特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第10回)議事録

1.日時

令和4年5月13日(金曜日) 9時30分~11時30分

2.場所

WEB会議方式

3.議題

  1. 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の在り方等について

4.議事録


【岩永座長】 それでは、定刻となりましたので、おはようございます。ただいまから第10回、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会を開催したいと思います。本日は、大変御多忙の中、御参加いただき誠にありがとうございます。
これは毎回のことですけれども、本会議につきましては、報道関係者等より、録音と録画の申出がありまして、これを許可しておりますので、その旨、御承知おきください。
まず、本日の議事に入る前に、本日の会議資料についての説明を事務局からお願いします。川口さん、お願いします。
【川口学校教育官】 本日の会議資料について御説明します。本日は、資料1、2及び参考資料がございます。参考資料は、前回までの会議において、委員の皆様から頂戴した主な意見等を論点ごとに整理したものです。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。本日は、先生方もお忙しい方が多く、この後、まだ午後のスケジュールもあるようですので、できるだけ効率的に11時半までには終わるように進めたいと思います。
それでは、早速議事に入ります。本会議については、本年度中をめどに取りまとめを行うということを予定しております。今後の取りまとめに向けた章立てについて、たたき台、骨子という形で、事務局から既にお送りしてあります、資料1を示していただいております。また、前回の会議で実証的な研究の在り方について、事務局とも相談の上で、私のほうで案をつくっていくということを申し上げて、引き取らせていただいておりました。このたび、実証研究も含めて、今後、この会議として取り組むべき施策のイメージについて、座長試案というものを作成しましたので、そちらのほうを資料2として提示させていただいております。ということで、本日はこの2つの資料について議論を行っていただきたいと思っております。
それでは、まず、2つの資料について、事務局から説明をお願いいたします。石田室長、お願いします。
【石田教育課程企画室長】 資料1、2について御説明を申し上げます。
まず、資料1でございます。資料1は審議のまとめ骨子(たたき台)ということでございます。今日の時点では、これからの議論に当たりまして、審議のまとめの章立てと、それぞれの箇所でどういう方向性で記述を行うかということを骨子という形でお示しをしてございます。これまで、あるいは、これからの議論を踏まえながら、今後、肉づけをさせていただきたいと考えてございます。
資料1のつくりでございますけれども、昨年12月に、論点整理をおまとめいただきました。そこからの変更点を赤字でお示しし、比較対照できるようにしてございます。
まず、審議のまとめの前半部分でございますが、1の特異な才能のある児童生徒をめぐる現状の分析、あるいは、2の指導・支援に関する課題、3の検討の方向性のところでございますが、そこについては、論点整理の段階で、多くの御議論を頂戴しまして、整理してお示しいただいているものと承知しております。このために、審議のまとめの前半部分につきましては論点整理と同じ章立てとし、論点整理をベースにしながら、その後の御議論を踏まえて、更新すべき内容を修正する形としてはどうかと考えてございます。
なお、1(4)の我が国における状況というところにつきましては、これまでの会議におきまして、委員の先生方、あるいは外部有識者の先生方から、様々な先進的な事例についてヒアリングを行ってまいりました。これらの事例、あるいは、その他、文科省が実施する関連の施策で活用した好事例といったものを事例集としてまとめて、審議のまとめの添付資料にもっていくと、そうしたことで、教育委員会、学校現場などで参照して活用いただけるような形とすることができればと考えてございます。
3の検討の方向性についてでございます。下のほうにいっていただけますでしょうか。論点整理におきまして、(1)のところでございますけれども、特異な才能のある児童生徒を含めた多様な一人一人の児童生徒に応じた教育の在り方をいかに実現していくのかという議論の一環、すなわちタイトルにございます、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実の一環として、特に特異な才能のある児童生徒の支援策を検討することと。その際、学校現場が分断されたり、特異な才能のある児童生徒が差別対象となったりしないよう留意すること、また、何らかの特定の基準によって才能を定義することはしないことと、こういった辺りにつきまして、様々な御議論を重ねておまとめいただいた重要なことでございます。こういったことにつきましては、引き続き審議のまとめでもお示ししていくという形ではどうかと考えてございます。
また、検討の際の留意点、(2)でございますが、ここも1、2、3、4ということ、こちらも重要な点でございまして、改めてお示ししていきたいと考えているところでございます。
その上で、2ページ目でございます。論点整理では、4として、今後議論すべき論点を立てていただきまして、特異な才能のある児童生徒が、学習上、学習活動に困難が生じている場合と、そして学校生活に困難を感じている場合に分けて、それをさらに学校内、学校外に分けまして、4象限での論点に沿って、年明けからこれまでの会議で具体的な議論を行ってきていただいたところでございます。
そして、これらの議論の成果をまとめる形で、まとめでは、新たに4、取り組むべき施策という形で項目立てをして、お示しする形としてはどうかと考えてございます。4の(1)としては、施策に取り組む際の基本的な考え方を位置づけてはどうかと考えてございます。米印にありますように、2点こういったところを記述してはどうかと考えてございます。1点目は特定分野に特異な才能のある児童生徒が、学習上・生活上の困難を抱えていることが多いということに着目し、その混乱の解消に取り組む必要があるということをお示しすることはできないかと考えてございます。また、2つ目も、これまでの議論でも委員の先生方から御指摘いただいている部分でございますけれども、これまで我が国の学校で特定分野に特異な才能のある児童生徒を念頭に置いた指導・支援の取組がほとんど行われておらず、有効な指導支援策についての実証的な研究を行う必要がある旨、これを記述することとしてはどうかと考えてございます。
その上で、(2)で具体的な提言ということで、主として学校内、学校外、すなわち学校に関する施策と、学校外の機関等と連携した施策とに分けまして、提言をお示しする形としてはどうかと考えてございます。ここの部分につきましては、資料2ということで、座長からお示しいただいた試案を基に、本日皆様に議論を行っていただき、それを基に記述を膨らませたいと考えてございます。
続きまして、資料2でございます。こちらは、今後取り組むべき施策のイメージということで、これまでのこの会議での御議論を踏まえながら、本日、岩永座長から座長試案という形でお示しいただいたものでございます。
まず、上半分の趣旨の部分につきましては、先ほどの資料1の骨子でお話しした内容と重複いたしますので、割愛を申し上げます。その上で、下半分の部分でございます。
まず、真ん中の部分を御覧いただければと思いますが、家庭・地域社会、学校、教室及び教室以外、教育委員会、学校外機関という特異な才能のある児童生徒に関わる様々な主体をお示しし、その上で、それぞれ取り組むべき施策を左右の5つの柱で整理してお示しいただいているものでございます。
まず、右側の実証研究でございます。これは図の全てに関わるものとしてお示しをいただいてございます。特に、実証研究の柱書きにありますように、特異な才能に由来する困難を抱える児童生徒の存在も指摘されているところ、全ての子供たちの可能性を引き出す教育環境を実現する一環として、学校外とも連携し、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対して、どのような指導・支援が有効なのかを実施をするため、研究を行う必要があるというこれまでの御議論を踏まえて、趣旨をそこに書いてございます。
そしてまた、これまでの御意見を踏まえながら、研究内容の例として考えられるものを幾つかお示しをしてございます。まず、学校の中でできることとして、児童生徒の特性に応じた学習方法や学習進度の自由度を高める方法、児童生徒の多様性に配慮した学級経営についての研究、また、学校外プログラム、主として、真ん中でいうと、図の緑色部分になるかと思いますけれども、そことの接続による指導・支援の方法、学習面、生活面にわたる学校と学校外機関の連携の在り方についての研究をそれぞれ内容としてお示しをしてございます。
