いじめ防止対策協議会(令和3年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年12月17日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催 (Webex)

3.議題

  1. 日本弁護士連合会推薦委員からの重大事態調査に係るヒアリングについて      村山 裕 委員  日本弁護士連合会
  2. その他

4.出席者

委員

新井委員, 池辺委員, 金田委員, 高田委員,小正委員,  田村委員, 中田委員, 原委員, 笛木委員, 松谷委員, 村山委員,八並委員,渡辺委員 

文部科学省

 鈴木生徒指導室長  

5.議事要旨

【冒頭】
ヒアリング協力者ヒアリング協力者より資料1をもとに、「いじめ重大事態調査の課題とその実態」について、説明があったのち、各委員からの質疑応答。
 
【座長】  重大事態調査の組織の在り方、調査の進め方の課題が論点であり、先ほどのご説明であったとおり、現在の国の基本方針、それから背景調査のガイドライン等では、やや具体性という点で不十分な点があるのではないかという御指摘だったと思います。
 ヒアリング協力者の御説明につきまして、御質問、御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。
【委員】  1点、一番最後におっしゃられた予算の関係も含めてなんですが、ガイドラインが平成29年に出て、その後に、平成30年に日本弁護士連合会が、いじめの重大事態の調査に係る第三者委員会等の推薦依頼ガイドラインを発行されているかと思います。その後、平成31年には、文科省がいじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携、この1年前には、今は法務省の人権擁護機関との連携強化について、様々なものが出ているかと思います。こうしたことからも、29年のガイドラインに不十分な点があったのではないかということで、恐らく日弁連や文科省が追加のガイドラインを示されたと思うのですが、そのような通知が、十分に現場で認識され、順守されているかどうかという検証が必要ではないかと思いました。
 先ほどのご説明の多くの部分は、平成30年の日弁連の推薦依頼ガイドラインに記載があります。だから、それがもしある程度、順守されておられたら、弁護士の予算の問題とか交通費とか身分保障の問題というも、恐らく現時点でクリアされていないといけないと思いました。読ませていただくと大変すばらしいものなのに、それが認識されていないというところにも課題があると思いますので、その辺のお考えとかあれば教えていただきたい。また、事務方のほうには、民間が出したものだから、国としては認めないというお考えなのか、それとも、このたびの調査にぜひ加えていただきたいと、順守できているかどうかです。
 2点目は、先程のご説明で、再調査が減らない、全体が減っているのに再調査数はあまり変わらないとおっしゃられていたのですが、医療の現場では、事故調査制度というのがあり、これも再調査が問題になっていますが、再調査された事例というのとそうじゃない事例、つまり再調査された事例は初回の調査とどこが違って、何が問題かということを1年ではできないかもしれませんけど、検証していくことが、再調査の在り方と初回の調査の在り方に大きく関わってくるんじゃないかと思いますので、ぜひそのような検討も考えていただく必要があるんじゃないかと思います。
 3点目は、学校における調査と、学校管理者が行う調査の内容に差異があると弁護士会としては思っておられるかどう。以上の3つについて、教えていただきたい。
【ヒアリング協力者】  日弁連のほうで第三者委員の推薦依頼ガイドラインを出しており、推薦依頼が来ると、各地の弁護士会に来た場合も同様ですけれども、こういったものの条件が整っていますかということで、御照会をしたりすることもあると認識しています。しかし、実際に推薦依頼をしてこられる各地方公共団体や教育委員会のほうではあまり認識されていなくて、推薦の際の条件等を明確にしていただかないと、推薦ができないといったことが生じて、推薦の調整が遅れてしまうということが起こっていると認識しております。
 予算については様々な形で確保されていると思いますが、弁護士に限らず関与されている専門家をはじめとした、第三者委員の方たちは、それぞれ大変な思いをして時間を割いて検討されるというのに対しては、調査委員を務めるには厳しい条件しか提供されていないという実態があり、一部では、弁護士会が特別に立て替えて、補助するという形で対応しますという会長声明を出しているところもございます。あるいは、弁護士会のほうで、都道府県などに働きかけて、そういう対応できる条例をつくってくださいという形で働きかけて、条例をつくってもらって確保しているという例もあったりします。
