「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第5回)議事録

1.日時

令和4年7月12日(火曜日)13時00分から15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 教育事務所に関する取組等について(ヒアリング等)
  2. 小規模自治体への対応・広域行政の推進のための方策について
  3. その他

4.議事録

【清原座長】  それでは、皆様、定刻となりましたので、会議を開会させていただきます。
 本日は誠にお忙しい中、また全国的な酷暑の中、会議に御参加いただきまして、どうもありがとうございます。
 ただいまから、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第5回)を開催いたします。
 本日は報道関係者と一般の方向けに、この会議の模様をオンラインにて配信しておりますので、どうぞ御承知おきください。
 それでは、開会いたします。議事に入ります前に、前回の開催以来、事務局に人事異動があったとのことですので、事務局より御報告をお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  御報告申し上げます。7月1日付で、初等中等教育局初等中等教育企画課長として堀野晶三が着任しております。
【清原座長】  堀野課長、御挨拶をお願いします。
【堀野初等中等教育企画課長】  堀野でございます。7月1日付で就任いたしました。地方教育行政初等中等教育企画課で地方教育行政を担当するのは3回目でありまして、その間、鹿児島県の教育委員会に2年、広島県の教育委員会に4年経験をいたしまして、この5、6年は大学関係の仕事をしていたんですけれども、久しぶりに戻ってきましたので、皆さん、ぜひよろしくお願いいたします。
【清原座長】  ありがとうございます。堀野課長におかれましては、自治体の教育行政の御経験も豊富ということで、大変心強く思います。改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  お手元の議事次第を御覧いただければと思います。本日、配付資料1から3といたしまして、各県からの発表資料を御用意しております。また、参考資料1から5もおつけしております。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。それでは、早速議事に入ります。
 本日の議事は、1、「教育事務所に関する取組等について」ヒアリングをいたします。2、「小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策について」、3、「その他」の3つでございます。
 それでは、議事1の「教育事務所に関する取組等について」、ヒアリングに入らせていただきます。本日は、教育事務所に関する再編等について取り組まれてこられた和歌山県教育庁、佐賀県教育庁、山口県教育庁に、各自治体の取組について御発表をいただきます。進行の都合上、先に3つの県からそれぞれ御発表いただきまして、その後にまとめて質疑応答の時間を確保したいと考えております。
 それでは、まずは和歌山県教育庁の清水教育企画監より御発表をお願いいたします。それでは、15分程度でよろしくお願いいたします。
【和歌山県教育庁(清水様)】  失礼します。和歌山県教育庁の清水と申します。どうかよろしくお願いいたします。
 お手元の資料を御覧いただき、各市町と本庁の教育行政の中間的な役割としての地方の教育事務所が、どういうふうに和歌山県ではつくられて変遷を遂げたかという話をさせていただきます。
 まず、アウトラインとしましては、大きく4つの時期で考えます。1つは教育事務所、かつての教育事務所が圧倒的な存在感を発揮した時期。そして、教育事務所の廃止と本庁への機能集約が進んだ時期。3つ目が、教育支援事務所が設置されて、本庁での機構改革も行われた時期。そして、現在進行中でありますけれども、人事と指導を一体的に運用する教育事務所への再編期でございます。
 まず、旧の、かつての教育事務所の廃止ですけれども、平成16年度までは、県都の和歌山市を除いて、郡市を基本に7か所に教育事務所が設置されています。その当時の県内の市町村数は50市町村ありました。当時の教育事務所は非常に存在感が大きくて、後ほど書いていますが、一国一城的な、そういうふうな意味合いを持っていました。一方、本庁の義務教育関係の体制・人員というのは極めて限定的であって、各地域が教育事務所を中心に市町村と協働しながら教育行政を行っていた時代であります。
 その後、教育事務所に関する大きな流れを、先ほどのものとダブりますが、平成12年4月から市町村への権限移譲と本庁への機能集約を始めます。約5年間かけてその流れをつくり、17年の3月に教育事務所を廃止となります。この間、特に機能集約においては、教育事務所から本庁への人事主事の異動を行っていますので、本庁で人事を担うようになっていきます。そこに、その後の人事主事の個業化を招くというふうに書かせていただいているのは、教育事務所の中に人事主事がおった時代は、教育事務所長の指揮監督の下、各市町村教育庁とかなり綿密なやり取りをしながら人事異動等を行ってきたのですが、本庁に集約されてからは、それぞれの地域を担当する人事主事がそれぞれの地域を担うということで、なかなか組織的な人事異動ができなかった。人事主事の個業化を招いたというわけであります。
 17年3月に教育事務所が廃止されまして、そのときに本庁からの支援体制としまして、小・中学校の再編整備であるとか、事務所廃止後の教育行政を支援するために、教育指導室とか市町村支援室、この教育指導室というのは県の南側、田辺市に設置されていきます。そして、平成22年の4月に教育支援事務所が設置されると。で、令和2年に、さらにこの教育支援事務所を集約する形で、2か所の教育事務所に再編していきます。
 これが詳細に書いた経緯ですけれども、平成12年から機能の本庁への移転を始めまして、ちょうど15年の4月に教育庁の組織改編も行われます。それまでは、人事を扱う教職員課と、県立と義務の教育を担う学校教育課だったのが、県立学校課、小・中学校課に分かれて、ここに人事が入ってきます。だから、このそれぞれの県立学校課、小・中学校課が指導と人事を一体的に担うという体制をつくり上げた。それと、1年遅れて教育事務所の廃止ということになります。ここが一つの大きな動きであったと思います。
 その後、後で述べますように、19年以降になりますと、教育事務所の廃止によって様々な意見が出てきます。それに対応して、指導室とか、22年4月に支援事務所をつくろうということになった。その前後、21年4月に教育庁の組織改編が行われまして、それまで県立学校課、小・中学校課で指導と人事に担っていたのを、もう一度再編しまして、特に指導に関しては学校指導課という、県立と小中を集約する形の指導課ができ、教職員人事に関しては学校人事課という、平成15年以前の形に逆戻りするような形になります。22年4月からは支援事務所が設置されまして、先ほど言いましたように、それは令和2年の3月まで続いたということです。
 この廃止に至った経緯ですが、大きくは3つあります。1つは、当時の流れである地方分権とか市町村合併への期待や規制緩和が進むんじゃないかということが1つ。もう一つは、県教育委員会の機能とかガバナンスの強化。そして3つ目が、これは時代の必要性なのでしょうけれども、組織のスリム化ということです。ガバナンスの強化に関しては、各教育事務所の独自性の弊害といいますか、教育事務所の地域によって、機能であるとか性格が違ったところがある。それがどういう人が教育事務所に座るかということにも関係していたということで、そこら辺を一元的に同じような形でやりたいというのがあったと思います。
 その市町村合併ですが、和歌山の市町村合併は結構遅くに始まります。平成16年までは市町村合併が進んでいなかった。そのときには50市町村あったのが、2年間で、18年の4月1日で30市町村まで進むことになります。ただ、このタイミングは教育事務所の廃止とほぼ同じタイミングで行われている。ただし、地域によっては小さな市町村が結構残ってしまった。その中で、市町村教育委員会の機能はかなり限定的な市町村もあったということであります。
 教育事務所は17年3月で廃止になるのですが、その後のリアクションといいますか、ちょうど平成19年に県議会の文教委員会というのが県内調査を行っている。これまで慣例はなかったと聞いています。その中で、教育事務所の廃止から2年ほどたっているのですけれども、市町村の規模とか課題等に差がある中で、県の出先機関の撤収というのは地域格差の固定につながりかねないという懸念、そういう心配が寄せられた地域があったようです。ちょうどこの19年というのが、教育事務所の廃止等をリードしてきた教育長が代わった年でありまして、大きな流れを変えるタイミングであったのかと思います。
 こういう地域の声、懸念を受けて、20年4月には、まず地方教育指導室という、実質的にはほとんど機能しないんですが、箱をつくって、そこに必要に応じて指導主事が巡回するような形から復元が始まっていきます。そして、21年4月に本庁の機構改革があって、その次に、22年4月に県内の4か所に教育支援事務所が設置されます。特に課題が大きかったのは、県南部の西牟婁とか東牟婁と呼ばれる地域でありまして、こういったところにまず2つの教育支援事務所、そして紀北地域、それから紀中地域というふうになります。この中で和歌山市は管轄からは除かれています。28年4月、さらに紀中を2つに割りまして、計5か所の支援事務所となります。
 支援事務所の課題は、当初は市町村に寄り添った丁寧な援助とか指導というのを期待していたわけですが、当時の学校教育局長の談によれば、予算とか人事権がなかったとしても、教育についての専門性の優秀さで指導できれば、本来の機能は果たせるはずだという、言えばそのとおりなんですけど、それだけかなり無理があったというか、権限のない中でやらされたところがあったと思います。
 その中で、自立できた市町村は、自前の指導主事をたくさん置いて、教育支援事務所のほうをあまり相手にしなくなる。逆に、脆弱な市町村というのは、教育支援事務所に依存するという、そういう両極化が起こってくる。全体として、教育支援事務所の求心力が低下して、本庁からのメッセンジャーみたいな役割になっていきます。
 さらに課題としましては、人材確保が非常に困難になってきたことで、市町村教育委員会も、自前で優れた指導主事を置いておきたいというのがある。県教委も本庁のほうに人材が欲しい。そうすると、支援事務所のほうにはなかなか人材が行かない。各市町村のほうも、支援事務所にいてもそんなに仕事がないのだったら、うちの人材をそう出すわけにいかないというようなことで、かなり難儀をしているところがありました。
 それから、実際の市町村教育委員会のほうも、指導主事を若くから育てるという意識がなかなか難しくて、退職校長を再任用の形で充てるというようなことで、人材育成とかにも課題が出てきます。支援事務所のほうも、中身は社会教育と学校指導があるのですが、学校指導のほうは指導主事2名でありますので、市町村の指導に対応できるような専門性は困難であるとか、あるいは市町村との関係というのが、非常に距離的には近いんですけれども、権限がないのであまり相手にされないということで、緩衝材の役割も十分に果たせないという状況になっていたようです。
