「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回)議事録

1.日時

令和3年10月26日(火曜日)15時00分から17時00分

2.議事録

【荒瀬座長】 皆さん、こんにちは。荒瀬でございます。定刻にやや早いかもしれませんが、皆さんおそろいですので、ただいまから第2回令和の日本型学校教育の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
この会議につきましては、報道関係者等から写真撮影、録音の御希望があり、許可しておりますので御承知おきいただきたいと思います。
本日の会議も、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止の観点から、ウェブ会議システム、今回はZoomによる開催とさせていただいております。また、傍聴者の方につきましては、ユーチューブによって御視聴いただいております。
それではまず、会議に入ります前に、前回欠席で今回から初めて参加される委員がいらっしゃるのと、また、事務局に人事異動があったということでありますので、併せて御紹介をいただきたいと思います。酒井参事官補佐、よろしくお願いいたします。
【酒井初等中等教育局参事官(高等学校担当)付参事官補佐】 失礼します。まず、今回から初めて参加されます委員の方を御紹介いたします。
一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、岩本悠委員でございます。
【岩本委員】 岩本です。どうぞよろしくお願いいたします。
【酒井補佐】 また、前回の会議以降、事務局の人事異動がございました。安彦前参事官が修学支援・教材課長に異動となり、その後任として、10月11日付で田中義恭が参事官高等学校担当に就任しております。
【田中初等中等教育局参事官(高等学校担当)】 田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。岩本委員、よろしくお願いいたします。田中参事官もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の会議の開催方式、配付資料等につきまして、事務局から説明をお願いします。
【酒井補佐】 失礼いたします。本日の会議開催方式でございますが、座長から冒頭御紹介がありましたとおり、ウェブ会議システム、Zoomによる開催とさせていただいております。また、傍聴者の方はユーチューブによるライブ配信ということになってございます。
ウェブ会議システムを併用して御議論いただく観点からお願いしたい事項でございますが、5点ございます。毎度のことでございますが、1点目は、御発言に当たって、インターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただくなどの御配慮をいただきたいということ。2点目は、御発言の都度、名前をおっしゃっていただきたいということ。3点目は、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきたいということ。4点目は、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただきたいということ。最後5点目、御発言の後は「手を下ろす」ボタンを押していただきたいということ。これらの点について御配慮いただきますとありがたく存じます。御協力のほどよろしくお願いいたします。
また、本日の配付資料でございます。議事次第にございますように、資料1から資料4と、参考資料1から参考資料6までを御用意し、委員の皆様には事前にメールにてお送りをさせていただいております。また、会議の中で説明する際には、画面上に随時表示もさせていただきます。
御不明な点や資料の不足等がございましたらお申しつけいただきますようお願いいたします。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは、本日の議事に入りたいと思います。
本日は、前回の会議で、この会議の検討課題として提示がありました課題のうち、教育方法や学習支援体制に関する課題について取り上げたいと考えております。
本日、これらの課題について検討を行うために、まず事務局から、本日の議題に関連する前回の会議での各委員からの御意見と、御意見を踏まえた議論のポイントにつきまして説明をいただいた後、通信制高校の学校現場のお立場から原口委員、吾妻委員に御発表いただき、学識経験者のお立場から森田委員に御発表をお願いしたいと考えております。
まず事務局から御説明をいただきます。その後、原口委員、吾妻委員、森田委員の順に御発表いただきたいと思っております。その後、意見交換の時間を設けております。
では、まず事務局からお願いをいたします。酒井参事官補佐、どうぞよろしくお願いいたします。
【酒井補佐】 失礼いたします。資料1に基づきまして、御説明をさせていただきます。また随時、本日配付しております参考資料3も御参照いただければと考えております。
まず、前回の会議で御意見いただきました内容につきましては、本日、参考資料1としておまとめをさせていただいておりますが、この参考資料1で掲載させていただきました概要の内容のうち、本日のテーマに関係する内容、御意見につきまして、資料1としておまとめをしたものになります。
資料1の1ページ目でございます。まず、前回の会議の際に、本日のテーマに関連いたしまして、通信制課程における教育の目的・原則について関係する御意見を出していただいておりました。
御紹介をさせていただきますと、1つ目のポツであります、通信制高校に入学する生徒たちの若年化や多様化が進んでおり、自学自習を前提とする制度自体に対応できていない。自学自習は実態としては非常に厳しく、組織的な学習のサポート体制が必要であるといった御意見や、通信制高校において、自学自習ができるという前提で生徒に指導していくと成り立たない状況になっている。自学自習ができない生徒を何とか自学自習ができるような形にして卒業させているのが実態であるといった御意見。
通信制高校に通学する生徒ということで1つにくくるのではなく、一人一人に個別最適な指導ができる仕組みをどのようにつくっていくのかが大切。本人の努力と周囲のサポートを加えていくと、自立して学習ができる生徒になった例も多く見ているといった御意見。
定通振興法第1条を見ると、通信制課程が勤労青年を名宛人とした制度であることが分かるが、不登校等の生徒が増えている実態を法令上どのように表現していくのかといった御意見。
さらには、通信制高校では、自学自習ができない生徒が入ってくる側面のほかに、最近の傾向として、通常の高校教育では飽き足らない、満足できないという、いわゆるギフテッドの生徒も入学しているといった御意見。こういった御意見があったところでございます。
これらを踏まえまして、今後、議論していただくべきポイントという点で2点、少しおまとめをさせていただきました。
1点目は、通信制課程は、勤労青年のみならず、多様な入学動機や学習歴を持つ生徒に対して、個別の教育課題に対応した高等学校教育の機会を提供する機関ということでございますので、その目的・意義を整理してはどうかといった点が議論のポイントになってくるかと考えております。
もう1点でございます。通信制高校課程に在籍する生徒の実態は多様であるといったことを踏まえまして、多様な生徒の実態に応じて、個別最適な学びと協働的な学びといったことを各学校で実現するためには、どういった教育方法、教育環境が求められるのか。この辺りが、前回の会議の御意見を踏まえた今後の議論のポイントになるのではないかと考えております。
2ページ目をお願いします。次に、前回の会議で少し議論になりましたテーマとして、通信制課程における教育の質の確保といった点があったと考えてございます。
前回の会議の御議論の中でも、例えば、通信制高校の質というものをどのように定義していくのか共通理解を持つことが大事であると。教育の質というと、それぞれが思い描くもので議論しがちであり、しっかりした定義を持っておくことが必要。その際、学習の成果・教育の成果のみならず、諸条件の整備といったインプットの整備や、教員による教育のプロセス、生徒側の学習のプロセスを基にした質の定義を考えていく必要があるといった御意見。
また、2つ目のポツでありますが、個別最適化された学びに対応するためにはきめ細かい対応が必要となり、通信制高校に配属される教員の数や教員の種類について、法令面に手をつけざるを得ないと考えるといった御意見。
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、特別支援教育コーディネーターの配置に関する制度化が必要ではないかといった御意見。
サテライト施設の教育環境について、単に設置基準に適合するかどうかではなく、どのような教育に取り組むためにこのサテライト施設では十分なのか不十分なのか検討すべきといった御意見。
通信制高校の質確保・質保証について、認証評価をきちんとしていくべきであるといった御意見。
質保証のために第三者評価を行っていく評価機関や評価人材の育成を図ることが大事といった御意見があったと受け止めてございます。
これらを踏まえまして、3ページ目をお願いします。少し今後の議論のポイントとしておまとめをさせていただきました。
まず(1)でございます。通信制高校における教育の質を確保・保障するために、例えば、教育の質とはどういうものかといったところで、以下の3点の観点から考えていくことが必要ではないかということでございます。
①番は、まず適切な教育条件、教育環境や指導体制・支援体制の確保といった点。2点目は、個別の生徒の学習ニーズに対応した、個別最適な学びと協働的な学びを実現する教育方法の実現といった点。3点目は、生徒における適切な学修の内容、学修の量の確保といった問題。こういったことがあるかと受け止めてございます。
このうち(2)番でございますが、まず1つ目の適切な教育条件といった論点でございますが、高等学校通信教育規程の現行規定でございますが、これからの通信制課程の教育を実施する上で適切な教育条件を確保するものとなっているのかどうか。また、通信教育連携協力施設の教育状況に関する規定についても、適切な教育条件を確保するものとなっているかどうか。これが今後の議論のポイントではないかと考えております。
参考資料の3において、高等学校通信教育規程の弾力化・大綱化の経緯について、少しおまとめをさせていただいてございます。
こちらは、平成16年に通信教育規程の大綱化・弾力化が行われたところでありますが、この中で大綱化・弾力化された内容について、少し分かるように資料をおまとめをさせていただいております。
この中では、通信制課程の規模であったり、教員等の数であったり、施設設備の基準であったりといったことが弾力化をされていると。さらに平成18年には、他の学校等の施設及び設備の使用も可能になっているといった点が弾力化をされたということでございます。
この弾力化の影響につきましては、資料の5ページに参考資料3ということで、これは、いわゆる教育社会学の研究の中で言及されているものでございますが、この通信教育規程の改正の影響が、例えば教諭等の数の中で影響があったのではないかとか、校地・校舎の要件に関しても影響が生じているのではないかといった研究も見られるところでございます。