また、さらにはそういう研究を行っていくに当たりまして、教職員、保護者、地域社会の理解を得ていくことも重要でありますし、また、必要な支援、体制整備を検討することも重要でございます。特に、体制整備のところにつきましては、これまでも都道府県、市町村の教育委員会がそれぞれどういう役割を果たすのかということを考えていくことも重要といった御意見をいただいてございますので、教育委員会の役割も含むとしてございます。
また、最後に才能と障害を併せ有する児童生徒への対応も研究内容の1つとしてお示しをしてございます。
続きまして、図の左側部分でございます。オレンジ色で書かれました、周知・研修の促進というところ、特異な才能のある児童生徒について、社会や学校の理解がまだまだ不足していることを踏まえ、地域社会、家庭、そして学校、そして、ここには教育委員会も含むと考えてございますけれども、その理解を醸成するための周知及び研修についてお示しをしてございます。
次に、環境の充実ということでございます。特異な才能のある児童生徒は、学校の通常の教室だけではなく、教室以外の場所で過ごすことが困難の解消につながる可能性があると。例えば、先日の会議でも広島県からSSRの取組について御発表いただきました。そういった点も含めて、学校内の安心して過ごせる場としての環境を充実することについてお示しをしてございます。
続きまして、3点目、特性等の把握(見いだし)の支援というところでございます。この会議では、特異な才能のある児童生徒について、単一の定義を行わないというのは、先ほど資料1でも申し上げたとおりでございますが、とりわけ学習面、生活面で困難を抱える子供たちについて、学校等での支援の足がかりを得ると、こういう観点から、それぞれの子供たちに発言する特異な才能のある行動について、学校や学校外機関がどのように把握していくのか、また、子供たちの認知面、学習面、あるいは情緒面といった特性や困難をどのように把握するかという観点で、その支援についてお示しをしてございます。この辺りにつきましても、本日さらに御議論いただければと考えてございます。
一番左、5本目の柱となります。学校外機関の情報収集・提供ということでございます。特定分野に特異な才能のある児童生徒の指導・支援には、学校だけの対応では必ずしも十分ではなく、大学、民間・NPO、教育支援センターなど、学校外の機関との関わりが重要であることは、これまでの議論で共通理解が図られているのではないかと考えてございます。ここでの関わりというのは、児童生徒の得意な才能や興味関心に応じた学習の場や機会の提供だけではなくて、例えば、今村委員からも御提案いただいた取組のような、生活上の困難に向き合ったサポートなども含まれるものと考えてございます。そういう関わりを提供する様々な学校外の機関の事業、人材、イベントプログラムなどについては、また、地域によって、そのリソースが偏在していること、あるいは学びの場はあっても必要な情報が十分に届いていないという御指摘を論点整理でも頂戴しているところでございます。このため、こうした情報を集約し、提供することが必要ということで、5本目の柱を座長試案ということで位置づけているところでございます。
以上、座長と事務局で相談し、座長よりお示しいただいた内容について、御説明申し上げました。資料1、資料2の事務局の説明は以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。今、資料1と資料2について、御説明いただきましたけれども、資料1のほうは、これまでまとめていただきました論点整理、それについての議論も活発にしていただきましたけれども、それを次の審議のまとめというところにどうつなげていくか、どのように審議のまとめにそれこそまとめていくかということの大きな方針を今、御説明いただいたと思うんです。これについては、粛々とこのような形でやっていくということで、それほど問題はないと思うんですけど、今、仮に特段の何か、先ほどの室長からの説明で、いや、それはこうなんじゃないかということがありましたら伺っておきたいと思うんですけども、先生方、どうでしょうか。
今、特段なければ、後の御発言のときでも結構ですが、なぜそんなことを伺うかというと、実は資料2のほうを重点的に今日は議論していただきたいと思っておりまして、それに集中して、中心的に議論したいと考えているので、資料1のほうで特段のことがあればと、最初にクリアしておきたいと思ったものですから、よろしいでしょうか。これは後ほど、委員の先生方のほうからありましたら、いつでもお話を伺いたいと思いますので、じゃあ早速、主に議論していただく資料2、先ほどポンチ絵を真ん中にしたやつですけども、項目が5つあるということを御説明していただきました。先ほどのように、右側に実証研究、これは5つの柱と、5つの項目といっても実証研究のところがかなり大きい部分だと思いますので、いろいろな御意見があろうかと思います。それから、左側のほうの周知・研修の促進、環境充実、特性等の把握、それから学校外機関の情報収集・提供という形で、お示ししてありますけれども、それぞれについて、御意見をいただきたいと思います。
どこからでもというと、なかなか議論が集約しにくいと思いますので、どうでしょう。左側の比較的具体的な柱のほうから議論をしていただきたい、何か御意見を伺いたいと思いますけれども、順に上から見ていきますと、周知・研修の促進ということで、これは先ほどありましたように、特定分野に特異な才能のある児童生徒に関する社会や学校の理解を醸成するための周知及び研修と、特に教師の理解を深めるための研修動画の作成、研修活動をするということですが、大変恐縮ですけれども、議論を効率的に進めるために口火を切っていただく方を私のほうで指名してよろしいでしょうか。そうすると、次からの御意見も出やすいと思いますので、内容からして、こちらのほうは福本委員に、まず、口火の御意見を伺いたいと思うんですが、このことについて、いかがでしょうか。
【福本委員】 御指名ありがとうございます。
研修に関してなんですけれども、なかなか学校の先生方もお時間がない中で、教員への理解を深めていくというところに関しては、動画を使った教材の研修とか、あるいは子供たちの特性の理解、それから、多様なコミュニケーションの取り方、あと、探求調査をどのように整えていくのかなどの理論に関しては、動画研修なんかでオンデマンドのような形の研修を効率よく行っていくということも考えられるんじゃないかと思いました。
それとともに、実践研修のほうは、現場でどのような子供たちが、どのような関わりの中で変化していくのかということを一緒に体験できるような、現場で実践力を高めていくという研修が必要になってくるんじゃないかとは思います。ただ、こちらに関してもなかなかコミュニケーションが難しかったり、人の評価や多くの人たちが入ってくることを苦手とする子供たちがいる現場での実践研修になることが想像されるので、できるだけ記録を取りながら、そちらも動画の記録を通して学んでいくということを入れていけると、実際の現場での関わり方というものも、ある程度、効率化を図るような形で検証を進めることができるんじゃないかと思いました。
また、教材なんかも今、STEAMライブラリーとか様々な教材とそれから実践の中でどのよう短期学習を進めていくのかといった動画コンテンツなんかも充実してきているかと思いますので、そういったものと組み合わせることで授業づくりというものを多様化させていくことができるのではないかと思います。
私のほうからは以上です。ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。今、御意見を伺っておいて質問するのも大変失礼なんですけども。
【福本委員】 いえいえ。
【岩永座長】 動画というのは、一般的にいって、実践ケースを記録したような動画ということですか。それともう少しインストラクショナルな、理論的なというか、そういうものもやっているものでしょうか。
【福本委員】 そうですね。研修用の動画教材としては2つあるかと思いまして、前半にお話ししていたものが一般的な理論研修の部分かと思いまして、子供たちの特性やコミュニケーションの取り方の事例なんかも含めて、発達段階に応じた行動特性を把握するとともに、認知特性の偏りや、そこを踏まえたコミュニケーションや介入方法についてのレクチャーが体系だって学べる気かがあればと思っています。
後半でお話ししていたのが実践研修としてのものなんですけれども、本当は現場に入れるということが一番いいかと思うんですが、なかなかそこのアレンジをしていくことも厳しいかと思いますので、外部でやられているような実践を記録しておきながら、それを基に、実際にどういう観点で子供の読み取りを行ったり、どんな関わり方が必要なのかといったスキルアップをできるような動画による実践研修もあったほうがいいのではないかとは思います。
【岩永座長】 ありがとうございました。
【福本委員】 ありがとうございます。
【岩永座長】 そのためにも、才能に関する一定の考え方、それはきちんと押さえておかないと、何でもかんでもこんなのがありますと盛り込めばいいという話ではないと思いますので、その辺のところが1つ難しいところかと思いますけども、ビジュアルな形で素材をつくっていくというのは、1つの重要なポイントかと思います。ありがとうございました。
