「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第11回)議事録

1.日時

令和5年2月13日(月曜日)13時00分から15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 次期教育振興基本計画の審議状況等について
  2. 学校運営の支援のために果たすべき役割について(ヒアリング等)
  3. その他

4.議事録

【清原座長】  皆様、こんにちは。本日も大変御多用の中、御出席いただきまして、どうもありがとうございます。
 ただいまから、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議第11回を開催いたします。
 本日は、報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をオンラインで配信しておりますので、御承知おきください。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず事務局より、本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  それでは、お手元の議事次第を御覧いただければと思います。
 配付資料一覧でございますが、資料1といたしまして、初等中等教育分科会(第138回)における主な意見等について、資料2-1、2-2といたしまして、次期教育振興基本計画について(答申(素案))概要と本体、資料3として、福岡県春日市教育委員会御発表資料、資料4として、長野県塩尻市教育委員会御発表資料を御用意しております。また、参考資料1から6までをおつけしております。
 以上でございます。
【清原座長】  皆様、御確認をよろしくお願いいたします。
 それでは早速、議事に入ります。
 本日の議事は、(1)次期教育振興基本計画の審議状況等について、(2)学校運営の支援のために果たすべき役割について、これはヒアリングをさせていただきます。そして(3)その他の3点でございます。
 議事に入る前に、1月18日水曜日に行われました中央教育審議会初等中等教育分科会で、本調査研究協力者会議のこれまでの議論の整理について報告を行いましたところ、委員の皆様から御意見をいただきましたので、事務局より御紹介していただきます。お聞き取りください。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  それでは、お手元の資料1を御覧いただければと思います。
 まず、(1)教育委員会の機能強化・活性化のための方策に関連する御意見でございます。
 1つ目の丸でございますが、教育委員会で業務を担っている指導主事が激務であると承知している。指導主事に求められる能力が拡大、高度化していっているように思われるが、指導主事についても勤務の実態を把握していく必要があるのではないかといった御意見がございました。
 また、その下でございますが、教育委員会で、教育に造詣の深い職員とそうではない職員に二分され、それはそれで議論が深まるという側面はございますが、教育委員会事務局のキャリアパス(教育行政職)についても、一定程度、早く導入することが望ましいといった御意見。
 また、その下でございますが、例えば、教育委員会の事務職が校長になってもよいといった御意見。民間の方に加えて行政の方も学校に入ってもらい、施策と現場の往還ができる形になっていくのが望ましいといった御意見がございました。
 また、その下でございますが、教育委員会の在り方について議論するときに、「令和の日本型学校教育」についてどう位置づけていくのかは今後議論を深めていただきたいといった御意見。また、今回、教師の養成・採用・研修等の在り方についての答申が出されましたが、本答申を受けて検討を深めていただきたいといった御意見もございました。
 また、その下でございますが、教職員支援機構は、来年度に向けて、教育委員会の事務局職員を対象とした新たな研修を現在模索しているところであり、こういったことも活用いただきながら、検討を進めていただきたいといった御意見がございました。
 2ページ目、(2)教育委員会と首長部局との効果的な連携の在り方に関連する御意見でございます。
 この会議の中でも同じような御意見いただいておりますが、危機管理について、教育委員会と首長部局が連携して対応するための支援などについて、しっかり意を用いていくのが非常に重要であるということで、今後検討を進めていただきたいといった御意見がございました。
 最後、(3)小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策に関連する御意見でございます。
 1つ目の丸でございますが、リソースがない地域や学ぶ機会が少ない地方の行政職員に対して、国としてどのような支援ができるかを明確に示せるとよいのではないか。国は何ができるのかというところまで、ぜひ審議を深めていただきたいといった御意見がございました。
 最後の丸でございますが、「デジタル技術の活用」について、GIGAと同じ端末を教育委員会の指導主事が使ったことがない事例とか、学校に与えられている端末のクラウド環境が役所からは使えない事例等があるということで、指導主事の方々にICTの感覚などをきちんと見つけていただくようなことをより一層加えていただきたいといった御意見がございました。
 その下でございますが、他地域の教育委員会の指導主事と連携した研修などについて、できるだけデジタルでできるような環境整備などを検討いただければと思うといった御意見がございました。
 以上でございます。
【清原座長】  伊藤補佐、ありがとうございます。
 中央教育審議会初等中等教育分科会で報告させていただきましたところ、資料1のような御意見をいただきました。これらは、これまで委員の皆様から提起されている御意見と、ほとんど重なり合うところでございます。これから、このいただいた御指摘も踏まえまして、引き続き、調査研究協力者会議で検討を深めていきたいと思います。
 以上、情報共有でございます。
 それでは、議事に入らせていただきます。(1)次期教育振興基本計画の審議状況等について、でございます。
 現在、次期教育振興基本計画について、中央教育審議会の部会で検討されております。また、総会でも意見交換がなされているところです。その計画の実効性を確保していくためには、計画の実施主体である教育委員会の機能強化、活性化を含めた地方教育行政の充実が欠かせません。本調査研究協力者会議の議論に当たりましても、教育振興基本計画の議論の動向をきちんと踏まえて審議していく必要がございます。本日は、その議論の状況について御説明いただきたいと思います。それでは、本日は総合教育政策局政策課の川村教育企画調整官にお越しいただいておりますので、御説明をお願いいたします。
【川村総合教育政策局政策課教育企画調整官】  文部科学省総合教育政策局の川村でございます。本日は説明の機会を頂戴し、ありがとうございます。資料を共有して説明させていただきます。
 次期教育振興基本計画でございますけれども、令和5年度から令和9年度までの計画でございます。昨年2月に文部科学大臣から中央教育審議会に諮問がございまして、これまで13回にわたり、部会を開催してきたところでございます。先般2月7日の会議におきまして、次期計画の策定に向けた答申の素案をいただきましたので、現在審議中ではございますけれども、この資料に基づいて説明させていただきます。
 教育振興基本計画でございますけれども、初等中等教育のみならず、高等教育、社会教育、生涯学習まで含めた教育全体の総合計画でございまして、今回の議論におきましては、学制150年を迎える中で、不易と流行という観点も踏まえつつ、これからの教育の羅針盤となるべきものということで御議論いただきました。
 特に、現行の第3期計画期間中においては、コロナウイルスの拡大、また、ロシアのウクライナ侵略による国際情勢の不安定化といったVUCAの時代の象徴とも言うべき大きな出来事が生じ、また、引き続きの課題でございます少子化、人口減少、グローバル化等の問題、こういった社会の現状や変化も踏まえた議論が行われました。
 また、第3期計画期間中の成果といたしまして、特に初中段階では、国際的には高い学力水準が維持されていること、また、GIGAスクール構想の進展、教職員定数の改善、さらには、教育費負担軽減による進学率の向上も見られております。
 他方で課題といたしまして、コロナ禍によりまして、グローバルな交流とか体験活動が停滞している、不登校・いじめ重大事態等の増加、学校の長時間勤務や教師不足、こういった問題が顕在化してきております。
 こういったことを踏まえまして、次期計画におきましては、2つのコンセプトと5つの基本的な方針ということで、取りまとめに向けて御議論いただいております。
 1つ目のコンセプトといたしましては、2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成で、将来の予測が困難な時代において、未来に向けて自らが社会の創り手となって、持続可能な社会を維持・発展させていくという考え方でございます。
 もう一つは、日本社会に根差したウェルビーイングの向上で、多様な個人それぞれの幸せや生きがいを感じるとともに、あわせて地域や社会が幸せや豊かさを感じられるものとなるための教育の在り方、こういった観点で御議論いただきました。
 5つの基本的な方針ですけれども、1点目として、グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成、2点目として、誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進、3点目として、地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進、この3つの方向性を、下にございます教育DXの推進、そして、計画の実効性確保のための基盤整備と対話が支えるような構造になっております。
 1つ目のグローバル化の要素が幾つかございますけれども、主体的に社会の形成に参画する、「主体的・対話的で深い学び」、探求・STEAM教育、グローバル化の中で留学等国際交流という要素が入っております。
 真ん中は、多様な教育ニーズへの対応、多様性、公平・公正、包摂性(DE&I)、共生社会の実現という要素が入っております。
 右側には、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進が入っております。
 DXのところでは、DXに至る3段階があるという前提で、次期計画期間中には、第2段階への移行を着実に推進し、第3段階を見据えていくようなフェーズ、また、GIGAスクール構想の推進、教育データの分析・利活用といった事柄が主な課題、方向性として示されております。
 計画の実効性確保のための基盤整備等につきましては、指導体制・ICT環境等の整備、学校における働き方改革のさらなる推進、NPO・企業等多様な担い手との連携・協働、各関係団体・関係者(子供を含む)との対話を通じた計画策定等ということで、現在、整理されております。
 この基本的な方向性にも基づきまして、次の資料は、今後の教育政策の遂行に当たっての評価・指標の在り方と教育投資の在り方でございます。PDCAサイクルの推進とかデータ利活用、さらに投資として「人への投資」というキーワードがございますけれども、成長の源泉であって、未来への投資としての教育投資を社会全体で確保していくという方向性が示されております。
