特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和3年8月26日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

WEB会議方式

3.議題

  1. 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等について 

4.議事録

【岩永座長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回の特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議を開催したいと思います。
本日は大変御多忙の中、また、このすごい暑さの中で会議に御参加いただきまして、皆さん、誠にありがとうございます。
本会議につきましては、報道関係者等より録音・録画の申出がありましたので、これを許可しております。この旨、御承知おきいただきたいと思います。
まず、本日の議事に入る前に、会議の留意事項及び本日の会議資料の説明を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【川口学校教育官】 まず、本日の会議はWebexを使用したウェブ会議方式にて開催させていただいております。そのため、1、御発言に当たっては、インターネット上でも聞き取りやすいようはっきり御発言いただく、2、御発言の都度名前をおっしゃっていただく、3、御発言時以外はマイクをミュートにしていただく、4、御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただき、発言が終わりましたら「手を挙げる」ボタンを再度押していただき手を下げていただくよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。
続きまして、本日の会議資料について御説明いたします。本日は、資料1から資料2まで及び参考資料1、2がございます。参考資料1は、前回の会議で委員の皆様から頂いた御意見を事務局でまとめたものです。
【岩永座長】 それでは、参考資料2については、私のほうから少し御説明をさせていただきます。
有識者会議で検討を進めるに当たって、特異な才能のある児童生徒に関する事例について、情報提供をいただき、検討に生かしたいと考えております。そこで、このたび、特異な才能のある児童生徒の当事者、あるいは保護者、学校の教員の方、それから支援団体の職員など、身近に特異な才能のある児童生徒がいらっしゃる方々に向けたアンケートを実施させていただきたいと思います。
アンケートは、つい先ほど会議のウェブページで回答を受付開始ということにいたしました。9月17日金曜日まで回答を受け付けておりますので、ぜひ情報を御提供いただけると幸いでございます。回答は匿名でも可能となっております。
質問項目は画面に共有されているとおりですが、特異な才能のある児童生徒の「特異な才能」とは何か、それをどう考えるかですね。それから、学校において経験した様々な困難、これまでに受けた効果的な才能への支援などについて、回答いただくことを想定しております。全体として自由回答なので、御自由に御自分のお考え、あるいは御経験、あるいは事例、そういったものを御回答いただければと思います。
回答については、10月頃に取りまとめて、会議の検討に役立てさせていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
続きまして、ヒアリングに移りたいと思います。
第1回、第2回の会議では、特定分野に特異な才能を有する児童生徒をめぐるこれまでの議論や現状などの全体像について、委員の間で共通理解しておくことを目的としております。
先頃の第1回の会議では、才能教育の現状について、私から及び松村委員から発表させていただきました。
今回、第2回目となりますが、本日は、今般の中央教育審議会の議論に関わってこられたお二人から御発表をいただきたいと思います。
まず、上智大学総合人間科学部の奈須正裕教授から、次に、市川伸一委員から御発表いただきたいと思います。
なお、発表に対する御質問や御意見については、お二人の発表が終わった後の意見交換のタイミングでさせていただきたいと思いますので、そのときに御質問、御意見を頂ければと思います。
それでは、まず奈須教授のほうから「個別最適な学びと協働的な学び~その子らしさが発揮できる自律的な学びの保障~」と題しまして御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【奈須教授】 個別最適な学びと協働的な学びという議論が中教審でなされたわけですが、その議論の中で話題として出たことに関わって少しまとまったお話をします。
じゃ、次のスライドお願いします。まず、やはり考えなきゃいけないのは、何を目指してやっていくかということだと思います。学力論ということです。
2017年版の学習指導要領は「資質・能力」を基盤とした学力論に立脚していて、これまでの何を知っているかから、それを使って何ができるか、どんな問題解決を成し遂げるかというところに学力論の拡張を図ったということです。
次お願いします。資質・能力というのはコンピテンシーの訳語かと思いますけれども、もともと70年代ぐらいに、知識の所有が必ずしも人生における成功を保障しないと。むしろ多様なものが必要になってくると。それに基づいて、学力論をもっと拡張したほうがよいんじゃないか。あるいは非認知的能力とか、知識の質も変えたほうがいいんじゃないかというような議論があったかと思います。
次お願いします。また、そのコンピテンシーはゴールではないという認識も大切かと思います。これはOECDのLearning Framework2030ですが、コンピテンシーはゴールではなくて、個人と社会のWell-Beingのための手段だと。大切なのは、インクルーシブでサステイナブルな未来、それに向かってコンピテンシーを育成することだということかと思います。
次お願いします。学習指導要領の前文でも「持続可能な社会の創り手」ということがうたわれていて、軌を一にするかと思います。
次お願いします。そう考えてきたときに、どんな資質・能力、そしてwell-beingを実現するか。その筋道ということが多様に考えられるわけで、そこに個性あるいは特異な才能ということを考えて位置づけることが大切かなと思っております。
まず、どのような資質・能力の実現が望まれるのか。さらに、その中には当然、全ての子供が共通に身につけるものと、その子の個性に応じて伸長を図るものがあるだろうと。1を基盤としつつ、2を存分に生かし、その子ならではの筋道で個人的・社会的なwell-beingの実現を果たしていくということが考えられていいのかなと思います。
実現される資質・能力はもとより、資質・能力からwell-beingへの筋道ですよね。そこも個性的、ある種の凸凹があっていいんじゃないかということだろうと思います。
ただ、大事なのは、それが許容されるような社会あるいは学校の風土が今あるか、今後どう建設するか。この委員会の議論も、そんなところにあるかと思います。
やはり先ほどのOECDにもありましたが、多様性と包摂、ダイバーシティーとインクルージョンということを原理とした社会や学校を創っていく。それが持続可能な社会の前提条件にもなるかと思います。
また一方、同時に個々人にも、自分の個性をどのように生かし他者や社会に関わっていくか。特に社会的well-beingへの貢献ということを、考えていかないといけない。独自な才能ということについても、この視点は大事かなと思っています。その機会を、子供時代に学校がいかに提供していくかということを、しっかり探っていかなければいけないということかなと考えております。
次お願いします。そんなこともあって、「令和の日本型学校教育」という中で「個別最適な学び」ということが改めてクローズアップされたかと思います。
これは中教審答申の中の整理ですが、「指導の個別化」と「学習の個性化」、この2つから成る「個に応じた指導」、これ自体は従来からあるものですけれども、それを学習者視点から再整理して位置づけ直したものが「個別最適な学び」だとしてございます。
次お願いします。大切なのは「個別最適化された学び」。経産省なんかはそういう表現を使ったわけですけども、そこから「個別最適な学び」ですね。やっぱり「化された」というのは使役の言葉でありますから、それはちょっと違うんじゃないかということですね。
AI等による情報推薦自体は、とてもいいことだと思いますけど、子供は自動的に「最適化される」客体ではないと。子供は学びの主体であろうと。そう考えたときに、教師の支援を受けつつ、自らにとって「最適な学び」とは何か、それを自律的に学び進め実現していく、それを通してまたwell-beingに立ち向かっていく、そんな子に育て上げるということが、全ての子供に必要なんじゃないかということかと存じます。
そう考えると、個別最適な学びには2つの意味があるかと思います。