この点について、いかがでしょうか。ほかの委員の方、何か御意見がありましたら、松村先生、お願いします。
【松村委員】 松村です。1つ目だけでなくて、その下の3つ目、4つ目にも関わるんですが、そういう情報の集約・提供や支援をしていく拠点みたいなものをつくる必要があるということを書き添えてはどうかと思うんです。
だから、今の場合だと、「周知及び研修と、その拠点の形成」みたいに。要するに、そういうことを支援するということはどこかがやるんですけれども、それは、例えば教育委員会とかにつくってくださいみたいな、そういう拠点となるところを設置すると、これも含めた施策ということで、それを入れていただいたらいかがかと思うんです。書かなくても、支援するということは、どこか支援するところがあるということなんですけども、いかがでしょうか。拠点の形成というのを付け加えるというのは。
【岩永座長】 拠点の形成ですね。それは本当に、ジオロジカルに地域で拠点をつくっていくということですか。それとももう少し組織的に……。
【松村委員】 実質的に教育委員会とかになると思うんですが、別に地域に限定しないで全国レベルでも適切な場があるでしょう。でも、どこかよそがやるだろうから、うちはいいだろうみたいなことではなくて、しかるべきところは、きちんと拠点となっていただきたいということなんです。だから、どこにということとは特に限定していなくても、必然的に教育委員会等になるんでしょうけれども、とにかく何か一言明記していただけたらいいかと思うんですが、どんなものでしょうか。
【岩永座長】 ありがとうございました。結局は人だと思うんですけど、それを介して理解が深まっている方とか、考え方をきちっと持っていらっしゃる方が各教育委員会の中に配置されているかどうかということに尽きてしまうと思うんですが、これは筋が違う話かもしれませんが、松村先生と私で、かつて放送大学の大学院科目ですが、才能教育論をつくりました。あれは1つのビジュアルな才能教育に関する提言とか、それからモデルとか、そういうものをお示しした科目だったと思うんですけれども、残念ながら、それは放送大学の教養教育としてつくられた教材だったので、実践をされる方に広く見てもらうという形にはならなかったわけです。ああいうイメージも1つあるのかと思ったんですけども、松村先生は、その辺はどう思われますか。
【松村委員】 私も毎回言っていますが、要するに、一律にこういうことをしなさいということを、国のレベルというか、広いレベルで言わないほうがいいかと。それぞれの地域で事情がありますので、それぞれの地域の才能のある子、特に困っている才能のある子のニーズに応えるにはどうするかということの学校内、学校外での在り方というのは、それぞれ地域の事情があるでしょうから、各地域での何か実践の知見を集約して、それが最終的には全国レベルになると思うんです。そこから、また情報発信を返していくという形があるので、初めから講義みたいな形で一律に、これがいいんだからこうしなさいみたいな形で言わないほうがいいので、あまり初めからそういう講座的なものは使わないほうがいいんじゃないかとは個人的には思うんですが、いかがなものでしょうか。
【岩永座長】 分かりました。講座的といえば講座的でしたね。
今村先生、手を挙げていらっしゃいますか。今村先生、いかがですか。
【今村委員】 ありがとうございます。すみません、私は別の中教審の教育振興基本計画の委員会が、この後始まるので先に中座させていただきます。申し訳ありません。
この絵についてなんですけれども、3点、申し上げます。まず、学校の中にいながら、学校の外のプログラムと接続できるということがお示しされている絵になっていて、すごくいいなと思いました。学校の外というと、どうしても社会教育の時間とか土曜日、日曜日みたいなイメージもあるんですけれども、学校の中に教室以外の場所から様々なコンテンツにつながっていけるということは、学校のタイムラインが個別最適になるという、もしかしたら、子供にとっては一斉授業じゃないところに、時間によっては参加する部分があるということが想起できるものになっていると思ったので、その点が未来の教室といいますか、未来の学校のイメージに見えるということをまず思ったというのが1点目です。
2つ目なんですけれども、そんな支援の学校外のリソースについてなんですが、これを誰が充実させていくのか、そして、地方や自治体ごとといったときに、自治体ごとにそれが確保できるのかというところが現状の大きな問題だと思います。今、とにかくリソースがないということが大きな問題です。私たちもNPOをずっと応援しているんですけれども、地域のNPOを支援するという地域のサードプレースをつくっていく人たちを支援していくというインキュベーション事業を今やって、全国の団体、NPOの募集をしたんですけれども、圧倒的に中山間地域は、そもそもプレーヤーがいないということが見えてきていて、手が挙がるのはほとんど大都市圏というのが現状です。あえてそこに受皿がないところ、社会教育の受皿としてのNPOとか市民セクターが全くないところがあるということを前提にしなきゃいけないと思っていますし、企業もそういったところには、なかなか支店を出したり、塾も展開したりしないということも含めると、そういった民間活用しようと思っても民間がいないというところもかなりたくさんあるのではないかと思います。そういう意味で、2点目なんですけれども、誰が充実をさせていくのかというところについては、各県ごとに県の責務としてそれを執り行っていくということをはっきりと明記したほうがいいように思いました。自治体ごとに設置されている教育委員会ベースだと、もう進まないんじゃないかと思います。文部科学省さんが47都道府県に対して、きちっと充実を図るような支援をしていくということが、1,700の自治体にばらばらに関わっていくという未来よりもよっぽど事が進むのかと。特別支援は県の責務になっていますけれども、そういうような位置づけにしていくのがいいのかと思いました。
3つ目なんですけれども、そういった意味でも実証研究の在り方なんですが、県の教育委員会による各地の教育委員会及び学校を支援する取組という実証も行っていくのがいいんじゃないかと思いました。自団体、カタリバとしては、今年からは広島県教委と連携をして、これまで自分でカタリバにアクセスしてくる方々だけに支援をしてきた不登校支援なんですけれども、県教育委員会の指導主事さんにプレーヤーになっていただいて、私たちのオンライン上のプラットフォームを使っていただいて、研修とかアセスメントとかコンテンツも全部同じようなものを使っていくというスキームの中で、県教委として、広島県内でリソースがない地域の子供たちのオンライン支援をしていくという取組は、これは特異な才能のある子供のみならず行っていくということを、この5月からスタートしていきます。そういった、県として取り組んでいくということを実証の中に加えていただきたいということを3つ目、述べさせていただきます。
私からは以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。今村委員は、この後、時間が限られているということで、全般的な事柄に関して御意見をいただきましたが、そういう意味で言えば、先生方にどこからでも議論していただいていいかと思いましたので、先ほどは1つずつと言いましたけど、今の今村委員の御意見、お考えを口火として、どこからでも御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。中島委員から手が挙がっております。お願いします。
【中島委員】 ありがとうございます。
県ごとにという今の今村さんの御意見も、なるほど、それは確かにそれがいいなと思っておりました。
3点ありまして、少しふわっとしたところもありまして恐縮なんですけれども、1つ目、すごくいいまとめだと思うんですけれども、全体的に私たちは弱いところ、課題、困難を抱えている人たちを助けたいという気持ちはあるんですけれども、課題というか困難というものが前面に出過ぎてしまっているとどうなんだろう、うまく言えないんですけど、ポジティブメッセージというか、私は個才という言葉が好きなんですけれども、何かもう少し一つ一つの特性というものを肯定するような、そこに可能性がある、才能がある、多様性とはまさにそういうところだと思うんですけれども、彼らだから分かること、できることとか、その部分というものを引き出すようなメッセージというか、そういうものが出せないかと思っていました。
余計な話かもしれないですけど、例えば、アメリカで、ギフテッドという言葉は私もなるべく日本ではやめようと思いながらも、アメリカだとたくさんギフテッドスクールが本当にたくさんあって、みんながそれに応募すると。あと、ヨーロッパのほうでダウン症の方々のセミプロのアーティストミュージアムみたいなものに行ったりすると、皆さん誇りを持ってやっている。
私自身も確かに、数学オリンピックがあったおかげで少し救われたというようなところもあって、多分、いろいろな変わっている部分を持っている中で、何かしら肯定されていくということ、それがむしろその人たちがすごいというよりも、社会全般にとって何かいろいろな、多様な才能の発揮の仕方があるとか、そこに価値があるとか、そういった、ある種、多様性の、本当の意味の価値ということを何かもう少しメッセージとして出せないかと思っていました。