資料1にお戻りいただきまして、資料1の3ページ目の(3)でございます。
先ほど申し上げました教育の質の確保・保障という点でございますが、(3)でございますが、個別の生徒の学習ニーズに対応した、個別最適な学びと協働的な学びを実現する教育方法というところでございますが、そういった学びを実現するためには、現行の教育方法以外の教育方法を取り入れるということは考えられるのかという点が、2点目の議論のポイントであろうと考えてございます。
(4)でございます。3点目の議論のポイントでございます、生徒における適切な学修の内容や学修の量の確保といった点でございます。
通信制課程においては、御案内のとおり添削指導の回数と面接指導の単位時間が定められているところでございますが、そのほかは自学自習によって学修を行うとされております。これは、全ての通信制高校の生徒にとって、現状の学修の内容・量は適切なものなのかといった点も、議論のポイントであろうと考えております。
この点につきましては、参考資料3の6ページ目に、全日制・定時制の学習の量と、通信制課程の場合の学習の量の現行法令上の規定の違いというものをお示しさせていただいているところでございます。
全日制・定時制の場合は、1単位を習得するに当たって、1単位の時間は50分授業で、35単位時間を1単位として計算をすることと、学習指導要領で定められています。
一方、通信制の場合は、添削指導の回数と面接指導の単位時間数が定められておりまして、例えば国語・地理・歴史・公民・数学の場合は、添削指導が3回と面接指導が1単位時間50分によって、その他は自学自習により学習を実施すると定められているところでございますので、こういった学習の内容・量というものをどのように考えていくかというのが、議論のポイントの3点目であろうと考えてございます。
少し資料をお戻りいただきまして、資料1の3ページ目にお戻りいただければと思います。資料1の3ページ目の(5)でございます。前回の御意見の中でも、第三者評価に関する御意見がございました。(5)番、第三者による評価結果を、各学校の教育の質の確保・向上につなげるとともに、入学希望者やその保護者への情報提供にも資するものとするためには、どのような方策が必要なのかといった点が今後の議論になろうと思います。
この点は、参考資料3の参考5に、通信制課程における第三者評価の現状というところで資料をまとめさせていただきました。
特に、資料の9ページ、10ページが、第三者評価の現状ということで、昨年度、文部科学省が実施をした委託調査の結果をおまとめしております。
第三者評価を実施している通信制高校の割合はおよそ15%程度。この15%程度の第三者評価を実施する学校のうち、公開している学校が約5割弱という状況でございます。
さらには、10ページ目でございますが、第三者評価の現状といたしまして、第三者評価の項目というところでありますが、第三者評価を実施している項目の中でも、学校運営計画については多くの学校で第三者評価の対象となっておりますが、例えば教育課程であったり、報告課題の内容であったり、成績評価基準ということはほとんどの学校において第三者評価の対象外となっているのが現状であるということを見て取ることができます。
すみません、資料をお戻りいただきまして、資料1の4ページ目でございます。
前回の会議の御意見の中で、各学校ごとの特徴を踏まえた対応についても御指摘がございました。例えば、公立通信制の生徒数の減少について実態がどうなっているのかとか、公立高校の設置者である各都道府県の公立の通信制高校の教育の質を高めようとする意識も大切といった御意見。
広域通信制と狭域通信制では在籍する生徒の実態に差が生じており、ひとり親家庭の生徒、特別な支援を必要とする生徒、心療内科に通院歴がある生徒が、狭域のほうが多く在籍しているという点で、自学自習を掲げる公立の通信制であっても生徒の実態が追いついていないといった御意見。
私立の中には、サポート校が大切な位置づけになっているという学校がありまして、生徒が勉強している実態があることから、サポート校・サポート施設をどれだけきちんと担保していくのか、その質のコントロールが大事という御意見。
さらには、ひとり親家庭であったり生活保護世帯であったり、経済的に厳しい御家庭ではサポート校などの費用を出すことができない実態もあるといった御意見。
さらには、通信制の機能や、全日制の生徒も活用できることや、通信制には通っているが全日制の授業のような形でフォローできるようなことも必要ではないかといった御意見。
全・定・通という枠組み・形式論ではなく、こういう生徒にはこういう学校という発想ができるとよいのではないかという御意見。
最後に、国の経費で学校を選んで実証的な研究を行い、特色ある通信制高校を意図的につくっていく制度があってもよいのではないかといった御意見がございました。
議論のポイント、5ページ目でございますが、公立通信制につきましては、これは平成29年の調査研究協力者会議の審議まとめの中にも言及がございましたが、公立通信制については、生徒一人一人の困難や課題等に応じたきめ細かな指導や支援といった点に課題を感じている学校も少なくないという指摘があったことも踏まえて、今後、各学校においてどのような取組を進めることが有効なのかといった点が議論のポイントになってくるかと考えております。
(2)でございます。私立通信制につきましては、提携するサポート校の通学コースについて、指導体制の課題であったり、施設設備の課題や、また高額な費用の問題があるという御指摘もありましたが、今後、各学校においてどのような取組を進めることが必要かといった点が議論のポイントであろうと考えています。
最後、通信制課程における特徴的な学びの姿として、今後どのような学びを進めることが考えられるのかといった点が議論のポイントだろうと考えております。
少し長くなりましたが、御紹介とさせていただきます。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今、酒井補佐から御説明いただきました内容につきまして、御質問のおありの方、いらっしゃいますでしょうか。
御意見は後からまとめて頂戴するということにさせていただきたいと思うのですが、御質問が今おありでしたら、どうぞ、お手をお挙げください。よろしいでしょうか。
では、また後ほど、ございましたらお願いするといたしまして、では、冒頭申しましたように、3人の委員の方から御発表をお願いしたいと思います。
まず原口委員、お願いをいたします。
【原口委員】 原口でございます。本日は、令和の通信制高校教育の方法や学習支援体制に関して、学校現場からの現状と課題、これからの通信制高校に求められる教育について、本校の学習モデルを用いて発表いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、発表者である私と通信制高校の関わりは、平成25年、神奈川県のもう一方の県立通信制課程を持つ神奈川県立厚木清南高校通信制教頭職に着任したときに始まり、全・定・通3課程併置校、全・定並置校を経て、全国で7校のみの通信制単独校、神奈川県立横浜修悠館高校校長職として現在まで5年勤務しており、通算9年間の公立通信制高校での教育活動を継続してきました。
この間、全通研全国大会平成30年愛媛大会、令和元年長崎大会において、「通信制発足70年、教育課題の編成とレポート添削好事例」について、全国の通信制高校約100校のアンケートを回収、分析して、本部発表をいたしました。
では、まず平成10年以降の広域通信制高校の学校・生徒数の増加、躍進について見ていきます。
公立との大きな違いは、履修者数と修得者数です。学校基本調査で、履修者数は公立に比べ30%も上回り、修得者数に至っては公立の36%も上を記録しています。
また、不登校経験者は、広域通信制のほうが狭域通信制の20%近く多くなっていますが、特別な支援を必要とする生徒は狭域通信制のほうが広域の3倍多くなっています。
本校でも、現在この特別な支援を必要とする生徒は在籍の17.7%、334名と顕在化し、増え続けています。
圧倒的な生徒数と学校数を増やした広域通信制高校の広報では、登校の少なさや、逆に提携施設を使った週5日の登校、制服を着て学校に行く安心感、3年間での卒業率の高さ、全・定の高校からの転編入学の機会の多さ、また、専門コースで自分のやりたいこと、例えばプログラミングを学べることなどが、通信制を希望する中学校3年生に対する大きなアピールポイントになっています。
ただ、レポートの内容や添削方法、スクーリングや試験、学習環境や支援体制についてはあまり広報されておらず、全通研の全国アンケート調査でも、詳しく書いていただいた学校は非常に僅かでした。
一方、公立通信制高校の教育活動の現状として、従来型の自学自習を前提とした厳格な教育活動で学びの質を担保しているところが多いため、先ほど見ていただいたグラフの科目習得率の平均が50%未満であると考えます。計画的・継続的な視聴報告よりも対面スクーリングの出席を重視し、記述式の問いの多い紙レポートを用い、添削回数も1通につき2回から4回と多く、試験も合格ラインに達するまで、個々の教員が学習支援を実施しながら頑張らせるという教育活動が、公立通信制高校には根づいています。
ただ、平成30年に、この会議の2代前の会議で、通信教育質の確保・向上のためのガイドラインの改訂後、ようやく公立通信制高校でも、少しずつですが教育活動に変化が表れました。
それまで生徒の登校を待つだけだった公立の、在籍しながら履修登録をしない非活動生に対する、教員からの電話等でのアプローチが盛んになり、計画的・継続的なメディアの視聴報告による減免も、出席が不足する生徒への最後の手段ではなくなりました。これは学習指導要領の誤った読み取りですから、最初から生徒の状況を見極めて実施するようになりました。
ICT利用の好事例やレポート添削の好事例も、全国の公立通信制高校から全通研アンケートでたくさん収集できるまでになりました。
令和の通信制高校に求められる教育方法は、新学習指導要領で実現を目指しているものと同様です。この3月に出された文部科学省初等中等教育局教育課程課の参考資料によると、個別最適な学びと協働的な学びの一体化とは、生徒が学びを自己調整しながら学習を進めていくことができるよう教師が指導することと読み取れます。
通信制高校での学習の自己調整が難しい生徒のニーズに合わせた教育モデルとして、本校の実践例を挙げます。
通信制におけるICTを活用した主体的・対話的で深い学びの実践として、レポートの問いを工夫し、1通に1つは探究的な問いを設定します。その問いの評価を、3観点のうち、思考・判断・表現として、そこに生徒が見通しの立てやすい評価基準であるルーブリック評価を組み込みます。
実際の令和4年地理総合のレポートを御覧ください。左側が表紙、右側が思考・判断・表現の観点で作成した問いと、回答するに当たっての見通しの立ちやすいルーブリック評価を右下に記載しています。このような新課程対応レポートを、現在、本校では全教科で作成しています。
写真のように、スクーリングでも1人1台端末を学校で準備して、生徒が自分の意見を入力し、すぐに集計して見せ、別の場所にいる講演者とオンラインでつなぎ、話を全員で聞き、その感想も入力し共有します。教室の後ろで見ていて、この取組は生徒の考えが深まる学びだと実感しております。
次に、学習支援体制ですが、学習の自己調整が難しい生徒のニーズに合わせた本校の実践例の2つ目です。
