特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第5回)議事録

1.日時

令和3年11月29日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議方式

3.議題

  1. 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 論点整理(たたき台)の案について
  2. その他

4.議事録

【岩永座長】 皆様、おはようございます。時間になりましたので、「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」の第5回を開催したいと思います。
関東地方では初霜が下りたようでございますけれど、大変寒い中、御多忙の中、会議に御参加いただき、誠にありがとうございます。
本会議につきましては、報道関係者等より録音・録画の申出があり、これを許可しております。これまで同様に御承知おきいただきたいと思います。
まず、本日の議題に入る前に、会議の留意事項及び本日の会議資料の説明を事務局からお願いします。
川口教育官、お願いします。
【川口学校教育官】 事務局です。
まず、本日の会議は、Webexを使用したウェブ会議方式にて開催させていただいております。そのため、1、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただく。2、御発言の都度、名前をおっしゃっていただく。3、御発言時以外は、マイクをミュートにしていただく。4、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただき、発言が終わりましたら「手を挙げる」ボタンを再度押していただき、手を下げていただくよう、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
続きまして、本日の会議資料について御説明します。本日は、資料1及び資料2がございます。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。それでは、議題に入りたいと思います。
特定分野に特異な才能のある児童生徒に対して教育委員会等が行う支援等の現状について大まかに把握するため、教育委員会に対して任意でのアンケート調査を行っておりました。このたび集計結果が取りまとまりましたので、御報告させていただきます。回答の中から代表的なものを一部抜粋し、必要に応じて加工し、便宜的に分類するという形で、時間に限りもありますので、そのようにさせていただきます。資料1に、アンケート結果のまとめをお示ししております。
それでは、その詳細について、事務局より御報告をお願いいたします。川口さん、お願いします。
【川口学校教育官】 事務局です。資料1を御覧ください。教育委員会対象のアンケート結果について御紹介をいたします。
このアンケートは、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する支援等の現状について、大まかに把握することを目的として行ったものです。全ての教育委員会を対象に、通知によりお知らせし、任意で回答を求めたところ、504の教育委員会から回答をいただくことができました。お忙しい中御協力いただいた教育委員会に対して、御礼を申し上げたいと思います。
本アンケートは、まず、特異な才能のある児童生徒に対する教育委員会等が行う支援策の有無について尋ねております。その上で、「あり」と回答した教育委員会については、その支援の内容を、「なし」と回答した教育委員会については、支援策の実施が困難な理由や、実施に必要な条件を尋ねております。併せて、支援に関する課題認識や国への提案なども尋ねております。委員の皆様には、事前にお目通しいただいておりますこと、説明時間も限られておりますことから、本日はかいつまんで御紹介するにとどめたいと思います。
まず、特異な才能のある児童生徒に対する教育委員会等が行う支援策について回答のあった504教育委員会のうち、「あり」と回答した教育委員会は30でした。その支援策について御紹介します。2ページ目を御覧ください。
まず、プログラムの提供として、1ポツ目、「中学生の希望者を対象として、土曜日に、プロや大学・高校の指導者による、授業では学習しない高度な内容についてのプログラムを提供する」、2ポツ目、「不登校をはじめとする学校における集団での学習になじめない児童生徒を対象として、科学や芸術など様々な分野を題材とした体験活動を提供し、児童生徒の可能性を伸ばしたり、引き出したりする学びの場を提供する」などの取組が見られました。
このほか、単発のイベントを教育委員会として開催したり、諸団体が行っているイベントを紹介したりする取組や、スポーツや文化などに優れた児童生徒を対象として、大会参加に関わり、補助金や奨励金を支給する取組が見られました。
資料3ページ目を御覧ください。次に、「支援策なし」と回答した教育委員会について、お答えいただいた支援策の実施が困難な理由や、実施に必要な条件について御紹介いたします。
まず、対象児童生徒の見いだしとして、1ポツ目、「該当する児童生徒の抽出基準が定まっていないこと」や、4ポツ目、「該当する児童生徒をどのように把握するのかということ」を課題とする回答が見られました。
次に、人材・予算の確保、組織体制として、2ポツ目、「何にどのぐらい費用がかかるのか、その効果はどの程度見込めるのかなどが不明で、予算計上は困難であり、また、支援に必要な人材発掘も困難であること」との回答が見られました。
次に、指導・支援の方法として、1ポツ目、「才能を伸ばすための支援策や具体的な計画が立案しにくいこと」、3ポツ目、「児童の社会性などの不得意部分の育成をどのようにすればよいのか」といった回答が見られました。
資料4ページ目を御覧ください。専門性を持った人材の養成・育成として、1ポツ目、「有効な指導・支援についての認識や研修等も進んでいない。正しい理解につながる周知や研修、指導者の人材育成が必要である」との回答が見られました。
次に、外部機関との連携として、1ポツ目、「特異な才能のある児童生徒の能力を伸長していくためのプログラムの発掘、近隣大学との連携などが必要」、2ポツ目、「学校外の専門家を活用に併せ、学びをコーディネートする教員の配置が必要である」との回答が見られました。また、3ポツ目のように、過疎地であることを指摘する回答も見られました。
このほか、地域社会の理解や公平性を指摘する回答が見られました。
資料をおめくりいただいて、5ページ目、最後に、支援に関する課題認識や国への提案などについては、先ほどの支援策が実施できない理由などと重なるように、対象児童生徒の認定や予算面の支援、指導・支援の方法、外部機関との連携に関して御意見をいただきました。また、一番下、関係者の理解の醸成として、教育委員会事務局指導主事、各学校の教職員が理解を深めることが大切との御意見もいただきました。
以上、アンケート結果の御説明でした。
【岩永座長】 ありがとうございました。
今、資料は、先生方にお伝えしております資料にはありましたけれども、今、ありませんでしたが、最後のところの指導・支援の方法で、どんなことができるか具体例を示してほしいというのは非常に有効だと思いまして、やりたいと思うけども具体的に何やったらいいのだという疑問が非常に多かったのではないかな、そういう感覚が現場ではあったのではないかと思いました。すみません、私の余計な感覚でしたけれども。
それでは、これから20分ほど時間をとりますので、アンケート結果に関連した御意見などあれば、あるいはこのように読めるのではないかというような御意見などあったら、御発言いただきたいと思います。御発言のある方は「手を挙げる」ボタンを押して、いつものようにお願いいたします。よろしくお願いします。
秋田先生からお手が挙がっております。お願いします。
【秋田委員】 ありがとうございます。意見ではなく、事実確認をまずしたいと思いまして、手を挙げさせていただきました。
500以上の委員会から御回答いただけたということは、とても貴重であると。ただしその中で、支援策ありが30であるというところの中で、それが、今、教育委員会ということでまとめられているんですけれども、都道府県のような広域のところに該当する教育委員会なのか、それとも市区町村レベルのところでそういう支援ありのところがあるのか、その辺り、今後、こういうことについて、どこがどのような形でやっていくのかということの参考としても、支援ありとお答えいただいた委員会の特徴などがもしお分かりであれば、教えていただきたいということです。
以上、質問です。
【岩永座長】 ありがとうございました。確かにそこは非常に重要なところですね。
川口さん。都道府県とか市とかの違いです。
【川口学校教育官】 事務局です。すみません、数字として30の内訳は今申し上げられないんですけれども、この内訳の中には、県もありまして、そして一般市町村もあります。それぞれ規模に応じてやっているというところです。
【秋田委員】 では、どちらが多いかというようなことはなく、広域自治体も、基礎自治体が担っている場合もあるということですね。
【川口学校教育官】 そういう理解で結構だと思います。
【秋田委員】 ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。私も一応、調査の専門家ということになっておりますが、その辺の基礎的なことはしっかり確認しておかなければいけなかったと思います。
それから、こういうような内容を特に自由記述で回答されることが多い場合には、回答した人の特性とか属性とか、あるいは才能に対する、あるいは才能教育に対する考え方というのが非常に大きな影響を与えると思いますので、その辺のところは、その県で一般的な考え方とは、あるいはその市で一般的な考え方とは思えないところがありますけれども、その基礎的なところは確認しておく必要があったと思います。ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
根津先生、お願いします。
【根津委員】 早稲田大学の根津です。先ほどの秋田先生からのお尋ねとも共通するんですけれども、回収率ですね。教育委員会と一口に申しましても、非常に規模の違いがありますので、それと併せて回収率。もう一つ、先ほどのお答えからしますと難しいかとは思うのですが、小中高、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校の、その別ですね。そこの中で支援策ありと答えたのはどこが一番多かったのかというのは素朴に疑問に思ったところです。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。何かありますか。
【川口学校教育官】 事務局です。まず、回収率についてですけれども、これは全ての教育委員会の方々を対象としておりまして、ですので、1,800から2,000ぐらいの教育委員会等ということになりますが、そのうちの504ということになります。任意の回答ですので、回収率という示し方があまりふさわしくないのかということで、そういう示し方にはしておりませんけれども、割合としてはそういったことになります。
支援の対象として、義務なのか高校なのか特別支援なのかということで、どういう属性の方を対象にかということですけれども、傾向が見いだせるほどまでの状況にはなくて、それぞれの状況があるという形になっております。
【岩永座長】 ありがとうございました。回収率は量的調査でそれを統計的に推定するような場合には非常に重要な部分ですけれども、任意でお答えいただいて、しかも自由記述が非常に多いということなので、これはむしろ、回収率が低かったということそれ自体が、皆さんが戸惑っているとか、あまり関心がないとか、逆に言えば、関心はあるけれども実態がない、何を才能教育として考えたらいいのか分からないという部分が多かったのかと思います。
学校種については、そのような質問紙の組立てになっていなかったというのは、これは後々問題だと思いますけれども、それぞれについて聞く必要も、あるいはあったのかとは思います。どうもありがとうございました。
続きまして、本田先生からお手が挙がっておりますが。
【本田委員】 ありがとうございます。信州大学の本田ですけれども、質問が1つとコメントが1つございます。
