「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第3回)議事録

1.日時

令和4年4月18日(月曜日)13時00分から15時30分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 地方教育行政の充実に向けた方策等について(委員からの発表)
  2. その他

4.議事録

【清原座長】  皆様、こんにちは。いよいよ令和4年度が始まりました。新年度も、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 その新年度早々の大変お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。ただいまから、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議(第3回)を開催いたします。
 本日は、報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をオンラインにて配信をしておりますので、皆様、どうぞ御承知ください。よろしくお願いいたします。
 まず、事務局より、本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  お手元の議事次第を御覧いただければと思います。
 配付資料一覧に記載をしておりますとおり、資料1から3で、各委員の御発表資料を御用意しております。また、参考資料1から4をおつけしております。よろしくお願いいたします。
【清原座長】  ありがとうございました。
 それでは、本日は議事に入ります前に、前回、御発表いただきました青木委員から補足説明があると伺っております。青木委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【青木委員】  青木です。清原先生、事務局の皆さん、時間を取っていただき、ありがとうございます。今回、補足説明は、前回、吉田本庄市長さんからのお尋ねをきっかけとしまして、情報をアップデートすることができましたことによります。つきましては、この場で共有したいと思います。吉田市長さん、どうもありがとうございます。
 今回は、地教行法の総合教育会議に係る規定で、第1条の4の5項に当たる総合教育会議を構成する首長や教育委員会以外が出席する事例を御紹介したいと思います。
 まず、戸田市の事例です。この情報を把握するに当たりまして、戸田市教育委員会の戸ヶ﨑教育長さん、それから当時の佐藤次長さんのお二人にお世話になりました。ありがとうございます。
 戸田市においては、市議会議員、これは文教関係の委員会の委員長さんを含む6名の方が、平成28年度に出席されています。また、校長先生が2名、平成29年度に出席をされているという事例が確認されています。
 その他の自治体について申し上げます。今から申し上げる二つの自治体は、拡大版総合教育会議という名称を付して、その取組を紹介しています。
 一つ目は長野市です。令和3年度に有識者が出席している事例があります。PTA団体や商工会です。もう一つは京都市です。平成27年、29年度、それから令和元年度に財界や労働界の方が出席されているケースが確認されました。
 これに加えて、鳥取県においては、平成27年度以降、恐らく恒常的に任命されていると思われますが、有識者の方が出席されています。内訳を見ますと、塾といったような教育産業、医学界、PTA、スポーツ界、私学団体といったところからの有識者委員が確認されています。また、東久留米市においても、令和3年度に校長先生が出席されているケースが確認されます。
 こういった情報を集めていく上で、2点ほど補足的に、付随的に分かったことがあります。一つは、会場です。議会の施設を使用するケースも見受けられます。もう一つは傍聴でして、議員さんの傍聴が確認されるケースが幾つか見受けられました。
 以上のことを踏まえますと、私から簡単なコメント1点です。もともと総合教育会議に関しては、私の専門分野である教育行政学においても、首長と教育委員会の協調が大切だというような言い方をしておりました。そういうような観点から調査などもしているわけですけれども、今後は、やはり議会にも着目した分析が必要ではないかというふうに思われます。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
【清原座長】  青木委員、ありがとうございました。大変貴重な情報を共有させていただくことができました。
 この端緒を開いた本庄市の吉田市長さん、何かコメントございましたら、どうぞ。
【吉田委員】  大変詳しい御説明をいただきまして、また、総合教育会議の今後の可能性という意味でも示唆に富むお話をいただけたかなと思っております。大変ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございました。
 それでは、本日いただきました総合教育会議、あるいは拡大版総合教育会議の取組につきましても、今後、私たちとしても共有した上で、機会を見て、また検討を深めていきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、議事に入らせていただきます。本日の議事は、まず1点目、地方教育行政の充実に向けた方策等について、2点目はその他となります。
 それでは、議事1の地方教育行政の充実に向けた方策等について入らせていただきます。
 本日も前回同様、各委員の皆様から御発表いただく予定でございます。吉田委員、村上委員、岩本委員の順番に御発表資料に基づいて、20分程度で御発表いただきます。そして、御発表ごとに質疑、意見交換の時間を設けたいと思います。
 それでは、最初に、吉田委員から、よろしくお願いいたします。
【吉田委員】  皆様、改めまして、こんにちは。埼玉県本庄市長の吉田信解でございます。全国市長会で社会文教委員長を仰せつかっております。清原座長には、首長の大先輩でもいらっしゃいますし、いつも大変お世話になっています。ありがとうございます。
 では、限られた時間でございますので、私の場合、首長、市長から見た地方教育行政についてということで、ちょっと雑駁ではありますけれども、感じていること共々含めて、ざっと話をさせていただきまして、また質疑応答等で、いろいろと御意見を頂戴できればと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 今日は、本庄市の紹介、それから総合教育会議設置後の効果、そして私自身、今、感じている、子どもたちのよりよき未来のためにということでお話をさせていただきます。
 簡単に本市の紹介をさせていただきます。
 本庄市は、都心から北西に約80キロの位置にございます、埼玉県で一番北西端の都市でございます。群馬県と利根川を挟んで接しております。
 本市の優位性ということで、ここに速さ、広さ、ゆとりと書かせていただいておりますけども、速さ、これは新幹線駅もございますので、あるいは高速道路等を使って、いろんなところに大変短時間で行けるという優位性がありまして、地元ではレジャーベースタウンと言っております。
 それから広さ、これは埼玉県というと、皆さま方は、首都圏で大変ごちゃごちゃとしたイメージがあるかもしれませんけども、我が市のほうは県北部で、渋沢栄一の生家もそんなに離れておりません。非常に広大な大地が望める場所でございまして、ゆったりとした、県南あるいは都心では買えない一戸建ての大きな家が造れる、そういう優位性もあるかなと思っています。
 三つ目は、そういった速さ、そして広さ、これを兼ね備えたことから生まれてくる生活のゆとりというか、心のゆとりというか、災害も少ないですし、安全で豊富な、おいしい食材も魅力的なところだと考えております。
 施設の紹介でございますけど、本庄市には早稲田大学のキャンパスがございまして、早稲田大学と一緒に、ミュージアムをオープン。もともとこの建物自体はコミュニケーションセンターといって、様々な会議室等が入っている大学と地元、埼玉県と本庄市、近隣の市町村でお金を出して造った施設なんですけども、こちらのほうでミュージアムを開館いたしまして、古代からあります銅器等が展示されております。
 左側写真にありますのは本市から出土しました、珍しい笑う埴輪でございます。右側は商業銀行煉瓦倉庫、中仙道の宿場として江戸期には栄えまして、それで明治期になりますと、繭の主産地として栄えた歴史がございます。これは繭の貯蔵庫だった倉庫で、今では市の施設として、文化的な催しに使われています。
 自然ということで、骨波田の藤。これは樹齢650年の藤棚、もうすぐ見頃を迎えます。ぜひ、お越しいただきたいと思いますし、写真右側は新幹線駅のすぐ近くにありますマリーゴールドの丘公園は秋になりますと、このようにきれいな花が咲きます。
 お祭りも少し紹介しますと、7月になりますと、このようなけんか神輿、11月になりますと本庄祭り、山車のお祭りですね。非常に見栄えがするお祭りでございます。残念ながら、コロナで2年間できませんでした。今年はぜひ復活してほしいなと思っているところです。
 本庄市の紹介ということで、続いて学校でございますけれども、こういった状況です。小学校が12校、中学校が公立学校4校、私立が2校、計18校ということになっております。最も生徒数の多い学校が小学校ですけど614人、最も生徒数の少ない学校、これも小学校ですけど60人、大きな学校もあれば、小さな学校もあるという状況でございます。
 教育大綱、これは基本理念として、「世のため、後のための教育」という言葉を掲げております。本市は江戸時代の盲目の国学者である塙保己一の生誕地でございまして、本市の教育は、この塙保己一の残した言葉、「世のため、後のため」の理念の下、自ら未来を切り開くことのできる人材を育成するということになっております。
 教育大綱は、六つの柱を掲げております。①確かな学力と自立する力の育成、②豊かな心と健やかな体の育成、③教育環境の整備、④生涯学習の活発化、⑤文化財の保護と活用の推進、⑥生涯スポーツ・レクリエーションの促進ということでございます。
 さて、本題に入っていきたいと思います。
 私どものところで、総合教育会議を設置して、どのようなことがあったかというのを2点、お話をしていきたいと思います。
 まず、事例の1といたしまして、新型コロナウイルスへの対応についてということです。
 その前に、総合教育会議状況をお伝えしますと、平成27年以降、これまで7年間で19回開催をされておりまして、メンバーは私、それから教育委員の皆さん方、そして、事務局として、市長部局のほうで企画課、そこに教育委員会の事務局も入りまして、そして原則、会議は公開されているという形で進められております。7年間で19回開催され、現在、年3回程度のペースで開催をしております。
 事例の一つとして、一昨年の3月、新型コロナ感染拡大の初期に、小・中学校の一斉休校、また卒業式の開催方法など、対応方針を議論いたしました。国からの要請が非常に突然だったため、急遽対応を考えようということで、私と教育長でどうしようかということで、休校はやむを得ないにしても、登校日を設けよう。また、登校日を週2日設けようということを決めまして、早速、総合教育会議を開催していただきまして、会議の前に、教育委員さんには事前に話をして、特にお医者さん等もいらっしゃるので、知見をいただいて、方針を決めて、そして、総合教育会議を改めて3月に開催しまして、皆様方に御了解いただいたということでございます。
 効果として、非常時に教育委員会と首長部局の連携・すり合わせがスムーズに進められたということが言えると思います。学校現場やPTA等からも、いろんな御意見がありますけれども、やはり市全体としての新たな判断材料を得て、そして、その全体としての結論を導き出せたかなと思っております。
 登校日を設けようということは、私と教育長で方向性を決めて、あらかじめ了解をしていたところでございますけれども、改めて開かれた総合教育会議で特に議論となりましたのが、卒業式、入学式の実施方針についてでございました。また、学童保育の状況把握、確認等も、その場において行ったところでございます。
 全国的に卒業式を中止、あるいはリモート、あるいは生徒だけということが行われた学校も多かったわけでございますけれども、教育委員の一人であります医師の先生の知見もいただく中で、保護者を一つの家庭でお一人ということで参加をして大丈夫ですということにいたしまして、感染防止対策を取りながら、各学校とも卒業式、入学式ができたということがございました。
 事例の2をお話しします。貧困家庭・外国人に対する教育サポートについてということでございます。
 現在、市の福祉部による貧困家庭への教育支援というのが始まっておりますけれども、これはもともと貧困家庭への教育支援や、あるいは言語の壁がある外国人の教育サポートということで、総合教育会議の中で議論をされました。これは教育委員さんからの提案によって議論された話でございますけれども、市として、特に貧困家庭に対する支援事業というのを福祉部のほうで進めておりましたので、こういった総合教育会議の御意見も非常に役に立ったかなと思っています。
 具体的にお話しします。教育支援「アスポート事業」ということを本庄市はやっております。もともとは県の事業でございましたけれども、今は市の事業としてやっております。
 背景といたしましては、ここに書いてあるとおりで、生活保護世帯で育った子どもの4人に1人が、大人になったときに再び生活保護を受けているという実態がございまして、本市でも同様の状況がございます。しわ寄せが子どもたちに来ているという状況がございます。
 生活保護世帯が約650世帯ぐらいでございますけれども、このお子さん方、また、特に生活保護世帯のみならず、生活困窮世帯、児童扶養手当100%の受給世帯、あるいは子育て支援課から要請のあった困難世帯等のお子さんに対する学力の面でのサポートをしていこうということになっております。
 要は、貧困の連鎖を断つというためには教育だろうという考えがベースになっておりまして、現在は本庄市内、三つの教室がございまして、中高生が49人参加しております。小学生が14人参加しております。小学生は週2回、午後4時から7時まで、中学生が1回、午後6時から8時までということで、支援していただく方はボランティアの方々であるとか、あるいは大学生の方、あるいは教員を退職した方、こういった方々が学校が終わって、その後、お子さん方に宿題の面倒見てあげるとか、そういうことをやっております。