組織的・協働的な学びのコミュニティーを、開校以来14年間で構築してきました。教員が教科横断で参加し、また、外部教育資源として退職教員や多文化教育コーディネーター、若者サポートステーション、スクールキャリアカウンセラー、就労移行支援事業所などの力を借りています。
このように、外部の教育資源を活用して実践しているのが、小・中学校の学び直し教室、外国生徒の学習教室と相談、一般就職を目指す体験型のキャリア活動。また、発達多様性を持つ生徒の高校通級教室は、他校からも生徒を受け入れています。
写真下は、小中学校の学び直しであるトライ教室です。
写真上は、高校通級教室のコロナ禍におけるオンラインミーティングの様子です。生徒は実に意欲的に学習に取り組んでおり、分かる楽しさを実感しています。
通信制高校教育は、卒業後の進路を見通して行うことが何より大切だと考えます。その理由は、卒業時の進路未決定者の多さです。左手の私立で30.4%、右手の公立では44.6%が進路未決定のまま卒業します。
本校では、学習の自己調整が難しい生徒のニーズに合わせて、3種類の進路指導を並行して実施しています。進学指導、就職指導、そして就労移行支援です。この3種類に分かれた進路指導のうちどれに参加するか、担任や保護者と一緒に決めることが、生徒の自己理解力と、SOSを出す力や相談する力を育てることになります。
通信制高校に求められる教育相談体制ですが、平成28年9月の文部科学省広域通信制高校の実態調査では、98%の学校が実施校の校舎に保健室を備えていると回答しています。しかし、養護教諭については国の基準はありません。
本年2月の協力者会議の審議のまとめ(概要)にも、養護教諭の適切な配置に努めること、SC、SSW等の専門スタッフの充実とありますが、現場では、相談したい生徒・保護者が予約待ちの状態であることが日常で、設置者は、高校からの要望に対して、国の基準がないという回答を繰り返しています。
最後に、通信制高校の教育体制改善のために現場の高校でできることは、教職員が互いに学び合う学校文化を醸成し、具体策を構築することです。
そのためにも、新学習指導要領への移行は、レポートやスクーリングの見直しの10年に一度のチャンスです。文部科学省が設定している通信制高校を対象にした研究事業に応募したり、広域、狭域、私立、公立を問わず、各通信制高校での好事例の発表・共有の場に進んで参加することも、現場の高校の役割だと考えます。
以上が、今回の調査研究協力者会議の前半の検討課題である、教育の方法や学習支援の在り方に対する私の考えです。
後半の検討課題は、国、所轄庁、設置者が通信制高校システムを熟知し、それぞれの通信制高校がミッションを果たすため必要な条件整備、法整備をしていくよう提言することだと考えております。
御清聴ありがとうございました。
【荒瀬座長】 原口先生、ありがとうございました。
ただいまの御発表につきまして御質問を受けたいと思いますが、御質問がおありの方がいらっしゃいましたら。御意見は、また後ほどまとめてということでお願いをいたします。
よろしいでしょうか。では、こちらのほうも、またございましたら後ほどお願いするとしまして、続きまして吾妻委員から御発表お願いをいたします。
【吾妻委員】 皆様、こんにちは。東海大学付属望星高等学校校長の吾妻と申します。それでは発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
初めに、学校の概要から御説明します。本校は1959年に開校しました。開校当初より、FMラジオの電波を利用して講座を配信してまいりました。2010年からは、FM放送での配信からウェブでのオンデマンド配信に移行し、さらに今年度からはレポートの電子化を開始しています。
在籍生徒ですが、渋谷区にある本校に通学する生徒は約500名。技能連携施設で学ぶ生徒は約1,000名。ここにあります技能教育施設における通信制クラスというのは、高等専修学校での学習の継続が困難になった生徒が、高校の学習だけでも継続したいという希望により、技能教育施設を面接指導会場として学んでいる生徒です。私は、これは大変意義のある取組ではないかなと考えております。
本校の技能教育施設は全国に9校ございます。1979年から技能連携制度を始めて、これまで16校と連携をしてまいりました。
教職員数は御覧のとおりです。ほぼ全日制の高等学校と同規模ではないかと思います。
望星では4月から9月を春学期、10月から3月までを秋学期と呼んでいて、それぞれ学期ごとに科目を履修して単位認定を行っています。
本校での学習について御説明いたします。学習のコアとなるシステムは以下のとおりです。本校ではオリジナルの高校通信教育講座を配信しておりますので、スクーリング回数は10分の6減免で実施をしています。
この4つの学習システムを基本的に1人の教員が担当しますので、連動した教育活動が展開できるという点が大きな特徴ではないかなと思っております。
本校オリジナルの高校通信教育講座ですが、1科目約30分の講座をインターネットで毎週配信をしております。各学期で18から20回の配信となります。科目を担当する望星高校の教員が、直接校内のスタジオで収録をしております。
それでは、実際の講座の一部を御覧ください。
(動画上映)
【吾妻委員】 ありがとうございます。それでは次に、添削指導について説明をさせていただきます。
レポート課題はロイロノートというアプリを使用して、生徒がタブレット、パソコンなどで回答して提出をします。そして教員もロイロノートで添削をして返却をいたします。
次にスクーリングですが、スクーリング日曜クラスは月に2回程度の登校、水曜クラスは月に2回から3回程度の登校で進めております。各学期の最後に定期試験を実施しています。
これは、実際に生徒に配付している、今年度の秋学期の学習予定表の一部となります。一番上の、例えば国語総合をちょっと見ていただきたいと思いますが、国語総合の②とありますが、これは4単位必修ですので、春学期に①を実施して、秋学期が2ということで分割履修をしております。
スクーリングについては、いわゆる最低スクーリング回数は四角の中にあります1回となりますが、1足す1足す1という形で、スクーリングは3回実施しておりますので、3回とも出席する生徒もおりますし、1回の出席のみという生徒もおります。
レポートにつきましては2単位ですので、出題数は6回となります。それぞれ締切日が設けられておりまして、計画的な学習を定着させるということを目指して進めさせていただいております。
サポート学習について説明させていただきます。スクーリングを実施しない日の午前中2時間、希望者が参加する学習サポートです。中学校の内容の学び直しから演習、さらに進学に向けた学習と、段階的に実施しております。
登校支援について、簡単に説明をさせていただきます。校舎と道路一つ隔てた隣接地に「憩いの広場」という建物があり、ここではオープンルーム、図書室、カウンセリングルームを設置しています。教室でのスクーリングの出席が困難な生徒に対して、校舎と別棟にすることで登校の可能性を広げています。
これは室内の様子です。オープンルームと図書室は兼用としているので、日によって用途を分けて開室しています。教室でのスクーリングに出席できない生徒が、オープンルームの予定表に沿って、各教科の教員から個別の面接指導を受けています。
学校生活への支援については、養護教諭、スクールカウンセラー、図書司書などを配置していますが、ソーシャルワーカーは残念ながらまだ配置できておりません。
来年度からの学習指導要領の改訂に向けて、通信制の学習形態でどのように実現するのかを現在検討しております。
検討の一例を御紹介させていただきます。通信制は全日制に比べ登校回数が少なく、教育機会が少ないわけですが、様々な学習へのアプローチを組み合わせた通信制の学習においては、むしろ可能性が高いのではないかと感じております。
例えばレポート指導では、知識・技能の習得を主体としつつも、教科書・講座にない設問への回答から思考力や主体性を育むことができ得るのではないか。あるいはスクーリングでは、これまでの知識の紹介といった内容から、思考力、判断力、表現力を養う内容へ変更していく。また、主体的な取組を喚起するように、ICTをうまく活用できないのかということを検討しております。
また、個別最適な学びの推進についても、添削指導での指導の個別化や、面接指導の学習の個性化や協働的な学びを目指すといったことも、明確化することで、教員が学習目標を明確に定めやすいのではないかなと思っております。
本校の教育活動を進めていく中で大切にしていることを少し説明させていただきます。
まず、可能な限り広く選択の機会を設ける。具体的には、幅広く履修科目の選択ができるように心がけております。また、スクーリング実施回数ですとか、先ほど御紹介したサポート学習など、登校頻度を自由に選択ができる。自由参加のサポート学習などを行ったりすることで、生徒それぞれの状況に合った登校スタイルを選択できるようにしております。さらに、できれば入学時の登校スタイルの選択ということだけではなくて、3年間の成長に合わせて参加頻度を上げてもらえるようにしたいというように思っております。
また、行事や生徒会活動、宿泊を伴う研修など、様々な活動に自由に参加でき、特に校外での活動をできるだけ多く行いたいと考えています。このような単位修得に関わらない活動からも、生徒の視野を広げ、社会性や協調性、多様性への理解などを養って、積極性を高めることを期待しています。
一方、私たちは、入学した生徒に対して最初から手を差し伸べ過ぎないように注意をしています。例えば、先ほど紹介したオープンルームの学習も、入学後直ちに利用することはしていません。まずは通常のスクーリングへの参加を目指してもらい、難しいようであれば6月ぐらいから利用するようにしています。また、継続するにしても毎年再申請をして、できれば卒業までにはオープンルームを利用しなくてもよい状況になれればと願っています。
もう一つ、私たちは常々、通信制の生徒だからできないといった先入観を持たないで指導したいというふうに心がけています。少し極端な表現をいたしましたが、当然いろいろな生徒、いろいろな支援が必要な生徒も多くいます。大切なことは、生徒一人一人の状況をしっかりと見て、適切な対応を図ることではないかと思っております。適切な対応とは、結果として単位が修得できましたということ以上に、自ら学び自ら考えるということができるようになってきてくれているかなということを考えて進めております。
そのためには、通信制においてもクラス担任制は大変有効な教育システムではないかと思っています。担任による生徒や保護者とのコミュニケーション、各教科の学習状況だけではない、生活全般の様子など、生徒一人一人としっかり向き合うためには、クラスを単位とする方法は有効ではないかと思っております。
また生徒にとっても、学校生活上最も身近なコミュニティーが自分のクラスではないかと思います。毎回のホームルーム活動や行事等でのコミュニティーづくりは、通信制の高等学校においても非常に大切なことではないかと思っております。
最後に、望星高校からの目線による課題点を少し挙げさせていただきたいと思います。
まず、技能教育制度についてでございますが、各高等専修学校では大変専門的で高度な知識・技能の習得が可能で、さすが専門的教育のプロだなと感心することが多くあります。そして同時に、私たちの高等学校教育をしっかり行うことによって、広い視野を身につけたスペシャリストを育成する、大変有効な教育制度ではないかと思っております。何よりも、3年間で大きな成長が生徒自身が実感でき、そして自己肯定感を育むことが期待できる制度ではないかというふうに実感しております。