まず、質問ですけれども、支援策ありと回答した教育委員会に関してですけれども、今回、特異な才能がある部分に対する支援策と、それから、拝見しますと、特異な才能もありながらも、学習困難等の理由で学校に行きづらくなっているような方々に対する支援策と、両方載せていらっしゃるように思ったんですけれども、実際に純粋に、例えば学力がとても高い方とか特異な才能があるけれども、学校も取りあえず行けているような方と、それから特別支援教育のような場で行っている支援策との割合というのはどのぐらいだったかというのを教えていただきたいのが1つです。
それからもう1つはコメントですけれども、これは特に支援策なしの自治体などの意見を聞いていて思ったんですけれども、例を示してもらわないと分かりにくいというのもそうですけれども、ある程度制度なりなんなりで上から与えられないと、なかなかこう発想ができないというお考えの教育委員会が多いかと思うんです。
あともう1つは、こういった取組というのは、ある程度裾野を広げて行っている中で、いろいろな段階を踏んで階層をつくってやっていくのがいいのかと思うんですけれども、これは日頃特別支援教育なんかに関わっていて思うんですが、割と厳密にきっちり認定した生徒にだけ限って狭くやるという発想を持ちがちな教育委員会が多いのかと思うんです。そうではなくて、もっと幅広くこういう対象を広げて考えていくという発想が、ある程度は必要なのかという印象を持ちました。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。本田先生の最初の、対応性はあるけれども、その割合はどうか。純粋にと言ったらおかしいですけれども、才能を伸ばす教育のプログラムなのか、それとも特別支援教育の中などで、それに対する対応としてのプログラムなのかというのが割合として分かるかということですけれども、いかがですか。
【川口学校教育官】 事務局です。資料1の1ページ目に、本アンケートにおける、教育委員会等が行う支援策の定義がありますが、そこでは、児童生徒の得意な才能を伸ばすことや、特異な才能を有することに伴う困難に対応することを目的や内容としてと、才能を伸ばすことと、才能を有することに伴う困難に対応することを、それぞれ目的として掲げていまして、その両方が含まれる形になっております。調査の設計上、それらをどちらなのかと明らかにする形で取っていないので、回答としてどちらの傾向が多いというのは、すみません、答え難いところです。申し訳ありません。
【岩永座長】 ありがとうございました。いかがでしょうか。調査の設計のところの問題といえば問題ですけれども、御理解いただければ。
本田先生、いかがですか。よろしいですか。
【本田委員】 ありがとうございます。一つ一つの回答の中で、これはどちらかというと、学習困難や学校への適応困難を含まない方も含めていると思うものも幾つかあったものですから、聞いてみました。この取組というのは、特別支援教育系の取組と、そうでない、特異な才能をお持ちのお子さんに対する特殊な取組と、両方含めるべきだと思っているものですから、両方の裾野で考えていく必要があるのかと思いました。以上です。ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。どちらかというと、この有識者会議の最初の前提に、それを区別しないでということを考えて議論を始めたということがありますので、ある意味、最初の設定の仕方がこのような形に帰結しているのかと思いますけれども、きちんとした調査をするときには、教育委員会という、丸めたというか、大きな話ではなくて、個々の実践という形でみていかなければいけないのかとは思っております。ありがとうございました。
今村先生から手が挙がっているんですが。
【今村委員】 ありがとうございます。今村です。発言させていただきます。アンケートの手法などについてはほかの先生方にお任せするとして、あくまで感想として述べさせていただきます。
まず、2ページにあります、支援策があると答えた教育委員会において実施している支援策の事例のほぼ全てが、日常的なものではなくて、たまにやるものといいますか、あくまで、時にこういった機会もつくっているというものにとどまっているものばかりで、それが現在地なんだということを改めて、あると言ってもこういうものしかないんだということを、改めて理解したというか、感じました。
私は今、ギフテッドと呼ばれるお子さんを育てていらっしゃる大変たくさんのお母さんたちに、どんな生活状況なのかということを教えていただくために、毎日のようにお話を伺っているんですけれども、困っているのは、どちらかというと、才能を伸ばしてほしいということよりも、まずはケアの視点できちんと日常的に、無駄に学校の一律教育の中で自己肯定感を奪わないでほしいといいますか、そういった声が大変多くて、才能を伸ばすという観点も大事ですけれども、先ほど本田先生がおっしゃったとおり、日常の中で、全ての子供たちが、ちゃんとその子に合理的配慮をされた教育と出会っていくということは、本当に健全性を保つという意味でもとても重要だと思っているんですけれども、そういう意味でも、日常的なものがあるかないかというところが本題になっていかないと、支援があるとはとても言えない状況なんじゃないかと改めて思っています。
あと、5ページ目に書いてある、これは次の議論の論点整理の中で明記することなのかもしれないんですけれども、改めて、このテーマだけは自治体任せでは進まないということも明らかにしていかなきゃいけないというか、はっきりしていかなきゃいけないところだと思います。特に地方、中山間地域や、そういったところで、小規模自治体では該当する子供自体が少ないから予算化できるはずがないということも、現状の一般的な不登校の支援でも同じことが起きていますので、改めて、国としてどのように、どういうプレーヤーを巻き込みながら施策を打っていくのかというところがとても重要になってくるんだということも改めて確認いたしました。
私からは以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。大変的確な御意見かと思います。
これは特段の質問ということではないので、そういうコメントであったということで、すみません、あとお三方いらっしゃいます。中島先生、お願いできますか。
【中島委員】 ありがとうございます。中島です。よろしくお願いいたします。
大体皆さんが質問されたりしている内容とほとんどかぶるので短くですけれども、今、今村さんからも御指摘ありましたけれども、ポイントを突いた支援、あと、ギフテッドとよく言われる才能がある人たちに対して何かこういう取組をしましょうということはあるんですけれども、課題を抱えている人たち、先ほどその2つを分けるべきじゃないかということがありましたけれども、ここの中では議論として、かなり分けないということが、すなわち課題がある人たちのこともしっかり扱いますよと。その課題に対してどう向き合うかということを含んで議論が行われていたと思うんですけれども、恐らくアンケートの際に、特異な才能を持つという、次の児童生徒を含みますということは書かれているんですけれど、なかなか意図としてそういうところが伝わっていなかったのかもしれないというのが、回答を見ると感じた次第です。
あと、もしどこの教育委員会がどう答えたかという個別の情報を持っていらっしゃるとすると、それは公開できないところがあると思うんですけれども、できれば、より深く直接的に教育委員会さんとお話しいただいたりとかして、どういうことが困られているかとか、何かそういう追尾調査みたいなものを行って、この目的というか、これの結果を踏まえてどういうアクションを起こしていくべきかというところにまで、できればつなげるような話に持っていけたらいいのかと。今、どうしてもゼネラルなお話が多いので、うちは結構やっていますよみたいなのが、でもそれが30だけということなので、その割に、逆に一方で、国民全体に対する調査のほうが物すごい反響だったような印象を持っております。
長くなっていますけれども、先日、内閣府の教育イノベーション会議でも、こちらはCSTIですね、御報告させていただきました。あちらでは決して限られた対象ということじゃなくて幅広くということですけれども、学びが変わる中で、あちらの回答で参考になるようなことがたくさんあると。みんなが学びが変わっていくときに、なぜこれを学ぶのかとか、もうちょっと時間・空間の多様性とか、そういうことが大事だねということで反響がありました。
そうすると、温度感の差みたいなものを感じたので、その辺りがもう少し、せっかくかなり期待されているというか、いろいろな方が関心を持っていらっしゃる分野だと思いますので、深掘りして突っ込んでいけたらいいと思っている次第です。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。この年内に論点整理を出すという話が、これからこちらからさせていただく話ですけれども、こういうような調査を踏まえて、さらに個別の調査とか、あるいはもう少し要点を分けた調査なりインタビューなりというようなことをする必要は私もあるかと思っておりまして、今の御意見、参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
続きまして、福本先生、いかがでしょうか。
【福本委員】 ありがとうございます。福本です。私からも質問させていただきたいんですけれども、まず、支援プログラム、自由記述が多かったと思うんですけれども、具体的な支援策が講じられているという、その具体的な案が何か出ているものがあれば御共有いただきたいと思いましたのと、あと、予算の確保というところで、実施できている教育委員会さんがどれくらいの予算がかかったのか、実際に対象としてどういう子供たちが多かったのかといったところも、記述があれば、ぜひ教えていただきたいと思いました。あとは、研修の有無が関連しているかどうかというところも把握ができるといいのかと思いましたので、そこも記述ありましたら教えていただきたいと思いました。
これを伺う際に、先ほどステージを分ける必要があるかという話があったんですけれども、ステージ1で、自己肯定感を育んでいくという先ほど今村さんの話があった、その自己肯定感を育むために、場が開かれる、あるいは関わる先生方の需要感が高まるということが起こっているステージにあるのか、それともステージ2として、非日常的な場であっても学びを進めていくきっかけがある状態にあるのか、あるいはステージ3として、日常的な支援につなげるために、支援をやっていく地域の団体とつながって仕組み化されているのかという、その部分がきちんと分かれていくと、教育委員会さん自体がどの段階に今あって、何の支援が足りないのかというところが、もう少し明確化するんじゃないかと思いました。
もう1点は、誰に向けたものなのかというところは本当に広く開いていく必要あるのかと思っていまして、最初から限定するというよりは、誰が対象か、多分当事者の方も分かっていない部分がありますので、恐らく挙手制のものと、それから推薦制のものと両方併せる形で、限定したところにアプローチするのではなくて、もう全員に対していこう開いていくという形にできたほうが、きちんとニーズの実態把握もできるんじゃないかと感じました。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。調査の結果についての御質問も3点ほどありましたが、こちらだけお願いします。
【川口学校教育官】 事務局です。支援策の内容のより具体的なところをというところが1つ目かと思います。ここに概要を書き出しているとおりにはなりますけれども、大学の先生方ですとか、あとは指導主事が、支援に直接に関わりながらプログラムを実施していくというものがみられます。年に十数回程度行うといったことが行われているようです。そしてまた、その1回の時間は2時間程度とかいったような話もあります。その効果としまして、これまで本人が気づかなかった特性や特技について知ったり、新たに興味関心が生まれたりとかといったところで、子供の新たな学びに向かう、挑戦する姿につながっているといった意見も聞かれています。一例ですけれども、そういった内容がみられました。
あと、予算面についてですけれども、これは調査項目に入れておりませんで、なかなかどこまでの予算というのはとり方が非常に難しいのかというのがありまして、確かに重要なところなので、今、御指摘いただいたところでは、確かにしっかり把握すべきであったかと思うんですけれども、この調査上、調査項目にしておりませんでしたために、その記述はないのです。大変申し訳ありません。
あと1点は、ごめんなさい、どういう質問。
【福本委員】 研修の件です。
【川口学校教育官】 研修の有無ですけれども、研修につきましては、あまり記述が実はみられないところでして、つまり教育委員会の指導主事であるとか、あと学校の先生であるとかが念頭に置かれていると思いますが、そこに対して、才能のある子供たちというのはこういう特性があるといったようなことを教えるという研修自体は、記述がほとんどありませんでした。
