GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第9回)議事録

1.日時

令和4年12月14日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web会議による開催

3.議題

  1. 校務系・学習系ネットワークの統合及び校務支援システムのクラウド化の参考事例について
  2. 次世代の校務デジタル化のイメージとセキュリティの確保について
  3. ダッシュボード機能について
  4. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

石井委員、石田委員、井上委員、今井委員、清野委員、小﨑委員、執行委員、妹尾委員、髙橋邦夫委員、高橋純座長代理、中村めぐみ委員、中村義和委員、福原委員、藤村委員、堀田座長、水谷委員

文部科学省

武藤 学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、伊藤 学校デジタル化プロジェクトチーム専門官、菅谷 財務課専門官

オブザーバー

・富山県高岡市教育委員会 参与(GIGAスクール推進担当)川辺 勝治 氏
・慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任准教授 梅嶋 真樹 氏

6.議事録

GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第9回)

令和4年12月14日

 
 
【堀田座長】  おはようございます。本日もお忙しい中、朝から集まっていただきましてありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまよりGIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議、第9回の会議を開催いたします。
 議事進行に係る留意事項や、議事進行の展開につきましては資料1を御覧いただきまして、御不明な点がございましたら、事務局にチャットや電話でお知らせいただければと思います。
 早速、議題1に参ります。この本会議では、これまでも幾つかの自治体に実践事例を御紹介いただいてきております。これまでは、埼玉県鴻巣市、茨城県大子町、東京都渋谷区から実践事例を御紹介いただいてきました。今回は、直近の調達事例ということで、富山県高岡市教育委員会から御発表いただきたいと思います。また、高岡市教育委員会には、慶応義塾大学の梅嶋先生が非常に深く関わっていただいておりますので、この辺りも御助言として御発表いただきたいと思います。それでは、高岡市教育委員会の皆さん、よろしくお願いいたします。
【川辺発表者】  高岡市教育委員会でございます。資料を共有させていただきます。
 本日、教育長が所用のために不在でございまして、GIGAスクール推進担当の参与、川辺が発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 これまでのICT環境整備といたしましては、令和2年度、1人1台学習専用端末の実現に当たりまして、人口17万人弱の高岡市で3つの条件をクリアしてまいりました。1つ目、高速大容量の通信でございます。現在、校内ネットワーク速度は、下りが300Mbps以上という大変高速となっております。2つ目、安全な環境で学習するということで、Microsoft Office 365上で主に学習しております。3つ目、安価に調達するということにつきましては、例えば端末のキッティングにつきまして、教育委員会、そして学校で実施し、経費は発生しておりません。
 今の課題は、校務のクラウド化でございます。目標は3つです。1つ目、校務用クラウドで業務を行うための安全な通信を実現することで、必要な場合に在宅でも校務を行えるようにしたい。2つ目、市内共通の校務支援システムを導入することで、校務の合理化、そして多忙化解消につなげたい。3つ目、クラウド化に伴って校内サーバを廃止してまいります。財政負担を軽減していきたいということでございます。必要な機能を絞り込んで設計いたしました。
 これからのICT環境整備につきまして、高岡市教育委員会からお願いが2つございます。1つ目は、現在、教職員、児童生徒は同じ端末で学習しております。校務のクラウド化後は、教職員はその端末で校務を行う予定です。導入後5年を目処に行う端末更新におきましては、市内共通の端末で学習し校務を行うことができるよう、財政支援をお願いしたいと思っております。
 2つ目、校内ネットワークは現在、高速大容量でございますが、10年で更新時期がやってまいります。この環境を維持するため、引き続き財政支援をお願いしたいと思っております。
 最後になりますが、安全、安価な校務クラウドを実現した本市の仕様書につきましては、他の市町村様に共有していただくことにやぶさかではございません。1つの例として御活用いただければ幸いです。
 高岡市からの発表は以上でございます。ありがとうございました。
【堀田座長】  梅嶋先生のほうで、ではお願いいたします。
【梅嶋発表者】  では引き続きまして、慶応大学の梅嶋から、現在高岡市で推進させていただいている内容について発表させていただきます。
 まず、高岡市と慶応大学との関係といったところですが、令和2年の6月に高岡市と慶応大学SFC研究所で協定を結ばせていただきました。目的といたしましては、全国の他の市町村が追従できるような教育ICTの仕組みを作り上げるといったところでございます。他の市町村でも使っていただけるというところを主眼としていますので、ぴかぴかのモデルというよりも、誰もが使えるモデル、ビジネスクラスではなくて、エコノミークラスの教育ICTモデルということで御理解賜ればと思います。
 まず、最初の大事なことですが、先ほど高岡市教育委員会の川辺先生からもありましたけども、高岡市を事例とした本日発表させていただく校務と学習システムのクラウド化の大前提となっているのが、GIGAスクール構想の実現標準仕様書が策定しました端末です。この「GIGAスクール構想の実現標準仕様書」に完全に準拠した端末を使うことによって、最新のOSが手に入り、最新のWebブラウザが手に入り、最新のウイルス定義を持つアンチウィルス対策サービス、この3つを持つ端末が手に入ります。加えて、これはオプションになりますけども、MDM、端末のところでのセキュリティ手段をセットできるようになりました。
 このMDM、高岡市はMicrosoft Intuneを利用していますが、ほかの自治体もいろいろなものを使っていると思います。厳しく制御することもできれば、利用者の自由を優先して少し緩めに制御することもできます。高岡市では、MDMを用いて児童生徒達のインターネット上での活動の見える化を重視しつつ、調べ物学習等で自由に使っています。また、Microsoft 365サービスを使うことによって、学習システムに関しては完全クラウド化をいち早く進めています。
 今日の発表の中心は、校務のクラウド化というところになってこようかと思っております。校務及び学習システムのクラウド化において重要となっている要因は、オープンのネットワークで対応できるクラウドをしっかりと選ぶこと。そして、安定してクラウドにアクセスできる高速なネットワークを準備すること、その2つでございます。
 高岡市で先導しているのが学習システムのクラウド化でございまして、これは全国の自治体の皆様にお勧めしたいところですが、まず、GIGAスクール構想でも重要視されている遠隔授業を中心に組み立てられると、学校・校務のクラウド化の必要条件を満たす高速なネットワークが学校に完成することになります。特にキーワードとなるのが、同時双方向の遠隔授業です。同時双方向遠隔授業は、非常に安定した帯域と遅延がないネットワークを必要とします。しかし、これが実現すると、校務のクラウド、学習のクラウド、この二つを実際に採用したときのトラブルが一気に減ります。
 その意味では、まず、どの自治体も、同時双方向の遠隔授業を、平時は新しい学びを学校の外から導入するために、そして緊急時、コロナのような緊急時のときには、学校が休校してしまうのを防ぐために使うことを推奨します。遠隔授業を普段から使っていると、クラウド化に非常に適したネットワークが自然に導入されるということになります。
 もう一つ、今高岡市で将来的にはこんなことができればいいということで目指していることがあります。先導する学校で始動しましたが、今後、全部の学校に広めようと頑張っています。それは、児童生徒が書いたノートを先生といつでも交換できるような仕組みです。学校の先生で解決できないときにはそのノートを大学をはじめとした専門家に渡して、専門家にコメントしてもらう。場合によっては、AIにコメントしてもらう、こういうようなことが、全ての中学校、小学校で実現できるようにしたいと考えています。環境整備は出来上がりましたので、順々に進めています。
 さて、今回の御紹介する学校教育システムのクラウド化事業の命題ですが、大きく2つあると思っております。1つ目は、高岡市教育委員会の財政事情に配慮した、他の全国の市町村教育委員会で活用可能な学校教育システム、(学習系・校務系)の完全クラウド化を実現するという部分でございます。校務のほうは今回の事業でございます。学習のほうに関しましては、もう完成しているというところでございます。
 もう一つ大事なところはセキュリティだと思っています。このセキュリティですが、2022年に文部科学省が発表いたしました教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和4年3月版)に完全準拠することで、セキュリティを実現したいと考えています。イコール完全準拠したクラウドと考えていただいて結構だと思います。
 しかし、ここまで言うと、委員の皆様におかれましてはもう承知だと思うのですが、「いや、しかしそのやり方では総務省のガイドラインを準拠することができない」と言われることがあります。実はそれは大きな誤解でございまして、総務省のほうからも、この学校教育システムの完全クラウド化に向けて全面的な御支援をいただいているところでございます。
 令和4年3月に改正されました総務省のガイドラインですが、しっかりとその旨が明記されています。学校ネットワークが行政ネットワーク、具体的には、LGWANのネットワーク、そしてマイナンバーネットワークと切り離された場合に関しては、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインに従って学校ネットワーク、また校務クラウドのセキュリティ、学習系クラウドのセキュリティを作っていいということが明示されています。
 高岡市においては、学校ネットワークを完全に行政系ネットワーク、またLGWANのネットワークと切り離しています。手法としても新しい手法ではなくて、これも同じく文部科学省のGIGAスクールの構想の実現仕様書に従った、学校から直接インターネットを接続する方式を取ったことによって実現しています。
 もう一つ、学校から直収のやり方で、ローカルブレイクアウトを使った自治体がいらっしゃると思うんですが、その場合は、ネットワーク管理の方にぜひ問い合わせていただきたいと思います。
 その結果、高岡市は全ての学校で高速なネットワークが実現しています。これが、校務も学習も限らずですが、安定してクラウドサービスを使うときの大前提でございます。クラウド化のときに最初にやることは、ネットワークを高速化することです。
 高速化といっても何も特別なものをやるわけではございません。高岡市がやったことは、文部科学省のGIGAスクールの標準仕様書どおりに作った結果として、高速化が実現したというところです。もちろん低コストということを重視しました。ネットワーク設計とセキュリティ設定は切り離しています。セキュリティに関しては新しい取組を行っています。
 高岡市におきましては、2つのセキュリティを重視しています。一つはネットワーク機器の出自に関して、つまり出どころに関して留意しています。学校のネットワーク機器がDDoS攻撃の原因となるようなことがないように、出自がしっかりしたネットワーク機器を採用しております。もう一つは、学校に設置された全てのネットワーク機器がクラウド上でモニタリングできる、そういう体制が整えられております。