 再調査と初回の調査の関係については、公表されている調査報告書をベースに、十分にはできていませんけれども、検討しなければいけない課題とは認識しており、公表されているデータ自体を集めたりはしています。ただ、再調査すること自体がいけないことなのかということになってくると、第1回の調査のときには調査が十分にできない条件といいますか、時間が経過する中で、その問題について関係者の受け止め方が変わってきて調査が進むという場合もあったりします。そういう意味では、一律に再調査自体が全て悪いと決めつけるのは早計かと思います。だから、そういう意味では、再調査をする意味もあるのかとは思うんですけれども、何でもかんでも再調査をすればいいのかということになってくると、そうでもないんじゃないかと、その辺の課題はどうもありそうだというところです。
 3番目の学校での調査と設置者の調査で違いをどう認識しているかという点については、事案に即した形になってくるのかと思います。あるいは、調査自体、あるいは実際に起こっている事態について、争いがあるのか、ないのかというあたり、事案の解明が、そこではっきりしているのかどうなのかというところ、そこの辺りについて、設置者が入ってくることによって、ある意味、中立、公正性といいますか、あるいは指導、助言の範囲での公正な判断といいますか、指針に基づいて調査が進められると、そういう意味においては、設置者のところで判断してもらうと、学校で、言葉は悪いですけども、独善的にやっていると思われている部分がそこで修正されるということになれば、そういう形で動いていっている形と理解されれば、そこのところは信頼関係を得られる方向になってくると。
 ただ、学校の調査自体について、もう既に設置者が関わって指導していた結果で、信頼関係が失われていると、そういう状態になってくると、設置者自身が調査するというわけにもいかなくなっている。そこで、ずっと引っ張っていると、いたずらに時間がかかってしまうということにもなりかねないと、そういう関係において、実施されているかと思います。
【委員】  再調査のことをお聞きしたのは、初回の調査に問題があったか、ないかということも一緒に併せて検証できるかと思いましたので、再調査の妥当性、もしくは、それに、逆に言うと初回調査で問題があった課題が浮き彫りになれば、次回の調査で活かせるのではないかと思い、聞かせていただきました。
【座長】  加えて、先ほど日弁連の提言等について学校現場のほうで浸透しているかについて、事務局より、回答いただければと思います。
【事務局】  最初に、ご質問のありましたガイドラインの変更から回答させていただきます。ガイドラインの変更については、まさに平成29年に出たガイドラインですけれども、まさに、いじめ防止対策協議会で議論した結果そのものが、ガイドラインになっておりますので、これについて、今の現行のガイドラインを一部変更したり、改正したりというのは、まさに防止対策協議会での議論の結果ということになろうかと思いますので、そこは先生方の合意の議論によるものの結果であれば、ガイドラインに手をつけるというのは構わないと思っております。
 また、国からの支援についてというところも少し話がありました。こういったものに関して、役所のほうから率先して何かを打ち出すという方法もあろうかと思いますけども、いじめ防止対策協議会において、現場に対して国からの支援を行うべきだという提言があれば、我々にとっても、そういった提言が援護射撃になりますので、この場で議論していただければと思います。
 また、学校現場の浸透に関してですが、まさに今、ずっと8年間、いじめ対策推進法ができてからというところはありますけども、我々としては道半ば、途中だと思っています。今回、アンケートを取りますので、そういったところも踏まえながら、中にはNPOで、そういった直接聞いている方たちもいらっしゃいますので、そういったお話も、外からのお話も聞いて、少しこの場でも御提示できればと思っています。
【座長】  この協議会の議論が、ガイドラインの改定にもつながっていくのではないか、そういう観点で協議を活発に進めていただきたい。あわせて、国レベルで支援をしていくといったときに、どういう方向性があるのかということについても、ここでの協議が、やがて国のほうに反映されるということで、様々な御意見をいただきながら、協議をより具体化していければと思います。
【委員】  弁護士の派遣等の予算について。これは例えば、今の推薦条件的に合わないということで、派遣自体が遅れてしまって調査の開始が遅れてしまうということにもつながってくるかと思います。例えば、これは事前にひな形で協定書、いわゆる市町村教育委員会、もしくは県の教育委員会と各地域の弁護士会、大元は日弁連さんで、ひな形、派遣協定というものを結んでおけば、事前に派遣の1回当たりの予算だとか、そういったものもルール決めをしておけば、そういった1件1件に対して、幾らで行けますかみたいな、変な話ですけど、そういったところの交渉であるとか、この条件では合いませんとか、そんな話にはならずに、事前にそういうことを国レベルで、もちろん地方によって条件は若干違うかも分かりませんけども、そういった派遣協定を事前に結んでおくということをすれば、スムーズに、いざというときに弁護士会さんにお願いすれば、協定を結んでいるので、学校なり、教育委員会のほうに弁護士さんを派遣しますというのがスムーズにいくような気がしますが、その辺りはいかがでしょうか。
