令和4年1月31日(月曜日)10時00分~12時00分
Web開催 (Zoom)
新井委員, 池辺委員, 金田委員, 高田委員,小正委員, 田村委員, 中田委員, 原委員, 笛木委員, 松谷委員, 村山委員,八並委員,渡辺委員
鈴木生徒指導室長
冒頭、事務局より「資料1」に基づいて、「こども家庭庁の創設」について説明。その後、ヒアリング協力者より、「資料2」に基づいて、「いじめ問題に関する実態」についての発表があった後、発表に関しての質疑応答・フリートーキングが行われた。
【座長】 今、ヒアリング協力者よりいじめを防ぎ、いじめをなくしていくためにどうしたらいいのか、いじめに対する正しい認識を持つということが極めて重要であるという御指摘があり、その上で、重大事態に対する調査の在り方、実際に、当事者の保護者として、あるいはアドバイスしていく立場で、子供の声、保護者の声を聞きながら、さらには教育委員会からのアンケートを基に、体制や予算の問題、あるいは委員の専門性、調査委員会の設置の仕方など、様々な課題について問題提起をしていただきました。ヒアリング協力者の御説明に対して、御質問等がございましたら、御発言いただきますよう、よろしくお願いいたします。
【委員】 いじめ防止対策推進法が施行されたということを前提とした質問ですが、ヒアリング協力者のお子さんが小学校へ入学した、中学校に入学した、あるいは学年が進行したときに、学校側から、学校のいじめ防止基本方針に関して、先生方は保護者に、学校のいじめ防止基本方針というのはこういうものです、そして、私たちはこのように対応しますという説明が、保護者や子供たちにありましたか。
【ヒアリング協力者】 1度もありません。
【委員】 そもそも論ですが、国のいじめの防止等のための基本的な方針では、入学時、あるいは学年の進行時に、保護者や児童生徒に、学校いじめ防止基本方針を説明する、と記されていますが、未だ徹底されていない。つまり、この法律自体がきちんと保護者の方にも、あるいは子供たちにも伝わっていない。そのため、最初からある種のずれが起きてしまっています。そういう意味では、重大事態に関する話題ですが、そもそもこの部分をきちんと学校関係者、あるいは保護者の方や子供たちと共有しておかなければいけないと思います。
【座長】今、法、あるいは学校の基本方針等に関して、教職員もなかなか理解がされていない。それから、子供や保護者がそのことを共有できていないのではないかという御指摘がありました。法や学校の基本方針に対して正しい認識を持っていないことが、重大事態につながる場合もあるのではないかという点について、何か御意見があればお願いしたいと思います。
【ヒアリング協力者】 私も日々、児童、保護者だけではなく、学校や教育委員会、全国のあちこちからの相談を頂き、問題に介入させていただきますが、その都度、現場に出向いて、話合いに同席させていただく中で、保護者と学校、教育委員会に、かなりねじれこじれが起きているところが多い。大体そういう現場というのは、学校側、教育委員会側だけではなく、保護者側もいじめ自体を正しく理解していないので、そこにいる子供に対していじめ防止対策推進法では、今、何をしなければいけないというところを皆さんが分かっていないので、論点が全くずれてしまっている。
保護者は保護者で、親としての正義を貫こうとする。学校、教育委員会は、分かっていないのか、それとも、先ほど言ったように根本的な財源や人員、働き方改革、業務の多忙、それが根底にあって、業務を増やしたくないとか、調査委員会を設置したくてもなかなか難しい。そういうものがあってなのか、そちらの方向の話に進まない。これだと絶対かみ合うわけがないので、やはり学校が、学校いじめ防止基本方針を毎年度初めに説明するということは大事ですけれども、保護者側も、やはり今、いじめ問題がこれだけ社会問題になっているわけですから、いじめはいつどこでも起こり得るとも言われていますので、親という責任のある立場で、自身で学ぶことだったり、調べることも可能ですから、そういうこともしていただいたり、あと、学校がいじめ防止基本方針を説明しないのであれば、保護者の方々が学校側にきちんと説明を求めるということもできると思います。やはりそれが理解されていないと求めることもしない。結局、いじめが発生した後に、もうどうしよう、どうしようと、みんながどうしようみたいな状態になってしまうので。そして、そこでねじれこじれが起きて、実際に被害に遭った子供が置き去りになってしまっている。こういう現状は、各方面でたくさんあります。
【委員】 今のお話を伺っていて、もちろんいじめ防止の推進法があり、そして、学校や教育委員会がそれに基づいた取組をしようとしていても、やはり公的なところだけの限界というのもあるのかなと思いましたし、今の活動のお話をお伺いして、民間が一緒に考えていただけるということもとても重要な事なのかなとも思いました。ヒアリング協力者の御活動は大変貴重なものだと思うのですが、そういったものが全国から呼ばれて、御質問もありというお話でしたけれども、各地に増えていくということも一方であってもいいのかなと思います。貴法人と同じようなことを他の都道府県でもなされているのか、それらが、また共同して何かやっていらっしゃるのかとか、そういったことについて、もし分かりましたら教えていただきたい。そして、例えば職能団体が協働できる可能性といったものはあるのかどうかについて教えていただければと思います。
【ヒアリング協力者】 私のほうも、確かに相談件数はどんどんどんどん増加していきますので、対応し切れない状態になる場合もあります。そこで、時々ですが、市民団体やNPOの代表者会議みたいなものをウェブでやっていますが、ほとんどの団体さんの活動状況というのが、相談を受けても、やはり被害者側に寄り添うということを基本としていますので、被害側の相談を受けて、学校、教育委員会に抗議をする。批判をするというか、抗議をするという活動をされています。このため、学校、教育委員会側も、そのような姿勢で行けば閉ざしてしまいますので、せっかくサポートに入ったにも関わらず、問題の本質も見えず、きちんとしたテーブルにも着いてもらえないため、解決、改善に至らないという代表者さんの声がすごく多い。 私の場合は、その点をすごく感じていたので、問題に介入するときは必ず中立の立場で入らせていただくということを念頭に置いています。そのような活動を広めたく、そういう会議の場でお話をさせていただくのですが、なかなか難しいという声が多く、広がらないのが現状です。