 最近では、この事業は、ただ学習支援をするだけではなくて、いわゆる生活習慣等についても考えていきましょうということで、日常生活の見直し、例えば、掃除をしましょうとか、一緒に御飯を作って、食べて、それを片づけましょうとか、生活支援、食育支援なども行っておりますし、また、野外活動ということで、一緒に外で野菜を作ったりだとか、そんなこともしながらボランティアの方々が困窮世帯のお子さん方に寄り添っている、そういう事業を続けているところでございます。
 このアスポートですけれども、明日へのサポートという意味、それから明日に向かって船出する港、明日とポートを組み合わせた造語でございまして、埼玉県が始めていただいている事業ですけれども、現在では本庄市のほうで、県から補助金はもらっていますけれども、市の事業として行っているところでございます。もともとは高校生から始まりましたけれども、今では小学生も支援対象にしているという事業でございます。
 総合教育会議において、やはり議論されたのは、学校現場では、なかなかフォローしきれない子どもの貧困。先生方が学校に来るお子さんの状況を見て、このお子さんが少し服が汚れているとか、問題があるのではないかというときに、これを市長部局の福祉部門につなぎまして、福祉部門がそのお子さんをフォローするという、そういう体制をつくっておりますけれども、学習面でもお子さんをフォローすることによって、この貧困の連鎖を断っていこうということ。これは教育委員会と福祉部の連携によって対応ができてきたかなと考えているところでございまして、そういった意味でも、この総合教育会議が果たした役割は大きかったのではないかと、委員の皆様方からの御提案によって、この福祉部門と教育部門の連携が、より一層図れるようになったということがあったかなと感じております。
 教育長のコメントに、そのことが表れていまして、学校では、家庭環境や背景といった観点から学力格差を問題視していくということはなかった。学校の中では、貧困の状況は分かりにくく、家庭訪問も行いにくい。貧困と学力の問題を取り上げていただき感謝しているという言葉もございました。
 3点目です。子たちのより良き未来のためにということで、幼児教育ということを、まず課題の一つとして取り上げさせていただきます。
 これは本市だけではないと思いますけれども、本市7万8,000人の市ですけれども、実は公立の幼稚園はございません。ですから、地方教育行政というと、小・中学校に限定されている状況がございます。
 ただ、これはやはり保育園や幼稚園から小学校へ円滑に接続できる体制の必要性というのは認識しておりまして、それはお子さんの育ちの面もそうですけれども、やはり幼児教育という観点を、もう少し自治体としても、しっかり考えていかなきゃいけないということを感じているところでございます。
 本市には市立の高校もございません。ですから、高等教育についての議論もない、いわゆる小・中学校に限定されている。どこの自治体でも結構こういうところは多いんではないかと思いますけれども、特に幼児教育については、しっかりと考えていかなきゃいけないと感じております。
 これは、ざっと図でしか表していませんけど、現場で起きていることというか、児童虐待の課題、あるいは子どもの貧困、発達支援等の課題あるわけです。
 発達支援については、本市は独自で発達に係る支援する機関を、もう十五、六年前ですが、設けまして、幼稚園や保育園で気になるお子さんがいらっしゃったら、保護者の方と一緒になって、あるいは幼稚園や保育園の先生と一緒になって、その子のケアをしていく。それを小学校にしっかりつなげていくという事業を行っておるところでございます。保育所、こども園、幼稚園、みんな違います。学校にも、いろんなところに行きますので、やはりこの連携というのは非常に大事だと思っています。課題のあるお子さんのみならず、やっぱり一人一人のお子さんにとって最適な学びの環境というのを考えていくことが必要であろう。大きな環境の変化が、幼稚園、保育園から小学校に行くときにありますので、そこをしっかりとケアしていくということが大事であろうと思います。
 もう一つ、私とすると、やはり公立学校のよさ、いろんな子が来るわけですね。いろんな子が来る中で、その中でいろいろな学びというのもあるんだろうというふうに思っております。限定された教育機関ではなくて、万人に開かれた教育機関としての公立の小・中学校の意義というものを考えたときにも、様々な環境の中で育ってこられたお子さん方を受け入れて、そして、そのお子さん方のそれぞれの育ちをサポートしていくわけでございますので、保育園、こども園、幼稚園等々の情報の共有と共通認識、議論する場、本庄市として、どういうふうにお子さん方に向き合っていけばよいか、みんなで考える、そういった体制づくりが本当に必要だなと感じております。
 今、お子さんの育ちの環境についてお話をしましたけれども、今度は教育環境ということで、いわゆるハード面の整備のことについても、ちょっとお話をさせていただきます。学校施設等の今後について、我が市は、同じ市内でも、人口が増加している地域もあれば、減少している地域もありまして、実情は非常に異なっております。
 地域の実情は、市内に三つの駅があるんですけれども、拠点の市街地では人口増、または人口が維持されています。学校は各学年が複数クラスでございます。上記以外の地域では人口減少が進んでいて、小規模校、地区の活性化も非常に課題です。市内には、既に休校となった学校もございます。
 ある人口減少が進んでいる地区からの声として、このような言葉も寄せられました。本庄市のPTA連合会が主催する教育懇談会が年に1回開かれまして、私と教育長が参加しまして、PTAの会長さんのみならず、PTAの役員の方々も含めて、いろいろ議論する場があるんですけれども、近年、急激な児童の減少が起こっていますけれども、地区の活性化、地域づくりについて、どのような考えがあるのかという、非常に鋭い、大事な意見等も寄せられているところでございます。
 これから進めなければならないのは、やはり各地区の意向、それから特性の十分な調査、地区の実情に即した学校施設等の在り方の研究もやっていかなければなりません。これは単に学校の施設のみならず、例えば、公民館であるような、そういう社会教育施設、あるいは老人福祉センターのような福祉施設、こういった市の公共施設のありよう全体が、これからの人口減少時代、そしてまた財政的にもなかなか困難になるであろう時代を見据えますと、考えていかなければならないような時期に来ております。
 市では、公共施設の再配置の検討について議論を本格化させるところに来ております。地域レベルの教育行政の充実、これをしっかり図っていかなければなりませんけれども、これは単に、例えば、学校をどうする、公民館をどうするというだけではなくて、コミュニティのいわゆる再構築、コミュニティのありようを、みんなでもう一回考えていくということにも非常に密接不可分な課題であるというふうに思っております。
 学校というのは、その地域によっては、これは地方に行けば行くほど、高齢者の方も学校で育った経験を持っているわけですし、地域の文化の中心でもあるわけでございます。例えば、統廃合等の問題が起きたときに、やっぱりそれは子どもたちのことはもちろんですけれども、地域全体のことを考えていかなければならないと思います。
 本庄市では、これから議論が始まるところですけれども、最後のページをお願いできますでしょうか。
 まさに子育て、保育、養育、また学校。学校は、実は体育館等は避難所にもなるわけでございますので、防災機能の強化というのも非常に大事でございます。例えば、今、学校の空調整備がどんどん進んでおりますけれども、普通教室が約93%ぐらいですか。令和2年時点で。体育館については、まだ9%ぐらいしか進んでおりません。社会教育施設というのみならず、避難所としても機能を強化していかなければいけないという課題もございます。もし、学校の統廃合ということになったときに、その地域のほかの施設等の絡みはどうなってくるのか、非常に大きな課題がございます。コミュニティの問題、自治会の問題、それから、先ほどもちょっと申し上げましたけど、公民館も、これもそのありようについて考えていかなければならない。我が市もそうですけれども、公民館も大変老朽化が進んでおりますので、そのよりよい在り方を考えていかなければなりません。まさに学校、お子さん方をどう育てるか、施設の課題、それから人と人との支え合い。
 私、ここに書いたんですけど、「人と施設 つながりと共有 支えあいとチャレンジ」、あらゆる方面から、地域のお子さん方のよりよい育ち、そして、また私は、いろいろな会議で申し上げておりますけど、「空間が人をつくる」というふうに考えております。こういったこともしっかり考えながら、お子さん方のよりよい幼児教育と小学校のかけ橋についても考えていかなければなりませんし、また、地域のコミュニティのありようについても考えていかなければならない。このような大きな課題を抱えながら、日々、努力をしているという状況でございます。
 ちょっと雑駁ですけれども、現状報告ということで、私のほうからお話をさせていただきました。ありがとうございました。
【清原座長】  吉田市長、ありがとうございました。
 市長から見た地方教育行政について、特に総合教育会議の設置後の効果を中心にお話しいただきました。皆様から御質問、御意見いただく前に、ちょっと確認をさせていただきますが、吉田市長さん、本庄市の場合、教育委員の皆様の構成ですが、先ほど医師の方がいらっしゃるとおっしゃいましたが、そのほかの構成、属性については、どのようでいらっしゃいますか。
【吉田委員】  教育委員の構成ですけれども、今もお話ししました医師、それから大学の先生がお二人いらっしゃいます。それから、会社の社長で、学校にお子さんがいらっしゃる保護者でもある方がお一人、大学の先生はお二人いらっしゃいますけれども、うちお一人が女性の方です。その大学の先生ですけれども、もう一人の男性の方は、大学の教授でもあるけれども、地域のお寺の住職さんです。そういう構成になっております。
【清原座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、皆様、ただいまの吉田委員の御発表につきまして、御質問、御意見をいただきたいと思います。画面上で挙手いただくか、あるいは。もう手が挙がりましたね。それでは、戸ヶ﨑委員から、まず御発言、お願いいたします。
【戸ヶ﨑座長代理】  吉田市長さん、大変勉強になりました。いつもFacebook等でもお取組を拝見しております。私からは質問ではなくて、19ページと20ページについて、大きく二つ意見を申し上げます。
 まず、19ページの事例②の内容に関して、「学校では家庭環境や背景といった観点から、学力格差を問題視していくということはなかった。」といった前教育長さんの御発言があったようですが、同じ埼玉県でありますが、他自治体の教育長の一人として、この件について簡単に意見を述べさせていただきます。
 本市においては、十数年前から児童生徒の学力不振や問題行動、不登校等が発生した場合、目の前の状況以上に、その背景や家庭環境を、担任だけではなく組織として把握することを重視しています。同じ市内の学校でも、家庭の社会経済的背景(SES)と学力の関係や、不利な環境を克服している児童生徒の特徴などについてもアンテナを高く対応せざるを得ないなど地域差があります。
 例えば、宿題忘れ一つを取っても、繰り返す場合には、「何度言ったら」と指導するのではなく、「何度言っても変えられない」状況に教師が疑問を感じなければなりません。うっかり忘れが続くだけなのか、その子の発達障害のような特性によるものなのか、家庭環境により宿題をやる環境がないのかなど、子供に寄り添い様々な背景を見抜かなければならない状況にあります。困った子は実は困っている子で、その子を繰り返し指導や支援することで、その子はもちろんその子以外の子との信頼関係も築けることになるからです。
 先日も申し上げました、現在、「授業や生徒指導を科学する」という私の強い思いから、教育委員会内に「戸田市教育政策シンクタンク」を設置しています。今年度から、データ利活用の一環として、教育委員会内や首長部局にある子供の様々なデータを一元化、データベース化し、子供の困難な状況をいち早く察知する仕組みづくりを国の実証事業としても取り組んでいきたいと考えております。
 続いて20ページに関して、本市においても公立の幼稚園はなく、幼稚園・保育園、小学校との円滑な連携体制は課題となっています。
 先日の中教審の幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会でも話題になっているとおり、幼児教育は小学校教育の前倒しではないという認識や遊びを通じて学ぶという幼児期の特性に対する認識を小学校と共有することが大切になります。しかし現状は、行事などの交流にとどまっており、カリキュラムの接続にまでは至っていないなどの課題があります。その特別委員会において示された「幼保小の架け橋プログラムの実施に向けての手引き」においては、「架け橋コーディネーター」の役割が大いに期待されています。本市においては、各校園における連携窓口として、内部のコーディネーターの設置も大切になってくると考えております。
 また、「家庭環境の配慮」も強調され、個々の子どもの生活実態や家庭の環境への目配りが一層求められています。そのためにも、市長部局と教育委員会との一層の連携が求められています。こういった取組を通して、各校園のコーディネーターとつながりながら、各学校が自走できる仕組みづくりをしていく必要があると考えています。
 長くなりました。以上です。
【清原座長】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございました。
 家庭環境と学校教育との関係に、特に市長部局とデータも共有しながら取り組んでいらっしゃること、そして幼稚園、保育園、こども園と小学校の連携にはコーディネーターというのも重要ではないかと。いずれにしても教育委員会と市長部局の連携について御意見いただきました。
