特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第12回)議事録

1.日時

令和4年7月25日(月曜日)13時30分~15時30分

2.場所

WEB会議方式

3.議題

  1. 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の在り方等に関する有識者会議 審議のまとめ(素案)
  2. 校長会からのヒアリング

4.議事録

【岩永座長】  定刻となりましたので、ただいまから第12回特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議を開催したいと思います。本日は大変御多忙の中、委員の皆様には会議に御参加いただき、誠にありがとうございます。毎回のことではございますけれども、本会議につきましては、報道関係者等より録音・録画の申出があります。これを許可しておりますので、委員の皆様には御承知おきいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の会議資料の説明を事務局からお願いしたいと思います。よろしく。
【川口学校教育官】  本日の会議資料について御説明します。本日は、資料1-1、資料1-2と資料2から6までがございます。資料1-1は、有識者会議の審議のまとめ(素案)です。資料2から6は、審議のまとめ(素案)に対する各校長会からの御意見となっております。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。それでは、時間も限られておりますので、早速議事に入りたいと思います。本日の議題は、審議のまとめ(素案)と校長会の先生方からのヒアリングの2つになります。
 まず1つ目の議題ですが、審議のまとめ(素案)についてです。前回の会議で、「第3章までの素案」と「取り組むべき施策についてのこれまでの主な議論」という2つの資料をお配りし、それぞれについて御意見をいただきました。また、会議後も事務局を通じて各委員とやり取りさせていただきまして、皆様から取りまとめに向けた御意見をいただいております。これらを踏まえまして、本日の資料1-1として審議のまとめ(素案)をお示ししております。なお、第3章までは、前回の会議で既に素案を示しておりましたので、そこからの修正履歴を付したものを資料1-2としてお配りしております。赤字の入っているものです。
 審議のまとめ(素案)については、既に各委員から個別に御意見を伺っておりますけれども、御意見などがここでありましたら、事務局からの説明をさせていただいた後でお願いしたいと思います。なお、本日はヒアリングもありますので、時間配分について、皆様の御配慮をよろしくお願いいたしたいと思います。
 本日2つ目の議題は、先ほど言いました校長会からのヒアリングです。本日は小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、特別支援学級・通級指導教室の各校長会の方に御出席いただいております。それぞれの校長会から資料2から6を提出していただいておりますので、それらの資料に従って、審議のまとめ(素案)に対する御意見を頂戴したいと思います。残りの時間で、校長会の皆様との間で質疑応答、意見交換を行いたいと思っております。
 それでは、まずは議題1ですが、審議のまとめ(素案)の内容について、事務局から説明をお願いします。
【石田教育課程企画室長】  失礼いたします。資料1-1としてお配りしております審議のまとめ(素案)について御説明を申し上げます。
 まず、目次を御覧いただければと思います。前回の第11回の会議で資料2としてお配りした審議のまとめ第3章までの素案を踏まえて、第1章として、1「特異な才能のある児童生徒をめぐる現状」、第2章として、2「特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援に関する課題」、第3章といたしまして「今後の取組の基本的な考え方」を整理して、お示しをしてございます。
 その上で、前回、資料3としてお配りした取り組むべき施策についてのこれまでの主な議論ですとか前回会議での御議論を踏まえて、第4章として「今後取り組むべき施策」を新たに書き下ろしてございます。第4章では、(1)有識者会議が想定するあるべき姿、(2)「具体的な施策に関わる議論の整理」として丸1から丸5にわたる5つの柱に沿ってこれまでの議論を整理してございます。
 事務局からは、素案のうち、前回中心的に御議論いただきました、また、本日の2つ目の議題とも関わります、校長先生方のヒアリングとも関わります第4章の記述を中心に御説明申し上げたいと考えてございます。
 その前に1点だけ、前回、松村委員から御指摘いただきました、「特異な才能のある児童生徒」という名称をめぐる御意見を踏まえた修正について補足的に御説明したいと思います。具体的には、今共有されております資料1ページの第1章の「はじめに」の1行目のところでございます。才能は領域固有であることを踏まえまして、特定分野に特異な才能のある児童生徒については、この素案では、特異な才能のある児童生徒といたしますとともに、下の脚注の1でございます。有識者会議として、特異な才能のある児童生徒をどのように捉えているかについてお示しをしてございます。こちらの御紹介でございます。
 それでは、第4章について御説明を申し上げたいと思います。資料の22ページでございます。(1)として、「特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の充実に向け有識者会議が想定するあるべき姿」としてございます。1つ目の丸にございますように、各施策の実施を通じて、本有識者会議として想定する特異な才能のある児童生徒を取り巻く教室や学校などの教育環境のあるべき姿を描いているものでございます。
 具体的には、教室や学校の様子としてその姿を描いてございます。1つ目のポツでは、特異な才能のある児童生徒がふだん過ごす学校の教室の様子として、子供たち一人一人が多様性を認められ、教師の理解の下、1人1台端末も活用しながら、子供たちがお互いに高め合う教育活動が行われていることなどを示してございます。
 次の2つ目のポツでございます。上記の姿が実現してもなお必要な場合に、ふだん過ごす教室とのつながりを持った上で、一時的に過ごす教室等の様子を示してございます。
 3つ目のポツでは、管理職の先生方のリーダーシップの下で校内体制が整備された状況をお示ししてございます。
 次の23ページの1つ目のポツでございます。学校段階間の連携が取られている状況をお示ししてございます。また、学校外での学びとの連携につきましては、学校外の様々な機関や教育委員会との連携による多様なプログラムに、家庭の経済状況に関わらず子供たちがアクセスできるようになっている状態を、また、周囲の理解等ということで、教職員、家庭、地域からの理解や協力、教職員や保護者に対する相談体制の整備などがなされている状態など、それぞれあるべき姿としてお示しをしてございます。
 そうした状況の下でということで、次の丸でございますけれども、「特異な才能のある児童生徒を含む全ての子供たちが、自らの理解の程度や知的好奇心に応じ、主体的に学習を調整しながら、積極的に学習に取り組むようになり、また、お互いに特性やよさを認め合い、自らの存在感も実感しながら、安心感、充実感を持って学校生活を送ることができるようになるものと本有識者会議では考える」としてございます。
 その上で(2)「具体的な施策に関わる議論の整理」といたしまして、丸1から丸5の5つの具体的な施策について、これまでの御議論を整理してございます。
 まず、丸1の「特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進」といたしましては、2つ目の丸でございます。教師や教師以外の専門スタッフに対するものとして、3つ目の丸、分かりやすい動画コンテンツや理論的なものだけではなく、実践に役立つ内容などの工夫を位置づけてございます。
 次のページ、丸2「多様な学習の場の充実等」といたしまして、1つ目の丸、一時的に安心して過ごせるようにすることが考えられる。例えば校内教育支援センターの活用が有効なのではないかということ、また、3つ目の丸でございますが、養護教諭やスクールカウンセラー、学校司書、学習指導員などの役割の重要性などについてお示しをしてございます。また、文科省における支援策や既存の制度の引き続きの推進もお示しし、枠囲みの中で具体の中身を書いてございます。
 次のページでございます。キャリア形成の観点からのキャリア・パスポートの重要性も触れてございます。
 次に、丸3「特性等を把握する際のサポート」といたしまして、1つ目の丸の3行目からでございますが、困難を抱える児童生徒に対してより適切な支援を行うため、その認知・発達や行動の特性、才能に伴う学習・社会情緒的な困難を把握すること。あるいは、困難は環境との相互作用の中で生じるという視点で捉えることの重要性。このため、次の丸でございますけれども、民間事業者などにおける特異な才能のある子供たちの特性等の把握のためのツール等に関する情報を収集し、共有することの重要性などについて示してございます。
 次の施策の柱、丸4でございます。「学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供」として、このページの一番下でございますけれども、国は、国で行うプログラムを含め、特異な才能のある児童生徒の指導・支援に関わる学校外の様々な機関が提供するプログラムなどに関わる情報を集約し、提供する仕組みをつくるべきであること。具体的には、オンライン上にプラットフォームを構築し、使いやすいものにすることなどについてお示しをしてございます。
 次に、5つ目の柱でございます。丸5「実証研究を通じた実践事例の蓄積」ということを位置づけてございます。アといたしまして、「実証研究の必要性」ということでございます。この2つ目、3つ目の丸に関わってまいりますけれども、これまで特異な才能のある児童生徒を念頭に置いた指導・支援の取組はほとんどないこと。そこで、実際に幾つかの主体で実証的な研究を行い、実践事例を蓄積した上で横展開を図っていくことが必要であることから、国は教育委員会、学校等と連携し実証研究を行うべきであること。その際、次のページになりますけれども、5行目でございます。このため、広域自治体である都道府県が役割を果たしていくことが求められること。他方で、意欲ある市町村の自律的な取組も重要であること。
 また、次の丸でございます。高等学校等については、学校外学修の単位認定などの既存制度を有効活用する方策を検証していくことや、次の丸、民間事業者の知見を有効に活用するため、民間事業者が参画できるようにすることなどについてお示しをしてございます。
 次に、イ「実証研究を通じて検証すべきこと」といたしまして、「学校内での取組に関すること」、また、次のページでございます、「学校と学校外との連携に関すること」、3つ目、「児童生徒を取り巻く環境の整備に関すること」、こういう3つの枠組みでこれまで御議論いただいた内容を整理してお示しをしてございます。
 次に33ページ、ウでございます。「研究を実施する際の留意事項」といたしまして、「学校内での取組に関すること」といたしまして、1つ目の丸、特異な才能のある児童生徒が受け入れられるような包摂的な学級経営が重要であること、また、次の丸、通常の学級のみならず、通級による指導、特別支援学級も実証研究の対象となり得ることをお示ししてございます。また、学校と学校外との連携に関することといたしまして、本有識者会議では、一律の基準により才能の定義は行わないこととしており、特定の児童生徒を対象として特別の教育課程の編成は行わず、現行の制度的枠組みの下での柔軟な運用の在り方について研究を実施すること。課業時間中に学校外プログラムを活用する必要があると判断する場合には、その教育課程上の取扱いとしては出席扱いとすることを可能とすることが考えられること。その際、出席扱いと判断した主体や要件を整理することが必要ということをお示ししてございます。