 ここも特色ですが、だからといって高コストなモニタリングシステムを導入しているわけではございません。ネットワーク機器メーカーであるヤマハが中小企業向けに提供しているモニタリングシステムを使うことによって、非常に低価格で全てのアクセスポイント、全てのネットワーク機器がモニターできるというような状況になっております。詳しくはぜひヤマハのほうに事例の紹介のユースケース( https://network.yamaha.com/case_study/city_takaoka )を作っていただきましたので、そちらを御覧になっていただければと思います。
 さて、本日の本題はセキュリティというところでございます。私は、経済産業省が所管する電力インフラである、アグリゲーションシステムのサイバーセキュリティWGの座長を務めさせていただいてく貴重な機会を得ました。その意味で、電力のような重要インフラと同様な形で、また、IECのほうのシステム委員会の専門委員も務めておりますので、電力システムの国際的な議論にも参加させていただきながら、学校ネットワークのセキュリティを見ております。
 これは、電力システムにおけるアグリケーションシステムのセキュリティ設計の順番ですが、多くの教育委員会、学校においても参考になるのではないかということで再掲させていただきました。まずは、全体構成と責任分界点の明確化を行います。これは非常に地道な作業ですが、ネットワークに接続されている機器がどういうものがあるのかということを細かく把握する作業です。詳細に把握することによって、どこに脆弱性があり、どこに攻撃される可能性があるかということを把握できます。これがセキュリティ設計の第一歩だと思っています。
 次に、これが学校教育システムのセキュリティ設計において一番大切なところですが、高岡市が持っている教育の情報資産を、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインに従った形で、重要性で分類しました。Ⅰ類からⅣ類までに分類をしています。これは本当に1個1個、学校のサーバに保管された全ての情報ファイルを確認し、何が重要性分類Ⅱで、何が重要性分類Ⅲでということをしっかりと分類する作業になります。技術的なことではないのですが、これを丁寧に行うことが最終的にセキュリティコストを大幅に下げることにつながってきます。
 高岡市においては、これら活動の結果として、校務のシステムに関しては、重要性分類ⅠからⅣまで、学習のシステムに関しては重要性部類ⅢとⅣで、そして学校ホームページ等社会に公開するシステムに関しては、重要性分類Ⅳのみで構築するというように、明確に情報資産のセキュリティ分野に従ってシステムを分離するということができるようになりました。これによって大きな事故は防げることができますし、リスクを低減・管理できたと思っております。この取組を高岡市が地道にやったというところが重要なことで、各市町村の教育委員会、また県の教育委員会でも、ぜひ、現場の努力としてやっていただきたいと思います。
 情報資産の重要性分類を終えたうえで、リスク分析を行いました。校務と学習から構成される学校教育情報システムにおいて、どのような形のリスクがあるのかというところでございます。この部分を話し出すと長くなってしまうので詳細説明は省きますが、ぜひ、事故がどのような形で起こるのかというシミュレーションをやっていただければと思います。誰が、どこから、どうやって、どこで、どういうようなことが起こるのかというメカニズム、これは攻撃ツリーというのですが、これをぜひ作ってほしいと思います。
 高岡市の攻撃ツリーを検討した経験から申し上げられるのは、攻撃は外からだけではなく、中からも起こるということでございます。その結果として、高岡市の学習システムのクラウド化においては、多くの利用実績があるサービスでもそのサービスを使わないという意思決定を行っています。多くの市町村や多くの企業の方がこれは便利だよと言ったとしても使えないという判断を行っております。ぜひ、攻撃ツリーを作り、自らのシステムのリスクを見える化するやり方は踏襲していただきたいと思います。
 攻撃ツリー分析を行った結果、事故が発生したときにそれを管理することを実現できるようになります。その内容に関しては、委員の皆様に共有させていただいている「高岡市教育情報セキュリティ管理基準」のほうに反映されております。
 そしてこの先、実装が進むにしたがって、抑止、内部防御、そして侵入攻撃検知、そして被害の把握等、システムに求められるアプローチをしっかりと踏襲してまいりたいと思っております。高岡市が先導していくなか、これは共有すべきという脆弱性情報は、私も拝命している文部科学省のICT活用教育アドバイザー会議等で共有させていただき、公の資産にしていきたいと思っております。このような情報共有は、電力システム等重要インフラでは当然に行われていることなので、それをしっかりと推進していきたいと思っています。
 セキュリティ設計を終え、その後高岡市では、かなり細かな校務支援システムに関する仕様書を作りました。何ができたかというと、仕様書に対する提案をしっかりと定量的に得点換算できるようになりました。高岡市は、希望される自治体の皆様と共有頂けるとのことですので、ぜひお読みいただければと思います。今まで先人の方が積み重ねてきたあらゆる検討書をしっかりと参照しておりますので、逆に言うと、全国の市町村の皆様に使っていただける仕様書じゃないかと思っております。
 特徴は、セキュリティ及び機能要件、非機能要件はかなり細かく書いています。非機能要件に関しましては、APPLICの今までの検討を参照することによって、非常に分かりやすい形で得点換算されているということになっています。
 ネットワークはインターネットを使い、重視するのは暗号化と認証の仕組みになります。利活用では、積極的に外にあるクラウドサービスを活用、後発的に発見したよいインターネットサービスも活用できる方針を取っています。そしてそのクラウドサービスとは、公知な標準インターフェースでしっかりつなごう。また、もし仮に活用できるSaaSと呼ばれるクラウドサービスがない場合には、IaaSをしっかりと構築してその上でサーバを展開してサービスを構築するというようなことを考えています。もちろん端末サイドは暗号化と多要素認証に対応します。
 さて、実装を進める中で発見したクラウド化のメリットを申し上げます。それは、スピードです。例えば、高岡市の校務支援システムのクラウド化に関しては、事業開始から短い期間で実際のサービスを導入することができる予定です。6か月でございます。徹底的にカスタマイズを排除したことによって、確認のプロセスがかなり少なくなっています。その結果として工数が削減されて工期が短縮されました。それは、費用削減にも貢献したと思っております。
 高岡市が発表した仕様に対して企業の提案があり、落札されたのはインテックという会社でございます。インテックが運用しているIaaSで、その上に校務統合サービスを実現するサーバを置くというのが1つ目のモデルです。よいSaaSサービスが外にあった場合にはそれを積極的に活用しようということで、ファイルサーバに関しては、つまり学校のコンテンツをためることに関してはBoxを活用しました。
 今回の校務のクラウド化において一番重視していることがセキュリティでございまして、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインへの準拠は確認作業を綿密に行いました。具体的なセキュリティに関しては説明を控えさせていただきますが、何点か申し上げます。
 セキュリティの柱の一つが認証でございます。認証に関して、もちろんIDとパスワードということでユーザー認証というだけでもいいのですが、特に重視したのが、正規な端末をしっかりと証明するということで、端末認証を行います。1台1台の校務システムに接続する端末に証明書をインストールします。IDとパスワードによるユーザー認証と証明書による端末認証、この2つを掛け合わせて安全性を担保しています。
 しかしながら、これも高岡市向けにカスタマイズして作ったものではなくて、インテックが普段から使っているサービスを活用することによって、低コストとサービス安定性をもたらしています。
もう一つがサービスの拡張性です。SAMLというクラウド同士を接続する規格に対応していれば、あらゆるクラウドサービスと認証できる、つなぐことができるという仕組みを作っていることによって、拡張性も担保し、今後、高岡市が新しいサービスを入れるときにも、この認証の仕組みが活用できるということを作っております。
 動かすシステムとしては、サーバ上で動かすのは、EDUCOMの校務支援システムにしました。この中で高岡市として使うもの、逆に言うと使わないものを、線引きして、使うものだけを実際にサービス展開する予定でいます。
 SaaS及びIaaSのクラウド環境選択においては、IEC27017の準拠ということを中心とした文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの準拠を重視しました。
 また、この教育情報システムのクラウド化以降は、いつ、誰が、どのようなデータをアップデートしたのかということを把握できる環境になってくる予定です。データ管理の品質は当然高まってくると思っております。
 時間が2分ぐらいオーバーしてしまいましたが、慶応大学、梅嶋からの発表は以上になります。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、ここで委員の皆様からの質疑応答の時間を取りたいと思います。御発言を挙手機能でお知らせいただきまして、御発言をミュートに戻していただければと思います。
 今いただいた御説明は、いずれも非常に汎用的な、そして文部科学省が標準として出しているものに、ある意味丁寧に分析し従っていただいて、同時に梅嶋先生がいろんなところで御活躍の一般的なセキュリティの考え方を上手に組み込んでいただいて、それで、やたらと学校や地域に合わせ過ぎる過剰なカスタマイズを避けてコストダウンを、あるいは納期の短縮を図っているという、非常に優れた例を御発表いただいたかと思っております。
 では挙手をいただいている方を今から御指名してまいります。それでは小﨑委員、よろしくお願いいたします。
【小﨑委員】  奈良教育大学の小﨑です。高岡市の御担当の方、梅嶋先生、どうもありがとうございました。非常に参考になることが多かったです。汎用性とか、そういうみんなで使おうというコンセプト自体もそうだったんですが、そこに関わる人たちが何を基準で考えるべきかというのが明確だったので、話を聞きながらでも、うちの自治体ではこういうふうなアレンジができるなということが分かったんじゃないかと思います。
 それで1点、私自身の経験上のことで言いますと、このそもそものコンセプトと、それから学校の先生たちというところの絵の中で、教育委員会の担当者自身がこれを理解して、こういうものを形にするために膨大な作業が生じることになっていて、その教育行政の担当者は、内容が分かって、実現したいんだけれども、時間がない、大変だ、結局学校に丸投げしてしまうみたいなことを繰り返しながら頑張ってきたわけです。
 ところが、今日の話でいくと、そこにさらに外部の梅嶋先生のような方とか、その先のAIの支援の話まで出てきていましたけれども、そういう外部の力を借りることによって、担当者や学校全体の負荷が下がるというのが非常に明確だったように思うので、今日の話の中で、特に教育委員会の担当者や外部の人がこんなふうに関わりましたという点私は外部の人の関わり方がとても重要だったんじゃないかと、梅嶋先生のサポートがすごく大きかったんじゃないかと思いますので、その辺について、外部からの関わりの点を、さらに教えていただけたらと思います。お願いします。
【梅嶋発表者】  ありがとうございます。文部科学省教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインが言うところの外部の専門家である私がセキュリティを監修しました。一方で、どのサービスが学校に必要なのか、逆に言うと、どのサービスであれば標準化されたパッケージが学校で活用できるのかというところは、これは高岡市教育委員会及び学校の先生のほうにお任せする形にしました。
 但し、セキュリティに関しても、業務のほうに関しても両方で協議して行わないといけない内容があります。これは高岡市向けにカスタマイズしないとできないことなのか、もしくは、これはカスタマイズしなくても汎用的なものできるのかの判断、この線分けです。
【小﨑委員】  ありがとうございました。その点だと思いますね。お互いのできることをしっかりと助け合いながらやって、つなぐところ、協議すべきところはお互いのずれそうなところとか、一緒に考えないといけないところは、ということで。