 そういうことを受けて、令和元年度からもう一度、再編への機運というのが高まったのであります。1つは、県内に高速道路網がかなり整備されまして、時間・距離が短縮されてきたということがある。それから、先ほどの課題とも一緒なんですが、専門的な内容が求められるので、学校訪問を中心にした支援事務所の機能だけでは、十分その期待に応えられないことになります。
 そういうふうな問題がありまして、令和2年4月から、いわゆる新しい形の教育事務所の再編に行きます。特に、まず紀南地方の強化からスタートしていくということで、紀南教育事務所を体制26名で立ち上げたということになります。その中でも、特に東牟婁のほうは遠距離ですので、駐在員を置くような形にしていました。そして、紀北教育事務所は、令和2年、令和3年度、本庁との兼務という形にしていたんですけれども、令和4年から独立します。この指導と人事の一体性から、県教委の考えていることをもっと強力に市町村と一緒にやっていくとか、市町村との連携を強化したというのが目的であります。
 再編の利点ですが、これまで人事異動においては、教育事務所のときには、各教育事務所単位の人事異動を強力に行った。ところが、人事権が本庁に移行してから、先ほど個業化という話をしたのですが、なかなか市町村の枠を超える人事も難しくなっていったという傾向があります。そこでもう一度、教育事務所単位にして、人事主事の個業化を廃止して広域的な人事を行えるようにする。少なくとも市町村を超えたような人事異動をするようにしていこうということであります。
 そのようなことでありまして、存在感も高まっていきますし、できることとか、収集できる情報量が増えて、市町村とのやり取りも円滑になっていったと。あとは、市町村の教育長等の声をいろいろ聞いてみますと、おおむね教育事務所になったことを評価していただいている。特に、2つ目ですが、昔の教育事務所の課題はあったんですけれども、独自性とか安定感でのよい面もある。15年からの機構改革とか、教育事務所の廃止というのは、目指そうとしていることは理解できたというのがあります。今回の再編では、小規模化が進んでいる市町村にとっては、期待感を抱いているという、そういう御意見をいただいています。
 最後に、今後の展望・課題ですが、市町村の枠を超えた取組の推進というのが大事なので、これは人事異動もそうですし、指導もそうである。特に、同じ課題を抱えた市町村というのは近隣にあるわけではなくて、かなり離れた地域にありますので、そういったところをつないでいくというのが大事になってくるだろう。紀北に関しては、本庁内に今置かれていますので完全なワンストップにはなっていないことが課題かなと。紀南に関しては、今後さらに小規模化が紀南地域は進んでいますので、教育行政事務について、市町村の教育委員会の共同実施等の研究というか、それについてもっと積極的に助言していくことが求められるだろうと思います。
 以上で、和歌山県の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【清原座長】  清水様、大変に経過が分かる詳しい御説明、ありがとうございます。「教育事務所を廃止した後に市町村合併などの状況の中、紆余曲折を経て、再度、教育事務所を復活した事例」として受け止めさせていただきました。
 それでは、続きまして、佐賀県教育庁の長尾参事、そして西部教育事務所の藤田教育指導監より御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【佐賀県教育庁(長尾様)】  皆さん、こんにちは。佐賀県の長尾でございます。本日は教育事務所に実際に勤務しております藤田教育指導監にも同席をしていただく予定でございましたけれども、緊急の対応が入りましたために、私、長尾だけで対応させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【清原座長】  よろしくお願いします。
【佐賀県教育庁(長尾様)】  佐賀県からは、教育事務所を再編という形で残した事例について説明させていただきます。
 まずは、教育事務所再編の背景でございますけれども、先ほどの和歌山県さんの御発表にもありましたように、平成12年の法の施行によりまして町村の合併が進んでいきます。当時、佐賀県には7市37町5村が存在していたわけでございますが、これが7年間をかけまして、10市10町に整理されることになります。
 それから、もう一つの背景といたしましては、平成16年に、これは当時の知事の意向でございましたけれども、全庁的に現地機関の役割を重視していこうという方向に進んでまいりました。当時、教育事務所のイメージといたしましては、市町村の教育委員会、それから学校から見たイメージは非常に堅いイメージがありました。とても敷居が高いとか、あるいは支援の要請をしたいけれども手続が分からないとか、あるいは指導主事に授業を見せるときには、完全に出来上がった授業を見せなければいけないなどのプレッシャーがあったという声も聞いたところでございます。そこで、この再編に当たりましては、市町のニーズに応じた学校支援の強化というものを主な目的とした再編へと進んでいったわけでございます。
 再編に至る経緯でございますけれども、先ほど申しましたような、知事の方針に従いました現地機関の役割の重視、そういった方向性の中で、県の教育委員会も事務所の役割を見直すことの検討を始めたところでございます。平成19年には、教育事務所の再編についての協議を開始いたしました。当時は、財政難により財政部局としては定数を削減したい。一方、県教育委員会としては、学校支援の強化をしたいという点で財政部局と県教育委員会の間で調整を進めていったわけでございます。
 平成20年になりまして、教育事務所の総職員数を維持したままで教育事務所の配置を改めるということで財政部局と合意をいたしました。このことによりまして、学校支援機能の強化充実という方向へ進んでいくわけでございます。つまり、全教科・領域の指導主事がそろうような規模感で再編を進めるということでございます。
 平成21年には、教育事務所再編の方向性について、市町教育委員会の了承を得たというところでございましたけれども、直後の衆院選における政権交代によって再編は先延ばしとなりました。実際に再編が行われましたのは平成24年10月、当時、5事務所あった事務所が2事務所1支所という形になったわけでございます。
 これが再編前の管轄区域の地図でございます。佐賀県は小さな県でございますけれども、当時はこのように、5事務所がそれぞれの地域を管轄していたということになります。地図で言いますと青い部分になりますけれども、これが南北に広い範囲に渡っておりました。特に北側にあります東松浦教育事務所管轄地域につきましては、離島と山間部を有しております。
 教育事務所の再編について、当時市町はどのような反応をしていたのかというところでございますけれども、当時は、市町教育委員会と5事務所との距離がそう遠くはなかったんですけれども、事務所再編によって2事務所1支所になるということで、教育事務所との関係が疎遠になるのではないかという心配が一つ挙げられておりました。また、人事異動においては、各市町の思いが反映されないような人事異動になってしまうのではないかという御心配もあったようでございます。
 それを踏まえまして、その下に書いておりますような配慮を行いながら再編を進めていったところでございます。まず、1点目につきましては、地域の事情、先ほど言いましたように東西の幅の広がりと南北、それから山間部と離島というような関係もありますので、地域事情や地理的なことを踏まえた再編ができるように、当時の5事務所を統合するという形で行おうというのが、まず1点。
 それから、東西2つの教育事務所に再編を進めていくわけですけれども、先ほど紹介しました離島や山間部を有しております旧東松浦教育事務所につきましては、北部支所という形で残す。ただし、西部教育事務所の方針の下で動いていく位置づけとしようということが2点目でございます。
 それから、後ほど紹介いたしますけれども、北部支所については人員が大きく削減されることになります。しかし、削減後についても同様の市町支援を行う、もしくは拡充をしていくために西部教育事務所との連携を図りながら進めていくということになりました。
 それから、4点目でございます。冒頭お話をいたしましたけれども、指導主事の専門教科・領域についても調整を行って、多くの教科・領域について専門性を有した指導主事を配置すること。それによって学校支援を強化していこうという体制を取っていくことになります。また、人事異動については、教育事務所ごとに人事異動協議会というものを開催して調整を図ることといたしました。当時は、市町教育委員会と教育事務所が個別に人事異動の対応をしていたというような事務所の方針もあったようでございますけれども、人事異動の広域化というところも踏まえて、この人事異動協議会を開催して調整を図るという方針について、市町には丁寧な説明を行っていったところでございます。
 再編によって、このような形となっております。東部のほうは2つ前のシートで御紹介いたしました三神教育事務所と佐城教育事務所が合わさった形で東部教育事務所、それから青い部分のところでございますけれども、杵西教育事務所、藤津教育事務所、それから東松浦教育事務所が一つとなって西部教育事務所。その中に、東松浦教育事務所については、北部支所という形で残すというような形に、再編後はこのような管轄区域となっているところでございます。
 実際の人員の配置についてでございますけれども、左側が旧5事務所の配置人数でございます。冒頭、財政部局との調整のところで、事務所の職員数は維持するということでお話をしましたけれども、総数としては45名で変わらないところでございます。実態といたしましては、東部教育事務所は1名増、それから西部教育事務所については3名増という形になっておりますが、北部支所については4名が減っているというような人員配置になっているところでございます。ただし、北部支所につきましては、3名増の西部教育事務所からの応援を仰ぎながら、従来の支援を継続・拡充していくという方向で進めていっているところでございます。
 再編後の取組についてでございますけれども、冒頭、教育事務所は非常に敷居が高いというお話をいたしました。より学校、市町との距離を縮めるために、そういった声を踏まえて以下のような改善を行っていっております。1つ目は、支援依頼を簡素化したということでございます。電話1本、それからメールによって支援依頼を行うことができるように改善をしております。また、市町教育委員会のニーズに応じた支援の内容提供ということで、※印のところに書いておりますけれども、例えば授業づくりで言いますと、これまでは研究授業だけに指導主事が行って助言をするという形を取っていた教育事務所でございますが、授業をつくっていくところ、計画を立てるところから指導主事が関わって、教員の指導力を高めていくという支援、それから最近、新採が非常に増えてきておりますけれども、新採の困り感に対応するため若手教員の支援、また一つの事案について長期的に継続的に支援をしていくような、そういった支援も行われております。
 最後に緊急支援と書いておりますところは、昨今のコロナ禍によって、例えば教員がコロナに感染してしまった、学校で授業する者がいないというときに、指導主事を派遣してその代わりをする。そういった緊急支援なども行っているところでございます。
 3点目の、積極的な情報収集による学校支援でございますけれども、これは市町からの要請にかかわらず、教育事務所の指導主事が定期的に巡回訪問をしたり、それから校長と面談を通しながら学校から直接的に情報を収集して、把握した情報を基に必要な支援を行っていったりという積極的な支援でございます。