 御質問ではありませんが、後ほどまた吉田委員には、皆様の御意見伺った上でお答えいただくとして、まず、それでは、梶原委員から御発言お願いいたします。
【梶原委員】  吉田市長さん、ありがとうございました。大変、私どもと共通する点が、提案いただきました。特に20ページの幼児教育の点とか教育環境というところでございます。まず、2点ほど、提案いただいた中で、共通する部分で御意見と、私どもの課題を申し上げたいと思います。
 一つは、幼児教育の部分ですが、私どもも公立幼稚園が一つに、私立のこども園、保育園等ございますけど、一番課題になっているのが、町の子どもは全て宝だという視点です。そうすると、それぞれの園がばらばらだといけません。小学校に入学する時点では、ある程度一定の方向性を持ちながら、アプローチ・カリキュラムとか、または全ての園の各私立の園、公立の園の先生方の研修という部分で、今年から協議会を立ち上げて議論しています。その中で一つ、先週金曜日でしたが、私からやりたいなという思いを町長に伝える前に、町長から幼児教育センターをつくったらどうかとありがたい提案をいただきました。それは、町の全体の研修とか、いろんな体制整備をしていく中で、どこが責任をもつのかなど限界を感じる部分があったのです。例えば、公立幼稚園が研修を行いますから民間の幼稚園子ども園に来てくださいということで、教育委員会が公立幼稚園中心にリーダーシップを発揮しても、そういう公式な組織がございませんでしたので、就学前教育と義務教育の虹いろの架け橋協議会という組織を立ち上げました。その矢先に、来年から幼児教育センターをつくったらどうかと提案を町長からいただきましたのでそのセンターが公立、民間とわず職員の研修を担いながら、全体的な保育、幼児教育の質を上げていこうということでつくるように、今、準備を始めたところです。
 それとあと、やっぱりアプローチ・カリキュラムをきちんと共有するということが大事、そして、小学校からのスタート・カリキュラムをスムーズに持っていくということでやっております。本当に同じような、今あったように、行政がこの幼児教育も一緒になって、全体で進めるべきかなというところです。
 それともう一つ、家庭環境がいろいろございまして、やっぱりそれも幼児教育の影響も大きいということを感じております。この辺り、皆さんからまた御意見聞きながらということであります。
 それとあと、教育環境で、22ページからございました。25ページにございましたように、公共施設の在り方という点では、先ほど吉田市長さんからありましたように、施設の防災施設、また避難所とかもございます。一番大事なのは、やっぱり地域の施設が、コミュニティとかつながり、絆の場になっていたということが、単なる施設じゃない、建物じゃない、皆さんの心のよりどころということがありましたので、これからは本当に人口減少が進む中で、どうやっていくかということです。魅力ある施設づくり。コミュニティとしての機能、新たな機能と複合ということが大事かなと感じました。本当に、まさしく私どもと同じ意見だなと感じたところでございます。
 先ほど申し上げていただきました空間が人をつくる。これは本当に、あ、そうか、大事なことですねということで感じました。ありがとうございました。勉強させていただきました。
【清原座長】  どうもありがとうございます。
 今、梶原委員からも、幼稚園、保育園、こども園と小学校のスムーズな連携の重要性、そして2番目に、教育環境の重要性がございました。
 この部分、特に吉田委員が御説明されましたように、学校施設というものが、単に学校の児童・生徒のためにだけ機能しているのではなくて、防災や、あるいはコミュニティの核として機能している部分があるので、単に統廃合して済むということではないという、大変重要な問題提起を今日はいただきました。したがって、学校施設や公民館等を考えることは、まさに一つの重要な課題として、教育委員会と市長部局の信頼関係と共有と取組がなければならないということで、これについても、ただいま梶原委員から御意見ございましたが、今の戸ヶ﨑委員、そして梶原委員の御意見につきまして、吉田委員、何かお答えございましたら、あるいは思いがございましたら、御発言よろしくお願いいたします。
【吉田委員】  戸ヶ﨑先生、梶原先生、ありがとうございました。戸ヶ﨑先生から、困った子は困っている子、まさにそのとおりだというふうに思っております。
 ここに教育長の文章をあえて載せさせていただきましたけど、教育長と私もよく話したときに、現場の先生方というのは、この子は御家庭にいろいろ課題抱えているな、分かるんだと。だけど、それを学校だけで何とかしようということは、これは無理だと。そのときにつなげられる市長部局との連携があればスムーズにできる。これを今、我が市では、しっかり構築していこうというふうに考えているところでございまして、何でもかんでも先生がしょっちゃうということは、かつての先生であれば、よく言われるのは、子どもさんのこと、お弁当まで先生が面倒見てあげたなんていう昔々の話がありますけど、今、そういう時代とはもう全然違う、非常に根の深い課題が各家庭にも横たわっているんですよね。だから、それはもう多くの人たちでアプローチしていかなければなりませんし、この後、また私、考えたいと思っているのは、さっき清原座長から家庭という話もちょっと出ましたけど、まさに家庭のありようというのは、すごく大きな社会的な問題として、私はあるというふうに思っています。
 これは今日の本題からは少し外れるんですけれども、こども家庭庁できますが、家庭という名前がついてよかったなというふうに思っていまして、つまり公的な面でお子さんをケアしようとするだけではなくて、やっぱり社会の最小単位である家庭のありようみたいなものも、いよいよ我々は考えて議論していかないと、社会全体がもたないんじゃないかなと、そう感じる事案、事例が、今、本当に私の町でもございます。これは先ほどの梶原先生のお話にも通じるところかなと思います。学校の教育のありよう、幼児教育のありようを考えたときに、それを支えていく、子どもたちを支えていく一番最小単位の、しかし、一番、本来しっかりしていなければならない家庭の課題、ここにもアプローチが必要だということだけ、ちょっと指摘をさせていただきたいと思います。
 それから、幼児教育と小学校の連携、これについては、私、さっき梶原先生から、全ての子どもたちは町の子なんだというお話ございました。その視点、すごく大事だと私は思っています。
 だから、これは前の保健部長の叫びなんですけれども、我が市に幼児教育についての理念、指針がないって、やっぱりおかしいんじゃないですかということを、子育て支援を担当する当時の部長から、私、言われたことがございます。これは、じゃあ、つくろうよって、私、言ったんですけど、そんな簡単にはできないと分かっていますけど、でも、必要だな。我が市として、幼児教育をどうすべきか、これをしっかりまた考えていかなきゃならないなということを感じております。
 ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 今、皆様の御議論になりました、「困った子は困っている子」、あるいは「全ての子どもは全て町の子ども」であるならば、やっぱり幼稚園、保育園、こども園だけではなくて、そうした園に通っていない、未就園児も視野に入れていくということが必要なのかなと、今、受け止めさせていただきました。
 もう少しお時間ありますが、ほかの委員の皆様で、吉田委員の御発言に対して、御意見、あるいは御質問がおありになる方はいらっしゃいますか。あとお一人ぐらい、いかがでしょう。よろしいでしょうか。
 岩本委員、どうぞ。
【岩本委員】  岩本です。御発表ありがとうございます。
 一つ、吉田市長、質問で、こういう観点はどう市長から見られますでしょうかというところなんですけれども。総合教育会議を活用したというか、さらに強化した、首長部局と教育委員会の効果的な連携の在り方というところで、例えばなんですけれども、先ほどありました施設設備整備とか、そういった課題だとか、幼保と小学校の接続の話だとか、こういった教育委員会の中だけではちょっと答えが出ないとか解決しにくいような課題を、総合教育会議がアジェンダ設定、課題設定をして、その下にワーキングチームなりを部局横断で場合によっては有識者も入ってつくって議論をし、それをまた次の総合教育会議に持ってきて、そこでまた議論するというような形で、単発の総合教育会議というよりは、本当に重要なアジェンダを設定し、教育委員会だけで判断できないものに対して、そういう知見を、議論を積み上げながら、市としての大きい判断だとかに持っていくような総合教育会議の活用の仕方だとか、部局横断で取り組むべきテーマの課題解決という、その発想とかというのがあり得るのか、いや、そういうことじゃないんだ、そういうふうにはちょっと難しいだろうみたいなことなのか、実際、本庄市さんのほうでは、どういうふうに考えられるかなというところで御質問なんですけれども、いかがでしょうか。
【清原座長】  ありがとうございます。総合教育会議の運用の在り方についての御質問ですが、いかがでしょうか。
【吉田委員】  岩本さん、ありがとうございます。ヒントをいただいたような感じがします。実は、公共施設の在り方等については、総合教育会議でもしっかり議論をした中で、最終的には地域に出向いて。職員もですね。私も最終的には出向いて、地域の人たちと車座で、いろんなことを話さなくちゃいけないよねということは考えているんですけれども、まず最初のキックオフというか、オーソライズという言葉が、ちょっといいかどうか分かりませんけど、まず、スタートはやっぱり総合教育会議で私はいいんじゃないかなと、そうあるべきじゃないかなと思っています。
 今、お話しいただいた中で、それをまたアジェンダでもって、しっかりフィードバックさせて、今どのぐらい進んでいるのみたいな、そういうふうに総合教育会議を活用するというのも非常に大事な視点かなというふうに思いましたので、活用させていただきたいと思います。ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。これは冒頭、青木委員から補足していただきました総合教育会議の中のメンバーの多様性とか、議会との関係とかとも関係しますけれども、テーマによっては、今、岩本委員が言われたように、ひょっとしたら少し小さなグループで練って、それをまた総合教育会議で審議するというような手法もあるかもしれません。総合教育会議を地域の実情に応じて、あるいは課題に応じて、柔軟に運営していく方向性というのも、今後、皆様と提案していければなと感じました。
 それでは、ほかの委員の皆様、もしなければ、次の御報告に移らせていただき、また、その後、戻っていただいて、意見交換できればと思います。
 それでは、続きまして、東京大学大学院教育学研究科准教授の村上委員から御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【村上委員】  皆さん、こんにちは。東京大学大学院教育学研究科の村上祐介と申します。本日は発表の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 私からは、地方教育行政における改善の視点と具体的提言ということで、幾つかお話をさせていただきたいと思いますが、私はどこかで実践や実務をしているわけではありません。研究者なので、今までの御発表とは少し違って、制度の枠組みや改善を見る視点をお話しさせていただければと思います。
 では、次のスライドに行きたいと思います。
 最初に結論を申し上げますと、私は、後で申し上げますが、2013年に教育委員会制度の存廃を議論した中央教育審議会の教育制度分科会で臨時委員をしておりました。そのときに大津市のいじめ自殺事件の対応をきっかけに制度改革の議論が出てきたわけですが、そのときに幾つか思ったことがあります。
 いわゆる教育ムラ、この会議でも何度か出てきたような気がしますが、いわゆる教育専門職の集団、教員とか事務局職員とか、いわゆる教育関係者のコミュニティが、すごく厳しく外から見られているなということを感じました。これは私も教育学者なので、教育ムラの一員かもしれませんが。
 教育ムラが適切な対応ができてないというときに、外から統制をするというのと、中から統制をして、自律的にチェック・アンド・バランスをするということと、二つあると思うのですけれども、外からの統制で、チェックをするということは大事だと思うんですね。学校とか事務局がうまく機能しないときに、外からチェックをするということは大事だと思うのですが、そのときには、必ずしも首長だけとか政治だけではなくて、多元的な仕組みづくりということが望まれるであろうと思います。それは、例えば、教育委員もそうですし、保護者もそうですし、地域住民、学校運営協議会を活用するといったことなど、多元的な仕組みがあるべきではないかということを主張したいと思います。
 特に法的な面でいうと、教育委員の機能や権限には、まだ改善の余地があると思っています。活性化ということは昔から言われてきたわけですけれども、今回、2014年の改革で、教育委員の権限というのは法的には弱められたわけですが、制度的にも運用的にもやることは、やはりあるのではないかと思います。
 そうしたことで、例えば、教育長のチェック機能の強化であるとか、あるいは教育委員が力を発揮できるような環境づくりということは、改善の余地があるんじゃないかということを申し上げたいと思います。
 二つ目が、教育ムラの中でのチェック・アンド・バランスの仕組みをどうつくるかということで、非常に難しいことではあるんですけれども、教員とか事務局職員とか教育関係者のコミュニティの中で、どういうふうに内部統制する、内在的な統制をするかということが改善を図る上で最大のポイントじゃないかなと、今回、私は思っております。
 そのときに、外からのチェックというと、国とか県とかは外部になると見ることもできるんですけれども、教育関係者のコミュニティという点でいうと、文科省とか都道府県教育委員会というのも市町村の教育委員会事務局と同じ教育ムラの中なので、文科省と県教委と市町村教委のチェック・アンド・バランスも指導、助言だけではなくて、お互いの情報交換であるとか、情報共有であるとか、支援の仕組みとか、そういったことも含めて、どうやって教育ムラの中で、うまくチェック・アンド・バランスを働かせていくかということを考えなきゃいけないのではないかということを主張したいと思います。