【ヒアリング協力者】  それに近いような形で、重大事態が起こって第三者委員会を立ち上げるために必要な場合に人員をプールしておいて、そこから派遣していくということをやっているところもあります。これについては各単位会で、どのようにして、どのような形で確保していこうかということで動いていただいているというところです。ただ、日弁連から、このようにしてくださいと言える組織形態じゃないものですから、そういったところについては、こういった動きがあるということを情報提供するという形のところにとどまっています。そして、各地での取組の中で、そういうところが検討されたりされていますが、そのベースとしては、予算についてもきちんと確保するということを、自治体側のほうでもやっていただかないと、それができないということにはなるとは思います。
 全体の状況としては、まだそこら辺の、どのぐらいの費用がかかるのかというあたりについての認識が必ずしも浸透してないと感じております。
【座長】  調査をスムーズに進めていくためには、今、ご指摘のあった派遣協定を結ぶとか人員をプールしておいて派遣するとか、そういう基本線のようなものを示す必要があるのではないか、その辺も1つ大きな検討課題かと思います。
【委員】  学校現場、教育委員会の動きというところで、先程のご説明は的確かと思います。私も県教委のほうで生徒指導に関わっていましたが、結局キーワードは中立性、公平性、公正性というところだと思います。学校で中立性、公平性、公正性が担保されていると保護者が認識をしてくれれば、スムーズに調査が進められ、学校の調査が機能するということになるかと思います。それができないとなったときに、重大事態に陥った際に、先ほどの先生の指摘のとおり、結局、設置者が学校を指導しているというところで、場合によっては、瞬く間に中立性、公平性、公正性が担保されなくなるということが現実にはございます。なので、これはこういった組織的なガイドラインということの以前の問題なのかもしれませんが、常に現場であれば、視点として設置者の視点で物事を進めていくことが重要で、学校が学校の目線でやっている限り、信頼を失ってしまうという印象があります。 県教委の調査、設置者の調査についても、結局、内輪の調査であることには変わりないので、もちろん第三者の方々が調査委員になりますが、事務局が結局、指導主事であったりということに、県教委になっていたり設置者になってしまうので、常にそれを排除しよう、排除しようと、努力義務じゃないんですけれども、そういったことをやらない限り、どんどん結局、最後は訴訟ということに落ち着いてしまうので、そこは何らか、1つ高い位置から調査をするということをやっていくことしか、我々、現場の立場としてはないのかと感じております。
【座長】  今、御指摘があったように、中立性、公平性、公正性をどう担保するか、これが1つ大きなポイントです。その点で、どういう調査組織がいいのか、あるいは事務局がどうであればよいのか。なかなか被害者の側からの信頼を得られない状況がある。その点で、どうしたらいいのかというのは大きな方向性を考えていくうえでの課題かと思います。
【委員】  今、中立性、公平性、公正性の話が出ましたが、当然、これは調査委員会としては、当然必要なことだと思っております。しかし、先程のご説明の中で、全容解明ができずに中立性、公平性、公正性の信頼が揺らぎ、被害者の不信を招きかねないという話がありましたが、実際、被害者の保護者の立場からすると、これは中立性が保てていないということで不信を招いているということだけではないのではないかと思います。
 重大事案に限らず、保護者で被害者、いじめに遭った子供の保護者の話を、相談をいただいたりしますが、要すれば、こちらは被害者側であるにもかかわらず、何となく、要は中立性、加害者と中立を保ち過ぎるがゆえにというと変ですが、何でこちら側に寄り添ってくれないのというような不信を招いているという気がする部分も実はあると感じております。ただ、調査委員会としては、当然、中立性、公平性は保たなければいけないので、その辺、何かもう少し、カウンセラーの人とかいろいろな者が間に入りながらというところもあるのかと思いますが、もう少し被害者に寄り添うところがあることによって、自分がもう少しこちら側に寄り添ってもらえるというか、代弁していただけるような方たちがいることで、被害者の保護者からの歩み寄りも可能なのかなと思いました。どうしても被害者の親って感情的になりやすい部分も当然あるものですから、そういう点で、杓子定規な形というのも当然必要ですが、それにプラスして、被害者に寄り添う側のものももう少しプラスをすると、いろいろなもので解決していくのではないのか、保護者側の視点からは、そのように感じました。
【座長】  中立性を保つのと同時に、被害者側に寄り添うという姿勢が必要ではないかというご指摘です。寄り添うというのが非常に難しいというか、様々な意味を持ってしまうような気がしてしまいますので、この辺がとても難しいところかと思います。
