「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議(第3回)議事録

1.日時

令和3年11月29日(月曜日)16時00分から18時00分

2.議事録

【荒瀬座長】  皆さん、こんにちは。荒瀬でございます。定刻となりましたので、ただいまから第3回「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
 この本日の会議も、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、ウェブ会議システム「Zoom」による開催とさせていただいております。また、傍聴者の皆さんにつきましては、ユーチューブにより御視聴いただいております。
 それでは、本日の会議開催方式、配付資料等につきまして、事務局、酒井参事官補佐から御説明をお願いいたします。
【酒井初等中等教育局参事官(高等学校担当)付参事官補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 本日の御出席・御欠席の委員でございますが、村松委員より御欠席の旨、お伺いをしております。
 本日の会議の開催方式でございますが、座長から冒頭御紹介がありましたとおり、本日はウェブ会議システム「Zoom」による開催とさせていただいております。
 Zoomを併用して御議論いただく観点から、委員の皆様にお願いしたい事項でございますが、5点申し上げさせていただきます。
 1点目は、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいようはっきり御発言いただくなどの御配慮をお願いいたします。2点目は、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただきますようお願いいたします。3点目は、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。4点目は、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただきますようお願いいたします。5点目は、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただきますようお願いいたします。
 以上の点、御配慮いただけるとありがたく存じますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 本日の配付資料でございますが、議事次第にありますように、資料1及び資料2、参考資料1から参考資料3まで御用意し、委員の皆様には事前にメールでお送りさせていただいております。また、傍聴の皆様には、文部科学省のホームページ上にアップロードしてございます。また、会議の中で御説明する際等には、画面上で表示をさせていただくように御準備しております。御不明な点等ございましたら、お申出いただきますようお願いいたします。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の配付資料の内容につきまして補足をしていただくのと、今後の本会議の検討の進め方につきまして、御説明をいただきたいと思います。
 酒井さん、お願いいたします。
【酒井補佐】  失礼します。本日の会議でございますが、前回に引き続きまして、教育方法・学習支援体制等について御議論いただくとともに、設置認可の在り方についても御議論をお願いできればと考えております。
 これまでの会議でも御説明させていただきましたとおり、特に近年、広域通信制高校の設置数が増加するとともに、違法・不適切な学校運営や教育活動の実態も明らかになったところでございます。
 本日は、前回の会議に事務局から御提出した参考資料の中でも御紹介をさせていただきましたが、通信制課程が増加したメカニズムを、設置認可プロセスに着目して御研究されております愛知学院大学の内田康弘先生よりヒアリングを予定してございます。
 また、検討をさらに深めるために、次回12月の会議におきましては、複数の所轄庁からのヒアリングを実施したいと考えております。
 また、通信制高校の中には、例えばICTを最大限に活用されている学校であったり、通学に重点を置く学校など、様々な学習形態や学校運営を行っている学校もあるところでございます。1月以降の会議においては、通信制高校の現状をさらに把握して、この御議論を深めていただくために、例えば複数の通信制高校や関係団体などからヒアリングを実施させていただいてはどうかと考えております。
 また、配付資料についての補足でございます。前回の会議におきまして、青木委員より、通信制高校の生徒側の状況が分かる資料がないかという旨、御指摘を賜りました。
 平成22年度の文部科学省の委託調査研究において、通信制高校の在校生に対するアンケート調査を行ったものがございます。その結果につきましては、本日配付の参考資料2の18ページ、19ページに、その当時の結果をお示ししてございます。
 また前回、私から御説明申し上げましたとおり、今年度、通信制高校に在学する生徒の実態について調査を進めてまいりたいと考えておりまして、これにつきましては結果が取りまとまり次第、また本会議で御報告させていただきます。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。ただいま、酒井参事官補佐から御説明がありました今後の会議の進め方、ヒアリングをするといったようなこととか、また、今日の配付資料の説明、参考資料2についても御説明がありましたが、何か御質問ございますでしょうか。
 よろしいですか。それでは、本日の会議の進め方ですけれども、繰り返しになりますが、まず、教育方法・学習支援体制等につきまして検討を進めるために、文部科学省と所轄庁が共同で実施しております点検調査にアドバイザーとして関わられておられる時乗委員から、点検調査から見えてきた課題等について御発表いただき、質疑応答の時間を設けたいと考えております。
 次に、設置認可の在り方に関する検討を進めるため、事務局からの説明の後、愛知学院大学の内田康弘先生から御発表をいただきたいと思っております。内田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 その上で、教育方法・学習支援体制等に関する事項と設置認可の在り方に関する事項を一括して意見交換したいと思っております。よろしいでしょうか。
 では、議事に入りたいと思います。今も申し上げましたように、時乗委員から、点検調査から見えてきた課題等について御発表をいただきます。
 時乗委員、よろしくお願いいたします。
【時乗委員】  時乗です。よろしくお願いいたします。
 かれこれもう4年近くになると思いますが、文部科学省の方と一緒に、それぞれ現地の通信制高校を見てきました。その中で、これは昨年度の有識者会議でもある程度お話をさせていただいたところなのですが、本当にこういった課題がその当時は結構散見されていましたが、最近はガイドライン等の徹底によって少なくなってきました。これからの御議論の基礎的な知識としてこういった課題があった、あるいは現在もあるという認識をしていただければと思い、発表させていただきます。
 それでは、次のスライドをお願いいたします。ここに簡単に、これまでの点検調査で見られた事例ということでまとめさせていただいたのですが、本当にざっくりでまとめてあります。
 まず学校ですけれども、こういう学校ばかりではないということは大前提なのですが、いろいろな課題を抱えている学校というのは、特に生徒の学力向上というところに視点を置くのではなくて、とにかく単位を取らせて卒業させるということを大きな目標として、生徒への指導に当たっているというような状況がよく見られました。
 具体的には、①、②、③に書いてありますが、まず添削指導については、取りあえず指定の回数だけ課題を完成させればいいと課題を完成させるということに重点を置いているような学校が多かったです。
 それも、できるだけ完成させやすいようにということで、質量ともに落としているところが多く見受けられました。例えば数学などは1単位について3回、数学1が4単位であれば全部で12回ということですが、その1回分がA4一枚裏表、多くてもA42枚、問題はほぼ穴埋めや、与えられた簡単な問題に対して結果のみ書くというような形が多い状態でした。これも枚数を多くすればいいというものでは当然ありませんが、さっき言いましたように、数学1は4単位、全部で12回ということを考えると、A4が12枚で数学1が全部終わってしまうのかというような話にもなってきますので、質量ともに、もう少し添削課題というのが工夫されると良いと思います。
 添削課題以上に問題なのが、②の面接指導です。数学1などは1単位について1時間の面接指導となっていますから、4単位であると年間で4時間です。この面接指導の考え方も、そこにありますように、指定された回数を満たせばいいという考えで行われており、さらに大きな課題が添削課題を教える時間という発想で行われているところが多かったと思います。
 特に総合的な学習の時間などは、本当に規定時間を満たせば良いということで、内容は特に問わない、何となく総合的な学習の時間らしかったらいいだろうといった考えで設定されているところが、課題のある学校に多いという実態がありました。
 また、添削課題を教える時間と考えている学校は、面接指導の教材として添削課題を使うというところが多く見受けられました。基本的に面接指導の時間を通して添削課題を完成させるという指導方法です。これは添削指導なのか面接指導なのかわからない指導であり不適切であるといえると思います。
 また、これは面接指導施設で多いのですが、生徒は自習形式で添削課題に取り組み、質問があれば教員が答えるという形で面接指導をやっているというような学校もありました。
 また、「数学」という時間で、教室の中に数学Ⅰを学んでいる子もいれば数学Ⅱを学んでいる子もいる。そして、教室内には数学の教員が1名いて、1つの教室の中で一緒に数学Ⅰと数学Ⅱの面接指導をやってしまうというところもありました。
 先ほど言いましたように、こういう傾向は特に面接指導施設といったところで多く見られた状況であります。
 次は、同一活動を生徒により教科活動や特別活動として扱うということですが、例えば体育や理科の時間で野外活動に行ったときに、それを体育とか理科ではなくて一緒に特別活動として扱い、ある子についてはその活動を特別活動として扱い、ある子についてはその活動を体育として扱う、という形態の活動を行っています。