 最後に、エ「実証研究のアウトプット」といたしまして、「国は、これらの検証の成果を全国的に展開するとともに、必要に応じ制度改正を検討するべきである」としてございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【岩永座長】  ありがとうございました。ただいま御説明をいただきました審議のまとめ(素案)について、委員の皆様から、この場で御発言されたいことなどがございましたら、お願いしたいと思います。もし御意見があるようでしたら、「手を挙げる」ボタンを押していただければと思います。
【岩永座長】  市川先生から出ておりますので、市川先生、お願いします。
【市川委員】  市川です。一番最後の1文がちょっと引っかかったんですけれども、実証研究の成果を展開して、その後、必要に応じて制度改正というような言葉が出ていますよね。制度改正というのは、普通、我々の感覚からしますと、国会で法律を改正するような、かなり大きな制度改正を念頭に置いてしまうような気がするんです。ただし、ここではそこまで大きなことを言っているわけではなかったと思います。前のほうのページにも、今の制度の枠内でできるような、そういうことを積極的に進めていくというような1文もあったと思いますので、あくまでも国会での法律改正というような大きな制度改正ではなくて、指導要領の枠内で、あるいは指導要領を変えるとか、中教審答申の中で述べた上で指導要領改訂に持っていくくらいのことではないかと思うのですけれども、この点、いかがなのでしょうか。「制度改正」という言葉がちょっと引っかかったのですが。
【岩永座長】  どうもありがとうございました。確かに私も、実はそこのところ、少し気になっていたところで、制度って非常に、インスティテューションというのは大きな言葉ですので、そこまで踏み込むべきかどうかというのは私のほうでも少し疑問に感じておりました。今、市川先生から一種の御提案だと思うんですけれども、次期の学習指導要領の改訂時が参りますけれども、その際の中教審の議論に反映してもらうとか、今回の審議の成果を次期学習指導要領の改訂の際に確実に反映していただくというようなことで書きぶりを改めたほうがいいのではないかなということを私も感じましたが、ほかの先生方からはいかがでしょうか。
 制度改正まで踏み込むべきではないということでの御提案だと思いますけれども、よろしいでしょうか。もし市川先生の今の御意見に賛同していただけるということであれば、ここの部分は少し言い回しを修文させていただきたいと思います。少なくとも、「制度改正」という文言ではないものに変えていきたいと思います。
 よろしいですか。ありがとうございました。
 松村先生、お願いします。
【松村委員】  
 この資料、後ほど会議資料に加えて掲示していただけるはずなので、後ほど御覧ください。ここで多くの方々が不明に思われそうな点について、審議のまとめの記述に沿って確認を行います。2分間でお話しするようにまとめてきました。
 1つ目、「特異な才能」は英語の「gifted」に対応した広い意味の才能を指すことになります。つまり、「特異な=突出した」ではありません。特異な才能は教育行政の用語として、新しい理念の取組を象徴するキーワードとなることができます。前回私が提案したような、単に「才能」というのはありふれた言葉で、文科省の取組に注意を引くには弱いです。ただし、日常的な慣用や学術用語では当然、才能の表現に制約は受けません。
 次に、特異な才能を一義的に特定の基準や数値で定義しないと述べたことから、では、誰が何を基準に才能を見いだすのか不明では困るという声が上がると思います。ですが、審議のまとめにあるように、才能を見いだすのは個別プログラムや施策で、実施主体が個別に行うのだということが周知されるべきです。すると、具体的な取組で取組ごとにどんな意味に特化しているのかを明示することが求められます。これによって、関係者の共通認識を得ることができます。
 また、誰が特異な才能のある児童生徒なのかは名指ししないことになります。「教師の理解が一層進むことが期待される」と述べられていますけれども、教師が特異な才能のある児童生徒を選別する作業を担う義務を負うものではありません。ただし、教室で才能のある子の才能や困難の表れに気づいて、共感したり、学び方のちょっとした工夫したりするとかというのは望ましいです。これは保護者から切望されている対応として、可能な喫緊の課題です。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。一番最初のときからそうですけれども、才能とか特異な才能とか、あるいは、最初のほうでちょっと出てきました「gifted」とか、そういった言葉についての注釈と、それから、使うべき言葉、使うべきでない言葉について松村先生のコメントをいただいたと理解しております。
 秋田先生、お手が挙がっています。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。松村先生のお話にではなく、先ほどの制度改正の話です。制度改正に関して、「必要に応じて」と書かれておりますので、必要がなければ別に改正はしなくていいんだけれども、例えば、特に高校などで単位履修などをどうするのかというようなときに、もしかすると「必要に応じて」というような文言が入っているほうがいいということがあり得るかもしれないと考えます。これが「必要に応じて」ということなので、1文入れておいても問題がないのではないかと考えます。個人的には逆にこれが入っていないと、結局そういうことが射程には入っていないという意味になってしまうわけです。、できれば、できるだけ成果に応じて、必要があれば、そのときにはできるというような可能性を残した表現にしておくほうがいいのではないかと思いました。もちろん今すぐ制度改正を云々するということではないという市川先生のお考えにも賛成なのですが、含みのある文として入れておいても問題ないのではないかと個人的には思いましたので、一言発言いたしました。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。確かにそういう側面がありますね。ただ、ここの文言、もう一度復習してみますと、「必要に応じ制度改正を検討するべきである」となっておりまして、この「必要に応じ」が「制度改正」にかかるのか「検討」にかかるのかが分かりにくいところなんだと思うんです。秋田先生がおっしゃるのは両義性があると思うんですけれども、私も必要に応じ検討すべきであると考えれば、検討するのに制度改正をタブーにすることはないと思いますので、入れてもいいと思うんですけれども、この文言のままだと、必要に応じて制度改正をすることを検討すべきであるとなってしまって、確かに秋田先生がおっしゃるように、制度改正をタブーにするべきではないということもあるんですけれども、あまりに制度改正に視点が向かい過ぎてしまうのではないかなと。様々な制度がありますけれども、そういうことを変えるところまで射程に入れた議論なのかなと誤解されてしまうのも危険かなと思った次第ですが、その点では私も市川先生のお考えには賛成なんですけれども。
 中島先生、お願いします。
【中島委員】  ありがとうございます。大した意見ではないというか、今、私も手を挙げようか迷って、秋田先生にほとんど同じことを言っていただいたので、そのとおりなんですけれど、でも、やっぱり今、期待が高まっている分、どの制度がどうこうとか、制度改正に確かにあまりに視点が行くのはどうかというのはあるんですけど、同時に、そういう余地が残されていることが文科省から出ること自体は、困っている人たちからすると結構希望になるんじゃないかと。すぐに制度改正をするとかそういうことではないけれど、非常に応じてそういうことも考えますという姿勢を見せることは今回すごく大事なのではないかと私は思いました。
 なので、文言も、そんなに誤解されることはないような気がするんですけど、もう少し柔らかくしてもいいような気もしますけれど、「必要に応じ」というものがついていれば私も、なので、先ほどちょっと文言を確認させていただいたんですけれど、入ったほうがいいんじゃないかというのが私の個人的な意見になります。やっぱり今回困っている方々に対してということ、それは学校現場の先生方にとっても、実は変えてもらうとより楽になることとか、枠組みの中だけでやるべきことなのか、場合によって、その枠組みをもしかしたら少し変えること、余地があるのかということはかなり前提条件が変わってくるんじゃないかと思うので、その点、御検討いただければと思います。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 市川先生から、またお手が挙がっております。市川先生、お願いします。
【市川委員】  今の部分なんですけれども、私はこの最後の1文が、実証研究をやって、どういう成果が出るのかを見極めた上で、次に何をやるかというところが一気に制度改正のことがぽんと出てくるのがすごく前のめりな気がしているんですね。アウトプットが出てきた、こういう取組をするといいというのが分かったときに、何をするべきかということになると、まず今の指導要領の枠内でもできること、これ、たくさんあるわけで、この審議のまとめには、今の指導要領枠内でもできることがたくさん書いてあるはずです。そういうことを、これは効果がありますよということで実施していく、これがまず第1にあるべきだろうと。
 その次に、ちょっと今の指導要領の枠内ではやりにくいので、次の指導要領の改訂に向けて、指導要領そのものを少し改訂していくのだろうと。ここまでは、何も制度改正というほどの、国会で審議を要するほどの大きなものではないんですよね。それでも、どうしても、さらに大きな改革が必要だということになれば、その先に制度改正があり得るというのは私もそうだろうと思います。ただ、ここで一気に実証研究のアウトプットが制度改正へという大きな話になると、それは逆に違和感がある、ちょっと前のめり過ぎではないかという印象があります。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。私も二股公約のようですけれども、どちらもそのとおりだなと思っておりまして、ただ、この審議のまとめの素案の中で書かれていること、これは現在も傍聴していただいております方々から幾つか質問が出たりするんですけれども、やはり「制度改正」という4文字が、私たちが議論しているときのイメージと、これが一般の方々のところに行ったときのイメージとが、ちょっと強さが違ったり具体的に意味するものが、それを聞かれた人の頭の中に出てしまったりというようなことがちょっと怖いなと思っているわけです。
 市川先生がおっしゃってくださったように、制度に手をつける以前に、いろんなやることもあるし、やれることもあるし、やらなければいけないこともあると思うんです。それを包摂したような言い方というと、やはり「制度」という言葉を使うかどうかについては、もう一回考え直したほうがいいかなと思っておりまして、例えば、「必要に応じ国としての対応を検討すべきである」というようなぐらいに落とし込むとか、制度から運用から、そういうものを全部含めたような言葉に落とし込むとかいう、とても玉虫色というか、そういう表現になりますけれども、そんな表現にしたら、皆さんの考え方をそれぞれ反映することができるようになるんじゃないかなと思っているところです。