 以上が簡単な結論ですけれども、次に自己紹介させていただくと、専門分野は教育行政学です。青木委員と同じ専門分野になります。研究対象は、主に教育委員会制度や地方教育行政で、博士論文は教育委員会制度について実証的に研究を行って、博士号を頂きました。そうした経緯もあって、先ほど申し上げましたように、2013年に中央教育審議会教育制度分科会臨時委員として地方教育行政法改正の議論に参画しました。
 今回の調査研究協力者会議のメンバーの中では、2013年の教育制度分科会に入っていたのは私だけでして、そのときの経験とか思いも踏まえて、今日はお話をしたいと思います。
 まず、もう9年前になるのですけれども、中教審の議論を振り返って思ったときに、教育委員会制度の存廃をめぐって、皆様も御承知おきのとおり、非常にシビアな議論をしました。中教審でここまでシビアな議論をするということはそんなにないと思うんですけれども、大変な審議だったというふうに感じております。そのときに思ったのは、冒頭にも申し上げたとおり、やはり教育委員会事務局と学校に対する世論の不信というものを、私自身は感じました。
 この2013年の中教審あたりで教育委員会制度廃止ということが議論されたわけですが、これは端的に言うと、非常勤の教育委員ではなくて、公選された首長が教育委員会事務局、それから学校と教員を直接統制するということを企図したものというふうに理解をしております。
 このときの議論を外部、内部というふうに分けて考えると、問われたのは教育ムラの外からのチェックとか統制は誰が行うのか。教育委員なのか、市長なのか、あるいは多元的なのか。もう一つ、教育ムラの内部統制というのはどうするのか。これは事務局のお話、事務局改革が重要という議論は当時はしたんですけれども、教育委員会を続けるかなくすかということに最終的に議論が収れんしていって、ほかのことは正直、あまり話ができなかったということが個人的な感想としてはあります。
 現在も学校での事件、事故をめぐって、様々な報道が時折見られますが、個人的には、依然として世論の不信というものは完全には解消されていないのではないかというふうに感じております。
 そして、2013年の中教審の議論のときには、教育行政の責任の明確化と教育行政の政治的中立性・安定性・継続性の両立というものが掲げられましたが、これは相矛盾する側面がありました。責任の明確化というのは権限集中が望ましいのですけれども、政治的中立性・安定性・継続性というのは、権限や権力を集中させると維持しづらくなるということで、相矛盾する側面を両立しようとしたので、具体的な制度に落とし込むときに、かなり難航したということで、最終的に現行の教育委員会制度に落ち着いたということです。つまり、合議制執行機関は維持するけれども、責任者は教育長とするということで決着したという経緯があります。
 この教育制度分科会で取りまとめというか議論を進行したのが小川正人座長だったわけですが、その小川座長が、当時、改革を振り返って書いたものがあるのですけれども、そのときに書かれていたのが、スライドの下線部にありますが、教育長以下の事務局の改革に手をつけず、逆に教育長の地位、権限を強めた上で、教育長に対する市長の関与を強化した。このことは、ある意味、本末転倒ではなかったのか。つまり、事務局の改革が本丸であったのに、そのトップである教育長の権限を強めて、さらに首長の関与を強化したということは、ちょっと筋が違っていたんじゃないかということを書かれていたと私は解釈しています。
 そして、小川座長はまた、教育委員会制度の本来の理念は、教育に関する地域住民の様々な考え方を尊重する立場から、住民間の論議を大切にし、そうした論議を通じて形成される住民の意向、要求を反映させて、教育行政運営を行うという教育の住民統制の考え方、つまり専門家、教師、教員、学校関係者でもなく、そして、首長のような、いわゆる職業政治家でもない。教育委員、一般市民の教育委員が、合議制で多様な考え方を教育政策に反映させるということが教育委員会制度の理念であるというふうに述べています。このことが教育委員会制度の存在意義とか理念というふうになるかなと思います。
 もちろん、アメリカなどでは教育委員は公選ですので、ある種、政治家ではあるんですけれども、報酬がないか少ないので、首長などの職業政治家とは、やはりちょっと違うと思うんですね。教育委員が合議制で多様な考え方を反映させるというのが、改めて振り返ると、教育委員会制度の存在意義ということになるかと思います。
 ここからが、具体的な提案や、提言ということになるのですけれども、2014年の改正では、教育委員の権限は、法的にはやはり弱体化したと言わざるを得ないと思います。一つは、教育長が代表者になったことで、教育委員会の教育長に対する指揮監督権は削除され、合議制の決定は維持されたが、いわゆる教育長に対する指揮監督とか、それから形式上ですけど任免権もなくなったということです。
 最近、教育委員がちょっと軽んぜられているのではないかという事例が見られたんですが、それは具体的に言うと、東京都のパラリンピック観戦の事例で、これは報道でもありましたが、教育委員の多数が小学校のパラリンピック観戦に反対したが、教育長、事務局側は、報告事項なのでということで、パラリンピック観戦を押し通したということが、東京都の教育委員会でございました。これは教育委員会の多数が支持する意見が通らずに、教育長、事務局が決めたことが通ってしまうというふうにも取れるわけで、これは仮に意見がもし逆であったとしても、教育委員会制度の趣旨から考えると、非常によろしくない事例であると個人的には思っています。
 教育委員による事務局のチェック機能が働きにくい。これは2013年の中教審のときに、当時の早川岐阜市教育長が、教育委員会というものは、ふだんは教育長とか事務局に任せていいんだけれども、いざというときにセーフティーネットとしてチェックをするのが大事なんだということをおっしゃっていたわけですが、そのセーフティーネットも働きにくいような環境になっているのではないかというふうに思います。東京都の事例などは典型的な例かと思います。
 そこで、一つ、この会議で考えてもいいのかなと思うのは、教育委員の権限の強化というところでして、これは法改正を伴うのでハードルは決して低くないのですけれども、やはり運用だけでは限界があって、教育委員の権限を法的にももう少し強化する必要があるんじゃないかと思っています。一つは、教育長の任命、それから罷免に関して、教育委員の関与をもう少し制度的に担保したほうがいいのではないかということです。理想を言うと、教育長の人事案が出たときに、議会と同様に、教育委員会の承認とか同意が必要ということが理想かと思うのですが、それ以外であると、例えば、首長に申出をするであるとか、あるいは教育委員への意見聴取を義務づけるとか、教育長の人事に教育委員が関わったほうがいいんじゃないかというのが一つの意見です。
 もう一つ、これはちょっと細かいことになるのですけれども、例えば、教育委員会の会議での表決は、教育長も加わったうえでて同数の場合には教育長が裁決できるというふうになっていて、これは教育委員の人数によっては、教育委員の多数の意見があっても、そちらに決まらない。教育長が支持すると、かなりそちらが強くなるという仕組みになっています。細かいことではありますが、例えば、教育長は最初の表決からは外れて、可否同数のときのみ裁決するというふうにすると、教育委員の権限強化につながるかと思います。
 これは例がありまして、例えば、国でも、国家公安委員会は、政治的中立性の配慮から、委員長が最初の表決には加わらずに、委員の可否同数のときのみ委員長が裁決するという仕組みになっています。これはほかの行政委員会にはなくて、国家公安委員会が政治的中立性の配慮から、そのような仕組みを取っていて、教育委員会も政治的中立性の確保ということが大きな意義なので、制度的には、こういったことがあってもいいのかなと思っています。
 次に、今度は運用上の工夫なので、法改正を伴わなくてもできると思うんですけれども、戸ヶ﨑委員が以前の会議でおっしゃられていた教育長に対する360度評価は、教育委員も含めて積極的に行ってもいいんじゃないかと思います。これは地教行法26条を使っても使わなくてもできると思うんですけれども、教育長に対する教育委員の評価というものを行うということです。
 それから、もう一つが、教育委員が何か分からないことがあったときに、まず事務局とか教育長に相談して、あと文科省の初中企画課にもたまに電話はあるそうなんですけれども、例えば、事務局に相談しづらいような案件があるときに、外部にセカンドオピニオンを得られるような相談窓口があってもいいんじゃないかというように思いました。教育委員さんや教育長さんの新任のマニュアルなんかも見せていただいたんですが、問合せ先の電話番号は書いてあるんですけど、相談窓口みたいなことは一切書いてなかったんですね。例えば、地方教育行政の実務経験者であるとか研究者などが委嘱を受けて、そうしたセカンドオピニオンとか相談を教育委員、もちろん教育長からもあっていいと思うんですけど、受け付けるような仕組みがあってもいいかなと思います。
 これは、例えば第三者機関をつくってもいいのですけれども、現実的には、例えば教育委員会連合会なんかでやってみるということがあってもいいんじゃないかと思います。教育委員さんが何か困ったときや相談したいことがあったときに、事務局とか教育長さん以外に相談できるところがなかなかないんじゃないかなというふうに思いました。
 それから、研修とか教材の充実ということは、もうずっと言われているわけですけれども、コロナ禍でオンラインが普及したので、この点に関しては、コロナ禍以前と随分状況が変わったんじゃないかというふうに思います。オンライン会議とかオンデマンド教材などで遠隔で教育委員が学べるという環境は、かなり劇的に変わった気がするので、それをうまく活用するということが望まれると思います。
 それから大事なのは、先ほど申し上げたように、教育ムラの内部統制、内在的・自律的統制と言ってもいいかもしれませんが、特に危機管理の場合に問われることが最近は多いと思うんですけれども、平時であっても、内在的・自律的な内部統制をどういうふうに機能させるかということです。これは私もなかなか具体的にいい案があるわけではないんですけれども、大きくは三つぐらいの側面に分けられるかと思います。
 一つは、事務局と学校との関係で、これは教育長の皆様はふだんなさっていることかと思いますが、学校管理職と指導主事含めて、事務局職員と学校の関係をどうするか、また事務局内部の危機管理の仕組みですね。以前、ある県の教育委員会に調査に伺ったときには、県の教育事務所に行政職の危機管理担当を置いているという話も聞いたことがありますが、危機管理の仕組みをどう構築するかという点も含みます。
 それから、事務局内部での関係は、この会議でも行政職と教育職との融合や、教育行政のプロをどう育成するかということもありますが、要するに事務局内部のガバナンスをどう効かせるかという話になると思います。
 それから、国と都道府県と市町村の関係ということもあると思うんですけれども、例えば、学校の設置者である市町村が対応し切れないような深刻な事態があった場合に、今でも国とか都道府県教育委員会とか支援するわけですけれども、もう少し制度的に、何か手だてはないかということを考える必要があるんじゃないか。もちろん、地方分権という趣旨があるので、国とか都道府県の関与というものは慎重であるべき面もあると思うんですけれども、問題が大きくなったときには、文科省とか教育委員会が積極的に問題に対処するという仕組みはあってもいいんじゃないかと思います。また、文科省や教育委員会が、市町村教育委員会だけではなくて、学校とか保護者、児童・生徒を直接支援するような仕組みがあってもいいのではないかとも思います。つまり、教育ムラと言ったときには、教育委員会事務局の中だけを問われることが多いわけですけれども、文科省と都道府県教育委員会を含めてトータルで内部統制を効かせるという発想があってもいいんじゃないかなと思います。
 戸ヶ﨑委員もおっしゃっているように、基本は学校の自走が望ましいのであって、現場の自立性や工夫を尊重するのが原則だと思います。必要があるときには、教育ムラの外の市長や教育委員によるチェックや連携も大事なんですけれども、専門家の中で、チェック・アンド・バランスを内在的にどう機能させるか、それを制度的にどう担保するかということが問われているのかなと思います。
 結論としては、地方教育行政の何が問題なのかというところでいうと、教育ムラの内在的統制が十分に働いていないことがある。必ずそうとは言えないんですけれども、時折そういう事例がある。内在的な統制が働かなければ、やはり自律的な意思決定はできないと思いますので、ここをどうするかということがやはり肝ですが、具体的な制度や工夫というのは確かになかなか難しい面があると思います。
 それから、外在的な統制の仕組みというのももちろん必要だと思うんですけれども、これは首長に一元化すれば済むという話よりは、多元的な仕組みで様々な観点で多様な目でチェックをしたほうが、多様な住民意思の反映とか、政治的中立性の確保の上でも望ましいと思います。
 その中でも、特に教育委員については、教育長への牽制機能とか、教育委員の独立した判断を支える仕組みといったような機能と権限の強化というものは、かねがね言われていることであるかもしれませんが、やはり具体的に検討されるべきではないかというふうに考えました。
 私からは以上になります。どうも御清聴ありがとうございました。
【清原座長】  村上委員、どうもありがとうございます。地方教育行政における改善の視点と具体的提言ということで、教育専門職の集団コミュニティを教育ムラというふうに表現されて、教育ムラの外からの多元的な統制の仕組みづくりと教育ムラの内の抑制・均衡、いわゆるチェック・アンド・バランスの仕組みをどのようにつくっていくか、これが重要であるという御提言をいただきました。
 それでは、これからまた委員の皆様から、村上委員の御発表につきまして、御質問、あるいは御意見いただきたいと思います。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いします。
【戸ヶ﨑座長代理】  いつも言い出しっぺで申し訳ございません。
【清原座長】  どうぞ。
【戸ヶ﨑座長代理】  いつもながらに本質を突いた御指摘で、大変勉強になりました。
