「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議(第7回)議事録

1.日時

令和4年5月16日(月曜日)15時00分から17時00分

2.議事録

「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する
調査研究協力者会議(第7回)
令和4年5月16日
 
 
【荒瀬座長】  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから第7回「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただき、誠にありがとうございます。委員の皆様、全員御出席でございます。
 本日の会議も、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、ウェブ会議システム、Zoomによる開催となっております。傍聴の方につきましては、YouTubeにより御視聴いただいております。
 では、本日の会議の開催方式や配付資料につきまして、事務局の松田参事官補佐から御説明をよろしくお願いします。
【松田初等中等教育局参事官(高等学校担当)付参事官補佐】  よろしくお願いいたします。まず初めに、高校学校改革推進室長だった森下が異動となりまして、4月1日付で、参事官補佐として、私、松田が就任しております。今後の会議につきましては、私から説明させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは早速、本日の会議の開催方式でございますけれども、座長から冒頭御紹介がありましたとおり、ウェブ会議システム、Zoomによる開催とさせていただいております。毎度のお願いとなり、恐縮ではございますけれども、ウェブ会議システムを活用して御議論いただく観点から、御発言に当たってはインターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言をいただく、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただく、御発言時以外はマイクをミュートにしていただく、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただく、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただく、そういった御配慮をいただけるとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 本日の配付資料でございますが、議事次第にございますように、資料1と2、また参考資料は1から4までを御用意させていただいておりまして、事前に委員の皆様にメールでお送りさせていただいております。
 また、会議の中で説明する際には資料を画面上に表示させていただきます。御不明な点等ございましたらお申しつけいただければと存じます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。資料等よろしいでしょうか。
 では続いて、松田参事官補佐から、本日の会議の進め方について加えて説明をお願いいたします。
【松田補佐】  本日は、全国私立学校審議会連合会(全審連)様からヒアリングを予定しております。
 全審連は、各都道府県の私学所管部局が認可や指導する際の諮問機関である私立学校審議会の相互の情報共有を行っている団体でございます。前回の会議には御都合がつかなかったため、資料1にある要望書を事務局から御紹介させていただきましたけれども、今回は改めて全審連様から、この要望書を基に御説明いただく予定でございます。
 こちらのヒアリングが終わりましたら、本日は資料2で検討の論点整理というものをお示ししておりまして、こちらを基に御議論いただき、また、夏にかけて議論を深めていただきたいとそのように考えております。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。今日は今御説明のあったように全審連からのヒアリングを行って、その後、残りの時間を使って、審議をさらに深める時間として議論をしていくということであります。まだもう少し会議は続くということでよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 御説明があったように、全国私立学校審議会連合会からのヒアリングを行います。
 大変御多用の中、副会長の工藤様に今日は御参加いただいております。ありがとうございます。
 それでは、御発表をお願いしたいと思いますが、20分程度で御発表いただき、その後20分程度、質疑応答の時間を設けたいと思います。
 では、工藤副会長、よろしくお願いいたします。
【工藤氏】  皆様、こんにちは。本日は、ヒアリングの機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、神奈川県にある聖光学院中学校・高等学校で理事長、校長を務めております。また、現在、全審連副会長を務めております。どうぞよろしくお願いいたします。
 簡単に、全審連の紹介をさせていただきます。各都道府県には、知事の諮問機関として、私立学校の、設置認可を行う私立学校審議会がございます。全審連は、各都道府県に設置されている私学審相互の連絡を密にすることで、私学教育の振興と健全な発展を期することを目的として、昭和25年に設立されたものであります。
 さて、その全審連から、2月21日に開催されました第6回会議に、広域通信制高等学校に関する問題点の改善を求める要望書を提出させていただきました。
 本日は、この要望書に基づき、全審連として考える広域通信制高校の問題点等について、御説明させていただきたいと思います。
 第1に、広域通信制高等学校の現状について、述べさせていただきたいと思います。
 高等学校通信制課程は、教育の機会均等の理念に基づき、勤労青年に高等学校教育を受ける機会を広く提供するものとして、昭和23年に制度化されております。そして、昭和63年には、通信制課程の修業年限が「4年」から「3年以上」へと弾力化されました。しかしながら、近年では、通信制課程で学ぶ本来の設置目的であった勤労青少年が減少し、代わって不登校や中退経験者、あるいは経済的な困難や課題を抱える生徒に学びの機会を提供するなど、多様なニーズの受皿として機能するようになってきました。ただ、残念なことに通信制高校のかなりの部分は、単に高卒資格を得るだけのために籍を置いているのが実態だろうと思われます。
 通信制課程をめぐっては、累次の法改正などを経て、その設置に際しては、例えば最低収容人数を240人以上、校舎面積は独立校で1,200平方メートル以上、教員数5人以上という極めて弾力的な運用が可能とされています。その結果、全日制・定時制課程を置く高等学校数・生徒数が減少する中にあって、私立の広域通信制課程を置く高等学校数・生徒数だけが増加するようになりました。今や2万人の生徒を抱える日本最大の高等学校が存立するまでに至っています。
 私立の広域通信制高等学校では生徒数が増加する中、一部で不適切な学校運営や教育活動が行われ、生徒や保護者が多大な不利益を被るケースも発生しています。本連合会では、過去21回にもわたり、文部科学省に対して広域通信制制度の抜本的な是正策を講じるよう要望してきました。しかし、今般のコロナ禍を契機として、新たに広域通信制高等学校を設置する動きが活発化するなど、現行の学校教育制度が本来の趣旨とは全く異なる目的で巧妙に利用され、健全性が維持できない状況に陥っているのが現状であります。
 次に、広域通信制高等学校をめぐる問題点について、具体的に述べさせていただきたいと思います。
 私立の広域通信制高等学校については、これまでも全日制課程と見まがうような形で通学コースが設置されていることや、塾と連携して大学受験対策に特化した指導が行われていることなど、学校教育本来の目的からかけ離れた教育活動の実態が指摘されてきました。
 広域制通信高等学校では、全国各地で、教育活動が実施されることが前提となっているにもかかわらず、その設置認可については、学校法人立では本校が所在する都道府県が行い、株式会社立では認定地方自治体が行うという、いびつな制度構造であることなども度々指摘されております。
 また、学校として設置認可されていないサテライト施設が教育活動の場として大半を占める中で、こうした施設に対する所轄庁の指導・監督が十分に行き届かないという制度上の致命的な欠陥が放置されています。生徒一人一人の個人差に応じた指導を行う高等学校教育とは全くかけ離れた実態も露呈しています。
 勤労青年に教育の機会を提供するという目的の下に、通信制課程に対する法令上の各種規制が緩和されていることを逆手に取り、サテライト施設や事業者と一体となって、ともすれば商業活動とも結びつき、そこに生徒を取り込み、学校教育本来の目的を逸脱した学校運営が行われているという実態もございます。
 提出資料には記載していませんが、この機会に、幾つか事例を述べさせていただきたいと思います。
 ある学校法人では、設置認可県が異なる地域、沖縄県、茨城県でありますが、そこに本校2校を設置し、既に合わせて2万人を超える生徒が在籍しているにもかかわらず、今回新たな地域に、これは具体的に群馬県でありますが、広域通信制高等学校を設置する計画が進められていると聞いております。
 この学校法人が設置する広域通信制高等学校は、「ネットの高校」という看板を掲げ、ICTを活用した効率的な学びや全人格的な教育をうたう一方で、教育活動の中心となるサテライト施設は各校共同で利用するなど、学校運営や教育活動にかかるリソースが経営的観点から単に効率化しているという状況にあります。無駄を省く効率化が全て悪いとは思いませんが、必要以上の効率化のしわ寄せは、最終的には生徒や保護者に及ぶのではないでしょうか。多くの生徒を抱えているのであれば、まずは今いる生徒に目を配り、きめ細かな指導をすることが肝要であると思います。