【委員】  精神保健福祉士の中でも、重大事態調査に関わった者が何人かいまして、話をこの間、聞いてきたんですが、委員会がどういう形で設置されているかということと、参加するときの立場が、もともとの学校側の人と違う第三者として呼ばれたとしても、教育委員会が設置したものとして、学校側というイメージで見られてしまうところはあるということは言っておりました。調査となると、どうしてもあまりそこに私情を挟まずに、事実を明らかにしていくということを中心に置きますが、それだと、何か自分たちの気持ちは報われていかないと、そういう思いが強くされるようなので、委員の中で少し役割分担をしながら、被害生徒の保護者への対応については、委員の中で、役割をあらかじめ決めておくことが重要だと言っておりました。これをばらばらにやってしまうと、調査委員会自体のチームが崩れてしまうというのは望むことではないので、誰がそこによく寄り添うようにするかということです。
 あと、どうしても訴訟ということが意識されるところもあって、そこに直結する話として、不用意なことを調査員が口走ってしまって、それが言質を取られて証拠と使われることの懸念というのも先生は結構持っているのではないかという話もありました。重大事案ってもちろんそんなにたくさんあってはいけないですし、それほどはないので、経験回数がそれほど多くない委員も当然いらっしゃると思います。そうすると、初めて委員になったときにどういうスタンスで、何に気をつければというのは、ガイドラインに書かれていることだけですと、先ほどのご説明にもあったように、どこの部分に依拠すれば一番いいのかということを各自が判断せざるを得ないということになると思います。そのときにコミュニケーション能力とか面接技術みたいなことも問われるのと、あと、どういう点に留意する必要があるのかということを認識しておく必要があるので、経験値が各職能団体ごとにやっていくのがいいのか、教育委員会としてやっていくのがいいのか、自治体が都道府県単位でやるのがいいのか分からないんですけれども、重大事態調査に関わった方々の振り返りであるとか、こういうことが大事だったと、そういう声を蓄積していくことが、重大事態調査を担える方々を各地域で育てていくという意味で必要なのではないかと思います。
 これも職能団体別にやるというよりは、恐らく一定程度、団体同士が共同して行うことのほうが、各職種の役割分担であるとか専門性の理解の促進にもつながってくるのかと思います。既にやられているところもあるかもしれませんし、そうした好事例を御紹介いただければ、それがまた、参考になっていくのかと思いました。
【委員】  先ほど調査をするときに寄り添いの話がありましたが、寄り添うというときが、第三者委員会なり、調査委員会のメンバーになったときに、例えば臨床心理士という立場で推薦されて調べるときに、そういう被害者の御遺族である、あるいは不登校の御家族であるという方々と関わるときに、調査委員会でお話を聞くときには、カウンセリングと調査の内容とは別になりますので、我々もそういう委員に行かれる人たちに対しては、ある意味でも客観的に聞くような面接の方法を考えるといった研修したりもしています。
 もし1号議案になったときには、それは御家族に対して、あるいはコミュニティーに対して大変な重大なことですので、教育委員会や学校が緊急支援のような形でスクールカウンセラーを配置するとかということをされますので、そういうカウンセリングとして寄り添っていく、御遺族に対して支援をしていく。あるいは、不登校の今の状態に対して何らかの支援をしていくというときには、調査委員会の臨床心理士の立場とは全く別物と考えて、関わっています。
 そういう委員を希望される御遺族の方、あるいは、不登校の御家族の方もそうですけど、スクールカウンセラーというのは、どうしても学校の立場になるんじゃないかということをよく御指摘されますので、理解していただければ、地域の臨床心理士会からの派遣ということになりますけど、親御さんがどうしてもその辺では難しいと言われるようになれば、もう日本臨床心理士会のほうに依頼をして、他県のほうから行っていただくと。他県ということになって一番問題なのは時間と費用ですけど、先ほどから出ていますような問題を解決していただければ、他県の者が行くと。その地域に関連性のない者が行くということになります。
 それで、先ほどからもいろいろ出ていますけど、調査の目的とか目標が因果関係の特定なのか、法的因果関係のレベルになるのか、事実的因果関係のレベルになるのか、そういうことが起きないような、二度とないように調査結果を活用していくとなりますけど、後々、法的因果関係にまで影響するということは、いろいろ考えられる人も多いかと思います。そうすると、なかなか客観的なというところが、情報を得ることが難しく、特に地域の中でそういう悲劇が起きた場合には難しくなってくるのではないかと考えております。
【座長】  1つは寄り添うといったときに、寄り添うケアの部分と調査の部分をしっかりと分ける必要があるということ。あるいは、チームの中でそれを分けるというお考えもあるということが出てまいりました。それから、調査が非常に難しい、担える人材をどう確保するのか、あるいは、どう養成するのかということもこれからの課題であるということ。