そういう意味では、右側の実証研究にも関わるのかもしれないんですけれど、すごいところばかり見てもしようがないと思うので、先ほど今村さんもありましたけれど、地方であったり、過疎地であったり、今なかなかそういうものが届いていないようなところ、困難であると思われていたようなところで実証して、ちゃんと、でもそれで、その人たちなりにというか、何か素敵なものが生まれてくるという実証、それのスキーム、そういうものをしっかり見せていく。どんな可能性があり得るかというものが見せられるようなもの、あと、なるべく分けない考え方、どうしても当事者、健常者という分け方とかをしがちですけれど、できる限り、みんなにそういう個性があるということで、多種多様に個性、才能を評価していくという形での分けない考え方を魅せていきたい。何かそういうポジティブメッセージ、肯定するようなものというのが、どこかにうまく、私のほうで整理して言えているわけではなくて恐縮なんですけれども、何か文化を変えていく上でも入れられないかと思いました。1番の研修というのは本当に大事だと思いますので、やっていくほうがいいと思うんですけれども、課題解決というだけじゃない目線みたいなものがあるといいかと思ったのが1点目です。
2点目は非常に現実的に、どうしても予算というものが関わってくるだろうと思っています。サポートする人材、それから多様な個別最適な環境の整備、それは国からということもあるでしょうし、あと、例えば企業であるとかミュージアムであるとか、いろいろなそういう公共的なもの、企業の今、持っているところをなるべく開いていくとか、そういう施設の考え方も含めて、そういうものが必要であるということ、その辺がもう少し明記されてもいいかもしれないと思いました。
3点目、1番、2番とも関係するかもしれないんですが、先ほど当事者とかという言い方もどうかと思うものの、いわゆる当事者の方々、身体障害の方、知的障害の方、いろいろな形で、発達障害の方も、彼らが出会う機会が非常に少ないと思っています。今はかなり分けられているので、おのおので、それに従事している人たちは、その人たちに出会っているんだけれど、そもそも互いに出会う機会というものが少ない。そのときに、ある程度、例えばこういう開かれた場をつくっていこうというのを考えました。そのときに、議論として、いろいろな特性を持つ人たちに集まってもらって、ちゃんと当事者が参画して議論する。それが実はいろいろな出会いの場にもなっている。知識として知っているだけじゃなくて出会うことで、別にそれが、ああ、なるほど、そういうことかというのが分かるようなことはたくさんあると思っていて、なので、そういう、ある種、流れの中でうまく出会いを生み出していく、みんなが参画できる議論の場とかも生み出しながら、コミュニティーをつくっていく。それが、ひいては文化を変えていく、そんなことができないかと思いまして、何かしら、まとまっていなくて恐縮なんですけれども、その3点の観点を持っていただけるといいかと思った次第です。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。確かに問題論的な議論だけをしていると、どうしても話が、これを解決するためにはというネガティブなほうにばかり行ってしまうんですけども、今言われたように、基本的には明るい未来像、あるいは明るい教育システムの方向性というものが共有できるような形で結論を出していくというのが一番好ましいと思いますので、ポジティブな、肯定的なメッセージを出すということを、問題を解決するというよりもポジティブなメッセージを出すというところも大事なところではないかと思いました。
秋田先生、お手が挙がっている。
【秋田座長代理】 ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
イメージをつくるということが分かりやすくていいなと思いました。まず、1点目ですけれども、周知・研修というところに関しまして、先ほど松村先生がお話しくださいましたが、私はボトムアップが重要だと思う一方で、これまで拠点というものがなくて、それからプラットフォームで実践を蓄積していくような場所というものがなかった。この委員会が立ち上がって、報告が出るまでは、これがある意味で光を与えられると思うんですが、今後も持続可能に多様な事例を学んでいけるような、そういう事例が集まるような長期的なプラットフォームをどうつくるかとか、どのように考えていくかということが重要ではないかと考えます。今、考えられるいいモデルや事例を、取組を紹介するというだけではなくて、何らかの形で収集がいろいろな地域のいろいろな取組が集まるような、データプラットフォームみたいなものとセットになりながら、検証が促進されていくというところと多分実証研究というものがつながるのではないかという点が第1点目に、考えたところです。
それから、2点目としては、これは1のところでもお話ししようかと思ったんですが、2の図のことです。より出ているところで、先ほどの中島委員の御意見とも少しつながるかもしれないんですけれども、この図だけを見ると、特定の子が個に応じた指導ということで取り出されて、ある特定のところに1人でいるイメージというものが、この図だと強くなっていくんじゃないかと考えます。実は個別最適と協働的な学びということの中で、例えばこういう子供たちが、その学校の中では少数でも、オンラインコミュニティーだったり、それから、NPOが組織される場所であれば、これまでも御報告もいただいてきましたが、そういう子たちが集まり合って協働していく場とか、地域のコンクールなんかもそうかもしれないんですが、そういうところで協働したり主体性を発揮していくことができる。そういう場が、各学校はこのように個別なんだけど、それが集まってもう一つ、広い地域だったり、全国を見るとコミュニティーが、そういう子どもたちのためにも生まれていくというイメージ、それから、各学校の中でもこういう子が取り出されていく、見いだしと同時に取り出されていくイメージだけではなくて、教室の中でも、特定の分野の学習においては退屈なので別の課題を、ある別の学習スタイルを取るにしても、例えば異学年での活動とか特別活動とか、先ほどあった部活動とかサークルとか、そういうところでは仲間と協働していくことが非常に私は個別最適と協働的な学び、それから多様性と同時に、今回の報告書は多様性は出ているんですけど、包摂性という議論が弱い気がしていまして、それがこの子たちにだけではなくて、学校全体として、これから多様な人たちを受け入れていく学校を公正な形でつくっていくために必要と思います。そのイメージにもつながるような形でうまく、例えばその子たちが教室の中でもインタラクションしているとか、それから実証研究の中でも、そうした教室内での、そういう子供も含んだり、それから学校内で異年齢も含めた、そういう子たちの在り方ということの検証ということが、包摂的な研究としても行われていくというイメージがあることが求められるのではないかと思います。これは中教審のこの部会だけではなくて、全体のイメージとして、多様性と包摂性や個別最適と協働が常にセットで語られるところの意味合いが重要と考えます。今回はどうしても特定のところに特徴があるので個の問題に光が当たりがちなんですが、この図が1枚目だとすると、2枚目にもう少しそこを発展的にというか、協同的にどういう教育の社会をつくっていくのかという全体像の中の、個にここは日が当たっているんだということが見えてくるといいのかなと私自身は感じたところです。
それから、3点目として、それとも関係します。私は別の部会等でも関わっていて思うことなんですが、学校種間連携というものが、こうした子供たちが、例えば小学校から中学校に行くとか、中学校から高校に行くというところの、特定の学校だけではなくて学校間連携接続をどのように要録でつないだり、そういう子の居場所とか、それから進路進学の支援を行っていくのかということが、それぞれの子がうまく意味を見いだしていくために大事なのではないかと思っております。
その辺りが、学校種間で児童期から、特に小学校から中学校とか、中学から高校を選択するときにいろいろな形があると思うので、この辺りが何か課題の中に入れられたらいいいいなと思うところです。
以上3点になります。よろしくお願いいたします。
【岩永座長】 ありがとうございました。最初の2つ、プラットフォームのデータプラットフォームとか、そういう知的な集積の場ということは、私もこの会議の開かれる前から常に考えておりまして、昔、考えたことがあるのは、すごく古典的な発想なんですけども、日本には、それに関する学会がないんです。大体学会というところが機関誌の発行などを通じて、そういうデータとか考え方とか理論とか、そういったものの蓄積の場になるんですけれども、教育心理学的なところとか、教育社会学的な教育技術的な、いろいろなところでばらばらにやっていることを、全体としてこういった観点でまとめていくと、そういう学会の場がないというので学会を考えたことがありました。