 こうした点を踏まえると、今回の設置計画の目的が高等学校教育の機会の提供というよりも、むしろ単に設置認可県を代えた収容定員の獲得とも受け取れるように思います。
 また、家庭教師や個別指導などで、全国的に知名度の高い株式会社では、同社が運営するサテライト施設に「高等学院」という名を冠し、ホームページ上で、高等学校等就学支援金制度の対象校であるかのようにうたい、あたかも学校教育法上の高等学校と誤解されかねない宣伝をしています。このような形での宣伝が本当にいいのかどうかも、改めて検討する必要があると思います。
 所轄庁による設置認可を経て、本校を設置し、全国各地のサテライト施設に生徒を取り込むという、これまでの構図とは異なり、既に本校を設置している広域通信制高等学校と提携することで、本校設置までの手続を経ることなく、より迅速に自らが運営するサテライト施設に生徒を取り込もうとする事例も見受けられます。
 多くの私立学校では、建学の精神に基づき、教職員が一体となって生徒への教育に心血を注いでいますが、一方で、広域通信制高等学校のように、学校として設置認可されていないサポート施設を中心とした教育活動が公然と行われていることには違和感を覚えます。本当にこれで日本の教育の一端として認めていっていいのかどうか、疑問に思うところです。
 そうした点を踏まえ、具体的な要望事項を述べさせていただきたいと思います。
 高等学校教育の目的は、本来、生徒の年齢にふさわしい学力を含めた、社会性を身につけさせることであり、各学校は、この目的を達成するために必要な教育をそろえ、施設設備を整備し、様々な努力を続けております。
 他方で、高等学校通信教育制度の目的は、「定通振興法第1条」にあるとおり、勤労青年に対して教育の機会均等を保障することであり、この目的を達成するために、最低収容人数や設備、教員の編成等の基準について弾力的な運用が可能とされ、教育課程の基準も全日制課程と比べて特例的に緩和されているのが実態です。
 制度発足当初の目的と実態が大きく乖離している現状において、このような特例措置がかえって不健全な学校運営や教育活動を常態化・助長する大きな要因になっているのは明白なことであります。このままでは「教育の質の保証」が揺るぎかねないばかりか、現行の通信制制度の仕組みが公然と単なる営利目的に利用され、将来的には公教育制度そのものが、なし崩し的に瓦解していくことさえ危惧されます。
 こうした状況を踏まえて、私たち全審連としては、これから申し上げる事項について、その早急かつ確実な実施を検討されるよう要望したいと思います。
 これまでの質保証に向けた取組の経過などを鑑みれば、もはやガイドラインの再改訂や学校評価の充実等といった小手先的な対策は、抜本的に再考すべきであると考えております。
 各所轄庁からは自らの都道府県の区域を越えて遠方に設置されているサテライト施設への調査が困難であり、行政指導が必要な箇所の発見を困難にしていることや、他の都道府県が設置認可した広域通信制高等学校が自らの都道府県の区域内に設置しているサテライト施設の実態を把握することが難しい等の現状が報告されております。これ以上、生徒や保護者が不利益を被らないようにするためには、広域通信制高等学校の問題を各都道府県任せにするのではなく、国自らがより主体的・実務的な立場に立って具体的な問題解決を図るべきではないかと考えております。
 本年4月1日から、サテライト施設の教育水準の確保などを内容とした高等学校通信教育規程等の一部改正が施行されていますが、定通振興法の目的と実態が大きく乖離している現実や、「全日型」通信制の実態などを鑑みれば、小手先の対応ではなく、実態に即した法令改正が必要だと思います。
 とりわけ、収容定員に関しては、個々の生徒の状況に応じたきめ細かな指導・支援を行うため、下限規定を撤廃し上限規定を設けること、サテライト施設に関しては、所在地の設置認可基準を参酌するだけでなく、学校の施設としてふさわしいものとなるよう、国が統一的な設置基準を策定することなど、法令等の見直し・整備が必要ではないかと考えております。実際、都道府県ごとに設置認可基準が異なるため、基準が緩やかな地域に設置されやすくなっているという傾向もあります。
 また、国と各所轄庁の緊密な連携・協力の下で、全てのサテライト施設に対して教職員配置や施設整備も含めた的確な管理監督ができるようにすることや、問題が生じた際には、国自らが直接指導・是正するための体制構築を図ることなど、実効性のある仕組みを早急に打ち立てることが必要である。このように考えております。
 加速度的に教育形態が多様化し、営利目的化する通信制課程の現状を踏まえれば、通信教育制度の質の底上げを含む根本からの対応策の早急な実施が必要であると考えます。
 特に、広域通信制高等学校が実施する安易でショートカット的な学修方法が、公教育機関の在り方として本当にふさわしいのかどうか。この観点から改めて全日制・定時制・通信制それぞれの制度の目的や意義を吟味するとともに、課題が多い株式会社立の広域通信制高等学校については、その実態と存在意義を厳正に検証し、制度の廃止も含めた検討をお願いしたいと思っております。
 以上、我が国の将来を担う子供たちのために、確実に公教育の質の保証が担保されるように、今般の省令改正による是正策を着実に実行することはもとより、高等学校通信教育制度の抜本的な見直しを切に要望します。
 ここまで、要望書の内容に基づいて発言してまいりましたが、通信制高校における定員と実員の在り方について、一言加えて申し上げたいと思います。
 既に、先生方も御承知のとおり、通信制高校においては現状、定員と実員に大きな乖離が生じています。通信制の教育方法に鑑み、定員が多少柔軟に設定、管理されていることは、ある程度やむを得ないことであるとは思いますが、大きく乖離している現状は設置認可制度そのものをないがしろにするものであり、大きな問題をはらむものと考えております。
 子供たちの教育環境をきちんと確保するためには、全国的な少子化の状況を鑑みながら、見込まれる入学生徒の動向と、その時点において学校が用意している指導体制、施設設備を踏まえた適切な定員設定と設置認可があってしかるべきである、このように考えます。
 既に設置されている学校にあっては、定員、実員の乖離の解消に取り組む必要があると思いますし、少なくとも、これから設置認可していくものについては、適切に対応していくことが必要です。
 このためにも、高等学校通信教育規程について、当該学校の定員規模に応じた教員数を求めるなど、現行よりも規定を厳格化していくことを要望したいと思います。教育は未来の若者を養成する場であります。それが本来の教育の目的を失って、営利が全面的に出ているような、そうした形での学校運営に陥っている傾向の広域通信制高校も多く見られます。そうしたものへの改善を全審連としては強く求め、日本における青少年教育の質がより一層向上するように求めるものでございます。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  工藤先生、ありがとうございました。
 ただいま、資料に基づいて御説明をいただきました内容につきまして、御質問のある委員の方、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 吾妻委員、お願いいたします。
【吾妻委員】  工藤先生、御説明ありがとうございます。東海大学付属望星高等学校の吾妻と申します。
 私立学校審議会が私学の自主性尊重のということで、いつも御尽力いただいていることにまず私ども大変感謝をしております。そのお立場において今回この法制度の整備も含めた厳格な対応が必要であるという、この今日の御発言は、それだけ通信制高校の実態に問題が大きく、強く危惧されていることと大変重く受け止めております。
 特に、先ほど先生がおっしゃっておられました現行の通信制制度の仕組みが公然と営利目的に利用され、将来的には公教育制度そのものがなし崩し的に瓦解していくことが危惧されるというようにおっしゃっておられましたが、私も全く同感でございます。
 お伺いしたい点が一つございます。要望の中で、広域通信制高等学校が実施する安易でショートカット的な学修方法が、公教育機関の在り方としてふさわしいか否かの観点から、改めて全日制・定時制・通信制それぞれの制度の目的や意義を吟味する必要があるということです。私の学校は全日制ではなかなかうまくいかずに、通信制の学修方法において何とか高校教育を継続しているような生徒が大勢おります。少ない登校回数の中で、どのように生徒が将来にとって必要な力が身につけさせて成長を促すか、日夜苦労しているというところでございます。
 一方、私は今現在、全国の私立通信制高等学校協会の会長を務めさせていただいておりまして、全国の私立の通信制高校の中には、様々な教育形態あるいは経営形態をされている学校も多くあるということを承知しておりますが、大切なことは、全日制・定時制・通信制の教育形態にかかわらず、それぞれの私立高校が独自性を持ちつつも、お互いに学校がリスペクトし合う関係性がなければいけないと考えております。
 全日制・定時制・通信制それぞれの教育形態の社会的な意義などにつきまして、工藤先生がどのようにお考えなのか、お伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【工藤氏】  本来的に時代の中で全日制・通信制・定時制、それなりの役割を果たしてきたということは事実です。
 そして、そういう中で通信制の役割というのが多少変わってきて、今、どちらかというと、受皿としては不登校であるとか中退者であるとか、そういう子供たちを受け入れるという方向になってきています。
 でも、そうした部分は、今までの真摯な地道な取組が通信制高校の皆様の中にもあったということで大いに敬意を払うものであります。特に先生の学校は、伝統を持ってそれに取り組まれてきたということも十分尊重しております。
 最近は、むしろそうしたものに加えて、進学に有利であるとかそういったことを前面に打ち出して生徒を集めている。そして、さらにはそれがエスカレートしていって、本来義務教育である中学生に対しても、不登校等ではないのに不登校であるかのようにして、広域制の学校へ通うということを勧めるという、そういった状況が生まれつつある。
