特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第13回)議事録

1.日時

令和4年9月8日(木曜日)12時45分~15時00分

2.場所

WEB会議方式

3.議題

  1. 教育委員会関係団体からのヒアリング
  2. 「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の在り方等に関する有識者会議 審議のまとめ(素案)」に関する意見募集の結果について

4.議事録

【岩永座長】 定刻となりましたので、ただいまから第13回特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議を開催します。本日は大変御多忙の中、本会議に御参加いただき、誠にありがとうございます。
本会議につきましては、報道関係者等より録音・録画の申出がありまして、これを許可しておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
まず、本日の会議資料の説明を事務局からお願いします。よろしくお願いします。
【川口学校教育官】 本日の会議資料について御説明します。本日は、資料1から資料7までお配りしております。資料1から資料6は、本日予定されております教育委員会関係団体からのヒアリングに関連して、各団体より提出があった資料です。資料7は、7月27日水曜日から8月15日月曜日にかけまして実施した審議のまとめ(素案)についての意見募集を行っており、その結果をまとめた資料になります。また、令和5年度概算要求において、特異な才能のある児童生徒の指導・支援の推進に係る経費を計上しておりますので、参考資料として関係の資料を配付しております。これらの資料については、文部科学省の令和5年度概算要求のページにおいても公表されております。
事務局からは以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。本日の議題は、事務局からの説明でも先ほど触れていただきましたけれども、教育委員会関係団体からのヒアリングと、後半は意見募集の結果についてということであります。
1つ目の議題は教育委員会関係団体からのヒアリングということで、本日の会議には、全国都道府県教育委員会連合会、全国市町村教育委員会連合会、指定都市教育委員会協議会、全国都市教育長協議会、中核市教育長会、それから全国町村教育長会の方々に御参加いただいております。
各教育委員会関係団体には、事前に、これまでまとめておりました審議のまとめの素案をお送りして、特に第4章の有識者会議として目指す姿と今後取り組むべき施策を中心に御意見を賜りたいとお願いしておりました。特に、取り組むべき施策の5として提示した実証研究について、検証すべきことや留意すべきことをお聞きしておりました。教育委員会関係団体の皆様から資料1から6を提出していただいておりますので、まずはそれらの資料に沿って、それぞれ8分程度で御意見をお聞かせいただきたいと思います。
早速ですけれども、全国都道府県教育委員会連合会の安田浩幸教育長、秋田県教育委員会の教育長ですけれども、資料1に基づき御発表をお願いしたいと思います。
安田教育長、よろしくお願いします。
【安田教育長】 秋田県教育委員会教育長の安田でございます。よろしくお願いいたします。私からは、素案の主に22ページ以降の4の今後取り組むべき施策について、意見を述べさせていただきます。
まず、4の(1)特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の充実に向け有識者会議が想定するあるべき姿の項目であります。
1点目として、実際の場面で心配されるのが、学校間あるいは職員間の意識の差が出ることであります。そこに記載させていただいたとおり、指導・支援体制の状況により学校格差が生じることなく、全ての学校が管理職のリーダーシップの下、教職員全員が取組を共有し、主体的に取り組める事業スキームの構築が必要であると考えます。
また、有識者会議の審議のまとめにもありましたが、大学や民間事業者等、学校外の様々な機関との連携は極めて重要であろうかと思います。特に、多様な地域人材等を確保する仕組みや、オンラインを活用した様々なプログラムを提供する仕組みの構築を着実に進めるべきであると考えます。
次に4の(2)具体的な施策に関わる議論の整理であります。丸1の特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進と丸2の多様な学習の場の充実等については、特に意見がございません。
丸3の特性等を把握する際のサポートの部分でありますけれども、一番懸念される点が、特異な才能のある児童生徒の判断基準が明確でないということであり、そのため、対象となる児童生徒の判定や本人・保護者等への説明に混乱が生じるおそれがあるということであります。実証研究を円滑に進めるには、特異な才能のある児童生徒を判断するための指標となるようなものがやはり必要ではないかと考えるところであります。
また、2点目として、特異な才能に伴う学習・社会情緒的な困難を抱える児童生徒の場合、学校が持つ情報のみでは困難の把握及び適切な支援方法の判断が難しいため、医療・養護・福祉・心理などの専門的な知見が必要であり、実証研究開始前に国が関係機関等と調整を図る必要があるのではないかと考えております。
次の丸4、学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供の部分では、審議のまとめの5つ目の丸印にもあるように、国で才能の識別方法等を含むプログラムを提供する仕組みをつくるべきであるという指摘に対しては賛成するところでありますし、できるだけ早急に取り組んでいただきたいと考えます。ただし、16ページで指摘しているように、子供をラベルづけすることのないよう配慮する必要があろうかと思います。
次に、丸5の実証研究を通じた実践事例の蓄積について、何点か記載いたしました。
1点目が、都道府県が市町村の取組を支援する役割を果たす必要性が記載されておるわけですけれども、なかなかイメージしづらい部分が多く、都道府県と市町村の役割分担について具体的な例を提示していただいた上で実施・検証することが望ましいと考えます。
2点目が加配についてであります。専門的人材の配置に関わる補助金に加え、必要な教員加配や支援員の配置等の財政措置により、実証研究における体制を拡充し、学校の負担軽減を図っていただくことをぜひお願いいたします。ただ、その際に注意しなければならないことは、次の項目です。学校には既に様々な支援員等が配置されておって、ただ、その配置数はまだまだ十分と言えない状況にあるため、現場では、例えば特別支援の支援員や生活サポーター、学習サポーターなど、その方々と新たに配置される支援員等の役割が曖昧になる可能性があるわけです。そうならないようにする必要があろうかと思います。
4つ目のポツであります。指導や支援が、優れた才能の伸長と困難の解消のどちらかに偏ることが懸念されます。両者をバランスよく指導・支援するために、どのような配慮が必要であるかという視点も実証研究において重要であると考えます。
最後です。特異な才能のある児童生徒を対象とした指導・支援の際には、周囲の児童生徒や保護者等に不公平感を与えないよう、丁寧な説明を行い、理解を得ることが重要であると考えます。
いずれにしましても、特異な才能を持った児童生徒がいる場合、教育委員会も学校も、その子供の優れた才能を伸ばすための手だてを講ずることは重要なことでありますし、その児童生徒が何かしらの困難を抱えている場合は、解消を図ることも早急に必要なことであると考えます。ただ、非常に捉え方に曖昧さがある部分がたくさんあって、実際に高い能力を持っていても、特異な才能とまで言えるのかどうか。あるいは、困難を抱えていても、その困難の理由が特異な才能を有しているからなのかといったようなことは、学校現場においても非常に悩ましい難しい判断になるのではないかなということが予想されます。
日本の学校教育の中でどのような形で実践できるか。これからの実証研究を通して問題点を明らかにして、指導・支援につなげていければと思っておるところであります。
私からは以上であります。
【岩永座長】 ありがとうございました。ただいまの御意見、現場の具体的な状況を想定した御意見だったと思います。どうもありがとうございました。
全体に対する委員からの質問、意見は、各連合会、協議会等のお話の後でまとめてということにさせていただきます。
続きまして、全国市町村教育委員会連合会の田邊俊治会長から、資料2に基づいて御発表をお願いいたします。なお、田邊会長は御都合により2時までということですので、2時までの間、後ほど御意見、御質問がありましたらそのようにお願いしたいと思います。
田邊会長、よろしくお願いします。
【田邊会長】 全国市町村教育委員会連合会の御意見を述べさせていただきます。資料に基づいてお話し差し上げますので、よろしくお願いいたします。
まず、市町村教育委員会連合会では、現在、令和の日本型学校教育を推進すべく、学校、家庭、地域社会の連携と協働に積極的に取り組んでまいっているところです。とりわけ超スマート社会に生きる、時代を担う子供たちの教育の推進に力を注いでいるところでございます。
令和の日本型学校教育では、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が強調されております。この点を踏まえて考えますと、今回の有識者会議でおまとめになりました、これまで特別な才能があるゆえに生きづらさや悩みを抱えていた子供たちに、どのような手だてを取れば、そうした才能を花開かせ輝かせることができるのかという視点については、本連合会としても重要な課題の一つとして捉えております。
そこで、まず第1点目です。今後、私たちが子供たちの内に秘めた持てる力、いわゆる特異な才能を見いだし開花させるためには、社会が認識する特異な才能ある児童生徒像を明確にしていく必要があるのではないかと考えております。また、画一性に軸足を置いて、これまでともすると同調圧力とか横並びという意識に陥りやすいこれまでの学校教育を見直して、対象となる子供たちが、集団の中において、特異な才能ある児童生徒という姿で認められていくということも大切になると考えております。いわゆるラベルを貼られてけなされたりということがないような状況をいかにつくり出していくのか。そういう生徒像を幅広く認識する、そういう手だてを講じる必要があるのではないかと考えております。
そうした方向性を検討する中で、その対象については、これまで特に高校レベルになるでしょうか。非常に顕著な事業展開が進んでおりますSSH、スーパーサイエンスハイスクールなどのような理数分野を中心とした科学技術、あるいは芸術とかスポーツなどの特定の分野の能力に秀でた人材を対象とするのか。あるいは、通級による指導を受けている一方で、さらには特別支援学級に在籍している一方で、いわゆる2Eと言われる特異な才能と学習困難を併せ有する児童生徒、こうした生徒を対象として取り上げていくのか。少なくとも対象となる児童生徒の特異な才能を一体どういうふうに捉えるのか。そこは、ぜひ明確にして取り組む必要があると認識しております。
第2です。実際に指導に関わる教育現場の教員の負担が、やはり過大にならないようにする必要が当然のことながらあるかと思っております。特に、現在も特別な配慮、特別な支援を要する子供たちが極めて増えておりますので、その対応に多くの時間を費やしている教師の実態、学校の実情があるかと考えております。
しかしながら、これまで多くの実践例や実績がある、先ほど申し上げたような科学技術や芸術、スポーツ。そうした面にとどまらず、Twice Exceptionalと言われる児童生徒に対象を広げて実践事例を蓄積していくということの意義は、とても大きいものがあると考えております。
そのためにも、国が特異な才能ある児童生徒像をやはり明確に示し、これまで民間企業の実績等があると聞いておりますので、そうした民間企業の実績や知見を幅広く活用した選定方法を策定し、教員加配や支援スタッフの配置体制もしっかりと整備していただいて、実践事例や取組状況について幅広い周知を図りながら推進されていく必要があると考えております。何よりも、個別最適な学びを工夫していくことの課題認識を広く共有していくことで、人間関係の構築に関わり非常に繊細な配慮を要する学校や学級集団の中でも適切な対応を促進し、また、学校外の機関とも幅広く連携を図りながら取組を推進していく必要があると考えております。