1つは、一人一人に応じた多様な教材・学習時間・方法の柔軟な提供。まず、これが当然必要だということかと思いますし、伝統的な個に応じた指導というのは、こちらを中心に考えてきたかと思いますが、今回の議論の中でクローズアップし確認されたことは2番目のこと。そういうことを通じて自分に最適な学びを自力で計画・実行できる、そんな子供に育てていくということかと思います。
次お願いします。振り返ってみたいのですが、指導の個別化、学習の個性化、これが個に応じた指導、そして個別最適な学びの構成要素ということになりますが、これは案外と古いわけです。1971年(昭和46年)の46答申の中で、今後日本の学校教育が目指すべき2つの教育目標ということが言われました。
国民の教育として不可欠なものを共通に修得させると同時に、豊かな個性を伸ばす、この2つが打ち出されたと。
さらに重要なことは、この2つを実現する筋道、方法論として、個人の特性に応じた教育方法によって、これを実現していこうということがあったかと思います。
これに、いろんな方が取り組まれたわけですけれども、その代表的なお一人が加藤幸次先生。当時、国立教育研究所におられました。国研は、私もいましたが、文部省のシンクタンクですので、当然、文教政策を実現するために、いろんな研究を進めていくわけです。加藤先生を中心にしたチームも、この中教審の2つの目標に対応した2つの、今日的に言えば個別最適な学び。これが後に「個別化・個性化教育」と称されて全国で展開しますが、これを開発され、全国で実践されたということです。
まず1つ目の基礎学力を身につけるということに対応して「指導の個別化」。全ての子供に共通の基礎学力を等しく着実に保障する、そのために一人一人に最適化された、ある意味で異なる指導方法、学習時間、教材を豊かに、そして柔軟に提供するということですね。
もう一つが、「豊かな個性を伸ばす」という目標に対して、これが「学習の個性化」という概念でした。自分が得意な領域、あるいは自分が得意な学び方ということも、加藤先生はよくおっしゃっていましたね。この2つを、やはり見いだす。どんな学び方だとよく学べるか、どんなことが得意で、どんなことなら将来、社会に貢献できるか、そういう自分の得意を見いだす、そしてそれを自分に最適な学びとして、自力で計画・実行できるようになる。そういうことを目指していくわけですが、それは当然、各自の興味・関心、キャリア形成の方向性に応じて課題や活動を選択・設定すると。そういう多様な機会を学校が提供しないと、そんなことは実現できないわけですよね。
次お願いします。以上のような個別化・個性化ということが、1980年代から90年代にかけて全国の学校で展開をされてきました。これは、その代表校であり、今もやっていますが、愛知県の東浦町立緒川小学校。1985年頃、私が実は学生時代に、これ撮った写真なんですけど、一人一人が自分に必要なものを自分のタイミング、自分の判断で取りに行く。もう既にコンピューターも使われていました。
個別化というと、何か孤立化と誤解されがちですが、仲間と一緒に協働的に学ぶということを選択している子供も、もちろんいるわけです。また、子供たちが基本的に自律的に学び進めますので、先生は子供を見取り、困っている子を丁寧に支えるということに徹することができるわけですね。
次お願いします。指導の個別化の原理となるものは、欧米で開発されたような心理学的な原理かと思います。
1つはプログラム学習、スモール・ステップと即時フィードバックを基盤として、個々人のペースで与えられたコースを着実に学び進めていく。ティーチング・マシンとかCAI、最近話題になっているAIドリルなんかも、基本的には、この延長線上にあるかと思います。
あるいは完全習得学習、マスタリー・ラーニングですね。一斉指導した後、形成的評価をして、習熟度別に最適化された指導を行う。
この習熟度別指導に対して、格差が拡大するとか学力が低下するという御批判が時々ありますけど、それは実は単なる集団編成をしているだけで、最適化された教材が提供されていないということがあるんですね。この辺も、とても大事かと思います。
それからATIですね。適性処遇交互作用に基づく学習。学習適性に沿って最適化された複数の教材・指導法を提供すると。例えば同じ英語を勉強するのでも、文法中心と会話中心、よくどっちがいいんだと話題になりますけど、やっぱり子供の適性によって合う方法があるわけですよね。こういったものが多様に準備されて提供されると。
またさらに、これが教師の判断で子供たちに割り当てられるのではなくて、子供たちの判断で自分で選び取る、自分でトライするとなってくると、次に申し上げる学習の個性化の要素が入ってきます。
次お願いします。学習の個性化には、2つの得意ということが大切かなと。
1つは学ぶ「領域」の得意。この委員会でも話題になっていることかと思います。この領域が私は得意だ、充実する、自分には必要だ、これによって自分を実現していけるということを見いだし、それと存分に関われるということですよね。これ、まず大切なことだろうと思います。
それから、「学び方」の得意。学ぶ内容は決まっていたとしても、この学び方だと自分らしく、あるいは楽しく上手に学べると。これも大切かと思います。
そう考えると、いずれにせよ、様々な学びの経験を個別的に、あるいは子供の判断で自由に試せるということがとても大事なのかなと思いますね。
具体的には2つの実践が、日本ではよく行われてきました。
1つは自由研究学習。今でいうと個人総合ですね。総合的な学習、総合的な探究の時間で、個人課題でやるものです。最近話題になっている高校の探究というのは、ほぼこれが多いかと思いますね。各自の興味・関心、必要感に応じて、何をどう学ぶかを、先生とも相談しながら、しっかりと計画を立て、学び深めていく。ただやりたいことを勝手にやるのではなくて、こんなことをやるよということを先生と相談し、ある種の契約として進めていくという感覚が大切かなと思いますね。
それから2番目、単元内自由進度学習と昔から呼ばれているものですけれども、「環境による教育」の考え方に基づいて提供される豊かな学習環境を、子供たちが自分らしく活用して、オーダーメードの学びを組み立て、学習の自己調整をしながら進めていくというものです。
次お願いします。オープンタイムと当時呼ばれた自由研究学習、個人総合の、やはり緒川小学校の35年前の様子ですが、例えばバイクを、もう何か月もばらばらにして組み立ててなんていうことが許容されていました。あるいは多様な学習をしますから、先生たちだけでは無理なので、地域のボランティアに支援を受けたりなんていうこともしていました。
興味深いのは、案外と教科の発展学習を子供たちが選ぶということです。
左上の写真は、これはお茶をやっているんですけど、これは室町時代の文化史の学習をきっかけに、お茶をやっているんですね。この子たちは単にお茶をやるのではなくて、なぜお茶なんていうものが、千利休とか今井宗久ですが、政治にまで影響を及ぼしたのかという問いでやっているんですね。
だから、これは単に体験しただけではなくて、その後もう一度、その課題に挑戦していくということになります。
次お願いします。やはり自由研究学習です。これは山形の天童の学校でやっているもの、つい最近撮ったものですけど、ICTというのは強いですね。同じ自由研究学習でも、今の子供たちはICTを駆使しますね。
右側の写真にあるようなシーケンサーを使って作曲をしたり、右下の子は、これはプログラミングをやっているんですけど、面白いのは左側で、上の子は漢字の成り立ち、これ「轟」という字を調べているんですけど、こういうものを調べています。
左下の子は、これブラックホールをやっているんですね。天文学に関心がある6年生の女の子ですが、コンピューターで検索していくと、大阪大学の大学の紀要論文に当たっちゃったんですね。読めるんだろうかと心配しますけれども、読めないかもしれませんが、その子なりに読んでいくし、今、論文には著者のメールアドレスがついていますよね。この子、著者にメールするかもしれませんよ。小学生が大学の先生とメル友になるなんていうことが、これからの時代、起こってくる。とても面白いことが、ICTを使うと起こりそうです。
次お願いします。ICTの利用って面白くて、左上の子は、これは卓球を頑張っているんですけれども、教える人がいなくても、今、動画がいっぱいありますから、どんなふうに練習すればよさそうかということを自分で検討する、そしてまた自分のフォームをもう一度撮ってやるんですね。どんどん一人で学び深めていきます。
右上の子は、これ英語をやっているんですけれども、今、翻訳ソフトでいいのがありますから、上手に使っています。
それから、先生も、この学校はやるんですね。この人は切り絵をやっているんですけれども、先生も取り組むことによって子供たちが興味・関心を存分に発揮するということを先生も経験するという取組をやっている面白い学校です。
次お願いします。今見てきたのが領域の得意ですけれども、一方で、学び方の得意というのもあるかなと思うんですね。理科は得意だけど国語は苦手ということをよく言われるわけですけれども、それは領域なのか、学び方なのか。国語はその子は無理なのかということも考える必要があるかなと思います。