 それから、今後5年間の教育政策の目標と基本施策ということで、これまで教育政策の目標で掲げておりました事項がございますけれども、今回は次のページにわたりまして16の目標に整理しておりまして、それを実現するための基本施策、そして右側に、進捗状況を特定するための指標ということで整理しております。
 例えば1つ目の確かな学力の育成につきましては、PISAの世界トップレベルの水準の維持・到達。それから、授業の内容がよく分かるとか、将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合、こういった主観的指標、また、高校生・大学生の授業外学修時間ということも内容に入っております。
 豊かな心の育成につきましては、基本施策と指標としては、自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合や、人が困っているときは進んで助けている、こういった要素が入っております。
 グローバル社会における人材育成につきましては、英語力について、中高卒業段階で一定水準を達成した中高生の割合、これは引き続き入っております。
 イノベーションを担う人材育成では、探求・STEAM教育の充実、主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成では、子供の意見表明、主権者教育の推進ということで、地域や社会をよくするために何かしてみたいと思う児童生徒の割合、こういったものが入っております。
 多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂につきましては、様々なニーズを踏まえた基本施策をこの項目の中に盛り込んでおりますが、指標として、不登校特例校や夜間中学の設置数、日本語指導の関係が入っております。
 それから、目標9の学校・家庭・地域の連携ということで、コミュニティ・スクール、地域学校協働活動、こういった関係の施策でございます。
 目標11の教育DXの推進・デジタル人材の育成につきましては、児童生徒の情報活用能力の育成、教師のICT活用指導力、ICT機器を活用した授業頻度といったものが内容として入っております。
 目標12の指導体制・ICT環境の整備につきましては、教師の在校等時間の短縮、特別免許状の授与件数、教員採用選考試験における優れた人材確保のための取組状況、こういったところが、施策としても、それを推進するためのものということで含まれております。
 また、目標16の各ステークホルダーとの対話ということで、意見の聴取・反映の状況の改善を指標としております。
 以上が計画の概要でございますけれども、教育振興基本計画につきましては、教育基本法及び地教行法の中で、それぞれ、地方公共団体における計画、また、大綱において参酌することが定められております。
 教育基本法におきましては、策定は努力義務、大綱におきましては義務でございますけれども、それぞれ、策定率、次のページ以降には、計画の位置付けや対象期間、さらには教育大綱との関係、議会への承認・報告の有無、こういったことを参考データとしておつけしております。
 それから、今回「ウェルビーイング」が一つのテーマになっておりますけれども、ウェルビーイングとは何か、なぜウェルビーイングが求められるかといった解説の資料を部会の議論を踏まえて作成しております。
 教育とウェルビーイングということで、不登校やいじめ、こういったことが起こる中でのウェルビーイングの重要性とか教育に関連する要素、どのような活動を通じて向上させていくのか、主観的指標として今回の計画の中でお示ししている指標の中で関連するもの、さらには、教師のウェルビーイング、学校、地域社会のウェルビーイングへの広がりといったことで、図示する形で資料を整理しております。
 こちらは概要資料でございまして、本体は素案で77ページございますけれども、70ページに、地方教育行政の充実ということで、こちらの会議での御議論を踏まえまして、清原座長に副部会長を務めていただいておりますので、御指摘を踏まえまして記載を充実し、内容として盛り込ませていただいているところでございます。
 説明は以上でございます。
【清原座長】  川村さん、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明を踏まえて、御質問あるいは今後、本調査研究協力者会議で、より一層、皆様と取り上げて深めていくべき点などがございましたら、御発言いただきたいと思います。どなたからでも、いつものように挙手ボタンを押していただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。
 内容的なものではなく、資料2の4ページからの策定状況等についてでもよろしいでしょうか。
【清原座長】  もちろんです。どうぞ、その点についておっしゃってください。
【戸ヶ﨑座長代理】  それでは、資料2の4ページの最後の欄の「策定率」についてです。教育振興基本計画の策定状況の表の中で、市町村の17.1%がこの振興計画を策定していないということで、いわゆる努力義務であるとはいえ、人員不足など何らかの理由があるものと思われます。もし、そういうことで策定できないということであれば、何らかの支援の手を差し伸べていく必要があると感じました。
 また、5ページの表に右端に「計」とありますが、この「計」という項目を設置した意味がいま一つよく分かりません。また、これは別に回答してくれという意味ではありませんが、計画対象期間が6年以上、さらには左下にあるように10年以上という自治体が予想以上に多いことに、正直少々驚きました。この計画は、「科学技術の進展や社会や時代の変化が急速であることに鑑みておおむね5年間とすることが適当」とされているわけで、6年以上、特に10年なんていうのは、この計画が社会等の急激な変化に対応できているのだろうかという疑問がございます。恐らく計画のスパンが10年とは、それぞれの自治体の総合振興計画の中に組み込まれているためかと思いますが、総合振興計画、いわゆる「総振」とは、往々にしてコンサルト等に委託して作成することもよくあることで、そうなると、教育委員会事務局や教育委員さんたちなどの思いやビジョンが本当に適切に反映されているのかということに対しても、少々疑問を感じました。
 さらに、6ページで、大綱をもって教育振興基本計画に代えているところが11%、公表する際の名義で首長という市町村が25%もあります。当然、首長のリーダーシップや首長部局と教育委員会との連携はとても大切なことですが、一方、ここで心配するのは、行政全体を考えていったときに、教育委員会の主体性がしっかり担保され、発揮されているのか、少々疑問に感じました。
なお、この調査からは見えてきませんし、このような計画全般がそうなのかもしれませんが、つくること自体が目的化して、活用されないという課題が往々にしてあります。この会でもよく話題になっている、「訴求力」という視点が非常に重要です。これは宣伝になってしまって申し訳ないのですが、本市の教育委員会では、今回の計画から簿冊形式は一切やめて、A3の両面一枚にまとめ、可能な限りシンプルにし、現場や教育委員会関係者にわかりやすくしています。また、代わりに20分程度の丁寧な説明動画を作成して、関係者や市民に見てもらうように努力しました。このような何らかの「訴求力」といった視点からの努力も必要になると感じました。
 以上です。
【清原座長】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。
 大変重要な御指摘だと思います。
 「義務」、あるいは「努力義務」とあるわけでございますけれども、教育振興基本計画の策定状況について、数点、問題提起をいただきました。
 このことについては、今後、私たちとしても、教育委員会の取組のうちの「計画策定の在り方」として受け止めて議論していきたいと思いますが、この段階で、この状況について、堀野課長、何かコメントありますか、あるいは川村さん、よろしいですか。
 それでは、ただいま申し上げましたように、戸ヶ﨑委員の御指摘につきましては、私たちとしても、次期教育振興基本計画が国で策定されることによって、都道府県、市区町村において、それをどのようによい意味で参酌し、地域の実情に応じて計画を策定していくか、その適切さでありますとか、あるいは訴求力でありますとか、そういうことについて、課題としてしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。
 そのほか、御質問等ありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、川村さんにおかれましては、大変お忙しい中、「答申素案」までまとめていただき、私たちの会議でも御説明いただきまして感謝いたします。引き続き、答申に向けて御尽力いただければと思いますし、私たちも、この中に地方教育行政についての記述もしっかり含めていただいておりますので、問題意識を重く受け止めて、調査研究協力者会議として審議を重ねていきたいと思います。本日はどうもありがとうございます。
 それでは、次の議事、(2)学校運営の支援のために果たすべき役割について(ヒアリング等)に移りたいと思います。
 私たちは、学校運営の支援のために果たすべき役割について本格的に検討するのは今回からになります。そこで、大変お忙しい中、御協力いただきまして、福岡県春日市教育委員会の岡﨑様、宮本様、長野県塩尻市教育委員会の赤羽様、塩筑南部教育事務支援室の吉江様より、このテーマについて御発表いただくことになりました。学校運営を支援する各教育委員会の取組についてヒアリングさせていただくことで深めたいと思います。
 それでは、まず、福岡県春日市教育委員会の岡﨑様と宮本様、御発表をお願いいたします。大体15分程度で御説明いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  よろしくお願いいたします。
【福岡県春日市教育委員会(岡﨑様)】  よろしくお願いいたします。
 皆さん、こんにちは。春日市教育委員会学校教育課の岡﨑と申します。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  同じく、地域教育課の宮本と申します。
 最初に私から、まず、春日市の概要を御紹介いたします。春日市は、福岡市の南に隣接する人口11万人、面積14.15平方キロの人口密度が高い住宅都市です。年間に人口の約5%が転出入しておりまして、人のつながり等の地域づくりが重要課題であるため、市民と行政による「協働のまちづくり」に取り組んでおります。
 学校の概要です。小中合わせて18校、児童生徒数は約1万1,000人となっております。
【福岡県春日市教育委員会(岡﨑様)】  では早速、私、岡﨑から、学校の自律的経営を推進する学校裁量予算の拡大について、事前に文部科学省からお示しいただきましたポイントに従い、御覧の4項目について説明いたします。
 平成13年度以前、教育委員会職員は、まず、学校ごとに必要となるであろう予算を教育委員会で編成し、翌年度4月以降、予算を執行、つまり、学校が買ったものの代金や学校が授業に招いた講師への謝金を支払う事務を行ってきました。教育委員会職員は、本来、市の教育的政策の形成、充実、発展に努めるべきところではございますが、当時は予算の執行に追われ、それが全くできていなかったと聞いています。もともとは教育委員会職員が日々の業務に追われ、やるべきことをやることができていないという状態からのスタートでした。