 私から大きく一つ意見をさせていただきます。資料の5ページと6ページに書いてある部分で、教育委員会が合議制で、多様な考え方を教育委員により教育施策に適切に反映させることが教育委員会制度の理念であるといえます。つまりはレイマン・コントロール(住民による意思決定)をどう適切に機能させるかということが、大変重要な課題であると考えます。
 レイマンは素人と訳されますが、本来は地域住民とするべきで、いかに一般の地域住民が、教育について意見を言う機会を確保し、その意見を基に教育施策を展開するか、その仕組みを常に時代に照らし合わせながら見直していかなければならないと考えています。そうでないと、教育専門集団である教育委員会事務局で教育が身勝手に動いてしまうことになります。
 一方で、これまで改善はあったものの現状の教育委員会制度の仕組みは、多くの住民に情報が行き届かず、意見を述べる機会や方法がないことを前提とした時代に作られた仕組みで、言葉は適切かどうか分かりませんけど、いわゆる間接民主主義も同じような仕組みであるといえます。現在のように、SNS等で誰でも、いつでも、どこででも、自分の意見を自由に表明し、また公開されている情報であれば自由に情報を収集できる時代に、これまで同様の仕組みでよいのかという問いが生まれてきます。また、この多様性の時代にあって、そもそも数名の教育委員が多様な市民の意見を反映できる存在であるのかということも疑問です。
 令和の時代の教育委員会制度として、通信ネットワークとかSNSも効果的に活用していく必要があろうかと思います。教育委員会事務局だとか学校の取組、教育委員会会議をネットワーク上にフルオープンにし、地域住民が簡単に傍聴やオンデマンドで閲覧できるようにしたり、自分の意見を積極的に発信したりできるようにすること、さらには、ニコニコ動画のように、流れるコメントなど、広く集められた意見について、教育委員が確認しながら教育委員会の会議で意見を述べたり、政策立案の際のデータとして活用していったりすることで、令和時代のレイマン・コントロールなるのではないかと考えます。
 なお、資料7ページと8ページの教育委員の権限強化、特に教育長への任免への教育委員の関与、教育長に対する評価、また、オンライン会議・研修やオンデマンド教材の充実などは、いずれも大変重要な御指摘であると思います。しかし、この内容については、本会議で示されている四つの検討事項から広がってしまう気がしますので、コメントについては控えさせていただきます。
 以上です。
【清原座長】  戸ヶ﨑委員、ありがとうございました。
 レイマンコントロールというキーワードを頂きまして、SNSなど情報通信が発達する中でのレイマンコントロールの在り方も考えていく必要があるということでございますが、村上委員、今のコメントについていかがでしょうか。
【村上委員】  ありがとうございます。
 令和の時代に合ったレイマンコントロールという意味でいうと、私自身は教育委員が権限を持っていますので中核であると考えています。ただ市長も職業政治家ではあるんですけど、教育に関してはレイマンであることが多いですし、あるいは学校運営協議会の委員というような形もあります。つまり、教育委員以外のレイマンも生かしたレイマンコントロールの在り方ということを考えてもいいのかなというふうには思っております。ありがとうございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、藤迫委員、どうぞ御発言ください。
【藤迫委員】  村上先生、ありがとうございました。私も5ページ、6ページの辺りで、質問というか感想的になりますけど、2点です。
 まず1点は、これ発表のときにも、私、御説明させていただきましたけれども、箕面市の場合は、公募による教育委員さんを中心に、かつ毎週協議会ってやっているんですよね。小刻みに。木曜日の午前中に、少なくとも2時間をやっているということで、そこではリアルタイムの課題もそうですし、次回の会議で議論される内容について、今、こんなことを考えています、こうやろうと思っています、方向性はこうですというのを協議会でもお話しするということで、かなり協議会の中では有意義な意見が出まして、厳しい意見も含めて、議論、すごい活発化されるんですけれども、会議になりますと、やはり傍聴者を意識されるのか、あまり議論が活発にならない。ましてや、総合教育会議ももちろん公開ですので、議論が活発にならないということで、私自身は協議会のような議論を教育委員会議や総合教育会議でやりたいということで意識していまして、会議の前には必ず、協議会のように、何言ってもいいんですよと、逸脱した意見が出たら、私、必ず軌道修正しますんで、言ってくださいと言うんですけど、なかなかならないという、そこが私の感想です。
 ややもすると、常任委員会のように、何か教育委員さんが事務局に質問して、事務局がそれを答えてみたいな、こういう応酬になるので、そこも私は口挟んで、いやいや、それは教育委員さん同士で議論すべきところなんで、そうしましょうと軌道修正するんですけど、なかなかできないという、これは意見というか愚痴になりますけれども、それがまず1点と、もう1点は、6ページので、そういう経過があるんで、教育委員の多数が支持する意見が通らないというイメージが私には湧かないんですよね。
 先ほど聞くと、報告案件なんで、もう先にこっちで教育長がやってしまってということですけども、我々の場合は1週間、毎週あるんで、なかなかそれ筋が通らないで、先ほどのように協議会で議論して、それ違うじゃないかということになるので、ちょっとそこのイメージが湧かないんで、逆にほかの教育長さんで、こんなことがあったということがあれば、お聞かせ願いたいんですけれども。
 これもこの前のときに報告したんですけど、外国語、英語ですよね。小学校でやろうといったときに、我々は早くやりました。結局、全校、平成27年度にやったんですけども、その前の年に、どうやら小学校での外国語というのができそうやということで、1校、モデル校をつくってやろうというのが事務局案だったんですね。それを会議にかけたら、バツされまして、駄目だと、1校では駄目だと、全校一斉にやりなさいといって、教育委員さんの意見が通ってしまって、我々も大混乱したと、こういうようなことがありますので、少し、実際にそういうことがあるのかなというのも、できたらお伺いしたいなという感想的なことですけど、2点しゃべらせていただきました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、梶原委員、どうぞ御発言ください。
【梶原委員】  お世話になります。かなり勉強させていただきました。お二人の教育長さんがお話ししまして、もう一人、教育行政を預かっています私が話さないわけにはいかないなと思って。
 先ほど戸ヶ﨑教育長さんからレイマンコントロールという視点でということもございます。
 一つ、私、感じているのが、教育委員さん方のバランスで、客観的な意見も必要と思いますし、また、教育に対しての社会全体の学びという点で、教育委員さんたちの研修の機会が、もう少し多くあっていいんじゃなかろうかと思います。以前、県の教育委員会で教育委員会研修というのを年間1回とか行われていましたが、近年、ちょっと少ないように思います。
 私、その機会はということで、今、教育委員会の中で、教育委員さんたちが、教育委員会によっては、伝達、受けるだけの、報告を受けるとか、提案あった議案を承認するだけに終わっているんじゃなかろうかということで、私、教育委員会をできるだけ、教育委員会の議案が終わった後に、熟議ということをやっています。テーマを決めて、政策決定とか企画的な要素を入れながら、今後の教育委員会に、こういう課題があるので、これをどういうふうにかということで、当事者意識を持っていただいて、学びというところが必要じゃないかなと思っています。
 あと、もう一つ、教育委員さん、私ども4名でございますけど、やっぱり多面的な、多様な、先ほど村上先生からお話ありましたように、合議制で多様な考えを教育政策に生かすという点では、こここそ私どもの小さな町で、4名とか5名の委員さん、また小さなエリアの小さい生活圏の中での反映は、どうしても偏って、同じような意見になりそうだということで、こここそ教育委員会の広域連携で、他の市町村教育委員さん方、集まった場合、十数名とかなりますんで、その辺りで、規模、またエリアとかを調整しながら、広域連携による委員さんの意見交換も必要かなと思っています。
 そこで一番大事なのは、伴走とか支援をする県教委、特に教育事務所の役割ですね。私どものところ、3市町あるんですが、教育事務所の方々が、そこの研修とか調整とかが必要かなと思っています。限られた人数では、あまり意見が、小さいところですから偏るところがありますので、そういうところを感じます。やっぱり学びが必要かなと思っております。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 ただいま藤迫委員、そして梶原委員から、まさに教育長として取り組んでいらっしゃる中で、会議が公開であることから、なかなか一定の配慮のある会議になる中、箕面市におかれては協議会をやっていらして、協議会で、より自由闊達な意見交換されている。
 梶原委員におかれましては、いわゆる意思決定しなければいけないところが終わった後で、熟議というような方式も取って議論を深めていらっしゃるという、そういう創意工夫の御報告もございました。
 また、梶原委員からは、広域連携をしていくことによって、教育委員の研修であるとか、あるいは教育委員同士の意見交換の場をつくっていくということで、県教委の伴走というのが重要ではないかという大変貴重な御意見をいただきました戸ヶ﨑委員を皮切りにご意見をいただいておりますが、村上委員、いかがでいらっしゃいますか。これらの御意見をお聞きになって。
【村上委員】  やはり皆様それぞれ、すごく工夫をされていて、教育委員の研修とか、発言が出ることに対して、すごく積極的に関わられていらっしゃるという印象を受けました。東京都の例は、本当に逸脱事例というか、特殊な事例なのかもしれないんですけれども。
 一方で、今、お話聞いていて思ったのは、教育委員さんがどのような活動をしているかや、どういうふうに政策決定に関わっていると感じているのかについてのデータがないという印象があります。文部科学省からの調査というのは、教育長や事務局に関することが中心になりますし、我々研究者の責任でもあるんですけど、教育委員さんにあまり注目しなくなっているというところがあって、教育委員さんがどういうふうに思われていて、どういう活動をされているのかというのを、把握するということがやはり必要なのかなと思いました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 村上委員が言われましたように、同じく教育行政学者でいらっしゃる青木委員からも手が挙がっておりますので、どうぞ御発言お願いいたします。
【青木委員】  ありがとうございます。
 村上委員さん、ありがとうございました。コメント二つと質問一つなので、コメントからなんですが、一つ目は、戸ヶ﨑委員もおっしゃったように、教育行政学の責任でもあるんですが、レイマンコントロールという言葉を輸入したときに、素人統制という、これは私は致命的な誤訳だったと思うんですけれども、素人って、それはどういう人なんだろうって非常に疑問に思うわけなんですが、そういうような訳が一定期間普及してしまったがゆえに、その道のプロである教育委員の方々を、何も情報も与えず、ある種の研修も施さず、報告事項だけ聞いていればよしというような運用をしてきたというのが、長らく教育委員会制度の運用上の実態ではなかったかと思います。今は随分変わってきているかなというふうにも思いますが、やはりここは研究者側の立場としても反省を込めて申し上げておきました。
 もう1点は、研究上の情報なんですけれども、金沢星陵大学の大畠菜穂子さんの研究で、事務局長としての教育長と、それから教育委員の間の事務委任規則や専決規則に関する研究が、今、進んでいるところです。もう少ししたらまとまると思うんですけれども、やはり規定上どうなっているかというのは、自治体によってバリエーションがあるようです。そういったような知見ももうすぐ出てくると思いますので、こういった場でも共有できるのではないかなと思います。
 質問は1点でして、村上さんが2013年の中教審の激烈な議論に当事者として関わられたときの、あの制度設計の議論から見ると、現状の新しい教育委員会制度で、例えば、制度設計の議論の発端となったいじめの問題というのは、現在の制度上の立てつけで対応可能になっているんでしょうか。例えば、総合教育会議だとか新教育委員会制度を運用することで、いじめの問題に緊急対応ができるようになっているんでしょうか。その辺り、ちょっと御感想を伺えればと思いますけれども。
【清原座長】  御質問いただきましたが、村上委員、いかがでしょうか。
【村上委員】  ありがとうございます。
 コメントの大畠さんの御研究は博士論文を基に出版された著書もあるのですが、非常に教育委員会制度にとって示唆に富むものなので、御紹介する機会があればというふうに思います。
 御質問に対してなんですけれども、私自身は、やはり前よりはよくなったかもしれないけれども、基本的には、あまり対応できる仕組みにはまだなっていない、いまだ改善の余地があるのではないかなと思います。
 総合教育会議があるので、法的な責任ではないんですけど、道義的に首長にも責任があるように見えるようになったということはあるかもしれませんが、問題の解決という点では、例えば、いじめの重大事態のときに、首長に調査をする権限があるわけですけれども、例えば、県とか国とか、これは知事部局、教育委員会問わずだと思うんですけれども、当該自治体以外の主体も、調査とか何らかの関与ができるような仕組みもあるといいんじゃないかなと思います。当該自治体の首長と教育委員会だけで解決できる例が多いと思うんですけど、セーフティーネットという意味では、ほかの主体の介入ということも、もう少し考えてもいいのではないかと思っています。
【清原座長】  ありがとうございます。
 青木委員、いかがでしょうか。
【青木委員】  どうもありがとうございます。とてもよく理解できました。ありがとうございます。
【清原座長】  ありがとうございます。