 最後もう一つ、現職、現場の先生たちというのはどれぐらい関わりましたか。
【梅嶋発表者】  これは川辺先生のほうがよいかもしれません。川辺先生、現場の先生の関わりというところは、川辺先生、どういう形で判断されていますか。
【川辺発表者】  よろしいでしょうか。まず、私がいつも連絡を取っているのは、小学校長会長、中学校長会長でございます。そして毎月、校長会をやっておられますので、そこへ行って、逐次校長会とすり合わせながら設計してきたということです。校長会の皆さんはコンピュータに対しては不慣れな方も多いのですが教育委員会の言っていることを理解していただいているところです。
 初めの頃は批判もありましたが、今はもうやるしかないということで、さらに校長から教頭、そして、高岡市ではGIGAスクール担当者という方を校内に2名選任してもらっています。具体的な作業につきましては、そのGIGAスクール担当者に対して遠隔で講習会を行い、年度末・年度始めの作業であったり、これから行う校務クラウド化であったりということについては、技術的なことを細かく担当者に伝えていくという仕組みを作っているところでございます。
【小﨑委員】  分かりました。たくさんの学校の先生が関わっているというのが分かりました。ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございました。時間の関係もありますので次に参ります。石井委員、お願いいたします。
【石井委員】  石井でございます。丁寧な御説明ありがとうございました。これからの校務の情報化を進めていくに当たって、各自治体で方針が出され、どう進めていけばよいか、これから各自治体が直面する課題に対しての対応を先に進めていただいて、こういうふうにやっていけば大丈夫だというところ、安心感を持って進められるような、御提案をいただいたと思っております。ありがとうございます。
 また、大変評価したいと感じたところは、学校も巻き込んだこと、委員会もしっかり役割があること、そして全部業者に丸投げではないということ、さらに専門家の方も入ったということです。そして、一番理想的な形でこの取組が進んだと思っております。
 1点お伺いしたいのは、今回この取組を進めるに当たって、一番時間がかかった、工程が多かったというものは何でしょうか。お願いいたします。
【梅嶋発表者】  工程という意味では一番注意したのがセキュリティでございます。委員の先生方には別表でお渡ししていますが、情報の資産をしっかりと分類する部分であります。また、攻撃ツリーなどを用いた脆弱性の把握の部分が時間を要したところでございます。ただしこれは高岡市でしっかりやりましたので、高岡市の仕様書を使っていただければ各教育委員会が再度やらなければいけないということはないと思います。
 これから校務システムのクラウド化に進む自治体、教育委員会の皆さんに重視していただきたいのは、何をシステム化して、何をシステム化しないのかという判断です。これは高岡市流もありますし、一方で、例えば延岡市流、福岡市流というのも当然あると思います。何をシステム化して何をシステム化しないのか。これは教育委員会、そして先生たちの間でしか決まりません。高岡市の範囲は今回高岡市の仕様書で明示化されましたが、各自治体によって違いが出てくるのではないのかと思っています。そこがこれから各市町村が時間をかけなければいけない部分であると思います。
【石井委員】  ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、この後、妹尾委員、藤村委員にお話しいただきまして、そこまでといたします。妹尾委員お願いいたします。
【妹尾委員】  ありがとうございます。大変参考になる取組で、ありがとうございました。本当にほかの自治体もすごく助かるという取組じゃないかと思います。3点教えてください。あまり僕は詳しくないもので、素人的な質問かもしれませんが。
 1点目は、情報資産の分類をしてファイルをひっくり返してということで、しっかり仕分をしていったというところについてです。これをやる前とやった後での違いといいますか、どういう部分が違ってくるのかということ、基本的なことですが、教えてください。例えばこういった仕分もない中、運用していったので、今までは非常にセキュリティがガチガチというか、非常に制限がたくさんかかっていて、学校側は不便だったとか、そこが一部、随分使いやすくなったとか。何かこの違いがあれば教えていただきたいと思っております。これが1点目です。
 あと2点目は、確かいろんなセキュリティの脅威をリストアップ、攻撃ツリーなんかをやる中で、多くの事業者は使っているけれども高岡では使わないようにしたというものもあるとおっしゃっていただいていたと思います。その例だとか、なぜ使わないようにしたのかといったところも、よかったら教えてくださいというのが2点目です。
 3点目は、校務系と学習系をうまく連携させながらちゃんと使っていこうという方向性でこの会議は行っていると思うんですけれども、高岡市はしっかりそういったセキュリティ対策をした上で、こういった校務系、学習系をうまく連携させて、こういう取組をしたいだとか、今後の何か見通しなどがありましたら教えてください。以上です。
【梅嶋発表者】  分かりました。まず1点目ですけども、実はこの分類をしないと、正直、事故が発生しているかどうかも分かりません。事故が発生したかどうかということを検出するには、この情報資産分類が必須です。学校情報システムのセキュリティ上で重要なのは、事故が分かるシステムにすることです。事故検出できるようにしたのがこの情報資産の分類です。
 2つ目の妹尾委員の御指摘の部分ですけども、学校と企業の情報システムの一番の違いは、学校には多様な人がいます。児童生徒もいます。児童生徒は従業員ではないので、いろんな使い方をする。これを前提として考えないといけないというところです。セキュリティ的になぜ情報資産分類をやったかというところにつながってきますが、児童生徒を従業員のようにコントロールすることはできないので実効性があるのは、情報システムに関する教育です。
 高岡市においては、教育情報システムに関して使用するか、しないかを判断するうえで大きな基準が2つあります。一つは、児童生徒を管理するということはできないことから利用禁止とすることがあります。もう一つは、セキュリティ的に高岡市教育委員会の情報管理規定、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインに準拠していないということで利用をお断りしたサービスがございます。
 高岡市のこれからの部分というところに関しましては、私のほうはセキュリティ面で申し上げますと、高岡市がやりたいことというのが、技術的な理由でできないということだけは稀少化したいと思っています。それは、全国の市町村及び県の取組というところに貢献できると思っておりますので、高岡市がやりたいということが技術的な理由でできないということはないようにしたいと思っています。
 川辺先生、何かこの辺でありましたらお願いします。
【川辺発表者】  まだ公開していない資料ですけど、少し見ていただけますか。私たちが大事にしたいのはⅠ類・Ⅱ類の管理です。このⅠ類・Ⅱ類の管理をどうやれば適切にやれるかということで、横軸にそれぞれの管理する役職の人を配置しまして秘匿性のあるフォルダを管理していきます。この人たちは、ほかの人に共有したいときは、自分たちで権限を持って共有フォルダを作っていくという形でいきたいと思っています。
 Ⅱ類とⅢ類の間に非常に大きな開きがあることは皆さん御存じだと思いますが、その区別と管理の徹底をしっかりとやっていくための設計を現在、行っているところでございます。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。では藤村委員、お願いいたします。
【藤村委員】  高岡市の取組は、本当に外部の専門家で梅嶋先生と高岡市教育委員会の川辺先生たちをはじめとして皆さん協力して、教育委員会単独でやるとうまくいかないけれど、外部の専門家を交え、一緒に現場の先生とも協力するといいモデルができるという典型事例だったと感じております。
 1点、その現場、教育委員会の関わり方について質問ですが、実は私の経験から言うと、GIGAスクール端末のキッティングや何かを、コストをかけないために教育委員会と現場でやったところは、担当された方がほぼほぼ疲弊していて、そこは教育委員会で面倒を見てほしかったという意見なんかも結構聞かれたんです。したがって、校務の情報化とか、そういう情報化を進めるに当たって、現場の負担を軽減するのは行政の責任かという気もしています。恐らく丁寧に説明されて、手間がかからないようにされたのかと思っているんですが、そこはどういう工夫されたのか、お聞かせいただけますか。
【梅嶋発表者】  川辺先生、先にお話しください。どうぞ。
【川辺発表者】  私たちは、いかにみんなに分かりやすいマニュアルを作るかというところに力を入れました。要するに、初心者の人も見れば分かるというマニュアルを作るということです。それに従ってやっていただいて、「できた」という成功感を持っていただくということです。藤村委員のおっしゃるように、大変だったという感想をいただいておりまして、現在どうしているかというと、少しずつ先生方のお力を借りながら、ICT支援員ですね。この活用をうまく絡めていこうとしております。
 そして小学校低学年、1年生ぐらいですと、使用開始は2学期ぐらいになりますので、小学校1年生のキッティングについては夏休みまでにやっていきましょうという方針を今回立てております。そのようなことで、先生方の負担を減らし、ICT支援員の協力も得ながら、少しずつ省力化をしていっているところでございます。
【藤村委員】  ありがとうございます。
【梅嶋発表者】  情報システムのビジネスの視点でお話しさせていただくと、学校で先生や児童生徒が活用する端末のメーカーは基本的に要するにキッティングを簡単にさせるための、例えばUSBによる端末キッティングとか、いろいろなサポートモデルを持っていると思うのです。GIGA標準仕様書に基づく端末の更新というのは、高岡市の今回のクラウド化においても大事なところです。私は、GIGAスクール構想というのを非常に高く評価させていただいているのですけども、ぜひ、次期のGIGA標準仕様に基づく端末が学校に届く際には、端末メーカーの皆様には、キッティングを簡単にする道具をぜひ積極的に教育委員会のほうに提供してほしいと思っています。
【藤村委員】  ありがとうございました。ということで現場に配慮してということを考えると、今後校務もICT支援員その他、現場を支える人材の配置もセットでお考えいただきたいし、キッティング等もぜひ公的にやり、今のツールみたいなものの提供とか、そういった点もぜひ御配慮いただきたいと思いました。
 また、これをそのまま放置して実は事故がありまして、キッティングを現場に任せたがためにアクセス権限の設定を不適切にしてしまってセキュリティが担保できなかったということもあるものですから、ぜひ御配慮いただければと思います。ありがとうございました。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、この議題につきましてはここまでといたします。私としては、カスタマイズの辺りの話ですね。カスタマイズというのは、要は今までのやり方にシステムを合わせようとする行為だと言えると思うんで、今までやっていたやり方に本当にシステム側は合わせなければいけないのかどうか。そこには非常にコストやリスクが伴うわけで、そのことの見直しからちゃんとやるという、この梅嶋先生をはじめ高岡市の姿勢には非常に共感いたしております。どうも本当にお忙しい中ありがとうございました。
【梅嶋発表者】  ありがとうございました。
【堀田座長】  それでは、議題2に参ります。事務局より説明をお願いいたします。
【武藤リーダー】  失礼いたします。資料3を御覧ください。「教育データの利活用における校務DXの将来的なイメージ(改訂)」という資料でございます。この資料3と、それから後ほど出てくる議題3について先に申し上げると、今日で本検討会議は第9回を迎えるわけでありまして、そろそろ終息に向かって私ども事務局も含めて作業してまいりたいと思っています。正式にまだ決まっていませんけれども、恐らく来年の1月の半ばぐらいに、できれば素案のようなものをまた御議論いただいて、2月の後半にまとめの案というようなものをまた御議論いただくような、そういう感じのスケジュールで進めてまいりたいと思っております。