 そこで、教育委員会の政策形成機能の向上と学校の自律化に向けた改革の一つとして、学校へ予算の執行権を移譲したのです。それまで教育委員会が行ってきた学校関連予算の執行権限の一部を学校に移譲することにより、全小中学校の膨大な数の支出行為は、主に学校が行うこととなりました。学校事務職員の仕事は増えましたが、このことにより、学校にはコスト意識が芽生え、高まっていくこととなります。
 また、教育委員会においては、学校の支出事務を行うという定型業務のスリム化が行われたことにより、政策形成機能の強化に力を注ぐことができるようになります。
 当時、どのような費目において予算の執行権の移譲が行われたかを御覧ください。平成14年度にスタートしたときには、主に消耗品などの需用費と呼ばれる費目を中心に対象としています。翌年、平成15年度には、需用費と比べると単価が高い講師の謝金とか備品の購入費も執行できる権限を移譲しています。平成17年度には、役務費と呼ばれるクリーニングの費用等も加えていっております。
 さて、予算を執行する権限を移譲した平成14年度から2年後の平成16年度、学校の自主性・自律性を確立し、特色ある学校づくりの実現に向けて学校裁量権の拡大を図ることを目的として、予算の編成をする権利も学校に移譲し、学校が予算科目ごとの金額を決めることができるようにしました。
 ここで本市が採りました予算編成の方式、学校予算総枠配当方式についてお話しします。まず初めに、教育委員会は市の財政課の予算編成の下、学校規模やこれまでの予算執行の実績等を踏まえた次年度の予算の金額の枠、総枠配当額を学校ごとに示します。
 学校は予算委員会を開き、提示を受けた総枠内で、自らの経営目標を具現化するための予算案の編成を行います。ちなみに、予算委員会開くことは、春日市学校管理運営規則で、校長が開くことと定めております。
 予算委員会で協議した後、学校は編成した予算案を教育委員会に提出し、自らの教育目標、経営目標とともに予算案の趣旨等の説明を行います。
 学校予算総枠配当方式の実施により、学校は独自の取組に挑戦しやすくなり、教育委員会は定型業務のスリム化が実現し、政策形成を行う余裕が生まれました。その結果、学校は、教育委員会の指示や意向を重視する従来の姿勢から、主体的な判断をするように変化し、教育委員会も、前例踏襲の傾向を改め、積極的に改革を進める姿勢へと変化することができました。次第に学校と教育委員会との関係が指揮命令関係の縦から、支持、支援関係の横へと転換していきました。
 さらに横のつながりを高めることとなった取組が平成17年度に導入した教育長出前トークです。教育長をはじめ、教育委員、教育委員会の職員が学校に出向き、全教職員とグループ協議を行います。形式的な学校訪問ではなく、学校と教育委員会が率直に意見を言い合える場となっています。このような取組により、相互理解が深まり、自律的な学校運営を支援する関係性の構築につながっています。
 学校裁量予算の拡大に関する学校の反応ですが、特に学校事務職員について言えば、正直、反応はよくなかったと聞いています。ほかの市町村の学校事務職員と比べて業務量が増えるのですから当然です。しかし、校長、教頭と共に学校経営に積極的に携わる絶好の機会と捉えていただけたと思っています。
 これらの予算の編成、執行を毎年繰り返す中で、学校のコスト意識も格段に上がったと思います。学校裁量予算によって進んだ学校の取組として、1つ御紹介します。今年度、ある学校で、学校の固定電話から保護者の携帯電話にかけている教員が多くなり、電話料の支払いがかさんでいると気づいた学校職員がいました。この事務職員は、夏休み中の教職員の研修の時間を利用し、電話料のコストを抑えるために、学校の固定電話からではなく、学校に配置されている公用の携帯電話を活用しましょうと説明したと話してくれました。このように、学校のコスト意識は格段に上がっていると感じています。学校裁量予算とコミュニティ・スクールの関係については、この後、説明いたします。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  引き続き、事前に文部科学省からお示しいただいたポイントに従いまして、御覧の3項目について御説明いたします。なお、3点目の本市のコミュニティ・スクール推進の取組を重点的に御説明差し上げます。
 最初に一つお断りでございますが、本市では地域学校協働活動の一部をコミュニティ・スクールの取組と呼びまして、長く一体的に展開してまいりました。ですので、本日は時間短縮のため、2つを合わせて「コミュニティ・スクール」と呼ばせていただきます。どうぞ御容赦ください。
 では説明の1点目、学校裁量予算とコミュニティ・スクールの関連について述べます。コミュニティ・スクール関係では、講師謝金や消耗品費、印刷費等が総枠配当の積算の中に含まれております。また、学校運営協議会においては、学校事務職員が主務者として、予算編成の説明をしております。
 続いて、説明の2点目、学校経営の自律化とコミュニティ・スクールの必要性についてでございます。令和の日本型教育を支える基盤として、コミュニティ・スクールは機能するものと捉えております。多様な他者との協働的な学び、地域の構成員としての意識の育成などを得られることがその理由です。
 そして、コミュニティ・スクールの推進には学校経営の自律化が必要となります。学校経営の責任者である校長がやる気になり、経営ビジョンを描きやすい環境整備がないと、コミュニティ・スクールの推進は限定的なものになります。自律化に支えられて、コミュニティ・スクールは自走しだし、そこに行政による伴走支援が加わることで、単なる教育施策にとどまらず、まちづくりにまでつながる真の効果が現れます。
 本市の事例で申します。冒頭申しましたように、本市は、市民と行政による「協働のまちづくり」に長年取り組んでおります。地域の自治会には、それぞれが使途を決定できる一括交付金を支給しており、自治会が中核となった住民主体のまちづくりが進んでいます。学校教育においても、この観点から、学校への権限移譲と予算的裏づけをセットで行っております。平成16年度には、学校管理運営規則を全面改正し、学校の裁量を拡大しています。このようにして、コミュニティ・スクールをまちづくり、地域づくりという政策的課題へのアプローチ策につないでいます。
 このことは、学校における働き方改革にも効果がございます。地域や保護者の理解が進み、学校に対する理不尽なクレームが減少したなどの教員の声が聞かれます。また、家庭や地域の役割をきちんとそれぞれに求めることができます。本市では、学校経営要項や構想図に、家庭・地域の役割・取組を定めている学校が多くございます。
 最後に、説明の3点目、本市のコミュニティ・スクール推進に関する取組です。学校現場だけにコミュニティ・スクールを押しつけず、市教育委員会と首長部局が連携し、行政による伴走支援を徹底しています。首長部局の支援例としては、組織の再編がございます。本市では、学校教育関係の課が担当していたコミュニティ・スクールを子供に関する社会教育事業と統合して、私の所属する地域教育課を平成30年度に新設しております。このことで、1つの係がコミュニティ・スクール、地域学校協働活動を所掌し、学社融合の取組が容易な体制となっております。
 そして、教育委員会では学校への5つの継続的支援を行っております。
 1つが評価です。独自の評価指標に基づくコミュニティ・スクール進捗状況評価を学校関係者評価と併せて全校で年2回実施し、課題解決のツールとして活用しております。評価はオンライン化、集計はエクセルで自動化しており、学校の負担軽減を図っております。
 2つが総括です、整理、意味づけ、価値づけを丁寧に行うようにしております。スライドに写しておりますのは、令和2年度に作成した春日市版コミュニティ・スクールと協働活動の一体的推進の仕組み図です。図の右側、地域学校協働本部を本市では従前から「共育」の基盤と呼んできたため、その旨を記載しております。国からお示しいただいた新たな概念を本市のこれまでの取組に照らし、翻訳、整理した例として挙げさせていただいております。
 3つ目が新たな動きの誘導、4つ目が広報です。学校運営協議会での「熟議」の充実と、子供を加えた「四者」によるコミュニティ・スクールについて、市の広報紙に記事を掲載したものです。学校の自律性、自主性を重視しながら、よい取組、必要な取組は市教委が誘導し、ほかの学校へ横展開を図っています。また、1人でも多くの市民に理解を広げるよう、広報に注力しております。
 広報について補足させていただきます。今年度、春日市は市制50周年を迎えました。その記念事業として、コミュニティ・スクールに関する動画、「協働のまち かすが」を制作し、市のウェブサイトのトップページに掲載しております。また、中学校区別に協働活動を一覧にしたリーフレットを市教委で制作しております。保護者や本市への転入を検討している方への訴求力を高めるようなデザインとしております。
 教育委員会による支援の5つは、体系的・計画的な研修の実施です。関係者に必要な情報を提供し、活動の担い手の意欲向上を図るため、市教委主催の独自研修を行っております。本市教育長自ら講師を務める研修もございます。
 こういった支援のベースとしているのが現場主義です。学校運営協議会委員としての市職員の配置、地域学校協働活動推進員の日常的支援、地域人材情報の把握と活用などを実施しております。
 説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
【清原座長】  岡﨑さん、宮本さん、具体的な御説明を短時間で御丁寧にありがとうございます。
 20年ほど前から学校に予算編成を任せるという自律的な取組をされてこられ、コミュニティ・スクールをまさに協働のよい例として進めてこられていることが分かりました。
 それでは、これから皆様から質疑あるいは御意見をいただきたいと思います。どなたからでもどうぞ。挙手ボタンを押してください、あるいはその場で手を挙げていただいても結構です。いかがでしょうか。どうでしょう。
 それでは吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】  遅参いたしまして申し訳ございません。全国市長会の社会文教委員長、埼玉県本庄市の吉田でございます。
 学校教員の皆様方にお聞きすると、ちょっと分からないかもしれませんけど、私が非常に関心を持ちましたのは、自治会に対してまちづくり交付金を創設している。使途を決定できる一括交付金、似たようなことはやっているんですけれども、自治会に対して、年間どのくらい予算を出して、どういう使い道になっているのか。
 また、これは学校、コミュニティ・スクールの推進ということですけれども、自治会と学校との関わりについて、もう少し深く、現状を教えていただけるとありがたいんですが、どうぞよろしくお願いいたします。
【清原座長】  これはどちらでしょう、宮本さんでしょうかね。地域の自治会等も、学校と同様に、まさに自律的な活動をしていただく取組をされているということですし、地域の自治組織とコミュニティ・スクールの関係についての御質問でございます。お分かりになる範囲でお答えいただければと思います。お願いします。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  御質問ありがとうございます。
 まず、自治会に対しての交付金の金額でございますが、本市には市内に35の自治会がございまして、総額で1億円を上回る交付金を支給しております。使い道といたしましては、自治会のありとあらゆる行事、それから、極端なところでは自治会長さんのお給料の額等、そういったところまで全て各地区で決めていただくような仕組みになっております。