 そして、もう一つ、調査をやっていて非常に難しいところが、因果関係の特定で、いろいろなレベルがあるが、どこまでやるのか、あるいはやれるのか、あるいはやっていいのかというところに、因果関係の特定の難しさを感じます。
【委員】  我々は学識経験者ということで、第三者委員会の依頼を受けています。最近は、教職大学院も多くなり、現場の先生から大学の先生になるというパターンがあります。そういうキャリアを踏む大学教員は、推薦しないでくださいという事例もあります。
 おそらく第三者委員会が多くなっているのは、先ほどの公正性、中立性という点がかなり大きいという気がします。教育委員会も、指導主事の方は現場の教員が行政職に移られて、また、現場に教員で戻るというパターンです。そのため、被害児童生徒、その保護者の方も、学校あるいは教員、教育委員会に対する身内主義への不信感があるのでは、と思います。
 それから、もう一つ、学校が主体となって調査を適切にできるかというところを少し考える必要があるかと思います。例えば、学校が学校いじめ防止基本方針に沿って対応しなかった、あるいはアンケートをきちんと見ていなかった、あるいは誤って廃棄したなどがあります。
 その後、何が起きるかというと、調査報告書が出るだけはなく、場合によっては教員が懲戒処分になります。地方公務員にとっては、非常に重大な意味を持っていて、その後の教員生活にも影響します。自らを省みて、再発防止のために調査するのはいいわけですが、調査報告書は、重大な処分を受ける契機になります。果たして本当に学校主体で、そこまでの調査をできるかどうかというのも少し考えどころかと思います。
 また、非常に難しいのは、重大事態の発生時期が、例えば小6、中3、高3の場合、調査委員会を組織するまでに、3か月、半年かかってしまうと、当該児童生徒が、中学校、あるいは高校に進学します。この状態で、調査をやり続けるというのは極めて難しいです。その意味で、問題行動調査において、重大事態の校種別、学年別のデータを出していただけないかと思います。
 この他、高校を卒業した後、あるいは中学校をした後に、数年たって重大事態となるケースがあります。その調査は極めて難しく、遡及的に調査をしなくてはいけない。その際に、どうのようにヒアリングや調査をするのか。その辺に関して、今のガイドラインでは全く触れていませんので、この点も課題かと考えております。
【座長】  学校でできるのだろうかという視点ですけれども、これについては、1号、2号問わず、学校でやるのはどうなのかという疑問の掲示ということでよろしいでしょうか。
【委員】  そうですね。だから、2号の不登校は重大事態なわけですけども、それもケース・バイ・ケースかなと思います。例えば、ネットニュースなんかを見れば、不登校になっていじめがあります、いじめで不登校になったにもかかわらず、うまくそれを学校がキャッチしてくれなくて、ずるずる行くケースもある。
 だから、そういう点では、学校ができないと言っているわけではなくて、学校が主体となったときに、いじめ被害児童生徒や保護者は、もっと公正中立な組織でやってもらいたいというところがあるんじゃないかと思います。だから1号、2号も関わりなく、教育委員会が判断しますが、学校がやるか、教育委員会がやるか、あるいは教育委員会に第三者を入れるか、第三者のみにするかと。多分、恐らく今の全体的な傾向として、本当に公正中立な、学校だとか教育委員会と全く関係ない専門家の人たちにチームを組んでやってもらいたいというのが、被害を受けた方々の気持ちであり、そういう傾向があるのかなと思います。
【座長】  学校、教育委員会を離れたところで、保護者の了解、納得が得られるような中立性、公平性、公正性を担保できるような調査組織をつくる必要があるのではないかという御指摘だと思います。それから、現在のガイドラインだと高校に通学しているが中学校在学時に重大事態が発生しており、この調査を過去に遡って、調査を行っている事案もあり、これをどうしていくのかも課題であるという御指摘だったと思います。
 そして、重大事態の背景に何があるのかということも、問題行動調査の中で調べていく必要があるのではないかという大事な御指摘だったと思います。
【ヒアリング協力者】  今、お話のあった被害側への寄り添いのところで、不登校の場合の重大事態調査について、これは第三者委員会で対応した場合であってもなんですが、その場合に、例えば学校で、あるいは教育的な条件といいますか、そういうものを整えていくための調整活動的なことを、重大事態調査委員会ができるのか、やっている例はあるのかという観点で検討する必要はあるかと思います。いろいろなケースの中で。学校でうまくいかなかった、実際に学校のほうの段階で、被害者の不登校だったお子さんについて、学校復帰については調整済みで、学校に戻っているけれども、事後検証的に調査をするという場合だとすると、第三者委員会のほうで、学校復帰を含めた教育の機会をどうやって確保するのかということについての調整活動というのはあまりしなくてもいいんだけれども、この辺の調整がうまくいかずに、第三者委員会の調査に移行した際、実際には、児童生徒が不登校のままでいるわけで、そのお子さんをどうするかという観点で動いてみて、学校のほうにアドバイスとか協力、調整などをお願いしながら中間報告を出していくということで対応していくということも行われていたりします。このため、第三者委員会のほうが寄り添うという観点での学校復帰などの調整をするのか、学校の側が、その観点については担い続けるという観点で努力してもらうのかと、その辺のところも視野に入れとかないといけないのかとは思っております。