【福本委員】 ありがとうございます。恐らく共有知化していくということが、実施できる自治体を増やすことなのかと思いまして、そのときに、具体的に予算がどれぐらい必要なのかと、あと、研修をやったときに広がっていくスピードが早いのかとか、あと、具体的な支援策が、内容の部分ですね、そこの部分がどういったことを入れていけばいいのかということが決まっていって、それが自治体全体として広がるだけじゃなくて、ほかの自治体にも波及していく必要があるのかと思いましたので、その辺りがまた分かってきましたら御共有いただけたらと思います。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。
あとお二方になりますが、よろしいでしょうか。市川先生、お願いします。
【市川委員】 市川です。質問は、支援策がありとなしの線引きですけれども、支援策というのは、教育委員会が主催して運営したり実施したりしているものがあるかという意味なのか、それだけじゃなくて、例えば地域とか近くの大学とか、どんなプログラムがあるかというようなものを教育委員会が集約して情報提供しているぐらいでも支援策と言えるのかどうか、これも広い意味では支援策だとは思うんですけれども、教育委員会が実施しているわけではないですよね。これは支援策がありになるのか、なしになるのか。それからもう一つのケースは、教育委員会がやっているわけではないけれども、学校にそういうことをやるように促して、実際に管轄している学校ではやっているところもある。これも教育委員会の運営・実施ではないんですよね。でも学校がやってくれている。こういうものは、教育委員会として支援策ありなのか、ないのかというあたりが、答える側としても迷うかと思ったんですけれども、この2点いかがでしょうか。
【岩永座長】 ありがとうございます。アンケートをかけるときに説明を一応つけておりまして、どういう内容かというので、教育委員会が直接に提供するもののほか、他の主体(市長部局、大学、民間事業者等を含む)が提供している学びの場の紹介等を含む、官が学校が窓口となって他の主体が提供している学びの場の紹介等も含むということで、非常に幅広な入り口にしてあるんです。先ほども言いましたように、これを読んで答える側がどう判断するかは多種多様なので、それ以上は追及できないんですけれども、一応幅広な窓口にはしているということです。よろしいでしょうか。
【市川委員】 学校がやっているかどうかというのはいかがですか。管轄下の学校がやっている。
【岩永座長】 それ以外のものも含むとアンケートには書いてありますので、学校がやっているものしか目配りしていないところと、ほかのところにも目配りしているところは、多少違うかと思います。その仕分けはできません。すみません。
【市川委員】 分かりました。
【岩永座長】 よろしいでしょうか。
【市川委員】 広く含めても、やっているところは1割以下という、そんな感じだという結果だと解釈してよろしいですよね。ありがとうございます。
【岩永座長】 そういうことなので。ありがとうございました。ただ、なしというところが、もちろん多かったんですけれども、なしというところも、こんなものやる必要はないということはありませんでしたので、戸惑っているというところが大方の意見ではないかと私は読みました。ありがとうございました。
それでは、松村先生、手が挙がっておりますが。
【松村委員】 すみません。このアンケートは、「特異な才能のある児童生徒について何かしていますか」みたいな聞き方をしたので、教育委員会も非常に戸惑われたと思います。だから、才能の識別をどうしたらいいのかとか、そういうようなのがないとできないじゃないかとか、答えようがないというのがあったと思うんですけれども、これを、もっと広げて、例えば「個別最適な学びを推進するために何かしていますか」みたいな聞き方をすると、これはもう学校内で日常レベルでやっているという、そういう回答がもっと出てきたかと思います。
子供たちの才能を生かすというときに、私は狭義と言っている一部の子供を才能の基準で識別して選抜するだけじゃなくて、通常学級をベースとして、みんなを対象にやっていくことができます。初めは才能というのは識別してからやらないで、そういう日常の通常学級でやっているような活動、それが広い拡充になるわけですけれども、そういう聞き方をすると、もっと出てきたかと思います。それもそういう才能を伸ばす場、働きかけの一つなので、何もごく一部の子に限ったものだけが才能を伸ばす教育じゃなくて、みんなの才能を伸ばす、それも言ってみれば才能教育に含まれますよという、そういう認識をしていただいたら、もっと広がっていったと思います。裾野としてはもっとたくさんやっておられると思いますので、もし今後可能ならば、そういういろいろなレベル、いろいろな種類の働きかけについて、どの学校種で何をやっておられるかみたいに、もっと綿密な調査をしたら、もっと広がりが出てくると、たくさん回答していただけるかと思います。感想です。
【岩永座長】 ありがとうございました。恐らく、個別最適な教育を心がけているかとか、どんなことをやっているかとか、そういう質問をすると、確かに今、松村先生がおっしゃったように、回答する都道府県あるいは市町村の教育委員会は多かったと思うんですけれども、個別最適なことをやっているかといったら、心がけてやっているかということを書いたら、うちはやっていないんですよというところはないんじゃないかと私は思うので、あえて今回のアンケートでは、特異な才能ということを書かせていただいたということです。
今おっしゃるように、より多くのところから具体的な方策ということを考えたら、もしあったらですけれども、この次の調査では、さらに細かい点について聞いておかなければいけないとは思っています。今回は最初ということで、このような聞き方をしたということです。御理解いただければと思います。ありがとうございました。
最後に短く、中島委員からもしありましたら、どうかお願いします。
【中島委員】 すみません、先ほどお話ししたときにあれですけれども、かつて送っていただいたアンケートのもともとのところを見直していたんですけれども、支援策の対象者と、支援策の利用に至るまでのプロセスというものも聞かれていると思うので、そのあたりで何か具体的なものが、今日のところに特に書かれていなかったので、もしあれば、ぜひ伺いたいと思いました。もともとは聞かれているかと思います。
【岩永座長】 ありがとうございました。何か書かれていたでしょうか。
【川口学校教育官】 支援策利用に至るまでのプロセスとしましては、例えばプログラムに参加したい生徒が各学校を通じて応募し、市教育委員会が無作為で抽選をするというやり方をしているところもあるようです。募集人数に満たない場合には、学校の先生から少し声をかけるといったこともあるようです。一例ですけれども、そういった例がみられました。
【中島委員】 ありがとうございました。対象者のところは特に書かれていなかった形ですか。広く全般から聞くとか、そういうような。
【岩永座長】 2ページ目のところを見ると、大体は希望者ということになっているんですね。何か抽出してどうこうというのではなくて、希望ベースという感じになっていると思う。もちろん、小学生の場合には、本人の希望よりも、むしろ保護者の希望ということが多いと思いますけれども。
【中島委員】 分かりました。ありがとうございます。
【岩永座長】 すみません、私の個人的な感想なども入れてしまったので、時間が押してしまいました。ありがとうございました。
それでは、このあたりで次の議題に進みたいと思います。「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」は、本年6月に設置されて、第1回会議を7月に開催しました。それ以来、議論を進めてまいりましたけれども、第1回から第3回の会議におきましては、才能教育に関する学術上の整理、あるいは現状の取組、諸外国の動向などに関するヒアリングを行いました。また、学校における個別最適な学びや、学校内外における探究的な活動といったものの現状についてのヒアリングも行いました。先回、第4回会議では、特異な才能のある児童生徒本人や保護者、その他の関係者を対象として実施したアンケート調査の結果を報告して、実際の教育現場における取組の姿を浮かび上がらせることを試みました。また、学校外の学びの場を提供している委員の取組についてのヒアリングをさせていただきました。
そして本日、第5回の会議では、教育委員会等が実施している、あるいは把握している支援策や課題についての報告が、調査を基に行われました。これまでの議論を踏まえて、これまでの議論を通じた共通理解に至ったことを、この段階で整理するとともに、今後、本会議が議論を深めていくべき論点を、論点整理という形で取りまとめておきたいと思います。論点整理につきましては、本日及び次回の会議で意見交換をした上で、年内をめどに取りまとめたいと考えております。もう、すぐに12月ですね。この間、年賀状を書いたと思っておりましたが、早いです。また、年明け以降、引き続き論点に沿って議論をいただきたいと考えております。
本日は、論点整理のたたき台として、資料の2番目、資料2をお示ししております。資料2について事務局から説明を行っていただいた後、意見交換できればと思います。
それでは、まずは事務局より説明をお願いします。
【石田教育課程企画室長】 事務局でございます。資料2に基づきまして御説明します。本資料は、座長からもお話ありましたように、第1回から第4回までの御議論を踏まえ、座長と御相談の上、論点整理のたたき台という形で作成したものでございます。今回・次回にわたりまして、集中的に御審議をいただきたいと考えてございます。
まず、今、画面に目次が映ってございますが、資料の全体構成は1ページ目の目次にお示ししております。「はじめに」ということで、これまでの議論の経緯をお示しし、5段構成でございます。1では、特定分野に特異な才能のある児童生徒をめぐる現状ということで、諸外国や我が国における状況を整理してございます。2では、第4回で御報告したアンケートの結果を軸にいたしまして、指導・支援に関する課題を整理してございます。3では、1、2を踏まえた検討の方向性ということを整理してございます。4では、この検討の方向性を前提とした上で、今後議論すべき論点として、対応策の検討に際しての論点、対応策を講じる上で必要な環境や体制を整備する際の論点を整理してお示ししております。5では、今後の予定ということをお示ししてございます。
それでは、論点整理の概略を御説明申し上げます。資料1ページから2ページ目にかけては、「はじめに」ということで、本有識者会議の設置の経緯、有識者会議での議論の経緯をお示ししております。
そして、次のページ、2ページ目でございますけれども、一番最後2行のところでございます。座長からもお話ございました、本論点整理の性格ということで、これまでの議論を通じて共通理解に至ったことを整理するとともに、今後、本会議が議論を深めていくべき論点を取りまとめるものという、こういう性格をお示ししてございます。
3ページ目でございます。特定分野に特異な才能のある児童生徒をめぐる現状というのを整理してございます。(1)では、特異な才能のある児童生徒の定義及び特性を整理してございます。
一つ目の丸でございますが、才能に関する定義につきましては、諸外国のおおむねの傾向としては、IQによる一律の基準のみではなく、大綱的な定義を置いていることが多いこと。その際は、才能を科学技術、芸術、スポーツなど、領域固有なものとして捉えている例がみられること。
三つ目の丸でございます。才能の全般的な特徴を「普通より優れた能力」、「創造性」、「課題への傾倒」の三つの要素にまとめ、これらの要素の相互作用として捉える考え方があること。
四つ目の丸。特異な才能のある児童生徒の認知や発達の特性、また、しばしばこれらの特性に伴う困難を抱えていることがあることも指摘されていること。
五つ目の丸でございます。さらに、「2Eの児童生徒」と言われる、特異な才能と学習困難を併せ有する児童生徒の存在も指摘されていることをお示ししてございます。
(2)では、才能教育をめぐる用語として、早修と拡充につきまして、第1回目の御発表を字句に整理してございます。
一つ目の丸でございます。才能教育は、既存の教育プログラムを通常よりも早く履修させる「早修」と、通常カリキュラムよりも幅広い内容の学習を行う「拡充」に大別されること。また、早修は、本来の学年よりも上位の学年・学校に早く在籍する「完全早修」と、本来の学年にとどまりながら上位の学年・学校の科目を履修する「部分早修」とに分けられるとした上で、次の二つの丸で、早修・拡充、それぞれのメリット・デメリットをお示ししてございます。