さらに、特定分野において特異な才能がある児童生徒であったとしても、精神的な発達年齢とか、集団の中での人間関係の振る舞い方といった点については、必ずしも飛び抜けて進んでいるというふうにも言い切れない実態が、一方であるのではないかと考えております。また、入学や就職等において、年齢主義文化のある我が国の現状を前提にすれば、特異な才能のある児童生徒への教育としては、早修、速習というのでしょうか。早く先へ進むというような取組を推進していくというよりは、年齢層に応じた、所属する集団の中で同じカリキュラムを学ぶということも基本になるのではないかというふうに考えております。
一方で、お届けいただいた、取りまとめいただいたたくさんの御意見を拝見しまして、特に子供たちから提出された幾つかの意見を拝見しますと、やっぱりそこから浮かび上がっている実態。なかなか困難を抱えている実態というのが一方であるということをしっかり捉えて、授業等では、個別最適な学びが実践できるプログラムを開発したり、協働的な学びのより一層の充実を図るといった手だてが必要になってくると考えております。
部活動の地域移行が推進されつつある中学校では、放課後、特定の分野を学べる場を設定したりすることも考えられるのではないでしょうか。また、市町村教育委員会としても、特異な才能ある児童生徒を積極的に認知するような視点を持つことが重要であろうかと認識しております。また、現在、教育委員会が主体となって、子供たちの優れた成果を評価する独自の表彰制度を設けたりするような取組も全国各地で広がっております。そうした児童生徒の才能を引き出す工夫を行っておりますけれども、これを全国展開していくような事業の展開。さらには、大学や研究機関のフォローアップを推進していくような工夫の余地もまだまだあるのではないかと考えております。
今後、求められることは、対象者や対象とする特定分野を明確にするということとともに、児童生徒の特異な才能を引き出す取組を都道府県レベルで共有し、さらには国レベルにそれを広げ、積極的に特異な才能のある児童生徒を見いだし、最適な指導を図ることによって、それぞれの才能をしっかりと伸ばしていくような取組がぜひとも必要である。そういうふうに認識しております。
以上、連合会としての御意見として述べさせていただきました。
【岩永座長】 田邊会長、ありがとうございました。現場での具体的な取組のアイデアとかポイントといったものを非常に適切に指摘していただいたと思います。ありがとうございました。
【田邊会長】 ありがとうございました。
【岩永座長】 続きまして、指定都市教育委員会協議会、大阪市教育委員会教育次長の三木信夫さんから、資料3に基づいて御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【三木教育次長】 大阪市教育委員会事務局教育次長の三木でございます。本日は指定都市教育委員会協議会代表としての出席となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、当協議会の現状認識でございます。令和3年1月の中教審答申でも、実現すべき令和の日本型学校教育の姿として、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を進めていくことが求められており、特異な才能のある児童生徒に対しても、多様性を認め合う個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実という観点から、指導・支援を進めていくべきものと考えております。そういった点を踏まえながら、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対するこれからの指導・支援の在り方等について、検討を進める必要があると考えております。
このような現状認識の下、有識者会議の審議まとめで示されておりました、今後取り組むべき5つの施策に対する当協議会の意見を申し上げます。
まず、特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進につきましては、まずは児童生徒の指導・支援に一定の方向性を持たせる必要があり、そのためには共通の研修システムを構築し、文部科学省が策定予定の共通した動画コンテンツ等の教材を使用することが望ましいと考えます。あわせて、オンラインやオンデマンドを活用し、より多くの関係者が情報共有を可能とすることも必要でございます。また、特異な才能のある児童生徒としての指導の必要性を判断するに当たり、諸外国等の事例などを用いた資料を活用した研修を実施し、教職員の特異な才能に対する理解を深める必要があると考えます。
次に、多様な学習の場の充実等についてでございます。現行学習指導要領における学習内容や通常の学習環境が当該児童生徒の実態に合わず、不登校に陥ることも考え得るため、その対応が必要と考えます。学級にいることがつらくなったときに落ち着いて過ごすことができる場所があることや、信頼関係が構築できている教職員の存在等、学校が安心できる場所と感じられるようにすることは全ての子供たちにとって大切であり、特異な才能のある児童生徒もその例外ではありません。
まず、学校内においては、校内教育支援センターや通級指導教室等の活用が考えられます。また、1人1台端末や、個別教材を活用することにより、個別に学習できる機会を確保するとともに、必要に応じて場所の確保が必要となります。一方、学校外での学習の場としては、フリースクール、支援団体や医療機関等が考えられます。当該児童生徒が不登校等、学習を継続できない状況に陥った場合や、より高度な内容の学習を行う必要がある場合などが想定されることから、大学等の研究機関と連携を図り、特異な才能を生かした学習の場の確保を行う必要があると考えております。
こうした外部機関との連携は今後一層必要になると考えられることから、国として仕組みを構築するなど、協力要請を進めていただきたいと考えております。
3点目の特性等を把握する際のサポートについてです。学校関係者が当該児童生徒の特性等を把握するための方法の研究を進める必要があると考えます。何らかの特定の基準や数値によって才能を定義しないということですが、学校現場からしますと、具体的にどういった児童生徒が対象となるのかという点は、当該児童生徒への個別最適な指導だけではなく、保護者等への説明責任を果たし、指導・支援の内容について理解を得るために、極めて重要と考えます。
そのため、外国の例のように大綱的な定義を置くなど、我が国においても、ある一定の判断基準となるようなものは必要であると考えます。当該児童生徒に対する理解を基にした支援・指導につなげていくためには、特性等を把握することは大変重要であるとともに、特性等に気づいた場合の対応について、その共通理解と支援方法の妥当性について評価する必要があると考えます。
4点目の学校外の機関にアクセスができるようにするための情報集約・提供についてです。学校外の機関については、文部科学省の指導・協力の下、各教育委員会が、大学等の研究機関や医療機関など、適切な外部機関と協力・連携しやすい環境を整える必要があると考えます。また、そうした情報を学校、教育委員会、市町村、都道府県、文部科学省のホームページ等で公開し、広く情報共有することで、保護者等への理解が深まるのではないかと考えます。
共有する情報としては、各機関が指導・支援の対象としている児童生徒の様子や取組内容等といったものが考えられます。そうした情報が広く共有されることで、当該児童生徒の学びの場の拡充や保護者等の相談先としての機能の充実につながるものと考えます。
最後に、実証研究を通じた実践事例の蓄積についてでございます。実証研究は、日本国内のいずれの学校内においても実践可能なものとするべきであり、諸外国の研究を基礎とする場合は、国によって異なる教育システムを超えて共有できることを示していただく必要があると考えます。また、実証研究の実施に当たりましては、特異な才能のある児童生徒が自分らしく生きていくことができる力を育み、キャリア発達を支援するものにつながったかどうかという点を検証することが重要であり、その際には、成功・失敗の両方の事例において、その過程や課題等の検証も必要と考えます。
次に、研究実施の際の留意事項としまして、実践研究の途中に、当該児童生徒が指導内容に適応できない状態に陥った場合の対応や、共に学んでいる児童生徒に対する配慮が必要となる場合などが生じることも想定されます。そういった場合には、当該児童生徒の状況に合わせて、柔軟な対応を行えるようにすることが必要だと考えます。
最後に、実証研究の結果は広く共有すべきであり、各校の実践につながっていくような方法でアウトプットしていただきたいと考えております。
当協議会からの意見は以上となります。ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。三木教育次長から発表していただきました。今までのお三方、共通して出ていたことですけれども、やはり判断の基準とか、どのようにして才能を評定するかという際の指標の点というようなことが、やはり心配点として指摘されていたと思います。ありがとうございました。
続きまして、全国都市教育長協議会の堀真朋宮崎市教育委員会企画総務課課長補佐から、資料4に基づいて御発表をお願いしたいと思います。堀さん、お願いします。
【堀課長補佐】 皆さん、こんにちは。本日は、全国都市教育長協議会副会長であります宮崎市教育委員会、西田教育長が議会対応のため欠席でございますので、代理出席として、私、企画総務課課長補佐、堀が説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、資料4に基づいて説明いたします。
特異な才能のある児童生徒の教育を行うことは、中教審答申で示された令和の日本型学校教育の構築の趣旨にのっとり、個別最適な学びと協働的な学びを実現する上で重要な視点の一つであると認識しております。
それでは、以下、事前協議において示された、4、今後取り組むべき施策、(2)具体的な施策に関わる議論の整理について、意見をお伝えします。特に、黒い四角の部分を御覧ください。
まず丸1、特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進についてです。
1点目、これまで学校では、ある一定の学習内容を一斉に教えるイメージが強く、個々の子供たちの多様性を認め、興味や関心に基づいた指導を行うことは、理念としては掲げていたものの、実際は十分にはなされていないという実態もございます。令和の日本型学校教育で求められている学びと、特異な才能のある児童生徒に対する教育との関係が十分整理された上で、教育関係者等とあるべき姿を共有することが必要であると考えております。また、研修の実施におきまして、動画コンテンツの作成や活用は有効であると思いますので、今後、国等からの十分な説明をいただくことで、各学校での研修へと結びつけてほしいと考えております。
2点目、保護者等にとって、特異な才能に関する教育のイメージは、いわゆるギフテッドなどの特別な存在を育てる英才教育と捉える傾向が強く、その払拭が課題であるため、有識者会議の審議まとめ(素案)の趣旨を踏まえながら、児童生徒の困難解消に対する施策や取組の結果として、個性や才能を伸ばしていくという基本スタンスを明確に打ち出していくことを期待しております。
次に丸2、多様な学習の場の充実でございます。個々の子供たちの多様性を認め、能力を引き出す教育を行うためには、学校内に居場所となる校内教育支援センターの設置や学校図書館や教育支援教室など、それに類する機能を有した教育環境の整備・工夫は有効であると考えております。その際、支援策については、教師等の負担が増えることのないように、財政支援や人材の配置、並びに指導・支援の在り方についての実証研究を進めていただきたいと考えております。また、多様な学習の場の充実に加え、教師以外の専門スタッフに対しても、教育環境に対する理解と協力が十分得られるよう、例えば参加枠の拡大や参加機会の確保など、研修の充実が図られることを期待しております。
続きまして丸3、特性等を把握する際のサポートでございます。特性等の把握につきましては、人権的な配慮や保護者への理解が不可欠であります。そのため、学校と教育委員会との連携による計画的で継続的な特性等の把握が大切となります。特性等の把握につきましては、特異な才能に係る面の把握のみならず、その児童生徒に見られる学習や社会の情緒的な困難さを把握するためのアセスメントツールや検査等の活用に関する実証研究が必要かと考えております。