 寄り添いの役割を委員の中で誰が担うかという議論は必要だと思いますが、調査の問題とは少し違う観点もあると思います。2号の場合だと、その観点も視野に入れるのか、入れないのかというのがケースによって、違ってくるのかと思います。
【座長】  不登校の場合、調査委員会が何をやるのか、最終的には困っている子の状態の改善が目指されなければならないと思いますが、調査と併行して、今、この子に対して何をやるのか、誰がそれを担うのか、調査の中で見えてきたことを、学校を通じてということになるのだろうけども、その後の支援にどう反映するのかということが具体的には問われるところであり、どこまでやれるのか、やっていいのかということが課題になっているということはあると思います。 
【委員】  先ほどから出ております寄り添うという言葉ですが、非常にこうした問題を解決する上で、非常に大事なことになっているのかと思っております。
 いただいた資料1の3ページに、被害者、保護者に対して丁寧に説明を行うことということがあるわけですけども、これは皆さん、普段学校では、こういうことはしっかりやっていきていると思うんです。やっているんだけども、その辺が、寄り添うことも含めてうまくいかない場合に、教育委員会のほうへ問題を持ち上げ、そして、そこでもうまくいかないことが結局、いじめの重大懸案になってきているのかと、そのように感じます。
 だから、学校でも、教育委員会でも非常に機能を果たしていて、そして、解決している問題というのはかなりあると思いますが、そこでも結局、解決できなかった問題、これは寄り添うという言葉にもなってしまいますけども、先ほどから出ているように、中立、公正、公平性、公正性、そういうところで、被害者のほうは、この辺で、壊れている、納得できないということで重大になってしまっているということを考えますと、先ほどから出ていますように学校、そして教育委員会、そして、行われている第三者委員会を、全く違う立場の人を入れた第三者委員会にしていかないと、重大懸案は解決にいかないのかと感じております。
 その中で出ていた、メンバーの中で、学校を代表して教育委員会が入っている場合、その後の保護者とも関係があるわけですが、先ほどから言われているように、こういう問題は学校でどうですかと言われたときに、このことについては、学校で今後、このようにしていきましょうとか、そういう意見が出やすいような第三者委員会にしていく工夫も必要かと思います。先ほどから出ている寄り添うということは、問題解決とともに、今後の児童生徒の教育の場に戻る、または社会的に出て、それが生きるということにつながっていけるようにフォローする学校現場、教育委員会なども、そこには必要になってくるのかと感じております。
【委員】  これは次の議題のアンケートに関連すると思いますが、アンケートで調べていただきたいのが、さきほど話でできた寄り添うということです。第三者委員会であっても、調査報告書を作るまでに1回も、当事者である児童生徒と面談して気持ちを聞けない場合があります。もちろん、文書を送って文書で回答していただくという方法もあります。そこで、重大事態の調査で、実際に当事者の児童生徒と面談できたケースが何件ぐらいあるか調べていただけないでしょうか。
【座長】  御指摘のとおり、私の経験の中でも両方あります。実際、被害側だけじゃなくて、加害者からも同意を取付けなければ聞けませんので、聞ける加害者、聞けない加害者というのが出てくるというのも実態だと思います。
 ですから、聞き取りをどうするのか、あるいは、その前の段階で被害者本人から聞けることがあるけれども、聞けない状態になっているということが調査報告書、背景調査にどう影響していくのかということを確認しなければならないですし、実際、どれだけ調査の中で聞き取りや何かが進められているのかということも、アンケートの中で調べていく必要があるという御指摘かと思います。
【座長】  次は報告ですが、前回、皆様方から意見を伺った教育委員会へのアンケートを資料2のようにまとめましたので、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
【事務局】  事務局より資料2に基づいて、「いじめ重大事態調査に係る教育委員会へのアンケート」について、説明。 
【座長】  かなり自由記述の部分が多いので、教育委員会のほうも大変かと思いますけれども、ここで実態が把握できれば、先ほど御指摘のあった論点と重ね合わせながら、何が課題なのかが見えてくるのかなと思っております。そして、それに応えられるガイドライン、それから支援の在り方というのを今後、考えていく必要があると思っております。