 それでは、小﨑委員、どうぞ御発言ください。
【小﨑委員】  みなさまの一通りの議論聞きながら、大変勉強になりました。特に村上委員さんの整理の仕方のところが、2013年の議論を踏まえてということだったので勉強になりました。
 
 私、昨年度、文部科学省が主催した新しく教育委員さんになった人たちを集めた勉強会で講師を務めました。テーマは、GIGAスクール構想のことでということだったのですが、終わってから、すごくいろいろな質問が来まして、こういうことはどうなっているんですかと訊かれました。「私たちには勉強する機会がなかなかなくて、教育委員になったはいいんだけど、何をしていいかというのが非常に困っています。」というのが、ほとんどの方のご意見でした。
 今、主に奈良県内で、いろいろな教育委員会に関わらせてもらっている中で、教育委員さんたちと知り合うことも多く、教育長さんたちとかも含めて、先ほど藤迫委員がおっしゃっていたような、会議の場での付き合いではないところの事前の打合せや終わってからの相談でお話すると、またこれも同じように、「私たちは何をしたらいいのかが分からない。どういうことができるんだろうか。勉強する機会がない」というようなことをおっしゃいます。私からは、「そもそも皆さんはどうやって選ばれたんですか?立候補したんですか?」というような話もしながら、いろいろな議論をしている状況です。これを思うと、今、村上先生がおっしゃっているような、制度はこうだよね、組織こうなったらいいよねということはよく分かります。そこを踏まえて、それを具体化しようと思ったときには、こういう人が適任だよねとか、こういう人が向いてるよね、こういう人だったら動くよねというのがあると思いますので、そもそもの話のときに、どのような人が教育委員として望ましいのかという辺りの議論というのがあったのかなかったのか。もし今だったら、どのような人たちがなったらいいと思っているのかというのがあれば、教えていただけたらと思います。
【清原座長】  ありがとうございます。教育委員についての御質問です。よろしくお願いします。
【村上委員】  ありがとうございます。なかなか難しい質問なんですが、本質的なところだというふうに思います。
 2013年の議論のときに、もちろん教育委員の研修とか活性化みたいな話はありましたが、基本的には、こういう言い方が適切か分からないんですけれども、教育委員が事務局を統制するのは難しいので、首長がやったほうがいいだろうという議論だったように私自身は受け止めています。こういう委員さんがいいという議論は、2013年の中教審では、そこまで深くはしていなかったと思います。
 教育委員さんは教育でなくても、何かの分野に通じていたりとか、非常に良識のある方も多いと思いますので、例えば、教育が専門でなくても、学びたいとか、あるいは地域の教育をよくしたいとか、そういう思いがある方というのが、やっぱり一番大事なのでは。思いと言うと、すごく抽象的なんですけど、やはりそのパッションがある方というのが大事なことだと思いますし、そのときに、どういうふうな環境を、学ぶ環境とか、教育委員としての研修の環境を用意するかということが重要だと思います。ただこのことは言われていてもなかなかうまくいかなくて、それはなぜだろうというか、の不思議な感じがします。
【清原座長】  ありがとうございます。
【村上委員】  あと、コロナ禍もあったので、オンラインの活用ということが、やはり今までと違う環境にあると思います。
【清原座長】  小﨑さん、いかがでしょうか。
【小﨑委員】  よく分かりました。ありがとうございます。
【清原座長】  大変重要なポイントだと私も思います。私は市長当時、何人もの教育委員の方に就任のお願いをしてきました。また、教育委員につきましては議会で選任同意をいただくということになりますので、議会に提案をさせていただく、そして議決を得るということは、普通の住民の方にとっては大変大きな出来事でございますので、提案する市長としては、吉田市長もそうだと思いますが、もう本当に全幅の信頼をいただかなければいけませんし、なっていただいたからには、きちんと中立的な立場で支援をさせていただかなければなりません。ですから、私としては、教育委員会と連携をしながら、それぞれ教育委員がどういうお仕事なのかを、まず理解していただいてから、お引受けいただけるかどうかを意思決定していただくということになりますし、教育委員会と連携をしながら、お引受けいただいたからには、本当に公正中立に、その方の個性や御経験や価値観が生きますように活動していただくということでございますので、今、御指摘いただいた点というのは、単に研修の機会を提供すればいいということではなくて、本当にお一人おひとりが伸び伸びと自由闊達に御活動いただける環境整備をしていくということだろうというふうに受け止めました。
 青木委員、御発言どうぞ。
【青木委員】  ありがとうございます。ちょっと言い漏らしてしまったというのを、小﨑委員の御発言で気づきました。ありがとうございます。
 教育委員の研修についてです。恐らく政策の中身のようなものを研修するというニーズがあると思います。それに加えて私が強調したいのは、東京都の先ほど村上委員がおっしゃった事例から敷衍すると、ルールメイキングの仕組み、教育委員として、教育委員会の会議で、自分たちは何ができるのかと。例えば、報告事項で出てきたものを突き返せるのかどうか、審議事項にできるのかどうか、議案の立て方はどうなのか、あるいは教育委員の3人が集まれば何ができるのかとかいったようなルールメイキングのところも、恐らくは十分に情報をもらっていない委員さんもいらっしゃるかもしれません。そういったものは、例えば、こういった場から提言をして、国として受け止めていただいて、そういう、今、教育委員会の仕組みになっていますと、こういうことができますというような事例集のようなものもあり得るかなと思いました。
 以上でございます。
【清原座長】  ありがとうございます。貴重な御提言をいただきました。
 それでは、村上委員の御発表について、皆様からの御意見や質疑で内容が深まりましたところで、次に移らせていただければと思います。
 続きまして、岩本委員に御発表の準備をいただいておりますので、やはり20分程度で、よろしくお願いいたします。
【岩本委員】  それでは、こちら、声と資料は大丈夫でしょうか。よろしいですか。それでは、簡潔にやらせていただけたらと思います。
 私自身、市町村教育委員会に関わらせていただいたのが10年ほどで、今、都道府県教育委員会のほうに8年ほど関わらせていただいて、その中で、ちょっと感じている課題感だとか、今後に向けてというところでお話しさせていただけたらと思います。
 結論としては、ちょっと書かせていただいているんですけれども、私、学校で起きている課題で、これからこれを変えなきゃいけないというようなことと、教育委員会の中で起きている文化というかが、かなり共通している、相似形のような形になっているなということを、ずっと感じてきています。
 例えば、一斉授業から、これからはより一人一人の個別最適な学び、そのための、例えば、伴走的な指導支援もというふうにいったときに、それは教室の中でも起きてほしいことだと思いますし、でも一方で、教育委員会も、どちらかというと一斉指導的な、一斉管理的なやり方でやってきたところから、どう個別最適な学校や地域の実情に応じて、より伴走的になっていくべきかというような、これからの学校で必要なことと教育委員会で目指すべき方向性というのは相似形のようなものだろうと感じています。社会に開かれた教育課程というのが、これからの新しい学習指導要領の理念で出ていますけれども、教育行政自体が社会に開かれた教育行政になっていくということが望まれるということだと思っております。
 私、毎年、年度の初めに、教育委員会の課長さんだとか指導主事の研修とか、そういった場で、大体、よく最近お伝えしているのは、カリキュラム・マネジメントですね。現場でこれから必要だということでやられていますが、そのカリキュラム・マネジメント、三つの側面というのが出ていますが、それを教育委員会においても全く同じだと。そのカリキュラム・マネジメントで大事だということを、教育委員会の中でも事業や政策をマネジメントしていく上で、みんな意識してやっていきましょうというようなことでやって、研修なんかもしています。
 カリキュラム・マネジメントの中身の話はしませんが、基本的には、教科横断的な視点でというのが、まず一つ目あるわけですけれども、それと同じように、事業横断的な視点、もしくは組織横断的な視点で、仕事、業務、政策を進めていきましょうという横断的な視点というのが一つ目のポイントです。
 二つ目は、今までの3K、勘、経験、志だと、そういったところだけではなくて、PDCAとか、EDPMみたいなところですけれども、こういったところを大事にしていきましょうという話。三つ目は、自前主義だけではなくて、外部リソースを活用していくという、このカリマネと同じように、ポリシー、政策マネジメントは我々もやっていくということ、これが今後の教育委員会の基本的なことかなと思っております。
 ちょっとそのポイントごとに、こういうことが、今までやってきた中で効果的だったなと思うようなことだけ、少し紹介させていただけたらと思います。
 一つ目が、縦割りを超えて、事業横断的な視点、もしくは組織横断的な視点で物事を進めるというときに、横断的な視点って口で言うのは簡単ですけど、みんながそうなるかというと、なかなかそうならない。なので、この横断的な視点を持つための組織的な仕掛けみたいなものを、併せて取り組んでいかないと、意識しろ、意識しろと言っても意識はなかなかできないと。特にこの横断的にやらないといけないものというのは難易度が高い課題だったりとか取組になりますし、責任範囲が明確にはなっていないので、取り組まなくても自分の責任にはならないというものなので、基本的に、こういう組織と組織の間や事業や事業の間にあるものというのは、課題としては挙がりやすいけれども、現場というか担当者目線では、なかなか進められないものというものが、かなり強くありますので、こういったものを進めるときには、やはり部局横断的なチームだとか、関係機関、関係者が集まって、これを進めていくというチームなりを、いわゆるクロスファンクショナル的な要素を持ったチームなりを組成して進めるというのが、割と取組する上で必要だな、もしくは効果的だなと。これが重要なんだ、これを、このチームなりで解決に向かって進めていくんだという、このアジェンダというか課題設定をちゃんとして、誰が、誰たちが、これをいつまでにという、そういうふうに設定すると動き出すんですが、そうしないと、なかなかいつまでたっても解決しないというようなことが、ずっと何年も繰り返されて起きてきたというところで、こういうクロスファンクショナルな動きを、組織としても柔軟に仕掛けていくというところが重要かなというのが1点目。それが、先ほど、最初、吉田市長にも質問させていただいた総合教育会議なんかの下に、そういった諮問会議なりワーキングチームみたいな発想を、こういった経験から、そういったのが可能なのかというような質問をさせていただきましたけれども、一つ目は、こういう組織的な仕掛けというところです。
 2点目は、いわゆるEBPMと呼ばれるところです。私、EBPMという言葉が、もしかしたら誤解というか、基本的に考え方は大事だと思っているんですけれども、を生む可能性があるなと思っていることがあって、やはりエビデンスだとかデータに基づいた政策立案というのは非常に重要だということは共有されているかと思うんですけれども、私、エビデンスやデータだけで決めてしまおうというのが危ないと思っています。そのエビデンスやデータとともに、それを基に対話をしていく。合議というのもそうかもしれませんが、関係者たちでしっかりと対話に基づいて意思決定なりをしていく。教育委員会事務局が勝手に決めて現場に落としていくとかではなく、それ現場の関係者と対話をしながら政策をつくっていくということもそうかもしれないですし、関わる関係部局との対話もそうだと思いますし、教育委員さんの中での対話もそうだと思うんですけれども、やっぱりエビデンスとともにダイアログですね。エビデンスとダイアログに基づいた政策の立案と、あとポリシー・メイキングという政策をつくるみたいなことに焦点が当たるように見えちゃうんですけど、大事なのは、そのつくった政策を含めて、政策のマネジメントですね。今やっていることは本当に効果があるのかも含めて、やっぱりポリシー・メイキングも大事ですけど、ポリシー・マネジメントですよね。プロセスをずっと見ていくということが大事だと思いますので、なので、僕はあえて「EDPM」と、エビデンスと対話に基づくポリシー・マネジメントと仮に言っていますけれども、そういったところというのは、今後、効果的だなというふうに思っています。
 例えば、私、関わっているところでいくと、もう全ての県立高校に生徒の意識や行動の変容なんかが見ていけるとともに、生徒の変容だけではなくて、学校、生徒を取り巻く学びの土壌、環境がどういうふうに変化していっているのか、あとは関わる大人、教職員の意識、行動の変容だとか、ここに学校運営協議会の委員さんなんかにも質問して、併せて答えていただきながら、関わっている方たちの意識はどうなって、どう変容していっているのかというのを見える評価システムみたいなものを開発して、これは全県で導入をして、各学校ごとで、そういったデータを基に対話をして、各学校のスクール・ポリシーや教育目標を設定したり、PDCAを各学校ごとで回していくというようなことを進めたり、その支援をしたりとかしていますし、また、各学校ごとのPDCAだけではなく、県教委側でやっている施策自体の効果の検証というのも、併せて、そういったデータを基に分析をしていくと、コーディネーターが配置されている学校と配置されていない学校で、やっぱり配置しているほうが非常に年々生徒の資質・能力の伸びが大きいとか、協働体制ですね。学校と地域の協働体制。コミュニティ・スクールとか、こういったものを含めて、あるところとないところで、やっぱりあるところのほうが伸びているとか、そういう地域社会に開かれたカリキュラムを取り組んでいるところと、取組がまだ十分でないところの差だとか、あとは生徒の多様性ですね。どれほど多様な文化とか出身地の多様性があるかというのを分析してみると、多様な出身地域とか、生徒が来ているというところのほうが資質・能力や意欲・行動の伸びに大きい影響があるとか、そんなようなことなんかも含めて評価システムを活用することで分析しやすくなってきているというところです。