課題については、社会的な周知がまだまだ不十分で理解度が低い。保護者が専修学校と高校との二重の学費負担となっている。専修学校の施設は都道府県の認可基準にのっとり設けられていますので、施設的な問題はありませんが、ICT教育環境の充実などについては十分な財政的な支援が得られていないため、立ち後れている状況が多いと感じております。
次に、通信制高等学校としての課題を、望星からの目線で申し上げさせていただきたいと思います。
通信制として74単位以上の単位修得をさせるだけでなく、人間性の涵養など成長を促す教育を推進するためには、全日制とほぼ同程度の教職員や施設設備が必要ではないかと実感しています。このことは、これまでのテーマともなっています学習への支援や登校支援などからも同様ではないかと思います。
これらの必要性に対して、通信制の学費は全日制と比べ低額であり、さらに経常費補助等においても全日制高等学校の数分の1程度である状況ですので、通信制教育の質保証の推進においては、学校経営上の課題も並行して対応する必要があると思います。
終わりになりますが、望星高校は60年以上の歴史の中で、大きく教育内容が変化してまいりました。来年度からは学習指導要領も改訂され、ぜひ、学びに向かう力をしっかりと養成したいと考えています。
観点別評価を含め、育成する力を明確にしながら教育活動の改善を図っていこうと考えていますが、正直やってみないと分からないところもたくさんあります。したがって、大切なことは改善しながら検証して、また考えることではないかと思っております。
そのためには、学校内部だけの視点ではなく、地域や第三者評価が不可欠であり、開かれた学校であることが何よりも必要だと思います。
昨年度、評価機構の第三者評価を受審いたしました。お金もかかり、準備も大変でしたが、機構からの御指摘やアドバイスを受けたこと、また、実施に際して自己点検を実施したことが、新たな気づきを多く得ることができました。
これからも幅広い方々からの指摘や助言をいただきながら、よい教育を進めてまいりたいと思っております。今日は発表の機会をいただき誠にありがとうございました。
以上です。
【荒瀬座長】 吾妻先生、ありがとうございました。
今の御発表に、今、御質問がございましたらお願いをいたしますが、よろしいでしょうか。
日永先生、どうぞ。
【日永座長代理】 日永でございます。興味深い御発表をありがとうございました。10年ほど前に御校を訪問させていただいたときから、先ほど最後のスライドにもありましたように、常にやはり改善を進められているんだなというのがよく分かりました。
本当に初歩的な質問なのですが、教材の中に、実技科目についての授業の様子も出ていたと思うのですが、ああいう体育であるとか芸術、音楽という実技科目の、実際の生徒たちの学習状況であるとか、実際どの程度まで到達していたのかという、その辺の確認の方法としてはどういう方法が取られているのかというのを教えていただきたいと思って質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。もうお一人、時乗先生も手を挙げていらっしゃるかと思います。お願いいたします。
【時乗委員】 時乗です。よろしくお願いいたします。これはこの後の議論の中でいろいろと御意見が出てくるところなのかも分かりませんが、先ほどの原口先生の御発表と、今の吾妻先生の御発表、公立と私立というような形での発表だったと思うのですが、その中で、原口先生の発表の中で、基本的修得率だとか履修率だとかの公立と私学の違いの表が出ていたのですが、率直なところ、例えば修得率、公立49.2に対して私学が85.9、履修率が65.6に対して95.3、この辺の数字の違いというのは、公立をやっておられる先生、私学をやっておられる先生の立場から見て、どこにこの差があるのかというのがもしあれば、教えていただきたいと思います。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかの方はよろしいですか。
では、お二人に御質問が出ました。では吾妻先生のほうから、2つ、1つは実現科目についてと、もう1つ、公私の修得率等の違いについてということなのですが、吾妻先生、お願いいたします。
【吾妻委員】 日永先生、ありがとうございます。御質問の趣旨と、どれだけお答えができているかどうかというのはちょっと不安なのですが、やはり途中から転入してくる生徒を主体として、体育が7単位がなかなか取れないというような状況があります。
つまり、前籍校で体育とか実技科目がなかなか修得できてきていないという状況、不登校というような状況が多いというところも背景としてあると思うのですが、その中でやっぱり7単位の、特に体育については修得をさせるということが結構大変だなという実感がございますが、これについては比較的、これもスクーリング回数を体育については規定の回数よりも少し増やしながら参加を促して、なるべく楽しめるといいますか、体育に対して得意で好きだという感覚が少ない生徒が多いものですから、体育に対する興味・関心がなるべく持てるような講座の作成であったり、あるいは実際にスクーリングでの実技であったりというような形で進めさせていただいております。
芸術に関してもやはり同じような形で、先ほど見ていただいたような講座も使いながら、あるいは、実技科目ですので2時間続きのスクーリングを実施したりしているのですが、そういった中で、なかなかそこはスクーリングに参加できない生徒については、担任のほうが連絡をして呼びかけたりというような工夫をしながらさせていただいているというような状況でございます。
そんな形で答えになっていますでしょうか。
【荒瀬座長】 日永先生、よろしいですか。
【日永座長代理】 結構です。ありがとうございます。
【荒瀬座長】 じゃあもう1つ、時乗先生からの御質問、お願いいたします。
【吾妻委員】 時乗先生、ありがとうございます。公立との比較は僕もちょっとできないのですが、先ほどの芸術や体育の実技のところでもそうなのですが、比較的スクーリングの出席ができていない生徒、あるいはレポートの提出がうまく進んでいない生徒、これについては、締切日をちゃんと設けている中で、生徒に呼びかけをして、なるべくきちっと出すようにというような形で促して指導ができる状況かなというところでございます。
そういった形のいわゆるコミュニケーションをクラス単位で取るということが、比較的効果があるかなというように、教育現場では私は感じているところでございます。
私の感想でございますが、以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
では原口先生、同じ質問ですが、公立の立場から、どうぞお願いいたします。
【原口委員】 先ほど4番のスライドのところで申し上げたところですが、私ども公立通信制の教育活動というのが、非常に従来型で厳格な教育活動で学びの質を保障してきたという現状がございます。計画的・継続的な視聴報告よりも、本当にスクーリングの出席を重視している。そして、記述式の多い紙レポートで、添削の回数も多い。それを決して教員たちが譲らないです。
さらには試験も、合格ラインに達するまで、1回ではなく複数回、個々の教員が生徒に指導してやるという、そういうところにおいては、やはり80%以上の修得率というのはかなり厳しいかと思っております。
ただ、本校においては、平成29年からやはり大分変わってきまして、この5年間で、先ほども申しましたが、在籍していながら非活動生である生徒が多かったのですが、それが減じて実活動生になったのが、平成29年は69%だった。それが今は83まで上がってきました。
そして、履修のみではなく修得まで至る生徒も、平日の講座、コースではなく平日の講座では、やっぱり80%ぐらい修得まで至る生徒はいますし、日曜日の講座においても70%以上がいます。
ですから、50%以下の修得率というのは、やはりちょっと厳しいのかなと、同じ公立でも考えております。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。時乗先生、よろしいでしょうか。
【時乗委員】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。原口先生、生徒が学校に、スクーリングなんかに来るようになった、実際活動しているという生徒が増えたことが、修得率の上昇に関わっているというのはそうなのだろうと思うのですが、それまでは、籍があるだけで実際には活動を全くしていない生徒が、たくさん公立にはいたんじゃないかという、そういうことでしょうか。
【原口委員】 そうです。そういう制度を設けていない県もあるようですが、まだまだそういう制度を設けているところは、非活動生とか不活動生と呼ばれる生徒がいます。
【荒瀬座長】 なるほど、なるほど。ありがとうございました。
ほかの方、よろしいでしょうか。
では、続きまして森田先生から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【森田委員】 では、よろしくお願いいたします。私からは、現場というよりは教育全体を俯瞰する視点からお話をさせていただきます。直接課題に関わった情報提供になっていないかもしれませんが、ご了承ください。
先ほどのご発表を聞いておりまして、全体的に全日制の学校のモデルというか、学校の概念みたいなものがあって、それを通信制に置き換えようというような流れの中で、この通信制制度が運用されている。その中で何かいろいろな問題が発生しているのではないかと思いました。
時代が変わった中で、様々な可能性を検討する必要があると感じております。
このスライドは、既に資料が配付されている中からピックアップしたものですので、飛ばさせていただきます。
先ほどの話にもありましたが、2番目の学びの質保証、下のほうに先に行きますと、こちらのほうは本当にこれから重要になってくる部分だと考えておりますし、後ほどその中で述べたいと思っているのですが、例えば学びの質保証をするときに、エビデンスをどう確保していくのかという部分、こういった部分もこれから重要になってくると考えています。そういったことを踏まえて、次のスライドのところで幾つか情報提供したいと思います。
スライドをめくってください。ありがとうございます。
これからの通信制高校に求められる点は、大きくは2つあります。すべての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現というところです。
6点ほど挙げさせていただきました。ちょっと分かりにくいかと思いますので、スライドで説明をしながらいきたいと思います。
個別最適な学びは、例えば学習履歴データを活用した学び直しです。これは多様な生徒に対応するということもありますが、まずは学び直しをして修得をきちんとする、質保証をするというとこに関して行っているプロジェクトです。
こちらは、NHK、それからNHKエデュケーションナルさん、それからNHK放送技術研究所と、私の研究室と共同でやっているプロジェクトです。
左側にありますように、NHK高校講座というのがございまして、これは御承知の方も多いとは思うのですが、NHK、NHKエデュケーショナルさんが制作している、通信制高校の生徒向けの放送番組です。