あと、職能団体の方々と時々意見交換をさせていただくことはありますが、やはり私のような活動をしていただくというのは、ちょっと趣旨が異なる部分がございますので、なかなかそこまでには至らない状況です。
【委員】 ありがとうございました。中立というところの受け止め方が、各団体さんによっても違うのかなとちょっと思いましたけれども、実際には、目的は同じだと思います。大きな意味で言えば、1人も子供さんのいじめを受けることがなくなって、そして、学校が楽しく、また地域も支え合えるという、そこの目的の共有からしていかなければいけない。職能団体としても、どの点で協働できるかというところを考えていきたい。
【座長】 公だけではなくて、民間の力をどう生かしていくのか。中立的な立場で関わっていただける市民団体なり、NPOをどう育てていくのか。そこへ職能団体がどう関わるのか。社会総がかりでという意味で言うと、非常に大事な視点かなと思います。
【委員】 特にすばらしいなと思ったのは、現場でこのような事案を抱えていると本当に思いますが、子供の立場や視点、子供への支援、子供自身を置き去りにしないということを、とにかくまず柱に持つということを、改めてやはりそうだよなと感じた次第です。
ヒアリング協力者に1つ伺いたいのは、学校いじめ防止基本方針なりを一保護者として情報を知っているとか、それを理解しているというのと、いざ被害者の御家族になったとき、文字どおり当事者となってしまったときに、僕の見た感じだと、そこで意識とか、何かフェーズが変わるような場面というのがあるのかなという気がします。ヒアリング協力者がそういう現場をたくさん御覧になったときに、保護者として単にそれを知っているということと、当事者になったときにこじれないために、そういうものを知識で知っているというだけではなくて、何かほかに違いみたいなものがあれば、ぜひ御教示いただければと思います。
【ヒアリング協力者】 まず、私自身が被害児童の保護者となったときは、大変お恥ずかしいんですが、そのとき私もいじめ防止法というものをほとんど知りませんでした。また、私の自治体の条例では、各学校にいじめ対応教員を置くこととされていましたが、それも私は知りませんでした。
なので、私はそういう経験を生かして、やはり保護者側も待っているだけではなくて、いじめはいつ、どこでも起こり得ると言われているわけですから、自身のお子さんが被害者になってからではなくて、日頃から、もし自分の子供がこういう状況になったときにはどこに相談すればいいのか、どういう対応をすればいいのか、そういうものは学んでいただきたいと私は思います。
私は、自分の子供を守るため、救うために、独学でいろいろな勉強をさせていただいて、それで、今、こうやっていろいろなものが身についている。それを活かしながら、今、全国の傷ついて苦しんでいる子供たちを、何とかスピード感を持って救いたいという思いで、日々勉強をさせていただきながら活動しております。私の場合は、被害児童の保護者という立場の観点と、やはりそれと切り離して、このNPO法人代表としての立場というものがあり、現場、現場で、それぞれ状況も違いますので、そこでいろいろと私なりに論点整理をさせていただきながら、解決、改善に向けて対応させていただいております。
【座長】 本当に難しいですが、保護者だけでなくて、教職員も常に当事者意識を持って、問題が起きたらどうするか、あるいは起こさないためにどうするのかということを考えていくことが大事ではあるが、なかなかそこができていないという御指摘かなと思います。
【委員】 実際にヒアリング協力者のお子さんが通っておられた学校にもスクールカウンセラーがいたと思います。スクールカウンセラーが中立性を大切に、客観的に、俯瞰的に、何が起こっているのかを物すごく把握しようと努力しているんですが、なかなかその期待に応えられなかったのだろうと思います。ヒアリング協力者のほうから、そういうスクールカウンセラーをどのように活用したらいいか、また、スクールカウンセラーに足りないところを、ぜひ御指摘いただければと思います。
【ヒアリング協力者】 私自身、やはり子供がいじめ被害に遭ったとき、そこからしばらくの間、学校にスクールカウンセラーがいるということ自体、知らなかったんですね。なので、やはりそういう情報提供というか、情報共有というのは、学校がきちんと保護者側に発信をしていただかないと、保護者は何も分からない状態です。 なので、私が先ほどお話ししたように、文科省のガイドラインにも書いてありますように、毎年度初め、入学式や保護者会、学年集会のときに、きちんと学校いじめ防止基本方針を説明して、その中で、学校としていじめが起きたときはこういう対応をします、こういうものもありますということを丁寧に説明することは、すごく重要なことだと私は思います。
【委員】 今、御指摘いただいたようなことも各スクールカウンセラーが努力して、新学期であるとか、入学式のときには、教員の先生方と一緒に自己紹介をし、あとは、ニュースレターのようなものを月に1回出して、こういう立場でいるんだと。そして、決して教員ではないスクールカウンセラーという立場で皆さんのお話を聞きたいというふうに努力しているのですが、なかなか周知に至らなかったりしているんだろうと思います。