 このような活動は、合宿形式でやっているところによく見受けられました。
また、面接指導の施設面で言えば、基本的に添削課題を扱う場なので、机と椅子があればいいという考え方で行っているところもありました。
 特にこれらの傾向は、特に面接指導施設、あるいは連携協力施設で強かったと感じています。
 次に、視聴代替を実施しているところですが、これも、とりあえず何かを視聴したという事実があれば、それで減免するということを行っているところもありました。
 これらのように、基本的に面接指導における課題を抱えている学校の例の特徴として挙げられると思います。
 3点目、これも基本的には単位を取らせればいいという発想からだと思いますが、生徒一人一人に寄り添った支援体制が不十分と感じています。例えば、養護教諭が非常勤であるために、必要なときに必要な支援ができない、あるいは担任等が非常勤であり、科目登録等の指導が十分に行うことができない、などです。
 以上が、課題のある学校で多く見受けられたところであります。
 所轄庁については、かねてから指摘されているところではありますが、特に他県に多くの面接指導施設等を持っている場合は、本当に実態把握が難しいということで困っておられる所轄庁が多かったように思います。
 繰り返しになりますが、これらはあくまでも課題を抱えているところですので、当然、こうではない、きちんとやられている学校が多かったということは付け加えておきます。
 次お願いします。これまで幾つかの学校を回ってきた中から、将来的に「令和の日本型通信制高校」というのはどんな学校になるのか私なりにイメージしたものを、次に御紹介させていただきたいと思います。
まずは、対面による指導を重視した教育活動に取り組む学校ですが、いずれにしても、先ほど言いましたように面接指導、ここをいかに充実させていくのかというのが大きなポイントだろうと思っています。
 資料に、「協働的な学び」と書いてありますが、先ほどの課題のある学校の例で紹介したように、リアルな学びの場(面接指導)でも一生懸命添削課題に取り組むという指導ではなく、添削課題への取り組みは、左側に書かれている「主体的な学び」であることから、本来の面接指導は主体的な学びを促す「協働的な学び」の場であるべきだと考えています。
 面接指導の2つ目のポイントとして、協働的な学びのところの2つ目のポチですが、当然、いろいろな理由で参加が困難な生徒への対応があげられると思います。
来ることができない生徒に対して、来られないのだから駄目だということではなく、ICTを活用したリアルな参加を可能とする工夫が求められると思います。
 恐らくこれは現制度下では難しいと思いますが、例えば広島県などは、分身ロボット「OriHime」を使って、その場にはいないのだけれどもリアルな参加ができる工夫をしているという話も聞いています。本当は同じ空間で、みんなと一緒に活動することがいいのかも分かりませんが、分身ロボットでもそれに近い成果を得ることができると思います。
 面接指導施設等についてですが、協働的な学びのところの4つ目の黒ポチで、面接指導施設等においても同程度の質を確保すると書かせていただいています。この部分は、ぜひ実施校の責任としてやっていただきたいと思っています。
 また、下のほうにありますサポート体制というところですけれども、この部分においては、いろいろ見ていきますと、生徒とのつながりをいかにつくり上げていくのかが大きなポイントになってくるだろうと思います。
 対面による指導を重視した学校は、面接指導時等で来校しているときに生徒とのつながりをつくることになるので、HRなどに工夫が必要となります。
 最後に、大きな四角の枠でぐるぐる回るように囲ってありますけども、これは本当はらせん状にどんどん上に上っていくような、そういう形にできればよかったのですが、そこまでの技術がなくてこのような形になってしまったのですが、前回の第2回目の参考資料として、文部科学省に準備していただいた「学校評価システムに関するガイドライン」というのがあったと思いますが、これまで第三者評価というのがクローズアップされて議論が進んでいますけども、実はもう十数年前に文部科学省から、学校評価に関するガイドラインが出されています。
 このガイドラインによって学校評価は、学校による自己評価、学校関係者評価、第三者評価という形でシステム化されています。教育活動の質向上には、この学校評価システムをきちんと活用することによって、実施校と設置者が主体的に改善のサイクルを回すことが重要であり、所轄庁は、他県に多くの面接指導施設などを持っている場合は、なかなか把握と管理が大変ですので、この学校評価システムを活用して、各学校の実態把握と、必要な指導・助言等を与える必要があると思います。
 具体的には、通信制高校の場合は、ガイドラインというものがきちんと出ていますので、そのガイドラインをベースにした評価項目を作成して、場合によってはある程度全国で統一的な評価項目を作成し、実施校と設置者が自主点検を行い、不十分なところは改善していくという流れをつくりながら、所轄庁がその実態把握を行う、という流れがうまくできれば、教育の質向上は進むものと考えます。
 次のページお願いします。次は、主にICT(ネット)を活用した教育に取り組む学校についてです。最近、「デジタルトランスフォーメーション」という話がよく出てきますが、個人的に、ICT(ネット)を使った学校は、新しい通信制高校の在り方、特にデジタルトランスフォーメーションを取り込んだ新しい学校の形をつくってくれる、そういう可能性がある学校だと思っています。
 このような学校では、面接指導の6割が視聴報告となるため、資料にもありますように、面接指導は動画コンテンツやオンラインコンテンツを使って勉強する主体的な学び(これが面接指導の6割となります)とそれを前提とした協働的な学び(この部分が4割)となります。
 先ほどの対面を重視する学校では主体的な学びの部分はどちらかというと添削指導が担っていたのですが、ICT(ネット)を使う学校の場合は、逆に面接指導においても主体的な学びができるような伴走をしっかりと行う必要があります。視聴報告書というのがありますけども、ぜひ、この視聴報告書を活用して、生徒が主体的な学びができる伴走を行ってほしいと思います。
 また、残りの4割であるリアルな学びの場をいかに充実させるのかによって、6割の主体的な学びが生きてくることになるだろうと思っています。4割となると時間数的には非常に少ないです。だからこそ、その少ない4割のリアルな学びの場をどう充実させていくのかということに取り組んでほしいと思います。
 あと、様々な場面での指導体制ですが、ここは、チームによる指導体制ということがそれぞれ書いてありますが、要はICTを使っての生徒との関わりになるので特定の教員との一対一という形態は難しくなると思います。
 サポート体制ですが、これもICT(ネット)を中心に使う学校の大きな特徴ですが、様々なコミュニケーションツールを使って、生徒とのつながりを大切にしている学校が多いと思います。
 特に、このICTを使ったコミュニケーションツールというのは、Z世代の生徒にとっては親和性が高く、学校の先生方と生徒の間でのつながりというのが生まれやすいと思っていますので、これもICT(ネット)を主に使う学校の大きな特徴だろうと思っています。
 では次、お願いします。いずれにしても、対面を重視する学校についても、ICT(ネット)を中心にしてやっていく学校についても、通信制高校の強みを生かすためのリアルの質向上、これがとても大切だと思っています。
 ただ、ここで注意していただきたいのは、リアルの質を上げることが、通信制高校のハードルを高くするとか、そういうことでは決してないということです。
 通信制高校が持っている強み、ある意味でのセーフティネットとしての機能、そういったものをしっかりと生かすために、どういったリアルをやっていかなければならないのか、そこをじっくりと考えていくことが大切だと思っています。
 以上、ちょっと拙い、雑駁な内容でしたけども、ここのところ4年ほど、アドバイザーとして各学校を訪問させていただいたところで感じたことをまとめさせていただきました。
 ありがとうございました。以上です。
【荒瀬座長】  どうもありがとうございました。課題の整理と、それに基づいて具体的な御提案、こうあったらいいのではないかというお話もいただきました。
 ただいまの時乗先生の御説明につきまして、御質問をお受けしたいと思います。
 意見交換はまた後から、最後にいたしますので、御質問いかがでしょうか。資料に関すること、お話に関すること。「手を挙げる」のボタンを押していただきましたら。
 では岩本委員、お願いします。
【岩本委員】  岩本です。よろしくお願いします。ちょっと一つ、今ので質問になるんですけれども、今後の目指す姿のところでも学校評価システムの活用ということは書かれていて、とても大切な視点だなと思ったんですけども、ちょっと見えなかったのが、学習評価をどのように行っていくのか。もしくは、現状のところでは実際どのように一人一人の学習を評価しているのか。
 今後の新学習指導要領で行けば、やっぱり資質・能力で何ができるようになったのか、学んで何を身につけていってという、3つの観点で評価をしていくというようになっているかと思うのですが、通信制高校の場合の現状の学習評価はどのようになって、どのような課題があるのかと、今後の「令和の日本型の通信制高校」における学習評価はどのように考えていったらいいのかというところを、ちょっと補足で、御意見いただけたらと思うんですけども。
【時乗委員】  ありがとうございます。まず現状ですけども、この委員の中にも実際の通信制高校の校長先生方がいらっしゃいますので、もし間違っていたら御指摘いただきたいのですが、これまで私が点検調査等で見てきた学校でよくあるのは、先ほど言いましたように、添削課題というのが基本的には穴埋めなんです。だから、基本的には知識を問う問題で、その知識を問う問題に対して〇×で評価をしていきます。
 したがって、例えばその点数が30点以上だったら合格だとか、80点以上だったら3だとか4だとか、そういう、基本的にはペーパーテストで評価をしていくというような形でイメージしてもらえばいいと思います。