 そして自治会と学校との関係性でございますが、学校運営協議会には、全ての地区から、自治会長さんあるいは自治会役員さんに参画していただいています。同時に自治会には、子供たちを地域行事に受け入れていただくという面、あるいは地域行事の中で子供たちの自主企画の場を設けていただくというところで、多大なる貢献をいただいております。
 以上でございます。
【清原座長】  吉田委員、いかがでしょうか。
【吉田委員】  すみません、時間もないので、いろいろな市がやっているとはいえ、春日市さんぐらいのところで1億円というのは非常に大きいのかなと感じたところでございます。ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 そのほかの委員、小﨑委員、どうぞ御発言ください。
【小﨑委員】  奈良教育大学の小﨑です。
 発表ありがとうございました。組織を考えるに当たって、学校の実態に即した流れがすごく出ているなと思って、参考にさせていただきました。
 今日お話しいただいた内容は、こういう組織ができましたよ、こういう形で運用をやりましたよ、そういうものだったと思うんですね。仮に理想的なものができたとしても、私は、やはり、そこでどういう人がどんなことをするのかということも非常に重要になってくると思っていまして、いい組織はできたんだけれど、人選が難しいということをよく聞きます。そういう点で、春日市さんは、人選に関して、まあまあスムーズにいっているのか、それとも、こういうことを工夫してやっているんですよということがもしあれば教えていただきたいなと思ったのが一つです。
 もう一つは、評価も丁寧にされていて、こういう形でこういうふうにやったことでこういう成果が出ているんだよというのが非常によくまとまっていて、私がぱっと見ても、なるほどと思ったんですけれども、それを可視化するところまではいっているんですが、教育委員会の中でいろいろなことをやったり考えたりして形も成果も出ているんだけど、肝腎の学校に届いていなかったり、地域の人に届いていなかったりということが非常に苦労する点なんです。それで、最後、広報のところをまとめておられて、こんな研修もやっています、協議会もやっていますということだったので、もし、こういう点は非常に効果的ですよというようなことがあれば、そこをピンポイントで教えていただきたいということです。
 以上2点です。
【清原座長】  ありがとうございます。
 学校裁量予算の面やコミュニティ・スクール、そういう仕組みを円滑に遂行していくための人材について、そして、そうした取組に関する評価を学校の現場等にどのようにフィードバックされているか、2点についての御質問ですが、いかがでしょうか。これはどちらにお答えいただけますか。では、宮本さん、お願いします。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  御質問ありがとうございます。
 まず、人選についてでございますが、教職員とか行政職員等は人事権が自分たちにあるわけではないので除外いたしますが、例えば地域学校協働活動推進員については、学校がやりやすい人を選んでください、そしてその人を推薦してくださいというところを非常に強調しております。やはり先ほど申したような、校長先生がやりやすい、パートナーとして進めやすい方を選んでいただかないとというところがございますので、そういった点を重視しております。
 また、地域人材については、学校支援ボランティア等で来ていただいている方は御本人が希望されて来ていただいていると思いますが、一方で自治会長さんたち等については、学校側で人選にアプローチできる部分ではございませんので、そこは対話を積み重ねていく中で、関係性を構築していくしかない部分かなと感じているところでございます。
 2点目の評価の部分でございますが、学校や地域へのフィードバックという点に関しまして、十分かは分かりませんが、力を入れている部分ではございます。学校に関しては、校長会等で評価結果等の周知を図り、学校にも文書を送ったりして周知を図っている。それから地域には、必要なものについては、本市ではまだ地域の回覧板というものが生きておりますので、そちらの中に、例えば学校だよりを毎号挟んでいただいたり、そういった草の根のところで少しでも情報を共有できるようにという部分を工夫しております。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 小﨑委員、いかがですか。
【小﨑委員】  ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、藤迫委員、青木委員、戸ヶ﨑委員の順で御発言をお願いします。
 では、藤迫委員、お願いします。
【藤迫委員】  ありがとうございます。大阪の箕面市教育委員会教育長の藤迫でございます。
 私は今の議論の続きではないんですが、学校予算の校長の権限の移譲ということで、我々も当然、そういう形で、できるだけ学校におろすお金というのはひもづけなしに、枠配分でおろして、学校の裁量でということですけれども、一方、事務のほうで、我々は教育委員会事務局に学校事務センターを設けまして、1つは学校徴収金の事務の集約と、もう一つは学校財務事務の集約ということで、1つは徴収金、これは公金もですし、私のお金、PTA会費も含めて、学校事務センターで、いわゆる徴収業務を一括してやっている。一方で編成権は学校に任せているんですが、実際に行う契約とか支払いとか備品登録とか、そういう事務的なものは学校事務センターでやっているんですよね。特にどの学校でも使うような共通の物品というものは、やっぱりスケールメリットもありますし、そういうことをすることによって業務の効率化になりますし、財政的なこともありますし、もう一つ、一番大きかったのは、学校事務センターをつくろうという経過は、多忙な教頭先生の事務的なところを、もう少し学校事務職員にシェアできないのか、いやいや、学校事務職員も忙しいので、では学校事務職員の仕事をこの事務センターに引き揚げられないかという観点でやったんです。そこで質問ですが、実際、春日市さんは、その辺りのことは学校で処理されているのか、違うのか、もしくは一連の取組の中で、そういう検討の議論があったのか、なかったのかというのがあれば、勉強させてもらいたいので、よろしくお願いします。
【清原座長】  藤迫委員、ありがとうございます。
 学校事務の徴収とか契約とか備品登録とか、そうしたもののセンター機能を箕面市さんはお持ちですが、春日市さんでは事務の改革というようなことではいかがでしょうか。これは岡﨑さんですかね、どうぞお答えください。
【福岡県春日市教育委員会(岡﨑様)】  御質問ありがとうございます。
 実は私どもでも一時期は「共同実施」と呼んでおりまして、一部事務を、今、市内に18校あると説明させていただきましたが、それを3ブロックに分けて事務を行っていた時期もありました。実際、今も3共同学校事務室で運営しているんですけれども、予算の点に関しては、現在、それぞれの学校で行っているところでございます。でも、委員御指摘のとおり、実は各学校で同じようなものを買っている場合は、やはりまとめて手続したほうが大変効率的なので、逆に勉強させていただきたいところですけれども、今後は令和2年度から始めております共同学校事務室を中心に、物品等の購入の仕方について、逆に研究していく必要があるかなと感じており、その点については発展途上のところがございます。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 共同学校事務室を3ブロックごとに設置されているということが分かりました。
 藤迫委員、いかがでしょうか。
【藤迫委員】  ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  東北大学の青木と申します。
 本日は御発表ありがとうございました。私の研究分野では、春日市さんについては、九州大学の研究チームが長期的に研究報告をされていて、今回、直接お話を伺えて、大変うれしく存じます。地方分権が教育行政でも始まった2000年前後、この頃から、先進自治体として、長期間走り続けておられるお姿を拝見できたと思います。
 その上で、具体的に2つだけ質問です。
 事務職員の業務量の負担について、御指摘がありました。学校事務職員の方の超過勤務手当の支給額の動向はいかがでしょうか、これが1つ目です。
 2つ目ですが、自治会と学校運営協議会の関係が非常に密だということは分かりました。恐らく小学校区と自治会が一対一対応ではないかと思うんですが、他方で中学校の学校運営協議会と自治会との関係は小学校と何が違うのかというところについて教えていただければと思います。
 以上です。
【清原座長】  青木委員、ありがとうございます。
 事務職員の超過勤務の動向と、小学校、中学校によって学校運営協議会と自治会等の関係に何らかの差があるかということで、前者は岡﨑さんでしょうかね、どうでしょうか。では、お願いします。
【福岡県春日市教育委員会(岡﨑様)】  御質問ありがとうございます。
 まず1点目の学校事務職員に対する超過勤務手当の支払状況ですが、春日市の教職員は、学校事務職員も含めて、給与は福岡県の費用で支出されておりまして、この場ですぐにお答えすることはできかねます。申し訳ございません。
 1点目は以上です。
【清原座長】  それでは宮本様、2点目をお願いいたします。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  2点目の小学校と中学校の自治会との関わりの相違でございますが、まず、小学校の校区においても、本市では大体2個以上の自治会が関わっている形で、全ての自治会から学校運営協議会委員さんに参加していただいている。中学校の場合は、それがより多くなる形でございます。性質的なところでは、やはり小学校では、どちらかというと、学校を支援していただく活動が多いのかなと思っております。一方で、中学校においては、学齢に応じて、例えば中学生たちが地域に出て地域に貢献するような活動を担っているところで、それに関する打合せ等が非常に多くなっております。そういった地域との関わり方、子供たちの関わり方の部分で相違点があるかなと捉えております。
 以上でございます。
【清原座長】  なるほど。ありがとうございます。35の自治会があって、学校数が18ということでございますので、複数の自治会等がそれぞれの学校に関わると受け止めてよろしいでしょうか。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  はい、さようでございます。
【清原座長】  青木委員、いかがでしょうか。
【青木委員】  とてもよく分かりました。ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いします。
【戸ヶ﨑座長代理】  まず、先進自治体としてのお取組、参考になりました。
 私からは、1つだけ質問で、残りは感想、意見を申し上げたいと思います。
まず質問で、裁量予算で取り組んだ取組の1例として、先ほど電話代の話がありましたが、ほかの成果があれば教えていただきたいなと思います。というのは、電話代については、本市でも数年前に、管理職を除き電話の発信は原則公用の携帯電話で行うようにそろえました。これは個別の学校の問題ではないため、本市教育委員会としてはトップダウンで取り組みましたが、春日市さんのようにこういうものはボトムアップでやられるのが理想的かと思うので、電話以外で好事例を横展開したケースがあれば、後ほど教えていただけたらと思います。