ただ、もう昔のような状況ではなくて、これだけバーチャルな仕組みが整っているような時代ですので、何も学会費を払って、みんながお金を出し合ってというような学会をつくることがいいのかどうかよく分かりませんけど、何かそれに類するような活動、あるいは組織、考え方というのは必要かと思いました。
それから、包摂性、これも非常に重要なところです。私のほうで提示しましたポンチ絵が、確かに連れ出して、1人だけぽつんと、何か教育支援センターの人と1対1でお話をしているようなイメージを、完全にいわゆる才能教育でいうところのプルアウトの形で出してしまったので、そういう意味では、別のメッセージを出しちゃうかなということで、少し変えなければいけないと思いました。ただ、これをつくったときには、非常にバーチャルな意味で、実際に体はそこに、教室の中にあるんだけれどもと、日常的に体はそこにあるんだけれどもということで、幽体離脱的にそこに行くという形をイメージしていたんですけど、確かにおっしゃるとおりで、何でも引き出せばいいというものではないと思います。包摂という観点も重要かということがよく分かります。ありがとうございました。
根津先生から手が挙がっております。根津先生、お願いします。
【根津委員】 細かいところで3つと、あと、込み入ったところで1つです。
意見ですけれども、まず、座長試案の右側の枠内の実証研究というところの冒頭なんですが、「特に」というのは、これはどこに係る言葉なんだろうというのがよく分からなかったというのが1つです。
次が、先ほども少し話題になっていた図なんですけれども、この中で、教室という言葉が引っかかるところでして、教室が意味するところは何なのかと、物理的な場の問題なのか、それとも所属する学級やホームルームということの意味なのか、そこが先ほどのプルアウトの議論ではないですけれども、曖昧なのかと思った次第です。
3つ目ですが、イメージ図では教育委員会とありますので、公立学校がベースのようなんですけれども、現実的には、国立や私立学校等の設置者による対応を含むと理解してよいかというのが3つ目です。
実証研究についてというところがやや込み入ったところなのですが、先ほどの秋田委員の御発言と関係して、実証研究のレベルですとか、あるいは方法、手法、そして中身が具体的にどういうものなのか、この中で集約するのは難しいということなんだと思うんですけれども、まず、一つはレベルというところを考えると、先ほどの御議論にもありましたように、国レベルでこれを考えるのか、あるいは都道府県レベルでやはりという御発言もあったかと思いますし、場合によっては市町村等の教育委員会単位、あるいは設置者単位ということになるかと思います。ただ、そうなると地域差への配慮というものも、これは考えなければならないだろうと、拠点というところとも関わってくると思います。この辺りは実証研究の予算規模とも関わるところだと思うんですが。
また、レベルとしますと、児童生徒と図の中では一括されているんですけれども、議論の中では、記憶の範囲なんですが、小学校段階と中等教育段階、初等教育と中等教育では大分事情が違うというところもあったと思いますので、設置者の別に加えて、学校段階の別への配慮というものが、この中でも大分違ってくるのではないかというところです。今のがレベルの議論です。
次が方法、手法として、実証研究といいましても、それは実証的な手法を取る研究としか言いようがないということになりますと、じゃあ何を実証するのか、あるいは、具体的に何をするのかとなりますと、既存の事例の収集や分析というのもこれは1つあるところですし、あるいは、どこかでうまくいっていることをほかの地域へ展開、普及するというのも、これも実証研究になり得るだろうと思うんです。または、今は全くない新しい斬新な枠組みの開発や導入、当然それは試行錯誤を伴うことになるわけですけれども、最終的には、それは教育課程編成の例外を考えるようなことになるのかどうかという制度的なところまで含めての方法、手法ということにもなろうかと思いますけれども、中身となると、それが左側の柱、周知・研修の促進、環境の充実、特性等のというふうに4点ありますが、それが柱になるのかというところが、実証研究という言葉と左側の4つの柱といいますか、内容といいますか、その辺りの関連をもし御説明いただければと感じた次第です。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。今おっしゃられたことは、私も感じていることばかりでしたけども、例えば、「特に」というのがどこに係るのかと、改めて御指摘いただくと、私も「特に」はどこに係るのかなと。そうでなくても、有識者会議では漢字の「特」という字がやたらに出てきて、「特」に関する有識者会議のようになっておりますけども、あまり乱発してもどうなんでしょう、いけないかなとは思っております。
これは、例えば、特異な才能をさらに強調するような言葉でここに挙げたんですけれども、なくてもいいかもしれませんね。これは、どこにつくのか分からない言葉だということで、特に特異な才能というのもちょっとおかしいですよね。それは御指摘いただいたとおりかと思います。
それから、確かに実証研究といっても、一言で言って、何を実証するのかというのはそう簡単にはいかないです。特に調査研究の2つの大きなタイプがあると思うんですけれども、淡々と今、何が起こっているのかという実態を調査する実態把握調査も実証研究ですが、それらの間の関連性とか因果とか、そういったものを仮説として出して、それが妥当かどうかという仮説検証型の実証研究もあるわけで、むしろ学術的にはそちらのほうが多くやられているわけですけども、もう既に日本の才能教育に関しては、2つ目の仮説検証型の研究をする基盤というか、状況が整っているのではないかという考え方もあると思いますので、毎回調査をするたびにどうなっていますかという調査だけでは本当に芸がないと私も思っております。
この辺り、市川先生、いかがでしょうか。実証研究に関しては、いろいろと御経験もあると思いますが。
【市川委員】 私も今、ちょうど手を挙げようかと思っていたところなんですけど、ありがとうございます。
【岩永座長】 そうですか。以心伝心ですね。よろしくお願いします。
【市川委員】 まず、実証研究についてですが、岩永先生もおっしゃったように、実態調査に当たるようなものも、実証研究といえば実証研究なんですけれども、ここでは、特に実際に開発とか実践をしてみて、それがどれくらいうまくいっているのか、あるいはどんな問題点が出てくるのかということを、ちゃんとデータを取りながらエビデンスを取って進めていきますと、そういう意味ではないかと思うんです。
ここに研究内容の例が出ていますし、あと、左の4つにあることも、全部そういう開発とか実践に関わってくる。ただ、大事なことは、こういうことを実践してみましたとか、開発しましたというだけではなくて、それをやってみてどうだったのかということを、ちゃんとデータを取りながらやりますと、これは子供や先生の声もデータの1つですし、もっと詳しい数量的なデータというのもあるかもしれませんけれども、やってみて何がよかったのか、何がまだ問題なのか、問題をどうやったらクリアできたかと、そういうことを実証的にやっていくと、そういう意味であると思いますので、岩永先生、それでよろしいですか、そういう意味でしょうか。
【岩永座長】 はい。まさにそういう意味です。
【市川委員】 一般の方も実証研究と言われて、何が実証なのかというのがぴんとこないかもしれないので、実態調査だけではありませんと。実践や開発も含みますが、やりっ放しにするのではなくて、ちゃんとデータを取って問題点も明らかにしながら、効果検証もしながら進めていきますということを打ち出せばよいのかと思います。
それから、あともう一つ、さっきの周知・研修のことなんですけれども、私はこれはすごく大事なことだと思います。大事なだけに、もっと詰めていったほうがいいかと思いました。誰がいつ誰向けに、どんな内容の研修をするのかということです。先ほど放送大学でも、こういうものはあると。ただ、それは教養としてであって、一般の方に学校の先生も含めて、今の現状がこうなんですと、知識を持っていただくと、そして、問題意識を持っていただくということです。学校の学習だけでは逆に物足りなくて、そういう意味での困難。困難というのも、ついていけなくて困難ではなくて、物足りなくて、むしろ不適応感や授業に出ることへの困難を感じているという子供たちもいて、そういう子供たちのために、今はこんな試みもあるんですということを知識として、情報として伝えて、これではまだまだ足りないという問題意識を持っていただくと、これはいいと思うんです。やろうと思えば今でも放送大学であるくらいでできるだろうと。