次に丸4、学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供でございます。学校が、本教育に関する理解が十分でない現段階におきまして、特別な支援を要する子供たちの指導・支援に苦慮している現状もございますことから、学校の負担感についての配慮が重要と考えます。その意味におきましては、学校外の機関にアクセスできるようなオンライン上のプラットフォームなどの構築は効果的であると思いますし、学校が、学校以外の機関にアクセスして、指導・支援のノウハウなどを共有できるような、双方向性のある仕組みづくりを期待しております。
最後に丸5、実証研究を通じた実践事例の蓄積についてでございます。
1点目、審議まとめにもありますように、ICT機器の積極的な利活用は、学校が多忙な状況にある中においてとても有効でございます。今後、民間事業者や学校外の機関との連携もますます重要になっており、財政的な対応の面から各教育委員会が苦慮している状況にございますので、国におきましては、ぜひICTの効果的な利活用に向けた支援並びに財政支援について検討していただきたく存じます。
2点目、通級による指導や特別支援学級における指導は有効と考えますが、様々な特性がある子供たちがいる学級の中ではその対応や指導が複雑化しており、十分に支援が成り立っていないという状況も見られます。例えば特別支援学級の定員は8名でございますが、子供たちの特性や発達段階に応じて、個別最適な学びを進めるということは困難も伴います。そのためにも、本教育を推進する上では、日頃から学校と学校外の関係機関との連携や情報共有を十分に図ることが大切でありますため、方策としては、例えば教職員配当基準の見直しであったり、特別支援教育コーディネーターの専任化、また、その人材育成の在り方等につきましても、今後、国の考え方を明確にしていただきたいと考えております。
全国都市教育長協議会からは以上でございます。
【岩永座長】 どうもありがとうございました。今の御発表の中で、大体共通した内容のことが多いんですけれども、特に教員の研修について、動画コンテンツの作成にも触れていただいて、それとともに教師の負担が増えることのないようという、この2つの、場合によってはぶつかる内容になるわけですけれど、そのバランスが重要だということを御指摘いただいたと思います。ありがとうございました。
それでは、続きまして、中核市教育長会の中田知邦金沢市教育委員会学校指導課生徒指導支援室長から、資料5に基づいて御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【中田室長】 金沢市教育委員会の中田と申します。本来なら、中核市教育長会の会長である野口弘教育長が出席すべきですが、9月議会の対応により本日は出席できません。本日は、野口教育長の代理として、私が審議のまとめ(素案)に対する中核市教育長会の意見について話をさせていただきます。資料5を御覧ください。
まず、義務教育の基本的な考え方としまして、リード文にあります、全ての児童生徒に対し、社会において自立的に生きる基礎や、国家や社会の形成者として基本的な資質を養うことを目的とするものであり、特異な才能のある児童生徒についても例外ではないということ。また、全ての児童たちが、多様性を認め合い、高め合える包摂的な学校教育環境の中で、社会性を涵養していくことという視点をもって、様々な取組や施策等を進めていくことが大切であると考えています。
そのような考えを踏まえまして、丸1から丸5について、中核市教育長会の意見をお伝えさせていただきます。
まず丸1、特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進についてです。特異な才能のある児童生徒に対する施策や支援等を充実させていくためには、その対象となる児童生徒に対応する教職員が、才能や特性ゆえに学習上、生活上の困難を抱えていることをまず理解することが前提となります。現在、対応している教職員の中には、特別支援教育及び特異な才能のある児童生徒への知識・理解が十分ではない教職員もいることから、まずは、全教職員を対象に周知を図るための動画コンテンツや参考資料等の情報提供が期待されます。
あわせて、教師を対象とした研修を充実させるとともに、教師以外の専門スタッフ、例えば教育委員会が派遣する支援員や連携を図る施設等の職員、この方たちが正しい知識を身につけるための研修も重要であると考えています。
丸2、多様な学習の場の充実等について。通常、児童生徒は自分の教室で学習をして過ごすことが多いですが、ふだん過ごす教室での学習にこだわることなく、校内においては、一時的に過ごせる空き教室や学校図書館など、特別教室を児童生徒の居場所として活用することが効果的であると考えます。実際、本市においては、多くの人がいる教室で授業を集中して受けられないという子供たちもいまして、そのような子供たちが空き教室を利用したいということで、空き教室で勉強することも実際見られております。その際、児童生徒を見守る人材を配置することになりますが、大人が1人その場につけばよいということではなく、特異な才能の児童生徒の抱える困難やその対応について理解し、児童生徒に寄り添って、きめ細かな対応ができる者の配置が必要であると考えます。
また、校外においては、教育支援センターなど、公的機関が児童生徒の特性を的確に把握し、その状況に応じて学びの場を提供する体制づくりが必要です。そして、校内外いずれも1人1台端末を活用した学習の充実が重要であると考えます。
丸3、特性等を把握する際のサポートについて、有職者会議が行ったアンケート調査の結果によりますと、特異な才能のある児童生徒の中には、様々な障害による学習上または生活上の困難を併せ有することがある実態が見られると報告されていました。そのような児童生徒に対し、より適切な支援を行うためには、民間事業者や医療機関等による発達検査等により把握した特性等の情報について、これまで学校と保護者が共有してきた個別の教育支援計画、このようなものを活用しながら、児童生徒も自らの特性や関心への理解につながる情報を共有できるようにすることが求められると思います。具体的には、児童生徒が自身の特性、学びの状況等を見える化できるポートフォリオに情報を蓄積していくことが効果的であると考えています。
丸4、学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供について、学校外の様々な機関、例えば医療機関や児童相談所等において提供されている指導・支援に関わる様々な検査やプログラム等の情報が、その対象となる児童生徒及び保護者に十分届いていない状況が見られています。その情報については、国がそれらの情報を集約し、ICTを通して提供される仕組みができれば、児童生徒・保護者だけではなく、教職員が所持する1人1台端末を有効に活用できると考えます。また、情報を共有することで、より充実した支援体制を図っていくことができるとも考えています。
丸5、実証研究を通じた実践事例の蓄積について、実証研究の実施及び検証をしていく場合、3点について留意する必要があると考えます。
1点目は、特異な才能のある児童生徒をはじめ、子供の関心等に合った授業や学習活動を行う上での多様な学びの場の設定や、それに伴う人材の配置についてです。多様な学びの場の設定において、各学校の児童生徒や教職員数、学校施設の状況に大きく影響されることから、学校規模ごとの検証が求められます。いずれの学びの場においても、1人1台端末の特性や強みを生かすことが大変重要であり、併せてその検証も求められると思います。また、学校内外における人材の活用については、財源の確保も含め、児童生徒へのサポートが持続可能な体制かどうかを検証する必要があると考えております。
2点目は、保護者や地域社会の理解の醸成についてです。特異な才能のある児童生徒への適切な支援を行っていくためには、当該児童生徒の保護者だけではなく、全ての児童生徒の保護者や地域社会の理解の醸成が求められます。検証に際しましては、理解の醸成に向けた取組のプロセスの明確化、学校や教育委員会、保護者や地域社会の役割の明確化が必要であると考えます。
3点目は、学校と学校外との連携についてです。学校における働き方改革が進められている中、学校外との連携そのものが教職員の負担増加とならないよう、関係者それぞれの役割を明確にした適切な連携の在り方について実証研究を進め、検証を行っていく必要があると考えます。
中核市教育長会の意見については、以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。ただいまの中田室長からのお話でしたけれども、これまで指摘されていたことに加えて、例えば特異な才能のある児童生徒の居場所について、そしてポートフォリオの活用等について示唆をいただいたというふうにお聞きしました。どうもありがとうございました。
今回のヒアリングの最後になります。続きまして、全国町村教育長会の夏苅一壽大井町教育委員会教育長から、資料6に基づいて御発表をお願いしたいと思います。夏苅先生、お願いします。
【夏苅教育長】 全国町村教育長会で副会長を務めております夏苅と申します。このたびはこのような貴重な場を御提供いただき、感謝申し上げます。
今回、特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の在り方について、素案としてまとめられた御労苦にまずは敬意を表します。本会でも、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現において、特異な才能のある児童生徒の資質・能力を伸ばしていくことは、大変重要であると捉えています。そのような認識の下、素案4、今後取り組むべき施策について、全国町村教育長会役員から意見を取りまとめ、提出させていただきました。では、別紙により述べさせていただきます。
まず、今後取り組むべき施策の(1)のあるべき姿についてです。教室や学校の様子に関して、資料の4にお示ししたとおり、義務教育段階と高等学校段階の教育の特性を踏まえた対応は必要と考えます。このことは、素案18ページにまとめられている内容で、賛同いたします。私ども全国町村教育長会が所管している学校種は主に小中学校でありますので、いわゆる義務教育段階においては、素案21ページ丸4の4点にまとめられている、留意することは重要であると考えます。このことを資料の3、義務教育段階では、他の児童生徒との学びの場の中で人格形成を図るべきであると示させていただきました。
その点、高等学校段階は義務教育を履修した後ですので、教室や学校の様子の中で、高等学校段階の教育環境のあるべき姿として、ある分野に特化した教育の推進について、積極的に明記したらいかがでしょうか。
また、義務教育段階での学びの姿としては、資料の2にも表記しましたが、個別最適な学びは、一律な指導計画の下、同一年齢の児童生徒が毎時間同一歩調で学習を進める現在のシステムでは限界があります。教室には、本有識者会議で対象としている子供たちのほか、いわゆる理解の遅い子や特別に配慮を要する子などもいることも確認させていただきたいと思います。
よって、義務教育段階での特異な才能のある児童生徒の教育環境のあるべき姿としましては、素案23ページに明記されている学校外での学びとの連携が有益かと考えますので、資料の1に大学や企業との連携も必要と表記しました。
続いて(2)具体的な施策にかかわる議論の整理についてです。具体的な施策として5点に整理されましたことで、その取組が明確化され、実効性のある素案となるものと思います。基本的には、5点それぞれよくまとめられていますので意見はございませんが、何点か気づいた点を述べさせていただきます。
丸1、特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進については、素案にも示されたとおりであると考えます。その中でも、教職員研修の必要性、アセスメントできる専門家の配置について表記させていただきました。
丸2、多様な学習の場の充実等では、素案25ページ丸1の内容に対して、最終的には26ページの丸1の国はこれらの人材の配置に関わる補助金等について周知するべきとなっています。この周知するべき対象を、有識者会議ではどのように捉えられているのでしょうか。少なくとも人材の配置については、国がしっかりと責任を持って対応していただきたいと思います。