面白い理科少年の子がいて、「大造じいさんとガン」を生物学的に考察したという子がいるんですね。すると、この子が、ガンは草食性で、タニシは食べないと。ハヤブサよりもガンが実は大きいんですね。なので、ガンはハヤブサを絶対食べないというんですね。ガンと似た水鳥でタニシを食べるという条件に合うのは雑食性のカモだそうで、すると「大造じいさんとカルガモ」というのが正解だと、この子は言うんですね。本当、面白いんですね。この子は、この物語は荒唐無稽だというわけです。理科少年らしい国語との向かい合い方なんですね。
これに対して、担任がいいんですね。「よく調べましたね。あなたらしい学びのつくり方です」と、否定しないんですね。すると、どうなるか。
次お願いします。その子は理科少年なので、椋鳩十のこの作品が荒唐無稽だ、おかしいと言いながらも、何か読んでいると、わくわくどきどきしちゃうんですね。それはなぜだろうと、考えるんですね。すると、生物学的な探究ではやっぱり無理で、文学的に読んでいく必要があるぞということで、文学的に読んでいく。ちゃんと国語の学習になっていくんですね。
だから、その「領域」の学びが特定の「学び方」しか許さなかったから実は学べないんじゃないかと、私なんかは思うわけです。もっと幅広に、その子の山の登り方でその山に登っていいというふうに学校や教師や授業や教材がなれば、もっと子供たちは多様なものをしっかり学べるんじゃないかと思うんですね。
次お願いします。そんな中で生まれてきたのが、単元内自由進度学習という考え方です。子供たちなりの学び方で学んでいいということですね。これ一人一人がどんどん、教科の学習ですけど、自分でやっていきます。
次お願いします。これは先日、先ほどの天童の学校でやったものですけど、社会科の歴史の勉強を自分たちでやっています。一人でやる子、コンピューターを使う子、仲間とやる子、多様な学び方があるわけですね。
次お願いします。こういうのを見せると、どうやって指導するんだと皆さん、おっしゃるんですね。子供が目の前にいないわけですからね。いや、適切な環境さえあれば子供は学んでいくんですね。環境による教育という考え方ですよね。もともと全ての子供は生まれながら有能な学び手じゃないかと。それを洗練させればいいんじゃないかと。むしろ信じて任そうじゃないかということですね。こういう考え方になっていくといいのかな。幼児教育なんか、そうですからね。その考え方であればいいのかなと思います。
次お願いします。実際に、そのためにいろんな環境は必要です。これも個性化教育の中で開発されてきたものですけれども、左側がガイダンスプリント。これ、てこの学習ですが、てこをなぜ、何のために、どう学ぶのかということ。
右側は「学習のてびき」と言いますが、子供たちに8時間の時間を自由に委ねて、自分で計画して、どんどん学んでいいわけですけど、それに必要な情報を全て開示します。やっぱり情報開示が大事なんですね。そうしないと、個性的に学んでいけません。
早く終わる子もいるんですが、「早修」はせず、魅力的な発展学習、仲間との教え合いで「拡充」を基盤にやってきたというのが、日本のこの手の実践の伝統かと思います。
次お願いします。実際にやっているところです。社会科なんかでも、こんなふうに、いろんな環境を使って学びます。
次お願いします。理科なんかも、実験は全部一人で最初から最後までやることができます。
次お願いします。今見てきたような個別化・個性化教育といって推進されてきたものですけれども、基本的にボリューム・ゾーンを想定した取組だったかなと思います。
一見問題なく普通に学んでいる子供たちも、その子ならではのスペシャル・ニーズはある。それを保障することで、さらによく学べるんだということを、こういった実践は証明してきたかと思います。
考え方や道具立ては、いわゆるギフテッドの子供、それから特別支援の子供でも同じように適用可能かなと思います。
実際に、例えば自閉症・情緒障害の特別支援学級でも、こういった実践があります。
次お願いします。算数の重さの勉強を、自閉症・情緒障害の学級で単元内自由進度学習としてやったものです。
次お願いします。いろんなことがあって、例えば交流学級の体育でけんかして、むしゃくしゃして、着替える気にもならないという子もいるわけですね。こんなときに一斉でやると、「早く来なさい、待っているよ」となって、いよいよむしゃくしゃしちゃうわけですけれども、自由進度なので、一人一人のペースでやっていいんですね。
すると、次お願いします。しばらくすると、だんだん着替えて、やる気モードに変わっていくんですね。
次お願いします。もう10分後には、こんな感じですね。やっぱり、もっと一人一人に委ねて、その子のペース、その子のこだわりでやれるようにすると、もっと学べる。
実は自閉症・情緒障害の子というのは、自分の文脈に対するこだわりが強いんですね。だから、任せたほうが、かえってうまくいくんですね。
次お願いします。また別な子ですけれども、どこにこだわるかが、やっぱり違うんですね。これは重さの保存をやっているところですけど、課題としては、ランドセルと自分を同時に量っても別に量っても同じだよということをちょっとやればいいんですけど、この子はここにこだわって、こだわって、こだわって、1時間中、これをいろんなやり方でやっていきました。やっぱり一人一人、どこにこだわるかが違う。それを保障したいわけです。
次お願いします。今のように考える中で、自由が認められることで他者への関わりもやっぱり変わっていく。
特別支援でやられてきた「個別支援計画」や「合理的配慮」というのは、この学習の個性化になっていたのかどうかというのは、ちょっと考えなきゃいけないと思うんですね。
全ての子供に対して基本的人権としての学習権・発達権の全面的、そして十全な保障ということが、ギフテッド、ボリューム・ゾーン、特別支援、全部を通じて大切かなと。何とかやれているのだから、それで十分だという教育から、やっぱり脱却すべきかと思います。
次お願いします。また、こうやって一人一人が自律し学び進める力を持ってくれば、実は協働的な学びも子供たちだけで進めることができます。
これは、子供たちが授業をして、板書も子供でやっているところです。
次お願いします。先生がやるんじゃなくて子供が質問したほうが、忖度しないので、もっと本気でぶつかり合って、よく手が挙がります。
次お願いします。慣れてくると、このぐらいの板書も子供たちだけでできるようになります。これ「割り算の性質がとても大切です」なんてまとめを4年生の子供が自分たちでできるようになってきます。
次お願いします。子供がする授業というふうに、昔これは重松鷹泰先生なんかがよくおっしゃったんですけど、子供たちだけで実は授業を進めることはできるんですね。先生の授業を受けていますから、要は、ままごとをしているようなものなんですね。先生のまねっこをやるんですね。できるんですね。もっと言うと、子供たちだけでは難しい部分に気づくなんていうのも大事なんですね。
大切なことは、子供と先生が一緒に共に授業をつくる。授業への参画、OECDで言うエージェンシーを育てていくことも大事かななんて思います。
次お願いします。面白いのは、こういう個別最適な学びを通して自分の「得意」を見いだすことで、他者にも同様に個性的な「得意」があるんだな、みんなそうなんだなということが、だんだん想像できるようになる。全ての人に、その人ならではのかけがえのなさがあるということに気づけるようになってきます。
これは自律した個人が、同じく自律した個人とともに協働でのコミュニティーの問題解決に当たる。いわゆる民主主義の基本にもつながってくるかと存じます。
また、集団生活に必要な作業を形式的平等の原理で分担し、全ての人が同じことを同じようにしなければいけない、それが直ちにできなければいけない。こういう「同調圧力」というのが日本には強かったかと思うんですけれども、これから脱却するにも大切なことだと思います。
自分は社会的なwell-beingの実現に対して、どんな貢献ができるかということを考える。エージェンシーって、こういうことにつながってくるかと思います。
次お願いします。また最近、いろんな議論の中で、自立の概念も変えていくといったことが出ているかと思います。僕らは伝統的には他者に依存しないことがindependent、自立だと考えてきたわけですけれども、困ったときに頼れる先が多いことがむしろ自立だなんていう考え方が、社会福祉なんかでは出てきていると伺いました。誰しも誰かに頼っているし、誰かから頼られているという感覚ですね。
また能力についても、個人が身につけているもので成し遂げることが能力だと考えてきましたが、道具や他者との相互作用を通して成し遂げることまで含めて能力だという見方に変わってきているかと思います。
そうなると、先ほどの1人1台端末というのは、とても大きい。
あるいは、他者へのHelp Seekingですね。困ったときに助けてと言える。
「学習の自己調整」と言ってきましたけど、実はHelp Seekingも学習の自己調整の構成要素に入っているんですね。もっと幅広に考える必要があるかと思います。
個性的で凸凹があっていいというようにするためにこそ、Help Seekingを含む社会・情動的スキルの育成というのは、一方で大事になってくるかななんても思ったりしています。
次お願いします。今回、中教審答申の議論の中で、履修主義と修得主義ということも御議論に上がりました。