その下にあります部分がNHK for Schoolと呼ばれるもので、NHKの提供している学校放送番組、それと連携したNHKデジタル教材の総称です。小学校・中学校の学習内容、これを学び直すときにどこに戻ったらいいのかというものを示しているものです。
右上の図は、こちらはNHKの放送技研さんのほうでつくっていただいているもので、学習の学び直しが、それぞれどんなところにつまずいているのか、それからどういった生徒さんにどういうものを提供したらよりよく学べるのかということをサポートするという技術的な説明で、まだ十分できているものではありませんが、こういったものに取り組んでいるということで御報告をさせていただきたいと考えています。
その右下の図は、私の研究室で担当している研究です。これはただ単にNHK高校講座を視聴させればいいというものでもないということを示しています。先ほど吾妻委員が御紹介くださったオンラインの授業のクオリティは非常に高くて、すばらしいコンテンツを配信していると感心させていただきました。
私も、大学のほうでは早稲田大学人間科学部にある通信教育課程eスクールの担当もしております。私どもは対面の学生も指導するし通信制も指導するという両方の学生に対応している学部なのですが、通信制の学生を指導するときに、学習者に映像教材を提示して課題を「やってください」というわけにはいかないんですよね。サポートするための教育コーチというものを置いて、必ずサポート支援をしていただいています。
そういった重要性を考えまして、NHK高校講座の視聴においても、例えばサポートする大学生を配置し、その中で学びの中で一緒に伴走したりとか、励ましたりとか、それから例えば質問に答えたりとかするような形で進めているということになります。
次のスライドに行ってください。ありがとうございます。これは今、全日制で行われている取組になります。
これは、名前がもう出ていますのでそこに書かせていただきましたが、京都市立西京高等学校、全校1,200名ということで、全ての生徒さんがタブレットですとかPCを持っているような環境の中で学んでいるもので、京都大学の、私もよく存じ上げていますが緒方広明先生が関わっているものです。これがラーニングアナリティクスと呼ばれる研究分野です。
この中で、学習者のデータの収集を、ブックロールと呼ばれるツールを使って集めています。左側の図のところはちょっと小さくて見えないかもしれませんが、ここは生徒が英語の日本語訳をやるという課題をやるときに、例えばどこが難しかったか印をつけていく。その中で、先生が生徒さんの活動の状況を見て、それに合わせてフィードバックのビデオをつくって返していくような取組をしたということです。
それから右側は、学習データだけでなく健康のデータも収集している。歩数、消費カロリー、睡眠時間、移動時間、移動距離ですね。それから心拍、ストレスレベルなど、こういったものをフィードバックとして返す。それを分析したところ、どうも水曜日のストレスが一番高かったというような結果が出たということも表れておりました。そして、生徒自身がデータを基にバランスよく生活するためのプランを考えるなどの授業への活用をしているとのことです。
個人情報の問題がもちろんあるということは認識していますが、生体情報を自身として記録して学習に生かすという部分は、もしかしたら通信制などでは非常に有効な手段になり得る可能性もあるというふうに考えています。
次のスライドに行っていただけますでしょうか。今ちょうど議論になっていましたが、オンラインの授業というものがこのコロナで広く広まりました。御承知のとおり、普通の全日制の高校でも広くビデオを使った講義というものが取り入れられ始めまして、それをまた対面の授業と併せて行う、これは反転授業と呼ばれる教授方法ですが、それを取り入れ始めた学校も増えていると伺っています。
そういった中で、学習者の視聴行動をきちんとエビデンスとして残し、それをまた資料に生かしていくというようなフェーズも必要になってくると考えています。
これはまだ高校での実例がないので非常に恐縮なのですが、大学・高等専門学校の事例として、これは豊橋技科大学の梅村先生の研究室の実践事例を紹介させていただくということで、承諾を得て持ってきたものです。
動画の視聴履歴の中で、例えば興味があるとか、面白い、それから重要であるとか、難しい、質問というタグを学生さんがつけていくわけです。そうすることによってタイムラインで可視化されていく。全ての学習者のデータがぱっと一覧で見られるようになって、先生、教員がそれを基に解説をしたり補足をしたりするような授業になっていくというものです。
例えば、オンラインの授業になったときに、通信などでも面接授業があるわけですが、1人の先生が40人の全く進路の違う生徒さんに個別に対応するということは不可能だと思います。そうしますと、それぞれの生徒さんの特性、学びを支援する形で、例えばこういった形で情報を収集し、場合によっては個別対応になるかもしれませんし、皆さんが同じようなところでつまずいているのであれば、そこのところで解説をするというような、データを使った学びの支援です。
こういったものが、これから適切な指導を行うのに必要になってくるのではないかということ、特に、どのように学んだのかというプロセスを残していくのか、そのデータをどのように使うのかが、これからの学びの中で求められていることかなというふうに考えているということです。
補足になりますが、ここではお示ししていませんが、実は私のほうでいろいろデータを取っていまして、学習者の特性によって、そもそも動画の視聴の仕方も異なりますし、もうちょっと言いますと、例えば先ほど原口先生もおっしゃいましたけれども、通学するようになったら非常に修得率が上がったという話もありましたが、学習者によっては、やはり対面で何かコミュニケーションしたほうが伸びるという学習者もいる。これを我々は「アクティブラーナー」と呼んでいます。
アクティブラーナーはアクティブラーニングも得意ですし、やっぱり対面でやることによって動機付けられる。一方で「リフレクティブラーナー」というのもございまして、内省的な学習者と我々は呼んでいますが、1人で学ぶことを好む。そういった学習者は、こういったビデオのコンテンツなどを見ることによって学びが進んでいくというふうに言われています。
今、大学ではMOOCと呼ばれるような大きな流れがありまして、名立たる大学が出している質のよい授業を無料で視聴することもできる。我々の大学も作っておりまして、そういったものを授業の中に教材として取り入れて学ぶということもしています。
そういった中で、学習者の特性を踏まえて授業をデザインしなければうまくいかなくなる場合もありますし、検討しなければいけない部分もあるかもしれないと考えています。
次のスライドをお願いいたします。これは協働的な学びや新たな学びの取組ということで参考に出させていただきました。
荒瀬先生がいらっしゃるところで大変恐縮なのですが、探究学習、それからプロジェクト学習といったものも、実は通信制高校ならではの学びとして非常に有効であると考えている理由は、1つは、まず実社会の課題発見、それから解決の取組などを行うのに対しまして、やはり時間割の制約、それから教科の枠というものがあって、全日制の中でもちろんやられている高校を存じ上げているのですが、やはり非常に先生たちが負担に思っている部分があるということです。
通信制の先生方にとっては、もちろん負担になるということは分かってはいるのですが、比較的時間枠もなく、教科の枠を少し超えた横断型の学びというものは、通信制の中でよりよく行われる可能性がある。
そこに示しましたのは、総務省の未来の教室プロジェクトが行っているSTEAMライブラリーです。こちらはSDGsの課題解決に向けたSTEAM教育ということで事例が挙がっております。
こういったものを継続的に学んでいくプロジェクト学習をすることによって、例えば今まで通常の学校モデル、つまり教室に行って机に座り、黒板の前で先生が話していることを聴講しながらノートを取るという、いわゆる一般的な一斉授業型のモデルですとか、それからアクティブラーニングももちろん入ってくるわけですが、そういったものを、こういった新たな学びの一つとして導入することも可能になっていくのではないかと考えています。
それから右側のほうですが、これはオンライン学習、それからVR学習というのは一つ、今回示した中では、安全安心な居場所からの学習機会の保障ということになっております。
ビデオや音声でのコミュニケーション以外に、まだいろいろなコミュニケーションがございます。今回、例えばですが病気で学校に来られない生徒さん、院内学級、もちろんこういった部分は特別支援の方が担当されている部分もあるのですが、そういった生徒さんですとか、それから障害を持つ生徒さんで通常の高校に通えるレベルの方、それからいじめ等で対面でのコミュニケーションができなくなってしまった生徒さん、それからLGBTQなどの形で自分の容姿に対してアバター化することが望ましい生徒さんといった事例もあるかと思います。
そういったことで、例えば今、下に事例を挙げましたが、角川ドワンゴ学園さん、S高等学校では、バーチャルリアリティーを使った学びを既に展開されている事例があります。
例えばホームページのデータによりますと、そういった授業を受ける生徒さんが約4,000人いると。これは多いのか少ないのか、比較対象がないので何とも申し上げられませんが、履修可能な授業6,984に対しまして、VRで履修できる授業が2,341ということで全体の33.5%に上るというふうに書かれておりました。
それから、ここには書かれていないのですが、それ以外にも、バーチャル理科実験プラットフォームというものも既に導入されている高校が増え始めています。これはLabsterというものですが、クラーク記念国際高校さんが国内初の導入事例ということでニュースが上がっておりましたが、実際に実験等の実技を行うときに、感染症のように通えないときに実際に稼働させたり、実際には危なくてできないようなものを体験する。こういったものは海外などでも導入が進んでいるというふうに伺っています。
こういった部分について、世界的に高校全体が導入するというのは前例もなく、例えば令和の日本型教育というものを非常に世界でユニークなものとして出していくときには、非常に特徴的なものになるかなと考えて紹介させていただきました。
ちなみに、ハーバード大学の大学院の教育学研究科などではエコミューブというものをつくっておりまして、仮想空間を使った探究学習も2009年ぐらいからずっとプロジェクトで動かしております。日本でこの話をすると、非常に眉をひそめる先生も多いかと思いますが、そもそも学校というモデルの概念にとらわれて考えていくと、新たな通信制高校というものの発想が少し制限されてしまうのかなというふうに感じています。
いわゆる通学をして先生が教壇で教えるという、学校の概念みたいなものを飛び越えて、通信制の新たな高校の考え方というものにつながっていく可能性もありますし、そういったチャレンジをするために、10年後ぐらいを視野に入れた取組について検討を行うということも、今後必要になってくるのかなと感じております。