続けて、三つ目の丸でございます。「狭義の才能教育」と「広義の才能教育」に分類できることも、併せてお示ししてございます。
続いて、諸外国の状況、(3)ということで、第3回での文科省委託調査における御発表を軸に、お示ししてございます。
一つ目の丸では、委託研究では、「国家中心的」か「学習者中心的」かという軸と、「取り出し型」か「インクルーシブ型」かという軸を設定し、諸外国における取組の類型化が試みられたことを御紹介した上で、5ページから6ページにかけまして、米国、フィンランドの取組を中心に、諸外国の取組について整理してお示ししてございます。
(4)、6ページからは、我が国における状況としまして、文部科学省における支援や既存の制度を御紹介してございます。
また、7ページでございますけれども、7ページは、大学、民間事業者、地域の施設、NPO等における取組といたしまして、これまで福本委員、中島委員、市川委員から御発表いただいた取組を、9ページまでかけて、それぞれ事例としてお示ししているところでございます。
続いて、10ページからでございます。2では、第4回で御報告いたしましたアンケート調査の結果を軸にしながら、特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援に関する課題を整理してございます。
まず、(1)の丸1でございます。特異な才能に関する状況では、児童生徒の有する特異な才能、様々バラエティーございます。こちらの内容について御紹介してございます。
次に、丸2でございます。学習に関する状況ということをお示ししてございます。
このページの三つ目の丸では、アンケートの分析結果として、特異な才能のある児童生徒にとっては、教科によっては、学校の授業で学習する内容が既に知っていることばかりであったり、また、その活用の場面が与えられなかったりしたことから、自らの資質能力を伸ばすことができずに、必ずしも充実感のある学びの時間となっていない場合があると考えられること。
四つ目の丸では、特異な才能のある児童生徒の中には、様々な障害を併せ有する児童生徒がいる実態が報告されており、こうした学習上の困難への対応も課題の一つであると考えられることをお示ししてございます。
また、丸3では、学校生活に関する状況ということを整理してございます。
一つ目の丸、特異な才能のある児童生徒は、言語能力や思考力など知的な側面が年齢に比べて著しく発達しているため、同級生との会話や友人関係の構築に困難を抱える場合がある。また、教師に対し、授業の進め方や自分への関わり方をめぐって課題意識を抱く場合もあること。他方で、知的な側面の発達と異なり、精神的な側面では年齢相応の発達である場合もあり、自分の感情を抑えることができず、集団の中で、トラブルが起きたり孤立したりする場合があるなどがあることを示してございます。
これらを踏まえまして、次の12ページでございます。二つ目の丸でございますけれども、丸2、丸3の結果、特異な才能のある児童生徒の中には、不登校になったり、積極的に学校に通わない選択をしたりする場合があり、こうした子供たちは、特異な才能に応じた学習の機会が十分に得られていないこととなり、このような状況を解消していく必要があるとしてございます。
(2)では、特異な才能のある児童生徒を取り巻く状況についての課題について整理してございます。
丸1、教育委員会、学校、教師の状況につきまして、13ページに移っていただいて、一つ目の丸ですが、現在でも、特異な才能のある児童生徒への適切な支援を行っている教育委員会、学校、教師がいる一方で、こうした支援の取組が講じられるかどうかは、それぞれの教育委員会、学校の理解や体制に左右される側面があることに留意が必要であること。
二つ目の丸でございます。全国的に見た場合、特異な才能のある児童生徒に向かう教師や学校、教育委員会において、特異な才能のある児童生徒の特性や効果的な支援の方法などについて、まだ十分に知られていないと考えられること、その次の丸の2段落目でございます、現在講じられている効果的な支援の取組を全国的に広げていく観点からも、特異な才能のある児童生徒の特性等の理解を広めることは重要と捉えられるということをお示ししてございます。
次に、丸2ということで、学校外における学びの状況ということでございます。こちらも教育委員会、学校、教師ということと同様に、効果的な支援の取組がある一方でということで、14ページの一つ目の丸でございますけれども、現状では、特に地方において、そのような学習の場が近隣にないなど、必要とされているにもかかわらず、アクセスできないこと、学びの場があっても、それを選択する児童生徒や保護者まで情報が十分に届いていないとの指摘もあること、次の丸、こうした学校外の学びの場と教育委員会や学校との連携が不十分であるといった課題もお示ししてございます。
また、次の丸3では、こうした環境整備を行う上での合意形成の重要性について、お示ししてございます。
次のページをお願いします。その上での検討の方向性ということで、(1)では、基本的な方向性として、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実としております。
一つ目と二つ目の丸は、そこの前提となりました令和の答申などの記述を踏まえて整理してございます。
その上で、三つ目の丸でございます。こうした学びの在り方は、特異な才能のある児童生徒の学びを考えていく上でも当てはまるものであり、そこから3行下でございます、一人一人の子供に応じた教育の在り方をいかに実現していくのかということの延長線上に、特異な才能のある児童生徒への支援策を考えていくことを基本的なスタンスとすることとしてございます。
また、次の丸では、個別最適な学びというものが孤立した学びに陥るようなことがあってはならないこと、あるいは、その下、5行目でございますが、個別の学びのみに重きが置かれると、特異な才能のある児童生徒そのものが同級生等から異質な存在として捉えられかねない懸念も生じ、検討に当たっては、協働的な学びの視点も重視し、学校現場が分断されたり、特異な才能のある児童生徒が差別の対象となったりしないよう留意することが必要であるとしてございます。
その上で、上記(1)を踏まえた留意点を3点お示ししてございます。
丸1は、学校種の特性を踏まえるというところでございます。義務教育と高等学校段階との学校種の特性を踏まえるということ。この点につきましては、秋田委員、根津委員からも御指摘を頂戴したところでございます。16ページの3行目でございますけれども、特に義務教育段階においては、2行目、学校内の多様性と包摂性を高めていくことや、特異な才能のある子供が学校外の学びの場を活用する場合であっても、在籍校が、当該学校外の学びの場としっかり連携しながら子供の成長を見守っていくという視点が大切であること。
また、二つ目の丸、一方、高等学校段階の教育については、入学者選抜を通じて在籍関係が決まるため、学力でみた場合に学習集団がある程度の水準でまとまっている状況があること。また、学科別などの仕組みが設けられており、義務教育に比べて選択肢が比較的多いということ。
また、次の丸の下から2行目でございますが、教育課程の編成における学校の裁量の度合いが義務教育よりも大きい状況があると。検討にあたっては、こうした学校種の特性を踏まえていくことが重要であることをお示ししてございます。
2点目としまして、丸2、学校外の学びの場など、広く児童生徒の特性やこのようなに応じた対策を検討することを示してございます。
一つ目の丸でございます。個別最適な学びを進めるためには、学校外の学びの場を活用したほうがより効果的な場合がある。このため、検討に当たっては、学校や教室にとどまらず、学校外の学びの場も含めて、学びの支援策を幅広く検討していく必要があるとしてございます。
また、二つ目の丸でございます。特に学校外の学びの場の支援や、教育委員会や学校との連携を検討する際には、予算や人員といった実現のためのリソースの検討が不可欠であること。
また、三つ目の丸でございます。児童生徒の困難に着目した上で、それを解消するためにはどのような手立てが考えられるのか、検討を進めることとお示ししてございます。
3点目は、教育課程の共通性との関係に留意することということでございますけれども、二つ目の丸の下から2行目、学習指導要領に規定された内容は、教育課程を編成するに当たり、いずれの学校においても取り扱うこととされていること。
また、三つ目の丸の下から2行目、学習指導要領に共通的に指導すべきとされている内容をどのように確保するかについて、教育の機会均等の観点からも十分留意して検討することが必要であるということをお示ししてございます。
その上で、18ページ、次のページでございます。今後議論すべき論点ということを整理してございます。
議論の進め方につきまして、三つ目の丸でお示ししてございます。丸1、特異な才能を有する児童生徒が学習活動に困難が生じている場合と、丸2、特異な才能のある児童生徒が学校生活に困難を感じている場合とに分けた上で、それぞれについて、教室あるいは学校内で困難を解消する対応案と、教室や学校にとどまらない形で困難を解消する対応案について、議論を進めること。その際、それぞれの対応案が組み合わさることで効果的になる場合はもちろん、逆に想定外の影響が出る場合がないかといった点を検討すること。その上で実現可能な方策の提案となるよう、丸1及び丸2の対応を可能とするために必要な環境や体制整備と、そのリソースの確保について議論すること。また、その際、遠隔・オンライン教育を含め、GIGAスクール構想によって整備されたICT環境の活用方策も検討するということをお示ししてございます。
続きまして、具体的な論点ということでございますが、まず、丸1といたしまして、学習活動に困難が生じている場合の対応策としては、一つは教室・学校内での対応策として、例えば、ア、授業における教材や指導法の工夫、イ、個に応じた指導の在り方、そしてまた、教室以外で学習できる場を確保する方法にはどのようなものがあるか。
また、19ページに移りまして、学校外での対応策ということで、例えば学校外の学びの場を提供する団体等を拡大し、必要を保障する観点から、学習面からみた支援策、特に義務教育段階においては、社会性の育成を含む包括的な教育の提供という学校の役割も踏まえつつ、学校や教育委員会との連携をどのように考えていくか、高等学校段階における既存制度をどのように活用していくか、また、既存制度の活用策として、既存施策をどのように活用するか、障害を併せ有する場合の対応策にはどのようなものがあるかという論点をお示ししてございます。
また、丸2、特異な才能を有する児童生徒が学校生活に困難を感じている場合の対応策といたしましては、教室・学校内での対応策として、例えば学級経営・生徒指導・キャリア教育等に関する方策、適切なサポートにより困難を解消できる方法、学校において、教室以外で安心して生活できる場を確保する方法にはどのようなものがあるか、また、学校外での対応策として、例えば教育支援センター等の学校外の学びの場を提供する団体等における集団での生活に向けた支援策をどう考えるか、障害を併せ有する場合の対応にはどのようなものがあるかを論点としてお示ししております。
次のページに移りまして、丸3で、丸1及び丸2を可能とするために必要な環境や体制ということでは、才能や特性の見いだしといたしまして、各教育現場において、児童生徒の特異な才能や認知の特性、学習の特性等を見いだし、適切な指導・支援を講じられるようにするために、どのような方策があるか。教育委員会・学校関係者の理解啓発といたしまして、教育委員会・学校関係者の理解を促進するために、どのような方策があるか。また、学校の体制強化としまして、特異な才能を有する児童生徒に対する指導・支援を行うに当たって、学校や教育委員会に対してどのような支援や体制整備が必要か。学校外の学びの場の促進方策といたしまして、地域ごとに学校外の学習を支援するリソースが偏在しているということを前提にしながら、学校外の学びを活用しやすくするために、どのような方策があるか。社会に対する理解啓発として、理解を醸成していくために、どのような方策があるかといった論点を整理してございます。
また、今村委員からも、自治体任せではというお話がございましたが、課題の改善に向けたとるべき対応を着実に実行できるように、どの主体、国・教育委員会・学校等がどのような役割をそれぞれ担うべきかを併せて検討する必要があるとしてございます。