【委員】 私も教育委員会や校長というところで関わっており、高校のほうの立場なのですが、常に私どもが目指さなければならないのが、そのテーブルに着くということであるのですが、その着け方だと思っています。今、こじれて大変で非常に難しいという、完全に反対側に座ってしまって、その応酬で、一番大事なお子さんが置き去りになっているというのが今の図式だと思います。 私が常に言い続けてやろうとしていることは、パートナーシップである。つまり、テーブルであっても、角度は分からないですけれども、180度ではなくて、違った角度から、こういう形で1人のお子さん、そして、学校の全体のお子さんに対しての支援を協議していく場に初期段階でなっていれば、重大事態にならないで済むし、なりかけたときにどうやったらそれを修復という言葉よりも、物の見方を変えるというか、はっきり言って、お子さんの未来だけを考えている。学校も御家庭も、そこのところだけは絶対に一致しているはずだが、気がつくと完全に応酬になってしまっている。
学校としては、コンプライアンス、そして、寄り添っていくが、結果として、やはり対立になりやすいという現状が、私の知っている範囲でも非常に多い。
こういったところで、学校と保護者が同じようなサイドに来て役割分担をしていくという成功例みたいなものを1つでも2つでも増やしていって、それを共有していくということが大事かと思っている。
ヒアリング協力者の豊富ないろいろな経験の中で、そういった助言というか、私ども学校現場に対して何かアドバイスがあったら、質問というより、そういったことについて御存じかどうかというところでお願いをしたいと思っております。
【ヒアリング協力者】 どうしても世間というか、世論というか、時折大きな事案が起きると、それが報道されて世に広まるのですが、そこで必ず起きるのが、学校、教育委員会の対応批判、あるいは、学校、教育委員会を問題視する声ばかりです。しかし、私が全国を走り回っているというか、歩き回っているというか、それをやっている中で、本当に悪質な学校、教育委員会というのは確かにあるとは思うのですが、それはごく一部だと思います。ほとんどの学校、教育委員会は、一生懸命何とかしようと努力はするけれども、やはりそこに先生方の多忙があったり、財源の問題があったり、そういうものが根底にあって空回りしてしまう。
ただ、その中でも、各自治体で一生懸命対策を考えて、毎年度、いろいろなことをやっており、そうやって頑張ってやっているところというか、きちんと対応ができている学校や教育委員会もたくさんありますが、そういう成功例というんですか、そういう学校や教育委員会というのは、なかなか表に出ないというか、メディアも扱ってくれないというか、扱わない。 だから、私はできるだけネガティブというか、悪質というか、駄目な学校、教育委員会という世間の広め方ではなくて、やはりきちんとやっているところとか、できている学校、教育委員会というのも、もう少し表に出て広めることは、すごくいいのではないのかなと私個人では思います。
そのうえで、良い例は、なかなか私のところに来ないというか、私のところに連日、多数の相談が来ますけれども、確かに、何でこんなになってしまったのだというのもあるんですが、私が入ってアドバイスすることで、スピード感を持って的確にきちんと対応される学校、教育委員会さんもたくさんあります。やはりそれまで1年、2年、停滞していたものが、一歩一歩確実に動いて進み始めておりますので、いくら学校、教育委員会という組織であっても、しょせん、されているのは人なので、どうしたって間違えることはあり、つまずいてしまうこともあると思います。
ただ、それにいち早く気づいて、きちんと改善して、対応することは重要で、やはりそこには知識や理解というものがすごく求められますので、そこは先生方も教員研修などを積み重ねて学んでいただきたいなと私は思います。
【座長】 ありがとうございます。1つは、こじれたときに、ちょっと違う視点を持った異質な声を入れることによって、気づきが促されるのではないかということかと思います。
それと、これは私の反省でもありますけれども、失敗を取り上げて、その原因を除いて、良いものをつくっていこうということで、国の基本方針やガイドライン等の策定等を進めてきましたけれども、一方で、良い、うまく行っていることをもっと取り上げていくことも大事なのだということを改めて感じました。
【委員】 ヒアリング協力者に御質問ですが、お子さんがいじめに遭ったときに、恐らくいろいろなところに御相談されたと思いますが、学校と教育委員会以外に御相談に行かれたところを、差し支えない範囲で教えていただけますか。
【ヒアリング協力者】 まずは、相談窓口として、ネットに載っている法務局であったり、そういうところにも相談はしました。
その他、私は県の教育委員会や文科省のほうに相談させていただいて、きちんと対応していただけていたので、そんなにあっちこっち相談して、なかなか困って難しかったというのは余り感じておりません。
ただ、県の教育委員会や文科省のほうできちんと対応していただいたのですが、肝心の自治体の教育委員会がなかなかそれに従わなかったので、問題が長引いてしまったという状況です。
【委員】 今、なぜそのような質問をしたかと言いますと、恐らくいじめ被害で困られている保護者は、ヒアリング協力者のように事前にいじめに関する法律の知識や、どこに相談すればいいかわかっておれればよいのですが、恐らく多くの場合は、学校でうまく対応してもらえなかった、教育委員会でもうまく対応してもらえなかった、そこで、袋小路に入ってしまうと思います。
では、どこに相談すればいいのか。旭川の自死事案のように、お子さんが、自ら死を選びそうな状況下の中で、誰が一体相談に乗って守ってくれるか。つまり、自死事案の場合、子供の命を守るという意味での相談窓口がないために、あのように本当に悲惨な結果になったのではと思います。そのときに、例えば、先ほどありましたように、NPOのいろいろな知見を生かすことも必要だと思いますが、それ以前に、行政的な対応をしっかりつくることも必要ではないでしょうか。一例としては、報道などで皆さん御存じだろうと思いますが、寝屋川市というところがございます。寝屋川市では、いじめに関しては、監察課すぐに動いてくれるとのこと。監察課のほうで、解決に向けて迅速に対応する。つまり、教育委員会以外に、行政的なサポートとして、監察課が動いてくれる。これが、功を奏しているような印象です。そういう意味では、今、お話があったNPO団体の力だけではなく、やはり行政的なサポートを検討することも、考えなくてはいけないのではないかと思います。