 恐縮なんですけれども、ここで、「制度改正」という言葉はやめますとも、「制度改正」は残しますとも結論は出せないんですけれども、今の様々な御意見を踏まえて、この書きぶりにつきましては、もう一度こちらで考えさせていただきたいと思いますので、私どもに対する宿題ということで、今日は御意見を伺ったということにさせていただきたいと思うんですけれども、よろしいでしょうか。とても大事な部分だということは思います。ありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきまして、ここをどう変えるということは、今ここで決めることはしないようにしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題1についてはもうよろしいでしょうか。よろしければ、この辺りにさせていただいて、議題の2番目、校長会からのヒアリングに移りたいと思っております。先ほどお伝えしたとおり、本日の会議には、全国連合小学校長会、全日本中学校長会、全国高等学校長会、全国特別支援学校長会、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の方々に御参加いただいております。各校長会等には事前に、今回の議論になっております審議のまとめ(素案)をお送りして、第4章の有識者会議として目指す姿と今後取り組むべき施策を中心に御意見を伺っておりまして、それをお願いしておりました。
 特に取り組むべき施策の丸5として提示した実証研究について、検証すべきこととか、あるいは、検証に当たって留意すべきことをお聞きしております。校長会の皆様から資料2から6を提出していただいておりますので、まずは資料に沿って、それぞれ校長会長から10分程度で御意見をお聞かせいただきたいと思っております。それでは、恐縮ですけれども、こちらで御指名をさせていただいた順に御意見を伺いたいと思います。
 全国連合小学校長会の荒川元邦対策部長から、資料2に基づいて御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荒川対策部長】  委員の皆様方、はじめまして。こんにちは。私、全国連合小学校長会で対策部長を務めております狛江市立狛江第三小学校の荒川元邦と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私、審議のまとめにつきましては読ませていただいたんですが、この会議に参加していたわけでもなく、先生方の御議論を聞いていたわけでもないので、もしかしたら、もう既に御議論いただいている内容だったりとか見当外れなことを言ってしまったりするかもしれませんので、その辺は御容赦ください。
 まず、全体を話す前に、うちの学校の現状を話させていただきますと、うちの学校は、自閉症・情緒障害特別支援学級と特別支援教室を併設しておりまして、学校全体で特別支援の研修会を開くなど、特別支援教育や多様性についての理解は進んでいると考えております。また、学校全体でタブレット端末に関しても積極的に活用しておりまして、オンラインでの授業や不登校支援、あるいは外部専門機関との連携など新しい取組を実践していると自分では思っております。しかし、こういう学校であっても、特異な才能のある児童についてはまだまだ認識が少ないのが現状であります。
 審議のまとめの中でも見せていただいたんですが、ああいった事例にあるような子供はどの学校にもいるわけではなく、先生方がぴんとこないのが現状であると思っています。しかしながら、本校の自閉症・情緒障害学級の児童や不登校傾向の児童の中には、発達検査等で凹凸が激しくて、非常に突出した分野があって、一部教科や特定の分野に対して高度な知識や興味関心を示す児童が一定数いるのも事実でございます。しかし、発達特性の強さや2次障害、環境調整、情緒的な専門対応の必要性が非常に高く、特異な才能の対応に行き着くまでの困難が伴っておりまして、高い専門性等を有する教員の必要性が問われるのが現状でございます。発達の困難さと特異な才能の両方に対応する必要はあると思っております。
 続いて、実践研究において検証すべきことや留意すべきことですが、実践研究をするに当たり、小学校の中で特異な才能の児童だけを取り出して指導を実施することは難しいと考えています。そもそも、先ほど申し上げたとおり、何をもって特異な才能とするのか、アセスメントの難しさや抽出の困難さがありまして、また、希望しても選ばれない児童に対する人権的な配慮も含めて課題だと考えております。
 もとより、先ほどから出ておりますように、令和3年の答申にもありますが、本来は全ての子供たちに才能があって、教育活動全体で子供たち一人一人の才能を見いだすために多様なアプローチをすることが必要であって、これは通常学級含めてですが、学校全体で、様々な背景がある多様な子供たち、誰でも豊かに自己実現できる環境をつくるのが公教育の大前提であると私たちは考えております。また、一部というよりも、教育全体でインクルーシブを考え、推進していく必要もございます。
 その上で、先ほど申し上げたとおり、本校の自閉症・情緒学級では、本提言にある内容を一部実践しております。例えば、困難さだけではなくて、児童の強みを焦点に当てた対応であるとか、感覚過敏などに配慮した教室環境であるとか、ICTの積極的な活用であるとか、医療や大学の先生など専門家、スクールカウンセラー等との連携、タブレット端末やオンラインを活用して、学校外の専門機関と連携した専門的な授業などを行っております。このように、一部であっても実践が行われている学校は少なからずあると思うので、そういう学校からヒアリングを行って、研究につなげていくのが現実的ではないかと考えています。
 続いて実践研究に当たってなんですが、本校では文科省の知的障害に対する通級による指導についての実践研究を既に受けておりますが、現在、業務を実施しながら、加配等もなく、新しい研究に取り組むには現場は非常に負担が大きいと考えています。また、準備期間も少なくて、学期の途中から取り組むといった現状がございましたので、もしこの実践研究を進めていくのであれば、現場の実践の負担増にならないような研究校への時間的・人的配慮が必要であると考えております。これは先ほど審議のまとめにも出てきましたが、都道府県や市町村の教育委員会との連携、研究準備期間と教員への負担軽減、加配などを検討してほしいと考えております。
 また、特異な才能をスクリーニングし、特定の児童のみ才能があるという判断は、なかなか学校では難しいと考えています。さらに、審議のまとめにもありましたが、いわゆる2E、二重に特別なタイプの児童への対応は高度な専門性が要求されまして、対応できる教員がなかなかいないのも小学校の現状でございます。教員養成や教員研修等から考える必要があり、難しい児童へ対応する教員のメンタルケアや教員をフォローするシステムも併せて検討していただけるとありがたいと考えております。
 私からは以上でございます。
【岩永座長】  どうもありがとうございました。質問とか御意見が委員からあるかもしれませんが、5名の先生方からのお話を伺った後でまとめてということにさせていただきたいんですけど、よろしいでしょうか。
 それでは、時間もありますので、続きまして、全日本中学校長会、齊藤正富総務部長から御発表をお願いします。齊藤先生は、今、対面でこちらに来ていただいております。よろしくお願いいたします。
【齊藤総務部長】  皆様、改めまして、全日本中学校長会総務部長、文京区立音羽中学校校長の齊藤正富と申します。どうぞよろしくお願いいたします。まず、この機会をいただいたことと、あとは、この会議の中で膨大な資料を取りまとめていただいたことに対して、改めて学校現場として感謝を申し上げます。
 私からは、本会議で挙げられた5つの施策並びに令和の日本型学校教育の方針、これを具現化させなければならないということを前提に、中学校における教育活動の実態を鑑みながら、これから考えを述べさせていただきたいと存じます。既にお示しをいただいています施策5点について意見をまとめました。資料3を御覧いただきながら、お話を聞いていただければと存じます。
 まず、丸1の「特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進」についてです。率直に感じていることは、学校は何をするところなのかというところであり、また、学校は何でもしなければならないということを率直に感じております。特異な才能を有する児童生徒の支援を教員が行うに当たり、教員の資質を一層高めることが必要であり、その手だてとして研修が挙げられております。ただ、研修を受講したから、資質が一朝一夕に身につくものではなく、確実に研修を受けられる制度、その体制を設けるなど、資質向上に向けた環境整備は不可欠であると考えております。加えて、この事業にかかる財源、あるいは児童生徒の支援にふさわしい人材の確保を含めて、外部機関の人材を円滑に活用できる体制づくり、こちらも必要かと存じます。
 これまで、多くの学校において発達障害あるいは問題行動等、生徒一人一人の特性に係る児童生徒の理解のための研修は適宜実施されてまいりました。実践例としては、Q-Uのデータを活用した生徒理解研修、臨床心理士や特別支援教育中核教員による講義などがあります。しかし、特異な才能に特化した研修は実践が少なく、教員の理解は十分ではないと存じます。
 校内委員会での情報共有、スクールカウンセラーとの連携した対応、大学生等によるサポートなどの取組は全国の学校で既に行われており、これらを鑑みて、特異な才能を有する児童生徒に対して、公立中学校が現状において、個に応じて適切な教育活動を行うことは容易ではないと考えております。研修等によって、特異な才能の特性に由来する言動を教員が事前に情報として得ることにより、より適切な支援、指導等につなげることができると考えております。また、全国において、対象児童生徒に関する知識等を有した講師も少ないと推測できることから、校内研修等に活用するために、動画あるいはテキストの制作をお願いしたいと存じます。
 続きまして、2番目の「多様な学習の場の整備等」についてです。公立の中学校については、基幹校の設置あるいは学校選択制を導入しなければ、全ての学校に対象となる児童生徒を受け入れることができる環境を整えなければならないと存じます。公立中学校で仮に受入れ体制を整備しても、特異な才能を有する児童生徒と保護者の中には、現実には公立中学校以外の教育機関に通学をする者もいる現状もあります。この現状において、情緒障害のある児童生徒については、各校に通級指導教室を設置するなどして、特別支援教育に係る取組を既に行っております。また、学校設置機関は、障害とはみなされなくても特別な支援を必要とする児童生徒については、特別支援教育担当指導員等の配置に尽力をしているところです。その取組とは別の取組をしなければならないのかということについて疑問を感じております。
 また、学校外の場所等で支援活動を行うことによって、特異な才能への支援・指導は、各学校が定める教育課程上、どのように扱われるべきか。当該の児童生徒の履修実態に係る事案であり、進級、卒業の認定にも関わる部分であります。この点については、実証研究において検証の必要があると存じます。
 次に3番目、「特性等を把握する際のサポート」についてです。こちらは、先ほどの松村先生のお話にもありましたが、何をもって特異な才能と定義されるか、これが我々には周知されていないため、教育の機会均等にも触れかねないと考えております。定義については、公立学校を設置する機関である区市町村あるいは都道府県ではなく、国がイニシアチブを取って進めるべき事案と考えております。また、こうして把握された特性等については、「学校、児童生徒、保護者が共有できるポートフォリオに蓄積することが大切である」という記述が素案の中にございました。これについては、小学校、中学校、高等学校等、校種をまたいで活用することを求められているキャリア・パスポート、これが有効であると考えております。キャリア・パスポートは、校種を超えて学びが連続するように引き継ぐ継続性、さらには、活動を振り返ることを書く際に、そこでの学習内容や経験を新たな学びにどのように生かしていくかという発展性、さらに教師や保護者から記述に対するフィードバックを受けることも、新たな学びとのつながりに気づくきっかけともなります。さらに、現在、過去、未来という3つの時勢にまたがる形で振り返りや見通しをもつことができるという意味で、このポートフォリオの活用は大変有効であると考えます。