 4点目が、市町教育委員会や校長会への支援強化ということでございますけれども、各管内では合同の教育長会が開催されております。そこでの指導主事、あるいは所長、教育指導監が指導・助言を行っているところでございます。また、市町教育委員会独自で学校訪問が行われておりますけれども、そこに指導主事を随行させて情報を収集するというようなもの、それから各市町や地区主催の研修会にも積極的に指導主事を派遣しております。
 また、市町によっては大変小さな市町もありまして、指導主事が1人しかいないというところもあります。そこについては、市町教育委員会と、それから教育事務所の指導主事の人事交流なども行っておりまして、前年度は事務所の指導主事をしていた者が、次の年には市町の指導主事になっているというような交流でございます。
 最後に、効果と今後の課題でございますけれども、このような取組によりまして、多くの教科・領域をカバーできる指導主事が配置されたということで、市町教育委員会、それから学校のニーズに対応できるようになっているということが、まず1つ目でございます。それから、支援の要請について簡略化したというふうに申し上げましたけれども、実際に市町教育委員会や学校からの支援要請がかなり増えているところでございます。再編前よりも、コロナになって少し落ちてきているところもありますが、倍増しているというような状況です。
 そして、一つの教育事務所が管轄する地域が広がったことにより人事交流も多く進められたということと、それから指導の文化が、それぞれの教育事務所単位で若干異なっていたというところがありましたけれども、再編されたことによって、この文化の地域差が少なくなったということが効果として挙げられております。
 一方で、今後の課題でございますけれども、様々な教育課題に直面している学校が今多くありまして、その支援の内容の充実をもっと図っていかなければならないのではないかということ。
 それから、2点目の市町教委間の連携強化と書いておりますけれども、これは教育事務所が間に立ちまして、各市町同士での、例えば人事情報の交流だとか、あるいは指導方法の交流だとか、そういったことを行いながら、市町間での連携を強化をしていかなければいけないのではないかということ。
 それから、当時、5事務所あったものが2事務所1支所になっていったということで、管轄する地域が広くなったことに伴って、職員の情報量も非常に多くなってまいりました。指導主事も年々替わっていくものですから、情報の継続的な蓄積、それから確実な引継ぎをやっていかなければいけないということでございます。
 最後の点でございますけれども、人事異動における広域人事の促進のために、2事務所1支所間で、教職員の情報についてより綿密な情報交換が必要になってくるということでございます。
 以上で、佐賀県からの発表を終わります。ありがとうございました。
【清原座長】  長尾様、大変経過を分かりやすく御説明いただきまして、ありがとうございます。やはり「市町村合併の状況を踏まえて、各市町や学校の状況を踏まえた学校支援の強化のために教育事務所の再編を実施された事例」というふうに受け止めさせていただきました。
 それでは、3つ目の事例としまして、山口県教育庁の中村審議監より御発表をお願いいたします。資料3に基づきましての御説明となります。中村様、よろしくお願いいたします。
【山口県教育庁(中村様)】  皆さん、こんにちは。
【清原座長】  こんにちは。
【山口県教育庁(中村様)】  山口県教育庁審議監の中村でございます。よろしくお願いいたします。
 山口県は、平成17年度末に教育事務所を廃止しました。本日は、廃止までの経緯と現在の市町への支援体制、効果や課題等について御説明いたします。
 まず、廃止に係る検討の背景です。1点目は、市町村合併の進展です。急速な合併により、県・市町の役割分担を見直す必要が生じました。2点目は、県の行政改革への対応です。厳しい財政状況で組織のスリム化・効率化が求められ、定員管理目標等に対応する必要性が生じました。そして3点目が、学力問題への対応です。児童・生徒の学習や学力の状況に鑑み、指導力強化に向け、待ったなしの取組の重要性が認識されたという背景がありました。
 今、画面には廃止直前までの合併状況をお示ししています。合併前までは、県内7事務所で56市町村を所管しておりましたが、合併後は、御覧のとおり22市町となりまして、市町の体制強化が図られることとなりました。ちなみに、令和4年現在は、県内19市町という構成になっております。
 次に、廃止までの経緯です。平成15年度に庁内で在り方検討会を立ち上げ、対外的な調整は平成17年度に開始しています。意見交換会議で市町村の代表からの意見を聞くとともに、教育長会議等で説明を行い理解を得るように努め、そして17年11月に廃止方針を公表、年度末には教育事務所を廃止しましたが、2年間の移行期を分室の設置という形で対応しております。なお、分室は19年度末に廃止しました。
 廃止前後での県・市町の役割分担の変化をお示ししました。事務所ではもともと、県費負担教職員の広域異動等も含めた人事異動や、給与、旅費といった総務事務、そして教育課程や学習指導等の学校教育事務、社会教育事務等を所管していました。本庁は事務所を通じて市町への指導・助言等を行うという3層構造になっていたところです。廃止後は事務所業務のうち、人事・給与事務の一部、そして教科書事務を市町に移譲しましたが、大半の業務は本庁に集約化しておりまして、市町を直接支援できるような広域支援体制を整備しております。
 事務所廃止に対する市町村からの主な3つの意見とその対応について御説明をいたします。これは平成17年当時のものでございますが、1点目は、廃止後の市町教委の体制に関する懸念、こうした声が上がりましたが、派遣指導主事の増員、また充て指導主事の配置等により対応いたしました。
 2つ目の白丸ですけれども、県教委職員が常駐しないということへの不安感というものが各市町から声が上がりましたが、これには2年間の分室の設置や県本庁の地域支援チームによる連携強化で対応を現在もしておるところであります。
 3点目、広域的な業務への対応につきましては、本庁職員が訪問指導や管理職面談等をきめ細かに行うということで対応しました。詳細は後ほど御説明します。
 次に、教育事務所廃止後の支援体制です。義務教育課を設置し、課の担当者が県庁を拠点として、県内各域までおおむね90分程度で移動できるという地理的要因を生かしまして、各市町と直接情報の共有が図られる体制を整備しました。まさに、移動式教育事務所というものを立ち上げたという格好になっておりまして、市町の指導主事が1人当たり5校程度を担当すれば、県内全ての小・中学校が網羅できるというような指導主事の配置も行いました。これを学校担当指導主事制度と名づけまして、目的と方法、内容等についての周知をこの学校担当指導主事に徹底していきました。このことにより、国や県の諸施策について、スピード感を持って県下一斉に展開できるという体制が整ってきました。
 また、各市町教委へは協働型の支援も現在行っております。具体的には、図の左側にお示ししておるとおり、学校教育課長対象の研修会を、対面あるいはオンラインで月1回程度開催します。そして、図の右側、13市の小・中学校の中から指導的役割を担う学校をその市の中心校に指定した中心校制度というものを設けております。中心校の校長会についても月1回程度開催しております。いずれも、県からの一方向の説明に終始するのではなく、市町相互の課題や情報を共有したり、あるいは今後の取組について協議したりできる時間も確保するように心がけています。子供たちが、県内どこの市町に住んでも、またどこの学校に通っても、同じように質の高い教育が受けられるような体制づくりをしようということが私たちが心がけていることでございます。
 また、県と市町が日常的な関わりを持つことで、各学校への効果的な指導や支援が可能となりました。まず、1点目として、全ての公立小・中学校がコミュニティ・スクールとしての学校経営を行う体制づくりができました。県内全ての管理職に対して、コミュニティ・スクールの経営者という視点で面談を行うようにしています。
 2点目として、県と市町が同じ視点で学校訪問を行い、同じ視点で評価を行うことが可能となりました。
 3点目として、人材育成、それから人事の広域化を県と市町が協働で行うことができるようになったということが挙げられます。
 では、具体的な動きについて御紹介をさせていただきます。教育委員会にとって、学力向上や授業改善など指導業務が大変重要です。冒頭に、学力問題について改善の一つの要素になっているとお示ししたとおりですが、そこで県教委では毎月1回、義務教育課会議を開き、情報共有を図るとともに、地域支援・人事班の主幹をリーダーとする7つの地域チームでの会議を適宜行うなどしながら、業務の枠を超えた体制を整えています。また、県と各市町との合同研修会というものを年に4回開催しまして、今申し上げた県教委の地域チームと、そして市町教委がベクトルを合わせて、学校の実情に応じた支援を行えるようにしています。もちろん、県は任命権者でありますが、市町が服務監督権者として、そこの連携は外さないように心がけているところでございます。
 また、施策や重点取組事項の周知が、伝え手から受け手への伝言ゲームのようになってしまうと、取組内容が独り歩きをして誤解が生じてしまうということが実際にございました。そこで、なぜその取組が必要なのかという目的を丁寧に伝えたいというふうに私たちは考えました。事務所廃止後は、資料を作成した義務教育課から、内容だけではなく、その目的についても熱量を持って学校に届けやすくなりました。県と市町が目的を共有し、学校訪問は基本的に2回を1セットと捉えております。1回目の訪問では、周知と情報収集を行うこと。そして2回目の訪問では、その周知や情報収集の結果、学校がどのような施策を実施していたかといった状況の確認などを行えるように計画しているところであります。
 例えば、GIGAスクール構想の実現に向けたICT施策の展開についてですが、県教委は資料を作成し、市町教委と連携して学校に直接周知をします。そして、周知するだけでなく、学校の困り感など現場の状況や課題を把握し、持ち帰ります。そこから施策を展開するために必要となる具体的な支援を地域支援チーム内で協議し、取組を焦点化していきます。現場重視の考え方をこのように徹底することにより、周知して終わりではなく、学校訪問で実際に目で見て肌で感じて得た情報を義務教育課全体で即座に共有し、2回目の学校訪問に市町教委とともに反映させていくという構図です。
 また、他地域のICT活用状況との比較を随時行いながら、他地域の好事例を市町教委に対して紹介し、それを学校にお届けすることにより格差を是正していくなど、状況に応じた手だてを打っていきます。
 県教委と市町教委が連携し、情報を血液のように循環させるよう気を配っています。スピード重視、現場重視、成果重視の三重視運動により、縦割り行政を乗り越え、連携力を向上させるのが山口県の目標です。ICT環境の整備や運用については、山口県の県立学校とも情報共有しながら、スピード感のある施策の横展開に努めているところです。