 今日これからお目にかける資料3ですとか資料4につきまして、そういう前提で、できる限りお気づきの点をお寄せいただければと思いますし、時間の関係で難しい場合は後日メール等でまたお知らせをいただければありがたいと思っています。前置きが長くなりましたが、資料3の御説明に入りたいと思います。
 まず、1枚目でございますけれども、これは先日お目にかけて御議論いただいた資料でございます。校務DXの将来的なイメージということで、大きく教育委員会と首長部局に分かれる中で、教育委員会の所掌のところの中の学校の校務系と学習系の仕組みというのをクラウドでつなげて、ネットワーク統合で接続性を確保していくと。左側の校務と右側の学習系、ここを相互接続して、低コストとリアルタイムでデータ連携をしていきたいということが一つと、首長部局のほうとは、しばらくの間は少なくともネットワーク分離が必要だということもここには記載をしておりました。ここはおさらいみたいな話です。
 1枚めくっていただきまして、これも前回お目にかけている資料を若干修正したものであります。校務DXの位置づけと校務支援システムの果たすべき役割ということでありますが、前段の従前と今後の方向性、ここは変わっておりませんで、その後の、その中で次世代の校務支援システムが果たすべき役割というところの右側にある模式図というか、そこの辺りを少し修正しております。
 大きく①と②と③ということで赤く字が書いてありますが、①のところが、その下の凡例のところにもありますけども、次世代の校務システムで備えるべき機能と。②が汎用のクラウドツールで対応することも考えられる機能と。そして③で、校務DXを推進する上で新たに必要と考えられる機能としてダッシュボードと書いております。これはいずれも要素としては前回も入っておりましたが、①と②、③の間にAPI連携機能等によって一体的に運用していくんだと、これが分かりやすいように前回の御議論も含めてここは修正をさせていただいたということであります。
 3ページにおめくりをいただきまして、ここからが今回初めてお目にかける資料でございます。まず、アクセス制御を前提としたネットワークにおけるセキュリティの確保について、たたき台ということで試みに作ったものであります。
 まず、基本的な考え方としてですけれども、ネット上のクラウドサービスで情報を安全に取り扱う際、一切の情報アクセスを信頼せず、すなわちゼロトラストということで、権限を持つ利用者からの適正なアクセスかを常に確認するアクセス制御、このことによって不正アクセスを防止する必要があると。そのためには、利用者ごとに情報へのアクセス権限を適切に設定するということと、大きくアクセスの真正性、通信の安全性、それから端末の安全性、この3つの観点から利用者のアクセスの適正さを常に検証する必要がある。
 この①から③に関する、ゼロトラストセキュリティに関する要素技術というのをその下に整理をしております。
 まず、最初のアクセスの真正性に関して、最初は1-1で多要素認証ということで、先ほども出てまいりましたが、記憶(ID・パスワード)、それから所持、これは電子証明書とかICカードの類い、それから生体認証、指紋認証とか顔認証とか、こういう3要素のうち2つ以上の要素を求めることで、なりすましや不正アクセスを防止する技術。
 2つ目がリスクベース認証でございます。端末のIPアドレスとか位置情報、それから使用されているWebブラウザ、あるいはアクセスの時間、こういったものが通常と異なる際のリスクを判定して追加認証を求める技術。
 3つ目がシングルサインオンです。複数のクラウドサービスを1回の認証でアクセス可能とすることで、利便性の向上と、それから認証の煩雑化によるリスクの低減。小さい字で書いてありますけども、あまりパスワード管理が煩雑化して、シングルサインオンではなくてマルチプルサインオンになってしまうと、どうしても面倒なので、複数のサービスで共通のパスワード、あるいは推測が容易なパスワードを設定すると、そういう温床になってしまうので、このシングルサインオンも技術の一つとして整理しております。
 2つ目が通信の安全性に関する要素技術ということで、Webフィルタリング。
 そして③で、端末の安全性に関する技術として、大きく4つありますけれども、モバイル端末管理(MDM)です。端末のアップデート、あるいは各種のセキュリティ設定を一元的に管理するということによって、端末ごとのセキュリティ設定の違いでセキュリティホールが発生することを防止する、また、紛失・盗難に遭った際はデータの遠隔消去等を行うと、こういうものであります。
 またアンチウィルス、これは既知のパターンウィルス(マルウェア情報)から、マルウェアを検知して駆除する技術。そしてふるまい検知ということで、パターンファイル、存在しない未知のマルウェアに対応するために、不審な挙動をするプログラムを検出して、そのログを分析して適切に対処するということで感染の拡大を防止する技術。そしてデータの暗号化。データをそれぞれ端末に保存する際に自動で暗号化することによって、アクセス権限がない者の情報の閲覧・編集を制限すると、こういうふうに整理をしてみました。
 その上で、具体的に今回、校務DXをしていく上で、どんな技術を使っていくかということについての基本的な考え方のたたき台が次の4ページでございます。
 まず、1つ目の黒丸ですが、学校現場で取り扱う情報のうち、特に機微度の高い情報、すなわちその下にありますが、人事、成績、それから生活指導履歴とか健康診断とか、いろいろですけれども、こういう機微度の高い情報、それから児童生徒の情報がまとまっているデータ、例えば全員の名簿ですとか、全員の学習アプリの利用履歴なんていうのがこの辺に該当するかと思うんですが、こういったものについては高いセキュリティを確保して、取扱いの安全性を高める必要があると。
 (※3)のところに書いてありますけど、このことの大前提として、管理者が利用者の職位、それから職務、先ほど高岡市のプレゼンにもありましたけども、職位・職務に応じて利用者ごとにアクセスし得るデータの範囲を適切に設定する必要があるということが前提かと思っています。
 その上で、具体的に校務のほうに蓄積される情報と、学習系で教員がアクセスし得る複数の児童生徒の学習履歴、こういったものへのアクセスについては、この前の3ページで示したセキュリティ技術を複数組み合わせることが適当ではないかということであります。もっと具体的に言うと、教職員が使用するネットワークか端末、これは、これらの情報、データを扱うので、最低でも多要素認証、それからシングルサインオン、Webフィルタリング、MDM、アンチウィルス、それからデータ暗号化、こういったものによってセキュリティを確保することが適切ではないかというたたき台でございます。
 そこから抜けているものについて小さい字で※で示しております。これはあくまで最低限必要ではないかと考えられる要素技術でございまして、例えばリスクベース認証、これは認証の強度を高め得るものですが、セキュリティと利便性を両立させるリスクの判定基準などを今後検討していく必要があるので、現時点ではここに入れなかったものであります。
 またEDRです。これは未知のマルウェア対策として有効ですけれども、その効果を最大限に発揮するためには、専門的な知識を持つ人材による事前のチューニングと、それから膨大なログ分析が必要ではないかと。そのためには管理者がスキルを身につける、あるいは外部の事業者に委託するということでありまして、運用体制あるいは費用の面で効果に必ずしも見合わない負担が生じる可能性があるのではないかということもあるので、これらについては、例えば取り扱うデータの量、児童生徒数、こういったことも踏まえたセキュリティのリスクと、それから導入費用、運用費用、この辺りを比較考慮してどこまで使っていくのか、導入していくのかということの要否を、それぞれの教育委員会で検討する必要があるのではないか、このように考えて、たたき台としてお示しさせていただきました。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、ここからまた質疑応答、意見交換の時間とさせていただきます。
 今、出てきたのは、皆さんに毎度見ていただいている情報に加えて、情報セキュリティについて、分かりやすく整理していただいたものでございます。だけど、初見のものは特に、もうちょっとこういうものも入れたほうがいいんじゃないかとか、こう書き換えたほうがいいんじゃないかとかいう御意見があったら、これは最終的にはまとめのほうまで入ってきますので、ぜひ御意見いただければと思います。既出のものについては、微妙に変わっています。少しずつ。それは皆さんの御意見を取り入れているということでございますので、ぜひ御協力をお願いします。
 では藤村委員からいきましょう。ほかの方も挙手しておいてくださいね。どうぞ。
【藤村委員】  御説明ありがとうございます。とても分かりやすくまとまっていると感心して拝見しておりました。特に要素技術をきちんと図に位置づけて説明していただいたのは現場にとっても非常にいいし、教育委員会にとってもよかったかと思います。
 1点お願いがあります。私たちセキュリティの専門家から見ると、これで分かるんですが、教育委員会、学校現場に分かりやすくするために、端末のセキュリティと書かれている部分、ページ数で言いますと3枚目のスライドの③番、緑色の部分ですが、これがちょっと誤解を招くかもしれないという心配をしました。
 というのは、端末というと一般の先生方とか教育委員会は、先生方や子供たちが持っている端末をイメージされるんですが、末端にあるもの全てということで、これはクラウドのサーバも含んでいるということのはずなので、ここの書き方は、専門用語としてはこれでいいんだけど、分かりやすくするために、「端末・サーバ」とか、もしくは、「クラウドの安全性に関する要素技術」、「端末・サーバの安全性に関する要素技術」とすると、ふるまい検知、先ほどの話にあったように、入れるかどうかはサーバ側の話ですので、そういったところも含めて誤解のないようにしてはいかがでしょうか。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。では中村義和委員、お願いいたします。
【中村(義)委員】  ありがとうございました。こちらの資料は、とてもこれからのいろいろな物事を進めていくときに参考になると思っております。ネットワークのところに着目していたところがございますが、先ほどの梅嶋先生からの御報告にもありました、外部からのセキュリティをどのように守っていくかということで多くの施策が取り入れられていますが、内部からのセキュリティ確保、それは内部といったときに職員がという点と、利用している製品サービスを提供している事業者という視点もあるのかと少し思っております。
 職員がという点については、先ほどの情報分類等によりアクセス制御することによって確保をある程度上げていくことができると思いますが、製品サービスを提供している事業者となりますと、さまざまな事業者がありまして、そこを信用して、信頼して使っていくところが今のところ多いのではないかと思います。実際にはPマークを取られているとか、また、自社でいろいろなセキュリティ確保の宣言をして、学習者にとっての情報保護をこういうふうにやっていますと言っている企業もあります。
 このような企業の製品サービスを採用し、外部から、職員から、それから製品サービス事業者からの視点で、しっかりセキュリティを守っているという校務支援サービスの採用を進めていっていただき、教育分野全般のそれぞれの教育系製品サービスも、これの延長線上で整備されていくような環境づくりができるとよいのかと思いました。ありがとうございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。では井上委員、お願いいたします。
【井上委員】  JMCの井上でございます。ありがとうございます。より分かりやすい資料で、今後我々も参考にしたいと思うんですが、一つ、業者側からの意見として、2ページ目でいろいろ分類されていて、校務支援システム自体が持つ機能、それから汎用のクラウドツールに任せる部分、それからダッシュボードというのが分かれているんですけども、書きぶりの問題です。こういうふうに書かれてしまうと、校務ベンダとしては、これ以外の機能を作るなと。要は、もう与えられた、決められた機能以外のものは作ってはいけないと読み取れてしまうことが非常に危惧しておりまして。