 次に、4番の「学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供」という項目ですけれども、こちらは指導、支援の必要性に加えて、制度が確立することを前提に述べますと、制度自体の周知が重要であると考えております。併せて支援の機会については、困って相談に来てから情報を与えるのではなく、全ての保護者に対して、就学前あるいは進学時のタイミングで確実に情報を伝えるべきであると考えます。また、情報共有等を経て把握された特性については、学校、児童生徒、保護者が確実に共有できるポートフォリオに蓄積することが大切である。これは先ほどのキャリア・パスポートのところに重なりますけれども、その実践によって進級、進学、あるいは外部機関等の連携における当事者と情報共有する際の負担の軽減にもつながると考えます。
 次に、実証研究について申し上げます。現時点で実践している学校、または地域があると認識しておりますが、全ての実践の課題が成果につながっているとは考えにくい状況がございます。課題の改善、解消に到達できなかった事例についても、学校現場としては大変貴重な情報がそこに含まれていると考えており、このことについても積極的な情報提供を望んでおります。また、特異な才能のある児童生徒については、他の児童生徒、場合によってはその保護者にも当該の児童生徒の情報を開示するなどして合意形成を図る必要が生じてくることが考えられます。個人情報の取扱いについては、実証研究等において検証が必要になると考えます。また、特異な才能があるかどうかが判断されていない時点で、どこに、あるいは誰にどのように情報を報告するのかが不明確だと思われます。また、報告等を当該の児童生徒の保護者が拒んだ場合、当該児童生徒が支援、指導を受ける機会が失われてしまうのか、学校や保護者以外からの報告についても誰ができるのかということについて、これは実証研究において検証していただければと存じます。
 最後に、学校で行われている事例について、2点お伝えをしたいと存じます。1人1台端末の貸与が昨年度から始まりましたが、ある中学校では、生徒自身が調べた方法で、所属校の情報システムに不適切な方法で侵入をして、専用のフォルダーに保存されていた教職員、そして生徒のデータを消去するという事案が発生したと言われています。当該校では、実行した生徒と保護者に対して厳しく指導する一方で、今回の行為は許されませんが、本人の能力の使い方によっては、学校のみでなく、より多くの人々に恩恵をもたらすことができるはずであるということで、国でも学校と連携してそのような人材の育成に取り組んでいる制度、これを自身で調べて、その能力が多くの人々に恩恵をもたらすように、ぜひ使ってほしいという指導もしたということがございます。
 また、別の中学校が所属している地区では、英語という教科に特化していますけれども、発展的な講座を地区の教育委員会が主催して、全中学校から代表生徒を募り、その講座を運営しているという実態がございます。また、指導者を学校の教員だけとせず、高等教育機関、研究機関、医療機関の従事者等、知識や経験のある専門家も、対象児童生徒の支援、指導に当たってもらうことが有効な策かと考えております。
 以上でございます。
【岩永座長】  ありがとうございました。それでは、御質問、御意見は後に回させていただきまして、お三方目、全国高等学校長協会、杉本悦郎前会長からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
【杉本前会長】  よろしくお願いします。全高長の前会長の杉本と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 今回の有識者会議審議まとめ(素案)に対する意見を大きく4点述べます。若干これまでの議論を蒸し返してしまう指摘もあるかもしれませんけれども、今後につながるところなので、発言を続けさせてください。
 まず1点目、特異な才能のある児童生徒を取り巻く状況2(2)丸1に対する意見です、3つ目の丸のところで、「こうした支援の取組が講じられるかどうかは、それぞれの教育委員会や学校の理解や体制に左右される側面があることに留意が必要である」と書かれています。支援の取組が講じられてない以前に、特異な才能のある児童生徒が見いだされることなく埋もれてしまっている可能性が高いのではないかという危惧を感じます。また、5番目の丸の後段、「学校において児童生徒に直接関わる教師の理解が一層進んでいくことが期待される」と書かれています。理解が進んでいない状況があるならば、直接関わる教師の理解の進展は、期待ではなく急務と捉えます。また、第7回の論点整理、資料1-1では、特異な才能を有する児童生徒が学習活動及び学校生活に困難が生じている場合の対応策を可能とするために必要な環境や体制として、8項目が示されていたかと思います。そのうちの(才能や特性の見いだし)の項目では、「困難の有無に関わらず、広く才能や特性等を見いだす方策について検討する必要がある」と記されていました。しかし、第11回審議のまとめ(素案)では、「見いだし」が「把握し」に改められていました。さらに今回は、「教師の理解」と変化をしています。学校現場の教員が才能や特性を適切に見いだすことができなければ、その他方策を講じようとしても、支援あるいは指導を必要としている児童生徒が埋もれたままでは意味がないと考えます。
 特に特定分野に特異な才能のある児童生徒が、低年齢の場合や日本語指導が必要な場合、秀でた思考力や判断力を有していたとしても、言葉で表現する能力が伴わず、自分の考えを適切に伝えることができないことが十分に考えられると思います。この審議まとめ素案4(2)丸3にある特性等を把握する際のサポートにとどまらず、広く才能や特性等を見いだす方策について踏み込んで検討すべきと考えます。
 2点目です。取組を進める上での考え方、3(3)丸1に対する意見です。2つ目の丸のところに、「入学者選抜を通じて在籍関係が決まるため、学力等でみた場合に学習集団がある程度の水準でまとまっている状況がある。また、高等学校には、義務教育に比べて選択肢が多い」と書かれています。審議のまとめ(素案)2(1)丸2の4つ目の丸にも、「読み書きなどの学習における困難を抱えるなど、様々な障害による学習上又は生活上の困難を併せ有する事例が報告されており」とあります。このような特異な才能と学習困難を併せ有する児童生徒の場合は、高等学校における入学者選抜を通過できていない可能性が十分考えられます。このような児童生徒に対する支援などにも配慮が必要と考えます。また、特異な才能のある児童生徒が入学した際には、中学校と高等学校との間で適切に引継ぎを行うとともに、認知や発達の特性に起因する学習上の困難に対する支援などについても留意が必要と考えます。
 3点目です。取組を進める上での考え方、3(3)丸2に対する賛意と要望です。2つ目の丸のところに、「教師だけで全ての対応を行うことを想定するのではなく、教師以外が参画することや、学校外の学びの場も含めて検討することが重要である」、また、4つ目の丸に、「特に学校外の学びの場の支援や教育委員会や在籍校との連携については、予算や人員といった実現のためのリソースが不可欠である」と書かれています。また、「学校内における対応策も含め、リソースの保障もなく、施策の実施を安易に現場の努力のみに求めるようなことがあってはならないということは論をまたない」という記載もあります。学校のマンパワーを前提にするのではなく、外部機関、人材の活用並びにリソースの保障に基づく施策を強く要望いたします。
 最後、4点目です。多様な学習の場の充実等、4(2)丸2に対する現状と要望です。3つ目の丸に、「養護・福祉・心理などの側面から児童生徒に対する支援を行う観点から、養護教諭やスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの活用も重要である」。審議まとめ(素案)4(1)にも、「スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどと必要があれば子供がすぐに相談できる体制が校内で整備されている」ことが、有識者会議が想定するあるべき姿と記載されています。しかし、スクールカウンセラーの配置状況は、令和2年度の学校保健統計資料によりますと、週4時間以上の定期配置は全国平均で小学校が22.5%、中学校が66.9%、高等学校が42.1%しかありません。中学校の配置が100%の福井県でも、高等学校の配置は全国平均を大きく下回っています。また、スクールソーシャルワーカーの活動日数の状況は、令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、表の丸1から丸4までの年間41日以上、これはおおむね週1回以上ということですが、全体の構成比の僅か16%にとどまっています。特異な才能の有無に関わらず、全ての児童生徒を支援できるよう、必要があれば子供がすぐに相談できる校内体制の整備を早急にお願いしたいと思います。
 また、5番目の丸にあります「文部科学省における支援策や既存の制度については、引き続き推進していくことが重要である」、これについては、文部科学省における高等学校等への支援策や教育委員会による指定校事業等は、特定の分野・領域に焦点を当てた学校の取組の支援において成果が上がっています。しかし、指定を受けた高等学校等に在籍していなければ、その支援を享受することはできません。また、国際科学技術コンテスト支援事業や教育委員会によるチャレンジ支援プログラム等は、優れた才能を伸長するための機会となっています。加えて、大学や民間事業者、地域の施設、非営利法人等における特異な才能のある児童生徒を含めた児童生徒の興味・関心に応じたこれまでの取組等をさらに拡充していただくとともに、各都道府県内にある大学等の高等教育機関における特異な才能のある児童生徒のための先進的な支援や取組についての情報を共有し、全国的に発展・拡大させていただきたいと思います。また、高等学校等では、在校以外の場における体験的な活動等の成果により幅広く評価できるよう、学校外における学修の単位認定や大学等における学修の単位認定などが活用できるよう、制度の導入を各学校で検討すべきと考えております。
 私からは以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 それでは、あとお二方になります。続きまして、全国特別支援学校長の三浦昭広副会長から、資料5に基づいて御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【三浦副会長】  全国特別支援学校長会副会長の東京都立町田の丘学園校長、三浦昭広でございます。日頃より大変お世話になっております。よろしくお願いいたします。本日、私のほうにカメラ機能がついてないもので、音声のみで失礼させていただきます。
 まず初めに、特別支援学校についてなんですけれども、皆様御存じのとおりだと思うんですけれども、特別支援学校では、児童生徒の自立と社会参加を目指し、児童生徒一人一人の障害に応じた、きめ細かい指導を少人数で実施している学校でございます。そのため学校では、児童生徒の障害の状況、いわゆる実態把握をするために各種アセスメントを行って、まず、子供の実態把握をきめ細かくしているところです。
 その過程の中で、例えば、福祉関係の方ですとかと支援会議なるものを実施して、さらに子供の状況把握、実態把握を深めているところです。その中で、個別の教育支援計画ですとか個別の指導計画を策定して、児童生徒一人一人に必要な指導の在り方、指導内容等々を選択して、指導しているところでございます。
 それでは、これから資料のお話をさせていただきます。まず、特別支援学校につきましては、知的に障害を有する児童生徒と知的に障害を有しない児童生徒、大きく2つのグループに分けることができます。まず1点目は、知的に障害を有しない視覚障害特別支援学校、聴覚障害特別支援学校、肢体不自由特別支援学校、病弱・虚弱の特別支援学校の中の小学校、中学校、高等学校の教育課程と同様の準ずる教育課程です。特別支援学校の中で知的な障害を有しない児童生徒は、準ずる教育課程という教育課程で学習をしております。この準ずる教育課程で学ぶ児童生徒においては、小学校、中学校、高等学校に在籍する児童生徒と同様に考える必要があると特別支援学校長会では考えております。