 学校訪問の回数、スピード感が教育事務所廃止前と大きく異なります。ある市は年間700回学校を訪問したという事案もありました。また、市町教委との権限配分については、毎年夏に開催する教育課程研究協議会が特徴的です。以前は、各教育事務所ごとに開催しており、全国主事会での情報や県の施策を県教委指導主事が教員に伝えておりました。しかし、それでは学校現場の実態を最もよく知っている市町教委が研修の実施主体となりにくく、受け身になってしまうという状況もございました。事務所廃止後は、市町教委が主催するという方式にしました。そこで、全国主事会の最新の情報や県の施策を反映するために、事前に県市町指導主事研修会を開催しています。市町教委が主体性を持って取り組み、各市町や学校現場の実態をより配慮した運営ができるようになってきたと考えております。
 また、近隣市町教委と連携して開催するところもあり、市町教委間の横のつながりもおのずと生まれてまいりました。県教委では、対面やオンラインによる指導主事の自主研修会を月1回程度開催しております。県と市町の指導主事の連携により、質の高い指導や支援が行えるように現在努めているところでございます。
 学校担当指導主事は、原則、週1回以上担当学校を訪問するように努めています。そうすることで、諸施策が、教室の扉を開けて本当に子供に届いているのかどうかを確認することが可能となりました。各指導主事は将来の管理職候補です。各学校長の相談役としての役割を果たすことを目指しながらも、各学校長の学校経営も学んでいます。本県の管理職は、コミュニティ・スクールの経営者です。担当指導主事は、学校運営協議会にも可能な限り参加をして、学校経営にも関わっていきます。
 最後に、事務所廃止による効果と課題についてでございます。効果につきましては、市町教委や学校に対する伴走支援を、スピード感を持って効果的に行うことができるようになってきたと考えております。また、市町教委指導主事の学校担当制を促進し、各校における授業水準の維持・向上にもつなげています。全県的な人事情報につきましては、県と市町が直接やり取りをすることで情報の収集・共有がしやすくなり、広域人事の活性化につなげています。さらに、本県の公立学校がコミュニティ・スクールの設置を加速できたのは、教育事務所の廃止に伴い、県と市町が直接連携して施策を推進できるようになったことが大きいと考えております。
 次に、組織体制のスリム化・効率化により、平成22年現在の情報ではございますが、約2.4億円の人件費が削減されたというデータが残っております。
 一方で、課題でございますが、県教委サポートチームメンバーによる長距離移動時の安全性の確保という問題や、あるいは適切な業務時間の確保、こういった点については、引き続き配慮すべき事項であると考えております。市町教委においては、指導主事の学校担当制により、指導主事の担う役割が一層重要となっており、今後、資質能力の向上を欠かすことはできません。キャリアステージに応じた効果的な研修等がこれまで以上に重要になってくると思っております。
 以上で、山口県における教育事務所の見直しと市町支援体制に関する説明を終わりにしたいと思います。御清聴ありがとうございました。
【清原座長】  中村様、どうもありがとうございます。山口県におかれても、和歌山県や佐賀県と同様に、「市町村合併を一つの契機として、行財政改革や、あるいは学力向上のために教育事務所を廃止して県庁に支援機能を集約し、市町の教育委員会との連携を促進して、コミュニティ・スクールを公立学校全てに導入する」と、こういうような経過についても分かりやすく説明していただきました。どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの和歌山県、佐賀県、山口県の3県からの御発表につきまして、御質問、御意見がございましたら、皆様、よろしくお願いいたします。御発言いただく際には挙手ボタンを押していただくか、手を挙げてください。
 早速挙がりました。戸ヶ﨑委員、御発言をお願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。御発表、大変興味深く拝聴いたしておりました。実は、私自身もかつて、市町村合併や教育事務所の統合の渦中の当時、教育事務所に勤務していた経験もありますので、地域の実態の違いはあるものの、その困難さや課題等について少しは理解しているつもりですので、その経験等も踏まえながら、それぞれの御発表に対して質問や意見をさせていただきます。少々長くなってしまうかもしれませんが、御了承ください。
 まず、和歌山県さんですが、1ページにある「圧倒的存在感」という言葉に大変興味を持ったわけですが、これは具体的にどういったものでしょうか。また、教育支援事務所と教育事務所の業務の大きな違いは何でしょうか。
 それから、9ページに、「教育支援事務所は本庁の下請ではない。教育支援事務所に予算権、人事権はないが、『予算や人事権がなくても、教育についての専門性の優秀さで指導できれば、教育支援事務所の本来の役割を果たせるはず』(当時の学校教育局長の談)」とあります。確かに予算権はないかもしれませんが、所長と市町村教育長との人事ヒアリング等で中間的な役割は果たしているのではないでしょうか。そこをお聞かせ願えればと思います。
 また、この「専門性や優秀さ」は、明確な根拠はなくても、市町村教育委員会に比べて、本当にあると言えるのでしょうか。他にも、指導・助言ができるメンターと、それを受けるメンティーとの関係性は保たれているのか、なども気になるというか、今も昔も少なからず全国的に課題を抱えているのではないかと思っています。大変言いづらいことですが、昔と違って、管理職候補者の人数も全国的に少なくなっている傾向があることから、市町村教育委員会は、自分のところの人材を確保するだけでも精一杯という現状があることや、市町村教育委員会の業務が多様化・複雑化していることから、例えば和歌山県においては、優秀な人材を県教育委員会に出さない、出せないという自治体も出てきてはいないのでしょうか。答えられる範囲で結構ですが、少し疑問を持ちました。
 さらに、自立できた市町村は、教育支援事務所を相手にしない、一方、脆弱な市町村は、そこに依存するとありますが、恐らくこれは全国的に同様の課題があるのかもしれません。もし和歌山県において、教育支援事務所から教育事務所に変更することで、この点が改善できたのであれば、その要因となったものはどういうことなのでしょうか。
 最後に、9ページと次の10ページですが、市町村教育委員会から信用・信頼される教育支援事務所の在り方や、存在意義を考える際に、大切な課題等が書かれていると思います。これは感想です。
【清原座長】  まず、和歌山県の方にお答えいただいてから佐賀県の御質問に。和歌山県の方、たくさん質問ありましたけれども、どうぞ清水様、お答えいただければと思います。資料にあります「存在感」というところから。
【和歌山県教育庁(清水様)】  清水です。まず、圧倒的存在感ということに関しては、当時の教育事務所というのは、管内の市町村の全ての状況を克明に把握しておった。人事についてもそうですし、それから研修等についても、学校指導についても、教育事務所長が全てを押さえて、市町村教育委員会との会議等で実現していくということで、言葉どおり、全てそこに権限が集約されていたというふうに感じております。
 それから、教育事務所と教育支援事務所の大きな違いを一言でというと、教育事務所は、いわゆる総合的な機能を持っていた。支援事務所は、学校指導とそれから社会教育というその2つの部分に特化したものであった。これは本庁の機構改革とセットになっていたというところです。同じ指導業務というふうに取られるかもしれませんけれども、教育事務所の時代の指導と支援事務所の指導とは、これはかなり違っていたというふうに言われています。教育事務所のときには、本庁の指導業務、義務教育に関する指導業務は非常に全般的なものなので、多くは事務所が担う。支援事務所においては、指導担当はおるんですが、基本的にはサポートですので、学校教育の指導は本庁がやるということで、そういう面でも違いというのはあったと思います。
 それから、教育支援事務所は中間的な役割を果たせていたのではないかということですけれども、もちろん、全く機能していなかったということではないんですが、非常に限定的ということであって、その中で人材を育成していく上においては、結構時間がかかってくると。いろんな経験をさせながら育てていくことになると思いますが、支援事務所の所長という役割とか、あるいは支援事務所の指導主事にとって必要なことということでの、研修とか人材育成というのが十分できていなかったのかなというふうに思います。
 そういう面で、ヒアリングした中においても、支援事務所長を何か所か経験して、今現在、市町村の教育長をしている人物がおるのですが、支援事務所長時代には、なかなかこういうことをしようというのが十分できなかったという、そういうことを言っているのです。
 それと、4つ目なんですが、メンター的機能の受け手との信頼関係はあったのかということなんですけれども、丁寧にいろんな話を聞いてもらえるという、そういう部分というのは当然、あるいは身近におりますので、そういう関係の信頼関係はあったと思うのです。ただ、その上において、特に昨今は、先ほどの学力の問題であるとか、コロナの問題であるとか、あるいは和歌山県においても、コミュニティ・スクールというのをほぼ100%、高校も含めて実施していますが、教育委員会から方向性が示された中において、直接的に支援事務所が施策の立ち上げからどのように進めていくかについての情報とか権限はなかったので、ごく一部に限られたということです。
 あとは、一番大事なことは、人材をどう育てていくかということです。総合的なというか、学校をいろんな面からバックアップしていく人材を育てるためには、育て方の問題であるとか、たくさんの候補の中から、経験を積ませながら育てていくというシステムが必要になってくると思うのですけれども、ただ、やはり全体の人数が、教職員の人数が減っていく中において十分育てられなかったということがあったと思います。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。戸ヶ﨑委員、佐賀県さんへの御質問をどうぞ。
【戸ヶ﨑座長代理】  佐賀県さんには、まず、5ページの「専門教科・領域についても調整を行い、多くの教科・領域について専門性を有した指導主事を配置し」とありますが、都道府県だけでなく市町村を含めて、この指導主事に求められる資質能力は、「令和の日本型学校教育」とシンクロしているのか、という問題意識があります。これまでの指導主事というのは、ある意味では自身の教師経験に基づいて学校を指導することが多く、悪く言ってしまえば、過去の遺産でもどうにか指導できていたと思います。しかし、これからの指導主事は、自身の教職経験は踏まえつつも、産官学等の学校外の刺激を受けるなどして、変化する社会の動きを取り入れつつ、自身の学びもアップデートしながら学校をコーディネートしていく力が求められていくと思います。
 特に県教育委員会や教育事務所の指導主事は、行政事務のウエイトが高くなってしまい、地教行法第18条にある学校教育への「経験」は重視されていますが、教育に関する見識や専門的事項についての教養、つまり「令和の日本型学校教育」の推進に向けて、市町村教育委員会へ指導助言できるスキルなどについて、不安に思うようなことはないのでしょうか。ここも答えられる範囲内で結構ですので、お願いしたいと思います。
【清原座長】  では、長尾様、お願いします。
【佐賀県教育庁(長尾様)】  お答えいたします。確かに戸ヶ﨑委員さんがおっしゃったように、指導主事に求められている資質というのは、以前の指導主事とはちょっと違うものが最近あるのかなというふうに思っております。私の発表でも申しましたように、学校のニーズは多様化しておりますので、それぞれの先生方や学校に応じた指導助言ができる者、そういった者を指導主事として置くべきだろうと私も考えているところでございます。