 そして、その生徒たちは当然のことながら、その上にある広域制通信の高校に附属中学であるかのようになって進学していくという、そういうような組立てが行われているということに対しては本当にこれでいいんですかと。義務教育課程の中でもって教員配置も、登録している生徒に基づいて行われている。教科書等も配られているにもかかわらず違う、本来は不登校でもなければ中退でもなければという子供たちまで集め始めているということは明らかに、そうした形で、広域制通信高校が今までとは違った形で生徒の集め方をして、単にもうそれは不登校だとか中退者じゃないですね。もう積極的に広域制通信の持っている緩やかな弾力性をうまく利用して、生徒数の拡大を図っているという流れになってきている。
 やはりそういった点についてもう一度検証をしていく必要があるでしょうし、そういう点では実員と定員、それの乖離も大きく生じているということなどもきちっと検証していく必要があるのではないか、そのように私は考えています。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。吾妻先生、よろしいでしょうか。
【吾妻委員】  ありがとうございました。
【荒瀬座長】  では、続きまして、青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  どうもありがとうございます。工藤先生、本日はありがとうございました。先生のお話しくださった事柄につきましては、この会議体でも常に紹介いただいていて、問題意識を共有できたなと思いました。
 その上でお尋ねしたいのですが、本日、御提言の中に、法令の改正にまで言及をなさっていらっしゃいました。ということはやはりそこまで事態は深刻であるという御認識なんだと思います。現状、全審連あるいは各都道府県の私学審議会で、やはりお困り事があるということで、そういった御提言につながっているんだと思います。
 具体的に2点伺います。まず、基準が緩やかな県があるので、そこに狙いを定める事業体があるということがありましたが、こういうことについては、全審連としては何ももう手出しができないということであるかということが1点。
 2点目です。やはり先生のお話を改めて伺いますと、極めて深刻な状況があるなということが分かるんですが、となると私立学校法の私立学校審議会に関わった規定である第9条第2項で、私立学校審議会は、私立学校に関する重要事項について都道府県知事に建議することができるという規定がございます。
 こういった建議が、今回お話しくださった広域通信制の高等学校に関しては、建議がしようがないとか、言わば手出しができないんだということがあるということなんでしょうか。その辺り制度上の関与の仕方ですね、私立学校審議会としての関与の仕方がどのぐらい制約されているのかといったことを伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
【工藤氏】  各都道府県ごとの審議会ですから、どうしてもこの広域制通信の場合、緩やかな県に対して、いわゆる建設を求めるという部分があります。ちなみに私は神奈川県ですから、神奈川県には1校も広域制通信の学校というのはないんです。狭域制はあります。それだけ神奈川県はどちらかというと、設置認可に対しても私学審議会を含めて、割と厳格にしている。
 反面、ざっくばらんに申し上げますと緩いところというのは、広域でもって生徒をたくさん集めてくれて、スクーリングをやったりすればそのときに多くの生徒が来てくれる。それが地域振興につながると考えている傾向もあります。ですので、あえて都道府県としてはそれに対しては異議を唱えない。あえてつくってほしいですよ的なところもあるように思っています。
 それと各都道府県単位で、その中のことに関して、いわゆる私たち私学審議会は県に対して要望をすること、建議をすることはできますけれども、この問題というのは、やはり全国にという形になっていますし、最終的に各都道府県の所轄の部課が実態を正確に把握しているかというと、もう把握し得ない状況です。生徒数が本当に今何人いるのか、どんな体制になっているのか。都道府県所轄の通常の学校は県が把握できますけれども、広域制通信になっていると、どこがサテライトで、そこにどんな先生がいて職員数がいるのか。ましてや全国に広がっていますから、都道府県庁の職員は実態把握にも出かけられないという現状ですから、分かりやすく言うと、もう混沌としちゃってぐちゃぐちゃになってしまっていると。やっぱりこれって、生徒をこれだけ預かっていて、2万人もいるような高校であったらば、国としてきちっと把握せざるを得ないんじゃないか。広域制という名ですから、もう都道府県越えちゃっているんですね。
 かつて、この通信制課程の法整備をした当時には、そういった予想ができないような時代、その法令がいまだに残っているということではないかなと。実際問題、運営している広域制通信高校でも、的確な形で生徒数を把握することってできていないのかなというふうにも思います。よくあるんですが、ある学校は、この広域通信制の授業料は1学期幾らですよって出ている。そうすると1学期、7万円ぐらいなんですかね、1学期で7万円というとすごく安く感じますよね。それは1か月の値段です。広域通信制ですから出入りがいっぱいありますから、1か月を1学期と考えると。そのような形ですから絶えず出入りしているので、実際それが大きく動いていますので、把握できていない状態ということであると、もうこれは一つの都道府県が実態把握をしたりするということは、もう不可能な状態になっているのではないだろうか。
 実際問題として、万単位で生徒数を抱えているということになると、もう大学と同じような形でありますから、一都道府県では掌握するのは難しいだろうなと。それだけに教育の質の低下が大いに懸念される。
 やはりこれに対してきちっとした形でもって、国がガバナンスを利かせるということも大切ではないかなと。まさに今ガバナンスのことが議論されていますから、むしろそういった方向の中できちっとした形での把握をしていただきたい、そのように全審連としては考えています。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。青木先生、いかがでしょうか。
【青木委員】  お答えいただきまして、ありがとうございました。
【荒瀬座長】  今のお話を承って、私、非常に素朴な質問なんですけれども、今の青木先生のお話で言うと、都道府県知事に対して建議ができるということで、それについては工藤先生もそうだとおっしゃっていたわけです確かに広域通信制は非常に広い範囲に生徒募集していますので、具体的にその学校の所轄庁のある都道府県でない限りなかなか見えない面があるというのは事実かと思うんですが、所轄庁があれば所轄庁の責任で、具体的にいろいろな懸念であるとか問題点であるとかを少しでも改善していく方向で動くべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。また、ある県に言うだけではあまり意味がないんじゃないかということにはなるとしても、やはり言い続ける必要も一方ではあるんじゃないかと思うんですけれども、その辺いかがお考えでしょうか。
【工藤氏】  そういう部分に関して言えば、例えば積極的にむしろ来ても構わないよと考えている都道府県もあるんですよね。そういうところはあまり厳格に把握しないで、むしろそれによって経済効果があることを望んでいるように思える都道府県もあります。やはりそこのところが、基本的には大きな問題になっているのかなと。
 それと同時に、神奈川県などのようにある程度の職員数もいるような都道府県の場合には、とても大勢の生徒あるいは学校の実態、しかもそれが遠隔地にあるような場合に、都道府県レベルでもってその掌握をするということは、なかなか困難であると思います。
 ですから、神奈川県の職員が沖縄まで行って実態を見るとか、あるいは沖縄県の職員が東京に行きますよ、神奈川県に行きますよ、そこの中でもって、学校へ赴いてヒアリングをしますよということは、なかなか一都道府県では実際に無理だろうなと考えております。そこら辺のところが大きな課題になっているのかな、実際に大きいところになると、規模が大きい広域通信制になりますと、一つの県の中に幾つもサテライトがあるんですね。
 そうすると、そのサテライトを本当にどうなのかということが見ることができるかといったら、もう見られないですよ。単なる事務所みたいな形でもって、神奈川県なら神奈川県の中に幾つもある、都内なら都内に幾つもある。じゃあそれを地方から出てきて実態把握できるのかといったらば、まず困難ではないかなと思っております。
 その点をどうしたら一括してということになると、やはり一都道府県では困難であろうというのが全審連の考え方であり、20年も前から全審連として文科省に対してお話をしてきたということなんです。一都道府県単位の私学審議会では手に負えないということで、かなり前から文科省に対して、国に対してお願いをしてきたというのが実態であろうと。
 そして今、多少これほどまでになってきたので、このままじゃいけないんだろうなということで動いてくださっているという、それが実態ではないだろうか。ただ、この問題については、もう20年も前から全審連を通して私たちは声を上げてきたということでございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。恐らくそうして声を上げてきてくださったということも含めて、いかにこの高等学校教育として成立するような広域通信制高校の教育を具体化していくかという議論になっているんだと思うんです。
 一方で、やっぱり所轄庁に関するいろいろな課題というのも、我々のこの会議でも出ておりますし、今後また今おっしゃったことも参考にさせていただきながら、議論を深めてまいりたいと思います。
 すいません、時間をたくさん取って申し訳ないんですが、質問がもう一件出ておりますので、よろしくお願いします。大河原委員、お願いいたします。
【大河原委員】  ありがとうございます。弁護士の大河原と申します。本日は貴重なお話、どうもありがとうございました。