 「ただし」とありますけれども、視覚障害や聴覚障害の場合につきましては、その障害特性から、日頃の学習状況に比べて、特定の教科の特定の領域において特異な才能があったとしても、指導者側からは把握しにくい、そのような状況が予想できることから、大学等と連携した研究開発等の充実が望まれていると考えております。
 一方で、知的障害を対象とする特別支援学校における児童生徒や、上記の視覚障害等を対象とする特別支援学校における知的障害を併せ有する児童生徒の場合は、全般的な学習の遅れに比べて、秀でた美術的才能や音楽的才能を発揮する児童生徒が在籍しております。実際に、知的障害を併せ有する自閉症の児童生徒の作成する絵画や版画が、芸術分野から高い評価を受けている場合もございます。また、視覚障害がありながらピアニストとして世界的に活躍するなど、障害があっても芸術分野で秀でた才能を有する児童生徒、卒業生も多い現状がございます。
 このような芸術分野の才能の開発は、学校以外の活動で支援を受けている場合が多いという状況がございます。もちろんこちらは、特別支援学校の中の教育で力を発揮する児童生徒もおります。このようなことがあるため、障害のある人の才能を支援する民間事業者等への支援の方法の充実が望まれていると考えております。
 私からは以上でございます。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 それでは、ヒアリングの最後になりますが、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の玉野麻衣副会長から、資料6に基づいて御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【玉野副会長】  よろしくお願いいたします。全特協副会長、大田区立調布大塚小学校の玉野と申します。全特協では、各都道府県8ブロックに分かれて活動しているところですけれども、8ブロックの代表を通じて審議のまとめ(素案)についてのアンケートを行って、取りまとめを行いました。本日は、取りまとめた主な内容を資料におまとめしておりますので、御報告をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず、想定する教育環境のあるべき姿については、どこにいても、どのような学習をしていても、全ての児童生徒が安心できる居場所づくりを最優先とする学校経営、学級経営であること。そして、本人、保護者とよく話し合い、修正しながら、本人にとっての最適な学びの在り方をいつも模索し、学校外の関係諸機関へのアクセスも当然の学級経営であること。これらを含めまして、現行の特別支援教育の取組が参考になると考えているところです。
 次に、今後取り組む具体的な5つの施策についてですが、丸1の周知について、当該児童生徒の保護者の理解と在籍校及び地域の理解など、現在の特別支援教育と同様の理解推進が必要と考えています。特異な才能を発揮できることはよいことであるという雰囲気を、学校も社会も醸成していくことが大切であると考えます。また、研修については、教員になってからのプログラムではなく、大学の教員養成課程からの継続した研修であること、また、研修の内容については、学校での教員等の気づきから、適切な支援につなげるためのアセスメントのための外部機関との具体的な連携方法や学校外の機関への具体的なアクセス方法などについても必要ではないかと考えます。
 丸2の「多様な学習の場の充実等」については、まず、ICT活用のためのストレスのないオンライン環境、そして、個別の支援が必要になればなるほど、その部分を担当する人員の確保が必要と考えることから、例えば関係機関と連携する際に、中心となるコーディネーター等の人的環境が整っていること、これらを支える専門家等の支援など、教員の学級経営を支えるために総合的に環境を整えることが必要だと考えています。
 丸3の「特性等を把握する際のサポート」について。学校内外の組織的・計画的な切れ目のない支援が重要で、現在活用している個別の教育支援計画や個別の指導計画のような支援の見える化も必要ではないかと考えています。また、アセスメントも含めて、外部機関との窓口の役割を教員が担うことはかなり困難で現実的ではないと考えているため、例えば、一律に相談できる機関や具体的につないでもらうための仕組み、児童生徒が必要とするタイミングでのヒアリングができる枠組みなども必要だと考えます。現在取り組んでいる困り感を抱える児童生徒へのアプローチの仕方と同様の対応もあるのではないかと想定はしていますが、違いは関係諸機関の違い、連携の取り方に違いがあると思いますので、そこにつないでもらえる機関が必要ではないかと考えています。
 丸4の「情報集約・提供」については、まず、児童生徒の学びの選択肢を広げるための学校外の機関の充実、そして、どこにいても高校や大学、企業等と連携した取組による学びを享受できる仕組みそのものについての情報が必要と考えます。また、どの分野での特異な才能なのかの見立てや、その分野の伸長に資する専門家へのつなぎについては、ここは繰り返しになってしまいますが、通常の学校職員で推進するにはかなり困難なため、一律に相談できる質の高い機関の設置とその情報も必要となります。
 また、一つ一つの取組をつなげて効果を上げられるように、特に都道府県、市町村教育委員会による学校と関係諸機関の連携調整機能の向上が必要だと考えます。この辺りを現場任せにされてしまうのが、教員にとって一番の負担感になってしまうところです。
 丸5の「実証研究」での検証すべきことについて。学校内での取組に関することについては、校内の組織体制に基づく計画的な支援の在り方について、特別支援教育では、個別の教育支援計画や個別の指導計画を活用して、組織的、計画的に支援を進めていますので、その枠組みも参考にしながら研究を進めることができるのではないかと思っています。また、才能を伸ばす学びと集団での人間関係の学びの両立の在り方については、学習を自分で先に進めたい児童生徒にとっては、自身の可能性を開くとてもよい機会になりますが、集団生活における社会性の醸成についても学校における大切な要素であるので、どのようにバランスを取るのかが課題ではないかと考えています。
 そして、必要な人的配置、学習環境については、次の項目にもつながりますが、多様性に応じながら充実した教育を提供できる、教職員にとってのゆとりのある教育環境にもつながっているのではないかと考えます。そして、学校と学校外との連携に関することについては、学校と関係諸機関等をつなぐコーディネーター機能とサポート体制、取組全体を把握、推進する機能の明確化、実施によって子供の自立や可能性を広げることにどのようにつながっていくのか、特に進路や就労等からその効果や課題を明らかにしていく必要があるのではないかと考えています。
 そして、児童生徒を取り巻く環境の整備に関することについては、就職に当たっての地域社会の認識の醸成です。特に就職に当たっては、特異な才能の魅力よりも障害や困難さを注視する傾向にあると考えているため、地域社会の認識の醸成についても検証が必要だと考えます。また、大学や研究施設から遠く離れている地域での多様な学びの場のつくりについて、現状、例えば通級による指導などを考えますと、特に小学生は往復の送迎等による保護者負担がございますので、保護者負担の軽減も課題ではないかと考えています。
 最後に、実証研究での留意点については2点挙げさせていただきました。本人にとっても周囲のためにも、その特異な才能が発揮されているという点。そして、特別支援学級に在籍、もしくは通級による指導を受けている本人、保護者の思いに寄り添った慎重な対応が必要であるということでございます。
 全特協からは以上です。ありがとうございました。
【岩永座長】  ありがとうございました。ただいま、5名の先生方から御発表がありました。まとめてということにさせていただきましたので、ここからは今の御発表に対して質疑応答、意見交換に移りたいと思います。
 今回、有識者の会議の委員の皆様から、各校長会の先生方にお尋ねされたいこと、あるいはお伝えしたいこと、御意見などがありましたら、いつものとおり「手を挙げる」ボタンを押していただいて御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 松村先生、お願いします。
【松村委員】  校長先生方、審議のまとめに御理解、御支援くださいまして、ありがとうございます。お話を伺って、全国の先生方に、やはりこれから、訳が分からないとか、誤解されるような点が多々生じるんじゃないかという懸念もあります。私の先ほどの話にも関連しますけれども、結局特異な才能とは何なのかという定義を求められるわけですね。特異な才能のある児童生徒を今、省略して、私の言葉では「才能のある子」と言います。どういう子が才能のある子なのか、その特徴を教えてくれと。言わば特徴による定義を求められることがあると思うんです。そのときに、例えば才能のある子というのは、適応していたり不適応していたりしますけれども、完璧主義というのはよくあります。完璧主義の子、才能の一つの特徴ですけれども。ほかにもいろんな特性がありますが、これこれの特性を持った子供が才能のある子と言うことはできます。
 一般的な研修、講義としては、そうお話しすることができるわけですけれども、そうすると、そういう基準に基づいて、教室の中で完璧主義のある子を見つけなさい、それを才能のある子だとして見つけなさいと捉えるとします。そうすると、この子はこれこれの特性があるので才能のある子なんだなと。そうなると、まず才能のある子を見つけてラベルづけするということが起こります。才能のある子だとラベルづけた子に、どういう特別なことをしてあげようかみたいな話になるわけですね。それは望ましくないというのは、私も繰り返し強調していることです。むしろ、例えば、個別最適な学びで自由課題研究みたいなところで、いろんな選択肢を用意すれば、全ての子が自分なりの、自分に合う学びたい内容、学び方というのがあるわけですが、それを自分で選ぶことができます。そうすると、この子は才能のある子、この子は才能のない子って分けなくても、個別最適な学びの中で、その子に合った学びを提供することができるわけですね。
 だから、まず才能のある子を見つけてから、その子に何をしてあげようかという一手間余計な手間をかけるんじゃなくて、もう自動的にというか、その子に合った学びを持つことができます。これはインクルーシブ教育の理念にもあるわけですけれども、先ほど荒川先生もおっしゃっていた、全ての子供に才能がある、その才能を生かすことにもなります。
なお、杉本先生は、才能特性の把握、文言が変わったとおっしゃいましたが、あそこも私は一応注意していたんですけれども、才能特性の把握と書かれたのは文科省の表現です。私の表現ではありません。私は、「才能特性の識別」って言っているんですが、それはプログラムのために、それに合う、適合する子供を選び出す。私は才能児の認定って言っていますが、そのために才能特性を識別する。この過程を文科省用語では「才能特性の把握」と言われている。この把握は別に、プログラムに送る場合も送らない場合もありますけれども、いずれにしても、特性を把握する。だから、見いだす、把握はきちっと意識して区別されているので、別にごまかした表現ではありません。
 とにかくまず最初に、全ての子について、この子はどういう才能特性があるのかなというのを見つけてから、この子は才能のある子だとすると、審議のまとめ(素案)3の(1)にも書いていましたように、差別が起こる、妬みとかいじめとか仲間外れとか。障害のある子の場合よりも、一層才能のある子というのは、子供同士の集団について注意しないといけないことがあるので、単純に才能のある子の特性はこれです、そういう子を見つけてくださいというふうにいかない。このようなことは広く先生方に理解していただきたいので、情報収集・発信の拠点として1つは都道府県の教育委員会があるわけですけれども、もう一つ、国レベルで情報発信をするような場を、オンライン研修をするような場も要るのかと思ったりしているところです。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 中島先生、お願いします。