資料1つ目の点でも示させていただきましたが、有識者会議として、義務教育段階における学校現場の教職員の配置状況を御理解いただき、もっと強い表現でまとめていただければと思います。素案31ページには、人的・物的な資源が十分確保できない市町村も存在する旨が明記されていますことは、大変ありがたく思っております。
丸3、特性等を把握する際のサポートについては、素案27ページ丸1に支援策が具体的にまとめられています。そのための取組として、3点表記させていただきました。丸5、実証研究を通じた実践事例の蓄積のア、実証研究の必要性において、丸3にも示されているとおり、本有識者会議として実証的な研究を行い、実践事例を蓄積されることは重要なことと考えます。
一方、素案丸2で明記されているとおり、特異な才能のある児童生徒の捉え方により、念頭に置いた指導・支援の取組はほとんどないことは理解できます。しかし、素案12ページの丸2の学校における指導や関わり方に関する工夫について明記されていますことは特別なことではなくて、程度の差こそあるものの、義務教育段階では、どこの学校でも児童生徒の個々の実態を踏まえた中で様々な工夫をして、日々授業を行っています。その意味では、児童生徒の関わり方には配慮して実践されていますので、混乱はさほどないかと思われます。このことを資料2つ目の点で表記しました。
また、資料1つ目の点については、素案30ページ丸4に明記されたことや、これまで述べさせていただいたことを表記しましたので、御確認いただければと思います。
イ、実証研究を通じて検証すべきことについては、素案31ページ丸1のICT機器の積極的な活用、素案32ページ、1つ目の点に明記されていることの重要性について、改めて述べさせていただきました。
私からは以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。夏苅教育長からの御発表でありました。非常に具体的で詳細な内容で御示唆いただいたと思います。
これまで6名の方からそれぞれ御発表いただきましたけれども、これらについて、有識者会議の委員から、質疑応答あるいは意見の交換ということをしていただきたいと思います。委員の皆様から各教育委員会関係団体等の皆様にお尋ねしたいと思われることやお伝えしたいこと、御意見などありましたら、いつものとおり手を挙げるボタンを押していただいて御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
松村先生、お願いします。
【松村委員】 松村です。トップですみません。田邊先生が2時に退室されるということなんで、ぜひ聞いていっていただきたい。1点について、1分でお話しします。
特異な才能のある児童生徒を判断する明確な指標が必要だという御指摘がありました。この問題について、私は以前から、それから前回も意見を述べましたので、委員提出資料が残っていますので、振り返って見てください。
才能のある子は、国が特定の基準で一義的に定義して判定する。そうすべきではなくて、学校外とかの個別の取組で、その実施主体が必要に応じて個別に決めることになります。これは入試の合格基準でもそうですね。プログラムによっては、意欲のある子の中から、最初は先着順や抽選で対象を選ぶこともあります。だから、もうそのときの事情によって、対象の決め方というのは様々であるわけです。アメリカでもそうです。
一方、ふだんの教室の中での授業では個別最適な学びとして行われるので、才能のある子を選り分けて判断はしません。これはしてはいけないと思います。例えば単元内自由進度学習などでは、才能のある子も適合した学習方法を自分で選べます。そのような指導を通じて、教師の負担増なしに、子供の優れた点や困っている点にもっと目が行き届くということがあり得ます。
これはなかなか理解していただけない。誤解も生じる。ですが、これからずっとだんだんと理解を広めていくはずなんですが、実践モデルを研修とかで示して、やはりそういう理解を広めることが必要かと思います。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。松村先生、最初、私が聞き間違えたのかもしれませんけれども、認定する基準の議論の中で、学校外の機関等の基準でとおっしゃいましたか。
【松村委員】 学校外とかで、と言いましたが、学校外に限らず学校内でも、とにかく何らかの才能に焦点を当てて、何か新しいプログラムをしましょうという時には、それは算数・数学であったり理科であったり、コンクールであったり、いろいろですが、それは個別の目的で行います。それから、そこでキャパの問題もありますね。何名収容できるかとか。そういう時々の事情で才能の基準というのは変わってくるんで、これはIQ130の子供を全国的に見つけて、まずそれを特異な才能ある子として、その子に何をしたらいいのか考えましょうという、そういう方向ではないということを言いたいわけです。
【岩永座長】 ありがとうございました。IQ130以上の子を集めてというようなことではないということですね。それでよろしいですね。
【松村委員】 IQに限らず、とにかく特異な才能のある子は誰なのか、その基準を示してほしいという声が、これも多く出ることは分かっているんですけれども、でも、その基準をあらかじめこういう特性のある子を才能のある子だとしましょうというふうに、国がというか、上から一律的に決めるのは良くない。そのときのそのプログラムで、どういう才能・特性のある子を見つけるのか、どう困っているのかを見つけるのか。その時々の事情でそのプログラムを行う人が決めるわけで、それを何かあらかじめ決めてくれというのは違うということです。
【岩永座長】 分かりました。例えばスイミングスクールであれば、泳力というのが基準になるだろうしというようなことですね。ありがとうございました。
市川先生、手が挙がっております。
【市川委員】 じゃ、今のお話に関連してなんですけれども、一律な基準をやっぱり示してくれないとやりにくい、困るという声だと思うんですね。松村先生からは、そういうことはしないんだというお話がありました。この今回の審議のまとめでも、かなりそういうことがずばっと出ている。
このことに関連してなんですけれど、今回、これ、どういう趣旨で私たちも議論してきたかというのが、ちょっとやっぱり誤解されやすいんだと思うんですよ。もともとタイトルに、特定分野に特異な才能のある子供たちというふうに、児童生徒って出ていますから、何かその子たちを特定して、この子たち、特異な才能ありますよと。この子たちのためにこういうことをやっていくという。そのためには線引きが必要だというふうになってしまうと思うんですけれども、もともと線引きをして特定の子供たちに何かを処遇するという話ではないですよね。
というのは、個別最適な学びというのはもともと全ての子供たちを対象にしたものです。ただ、これまで学校教育というと特別支援とか、どうしても授業についていけないとか、そちらの子供たちには非常にいろいろな手厚いこともかなりやってきたと。じゃ、今度、学校の事業では物足りないとか、それ以上のことを求めている子供たちに対しては、どちらかというとそれは塾にでも行ってくださいとか、何か民間のやっているプログラムに参加してくださいとかいうことで、学校としてもあまりそこに焦点を当てている余裕はなかったんじゃないかと思うんですよ。
これでは全ての子供たちに対する個別最適とは言えないんじゃないかと。全ての子供たちを対象にする中で、あまりこれまで焦点が当たっていなかった、比較的ですよ、比較的才能のある子供たちに対しても考えてほしいということの一環として、今度のが出ているということだと思います。
すると、何か線引きをして、それ以上の子供たちにという話ではなくなってくると。ですから、やっぱりそこの趣旨を理解していただくと、何か例えば国が一定基準を示してほしい、それに基づいてやったほうが保護者にも説明責任がつくとかという話とはちょっと違うと思うんですね。
あと、もしそういうものをつくったらどういうことが起こるかということも想像すると、ちょっとやっぱり危ない面があるなと。まず、基準をつくるのは大変です。特定分野といってもいろいろな分野があります。それごとに、この基準、この基準、この基準と。一体その基準、どこから持ってきたんですか。まず基準をつくるのが大変。それから、今度その基準を適用するときが大変。一人一人の子供に対して、この子はその基準に合致している、合致していないということを判定する。これはものすごく大変なことです。次に、判定した後もまた大変だと思います。うちの子はちょっとそれに達しなかったということで、あなたは該当しませんので特別な処遇はいたしませんというようなことになると、また説明もしにくい。
ですから、それをやはり個々の子供に応じて、特定の基準で線引きするのではなくて、その子の困り感とか、その地域のいろいろな環境、条件ということも考慮した上で何か対応策を考えていく。こういう姿勢なんだということが一つのポイントだと思います。
2番のポイントなんですけれども、これもやっぱり会議のタイトルからくる誤解だと思うんですが、学校における指導・支援と出ているので、また、学校の先生に何か新しいことを求めるのかと。学校で何か対応してくれというふうに学校の先生は受け取ってしまうかもしれない。これも最初から話題に出ていて、決して学校の先生だけに全て押しつけようという話ではありません。
そこで、やっぱり学校外へのアクセスとか連携という話をかなり盛り込んだつもりです。連携というのもまた誤解されやすくて、連携というと、ついつい学校に外部人材を呼んで、学校の監督の下に何かプログラムをする。そこに外部人材を呼ぶというふうに受け取られやすいんですけれども、それだけじゃないと。それもあっていいんですが、むしろ学校の外にこういうものがある、民間とか。あるいはいろいろな自治体がやっているプログラムがある。大学もやっていると。
そういうものがあるという情報を学校や教育委員会が把握していて、それを紹介するというのも対応策なんですね。連携といっても、全部学校が学校の主導の下に、学校の責任の下で何かプログラムをやっていただくとなると、これは学校の先生の負担は非常に大きいし、実際そんなことがそうできるわけではない。ですから、学校とは書いてありますが、そういう外へのアクセス、そのための情報提供ということも含めて、相当広い意味での指導・支援なんだということもぜひお伝えしたいところです。
私からは主に2点申し上げました。
【岩永座長】 ありがとうございました。
それでは、中島先生、お願いします。
【中島委員】 ありがとうございます。ちょっとどこまで整理できているか分からないんですけれど、あと、より詳しい方がいっぱいいらっしゃると思うのでぜひなんですが、今、松村先生、市川先生の御意見、私も賛同なんですが、同時に、何か基準を決めない、皆さんにお任せします、これは広く皆のためのものであると言い続けると、結局アクションが何も動かない。結局、今の現状がほぼ変わらなかったりで、現場からこういう声が聞こえるというのは、やっぱり今まで先生にとっても分からないから悪気がなく、むしろ悪気があってこんなことしているんじゃないかとか、何か単純にモラルがあってないとか、何かお行儀がなっていないとか、そういうふうに捉えちゃっていることが、でも、本人は実はそうじゃなくて、人よりこういう傾向があってそういうものが出ちゃっていた。先生もそれを分からないから、そこでかなりバッシングが、何かぶつかってしまって大変になっている。
だから、別に学校側も、何かすごい人たちを選び取る、何かIT技術でここをギフテッドにしましょうということを求めているのではなくて、どちらかというと、何に困っていたり、どういう傾向があるのか。まさに個別最適であるものを発見する手段みたいなものを大量に欲しいと。恐らくそれが一律的なものじゃない。100%正しい、何かもう1軸で決められるものじゃないということは、言い続ける必要ももちろんありますし、多分、でも理解されている先生方とかも多いんじゃないか。ただ、そもそも知識のない中で、結構個別に、ある種、素人的にいろいろなタイプの子供たちとか親御さんとかと接する中で、結構大変であると。だからこそ何かそういうのが分かるような手段とか研修とかをもっと欲しいという声なのではないかと。それは保護者とか子供たちにとっても同じことで、私は、この話を聞いていると、やっぱりどうやって見いだしていいか分からない。そもそもその見いだし方を先生に一任されているというのが先生も負担だし、実際、保護者も子供たちも、それでは解決できないということをすごいおっしゃっていたと思います。先日のアベマのやつでも、そこの部分は私すごくよく分かるなと思って聞いていました。