 私から1点だけ簡単に御質問させていただきたいんですが、先ほどのお話の中で、通信制高校の問題点として、かなり具体的な法人さんを意識したようなお話があったと思うんですけれども、その辺りについては、過去いろいろな経緯があったのかもしれませんけれども、例えば法人さんとの対話ですとか、あるいはそこを実際に見せてもらいに行って、実際にそのような問題点が本当にあるのかという確認のようなことはされたことはあるんでしょうか。
【工藤氏】  実際に私学審議会としてするとすれば、都道府県単位になるわけです。全審連としては、これは連絡調整をして意見をまとめるという場でありますから、そうした場合に、都道府県単位の私学審議会としてはそれをしていないと思います。
 ただし全審連の場で、都道府県の職員も来ていますから、その職員に対して毎回質問しています。毎回質問してその答えとしては、実態把握はなかなか難しいということです。とても全国回ることは、今の職員の規模ではできないという回答で終わってしまう。ですから、何も私たちとしては実際することができない。そういう形になっています。
 でも本当にそれでいいんですかと。日本の教育を考えた場合、青少年のために本当にそれでいいのかなと思うんです。ですので、私たちは絶えず声を上げてきているということですね。
 だから、ある部分で言うと、新しい教育の形ということでもって、もう今具体的にと言われましたので、その学校の職員を呼んで私は話を聞いたことあります。どういう形でもって教育システムされているんですかということで、私は学校の校長として、神奈川県の私学審議会の委員として言いました。やっぱり最終的には本来の広域通信制の生徒、この法律がつくられたときの方向性ではなくて、やはりより教育課程に縛られないで、優秀な生徒さんたちにリベラルアーツの教育をするということ、かつ、さらには大学入試においても有利だということが売りなんですよね。それは私は呼んで聞きましたので、私自身が聞きましたから間違いはない。
 ですから、そのためにいかに効率よくこの広域通信制のシステムを使ってやっていくか。それに対して支持する、共鳴する人も多いので、定員と実員が乖離している状態になっている。しかしながら、実態としてはそれがどうなのかというと、うまくいかなかった生徒たちもたくさんいることも事実。教職員の問題もいっぱいありますし、フォローするシステムもいっぱいいます。
 ですから、ある部分で限られた優秀な生徒、そして、施設設備維持要員として集めている生徒という形の実態もあるかなと思っています。それは大変危惧すべきことかなと思っています。
 どうしても広域ですから、その結果というものが薄められて外に出ますので、多くの人は分からないで終わっているということがあるのではないかなということを大変懸念しています。
【荒瀬座長】  大河原委員、よろしいでしょうか。
【大河原委員】  ありがとうございました。御指摘の点よく分かりました。
 あえて一つだけ申し上げますと、一度そういった法人さんに見学というか実際に見に行く機会というのをつくって、本当に問題があるのか、あるいはそれがうわさにすぎないのかというところも、ぜひ見てみていただけるとよりよいのかなと思いました。
 以上でございます。
【工藤氏】  神奈川県の私学審議会としては、神奈川県にあるサテライトだって多分行けないでしょうね。沖縄が所轄庁だったりとか、違う県ですから。そこの私学審の方たちが行くということであれば利にかなっていますけれども、そこら辺のところがこの広域通信制の問題の持つ難しさなんですよね。実態はどこを主に拠点としてやっているかというと、その本部が設置されている県じゃなくて、違う場所が主な活動拠点になっている、教育拠点になっているという、こうした現状というのが実際かなと、そんなふうに思っております。
【大河原委員】  ありがとうございました。
【荒瀬座長】  工藤先生、ありがとうございました。
 今、大河原委員からもありましたように、実際のところ我々もいろいろとヒアリングをしておりまして、そういうところで聞きながら、具体的には今おっしゃったような所轄庁と実態との乖離というんでしょうか、そこのところの問題がなくはないというのはもちろん思っております。ただ、実際のところ一人一人の生徒にとって、本当に意味のある高校生活というのはどういった形で実現できるのかというのをこれからも我々は考えてまいりたいと思いますし、先生のほうで当然やっていらっしゃるわけですけれども、この後も様々な形で御意見をお寄せいただきたいと思います。
 今日は本当に長時間にわたりまして、ありがとうございました。皆さんよろしいでしょうか。では、工藤先生、本当にありがとうございました。御退出いただいて結構です。
【工藤氏】  どうもありがとうございました。それでは、退出させていただきます。今日はありがとうございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。
 それでは、残りの時間での審議のまとめに向けた議論をしてまいりたいと思います。
 まずは資料の2につきまして、松田参事官補佐から説明をよろしくお願いいたします。
【松田補佐】  それでは、資料の2について御説明をさせていただきます。
 こちらは、これまでいただきました御意見を施策のカテゴリーごとに分けて整理させていただきまして、それぞれのカテゴリーごとに検討の論点という形で、御議論いただきたい点をお示ししているものでございます。
 まず1つ目、添削指導・面接指導の在り方というところですが、これまでの主な御意見としましては、定通振興法では、通信制課程が勤労青年を名宛人とした制度であることが分かるが、不登校等の生徒が増えている実態を踏まえて、法令上どのように表現するのかが議論になっていく。通信制高校に入学する生徒たちの若年化や多様化が進んでおり、自学自習を前提とする制度に対応できていないのではないか、こうした御意見がありました。また、対面・リアルでやるべきことは何か、ICTなどオンラインでできることは何か、どのようにツールを使いながら役割分担をして教育の質を高めていくのか、そうしたことを考えることが必要といった御意見もありました。
 ほかにも、いかに質を上げていくのかということが一番大きなポイントであり、セーフティーネットとしての機能をしっかりと生かすために、どういったリアルをやっていかなければならないのかを考えていくことが大切であるということ。
 また、オンラインで抜け落ちている部分をいかにリアルできちんと補足してあげるのかが重要であるといった御意見。
 さらには、令和の時代における通信制高校の協働的な学びはどうあるべきか。通信制の生徒を仲間と一緒にやることが嫌なんだ、協働的なものができないんだと決めつけてしまう傾向があるが、本当はそうではないといった御意見もいただいております。
 また、添削課題に取り組むのは主体的な学びであって、それを促すような面接指導であってほしい。また、面接指導では、できるだけ協働的な学びを入れていく活動をしてほしいという御意見。
 一人一人を個別最適に指導できる仕組みをどのようにつくっていくのかが大切。通信制ならではの教育システムの中で目指す効果などを検討すべきという御意見もいただいております。
 また、オンライン学習、VR学習は、安全安心な居場所からの学習機会の保障でもあって、非常に特徴的なものがあると、そういった御意見もいただいております。
 こうした御意見を踏まえまして、検討の論点として枠囲みの中で記載させていただいておりますけれども、通信制高校の教育の質の確保を前提として、柔軟な制度であることの強みを生かして、個別最適で協働的な学びを実現していくためにどうするか。
 1つ目に、生徒の自学自習に関して、高校教育としてふさわしい学習が実現できるようにするためにはどのような方策が考えられるか。例えば、1単位の学習量を確保していくためにはどのようにすべきか。
 2つ目に、添削指導・面接指導において、主体的・対話的で深い学びを促す方策として、どういったものが考えられるか。例えば、面接指導を年度途中にまとめて行う集中スクーリングという形がありますけれども、それについてはどのように考えるか。
 3つ目に、オンラインを活用した学びを効果的なものにしていくための方策、こちらについて例えばテレビ・オンデマンド配信等の多様なメディアを利用することによって、面接指導時間数を免除することができる、そういった現行制度がございますけれども、対話的・協働的な学びを進めていく上では、どのようにあるべきか。そういったことを御議論いただきたいと思っております。
 2つ目の指導体制の在り方に関してでございます。こちらはこれまでの主な御意見として、自学自習ができるという前提で生徒に指導していくと成り立たない状況になっていて、組織的な学習サポート体制が必要であるといったこと。
 また、学校教育の基本的な機能として、学習機能だけではなく社会的機能、福祉的機能、セーフティーネットとしての機能を学校は有していて、通信制高校においてもそういった機能が非常に重要であるといったこと。
 通信制において、人間性の涵養など成長を促す教育を推進するためには、全日制とほぼ同程度の教職員の配置や施設設備の整備が必要ではないかといったこと。
 さらには通信制においてもクラス担任制のように、生徒一人一人の状況をしっかりと見て、適切な対応を図ることが大切ではないかといったこと。
 同時に、外部の方と連携するような形で、生徒一人一人に合った伴走の仕方を考える必要があるといったこと。
 通信制高校に配置される教師の数や教師・専門家の種類について、法令面に手をつけざるを得ないのではないかといったこと。そうした御意見をいただいております。
 検討の論点といたしましては、通信制高校に特別の事情を有する生徒が数多く在籍している現在の実態を踏まえ、主体的・対話的で深い学びや個別最適な学びと協働的な学びを実現するための指導体制、これをどのように考えるか。例えば教員や専門支援スタッフに係る現行の規定等をどのように考えるかということを挙げさせていただいております。この現行の規定に関しては、参考資料4の8ページ目、23ページ目にもございますので、適宜、御参照いただければと思います。