最初から3枚目のスライドに戻っていただければと思います。ありがとうございます。その中で、下のところにありますが、既に報告がございましたとおり、不登校の生徒さんへの対応ですとか、それから先ほど、プログラミングが好きな生徒さんが横浜修悠館さんに入っておられるという話を聞きました。私の知っている高校でも、数学がもう好きで好きでしようがないという生徒さんがいらしているという事例もあります。
そういった才能教育、それから2E教育と言われている部分もありますが、ギフテッドの生徒さんたちへの対応、これについては専門家との連携が必要ですし、先ほど吾妻先生がおっしゃったとおり、少人数ではやはり対応できない。さらに専門家も入れた形での対応。それから、オンラインでできるということは、さらにそれ以外の人材も活用できる余地があるということを示していると思います。
最後に、質保証についてです。これはすべての高校が受けることになっておりません。そのため、先ほどのデータにもありましたが、回答していただいた学校というのは全部ではなく、そもそも受けてくださる高校というのはしっかりした高校さんです。課題を抱えている一番受けていただきたい高校さんは、全通研という研究会にもいらっしゃっていないのではないかと思います。
そういったことを考えますと、何かしらの法制度も必要かもしれません。大学では大学基準協会というのがございまして、大学のほうで認証評価を受けております。それで授業の改革などを進める制度があります。高校にそれがそぐうのかどうかは分かりませんが、そういった形での何かしらの取組も必要になってくるかと思います。
長くなりましたが、私からは以上となります。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
今、森田先生の御発表に御質問ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。後から、じゃあまた御質問ございましたらお話しいただくということで。
森田先生、今御発表いただいた中身というのを具体的に進めていこうと思うと、本当に学校のありようがどうなのかというお話もありましたが、これはやっぱりちゃんと、何を整えるのかというのをしっかりとしていかないと駄目だということですよね。
今と同じ学校の姿から考えていても前には進まないかもしれないけれども、ただし、じゃあ何だっていいんだという話にはならないわけで、何を重視して考えていくのかというところの提案をしてくださっているような学校も既にあるのだろうと思うのですが、その辺りも我々のこの会議の中で深めていけたらと思います。ありがとうございました。
それでは、この後、約三十五、六分になりますけれども、皆さんから御意見をいただきたいと思います。先ほど申しましたように、御質問がおありですからお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
光富先生、お願いいたします。
【光富委員】 太平洋学園高等学校の光富です。よろしくお願いします。
質問というか、先ほどの森田先生にちょっと教えていただきたいといいますか、VR空間での学びについてですが、この古代の生物とか、海外や日本の名所とか、そういうふうな勉強をするのにはすごくいいなと感じています。
ただ、このアバターによるコミュニケーションの部分ですが、アバターでいろいろな行事に参加するということで、この学校さんができたときに話を聞いたときに、すごく私が不安に思ったことは、アバターを作ることの何か制約はあるんでしょうか。
ゲームなんかでアバターを作るときは、全く自分の理想とするものを作りますよね。その時に、実際の対面によるスクーリングで、アバターで知り合ったお友達と直接、実際に会ったときに、そのギャップというか、そのことですごく不安になるというか、そういうふうなことが起こるのではないだろうかということをすごい心配したんです。
いろいろなことに、実際に難しい実験とかをVRで見るとか、海外とかそういうものに使うのはいいんだけれど、自分のアバターを作ってそれで参加をして、それだけで終わればいいのだけれど、実際の対面によるスクーリングに参加したときの子供的な気持ちというのに対して、すごく心配をしましたけれど、そこのところはどういうふうな感じなのでしょうか。よろしくお願いします。
【森田委員】 学校の方針によるかとは思いますけれど、最初に対面でまず人間関係を築いてからVRに移行するとか、ステップがあるのかもしれません。
そうじゃない場合も可能かなと私は思ってはいますけれども、例えば今、先生がもしそういった不安を感じられるようであったり、それから生徒さんが最終的に対面でコミュニケーションする実社会に出ていくということが想定されるのであれば、初めは対面コミュニケーションからスタートするというのは一つのやり方かもしれません。
ちなみに、自分自身を、ボリュメトリックといってキャプチャーをして登場させることもできます。バーチャル森田も実は存在していまして、授業で使ったりもする予定で今、準備しています。
【荒瀬座長】 いかがですか。よろしいですか。
いろいろと新しいことというのは当然不安が付きまといますし、それらを乗り越えていかない限りは、なかなか学校でやるというのも難しいかなと思うんですけれども。
今のお話でよろしいでしょうか、光富先生。
ほかの御質問も含めまして、御意見ございましたらお願いをいたします。
時乗先生、お願いいたします。
【時乗委員】 時間も少ないので簡潔にいきますが、まず最初に、前回第1回の会議があった後に、新聞報道を含めていろいろな報道がなされたのですが、その中で、例えば自学自習が難しいというところから対面事業が必要であるという意見が出たとか、あまりこの会議の実態に、これってどうなのというような、そういった形の記事が流れていたというのもあって、私の知り合いなんかが、一体全体どうなっているんだというような話もあったりしたんです。
だから、この場でこういうふうな話をするのが不適切だということはある程度承知はしていますが、ある程度、今日もこれは報道の方が見ておられるということですので、通信制の学びというのがどういうものなのかということをきちんと把握した上で、いろいろなメッセージというのを出していただけたらありがたいなと思っています。すみません、余計なことですけども。
それで、今日、原口先生、吾妻先生の発表を聞いていまして、まず一つは、ある程度自学自習ができない生徒に対して、どうやって伴走していくのかというところは大切なんだろうと思うんです。だからこの辺、教員の関わり方を変えていくというのも当然必要なんでしょうけども、それと同時に、外部の方と連携をするような形で、本当に生徒一人一人に合った伴走の仕方を考えて、そういった活動を提供していくということが、結果として生徒さんの学びが深まったりとか、場合によっては学習意欲が湧いてきて自学自習ができるようになってくるという、そのきっかけづくりの伴走をいかにつくり上げるかというところが、結果として質の保証につながっていく最初のポイントなのかなというふうに感じています。
そのためには、本当に学校だけの資源でやるという発想ではなくて、よく自前主義というふうに言われていますが、外部の方とどうやってつながっていくのか、そういった外部の資源をきちんと自校の学校教育の中に取り組んでいくような制度設計というか、場合によったら法的な部分も必要なのかも分かりませんけれど、そういうことがまず必要だろうというふうに思いました。
あと、そういうふうな形でやっていて、結果として単位修得のハードルが上がってしまうということは、私は避けなきゃいけないことなのだろうと思います。先ほど原口先生のほうから、公立は厳格というふうな表現もありましたが、厳格とかそういう形ではなくて、いかに生徒さんにとって単位修得のハードルを下げつつ、きちんとした学力をつけていくのか。そういったことも、先ほどの伴走ということにつながってきますが、必要なのではないかなと思っています。
最後ですが、先ほどの森田先生の御発表の中にもありましたように、通信制の最大の特徴というのは、学ぶ時間と場所を限らないというところなんだろうと思うんです。したがって、様々なチャレンジができる、新しい学びができる、そういう学びの場だろうというふうに考えていますので、EdTechを含めて様々なチャレンジなんかをどんどんどんどん通信制高校ができるような、そういったマインドというか、そういったものをつくり上げていくことも大切だろうと思っています。
以上です。ちょっと冒頭、余計なことを言いました。すみませんでした。ありがとうございます。
【荒瀬座長】 いえいえ、ありがとうございました。
いかがでしょうか。今の御意見に対してでも結構です。
森田先生、どうぞ。
【森田委員】 ありがとうございます。時乗委員の言葉、非常にいい意見もいただいたなと思っております。先ほどの時間と場所を限らないという部分が、実は大学の中でもすごく新しい取組として紹介されています。
例えばミネルバ大学というのがありまして、それは全て授業はオンラインなのですが、世界7か国を回って実際に体験しながら問題解決をするチャレンジをするという大学のスタイルです。こういったものが日本では全くできないわけですけれども、世界では通信制という形を使って、実際は生徒さんたちがどこにいるのかというところ、そこのところに先生がついて支援をする、それが社会と結びついて、実際にその場の方々と問題解決をするような形で学んでいくというようなスタイル、そうしたものも出てきています。
もし日本の通信制高校でそういったものができたら、非常に令和の日本型の教育としてのいいモデルになるのかなと思って聞かせていただきました。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
篠原先生、どうぞ。
【篠原委員】 ありがとうございます。NHK学園の篠原でございます。また感想めいたお話になってしまうかもしれないのですが、「伴走」というキーワードは通信制にとっては本当に必要なキーワードだと思っております。
さっき荒瀬先生もおっしゃいましたけれども、何を整えるかということ。例えば森田先生が評価について、大学ではこうだけれども高校でそれがそぐうのかというようなお話もありましたが、そもそも本当に大前提に立てば、高校という場というのは、生涯の中でどういう役割を持たせる教育の場なのかということがあってこそ、新しい教育、今まで全日制ではなかなかできなかった教育というものも、またちゃんと見つめることができるのではないかというふうに思いました。
現状でいいますと、私どもも、外部の資源で言えばまさにサポートステーションを、今年度から立川の方に毎週1回いらしていただいて、進路がなかなか決まらない生徒と、「あすなろカフェ」という名前をつけながら、決して授業でもなく担任の先生でもない第三者が寄り添うことによって、伴走することによって、生徒の新しい可能性ですとか目線を見つめていくような取組を始めています。
そういうことが本当に、私たちは手探りである意味やっていますし、それはまだ十分ではないとも思っていますので、やはり何を整えるかということをもう一度きちんと定めてから様々な話が固まっていくと、議論が集約していくのかなというふうに考えました。
いろいろ広範な、制度設計のことですとか、様々な話になると思うので、とても難しいなと自分で思いながら、そのことを改めて考えてみたいと思いましたので、一言申し上げました。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。これは学校それぞれの状況というのも相当違っているでしょうから、具体の現状をしっかりと見た上でやっていくということも必要なのだろうと思います。だから、どこまでをまとめて出せるのか、どこからはそれぞれでやっていくのかという、そこのところも考えていく必要があるのかなと思いますが、どうでしょう。いかがでしょうか。