ただ、その先の研修とかになりますと、今度、こういう試みをやってくださいというようなものにだんだんなっていくと思うんです。学校の先生も、こういうことをやれということなのかと受け止めますよね。そのときに、これは県ごとにしても、自治体や学校ごとにしても、やるように言われているのかというだけだと、プレッシャーだけになってしまうといけないので、ある程度、こっちの議論や政策も進んだときに、既にこういうことを国としては用意しています。一般の企業とかNPOも、こういうことは既にやっている、あるいは、もう近々やる予定ですと。そういうことを前提として、各県とか学校ではいろいろ考えてみてくださいというと、少し考えやすくなりますよね。それは、ある程度、状況が整ってからじゃないと、そういう研修はできないので、どのタイミングで、どういうものをつくっていくかということ、そのプランニングを含めて、もう少し詰められていくといいと思いました。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。まさにおっしゃるとおりのことで、実証研究に関しては、そういう意味で、どうなっていますかという実態把握調査ばかりやっていてもしようがない。実態把握調査というのは、実証的な仮説検証型の意味がある、先へ方針を決めていくような、そういう研究をするための基礎としてやるのであって、ただ知りたいためにやるという実態調査は、本当に意味がないと私も思っておりまして、それはセットになって、初めて意味を持っているということだと思います。
それから周知・研修の、少しお断りしなければいけないんですけども、松村先生と私の授業は、もう10年ぐらい前の授業で、今では放送しておりませんので、今、放送大学に才能教育に関する授業はないんです。過去のアーカイブの中ではありますので、それを見ていただくことはできますけれども、そういった形で出すということになっても、これは市川先生の御心配にもあると思うんですけれども、このようにしなさいという形で出すわけにはいかないんです。モデルというか、かつて社会主義圏のところでは、いろいろな分野で才能のある子供たちを1か所に集めて能力を高めるという教育をしておりましたけれども、そういった形でこれをやりなさいということはできないわけです。また、意味がないし、教育という趣旨から考えて妥当だとも思えません。
ただ、最初のときから言っておりますけども、ICTの状況が非常に進歩してきまして、地域性も克服して、状況も克服して、いろいろなものを伝えられるようになっているので、その辺のところは、現状に応じた使い方というのはできるのではないかと思っているところです。
すいません。根津先生の挙手は、また新たな挙手と考えてよろしいですか。根津先生、何か御意見がありましたらお願いします。
【根津委員】 先ほどの御議論を伺っておりまして、実証研究というのは、座長のお言葉にはありませんでしたけれども、一種のパイロットスタディーですとか、あるいは研究開発ですとか、これも分野によっていろいろ用語の違いはあるんですけれども、実態調査というよりは、割と試行実践的なものかと受け止めましたので、そこは理解をしました。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。まさにそういうことを、先ほど言いたいと思っていたところです。ありがとうございます。
松村先生、お願いします。
【松村委員】 実証研究ですけど、イメージ図に出されたということは、まとめに盛り込まれると思うんですが、こういう実証研究が要りますねとか、あるいはしましょうというのを、どれぐらいの具体性を持って出されるのかというのが分からないんです。例えば、文科省の研究指定校みたいなので、とにかくすぐにそういう実証研究を始めましょうとか、あるいは、どこか教育委員会にお願いしてやっていただくとか、これは緊急性があるので、ここでやっていただくとか。何かそういう具体的な計画を持っておられて、そこには予算が伴うでしょうけれども、実現可能なものとして、どのテーマを挙げられるのか、それと併せて、こういうのもあればいいねというので、すぐにはできなくても候補として挙げておくのか。今の段階ではタイムラインみたいなものも含めて、どのように先々の見通しをお持ちなんでしょうか。
【岩永座長】 ありがとうございます。実は、この辺りを前面に出して、ある程度急いでというのは、今、先生がおっしゃった予算のこともありまして、この時期、5月から6月にかけてという時期にこのところを固めていくというのは、掛け声だけ言っていてもしようがないので、これだけの予算を取って、その予算に応じて、こういう調査研究をするということを固めたいという意図です。
そういう意味で言いますと、松村先生が御心配のように何を調査するんだ、何を研究するんだということが、ある程度はっきりしていないと、予算の申請もできないわけで、ある意味では、それをきちんとしようと、この一、二か月の間にきちんと示そうということも考えております。何か事務局のほうでありますか。お考えのところがあれば。
【常盤木教育課程課長】 失礼します。事務局でございます。御質問ありがとうございました。
実践研究というお話になってきますと、皆様、御心配いただいているとおり、当然今は1円も予算がないわけでございますので、政府の予算要求のプロセスの中で、今年の夏に概算要求をして、財務省と折衝いたしまして、そして、冬に政府原案が決まって、国会での御審議が決まれば、来年の4月に初めて予算がつくというプロセスになっていきます。こうした中で、我々がこうした研究をやりたいというのを、まず皆様の御審議、御意見をいただいて、しっかりと固めていくというのも重要だと思っています。
ただ、額も含めて、我々がやりたいことも全てできるような予算が、いわゆる様々な御意見の中で認められるのかというのを我々はしっかり頑張りたいと思いますけども、そこは不透明な状況です。環境という意味では。ただ、我々として皆様からの有識者会議の中でいただいた御意見をしっかりと踏まえた形で、実践研究の枠組みを決めていきたいと思いますので、ぜひ先ほどから出ていますレベルの問題ですとか、内容の問題ですとか、そういう点も含めて、こういった研究をしていったらいいんじゃないかというのも御意見いただければありがたく存じます。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。私は予算獲得について何の知識もないし、センスも持っていないんですけども、何となく一市民として考えると、問題論的なところをある程度踏まえないと、予算がつかないんじゃないかという感じがどうしてもするんです。
学術的にこういうことは知っておきたいねとか、子供たちがより幸福になるようにというだけの根拠だとなかなか、この研究が必要です、この調査が必要ですという根拠にはしにくいという感じがしておりまして、そういう意味でも、ポンチ絵を描くときの全体の印象として、問題論的なものも、今これが問題なんですと。この問題を解決するためには、こういう子供たちへの対処が考えられられなければいけないので、そのためのインストラクションモデルとか、それから、教育システムのモデルとか、そういうことをつくらないといけないんですというのは根拠になるかと思って、このようなまとめ方というのをしているわけですが、その辺のところはなかなか難しいですね。
コロナみたいなものを前面に出すと、恐らく予算というのはつきそうだという感じはするんですけれども、もう少しこれはメタな話ですから、こちらの部分は、そういう今日的なものではないところであるということが言えるのではないかと思いました。
松村先生、お手が挙がっているのは。
【松村委員】 まだ少ししゃべりたいんですけど、秋田先生、先にどうぞ。
【岩永座長】 じゃあ、秋田先生、お願いします。
【秋田座長代理】 ありがとうございます。今の件に関連してなんですけれども、実証研究というより、この時期で考えるのは、長期的にこの問題に取り組んでくださるのが、例えば、教育課程課であると同時に、国立教育政策研究所には幾つかの部署、それから2Eの場合だったら国立特別支援教育研究所であったり、そういう機関の中に、こういうことの御専門の専門官等はおられないはずなのす。人員とかそういう部署ができて、そこでプロジェクトとして、きちっと動いていくということによって積み重ねができるような形が1つは重要だろうと思います。
あと、教育課程として考えたときには、多様な子供たちの包摂性を含むカリキュラムの在り方、教育方法というものがどのようにあったらよいのかということについて、特にそれに対応する教師や指導の在り方が重要というレベルでの研究というものが必要になるのではないかと思いました。ここに挙がっている実証研究は、具体性のレベルというのが少し細かいような気もしましたので発言したのと、ぜひセンターレベルというか、人がついて専門にこれを取り組んでいけたり、データがプロジェクト的に動けるような仕組みというものが併せて考えていただけるといいのかなと思った次第です。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。まさにそのとおりだと思います。松村先生。
【松村委員】 すいません。今、秋田先生もおっしゃったので、なるほどと思ったんですが、個別の優先順位で、どれから予算がつくかという問題だと思うんですが、個別のこういう研究が必要なんじゃないかというので意見を出して、集めていくというのも1つの方法でしょうけれども、いろいろな研究をまとめるような拠点をまずこしらえて、そこで具体的に考えていただく、だから予算を出すのは個別の研究ではなくて、そういう個別の研究を行う拠点にと、そういう方向もあるのかと思いました。