最後でございます。今後の予定ということでございますけれども、二つ目の丸にございますように、年明け以降に論点整理後の論点に沿って議論をお願いしまして、令和4年度中に有識者会議としてのまとめを行う予定であるとしてございます。
また、最後の丸、下から2行辺りでございますが、本有識者会議では、明確な課題について、具体的なかつ現実的な議論を進めることに最大限留意して取り組むこととということで、最後、結んでございます。
以上、たたき台の御説明でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました論点整理のたたき台に関する意見交換に移りたいと思います。
本日の会議の場では、全体の章立てについての御意見や各章の内容について、例えばこういう内容も入れたほうがいいのではないかとか、こういう方針で書いたほうがよいのではないか、これは削ったほうがいいのではないか、などの御意見をいただければと考えております。特に3の検討の方向性や、4の今後議論すべき論点について、特に中心的に御意見を伺えればと思います。
なお細かい文言の修正についての御意見もあるかと思いますけれども、それについての御発言を妨げるものではありませんけれども、時間に限りもありますので、そちらはメール等で御指摘いただくということにしまして、ここでは大きな方向性に関わる意見を優先して出していただいたほうが、より生産的かと思います。
それでは、これから会議の終了まで意見交換を行いたいと思いますので、御発言のある方は「手を挙げる」ボタンを押してください。真っ先に上がりましたのが本田先生。よろしくお願いします。
【本田委員】 信州大学の本田です。実はこの2回ほど会議を欠席していたので、私が言いたかったことを十分言えていないと思っていたんですが、ただ、この論点の整理はとてもよくまとまっていて、バランスが取れたものだとは思いました。
私は1点だけ、どうしてもこれは言っておきたかったのが、基本的には現状についての問題認識は私も共通しているところですけれども、どうしてもこれは、多様性と包摂性を尊重する義務教育の中で、尊重するという意見が入っていたのはとてもよかったと思うんですけど、そのために何をやればいいかということと、逆に、どうしてもこういう会議で何かを提言すると、今までやっていることに加えるという側面は増えるんですけども、何か削らなきゃいけないものもあるんじゃないかと思うんです。
私が日頃から認識しているのは、義務教育の課程における通常の学級で行われているカリキュラムが、あまりにも負担が多いんじゃないかということを常日頃考えておりまして、これは生徒さんにとっても負担感が多いですけれども、学校の先生たちも、やらなければいけないことが多過ぎて、日常の業務をこなすのに精いっぱいの先生が多いように思っています。
そういう意味では、多様性と包摂性を保障するために何をやるべきかというと、集団で、みんなで一斉にやらなければいけない活動がここまで必要なのかということについて検討すべきだと思うんです。その一つが例えば、今回この会議で議論すべきことではないかもしれませんけれども、学習指導要領で盛られていること自体が、本当に全ての子供にとって必要最低限やらなければいけないことなのかという検討を、文部科学省とすればすべきだと思っていて。全体として、全ての子供が共通してやらないことが多過ぎるがために、多様性と包摂性を保障する隙間が減ってしまっているんじゃないかという印象を持っています。
なので、そういった意味では学習指導要領のカリキュラムもそうですし、それから例えば行事なんかも含めて、集団で一斉にやらなければいけない学校の活動がどこまで必要なのかという議論をする場を、これとは別かもしれませんけど、設けてもらいたいという提言をしてもいいのではないかと思っています。
それからもう一つは、インクルージョンということを考えたときに、鍵になる概念が、合理的配慮以外にユニバーサルデザインという考え方があると思うんですが、例えば発達障害の子供さんたちの多くは、視覚的な情報が非常に得意な方が多いですよね。だけど、今の学校教育というのは音声言語による教示が多いので、それで理解が難しい方が多いんですけれども、もっとそういう発達障害の方々にも分かりやすいような視覚的な情報をふんだんに用いた教示だとか活動の案内というのが標準になれば、もうちょっとなじみやすくなる子供さんたちが増えてくるように思うんですね。
なので、そういった意味で、一般の学級における、よりユニバーサルデザイン化された教育環境をどうやってつくっていくのかということが非常に重要なテーマになってくると思いますし、その際に発達障害の子供さんに対する知見を、より通常の教育の中にも盛り込んでいくという発想も必要ではないかと思っています。その辺りを何らかの形で付け加えていただけるとありがたいと思っています。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。テークノートさせていただきました。
秋田先生、続きましてよろしくお願いします。
【秋田委員】 ありがとうございます。学習院大学の秋田です。3点、お伝えをしたいと思います。
実は先ほどのアンケートの中にあった声で、特定の児童生徒に対して支援を行うことが不公平感につながるのではないかというような意見がありまして、本報告書の17ページに書いてある、例えば教育の機会均等ということが、全員に同じ時間に同じものを与えているのが機会均等なんだというような発想がいまだ根強く残っているということに対して、そうではなくて、よくイクオリティーとイクイティーという、今重要なのは、いろんな差があるときに、公正にどの子も学習が、質の高い学習が保障されるというイクイティーとしての、公正に教育が与えられるということが大事なのでであって、全員に同じ時間、同じ指導法を与えているということが機会均等というものではないという考え方を明確にしていくということが、これは、この特異な才能のお子さんだけではないと思うんですけれども、経済の格差や様々なことの中で、そこのところについて、もう少し書き込む必要が、委員会の全体のお考えがあると思うんですけれども、必要なのではないかということが1点目になります。
それが多分、先ほどの教育委員会のアンケートに出ているような考え方というのは、まだまだ根強くいろいろなところから出てくる御意見だと思うので、その辺りの立ち位置をより明確に、現状ではなく検討の方向性なり合意形成の重要性というところで、もう少し書き込めないのかということが1点目の理念的なところです。
それから2点目ですけれども、今回、児童生徒を取り巻く状況という中に、教育委員会、学校、教師と学校外というのは出ているんですけれども、保護者という御家庭のことについて立っていないんですけれども、実際には、今回のアンケートでも御回答いただいたように、保護者の方が、かなりそこにおいて困ったり、いろんなネットワークを、福本委員のお話の中にもあったと思いますが、つくられていると思います。
その意味で、家庭や保護者との連携や、そこへの情報の提供というものが、極めてこうした状況の中では重要になってくるのではないかと思いますが、その割に、この報告書には、保護者や家庭も困っているというか、そういう部分が明確には出ていないように思いますので、今後むしろ学校が御家庭と連携を取りながら、こうした子供たちに最適な学びの状況を一緒に考えていく、それからそれを周知して、機会を設けていくことの必要性ということが、もう少し書かれる必要があるのではないかということが2点目です。
それから3点目は、今村委員がこれまでも話されてきたところであり、ここの中でもGIGAスクール等で今後検討するべき、地域ごとに偏在しているので、ということが18ページ辺りに書かれていますけれども、先ほどの質問でも、広域の委員会なのか、基礎自治体なのかとお尋ねしたんですけれども、これからは国とか都道府県の広域であったり、あるいは団体で、全国的にオンラインのネットワークで支援ができるような団体や、それから民間がより柔軟に、こうした子供たちのための教育を支援していくような仕組みをつくっていくというようなところが、これまでの教育委員会単位の発想を少し広げたりしていくことが、こうしたお子さんへの柔軟な対応として重要なのではないかと考えるので、この辺りをもう少し何か書き込めないかと考えたというところであります。
以上3点、意見を申し上げました。
【岩永座長】 ありがとうございました。大変貴重な御意見だと思います。テイクノートさせていただきました。ありがとうございました。
それでは続きまして、藤田先生からお手が挙がっております。
【藤田委員】 ありがとうございます。時間もございますので、まずは2点申し上げたいと思います。もし時間があれば、また後で手を挙げることがあるかもしれません。お許しください。
まず1点でございますけれども、先ほど秋田先生が、イクオリティーとイクイティーのお話をなさいました。私は物すごく賛成をしておりまして、全く賛同する立場ですけれども、そのイクイティーの立場に立ったときに、今回18ページ以降、今後議論すべき論点ということで4象限おまとめいただいたんですが、特異な才能を有する児童生徒が学習活動に困難を生じている、あるいは学校生活に困難を生じている、この捉え方が非常に重要かと思うんです。
才能が伸ばし切れないことによって学校に行くのがつらい、あるいは、その2Eの子供たちなんかも特にそうですけれども、何らかの困難が伴っているのだと、その困難を解消する必要があるのだ、そういうふうな困難が放置されているがゆえに、不登校になったり積極的に学校に通わない選択をしたりする、そういう子供たちが現にいるのだという、そういうふうな発想が非常に重要だと思ったことが1点でございます。
もしこの点がなければ、イクイティー、要するに経済的な困難であったりとか、あるいは人種民族的な課題であったりとか、そういう目に見える課題を解決するほうが先決ではないかという意見に、今回の議論がかき消されてしまうのはもったいないと。才能があるがゆえに、特異な才能があるがゆえに、困難を生じている状況というのをまずは解消することである。それが才能伸ばすことと表裏一体であるということが重要だと思ったことが1点でございます。
2点目ですけれども、これは15ページに明確に書かれていることですが、学校種の特性を踏まえることというのは極めて重要だと、私は重ねて申し上げたいと思いました。特に義務教育段階では、多様性、包摂性、両方とも目指していかなくてはなりませんし、社会参画ということを考えた場合にも、多様な子供たちと共に生き、共に学ぶ環境というのは、常に重要だと思います。
また、今回のたたき台にもございましたし、第1回で岩永先生から御指摘がありましたけれども、そのアーリーライプの子供たちを、もう完全早修してしまう、例えば飛び級させてしまった場合、早く放出した才能が十分に継続しなかった場合、彼ら彼女たちが傷を持ってしまう、自分の才能が早修扱いをされたことによって分断されてしまう、そういうこともあるのではないか。そうしたときに希望の光となってくるのが、GIGAスクール構想に代表されるような、ICTの活用だろうと思うんです。
例えば算数・数学において極めて特異な才能を発揮できる子供たちは、学校での学習を、例えば第1画面に置いておきながら、サブ画面では自分に即した学習ができるような、そういったアプリケーションは十分考えられますし、そういったものを使いながら、授業の合間合間の中で、先生が才能のある子供たちに指導者としてのチームティーチングに加わってもらえるような、そういうふうな回路も十分できるかと思いますので、インクルーシブな取組の中で、いかに義務教育段階の中でやっていくのか。そういったときに、そのICTと同時に、大学や民間事業者、地域の施設、NPOなどとの取組との連携、そういったものが重要になってくるかと思いました。
ですので、そういった意味では、私が2番目に申し上げたかったのが、学校種の特殊性、特に義務教育段階における社会参画であるとか、自立であるとか、そういった概念の重要性というのを改めて感じたということを申し上げたいと思いました。以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。貴重な御意見だと思います。
続きまして、手が挙がっておりますが、大島先生、いかがでしょうか。
【大島委員】 東京大学の大島です。このたび貴重な形で取りまとめていただきまして、ありがとうございます。また、理数系分野に特化したということで、「グローバルサイエンスキャンパス」であったり、「ジュニアドクター育成塾」など、いろいろ大学を含めた取組を挙げていただきまして、ありがとうございます。そこに含めて、3点ほど申し上げたいと思っております。