もう一点は、大津の事案以降に新設された総合教育会議です。首長部局と教育委員会がいろいろな話もできるようになっています。やはり重大事態の場合、自治体の長に報告をしても、先ほどの調査にあったように、首長部局が十分にいじめに関して理解していないケースもあるので、そういう意味では総合教育会議などを活用して、教育委員会側と首長部局側の共通理解を図ることが必要ではないかなと思います。
【座長】 行政的なサポートの窓口をしっかりつくる。寝屋川の監察課は、弁護士やスクールソーシャルワーカーなど、専門家も入れて取り組んでいる1つの例です。それから、総合教育会議が、今、既にあるわけですけれども、いじめ防止、重大事態への対応ということも含めて、もう少し活性化していくことが大事だという御指摘かと思います。
【委員】 先生の相談の中で、私立学校の事例等があれば、お知らせいただきたいと思います。 私学は建学の精神という、各学校独自の教育理念に違いがあるが、この問題点と、何かお感じになったことがあれば、またお話しいただければと思います。
【ヒアリング協力者】 私学の相談もかなり来ています。 実際に、生徒、保護者さんだけではなくて、学校側からの相談もあります。私学と公立では基本的な方針やいろいろな部分が異なりますが、ただ、私としましては、私学でも公立でも法律が違うということはないと思いますし、そこで傷つく子供は同じ子供なので、私学だからとか、公立だからではなくて、やはり学校という組織であるのであれば、きちんといじめ防止対策推進法という法律にのっとって、義務を果たしていただきたいと思います。
あと、私学の場合ですと、すぐに弁護士同士の話になってしまうというケースが、多いように思います。学校側も顧問弁護士、保護者側も弁護士。それで、結局、弁護士同士で話をされているという感じがすごくします。
【委員】多くの中学校が、いじめも含めた様々なトラブルを日々抱えて、それに対応しているという、それが実態だと思います。初めにヒアリング協力者が言われた、いじめの基本方針。うちの学校は、一応、年度初めの保護者会で説明をして、ホームページにも公開しています。
うちの学校だけではありませんが、割と子供同士のトラブルで大きな話に発展してしまうケースが、単純化するために1対1の関係にしますけれども、A君とB君がいて、日常的にB君のほうがA君からしょっちゅうちょっかいをかけられていた。それで、B君は嫌だなと思っているのだけれども、まあまあ我慢をしている。いじめられたとは訴え出てこなかった。それが、あるとき関係が逆転して、B君がA君に対して逆襲しました。そうしたら、A君のほうがすっかりへこんでしまって、学校に来られなくなってしまったというときに、そこで、A君のほうがいじめられたという訴えを学校にしてきたときに、当然、法律に基づいて対応すれば、もちろん訴え出てきたA君がいじめられたということで学校は指導を開始するわけですけれども、そもそも逆の感じでA君はずっとちょっかいをかけていたよねと。そこら辺のところを教員が分かっていると、気持ちの上で、うまい具合にいじめられたという訴えをした子供の立場に立って指導を続けていくというのはなかなか難しいケースがあります。
そこのところで、保護者の方の関係も、そもそもちょっかいをかけていたのはそっちだろうという話が、いじめた側の保護者と言われた人が思ってしまったりすると、もうそこで保護者同士の関係もぐちゃぐちゃになってしまうケースが割と多くあります。そこら辺について、ヒアリング協力者、何かいい解決の方向性があれば、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【ヒアリング協力者】 そのような現場は、すごく多いと私は思います。 私がそういうところに入る、介入する場合というのは、いじめか否かというところに私はこだわらずに、なぜかと言うと、「いじめ」という言葉を出した途端に、「うちの子はいじめていない」とか、「それはいじめではない」とか、そういう議論になってしまう。
だから、そもそも子供たちに対して適切な教育をするというところが一番重要で、これはいじめだからどうというよりも、例えば自分のしたことによって友達が傷ついたとか、嫌な思いをしたんだよというところを教えることが大事だと思います。
なので、その場合は、両方の子供に、君がこういうことをしたことでこの子はこうやって感じて、傷ついたみたいだよというところを教えてあげればいいと思いますし、君がやったことはいじめだよというと、絶対、またそこでいじめではないという議論になってしまうので、その話の進め方だと私は思います。
だから、保護者の方に対しても、これはいじめだという説明をするのではなくて、お子さんがしたことによって、1人の子供がこういうふうに傷についてしまったという説明をされたほうが私はいいと思います。
【委員】 子供に対して、今、ヒアリング協力者が言われたような形で指導していきたいと学校も思っているが、そこで、例えば弁護士さんなんかがいきなり出てきてしまうと、もう学校の手に負えない状況にはなってしまう。だから、そこら辺のところがちょっと難しいことが最近増えているなと思っています。
【座長】 国の基本方針の中にも、いじめとして認知して対応していくけれども、「いじめ」という言葉を出さずに対応していくこともあり得るということは書いてありますし、事実に対して対応していく、何が起きたのかということに対応していくことが重要。いじめか否かという判断はもちろん必要であるが、それに拘り過ぎると、事実に対応できなくなるということは、ヒアリング協力者の資料にも書かれていましたので、そんなところが大事なのかなと思います。
【委員】 三点お聴かせ下さい。まず、重大事態調査の第三者委員について、いじめ防止対策推進法や、重大事態調査の意味であったり、いじめについての理解であったり、そういったところについての理解が十分なのかという辺りで、ちょっと疑問を感じるケースがあると御指摘いただきました。特に弁護士がということではありませんでしたが、弁護士も含めてのことだと思います。弁護士の場合、弁護士会から委員として推薦して、委員長に就任して活動している例も多いです。そういう方たちについて、弁護士会のほうでも、経験交流や研修会などで、そういった辺り、きちんと問題意識を持って関われるような体制を整えて、自己研鑽もやってもらっているような感じでは進めております。