 先ほどの延長上にはなりますが、今年度、本協議会で協議をしていただく大きな3つの課題というのが前回、確認されたわけです。1つは重大事態調査における初期対応、これをどうしていくのかということです。それから重大事態調査における委員の人選、人材の確保ということが2点目。そして、先ほど、寄り添うということも出てまいりましたけれども、被害児童生徒及び保護者への対応をどうするのかということが、課題として協議していくべきだということが確認されたと思います。
 今日、ヒアリング協力者の御説明と皆様方の意見の中から、それらを貫く1つの大きな課題として、中立性、公平性、公正性をどう担保するのか、そういう観点で調査の在り方、組織の在り方を考えていく必要があるだろうと。そして、もう一つは、調査組織として、因果関係の特定をいじめと重大事態という事象の間をつなぐときに、どこまで特定ができるのか、どのレベルでやっていくのかということも大きな課題として出てきたように思います。
 これまでの議論も踏まえ、さらに3つの具体的な課題について、これから協議をしていくわけですけれども、これからガイドラインをつくり、支援の在り方を進めていくという観点で、先ほどの公平性、中立性、公正性、それから因果関係、さらには具体的に初期対応、どう調査組織をつくっていくか、人材の確保、人選、保護者等への対応について、どんな観点でも結構ですので、御意見があればよろしくお願いいたします。 
【委員】  初期対応のところで、1つは校長であるとか、管理的な部門が明確な指針を出していくということはあると思いますが、今、問題になっている中で、若い職員を含めた職員のレベルで、当事者意識をしっかり持っているのか、今、学校でも様々な取組があるので、そういった意味では研修の難しさというのが、校長を含めた管理職の間で非常に問題意識を持っています。初期対応の難しさというところで、学校運営における生徒指導が極めて重要なポジションになっているということが、必ずしも職員レベルのところにしっかりと伝わっていないというのがあって、ここは本当に課題になっているだろうというところでございます。
 それから、保護者、児童への対応のところですが、可能性として訴訟に及ぶということは、初めから想定はしていかなければいけないと思っております。先ほどありましたとおり、調査のいろいろなものに影響があるというところは確かにあるかもしれませんが、学校としては、道義的な責任というか、要するに責任の所在はともかく学校の中でこういうことが起きて、つらい思いをされているというところについては、もう何度でも何度でも、その部分については、「本当に申し訳なく思っております。」とそれが必ずしも法的な責任を表すわけではないと、そういう整理で、どちらかというと、そこは徹底的に寄り添っていくというところは、現場としては心がけているところでございます。
【委員】  いじめの重大状態調査と似ているのが、医事紛争のときの医療者の対応、システムに近いと思っております。つまり、例えば事故が起きたときに医療者と患者側対立構造にあるということは結構多くて、場合によっては訴訟になることも結構あります。そのため、今、日本病院機構、医療機構や日本医師会などで、メディエーターの育成というのをすごく積極的にやっています。
 つまり、二面対立だとコンフリクトを起こしやすいので、要するに第三者を間に入れようという考え方です。どうしても現場で対応したいというお気持ちはよく分かるし、優先的に考えるんですけど、最初から何か起きたときに、向こう側がこちらに対して、敵対とは言いませんけども、感情も少し入った形で説明していくときになかなか難しいと。そこに第三者が入ることによって、情報も得やすくなるし、それから、対応もしやすくなると。つまり、メディエーターというのは、どちらにもつかないという形で育成をしているわけです。
 調査委員会の委員が寄り添うという考え方もお示しになられたんですけど、調査委員会はあくまで第三者であるべきだろうと思うんです。寄り沿った方が中に入るということでバイアスが掛かるということを考えると、これは昔からあることで、メディエーターを育成するのにも時間かかっているわけですから、明日にも解決するという案ではないのでよく分かるんですけども、長い目で見ますと、第三者のメディエーターに近い者が教育委員会なり、どこかにおられて、何かイベントが起きて、アクシデントがあったときに、まず、その第三者に近いメディエーターが両方の意見を聞いて、どちらにもすごく言い分があると、どちらにもよるわけではなくて、第三者の立場で間に入ると。情報を聴取し共有し、絶えず両者の意見を聞きながら、寄り添うというのは変ですけども、必ず近くにいて、情報とか発言内容とかに対してはレスポンスをしていく。それが、今、医事紛争を対応しているメディエーターという存在に近いものが、アクシデントがあったら望ましいのではないかと感じた次第です。育成するのは大変だというのは、それは当然だと思うんですけど、医事紛争という非常にイベントの多いことに対して取り組んでいるのと、今回のように、重大事態という、そう多くないケースに対して、そういう人を配置するということに対する費用対効果というのは当然あるとは思うんですけど、でも、そういう方が県に1人でもおられれば、重大事態の対応の改善に、ある程度結びつくのではないかと思いました。