協働的な学びは、履修主義・年齢主義と親和性が高いと言われます。一方で個別最適な学びは、修得主義・課程主義と親和性が高いと言われています。
こういうこととの関係で、特に「早修」について、個別最適な学びをめぐっては、どう考えるかが大きなポイントかなと思います。
途中何度か出してきましたが、我が国の取組としては、「拡充」中心で十分に質の高い学びが実現されるということを実践的に証明してきたかと思います。
近代学校は、同年齢の子供が集団で学ぶとことを基本にしてきました。これはドイツの統一学校運動なんかにありますが、地域の子供たちが机を並べて共に学び、共に暮らすということが社会の基盤をつくるんだという考えが、この基底にはあるかと思います。
どうしても近代学校は国民形成、国民統合ということがあるかと思います。日本の場合、これがちょっと同調圧力寄りになってきたということは見直さなければいけませんが、やはり何らかの意味の、この国民形成、国民統合ということは考える必要が引き続きあるんだろうと思います。
今日的に、これをどう考えるか。市民教育や生活教育との関わりの中で学校教育は何を担うかということが、今後に求められる課題かなと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【岩永座長】 奈須先生、どうもありがとうございました。それでは、御質問、御意見は全体に御報告が終わった後ということにさせていただきたいと思います。
続きまして、もう一方、市川委員から、本有識者会議の検討に当たって、「関連する取り組みの紹介と今後の可能性」というタイトルで御発表いただきたいと思います。市川先生、よろしくお願いいたします。
【市川委員】 市川です。私のほうからは、この「関連する取り組みの紹介と今後の可能性」ということで、お話をさせていただきたいかと思います。
次のスライドお願いします。まず議論の方向性としてということなんですが、第1回の会議でも出てきたことでもありますし、それを少し整理してみました。
まず1番目として、教科学習や探究活動というのを話題の中心にはするんですが、より広い活動分野を視野に入れて考えるということです。
それから2番目ですが、優れた才能を持つ児童生徒だけに限定せず、個に応じた学習支援の一環として捉えるということです。
それから3番目に、学校教員の負担増とならないよう、学校を取り巻く環境の整備・充実・活用を図るということです。もちろん学校というのは教育の要ではあるんですけれども、今、実際に学校の先生は物すごく大きな負担がかかっていると。さらにこういうことをやってくださいというのは非常に難しい状況にもなっています。そのとき学校だけで頑張るというのではなくて、むしろ学校を取り巻く環境を充実させていくという考え方にも触れる必要があるということです。
その1番目として、まず地域教育を活性化するということについて触れたいと思います。
授業外学習ポイント制度の提案。これは、実は内閣府の人間力戦略研究会というのが、かつて半年の集中審議がありまして、ここに文科省も経産省も厚労省も関わってきました。私、その座長を務めたんですけれども、報告書が2003年4月に出ております。
その中で、もともとこの人間力という話は経済財政諮問会議から出てきた話ではありますけれども、教育全般に関わる話となっていきました。
特に今の若者が、なかなか将来、社会の中で、どうやって自分を実現させていきたいか、役割を果たしていくかということが、どうも意識が弱まっているのではないか。当時大きく問題になっていたのは、フリーターとかニートの問題です。
そこで、社会人と学ぶ場をもっと参加促進するということを、この中で提案いたしました。自治体、NPO、大学、地域の施設、企業等の教育プログラムというのが、実際にはかなりあるんですね。それを取りまとめて広報する。インセンティブとして、子供たちには、その参加実績というのを共通ポイント化して、平たく言えばラジオ体操のスタンプのようなものなんですが、それによって子供たちが出ようとする。そして、ある程度のポイントがたまると、よく頑張りましたという認定証を発行して、それを各自使うこともできるというような、それぐらいの緩いインセンティブを考えました。
その後、大きくはないんですけれども、様々な形で、これが実現化されていきます。NPOが主導するもの、これが今日は次にお話しする地域の学び推進機構のやっている学びのポイントラリーです。あと学校が独自にとか、あるいは教育センターが主導して、こういう制度を取り入れたと言っているところもあります。
これは私も関わってきた学びのポイントラリーなんですが、地域で行う超・選択学習と呼んでいます。実際にいろんな施設、市民団体、NPOや大学なども含みます。そういうところが、いろんなプログラムを実際にやっている。これを調べてみると、私もびっくりするぐらい、例えば地方の小さな都市でも、いろんなものがあるんだということが分かりました。実は、それは学校の先生もあまり知らないし、保護者や子供たちも知らないけど、たくさんあると。そういうものを登録していただいて、この推進機構のほうでホームページとして、まとめて発信する、あるいは教育委員会や学校等を通じて、そのプログラムの一覧表を作って、児童や生徒、保護者に広く紹介するというような仕組みです。
プログラムは4つのジャンルがあります。教科学習の補充とか発展というのもある。しかし、あとは人間力に関わるような文化・スポーツ、市民生活、これは環境問題とかエネルギー問題、あるいは消費者教育というようなものがあります。職業理解として職場体験であるとか、そういうものにも参加していく。
40ポイント取得するごとに機構のほうから、よく頑張りましたと、また次の40ポイントに向けて頑張りましょうという認定証を発行していきます。すると、子供によっては、もう認定証を6枚も7枚も取るというような子も出てきます。
実施地域は、これ2018年3月現在ですが、次のような地域で実施されていました。
残念ながら、これが、コロナ感染が起こってからは、かなり壊滅状態に近くなっています。とてもコロナに対する対策ができないということで、学校も一時休校になりましたけれども、相当厳しくなった。今年に入って、少しずつ復活している地域もあるというような感じです。
学びのポイントラリー、15年間やってきまして、その成果と課題です。
成果の指標としては、登録プログラム数。これは機構のホームページに全て掲載されていますので、一体どれぐらいのプログラム数が登録されてきたかというようなことは年度ごとに分かります。
参加者数です。機構で把握できるのは、どれくらいの子供が、どれくらいの認定証を取っているかということになります。
ポイントラリー作文というのがありまして、参加体験記を作文にして出してもらう。その中には、もうかなり一生懸命参加して、こんな体験をしたということがつづられています。
成果を上げた地域の特徴ですが、まず活動の意義を感じて地域をまとめる担当者というのがしっかりしていること。それから学校とかPTA、または教育委員会がかなり理解してくれて、この活動を支援してくれている。
具体的には広報の支援とか、あるいは、この認定証を申請するというときに、普通、子供が自分で申請するのは少し面倒なんですが、例えばPTAで担当の方がいて、そこに持っていくと申請について教えてくれるとか、PTAを通じて、まとめて申請してくるとかいうところもあります。朝礼では、この認定証を取った子を校長先生が表彰してくれるとか、そういうことで非常に動機づけられるということですね。
それから、実施メンバーの異動が少なくて、その地域のプログラムが安定しているというようなことも大事な要因です。学校の先生ほど異動はありませんので、割とプログラムが長く続く、10年、20年続くというようなこともあります。
表れた問題とか今後の課題ですが、まず参加者側の問題です。もともと、あまり子供たちがこういうのに出てきてくれないということで始めたわけですけれども、やってみると、やっぱり地域の方がおっしゃるように、高校生は来ませんよと最初から言われていました。実際、高校生は、もう塾、部活などで、まず来てくれません。途中から、もう募集は断念いたしました。
プログラムの課題としては、この4つのジャンルというのは、どうも地域によって非常に偏っていることがあります。職業理解に関するものがほとんどないとか、教科学習に関するものはほとんどないとかいうことも起こってしまいました。
あと運営上の課題としては、これは地域のほうも、私たち本部にしても、ボランティアとしてやっていることが多いです。すると、ボランティアメンバーがだんだん固定化して、高齢化してくるというようなことにもなってしまう。その辺りは、地域教育ということの問題点かなと思いました。
次に2番目として、学習成果を発表する場を設定して拡大していくということを挙げたいと思います。
かなり優れた資質・能力を持った子供たちを、さらに活動を後押しするような、いろんな大会とかコンテスト、コンクールのようなものがあります。これを、さらに子供たちにも周知していきたいと。伝統的な大会としては、マスコミで紹介されているものもあります。ロボット・コンテスト、数学オリンピックのようなものですね。