 3、質保証の方策について御説明させていただきます。
 これまでの主な御意見といたしましては、通信制高校の質、これをどのように定義するのか、共通理解を持つことが大事であるということ。
 生徒の学びがそれぞれの学校できちんと実現しているのか、高校側が自分たちで教育内容を公開したり、しっかりと改善したりしていくことが必要ということ。
 また、学校評価システムをきちんと活用して、実施校、設置者自体が主体的な改善活動を回していくことが必要で、その際に複数の評価を組み合わせていくことが必要ということ。
 第三者による質保証が全ての高校が受けることになっておらず、何らかの法制度が必要ではないか、また、評価機関や評価人材の育成を図ることも大事ではないかということ。こうした御意見をいただいてございます。
 こちらの検討の論点といたしましては、全日制・定時制の学校以上にPDCAサイクルを確立し、教育活動の主体的な改善を図っていくことが必要であるけれども、そのための方策としては、どのようなものが考えられるか。例えば、自己点検・評価や学校関係者評価・第三者評価、こうしたものを促進して、通信制高校における教育活動の改善を促していくためにはどのような方策が必要か。こうした形で検討の論点を挙げさせていただいております。
 4つ目に、通信教育連携協力施設、いわゆるサテライト施設の在り方についてでございます。
 これまでの意見としましては、サテライト施設の教育環境について、どのような教育に取り組むためにこのサテライト施設では十分なのか不十分なのか、検討すべき。例えば面接指導等実施施設は実施校と同程度の質を確保すべきではないかといったこと。
 また、サポート校・サポート施設、これらの質をどのようにコントロールしていくのかが大事といったこと。こうした御意見をいただいておりまして、検討の論点としては、面接指導等実施施設、学習等支援施設それぞれについて、その性質を踏まえた教育の質、教育環境を確保するために、これまで以上にどのような方策が求められるか。
 昨年3月にこちらは制度改正させていただいておりまして、通信教育連携協力施設の基準ですとか、情報公開等を定めさせていただきましたけれども、それ以上に取り組ませていただくべき内容等の御意見をお寄せいただきたいと考えております。
 5、所轄庁の在り方に関してでございます。
 これまでの主な御意見として、広域通信制に関しまして、疑似的にサテライト施設が所在する都道府県に事務を委託できるようにするためにはどのようにすべきか。
 また、自治体における私学担当部局の人員不足をどう考えるか。文科省の事業として民間の調査員等を委託してリソースを補うということもあり得るのではないか。
 都道府県が把握しておくべき情報を国主導で整理するべきではないか。
 チェック項目・基準の共通化は避けて通れないのではないか。
 各所轄庁が所管の通信制高校に対して実施している調査の法的根拠の在り方を検討していくべき。
 こうしたことを主な御意見としていただいておりまして、検討の論点といたしましては、通信制高校の設置認可や日常的な指導監督の在り方として、今後どのような改善を進めていくことが必要か。
 例えば、所轄庁の指導力の向上として、どのような方策を行うべきか。また、実施校・サテライト施設それぞれの所在する都道府県間の連携協力体制、こちらをどのように構築していくか。また、国はどのような役割を果たしていくべきか、そのためにどのような方策が必要か。こうしたことを挙げさせていただいております。
 最後に、その他について、これまでの主な御意見でございますけれども、広域通信制のみならず、狭域・公立についてもしっかりとした検討が必要。
 通信制だけでなく高校教育全体の共通性をどのように考えていくか。
 通信制だけではなく高校全体で高卒というものをどのように担保していくのか。
 全日制・定時制・通信制の区分を緩やかに融合していくこと、例えば通信制の機能を全日制の生徒も活用できるようにするとか、通信制に通っているけれども、全日制の授業のような形でフォローできるようにしていくとか、そうしたチャレンジが必要ではないかといった御意見。
 さらには、国の経費で実証的な研究を行って、その通信制高校における特色ある学びを意図的につくっていく制度があってもよいのではないかといった御意見いただいておりまして、検討の論点といたしましては、これまでに挙げた論点のほかに、さらにこういった取組が必要という御意見をお寄せいただきたいと、そのように考えております。
 駆け足でございますけれども、以上でございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。これまでの意見をまとめてくださって、それに基づいて論点も5つプラスその他ということで、これ以外にどんなことが大事かということでありますけれども、時間がもう50分ほどになりましたので、区切らないで、委員の皆様の御関心のおありのところを御発言いただく、ないしは御質問いただくということでお願いをしたいと思います。では、また手を挙げていただけますでしょうか。
 原口委員、お願いいたします。
【原口委員】  横浜修悠館、原口でございます。
 1番の面接指導・添削指導の在り方について、今までも申し上げてきたことですけれども、検討の論点のところで、①番、例えば1単位の学習量を確保するにはどのようにすべきか。もちろんこれは全日制・定時制200日の登校日数に比べると通信制は圧倒的に少ない登校回数で、学習指導要領の教育課程の特例を生かしながらやっていきますので、レポートの工夫改善、スクーリングの工夫改善しかないと思っております。
 そのためには一問一答ではない、調べ学習をした上での探究的な活動を取り入れていく、そういう方向性しかもうないのかと思っております。3観点になりました思考・判断・表現の観点のところでの問いの工夫や、生徒が自分の考えを理由を添えて書くことができる工夫。また、発言が苦手な生徒にとっては、対面のスクーリングであっても1人1台端末で自分の考えを入力して、他の生徒と考えを共有し、即座に自分の考えを更新していくような、そんなスクーリングの在り方をぜひ全国で好事例を共有して構築していく、それしかないと考えております。1番も3番も同様です。
 2番の集中スクーリングについては、どのように考えるかということですけれども、ガイドラインの中には、1日13時間の集中スクーリングは生徒の健康面を考えてもあり得ないと、8時間にすべきであるということが書かれておりますし、平日型の登校ではない通信制高校では、年間に18回から24回のスクーリングで抑えているところがほとんどでございます。
 ですので、1年間の長いスパンでスクーリングを実施するのと、1週間、2週間の集中スクーリングで生徒の成長、変容ができるかどうかというところが検討すべきところだと考えております。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 時乗委員、お願いいたします。
【時乗委員】  山手学院の時乗です。よろしくお願いいたします。
 我々はガイドラインというものを作成して、それで通信制教育のあるべき形、目指すべき形はこういうものですよという形でお示しをしています。
 それに基づいて我々が点検調査等を行うですが、やっぱりそこで一番強く感じるのは、今回の論点の整理でまとめていただいた4番目のサテライト校の部分と、5番目の所轄庁のそれに対する関わり、この辺りがうまく動いていないから、せっかく我々がつくって示したガイドラインというのが十分徹底していないのだろうと思います。
 だから、当面は我々が既につくって示しているガイドラインをいかに各学校に浸透させて、その下で、教育活動の改善を図っていくという意識を持たせるかどうかがすごく大きいと思います。
 そのためには、前提として所轄庁がやっぱり自分が所轄しているところの教育活動に対して、一定程度の指導監督ができるような体制あるいは所轄庁の職員のマインドもあるとは思いますけども、そういった所轄庁間の連携もそうですけども、基本的には所轄庁が責任を持って、自分が認可している学校の教育活動を担保していくんだと。そのためにガイドラインをどのように使っていくのかというところをきちんと分かってもらうということが必要だし、そういった取組というのは、ある意味じゃ本当に地道な活動になるかも分かりませんけども、やっていく必要があると思っています。
 本当にそれでもなかなか難しいと。先ほど、都道府県によっては自分のところの経済活動の活性化のために、そういったところをちょっと度外視しているというところもあるのではないかという工藤先生のお話でしたので、本当にそういうのが是正できないような状況にあるんだったら、場合によったら、もう少し大きな枠組みの中で法改正等をしていく必要があると思いますけども、まずはガイドラインの徹底について地道に働きかけていく取組を行う必要があると思っています。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 これは今までもいろいろな形で御意見を頂戴してきまして、この会議のこのメンバーでは今7回目ですかね。ただ、これまで過去2回、こういった組織でもっていろいろと考えて、今もお話があったガイドラインもつくり、かつ、またそのガイドラインの修正もしてきたわけでありますので、御意見というのは相当出尽くしたと言うとちょっと言い方が正しくないかもしれませんが、相当出ているというのも事実ですね。
 だから、今後具体的にこれをまとめていくということで考えていく、どんな文章にしていくのかといったこともまた考えていくということになろうかと思います。
光富委員、お願いいたします。
【光富委員】  太平洋学園高等学校の光富です。よろしくお願いします。
 本校は、私立の狭域の通信制の高校ですが、この会に参加をさせていただくようになって、何かその広域の通信制と、そして狭域は公立みたいな分け方のような、すごくそのように感じています。確かに広域の通信制で、公立の学校というのはちょっと調べた限りでも1校ぐらいしかないのかなと思ったんですけど、今日の工藤先生のお話にしても、自分が今まで感じているところでも、やはりその生徒数に対する教員の数ですよね、広域の場合。やっぱり添削指導なんかを丁寧にしていこうとすれば、どうしても生徒数が多ければ教員の数がたくさんいると思うんです。