 そして面接指導の場においても、基本的には添削課題をやっていくということが大きな目的になってきますので、面接指導そのものを評価するというような場面は、まずないと思っていただいていいと思います。ないと言えばちょっと言い過ぎかも分かりませんけども、基本的には、5、4、3、2、1という最終的な評価に結びつける材料は、添削課題の点数と試験の点数が主なものと思います。
 将来的な話では、現在の状況というのは添削課題をメインに評価をしているのに対して、リアルな学びの場(面接指導)メインに据えた評価を行うべきだと考えています。そして、リアルの場でこういった活動をするために添削課題はどうあるべきかを考えて作成することが大切になると思います。また、そのためには、添削課題を作成する際に、リアルな学びの場での評価を念頭に置いて、添削課題(主体的な学び)の評価を決めることが大切だと思います。そして、教育活動全体をデザインし直すべきだと思っています。
 以上です。
【荒瀬座長】  よろしいでしょうか。要は、評定をつけるということに主眼が置かれてしまっていて、評価活動を日常的にやっていくということがないがしろになっている面が残念ながらあるという、そういうお話ですよね。
【時乗委員】  そうですね。そういう印象を持っています。
【荒瀬座長】  なるほど。前から時々申し上げておりますけど、これは必ずしも通信制に限らず――通信制の場合、非常に際立ってそういう状態になっているということで、実は全日制の高等学校が評定と評価ということを考えてみると、やっぱり評定に重きが置かれてしまって、日常の、時乗先生のお言葉を借りればリアルな学びの場の中での評価、リアルな学びの場を通してどういった学びを構築していくのかというような学びの体系化といったようなことが、やはりなかなか課題だなと思うんですけれども、しかし、今お話しいただいたような、ただ単に5、4、3、2、1をつけるだけのための活動になってしまっている面が、全てではもちろんないにしても、あるというのは大変残念なお話かと思ってお聞きしました。
 岩本さん、いい御質問をありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 青木先生、お願いします。
【青木委員】  ありがとうございます。青木です。時乗先生、御説明ありがとうございました。
 質問は、点検評価の御経験を通じて、学校ごとの差異というか、そういったものが確認されたということは分かったんですけれども、学校の中で、教科ですとか教員によっての取扱いの差異というものはどのぐらい確認されたのでしょうか。
 以上です。
【荒瀬座長】  お願いいたします。
【時乗委員】  基本的に、この点検調査というのは、その学校運営というか、そういったものを主に見ていくというのが一つのメインだったので、教科間の差異だとか教員間の差異というのは、特に具体的な資料に基づいて点検調査をしたというわけではないのですが、例えば添削課題に、いろいろと添削指導されている先生方がコメントを書かれるという欄があったりする学校などにおいては、本当に1行でコメントが終わっている人と、本当に丁寧にいろいろとアドバイスをしたりだとか、その生徒の頑張りを評価したりするようなコメントを書いている人と、そういった意味では、教員間によってコメントの量とか質というのが違うというようなことは見受けられました。
 また、先ほど言った1回分の添削指導の量についても、これも、学校によっては数学は1枚だけど別の教科は2枚3枚だとかいう形で、教科によってこの枚数が違うというような学校もあったように思います。主にそういったところで、教科、そして教員の差異というのはあったかなという印象は持っています。
 以上です。
【青木委員】  青木です。どうもありがとうございました。
【荒瀬座長】  よろしいでしょうか。教科のほうは、また教科の特性がいろいろあると思うんですけれども、教員によるコメントの量の差というのは、これはなかなかやっぱり大きいのかなと思いました。
 すみません、吾妻先生、どうぞ。
【吾妻委員】  失礼します。時乗先生、御発表ありがとうございました。
 協力者会議の中で議論を進めていて、私はいつも悩むんですけども、これからの教育の質を高める、通信制の教育の質を高めるためにどのような教育が理想としているのかという理想論と、それから実際に点検調査等をやられていて、まだまだ不十分な事例があったりしている、そういったところの、言い方は大変不躾な言い方かもしれませんけど、底上げをどうやってやっていくのかというところの両方を議論していくということが非常に難しいなということを感じておりまして、今日の先生の御発表を伺っていると、その両方をつなぐのがICTを活用した教育じゃないかというようなところで、一つの御提案というような形で聞かせていただいたような、私は印象を受けたんですけども、そのような状況でICTを活用する際に、どういったところが課題となるのか、先生がどのようにお感じになっているのかというのを、ちょっとお聞かせいただければありがたいと思いまして質問させていただきました。よろしくお願いします。
【時乗委員】  ありがとうございます。なかなか、今、吾妻先生がおっしゃった現実と理想というのは、本当に難しい問題だろうと思います。
 それをつなぐ一つのファクターとしてICTというお話でしたけども、私は、さっきも言いましたように、このICTを有効に使っていくためにも、本当にリアルな学びの場をどうしていくのかということをきちんと考えていかないと、何が何でもICTということで、ICTだけがぐっとクローズアップされてくると、またそれもよくないと思っています。
 実は、私は全日制の学校の校長をやっていますけども、昨年度のコロナの状態で、4月、5月は完全にオンラインで授業をやってきました。今年の9月も完全にオンラインで授業をやりましたが、やはり生徒たちからのいろいろな反応を聞いていると、当然オンラインできちんとした勉強はできているのですが、でも、何か抜け落ちている部分があると感じています。
 そして、そのオンラインで抜け落ちている部分をリアルできちんと補足してあげることがすごく大切だということも実感しました。特に通信制の場合は、いろいろなICTのツールを使って生徒の学びを支援していったとしても、やっぱりそれは、ベースにはリアルの部分をどうきちんと生かしていくのかというのがあってこその話だと思っていますので、本当に数少ないリアルをどう生かすか、それをどう評価していくのかということがポイントだと思っています。
【荒瀬座長】  よろしいでしょうか。
【吾妻委員】  はい。ありがとうございます。
【荒瀬座長】  最後におっしゃった、オンラインで抜け落ちるものをリアルでどう生かすかという、これは非常に大きな課題であるかなということを思いながら伺いました。ありがとうございました。
 そうしましたら、また後ほど御意見を賜るといたしまして、また御質問がありましたらその時お願いするとしまして、次の御発表に移りたいと思います。
 通信制高校の設置認可の在り方についても議論を行いたいということでありますが、この事につきましては、冒頭御説明いただきまして、先ほど私も申しましたけれども、通信制課程が近年増加してきた要因を、設置認可プロセスに着目して御研究になっておられる、愛知学院大学の内田康弘先生に御発表をお願いしたいと思います。
 内田先生、本当にお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 では、内田先生から御発表いただいて、その後、また御質問をお願いするということで行きたいと思います。
 では内田先生、お願いいたします。
【内田氏】  よろしくお願いいたします。愛知学院大学の内田と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の発表に入らせていただきます。タイトルは「通信制高等学校の増加プロセスにみる高等学校通信教育規程改正の影響」ということで、主に私立校の設置認可行政に着目して、どのような影響があったのかということに関して発表させていただきたいと思います。
 本発表の構成は以下のとおりです。
 こちら、1つだけ強調させていただきたいのは、本発表は内田が担当いたしますけれども、実はこの研究成果は4人の共同研究の成果によるものでございます。私が筆頭著者ということで今回は代表して発表させていただきますが、こちらは4人の研究成果であるということを強調させていただきたいと思います。
 本発表の目的でございますが、研究の問いを申し上げますと、1990年代以降、なぜ通信制高校が増えたのかという、ある意味でシンプルなのですが、実はなかなかアプローチしにくかった問いに関して、先行研究は主に生徒のニーズという点を強調してきたことに対しまして、私どもは学校組織や行政上の理由に着目して分析を進めました。
 こちらの図1は先生方も十分御承知のとおりでございますが、近年の通信制高校の生徒数・学校数の概況でございます。
 なぜこのグラフを持ってきたかと申しますと、実は生徒数の増加ももちろん顕著ではございますが、それにも増して学校数の増加がかなり大きく表れている。90年代以降、特に2000年代中盤、私立校が大きく増加している様子を、こちらの図から読み取ることができると思います。
 改めての確認ではございますが、通信制高校をめぐっては生徒数のみならず学校数についても、1990年代以降に大きな変化があることを見て取ることができます。
 こうした通信制高校に関しましては、近年、様々な研究によって、高校中退経験者や不登校経験者たちの多様なニーズに応じているという指摘がございます。
 一方で、先ほど先生方に御覧いただきましたように、通信制高校の増加は、実は生徒数よりも学校数において顕著である。ということは、生徒のニーズが増加しているといった一要因のみでは説明が不十分ではないかということに我々は着眼いたしまして、教育を供給する側、言ってしまえば学校側、さらには設置認可行政ですね、教育行政側の理由に着目しようということが、今回の研究の背景でございます。
 なお、通信制をめぐる主たる法改正の状況といたしましては、2000年代、2003年・4年・6年にございまして、2003年の構造改革特区法、2004年の通信教育規程改正、そして2006年のさらなる改正といったことがございます。
 今回は、こうした法改正の影響がどの程度通信制高校の増加に影響を与えたのかということについて、論じていきたいと思います。
 次に、作業課題と研究方法について述べます。私どもの研究論文の中では、3つの作業課題を行っております。
 本日の発表は、このうちの3点目をメインに発表させていただきたいと思います。