文部科学省のほうでは、2003年から2008年の間に、学びんピックということで、これらをまとめて推奨していきました。全国的・国際的な大会・コンテスト等を認定して広報していくということです。財団に委託して、審査委員会が大体60程度の事業というのを認定してきました。
私はこの審査委員長というのを務めたんですけれども、これだけいろんなものがあるというのに私もびっくりいたしました。作文とか論文のようなものもありますし、数学・科学、あるいは技術・情報、コンピューターのようなことも含まれます。あと文学としては、俳句とか、短歌とか、詩とか、そういうものもあるし、美術のようなものもあります。
それから、学会における高校生の発表セッションというのがあります。特に自然科学系の学会というのは、熱心にやっているところがあるようです。
私は天文学会というところで一度、招待講演をお引受けしたことあるんですが、そのときに、この高校生のセッションというのを見せていただきました。5組くらいだったんですけれども、専門家からの指導も受けられる、アドバイスも受けられると。内容的には非常に高度なことを発表していました。
次のページは、これは学びんピックのポスターです。石ノ森章太郎さんの、こういうロゴマークというのがありまして、学びんピックと。そのポスターの下のほうには、こういう認定大会がありますということで一覧が出ています。
次のページにありますのは、これは学びんピックの大会を認定するときに、どんな基準でやっているのかということを一部抜粋したものです。
大会の趣旨としては、文化的な諸活動、それで培ったいろんな力を競い高め合うということです。学習意欲の向上の一環として学びんピックがなされていましたので、学習意欲の向上に資すると。
大会の主催者としては一応、次のような原則があります。国・地方公共団体、学校及び学校の連合体、それから公益法人、報道機関などということです。
大会の公正性ということですが、特定の営利企業とか商品などの宣伝とか非難にならないようにということです。それから、また特定の個人、団体などの権利とか利益を侵害するような、そういうものであってはいけませんということです。
大会の規模、ここは厳しいわけですが、全国的なものである、一部の地域だけでやっているものではないと。それから国際大会の予選を兼ねる。そういう、かなり大きな大会を認定していったということになります。
それから3番目になりますが、学校における探究活動等を促進・評価していくということです。これは学校ということになります。
特に高校生ですね。文部科学省も、これまでいろんな施策をやってきました。皆さんも御存じだと思いますが、SSH、スーパーサイエンスハイスクール、それからスーパーグローバルハイスクールというようなことがなされています。
学校と地域との連携を推奨しています。そして、指定校ではかなりの成果が得られたと思います。
ただ、課題としては、多額の費用がかかると。私も関わった学校というのがあるんですけれども、例えば2,000万円とか、それを超えるような額のような助成が出ると。
もちろん、それによる成果は大きいんですが、教師が結構その間は大変です。それから、指定期間が終わってしまった後の継続であるとか、周辺の学校にどれぐらい拡大するかということには難しさもあったということが言えるかと思います。
一方、公益法人が、学校に対していろんな研究助成とか研究支援を行っています。研究者をその学校に派遣して、いろんなアドバイスをしていただいたり、優れた実践を表彰するというようなことも行われます。
助成額としては、SSHとかSGHほど高くはありません。期間も、もう1年とか、2年とか、非常に短いものが多いと。
ですから、教師の負担はそれほど大きくないんですけれども、その分、効果とか、継続とか、拡大には課題もあるということかと思います。
次の、この大阪府教委のGlobal Leaders High Schoolの評価なんですが、この指定されている学校は、大阪府立の10進学校です。10個の、かなり大阪府の中では進学校と言われている学校です。そこに対して、評価審議会というのがありまして、総合評価をして、それを公表しています。
これが有力大学の合格者数だけではなくて、独自の評価項目をいろいろ立てています。その中に探究活動も入っています。海外研修とか、特別活動とか、部活動なども含んでいます。府立高校も含めた新たな学校評価基準になり得るかもしれないと私は思いました。
いわゆる高校の評価といいますと、どうしても週刊誌に出てくる、有力大学に何名合格したというところが非常に目立ちます。しかし、それだけが学校の評価のようになって独り歩きしてしまうのでは、まずいのではないかと。
その学校の様子なんですが、この10進学校の中で、この制度が始まってからトップの評価をずっと取っている大阪府立天王寺高校というところに取材に行ってまいりました。これは校長室で先生方にヒアリングをしているところです。
いろんな質問したんですけれども、その中で1つ、学習指導要領の改訂に伴う方向性ということを先生方にも聞いています。
「直接の議論はこれからだが、既に方向は先取りして実施している。アクティブ・ラーニング、評価の改善、国際的な交流、卒業生の講話を聞くというようなことを既に、ずっと入れてきた」ということでした。
それから、理数科というのを設置した時代があったんですが、その頃から課題研究、探究学習、今後のカリキュラムとか大学入試改革にもマッチするようなことをやってきたと。
高校がこういう試みをするというのは結構大変で、また入試の実績との兼ね合いも苦労すると思うんですが、「常に先進的な試みを取り入れることをやってきているので、改革にはアレルギーがないんだ」ということをおっしゃっていました。
次は授業風景で、私も授業を幾つか見せていただいたんですが、これは数学の授業です。机を寄せ合って4人グループのグループワークを取り入れた数学の授業。高校の数学のかつての授業とは思えないぐらい、にぎやかなアクティブ・ラーニングになっていました。
次は、生徒へのヒアリングということです。春休み中でしたので、生徒さんにも来ていただいて、この学校についてどう思うかというようなことも聞いていました。
天王寺高校、天高と向こうで呼んでいるんですが、天高についてのイメージの変化です。最初は勉強漬け、スパルタではないかという不安があったと。入ってみると、部活とか行事が盛んで、忙しいが充実した日々を送っている。友人関係もとてもいい学校だと。
天高での生活のよい面と要望というのがありました。朝から晩まで、自分がどれだけ頑張れるか試せる生活で充実感がある。要望は、部活かなり一生懸命やっていますので、部活後にも行ける自習室があるといいとか。
それから行事の中身が濃く充実している。先生の学習サポートが丁寧だと。「桃陰セミナー」というのがあって、桃陰というのはこの学校の同窓会組織なんですが、その卒業生たちが現役の学生たちの学習指導に、例えば週末に来てくれるというようなことがあります。これをもっと活用したいと思うということ。
それから、授業アンケートなどで生徒の意見をよく聞いてくれるというようなことが出てきました。
現在・未来の天高の教育への期待というのは、これは生徒たちが言っていることなんですが、自由なコミュニケーションができる関係があるのはよいが、人前で堂々と主張するようなことは苦手だ。そういう立場に立たせて慣れさせるような教育・環境をというような要望がありました。
それから、「安全や勉学を重視して部活や行事を軽減するようにはならないでほしい。ただし、部活しながらでも、探究活動や研究発表などにも参加できる機会が持てるとよい」という意見がありました。
この日集まってきてくれたのは、部活の途中に来てくれた生徒さんたちなので、部活を、一生懸命やっているんですが、どうも、その探究活動などに参加する時間が自分たちは取りにくい。やっている人はやっているんですが、もっと部活をやりながらでも、そういう活動に参加していきたいんだということが出ました。
それから、ネーティブの人と話せるような機会を増加してほしい。受験には非常に強い学校なんですけれども、受験英語だけでなく、日常的なコミュニケーション力もつけたいと。
「先生方は非常に優しいんだけれども、生徒がそれに甘えてはいけない」と。これを生徒自身が言っていました。
今回の天王寺高校の取材を通してですが、伝統を継承しつつ進化する姿というのをかなり見ることができました。
伝統的に、この天高精神と言われているものがありまして、文武両道とか質実剛健ということを言ってきたと。
しかし、最近の天高のスローガンとしては、こんなことを挙げている。それを踏まえつつ、秀才を誇らず野人を誇るとか、名門を言わず実力を問う、明朗にして適度に楽しむことを忘れないというようなことをスローガンにしているということでした。
社会に生き、社会に開くリーダーを育成したいと。教育改革の実践も、かなり先導的に行ってきたという印象を持ちました。
最後、まとめに代えてということになります。
地域教育の活性化ということですが、特色あるプログラムを、学校枠を超えて提供可能と。いろんな学校の子供たちが地域のプログラムに参加することができる。