そういった「理解が十分なのか」とお感じになったケースでは、どういう経過で、その委員の方たちが確保されていたのか、調査委員会の構成に至る経過での選任手続といいますか、弁護士会の推薦を経ての選任で、重大事態調査に入っていてそうなっているのかという辺りについて、お分かりになっているところがあれば、教えていただきたいというのが1つ。
もう一つありまして、推薦団体からの推薦を受けていたとしても、例えば弁護士が委員になった場合に、雇用関係にあると受け止められてしまうという表現があります。弁護士の場合、特にそういった辺りを気にしているのですが、例えば実際に事件について委任を受けて、代理人として入っていくという場合だと依頼者の利益のための報酬関係にあるということになりますが、一方、雇用関係ということになると、顧問弁護士のような顧問先の利益確保のための助言という形、あるいは企業内に雇われているという立場のような雇い主の指示命令に基づいて業務に従事する形で関わる場合ということになります。このように職名というか、関わり方に応じて、誰の利益を守る立場にあるかという辺りをすごく区別しながらやっています。
そして例えば重大事態調査の委員の場合だと、法に基づいてつくられた組織の委員ということになると、やはり法の目的の下での役割を果たすということでの委嘱といいますか、そういった形の役割を遂行する業務に対する報酬という理解をしており、これは雇用関係で雇い主の利益を護ることによる報酬とは異なるものです。
この辺の違いというのは、やはり市民の皆さんというか、保護者の皆様というか、そういった形のところでは理解されにくいということなのか。あるいは、重大事態調査委員以外の場合の関わり方、例えば学校の対策組織なんかに相談を受けている弁護士がいたりする場合の関係、あるいはスクールロイヤーと言われているような関係の問題も、この「雇用関係」という中には入っているんでしょうかという辺り。細かくなってしまって難しいかもしれませんが、もしお分かりでしたら、教えていただきたいということ。
それと、もう一点、すみません。3つ目になります。先ほど、私学の場合、被害者側に代理人がついて、それで、私学側の代理人の弁護士の方と、弁護士同士の話になってしまってというお話がありました。そういった被害者側の代理人弁護士がつくことによって、子供さんが困っている状況に対してどうしていくかということが、鮮明になっていく場面も、もしかするとあるのかなと。被害者側の代理人になっている弁護士というのは、そういう観点で入っている場合も多いと思います。
そこら辺の役割については、ヒアリング協力者の調査や御経験の中から分かってくるようなところはないでしょうか。この辺をどのようにお感じになっていらっしゃるでしょうか。
【ヒアリング協力者】 1点目の人選なんですけれども、私が介入した時点では、重大事態の定義に該当していながら、重大事態として対応されていないというケースが多くて、そこで私が介入して、きちんと学校、教育委員会、保護者に対して、法を照らし合わせて説明させていただいて、早急に調査委員会を設置して調査を開始していただく事になります。その際に、教育委員会、学校側と私は情報共有もしますので、委員の人選方法の部分も、私のほうに報告を頂く。その中でアドバイスできるところをさせていただくのですが、職能団体に推薦依頼を出されて人選されているというのがほとんどです。
【座長】 要するに、附属機関なりが調査をする。そうすると、雇用関係があるので、中立性を保とうとしても、やはり保護者の方等からは中立性がないのではないかと見られるけれども、どう感じているのかということですね。
【ヒアリング協力者】 そこは、やはり保護者側からしてみると、教育委員会が調査委員に対して報酬を支払っているというと、それはお給料を払っているというイメージにどうしてもなってしまう。その金銭のやり取りがあると、どうしてもその中立なのかなと思ってしまう。そう捉えられることのほうが多いのではないかと私は思います。
加えて、先ほどお話ししたように、今、ほとんどの教育委員会さんは、職能団体に推薦依頼をして委員の人選をされています。その上で調査を開始されていますが、私が今実際に立ち合っている調査委員会というのが20件ほどありますが、必ず立ち会ってほしいという依頼は、学校側、教育委員会側、保護者側からも来るんですね。
その理由というのは、やはり円滑に調査を進めるためというか、調査開始後に、その説明は聞いていないとか、それは言ったはずだとか、こういうことにならないために同席を要望される。 そこで、私はガイドラインなどに基づいて、必ず調査開始前に、児童、保護者側に6項目の説明をしていただくとか、あとは、調査開始後には、適宜適切に経過報告を行ってください。そういうことを事前にお話をさせていただくのですけれども、その段階で、調査委員の方々から、なぜ被害者だと言われる方だけにそれを説明しなければいけないのか。それでは中立性に欠けるだろう。それはできませんと言われることが度々ある。
なので、きちんといじめに対する理解というよりも、いじめ防止法などを理解されている委員の方々だったら、そういう発言が出るかなと私は思ってしまう。あとは、経過報告ですかね。その経過報告も、やはり何度かお話をした上で、ようやく行っていただくのですが、委員の方々が私に相談に来られるときも度々あるんですね。どういう部分を報告したらいいのかとか、どういう形で報告すればいいのかとか、そこも委員になられる前にきちんと理解をされていないのかなと。そういう要所、要所で疑問を感じるときがあります。それは、自治体構わず、全国あちらこちらで私は立ち会っておりますので、1つの自治体とか、そういうわけではないです。
【座長】 最後に、代理人弁護士が入ってくる。被害者側の代理人弁護士がついたことによって、事態が前進した、明らかになるということがあるかどうかという御質問だったと思うのですけれども、その辺、どうでしょうか。