【座長】  医療関係の調査という中で、第三者性をしっかりと確保した上で、両方の情報を得ながら、メディエーターがうまく調整しながら情報を得ていく、そういう専門家を、いじめの重大事態の調査の中でも、都道府県レベルで置けるような体制、あるいは要請を考えるべきだという御指摘だったかと思います。
【委員】  いじめの調査過程で、虐待や犯罪行為を知った場合にはどのように対応するのでしょうか。最近の旭川の事例も、いじめとは呼べない犯罪行為だと思います。いじめ防止対策推進法の中では、警察への相談や通報をしなさいとなっていますが、調査プロセスで、そうした事実が出てきた場合、どうするのでしょうか。 
【ヒアリング協力者】  虐待なんかの虐待防止法だと、一般的に通報義務ということはありますが、犯罪が見つかったときに、それはどこも認定していない、知らなかったことが調査過程で判明した場合にとういうことですか。
【委員】  仮に調査で、SNSにそういったものが、見つかった場合にどうするのかということです。調査委員会がそれを得た場合には、すぐに学校、もしくは教育委員会に報告して、そちらから対応してもらうなどの注意書きは要らないのでしょうか。
【ヒアリング協力者】  犯罪への対応という観点から言ったときに、今の重大事態調査委員会でそういうこと、例えば告発とかそういうことができるのかといったら、そういう権限は、委嘱内容によるんだと思うんですが、組織としての権限としてはちょっと考えにくい。調査権限に含まれる範囲での活動になるわけですから。そういった場合に一般的にどうするのかというのは、緊急な、今後、被害が拡大していく可能性があるという事態が分かったというような場合であれば、学校側とか関係者に説明するということはあり得るのかもしれませんけれども、この辺は基準がどこかにあるかというと、見当たらないような気がしますので、どうしていくのか検討する必要があるかと思います。
【座長】  今のように、多分、これまでのガイドラインや通知の中で、実際に対応していく中で漏れているというか、きちんと提示できていないところがあるということが、恐らく今の議論、それからアンケートの中から出てくると思うんです。それらを整理して、改めてどのようにガイドラインを示していくのかということを、今後の協議で詰めていきたいと思います。
【委員】  まず、アンケートで、私立学校のも導入していただいて、全部がアンケートは取れないかもしれませんけれども、一歩前進かなと感じております。
 さらに、ガイドラインが徹底することが公平、中立性が生まれるんじゃないかと、私立学校のほうも、しっかりとそこら辺が各学校に行き渡るということは大切だと思うんです。私学というのは、各学校が経営上、問題があったらという部分では、本当に、事前にそういったことに対応するような学校組織になっていますけれども、それでも公平で中立性を担保することが私学でも必要だと思いますので、ぜひそういう部分でのガイドラインをもう少し、さらに充実してつくって私学にも広がればと思っております。
【座長】  ガイドラインを見直し、充実させる。あわせて、これをどう周知していくのか、活用するのか、そのことが公平性、中立性の担保にもつながるのではないかという御指摘だと思います。
  本日、いただいた皆様方の御意見を基に、事務局のほうで第3回に向けた準備をお願いしたいと思っております。事務局のほうから、第3回目に向けてということで御説明をいただければと思います。よろしくお願いします。
【事務局】  ありがとうございます。アンケートの微修正につきましては、座長と相談しながら、一両日中には発出して準備したいと思っております。
 また、第3回以降につきましても、また、いろいろな方のお話を聞く機会というものを、まだまだ少し設けられればと思っています。具体的には、いじめ被害に遭った保護者の方とか、それから、最近ですと、学校の先生に直接、いじめ対策法の難しさというものをアンケートした、独自のアンケートを取ったNPOの方とか、そういった方もいらっしゃいますので、いろいろな外の御意見も聞きながら、議論を深めていくという形で皆様にお示しできればと思っております。
 【座長】  ありがとうございます。実際に被害の側に立たれた方の声、あるいは学校で直接いじめの問題に取り組んでいる先生方の意識、御意見というものも拾い上げながら協議をし、ガイドラインの見直し等につなげていきたいということだと思います。そのように今後の会議を持っていければと思っております。
 以上をもちまして、第2回の会議を閉会したいと思います。第3回の開催につきましては、追って事務局のほうから御連絡をお願いいたします。
 委員の皆様方におかれましては、本日の会議進行に御協力いただき、また、貴重な御意見を寄せていただいたことに関して、心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――

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