そして、学校とか教育委員会への要望としては、私はこんなことを考えました。広報への協力、これはぜひやっていただきたい。それから参加を推奨するような仕組み、それから学校が教室とか校庭を提供してくれるとありがたいと。やはり地域の方々、どこでプログラムを実施するのかと場所取りをしたり、非常に苦労しています。学校がそういう場所を提供してくれると非常にありがたい。
それから、学校によっては、生徒がどんなプログラムに出てきたかということを相互報告しています。総合的な学習の時間で、お互いに自分の出てきたプログラムを紹介する、どんな体験をしたかを報告するというようなことによって、ほかの子供たちも参加を促されると。それ自体が、いい学習になっていると思いました。
それから、地域の方たちというのは、例えば環境問題とか非常に詳しい方もいるんですが、教育に関しては決してプロということではないと。もっと学校の先生がいろんなアドバイスをくれるとありがたい。子供たちに教えるときには、こんなふうにやるといいんじゃないかというようなアドバイスも少し頂けるとありがたいというようなことを言っています。
プログラムへの要望です。この中に高度で挑戦的なもの、やはり今回のテーマでもありますような、特異な才能を持った子供たちがかなりチャレンジングな活動ができるというようなものも入れてほしい。もちろん大学がやっているようなプログラムで、そういうものもあるんですが、どうしても地域が限られてしまう。これをもっと、例えばオンラインなども利用しながら、そういうことができるといいのではないかということです。
2番目の学習成果を発表する場の設定・拡大です。大学とか、学会とか、企業なども、社会貢献とか後継者育成の場として、ぜひ盛んにしていただけるといいと思います。
これが活動実績として、例えば大学進学であるとか、就職の際などに、こういうことを評価することもできるというような仕組みもあってよいかと思います。
例えば推薦入試などをやっているところで、こういうことを評価してくれるというところもあります。それはそれで、子供たちの一つのやる気にもなるし、報われたということにもなるかと思います。
大会やコンテスト等をもっと広く周知してほしい。
文科省には、できればこの「学びんピック」というのを、私はいい制度だと思いましたので、どこかに委託するのでもいいので、復活していただけるといいのではないかなと思いました。
学校における探究活動等の促進とか評価です。
学校評価とか教員評価というのを、もっと基準が拡大されていいのではないかと。いろんな探究活動をやっているとか、そういう学校であるとか、あるいはそういうことを熱心にやってくださる先生というのは、教員評価にも反映されていいのかなと。
学校をつなぐ役割を果たす学校とか教員。先ほどの天王寺高校でも、天王寺高校だけでやっているのではなくて、近隣の学校に呼びかけて、探究学習の発表会のようなことを組織していました。すると、いろんな学校の生徒さんたちが、いろんな発表をすると。それは広く、この活動を地域に広めていく。単独の学校ではなくて地域にも広めていく。継続性も出てくるという活動にもなると思います。そういうことも推奨していくようなことも必要ではないかと思いました。
それでは、私からは以上です。御清聴ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。今、奈須先生と市川先生から、それぞれタイトルに従って、お話をいただきました。お二人とも、きちっと時間どおりにやっていただきましたので、議論の時間がたっぷり取れると思います。
それでは、これから会議終了までの時間、約1時間ですけれども、意見交換の時間としたいと思います。本日の発表内容に関する御質問があれば、おっしゃっていただきたいと思います。また、発表内容に関連した御意見や、今回の発表には直接関係ないということであっても、本会議の趣旨に照らした自由な御意見等ありましたら、それについても御発言をいただいて結構でございます。ただ、会議時間の都合上、お一方、一度の御発言は3~4分以内に収めていただければと思います。
それでは、質疑等、意見交換に入りたいと思います。既に松村先生、本田先生からお手が挙がっているようです。松村先生、先にお願いできますか。
【松村委員】 奈須先生、市川先生、ありがとうございました。
前回の議論の方向と整合性のある方針でお話しくださって、非常にありがたいです。才能教育の在りかと私、前回、申しましたけれども、やはり通常学級での個別最適な学びをベースとして、そこに特別支援教育とか学校外の活動が連携して実施されるべきと思います。それの具体的な例を示してくださったと思います
そういう全ての児童生徒の拡充、これを中心として、それを通じて、飛び抜けた才能も浮かび上がっていきます。ですから、先取り学習、どうしても進んだ内容を学習するということは自然に生じるわけですけれども、そういう先取り学習も、上位学年の単位修得という意味での、厳密な意味での早修とは明確に区別して、発展学習とか自由進度学習とすれば、拡充に含めることはできます。そういう拡充の在り方ですね。
それは、これまで既に、今お話しくださったようなのが蓄積されていますので、そういう実践を手がかりに検討していったらと思います。
奈須先生にお尋ねしたいんですが、個性化教育は、緒川小学校などでは異なるタイプの活動が組み合わさって、全体として非常に優れたモデルになっていますが、例えば、その中の自由進度学習だけとか、自由研究学習だけとか、それだけでもやるのに価値があるので、どんどん全国で広げましょうと、そういう方向で進んでもいいのか。それとも、そういう一部だけの抜き出してやっていくというのは、何かまた問題も生じるのか。
こういういろんな活動を先生方が自分で準備するというのはなかなか大変でしょうけれども、そうすると、例えばそこに個性化教育パッケージみたいなのを、何か教育産業が勝手に開発して、それはたしかに使いやすいけれども、そういうことが生じると、何かまずいことも起こるんじゃないかなと思うのですが。だから、今まで日本個性化教育学会できちっと開発されてきたことの理念は共有して何か別のやり方でどうぞ御自由に、さらに発展させてくださいというふうにさせてもいいのか。その辺の問題点を、ちょっとお伺いしたいと思います。
市川先生にも質問があるんですが、また、もう一度改めて、させてください。すみません、よろしくお願いします。
【岩永座長】 ありがとうございました。奈須先生の先ほどの御発表、特に緒川小の実践ということに注目しての御質問だったと思いますが、奈須先生、いかがでしょうか。
【奈須教授】 松村先生御指摘のとおり、カリキュラム全体のバランスというのはとても大事だと思います。最盛期の緒川小でも、個別で精いっぱい組んでも、教育課程上4割を超えなかった。多くは結局、まず集団学習でやるんですね。
でも最近、先ほど見せた天童の学校なんかでも、本当に学期に1回か2回しかやらないんですけれども、それだけでも、やっぱり子供が自分の得意を見つけて自律的に学ぶという力がぐんぐん伸びてくるということは見えてきています。
先般も、あの学校で、1学期の終業式のときにオンラインでやったわけですけれども、何も言わないのに放送委員会の子たちが来て、あしたの終業式は私たちでやりますからといって、子供が全部仕切ってやってくださったそうです。
そうやって全面にわたる自律性みたいなのが育ってくるんだなということを感じていました。
つまり部分的にやっても大丈夫だろうと思っています。例えば今、単元内自由進度学習オンリーで、それを従来のカリキュラムに付け加えて取り組んでいる学校もありますが、いろんな成果が出ています。
また、高等学校の探究というのは、先ほどの自由研究学習をやっていると考えていいと思うんですけど、これもいろんな成果が上がっているかと思います。
先生が先ほど御心配になったように、やはりこれは、学校の先生方の自律性と創造性の中でつくられる、カリキュラム改革としてやられる、スクールスペースでやられるということがとても大事だと思います。
パッケージで外から投入されて、とにかくこれを右から左にやっていればうまくいきます的なものに乗っては、やはり問題だろうなと。AIドリルなんかも、とてもいいものができてきて、使えばいいと思っているんですけれども、上手に組み合わせて、先生方の判断できちんと使うということが大事なことだろうなということは、やはり思います。
もう一つは、先ほど個別化と個性化ということで申し上げましたが、子供たちに多様な学習の道具や機会が提供されるということ自体はとても大事なこと、個別化ですね。でも、やはり子供たちが自分で判断して使うということが大事で、いろんな提供されるパッケージとか、プログラムとか、私はあってもいいと思うんですけど、それを子供が判断して組み合わせて使うと。個別最適化されるのではなくて、自分で個別最適な学びを見いだして、それをだんだん自己調整しながら実行できるようにということが、今回の中教審の議論の中でもとても大事なことだったかなと思います。今後いろんな産学協同の中で、あるいはいろんな方が参入してくる中で、いいものがつくられて投入されること自体は望ましいことで、これを嫌ってはいかんと思うんですけど、それを学校あるいは教育委員会が自律的に使えるか。