ついでに、言い残したことを話していいですか。下の左の4点についてなんですけども、まず、「周知・研修の促進」はお話ししました。次の「環境の充実」ですが、これは「安心して過ごせる居場所の充実」ということで切れていますけれども、そこに「及び社会情緒的支援」とか、そういう居場所には人がいるんでしょうが、もっと社会情緒的な支援が行われるんだということを、ポジティブに書いていただけたらと思います。というのは、この前お話ししましたけれども、アメリカでもスクールカウンセラーが才能教育に精通していないということが言われていて、日本でも才能のある子が困っているということが少なくないので、スクールカウンセラーには、才能のある子の困っていることやそれへの支援との視点とか知識が必要です。参考資料の1の7ページに、「教師と児童生徒だけではなく、養護教諭・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーなどが別の視点から児童生徒に関わり」ということが書かれているんですが、私が前回話しましたように、「才能のある子の支援の視点・知識を持って」ということもぜひここに明記していただきたい。この文言は大事です。養護教諭とかスクールカウンセラーが才能のある子の、才能のある子というのは私の言い回しで、特異な才能のある児童生徒ですが、それの支援の視点・知識を持って関わっていただくと、保健室とかカウンセリングルームが居場所となるわけなので、そういう才能による困難を共感・理解して支援する人材の充実も図っていただきたいということです。
それから、3つ目の「特性等の把握(見いだし)の支援」についてですが、これは文言が少し曖昧なので、私がこうすればどうかというのを考えました。画面共有します。「子供たちに発現する特異な才能を示す行動・特性や、才能に伴う学習・社会情緒的困難の把握に対する支援、及びその拠点の形成」というのが私案です。
特性等の「把握」と表記してくださったのは適切だと思います。私は才能行動・特性の識別(アイデンティフィケーション)と言っていますが、識別というとある意味、こういう才能があるのでそれを取り出すというような感じがします。けれども、把握だと別に、何か一定の基準でそれを認めるだけでなくて、いろいろな種類、いろいろなレベルの行動・特性を捉えられるという意味があるので、把握という言い回しは、見いだしよりいいかと思います。
才能を一律に定義しないということを言ってしまったので、教室で何を手がかりに才能特性を把握したらいいのかというのが、先生たちは困ると思います。それで、先ほどの周知・研修の促進のところと関連しますが、例えば緩やかな指針として、「優れた能力、創造性、意欲・熱中を手がかりに、才能行動・特性に気づける」という指針を周知の一環として出すこともできるでしょう。
けれども、個別の指導・支援の場では、何か一律の方法やツールを推奨するのではなくて、これが実証研究と関わるんですが、実証研究で学校内外での実践の中から浮かび上がってきた有効な方法を集約して、具体的なモデルを示していく。そういうことで、教師を支援していくということが大事です。それで、説明の文ですが、「特性・困難の把握」で切っていますけれども、そうすると、これは何か施策として把握するのか、文科省がやるのか、教育委員会がやるのかみたいな、曖昧なことになってしまいますが、そうではなくて、個別のプログラムの場で、学校の先生とか学校外の人たちが何かやるときに、こうやったらいいとアドバイスしていけるような、まさに支援という文言が、説明にも要るかと思います。
才能に「伴う」学習・社会情緒的困難というのは、才能があるがための困難と、障害による困難の両方が含まれますが才能と困難の両面を把握して、それを支援する。そのために情報を集約・提供できる拠点を形成していくというのが要るだろうということで、こういう表現はどうかと思った次第です。
もう一つ、ありました。すいません。一番下の「学校外機関の情報集約・提供」、先ほどの資料2をもう一度出してください。ここで、学校外の諸機関の情報が、教育委員会を通じて、あるいは学校と連携しているというイメージですけれども、学校外の機関が相互に横につながるというイメージも要るかなと思います。例えば、保護者支援団体なんかが教育支援センターと連携して、こういう点がありますと、そういう保護者の意見を汲み上げるようなシステムが横の連携としてできていく。だからイメージ図として、学校外の、大学、民間、NPO、教育支援センターがぽつぽつ分かれている感じですけれども、それが横にもつながりますみたいなイメージを出してくださったらいいかと思います。
ですから、ここでも「学校外機関の情報集約・提供、及びその拠点の形成」ということで、これは教育委員会になるんでしょうけれども、先ほどの今村先生のお話では、都道府県の教育委員会がなるべきだとおっしゃっていましたが、そういう拠点の形成というのを明記していただきたいと思った次第です。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。先ほど来、市川先生が手を挙げておられますが、これに関してでしょうか。市川先生、お願いします。
【市川委員】 実証研究の話から、どうやってその研究を進めていくかとか、そして、そのための予算をどう獲得していくかという、かなり生々しい話になったと思うんですけど、私は重要なことだと思っています。
結局、これから何らかのテーマについて、実践校なり、あるいは研究者なりに研究をしていただく、そのための予算を申請していくという話になると思うんですけれども、まず、1つ、結局最終的に出してくれるかどうかというのは財務省にかかっているんだと思うんです。そのためには、岩永先生も先ほどおっしゃったように、研究者としてこういうことを知りたいだけでは、なかなか今は通してもらえない時代です。これが社会的にいかに重要な問題かということをアピールしていけば、割とむしろ、これはアピールしやすいんじゃないかという気もするんです。
どちらかというと、教育の世界ではなかなか授業についていけないとか、すごく不適応を起こしている子へのシンパシーが高くて、授業で物足りないとか、すごく特異な才能があるということについては、これまでどちらかというと、あまりスポットライトを当ててこなかったと。今回、この委員会では、むしろ、その子たちもその子たちなりに困っているし、しかもこれが社会全体にとってもすごく大切なことだと、そういう子供たちをどうやって社会全体で育てていくかということは、大げさに言うと、国の発展にも関わる非常に大事な問題なんだと、だからこそ経産省などでは予算を出してくださっているわけですよね、これまでの例もありましたけど。文科省が、やや冷ややかというか、そういう申請をあまりしてこなかったけど、これはすごく大事な問題なのでお願いしますという論調であれば、むしろ財務省のほうでも、確かにこれは国の発展に関わる大事な問題なんだということは、割と共感してくれそうな気がします。
ただ、その次に、一体どういうテーマで出すかというときに、あくまでも教育課程課とか、大きく見ても初中局として出していくものであれば、学校教育と関連づけないと、筋が違うと言われてしまうのだろうと。ですから、これは生涯教育とか社会教育を充実させましょうという話だけだと、それは教育課程課が出すのと少し違うんじゃないかと思われてしまうと思いますので、教育課程にこの問題を関連づけたテーマで出していくほうがいいのだろうと思います。
私は少なくとも2つ考えられると思っていて、1つは日常的な授業です。これも何回か申し上げましたけど、日常的な授業というのがどうも物足りない。特定分野に才能のある子にとっては非常に退屈でつまらないものになっている。そういう声が、少なくとも出ているわけです。ですから、日常的な授業において、そういう子たちもちゃんと活躍できるような、そういう授業設計を考えていく。これはもう十分、教育課程課の守備範囲のテーマだと思います。そういうことをやってみようという学校なり研究者なりは、そのテーマに応募していただくということです。
それから、もう一つは、例えば、学校外とかの活動であっても、それを教育課程、例えば総合的な学習の時間で、それぞれが学んできたことを発表するとか、こういうことをやっている学校も実際あります。地域の学びということでいろいろ、例えば土日とか長期休暇で経験してきたことを総合的な学習の時間にプレゼンして、自分の学んだことと、そこでの体験みたいなものを発表してもらって、ほかの子たちにもアピールすると、そういうことによって、ほかの子たちもそういう面白いのがあるんだったら出てみたいとかということで、地域での学び、多様な学びが広がっていく。これも学校の教育と連携していますので、教育課程課がそういうことを出していく、そういうことをやってくれる学校や研究者には研究を補助していく、これは無理のない話じゃないかと思います。
今、2つだけ例を出しましたけれども、何か教育課程と関連させる形のテーマで、特異な才能を持った子供たちが活躍できるような、そういう場をコーディネートしていくような研究を広く募集していくということは非常に大切なことかと思っています。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。福本委員から手が挙がっておりますが、お願いします。