 そして、この前、それこそ出張で各県に回っておられるという話もありましたけれども、先生方の負担、そういう出張とか、そして自校でのスクーリングであるとか、そういうのを先生方の負担を考えてやっていく上でも、やっぱり生徒数に対する先生方の数というのは、最低限これだけというもので考えたときに、今のその5名以上とかというのは本当に適しているのかなとかということを思ったり、そして、高知県内でも広域の学校が入ってきたときに、どういう学校が入っているのかということについて、知事部局の方がやはり知らないことがあるんですよ。
 どこかの私塾みたいなところがサポートしていたりとか、文科省から一覧が出たときに、すごいたくさん高知県に入っているというのは私も知って、知事部局の担当の方と話しても、「ええっ、そうなの」みたいなことになって、やはりその広域の通信が他の都道府県に入ったときに、もともとの認可を出したところじゃないところでは、そこをつかみ切れていないと。なので、やはりどこかへサテライトとかつくるときに、ちゃんとその都道府県にも届けを出してとかいう制度的なところというのもやっぱり見直していかないといけないだろうと思いますし、私がやっぱり一番今回この出されている資料の2のところで、「6、その他」のところで、5ページ目の最後、全日制・定時制・通信制の区分を緩やかというか、本校の場合、定時制と通信制があります。
 定時制の生徒さんの場合は、体育を受ける場合、週何回という形なんですけど、やっぱりそのいろんな体の具合で毎日学校には来れるんだけど、体育に毎日出るのは難しかったりとかという場合には通信でとか、あるいは通信に来ているんだけど、この勉強はすごく一生懸命したいと。でもいろんな理由があって、定時、毎日は難しいという生徒さんは、定時制の授業も受けられるとか、毎日通信で受けられるようになってから定時へ移すとかといった、定通関係なしに柔軟に対応できるようにして、卒業後の支援に、結局その通信制で卒業して、そのまま引き籠もってしまう子もいるんです。勉強できるから、レポートはしっかり出せて、スクーリング最低限来れてみたいなところはあるんですけど、人との関わりがなかなか苦手で、卒業した後、引き籠もってしまうと。
 だから、そういうことがないようにするためには、やっぱり学校の勉強以外の社会性を通信の生徒さんにもつけていきたいというところがあって、そういう全日とか定時とか通信とかというところをもうちょっと何か連携して、各学校のいいところをうまく単位認定できる、学校間連携できるような方法なんかも考えていけたらすごくいいなと感じています。
 ですが、取りあえず感じたことは、広域通信制の学校さんが、各都道府県にサテライト校等を出すときに、その都道府県のほうにちゃんとそういうものを届出をして、各都道府県もその実態をちゃんと把握できる仕組み、そして、やっぱり生徒数に対してきめ細かい支援をするためには、先生の数を本当にこれでいいのだろうかということをもう少し考えてみたらどうかなと感じました。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。制度上の問題と具体の指導ないしは生徒からすると学習の問題と、いろいろと混ざってしまうとややこしくなりますので、分けて考える必要があるのかなということを思いながら承りました。
 指導はいろいろ工夫を、先生のところみたいに本当に通信制と定時制との間で行き来もしながら、子供たちの学びを主体にやっていっていらっしゃるというところもあるわけですけれども、そういう工夫はとても大事な一方で、ただ、制度としてどういう制度が広域通信制のところに必要なのかといったことも、もう少しやっぱり踏み込んでいかなければならないのかなというのを今日のお話を聞いていると思う次第です。
 ただ、我々はそれを具体につくるものではないので、国として考えていただくということがいよいよ重要になってきているのかなというのも思いました。ほかにいかがでしょうか。
森田委員、お願いいたします。
【森田委員】  早稲田大学、森田です。よろしくお願いいたします。私のほうから2点ほどお話しさせていただきたいと思います。
 1点目は、先ほどの工藤様のお話にあったことです。工藤様の話は、通信制のことをクローズアップした発言だったかなと感じております。実際のところは、全日制を含めた高校全体の問題が、こうした形で浮き上がってきているのではないかと感じております。
 例えば、不登校の生徒さんたちの増加は、もしかしたら全日制のほうにもいろいろ課題があるかもしれません。我々は、そこは議論しないわけですけれども、通信制高校のほうでも、きちんと先ほど出てきた中での質保証、つまりこの中でいけば3番の質保証と5番の所轄庁の在り方については、やはりきちんと制度を整えていかなければいけないと考えています。これについてはちょうど昨年の末に、こういった事業に関する御報告が文科省に出されましたので、おそらく事業が進んでいけば、成果報告がなされるものと期待はしております。これについてもう少し時間をかけて見ていただく必要があるのかなと思いました。それが1点目です。
 2点目は、光富先生からご発言があった、全日制、定時制、通信制の3つの緩やかな融合に関することです。全日制でも通信のようにオンラインを使った学びというものは実は導入されています。例えば、京都大学などが中心で実践しているような「個別最適な学び」については、実は意外と全日の高校で受け入れられています。もちろん生徒さんたちは学校に通学するのが日常ですが、自宅では自学自習をするという部分でオンライン授業の活用が非常に増えてきている。個別最適な学びが実現されはじめているということです。それに加えて協働的な学びを模索しているという状況だと思います。
 通信制高校は、もともと個別最適な学びが中心だったわけですので、それに対して協働的な学びをどのように実現するかというところを含めて、どんなふうに融合していくのかが課題になります。ちょうどお互いにいいところがあって、今それをうまく取り入れられるチャンスが来ているような気はしています。
 こういった取組を実証的な研究として進めていく、という最後の論点のところが非常に私は重要だと思っております。この実証的な取組というのは実際にどのように行うのか、そしてどのようにデータを取るのか、どのぐらいの期間で行うのか、どのぐらいの範囲で行うのか、これを具体的に取組の施策を決めて、この委員会でそういったものを示していけるのであれば、ひとつのモデルになるのではないかと思った次第です。
 その際に重要なのはやはり教員の数もさることながら、質が重要なのではないかと思っています。神奈川県がやっているように、必ず新任の教員が通信制高校に勤務するというモデルは、私は大変すばらしいと思っています。
 そういった形で教員が通信制高校に対する理解を深めていくということ、そしてそのよさをまた全日制に戻って活用するというサイクルがうまくできるようになれば、先ほどの話の最初に戻りますけれども、全日制と通信制がそれぞれ、定時制も含めてですけれども、日本全体の高校が抱える問題に何かしらソリューションを与えるものになるかなと感じた次第です。
 コメントになってしまいますけれども、私からは以上となります。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。今のお話もそうですけれども、我々は全日制・定時制・通信制と呼んで、制というのはまさに制度がそういう形のものをつくっているということなんですけれども、この制度自体がどうなのかというお話が今の2つ目のお話に関わっているのかなということを思いながら聞いておりました。
 高等学校って何なんでしょうかとか、高等学校は毎日行かないといけないものなんでしょうかといった素朴な思いを持っている子供たちも実際いるわけで、それは子供たちのみならず親もそうだし、場合によったら、社会の中にもそういった思いを持っていらっしゃる方もいらっしゃるんでしょうけれども、我々は制度の中で生きているので、その制度があるにもかかわらずそれをちゃんと守らないとか、あるいはその制度自体が不備であるからなかなかよいものにならないといったこと、それを何とかしようとするわけですけれども、制度の枠組み自体も改めて見ながら考えていく必要があるなということを思いました。ありがとうございました。
 いかがでしょうか、ほかには。これはさっきの話の続きですけど、いよいよまとめに持っていくということで、今後もう少し中身を掘り下げて議論をしていくことになろうかと思います。
 それでは、この論点のまとめというのをしていただいているわけで、1から6まであるわけですけれども、この論点、ほかにもっとこういったものも入れてはどうかといったようなことも含めてありましたら、お願いしたいと思います。
 その前に手が挙がりました。時乗委員、青木委員の順にお願いいたします。
【時乗委員】  ありがとうございます。山手学院の時乗です。
 先ほど人の問題というのが出ていましたけども、基本的にこの論点の整理の中にも書いてありますけども、これからの先の時代というのは教員に全てをさせるという時代では完全になくなってきていると思います。
 だから、当然教員は教員でやる仕事はありますし、もう少し専門性の高い、例えばスクールキャリアカウンセラーとか、いろんな専門性を持っている人たちがいらっしゃいますので、そういった専門性の高い人たちが色々な課題を抱えている生徒が在籍している広域通信制などに入りやすい環境を、当然お金の面というのが大きな問題になってくると思いますが、ぜひ作ってほしいと思います。
 そうすることによって、先生方も、ある程度負担が軽くなって、本来教科を教えるというところに力を集中できる環境をつくれると思っています。そういった意味で、ただ単に人を増やすというときには教員も増やすという、教員に対して一定数以上の制限を加えるとかという形だけではなく、多くの専門性を持っている方たちが入りやすい制度をつくっていく。そういったこともぜひ考えていただきたいと思います。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  青木です。ありがとうございます。