 現在、この指導主事の任用につきましては、各教育事務所、あるいは人事を担当しております教職員課というところがありますけれども、それぞれの目で、そういった幅広に柔軟に対応できる資質能力を持った者を指導主事として充てるというふうに、県教育委員会としては対応しているところでございます。そのためにも、巡回での訪問とか、あるいは学校長との頻繁なヒアリングとか、あるいは市町教育委員会との情報を多く収集して、各学校からのニーズに応えられるような指導主事を育成していこうというふうに考えているところでございます。
 現在、市町の反応とかを聞きましたところ、教育事務所の指導主事に対する信頼は大きくなってきておりまして、それもあって支援の依頼も多くなっているのかなと。以前言いましたような、堅い教育事務所のイメージから、最近は相談しやすい教育事務所というふうに変わってきていると実感しているところでございます。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。ここでほかの委員の方に伺います。今、戸ヶ﨑委員の御質問が続いておりますが、ほかに御質問のある方、時間の関係で、挙手ボタンを押しておいていただくと進行上ありがたいのですが、御遠慮なく御質問、御意見のある方。分かりました。
 それでは、戸ヶ﨑委員、ちょっとここでほかの委員の御意見、御質問をいただいた後に、また戻らせていただいてよろしいでしょうか。では、梶原委員、お願いいたします。
【梶原委員】  3県の御説明、ありがとうございました。それをお聞きしまして、私が
教育事務所勤務から、平成18年に県教委の企画室勤務になったとき、この教育事務所担当者だった当時を振り返ります。まず、これは今までナショナルスタンダードで、日本の教育が行われてきた中で市町村合併の進展、都道府県の行財政改革、そして地方分権改革の中で、一律に全国どこも教育事務所の統廃合を検討する動向があり、それを見据えて検討を行うことになりましたので、その時点に考えたことをちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 1つは、教育事務所の役割としてはどういうことをやってきたかというと、教育事務所は、管内の教職員の人事、それと学校指導、社会教育を担ってきました。それと総務事務ですね、諸手当の認定とか、旅費の検査の総務系、そういう業務について教育事務所を無くす場合とか、統合する場合は、これまで教育事務所が果たしてきた役割や事務をどうするかということを検討しました。
 その中で、課題一つは、地理的要素といいますかね、地理的な広域範囲においての調整は、果たして統合して大丈夫かというところですね。それと規模ですね、市町村規模。統合枠とした市町村規模。これまで教育事務所がやってきたのは、垂直的補完といいますか、県教委本庁から教育事務所から市町村という、県教委と市町村教委の連絡(媒介)や、もう一つは水平的補完。市町村教委間の連携調整機能を担ってきました。特に人事ですね。結果的に市町村合併の進展を見ながら考えようということで、大分県は6ある教育事務所を3つとかいう検討もありましたけれども、なかなかそれじゃ地理的な問題や規模的なもので非常に難しいということと、行財政改革で20%の人員削減とともに教育事務所から本庁に指導主事等を持っていったわけですが、その中でやっぱり一番重要なところは、市町村間の人事交流・調整です。例えば、中核市と他市町村との人事交流・調整を担っていました。特に教職員の人事上、ほとんどが中核市への異動希望であり、反対に中核市からの転出希望はほとんどないという。そこら辺の調整機能を教育事務所が間に入って調整してくれたというところです。
 また、学校教育の指導部分では、先進的取り組みの情報等を提供したり、小規模市町村での連携の支援を行っています。私ども、隣の市町村と一緒に協議会を設置してやっているのですが、教育事務所が間に入ってもらうことがよくあります。教育事務所の役割は非常に大きく市町村単独では厳しいなと思う。
 それとあと、町村での指導主事の配置状況です。小規模市町村は十分な指導主事が配置できませんので、その辺りは、きめ細かなリアルタイムの指導をしていただくには、身近な教育事務所がいいかなと。山口県の、一本化といって本庁ストレートでという、それも一つの考えかと思いますが、私ども地理的な状況で、山あり海ありの地域でございまして、厳しいということがありました。教育事務所は、先ほど戸ヶ﨑先生からあったように、やっぱり信頼関係が一つあって、県と市町村の信頼関係に基づいて本音の話ができることが大事かなと思っています。その中で地理的、規模的とかいう部分を、(総務的な部分は一環でやれると思いますけど)考慮する場合は、私ども今のところ、6事務所を残して頑張ってよかったなと思っております。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございました。大分県では変わらずに教育事務所を残された事例としてお話ししていただきました。
 それでは、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  ありがとうございます。私のほうから、各県にほぼ共通するような質問になるんですけれども、どの県も共通して、和歌山県さんも20年ほど前は恐らく7か所あったのが、紆余曲折しながら今2か所とか、割と大きな目で見ると再編していくような方向性でトレンドは行っているのかなと。今後、オンラインでいろんなやり取りができるとか、そうする中で、あまりこのトレンドというのは変わらない方向なのかなというのが全体の話を聞いていた感想です。その中で共通した課題感みたいなのがあったような気がして、それについてちょっとお伺いできたらと思うんですけれども。最初に、和歌山県さんでも最後、課題のところで、今後のところで、市町村の教育行政能力の向上というふうに書かれていて、これは具体的にはどういう能力の向上が必要だと言っていて、そのためにどうやってその能力を向上させようとされているのかみたいなところが和歌山県さんで、最初、共通するので質問だけ先に行かせていただくと、佐賀県さんの場合も、最後、各学校からのニーズに応じた支援内容の充実ということで、これも非常に重要な、この協議会でもずっと審議してきたことなんですけれども、学校からのニーズに応じた支援内容の充実って、具体的にどういう支援内容でどういうふうに充実させていこうとされているのかというところを、もう一段具体的にお伺いできればというのが佐賀県さんで、最後、山口県さんも、最後の課題で出ているのが、指導主事の人材育成ということを言われています。これ、具体的に指導主事にどういう資質能力をどうやって育てていこうとされているのかという、まさにこの協議会でずっとやってきたテーマですので、もう一段具体的にそれぞれお話しいただけると反映できるかなと思って聞きました。
【清原座長】  それでは、質問の逆さの順番で、まず、山口県さんからいかがでしょう。指導主事の人材育成について、先ほどの戸ヶ﨑委員の御質問とも重なりますが、いかがでしょうか。
【山口県教育庁(中村様)】  ありがとうございます。一番大切なのは、国からも言っておられると思いますが、伴走支援だと考えていまして、何度も足を運んで、スピード感を持って、まずは課題をつかむ力。そして、その後で課題に対応する方策を横展開でもってつなげていく力であると考えています。そのためには、なぜその施策が大事なのかということが話せなければ、全くこれは話になりません。往々にして、何をやるのか、いかにやるのかということばかりを説明しがちなんですが、いつもなぜそれがやられるのかということが抜けています。ですから、大局的に物事を見て、今こういう課題に対してこれに取り組まなければならないというようなことを見極めていく力が大事だというのが1つ目です。
 もう一つだけ、すみません。成果を出す能力というのは必ず必要だというふうに、これはマネジメントで言われていますけれども、やっぱり成果を出すためには、自分たち組織が思いを貫くことだと考えています。人がこう言うからすぐそっちに流れるとか、あるいは課題を把握していなければいろんな情報にすぐ流されてしまいがちですが、そうじゃなくて、必ずやり遂げる。そういった能力が必要だと考えていまして、そのために研修を充実させること。これはオンラインもそうですけれども、それから対面でも月に数回は集まったり、あるいは県教委と市町教委とで合同研修会を開催したりしながら、思いを共有していくということが一番の近道じゃないかと思っています。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、佐賀県の長尾様、いかがでしょうか。市町村の教育の課題ですね。
【佐賀県教育庁(長尾様)】  佐賀県のほうには、支援内容の充実をもう少し具体的にというような御質問だったと思いますけれども、まず、学校からのニーズというのが多様化しているということは、全国的にも御承知のことだろうと思います。例えば、若手の支援、最近、新採が多くなってきておりますので、若手の支援については継続的な支援が必要で、どのような指導主事をどのタイミングで派遣するのか、そういった支援の方法があるかなというふうに思いますし、それから、最近、学級崩壊等がニュースでも出ているわけですけれども、若手だけではなくて、御年配の先生方への支援、そこには若い指導主事が行って指導するよりも、ある程度の年齢の行った者が行って話を聞くとか、そういった支援が必要なのではないか。昨今、特別支援教育というのも叫ばれてきておりますので、事務所のほうで対応できないものであれば、そういった関係機関につなぐと。そういった支援のことも含めて、支援の内容の充実というふうに捉えているところでございます。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、和歌山県の清水様、お願いいたします。
【和歌山県教育庁(清水様)】  市町村におきまして、どのような行政能力が求められるかということですけれども、各学校の規模が小さくなってくる、あるいは人口が減少していく中において、子育てといいますか、家庭教育との連携であるとか、それから学社融合という言葉がありますけれども、生涯学習とのつながりというのがある。そういう面で、その能力を育成するためには、学校教育の指導の経験だけではやはりいかないだろうと。そこだけを専門性にしてはいけないだろうということで、県教育委員会はかなり専門的な指導というのも必要だと思うのですが、市町村においては、福祉部局であるとかいろんな、例えば公民館主事を経験させるとか、そういったことをしながら、その地域に合った行政能力というのを高めていくことが必要なんじゃないかなと思います。
 もう一つ、私の資料に属人主義というふうに書かせてもらったところがあるのですけれども、どうしてもこれまでの自分の経験でやろうとするところが教員の場合は多いと思うのです。そうすると、入れ物によって器の大きさによってなかなか経験が蓄積されない、相互に議論することができないので、結果として人が育っていないということもあると思いますので、そういう面で、小さな支援事務所よりも大きな教育事務所にしていくことによって、指導主事がより必要な資質を磨くことができるのかなというのも今回の目的でありました。
 以上です。
【清原座長】  岩本委員、どうぞ。