なので、何が言いたいかというと、私自身もそんなに知っているわけじゃないんですが、でも、例えばマルチプル・インテリジェンスなのか。あと例えば知覚過敏みたいなものでも、すごくいろいろなことを想像しちゃう子もいれば、めちゃめちゃロジカルに言っちゃう子もいれば、悪気はないんだけれど結構厳しい言葉を使っちゃったり、感情があまり分からないような発言をしてしまう子とかいろいろいて、それは本当に悪いことだけじゃなくて才能にもつながると思うんですよね。サヴァンとかもそうですけれど。
なので、そういう多種多様な多軸なツールを見せていくこと。私、これは実証の一つに入れてもいいんじゃないかというふうに、今聞きながら非常に思ったんですけれど。何か国が一律のものを出す、1個を出す。それによって判定しましょうというのは駄目だというのは私も大いに賛同だし、それは絶対そうあるべきだと思うんですけれど、ただ、多種多様なものがあって、それを課題というんじゃなくて、この子にはこういう傾向があって、どちらかというとポジティブに伝えてあげるほうが私はいいと思うんですけれど、想像力がめちゃくちゃ豊かであるとか。その分こういう傾向になっちゃいがちだとか。
そういうものを判定する何かアセスメント。それも100%ではないよと。これで判定されたからって、こうだって一概に決まるものじゃないし、あくまで研究段階のものかもしれないけれど、薬とかと一緒で、そういうツールをできるだけ見せていくと。同じように研修に関しても、絶対的にこういう子にはこうした対応したらうまくいくという、100%うまくいく方法なんて絶対ないわけで、個別最適で、それは逆に言うと一番先生方が御存じであると。とか親とか身近な大人が。
だけど、やっぱりそういう特性みたいなのも知らないと、どうしても本当にお互い悪気なくてぶつかってしまって、すごいストレスになるということが、これ、親に関してもあるんじゃないかと思うので、何かその辺の論点が、私も本当に賛同なんですけれど、多分そこの擦れ違いがもしかしたらあるのかなと思いました。
なので、多種多様な発見ツールみたいなもの。あと多種多様な研修。一律であるというふうにできるだけ見せない。でも、みんながみんな違うので、みんながみんないいところもあれば悪いこともあるということで、そこがちゃんと伝わるといいのかな。私自身は、数学オリンピックもやっぱり導入時、非常に反対されていたと思いますし、その気持ちもよく分かります。例えば早く入学するとかもその当時あって、結構あれになって、目立ち過ぎちゃうとやっぱりよくないとかがあったりするので、何事もいい、悪い、いろいろあるんですけれど、でもやっぱりそういう場ができて、ある種、評価されると、もしかしたらそれがなかったらすごく難しいという子が評価されるかもしれない。
数学オリンピックとか何かは分かりやすいのであれなんですけれど、もっと分かりにくい特性を持っていて、一見すごく遅かったりできなかったり。でも、実は絵だったらすごく分かったりするかもしれないわけなので、その辺がとにかく多種多様に引き出し得る環境をつくっていくということが、まさに私はこのタイトルは必ずしもおかしくないんじゃないかと思っています。このタイトルだからこそ、もうありとあらゆる人の特異な才能を見いだしていくような、まさに個別最適なもの。それを一律に何もしないということではなくて、たくさんやっていくという方向にできないかなということはちょっと聞きながら思っていたので、発言させていただきました。ぜひツールとかでいろいろ御存じの方もっといらっしゃると思って、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【岩永座長】 ありがとうございました。今、まだ質疑、意見の交換の途中なんですけれども、全国市町村教育委員会連合会の田邊会長が御予定があるということで、先ほど申し上げたとおりなんですけれども、この辺りで御退室いただくということにさせていただきたいと思います。
本日は、田邊様、お忙しい中、お時間を頂戴して御説明いただきましたことに深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
【田邊会長】 こちらこそありがとうございました。失礼いたします。
【岩永座長】 失礼します。
それでは、質疑応答、意見交換を再開したいと思います。今、挙手をいただいているのが、次が秋田先生ですね。秋田先生、お願いします。
【秋田座長代理】 ありがとうございます。それぞれ大変貴重な御発言をいただいて、共通する点と、それからそれぞれの御観点から総括的な御意見をいただいたと思っております。
私も今までの議論と同じで、これがあくまでも個別最適な学びと協働的な学びの一体の実現の中で、一番、今困っているけれども、今まであまり着眼されなかったところにまずは光を当てながら、その実現の一つの方途としてそういうことに議論が行っているんだと理解をします。
だから、特定の個人のIQとか特定の個別のアセスではないかもしれないけれども、多元的に多分その子が置かれた環境や指導の方法と、その子供の特性のマッチングということによって、子供が困っているというようなことが生じるわけです。かつ、そういう子供たちが、そのために可能性を伸ばすことが十二分にはなれていないというところが議論の論点になっているんだというふうに理解をしています。
特定の子供のアセスはしないにしても、子供と環境側とか指導方法とかその場とかの工夫によって、それが低減できる方向を考えていくような、何らかの着眼の視点というようなものは提示すると。そうでないと困ってしまうというそれぞれの団体からのお声というのは、そういうことを表しているのかなと、私自身は思ったところです。
幾つかジレンマがあります。先生方は今でも大変お忙しく、いろんな種類の子供たちが、いろいろなタイプのお子さんがいる中で務めてくださっているので、これ以上のことはできにくいので、ぜひ外から支援をしてほしいとか、外と連携してほしいということとです。それから、学校内でもできることがあるので、そこについては、教員に向けて全部の研修をしてほしいというような、幾つかの葛藤するようないろいろな要求が今回出ているというふうに私自身は思っています。
そのときに、優先順位があるとすれば、教育委員会としてはとか、教育委員会は担当の指導主事なり誰かが担当しなければならなかったり、業務として、何がこのときに、今日挙げていただいた中で、優先順位としてどういうところがやっぱり最も大事かを考えることが重要となります。当然保護者への説明も必要ですし、いろいろな形で場も設定したり予算もかかると思うんですけれども、その中で何が一番先生方に負担はないけれども、必要なことになってくるんだろうかというようなところを、本当に簡単なお声でもいいんですけれど、今日出していただいた中でも明確にちょっと伺っておきたいなというふうに私自身は思うところです。
こういう子供の存在について、多くの先生に御理解をいただくことが重要だと思う一方で、これ以上あれもこれもと先生たち言われても困るので、むしろ明確な役割分担的なところでやれるとしたら、例えばある子が特定のところに取り出して、先ほどもありました。特定の人が、大人が見ているだけでは可能性を伸ばすことがないその辺りを少し優先順位とかいろいろ本当に整理して御理解いただき、丁寧な御意見をいただいたんですけれど、この辺り、少し率直な、団体の御意見というふうにはいかないかもしれないんですけれども、今日御報告をいただいた方に、やっぱりどんな政策でも優先順位をつけていかないとできないとすると、この問題、どういうふうに考えて、課題をより解決することが、今、2Eをはじめ、いろんな子供たちにとっていいんだろうかというところの御意見を伺いたいと思います。
この審議のところでは、全体を目配りして、総合的、包括的に書かれているわけですけれども、その中でやっぱり緊急を要するものからの優先順位づけ的なところと、協働的にいろいろやっていく部分とが必要になるんじゃないかと、私自身はお声を聞きながら思ったというところになります。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
今、秋田委員からは、各教育委員会等の御発表された方々に御質問ということで出ましたけれども、お二人、手が挙がっておりますので、そのお二方の御質問、御意見を聞いてからということでよろしいでしょうか。すみません。
それでは、福本委員からお願いします。
【福本委員】 皆様、現場に寄り添った中での貴重な論点を本当に具体的に挙げていただきまして、また、総括的な御意見をありがとうございました。
もう先生方が先に述べていただいたとおりなんですけれども、やはりなかなかメディアの捉え方とか、その後のSNS等のお母さん方の意見交換等も見ている状況の中で、やはり誤解を招きやすいというところが本当にあるのかなと感じています。私自身も先生方と今まで議論してきた中で、一番重要なことは、やはり多様な子供たちの特性と多様な環境のマッチングというものが最適な状態になるということ自体が、全ての子供の個別最適な学びの促進に重要なわけで、そこに特異な才能かどうかというところ以上に、こちらに意味があるというところが十分に伝わっていくということは、非常に重要なのかなと思っています。
その中で、子供が物足りなさを感じている。あるいは困っている。あるいは、先生や親御さんが環境と合っていないんじゃないかと感じておられるということが契機になるということ自体もすごく重要なため、何かラベリング自体が、基準を明確にすることによって、そちらが先行していって、検出していく、抽出していく。困り感を置いといて抽出していくということがないような形で、ぜひ子供に寄り添った基準を設けていく必要があるんじゃないかなと思いました。
困っているとか物足りないというような意識と、あるいは日々の行動の状態ですよね。そこの部分というのは、問診でも十分にチェック項目等を挙げながら、困り感があるとか、2Eの特徴であるとか、ギフテッド系のお子さんたちがどういう特徴であるかというところなんかは、これまでの研究でも明らかになってきているところがたくさんあるわけなので、チェック項目として、本当に日常的な本人の状態、本人の感じている状態というものをチェックしていくという問診形式は、学校の中でも入れていくことができるんじゃないかなと思いました。
第三者が診断していくとか抽出するということだけではなくて、本人が自分の理解を促進していくということも非常に重要なことなのではないかと思いますので、専門科領域だけにとどまらない文言を入れながら、困り感があったらこの問診を受けてみてねということを学校側が提示できたり、親御さんが提示できたり。そのチェックを見て、どこにサポートをつなげてあげられるといいんだろうかというところを体系化していくということが、何よりも現場に即した基準をつくっていくときの一つの対応策になり得るんじゃないかなと思います。
今回、特異な才能をということですけれども、発達障害のときにも、やっぱり発達障害ということを掲げると合理的配慮を得られやすいということで、発達障害の診断を出してほしいという、またちょっと違った動きが生じたこともありますので、そういったところは先ほどの市川先生の御指摘のあった、基準を設けることによって起こってくる弊害ということも勘案して、問診というようなやり方も1つ具体的な方法としては取り入れられるんじゃないかなと思いました。
例えば体の健康状態だとすごく分かりやすいと思うんですけれども、しんどいという本人の訴えがある。あるいは保護者や先生が異変を察知して、問診を取りながら実際に病院にかかって、それがどういう状態なのかということを見据えた上で、連携先とか方針が決まっていくというようなやり方と同じように、多様な選択肢を最終的に増やしてあげる。それにマッチしたものがひもづいていくというフローチャート式なものというものはつくっていくことができるんじゃないかなと思います。その連携をやっていく際の体系化というものが、実証研究の中で明らかになっていくこと。
その中で異分野を越境するようなことや、異業種の方々が手を携えて、役割をどういうふうに分岐していくのかというところがグラウンドデザインとしてちゃんと描かれるということを、実証の意義として盛り込むということが何より重要なのかなと思いました。
以上です。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。
もう一方、手を挙げていただいています。大島先生、御発言ください。
【大島委員】 本日、教育委員会をはじめ、全国からそして市町村から多様な御意見をいただきまして、ありがとうございます。ちょっと2点申し上げたいかと思っています。