【福本委員】 先ほどの先生方のお話を聞かせていただいて感じたところなんですけれども、秋田先生が最初におっしゃっていた、データプラットフォームをどのように設定して活用していくかというお話があったと思うんですけれども、こちらのところに全て実証研究も、それから理論研修、それから実践研修も全て組み合わさるような形で知が集積されていくような仕組みづくりができるといいのではないかと思いました。
まず、実証研究が始まっていく流れがつくれるとするならば、実践のほうをしっかりとかけていく必要があると思うんですけれども、こちらに関しても、様々な観点から実証が行われていて、例えば不登校への拡充プログラムのものであったり、あるいは探究学習を促進していくようなプログラムであったり、地域のリソースを活用して地方都市と都市を交流させるようなオンライン、オフラインのプログラムだったり、いずれも全ての子供たちが才能を発揮していくのを助けるためのプログラムということで、様々なプログラムが展開されているわけなんですけれども、そうしたものが、なかなか不登校だったら不登校の枠組みでしか語られていなかったりだとか、探究学習だったら探究学習の枠組みでしか語られていなかったりもするので、そういったものをうまくセグメントし過ぎずに、今の情報化社会だとタグづけしながら、後から、例えば不登校のためにやっていたものが探究学習としても使えるよとか、探究学習の中でやっていたことが、もう少し地域と合わさっていくことで、不登校の子供たちにとっての有効なプログラムになるという形で、セグメントを越えた中での実践の共有とか共有知の繁華というものが起こるような仕組みづくりができるのではないかと思うんです。それがかなえていけるのが、データのプラットフォームに実践の事例とか動画の研修というものが積み重なっていくことで、活用できるような知識体系になるのではないかと感じました。
また、理論研修のほうでも、蓄積されてきた学術的な理論があるのが、一方ではあるんですけれども、そちらとともに、学習科学の実践知を逆に理論化していくということが、結構スピードアップしているような時代でもあるのかと思いますので、そこの循環が図られるような理論研修を展開していく必要があるのかとも感じたところです。データプラットフォームに関しては以上です。
もう1点、統括していくレベルのお話があったと思うんですけれども、例えば政策提言していく統括レベルが、都道府県レベルであったほうがいいというお話がありまして、そこに関しては同意なんですけれども、例えば一定の財源を確保するとか人材リソースの拡充を責務としていくとか、あるいは、多様な学びをきちんとオーソライズしていくというところでは、都道府県レベルで動けたほうがいいと思う一方で、実践の指針とか地域に特徴的な具体的な事例をつくっていくというところに関しては、結構基礎自治体レベルでの動きが面白かったりもしますし、ユニークな事例が集まってくるのではないかと思いますので、実践に関するところの主導権をきちんと基礎自治体レベルの教育委員会さんが持てるような形で、都道府県レベルのそこをバックアップするようなオーソライズの仕方というものが必要になってくるんじゃないかと思いました。
今、挙げてくださっている図の中の教育委員会という黄色の背景があるかと思うんですけれども、こちらも教育委員会さんが、それこそ都道府県の教育委員会になってくるかと思うんですけれども、例えば大学とか民間とかNPOのところも、その活動に対してオーソライズしていくという意味で、黄色の範囲を広げてしまってもいいのかと感じたところです。
私からは以上です。ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。教育委員会というポンチ絵で言えば、教育委員会という枠を民間NPOとか大学を緩やかに包摂するような、そういうイメージでよろしいんですか。
【福本委員】 そうですね。教育委員会が、教育支援センターの活動に対してだけオーソライズするような形で見えてしまっているので、そこはもったいないかと思いました。
【岩永座長】 分かりました。大変そうだと思わされる指摘だと思います。ありがとうございました。
基本的に、私は前々から議論になっていると思うんですけども、子供たちは自分の幸せを達成するために、実現するために生きているわけで、その一貫として学びというのがあって、それがどうも高い能力というものに対応する正当化の学びの報酬というのが高学歴であったりするわけです。それに応じて配分された高学歴というのが、その後の、いわゆるということですけども、幸せな人生につながっていくというのが、今のこれまでの日本の成功モデルだったと思うんです。
これは学力的な、アカデミックな能力だけではなくて、例えば卓球の能力だとか、水泳の能力だとか、野球の能力というものが、最終的にはオリンピックに出るとか、メジャーリーグベースボールに入るとか、そこで活躍するとか、そういう達成モデルやロールモデルで子供たちの頭の中にあって、あるいは、保護者もそういうものを共有していて、そちらに向かって進んでいくと。有識者会議の中でヒアリングをさせていただいたり、それから、いろいろな実践の報告を受けたりする中で、山形県とか、それから広島県とか、そういうところの実践を見ると、どうも才能というものを伸ばす、あるいは才能があるがゆえに不適応を起こしているという子供たちを救う、そういう発想にとどまっていると、この話はうまくいかないんじゃないかと。才能がある、なしに関わらず、全体として、何か才能の総体を伸ばしていくような、そして、それが必ずしも高学歴という形に結実するだけではなくて、もっと生き方そのものとか子供たちのものの考え方や、それから共同体を形成するときの連帯性とか、そういったものに結実していくような、そういう形での才能教育というのが、最終的な落としどころではないかという感じがしているんです。
だから、それはすごく先の話で、一つ一つの個別な実証研究のテーマとするにはあまりにも大きい話なので難しいとは思うんですけれども、そういうことを念頭に置いた上で、個別の仮説を立てて、個別の実証研究をして、それをデータとして結果を得られた上で、それをプラットフォームの中で蓄積して、それを4つの柱のほうの実践に応用していくという循環ができれば、これは理想的だと思います。そういう意味で、5つの柱で出しましたけれども、どちらかというと4つの柱があって、その4つの柱の根底にそれを実現するための実証研究があるというイメージが、ひょっとしたら正しいかという、先生方の御意見を伺いながら、少しその辺の修正を頭の中でしているところです。
これまでの議論で大分いろいろな御示唆をいただきましたけど、まだ言い残しているということがありましたらお願いします。よろしいでしょうか。根津先生、お願いします。
【根津委員】 すいません、思いつきで申し訳ないんですけども、今の大学、民間、NPO、教育支援センターというところから学校に人が行くようにはなっていないんだというのが気がついたところですので、場合によっては、そういった相互の人の交流といいますか、行き来というものも想定されてはいるんでしょうけれども、そこも工夫していただければと思った次第です。
以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。まさにそのとおりですけど、矢印があっち行ったりこっち行ったりするのはどうかと思ってしまったということがありました。確かにそうですね。大学がただ待っていて、こういう子供がいますけど見てもらえますかと言われて、ああ、いいだろうというので来ているような図ですよね、これは。そうではないだろうということは、まさにそのとおりだと思います。ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それで、実は第11回というのを6月8日に設定させていただいているんですけれども、その際には、後でまた御説明あるかもしれませんが、資料1でお示ししてありますような審議のまとめをかなり具体的にお示しして、それで検討することになろうかと思います。そこのところで、また、今日の議論などを踏まえて、活発な御議論をしていただきたいと思っているわけでありまして、今日、いろいろいただいた御意見や御示唆をまたまとめまして、それに生かしていきたいと思います。
今日は少し早いですけれども、時間はまだありますけれども、この辺りで議論を終了したいと思います。どうもありがとうございました。先ほど言いましたように、次回は資料1について、これまでの議論や本日の議論を踏まえて、骨子に沿って少し肉付けしたものを事務局と相談の上、作成して、さらに議論を深めてまいりたいと思います。
最後に次回の予定について、6月8日、次回の予定について事務局からお願いします。
【川口学校教育官】 次回会議、第11回については、6月8日水曜日、10時から12時で行います。よろしくお願いします。
【岩永座長】 形式は、また同じようにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは、本日予定した議事は全て終了しましたので、これで有識者会議を閉会したいと思います。ありがとうございました。御退室ください。

―― 了 ――