「ジュニアドクター」であったりとか「グローバルサイエンスキャンパス」、あと「科学の甲子園」なども私は携わっていて、中高生に対して、特に理数系に特異な才能というか、非常に優秀な児童が集まるという、そういう方々に大学の立場でいろいろと接するということがございました。
すごい特異な才能を持っていて、今まで自分の居場所がなかったということで、こういうプログラムを通して、非常に自由に、そして伸び伸びとやっているという生徒さんも中にはいらっしゃいます。一方で、どちらかというと、こういうプログラムというのは、本当に学校での優秀な子がさらに優秀な形で、どちらかというと今は入試、AO入試とかそういうことを念頭に置いて入ってくるということもあります。なので、そういう実態もあるということの認識もしていただけるとありがたいかと思っています。
後者の子は、どちらかというと、今はAO入試であったりとか、外国の入試、アメリカの大学とか、そういうところも含めてグローバルに考えているんです。なので、こういうプログラムがグローバル人材の育成ということに関係して、ある一定の貢献をするという見方もあるかとは思っておりますけれども、そういうこともあるということを念頭に置いていただけるといいかと思っています。
その上で3つですけれども、1点目は、アンケートにもありましたとおり、あと秋田先生も御指摘いただきましたけれども、特異な才能を持つ生徒の見いだし方と、そういう生徒さんを社会としてどうやって育成していくかというコンセンサスを、学校現場の先生方、あと地域も含めて、ある程度そういう社会的な理解のコンセンサスをどうやって取っていくかということは、非常に大事かと思っています。数少ない優秀な理数系の分野の生徒さんを見ていても、それは感じております。
あと2点目は、15ページからの検討方向にも書いてあります、1点目の「学校種の特性を踏まえること」ということで、これは非常に大事であって、学習指導要領を踏まえて、きちんとステップ・バイ・ステップで、それぞれの教育課程をやっていくということは重要だと思っています。一方で、そういう特異な才能の生徒さんは、小学校、中学校、高校で、シームレスにある程度、育成していくということも大事かと思っています。なので、そこがなかなかシームレスにいくということが、制度上少し難しいのかと思っているので、そういうことを、大学も含めてだと思いますけれども、そういうことも少し今後検討していただけるとありがたいかと思っています。
あと、丸2として多様な場ということがあって、今、外部も含めて大学そして地域、いろいろな方々がこういう特異な才能を持った児童生徒に関わってくるということは大事だと思っています。例えば大学の場合には、そういう特異な才能を持った人に対して、大学としてのさらなる教育という専門的な立場の教育はできるんですけれども、一方で、どうしても適応障害的な児童の方もいらっしゃると。そうなった場合に、外部の連携をすることによって、さらにその人を大学でも何らかの形でうまくできるのかと思う児童の方も中にはいらっしゃいます。
なので、それをサポートするネットワークですね。今日いろいろな、あとこの部会を通して、いろいろな症例も御紹介いただきましたので、ぜひそういうのを、ネットワークを構築していただくということと、あとはそういうことをコーディネートしたりとか、あとサポートする人材、そういうことの養成も今後さらに必要かと思っていますので、そういうこともぜひ御検討いただけるとありがたく思います。
長くなりました。御検討のほどよろしくお願いいたします。
【岩永座長】 ありがとうございました。盛り込む内容として、こういったものもあるのではないか。大変貴重な御意見だと思います。ありがとうございました。
続きまして、根津先生からお手が挙がっております。よろしくお願いします。
【根津委員】 早稲田大学の根津です。うまくまとまるかどうか分からないですけども、お話ししてみたいと思うのですが、1つは、公立学校の場合には、特に義務教育には、自分も含めていろんな人がいるというところが前提になっているかと思いますので、特に学習をするということと、学校で生活をするというところが一体になっているというところも特徴だと思います。
そうなったときに、才能のあるお子さんたちが学習活動や学校の生活を困難に、そういうところに焦点を当てながら、教室の中だけでこれは解決できることではないと思いますので、学校内外での対応策というものを考えていく必要があるだろうと、この方向性には基本的には賛成だと思っています。
ただ、前回の調査と今回の調査の結果、教育委員会さんのものを見ますと、どうも学校や先生方、あるいは保護者での困り感といいますか、こういうところが課題で大変だったというようなところが、あまり教育委員会としては十分に把握できていないのかと思うんです。これは教育委員会の方々を非難する意図は毛頭なくて、そこをどういうふうに組織的に把握していけばいいのかというリソースの問題でもあるわけですけれども、まだまだこの量的に把握をするというよりは、個々のケースに対応している、偶発性といいますか、たまたまそうなってしまうというところが多いと思いますので、なかなか系統的には見いだしにくいところがあるのかと思うんです。
そうなってきたときに、これを実際に制度としてどういうふうに具現化していくかということになった場合には、それ相応のうまくいっているケースを抽出するのもそうですし、これからどういうふうにやっていけばいいかというところで、何らかの研究を実践的に行っていく必要があるだろうと。まだまだ事例を積み重ねていく段階かと思いました。
そういうものをまた検証していく中で、全国的に展開可能な制度というものがどういうものになるのかというところも検討できる、そのための材料を得られるのではないかと考える次第です。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。今御意見をいただいた先生方、皆さんに共通することでもあるんですけれども、この有識者会議は、何をすべきかということを、また一番最初の問題に、議論に振り返ってしまうわけですけれども、こういうテーマで有識者会議が立ち上げられて議論するということの目的は、例えば社会から何か画期的な解決策を出してくれるのではないかとか、方向性を出してくれるのではないかというような期待も一部にあったように思いますけれども、有識者会議というものの存在が、機能としてそういうものを出すというよりは、問題点をはっきりさせて、どういう方向でこれを検討していくべきか、どういう方向でこれを議論していくべきかということを見極めると。
特にこういうようなテーマに関しては、日常的に皆さん、一般的に理解が共通しているわけではないので。そういうことがまず第一に必要だったかと思いまして。その限りにおいてはこの報告書の段階では、かなりの程度それを明確にできているのではないかと私個人は思っております。
したがって、どういう形で社会から要請されるか分かりませんが、解決策が何も示されていないじゃないかというようなものに関しては、残念ながら私としてもそういう趣旨で議論を進めてきたわけではないということを言わざるを得ないというのがあります。
ただ、全く解決策のかけらもないような報告では、方向性ぐらいは示しておく必要があるだろうということを個人的には考えておりまして、そのようなものを読み取っていただくようなまとめが必要かと思っています。
私が話している間に松村先生からも。
【松村委員】 今村先生、どうぞお先に。
【今村委員】 私もうまくお話しできるか分からないので、考えながら松村先生の次かと思っていたんですけど。分かりました。発言させていただきます。
幾つかこのまとめの中に書いていない観点で、一つ今後気をつけていかなければいけないと思っている点ですけれども、ギフテッドと呼ばれているような状況の子供をお育てになっているとあるお母さんから、一つ心配なことがあるんだということでお話をお聞きしたことがありました。それは、この審議が進んでいく中で、何らか政策が具体的になっていって、その才能教育、才能を引き延ばす教育ということを形にされていく中で、この取りまとめの中ではどちらかというとケアの視点できちんとやっていくべきというところが強調されているので、そういったものにならない可能性もあるんですけれども、そのお母さんがおっしゃっていたことは、今、民間のギフテッド教育のプログラムに参加しているお子さんたちを見ていて、すごく子供たちに対して何か将来に対する社会の期待を早期に背負わせているように見えるときがあると。
子供はいつ、どう花開くかは分からない中で、あなたはもうこういう立場だということが確かにWISCの結果とかで見えたとしても、そのミッションを社会から変に背負わせてしまうことが、その子の結果的に負担になってしまうんじゃないか。またその子に背負わせている、合理的配慮の上でのプログラムだったのにもかかわらず、この才能を伸ばすんだということに大人が躍起になってしまうことで、結果的に早い段階で子供を苦しめてしまうことになった子も周りにいたと。
だから、そういうことにならないようなメッセージを伝えていかなければいけないと。親としても教育機関としても、これは平時の子供たちと関わる私の立場からも、たまに陥ってしまいがちですけど、教育行為というのは、そこに対して親や大人がエスカレートをさせてしまうことがあると、期待をエスカレートさせてしまうことが時にあると思うんですよね。これはどんな子供たちに対してもそうですけれども。
特に才能が高い、能力が高い子供たちは、できてしまったりするから、もっともっとという感じで、気づいたら教育虐待に陥っていたみたいなことにならないだろうかという危機感やリスクも理解した上で、自覚的である上で、何らかやっていく、検討していくべきだということを。今のままでいいとは全く思ってないんですけども、そういったリスクがあるということにきちんと自覚的である必要があると思っているということを一つ述べさせていただきました。
また、別の点ですけれども、これは16ページに2行だけ、学校への学びの場の支援や何とかかんとかと書いてあって、とにかくリソースの検討が不可欠である、予算や人員といったリソースの検討が不可欠であると2行だけ書いてあるんですけれども、もうこれは本当に最終的にはもう予算と人員の問題だと思います。それは民間活用も、学校内での人の配置や、あと先生方に対する理解の促進のための研修費を含めて、とにかく学校の無理解、先生の言葉がけで傷ついたという声は一番多い声ですので、そういったことも含めて、そこに尽きると思うので、とにかく文部科学省さんには頑張って予算確保を、もう早期に取っていただいて、検討がもちろん終わるのは、令和4年中に有識者会議としてのまとめを、と書いてあるんですけれども、もう本当に来年からでも何らか実証的な取組で、GIGAスクールの一環でできることはたくさんあるので、実証的な取組をとにかく始めていくことに予算を頑張って取りに行っていただくということも併せてお願いしたいと思っております。まとまらなかったんですけれども、以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。リソースの問題は大変強力な御意見だと思います。いろいろ大人の事情もあるそうですけれども、私たちはそういうことにあまり拘泥しないで考えをするもの、率直に示すべきだと最初の段階から思っています。ありがとうございました。
松村先生、お待たせしました。
【松村委員】 今村先生がおっしゃったのは大事なことで、この子はこういう才能があるんだから、何かこれを伸ばさなきゃいかんと、親なんかは脅迫感みたいになって思ってしまうといけません。子供が自分のそういういいところを伸ばす場が学校外でもいろいろあって、そこへ行けたらいいわけですけども、親の、家庭の、そういうのにはお金がかかるとか、いろんな事情もあるでしょうし。だから、学校内でできることはできるだけ進めないといけません。
そうすると、それは別に、さっきも言いましたけれども、この子はこういう才能があるからこれを伸ばしましょうというふうにするんじゃなくて、まず教室ベースで、みんな子供がやりたいことをやって、やりたいやり方でやる。そういうふうにしていくと、その子それぞれの才能が伸びていくので、別に最初から才能は見つけなくてもいいのです。そうすると、今後学校内でどういう活動を進めていくかというときに、まず才能の見つけ方、識別方法はこうしましょうということを決めてからだと、かなり時間がかかりますけれども、とにかく教室で、とにかくスタートしましょうということにすると、それだけ早くスタートができる。