 次に、感想、意見を何点か申し上げたいと思います。各学校が自律的、機能的に自走していくためには、やはり学校の裁量権を広げて、主体的に教育活動に取り組める環境整備が大変重要であるという御提案と理解いたしました。そのような意味で、そもそもの教育予算の編成権を学校に権限委譲するのか、または権限を委譲するまではいかなくても、例年どおりで機械的に配当するのではなく、教育委員会において、学校の意向が反映される学校関係予算の編成や、適切に予算編成がされているのかを各学校の意見を踏まえつつ点検して、必要に応じて見直しを図っていく姿勢が重要だと感じました。
 また、学校経営では、3Mと言われている「人と物と金」はそれぞれ大きな柱であって、その中でも学校の校長が、そもそも市の配当予算だけに頼らず、予算をより多く獲得していくのは、今後、ダイナミックな学校経営を行う上でも、また、積極的にカリキュラム・マネジメントを進めていく上でも、これから管理職の大切な手腕の一つになっていくのではないかと思っています。
私は予算の裁量化を行う領域は、教育課程に関すること、もちろん学校間の一定の平等性は担保していく必要がありますが、校長の学校管理運営事項である教育課程にこそ、校長の予算の裁量化が必要ではないかと常々感じています。本市においてもこれまでも特色ある取組の予算や研究委嘱に関する予算は、学校からの提案書に基づいて、ヒアリングをしながら配当予算額を決めています。また、全ての学校ではありませんが、昨年度から、学校が夢のある教育活動を展開していくための経費確保のためにクラウドファンディングも始めています。
また、御発表の中で、学校管理規則に予算審議のための予算委員会の設置が明記されているとありましたが、参加対象が管理職だけではなく学年主任等も含めているところがすごいなと思いました。業務負担には十分配慮していく必要はありますが、所属職員の学校経営の参画の視点からすると、この主任等を含めているというのは大変すばらしいと思いました。
いずれにしても、学校予算の校長裁量化については、学校の自走を促す意味でも大変重要な御提案であると思います。
 もちろん学校の裁量を拡大することとしても、運営を各学校に任せきりにしないことは言うまでもありません。私は、ずっと言い続けていますが、教育委員会とはそもそも「学校に伴走し、積極的な自走を支援し、時にはみ出したり暴走したりしたところは軌道修正する」ところでなければならないと考えています。やはり学校の設置者として、各学校に権限委譲した業務についての状況をフォローし、必要に応じて軌道修正をする等、学校に伴走するバランスの取れた対応とは、口で言うのは簡単ですが、ここが難しいと思っています。
 最後にCSについては、本市も全校設置してから5年が経過しましたが、これまでもずっと先進自治体として春日市さんの例を参考にさせていただいてまいりました。令和の日本型学校教育を推進していく上で、「地域とともにある学校づくり」の重要度がますます高まっていて、地域社会と連携・協働した活動の一層の充実が求められています。本市においては、PBL型の学びにしても、STEAM教育の基盤づくり事業を進めていく上においても、運営協議会等の地域の方々に授業に積極的に関わっていただくという機会は今後もますます高まっていくと思いますので、引き続き、春日市さんの先進事例にも学ばせていただきたいと感じます。
 
【清原座長】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございます。御評価の上で、もう1点、学校独自の経営の中で、電話料の削減以外に教職員の気づきから目につく事例があればということですが、いかがでしょうか。
 では、岡﨑さん、お願いします。
【福岡県春日市教育委員会(岡﨑様)】  御質問ありがとうございます。先ほど学校事務職員の視点から電話料金のお話をさせていただきましたけれども、ほかにということでございますので、講師の謝金について少しお話をさせていただければと思います。
 当然、自分たちで今後の経営とか教育目標に基づいて予算を編成していきますので、例えば、ある学校では、どうにかして中学3年生に日本の伝統文化に触れさせたいので、日本の伝統的なこととか楽器とかそういうものに触れるような講師を呼ぶような予算編成をというような組み方をする学校もあれば、一方で、ある期間配慮が必要な児童生徒が多く在籍することになったので、教職員も含めてどんなふうに心のケアとか今後対応していったらいいかというのを、あえて自分たちの管理用の消耗品費を少し削ってでも、どうにか学ぶ先生を呼んでしっかり勉強する機会をつくれないかというような予算編成をする学校とか本当に様々ございます。逆にこちらがヒアリングをしながら、そういうところにはこうやってやるんですねとか、そういう授業を展開したいんですねというようなことを感じる場面でございます。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。学校の実情に応じて必要な取組に今までの予算を削減しながらも生かしていくという方向ですね。ありがとうございます。
 それでは、岩本委員、続いて梶原委員でお願いします。
 岩本委員、どうぞ。
【岩本委員】  岩本です。どうもありがとうございました。すばらしい取組で感動しながら聞いていました。私から3点質問です。
 1点目が、市町村教育委員会以外からの予算だとか資金の確保というところの取組についてです。今あるものをどう効率的に使っていくのかという部分と、やっぱそもそも足りない、学校とかに来るお金が少ない中で、もっと取りに行くみたいなところでの動きだとか、そういったものがさっきクラウドファンディングとかありましたし、場合によっては卒業生会からの寄附だとかいろいろ考えられると思うんです。もしそういったものが今回あれば伺えたらというのが1点目です。
 2点目は、先ほど単なる教育施策ではなく、まちづくりにまでつながるCSの実現というのがうたわれていて、これ、すばらしいなと思って見させてもらいました。今回取組を進めていく中で、まちづくりまでつながったCSというのがどういう成果、まちづくりのどういうところにどんな価値を生み出したのかみたいな、その成果で、定量的なものだとか定性的な部分でどうつながっているのかということ、合わせてどんな取組なんかがそこに寄与しているのかみたいな、まちづくりまでつながるCSの姿だとか価値みたいなところを伺えたらというのが2点目です。
 最後3点目が、そういった取組を進めていくに当たっての伴走支援と今回言われていたのが今日の議論においてはとても大切なポイントなのかなと思って聞いていました。この伴走支援が、教育委員会側がやるのも、地域教育課さんのほうでやるのも、具体的にどんな伴走支援が効果を出しているのか、先進的な取組になるところとか、あまりうまくいってなかったところを前に、個別の状況に合わせていろんな伴走支援をされているんだと思うんですけど、何か総合的にやった伴走支援というか、広報とかは分かったんですけれども、それぞれ個別でどんな伴走支援をされて、学校の主体性を高めながら成果、価値につなげるというところをされているのか、もう一段具体的なイメージを教えていただけたらと思います。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。1点目、教育委員会以外の財源確保の方向性、2点目、まちづくりとCSの関係で具体的な例、そして、3点目が伴走支援の内容でございます。
 1点目は、宮本さんですね、お願いします。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  御質問ありがとうございます。
 まず、教育委員会以外からの予算獲得についてでございますが、一部の学校に対する地域の後援会というものができておりまして、例えば部活等で県大会以上に出るときに遠征費をそちらからの寄附で賄っていたりというような事例はございますが、残念ながら、今、全市的にそういった取組を進められているかというとまだ不十分な点かと捉えております。
 2点目でございます。まちづくりにまでつながるという部分でございますが、本市は観光資源も特になく目立った産業もない住宅が中心的な都市でございまして、だからこそ住んでいらっしゃる住民の方々、人こそが宝という視点でまちづくりを進めております。
 コミュニティ・スクールについては、市民の方と対話を積み重ねながら、これまで理解を得ながら育ててきたというところでございまして、そういったところで地域の活性化を行政とは独立して図っていただくようなキーパーソンの方というのが地域に数多く生まれております。そういった部分が現在の新型コロナ禍においても非常に大きな効果を発揮しているなと感じておりまして、行政から呼びかけなくても、例えば令和2年度、夏まつりが全地区で中止になってしまったんですが、別の市民団体さんが、では対面で夏祭りができないならオンラインで祭りをやろうと、10時間の生放送で祭りをつくっていただいて、その中で中学校の吹奏楽部の発表なども盛り込んでいただいたりして、子供の活躍する場をつくっていただいたと。こういった部分で多様な人たちがまちづくりに主体的に関わっていただいているというところが、ちょっと御質問と外れる部分かもしれません、定性的なものでしかないんですが、先ほどまちづくりにまでつながるというふうな言い方を申し上げた部分でございます。
 3番目の伴走支援の部分でございますが、個別にどのようなというところなんですが、まず、私、一番感じるのは、岡﨑の発表の中でございましたけど、学校現場と教育委員会が縦関係ではなく横関係にあるというのは非常に大きなところかなと思っております。悪い言い方をすれば、教職員の方には春日市の教育委員会は文句を言いやすいと言っていただきます。ほかの市町村に人事異動するとびっくりすると、何も聞いてくれないというような声を聞いたりもします。そういった部分で一つ一つ学校現場の悩みに寄り添いながら一緒に解決を探っているという部分が、ちょっとお答えになっているか分かりませんが、具体的な伴走支援ではないかと感じている部分でございます。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。岩本委員、いかがですか。
【岩本委員】  ありがとうございます。そしたら、CSとか、この取組によって結構地域側のキーパーソンみたいな人たちが育ってきているという実感とか手応えがあるという、まだそれが定量的に見えるまではいっていないけども、感覚としてはそうだというようなことなんですね。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  そうですね、全ての学校区に、やはりこの方がキーだなという方が複数いらっしゃって、そういった方たちが自主的、主体的に、地域での行事の企画ですとか子供たちを巻き込んだ取組等進めていただいているというところは非常に大きな成果ではないかなと思っております。
【岩本委員】  分かりました。どうもありがとうございます。
【清原座長】  ありがとうございます。そうですね、コミュニティ・スクールの取組をする中で、今まで潜在化していた人材が学校活動の協働を通して、学校から子供が卒業したとしても子供たちのために地域をよくする取組であればつくっていこうというようなことで継続していくというようなイメージを、今、私も受け止めました。
 それでは、このコーナーは最後になります。
 梶原委員、御発言どうぞ。
 梶原委員、御発言どうぞ。