 自由競争を、企業活動を制限する形になるような表現は避けていただきたいと思っております。ですから、ここの※印である「汎用クラウドツールで対応できない、真に必要な機能に限定」とあるんですが、これは、作ってはいけないという読み取れる可能性があるので、そうじゃないよというような表現に変えていただけたらありがたいと思います。
 それと、グループウェアとかが分けてあるんですけれども、例えば校務ベンダがグループウェアを作る、今後はクラウドに持っていくわけですから、今後新しいのは。その中に例えばメーラーで、保護者からのメールで欠席させたいというのがあったら、すぐにそのメーラーの中に出席ボタンというのがあって、そうするとすぐに子供たちのリストが出てきて、ここが欠席と入れられるみたいな機能があれば、多少価格が高くても校務支援システムにあったほうがいいんじゃないかというのも当然出てくるかと思うんです。
 こういうふうに、これは完璧に汎用クラウドツールでなければいけないみたいに書かれてしまうと、これは非常に校務ベンダとしてはやりにくい。それからまた、多少高くても先生方の負担が軽くなるのであれば、そちらがいいんじゃないかという、そういう選択肢を奪ってしまうんじゃないかと。確かに汎用ツールのほうが安いとたしか前の議論で出てきましたが、ぜひ文部科学省で出していただきたいのは、A社、B社、C社の汎用ツールを使ったときとどれぐらい価格差があるんだろうか、機能差はどれぐらいあるんだろうか、それで連携が取れているほうがどれだけ操作性が有利だろうかという、そういうふうに判断できる上で、高い、安い。少しの差だったら高くても操作性がいいほうがいいんじゃないかという、そういう判断ができるようなエビデンスをどこかにつけてほしいと思います。それがないと、いきなりもう汎用ツールしか使ってはいけませんみたいに読めるのは、納得できないかというのが正直なところです。
 それと、ダッシュボードも別枠になっておりますが、別に校務支援システムの中にダッシュボードがあっても全然構わないと思っていまして、要は機能として持てばいいだけの話じゃなくて、別に分けなければいけない理由というのはどこにあるのかというのはまだ理解できていないところがあります。
 それと、その次のページ、3ページ目のところで、Webフィルタリングという通信の安全性に関する要素技術というのがあるわけです。これは当然だと思うんですけども、自治体業務が、自治体間でデータをやり取りすると今SOAPというプロトコルを使っていまして、今度ガバメントクラウドになるので、そこはなくなりますけれども。いずれにしてもガバメントクラウドじゃないところでデータのやり取りする必要が今後発生しますので、どういう通信プロトコルを使うのかとかは、これは実際に運用が始まるときにはどういうものがいいんだろうかというのをある程度想定しておく必要があるんじゃないかと思いますので、そこも一つ付け加えていただけたらありがたいと思っております。私は以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。藤村委員、妹尾委員、小﨑委員の順番でいきます。お願いします。
【藤村委員】  今の井上委員のお話はとても大事な話だと思っています。私もこの資料を拝見したときに、これが目指す姿だよと受け取られるのはまずいと思っていまして、私も調達側の経験がありますけれども、コスト的にはちょっと高くても、連携動作して先生方が使い勝手のいい、内容がいいとかという場合には、専用アプリを採択するという経験がございます。
 したがって、それは学校設置者とか学校が先ほどの高岡市モデルのように協議した上で、これがいいと判断すべきところであって、したがって、校務支援システムでも、それしか持たない機能と、あとほかにも持っているよという機能を書いた上で、どちらを選択するかは学校設置者判断とかというような書き方ですとか、それから校務の別機能じゃなくて、内蔵してとかという話もまさにおっしゃるとおり、ダッシュボードは現在そうなっていますので、その辺も整理された図にしてはどうかというのが1点です。
 これが間違った方向に行くと、議会で独自にうちはこれ専用のほうで一体動作するほうがいいと判断したけれど、「文部科学省の資料にはこう書いてあるだろう、だから予算はつけない」ということになり得るので、御配慮いただければありがたいという話が一つです。
 それから、こちらの資料の3枚目のところですけれども、Webフィルタリングのみが書かれているんですけれども、実は、ここのところ結構神経を使わなければならないのが、通信の暗号化の話もあるかということも考えておりまして、その辺についても触れていただいたほうがいいのか考えています。現状、校務支援システムはほぼほぼ通信時には最低限程度、SSLの暗号化度はしていらっしゃるかと思うんですが、そこも含めてよろしくお願いいたします。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは妹尾委員、お願いいたします。
【妹尾委員】  ありがとうございます。大変分かりやすい資料でありがとうございます。僕からは、以前の会議でもコメントしたことと重なる部分もありますが、2点ほどお願いしたいと思います。
 今後のこういった理想形だとか、まとめた資料は大事だと思うんですけれども、多分2点をちゃんと強調しないとうまくいかないかと思っていて。当たり前の話ですが、1点目は、何のためのものなのか、何のためのDXなのかとか、その辺が、今のこの資料3の例えば2ページ目のスライドで言いますと、右上の「校務DXが目指すべき方向性」ということでポチが3つあるわけですが、これはまとめればこういうことで、1枚紙としてはこれでいいのかもしれませんけれども、この会議の報告書なのか何か分かりませんが、それとしては、もうちょっと具体的にどういうことなのとか、例えばこういう部分でとかということをもうちょっと示さないと。例えば「データ活用による学習指導、学校経営等の高度化」とだけ言われてもぴんとこないとか、さっきの議会とか教育委員会の内部だとか首長部局に説得できないということに多分なると思いますので、そこはぜひ注意をしたいと自分自身への反省を込めて申し上げております。というのが1点目です。
 あと2点目は、何のためかということだけではなくて、どうやればそれに近づけるのかと、理想形に近づけるのかという点だと思います。手順なり具体的な方法例ですよね。箸の上げ下げまで文部科学省が言うのかというような点はあると思いますし、地方自治の世界ですので、各自治体の裁量はもちろんあってしかるべきですが、例えば今日の報告でもありましたように、情報資産をしっかり棚卸しをして、事故だとか脅威だとかをしっかり洗い出しましょうだとか、どういう部分はシステム化して、どういう部分はカスタマイズするのか、本当にそのカスタマイズは必要なのかということをきっちり検討せよとか、学校BPRしましょうとか、そういった、恐らく多くの自治体で今まであまりできていなくて、先進的な、先行的な自治体ではできているものを見ていくと、幾つかそのタスク出し、洗い出しができると思いますので、そこをぜひ、ある程度はやっていかないと、文部科学省とか有識者会議の言うことは分かるんだけど、俺たちにどうしろというねん、というような自治体、学校がきっと多くなるだろうと思いますので、その辺りを御検討ください。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。では小﨑委員、髙橋邦夫委員の順番で参ります。小﨑委員、お願いします。
【小﨑委員】  よろしくお願いいたします。私からは2点です。
 先ほどの高岡市の発表にも基づいて、例えば外部の方が関わろうとしたときに、どういう関わり方ができるのかとか、そういうヒントがあればいいのかと思いました。教育委員会、学校、文部科学省というところが見えているんですけど、結局、外部の方たちにすれば、「私が関わるとしたら教育委員会に関わったらいいのか、学校に直接関わるべきなのかどうか」とかいう点ですごく迷いが出ていますし、この図でいくと、校務系・学習系で分けたこととか、教育委員会が学校を囲っているというのは分かるんですけど、全く学校を知らない人や学校の先生自身がこれを見たときには、システムのことも全部学校でやっていて、教育委員会はそれを見守っているというふうに見えてしまうのではないかという懸念を感じました。
 私は、もう少し教育委員会のウエイトが高いんじゃないかと思っているんです。そこは、先ほどの責任分界点という話もあったんですけど、この図が何を意味しているかは、私はよく分かるんですけど、もしかすると何か教育委員会と学校の関係性が曖昧に見えてしまって、どっちが何をするの、みたいな話にならないといいなという心配が一つあります。外部のことと中の教育委員会と学校の関係性のところが整理できたらもっと見やすくなるかと思いました。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは髙橋邦夫委員、お願いします。
【髙橋(邦)委員】  ありがとうございます。とても見やすい資料になっていまして、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改訂にこれから携わる者としては、特に3スライド目、これは非常に参考にさせていただきたいと思っています。次のガイドラインではこういう見やすい表も入るといいと思っておりました。
 この3スライド目は、どちらかというとゼロトラストベースです。アクセス制御による場合の必要なツールということで書かれておりますので、ここと従来のネットワーク分離のケースでも必要なものとはちゃんと踏まえないといけないだろう。これはガイドラインの改訂のときにしっかり押さえればいいと思っております。
 そういった意味ではゼロトラストのツールだけで安心だと捉えられてしまうのは危険だと思っていますので、以前から言っていますけれど、SOC(セキュリティオペレーションセンター)みたいなものを、ゼロトラストだろうが従来型のネットワーク分離だろうがあったほうがいいのでしょうが、ゼロトラストにするに当たっては、SOCをしっかり立てましょうということも踏まえていただきたいと思います。
 今回のセキュリティに関しては、これから目指す1スライド目、2スライド目に書かれている姿を作る場合には、3スライド目にあるツールが必要ですということが訴えられればいいと思っています。3スライド目、4スライド目だけが独り歩きしない、そういった立てつけにしていただけるといいと思いました。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、この後、中村めぐみ委員、高橋座長代理、ここまでといたします。中村委員、お願いします。中村めぐみ委員、いかがでしょうか。音が飛んでいますね。では、高橋座長代理、お願いいたします。
【高橋(純)座長代理】  ありがとうございます。一つはセキュリティの確保の部分についてですけども、これは技術的な観点で書かれている点が非常に多いと考えておりますが、制度とかルールとか、そういうような面からもセキュリティを確保していくという考え方が重要だと思いますので、こういう制度やルール、あるいは依頼する事業者の条件とか、幾つかそういったことを付け加えていくことで、もっと強固なセキュリティ確保につながるかと思っています。
 もう一つは、学校関係者、校内だけを見ても、実際にこの校務支援システムを使っていただくかという問題はあるんですけど、様々な関係者がいらっしゃると思います。教諭だけじゃなくて、例えばスクールカウンセラーの方とか、例えばスクールソーシャルワーカーみたいな方とか、支援員の方とか、この後のダッシュボードみたいなことと考え合わせると、意外とその辺りの細かくアクセス権というか、利用権みたいなことを考えていかなければいけないときに、柔軟なシステムになっているかどうかというのは一つ重要かと思っております。
 最後、先ほどからシステムの例示についていろいろな御意見はありますが、これは実際にやってみなければ分からないことで、新しい方針を示したということでは、僕はいいのかと思います。現実の世界で、良いほうを皆さんは選ぶに決まっていますから、そういうふうに一つ新しい方向を示したんだと私は認識しております。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、この議題はここまでといたします。
 先ほど幾つか御指摘いただいた点がございますけれども、私どもは事務局と相談しながらこういう図を作ってございます。最終報告書は文書で細かくという考え方もあるんですけど、この手の内容はなかなか普通の人が読んでも知識がなくて分からないことが多い。しかし管理職とか教育委員会の人がある程度御理解いただかないと、前に進まない部分があるということで、できるだけこのスライドベースで、そして図解でお示ししたいと思って進んでおります。