【中島委員】  ありがとうございます。皆様の発表、ありがとうございました。非常に参考にというか、興味深く伺わせていただいたり、なるほどというところもあって、ありがとうございました。全て興味深かったんですけれども、まとまり切ってないですけれども、幾つか質問と、あと、私が感じたことなどを話します。
 最終的にさっきの制度設計の話にもう一度持ち込みたいと思っているんですけれども、例えばスクールカウンセラーの話、確かに理想論として私たち、スクールカウンセラーというものがちゃんと学校にいていただけると。ただ実質、先ほどの数字にあったように、なかなかそういうことが十分満たされてない、週4時間以上ということが満たされてないような学校もかなりたくさんあると。この課題、なぜそういうことが起こっているのか。恐らく人材不足であるとかお金の問題であるとかなのかなと思うんですけれど、そこの課題というものを、一体何なのかというのをお聞かせいただければと。それは私は、場合によっては制度に関わっているんじゃないかと思っています。
 あと、そこにもありましたけれども、例えば実証研究でSSHとかSGHとか、そういう理数系のものとかいろいろありますよと。確かに理数だけじゃなくてほかのもありますけれども、ちょっと寄っているというか、私自身も確かに、こういうものがあってすごくありがたかった部分はあるんですけれど、例えば、都道府県とかに限ると、恐らく東京、大阪とかその辺りに集中しているんじゃないかという気がします。SSHとか全国に散らばっているものの、今度は逆に言うと、地方の中でそこにすごく特化、そこにばっかり来ているとか。ある意味で新しい、偏差値自体が全部悪いわけじゃないんですけれども、一定の偏差値的な部分の次なる基準になってしまうと、またちょっと違うのかな。どちらかというと、特に文科省さんとかが入り込むときというのは、格差是正ということをもっともっと考えるべきなんじゃないかと思うと、今、そういうものがうまく届いていない地域であるとか、あるいは、もしかしたら経済的な問題とかでなかなかそういう段階に行けない人たち、だけど、恐らく何かしら才能を持って持て余しているけど、周りに情報もないし環境もないみたいな、学校も必ずしもそういうところにうまく行けるとは限らない。そういう人たちをどう救うのかみたいな話のところが少し抜けてしまう気もしていて、こういう取組自体は非常にいいと思うんですけれど、ただ、やっぱりそれが今、多様性の中で、例えば全国の都道府県でどのぐらいの配置になっているのかとか、例えばコンテストがあったときに、それの応募とか、最終的に残った人たちがどういう都道府県の配置になっているのかとか、もしかしたら男女比とかもそうかもしれません。その辺の多様性のバランスがどうなっているかはちゃんと見ていかないと、結果的にうまくいっているようで、いっているのか、いっている例を見ているということになっちゃうのかということがちょっと気になるなと思いました。
 あと、雑多にばっと行きます、思いついたことだけ取りあえず言わせていただくと、個人的にはいろんな人たちが、今までは分かれていた、例えば特別支援学校もそうだと思います。分かれることによって、ある程度効率よく教育をやってきたと思うんですけど、同時に、私自身が今、目の見えない方とか耳の聞こえない方とか、大人になってからすごく仲よくなって、非常にいろんなことを学ばせてもらうというか、面白くて、子供のうちに意外に、皆さん、そういうことを考えることはあっても、結構気丈な感じで、友達がいなかったりして、身体障害に限らないですけれども、知らないことが多いと。インクルーシブな場をもっと設計していくことも一つ大事なのかなということを、先ほど聞きながら、ふと思いました。
 やっぱりどうしても日本ってモノカルチャーなところが多くて、それが決して悪いことでもないんですけど、でも、その結果としていじめとか、どうしても目立ってしまって、悪気なく、あの人が場を乱しているみたいなことが起こりやすいので、なるべく多様な状態をあえてつくるというような、そういう経験をすることが非常に大事なんじゃないかなと考えていまして、全部を混ぜるのがいいとは全く思わないけれども、最後にもありましたけど、みんながちゃんと大事にされていてという状況の中で、分けるということだけじゃないような解決策とか場の設計もあり得るんじゃないか。この辺りがもしかしたら、それも一つの実証としてやれるんじゃないかと思いました。
 すいません、長くなってきたのでまとめます。そういう意味で、例えば実証で、ほかに研修の在り方、研修も、いきなり正解が1つ、ばーんと、こういう研修で行きましょうというのが1個設計できると私は思っていなくて、恐らく何通りかのやり方、動画とかe-ラーニングが絶対いいと思うんですけれども、それでも伝え方とかケーススタディーの出し方とか、どこまでのことを扱うのかとか、多分つくり手によって多少思想的なものが変わってくると思います。そのときに、完璧なものは得られないけれど、やっぱり事象として何個か試してみて、それに対するフィードバックをちゃんと取って、どういうものが現場で本当に困っていることか、保護者とか先生にとって意味があるのかをちゃんと見極めて、それに対して何らかの、よいと思われた研修に対して、今度それを受ける人たちがどういうタイミングでどういうふうに受ければいいのかとか、そういうことまでちゃんと踏み込んでいけるようにしなきゃいけない。
 あと今、松村さんからもありましたけれども、見いだし方ですね。皆さんがおっしゃっているように、見いだし方が難しいということが皆さんから来ていて、私も松村先生に賛同なんですけど、同時に、それが逃げみたいになっちゃって、やっぱりすごく困っていて、明らかに浮いちゃいがちなんだけど、それが非常にわがままであるみたいなことだったり、この子はこういうことすらできないとか、そういうことで困っちゃっている子ってたくさんいて、どちらかというと次の課題のほうになっちゃうのかもしれないんですけれど、でも、それが少しでも肯定的に捉えられるような機会があれば、それは自己肯定感につながったり、周りとしても理解につながったりするんじゃないかと。
 そういう意味では、実証として見いだし方が一律であってはいけないし、ラベルづけになってはいけないんだけど、多種多様な見いだし方、それがラベルにならないけど、その人なりの好きとか興味とか特性というものを見極めるためのありとあらゆる方法、それもきっと多種多様にないとよくないんだと思いますので、まさに実証なんだったらそういうところを多種多様に実証してみることが必要なんじゃないかと、そんなことを思っていました。
 最終的に、やっぱりいずれにしても、実証というのはお金を使われるわけだと思います。それは税金を使うんだと。そのときに逆に、いや、でも、実証、1回きりで分からないということで、それをまたやっていくと、1年、2年ってどんどん、どんどん遅くなっていく中で、私はどちらかといえば、せっかくお金を使って実証するならば、そういうところまでかなり踏み込んで設計をして、これでうまく分かったらこういう形で研修を動かしてみようとか、スクールカウンセラーのところでこういう制度改正があり得るんじゃないかとか、やっぱり制度改正というものをある一定レベル頭に入れた実証じゃないとむしろ意味がない。そこでうまくいったという、1か所でうまくいったみたいな事例をつくっても、それはお金の無駄遣いなんじゃないかと私は何となく思っていて、それがちゃんと横展開できるもの。制度の一つの大きいところは、やっぱり横展開の可能性があると。だから、必ずしも制度設計ということばっかりになるのはよくないんですけれど、それを全く外してしまう、可能性みたいなことを外してしまうのは危険だな、形骸化した実証になってしまうんじゃないかなということを聞きながら思いました。
 長くなったんですけれども、そういう意味で、校長先生方にも、さっきの何で課題が生じているのか、スクールカウンセラーの課題のところとか、あと、制度改正のところについては、実際にまさに現場の校長先生方とかから、それに対してどう思われるか、逆にこういうことがあると困るなとか、こういうことがあるなら非常にありがたいとか、その辺をむしろ現場の皆様から伺えたらいいなと思ってお聞きしておりました。すいません、長くなりました。
【岩永座長】  ありがとうございました。どういう立ち位置でこの議論を進めていくかをもう一度確認させていただきますと、まず、素案を出したと。このまとめの素案を出したものについて、特にこの部分とこの部分についてどのようにお考えになるか、どのような点で御指摘があるかということで、5人の方々にお願いをして、それについてのコメントをいただいたということです。
 私が伺ったところで、前々からちゃんと予習してきたわけではないので大変恐縮なんですけれども、今日お話の中で出てきたこともありますので、非常に雑駁にまとめさせていただくと、全体としてこういう問題、関心、こういうテーマについては非常に重要な問題だということはお認めいただいた上で、いろんな批判点というか課題も出していただいたと思うんです。多くの言葉で語られたんですけれども、大体4つか5つぐらいだと思うんですが、1つは、もう既に行っていることがあるんだと。そういったことをどういうふうに考えていくのか。今やられていることの上に、何をさらにやれと言うのだというような御意見もありました。
 それから、才能を見いだすという方法を1つの基準で見るのではないと言っているけれども、どうするんだ。どうやったら才能は見いだせると現実的に考えているのかというような、松村さんの話にも関わってきますけれども、大変大きな問題だと思います。
 それから、実際にそういうことをやることになったら、周知をするにしても研修をするにしても、特異な才能のある子供たちを指導するにしても、人が必要だろう、資金が必要だろう。そういったものの加配のないところで、たとえ実証研究だとしても、これからそれを進めていく状況の下で、現状の人手で現状の先生方でやれというのは難しいのではないか、この負担はどうするんだという御意見もあったと思います。
 全体として、やはりこういったような提言なり方向性が現実的なのかということも根底にあると思うんです。今やっていることで手いっぱいのところなのに、さらにこういうことをやることについて実現性があるのか、無理はないのかという御意見もあったと思います。全体として大変重要なテーマであることをお認めいただいた上で、以上のような御指摘があったのを、私としてもこの有識者会議としても大変重く受け止めているという感じがいたします。
 その上で、今お二人からありましたけれども、また、お二人ありますね。市川先生、お願いします。
【市川委員】  私から2点だけ、学校の先生方に伺いたいことがあります。今回の審議のまとめ(素案)というのが出て、これをどういうふうに捉えたかということを、今日を含めて伺ったわけですけれども、まず第1の点なんですが、この有識者会議のタイトルから来る誤解というんですかね、これ、誤解と言っちゃいけないんですけど、やっぱりタイトルが問題だと私は思っているんですが、これに引きずられてしまって、中身にあることが十分伝わらなかったかもしれないという懸念をちょっと持っています。