青木先生、どうぞ。
【青木委員】 ありがとうございます。まず今回、冒頭というか1回目で御説明いただいた広域通信制の高等学校に伴う、指導監督が行き届かないという問題から考えると、言わば看板に偽りのあるような設置者があるんだろうということなのだと思います。
そうした場合には、ナショナルミニマムというのを高等学校の教育に当てはめていいのだとすれば、ナショナルミニマムが守られていないかどうかの指導監督や設置認可の在り方というのが、前回議論されたのだと思います。
その上でなのですが、仮にそのナショナルミニマムというのが、今、先生方がおっしゃっているように少し高度化したほうがいいんじゃないかとか、柔軟化したほうがいいんじゃないかといった場合に、関連する規定で言えば、恐らく高等学校の設置基準と高等学校通信教育課程をどうするのかという話になるのだと思うのですが、そういうのを実践されている先生方から、具体的にここがハードルだからいい教育ができないんだ、なんていう話を聞いてみたいなというのが一つあります。
さらに、今後の夢のあるような教育技術が通信制でより花開くのだとすると、それは本当に制度的なハードルを打破しなければできない話なのか、それとも、それぞれの設置者がやれる話なのかというのは仕分けたほうがよくて、ここの議論は恐らく制度的に対応しなきゃいけないことだけで絞っちゃったほうがいいのかなと思います。
次なのですが、やはり今日、お二人の実務に携わっている先生から御報告いただいて分かったのは、サプライサイドの視点はかなり情報が集まっているなと思うのですが、ディマンドサイドというか、生徒の生活がよく分からないんです。
1日どうやって生活しているんだろうと。どういう授業を受けて1週間を送っているんだろうかとか、その辺が、もしかしたら過去の委託調査や業界団体の調査などがあるのだとすれば、ぜひこの場に出していただければなと思いました。
それがあると、ディマンドサイドとサプライサイド両面からの議論ができると思いますし、先ほど時乗先生がおっしゃっていた、マスコミに対しても適切な情報提供になっていくのかなと思いました。
最後なのですが、特別支援、特別な教育ニーズを持つ生徒さんのことなのですが、これが少し気になっています。というのも、日本の場合には、そういった診断が下りているかどうかが分からないまま、実務家である教員がそうだとみなしている人を特別な教育ニーズを持つ子と言ってしまっている場合もあるわけです。たとえば、スクールカウンセラーは日本の場合は修士レベルの学歴である一方で、アメリカの場合は博士レベルですから、そういった専門的観点、医学の観点から、果たしてどのぐらいニーズが適切に把握されているのかというのは、私はよく分からないんです。それを踏まえると、そういった通信制高校がこれまで想定していない層が増えているということを前提に考えると、制度設計の議論にどこまでそれを織り込んでいいのかというのは、まだちょっとよく分かっていないんです。
つまり、それは公教育全体の議論、問題であって、通信制高校が受皿になっているから通信制高校の在り方を変えなきゃいけないという問題なのかどうか。その問題の立て方自体がまだちょっと私自身、自信がないところです。
つまり、設置基準をどうするかという話に持っていくのだったら、スクールカウンセラーをたくさん雇用すればいい話なのかどうなのかとか、そういう具体の話に持っていくと、先生が増えればそれでいいのかとか、通信制高校の趣旨って何だったんだろうかということからすると、もう少し考えたいなと思います。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。幾つか事務局のほうで整理をしていただくような話もありましたが、いかがでしょうか。
【酒井補佐】 失礼します。事務局の酒井から、何点かお答えをさせていただきたいと思います。
委員の皆様に御意見交換をお願いしたい部分は少し除いて、青木先生からいただいた御質問4点のうち3点目のところ、今日の御発表はサプライサイド、供給側のお話なのですが、生徒側に係る調査研究があるのかないのかという点でございます。
実はこの点、私も今、手元に持っている、少なくとも我々が把握している文科省が実施した委託調査とか等の中で、生徒さんの1日の生活の状況を把握した研究というのは、恐らく最近はないんじゃないかなと認識しています。
もし私どもの確認不足であれば大変恐縮でございますが、そこもありまして、今年度中に私どものほうで、少し生徒さんに対するアンケートとかそういったところを進めさせていただきたいと考えております。
別途、委員の皆様には少し照会をさせていただいておりますが、まさに青木先生御指摘のとおり、生徒さんが日常どういう生活されていたり、どういった学習をされているかというのを統計的に取ったものが昨今ないんじゃないかなと思っていますので、そういったものを取り組んでいきたいと思っています。
もし何か先生方のほうで、こういった研究がありますよとか、調査結果がありますよということがありましたら、大変恐縮ですが情報提供いただけましたら、事務局のほうでも勉強させていただきたいと思います。
最後、4点目の御質問でございますが、制度設計の問題で、公教育全体の問題じゃないか、全体の問題じゃないかという御指摘もまさにそのとおりなのだと思ってございます。
まさに公教育全体でいろいろ考えなければならない問題というのがあって、例えば特別支援教育の領域なのかとか、全日制教育の中でも例えば定時制教育の領域なのかとか、いろいろ問題はあると思ってございます。
その中で、今回の御議論は、通信制課程の中で取り組んでいくものにスポットを当てていただくという点かと思っておりますので、全体の中で通信が果たすべき役割、そしてその中で、いわゆる今後取り組まなければならない内容ということで、事務局としては御議論をお願いできればと考えている次第でございます。
まず、今のところでは以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
青木先生、今のでよろしいですか。
【青木委員】 はい、ありがとうございます。
【荒瀬座長】 今の青木先生の御指摘も含めまして、看板に偽りありという、これはもう本当に問題外なのですが、しかし、ちょっとこういったところも、全くありませんとは言えない状態があるのが大変残念なことであるわけです。
ですから、そういったところは本当にちゃんとやっていただくといいますか、それは最低限の話になるわけですけれども、あと青木先生が最初のほうでおっしゃった、夢のある教育をやっていこうとしているとか、具体的にこんなことを思っているんだというふうなお話は、今後また事務局と相談いたしまして、委員の先生方の学校に関することでおっしゃっていただくのももちろん結構ですが、ほかの学校も含めてヒアリングをしていってはどうかということを思っておりますので、また、そういったときにも御議論いただければと思います。
ほか、よろしいでしょうか。
岩本委員、お願いします。
【岩本委員】 お願いします。岩本です。この議論の大きいお題が、多様な生徒の実態に応じた個別最適な学びと協働的な学びを今後どう実現していける通信制高校の環境を整えていくのかということだと思うのですが、その時に、現状のしっかりと把握だとか分析に基づいて当然政策を考えていく必要があると思うのですが、その際に2つほど、質問というかお願いに近いのかもしれないのですが、現状把握のためにというところで意見させてください。
1つ目が、協働的な学びに関してです。私、通信制高校における協働的な学び、特に他者との対話的な学びとかが、一体どんな方法があって、実際にはどれだけそれが実態として行われているのかという。
個別最適で、添削とかは分かるのですが、協働的な学びって今回一つのキーワードだと思いますし、社会性とか人間性だとか、学ぶ意欲もそうですし、そういったときに協働的な学びというのも一つ大事な要素だと思うのですが、それの実態ですね、通信制高校における。
多様なやり方をやっていると思いますので、そういったところから、じゃあ今後はさらにどういったものが必要なのかとか、それを担保できる教育環境って何なのかという、現状に基づいて、この協働的な学びの議論を進めるためのデータだとかエビデンスがあればいいなと思いますし、生徒側にも聞くという話、先ほど酒井参事官補佐のほうからありましたので、そういった場合も、場合によってはあるのかもしれないなと思いました。1つは協働的な学びに関するところです。
もう1つが、個別最適な学びというところに関してです。教科学習における個別最適化をどうやっていくのかというEdTechの話もありますし、今でも添削だとかやっているかと思うのですが、私、もう1つ教科以外の学びというか、学校教育の基本的な機能というようなところが、前回の答申の中ではありましたけれど、学習機能だけではなくて社会的機能というか関係性機能だとか、福祉的機能といったらあれかもしれないですが、セーフティネット的な機能だとか、単位を取るだけではない機能を学校は有しているのだと思います。
恐らく通信制高校においても、多様な生徒がいる場合、そういった機能が非常に重要になってくる。単位を取る、高卒を与えるだけではない、社会的使命を担っているんじゃないかなというふうに思います。
その時に、例えば生徒指導、進路指導、ホームルームとかに始まって、一人一人の生活だとか、これから生きていく生き方だとか、多様な問題を抱えている生徒もいらっしゃるという話でしたが、そういった生徒を誰一人取り残さず、その多様な生徒の実態に応じて進めていく上では、先ほど委員の皆さんが言っていました、一人一人の実際の状況を見ながらの個別最適な対応が必要になるということは、恐らく間違いないんじゃないかと思います。多様であるがゆえに、一人一人とちゃんとと。
こうしたときに、ぜひ私が知りたいなと思ったのは、一人一人といったときに、恐らく授業以外のところでも、個別の面談だとか、この生徒は一体今、何に困っているのか、何にモチベーションを持っているのか、もしくは進路をどう考えているのかとか、そういう中で、先ほど伴走というのもありましたが、これは恐らく個別性が大事になってくるのだと思うんですけど、これだけ多様な生徒が来ている中で、実際に個別最適といったときに、教科学習以外のところでどれだけ個別の最適な取組が現状されているのかだとか、どういった方法でそれを担保しているのか。オンラインも含めてですね。オンラインでの個別面談とか、いろいろされているんだと思うのですが、ちょっとそこら辺の現状が見えてくると、先ほどの個別最適と協働的な学び、それは質保証の話につながってくると思うのですが、ちょっと議論しやすくなるのかなと思いましたので、そこら辺、またあれば、ぜひ共有いただきたいです。今後、アンケートとか、生徒のほうにも聞いていくということだったと思いますので、そういった生徒の困り感も含めて、何かエビデンスというかがあると議論しやすくなるのかなと思いました。
すみません、ちょっと長くなっちゃいましたが、以上2点です。失礼します。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。岩本委員、それはデータで見たいということですか。今、こちらにいらっしゃる委員の中には何人も、高校の実際の校長先生がいらっしゃいますので、具体のお話を聞くこともできるのですが。データが欲しい。