【ヒアリング協力者】 弁護士の先生に御相談や委任をすることは、私は決して悪いことではないと思うのですが、問題が大きく発展してしまうケースというのは、どちらかというと、教育委員会側が先に弁護士を出してきてしまうのですね。そうなると、保護者の方が教育委員会や学校に説明を求めても、もううちのほうでは顧問弁護士が対応している。だから、顧問弁護士と話をしてくださいみたいな形になってしまうので、結局、問題の本質であったり、子供に対する支援だったり、そういうすごく大事な部分の話合いができなくなってしまう。それで、結局、保護者側が、そういうことで自ら弁護士をお願いする。
そうすると、やはり弁護士の先生同士の話合いになってしまうんですが、そこで話し合われるのは、法律はこうだからこうしなければいけないとか、大体法律論じゃないですか。だから、そこで、私としては、もう既に被害に遭った子供が置き去りになってしまっているなという印象を感じている。
【座長】 ヒアリング協力者のヒアリングに関して、質問や意見をたくさん出していただき、ありがとうございます。今後、論点を絞っていく必要もありますので、前回、委員から、弁護士の立場からの重大事態背景調査等に対する御意見、それから、本日のヒアリング協力者からのヒアリングを踏まえて、また、委員の皆さんの御経験も織り交ぜながら、どこに焦点を当てて、これから協議会として議論を進めていけばよいのかということについて、今日のヒアリング協力者のヒアリングの内容だけではなくて、少し広げて皆さんから御意見を頂ければと思います。
それで、1つの参考として、前回までの委員の皆様方から伺った意見を、資料3、「いじめ防止対策協議会における今後の論点(案)」というところにまとめてありますので、これを議論の参考としていただきながら、御意見を出していただきたいと思います。
【委員】 今後の論点というところですが、今日のヒアリング協力者のお話でもありましたように、まず、重大事態の定義が、今、正しく理解されていないということで、初動体制が非常に遅れている、後手になっている。そこをどうしていくかというところですね。入り口部分をどうしていくか。そこが解決しないと、その後のプロセスの議論には入れないと考えておりますので、まずは、その重大事態の認識をしっかりと学校、それから保護者双方に浸透させるにはどうしたらいいのかというその手だての部分。
それから、その後のプロセスのところで言えば、先ほどから出ておりますように、やはり弁護士さんには限らないと思うんですが、被害者側の代理人となる弁護士さんを立てるといった、どうしても保護者側は、先ほどもあったように法律論で責められると太刀打ちできないというところがありますので、代理人の弁護士を立てるということは必要ないように思います。
ただ、私も今、スクールソーシャルワーカーをやっておりますけれども、結構、今、一人親世帯でありますとか、貧困世帯が非常に多くなっております。それで、弁護士を立てるとしても、立てたいけれども、やはり費用面で出せないんだという方々もたくさんおられますので、そういった弁護士を立てるときの経済的な支援という辺りも同時に検討していく必要があるかなと思っております。
【座長】 いじめの重大事態の認識をどう浸透させるか、それから、弁護士を立てるという状況になったときに、経済的に苦しい御家庭への支援ということも考えるべきではないかというご指摘かと思います。
【委員】 重大事態の調査については、難しいことは分かっているのですが、やはりスピード感。
先ほど、ヒアリング協力者からもあったように、説明なく、非常に長い期間かかってしまっているわけですね。それで何が起きるかというと、ダメージを受けている方の心がどんどんどんどんダメージが深くなっていく。なので、スピード感と、それから説明する。これは義務かどうかという議論ではなくて、人としてどうなのということだと思います。委員の合意だと思うのですね。義務があるかどうかということよりも、それは当然でしょというところもありまして、いろいろな形があると思います。教育委員会がその報告をするという場合もあるでしょうし、あとは、ちょっと先ほどの話に飛びますけれども、お子さんがほったらかされてしまうというところ。
でも、学校には学習を継続する義務もあって、その辺りが紛争的な形になったときに、しっかり守るべきものということで、より明確にしていかなければいけないと考えています。非常に難しいことではありますが、ぜひともそれを実現に向けていかなければいけないかなと思っております。
【座長】 状況によれば、卒業してから、まだ調査が続いているということもあるし、スピード感をどう確保していくのか。調査委員も、本務というか、自分の仕事がある中でやっていく。会議もほとんど夜。なかなか難しいところもあると思いますが、人員の確保、あるいは携わる者がいじめ防止対策推進法の目的をどう理解しているのかなど、いろいろな事情があるのだけれども、子供のことを考えると、スピードということが大事だろうということかと思います。
【委員】 迅速に対応するというところで、重大事態の場合に、1号議案の場合には、そういう事象が明確にありますので、すぐ対応になるのかもしれません。
2号議案の30日以上欠席ということは、トータルで30日になるかもしれませんけれども、いじめの法律もですが、虐待防止法でも、学校の先生方は子供たちが7日休んだりすると、もう家庭訪問されたり、そういういじめの問題だけではなしに、様々な角度から学校の先生は関わっておられると思いますし、スクールソーシャルワーカーの方々も、そういう方面で関わっておられると思いますので、先ほど言われましたように、30日休んだから対応するのではなくて、少しでも、1日でも、2日でも、ましてや7日休んだら何かあるだろうということで、学校の先生方が対応されることが必要だろうと思います。
それと、もう一つですけれども、今後の重大事態調査に関して、私は職能団体のほうからと言いましたけれども、日本心理臨床学会という臨床心理士の団体があるのですが、そちらのほうで2020年にガイドラインを出しております。このガイドラインに関しましては、村山弁護士さんにもアドバイザーで御尽力いただいておりますけれども、その中で様々なことを想定し、また、質問なども考えて、臨床心理士、心理職が、重大事態のときにどのように関わるのか、必要なのかということをまとめておりますので、ぜひ御参考にしていただけるとありがたいなと思いました。