 この有識者会議のタイトルですが、「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」なんですね。実はこのタイトルを見て私も、この有識者会議に入ることに最初、非常に抵抗がありました。何が抵抗かというと、特定分野に特異な才能のある子供たちだけのことを考えるのかと。これを見ると、その子たち、特別な子供たちを取り出して、その子たちに一体何をするのかという話になりがちであると。実際にはそうではなくて、これは広く個に応じた教育の一環として、中には特異な才能があるということでなくても、自分の興味、関心がいろいろあったり、特異な才能と言うほどではないけれども、何か特徴を持っている、そういう子供たちが自分に合った教育の場を与えられるという、そういう全体的な見通しの中の一環として、本会議では特定分野に特異な才能のある子のためにはどういうことができるかということを考えるのであって、特別にこういう子供たちを取り出して、予算をつけて、特別な環境をつくって特別扱いすると取られてしまうのではないか。このことが1つの懸念でした。委員会の中でも、冒頭にこのお話が出て、あくまでも個に応じた教育環境をつくっていこうということの一貫としてなんだということです。このことも書き込んであるはずなんですが、そういうふうに受け取ってもらえただろうかということが1つです。
 2番目は、「学校における」と書いてあるので、学校で何をするかということだけに限定されて捉えられるのではないか。すると、学校がただでさえいろいろ忙しいと。その中で、また何か新しいこと、ここで言うと指導、支援を学校でやってくれと言っているのか、それはとてもできないと思われてしまうのではないか。これも「学校における」と書いてありますが、全てのことを学校に求めるというのではないと。むしろ、本文の中に書き込まれているように、もっと学校外のことも含めて、学校はそれを紹介してくれるというのも指導、支援です。全てのこういう活動を学校でやってくださいという話ではないというふうにしようと。これも会議の初めの頃に出た話です。でも、タイトルがこうなっていますから、どうしても特別な子供たちに対して学校が新たに、これまでやらなかったことまでやってくださいと取られてしまう可能性がある。中身は配慮したつもりなんですが、どうしてもこのタイトルに引きずられて、そういうふうに思われていないだろうかというのが懸念です。これは、学校の先生方に伺いたいです。そんなことありませんか、ちゃんと受け取っているということなのかどうかです。
 もう一つですけれど、一体何を実際にするのかというときに、もちろん予算のかかる試み、学校の内外含めて新しいことをやってくださいということもあるわけですが、根本にあるのは、今の子供たち、かなり才能のある子とか学力の高い子とか、こういう子供たちが持っている困り感です。もちろん、学力が低くて授業についていけなくて困るという子が一方ではいる。しかし、アンケートなどの結果では、学校の授業は本当に退屈だ、学校の授業は自分にとって出る意味がないという意味での困り感を持っているという声も出てきたということです。そういう子供たちに応えないでいいのかということが一方ではあったわけです。それに対してできることは、新しい試みや予算がかかる試みももちろんありますけれども、学校の授業とか経営の中で、その子たちもやっぱり学校の授業を受けてよかったと思えるようなこともいろいろあるのではないか。この本文には、私は実はちょっと書き方が薄いと思っているんですけれども、それもぜひ学校側も、出していただきたいなと思っています。
 アンケートの中にも、そういう子供たちに対する何らかのやりがいのある課題を与えるとか、何らかの役割を与えることによって、その子たちも学校というのが非常に挑戦しがいのある楽しい場であると考えられるようになったという事例も寄せられていました。そうしたことも含めて、そういう子供たちの困り感に対して学校ではどんなことができるのだろうかということも一緒に考えていただけるとありがたいと思っております。
 以上、2点でした。
【岩永座長】  ありがとうございました。すぐにお答えをいただきたいというようなこともありますけれども、先ほど来、秋田先生からお手が挙がっておりますので、秋田先生のお話を伺ってから、先ほど御発表いただいた先生方に御回答なり御意見なりをいただきたいと思います。
 秋田先生、お願いします。
【秋田座長代理】  ありがとうございます。秋田です。今の市川先生ともつながるところかと思いますが、私のほうでは3点伺いたいと考えています。
 1点目は、例えば基幹校とか、多分、特別支援学級を置く学校とそうでない学校のように、こういう子供たちは、ある程度集めるべきだというようなお考えなのかという点です。私どもの報告書は、もともとは全ての子供たちの可能性を公立校で一般的に伸ばしていくことを大事にしています。学校には公私立、国公立が入ると思います。これらすべての学校への方策の提言として書いていたつもりでもありますけれども、しかし、それはある意味で、効率性とか、現在、学校がそうでなくても大変ということがとてもよく分かるのです。多分、新たなことが要求されているというような形で受け止められたんだと思うんですけれど、この辺り、例えば特別な、2Eのような子供たちは、いわゆる足りてない、例えば人間関係とかに困難を抱えている部分と、逆にすごくいろんな形で能力を発揮して生かす場があれば生かしていけるような可能性を持った子供たちの場合も当然あり得るわけです。そうした生徒を学校が全国で引き受けるべきなのか、特定の学校が持つべきとお考えになっているのかというようなところとも関連します。例えばプラットフォームとかハブとかは、やっぱり学校だけで単独ではできませんから、外部の関係者、マルチステークホルダーで、その子たちに対するサポートを考えていくということが具体的には必要になるわけです。それもやっぱりコーディネーターのような、ある種、外の人にやってもらわないと厳しいのかをお尋ねしたいです。
 要するに、困難な場合は学校外で指導できるんですが、教育課程内で、教育上の内容でより一層伸ばしていくことを考えたときに、それをどういうふうに考えた体制というものがあれば、そういう子供の才能を伸ばせるのか、それは公教育では難しいから、その部分は外部でと考えるべきなのかをお尋ねしたいです。私は市川先生が言われた中にあると思うんですけど、もう一回、どの子にもより挑戦的とか、より満足のできるような教育方法も考えていくような方向を学校も考えているのかということです。今まで通りだけでいいのだというよりも、いろんな子供たちが授業が退屈になっているとか、教育方法の見直しとか、カリキュラムのマネジメントとかカリキュラムの中で個別最適を組み直す学校の工夫とかが問われていると思います。例えば山形の天童小学校のような形とか、多少組み替えることでできる部分もあるのではないかと思いますと、この辺りを教育課程上、どういうふうに考えたらいいのかということです。また2点目にそれを推進する体制をどのように考えたらいいのだろうかという点をお尋ねしたいです。多分、学校種段階においても義務の場合と高校では当然違ってくると思いますし、幼小中、キャリア・パスポートのようなものでつないでいくという御意見もなるほどと思ったんですけど、その辺りの学校内の体制や教育課程の在り方についてのお考えを伺ってみたいところです。
 3点目として、やはり学校の経営とか、こういう子供たちを支える教育委員会の在り方はこれまで十分に議論がなされてこなかったわけです。教員研修といっても、誰が担当するのかといえば、特に小学校などの場合、中学校も教科とか担任とかが大勢いるわけです。そのときに、特別支援のように特定の人だけがこういう研修を受ければいいと考えるのか、まず管理職等がこういう研修を受けて共有していくとか、どういう在り方が、周知とかこれを効果的に実現していくためによいと考えられるのかというようなところを、研修を打つといっても、誰にどのような研修を打っていけばいいのか。たまたまそのクラスの担任になった人が出るというような形でいいのか、もう少し学校経営的にどうやったらいいのかというようなところをぜひ教えていただきたいと思います。学校全体の制度の在り方、校内体制と教育課程、研修をどのように打つのがいいのかということを、もう一度伺いたいと思います。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。反対に我々が問いかけられそうな感じもしますけれども、先ほどの市川先生の御意見、その前の中島先生、松村先生の意見も含めまして、一旦ここで御発表の先生方から御意見を伺いたいなと。あるいは、それに対する回答にもなるかと思いますけれども、いかがでしょうか。順不同でよろしいでしょうか。それとも、発表していただいた順に、こちらから指名してよろしいですか。時間の節約のために、そうさせていただければ幸いです。
 それでは、全国連合小学校長会の荒川先生から、いろいろな質問とか意見が私どもから出たので、まとめにくいと思いますけれども、今思われていることなどをお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
【荒川対策部長】  ありがとうございました。ここから先は全連小としての答えではございませんので、私個人の考えで述べさせていただきます。全連小でこの件についての議論はまだしていませんので、それをまず大前提でお話をさせていただきますが、まず中島先生からあったスクールカウンセラー等の配置について、かなり自治体で差があるというお話がありましたが、我々全連小でも調査をしたところ、今全国で、実数は関係なくして、スクールカウンセラーが配置されているのが約50%なんです。半分の学校なんです。これはなぜかと言われても、理由がまちまちであって、我々は自治体間格差ということで広く捉えています。これはスクールカウンセラーの配置だけではなくて、例えば今回のGIGAスクールでのタブレットの配置とか配付についても、もう既に配付されて家まで持って帰っている学校もあれば、いまだに全員に配付し切れていない学校もあるのが現状です。やっぱり自治体に格差がある。その原因はどこにあるのかというのはいろいろあって、基本的に小学校は区市町村立の学校なので、区市町村の事情によって、その辺はまちまちではないかなと考えております。
 それと、市川先生からありました特定分野、特異な才能があるというこのタイトルはどうかということなんですが、正直に申し上げると、タイトルに引っ張られます。特異な才能のある児童生徒にどういう支援をしていくのかということなんだろうなと思いまして、そう思って審議のまとめを読むと、やっぱりそういうふうに捉えてしまいます。松村先生も市川先生もおっしゃったように、これは前提として、全員の個に応じた教育を大事にするんだとお話しいただいていますが、そういう説明を聞かないと、多分、審議のまとめを読んでも、前提に特異な才能のある子を育てるんだなという視点で読んでしまいますので、そこは正直言うとそう思います。
 先ほど申し上げたとおり、特に令和3年の答申で、令和の日本型学校教育で個別最適な学びということで、一人一人を大切にした学びというものが出て、少なくとも小学校の教員は、また校長は意識はしています。ただこれも、全国に1万3,000校ぐらい小学校があるので、必ず全部の学校でそうやっているかというと、現状としてはここにも格差はあると思いますが、基本的に、先ほどから申し上げているとおり、教育活動で子供たち一人一人の才能を見いだすために必要なアプローチをやっていくというのは、これはもう公教育の大前提であると私たちは考えております。
 なので、秋田先生が言われた基幹校を置くということは、特に公立の小学校では説明がつかない。こういう子たちだけ集めて何をするんだっていったときに、どういう学校になるのってなったときに、例えばエリートを育てる学校になっちゃうのみたいな。そうすると、そうではない方々から反発というか、そこを説明するのはかなり難しいのではないかと思います。
 2Eの話は先ほど私もしましたけど、障害の特性があって、例えば情緒障害だったら情緒障害を克服しないとなかなか学習に向き合っていかないので、そこを両方からアプローチするというのは相当専門性が要求されて、うちにはたまたまそういう教員がいたので今できている状況ですが、全国的に見れば、特に特別支援に精通している教員は少ないので、こういう子たちを指導する教員はなかなか厳しいかなと思います。
 さらに研修の打ち方ということで、先ほどから申し上げているとおり、一人一人の子供たちを大切にする教育をどの学校でも推進していきましょうねみたいな研修であれば、多分どこの教育委員会でもできると思うんですけど、先ほどから申し上げている、特異な才能を引き伸ばすという研修とか2Eの専門性のある研修とかってなってくると、多分、教育委員会では厳しいところもあるのかなと考えています。