【梶原委員】  私は感想ということにしたいんですけれども、清原座長さんの三鷹市、そして、九州の春日市さん、コミュニティ・スクールの東の横綱、三鷹市さん、西の横綱、春日市さんということで、両方をずっと学ばせていただいたところでございますが、やっぱり共通的に感じているのは、ある程度の都市になりますと学校と地域ってなかなか顔が見えないというところです。このコミュニティ・スクールというツールを使って、地域の顔、また学校の顔が見えるというか、お互いにどういうことをしているんだなとか、どういう方向に進んでいるんだなということを見える、また、コミュニティ・スクール導入することによって皆さんがそれぞれの立場で当事者意識ができているなと感じたところでございます。
 特に学校教育、社会教育、そして自治体、この3者が本当によく連携できているなと。このよさを全国にたくさん知っていただくというか、だから、首長さんのほうでは学校がやってるからねとか、社会教育をやってるんじゃないじゃなくて、やっぱりこここそ垣根を越えて、地域、まちづくりに関係するんだ、元気なまちになるんだ、特に高齢者の方々はいろんな箇所で活躍の場が多いわけですので、どうか単なるまちづくりじゃなくて、ゼロ歳から高齢者までのつなげる絆のツールということで、清原座長さんの三鷹市さん、春日市さんがやっていることを改めて勉強させていただきました。また、この春日市さんには今村先生や西先生、森先生とマイスターが3人おられまして、皆さんを御指導いただいて日頃から感謝している次第でございます。この制度は本当にいいですから、今後とも全国に広まってほしいと、顔が見える行政ということで、よろしくお願いします。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、岡﨑様、宮本様におかれましては、春日市の取組を大変分かりやすく御説明していただくとともに、委員の皆様の質疑に丁寧に応答していただきまして、ありがとうございます。感謝いたします。これからも御活躍よろしくお願いいたします。
【福岡県春日市教育委員会(岡﨑様)】  ありがとうございました。
【福岡県春日市教育委員会(宮本様)】  ありがとうございます。
【清原座長】  こちらこそありがとうございました。
 それでは、続きまして、長野県塩尻市教育委員会教育長の赤羽様、そして、塩筑南部教育事務支援室室長の吉江様より御発表をいただきます。やはり15分程度でよろしくお願いいたします。
【長野県塩尻市教育委員会(赤羽様)】  それでは、お願いいたします。
 塩尻市教育長の赤羽高志と申します。本日はこのような発表の機会をいただき誠にありがとうございます。
 早速塩尻市の紹介をいたします。長野県のほぼ中央に位置し、北アルプスの山並みを背景に田園風景が広がる塩尻市であります。都市部からアクセスも便利でありまして、南信の諏訪から車で15分、松本市市街地から車で約20分、ショッピングセンターやレジャー、温泉など気軽に出かけることができる地域であります。妊娠前から子供が18歳になるまで、切れ目のない子育て支援に力を注いでおります。
 学校事務で連携している3市村の人口規模ですけども、塩尻市はコンパクトシティーで6万6,000人ぐらい、義務教育学校や組合立の学校を含め14校、延べ4,884名の児童生徒であります。また、お隣の山形村は8,526名、朝日村は4,359名、どちらも1村1校で、子供たちは453名、206名の児童数になっております。
 塩尻市の特色としましては、観光地としての中山道69宿中34番目の宿場町、奈良井宿、また、伝統工芸品にも指定されております木曽漆器、この写真は1998年の長野冬季オリンピックのメダルにも木曽漆器の漆塗りの技術が使われております。市内には、五一わいんなどをはじめ15のワイナリーがありまして、ブドウ栽培から醸造までを担う高校があります。日本で唯一、駅のホームの上にワイン用のブドウ棚があるなどワインの産業としても盛んであります。私も塩尻ワインのファンの1人であります。近年では、地域交通の課題解決のために、AIオンデマンドバスの導入や自動運転バスなどの実証実験も行われております。
 次に、本題の塩筑地区南部教育事務支援室設置までの経過を御説明いたします。
 まず前身に当たる塩尻市事務職員部会ですが、塩尻市教育会内の学校事務職員で組織された小中事務部会と、塩尻市・山形村・朝日村の学校事務職員で組織された塩尻中央ブロック会の活動を兼ねた研究組織として学校事務の研究を重ねてまいりました。
 その後、平成29年度からは共同学校事務室の制度化、学校事務の職務規定の見直し、教員の負担軽減など、学校の働き方改革に本格的に着手する必要があるという教育委員会の立場と、学校経営に参画、教育関係機関との連携により学校全体の教育活動の充実を図る必要があったという学校事務職員の立場の両者の思惑が一致して、塩尻市事務部会と塩尻市教育委員会事務局担当者による共同研究を開始しました。共同研究では、市教委、学校事務との間に、それぞれの諸問題、課題を共有し、市教委も学校もお互いに互恵的関係、ウィン・ウィンになれるような業務改善を行いました。
 平成30年度から各種申請書類の簡素化、新入生に関わる事務の市教委への移管など、新たに予算措置を伴うことなく25の負担軽減策を実施し、1校当たり年間180時間の軽減を行いました。
 令和元年度には、業務移管や公立化による負担軽減に加えて、根本的な業務のスリム化を図るために、学校事務の改善を研究する組織、塩尻市教育事務協議会を設置しました。市内14校に、組合立の両小野中学校、あと山形村、朝日村の事務職員が参加する形で、全17校の事務職員と市費の事務職員、計23名で構成し、総務、財務、学年会計、給与担当の4つの部会に分かれて研究を進めるとともに、検討、提案事項を市教委や校長会と共有することで、市内小中学校全体の業務改善を図りました。
 特徴としては、市教委が協議会を立ち上げて、学校現場の課題に加え、教育委員会の課題に対しても委嘱し、内容に応じて市教委、職員が研究に参加する形で行ってきました。教育委員会の会合の場で事務職員は代表から意見を聞くことは多くの自治体が行っておりますが、塩尻市では事務職員自身が業務改善を検討し、その改善策を施策として提案、実現させてきました。現場の課題に対して実効性の高い施策をすることで、教職員が教育活動に専念できる時間を捻出するとともに、事務職員の学校経営への参画、強化を図り、教育活動の資質向上を目指しております。
 その後、令和2年12月、今までの協議会では、塩尻市内の組織に組合立の学校や、山形村、朝日村が参加する形で運営されてきましたが、学校間連携に関する協定書を1市2村1組合の教育委員会で締結し、各教育委員会の教育長や学校長らが主となりまして、協議会で運営決定を行い、各教育委員会事務局職員や校長からなる運営委員会で具体的な研究内容の設定や支援を行い、支援室では推進する構造的な組織を立ち上げました。事務職員は、塩尻市、山形村、朝日村の各校を兼務する体制を整え、より連携の取れた組織として現在に至っております。コロナ禍で大変な時期がありましたが、どうにかこの組織で乗り越えて対応できました。
 私からの説明は以上であります。
【清原座長】  続けてどうぞ。
【塩筑南部教育事務支援室(吉江様)】  ありがとうございます。塩筑南部教育事務支援室室長を務めております広陵中学校で事務をしております吉江と申します。
 私からは、塩筑南部教育事務支援室の組織概要及び活動内容について説明をさせていただきます。まず、設置要領ですが、複数の教育委員会と所轄に属する学校間の連携組織のため、地教行法第47条の5第1項には該当いたしません。そのため、法制化された共同学校事務室ではありませんが、組織の形態、業務内容については、共同学校事務室と同様の共同実施組織になります。
 構成する学校については、この図のとおりになっております。小学校11校、中学校6校、県費事務職員18名、市費事務職員5名、計23名の事務職員で構成されております。支援室には事務職員の室長、副室長が置かれ、塩尻市西小学校を拠点校として、拠点校の校長が支援室を総括しております。なお、この拠点校には、県費事務職員2名が配置されており、1名が学校業務を、もう1名が副室長として、支援室の実務業務を行っております。
 年度当初、前年度の活動反省をもとに大まかな活動計画を立て、各教育委員会、校長会、校長会会長のほうを私と副室長で訪問し、前年度の活動報告と当年の活動について提案を行い、各教育長、事務局担当者、校長先生方より助言や要望をいただきます。
 それらを踏まえ、活動計画の素案を作成し、拠点校校長、塩尻市教育委員会事務局担当者と、私、室長、副室長で活動計画内容の検討を行い、運営計画、活動計画を作成して、協議会で提案を行っております。
 支援室には、支援室の適正な運営を推進するための協議会が設置されています。協議会はこの図のようになっております。また、支援室の業務について情報を共有し、支援室の活動の充実、課題解決を図り、学校教育の充実を図るため、運営委員会というものが設置されております。運営委員会は、学校事務職員の支援室員のほか、各教育委員会の事務局担当の皆様、それから拠点校の校長で構成されております。協議会で承認され、決定した運営計画、活動内容は、まず第1回運営委員会で共有され、それぞれの部分がスタートいたします。
 支援室の業務の形態ですが、この図のとおり、通常はそれぞれの所属で勤務をしています。月1回程度、支援室員が拠点校である塩尻西小学校にあるサテライト事務室という部屋に集まり、各種研究活動ですとか課題の検討、実務の相互確認、研修等を行っております。なお、サテライト事務室は、塩尻西小学校の4階にありますが、このフロアは塩尻市教育センターという施設となっておりまして、ほかにも研修室やパソコン室などがあり、コロナ対応で距離を取りたいといった場合や、研修など広く活用させていただいております。ここでの情報共有や研究などにより、経験の浅い事務職員の育成や、グループでの研究活動や実務活動でのグループリーダーとしての経験によるミドルリーダーの育成、マネジメント力の向上といった人材育成、OJTを、それから職員への説明資料の共有ですとか事例の共有により業務の効率化を図るといった活動を通して、所属での活動に還元するということを狙いとしています。また、支援室内の事務職員は支援室内全ての学校の兼務が発令されていますので、時には他校に集まり共同で実務作業を行ったり、教育委員会で課題検討を行ったりしています。
 それでは、実際にどのような活動を行っているのか、令和4年度の活動を紹介いたします。運営目標はここに掲げてあるとおりです。実質の公務を4つに分けております。学校経営に関すること、教育事務改善に関すること、運営委員会活動に関すること、実務に関することです。この先の3つの活動は教育事務改善に関すること、つまりは研究活動なんですが、これを中心に連携した活動を行っています。今年度、財務、学校徴収金、校務支援システムの活用の3つのテーマごとに研究課題を設定し、課題解決に向けた研究を行ってまいりました。今年度は、学校徴収金に関する研究グループを3つの課題に細分化し、計5グループで研究を行いました。
 この図の研究体制で示すように、それぞれの研究グループは、研究の経過を年5回の運営委員会で報告し、協議を行います。そこで出された意見を受けて検討を重ねることで、実施可能な内容にブラッシュアップしていきます。この過程で、各研究グループからの依頼ですとか、課題の発生、必要に応じて、学校経営に関することを担当する事務局の室長、副室長は、塩尻市校長会や塩尻市教育委員会、山形村、朝日村教育委員会と相談、検討を行い、各学校での実践につなげていきます。
 また、支援室事務局は、様々な法改正等の資料ですとか給与事務に係る総務事務システムの入力に関するサポートなど、実務研修サポートなども行っております。この実務に関することは、県の事務職員が対象となりますが、年7回程度、小学校2グループ、中学校1グループの3グループごとに、給与や社会保険等実務に関する業務の相互チェックですとか、実際に学校に赴いての書類チェックを実施したり、グループ内での事例、事務局作成の資料について全体共有の時間を取ることで業務の正確性の向上ですとかOJTの充実を図っています。