 作業課題の3点目といたしましては、通信制高校の増加と通信教育規程改正の影響に関する検討ということで、少し分かりやすく問いを投げかけるならば、2000年代の高等学校通信教育規程の改正は、通信制高校の増加にどの程度影響したのかということについて探っていきたいと思っております。
 まずこちら、参考1とありますが、先ほどの論文の中で、実は3つの作業課題があると申し上げました。そちらの参考1と参考2に関しては、それぞれ1番、2番の課題に対応しているということで、あくまで参考資料として載せさせていただきましたが、このように学校設置者の想定している生徒層に関しまして、例えば不登校や学校不適応など、学校に対して通学が必須とされている課程に使うことが難しい者や、そこになじまない者を受け入れる場として、設置趣意書などにはかなり多くの学校でその記載がございました。
 一方、こちらも参考にということで、この論文の課題の2つ目になるところですので今回のメインテーマではございませんが、実は設置認可行政に関しまして、都道府県に私どもはアンケート調査を行ってみました。
 その結果、実は私立高校の定員抑制措置、これは全日制や定時制において実施されているものではございますが、通信制高校がそこに入っているということを回答した自治体はゼロでございました。
 ですので、実は設置認可行政においても、通信制高校はある意味特殊な位置づけにあるということが、この作業課題の2つ目で分かってきたことになります。
 それでは、なぜ通信制が例外とされたのかということでございますが、先ほど申し上げましたように、実は通信制には中退者を含む多様なニーズへの対応がかなり強調されていた。それが学校設置者のみならず教育行政上も重要であった可能性が、これらの都道府県に対するアンケート調査から見えてきたことになります。こちらは先ほどの作業課題2の点になりますので、本日のメインテーマではございませんが、少し紹介させていただきました。
 それではここから、先ほどの、なぜ通信制高校が増えたのかということに関しまして、法改正の影響を探っていきたいと思います。
 研究対象は、1990年度から2016年度までの間に新たに設置され、2016年度時点で教育活動を実施していた私立通信制高校になります。この研究論文を執筆するに当たって、調査を行った時期が2017年度から2018年度にかけてですので、直前の2016年を基点にいたしまして調査を実施しました。
 その時点で教育活動を行っている私立及び株式会社立の通信制高校154校、2016年当時は全国に私立通信制高校が167校ございまして、このうちの154校が1990年度から2016年度までに設置された学校になっておりますので、この154校を全部対象といたしました。
 研究方法といたしましては、私立学校の審議会をはじめとして、当該校の設置認可に関わった自治体関係部局の資料を、情報開示請求を行い全て取り寄せまして、その内容を分析したものになります。具体的には、設置趣意書や私学審議会の議事録などに着目いたしまして、分析を行いました。
 分析にあたって、私どもは、学校の前身組織といったところに主眼を置きました。
 といいますのも、先ほど先生方に御覧いただきましたように、学校の増加が著しくあるということで、こちらも先生方のほうが十分お詳しいと思うのですが、学校をつくるとなったときに、そんなにすぐ単純にできるものではないということは、先生方の十分な御理解の下だと思います。
 そこで私どもは、通信制高校を設置する前に何らかの学校を持っていたのではないかという仮説を基に調査を進めましたところ、実は154校、先ほど対象となったうち、通信制高校の設置認可よりも以前に、高等学校のみ設置していた、例えば全日制・定時制ですね、そういった学校のみ設置していたところが38校。各種学校・専修学校のみ設置していたところが43校。さらには、両方持っていた学校が28校ございまして、これらの合計が約7割、つまり、90年代以降に新しく通信制高校を設置したところの約7割は、実は既設の学校法人であったことが明らかになっております。
 確かに、4番のその他のケース、154校のうち45校に関しては新規参入といったことがございますけれども、それ以外の100校以上の学校、109校については、実は以前に学校を設置していて、そうした学校からの転化、さらには新しく追加で設置するといったように、学校設置の土壌がある程度備わっていた学校群であることが見えてまいりました。
 そして、今分けた4つのカテゴリーに基づきまして、先ほどのグラフ、学校数が増加していると申し上げましたが、その学校数の増加に先ほどの4つのカテゴリーをクロスさせたグラフがこちらになっております。
 御覧いただきますと、この2000年代中盤の増加傾向といったものがかなり際立っていることを御理解いただけるかと思います。
 特に2005年に最大値を示しているのですが、その前後も多い数字を示していることから、私どもはこの2005年の周りに何が起きたのかということに関しまして、より詳しく分析を行っていったところ、先ほど申しました法改正といったところが見えてまいりました。
 ここで、先ほど申し上げましたように、2004年と2006年に高等学校通信教育規程がそれぞれ改正されております。2004年の改定では教員定数――こちらはもちろん他の部分も改定されているのですが、その中の目立ったところという意味で教員定数と申し上げておりますが、主に教員定数の変更による影響が2004年の分析課題1と。そして2006年は、主に校舎・校地の自己所有要件の緩和といったところが改正の主な部分だったと思いますので、それぞれを分析課題の1番、2番といたしまして、これらの影響がどの程度あったのかということを、先ほどの4つのカテゴリーの学校別に論じていく、これが本発表の主な知見となっております。
 なお、154校のうち、分析に際しまして、実は全部の学校のデータが開示されたわけではございません。ですので、それぞれ申し上げておきますが、まず分析課題1、教員数を示す情報を入手できたのは、154校のうち127校でございました。なお、分析課題2、設備状況の所有状況に関しましては140校ということで、情報開示請求の結果、様々な理由から全部は集めることができなかったのですが、こちらの127校、140校と、かなりの数を集めることが可能でございました。
 次に分析手続としては、情報開示請求によって入手できた資料を研究チームの4人で1人あたり約40校ずつ担当いたしまして、資料に記載された教員数並びに設備の所有状況などをエクセルシートに手入力で集計していきました。
 その際に、教員というものは、こちらに書いてありますとおり副校長や教頭、教諭、助教諭、講師といった人数が何人、設置の当初に備わっていたかということに関して集計いたしました。
 このような情報に関して収集していき、エクセルシートに記入を行って実態を把握してきたというプロセスになっております。
 まず分析課題1、教員定数の変更による影響でございますが、2004年以前の旧高等学校通信教育規程につきましては、実は教員数の数というのはこのように定義がございました。
 2004年の改正で、この区分が「5人以上、かつ教育上支障がないもの」に変更されてございます。ということは、こちらの改正前後を確認することによって、改正後に旧規程を下回る教員数で認可申請をした学校が多ければ、規程の改正は通信制増加の一端を担った可能性があると考えられることが見えてくると思います。
 ということで、こちらを先ほど申し上げたエクセルの表を使って分析をしたところが、次のものになります。
 表1は、先ほど申し上げました私どもの論文の中から引用いたしました、教員定数の変更による影響をみたものでございます。
 こちら、青色の部分と黄色の部分がそれぞれ示されておりますが、これは何かと申しますと、より多くの影響を受けているところを青の括弧で囲んだものになります。
 教員定数の条件緩和ということでございまして、2004年以前に設置した学校が56校、2005年以降に設置された学校71校の計127校、先ほど申し上げた127校の分析でございますけれども、このうち旧規程を満たすか満たさないかといったところで表を作ってみますと、2005年以降に設置された、いわゆる通信教育規程が変わった後に設置された学校のうち、旧規程を満たす学校が30校、満たさない学校が41校ということで、実は満たさない学校のほうが多いということが見えてまいりました。
 そして、その学校がどのような属性を持っていたのかを分析しましたところ、高校のみ、つまり通信制設置以前に全日制もしくは定時制の学校、もしくは両方の、高校のみを持っていた学校法人に関しては、71.4%が満たしていないということになります。さらに、高校と各種・専修学校を持っていた学校につきましても、13校のうちの8校の61.5%が満たさない。さらにその他に関しましても、14校、66.7%が満たさないということで、この青の部分がより大きな影響を受けた学校群と考えられます。
 一方で、各種・専修学校、黄色で囲いましたけれども、こちらは規程を満たす学校のほうが多いということでして、ここから教員定数の条件緩和は、前身組織として高校のみ設置していた学校法人や高校及び各種・専修学校、いずれも設置していた学校法人並びに新規参入の法人などのその他により強く影響していたことが見えてまいりました。
 続きまして、学校施設の自己所有要件に対する緩和の影響がどの程度学校設置に働いたのかということを見ていきます。先ほどと同じ要領、設置認可書類などの分析を行っていきますが、校地・校舎に関しても、学校設置書類の中で必ず指摘がございます。そこから必要な情報を抽出して表を作成しました。
 教員定数と同じような作業を繰り返すことで、次は校地・校舎の状況を見ていきました。こちら、自己所有要件についてです。自己所有か否か、いわゆる借地かどうかを検討したものになっております。2006年以前と2007年以降設置というところで分けておりますが、2007年以降設置の学校が60校ございます。このうち旧規程を満たす学校が41校ございまして、校地・校舎については、先ほどの教員定数に比べると影響が限定的であることが見えてまいります。ただし、中でも「うち旧規程を満たさない」というところを御覧いただければと思いますが、青で囲ったところ、2007年以降の設置の「12(63.2%)」、一番右下でございます。こちら、まさにこの規程改正の影響を大きく受けた学校群といったところが見えてまいりました。