【岩本委員】 いや、今日はデータはないと思いますので、今後、あれば共有いただけたらなと思って。ちょっと時間もない中で、あまり個別の事例とか、私の質問で時間を使ってしまうのもあれかなと思ったので、遠慮はしています。
【荒瀬座長】 一つ二つ、ちょっと事例を挙げていただけませんでしょうか、どなたか。
吾妻先生、いいですか。じゃあ、隣に吾妻先生がいらっしゃるので、お願いをいたします。
【吾妻委員】 すみません、あんまり事例を申し上げられるような状況じゃないのですが、先生がおっしゃるように、協働的な学びの実現というのが結構苦労しているなという感じはします。
例えばスクーリングなんかでも、生徒がどこに座るのかも本校は全然自由にしておりますので、本当におひとり様がいい生徒はぽつんと後ろのほうに座っているとか、そういうことに対しても、あまりそこのところを、刺激を強く与えるようなことはしていないというような状況の中で、どうやっていくのかというのが課題ではあるなと思っています。
ICT等を使いながら、実際に一部ちょっとやっているのですが、自分たちの意見を反映させて前に発表させていくとか、そういうようなところからやれるんじゃないかなというところで、まだまだ試行をさせていただいている段階だというのが正直なところでございます。
あと、教科以外の個別最適な学びというのは、本当にまさしく、やはり個々の状況を見ながら適切に、担任を中心としていろいろなことが一緒にやれるのかというところに尽きるのではないかなというように思っておりますが、そういったことができる、やはり環境整備をしていかないといけないなと思っております。
すみません、何も大した話じゃなくて申し訳ございませんが、以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。またデータとかが集まるようでしたら、それについてはぜひ共有をお願いしたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。原口先生、どうぞ。
【原口委員】 岩本委員の質問の後半である、生徒が何に困っているか、進路についての個別の面談の本校事例についてお答えします。全部で32クラスあるのですが、1クラス64名在籍していて、実活動で50名ぐらい来ています。担任は1人で、その50名に対して個別面談を全部実施しています。すごく丁寧にやっています。
電話も13台あって、電話で生徒本人や家庭に確認することも非常に多いです。担任がそういう中から困りを見つけてSSWにつなぎ、SSWが外からの支援者につなぐ、それがSSWの仕事ですし、担任や生徒や家族から相談を受けて、さらに個々の面談を行うのがSCの仕事です。
SCのほうは、週に1回来ています。SSWのほうは週に2回来ています。それでも相談回数としては足りないです。というのが現状です。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
大河原先生、どうぞ。
【大河原委員】 大河原でございます。御発表ありがとうございました。どの発表も大変興味深くて、非常に勉強にもなりました。
特に森田先生がおっしゃっていたお話の中で、EdTechとか仮想学習空間での学びとか、先ほどのフレーズでいくと夢のある教育手法というものを、ぜひいろいろと通信制高校の中でやっていければいいだろうなというふうに考えているのですが、先ほど青木先生がおっしゃっていたように、やっぱりこれ、いろいろなハードルがある可能性があって、その辺りのハードルとしてどういうものがあるのかとか、制度の問題なのか運用の問題なのかということを整理するというのが非常に大事かなと思っていまして、その辺りは青木先生はじめ皆様と同じ意見です。それ以外に、この会議の直接の対象にならないところであると思いますが、先ほどのEdTechの話の中で出てきたビッグデータの活用とかの際に、個人情報の保護の問題が出てきたりとか、仮想学習空間の話、あるいはオンラインを活用した教育の中で、著作権の話が出てきたりします。
これはこの会議の所管ではないというのは理解しているのですが、そういったところを、いろいろな新しい取組をやっている事例の中でどういうふうに工夫をされているのかというところを、もし、部分的にでも知れたらありがたいなと。同じような取組をしていく高校さんへの参考にもなると思いますので、その辺り、ヒアリング等で聞けたらいいなと思っております。
以上でございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。今のお話は、通信制に限らず非常に重要なことではないかと思います。ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。時間がだんだんと迫ってまいりましたので。1回目は皆さん全員にお話をいただくということで当てさせていただきましたが、これ以降は御発言を御希望の方にご発言いただこうと思っていますので、それでお願いしたいと思います。
よろしいですか。時乗先生、どうぞ。
【時乗委員】 時乗です。よろしくお願いします。先ほど岩本先生がおっしゃっていた、協働的な学びを通信制の中でどうやってつくり上げていくのかというのは、やっぱりすごく大きなテーマなんです。私もかつて通信制の学校に何年か勤めたことがあるのですが、やっぱりすごく、表面的には、通信制に来ている子供たちって、そういう協働的な学びというのが嫌で、それで避ける傾向がすごくあるんです。
これは協働的な学びとは違いますが、体育の授業なんかも、1人でできる陸上なんかはそれなりにやるのですが、バスケットだとか何とか、みんなと一緒にやらなきゃいけないようなスポーツになると途端に嫌がってしまうというようなことは、傾向としてすごく強いんです。
だから教員はそういう状況を見ていて、彼らはそういう、仲間と一緒にやるのが嫌なんだとか、協働的なものができないんだというふうに決めつけてしまう傾向がやっぱりすごくあるんですけれども、でも、やっぱり中の生徒と、何人かと話していると、本当はそうじゃないです。やっぱりみんなと何かやりたいし、一緒に議論して何かをつくり上げていきたいというような、そういう思いというのはすごく強く思っているんです。
でも恐らく、それまでいろいろな経験をしてきた中で、何となく自分はもうそこから遠ざかっているというようなところが実態なので、そこを、ただ単に普通の、これまで彼らが経験してきた教員との関わり、友達との関わりとかいうんじゃない、別の形での関わり方をそこでうまく取り込んでやると、いろいろと自分の思っていることを言ったりだとか、そういうことができるので、そういったところで本当に、さっき言った学校の教員以外の人たちがどうそこに関わってきて、そういった協働的な学びをつき上げてくれるかというのも、通信の中では大事なのかなというふうに思っています。
本当に通信制の教育の中で一番欠けているところというか、そういうところじゃないのかなというような実感は持っています。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。
どうぞ、岩本委員。
【岩本委員】 よろしいですか。今の御意見にかぶせるというか、つながるかなと思ったのですが、時乗委員も言われましたし、吾妻先生が言われていたのも、僕はすごいヒントが詰まっているんじゃないかと感じました。
そのヒントというのは、今までの協働的な学びとか対話的といったときには、対面でフェース・トゥー・フェースで向き合ってみたいなイメージが強かったんじゃないかなと思いますが、今、これからは、対面もありますし、まさに通信技術を使った同時双方向型の、リアルじゃないかもしれないけれど同時双方向で、画面越しだったら怖くないかもしれないだとか、顔は出さないかもしれないけれど文字情報でのチャット機能だとかそういったのもあるかもしれないですし、同時双方向じゃなくてもSNS的な中で言葉を重ねていくという対話や協働もありますしという中で、多様な対話の形や協働の形、それは今でいうGIGAスクール的な通信技術を活用したやり方というのが出てきているという中で、通信制高校はやっぱりそういったところも、通信制ゆえにというわけではないのですが、活用して、これからの令和の時代における通信制高校の協働的な学びはどうあるべきなのかというか、既にやられているところもたくさんあると思いますので、そういったところの現状も把握しながら、いい取組などを共有していくだとか、ある程度のミニマムスタンダードとして、やっぱりこれから最低限これはできるようにしないとね、みたいなふうにしていくというのは、すごくこう、そこまで夢はないかもしれないですけど、未来に向かっていけるんじゃないかなというのは、今、御意見を聞きながら感じたところです。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今のお話を聞いていましても、例えば「対話」という言葉の持っているイメージが、どうしても面と向かって話をするということになりますけれども、これはもう皆さんに言うのは釈迦に説法ですが、学習指導要領で主体的・対話的で深い学びというときの対話的学びは何が一番大事かというと、自らの考えを広げ深める対話的な学びということで、そのための方法としては、友達との話合いとか、あるいは学校外の人とのやり取りとか、そういったこともありますけれども、読書も一つの例に挙げられていますよね。読書するというのも自己内対話、先哲と対話をしているんだと受け止める。
だから、対話って本当は多様にあるのに、何かこの形だけというように考えてしまう。
今後、一方で全日制・定時制の高等学校の教育というものもどんなふうに進んでいくのかというのも視野に入れながら、当たり前ですけれどもしっかりと見ながら、もう一方で通信制高校のありようというときに、どういうことが大事かということを考えていく必要があります。それと、今日一つ、また大変重要な御指摘をいただいたと思っていまして、「伴走者」という、これは1月26日の答申にも書かれていますが、この伴走するというのは、何か走り出しているときに横にいるというイメージもあるのですが、私は今日、お話を聞いていまして、スタートラインまでちゃんと一緒に行くという伴走というのもあるのではないかなと思いました。
生徒たちがいろいろなストーリーといいますか、文脈を抱えながらいるわけですけれども、その子たちにスタートができるようなところまで伴走するということも大事かなと思った次第であります。
大変、今日も貴重な御意見をたくさんいただきましてありがとうございました。本当はもっとお話しいただくことがあろうかと思いますけれども、時間が迫ってまいりましたので、今日はここまでとさせていただきます。本当にありがとうございました。
それでは、次回以降の予定につきまして、お願いいたします。
【酒井補佐】 次回第3回の会議は11月29日、月曜日、16時から18時での開催を予定してございます。詳細は改めて御連絡させていただきます。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。では終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――


 

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)