も積極的な意見交換で、私たちの与えられている課題を果たしていきたいと思います。皆様お忙しいと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
 何よりも、オミクロンというにっくきウイルスが蔓延しております。皆様の御健康を心から願っております。
 本日はありがとうございます。
 
―― 了 ――

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