【岩本委員】  ありがとうございます。共通してやっぱりこれから伴走支援、それぞれに応じてということで、その中で共通するのが課題発見。その解決に向けては、横で連携・協働しながら、しかもそれがなぜなのかという、より探究的に問いながらも粘り強くやり抜くみたいなところで、まさに我々が教育の中で育てようとしていることと共通する、資質能力というのが共通としては求められるんだなというのが1つと、佐賀県さんのお話からも、必要な支援が多様化していっている中で、支援する側の多様性をどうちゃんと持って、必要な相手に対して必要なものをちゃんと対応できるようにというので、こちら側の多様性を、専門性とその多様性というところが重要だというのを感じさせられましたし、その中で和歌山県さんが言われていましたけれども、いろんなところと連携・協働していく際に、学校教育の経験だけではなく、場合によっては社会教育だとか、福祉だとかというところの中で、そういった連携・協働も含めてできるような人材の育成や人事異動だとか、育成体系みたいなところの重要性みたいなのを学ばせていただきました。どうもありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。岩本委員にまとめていただいたので、各県の取組から共通して私たちが受け止めるべきものが明らかになったと思います。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お待たせしました。どうぞ、御質問を御発言ください。
【戸ヶ﨑座長代理】  山口県さんですが、11ページについて、都道府県が基礎自治体の学校へ指導資料や人事情報を共有・周知するために、直接学校訪問などを実施しているということでしょうか。これは全県にとって大きな課題になる話かなと思うのですが、もし県が直接学校訪問等をするとなると、市町村教育委員会の立場や主体性、また、地教行法上の問題が指摘されることを危惧します。つまり、市町村教育委員会は、学校教育法、地教行法の規定により、設置管理者・服務監督権者として、主体性を持って学校訪問を推進するものです。一方、市町村が設置している学校等に対して、県教育委員会は管理機関としての立場にはないため、県教育委員会の指導主事は、市町村立学校の校長及び教員に対して直接の命令・監督はなしえません。あくまでも、地教行法第48条により「同行」する形になり、市町村教育委員会を通しての指導・助言・援助を行うにとどまることになるのではないでしょうか。
いずれにしても、山口県教育委員会の教育事務所の廃止については大変参考になります。これは教育事務所がなくても、県教育委員会と市町村教育委員会などで情報共有等が十分に行えて、教育行政上で大きな支障がないのであれば、これをモデルにして全国的にも積極的に導入を検討していく価値があると考えます。
 このことを発展的に考えると、例えば調査や通知などの事務連絡については、毎年、ルーティンワークになっている調査等を精選することを前提に、国と市町村間でのやり取りが、クラウド上などでダイレクトに一層推進できるようになることで、都道府県教育委員会の役割についても見直し論に繋がる可能性があるのではないでしょうか。その点、県教育委員会としての在り方でお考えがあれば、答えられる範囲内でお願いできればと思います。
 以上です。
【清原座長】  それでは、山口県の中村様、よろしくお願いいたします。
【山口県教育庁(中村様)】  戸ヶ﨑委員、大変ありがとうございます。御指摘いただきましたように、私ども県教委は任命権者であり、そして市町教委の服務監督権というものの、それぞれが役割を行使していくということについては理解をしています。ここで若干そごがあったかと思いますけれども、学校訪問に行くときには、県教委は基本的には市町教委と同行するというスタンスでいます。この辺りについては共通理解をしています。
 一方で、御指摘いただきましたように、先ほどからの話題にもなっておりますが、人材育成という側面があります。県教委に来ている人材というのは、ある程度市町教委を経験していたり、あるいは校長も数校経験していたりする人間がいます。その者がどういう形で管理職と接していくのかとか、あるいは誰を対象に学校訪問して、例えば今日は管理職と話しに行きます、今日は研修主任と話しに行きます、今日は直接授業者のところに行きますとかということについては明確にした上で学校訪問をしていますが、市町教委の同行者によっては、県教委はどういう指導をするのかということを見ながら自分も学びたいということもあるわけです。そうしたときには、やはり全てを市教委に委ねるとか、ここまでは県教委だとかということではなくて、何が私たちの訪問の目的であるのかという、なぜそこに行くのかを明確にした上で、双方の役割を果たしていくということが大切であると考えています。決してお互いの領域に足を踏み入れ過ぎて権限移譲ということを忘れているわけではなく、どちらかというと、おたくの玄関の前も掃きますよという形でやることができたのは、何度も何度も会話をしているからであろうということを私たちは理解していて、そのために年間何百回も訪問しているという、冒頭に委員さんがおっしゃってくださった信頼関係、これ抜きに私たちの業務は成り立たないということについては自覚しているつもりでございます。
 以上でございます。
【清原座長】  どうもありがとうございます。戸ヶ﨑委員、よろしいでしょうか。
【戸ヶ﨑座長代理】  ありがとうございました。
【清原座長】  まだまだ御質問、御意見があると思います。すみません、青木委員は、また後ほどの時間に御発言いただければ嬉しいです。
 それでは、ここで一旦、ヒアリングについては閉じさせていただきます。誠にお忙しい中、和歌山県、佐賀県、そして山口県の教育庁の皆様におかれましては、これまでの教育事務所に関する経過について大変に分かりやすくお話しいただき、しかも成果だけではなくて、私たちが共有すべき課題についても詳細に教えていただきました。心から感謝を申し上げます。適宜、御退出いただければと思います。委員の皆様、感謝の拍手でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
 それでは、続きまして、議事の2、「小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策」に移らせていただきます。
 まずは、事務局より資料4について御説明をお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  それでは、お手元の資料4を御覧いただければと思います。この資料につきましては、小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策について、今後の論点として幅広く整理をさせていただいているものでございます。1ページから順に御説明をさせていただきます。
 まず、丸1番、市町村を支える都道府県の役割についてでございます。この資料、枠囲みの中が今後の論点案ということで、その下にこれまでの委員からの御意見ということで、青字で記載させていただいております。
 まず、1つ目の丸でございますが、域内全体の教育水準の維持向上を図る観点から、広域自治体から小規模自治体への支援は必要不可欠であるということと、都道府県教育委員会には、各市町村の自律性や自主性を尊重しつつ、各市町村の地域特性、地理的条件を踏まえた柔軟な支援、これを行う役割が求められているのではないか。例えばでございますが、市町村への指導主事の派遣や配置のほか、小規模自治体では対応が困難な事務について、一定の範囲で都道府県が担っていくこと、こういったことも重要ではないかということについて触れさせていただいております。
 その下は、今回ヒアリングを行いました教育事務所に関しての記載でございます。教育事務所につきましては、各市町村のニーズや教育課題、学校数や児童・生徒数、指導主事の配置状況、本庁からのアクセスのしやすさ、こういったものを踏まえまして、小規模市町村への最適な支援を行う観点から、適時適切に見直しを行っていくことが必要ではないか。例えばでございますが、各地域の特性や実情に応じた支援体制の構築ですとか、また地域の情報を集約し得る立場にありますので、そういった教育事務所が市町村間の連携を積極的に促していく役割を担っていくことも、今後より一層期待されるのではないかといったことも記載をしております。
 また、その下でございます。教育事務所ではなく、山口県さんの例のように、本庁が支援機能の中核を担うと、こういったことも考えられるのではないかということも触れさせていただいております。
 その下でございますが、都道府県の指導主事の資質能力の向上についても、今後、検討が必要ではないかといった論点も記載をしております。
 2ページ目でございますが、参考で教育事務所の設置状況について、文部科学省で調べておりますので、参考情報として掲載をしております。令和3年5月1日時点で、40都道府県に設置をしておりまして、設置状況は右のほうに表がありますけれども、こういった数字となっております。設置している自治体のうち、最も多い設置数は北海道の14、最も少ない設置数は福井県の1となっております。
 続きまして、3ページでございます。2つ目、丸2番といたしまして、地方教育行政を担う人材の確保についてでございます。教育行政におきまして中核的な役割を担う教育長や教育委員の人材確保は必要不可欠でございます。他方で、特に小規模自治体におきましては、その人材確保が困難な面もあるというふうに考えられます。
 その2つ下の丸でございますが、人材確保が難しい自治体におきましては、適切な選考プロセスを経ることや議会の理解を得ること、これを前提に、教育長や教育委員の選任に当たって外部人材とのマッチング、これを検討することも一つの方策として考えられるのではないかといったことを書かせていただいております。
 続きまして、4ページを御覧いただければと思います。地方自治法に規定する広域連携のための各種制度等についてでございます。これについては前回も御意見があったと思いますが、広域連携の手法についてのメリットやデメリットなどについて整理して、これを明確に示す必要があるのではないかと、こういった御意見をいただいておりました。広域連携を図るための制度といたしましては、1つ目の丸に記載しておりますとおり、一部事務組合や広域連合、機関等の共同設置、協議会、事務の委託、事務の代替執行、連携協約、こういったものがございます。これらについては、地教行法55条の2第1項でも、「教育委員会の共同設置その他の連携を進め、地域における教育行政の体制の整備及び充実に努めるものとする」というふうに規定をされておりまして、これのさらなる活用を促すために、各制度の特徴や活用に当たっての留意点等、改めて整理して示すことが必要ではないかということを記載しております。参考資料4のほうで、その広域連携の各種制度についての概要をおまとめしております。併せて御参照いただけますと幸いでございます。
 最後、5ページでございます。丸4番、デジタル技術の活用についてでございます。デジタル技術の発達によりまして、新たに様々な工夫や連携の可能性が考えられるというところでございます。特に小規模自治体を念頭に、近隣市町村等との連携したオンラインによる教員研修の実施など、新しい技術を活用した取組の活用を促していくことも、小規模自治体への対応の観点からは重要ではないかということを記載させていただいております。