一番心配しているのは、特定の教育委員会が、市内全部これでやるんだと、有無を言わさずこれをやれというふうにトップダウンで各学校に下ろすようなことがあるのはとても危険だなと。一部そんな様子も見られていますけれども、それはちょっと避けたいなと思っています。この辺の運営ということがとても大事かなと思います。
以上でございます。
【松村委員】 ありがとうございます。そうしたら、すみません、市川先生にお尋ねしてもよろしいでしょうか。
【岩永座長】 ちょっとお待ちくださいね。本田先生から手が挙がっているので、それを先に、それから松村先生。列の後ろに、もう一度ついていただく。すみません。
【本田委員】 ありがとうございます。信州大学の本田でございます。
【岩永座長】 よろしくお願いします。
【本田委員】 私も実はお二方にとても感銘を受けまして、ぜひお二人ともに質問したいんですが、まずは、じゃあ奈須先生のほうにだけ、取りあえず御質問させていただきます。
先生のやられているような取組というのは、私ども精神科医からしましても、とても興味がありますし、医者というのは、もともと個別的に一人一人を診ていきますので、どちらかというと、あまり全体のプログラムは本来要らないんじゃないかとすら思うほどの立場でございます。そんな中で、先生の個性化という視点はとても重要だと私も感じているところでございますし、私が専門であります発達障害の方々にも多分、とても有効なプログラムなんだろうなと感じております。
1点御質問したいのが、先生のスライドの中でも、そうはいっても二本立てで、国民の教育として不可欠なものを共通に習得させるという側面もやっぱりあるということで、全ての子供に共通の基礎学力を等しく着実に保障すべくという発言があったと思うんです。恐らく教育の先生方からすると、これが共通のベースでさらっと流されたんだと思うんですけど、我々からすると、例えば重度の知的障害のお子さんがいたり、それから基礎学力というほどではないですけれども、いわゆるしつけ的な面で外れてしまうADHDの子供さんや自閉スペクトラム症の方の場合に、全ての子供に共通というラインがあることによって、そこから既に外れてしまうと。
例えば非常に優れた才能がある方の中にも、ある特殊な才能以外に関しては物すごく社会性の成長が遅くて、でも、そこを個別化、それこそ先生のおっしゃる言葉でいうと、個性化して対応することによって、むしろ教室にとどまることができる人も大勢おられると思うんですね。
その意味で、ちょっと私が日頃現場で見ている印象として、その全ての子供に共通のハードルが近年、物すごく上がっていて、それによって個性化のことを考える以前のところで少しはみ出してしまっているような人たちがたくさんいるような印象を受けるんですが、先生、その辺りのことはどうお考えでしょうか。
【岩永座長】 奈須先生、お願いします。
【奈須教授】 先生のおっしゃるとおりだと思います。そのハードルをどの辺りに設定するかということ、1つはこれ、カリキュラムですね。どの内容を身につけるかということ、あるいは、それをもっと、どのやり方で身につけるかということ。
今日申し上げたのは、内容のハードルを変えなくても、方法を多様化することで、かなりやれるんじゃないかと。今は、方法が画一化されているので、必要以上にハードルが高くなっているんじゃないかと。今アメリカでユニバーサルデザイン・フォー・ラーニングなんていうことも言われていますけど、学習障害が起こっているというのは、子供の側ではなくて環境の側、あるいは環境との相互作用なんだという見方が広がってくることが大事かなと、まず思っています。
一方で、でも、やはり内容的に厳しいということも当然起こってくるだろうと。だから、そこの部分が必ずしもその子に、それが身につかなくても、別なやり方でやれるということもあるんだろうと。
先ほど申し上げたwell-beingに向けての筋道が多様であるという言い方、まさにそういう言い方で、伝統的には資質・能力は共通に身につくとやってきたんですけど、最終目標はwell-beingなので、その子がよりよく生きていく、その子が社会に貢献していくという、その子なりの筋道を一緒に探すということが、これからとても大事になってくると。そこに、むしろ先生のような御専門の知識が生きるんだろうと思っています。
一方で、国民統合ということになると、これは内容というよりも、もう少し一緒に暮らしたとか、一緒に学んだとかという経験かなと思っています。内容というよりは、もう少し社会生活を共通にした、同じ釜の飯を食ったみたいな話ですよね。これをどの程度まで共通のものとして要求していくかと。
また、ただ一方で、その経験を与えたことによって、その子がうまく育つかどうかという話はまだ残されていて、その辺も今後、特別支援の御専門の先生と一緒に丁寧に御議論して、カリキュラムをもっと柔軟にしていく。それから、先ほども申し上げましたけど、その子の能力という考え方や自律という考え方も、ちょっと変えていかなければいけなくて、一人で誰の助けも借りずにできることに限定して学力を考えていたということに対して、やっぱり見直していく。2Eの子供なんかも、そういうところを見直していかないと、その子らしい育ち方ということになっていかないのかなと思います。
以上でございます。
【本田委員】 ありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。それでは、続々と手が挙がっておりまして、こちらのほうで順々に御指名させていただきます。
まず、根津委員から御質問の手が挙がっておりますが。
【根津委員】 まず松村委員の御発言の後で結構ですけど。私のは感想ですので。
【岩永座長】 じゃあ、先ほど予告がありました。
【松村委員】 いや、いいです。どうぞ根津先生、お先に。
【岩永座長】 いや、それは松村先生らしくないですね。どうぞ。先ほどの予告の御質問、市川先生の。
【松村委員】 私ですか。すみません。市川先生、お尋ねしたいのが、学びのポイントラリーとか、学びんピックに限らず、学校外でされる活動ですね。それは、子供が個別にそこへ出ていって、楽しかったねとか、何か自信がついたとか、そういうふうに思って満足したりしなかったりします。そういう学校外での活動の成果を学校に持ち帰って、何かそれの楽しさとかをほかの子にも伝えて、また、ほかの子がそれに興味を持っていくような、SEMのタイプⅢからタイプⅠの拡充への還元に当たりますが、そういう、例えば今ですと、ネットでホームページとかYouTubeで何か公開するとかで興味を広げていくような、そういう新しいやり方を取り入れて、これまでされてきた学校外での活動を広げていくような、何かそういう方向性は考えられないものでしょうか。
【市川委員】 そうですね。先生おっしゃるように、まず地域教育の活性化という考え方は、これまで学校と地域の連携といったときの考え方と少し違うと思っているんですね。これまでは、どちらかというと、学校という教育の場に地域の人たちが何かそれを支援する、協力していくというような、コミュニティ・スクールも運営にも少し参加していくとか、そういう考え方だったと思うんですけれども、この地域教育の活性化の考え方は、むしろプログラムをやっている主体は地域なんですね。地域の人たちがいろいろ企画して実施しているプログラムに、そこに子供たちに出ることを促すと。
ただ、学校は無関係ではなくて、それに参加することを奨励したり、それから、そこでの活動をまた学校に持ち帰って、お互いに共有したりするという意味で、これは今、文科省のほうでも、学校と地域というのは、要するに子供たちの教育を一緒に担っていくパートナーなんだと、そういう考え方がかなり出てきていると思います。そのパートナーシップの在り方というんですかね、その一つとして、学校によっては、今、先生おっしゃったような、地域での活動の様子を学校で報告し合う、これを総合的な学習の時間で、お互いにプレゼンしたり、そういうことを共有して、そしてまた子供たちが、さらにいろんな地域のプログラムに出ることを促す。そういう意味での学校と地域の連携をやっているところもあると。
私はもっとやっていただけるといいなと思っているんですけれども、先生おっしゃるような、そういうところもあるということです。
【松村委員】 ありがとうございます。
【岩永座長】 よろしいでしょうか。それでは順次、手が挙がっておりますので、先ほど留保された根津委員からお願いします。
【根津委員】 御発表ありがとうございました。2件の御発表について、それぞれ御回答いただく時間もないかと思いますので、感想、意見ということを述べさせていただいて、最後に1つ、ちょっと別に申し上げたいことがあります。
まず、奈須先生の御発表ですけれども、指導の個別化、学習の個別化となりますと、先ほどカリキュラムというお話ありましたけど、教育課程の個別化といいますか、個別最適な教えといいますか、あるいは時間割の個別化、大くくり化のようなところですね。先ほど緒川小のお話等もございましたけれども、そういったところに興味を覚えました。
ただ、そう見た場合に、教育課程の特例制度、これは市川委員の御発表の中でもSSH、SGH等のお話あったわけですけれども、それは前提というのが、学校がやはり主な単位になっていると思うんですね。ですので、必ずしも個人や学級といった単位が前提になっていないというところはあるだろうと思います。