1点目は、やはり令和の日本型教育ということで、個別最適な学びと協働的な学びをどうやってバランスを取っていくかということかと思っています。今日出ています資料7に、意見の募集結果のPDFで、最後のページに子供たちから提出された主な意見の概要というのがあるんですね。ここが多分先生方が御指摘されているような、やはり個別最適化の中で、今までやっぱり一様で一律な教育の中で、今の授業の中では少し物足りないという生徒さんが出てきている、児童生徒が。そういう生徒さんたちに対しては、なかなか今まで着目されていなかった。
一方で個別最適という学びで、そういう方たちにも対応しないといけないと。でも、一方で、そういう方たち、生徒さんに対応するといっても、やはり学校というのは社会的ないろいろな形成ということでも非常に大事な役割を果たしていますので、その生徒さんたちだけを特別にすればいいという話ではなくて、やはり協働的な学びという中で、バランス取りながら個別最適もしていかない。そういう2つが大事なんじゃないかなというふうに、今日の議論をもって感じました。
一方で、そういう両立をする際に、現場の先生が今でもやはり忙しいという中で、どうやってそういう多様な、そしてインクルーシブな学校、社会を目指して、学校生活でもそういうことを実現していくかということだと思うんですね。
なので、1点目はやはり個別最適な学びということで、基準の話が出てきましたけれども、一律な基準というよりか、この7ページに書いてあるような、別に飛び級が必要なわけではない。だけど、やっぱり自分のニーズに少し着目してほしいという。いわゆる子供たちに寄り添った、そういう教育であるということと、一方で、学校現場の先生の中では、でも集団生活のそういう協働的な学びということの実現ということで、そこを少し、今までお話が出ていましたけれども、整理していく必要があるのかなというふうに思っています。
これは多分、一律の基準ということはできないにしても、ケース・バイ・ケースでいろんな整理ができてくるのかなと思っています。そういうところをやはり少しずつ体系化していくということが大事なのかなと感じています。
2点目は、現行の学習指導要領にもありますように、社会に開かれた教育課程ということで、こういう難しい問題を、学校の中だけではなくて、地域も含めて、今、学外の連携ということも出てきていますけれども、そういう学外と連携しながら、やはり餅は餅屋。得意なところがあると思いますので、そういうところで個別最適な学び及び協働的な学びを実現できるような、そういうところというのをうまくマッチングしていくということが大事なのかなと思っています。
それは、やはり地域ごと学校ごとに置かれている状況が違いますので、これを一律にこうしろということはなかなか難しいと思うんですね。なので、こちらもいろいろと事例を重ねながら、そういうプラクティス。どこかがおっしゃっていましたけれども、いいところ、成功例ですね。あとうまくいかなかったで、そういうことを広くシェアしていくという。そういうような場の形成が今後必要になってくるんじゃないかなと思っています。
実証の話が出てきておりますので、やはり実証に関しては、ちょっと先ほど申し上げた1点目であったり外部連携の2点目をうまくしながら、皆様が共有できるような事例というのを少しずつ知見をしながら体系化していくためのデータづくりをしていけるといいんじゃないかなと思っております。
私からは以上になります。ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。
もう一方、お手が挙がっておりました。根津先生、お願いします。
【根津委員】 早稲田大学の根津と申します。本日は御意見どうもありがとうございました。主に公的なお立場から、何をどうすればいいのかという率直な戸惑いの表れかなというふうに私は理解させていただきました。これまで御発言のあった委員の方々のように整然としたものではないですけれども、雑駁な感想を述べさせていただきます。
この有識者会議に限らない話だと思うんですけれども、何かの目的のために外的な基準を設けるということと、その基準を誰かが児童生徒に当てはめるということと、当の児童生徒が自発的に学ぶ場を選べることというのは、これ、本来全部違う次元だろうなという気がするんですね。1個ずつ本当は丁寧に見ていかないといけない敏感な問題だと思うんです。さっきのIQの話で言うと、私はついそういうところに目が行ってしまうんですけれど、130というんだったら129の子はどうなるんだみたいなことをつい考えてしまうので。気をつけないといけないのは、本来、別次元の事柄を、何らかの基準で一体化して、流れ作業のように、あ、こうすればいいんだなという感じでとんとんとんとやろうとする、この扱いには慎重であるべきだろうと思うんです。
趣旨としましては、私の理解するところでは、教室にはいろいろな子がいるよねという。先生方もお感じになるんだと思いますけれども、ちょっとあの子のあれは困るよねというようなところですとか、あの子はすごいよなというような会話が恐らくあるんだと思うんですけれど、それで終わらせないで、その次どうするのかというところも含めての議論なんだというふうに私は理解をしております。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
大分時間が押してきたんですけれども、先ほどの秋田先生の御意見の中に、ぜひこの機会に御発表の各位の御意見も伺いたいということが入っていたと思います。お一人ずつ御指名させていただいてという時間は全然ないんですけれども、特にそれについてお話をいただける方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いできますか。

三木さん、お願いします。
【三木教育次長】 よろしくお願いします。
今、先生方の御意見を頂戴いたしまして、本当になるほどと思いますけれども、ただ、私ども、教育現場を抱えている身のほうから申し上げますと、やはり、まずこういう支援をする場合は、例えばヤングケアラーとか貧困の問題とかでもそうなんですけれども、まず対象者がどういう方なのかというその定義から入らないといけないと思います。具体的にどの子供たちを対象として支援を差し伸べるべきなのかというところでございまして、全て現場任せという形に、言葉は悪いですけれどなってしまいまして、非常に教員の負担も重くなってまいります。今、御承知のように教員は非常に忙しくて、教員の負担軽減をどうするかということは、今、最大の課題となっており、その影響で教員の志望者がすごく減っているという状況もあります。
そういう中で、またさらにこの特異な才能というのを、定義がない中で個別に見るというのは確かにそうなんですけれども、ある程度は一定の概括的な基準といいますか、あるいは例示的なものでもいいんですけれども、場合ごとでどの基準に当てはまる可能性があって、どうつないでいくことができるのかが分かるようにしていただきたいということでございます。
1つは、学校内で特別支援のような形でできるかもしれませんけれども、学校内では対応できない場合、大学とか医療機関とかその他いろいろなところにつないでいく先が分かっていない状況でございます。そんな現状の中で、一から教員が学外機関との連携とかやっていくというのは、現実問題としては非常に難しいということがございます。
それと保護者の理解。通常の学級と違う教育手法、支援を行う場合には、どうして私の子供はそうなのかと。あの子とはどこが違うのかということの、やはり保護者の方への説明、理解が非常に大切になってまいります。その場合に説得力ある説明をしようと思いますと、あなたのお子様はこういう観点からこの場合に当たるので、その中でも最適な支援方法はこうなんですよということを説明してあげないと、やはり保護者の方の納得が得られないと。またそこでさらにトラブルという形になってまいります。
そういうことがございますので、一定の分類的でも構わないんですけれども、やはり概括的な基準のようなものを示していただけたらと。また、それに対する対処法といいますか、つなぐ相手先といったものもいろいろと探っていただきたいと思います。
それと、また、いろいろな予算での支援を行う場合もそうなんですけれども、財政的に見ますと、やっぱり対象者が誰に対してどういう基準でするのかというのが明確でないと、実務的には財政当局も予算の査定が下りないというところは、実際、現実問題としてはございます。
そういった面も含めまして、いま一度何らかの概括的な定義などができないのかどうかを、学究的な探求ではなくて、現実の教育現場に沿った考え方をぜひしていただきたいなというのが私どもの切実な願いでございます。
以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。
もう一方。安田教育長からお手が挙がっておりますが、お願いします。
【安田教育長】 今の議論を聞いていまして、いろいろな御意見、もっともだなと思って拝聴させていただきました。今回の議論のテーマである特定分野に特異な才能のある、もっと言えば才能のゆえに学校生活に困難を抱えている児童生徒、対象の児童生徒をどう把握するかと。これが把握さえできれば、その後にある学校における指導・支援の在り方というのは意外といろいろな方策があって、様々な手法があるんだろうと思います。ただ、その入り口のところの対象の生徒というところの部分で、1つ大きくみんな引っかかるところがあって、このお話をいただいたときも、我々議論したときにやはりかなりそこのところに時間がかかっているというところであります。
実際、学校の現場では、先生方はふだんの指導を通して、この子には多分ほかの子とは違う能力があるんじゃないかなとか、あるいは、そういったことが原因で、自分は授業の中で逆に言えば困っているのかなという、ある程度そういう状況は、もう先生方はかなりつかんでいるところはあります。ただ、ある程度はつかんでいても、それが特殊な才能のところまで果たしてそうだと言い切れるというところまでは、なかなか現場では分からないんじゃないかなと思っております。これは、特別支援学校でも同じだろうと思っております。
実際、我々も判断基準のことを様々書いていますけれども、特定するための判断基準というのは、IQの話題が出ていますけれども、必ずしもIQという何か1つの基準でなくてもいいと思っているんです。実際、広い範囲での子供を対象としてこういった支援をしていくというのは、私も非常にいいことだと思いますし、理解もできるし、そうあるべきだなと思いますけれども、何かしらの判断基準。1つでなくてもいいと言いましたのは、何もなければあまりにも広過ぎて、先ほど申しましたけれども、現場の指導の場合には、すごく曖昧さとか判断しづらさとか、そういったものが必ず出てきます。
そういった中で、自分の感覚とか親、子供さんの自分からの自己申告とか、様々なそういったものを果たして全部拾い上げてやれる、広い範囲でやれるのかといっても、なかなか現場ではそれは難しいんじゃないかなと思います。一律の判断基準じゃなくても、例えばこういった指標があるとか、こういった特徴があるなど示していただきたい。先ほど問診の話もありましたけれども、問診でもよろしいですし、例えばいろいろな、何かの場面に出ていって何かしたとか。高校にもなれば様々なものがあって目立つところはあるんですけれども、小中学校の場合、なかなかそういうどこかに出ていって何かするという、判断するような材料というのはなかなか少なくて、そういったものを含めれば、やはり広い範囲でいいので、基準までいかなくてもいいですね。何かしら判断できるものを示していただくということはやっぱり必要なのかなと感じております。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
大分時間が押してしまったので、質疑応答、意見交換はここまでとします。今、期せずして議論が基準というところに来たと思います。やはり先生方の負担が大変だというのは、指導を余計にやるとか研修を余計に受けるということが大変だということではなくて、今、六方のお話を伺うと、例えばあなたが才能児と思う子供にあなたの思うとおりの教育をしてくださいという曖昧な仕事を依頼したときに、これはもうとてもじゃないけれど受け切れないということだと思うんですね。あなたが才能児を自分の経験と自分の頭で選んでくださいということほど負担になることはないので、やはりこの基準の問題、指標の問題は、これは避けて通れない。