 教育事務改善に関する活動では今年このような研究を行いました。財務グループでは、共同調達に関する研究を行い、業務改善が見込まれる共同調達物品、手順の検討を行いました。その中で、来年度、具体的に実施する内容は卒業証書の一括契約です。今までは各学校で校長名、発行年月日、校印が押印された卒業証書を購入し、卒業生と児童名、生年月日、卒業証書番号を記号、割印を押印していましたが、来年度、これら全てについて印刷済みの卒業証書を共同購入することになっています。
 学校徴収金、1グループでは、学校徴収金公費私費負担区分表の見直し、学校徴収金事務処理要領の作成、宿泊行事等業者選定の手引きの作成を行いました。徴収金2グループでは、学年会計システム運用マニュアルの作成、学年会計システムの統一、予算書様式の作成、その他様式の統一・整備を行いました。学校徴収金3グループでは、学校徴収金・塩尻市交付金の実態調査を行いました。このことにより、今まで学年会計で支出していた公費区分の物品や、ファイル、テスト印刷費等の公費化、交付金の見直しなど、塩尻市の来年度の予算編成内容の変更による保護者の負担軽減につなげることができました。
 また、公費化の成果を各学校の具体につなげるため、学校徴収金処理要領は、今年度末に各教育委員会より発出されることになっています。また、学年事務システム等も各学校で活用できるよう、データの配信ですとか共有フォルダへの格納が予定されています。このことについては、塩尻市校長会で提案、説明を行い、各学校での確実な実践に向けて連携しながら導入を図っています。
 校務支援システム活用グループでは、働き方改革につながるデータ管理の研究を行いました。校務支援システムであるC4thや、家庭と学校の連絡ツールであるH&Sの活用、家庭からの各調査申請書の電子化等に関する研究を進め、令和5年度より、就学援助、就学奨励申請は電子申請となりました。また、情報教育の充実と推進のため、各学校の情報教育担当者が担っている情報管理に関する業務の一部を事務職員が市のGIGAスクール運営支援センターと連携して行うことによって、情報教育担当者の業務軽減につながる活動を来年度以降徐々に拡充していこうと考えています。令和4年の活動日程はこのようになっています。1回の会にかかる時間はいずれも半日、3時間程度ですが、基本的に教育事務改善と運営委員会は同じ日に開催しています。最初に運営委員会を2時間程度行い、その後、1時間程度、運営委員会での意見をすぐに反映した研究活動ができるよう研究部会を設定しています。その際、事務局である私たちは教育委員会担当者や各研究部のグループ長と必要に応じて連絡や相談を直接行っています。また、研究グループはこれ以外にもそれぞれ単独で研究部会を開き研究活動を行っています。第2回運営委員会が9月に開催されますので、それまでに研究内容が目標の80から90%程度達成できるように進めてきました。青い部分は、教育委員会と個別に検討や協議を行ったところです。必要に応じて、室長、副室長だけでなく各研究グループの長にも参加していただいています。オレンジの枠部分が、校長会と説明を行った部分になります。このような教育委員会、校長会との連携により、どのような成果を得ることができるかについてですが、平成29年度からの連携活動では先ほど局長の説明があったように、おおよそ1校当たり年間180時間の軽減がこれらのことで達成できました。
 令和4年度の成果としては、卒業証書の共同調達により揮毫時間の削減や経費の削減は、卒業生100名なら5時間の軽減プラス1万4,400円の経費削減が図られます。また、このことに係る学校長のストレス軽減も大きな成果と言えます。学校徴収金の改善により、入力作業や通知、資料の作成時間、公費化にある学年費の集金回数や支払い回数の軽減により1校当たり18時間の軽減に、保護者の負担軽減は1校当たり2,000円の軽減が図られるよう、令和5年度は公費の増額が見込まれています。ただし、これは最低でもということで、本校における保護者の負担軽減は試算したところ3,800円になりました。
 また、データ活用DX課では、児童情報入力やGIGA端末、アカウント管理の軽減により、情報教育担当者の業務は1校当たり年間22時間の軽減が、就学援助等の電子申請により、学校事務職員は年間18時間の軽減が図られ、また、保護者の申請回数も軽減することができます。これにそれぞれ、関連する細かな業務を合わせると、トータルで1校当たり教員の業務時間を50時間、事務職員の業務時間を年間20時間、保護者の負担も子供1人当たり2,000円軽減できることになります。
 支援室の役割については、大きく分けて3つあると考えております。この3つの内容について教育関係機関との連携協働により実現化を図ってまいります。
 また、今後期待される役割として、塩尻市では令和5年度以降ICT教育、教育DXの推進に向けて事務分掌の見直しを行っております。これらについても先ほど申し上げたとおり、教育委員会、校長会と連携を深めながら、改善を図ることで教育環境の改善を推進してまいりたいと考えております。
 長くなって失礼いたしました。ありがとうございました。
【清原座長】  赤羽教育長、そして吉江室長より、塩尻市、そして塩筑南部教育事務支援室の取組について御説明をいただきました。私たちが本日事例としてお願いしたのは、学校運営支援のために教育委員会が果たすべき役割でございましたが、今、お話を伺っておりまして、塩尻市におかれては、山形村、朝日村と連携をされているということでございますので、私たちの重要なテーマの一つであります小規模自治体への対応、広域行政への推進のための方策にも関連する事例を御報告していただいたのではないかなと受け止めております。
 それでは20分足らずになってしまいましたが、皆様から質疑、そして御意見をいただきたいと思います。
 それでは、藤迫委員、お願いします。
【藤迫委員】  申し訳ないですけど、今日は急遽会議が入りましたので、早く退室させてもらいますので、私のほうから。
【清原座長】  どうぞ。
【藤迫委員】  非常にすばらしい、興味深い発表だったなと思っていまして、できましたら、改めてお邪魔してお話聞かせていただきたいなと思ったぐらいです。
 それで、1点だけお伺いしたいのは、どこかの紙の中で、学校徴収金グループ1でしたか、公費と私費の区分表の見直しを研究されたということがあったんですけども、先ほど私も春日市さんのときにも言いましたけど、箕面市でも学校事務センターを立ち上げたんですが、もう担当者は本当にあっちで頭を打って、こっちで頭を打って、なかなか整理し切れなくて、まさにその公費の扱いと私費の扱いのところは、今なお、明確に、クリアにならないまま進んでいるんですよね。
 その辺のお金の流れというのは、実際に、公費と私費と、どういう流れになってるかというところだけお伺いできたらありがたいなと思います。
【清原座長】  はい、ありがとうございます。支援室の⑨の資料で、令和4年度活動内容の2のところの学校徴収金1グループのところに、「学校徴収金公費私費区分表の見直し」とあるところについての御質問だと思います。
 その点についていかがでしょうか。
【塩筑南部教育事務支援室(吉江様)】  はい、よろしくお願いいたします。
 公費私費区分表ですが、公費については、全体使用をする物品ということで、例えば教室におけるセロテープですとか、袋ですとかビニール袋ですとか、そういったものを今まで、学年費、保護者から徴収したもので支払いをしていたんですが、研究グループ3のほうで内容の洗い出しを行い、1のほうで見直しを行い、全体使用している部分については公費で支払うべきという判断をしております。それを教育委員会のほうに提示させていただき、予算化につなげていただいております。
【清原座長】  ありがとうございます。よろしいですか。
【藤迫委員】  お金の流れはどうなってるんですか。徴収するわけですから、一部は公費として予算立てされたものを徴収する部分と、例えばPTA会費とか、私の物を徴収するんですよね。徴収したお金はどこに入って、どう支払われるかというところは、もし説明できましたらお願いしたいんですけど。
【清原座長】  お願いします。
【塩筑南部教育事務支援室(吉江様)】  お願いいたします。
 学年会計については、保護者から直接、学年費とするということで徴収させていただいております。その中で、各学年で予算を立てまして、それで支払いをしていますので、その学年費という部分と公費は、基本的には分かれているところになっております。支払いの中で、公費的な負担をするようなものを学年費で払ってしまっているという部分があるというところです。
 また、PTA会費については、本校に関して言いますと、保護者から徴収したその学年費の中から、PTA会費ということでPTAのほうにお金が流れているということはございます。
【清原座長】  よろしいでしょうか。
【藤迫委員】  ありがとうございました。
【清原座長】  それではこれから、岩本委員、村上委員、梶原委員、戸ヶ﨑委員の順で御発言をお願いします。
 岩本委員、どうぞ。
【岩本委員】  岩本です。どうもありがとうございました。
 2つほど観点があって、質問になります。1つ目が、この取組における県教育委員会の役割というところです。広域にまたがるところの動きなんですけど、これの動きの中で県の役割とか貢献というのは何かあったのか。もしくは、ないけども、本当はその県の教育委員会とかがどういう役割を担ったりすると、この取組がさらによりよくなるというのがあるのか、全く県なんか関係ないというものなのか、そこら辺をどう感じられているのかというところが1点目です。
 2点目が国のほうの話で、今回、共同学校事務室ではないということですが、何か制度面において法制化などがあったほうがいい部分があるのか、何か制度的な部分でやりにくい、もしくは、こういう部分が変わるともっとやりやすくなるというところはあるのかというところで、もしあればということで、2つ目です。
【清原座長】  2点でございます。県教委との関係、そして、共同事務所ではないけれども制度的なところで何か御意見があればですが、いかがでしょうか。
【塩筑南部教育事務支援室(吉江様)】  1点目の、県教育委員会の取組という点なんですが、先ほど説明しましたように、拠点校の塩尻西小学校、事務職員を複数配置していただいております。もう1名の配置というところで、県のほうで、また、国のほうで配置をしていただいているところで御協力いただいていますが、特に県のほうでというところは、現状ではあまりございませんが、こちらから、共同学校事務室体、長野県は今5つあるんですが、そこの取組の共有の場というのを設けさせていただき、県教委の皆様にはそこに御参加いただいて情報共有ということをしております。
【清原座長】  ありがとうございます。2点目、いかがでしょうか。何か御意見があれば。学校共同事務室ではないけれども、国の制度として、何かさらに御提案があればということですが。
【長野県塩尻市教育委員会(二木様)】  私、塩尻市教育委員会事務局の二木と申します。
【清原座長】  よろしくお願いいたします。
【長野県塩尻市教育委員会(二木様)】  お願いします。私、立ち上げの頃から携わっておりましたので、私のほうから説明させていただきます。
 当初、令和元年度から共同学校事務室を立ち上げるということで動いておりました。また、その際に県の学校間連携ということで、いろいろな他県の事例等も共有をいただいて、相談もさせていただいた経緯はございます。
 その中で、塩尻市としては、山形村、朝日村と共同実施するということを念頭で考えておりまして、その際、実は最初は法制化を目指してやっておりました。