 あと三つ目のポイントの外部ソースの活用、組合せというところです。これも、例えば、県立高校のほうの話でいけば、コーディネートする人材だとかの養成や育成というのは、これから非常に重要だというのが課題で出てきていた中で、一方で、社会教育側では、社会教育士とか社会教育の担い手だとかも、これからもっと地域で育てていきたいというニーズもある。一方、地元大学の教育学部は、やっぱり教員養成含めて、これから社会に開かれた教育課程とかを実現していけるような、そういった教員養成を含めて、もっとやっていきたいというようなニーズもあるというところで、大学と社会教育側と学校教育側で連携、協働して、そういったコーディネート人材の育成を進めていこうということで、社会教育士の講習と養成課程をセットで立ち上げるということでやりました。
 これも大学もなかなかリソースがない、足りないという中で、これは教育委員会側がお金の部分も支援をし、1人、社会教育主事をそこに、このカリキュラムだとか事務局側にも入れて、大学ができることは大学がやりながら、大学だけでできないことも、行政側も支援をして、一緒に育成をしていく。この養成課程と講習を立ち上げて、今、進めて、社会教育士も取れるし、そこに学校と地域の協働のコーディネーター、履修証明もセットで取れるということを、オンラインと対面のハイブリッド型の講習というのを全国で初めての形でつくってやりました。
 今、定員の2倍以上の倍率が、毎年、この社会教育士の募集、応募があって、選抜をして、全員受け入れたいですけど、なかなかそこまでやる側もリソースが十分ではないということもあって、やっていますけれども、地元だけではなくて、全国からも来るような講習になっていますけれども、そういったところを協働で立ち上げていくみたいなことなんかもやってきました。
 もう一つ、外部資源の活用ですごく重要だなと思ったのは資金ですね。資金。予算をどう確保するのかというところで、やはり教育委員会の中の人間からすると、教育委員会って、予算を取る力というのは、そんなに強くないという中で、外と連携して、教育予算以外もうまく活用して、教育にも使えるようにしていくという発想も、これからとても重要だなというふうに、取組の中でも痛切に感じているところです。
 その一つの事例としては、教育の取組なんですけれども、地方創生に資するということで、地方創生の推進交付金を活用した形で、取組を今、高校改革なんかを進めています。それも、私がいたのは島根県ですけど、島根県だけでやろうとするのでなく、似たような共通課題を持っている全国の市町村。今、57市町村と提携というか、協働で申請をして、この交付金を活用するというような座組をつくって、島根県の教育委員会が取りまとめをするんですけれども、他の都道府県内の市町村も、こういった高校を核にした地方創生とか、地域と協働した高校づくりをやりたいという市町村等が一緒になって、地方創生の予算を確保して、各自治体ごとで取組を進める。知見の共有なんかは一緒にしながらということをやらせてもらっています。今、年間16億ぐらいの事業予算で、そのうちの2分の1が交付金のほうから出るというような形になっていますけれども、こういう形も含めて、教育予算以外から取ってくるというような発想だとか、取るときに、なかなか教育委員会だけで取れないんだとしたならば、ほかとも連携・協働して、一緒に予算確保に向かうみたいな発想も今後やっていかないと、なかなか少ない教育予算だけでやるのは厳しいかなというふうに思ったところであります。
 四つ目は、先ほどからも、ここまでの議論の中で何度も出ていました伴走というところに関してです。今後、教育行政自体が伴走型にもなっていくということが非常にやはり重要だというのは私自身も感じているところです。
 教育委員会が、各学校がこうありたいという姿に伴走的に寄り添って、それを実現に向かって支援をしていくというところですけれども、伴走的に取組を進めようとか、学校現場とコミュニケーション取っていこうと口で言っても、これもまた、なかなかすぐに教育委員会の文化だとか、指導主事含めたコミュニケーションスタイルが変わるわけでは、すぐには変われないので、どういうふうにして、より伴走的な関わりを各学校でするようにしていったのかというところでいきますと、やはりまず、伴走って何みたいな、なかなか言葉は聞いたことあるけど、よくイメージは湧きませんというような状態から始まりますので、全員でみんなでやりましょうというよりは、最初、伴走チームとか担当者というのを一部指導主事とか行政側でセットして、ここで、このメンバーで、こういったモデル的な取組を進めている学校に対して、伴走的に、まずやっていきましょうという、まず任命をして、実際に伴走していくというときに、ちょっと外部のプロフェッショナルな伴走者というのも、そのチームの中に専門人材として入ってもらって、一緒にやっていくというスタイルでやりました。
 企業とかでは、結構、伴走というのは、今もう進んでいて、そういう企業であれば経営者を伴走するとか、組織開発を伴走的に進めていくというのは、そういったところにノウハウありますので、そういったプロフェッショナルを入れて、そういった知見を教育委員会にも導入を、それを学校だとか教育委員会というところにアレンジをしながら進めていくということで、やっぱりプロフェッショナルを入れるというのは、すごく効果があったなと思っています。この伴走チーム自体を伴走してもらっている感じで進めました。
 あとは伴走も、そういった取組する中で、手引みたいなものをつくったりとか、やっぱり伴走する職員とか指導主事とかに、伴走とは何なのかとか、そのときのスタンスだとかスキルみたいなものの研修みたいなものを、最初と途中でとかやりながら進めているというところです。
 あとは、手ぶらでなかなか伴走というのは難しいところもあるので、伴走のためのツールみたいなところで、県立高校の今の現状と、どういう状態に学校現場が行きたいのかというのを、ルーブリックじゃないですけれども、最初に現状把握と目標設定して、じゃあ、このテーマに向けて、この状態に向かって、一緒に走っていきましょうみたいな形で進めていく。各学校の情報がどんどん集約されていくようなカルテみたいなものをつくって、そこの情報を常に参照しながら、現場とのコミュニケーションで見えてきているようなことが、そのカルテにどんどん入っていきながら、支援できるようにしていくと、そういったような開発なんかも進めながら、伴走ということをできるように進めていくということをやってきています。
 最後、五つ目ですが、教育委員会の一つの機能としては、いろんな各学校でいい取組だとか、モデル事業をやって、モデルというのができたりするわけですが、それがなかなかモデルが普及しない、展開しないというようなところを、モデルを展開したり普及するというような機能というのも、教育委員会のプロフェッショナリティーの一つになってくるところだと思いますけれども、そういったのを進めるにあたって、割と機能したなというふうなところでいくと、今までいろんなそういった研修なんかもやったりしていたんですけれども、研修のスタイルを変えて、各研修もPBL型で、本当にその現場で、このテーマに関して何とかしたいというようなテーマ設定なり課題発見自体も現場側がやって、それを年間通じて、最初と途中と最後ぐらいで集まったりとかしながら、そのプロセスを支援していく研修みたいな形を取り入れていっています。
 例えば、高校でいくと、総合的な探究の時間というのができているんですけれども、今まで探究に関する指導主事がいなかったので、探究の専門の指導主事を教育委員会側に配置をして、探究を推進するための各学校の探究の主任の研修というのもつくったんですけれども、そのときも、探究とはこうだという研修をしていくというよりは、探究に関する課題感を、それぞれの学校で、今、何が課題になっているのかというのを現場の探究推進担当教員が課題設定をして、それをどう年間通じて解決していくのかというのに指導主事が寄り添っていくとか、そういった形での研修にしながら、探究的な研修という形にしたいと期待しているんですけれども、そんなようなプログラムで、研修自体も少し変えていっているというところです。
 特に効果があったなと、学校現場の変容に大きいなと思ったのは、今やっている研修の一部を、教員だけが、それぞれの学校から出てくるというのではなくて、一つの学校から3人出てくるみたいな形での、高校でいくとグランドデザイン、スクール・ポリシー、PDCAを回すための研修みたいなプログラムがあるんですけれども、今、例えば、島根県でいくと、そこには高校の管理職とコーディネーターと市町村でそういうのを一緒に進めていく人とか、コンソーシアムの協働体制の中でのキーマンみたいな人たちも含めて、3人以上で出てくるというような研修になっていて、そのチームを育成していくみたいな形で進めていっています。そうすると、1人で出てきただけでは、なかなか、その人が現場に戻っても動かないところが、チームで目標設計をして、それでそのチームで年間通してPBL型で進めていくので、それが学校と地域の協働体制のコアみたいなものになっていたりだとかしていくというところで、こういうセクターを超えた関係者のチーム参加が非常に協働を進める上では効果があったなと感じていますし、そのプロセス、そのチームごとに課題解決に必要な外部専門人材なんかを必要に応じてマッチングして、そういった壁打ちだとかを支援したりとか、年何回かオンラインとか対面で集まるときには、各学校、地域を超えた、そういった相互の学び合いが起きるような場をつくって、知見がちゃんと共有されていくような場づくりみたいなものを進めながら、県全体が学校を超えて、チームのような形で、情報共有したり、そっちの学校ではどうしているんですかとか、そっちのコンソーシアムではどうやっているんですかみたいなことが起きるような、学び合いのコミュニティづくりみたいなことを意識して、プログラムとか場づくりをしていくというのが、割と知見が横に流れていく上で重要なんだなと感じています。
 参考ですけど、時々そういった場に生徒が出てきたりとか、高校生とか大学生、卒業した卒業生どうなっているかとか含めて、子どもが出てくると、またそういった場がより一層盛り上がったりする感じているところです。
 最後に、今回、こういった教育委員会の機能強化に向けて、国ができることって、一体何があるのかなという視点で、3点ほど、ちょっと、各都道府県や市町村教育委員会がやることが大半なわけですけれども、国がというところで考えた中で、やっぱり国にやってもらいたいなと思うところの一つ目は、教育政策人材の育成とか確保の人材戦略をしっかりと、これ、各市町村ごとでやってくださいと言っても、やっぱりなかなか難しいですし、この教育政策人材というのは、指導主事だとか、教育行政に関わる職員のことですけれども、これは国においても重要ですし、各都道府県でも、各市町村でも、やっぱりこういう人材が、ある種のプロフェッショナリティーを持った人材が、ちゃんと育成されていく体系を考えていく必要があるだろうと。やっぱり教員に関しては、育成指標をつくったりとかしながら、研修も含めて、いろんな体系がもうあるわけですけれども、教員に対してはあるんだけれども、教育政策の人材など、指導主事とか含めて、こっち側の体系というのがあまりにもまだちゃんとできていないというような認識があります。国と都道府県とあと大学だとか、NITSなんかも含めて、本当に令和の時代の教育行政に関わるプロフェッショナルはどういう資質などが必要なのかというものを明確にしながら、その育成体系というものをつくっていくというところが、やはり重要かな。
 二つ目で、ちょっと、これも細かい話で恐縮なんですけれども、教員に対する表彰って、優秀教職員表彰とかあるんですけど、指導主事とかに対する表彰って全くないみたいなところで、やっぱりこういう教育行政頑張っている人たちの頑張っている人をちゃんと表彰するとか、こういうのって別にお金かかる話じゃないので、そういうところにもスポットライトを当ててあげないと、やっぱり教員はみんな、指導主事も早く現場に帰りたいみたいな、こんなところに来たくなかったんだという指導主事が多いわけですけれども、いやいや、そこはそこで、すごく大事なんだよという、現場だったらスポットライトが当たってきた人たちが、教育委員会に来ると、全然スポットライトも当たらないし、苦手なことをさせられてみたいな部分が多かったところに、やっぱりこれはこれで大事なんだと。これは、しかもある種のプロフェッショナリティーも必要なんだ、国もこういうことをちゃんと見てるよというような、一つの、せっかく今回、こういった会議もできて、進めていくに当たって、ちょっとそういう象徴的な表彰みたいなものも、お金かけずに始めてですね。
【清原座長】  岩本さん、そろそろまとめてください。お願いします。
【岩本委員】  はい。すいません。じゃあ、ここで終わりにします。
 あと、教育委員会の機能強化モデルということで、各学校モデル事業という、文科省もいろいろやったりしていると思うんですけれども、教育委員会のモデルをつくっていく事業みたいなものも、今後、国でつくっていくというのも大事ではないかということですし、あと各学校とかのモデル事業とか、そういったのを国とかがやるときにおいても、そこにおける市町村教委だとか都道府県教委、設置機関の役割は何なのかとか、そこがどういう機能を果たすべきかということも、より明確にしたりとか、教育委員会がそういったときに伴走プロフェッショナル入れるとか、そういったところの予算を使えるようにするとか、現場で使える予算を出してもなかなか教育委員会が使える予算まではなかったりするので、そういったところが使える立て付けにするのが良いと思います。
 最後は、すいません、教育委員会と首長部局の効果的な連携というのを考えたときに、文部科学省と他の省庁の効果的な連携を進めていって、連名で通知が下りてくるとか、教育委員会ばかりに通知が下りてくるんじゃなくて、ほかの省庁から、ちゃんとその関係機関のところにも、厚労省からも下りるとか、産業界と連携したら、経産省からも産業界にちゃんと伝えるみたいに省庁横断連携でやっていくような動きなんかもあると、現場でも連携が進めやすくなるかなというところです。
 すいません。ちょっと長くなりました。以上です。