 こちらは先ほど申しましたように、まさしくその他ですから、新規参入も含めた学校法人並びに株式会社立の法人が見えてまいります。ちなみに、「うち旧規程を満たさない」ところで、2006年以前設置も実は13校(59.1%)と大きい数字を示してございます。こちらが先ほど申しました2003年の構造改革特区法による影響かと考えられまして、やはりこうした2003年並びに2006年の改定については、その他といった学校群、なかでも新規参入の法人等により大きな影響を与えていった一方で、残りの法人、もともと学校法人もしくは何らか学校を設置していた法人については、その影響が限定的であることが見えてまいりました。
 以上の分析課題1番、2番を併せて見ていくとどうなっていくかということで、全体数が120校、127校と140校の共通部分が120校でしたので少し数は減ってまいりますが、両方の影響を見たものがこちらの表3になってございます。青色で囲んだところが改定の影響を受けたところで、黄色があまり受けていないところ、もともと満たしていたところということで差が出てきてまいります。
 例えば、通信制高校の設置に対して、既設の学校法人は主に教員定数緩和の影響を、つまりこの分析課題でいうと、1番の影響をより強く受けていたということになってございます。こちらが先ほど見てまいりましたように、この表で御覧いただけるように、4番の「うち旧校地校舎規程のみ満たす」といったところが実に多い数値を示してございます。
 こちら、表の見方を説明申し上げますが、1番が旧教員・校地校舎規程を両方満たす学校でございます。2番がそのいずれかおよび両方を満たさない学校ということです。このうち、どれを満たさない学校なのかということで、3番、4番、5番はそれぞれのカテゴリーを集計したものになります。以上をまとめますと、1番は両方満たす学校、2番は両方を満たさない学校、もしくはいずれかを満たさない学校ということで区分しております。この満たさない学校51校のうち、高校のみを設置していたところが16(51.6%)、その他が18(69.2%)と多い数値を示しています。
 さらに、この中でどのような影響があったのか、どちらの影響が強かったのかを見ていきます。3番、うち旧教員規程のみ満たす学校というものがこちらでございます。うち旧校地校舎規程を満たす学校が4番でございます。5番は両方とも満たさない、3番でも4番でもないということで、それぞれのカテゴリーを見ていったところ、実は4番、うち旧校地校舎規程のみ満たすといった学校が多く分布していることから、裏を返せば、校地校舎についてはある程度の学校が満たしていたことが見えてきます。一方で3番を御覧ください。3番は旧教員規程です。こちらを満たしている学校が非常に少ないことに鑑みますと、まさしく教員規程改正の影響は校地校舎規程改正の影響に比べて大きかったことが推測されます。
 こうして表3より、既設の学校法人は主に教員定数に関する規程改正の影響を、一方で、その他に含まれます新規参入の法人等は教員定数および校地校舎に関する規程改正いずれの影響も受けていることが明らかとなり、2004年、2006年それぞれの規程改正が通信制高校増加に与えた影響の違いを見て取ることができます。
 以下、本発表のまとめとなりますけれども、今、私が発表申し上げましたように、2000年代中盤の高等学校通信教育規程の改正、いわゆる2004年、2006年の改正は、通信制高校の増加に影響を与えた制度的な誘因の一つであると考えることができます。なお、分析の結果、規程改正の影響は、2004年の教員定数の緩和のほうがより強い影響を持っていることも明らかとなりました。
 特に本発表で強調したいところが、前身組織のタイプ別に異なる規程改正の影響があったということでございます。先ほど確認しましたように、高校のみ、各種・専修学校、高校と各種・専修学校の両方を持っている、さらには新規参入等のその他、実はそれぞれのカテゴリーにおいて、規程改正の影響が違っていた可能性が見えてまいりました。まさしく、私立通信制高校が2000年代以降に大きく増加してきた背景には、既設の学校法人が新しく通信制高校をつくるといった動きに加えて、新規参入の法人、例えば株式会社などが新しく学校をつくるといった動きなど、異なる運営組織による学校設置プロセスが組み合わさって生じた現象があったことを確認しつつ、生徒のニーズのみに限定されない学校設置のメカニズムがその背景にある可能性を指摘してまいりました。
 さらに、今回の発表から少し拡大しまして、先にご紹介した論文全体の内容のまとめになりますが、私どもが研究した中では、教育上の多様なニーズ――例えば高校中退経験者や不登校経験者の受入れ――こうしたニーズが、先行研究の指摘にあったような生徒のみならず、本発表で見てきたような学校法人、さらには地方教育行政など、いわゆる通信制高校や多様な後期中等教育を取り巻く各アクターの媒介項となりながら、私立校を中心とした通信制高校の設置が進められていくメカニズムがあったのではないかということを指摘申し上げたいと存じます。
 また、最後に本発表の課題を述べたいと思います。
 本発表は1990年代以降、主に私立の通信制高校が増加したメカニズムについて、学校設置並びに教育行政の在り方をヒントにその背景を分析してまいりました。今後の課題といたしましては、まさしく先生方がこれまで充分に議論されてきた内容のとおりではございますが、通信制高校の質保証に向けてどのように考えていけばいいのか、例えば通信制高校の設置認可基準の整備及び所轄庁間の円滑な連携などが考えられます。
 先ほど申し上げたように、私どもが私学審議会の資料を分析する中で、実は各都道府県の設置認可基準の整備状況について、独自の審査基準を設定している自治体は、あくまで2017年から2018年の調査時点ではございますが、全体47都道府県の3分の1程度にすぎないといった記載が、ある県の私学審議会の資料にございました。
 さらにはサテライト施設、恐らく今後の制度改正によって通信教育連携協力施設に名前が変わると思いますけれども、その適切な教育水準の確保並びに法的位置づけをどう明確化していくのか。こちらは次の資料に参考までに載せさせていただきましたが、これまで私個人で研究を進めてまいりましたサポート施設、いわゆるサポート校が年々増加していること、さらには広域通信制高校も増加していることに鑑みまして、今後我々はどのようにこうした動きを捉えていけばいいのかも、大きなテーマとなってくると思います。
 そして最後に、こちらは私どもの研究チームの次なる課題と考えておりますが、各学校の教育課程の編成や実施状況はどのようになっているのかにつきまして、全数調査、全体調査が必要だと考えております。今回発表させていただきました通り、設置時点における教育課程の編成状況に関しては、設置認可書類等からある程度のデータを得ておりますが、まだまだ分析できてない部分もございますし、生徒たちにどのように教育を行っているのか、学校ごとのリアルな教育実践の部分については、まだまだ分析できておりません。ですので、そうした部分について、今後しっかりと調査分析を行いながら、通信制高校の質保証に向けても、何らかの知見が提出できればいいなと思っております。
 最後になりますけれども、来年4月から通信教育規程の一部改正がございます。恐らくこれによって、また何らかの影響が出てくるのではないかと個人的には考えております。ですので、今回の改正に係る影響の丁寧な分析と検証が今後求められるということをまとめといたしまして、私からの発表を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。大変丁寧な御研究の内容を御発表いただきました。
 それでは、御質問がある方、いかがでしょうか。
 時乗先生、どうぞ。
【時乗委員】  よろしくお願いいたします。
 2点ほど教えてください。まず、1点目ですけども、教職員の数をデータとして取られていますけども、そこに兼務職員の数は入っているのかどうなのか。例えば全日制を持っている学校が通信制を開設する場合、通信制の職員に全日制との兼務がかかっているとか、そういった兼務職員がその数字の中に入っているのかどうなのかというのが1つ。
 もう一つは、定数抑制のところで、調査された結果、抑制をかけている自治体はゼロだという御発表がありましたけども、この調査対象は全都道府県をやってゼロなのかどうなのかという、この2点をお願いいたします。
【内田氏】  まず、1点目の教員に関するお話でございますが、兼務教員につきましては含めております。ですので、必ずしも通信制の専任といったわけではございません。兼務教員を含めてございます。
 2点目でございますが、先ほどはゼロと申し上げましたが、各47都道府県に簡単な質問を行いまして、どの程度定員抑制されたのかと質問したところ、返ってきたのが実は30数都道府県ということで全体ではありません。よって、あくまでも回答が返ってきた中といった限定はございますが、質問書が返ってきた都道府県のうち、同措置に含めている自治体はゼロといったことでございました。ですので、大変申し訳ございませんが、返ってきてないところに関しては私ども分からないという限界がございます。
【荒瀬座長】  よろしいですか。ほかはいかがでしょう。
 青木先生、どうぞ。
【青木委員】  ありがとうございます。私より先に挙げていた委員の先生いらっしゃるんですけども、よろしいでしょうか。
【荒瀬座長】  すいません、お気遣いいただいて。上が先に挙げられた方ですか。すいません。
 では、日永先生、大河原先生、そして、青木先生の順番でお願いいたします。
 すいません、日永先生、お願いします。
【日永座長代理】  内田先生、非常に興味深い御発表をありがとうございました。ご発表の中で「影響を与えた」という言葉を何度かされていたんですけれども、これは規制の緩和によって新規参入者が通信制高校をつくろうという動機づけになったという程度の理解でいいのか、それ以上の影響を与えたということなのかを質問したいと思います。よろしくお願いします。
【内田氏】  非常に大事な指摘ありがとうございます。設置認可に当たっては、通信教育規程を満たさなければ学校を設置できないことは周知の事実でございますが、影響を与えたという言葉につきましては、まさにこの旧規程を満たさない状態で学校が設置されているといったことに鑑みまして、もともと学校をつくろうと思っていた、もしくはそういった動きがある中で、まさに学校設置に向けて、インセンティブではないですけれども、動機づけを与えたという意味で使ってございます。
【日永座長代理】  ありがとうございます。確認できました。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。