ただ、誤解がないように言っておきたいと思うんですが、この有識者会議は、結論としてその基準を出すということを目的としておりませんので、どうしたらその基準をつくれるかとか、どういう方向で考えたら基準が我々のものになるのか、そういうものが使えるようになるのかということの示唆を得られればなと考えております。
そういう意味では、先ほど中島委員からありました実証研究。まだ実証研究の中身まできちんと詰めていないんですけれども、実証研究の中に多軸的なアセスメントツール。才能アセスメントツールの開発という実証研究を入れるとか、研修のやり方。より良い研修ツールを開発するという実証研究を入れるとか。それから、福本委員からありました。問診形式のあるべき姿というか、有効な問診形式の在り方というようなものを実証研究の中に入れるということで、それを通じて具体的な指標なり具体的な基準なりを見いだしていこうという方向でまとめていくというのが一つの答えかな、解かなというふうに私は聞かせていただきました。
堀さんからも手が挙がっておりますけれども、一言でお願いできますでしょうか。
【堀課長補佐】 失礼します。
大島委員、それから秋田委員等もありました。困難の解消と才能の伸長というバランスが重要だということ、それから優先順位をどうつけていくのかということでした。委員会のスタンスとして、やはり制度の見直し、予算措置、人的配置、研修の充実等を今回挙げさせていただきました。ただ、今から話すのは、宮崎市教育委員会としてという事例になります。全国都市教育長協議会とは少し離れますが。
宮崎市が今スクールワイドPBSという考え方の下に特別支援教育を進めています。褒めて伸ばしていく。その中に、今困っている子供たちが、もしかすると通常の学級で適応しながら力を発揮できる可能性があるのではないかと思っています。
もう一つは、指導体制の問題です。一律教育の打破ということで、宮崎市が、文科省の授業時数特例校4校を指定しまして、今年度からSTEAM教育、そして自由進度学習の実践を始めました。子供たちが自ら課題を見つけながら勉強していくような指導体制。今話した内容はもしかすると、我々教育委員会が自走できるという視点では重要な視点じゃないかなと思いまして、少し発言させていただきました。
以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。御協力ありがとうございました。
それでは、議論を一旦閉じさせていただきまして、2つ目の議題に移りたいと思います。前回の会議において委員の皆様にお諮りしておいたんですけれども、この7月27日から8月15日にかけて、審議のまとめ(素案)についてパブコメをいただきました。まずは、お忙しい中にもかかわらず、皆様から貴重な御意見を提出いただいたということで、誠にありがとうございました。有識者会議としてもそれらをしっかりと受け止めてまいりたいと思います。
全部読むわけにいきませんので、意見募集の結果について、事務局から簡潔に説明をお願いしたいと思います。事務局からの説明の後、残り時間を意見交換の時間とさせていただきます。よろしくお願いします。
失礼しました。ヒアリングに御協力いただきました教育委員会関係団体の皆様におかれましては、本日はお忙しい中、お時間を頂戴し、御説明、御議論いただきましたことを感謝申し上げます。ありがとうございました。この時点で御退室いただいて結構でございます。どうもありがとうございました。
それでは、事務局からの説明をお願いします。
【川口学校教育官】 それでは、審議のまとめ(素案)に対する、意見募集の結果について御紹介いたします。この意見募集は、本有識者会議の審議のまとめ(素案)について、国民の皆様から広く意見を募集することを目的として行ったものです。募集期間は令和4年7月27日から8月15日までの20日間でした。提出された意見の数は280件。項目ごとの内訳は資料のとおりです。意見提出者の属性は様々でしたが、保護者、児童生徒の立場の方、そしてギフテッド応援隊、異才ネットワーク、学びの個性尊重プロジェクトといった関係保護者団体からも御意見をいただいたことは御紹介しておきたいと思います。
2ページ目に参ります。意見の概要を御紹介いたします。意見募集では、審議のまとめ(素案)の項目に沿って4つの区分から選んで提出できるようにしておりました。このため、この資料でもこの4つの区分に応じ、(1)から(4)として意見を分類し、その概要を小見出しをつけて表現しております。本日はかいつまんで御紹介することといたします。
初めに、(1)全体の区分で提出された意見についてです。
まず、対象となる児童生徒に関すること。1つ目の丸。ギフテッドを対象とするのではなく、広義の才能を持つ児童生徒と穏やかな表現とし、個別最適・探求学習を目指すこととしたことは非常に大切。全ての子供に焦点を当て、政策のさらなる拡充を図るべきといった御意見。一方、2つ目の丸のように、対象となる子供をはっきりとさせるべきとの趣旨の御意見もいただいております。また、6つ目の丸。困難の主原因であるOE、非同期発達の書きぶりについて御意見をいただきました。
次に、支援の在り方に関すること。1つ目、2つ目の丸。安心感、周囲の寛容さと理解を求める御意見。4つ目の丸。同じことを同じペースでやることを平等と考えるのではなく、それぞれ違っていることが平等・公正であるという、学習に関する平等感の転換に関する御意見をいただきました。3ページ目に進みます。4つ目、5つ目の丸。小学校低学年から支援が必要との御意見。6つ目の丸。高校や大学卒業後の就職などの支援を求める御意見もいただきました。
次に、具体の支援に関すること。1つ目、2つ目の丸。少人数クラスや環境調整が大事であり、教職員や専門的な人材を増やすことが必要との御意見。6つ目の丸。特異な才能の児童生徒について個別最適な学びを協働的に行うには、オンラインでつなぐことが効果的との御意見。4ページ目に進みます。3つ目の丸。現在、知的好奇心を満たす機会を得るための情報は手探りの状態だから、国などでアクセスしやすい仕組みをつくってほしいとの御意見。6つ目、7つ目の丸のように、大学図書館、科学館、博物館等、支援や居場所となる場所を増やしてほしいという御意見。9つ目の丸。学校外での学びも相応の評価をしてほしいとの御意見をいただきました。
次に、現行の教育システムの変更などに関すること。義務教育段階における単位制、教科ごとも含めた飛び級、ホームスクール、義務教育スタート年齢などに関する御意見をいただきました。
5ページ目に進みます。次に、教職員の研修等に関すること。4つ目の丸。動画コンテンツはよいが、型にはまった判断を生むことを危惧するという御意見。動画コンテンツと併せて、学習補助教材も提供してはどうかとの御意見もいただきました。
次に、用語に関すること。特異、才能、ギフテッド、それぞれの語句についての御意見のほか、メディアの報道に対して偏見などにつながらないよう、社会的な理解を求める御意見もいただいております。
6ページ目に進みます。次に、(2)はじめに、1.現状、2.課題の区分で提出された御意見についてです。
まず、対象となる児童生徒に関すること。1つ目の丸。2Eの説明について、学習障害や発達障害を併せ持つ場合があると書き加えたほうが分かりやすいとの御意見。5つ目の丸。学校でのいじめをきっかけにカウンセリングを受けた。ギフテッドだと分かった途端、いじめから子供の特性にフォーカスされて、学校側と話合いができなくなってしまったとの御意見もいただきました。そのほか、一番下の丸。突出した才能を持つ国民をどのようにして日本の国力増強のために生かすかという観点についての御意見もいただきました。
7ページ目に進みます。(3)3.基本的な考え方の区分で提出された御意見について。
まず、対象となる児童生徒に関すること。1つ目の丸。児童生徒の障害の有無に拘泥するあまり、様々なニーズを取りこぼしていたのではないか。むしろ学校生活への適応の有無に視点を変えていけば、特異な才能のある児童生徒が有する様々な困難に柔軟に対応していくことができるのではないかとの御意見。また、2つ目の丸。特異な才能のある児童生徒が異質な存在として捉えられるとの懸念から、選抜や線引きに対する慎重な考えが示されているが、しっかりと線引きを示すべき。取り出しによる支援は必要。過度な競争を回避するのは言い訳だといった御意見もいただきました。
次に、支援の在り方に関すること。3つ目の丸。仲間と集まってしかできないような魅力的なプロジェクトを、学校の外ともつながりながら展開していくなど、一斉授業からのシフトが求められているとの御意見。4つ目の丸。同質化を押しつける文化をなくすことが大前提との御意見。6つ目の丸。児童生徒に対する強制が生じることのないよう、運用への留意を求める旨の御意見をいただきました。
8ページ目に進みます。(4)4.今後取り組むべき施策の区分で提出された御意見について。
まず、教職員の研修等に関すること。マインドセットを変えていく必要があるとの御意見や、教職課程で専門知識に関する学習を求める御意見をいただきました。
次に、教職員へのサポートに関すること。1つ目から3つ目のように、教職員が相談できる場が必要ではないかとの御意見。5つ目の丸。臨床心理士や神経科、理学療法士による教員へのフォローをできる体制を求める御意見をいただきました。
次に、教職員の負担軽減に関すること。通常の学級では対応できない。これ以上の負担を避けてほしいとの御意見をいただきました。9ページ目に進みます。教師の日頃の仕事量を減らす改革が必要。2つ目の丸。やらないことを増やすため、トップダウン的にやらないことを明確に示すことが必要との御意見をいただきました。
次に、学校内での支援に関すること。1つ目の丸。教科学習でのICT活用を求める御意見。2つ目の丸。オンライン学習を求める御意見。科目ごとのクラス編成や高いIQを有する児童生徒の学校など、集団の編成について検討を求める御意見。7つ目の丸。個に応じた教育の実践は、特別支援学級において実践例が蓄積しているから、そのノウハウの積極的な活用を求める御意見。8つ目からは、学校内に学習に関する相談や自習ができる場を求める御意見をいただきました。
次に、学校外の支援に関すること。企業見学、工場見学、フィールドワークなどの機会や、大学の講義への参加を求める御意見をいただきました。10ページ目に進みます。このほかフリースクールやいわゆるホームスクールでの学習の扱いや、経済的な支援を求める御意見をいただきました。8つ目の丸になりますが、学校外の学びの成果を内申点に加算するなど、入試制度に関する御意見もいただいております。
次に、児童生徒の特性等の情報の取扱いに関すること。ポートフォリオについて、児童生徒がアクセスすべきでない情報があることにも注意すべき旨の御意見をいただきました。
次に、保護者等へのサポートに関すること。保護者等への支援の重要性や保護者からの質問等を担当する第三者機関をつくるといった御提案をいただきました。
11ページ目に進みます。最後に、子供自身から提出された主な御意見を御紹介したいと思います。1つ目の丸。全ての学校に周知してほしい。たくさんの先生に知ってほしい。2つ目の丸。計算方法が違うと言われ、勉強もつまらなく不登校になった。毎日毎日1人で勉強も寂しい。もっと難しい勉強をしたいのに学校でできない。4つ目の丸。先生や友達にすら相談できず、1人悩んで精神を病む。もっと高いレベルの問題を解かせてみて、学校生活が安定するのかを試してみてほしい。下から3つ目の丸。授業中にパソコンなどで自分で勉強を進めていければいいと思う。一番下の丸。友達が大好きなのにつらくて学校に行けなくて、ずっと会えないとの御意見をいただきました。
以上、意見募集の結果についての御紹介でした。
【岩永座長】 ありがとうございました。
それでは、大分時間が押しておりまして、十分な時間もなかなか取れないんですけれども、意見交換に移りたいと思います。今、紹介いただいた意見募集の結果を踏まえて、審議のまとめ(素案)に反映すべき内容等について、委員の皆様から御意見がありましたら、例によって手を挙げるボタンを押していただいて発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
市川先生、お願いします。