 今、時乗先生がお話しになった点をまず少し関連させて発言します。その後、もともと話をしたいと思っていたことに続けます。
 広域通信制の私立高校については、批判的な議論がこの会議体でもあるわけですけれども、他方で、ある種の成功事例というのもヒアリングでいただいたわけです。そういったことを敷衍しますと、今、時乗先生がおっしゃったことを私の専門に引きつけて言うと、働き方改革なんだと思います。学校、教員の働き方改革にもしかしたら参考になる情報があるのではないかと思っています。
 具体的には、教職員の間の分業がしっかりしている可能性が高いですし、校務運営システムを、統合型の校務運営システム等を使った業務の効率化ということも図られているはずです。そういったことは、これからの公教育全体を考えていく際にも、非常に重要な知見が得られるのではないかなと考えています。ということは、全日制の一般的な高校モデルとした上限、生徒数の上限という議論ではなくて、やはり効率化を図れる通信制高校ならではの人数の議論というものが必要かなと思います。
 次のポイントに移りたいと思います。今回おまとめいただいた検討の論点、5枚目の5に関わることです。所轄庁の在り方についてです。これはこの間、私、言ってきたこととかなり重なるのですが、今日のヒアリングを踏まえて改めて感じたことを補足しながら申し上げます。
 先ほど工藤様がおっしゃったことを私なりに理解すると、所轄庁としてとにかく実態把握ができないので、私学審に対する情報提供もできないんだということに尽きると思います。それは私の理解では法令上のたてつけが悪いということではなくて、やはり情報収集ができにくい状態をどうするかという議論に置き換えたほうがいいのではないかなと思います。
 さらに言うと、例えば厚生労働省所管の社会福祉法とか見ると、社会福祉法人で超広域な法人は、厚生労働大臣が所轄庁になるということはありますが、あれはあれでその経緯があるわけなので、教育行政でそれを参照するというのはなかなか難しいと思います。
 これは日永先生のほうがお詳しいですが、戦後の国立大学をどこに置くかという議論でも、やはり都道府県にそれぞれ1県1大学なんていう議論があったぐらいですから、県という単位が非常に重要になっていたし、文部大臣、文部科学大臣というのはかなり抑制的にそういった学校に対しては関わりを持つという制度設計がある、そういう行政領域だということができます。
 まして、地方分権の時代ですので、今から文部科学大臣を所轄庁にするという議論は、やはりこの会議体としては荷が重いというよりは、選択肢から外しておいたほうがいいと私は考えます。
 その上でなんですが、先ほど申し上げた実態把握が所轄庁である都道府県知事、都道府県でできないということであれば、これはこれまでの話と重なりますが、所轄庁がそのサテライトを置いている別の都道府県に対して、しっかりと業務委託なりしてでも、しっかりとした情報収集を行うということを何らかの形でガイドラインなりどこかに書き込めればいいのではないかなと思います。
 その際、これまでは所轄庁という公務員ですよね、公務員が直接そういう情報収集をするという前提だったと思うんですけれども、そうではなくて、外注してもいいんじゃないかなと思います。とにかくお金で解決できれば。ただし、人をどこから探すという何らかの基準は必要だと思います。
 そういうことをやって、所轄庁の責任を、サテライトを含めた学校法人の指導監督ができる情報収集を所轄庁の責任として書き込めることができないかと。質保証のモチベーションを所轄庁に付与することをどうすればいいかということを、今後の何回かの会議で御議論いただきたいなと思っております。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。大変具体的なお話をいただきました。
 これ、青木先生、お尋ねをしたいんですけども、外注もお金でできることはお金でやるということですが、人が十分いないということは、すなわちお金の問題がもう既に生じているように思うんですけれども、この辺りについてはどんな見通しと言うんでしょうか、お考えをお持ちか、改めてお聞かせいただけるとありがたいなと思うんですが。
【青木委員】  まずお金というよりは、所轄庁にそういう責任があるんだということをはめ込めば、どこからか捻出するだろうと思いますが、一方で、お金をどこからか文科省の責任で確保するということであれば、地方交付税の地財措置で何とかするか、もしくは文科省の事業として、最初はテストケースで事業として展開をするということぐらいしか思いつきませんが、もっとほかにもやり方はあるかもしれません。差し当たり思いつくのはそのようなことです。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 篠原委員、お願いいたします。
【篠原委員】  NHK学園、篠原でございます。御指名、ありがとうございました。
 幾つか感想めいた話になってしまうかもしれないのですが、所轄庁が、サテライトを含めて広域の実態を把握すべきであるということについては、多分、皆様、御異論がないと思います。それが今状態として十分ではないと先ほどの工藤先生もおっしゃっていたということだと思うのですが、今回のガイドラインで情報の開示ということで協力校、私どものNHK学園では協力校レベルで、例えば定員であるとか施設のことであるとか、かなり詳細に情報公開をすべしということが規定されていまして、まず、その所轄庁が具体的にその調査をする前段としてそれがきちんと定着していくと、所轄庁も御自分たちの県内にある学校の情報というのが、もうホームページで開示されるはずであるということに、仕組みとしてなったのだと思うんですね。
 このことは、私どもの学校だけでも実は三十幾つも施設がございますので、やり切るのにはとても大変なのですが、それをまずしっかりとやっていただくということも、初めの一歩としては大事なのかなと思います。
 ぜひこの会議で私が希望したいというか、そうなるといいなと思っていますのは、本当に具体的な提言、先ほど、森田先生が例えば実証的な取組についての一つの例が示せるような、とおっしゃいましたけれども、やはり一つ一つの提言について、こうあるべきだということがもうこれまでの議論である程度出ているとすれば、それがまだできていないことについてどうやってできるのかという、例えばということになるかもしれませんけれども、例示ができるような取りまとめができると大変これからの議論に弾みがつくのではないかなと思いました。
 その意味で、やはりとても大事にしたいのは、先ほど座長もおっしゃっていましたけれども、やはり全日制、高校そのものの在り方ですとか全定通の在り方の未来形をどういうふうに描けるかということを、仮説であってもこういう方向に進めることができるのではないかという、そんな提言ができると大変建設的といいましょうか、これからの高校の在り方を考えるときにその全定通との融合であるとか、個別最適とかいろいろな観点がもう出ているわけですので、それを今後の学校教育の中にどういうふうにはめ込んでいくかということを取りまとめられるといいなと、ちょっと自分の力では身に余るのですが、そんなことを希望としては考えました。
地道に、時乗先生がおっしゃったようにガイドラインに従うように取り組むということと、それがもしまだ今現状で見えないのであれば、それを具体化するということ、未来形を描くということ、そんなことが今回の取りまとめで実現できるといいと思っております。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。具体の形というのは多分これまではそのガイドラインという形で、姿を明らかにしてきたんだと思うんですけれども、一方で、それをしっかりと定着させる、さらには必要な手だてをもっと考えるということと、最後におっしゃった未来形ということはとても大事だと私も思います。
 これから具体的に高等学校がどうあるのかというのをしっかりと考える必要があると思いますので、その辺のこともまた次回も含めてお話を承れればと思います。ありがとうございました。
 では、日永委員、お願いいたします。
【日永座長代理】  ありがとうございます。山梨大学の日永でございます。
 国を所轄庁にするというのは難しいという青木委員のご意見ももっともなところだと思います。その方向で意見を集約するということであれば所轄庁をいかに国が支援すべきかという点はぜひ今回打ち出していくべきだろうということを思いました。
 これは前回もお話ししましたけれども、同じチェック項目を設けて、それを所轄庁単位、あるいは高校単位で確認できるようにする。その際、今の篠原委員の御発言にもありましたが、公開された情報をそれぞれの高校のサイトに行って確認するとか、それぞれの都道府県所轄庁のサイトに行って確認するなんていうことをしなくてもいいようなポータル化のようななことは、ぜひ実現する方向で考えていけるといいと強く思いますし、そういう事業こそ、国がやるべきことではないかという感じがしました。
 それと今日最初に原口委員からもお話あったように、改めてレポート添削とスクーリングというような簡単な示し方ではなく、具体の学習というのがどういうプロセスで進んでいくのかを明示できればと思います。
 例えば主体的・対話的で深い学びであれば、レポートの在り方についても一時期、大学センター試験の見直しのときにあったように記述型というのはやっぱり原則とすべきであろうとか、あるいは実際集まってくるスクーリングの際も、必ず事前の学習あるいは事後の学習をともなって取り組むなどと、今の学習指導要領の下でも当然求められているような学習をいかに保証していくのかの、何か一つのモデルみたいなものを示していけるといいのではないかなと思いました。いずれにせよ、本当に感想めいたことしか言えないんですが、少なくともまずは国の役割を明確化すること、それから、実際の学習量をどうやって保証するかという学習プロセスをもうちょっと具体的に考えられないかなという、その2点を考えてみたいということを思いました。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。まとめていただいたような御発言であったと承りました。ありがとうございました。