 では、大河原先生、どうぞ。
【大河原委員】  大河原でございます。大変興味深い分析をありがとうございました。私のほうから手短に2点、質問させてください。
 1点目は、スライドの22ページでございますが、各都道府県の通信制高校設置基準の整備状況について、3分の1程度というお話がございましたが、残りの3分の2程度についてはどういう形で審査をされていらっしゃるのかというのを、御存じの限りで構いませんので教えていただければと思います。これが1点目でございます。
 2点目につきましてですが、これはなかなか難しいと思うんですけれども、今日お話を伺った中で、この通信教育規程の改正の中で、教員定数の変更があったことに伴って、私立の通信制学校が増えたんじゃないかという分析だったかと思うんですけれども、その教員定数の変更とか、あと、一部校地校舎の関係の緩和があったということに伴って、教育の質が低下したとか、法令違反の事例が増えたとかということに結びついているのかどうかということについて、今回の研究からはもしかしたら出てこなかったかもしれませんが、今後その辺りを分析していく余地はあるのかどうか、このことについてお伺いできればと思います。
 以上です。
【内田氏】  ありがとうございます。まず、1点目の御質問からお答えいたします。こちら、資料22ページにございますように、ある県の私学審議会の資料に、実はこの県が独自に全国を対象に設置認可基準の整備状況をどうしているかといったアンケートを実施した記述がございまして、それを確認したところ、3分の1程度、要するに47都道府県のうちの3分の1という記載がありました。ですので、残りの都道府県につきましては、独自の設置認可基準を設けていない、もしくは調査の回答自体がなかったということになります。ここからは私個人の推測でございますが、独自の設置認可基準を設けていないということは、恐らく通信教育規程、文部科学省並びに国が定めているこの規程を最低ラインとして位置づけながら学校設置を認可しているということであり、独自のものをつくっているところは多分この最低ラインに上乗せをする形で各都道府県のものをつくっている。一方で、つくっていないところは最低基準としての通信教育規程を踏襲しているのではないかと。あくまで私の推測ではございますが、こちらの私学審議会資料を見た中でそういった記述がございましたので御報告いたします。
 2点目に関しましては、今、大河原先生がおっしゃったように本当に難しいところでございまして、分析上は今回明らかになっておりません。そちらも調査の限界がございまして、調査上、今回は教育の質保証や教育内容の実態解明に主眼をおいたものではございませんので、あくまで数値の変化、いわゆる学校数の変化に対していかに法改正の影響があったかを分析したものということになっております。
 ただし、教員定数の緩和といったことは、一般的に考えれば、まさに1人当たりの教員が持つ生徒数が増加するということになると思われます。
 発表資料のスライド15ページをお開きいただけますでしょうか。
 実はこの旧通信教育規程の中では、先生の数、教員数をかなりかっちりといいますか、生徒数に応じて、教員1人当たりの生徒数をある程度しっかりと定めるという措置が取られていました。
 一方で、これが2004年改正で、5人以上かつ教育上支障がないものと変更されたことに伴いまして、極端な話でございますが、生徒数1万人の学校であっても先生が5人いれば、あくまで法令上ではございますが、学校を設置できることになります。2004年までは、40人に生徒数の増加に応じて相当数ですから、同じ条件では最低40人の教員が必要だったことに鑑みますと、やはりこの改正の影響については、今後データをどのように入手するかなど限界はございますが、もしそれをクリアできるのであれば詳細に分析する必要があると思いますし、まさに質保証の点についても、どのようにスクーリングや面接指導を行っていくのかに関して影響が出てくるような項目だと承知しております。
 どうもありがとうございました。
【大河原委員】  どうもありがとうございました。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。ぜひ、内田先生、また引き続きよろしくお願いいたします。
 では、青木先生、よろしくお願いします。
【青木委員】  青木です。内田先生、今日は御報告ありがとうございました。先生たちの御論文は以前に読んでいまして、今日の御報告とても楽しみにしておりました。ありがとうございます。
 お尋ねしたいのは、16枚目のスライドと18枚目のスライドで用いられているクロス集計ですが、縦軸の方向のカテゴリーは確かにこういったカテゴリーで、非常に重要な知見が得られたということは理解しました。その上でなんですけれども、15枚目に示されている生徒の規模別の分析、これは先ほどの大河原先生の2つ目の質問にも関わるんですが、この分析はされたんでしょうか。
【内田氏】  まだこちらに関しては詳しくやっておりません。
【青木委員】  そうですか。分かりました、ありがとうございます。ぜひ分析をいただければ大変ありがたいなと思います。
 以上です。
【内田氏】  ありがとうございます。私どもの今後の課題として、引き続き頑張ります。
【荒瀬座長】  ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、内田先生、本当にありがとうございました。
【内田氏】  ありがとうございました。
【荒瀬座長】  では、今日、時乗先生、内田先生からの御発表も踏まえながら、意見交換をしたいと思います。30分ぐらいの時間でありますけれども、どなたからでも結構ですので、御意見おありの方、お手をお挙げいただきたいと思います。あるいは改めて御質問ということでも結構でございます。いかがでしょうか。
 では、森田先生お願いします。
【森田委員】  本日ありがとうございました。今回、時乗委員、それから内田先生に貴重な御意見、データをいただきまして非常に参考になりました。幾つかコメントさせていただきます。まず、時乗委員がおっしゃったとおり、オンライン授業では「抜け落ちる」ものがあるという発言がございました。今、オンラインの授業が少し進んできているという背景の中で、こういった文科省の委員の中で議論を進めているわけですけれども、本当に共感する部分があるなと思っております。私はオンラインの授業に20年近く関わっておりますが、決してオンラインがいいと思ってやっているわけではなく、ゼロだったものを10%、20%伝えるということが非常に重要だと、これを痛感してずっと関わってきています。つまり対面授業を完全に批判するつもりはなく、逆に言えば、オンラインをやっていると対面の重要性が非常によく分かるということです。これが今回のコロナで多くの先生方が痛感したことなんじゃないかと思いますし、その部分こそ、我々がやはり重要に思いながら、きちんと教育の中で関わっていかなければいけない部分だというふうに思っています。
 それともう1点、先ほど質問しようかどうか迷いながら聞いていただいた、内田先生が御紹介してくださった部分についてです。本当に通信制高校のデータを非常に丁寧に調査されていて、すばらしい研究でぜひ続けていただきたいと思っています。一方で、今回通信制高校のみを焦点に調査されているわけではなく、多分既にご承知だと思うのですが、そもそも法改正をするということが原因で起こったのではなく、文科省が法改正をしなければいけない状況にあったということだと理解しています。現在も、いろんな影響でこういった会議が起こり、教育制度が変わっていくということです。例えば、2001年に大学の設置基準の改定が行われているはずです。私は当時大学院生でした。指導教員が中教審に関わっていましたので話を伺ったりもしておりましたが、その背景にあったのは、1995年ぐらいから勃興したオンラインユニバーシティ、1990年の終わりにはバーチャルユニバーシティ、それによって当時の文部省の設置機関だったメディア教育開発センターが大規模な調査を行って、大学設置基準も改定につながっていたと思います。その大学設置基準の改定が結果的に高等学校のオンライン化にも結びついていったのではないかと。私の記憶では、1999年にアットマークハイスクールというのができまして、それがインターネットを使った通信制高校の最初でした。そこからスタートして、eラーニングという用語ができ、2004年の改定につながっていくというような流れだと思います。
 要するに社会の周りの影響も含めて全体的な分析をされていくのがまず法改正についての身近な視点だと思ったんですね。それを踏まえた上で、今現在御提案いただいた、例えば定員数のポイントについて、先生は、これから対面を重視した形で戻していくというのが適切な流れであると考えなのか、それとも、ようやくこのオンラインの授業の流れが追いついてきたので、それとうまく合わせて、元に戻すのではなくて、新しい形で定員数をもう一回考え直すべきだと考えなのか、その辺りちょっと御意見聞かせていただければなと思います。
 以上です。
【荒瀬座長】  内田先生、お願いいたします。
【内田氏】  内田です。よろしくお願いいたします。
 ここからは私個人の見解というか、研究発表にさらに上乗せして私自身の考えを述べていくところになっていきますので、少し私の考えが入るところがございますがお許しいただければと思います。
 私としては、今、森田先生の御提案にあったように、教員定数についてはかなり大事な点だと思っております。そこについて、例えば旧規程に戻せばいいということを私は考えてはございません。時乗先生の御発表にありましたように、それこそ森田先生もおっしゃったように社会はどんどん変わっています。ICTにつきましても、アットマークをはじめとして、どんどんeラーニングなどが入ってきて、通信制高校ではそうしたICTの活用をどの程度行っているのかということに関しても近年調査されております。そうしたことに鑑みますと、また、先ほどの時乗先生の御指摘も踏まえますと、そもそも通信制で求められている教育の質保証についてモデルとなるような指導の在り方は何か、そこから逆算するといいますか、ある程度必要な部分をモデル化して、望ましい教育の在り方を十分に議論した上で、そこから逆算して教員数や施設の在り方を考えていく必要があると。
 私もまだまだ浅学で申し訳ないのですが、恐らく今までの流れからすると、外圧と森田