【座長】 職能団体、学会からの推薦で、その中で委員として調査をしていく、子供に寄り添いながら最善を目指していくという方向で、どう力を発揮すればいいのかということを学会なり、あるいは職能団体なりで研修をしたりしていくことが大事だと思います。
また、参考になるガイドブック、私も見させていただきましたけれども、非常に大部なガイドラインですが、心理臨床学会のガイドライン等も参考になるであろうということでした。
【委員】 先ほど、ヒアリング協力者から、職能団体から推薦された委員が余り役に立っていない、機能していないという御指摘を頂きまして、推薦する各都道府県のそういう会も、なかなか引き受けてくれる人がいない、また、そういう状況で、より適切な人と考えておりますけれども、御期待に沿えなかったことがあるのだろうと思います。
【座長】 私も推薦する立場になることがあるのですけれども、引受手がいないという現実は本当に痛感しております。
【委員】 最近起きている例から重大事態を考えると、大きく2種類あると思います。
一つは、いじめの関係者が、在学しているときに起きる場合です。他方、最近多いのは、関係者が卒業した後に、遡及的に重大事態になるケースです。いじめの関係者が在学している状態で調査を行えるケースと、既に関係者が卒業してしまったという状況では、かなり違います。後者の場合、非常に難しいです。また、スピード感といったときに、例えば小学校6年生や中学校3年生で重大事態が起きた場合と、中1と小学校の低学年や中学年で起きた場合では、スピード感への切迫度が違うと思います。重大事態に関しては、レアケースも含めて、場合分けして考えないと駄目ではないかという気がします。
それから、国の基本的な方針には書いてありますけれども、例えば、特別支援教育が絡んでくるようなケースの場合は、重大事態の対応フローはどうなるのか具体的に示されていません。その辺りも、考えなくてはいけないのではと思いました。
なお、ヒアリング協力者にお伺いしたいのは、どういった手順で教育委員会側と保護者の説明の場に、立ち会っていいという許諾を得ておられるのか、もしくは書面などでやり取りされているのか、お教えください。
【ヒアリング協力者】 私が調査委員会に立ち会うというのは、決して委員として立ち会うわけではないので、学校、教育委員会と保護者の中立というか、間というか、その両者が調査をする過程の中で、あのとき説明していないとか、聞いていないとか、言っていないとか、そういうことが起きないために、私が第三者の立場としてその場に同席をする。そういう形ですので、何か正式な手続というものはないですね。
それに対しては、やはり保護者側もきちんと重大事態調査と言われても、何を聞かれるのか、何を言われるのかという不安もあるので、それで同席してほしいというのと、あとは、学校、教育委員会側からは、もうこれ以上ねじれこじれが起きないために、できれば同席していただきたいという依頼がありまして、それで私は同席をさせていただきます。
【ヒアリング協力者】 先ほどから議論されていますが、私が子供たちから直接頂く声では、被害に遭った子供たちというのは、調査を望んでいる子はほとんどいない。その子供たちというのは、やはり今すぐ何とかしてほしい、今すぐ助けてほしいという声ですので、私が、今後、調査をしてもらえるとか、そういう話を子供たちにすると、結局、その調査委員会というのは、どうしても平均的に1年とか、2年とか、長い期間かかってしまうので、その子供たちにとっては、その1年とか2年というのは、いじめか否かなのか、何でこんなことが起きたのか、今後どうしてくれるのかというのが、全くはっきり分からない状態で待たせられてしまう。
そういう状態ですので、子供たちにとっては、とても過酷というか、つらいというか、何でこんなことになったのだろうということすら分からない状態で待たせられている。だから、子供たちは、調査をしてほしいという子はなかなかいないというのが現状です。
【委員】 もう一点、第三者委員で困るのは、第1号も第2号でも同じなのですが、例えば、委員会が被害の子供の声を聞きたいと要望した場合に、結果的には面談できずに終わってしまうというケースがあります。ヒアリング協力者の経験から、何かそれを打開するような案というか、アイデアはありますか。そのような御経験があれば、お教えください。
【ヒアリング協力者】 そういうケースは、私が対応している中でも幾つもあります。
ただ、直接被害に遭った生徒に会わないと聞き取りができないかと言ったら、そうではないと私は思っていて、私が対応しているケースの中では、被害生徒に対してアンケートで答えてもらうという委員の方々もいます。あと、調査委員が委員会の場所に呼ぶのではなくて、その委員の中の心理士さんとかが個別で、別の場所で被害生徒とお話をするとか、そういう形で様々な方法があると私は思います。別に会って聞くというだけではなくても、そこは工夫していただけたらいいと私は思います。
【委員】 私たちは、直接会ってという以外の方法をとっている例も幾つか知ってはいるのですが、本当にそういった声を聞けずに調査報告書に至るという例も見受けるので、ちょっと今、御質問した次第です。
【座長】 1つは、委員から指摘がありましたように、難しい事態。例えば、卒業してしまって、過去に遡及しながら調べていく、そういうときにどうしたらいいのか。また、特別支援教育に関わるような、非常に理解が難しいというときに、どういうフローで調査を進めればいいのかというような困難事案について、もう少しガイドラインとして具体的なことを示したほうがいいのではないか。
それから、ヒアリング協力者からは、調査を望んでいないといったときに、今、自分を支えてほしい、だから、調査は調査としてあるかもしれないけれども、今、困っている子をどう支えるのかということを視野に入れずに、調査に固執するのは、子供が望むことではない。その辺もどう進めればいいのかということを具体化していく必要があるという、子供の視点に立ったとても大事な御指摘かなと思います。