 その結果、ちょっと言葉足らずになったり、やや説明不足で、あと誤解を生じさせるようなことになるところがありまして、それについては、皆さんの御意見をいただきましたので、これから修正してまいりたいと思います。
 ただ、モデルを示すという話と、実際の製品がそれを超えるものになって、そしてそれを採択する教育委員会があるということは、それは別に矛盾することではないと思いますし、ただ井上委員がおっしゃったように、文部科学省はもうここまでしかやるなと言っているという、そういう誤解に取られるようなメッセージになるようなことは避けたいと考えてございます。
 既存の校務支援システムの中でよく使われている機能等、あるいは不可欠な機能等、これからは汎用ツールで、むしろそちらを使っていろいろやることのほうが授業と校務が同じ仕組みで行われることによって、先生の経験値が上がって、子供たちの授業にうまく、というその辺りも考えたときに、これらの汎用のクラウドツールの活用で、先生たちが積極的にいろんなことを便利にしていくという、そういう校務改善活動みたいなのを推奨していきましょうという、こういう働き方改革と授業改善みたいなことをつなぐ考え方の部分もありまして、このことを議論では出ていますが、確かに図の中で十分に説明し切れていないことがございますので、この辺りを付け足して、できるだけ誤解のないような形にしてまいりたいと思います。御指摘いろいろありがとうございました。
 それでは、議題3のダッシュボード機能についての話に参ります。資料4でしょうか、事務局から御説明よろしくお願いします。
【武藤リーダー】  引き続き御説明いたします。資料4、「ダッシュボード機能について(概要)」というものでございます。このダッシュボード機能、先ほどの資料3の初めのところにもオレンジのところで載せていて、やや情報量も少なかったので、もう少し充実した資料をということで、前回の御指摘も踏まえて作成したものでございます。
 まず、ダッシュボードとはということで、これはクラウド上あるいはサーバ上に存在する様々なデータ、これらを自動的に収集、分析、加工して簡潔にまとめて、集計値とか表とかグラフ、こういった形で視覚的に分かりやすく一覧化した画面、あるいはその画面を作る機能というか、こういったものだと思います。
 民間企業では例えば製造プロセスの進捗ですとか、不具合発生率とか業績等々、こういったものは、民間は工場とか支店とかいろいろありますから、こういったものをしっかり可視化をして、迅速かつ効率的な経営判断に資するような、そんなダッシュボードが広く活用されていると認識しております。
 一方、学校教育分野におきましては、一部の校務支援システムで、個人単位、一人一人の児童生徒のデータを一画面に統合して可視化する、個人単位のダッシュボードですとか、あるいはそれらの個人単位のダッシュボードに合わせて学級ごとの傾向をつかむ学級ダッシュボード、こんなものが実装されていると認識しております。
 しかし、いずれも基本的には校務系データを対象とするものであると思っていて、例えば、各種デジタル教材等から生成される学習系データと広く連携をして、それを可視化するというところまでは至っていないのかと思っております。
 それから本専門家会議の第7回で御発表いただいた東京都渋谷区ですけれども、ここは校務系と学習系のネットワークは分離したままですが、そのネットワークの間に中間サーバを設置いたしまして、BIツールを活用して、児童生徒の出欠の状況ですとか、保健室利用の状況、こういった校務系の情報と、あるいは学校生活アンケートだったり、端末の検索履歴、こういったような、どちらかといえば学習系のほうに蓄積される情報を統合したり可視化して、多面的に子供たちの状況を把握すると。そして一定の条件に合致する場合はアラートを発する機能を導入したと、こんな発表もございました。そういう事例もございます。
 その一方で、例えば学校の様々なデータを校務系も学習系も統合して、学校経営判断に活用する学校ダッシュボードといったようなもの、これはまだないかと。また教育委員会、これも設置校が多数に上る場合がありますが、設置校全体のデータを見渡して、あるいは比較をして、学校経営指導に生かすとか、あるいは場合によっては適切な資源配分に活用するような、そういう教育委員会ダッシュボードのようなものは現状ないのかと思っております。
 次のページに参りまして、今、政策的な全体の流れとの関係では「こどもデータ連携」という政策の大きなテーマがございます。今年の6月に閣議決定をされました「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中で、支援が必要な子供を早期に発見して支援するという観点で、教育と福祉と医療のデータを連携する仕組みの実装や充実が求められております。こうした中、今回、本検討会議でやっている校務DXの一環として、ダッシュボード機能を標準実装することができれば、将来的に分野横断したデータを一元的に俯瞰できるような、そういった条件を整えていくことが期待されるのではないかと。
 また、こういう教育・福祉・医療と書きましたが、その中でも特に教育、学校は子供たちが1日の大半過ごす場所なので、非常に多くのリッチなデータが蓄積されていくだろうと思います。それですけれども、そのデータが現状は校務系と学習系、それから場合によっては個々の端末とかサーバとか、こういったところに散在しているという状況にあります。
 この会議の中間まとめで御提言をいただいた次世代の校務DXにおきまして、校務・学習のネットワーク統合を基本とすることによって、少なくとも校務・学習の連携には中間サーバが設置不要になるということで、この非常に重要なダッシュボードが低コストで実装可能になることが期待できるのではないかということでございます。
 細かい字で書いてありますが、この場合でも、当面、医療・福祉関係は、閉域網(マイナンバー利用事務系ネットワーク)で運用が想定されておりますので、ここと連結する場合は中間サーバが必要になることが想定されますけれども、その場合でも、このサーバは、マイナンバー系のネットワークと学校ネットワークを連携させれば足りるので、トータルコストの低減は期待できるのではないか、こんなふうに考えております。
 最後がダッシュボードの構築方法でございます。先ほど委員の先生からもありましたが、これは校務支援システムの1機能としてダッシュボード機能を実施するということは当然あり得ると思っていまして、一番上に書いておりますが、そのこと。それからまた、学習系システムの入り口としての役割が期待されている学習eポータルの機能として実装する場合もあるでしょうと。さらには、これは渋谷区みたいなケースだと思いますけども、これらとは独立したシステムとして、BIツールを用いてダッシュボードとして提供する場合も想定されるだろうと思います。
 非常に重要なことは、そうした機能が校務DXの一環として近い未来、全国津々浦々で実装されることでありまして、構築の場所とか形態、これは様々な形があっていいのではないかと、こんなふうに考えております。
 いずれの形態を取るにしても、この機能を実装する上では、API連携等によって、データを蓄積しているシステムと、それからダッシュボード機能を備えたシステムの間で、データをスムーズに連携できるようにすることが重要ではないか、こんなふうに考えております。
続いて3-1の3ページから4ページにわたって、ダッシュボード機能の充実・実装により期待される効果というのを載せております。これは本会議と、それから教育データの利活用に関する有識者会議の委員に大変御面倒をおかけしてアンケートを取らせていただきました。これは参考資料1でまとまっておりますけれども、これも参考にさせていただきながら、当面、試みとして効果をまとめてみたものでございます。
 資料が大部にわたるので、少しかいつまんでと思いますけれども、これは表になっていますが、主に業務内容という2番目のところと、それから一番右側のダッシュボードの業務改善という、ここを見ていただければと思います。
 まず1番目が、学校の問題・課題の早期発見というラベルを貼ってありまして、一番右側を見ていただくと、学校単位で子供たちの心的傾向、それから問題行動の件数、こういったものの相関関係をリアルタイムで把握をして、客観的な情報を基に、例えば「荒れ」に関する傾向というのが、荒れてしまった後ではなくて、兆候の段階から例えば把握をして、早期に対応を講じるということもあるでしょうし、それを予算要求等に活用するということもあるのではないかというのが1つ目でございます。
 そして2つ目、学校経営の高度化と取りあえずラベリングしておりますが、一番右側を見ていただくと、域内の学校の状況を客観的なデータで随時把握。今の1個上のものとも関わりますけど、随時把握した上で学校訪問を実施すると。的確に課題を把握して指導・助言につなげる、こういったことで。
 今までだったら、どうしても紙ベースで、訪問の前に読んで、なかなか実際行ってみて、校長室でいろいろ聞くと、限られた時間で限られたことを聞くと、こういったことが多分デフォルトだったと思うんですが、あらかじめダッシュボードで客観データをきちっと短時間で頭に入れた上で訪問をしていく。こんなことも考えられるのかと思いますし、域内全体の状況を、これは2つ目の黒丸ですけども、俯瞰をした上で、例えば最適な人事配置だったり資源配分だったり、こういうものにつなげていく、こんなことが考えられるんじゃないかということであります。
 3つ目の各種調査への回答とあります。右側を見ていただくとダッシュボードから閲覧可能なデータを回答として転記をするというのは当面は考えられるでしょうし、将来的に、EduSurvey等の国の調査システムへの回答をこの機能と連携させることによって、一部簡略化することなども想定できるのではないかと。
 その次が学校・学級のインフルエンザ等と感染症なんかの閉鎖の話ですけども、右側を見ていただくと、保健担当が入力した情報がダッシュボードに即時反映される。あるいは、それぞれのクラスルームで出欠情報が今、非常に簡単に集計できるので、そういうものがダッシュボードに即時で反映をされる。そして管理職も教育委員も、報告を待つことなく学校別の罹患状況を、あるいは学年別だったり学級別だったり、こういったものをタイムリーに把握をして、学級閉鎖だったり学校閉鎖というのを非常に早いタイミングで判断していくことが可能であるのではないかということであります。
 それから情報共有と書きました。これは例えば右側ですけど出欠とか行事予定とか、教職員の出張なんかのスケジュールとか、こういったものをリアルタイムでダッシュボードに連携させるということもあるのかと思っていて。今までであれば、職員室の黒板に書いてあったようなことが、ダッシュボード上の、黒板機能というか、ホワイトボード機能みたいな、こんなものもあるのかと。これは一部、今実装されている校務支援システムもあるかと思っています。こうすれば、端末でも時間と場所を選ばずに確認が可能になるということであるということで思っております。
 それから、次のページに参りまして、1つ目、各種帳票の作成と書いてありますが、例えば学校日誌とか保健日誌に記載していた情報は、もうダッシュボードで示せば、いちいち帳票をもう一つ紙で作成する必要がないんじゃないかと思うんですね。あるいは児童生徒の問題・課題の早期発見と。これは1つ目のやつともかぶりますけど、出欠とか心的な傾向、あるいは学習アプリの進捗等々、こういったものの客観的なデータを基にして、システムが教員へのアラートを発出する。あるいは深刻化する前に組織的に解決につなげていく。
 そして進級等の後も過去のデータが分かりやすい形で参照可能であれば、問題や課題に組織的に、かつ今までよりもスピーディーに把握したり対応したりすることが可能ではないかと。
 最後のところ、保護者面談と書いてありますが、ダッシュボードから必要な情報をピックアップして、校務用の端末で閲覧しながら例えば面談をするとか、あるいは客観的なデータや正確な記録が整理して保存されていれば、常にこれらに基づいて面談したり、あるいは面談でなくても保護者から電話の対応というのが放課後にあると思うので、こういったものもエビデンスベースというか、数字ベースでやっていくことも可能なのではないか。これらがひいては通知表等の作成の省略化とか、あるいは簡略化にもつながり得るのではないか、こんな御意見もありました。