先生はおっしゃいましたが、社会的な圧力がかなり強くて、それこそ90年代初頭の多様な高校の在り方とか、高校改革の必要性が叫ばれていた中で、特に通信制には急激な変化が求められていた。その中で、文部科学省の方々も、通信制高校関係者の皆様も、恐らく手探りの状態でその対応をされていたのだと思います。ただ、そこから約30年がたちました。ちょうど私が、その年齢ぐらいですけども、それから約30年が過ぎた今、この調査研究協力者会議の先生方がいらっしゃいますように、いかに今後、質保証の一つのモデルとなるような面接指導、添削指導、そして試験といった通信制の在り方をつくっていくのか、その際、どのような教員、人的資源の配置が必要なのか、さらには校地校舎の設備、特に教室といった物理的な空間に加えて、近年重要視されているインターネットなどのサイバー空間がどれほど必要なのかなどについて改めて考えることが求められており、そこから逆算して、何が望ましいのかについて丁寧に論じていくことが重要だと思います。
 ですので、私個人の意見ではございますが、この昔の旧規程に戻すということよりも、新しい社会、それこそ令和の学校教育の在り方を十分に議論した上で、通信制高校にはどのような人的資源が必要なのか、どのような物理的な学校空間やサイバー空間が必要なのかを逆算して考えていく必要があると個人的には考えております。
【森田委員】  ありがとうございました。今現在というよりは、もう少し先を見た形で、毎回追いかけ追いかけではなくて、少し先を見た形でのモデルをつくって見積もっていくようなものがよろしいという意見で理解しました。
【内田氏】  そうです。私個人の意見ではございますが、そのとおりでございます。
【森田委員】  ありがとうございました。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。
 それでは、日永先生、お願いいたします。
【日永座長代理】  日永です。よろしくお願いします。
 今の話に何とかつなげようと思いつつ、時乗先生がおっしゃっていた学校評価システムの活用という部分に関して、ちょっと発言をしたいと思います。
 最後の議論は、恐らく将来的に必要とされるというか、望ましい形の通信制高校を想定して、そこからバックキャスト的に評価基準というのをつくっていこうというようなイメージにつながっていくんだろうなと思うんですが、そういうふうな方向の活動はぜひやっぱりしていくべきであろうと思うんです。
 その一方で、今回の時乗先生の発表にあったように、まだ通信制高校の底上げ、条件整備というのが非常に必要になっているので、この学校評価システムを活用するときに、複数の評価というのを組み合わせていく必要があるだろうと改めて思いました。
 実は学校評価のガイドラインは2012年の改訂のときに随分大きく方向性が変わっているんですね。以前は、どちらかというとたくさんの評価項目でチェックをして課題を発見していくというようなタイプの学校評価だったんだけれども、2012年の改訂から目標を重点化して、その改善に向けた評価にしようというふうな話になってきました。ところが、学校評価ガイドライン自体はどちらかというと義務教育段階を想定してつくられているので、非常に多様性のある高等学校にはなかなか適用しにくいという部分がある。通信制高校の場合について考えると、これも時乗先生のお話にありましたけれども、共通的な指標、チェック項目で、その課題を発見するという学校評価は維持しつつ、一方でそれぞれの高校が重点目標を設定して、その実現に向けて改善をすることが必要だと思うんです。そこで一つ課題になってくるのが、今の指導要領ではカリキュラムマネジメントと学校評価の一体的な活用、展開というのが言われていて、そうすると先ほども議論になった学力の測定という部分がどうしても必要になってくるわけです。目標に応じた身につけさせたい力をきちんと身につけられているのかというようなことを測定する。でも、これが一番難しくて、これを通信制高校だけでなく高校全体が取り組むべき課題でもある。だから、まずは最低限の部分のチェックだということを明確に打ち出していくような評価システムを第一に実現する。これは義務的にやっていく、しかも、項目を共通化することで都道府県を越えたチェックができるようにしていくというのは迅速にやるべきことだと思いました。
 長くなりまして、申し訳ありませんでした。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。森田先生と内田先生のお話とも関わって、大変大事な視点を頂戴したと思います。今のお話を聞いていて思いましたのは、高校教育全体の話にやっぱりまた返ってしまうという気がするんですけれども、高校教育、一方では選抜をしているという関係から、高等学校の多様性、あるいは独自性といいましょうか、個性といいましょうか、そういったことと、一方で、我が国の高等学校教育の共通性は何なのかという、これもずっと永遠のテーマみたいな感じで高等教育というのを考えるときに出てくるわけですけれども、その共通性というもの自体が少し変わりつつあるのかなとも思いますので、ぜひ今のお二人のお話、日永先生のお話なども視点として持ちながら考えていきたいと思います。
 では、青木先生、それから吾妻先生の順番でお願いいたします。
【青木委員】  ありがとうございます。青木でございます。
 今、直前に日永先生が話題にされたことを私も考えていまして、学校教育の中で何が起こっているのかが分からないからそれをどうしたらいいだろうかという論点に対してはやはり出口でのチェックというのも一つ考えていいのかなと思います。具体的な固有名詞で言いますと、荒瀬座長も関わっておられました「学びの基礎診断」というものをどう活用できるのか、するべきかどうかというのは一つ考えていいことだと思います。つまり通信制高校だけの課題ではなくて、高校全体で高卒というものをどう担保していくのかという議論になると思います。その上で、本日、時乗先生が御報告された通信制高校でのティーチングをどう確認というか、社会的に確認していくかということに関して言いますと、これはそうあるべきだという意見ではありません。面接指導と添削指導がゼロサムのようなものになってしまっているということが観察できるとするならば、虚心坦懐に考えれば、だったら、面接指導や添削指導を倍にすれば、ゼロサムでもそのぐらいでちょうどよくなるんじゃないかなというふうにも考えられはしないかということです。
 あともう1点だけ申し上げます。先ほど内田先生の御報告で恐らくそうだろうと分かったことは、やはりPT比の問題なんだと思います。これはもう学校評価というよりは、何というんでしょうか、消費者保護というような、世間にそれぞれの学校が当然に開示すべき情報としてガイドラインのようなものに盛り込んでおけば、それだけでも随分変わるのではないかなと思いますし、私も研究者ですので、研究する立場からしてもその情報があればかなり研究もしやすくなるのかなと思います。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。「学びの基礎診断」の御指摘をいただいて、結局、高等学校の共通性ということを考えたときに、どういった力をつけるのかということを考えていくということなんですけど、実は「学びの基礎診断」がそもそも共通性というものがやや幅が広いということに、基礎診断について検討していく中で至っているという現実的な面もありまして、そういったことも含めて、本当にここでの議論というのは高等学校教育をどう見ていくのかということも、非常に大事な視点を我々は持ちながらやっているんだなということを改めて感じるところです。
 すいません、吾妻先生お願いします。
【吾妻委員】  ありがとうございます。お二人の発表を伺わせていただきまして、本当に改めて気づかされるといいますか、勉強させていただいて、本当にありがたい御発表だったなと感謝をしております。
 やはり私も同じように、それぞれの学校が教育の質を高めていくためには、学力測定のような形から何が必要なのかというところに立ち戻って、質を高めていくということが大切なんじゃないかなと感じました。もちろん思考力や判断力とか、知識だけじゃないものをどう測定していくのかという問題点は、定時制、通信制に限らず、大きなテーマであると思いますが、そういったことも含めてどのように進めていくのか、その結果として、ICTをどう活用していくのか、あるいはメディアをどう活用していくのか、スクーリング回数はどうなのかというようなことに至っていけるんじゃないかなと感じております。
 また、内田先生が御意見を言われていまして、私も本当に同感でございまして、やはりそういった教育の質をどう高めていく、そのために教員数がどうなのかとか、施設の基準をどうしたらいいのかというところに立ち戻って考えていくというような議論が、この後に生かされていくということを改めて感じさせていただきました。ありがとうございます。意見を言わせていただきました。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。
 では、時乗先生どうぞ。
【時乗委員】  ありがとうございます。時乗です。
 1点だけ、先ほど青木先生から、決してこれが理想的な話でないという前置きがあった上で、面接指導とか添削指導だとか、そういった部分の量を倍にすればいいという趣旨の御発言があったかと思いますが、基本的に私は量を倍にするということでこういった問題は解決するものではないと思っていますし、また、その量を倍にすれば、ある意味通信制が持っている強みが減ってくると思っています。だから、通信制の本当にいい面を残しつつ、いかに質を上げていくのかというのが一番大きなポイントになってくると思っていますので、決して量を倍にすれば云々という話ではないと感じています。
 できれば、私は個人的に、面接指導だとか添削指導だとかというネーミングそのものも令和の時代に合うのかという気がしています。今後は、主体的な学び(添削指導)と協働的な学び(面接指導)を一体化した教育活動を考えていかないといけないと思っています。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。
 篠原先生どうぞ。