 雑駁ですが、お答えになってないところもあると思いますが、以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 それでは、全日本中学校長会の齊藤先生、何か御意見をいただきたいと思います。
【齊藤総務部長】  齊藤でございます。私も、これから述べさせていただくことについては、全日中としての考えではないということでお伝えしたいと思いますが、それぞれの会議の委員の先生方のお話を伺っていて、私も、ああ、随分自分が言葉を理解してないところがあったなというところで意見を述べさせていただいたのですが、大変恥ずかしい思いをしている部分がございます。やはり特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援ですので、突出した才能のある子供たちをどのように伸ばしていくかということ、それから、それを学校でやってくれということなのだろうなという理解をしました。
 ただ、私どもの全日中の事例のアにあるように、様々な子供たちのもっている特性を今ある制度に落とし込んでいって、どうやって生かしていくかということの取組が、この会議においても話合いをされているということが分かりましたので、それであれば、そういうことなのかというところがあります。
 やはり突出した特異な才能のある子が、全員ではないにしても、ある程度の特性を有することもあると言われています。その場合に、恐らく学校としては、特性をどうにか改善、解消していくほうを優先してしまうのではないかなと私自身は考えています。ですから、そのことについてはそれでよいのかということは、やはり会議の中でお示しをしていただければ有難いと存じます。
 また、研修につきましては、各学校の代表が受講することになるかと思いますが、それについては、校内研修等で受講した教員から学校全体に還元されるものですので、しっかりとしたものを実施していただいて、なおかつ、学校としては、受講したことをきちんと還元できるような教員を日常育成していかなければいけないとは当然だと思いました。
 雑駁ですが、以上になります。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 続きまして、全国高等学校長協会の杉本先生、お願いします。
【杉本前会長】  この有識者会議の議論については、会長時代のところでレクを受けているので、この題に引きずられるようなことは基本的にはありませんでした。ただ、全ての児童生徒の才能を伸ばすというところで言うならば、あえてこの有識者会議を持った理由は何だろうかというところがちょっと気になる点です。つまり、特異な才能のというところについては、それを有する児童生徒に困り感があるということですよね。小学校からの報告でもそうでした。そういった困り感があるものをどうやって解消すべきかということなので、それを全ての児童生徒がというふうにまた戻してしまうと、この有識者会議を最初に設定した理由は何なんだろうかというところが、今日の議論を聞いていても分からないなというのはあります。
 それから、その辺の生徒の困り感というところについては、例えば小学校のところで、塾で先取り学習をしている生徒が、学校の授業つまらないというレベルではなくて、児童生徒の知識、技能が小学校の先生をはるかに超えてしまうようなものに対して、どんな支援ができるのかという議論ではないかと僕は思っていました。やっぱりその辺のところについても解消できるすべが何かあったほうがいいのではないかと考えます。そういった児童生徒に対しては、いろいろな選択肢を用意したからといって、解消できる問題ではなく、学校のマンパワーでもどうしようもないことだと思います。そういったものをどうするべきかという方策が必要であるし、見いだすためには、先ほどの荒川先生のご発言でも対応できる教員がいない、あるいは、中学校でも理解が十分でないという話があったわけですから、それをコーディネートする人材をどのように育成するかというところが大事ではないかと考えます。
 全ての児童生徒の才能を伸ばすことについては全く賛成なので、それについては否定するわけではありません。けれども、今回の困り感をどこに捉えて議論を進めていくのかというところが、こういう議論を重ねることによって、まとまっていくことはいいのですけど、どうしても丸まっていくのですよね。もっととがった議論もどこかで継続していくべきではないかと思いますので、今後の議論を期待しています。
 私からは以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。大変痛いところではあります。
 それでは、全国特別支援学校長会の三浦先生、お願いします。
【三浦副会長】  三浦でございます。私も事前のレクで、こういう特異な才能のある児童生徒さんが教室内で孤立したりですとか友人関係がうまくいかない、トラブルも発生しやすいというようなところで困難への対応、そのようなことを議論しているというお話を伺っていましたので、この表題につられることは特にございませんでした。その中で、先ほどもお話ししましたけれども、特別支援学校では、もともと個に応じた指導を行っている学校ですので、ここにありますような友人とのトラブルですとか、学級内で孤立する、教員がきめ細かく寄り添って指導しておりますので、そういうことは特別支援学校では考えにくいんですけれども、やはり個別の教育支援計画、個別の指導計画が有効なのではないのかなと、こちらの資料を見ながら感じていたところです。
 以上でございます。
【岩永座長】  ありがとうございました。
 続きまして、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の玉野先生、お願いします。
【玉野副会長】  玉野でございます。私もここから先は個人的な意見として述べさせていただきます。背景とか要因は何にせよ、困難を抱えている子供たちには特別な支援が必要と考えているのが大前提なので、それが公教育の在り方ではないかなというのが、そこは押さえているところで、特別支援教育はそういう考え方の下にあるわけなので、この有識者会議での考え方って、頂いた素案の15ページにあるような3つ目の白丸、「こうした学びの在り方は、特異な才能のある児童生徒の学びを考えていく上でも当てはまるものである」というような考え方になっていますので、私はこの有識者会議の素案の基本的な考え方としてはこういうスタンスであるのかなと思っていたところです。
 逆に言うと、私たちなんかは多分、特別支援教育の中の一環だよねって丸めがちなんだけれども、そうではなくて、あえて丸めるのではなくて、特異な才能を持っているというところで困り感を抱えている子がいるという教員の視野を少し広げるという考え方でも、この案は教員の視野を広げるためにもとても大事な考え方ですし、個別最適な学び、協働的な学びの在り方、こういうところまで広げる必要があるということと、あとは、大学とか研究機関も含めて、外部の機関とうまく連携するという考え方も、今までなかったわけではないんだけれども、もっと大胆に連携することで子供たちの学びが豊かになるという考え方をここではお示しいただいているのかなと思っていることと、多様な他者との学習、協働的な学び、多様性の広がりというのも1つ教員としては、またさらに広く捉える必要があるんですよということの示唆をいただいている審議のまとめ、この有識者会議の内容ではないかなと思っています。
 現在、特別支援教育については、全ての教員が特別支援教育についてのある程度の専門性を高めましょうというような方向に向かっているところですので、この特異な才能のある子供たちへの支援の在り方ですとか見方というのは、ある程度全ての教員が、どこで出会っても、ああ、そうかなって気づきを持てるという、そのぐらいの力は教員としては、基本的な資質、能力としては必要なのではないかなと思っていて、さらにその先の専門機関につなげるですとか適切な方法を自分たちの中に取り込むということは教員だけではなかなか難しいところなので、その辺りはもっと専門性の高いところと連携しながら進めましょうという考え方がとても大切だって思っていて、そういうことがここには書かれているのかなと思っているところです。
 先ほど市川先生がおっしゃった、学校の中での学習の在り方が多分、この有識者会議の少し前の資料にもあったと思うんですけれども、具体的にはこういう学習のやり方が必要というところが、ここの最後のまとめの中には載っていないので、基本的な考え方として、どういう学習の進め方だとか授業の在り方だとかが、例えばこういうことも必要でとかというのがこの中に盛り込まれていても分かりやすいのかなとは、今、市川先生のお話を聞いて思ったところです。
 まとまってなくて、すみません。私からは以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。かなりむちゃ振りで先生方に御意見、コメントを求めてしまいましたけれども、大変示唆に富んだ御意見をいただいたと思います。既に時間を過ぎてしまったんですけれども、私は個人的には、今の先生方のお話を伺って、確かに才能のある児童生徒にという特化した議論と、それから、審議のまとめの内容、見方によれば一般論に向いている、個に応じたところとのギャップについては真剣に考えないといけないなと思っているところです。ただ、我々、どちらも大事だと思っておりまして、今日までで12回の議論させていただいているんですけれども、その議論を通じて、今の到達点はこういうところだということで、先ほど制度改革の話もありましたが、まだ書きぶりに検討の余地がありますので、少しその辺は宿題として引き取らせていただきたいと思うんですけれども、今の御意見もやはり、その際には様々な御意見も反映させていくべきだなと座長としては思いました。
 ということで、議論の途中といえば途中なんですけれども、時間になりましたので、よろしければ、この辺りで議論を終了したいと思います。いただいた御意見は、精査の上で、審議のまとめの最終の取りまとめに生かすとか、それから、文部科学省に報告をするわけですけれども、今後取組を進めるに当たって、こういった意見があったということを参考にしてもらいたいと考えております。荒川先生、齊藤先生、杉本先生、三浦先生、玉野先生、今日はお忙しい中、お時間を頂戴して御説明いただきましたこと、誠にありがとうございました。感謝申し上げます。
 それでは、本日お配りした審議のまとめ(素案)については、この後、国民の皆様からの御意見も受け付けたいと思うんですけれども、もちろん若干の修正を加えてですが、委員の皆様、その件について御異論はございますでしょうか。要するに、パブコメということです。それでは、それを求めることについて異議なしと認めさせていただきます。そのようにさせていただきたいと思います。事務局において意見募集の準備を進めていただきたいと思います。ありがとうございました。
 最後に、次回の会議の予定について事務局からお願いしたいと思います。
【川口学校教育官】  今、座長から御指示ありました審議のまとめ(素案)についての国民の皆様からの意見募集については、7月中に募集開始できるよう事務局で準備をしてまいります。文部科学省ホームページ内の本有識者会議のウェブサイトにウェブフォームを設け、受付を行う予定としております。
 また、次回のこの会議、第13回につきましては、9月8日木曜日13時から15時で行いたいと考えております。
 以上です。
【岩永座長】  ありがとうございました。この間、この件に限らず、今までパブコメとかそういう現場に遭遇したことも何回かありますけれども、この案件については随分コメントが出てきそうだなという期待というか恐れというか、そういったものも感じております。大変ありがたい機会だと思います。
 ということで、本日予定した議事は全て終了しましたので、これにて閉会したいと思います。本日御参加いただいた方々に感謝いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――