【市川委員】 今の子供たちの意見というのを聞いていると、やっぱりこれはすごくもっともだし切実なんだと思うんですよね。何が問題かというと、こういう声を学校の先生に直接言えるかということなんですよ。つまり、今回、さっき福本先生も言ってくれたと思うんですけれど、やっぱり子供たちの声、問診と言っても面談と言ってもいいと思うんですけれども、子供たちの困り感ということを聞いた上で、じゃ、対策を考えていこうと。そのときに、学校の授業をちょっと改善すれば、随分解消できることもあるかもしれない。これも学校の授業としてやってほしいことですよね。学校だけではどうも対応できそうにないと思ったら、例えば地域にこういうものがあるよとかいう情報が、これは教育委員会がつくっていただければ、学校もそんなに負担にならないと思うんですけれども、こんなプログラムが地域にはあるよとかいうような情報が得られると。その中から子供が選んで参加できるとかですね。
そういうものがつくられていけばいいと思うんですけれども、今日の最初の先生方のいろいろな御意見を伺っていると、この報告書を見た途端に、これ、該当する子供たちはどういう子供なんだ、どういう基準でその子たちを選ぶのかというね。何か学校や先生は、こういう子供たちを選定する、選抜するみたいなことが先に立ってしまって、それはまた大変だと。そういう議論を、この審議のまとめをめぐって学校の先生方がけんけんごうごうで議論しているというのが、私は物すごく痛ましいことだと思うんですよね。
何かこちらがコンセプトとか基準を決めて、その子たちをどうしようかを考えるということを求めるのではなかったと思うんですよ。やっぱり子供たちの困り感というのがあって、ニーズに応じる体制をつくって、そしてそこにマッチできるようなものをつくっていこうと。学校の先生の負担はできるだけかからないようにということを考えてきたはずなのに、学校の先生は、これが出ることによって、むしろこれをめぐっての議論で物すごいエネルギーを費やしているというような雰囲気がかなり伺えたので、そこはやっぱり書きぶりを注意しないといけないなと改めて思いました。
【岩永座長】 ありがとうございました。
では、続きまして藤田委員から手が挙がっております。
【藤田委員】 今、市川先生がお話しくださったこと、まさに私が申し上げようと思ったことをきちんとおまとめくださってありがたいと思いました。やはりこの子供たちの声ということが、私は全てを語っているのではないかと思うんですね。こういう子供たちを前にして、きっと困っているだろうなというふうに先生方は思っていらっしゃることも疑いがない。その気持ちを、やはり業務負担であるとか御自身の負担を含めて考えたときに、別な方策で対応してしまう。それを私たちのこの審議を基に、もうちょっと先生方が肩の荷を下ろしながら、まさに社会の力を借りながら、社会に開かれた教育課程の実現の中でICTの力も借りながらやれるような枠組みをつくるはずだったと思うんですね。
ただ、やはり先ほどの現場の先生方、教育委員会の先生方の話をお聞きしていると、やはりその表現が十分ではなくて、伝わっていないということを痛感した次第です。まさに市川先生がおっしゃってくださったとおりです。ですので、私たちはもう一度書きぶりも含めて、何を伝えなきゃいけないのかということを初心に戻って文章を書き起こしていくということも含めながら考えなきゃいけないなということを感じました。
ただ、今日議論を聞いていて思ったことは、一部先生方の不安もあったにせよ、私たちが言わんとすることを一生懸命受け止めようとしてくださっている教育委員会の先生方のお姿を強く感じたので、そういった意味では、全く先が暗いということではなく、きちんとメッセージを伝えていくこと。そして、先生方の御負担を増やそうとするわけではなくて、子供たちの声を聞こうとしているということについてフォーカスを当てたいなと改めて感じた次第です。
以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。
続きまして、秋田委員から挙がっております。お願いします。
【秋田座長代理】 今、市川委員、藤田委員からもあったと思います。書きぶりで、なぜこれが議論されるかという位置づけは、とてもよく理解をしてくださっていると私は思いました。しかしながら、どうしてもこれまでの手順というんでしょうか。委員会は何をしたらいいんだという発想になった途端に、取り出していくとか、アセスを個人でやるのにより簡便な方法がないと困るという方向になってしまっているところについて、その間の説明というんでしょうか。
先ほど福本委員が事前のアセスという話であったり、特定の個人の特定の要因だけの問題を議論するんじゃなくて、これによって学校の全体の指導の在り方とかこれまでの在り方も含めて、先生方が皆さん、私たちが求めていることを理解してもらいたいんだというメッセージがもう少し強く出て、しかし、その入り口のところで、もう少し自分で教室で抱え込んで困るか、取り出した後は他人に任せるというのではなくて、もっと教室を開いていって、いろいろな方向性のかけ橋をつける方法があるということを示していくというスタンスのところが書き込めると伝わるのかなと思ったというところです。
以上になります。
【岩永座長】 ありがとうございました。
もう一方、手が挙がっております。中島委員、お願いします。
【中島委員】 ありがとうございます。やっぱり非常にパブコメは面白い。面白いと言ったら変なんですけれど、率直ないろいろな声が聞こえて面白いと、興味深いなと思って拝読しました。
私自身も、学校の先生ではなくて、当事者たちからでも同じような声って、実はもらっています。だから、ちょっと気になるのが、両面が本当であるなと思っているんですけれど、やっぱり、ただ変わっていると思われちゃうとか、ただわがままだと思われちゃうと。そうじゃなくて、特性というものをちゃんと見いだしてほしい。変わっているとたたかれるというのがどうしても出てしまうところがあります。たたかれるというより、どうしても日本の多様性の問題にもあると思うんですけれど、そのときに、逆に言うと見いだしてほしい。学校の先生に見いだしてもらうだけだと、結構、難しいんじゃないかとか、そういうトラブルになっている中で、むしろ当事者からも、これ、学校の先生だけじゃなくて見いだしてほしい。
ただ、逆に見いだして、じゃ、あなたは特別支援とか、じゃ、あなたはこっちだというふうにされることに対する抵抗感というのも物すごくあります。いや、何でみんなと一緒にここに行きたいのに、何かちょっと困った。じゃ、こっちへ。それは非常に嫌だと。なるべくやっぱりインクルーシブな状態で学びを受けられる機会というのが欲しい。そういう声はすごく当事者から聞いています。
なので、改めて思ったのは、委員会が思想を打ち出すのはいいことですし、この委員会が何かこういう定義みたいなものを出すことではないんですけれど、これがあったことで現場が変わっていくという流れはつくらなきゃいけないと思っています。
そのときに、例えば実証にしても、ちゃんと研究的な要素を持つとか、プロの視点とか、先生とか現場だけでは計り知れないようなところというのは、やっぱり求められているんじゃないかなということをちょっと改めて思いました。最初のほうに、過興奮性のOEの部分と非同期発達のところをちゃんと入れるべきじゃないかという人がいましたけれど、私、これに非常にアグリーで、もうちょっとそういう突っ込んだ、どういう特性があるのか。非常に想像力だけが豊かになっちゃった、あと知が走り過ぎちゃって、どうしても言うことがいる子がいるとか、今までの研究の中でもそういうことって、いろいろされているわけですね。もちろん研究も100%ではないので、いろいろな考え方の方もいる。だけど、やっぱりそういう傾向がある。いろいろなところに。感覚過敏もそうですけれど。非同期発達の話もそのとおりで、こっち側が何でこんなにできるのに、本当に何でここだけこんなに幼いんだろうとかですね。でも、そういう傾向というものが一定レベルでやっぱり出てしまう。どちらかというとそのアンバランスさがギフテッドとか呼ばれていたり、非常に生きづらさになっていたりするんじゃないかと思いました。
なので、そういうちょっと専門性の高いようなこともある程度入れていくことで、みんなが、あ、なるほど、なるほどと思う、一般の人たちから見ても。そういうことが保護者にとっても当事者にとっても、当事者にとっても結構つらいのが、自分はそういう傾向があるからかなとかと思ったりするだけでも違うんじゃないか、先生にとってもあるんじゃないかと思いました。
例えばマルチプル・インテリジェンスの考え方もそうだし、今だと社員とかでも、やっぱりストレングスファインダーみたいに強みを知ったり、自分の傾向を知ったりとか。これは最終的にギフテッドだけの話じゃなくて、各自の特性をいかに得るかという話になってくると思うんです。ポートフォリオとしても、これは本当に100%オールマイティーがいいということじゃなくて、あなたはどういう傾向があるかということをちょっと知っていく。こういう傾向がある場合は、こういうふうにしたほうがいいということを知っていく。その流れがつくれるといいんじゃないか。
ただ、気をつけなきゃいけないのは、何事も一律化しちゃいけないということです。あ、この傾向があるから、だからこいつ、何か生意気だと思っていたんだ。だから、こっちに行きましょうとか。1人ありましたけれども、ギフテッドと言われてからいじめが認定されなくなった。ギフテッドだからその人が悪いとかそういうことではないはずなので、そういう一律的な定義みたいに、どの定義というか、どのことにしてもとらわれてはいけない。これは徹底的に言い続けるというか、思想的にも言い続けなきゃいけないのかなと思いました。でも、今ちょっと言っていたようなことを感じたので、その辺り、ちょっと専門性の高いものも入れていけるといいかなと思いました。
あと2Eという言葉も知らない方もいると思うので、やっぱりそういうところに補足説明をちゃんと入れていくとか。学校の先生とか保護者とか読んでも分かりやすい言葉になって、専門性で研究されてきたことが落ちてくるような、自分たちのおなかに。
あとは、先生方がおっしゃっていた、地域のどことつながればいいかとか、どんな問診をしたらいいのかとか。そういうのも答えを求めているとなっちゃうとよくないと思うんですけれど、ただ、やっぱり完全に地方の教育委員会、先生にお任せしますではなくて、例えばこんなものもあんなものもあるということを、国の側からも見せていく。ちゃんと危険性、それ、絶対じゃないからねということも含めて見せていく。でも、こんな場所もあんな場所もあるよ。こういうときはこれがいいよ。そこはいきなりいいものを出せるかどうか分からないけれど、国の側でいろいろな試行錯誤をするという姿勢を見せていくということが大事なのかなというふうにちょっと思っていまして、意見させていただきました。
ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。
松村先生。
【松村委員】 すみません。
高いIQの子を特異な才能のある児童生徒として指定すべきだという意見が見られましたけれども、先ほどの私の話と関連しますが、やはり特定の基準による一律な定義はまずいということが一般によく理解されていないかなと感じます。高偏差値の進学校は独自の基準で入学選抜していて、そこに結果的に高いIQの生徒が集まりますけれども、全員のIQをわざわざ確認することはありません。
OEだ、非同期性だ、いろいろな言葉が出てきて、それの説明が必要だということも分かりますけれども、審議のまとめの中ではそういう細かい点についても解説していると切りがない。それで、別途、審議のまとめの解説書みたいなものが必要になるかなと感じます。それは今後の周知・研修の中で説明されるべきで、審議のまとめのレベルではできるだけシンプルに、これまで文科省でも工夫して、細かい表記まで検討して書いてくださったので、あまり変えないで最終的にまとめていただけたらいいかなと、個人的には思います。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。今後の進め方としましては、事務局と相談の上、前回及び今回の皆様の議論を踏まえて、審議のまとめ(素案)を修正させていただいて、次回の会議では、修正を入れた審議のまとめ案について議論を行っていただきたいと思います。ありがとうございました。
それでは、最後に次回以降の日程につきまして、事務局から連絡をお願いします。
【川口学校教育官】 次回の会議、第14回につきましては、9月26日月曜日10時から12時で行います。
【岩永座長】 ありがとうございました。9月26日、この月内で2回目ということですけれども、お忙しいとは思いますが、ぜひ御参加いただきたいと思います。
それでは、本日予定した議事は全て終了しましたので、これで有識者会議を閉会いたしたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――