 これまでの議論をしっかりともう一度確認をしてきているわけですけれども、その上に何をこれからやっぱり展望していくのか。さっき篠原委員がおっしゃった未来形も含めて、少しまた考えたいと思います。また、次回よろしくお願いいたします。
 では、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。私も感想めいた意見になってしまって恐縮です。簡単に3点ほどです。
 やはり今日のお話を伺っていて1点目は、生徒数に応じた教職員の必要性というのは質も大事なんですけども、やはり数というかそこも大事かなと。言われるみたいに教員だけではなくスタッフ含めた職員、多様な職員の、やっぱり多様な生徒たちが多様な形で来ているということを考えれば、質保証というところでは、教職員なりスタッフの配置というところの改善は必要じゃないかというのが1点目です。
 2点目のところでいくと、所轄庁の役割の改善、支援というところに加えて、やはり各学校での自己チェックというか、そういったところをより充実させていくような施策というのがやはり大事になってくるのかなと思います。特に今日伺っていてやはり広域通信制に関しては、社会的に様々な目が向けられているということも考えるに当たって、例えばですけれども、広域通信制の場合、第三者評価のような形でぜひ第三者も含めて評価し、情報を公開、共有していくという形で、やはり情報が見える化されていくと、信頼性だとか、今回のような様々な嫌疑をかけられることなく、健全な形でというところではそういった第三者的な視点を含めた評価を促進していくとか、そういった自主的な動きを促していくようなことも今後大切なのではないかというのが2点目です。
 最後3点目、いろんな委員の皆さんからありました未来形というところは私も本当に大切だと思っています。全日制・通信制・定時制の課程間連携、もしくは課程間の協働というところ、これもいきなり制度を全部ということにはすぐにはならないと思いますので、青木委員も言われたみたいに、私もやはり実証的にやりながら進めていくというところで、そういった今後に向けた実証だとか改善というか、試行錯誤、探究というところをぜひ前向きに今回打ち出していけると、広域通信制は何か悪いものだという話だけではなく、ここにはいろんな可能性も含めて今回進めているという意味においても、ここはぜひ具体的に検討が今後できるといいなと思います。
 以上3点です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。第三者評価と考えるとき、高等学校全部を本当はやらなければ駄目だと私は思っているんですけども、通信制だけではなくて、本当に日本の高等学校の第三者評価みたいなことをどうしたらいいのかなと。少なくとも各校が自分できちんと出すというのは本当に大事なことですよね、ごまかさずに出すという、いいところも悪いところも、それは本当に大事だと思いますので、また、これも次回よろしくお願いいたします。
 では、原口委員、お願いいたします。
【原口委員】  すみません、1件だけお願いいたします。
 平成30年の3月だったと思うんですけれども、チェック項目、基準が共通化された自己点検のための評価シートが既に通信制に対して出ています。
 それは今はほとんど共有されていないと思うので、この委員間だけでも結構ですので、もう一度、文科省のほうから平成30年の3月に出されたものをたたき台にして、新しいものを作成していきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
 以上です。
【荒瀬座長】  これについては、田中参事官、お願いします。
【田中初等中等教育局参事官(高等学校担当)付参事官】  参事官の田中でございます。
 今、御指摘いただきましたように、チェックリストというものをつくったことがありまして、この会議の前身の会議でいろいろ御指摘いただいたことを踏まえて、ガイドライン等も変えたので、それを含めて変えていく必要があると思っております。
 今日もいろいろと委員の皆様から御指摘あることについては、実は結構、前回の会議の中で提言されて、ガイドラインに既に盛り込んであることとか、盛り込まれているけど、まだできていないこととか、あるいは、忘れられがちになってしまったことということもあります。いろいろたくさんのことが動いていますので、まずは今御指摘いただきましたので、現行のチェックリストを確認させていただいて、委員の皆様にはメール等で共有させていただきたいと思います。
 それからその上で、前回の省令やガイドライン等の改正を踏まえた改訂だったり、またチェック項目が必要だというご指摘がありましたので、その改訂というのを、委員の皆様の御指摘を受けながら考えていきたいと思いますし、また、それをつくっておしまいではなくて、ちゃんと現場で使われていくようにする必要があると考えております。それには2つありまして、一つは、学校が自ら自己点検していくということ、それから、所轄庁が行う点検の際にその指針にするということ、それをある程度もちろん各県によって差はあるのですけれども、共通的なものとして使っていける、そういったものが必要なのかなと、これまでの先生方の御議論を聞いていて思いますので、いずれにしましても、まずは現状のものを共有させていただいて、その上で、この会議でどう提言いただくのか、どう改善していくのか、どう使われるようにしていくかというのを御議論いただきながら、考えてまいりたいと思っております。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。原口先生、ありがとうございました。御指摘いただいて、どんどん重ねてくると前のものをうっかり忘れてしまったりとかしますので、大事なことはきちんと思い出しながら前に進んでいかなければならないと思います。ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 吾妻委員、お願いします。
【吾妻委員】  すみません、よろしくお願いします。
 様々な議論いただいて私もすごく勉強になりました。例えば働き方改革ですとか、よりよい質の高い教育について、どういうふうに議論していくのかという観点と、それから、今回の工藤先生のからありましたけど、通信制のいろいろな制度を利用して、いわゆる営利目的で行う学校が出てくると、それに対してどういうような対応をするのかということと、二極化したテーマがあるんじゃないかなと思っております。
 比較的教育制度とか、いわゆる法令に関わる部分についての議論というのはあまりできずにこれまでもいた部分かなというところも思っておりますし、逆にこれからの未来の教育を考えていくというのは、なかなか時間がそこまで取るのは大変難しいというところも感じております。
 これからの教育の在り方については、例えば国立教育政策研究所も、通信制に特化したテーマで研究していただいて、事例を出していただくとか、全通研もいろいろ研究会をやっておりますが、そういったようなところにも、継続してやっていただくとか、そういったことも必要かなと感じた次第でございます。
 最後に申し訳ございません。以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。大事なお話だと思います。ありがとうございました。
 それでは、時間が迫ってまいりましたので、今日はこの辺りにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。いろいろと今日もまたたくさん御意見をいただきまして、考えるところが多かった会議になりました。
 私は一つ非常に印象に残りましたのが、青木先生がおっしゃった働き方改革の参考になるような事例もあるんじゃないかということで、全日制の一般的な物差しだけで、教員の数とかを上限とするとかいったことも果たして本当にいいのだろうか、生徒数についてもどう考えたらいいのだろうかという、私にとっては本当に新しい視点で、そういったことを考えることのできる、もちろん問題点は改善されなければならないんですけれども、そういう通信制高校の在り方というものを私たちは見ているんだということを思いました。
 これも以前申し上げたことがありますけれども、高等学校の問題といいますか、課題をどう克服するかというときに必ず2つの言葉が使われました。共通性の確保と多様性の尊重ということでありました。ただ、その共通性の確保というものが、今一体何をもって共通性と考え、それを確保しなければならないのかというところに来ているということかと思います。
 その意味では、複数の方がおっしゃった未来形というのですか、どう考えていくのかというのを単にこうなったらいいなというだけではなくて、こういう実態からして、こういったものが必要ではないかといった本当に具体的、実証的なものを考えていく必要もあるのだろうなと。その意味では、多様性ということで何であってもいいというんじゃなくて、どういった範囲を我が国の高等学校教育だと考えるのかといったことも、また、これはここだけで議論することにはならないと思いますけれども、考えていく必要があるし、そのための通信制高校の在り方についての考えというのを我々としてはまとめて出していかなければならないなということは改めて思いました。
 次回、事務局からありましたように、審議のまとめに向けて今日出していただいた論点を軸に、また議論を重ねてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、最後に、次回の開催予定につきまして、松田参事官補佐、お願いいたします。
【松田補佐】  本日は御議論、誠にありがとうございました。
 次回第8回の会議は、6月24日金曜日の15時から17時までの開催を予定しております。詳細はまた改めて御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】  1か月余り先になりますが、また、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)