 最後、その下の枠囲みでございますが、このほかといたしまして、小規模自治体への対応・広域行政の推進のための方策についてどのように考えるか。また、このような様々な支援の在り方を検討しつつも、各自治体が自走していけるような仕組みをどのように構築していくのかということで記載をさせていただいております。ちょっと幅広に論点について言及しておりますけれども、さらなる追加の御意見ですとか、新たな観点などがございましたら、ぜひ御意見をいただけますと幸いです。
 すみません、駆け足でございましたが、以上でございます。
【清原座長】  伊藤補佐、ありがとうございます。私たちの検討課題の1つであります「小規模自治体への対応」、「広域行政の推進のための方策」について、論点として、本日ヒアリングさせていただきました和歌山県、佐賀県、山口県の事例を踏まえつつ、1点として「市町村を支える都道府県の役割について」、2点として「地方教育行政を担う人材の確保について」、3点目として「地方自治法に規定する広域連携のための各種制度等について」、そして先ほど、岩本さんもキーワードを言っていただきましたが、「デジタル技術の活用等について」、これら4つの項目に、取りあえずはまとめていただきました。けれども、最後にありますように、このほか、どのような方策があるかということも含めて、幅広く皆様とこれから意見交換をさせていただければと思います。この資料をきっかけに、皆様からぜひ小規模自治体への対応、よりよい「令和の日本型学校教育」を推進する上で必要な地域の連携等について御意見をいただきたいと思います。
 それでは、御意見のある方、また挙手ボタンを押していただくか、あるいはその場で挙手をしていただければと思います。
 それでは、箕面市の藤迫委員さん、お願いいたします。
【藤迫委員】  すみません、ちょっとアプローチの観点が異なるので、どうしようかなと思いながら、迷いながら手を挙げたんですけれども、全国的に珍しい例なので意見を言わせてもらおうと思います。
 何が言いたいかというと、我々の大阪の中で豊能地区というところがあるんですけれども、この豊能地区では、人事権を大阪府から移譲してもらっています。恐らく日本で、政令指定都市以外の市町で人事権を移譲してもらっているところはないと思うんですよね。ここで言いますと、参考資料で言いますと、協議会ですね、法定協議会。法252条の2の2ということで、この制度でやっているわけなんですけれども、どんなことを移譲されているかというと、教職員の採用のための選考、管理職等の任用に係る選考、人事交流、研修に関すること、給与の算定に関すること、それから教職員の任免、給与とか休職とか、研修の管理執行などを権限移譲してもらっています。枠組みが3市2町ですので、小さな町も2つ入っているということで、私の判断で言うと、結構市町の主体性も発揮できますし、協議会でもいろんな意見を言いながら、いいシステムになっているのかなというのが効果です。
 もう一点は、市町の考え方が少し違うところについては、なかなか判断して動かない。何が言いたいかというと、例えば箕面市に限っては、人事権がありますけれども、「給与権もくれ」と、こういうことを言いたいと思っているんですけれども、なかなかほかの市町は、「いやいや、給与権まではいいんじゃないか」ということで意見が合わないというようなことはありますけれども、基本的にはうまくいっているのかなと。私はどこかで給与権を何とかしたいんやと。頑張った教員が報われるという制度でないと駄目やと。それを構築しようと思うと、やっぱり給与権がないと一歩踏み出せないというところがありますので、ちょっとそこは悩ましいところですけれども、比較的この法定協議会の制度というのはうまくいっているのではないかなと。ただ、全国的に、こんな話をいろいろなところですると、いいよねと言いながらどこも追随してこないというところが、何なのか。だから、それが新たな広域連携のハードルの一つなんかなというふうに思っています。単なる意見と感想です。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございました。本当にそれがほかに広がっていかない要因については、藤迫さん、何か考察はお持ちですか。
【藤迫委員】  1つは、やはり事務局の負担というのが大きいのかなと。我々、3市2町の中には少し大きい、豊中市という大きいところがありますので、そこにリーダーシップを取ってもらって人的にも負担をかけていますし、事務的にも負担をかけてやってくれているんですけれども、やっぱり広域の枠組みの中で、「よし、うちがやるよ。でも、人をちょっとずつ出してね。こういう応援をしてね。であるなら、うちが事務局としてやる。」というところがあるかないか、やっぱりそこがハードルなんじゃないかなというふうに私は思っています。
【清原座長】  ありがとうございます。大変ヒントになります……。
【岩本委員】  清原先生、ミュートになっています。
【清原座長】  すみません。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、小﨑委員、お願いいたします。
【小﨑委員】  失礼いたします。今日の3地域の発表を聞いていて、非常にストレートに中身を説明してくださっていましたので、議論が本当にだんだん深まってきているんだなというイメージも兼ねてなんですけど、私、教育委員会に14年勤務していまして、指導主事からいろんな役職をしましたが、いい意味で縦割りの縦の流れの中で、物事がいろんな人に決裁を受けながら進んでいきながら質が高まっていく様子なんかを見ていると、別に縦に流れていくことそのものが悪いということではなく、目詰まりが起きるというか、全体として進んでいきながらも、1か所、2か所、それを止めるようなことがあれば、そこで全体が動かないということなんかはあるわけです。先ほどの4つの領域の整理なんかを見ると、それぞれの整理の仕方ということについては、私が見ていても、ああ、そうだな、そうだなと思うんですけど、結局それは、ばらばらでそこだけが成り立ってやっていっても、全然進まないことが多いです。この4つの観点が同時に動かない限り、3つが動いても1つが動かなければ、結局ほかの3つも回らないということなんかもさんざん経験してきています。特に人事のことは、いないから困っていますという前提のほうもすごく大きいわけで、じゃあ、人を育てないとということだけじゃなくて、一つのヒントとして、交流があると思うんです。公務員の仕事は属人的なところがあって、スーパーマンがいるからとか、よく理解している人がいるから、あそこの市町にはあんな人がいるから…で進んでいるように見えます。実際そうなんですけど、そこでその人に全部頼るのか、じゃなくて、例えば、そういう人がいたときには、その人をどんどん動かしていくというか、その人が広く活躍できる場を広げていけばいいということだと思いますので、人の交流であったり、少なくともその人の活動の場を増やすことで、自由に動ける範囲を広げていくというような発想になっていけば、何かそこにヒントがあるんじゃないかなと思っています。人を探すというところは制度上も給与上も仕方ないとして、それだったら連携する、交流するということを短期でもいいので動けば、少しは改善の兆しもヒントも出てくるんじゃないかなというふうに思いました。まとめ方としては、個々の項目を細かくではなく、全体としてはこうです、というのを大きく一つつくって、その中に4つの領域というのがあればいいかなと感じました。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。どうしても論点を整理するときには項目ごとに分けていますが、それらが全て必要不可欠であり、関連し合っているということですね。ありがとうございます。
 それでは、青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  青木でございます。丸1から順に申し上げます。丸1については、まず、先ほど前半のパートでもありましたが、教育事務所については、やはり議論をする情報の前提として、かつて全国教育委員会一覧が発行されていましたが、あそこには地図で教育事務所の範囲とか、そういう基本的な情報がありました。これを例えば、文部科学省がウェブで発刊している「教育委員会月報」で掲載していただくと、非常に私のような立場の者からは議論しやすくなってありがたいなと思います。
 教育事務所に関しては、今日伺った中で、人事や指導や総務といった機能があるということは改めて分かったんですが、私としては、この間見過ごされてきた視点として、下から上というんでしょうか、市町村でそれぞれ個性ある取組を、教育活動をされていく中で、県として、もしも一まとまりの教育課程をするという意識があるのであれば、そういう前提を置くならば、各市町村がやっている取組を吸い上げて全県に展開するというような機能も担い得るのかなと思いました。教育事務所のこれまであまり注目されていなかった機能かなと思います。
 その次です。指導機能というのをどうするかということで、具体例として指導主事ということで、それをこの間の議論を踏まえると、基本的には垂直補完なんだろうなと。県に期待をするということなんだろうなということは理解しております。その上で、制度の運用上の選択肢は今以上に広げられると思います。そういったものをこの会議体の場から発信できないかなと思います。
 例えば、これ可能かどうかは後で精査いただきたいんですが、今、大学教員ではクロスアポイントメントという仕組みが進んでおります。そういったものを少し応用して、基本的には行政が人件費を負担しつつも、その一部を大学も負担して、大学の教員養成系大学等々の教員のクロスアポイントメントで指導主事的な機能、とにかく機能が大事ですから、機能を担ってもらうというようなこともあり得るかなと思います。あるいは、災害派遣のスキームを参照して、時期限定の水平補完のようなものもできるんだよということを打ち出すだけでも随分違うように思います。
 その次です。丸3に関して、今回おまとめいただいた資料、私も大変すばらしいなと思ったのが後半、後段部分で、地教行法の55条の2項について言及されているのが非常にすばらしいと思いました。これは努力規定ではあるんですが、残念ながらあまり最近は注目されていない規定だと思います。ただ、私の見るところ、努力規定というのは、やはり活用してこそ意味があるものでして、象徴的な意味にとどまらない意味を発揮する場合があります。これはぜひ推していきたいなと思います。
 最後ですが、丸2に戻るんですけれども、確かに小規模自治体で、教育長や教育委員の人材不足の可能性はあると思います。他方で、何らかの形で任命ができた場合に、やはり研修というのが重要になってくると思います。地教行法では、ある意味、出来上がった人を任命するという建前のような書き方かなと思います。実際、地教行法の48条の2項の4号ぐらいしか教育委員の研修に関わる規定がないんですけれども、これは法律上の立てつけ、前提はそうだとしつつも、やはり研修って大事ですよというようなことは少し言ってもいいかなと思いますし、それは教育長団体等々の意義にも関わってくると思います。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございました。各項目について補足していただきました。
 それでは、吉田市長、よろしくお願いいたします。
【吉田委員】  埼玉県本庄市長でございます。全国市長会社会文教委員長でございます。