 そしてダッシュボードに関する留意点と要望も、いろいろ先生方から多様な、貴重な御意見をいただきました。左上、小さい字ですけれども、少し御紹介させていただきますと、教育委員会の職員が、個別の児童生徒の情報を参照する必要はないのではないか。情報のアクセス権は職位や職務、用途に応じて最小限にすべきではないか。あるいは次ですけれども、個人情報の保護に関する何らかのガイドラインを定める必要があるのではないか。データ分析が必要な、可能な人材が不足しているので、リスキリングが必要ではないか。また、データを単に蓄積、参照し可視化するだけではなくて、AI等を活用して、人間では気づけない兆候等を読み取ってアラートを発出する機能に期待したい。これは一部上の整理に出てきますが、こんなところに期待をしたい。また、データのみを見ると、ステレオタイプを強化してしまうリスクもあるので、データや見方、あるいは限界についてもしっかり伝えていく必要がある。病院のカルテと同様に、数字だけではなくて定性的な所見やコメントも活用可能にすることが望ましいのではないか。
 右上に参りまして、データの利活用については、専門の部署や専任の担当者が必要ではないか。立場により知りたいことが変わるので、ダッシュボードに表示される情報を利用者がカスタマイズできることが望ましいのではないか。ニーズの高い用途に応じて複数ダッシュボードが用意されていると利便性が高まるのではないか。教育委員会職員や学校管理職、教職員のみならず、児童生徒が自らの学びを高度化していくことをサポートするようなダッシュボードも考えられるのではないか。この辺りは学習eポータルなんかとの関係も出てくるのかと思います。そして最後ですが、教員に関するデータも必要ではないか。児童生徒の変化と教員の働きかけの関係を分析すれば、そこから分かることもあるのではないか。このような御意見もあったところです。
 なかなか私たちもアンケート実施に手間取りまして、必ずしも全て反映できているわけではないかもしれませんが、また御意見を踏まえて充実させていきたいと思います。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。それでは、今日の残り時間約20分はこの議論に費やしたいと思います。これはダッシュボード、幾つかのレイヤのあるダッシュボードになると思いますけども、こういうものがあることで、従来の校務支援システムの枠を超えた形で校務DXを進めることができるだろうという前提で今議論しています。もちろん個人情報の問題とか、どういう情報とどういう情報を組み合わせていけばいいのか、これはやってみないと分からない部分も含めて、今から、まだこれから課題はあるかと思いますが、こういうことを私どもとしては、この校務DX、これからの時代のことに向けて提案したいと、提言していきたいと思っておりますので、この文章もうまくチューニングして、最終報告書に入れてまいりたいと思いますので、ぜひ御意見をいただければと思います。特に学校の関係者とか教育委員会の方々、ぜひ御意見をいただければと思います。
 では、まず石井委員、あと水谷委員、福原委員、まず3人行きましょう。
【石井委員】  石井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。ダッシュボード機能についての四角5、3ページ目のところについて発言させていただきます。前回もこういう、今後どうなっていくのかと期待される効果が掲載されると非常にいいと思っておりましたが、このように様々なパターンで提案されたことによって、具体的にどういう活用ができるのかというイメージ化が図られたと思います。
 また、指導主事が不在の事務担当の方がこちらの整備に関わる自治体に関しては、学校でこれを活用するとどうなるのかというところが、イメージ化が図れずに予算化につながっていかないというところがあったと思いますけれども、このような具体例が示されたことで、どの自治体でもこうしていけばいいという取組の指標になっていくものができたかと思っておりますので、大変いい資料ができていると思いますが、中身についてはもう少し精査していきながら作成していければいいかと思っております。ありがとうございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。水谷委員、お願いします。
【水谷委員】  水谷でございます。よろしくお願いします。ダッシュボード機能の充実には非常に期待をしております。今回、新しい校務支援システムができるという情報に接した一部の方から、新しいのが出て、また何かやらなければいけないのかという、少しネガティブな話がありました。以前も発言しましたが、これまでの校務支援システムのイメージは、結果を蓄積して印刷することが中心で、その作業が必要なときしか使わないもので、あまり使わないから使い方もスキルアップしなく、便利は便利ですが、というところで止まっていて、それが新しくなることに不安を感じているようでした。
 しかし、このようにダッシュボードができて、途中の状況を可視化して活用するという今までと違うフェーズになるということがきちんと打ち出されれば、新しいシステムになっていくということについても、使ってみると、いいことがあることが理解され、さらに活用が進んでいくと考えます。結局よく使っていなかったので、セキュリティのことも今一歩理解できていなかった先生たちが多く、使っていけば使っていくほど、なるほどこういうことのためには、これに気をつけなければいけないといったことや、こういうことがあったほうがいいというところにつながっていくと思います。ですので、このダッシュボード機能というのは非常に重要だと思います。
 特に現場で、担任レベルで使う、子供の状況の早期把握については、これまでならベテラン教師が勘と経験で自分のメモでなどを使ってみんなやっていたことと思います。ですが、そういったダッシュボード機能を世代交代した若い先生たちがぱっと見て、こういう観点で見ればいいのだと気づくなど、こういった教師の力量向上にも使える部分がありますので、その部分は非常に期待できる部分ではないかということを思っています。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。では福原委員、お願いいたします。
【福原委員】  ありがとうございます。今、水谷先生がおっしゃったように、子供たちの状況を把握するということもあるんですが、管理職とかからすると、先生方の働き方、パソコンの利用とかそういった面のところでも分析できるようなダッシュボードがあると、働き方改革で先生方がどういうふうにDX化の波に乗っているかというようなところも分析していただけるようなダッシュボードもあるといいのかと思いました。
 我々はまだ使い慣れていないので、いろいろなことができるということで、使っていくと、こんないいことがあるんだよということを、もっといろんなところで盛り込んでいけるといいかと思いました。ぜひ使ってみたいと思います。ありがとうございます。
【堀田座長】  ありがとうございます。この後ですが、清野委員、執行委員、妹尾委員、藤村委員の順番でお願いしたいと思います。清野委員、お願いします。
【清野委員】  よろしくお願いします。どうもありがとうございました。資料を見させていただいた率直な感想を述べさせていただきます。
 今、学校は、教職員、私ども管理職を含めて、エビデンスに基づく学校改善ということに意識を持っておりますので、こういった形で様々な情報を統合的に見られるというのは非常にありがたい。あわせて、こういった様々な情報をどう分析していくのか、集計していくのかということに時間を取られているという実態もございますので、そういった意味でもこのダッシュボードは本当にありがたいと思います。
 その上で、エビデンスだけでは見切れない子供の状況というのもあると思います。教員の経験知、暗黙知、これが子供の指導に生かされる部分がかなりあると思いますので、私どもとしては、こういった暗黙知と、数値等として現れるエビデンスをうまく組み合わせて、子供たちへの指導を充実させていけるのではないか、そういうメッセージを学校現場に伝えることができるのではないかと思いました。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございます。執行委員、お願いいたします。
【執行委員】  私は6年前に渋谷区の校長をしていたときに、まさにこのダッシュボード、学習系と校務系を連携させるときに、ぜひこういう子供のアンケートとか、それから出席状況とか様々なデータと学習履歴が連携することで、いろんな分析を多面的にできるんじゃないかということで期待していたんですけども、時を経てこういう形で新たな方向性が示されたということは大変ありがたいと思っております。
 その一方で、先ほど清野委員からのお話もありましたとおり、私たち教員の中でも、教員で子供たち携わる中で、どうしてもデータでは把握し切れない、逆に言うとデータで間違った方向で子供たちの発達状況を分析し過ぎるということのマイナス面というんですかね、その力量のところが、データだけで補おうとするところは注意しなければいけないし、あくまで私たちは発展途上にある子供たちを育成しているわけですから、何かこういうデータが出ているからこうですよねというふうな判断の材料にはならないように気をつけなければいけないと、自戒の意味も込めて思ったところです。
 それから、先ほど来、ちょっと似ているんですけど、可視化されることでプラスに活用していくことが大事で、可視化され過ぎて、逆に子供の可能性とか、未知の開かれる世界が、こうだよねということで、逆にラベリングをすることにつながらないようにはしなければならないし、子供の情報というのは、物すごくそういう意味では機密性が高く、情報の取扱いというのは単なる大人の個人情報の取扱いとはまた違った、保護されなければいけない部分というのが非常に高いのかと伺って思っているところです。
 いろいろと連携することで、非常に働き方改革や、教員の得られるエビデンスのデータとしては有効ではあるんですけれども、それがどんどん進めば進むほど、何か逆に子供の可能性やら成長やらを、しっかりと私たちが責任を持って、このデータというものを取り扱っていかなければならない、その辺も必要だろうと思っています。
 それからもう一つは、文部科学省のほうで、これは1月にいろんな方向性が出て、2月にまとめということでお話があったんですけれども、別の質問でごめんなさい。それに関しての何か全国的にこれまでの議論したものについて、もちろんプレスとか随時取り扱ってはいただいているんですけども、全体への何か説明とか話すところというのは計画されているのかどうか。ただ紙ベースでこういうのを方針として出しましたという周知の仕方だけでやっていくのかどうか。その辺りも今後の方向性がもし分かっていたら教えていただきたいと思っております。以上です。
【堀田座長】  では事務局に聞きましょう。どうぞ。
【武藤リーダー】  執行委員、ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思います。このことについては、中間まとめをおまとめいただいたところにも、これは非常に大きな変革につながっていくものでもあるので、学校現場だったり、教育行政の関係者、それから民間の事業者も含めて、これは丁寧にコミュニケーションを取りながら進めていくべきだということをその中にも書いていただきました。
 これは私どもも非常に重要だと思っているので、まだ具体的に、何月の何日にどこの会議ということを決めているわけではありませんが、なるべく積極的に様々な機会に御説明する機会を設けたり、あとは今オンラインでいろんなこともできるので、そういう機会も活用しながらやっていきたい。そこで、またいろんなお声もあると思うんです。それを私どものほうでいただいて、実際の今後の例えば実証事業なんかもやる予定ですし、校務DXの何らかのガイドラインを作るとか、今回のこの検討会議の御検討の結論を踏まえて、もう少し実務的に整理する部分もございますので、ぜひそこは広くお声をいただきながらやっていきたいと思っております。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございます。同時に中央教育審議会等も動いていますので、そういうところにもこういう御報告していただくとか、あるいはもう幾つかの自治体や団体はこの事務局メンバーを呼んでこの話をしてくれということでプレゼンしに行っていただいたりしています。だから、情報を集めようと思っているところには届きつつあるかと思っておりますので、できるだけ広く、これは働き方にも関わることですし、教育データの利活用にも関わる非常に重要なことですので、そういう形で丁寧に広げていきたいと思います。