 ただ、自治体が3つまたがると、そこの法制化についてハードルが高くて、お金はどうするのかだったり、複雑な部分があるということで、塩尻市の法律のほうの担当課にも確認したところ、やはり難しいんじゃないかというところから、であれば、3つの自治体で要領を全て合わせて、そこで、共同学校事務室のような組織を立ち上げてやっていくのが一番いいのかなというところから、こういう形をスタートしています。
 以上になります。
【清原座長】  ありがとうございます。岩本委員、いかがですか。
【岩本委員】  ありがとうございます。なので、今の制度で十分何も支障はないということなのかなというふうに伺いました。ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、村上委員、どうぞ。
【村上委員】  どうもありがとうございました。多岐にわたって聞きたいことがあり、情報が豊富な事例で、面白いなと思いました。
 お尋ねしたいことは割とシンプルなことだと思いますが、3点あります。
 1つは、小規模自治体の支援をするときにいろんなトピックにわたって、県が垂直的に縦で支援をするケースと、エリアの中の大きな市が音頭を取って、市町村の横の連携で小規模の自治体を支援するという2パターンが大きくあるかなと思います。今回のような共同事務のケースでは、市町村間の横の連携で主にされているわけですけれども、その点でどういうメリットがあるのか、つまり、県がやるのに比べて市町村の連携でやることに、このケースにおいてどういうメリットがあるのかなというのをお尋ねしたいというのが1点目です。
 2点目は、それに関連して、拠点校の2人目をどうやって工面したのかというのを私も聞きたかったんですけど、先ほど質問で出てきたので、やっぱりこれは結構大きいなという気がするんです。専従がいるというのはかなり大きい要素じゃないかなと思うんですけど、その辺りの実感を教えてほしいということが2点目です。
 3点目が、学校経営に関して何か学校事務職員の関わり方とか役割みたいなことに変化があったのかどうなのかということを、印象とか実感で構わないので教えていただきたいという3点です。
 市がやることのメリットと、市町村間の連携でやることのメリットと、拠点校に事務職員の2人目がいることのメリット、それから学校経営における変化という、その3点をお聞きできればと思います。
【清原座長】  それでは、3点についてよろしくお願いいたします。
【長野県塩尻市教育委員会(二木様)】  では、1点目ですけれども、直接市と村が関わることのメリットというところになります。当塩尻市と山形村、朝日村は、以前から事務の先生方の共同研究ということが盛んになっておりました。ですので、やはり県が音頭を取ってやるよりも、温度感が全く同じような自治体、隣同士の自治体で組むことによって、様々な課題の共有感であったり推進力というのが高まるのではないかと思いまして、ここら辺がメリットになるかと思います。
 以上です。
【塩筑南部教育事務支援室(吉江様)】  お1人、加配をいただいているところの部分ですけれども、今、副室長がそこにいるんですが、副室長には、全ての会議の運営ですとか、書類の作成ですとか、そういったことをお願いしていますし、また、今の研究グループ、全ての研究グループに参加していただいて、そこで情報共有を図るといったことをしていただいています。
 本当に専従でいてくださるからこそ、これだけの活動ができているかなというふうに感じておりますので、大変ありがたいなと思っております。
 もう1点、学校経営の参画に関してなんですが、例えば、コロナの対策に係る補助ですとか、国から頂く補助の関連ですとか、学校それぞれの課題について情報共有の場が増えております。そのところで、自分の学校ではどういうふうに参画していたかといったような話も、連携の中で出てきますので、それが先ほど言ったように学校に還元できる部分といったところで、それはそれぞれの事務職員の力量にもよってしまうんですけれども、それぞれが還元できている部分につながっているのではないかなというふうに感じております。
 以上です。
【清原座長】  村上委員、いかがでしょうか。
【村上委員】  ありがとうございました。とても興味深く拝聴しました。ありがとうございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 あともう10分足らずになりましたが、挙手していただいております梶原委員、戸ヶ﨑委員、御発言をお願いします。
 まず梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】  この発表を聞きまして、学校で唯一の行政職の専門的な能力の活用を皆さんに知っていただいているんじゃないかなと感じました。また、学校全体、または学校間、町村間で調整して、事務職員と学校事務で役割分担が明確になってきたなと感じました。
 また、事務処理システムで開発や各様式の処理方法が統一されたということは効果的なものじゃなかろうかと。それによって事務処理の標準化といいますか、これができているんだなと感じたところでございます。
 また、共同でやることによって人材育成、能力開発ができているかなと思います。あと、学校運営組織の改革も少しずつ入れてきているんだなと感じました。
 その中で1つ、教頭先生との関係性はどうでしょうか。1点、それだけです。
【清原座長】  事務の皆様と教頭先生との関係だそうですが、いかがでしょうか。吉江さん、お願いします。
【塩筑南部教育事務支援室(吉江様)】  御質問ありがとうございます。
 校長会との連携等はあるんですが、教頭会との連携というのは実はないんですけれども、実感として、やはり各学校の教頭先生は物すごくお忙しい。そこの業務をいかに私たちが担っていけるかというところも裏の仕事かなというふうに感じております。
 その部分でも、調査とかアンケートとか、そういったものが非常に多くありますので、各学校ではそういったことを事務職員が、文書回覧するときに回答して、もう回しちゃいましょうみたいなことができていればいいなということで、個人的には、教頭先生とは非常にいい関係をつくっているのではというふうに感じております。
 以上です。
【梶原委員】  ありがとうございます。
【清原座長】  ありがとうございます。大変重要な御質問を今いただいて、現場感覚の御質問だなと思いました。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  時間がないので、質問はやめて、感想や意見を何点か申し上げたいと思います。
 まずは、平成29年度の学校教育法の改正によって、事務職員の職務規程が「従事する」から、「つかさどる」に変更されたことが、今の発表で大変しっかり実践されていること、さらには自治体間連携によってチーム力が高まって、自走する組織づくりがされていると感じました。
 本市においても事務の共同実施を始めて、かれこれ10年になりますが、若手職員や経験の少ない職員の支援はもちろん、今回のGIGAスクールの経費等の新しい課題も組織で検討するなど、今となってはこの組織はなくてはならないものになってきており、さらなる充実が必要だと感じています。
 次に、学校裁量の拡大や、教職員の事務、業務改善など、これまでの学校のサポートは、教育委員会の大きな役割と考えられてきました。そのような改善策を検討・実施する方法として、課題を教育委員会だけが抱えていくのではなく、現場をよく知る者や専門家等とで協働を進めていくという視点も重要だと思っています。
 本市では、教育課程に関わることだけではなく、業務改善、いわゆる働き方改革に関することも、企業等の力を借りながら、長期間学校の中に入ってもらい、業務の3K、つまり可視化・共有化・効率化の取組を進めてきました。今回の塩尻市の御発表で、教職員の負担軽減について、学校現場をよく知る学校事務職員自身が検討して、その改善策を提案・実施できるこの仕組みは、学校事務職員に期待される役割を十二分に発揮し、より実効性の高い施策を打ち出すことができる点において、他の自治体も大いに参考になると考えます。
 また、近隣の自治体をも巻き込んで取組を行っている点で、まさに先ほど清原座長も言われていましたが、自治体間連携の1つのモデルにもなり得るのではないかと思っています。こちらは事務職員だけの話ではなく、教育委員会事務局においても同様であると考えております。
 また、自律的・機動的な学校運営を実現する、自走する学校支援のために、学校に裁量を与えるべき事項と、学校の負担軽減のために主体的に教育委員会自身が担っていくべき事項について、これまでの事例を参考にしつつ、この会議でも今後検討を深めていく必要があると感じました。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 赤羽教育長、吉江室長におかれましては、また、当初関わられていたお立場からお答えいただいた教育委員会の二木さんにも感謝をいたします。
 実は冒頭、議事の1で、次期教育振興基本計画素案について、川村教育企画調整官から御説明をいただきましたが、その本文の、「今後の教育政策に関する基本的な方針」の、「日本社会に根差した上でウェルビーイングの向上・日本初の概念整理」の中にこういう文章があるんです。「子供たちのウェルビーイングを高めるためには、教師のウェルビーイングを確保することが必要であり、学校が教師のウェルビーイングを高める場となることが重要である。子供の成長実感や保護者や地域との信頼関係があり、職場の心理的安全性が保たれ、労働環境などが良い状態であることなどが求められる。加えて、職員や支援人材など学校のすべての構成員のウェルビーイングの確保も重要である。」と、しっかりと、職員や支援人材の皆様のウェルビーイングも重要であるということが書かれました。
 これ、当たり前のようで、どうしても子供、児童・生徒、学習者の、ウェルビーイング、それを中心にというところから、いや、それだけじゃなくて教師のウェルビーイングも大事、いや、それだけではなくて職員や支援人材のウェルビーイングも大事というところに、今回、教育振興基本計画部会の中での委員の気づき、そして、関係団体からのヒアリングをさせていただいたときの声が反映されました。
 ぜひこのことは、今日、春日市、そして塩尻市の皆様の御発表に表れているのではないかというふうにも実感いたしました。ありがとうございます。
 それでは、特段ございませんでしたら、本日の議論、ちょうど時間となりましたので、これで閉会とさせていただきます。
 事務局から連絡事項がございましたらお願いします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  次回の本検討会につきましては、調整の上、委員の皆様に御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【清原座長】  それでは、以上をもちまして、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第11回)につきましては、春日市の皆様、そして塩尻市の皆様に大変貴重な事例を御報告いただきましたことによって、審議が深まりましたことに感謝して、終了とさせていただきます。
 積極的な御参画をいただいた皆様、本当にありがとうございました。どうぞ、寒暖の差が激しいこの頃ですので、くれぐれもお体を大切にしてください。
 本日はありがとうございます。
 
── 了 ──

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