 本当に自分自身が見聞きした限りの断片的なお話にはなってしまうんですが、小規模自治体、例えば町村であるとか、規模の小さいところにとっては、これは第三者的なところで人事等について公平に公正に相談ができ、また回してくれるような存在というのはやっぱり必要というふうに思われるのではないかと率直に思います。私どもの周辺で、私のところというだけじゃなくて、要するに優秀な先生をみんなどこでも欲しいと思うわけですよね。ですから、例えば自分のところの教育長なんかもよく言われるのは、自治体の長は、いろんな教育長を欲しいけど、やっぱり県に顔の利く人を教育長にしたほうがよい先生を持ってこられるんだなんていう話が出るわけですよね。現実、そういう属人的なところで人事が動いているような話も実際には出てくる。
 やっぱりあるべき姿というのは、どの自治体、大きな自治体であろうが小さな自治体であろうが、お子さんにとっていい先生に来ていただきたいですし、そのいい先生というのは、やはり一つのところだけにとどまるのではなくて、いろんなところで頑張っていただきたいですし、人間というのは変わってきますから、いろんな方が研修を積みながら先生としてのスキルをアップしていくということを考えると、やはり小規模自治体に対して何らかの配慮というのをしっかりやっていくということは、私は大事だなというふうに思っております。
 ちょうど私の町は中間なんですね。大規模自治体でもなければ町村でもないので、何というか、両方の状況というのが見える部分というのも少しはあるのかなというふうに思いますけれども、町や村の自治体の長、あるいは教育長の悩みを聞くと、なかなか自分たちだけで人の引っ張り合いというのはできない。公正公平なところで考えていただきたいという声をお聞きしますし、当然のことかなというふうに思います。
 もう一点ですけれども、ちょっとこれは視点が違うんですが、実は私、午前中、非常に大事なまたこれも中教審の会議に出ている中で、誰一人取り残さないという教育の在り方等々のいろんな議論があったわけですけれども、小規模自治体といえども、やはり今本当にお子さんを取り巻く環境というのは大変厳しくなっている面がある。私は不登校の問題だとか様々な課題の背景には、やっぱり貧困の問題というのが非常に大きくあるのではないかなというふうに感じておりまして、いわゆる社会福祉分野と教育との結びつきというのは非常に大事でございまして、これは自治体においても、規模が小さくても大きくても、とにかく教育分野と、いわゆる子育て分野、福祉分野との連携は非常に大事でございます。これは教育事務所であるとか、先生方の人事であるとか、先生方の研修であるとかというところを扱う部門の方々にも、先生が置かれているその状況の中で、お子さんを取り巻く環境がいい環境ではない状況が生まれてきている。その背景にはやっぱり親御さんの貧困等の問題もある。そういうお子さんや保護者に相対する先生方はどうあるべきなのか、どういうところを配慮すべきなのかということは、これは教育の面だけでなくて、そのお子さんの置かれた家庭的な問題までどうしても考えた上でないと、なかなかこれからの教育って難しいのではないかな。
 教育分野において、特に都道府県の教育分野の方々にも、ぜひ、いわゆる各地域における福祉分野への洞察というか、よくよくそういった状況も考えていただくような何か仕組みみたいなものができないのかな、連携みたいなものができないのかなということもちょっと感じておりましたので、この際申し上げさせていただきました。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。吉田市長が今言われました、貧困をはじめとする対応すべき課題をもつ子供たち、あるいは保護者を直視したときに、教育委員会と学校との連携はもちろんのこと、市長部局の福祉、あるいはその他、様々な横連携が極めて必要になってきます。それは小規模自治体、大規模自治体に限らず、どこに生まれ住んでいようと、平等に公正に保障されなければいけない事柄に関することですので、小規模自治体のところでも必要性を確認させていただきましたし、今後改めて教育委員会と市長部局の連携について、皆様とさらに検討の機会を持てればなと思っております。
 あと、予定の時間まで7分ほどございます。遠慮されている委員の皆様、御発言を。
 では、戸ヶ﨑委員、続きまして、村上委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  できるだけ絞ってお話し申し上げたいと思います。特に、先ほど御発表のあった資料の中の②と③だけに限って申し上げます。
1つ目は、②地方教育行政を担う人材の確保についてです。教育長や教育委員、特に教育長の選任に当たって、外部人材、学校現場の生え抜き、教員出身者、役所等の行政職の出身者、それぞれのメリット・デメリットについては、首長や議会でどのぐらい理解されているのでしょうか。また、自治体の抱える教育課題や、自治体の置かれている状況によってどういった人選をすることが望ましいのかという点について、今後は首長や議会も、理解を図っていく必要があるのではないかと考えています。
 2つ目は、③地方自治法に規定する広域連携のための各種制度等についてです。単独での教育委員会の設置の維持に困難を抱えている自治体にとって、広域連合や一部事務組合のモデルをお示しすることはとても大事なことですが、一方で、広域連合や一部事務組合の構築に関する事務が膨大で、躊躇している現状も伺っているところです。そういった自治体に対して、国として橋を架けていく仕組みづくりにも、今後期待をしたいと思います。また、広域連合、一部事務組合を構築したり、教育事務所の再編をしたりしても、一つの自治体の事務量などはあまり変わらない可能性があります。教育DXを進めていく中で、調査等の様々な事務量の軽減・見直しを抜本的に図ることも、同時並行で進めていくことこそ大切であると考えます。
 以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。戸ヶ﨑委員が言われた人材については、一般には教員のことをよく言われますけれども、実は、教育長そして教育委員、さらに教育行政職の人たちの人材について本当に着目していかなければ、地方教育行政は進まないというふうに思いますし、事務の効率化も必要ですよね。
 それでは、お待たせしました。村上委員、お願いいたします。
【村上委員】  大変勉強になりました。私からは3点申し上げたいと思います。1点目は、丸1のところの市町村を支える都道府県の役割についてというところで、これは通常の公立小・中学校の支援ということが念頭に置かれているんですけれども、例えば幼児教育であるとか、特別支援教育といったところもやはり考える必要があるのではないかと思います。幼児教育は都道府県の役割が軽過ぎるという認識があって、現状は市町村に丸投げになっているような感じもします。それから特別支援教育については特別支援学校が主に都道府県立ということがあるので、その辺りのことも考える必要があるかなと思います。
 それともう一つは、危機管理、事件・事故が学校で発生したときの支援ですね、これは小規模自治体に限らず、むしろ大規模市町村と都道府県の関係をどうするかというほうがむしろ大きな問題かもしれないんですけれども、危機管理の支援、事件・事故の支援ということも都道府県の役割として考えなければいけないのではないかと思いました。
 2つ目が、人材の確保、丸2のところなんですけれども、先ほどから出ているとおり、確かに教育長、教育委員にどういう人材を求めるかというところは、現行法制度だと、市長と議会が第一義的に考えなければいけないところだと思います。首長や議会がどのぐらい困り感があるのかというのは実感が分からないところはあるんですけれども、例えば広域連携が考えられるような近隣の市町村間では教育委員を兼任できるようにして、教育委員がある種、広域連携のかけ橋をするということも考えられると思います。教育長だと兼任は事務量的に難しいのかもしれませんけれども、教育委員が近隣の市町村の教育委員を兼任するみたいなことは、連携という面ではメリットもあって、今まであまりそういう発想はなかったかもしれないんですけど、やはりどうしても適任者が足りないとか、あるいは複数の市町村を兼任してもらうことのメリットがあるような場合というのは、例えば教育委員に関しては兼任ということがあってもいいんじゃないかなというのが思った点です。少し突飛な発想かもしれませんが。
 最後、もう一点は、先ほど吉田委員がおっしゃられた、福祉への目配せというところは私も全く同感でして、福祉と教育の連携というと、この会議体は文科省の会議体なのでなかなか難しい面もあるかと思いますが、地方教育行政を担うような人材がどういうふうに福祉との連携をうまく図っていくかといったような視点は、この会議で検討してもよろしいのではないかと思いました。
 すみません、手短ですが、以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。大変重要な御指摘をいただいたと思います。
 予定の時間になりました。本日、前半は和歌山県、佐賀県、山口県の皆様に、教育事務所に関わる取組について具体的なお話をしていただきました。梶原委員には御経験から、さらに私たちに(大分県の)事例を教えていただきました。後半の取組につきましては、藤迫委員から御経験を踏まえて、広域連携は重要なんだけれども、それを推進していくには、事務部門において一定の確保というものが重要であるという貴重なお話も伺いましたし、小﨑委員をはじめ、吉田市長にも、それぞれの御経験を踏まえた、本当に重要な御指摘をいただきました。岩本委員も適切に前半をまとめていただいて、私たちの論点が強まりました。そして、青木委員におかれましては、法律の部分で、やっぱり私たちが重視して活用すべき部分で、制度があって使えるのに十分使い切っていない部分について御指摘をいただきました。そして村上委員には、今、さらに論点を強化をしていただきましたし、戸ヶ﨑委員、いつもありがとうございます。私たちが事例を踏まえて、それをどういうふうに私たちがかなえなければいけない使命に読み替えていくかというときに、戸ヶ﨑委員には、いつも重要なポイントを呼び水として私たちに示していただきまして、ありがとうございます。
 というわけで、いつもながら時間が足りなくて申し訳ございませんが、予定の時間を2分過ぎましたので、この辺で本日の会を閉じさせていただければと思います。
 本日も、本当に集中的に活発な御議論をいただきましたことに感謝申し上げます。堀野課長も現場の経験をお持ちで、今日は本当は言いたいことがあったと思いますが、初めての会議なので遠慮されていますが、次回はぜひまた参画をして、御発言もいただければと思います。
 それでは、事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論、どうもありがとうございました。次回の検討会につきましては、8月22日月曜日10時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
【清原座長】  分かりました。いよいよ酷暑の夏になってまいりました。新型コロナウイルス感染者数も、残念ながらまだ減る気配はありません。どうぞ皆様、何よりも御健康を第一に、そして、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政は、本当に今こそ求められている調査研究の分野だと思います。夏のまだ暑い頃、8月22日、また新たなテーマで皆様の御意見をいただきたいと思います。お健やかにお過ごしください。
 本日の積極的な御参加に感謝します。ありがとうございました。
  
―― 了 ――

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     初等中等教育局初等中等教育企画課地方教育行政係