前置きになりましたが、7ページ辺りのところの記述が漏れている感じがします。6ページから、「我が国における状況」ということで、丸1、文科省とかの支援について述べられていますけれども、その後で、学校内でどういう取組ができるかというので、取組例、これは第2回で奈須先生が個性化教育の事例をお話しくださったわけですが、それの記述がされていませんね。その個性化教育の指導の個別化、学習の個性化というのは、中教審答申でも言われている個別最適な学び、そういう観点から整理されているわけで、それを具体的な実践としたらどうなるかという例が要るので、丸2の大学、民間とかの取組で、スペースを割いて紹介されていますけれども、それと同じぐらいのような形で、少なくともそれぐらいは紹介していただきたいという気持ちがあります。
教育委員会のアンケートでも、学校でうまくいく具体例があればやってみたいと思われるところは多いはずなので、そういう一つの具体例としても、奈須先生が御発表で示された天童中部小学校というのが、今そういう例となるような活動をされています。
余計な話ですけれども、あしたとあさって、NHKのハートネットTVというのがありまして、そこで例が紹介されていますけれど、そういうのを映像でもぱっと見ていただくと、なるほどそうだと、こういうのをやってみたいと思えるところがあるので、何かそういう例を今後も出していただきたいと思います。
とにかく一ついい例を出されたので、それがここにないというのはおかしい。それでぜひ丸1の次で、学校内での取組例というので入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【岩永座長】 ありがとうございました。それは、中に入れることは特に問題はないです。分かりました。ありがとうございました。検討可能ということで。
【松村委員】 これが今入っていなかったのは何か事情があるんでしょうか。
【石田教育課程企画室長】 ありません。
【岩永座長】 特にないです。ないということです。あと、こちらの取捨選択の誤りということもあるのかもしれません。
【松村委員】 ぜひ入れてください。お願いします。
【岩永座長】 ありがとうございました。
続きまして、中島委員から手が挙がっておりますが、いかがでしょう。
【中島委員】 ありがとうございます。改めまして株式会社steAm、中島です。
皆様がおっしゃっているとおりだと私も思っていまして、定義の部分ですね。よい言葉が思いつかないんですけど、以下才能教育ということで、狭義と広義の才能教育ということになっているんですけど、才能という言葉の響きが、どうしてもまず才能を規定して、この子にはこういう才能があるからここを伸ばそうというやり方に見えてしまうと、先ほど今村さんからもあったように、松村先生からも今ありましたけれども、ニュアンスが異なって取られてしまう。ただでさえ特異な才能とか、ギフテッドとか、そういう才能ということで、なかなか難しいと。
今出てきた、国民に対するアンケートから出てきた課題を見ていると、多くの場合、多様性の問題というものがかなりあるような気がしています。なので、実はこれは、例えば文科省さんと、それこそJSTさんとの役割分担としても、今まで例えばSSHとか、科学オリンピックとか、基本的にはJSTさんで、逆にJSTさんの場合は、全体に対するものは行わなくて、才能があるというところに対して予算があると。比較的、予算執行も行われやすい印象があるんですけど。
例えばSSHは私は、よりそこでの成功事例を今度、文科省さんに引き戻すような形で、役割分担があるということはすばらしいと思うんですけれども、何かより今本当に個別最適な、ということで、広く一般的に、普通とは何ぞやみたいなところで、いろんな学校に予算配分がされるという意味では、そこが、区分けが今され過ぎてしまっていて、うまく行ったり来たりというものがなかなかないのがもったいないような気もしております。せっかくある程度の成功事例みたいなものが出てきている中で、なので、そこの定義みたいなところが、もしかしたら才能教育という言葉の選び方じゃないほうがいいのかということも思ったりしていました。
あと、もう一つというか何個かあるんですけれども、研修について、先ほど福本さんからもありましたけれども、私もこれは研修が物すごく大事なような気がしています。もちろん研修内容が大事ですけれども、今、研修という言葉が入っていませんと。感覚過敏であるとか、多くの先生方とかが扱いきれない、よく何事もそうですけど、何が課題かとかが分かると、病気という言葉は適切じゃないと思うんですけど、でも何かがうまくいかないときに、何かその症例が、病気名が分かったりするとすごく楽になるということがあると思うんですけれど。
今回の場合、そういう言葉の使い方、病気とかいう言葉も多分すごく難しいところだと思いますし、発達障害なんかでもいまだに、それを診断されると非常に心理的な圧迫を受けるみたいな親御さんとか、周りから隠さなくてはいけないというようなこともかなりあると思うんですけども、実はもっと、かなりのパーセンテージでたくさんの方がそういうものを抱えていらっしゃるとか。その上で、むしろそういうことを知ったほうが、答えがあるわけではないけど、例えばこういう傾向があったり、こういうところで苦しむお子さんが多かったり、保護者の方とのあつれきだったり、学校とのあつれきだったりするところでも、知っておいたほうがいいことがあると。
思っている以上に子供たちが、こっち側が理解してないところで苦しんでいたりすると。そこで周りが分からないから何かが起こってしまったりとか、何かあつれきになるというようなことがあるのかと思うので、そういう多様性があるということを、より知らしめる。そういう場合にはこういう対応がよいのではないかとか、こういうことをしてしまうのはよくないのではないかとか、答えを一時的に押し付けるというよりは、いろんな事例を基に、何かそういうことを伝えるような研修がないと、ますますその子供たちをまさに傷つけてしまうような発言を、悪気なく、よかれと思って、無意識のうちにしてしまうということが生じかねないのではないかと思っています。
なので、これをeラーニングにするのか、どんな形でするのか、どこがするのか、その内容がそもそも適切であるかとか、かなり指導は大事だと思うんですけれども、何かそういう研修は、このタイミングで、せっかくなら発信の中にその必要性ということが入れられるといいのかと思いました。
あと、先ほど予算と人員の話もありました。この間もちらっとお話しさせていただきましたけども、スクールカウンセラーがいてくれるとよいというような言葉も聞いています。この辺りも難しいんだと思うんですけど、特別支援学校なんかだと、すくすくカウンセラーがなかなか常駐が難しいと。そこには需給の問題が、逆にスクールカウンセラーになりたい方が、今まだ少ないということで。まだ少ないというか、いろんなことを考えられて少ないとか、いろんな背景があると思うので、丁寧にいかなくてはいけないと思うんですけれども。
なかなか時給が例えば5,000円以上であるとかという、そういう設定があったりすると今度逆に常駐ができないと。その方を何とか確保するためにそういう制度ができたのかもしれないけど、時給5,000円だと、ずっといていただくにはかなりの費用がかかってしまうので難しい。逆にスクールカウンセラーとかの立場の方々にとっても、時々週何時間かだけ関わるので、かなり大変であるというよりは常駐できるほうがいい、みたいなこともあるのかと思っています。
なので、そういう駆け込めるような場所、あとカウンセラーの多様性の問題もまだまだあると思っていまして、カウンセラーがいらっしゃいますということでも、すごく相談しづらいような、多様性がないような状況になっていることもあるのかということを思いました。
手もほかの方々も挙がっているので、そろそろ終わりにしますが、あと、先ほど早修の問題も出ていましたけども、拡充と早修の間のいろんな取組例、先ほど松村先生からありました個性化教育とか、あと、呼び名の問題ですね。タレンテッドプログラムみたいに、海外の場合、ギフティドとタレンテッドをうまく使い分けているようなところもあって、日本語にすると両方才能的なので、どうするかというのはあるんですけれども、そういう形で、その間になるようなもの。
早修、拡充。早修というと、先ほど今村さんからあったように負担感があったり、そこに才能を伸ばすぞとなりがちである。拡充は非常に私も賛成で、いいと思うんですけど、非日常的な、大学とかこういうものを提供してくれるとか、そういうものになりがちな可能性もあって、より多様性を担保する、個別最適なものを担保するためのいろんな学校の取組とかが、その間のものとしてあるとよいのかということを感じました。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。続々と。福本先生、いかがでしょうか。
【福本委員】 福本です。私もまだきちんとまとまっていないので、うまく伝わるか分からないんですけれども。
才能ではなくて、自分の力がどのような環境で発揮されるのかという機会創出がかなり重要かと思っていまして。先ほど、拡充、早修の話もありましたけれども、いずれも画期的ではあるんですが、外部評価が行うことを前提にしてあるのかと思いまして。どういう環境であれば子供たちが自分の才能を発揮できるのかという、そこの部分のマッチングという観点から、もう少し議論を進めたほうがいいんじゃないかと思いました。
それが地域格差によって、越境できないとなかなか学習機会がないというような問題とか方法についても、同じ解決策で学習機関を増やしていくということができるんじゃないかと思うんですけれども。例えばROCKETに来ていた子供たちも、本当にピンポイントで興味があることに向かっていく子供たちもおりましたので、才能というのは、なかなか枠組みをもって定義していくということだけでは拾えないものが、かなり数が多くあるんじゃないかと思っているんですね。
その上では、学校内外のときに、例えばどういう企業さんがどんなリソースを持っているのかとか、どんな社会教育施設が、水族館とか博物館が何を提供できるのかという、その学習内容に関わる部分と、学習を支援してくれる学芸員さんであったり、企業の方々という人たちが、どんなスキルを持っているのかということなんかが、もう少しデータベース化していくと、そのデータベースと子供たちの興味や才能というものをマッチングしていくということが、GIGAスクール構想の延長、もう少しDXの領域に入ってくるのかもしれないですけれども、そこがやりやすくなってくるんじゃないかと思います。
そのときに恐らく出てくる議論としては、評価は誰がしていくのか、あと、単位認定はどういうふうに認めていくのかという議論はあると思うんですけれども、最も重要な、多様な才能に対してどうアプローチしていき、それをどういうふうに子供たちが自分の力を伸ばしていきたいと思っているのか、そこを主軸に考えるのであれば、マッチングという観点を入れていかないといけなくて、そこを避けては通れないのかとは思っています。そのときに、かなりデータが多様化してくるので、そのときに、DX化というものが議論の中に必ず入っていくべきなのかと思いました。
2つ目に、才能の定義とまたここも関わってくるのかと思うんですけれども、かなり学校の学びを超えたアカデミア領域とは異なる才能というのが、非常に多くあるのかと思っていまして。例えば、これは語弊があるかもしれないんですけれども、オタクの方とか、手に職をつけていくようなクリエーター、職人、アーティストの方々の養成というのは、今の議論の中とは少し違う特異性を持っているのかと思っています。
サポートしていく組み手の相手の方々がかなり異なってくるのかと思いますし、学び場も全く異なる環境を想定していかないといけないんじゃないかと思っていまして。こうした子供たちがかなりたくさんROCKETなんかにも来ていましたので、そこの部分も議論ができたらいいのかと思いました。
その場合、体系立った学習履歴をどういうふうにつくっていくかというよりは、好きなことから手を動かしながら何か学んでいくという逆三角形の学習履歴をつくっていかないといけないと思いますので、ここに関しても学びのポートフォリオや学習履歴をどういう形で残していくのかというところで、先ほどのDX化のところと同じような議論がまた出てくるんじゃないかと考えました。
3点目に、先ほどから議論に上がっている保護者、家庭との連携、把握というところに関しても、恐らく孤立したお母さん方がかなり今多くいらっしゃると思うんです。孤立した保護者の方とともに、個人、本人たちも孤立しているケースがかなり多くて、そこは、どういうケースを自分は子育てでやってきて、どんなふうにうまくいったのかという事例なんかが共有化されていくと、お母さん方も、これを実践してみよう、私のケースに非常に似ているからやってみようかというものが、トップダウンじゃなくてプラットフォームの中で共有されていくという、そういう仕組みもあったほうがいいんじゃないかと思いました。