 では妹尾委員、お願いいたします。
【妹尾委員】  ありがとうございます。3点ぐらい申し上げたいと思います。
 1点目はこちらの児童生徒の情報を一覧できるダッシュボードについては、恐らくいろんな使い方があるんでしょうけど、一つの狙いは子供たち一人一人を多面的に丁寧に見ていくという趣旨が恐らくあるんだろうと思います。もちろんデータで現れるものと現れにくいものとあるんだと思いますけども、先生方の経験と勘だけではなくて、そういったものを補足したりとか見直しをしていったりということだと思います。
 そういう意味ではアンケートにも書きましたが、定性的なデータというか、例えばですけれども、こういう部分が課題だと思うとか、こういうところに特性があるだとか、あるいは成育歴だとか家庭環境でこういうところがちょっと気になるだとか、そういったものも入れるのかどうかといったことは要検討かと思います。
 なぜこの話をするかというと、特に小学校では学級担任が言わばワンオペでいろんなことをやっていることが多い。もちろんチーム学校でいろいろ対応はしていますけれども、例えばその学級担任以外の方とも情報共有をしっかりしていく、特にスクールカウンセラーだとかソーシャルワーカーだとかとも連携していく、もちろん管理職等とも連携していく中で、そういったこういうものがあると非常に参考になったり支援につながっていきやすい。あるいは本人や家族に何度も同じような生育歴とかを聞くというのは非常にしんどい話なので、そういった無駄も省けるということがあるので、こういった個別の支援だとか個別支援計画だとかにも将来的にはつながっていく話かもしれません。今は特別支援学校とかにしかないですけども。
 そういったことを念頭に入れるんだったら、もう少し欲張った児童生徒ダッシュボードになっていくということも将来的には考えるのかとは思っています。もちろんこれは功罪あると思いますが、1点目としては、そういうところを申し上げたいと思います。
 2点目は、これもアンケートにも書きましたけれども、そういうふうなリッチな児童生徒の情報が一覧できるんであればもう指導要録なんて要らないよねという話になるんじゃないかと思うので、そうそういうスクラップ・アンド・ビルドをぜひ検討していただきたいと思います。これは、学校関係者はよく御存じのことですが、情報公開請求されたときにどうするのということも実務的に大きな問題で、今、要録は、本人とか家庭から、保護者から情報公開してくださいと言われたら出さないといけないので、なので正直無難なことしか書けませんということで、小中の連携だとか、あるいは担任が変わったときの引継ぎ資料としてはあまり使えていないといいますか、ほとんど口頭でいろいろ伝えたほうがより機微な話ができるということになっていますので。
 こういったリッチで、いいダッシュボードになればなるほど、本人の確認だとか情報公開とのすみ分けとか、どういうふうな扱いになるのかとかということ、その辺りもうまく整理していかないと、結局使えないということになってはいけないということが2点目です。
 3点目、企業経営と学校経営は全然違うのでということは承知の上で申し上げますが、僕みたいな企業人からすると、このダッシュボードとして多分大きく欠けているのが2つあります。要するに児童生徒の情報に偏っているということです。一つは教職員とか職場の状況、これの情報がないということと、もう一つは財務のデータがないということです。
 1つ目の教職員や職場の状況としては、例えばストレスチェックの集団分析の結果だとか、愛媛県がやっているようなワークエンゲージメントの学校集団の状況だとか、あるいは離職の状況だとか、その理由だとか、そういったことも人事サイドとしては非常に企業としては気にしている、先進的なところではケアしていると思うんですけど、非常に教育委員会はそういった情報に疎いというか、正直、個別の教員に返しておしまいになっています。教職員のことを大事にしないと、子供たちを大事にするという指導だとか支援もしていけないということを考えると、教職員の情報だとか、学校の職場の健全度とか健康度合いというのもダッシュボードに入れていかないといけないんじゃないかというのが僕の意見です。
 もう一つは財務というのはそんなに難しいことはしなくていいかもしれませんが、学校の限られたリソースである予算をどう効率的に使っていくのかとか、例えばここの学校は消耗品とかがいっぱい、図書費がいっぱいあって、こっちはそうじゃないとか、学校間で全然違いますので、それは特徴があっていいんですけれども、もうちょっとその辺を分析できるとか、保護者負担も全然今違いますので、そういった学校の財務データだとかも本当は見たいというのが、僕が教育委員会だったら思うかと思います。以上です。
【堀田座長】  ありがとうございました。大変貴重な御意見だったと思います。事務局から一言あるようです。
【武藤リーダー】  妹尾委員、大変ありがとうございます。私もまさに同じようなことを思っていて。実は文部科学省の立場でも、学校訪問をすると大体教育委員会に行って、そこから車に乗せていただいて学校に行くんです。この間にいろいろ伺って、その後つなげようと思うんですが、なかなかその情報が整理されていなくて出てこないというのがとてもあると思います。
 さっきの例えば「荒れ」の度合いなんていうものと、そして実際の例えば不登校だったりいじめだったり、そういういろんな行動の状況と先生たちのストレスの状況とか、そんないろんなものがあれば、資源配分をもう少し賢くできるのかという気もしています。
 学校財務も確かにあれですよね。同じ教育委員会の中にあってもいろいろだと私も思っていて、教育委員会ダッシュボードというのが必要かと思ったのはそんなところもございました。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございます。では、最後に藤村委員、お願いいたします。
【藤村委員】  私からは2点意見と、それからお願い1点ということで3点お話しさせていただきます。
 今、教育委員会ダッシュボードのお話を武藤リーダーもしていただきましたけども、私もそういうのはとても大事だと思っています。申し上げたいのは、実は強調していただきたいこととして、渋谷区でやっていた、実はスマートスクール実証事業で、日本で初めてダッシュボードを実装するということをやっていただいたときに、ポイントとして校務系情報だけでは手厚い子供のサポートができないんだ、1人1台端末があれば学習系のデータも校務系のデータも掛け合わせて、一人一人の子供によりよい教育ができるという発想だったと思うので、もうちょっとデータ連携という校務系の中のダッシュボードではなく、学習系・校務系、そしてさらには先ほど話があった、福祉とか医療とかのデータも活用した手厚い教育のためのダッシュボードというのを強調していただくといいかというのが1点目です。
 2点目です。これはお願いです。実は箕面市など、先ほど説明の中にもすばらしかったのは、子供データの連携というのを主張していただいた点だと私は考えています。これが現状ではうまくいっていない。それをさらに充実させようということは大賛成ですが、そのとき危惧されているのが、来年4月から個人情報保護条例ではなく個人情報保護法に一本化されることに伴って、福祉系のデータとか医療系のデータが使えなくなるかもしれないという危惧を箕面市等、福祉情報等も活用して子供に手厚いサポートしているところから心配が出ています。
 私も就学援助システムのガバメントクラウドの座長をしていたり、髙橋邦夫委員は、学齢簿の座長をされたりしていますが、そういった中の利用目的の規定に、ぜひ文部科学省が働きかけていただいて、福祉系データとか医療系データを教育目的で利用することを目的の中に含んでいただくように、デジタル庁に働きかけていただくと今後の利用がうまくいくかと思ったので、これは要望でございます。
 次、2点目のお話です。私も妹尾委員が最後にお話しいただいた指導要録のお話もそうですけど、要するに教育DXで大きく変わるという、劇的に変わるものが欲しいとかねがね思っていました。それは何かというと、通知表とか指導要録とかのうち、通知表が特にそうですが、学期に1回だけ子供の情報が保護者に届くというのはもうこの時代ではナンセンスじゃないかと思っていまして。もっと手厚く、時々で子供の様子が見たいという保護者のニーズに応えるのも、このダッシュボードを使えば可能だろう、リアルタイム、オンデマンドで、しかもひょっとしたらマルチメディアでできるかもしれないという、日本ならではのアドバンテージが世界に先駆けてできるかもしれないということを感じております。
 韓国では、2007年には既にこのリアルタイムにオンデマンドで子供たちの状況を見るということが、NEISシステムの中で実現していますので、それをさらに発展させたものを考えていただければと思いました。以上でございます。
【堀田座長】  ありがとうございました。ここまでとしたいと思います。皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。最後のこのダッシュボード機能についての御提案を事務局からいただいたわけですけど、これにつきましては、皆様にアンケートで忌憚のない御意見をいただきまして、それによってこういうようなこと、特にダッシュボード機能による業務改善のイメージが目に浮かぶような形でできたこと、このことに感謝申し上げたいと思います。
 時代からいくと、何か一定の期間が終わって、最後にまとまったデータを完成形で見せるという時代ではなく、途中途中の状況が常に把握でき、必要に応じて不足していることを自分たちで判断して足していったり、あるいはアラートを自動的に出していって未然に防ぐというような形に対応するとかというのが世の中の常識になっております。
 そういう観点で言えば、先ほどから出ていますように、今まではできなかった。途中の状況を共有する、可視化するという時代でございますので、そういうことができるような労働基盤というか学習基盤というか、そういうものができた今、例えば通知表なども今までのやり方と同じようにやり続けるべきなのかということは、一度ぜひ学校でも、管理職も、あと教育委員会も検討していただく、そういうタイミングにいよいよ来ているのかと思いますし、それを考えるときに、このダッシュボードで常にある程度の把握ができるということや、情報のサマライズがされるということが非常によい形で業務改善等につながっていくのかと思います。
 執行委員もおっしゃった、レッテル貼りと言ったらいいでしょうか、子供たちをこのシステムのデータで、この子はこういうデータが出ているからこういう子じゃないかみたいなレッテル貼りをするのは、それはよくない。これも、今までは情報が不足しているので、例えば期末テストで65点だったという情報しかなくて、この子は分かっているように見えたけどこのぐらいしかできていないんだね、みたいなレッテル貼りをしないように、どこが分かってなくて、どういうふうに助言していけばいいのかと今までは考えていたと思うので、そのデータがリッチになっただけであって、教師の姿勢が、自分のある意味、勘も信じながら、いつも見ている子供たちの様子を常に確認しながら、こういうデータも利活用していただきながら判断をするということが大事かと思います。
 システムに助けてもらいながらお医者さんが何か意思決定する部分はよくありますけど、最後はお医者さんが判断するわけで、こういうことを教育においても大事にしていくべきかと思います。
 今日たくさん御意見いただきましたけども、ネットの関係等で御意見いただけなかった委員には、大変恐縮ですけども、事務局にメール等でまた付け足ししていただきまして、いよいよこの会議も追い込みに入っておりますので、今たくさん御意見を出していただくことが重要かと思っております。できるだけよい最終報告書になるように頑張ってまいりたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 本日はここまでとなりますが、次回の日程につきましては、事務局からまた改めて御連絡を差し上げたいと思います。よろしいですかね。では、ここまでといたします。本日の会議はこれで閉会いたします。御協力ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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