【篠原委員】  ありがとうございます。お二人の発表を伺って、またいろいろと教えていただくことがたくさんございました。その上でまた感想的なコメントになってしまって恐縮なんですけれども、まず、内田先生の発表の中での結果というのは、ある意味現場にいるとすごくなるほどなというか、当然かなというとちょっと語弊があるんですけれども、やっぱり校舎を新たに造ることの大変さというのはもう皆様御承知のとおりですので、それが緩和されて、様々な業種の方も通信制に参入できるということについては、一つの流れを後押ししているものなのではないかなと思いました。なぜそのところで、様々なところが、株式会社も含めて参入したかというと、当然ながらニーズがあるからでありまして、やはり不登校あるいは多様な生徒がいるということについて、彼らの居場所なり何なりの、ニーズを把握したところがやはり通信制に入ってきたのであろうなと感じます。
 同時に高校ですとか、もう既に学校法人であったところが新たに通信制をというところも、もしかすると全日についていけないような生徒たちを何とか救いたいというところで通信制を新たに始めるような学校様もいらっしゃいますし、そういうところで教員というところを手当てすればそこでサポートができるといいましょうか、別の形での教育が展開できると感じる学校さんが多かったのかもしれないなというように、現場にいまして何となく想像ができるし、先生がまとめてくださったデータというものをとても実感として受け止めることができました。ぜひ、広い視点でまたいろいろなデータをいただけたらと思いました。ありがとうございます。
 時乗先生の御発表をきっかけに、今、様々な意見があって、私も時乗先生が最後におっしゃったことを申し上げようかなと思っていたんですけども、やはり面接指導、添削指導という、私どもの高校ではそのほかに放送と試験という4つの要素が私どもの教育の柱になっているんですけれども、何というんでしょうか、在り方そのものがもうそろそろ変わってもいいかなという実感を持っています。やはり対面、リアルでやるべきことは何なのか、ICT、あるいはオンラインでメディアを使ってできることは何なのか、教育の中でそこをどのようにツールを使いながら役割分担をして質を高めていくことができるのか、恐らくそれは大学で今オンラインが盛んに行われていますけれども、その大学でも必死に考えていることなのではないかなと思います。そこはもしかすると高校、大学変わらず、やはり教育の中でリアルとオンラインの目指すべきものというものを本質的に考えることが必要なんだろうなということを改めて感じました。
 長くなって申し訳ないんですけど、私どももやはり添削指導、レポートということについて言いますと、放送を基にして、今は単元を中心に考えていますが、それをさらに放送回に分割して、その理解ができたかどうかということについての添削的なレポートをこれからは課してみようということを来年度から施行したいと思っていまして、そういうことで言うと、単純に量ではなく、どういう意図で添削をやり、レポートを必要としているのかということを考えていくことが大切なのではないかなと感じております。
 すいません、長くなりましたが、以上でございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。
 先生、すいません、途中で私の声を出してしまいまして、申し訳ございませんでした。
【篠原委員】  いえいえ、とんでもございません。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。
 それでは、原口先生お願いいたします。
【原口委員】  よろしくお願いいたします。
 本日は、実際の点検調査からの報告と、それから研究的な発表と、非常に幅広い知識を与えていただき本当にありがとうございました。内田先生の発表のほうは、21ページにございます教育上の多様なニーズを媒介項として、生徒・学校・地方行政の意図が結合したんだと。この21ページの一番下のところが印象に残っております。地方行政、地方の活性化というものをイメージして、平成27年度に起きた通信制の大きなマイナス面、不適正な経営問題があったと思うんですけれども、その件が発端となりそれまで全く文部科学省が通信制にアプローチしていなかったのが、こういう会議が立ち上がってきたと思います。そのときに、2代前の会議ですけれども、共通性の確保と多様性への対応という言葉が出ていたと思います。共通性の確保と多様性への対応の両方を見据えてやっていきましょうということだったんですが、私としては、日永先生もおっしゃっていましたけれども、「学びの基礎診断」など共通の学力の測定を通信制に課していくのは非常に厳しいのではないかというお話に実感として賛成をしているところでございます。
 また、先ほど時乗先生もおっしゃいましたけれども、学習指導要領に盛り込まれております通信制課程の教育課程の特例、この少ない添削回数、少ない面接指導回数、これを単に増やせばいいのではなくて、やはりその中身重視、どういう方向に持っていったら質が担保できるのか、質保証に求められる教育の在り方を、前回も発表したつもりだったのですが、考えていき、そこから教員定数もぜひ考えていきたいと感じております。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。まとめることもできないんですけれども、少し申し上げたいと思います。今、原口先生からもおっしゃった中で、基礎診断が通信制に書かれているということでしたが、基礎診断自体は全ての高等学校に選択してもらえるようにということで、実際に全日制の学校でもやっていらっしゃるところはもちろんあるわけです。また、共通性の確保と多様性への対応というのは、高等学校教育を考える上で今までずっと言われてきたことですけれども、改めて共通性とは何なのかというのと、多様性をどこまで認めるのか、ここに注視していく必要がありそうです。先日、私、別の会議で、評定平均値ってありますよね、学習指導要領の議論になったときに、評定ってどんな意味があるのかという話がよく出ますけれども、しかし、現実には今ありますよね。ところが、例えば国語は5で、数学は2で、理科は2で、英語も2でとかいう子がいたとして、これを全部平均すると、3.幾らになるか、2.幾らになるかとなるんでしょうけど、国語の5というのはもう出てこないですよね。そういう評定平均をするということで、一定以上力があれば共通してそれは高等学校の課程を履修したものだというようにするという、こういう考え方自体もちょっと時代に合わないんじゃないかなという気がしております。
 だから、それこそ基礎診断は、今日、2度も言葉を聞いて大変うれしかったんですけれども、その基礎診断というものをどう活用していくのか、どういうことを問うていくのかということも、これまた非常に大きな課題だなと思います。
 外圧があったという話もありましたけれども、よいかどうかは別としまして、実際に原口先生の御発表の中であったわけですけれども、いろんなニーズがここに重なって、今現在の通信制高校の在り方というのがこのような状態になっている。そこで青木先生がさっきおっしゃっていた消費者保護の観点という視点、これは生徒の学びがちゃんとそこで実現しているのかとか、お金を払った分ちゃんとそこについて返ってきているのかという点についてもしっかりと見ておく必要というのが、やっぱりこれからは大きく視点として持つことが大事なのかなということも思った次第です。
 すいません、青木先生が手を挙げていらっしゃいました。どうぞ。
【青木委員】  ありがとうございます。青木です。
 先ほどの面接指導のことなんですけど、私の意図はお酌み取りいただいていると思っています。つまり、今の制度にはそういうことをやってしまうインセンティブが組み込まれているので、だったら倍にすればいいじゃないかという単純な話なんですけども、それはいかがなものかという御意見は確かにそうなんですけども、その上で改めて伺いたい。
 今日は時間がないので次回以降深めたいと思うんですが、ほかの制度ではこういった論点に対して対応ができないとおっしゃっていたのか、つまり運用とか、言わば性善説で何とかしていこうという、学校評価とかですね、そういうからめ手でやっていこうということなのか、それともやっぱり別の制度をつくれば、そういった問題は――そういったというのは、面接指導と添削指導がごちゃごちゃになってしまうということは――制度上対応できることなのかということは、改めてちょっと深めたいなと思いました。
 以上です。
【荒瀬座長】  ありがとうございます。いろいろとやっていくことはまだまだあるということが今日また明らかになりましたが、妙なことを申しますけれども、この会議はこういう形で、様々に議論ができているという点は非常にありがたく思っております。こういった議論を今後も続けてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 そうしましたら、もう時間がいよいよいっぱいになりました。本当に今日もありがとうございました。時間が来ておりますので、これで締めたいと思います。
 次回以降の予定につきまして、酒井さんのほうからよろしくお願いいたします。
【酒井補佐】  本日も充実した御議論をありがとうございました。
 座長、1点だけ補足をさせていただければと存じます。座長からありました消費者保護という観点で、先ほど青木委員から情報の開示という御指摘がございました。御紹介させていただきますと、前回の調査研究協力者会議の中でも御議論になりまして、本年3月の通信教育規程の改正によって情報の公表というものが通信制高校のほうで義務づけられることになりました。これは来年の4月から施行ということになりまして、青木委員から御指摘がありました、例えば職員の数であったりとか、その他教員組織に関することはいわゆる情報開示の対象ということになっているということでございます。その旨少し御紹介させていただければと存じます。
 次回の会議の日程でございます。第4回の会議でございますが、12月24日金曜日の10時から12時での開催を予定してございます。詳細につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 以上でございます。
【荒瀬座長】  ありがとうございました。それでは、年内最後の会議になる12月24日にまたお会いするということで、よろしくお願いいたします。今日は本当にありがとうございました。時乗先生はもちろんのことながら、内田先生、御発表いただきまして、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。御礼を申し上げます。
 では本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)