【委員】 意見というところに関して言うと、まず、今、議題になっている、今後の論点の部分で、これは、多分、僕が前回言ったところもあるのかなと思うんです。3番目の中立性を担保しつつ、保護者側の心情にも寄り添えるようなという話をさせていただきました。
保護者側でも、加害者側でも、子供たちもそうですけれども、その気持ちに寄り添うことと、中立性を担保することは別問題だと思っていて、中立性はきちんと保ちながらも、そういうことができるのだというのが大前提で、先ほどからもずっとお話にあるとおり、いじめが起こって、いじめと認定される、されないもありますけれども、保護者側や被害者側が、実際には思っていますよね。
その中で、保護者側は、先ほどのヒアリング協力者からのアンケートのところにもありましたけれども、いじめをする、しないでどうなのかということから、だんだんとその保護者と学校や調査委員会とのこじれというものになっていくということは、正直、先ほど、これも話に出ていましたけれども、全くもって論点がずれていってしまうというところになっていて、何もいいことを解決しないし、子供が置き去りになるというのは皆さん分かっているところだと思うので、何でそうなるのかというところをしっかりと議論していくべきだと思っています。
その中で、僕はやはり保護者目線で、保護者のほうが学校側の対応や教育委員会の対応に対して、余り納得ができずにこじれると。でも、こじれてしまうと、そこから解決に行くというのは、やはりすごく時間がかかってしまうということになりますので、こじれさせないためにどうしたらいいのかというところだと思います。そこは、法律や規律や方針だけではなくて、やはり人と人の部分があるので、そこに寄り添うということを僕は多分言わせていただきました。
病院の先生なんかもそうですけれども、けがをして病院に来られた患者さんを見て、「これぐらい痛くないよ」と言うものなのか、本当は対して痛くなくても、「ああ、何か痛そうだね」と言ってくれたら、この人は名医だなと思うのと同じで、痛みを分かってくれている、この人。いじめられているのが苦しいと分かってくれているんだなといった対応をしてもらう。
これは、加害者のほうにも言えると思います。加害者の方にも何か理由があったのだろうねということで寄り添ってあげればいいだけの話で、中立性を担保することイコールぶっきらぼうに、しゃくし定規に規律を守るということになっているような感じがするので、保護者側とすると、解決をスピーディーにやること、そして、保護者、子供たちの心をほぐすということから考えると、そこの部分をやることによって、いろいろなものが解決するのではないのかなと感じております。
【委員】 1回目の協議会のときに初めて参加させていただいて質問をさせていただいたのと重なりますが、今回、重大事態調査にフォーカスしてということで、この協議会が進んでいるというのは承知しています。ただ、重大事態というもの自体が、ある意味で法律的なことも含めて、定義された状態のものであることから、ある日突然、重大事態として始まることも当然あると思います。
一方では、どのような事案もそれまでの流れの中でそこに到達しているわけです。重大事態調査が解決並びに再発防止のためのフローだというのは重々承知していますが、今後の論点の中で、在学しているのか、卒業なのかのケース別とか、細やかにケース別していく必要があるということと同様に、本件に関する流れというか、その重大事態調査だけをフォーカスするのではなくて、そこまでのことも流れの中でうまく整理をしてあげないと、やはり子供中心にはならず、調査をすることが目的化してしまうことを危惧したいなと思って、意見を述べさせていただきました。ありがとうございます。
【座長】 調査のための調査になったら何にもならないので、子供のための調査、そこにはもちろん再発防止等は入ってまいりますけれども、重大事態が起きたらこうなる、こうするということだけでなく、その前のところ、重大事態になぜ至るのか、どうすれば防げるのかということも、調査のガイドラインとは少し違いますけれども、視野に入れながら、その中で調査をどうするのかということを考えていかないと、調査のための調査のガイドラインになってしまうのではないか、そうであるならば意味がないのではないかという、大事な御指摘だと思います。
いろいろな意見が出ております。論点を整理する方向でのご意見もあれば、さらに論点をつけ加えるという方向のご意見も出ています。これらを、議論のための議論に終わらせずに、ガイドラインなり、あるいは体制づくりなりにつなげていくというのが、この協議会の1つの大きな使命でもあると思いますので、次回までに、これまで出てきた意見を整理したうえで、具体化に向けてどうしていくのかという方向性について、また皆さんと一緒に考えていければと思っております。
以上をもちまして、第3回の会議を閉会いたします。
(会議終了後に委員から書面送付にてご意見を事務局で承る。)
資料3の1について、医療事故調査と状況は類似している。事故調でも調査開始に時間がかかる理由は、委員の推薦と日程調整です。職能団体に事前の委員候補登録制度を用いると円滑に推薦が決まりました。よって、いじめに関する調査制度に対しても事前の登録制度があるとよいと思います。また事前登録者を対象として研修会を開催することにより、いじめに対する基本的な考え方と知識を得る人材を増やすことが可能になると思います。各職能団体に、必ずしもいじめの専門家がおられるとは限りませんし、人材は限られています。
調査システムを調査前に当該関係者に明示すること、想定調査期間を示すこと、経過を適宜報告することは事故調では必要なことと示されていますし、いじめにおける調査も同様と思います。
資料3の2について、調査するものは調査に、支援するものは支援に専念すべきと思います。調査と支援を同一人物が実施すれば、調査に対し感情が入りかねません。公平性を担保するためにも分ける必要があると思います。
―― 了 ――