【清原座長】  岩本さん、ありがとうございます。
 最初は誤植かなと思ったら、そうじゃなくて、EBPMならぬ、EDPM、すなわちエビデンス・ダイアログ・ポリシー・マネジメントという観点から事業横断的視点、そしてPDCAサイクルの確立、外部資源の活用ということについて具体的にお示しいただき、ただいまは三つの教育委員会の機能強化・活性化のための国の方策案も御提案いただきました。
 それでは、3時半までのお時間になりますけれども、ほかの委員の皆様から御意見、そして御質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 それでは、戸ヶ﨑委員、トップバッター、よろしくお願いします。
【戸ヶ﨑座長代理】  意図的に言い出しっぺをさせていただいています。
 大変勉強になる御発表で、特に本会議の論点の(1)教育委員会の機能強化・活性化について教育委員会が外部の知見などをどのように活用したらよいかなどについて、大変参考になるお話だったと思います。
 今後、義務教育の出口に変容をもたらされなければならないと感じているところです。岩本委員の取組が、今後標準化され、地方だけではなく都市部も含め全国に浸透されていくことは重要なことであると感じました。そこで、大きく4点質問をさせてください。
 まず、3ページ目ですけれども、部局横断型組織・チームをつくることは極めて大切なことです。このプレゼンでは、教育委員会内での連携を中心に記載されていますが、資料下にあるように、今まさに教育委員会と首長部局との名ばかりの「連携」ではなく、横断的な組織をつくって、「協働し実働」することが求められていると思います。具体的に首長部局との何らかの取組はあったのでしょうか。ここもちょっと付け加えで教えていただけたらというのが1点です。
 次に、7ページから10ページまでのアンケートの結果についてです。大きく四つのことが明らかになったわけですが、これらの取組が、島根県教育委員会の機能強化・活性化に向けて、また、島根県内の市町村教育委員会への取組への何らかの効果波及等はあったのかお聞かせください。これが2点目です。
3点目として、同じページで、ここが非常に重要ですが、当事者である生徒がこのアンケートや評価結果にどのように主体的に参画したのかということです。これについて、もしあればお聞かせいただきたい。
 最後に、13ページから「伴走」という言葉が多く使われています。響きのよい言葉ですが、掴み所のない言葉でもあります。最近の教育界では、「管理」や「指導」という言葉が毛嫌いされているように思います。それらは、願いや価値観を「押し付ける」というイメージで捉えられているのかもしれません。指導というのは強制ではありませんし、また支援する指導もあります。かつて、平成元年改訂の学習指導要領において、「新しい学力観」と個性を生かす教育が強調されました。当時はさかんに、「今後は指導ではなく支援だ」と流布されました。学習指導案は学習支援案へ、机間巡視は机間指導、そして机間支援などと置き換えられるべき、という「指導」もありました。しかし一方で、「教えるべきことは徹底的に教えるべし」という言葉が度々引用されて、「支援」の用語は徐々に影が薄くなり、いわゆる揺り戻しが起きました。
 「伴走」するには、伴走者としてのスキルが求められます。また、つかず離れずの適度な距離感も必要で、全ての学校に伴走はできないので、最終的には自走を促すこと、つまり学校現場に調査等で負担をかけることなく腹落ちさせ、実践者の立場に立ったEBPMを推進すること、単純化されたアーキテクチャーを共有化することこそ、水平展開に向けて大切なことと考えます。この「伴走」という言葉を岩本委員がどのようなイメージで捉えられているのかをお伺いします。
 以上です。
【清原座長】  以上4点、御質問がありましたが、岩本委員、よろしくお願いいたします。
【岩本委員】  ありがとうございます。そうしたら簡潔にですが。
 1点目のところでいくと、部局横断のところですね。やっぱりどうしても教育委員会内の部局を超えたというところを、まだまだメインですけれども、他部局のところでいくと、やっぱり地域振興部局、こことの連携というところが、割と今、増えてきています。
 島根でいくと、一つ大きいところで、進めたりとか対話が起きているのは、県外からの生徒募集というのをやったりしていて、これは地域留学という形で、島根だったら島根留学と言ってやっているんですけれども、そういう外からも子どもたちをどんどん受け入れていこうというふうにしたとき、この取組に関しては、教育委員会だけでは、なかなか、例えば、受入れ環境をどうするのかという、寮とか下宿とかシェアハウスとか、こういったところの話とかも出てきたりとかして、そういうのを割と知事部局のほうと一緒になって、どう整備を支援していくの、各市町村に対しての支援をしていくのかだとか、ここは部局横断で進めている一つの大きいテーマかなというところで、今後、こういったのをもっと必要だなというところは課題感を持っているところです。
 二つ目のデータのところで、これ市町村のほうとかへの波及とか、どうなっているのかということも含めてですけれども、今やってみて分かったことは、このデータというのを、なかなか教育委員会の中でも使いこなせないということが明るみになってきて、データ取っているんだけども、その分析とか、そういうのを外のプロフェッショナルにお願いしないと、なかなかできないというので、データとデータをどうつないでとか、そこがまだ十分に中でできていないというのが最近の課題感で、これを中で、まず使えるようにしていこうという、EDPMにしても、EBPMにしても、それの使い手が育っていないというところで、まだまだこれから分析をちゃんと自分たちでして、それを学校現場にも提供できるように、学校現場も使いこなせるようにしていこうというのが、まだ私が関わっているところでの実態です。なので、今後の教育政策の人材育成というときに、データを使えるような専門人材を育てる指導主事も含めて、これはすごく重要だなというところです。
 三つ目の生徒の話ですね。生徒はここにどう関わっていくのかというと、これはデータを基に、各現場で対話をする。スクール・ポリシーつくるときも、そういうふうにやってきたんですけれども、これが結構盛り上がるんですよね。コミュニティ・スクールだとか、我々がコンソーシアムと言っているようなところで、教員と、その関係者たちが、今まで空中戦でイメージでやってきたものが、データで生徒の実態だとか、行動とかが出てきたりとか、教職員の意識とか出てくると、それに基づいて、何でこれ上がっているんですかと、下がっているんですかとかというところから含めて、真ん中にデータがあると対話が深まっていくというのは、すごく実感しています。現場でも、すごくこれが好評で、しかも経年で出てくる、やった取組が反映されているというので、先生たちも、すごくそれが励みになったり自信になったりとかして、やっぱり結果がちゃんと数字でも見えるというところで好評で、その中で、ようやく最近出てきているのが、これを生徒たちも、やっぱり自分たちの状況を見て、自分たちでPDCAを回していけるように、生徒たちにも、これさせたいねという声が先生たちから、今、出始めていて、じゃあ、ちょっとそういうふうにできるようにしていこうかというのがようやく出てきて、次の目指すところとして、生徒が自分たちの状況だとかをデータも見ながら、クラスごとに対話や改善もできるようにというところを目指していこうみたいなふうに、ようやくなり始めたというところです。
 最後、4点目、もうこれも時間もあれですので。伴走と言っていますけど、今、県立高校でいくと、スクール・ポリシーというのを各学校が設定するというふうになっていて、今、我々、そこに沿う形でやっている。各学校が、こういう学校でありたいという各学校ビジョンや目標や三つのポリシーというのをつくって、そこにある種、指標というか、結果指標を含めて、各学校が設定をする。目標設定を自分たちですると。各学校、こうありたいというところに、教育委員会も、それを実現できるようにしっかりと学校経営のサポートをしていきましょうというので、スクール・ポリシーのマネジメントのために寄り添うというスタンスで、何でもかんでも伴走しましょうといっても、なかなか難しいと思うんで、スクール・ポリシーの実現という共通の目的を置きながら、そこに必要な支援だとか施策だとかも展開していきますよと。各学校を無視して、我々が一律に、みんなこうしろじゃなく、各学校が実現したい姿になるべくできるように、個別最適にというようなスタンスでやろうとしているというところです。
 すいません。以上です。
【清原座長】  ありがとうございます。
 戸ヶ﨑委員、よろしいですか。
【戸ヶ﨑座長代理】  はい。ありがとうございました。
【清原座長】  それでは、小﨑委員、どうぞ御発言をお願いいたします。
【小﨑委員】  よろしくお願いします。
 先ほどの質問と、近いところがありますが、今、私のように20年以上教師をして、教育委員会で十何年過ごし、今、岩本さんが取り組んでいるような、島根のようなことを県域で取り組みながら、自治体を超えて連携しながら頑張るということをやってみたこともあります。いよいよ、さあ、それを実現しようと思ったときに、大事なのは先生になる前からの教員養成ではないか、というところへ来ているんです。つまり、学生たちは4年間勉強して、さらに教職大学院、今、私が担当しているようなところで6年間も勉強する場があって、たくさんの学校も見て、学べる。その学生たちが本当にいい先生になるために、全力でそういうところと向き合ったり、その中へ入って、具体的に勉強したりできているのか、ということを考えたときに、まだまだできることいっぱいあるんじゃないかなということを感じています。島根で、学生が、アルバイトとか手伝いとか、そういうレベルじゃなくて、本気で教育に向かって勉強したり取り組んでいる例があれば、参考に教えていただきたいです。
【清原座長】  よろしくお願いいたします。学生さんの参加についてです。
【岩本委員】  そうですね。ちょっと。今、実際、ちょっとそこまで学生が直接というのは、すいません、僕も把握はしていないというところです。
 今出てきているのは、高校生。ちょっと文脈は違うんですけれども、高校生とかの学びに、キャリア教育的な視点も含めて、学生との対話的な時間だとか機会というのが、すごくニーズが出てきていて、高大連携とか接続というのが、今、県としても挙がってきてます。
 そのときに、まさに高校生と対話をしていく主体として大学生。その中でも教員、教職の課程を取っている学生なんかが、ここに関われるような仕組みを、大学と今、一緒になってつくっていこうというような動きで、1,000時間体験という教員免許取るときに、1,000時間ぐらい、そういったいろんな活動とかボランティアをしようとかというのは、島根大学で持っていたりするんですけと、そういった中で、まさに探究の伴走的支援をするとか、ファシリテートしていくとか、壁打ちをするみたいな、学校現場でなかなか、ここら辺にもっと学生に関わってほしいというところに教職取る学生さんが関わって、その時間がちゃんと1,000時間にカウントされるとか、場合によっては、科目の中で、大学の授業の中で、そういったスキルを学びながら、実際、生徒たちにオンラインも使いながら関わるとか、そこを3年でやっていこうという話はあります。まだ実際に、すごく分かってというところの、僕が見ている範囲では、まだないです。
【清原座長】  小﨑さん、いかがでしょうか。
【小﨑委員】  ありがとうございました。
 例えば、こういう会議なんかも、いずれは学生たちが興味を持って見て、意見を持ってくれるようになったらいいな、なんて思っています。ありがとうございました。
【清原座長】  ありがとうございます。
 先ほど戸ヶ﨑委員が岩本委員の御発表を聞かれて、「義務教育の出口の変容の問題」とおっしゃったんですが、今、小﨑委員の御質問によれば、高校から大学へ、あるいは大学から高校や、あるいは教育現場へという相互性をどういうふうにコーディネートしていくかというようなことかと思います。コーディネーターには社会教育士、そして生涯学習の現場との関係が顕在化したわけですけれども、教職大学院との関係についても、また今後、注目したいと思います。
 あと、残り少なくなってまいりましたが、皆様、特に御発言ありませんでしょうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうかね。水田課長さん、何か。よろしいですか。
 皆様、もし、今日、お三人の御発表を聞いて触発されたことで、今後のこの会議の運営の中で、こういうテーマをもっと深めたいとか、こういうような事例をもっと詳しく知りたいというようなことがございましたら、事務局まで御遠慮なくメールで御連絡いただければ、今後の会議の運営に大いに反映していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、本当に3名の皆様、吉田市長さん、そして村上委員、岩本委員から、それぞれのお立場から、教育委員会と市長部局の関係、そして教育委員会がより活性化していくための在り方、そして市長部局と教育委員会の連携について、本質的な、そして発展的な問題提起をいただきました。これをさらに今後の会議で深めていきたいと考えております。
 本当に皆様、御発表、そして御意見の表明、質疑応答ありがとうございました。もし特段ございませんでしたら、以上で本日の議論を閉じたいと思います。
 事務局から連絡事項がありましたら、よろしくお願いいたします。
【伊藤初等中等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論、どうもありがとうございました。
 次回の本検討会につきましては、6月6日月曜日10時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
【清原座長】 本日も3名の委員の皆様の御発表を基に、皆様の積極的な御意見、そして御質問によって、私たちに与えられている課題が深まってまいりました。次回も、またさらにその先に進みたいと思いますので、皆様、御多用と思いますが、積極的な御参加をお願いいたしまして閉会といたします。皆様、どうもありがとうございました。
 
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