リアルに起こっていることを全部挙げてしまうということは非常にリスクもあると思うんですけれども、どんな現象が起こっていて、どんなことが原因でそれが起こってきて、手だてとしては、こういうことをやったという、その3つのことがひもづいていくような事例がたまっていったときに、初めて効果があるものとそうじゃないものというものを、共通項目から抽出することができるんじゃないかと思いましたので、その辺りなんかも、データとして、データベースの中から見えてくる対策として、打ち出していけるような仕組みがあるといいんじゃないかと思いました。
長くなっていますが、一貫してお伝えしたいこととしては、本当に人の知性というのは、まだまだ解明されてないことがたくさんある中で、枠組みを規定してしまわない、むしろデータの中から見えてくるものを抽出しながらマッチングしていくということが個別最適な学び、一人一人に合わせた学びというものを実現していくという意味では、非常に大事な観点かと思いますので、ぜひそこも議論の中に入れていただけたらと思います。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。
市川先生もお手を挙げていらっしゃいますけど、市川先生、お願いします。
【市川委員】 今日の議論は、大きな方向を押さえようということだったと思うので、それについて先ほど岩永先生がおっしゃったことは、私は非常に共感するところです。
まず最初に、なぜこういうことが今話題になっているのか、また議論する必要があるのかと。教育委員会からの回答などを見ていると、あるいは学校の本音でもあると思うんですけれども、特異な才能を持った子供たちに対するプログラムどころではないよ、という感じはかなりあると思うんです。
先生方にとってはふだんの授業、一斉事業、これを着実にやっていくのが、かなり大変。さらに特別支援ということで、なかなかそれについていけない子供たちに対する支援、これも非常に最近重視されていますね。もうそれで精いっぱいであって、もうそれ以上の、むしろ学校の授業では物足りないという子供たちのことまでとてもできないという感覚があるのではないかという気がするんです。
今回のような話が出てきたときに、例えばそれは、国のためにとか、あるいは産業界のためにそういうことをやろうとしているのですかというふうに勘ぐられるおそれもあると。実際にまたそういう国もあるのだということを、最初の整理でも伺ったと思うんです。それに対してこの問題は、十分、社会的に議論していく必要があるんだということを、ここまでの論点整理で訴えるということが大事かと思っています。
そして、なぜ必要かというときに、国のため、産業界のためというと非常に嫌らしい感じがするんですけれども、その才能を持った子供たちを育てていくということは、社会にとって大事だと。社会を牽引していく人たちにもなると思いますし、そういう意味で、社会にとって、国民全体にとって、そういうことは必要であるという観点が一つ。
それからもう一つは、個人的な観点として、そういう子供たちが学校で非常に不適応を起こしている。かなり苦しい思いをしていると。このことがアンケートでもかなり出てきたと思います。
この2つの点、一つは社会的に見たとき、もう一つは個人の適応とかニーズとかということを考えた場合に、議論するべき非常に大事な問題である。それはもちろん個に応じた学びとか、個別最適ということともつながっていくわけですね。その必要性を十分、説得的に、まず議論の最初には語っていただくことが大事かと。
次に、これは今後のことになると思うんですけれども、じゃあどうするべきか。これも岩永先生のおっしゃったように、全く具体策なしではないと思うので、今幾つかの例とか方向性は出すべきだろうと思います。それはこれからの議論ということでいいと思うんですが、今回も、それは非常によく書き込まれていると思うんです。ここで、先ほども予算・人員の話が出てきました。もちろん予算・人員というのは大切になってくるんですけれども、逆に、予算がつかないと、あるいは人員が何とか確保されないと何もできないというふうに学校や教育委員会や、あるいは地域に思われてしまうのもまた困ると思うんです。
これは前回にも申し上げたことでもあると思うんですけれども、そういう予算とか人員をつけなくてもできること、やろうと思えばできることというのは、実は結構あると。そこは提案として、していくべきだし、手をつけるべきだと思います。例えば学校でもある程度、挑戦的な課題を入れていくこととか、それから担任の先生が自由研究的な探究課題を推奨することとか、こういうことはやろうと思えばすぐにでも、というと語弊がありますけれども、先生方が少し工夫してくだされば、あるいは発想を変えていただければ、できること。そういうこととしては、まずこんなこともあり得るのではないか。
今の学校でも、才能のある子供たちに対してできること、大きなカリキュラム変更とか多大の予算とか人員をつけなくても、こういうことはやっていけること、これは提案していく必要があると思います。
それから、予算や人員、これがつくのであれば、こういうことが学校でもできるのではないかというようなことですね。それからさらに、これはもう学校ではもうとてもやり切れない、とても無理であろうということは、地域とか、あるいは民間企業であるとか、大学であるとか、地域の図書館、博物館、美術館とか、そういうところのプログラムにむしろ委ねていくことで、それをどうやって学校や教育委員会が、子供や保護者に紹介していくか、参加を促していくかということで、これは社会全体でむしろ考えていくべき問題ですよね。
そのように切り分けて提案していくと。あまり大きなことばかり言っても、かえって反発されてしまって、そんなのはとてもできませんよということで、こういう委員会での議論が結局、功を奏さないといいますか、実を結ばないというのが一番残念なことだと思うので、必要性を訴えること。それから、簡単にやろうと思えばできること、それからかなり予算とか、あるいは人員で年月をかけてやっていくべきこと、そういうことを提言として幾つか入れていくという形がいいのではないかと思いました。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
松村先生から手が挙がりました。松村先生。
【松村委員】 時間がなくなってきて、3分だけ。特別プログラムを実施するときにはこういうことに留意しましょうというので、何か最後に付け加えられるかと思ったんですけど、手がかりは7ページのROCKETですね。福本先生はもうROCKETから離れられたので、言及されませんでしたけれども、ROCKET本体は、今年6月にもう終了して、次、新しいプロジェクトへ移行しました。
中邑先生によると、そこに選ばれることが進学の一つのステップになって、それを目標とする子供が増えてきたので、異才発掘の看板を下ろすというふうにホームページで書かれています。つまりAO入試とかに利用するということでしょうね。
それでここの記載が、ROCKETがまだ今もやっているかのように書かれているので、文言としては、最初の現在形を過去形にぽつんと書き直していただいたら、それだけでいいかと思います。ここはそういうことでますが、何か才能を基準として子供を選ぶような狭義の才能プログラムを行うときには、必ずそれを目標とする何か予備プログラムみたいなのがどこかでやられる。そこでやった活動を受験に利用されるということがあるので、その辺のところは十分に留意しないといけないという、何かそういうのが要るかと。
つまり、それを中心に、トップ人材の発掘を第一に考えるんじゃなくて、全ての子供の拡充をベースにして、学級でできること、それは必ずしも先生方の負担増じゃなくて、やり方の工夫でうまくできるということを訴えていけたらと思います。よろしくお願いします。
【岩永座長】 ありがとうございました。書きぶりの訂正の御意見、それも入れていきたいと思います。
今村先生から手が挙がっておりますが。
【今村委員】 ありがとうございます。誰がこのプログラムや支援を受けることができるのかという議論に、ここからまたなっていくと思うんですけれども、誰か、先ほどの福本さんのお話でもありましたけど、皆さんもおっしゃっていますけど、こういう能力があるからとか、こういう傾向がある子だからではない、もう本当に親御さんが学校に相談して、この子にはこの一律なやり方は合わないという申告があったら、もう一つの選択肢を普通に選べるみたいな、そういう世界観にしていくということが目指すべき形かと思っていまして。
しかもそれは日常的な学校教育のもう一つの選択肢を、できればこの時間だけは別室で、GIGAスクールのテクノロジーを使いながらやるみたいな、そういう普通の日常の選択肢に、もう一つのオルタナティブな選択肢が組み合わされるみたいなものへの方角をつくっていくことは、コストもかなり、全国一律といいますか、自治体ごとにリソースを準備しなくてもいいので、そういった方角を何か議論していくような形にしたいと。そういった事例の参考になるようなものも、この先行事例のところに入れるべきなのではないかと思いました。そこだけ補足というか発言させていただきました。
【岩永座長】 ありがとうございました。先行事例というのは非常に説得力のある概念だと思います。それは十分に出していくということで、私も関わっていきたいと思います。
いろいろありましたけど、基本的には才能をどういうふうに定義するかというところ、それから定義された才能をどういうふうに見いだし、それに対して対応できるような現場の人たちに、どう養成やそれから研修を提供していくことができるかというところに多くの問題がかかっているという感じがいたします。
例えばついこの間も、私もある知人から、うちの5歳児は2けたの割り算ができるんだけれども、この子は才能児じゃないのかというような意見をというか、質問を受けました。これは何とも私は答えられなかったし、それから、別の人からは、うちの4歳児が百人一首を全て覚えたというような話を伺って、才能というものを考えるのは難しいと。例えばそういう子供を一気に小学校1年生にしてしまったときの危険性というのは、私はとても、想像するだに恐ろしいんですけれども、そういうようなことも考えると、これを平場で、もう一般の保護者の方たちにぱっと才能教育というのを投げてしまうと、絶対にそういうのが出てきます。
先ほど大島委員の中からも、東大での実践でAO入試を狙って入ってくるとか、大学にアドバンテージを持って入っていくということを考えて入ってくる人たちが増えたということも指摘されておりましたけれども、現世的なというか、そういう現実的な目的を持って、この才能に対する、才能の選出とか選び出しとか、それから才能の育成とか、そういうものを使おうという考え方、姿勢は必ず、絶対に出てきます。
そのときに、「いや、そうじゃないんですよ」と一人一人に、「そうじゃなくて、もうちょっと大きな考え方があって」というようなことを説明しても、これはしようがないので、システムをつくるときには、あるいはシステムを考えていくときには、絶対にその辺の慎重な考慮というのは必要になってきますので、その辺のところも、できたらこの中間報告というか報告書の中に入れていきたいと思っております。
いずれにしましても、今、先生方から多く出ました養成の問題とか、才能の定義の問題とか、それから機会の均等の問題とか、それからマッチングの問題とか、そういった問題についても出していくということは重要だと思いますので、ぜひ今後の課題としても書き込んでいきたいと思っております。
今、時間も参りましたので、これで御意見は伺ったということにさせていただきますが、論点整理につきましては、次回の会議で改めて提示をさせていただいて、今回の御意見を踏まえて修正を加え、また追加ということもあると思いますけれども、改めて提示させていただいて、再度、皆さんに御議論いただきたいと思っております。
本日、時間の関係上、発言できなかったような御意見があれば、この会議後に事務局にメール等でお寄せいただくと。あるいは次回の会議にまた御発言いただくということで御対応いただければと思います。それでは、本日の議事は以上とさせていただきます。
最後に次回の予定、12月ですが、次回の予定について事務局から御説明をお願いいたします。
【川口学校教育官】 次回、第6回会議につきましては、12月13日月曜日、10時から12時で行うことを予定しております。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。
それでは、本日予定しました議事が全て終了しましたので、これで第5回を閉会したいと思います。先生方、どうもありがとうございました。

── 了 ──