また、量的な拡大にとって、この一斉教授というのは非常に効率的ですし、御発表の資料の中にもありましたボリューム・ゾーンという言い方は、まさにそういうところだろうとは思うのですけれども、これは1970年代以降、世代的に私はゆとりの時間というのを経験した世代なんですけれども、これは質的な拡充にとってみると、この一斉教授というやり方はどうなんだろうかという議論が、この半世紀ぐらいは続いているのかなという印象も持ちました。
奈須先生の御発表について、最後ですけれども、教員養成としてはどうすればいいのかなと。そういうことができる教員はどういうふうにすればいいのかというのは常に頭にあるんですけれども。とすると、これは教員養成に限らず、大学をはじめとする高等教育機関での特別支援教育をどういうふうに考えるか、さらには合理的な配慮というところまで含まれる課題なんだろうと感じました。ありがとうございました。
次に、市川委員の御発表ですけれども、感想としては、公立と国立、私立との違いというものをどういうふうに考えればいいのかなというのは少し気になったところです。当然、公立の場合には異動がありますし、この異動のルールも地域によってかなり様々なわけですけれども、施設や、あるいは公務員かそうでないかというところもあります。
最も大きいのは恐らく、御発表の中にもありましたけれども、教育委員会というところがどういう役割を果たすかというのは大きく変わってくると思います。
関連して、今回のテーマからしても、義務教育と高等学校との違いというものはかなり大きいのではないかなと思うんです。御発表の資料の中にも高校生はなぜ来ないのかというのがありましたけれども、あれは結構印象的で、先ほどの奈須先生の御発表の中でも、終業式を小学生がですかね、やりますというようなお話ありましたけど、むしろ高校生ぐらいになると、参加をするというよりも、もう運営側をやるんじゃないかなんて気がするんですね。
あと事例の中では、探究やSSH、SGHというのは、どちらかというと進学校と呼ばれるところの高校生が多めな印象かなと思うんですけれども、それこそ多様な児童生徒のいる公立が多い義務教育ではどうすればいいのかと。ここでも先ほどの指摘を繰り返すことになりますけれども、教育課程編成の特例というのは学校が主な対象になっているんだなというところを改めて認識した次第です。
地域ということになりますと、子供会の高校生版をどういうふうにつくるのかということにもなってくると思いますし、今回こちらの有識者会議ではどれほど扱われるか分かりませんけれども、社会教育の場での高校生の参加状況といったものですとか、あるいは定時制や通信制も高等学校の場合にはありますので、高等学校にとって地域とはどこなのかという、古くて新しい問いだろうと思うんですけれども、学区の広さや義務教育等についても、義務教育との違いについても考えていく必要があるんだろうと思いました。
最後に一言ですけれども、ちょっと今、特例制度を調べていた関係で、学校教育法施行規則、省令のほうを拝見していたんですが、第54条というものがあります。読み上げますと、児童が心身の状況によって履修することが困難な各教科は、その児童の心身の状況に適合するように課さなければならないとあります。これ各教科に限定していいのかなということや、あるいは困難というところに限定していいのかなというところは、今少し、思いつきですけれども、感じた次第です。
若干時間超過しました。失礼しました。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。特段の具体的な質問ということではなくて、印象ということで御意見を頂きましたが、何か、今の根津委員のお話について、お二人の先生からありますでしょうか。
【市川委員】 じゃあ少しだけ。
【岩永座長】 市川先生。
【市川委員】 いろんな問題が出てきましたので、全部はとても言及できないんですけれども、まず最初に、公立と私立の違いみたいなことがありましたよね。私も実際、学校に伺うのは、小中高通じて、ほとんどが公立だったんですね。大学定年後に初めて私立の中高一貫校に今、校長補佐として勤務しています。随分違うものだということに改めて驚いています。職員室の中に私のデスクがありますので、先生方が一体どういうことに注意をしながら教育をしているのか。
恐らく私立学校もいろいろだと思いますけれども、やっぱり基本的には、かなり受験というものを意識しています。これ、やっぱり進学実績というのは、ある種の学校にとっては、もう学校の存続に関わるものなんですね。1人でもいい大学に合格者を出すということが、次の受験生どれぐらい来てくれるかに響いてきますから、非常に受験ということにセンシティブになります。ですから、教育改革の流れということよりは、もう受験の動向に敏感というところも一方ではあります。
ただ、一方では、子供たちの個性を伸ばすという学校の独自の教育目標を見取った、かなり自由な教育というのをやっているところも一方ではあるようです。
私立学校ですから、いろんなところがあっていいと思うんですけれども、私から見ていると、やっぱりある学校に入ってしまうと、もうそこでのカラーが強過ぎて、入ってみたらこうだったと。ちょっと教育改革で言われているような理想的なこととも違うし、逆に、これで学力がつくのかというようなところもあります。相当、自由ですから。しかも、そこに教育委員会は、私立に対しては基本的にやいろんな研修とかをやりません。ですから、私が立場上研修をやっているわけなんですけれども、これがどれぐらい受け入れられるかというのも、私立学校には私立学校のやり方、伝統とかいうのがあって、大分それが難しい。
そういう意味でも、どっちの極端にもなり得る。そういう自由度があることがメリットでもありデメリットにもなっている難しさを感じました。
それだけに私は、むしろ地域に期待したいと思っています。学校は、例えば物すごく受験中心、勉強中心のところに入ったけれども、地域に行くと、またいろんなプログラムがあって、自分の個性に合ったプログラムに出ることもできると。ここには、いろんな学校から、いろんな子供たちが来る。それを実施している社会人もいろいろというような環境。
つまり、学校だけに絞られるのではなくて、学校プラス地域で、自分のやりたいことを伸ばしていくという環境が、子供にとっても、あるといいのかなと。
それからもう一つ、おっしゃるように、高校生になると、むしろ小学生向けのプログラムをつくって実施するとか、私たちはそれも期待したんですね。高校生は、むしろスタッフ側に入るとか、自分たちで企画運営して、小学生向けプログラムをつくってあげようとか、そういうことも提案をしたんですが、やはり難しいです。
塾と部活というのは、やはり高校生にとって非常に大きい。首都圏ですと、これにアルバイトというのも加わったりして、子供たちは、地域に関心を持ったり、社会人と学ぶということについては、非常に難しい。
「帰宅部」と言われている、部活をしない生徒たちくらい来てくれるといいなと。部活やっていないんだったら、こっちに来てくれるといいなとも思いましたけれども、これも非常に難しいです。
ただ、そういう生徒たちをどうやって誘っていくかということも、ある程度火がつけば結構広がっていくということもあり得ると思いますので、これは諦めてしまわずに、これからもチャレンジしていきたいと思っています。
【岩永座長】 ありがとうございました。それでは、続々と手が挙がっておりますので、秋田委員から、次にお願いします。
【秋田委員】 ありがとうございます。お二人の先生、大変興味深い御発表をありがとうございます。
奈須委員のお話から、確認をしたのは、早修ではなくて、拡張的な発想で、特に学校においては、広げていくことの大切さです。ただし、そのときに、個性化の部分で、例えば特定分野で特に秀でている子供たちを全て、その特定の学級担任が引き受けることは現実的には非常に難しい部分がある。そこを逆に、大学や、地域や、いろいろな専門家とつなぐ在り方という形で外部リソースをいかに準備していくのかが問われると思います。
一方で、学び方の多様性については、今後やはり、このギフテッドの子に対してだけではなくて、教員自体のほうが研修によって、「環境を通しての教育」というのは、幼児教育や特別支援では本当に必須なわけなんですけれども、その発想や多様な在り方ということに関して、幅広く一般の教員向けに研修をしていくことが大事だと思います。その研修の中に当然ICTも入るわけですけれども、そうした教員研修でも今回はギフテッドにターゲットを置くんですけれども、それを拡充で捉えるからこそ、教員が果たすべき役割として、何は新たに学ばなければいけないのか、逆に内容のところはより広く、より専門家とつなぐ道をというような方向性もあるのかなと思いながら伺っておりました。
特にカリキュラムの話では、私の知っている生徒たちなどは今、いわゆる通学制ではなくて、通信制の学校に通っています。通信制だと、別に通信制の方がよい悪いではなくて、自分でカリキュラム選択ができるということによって、自由な選択で伸ばしていく部分もあるのだろうと思います。今後その柔軟性あるカリキュラム選択ということを、より特に高校、大学では考えていくことが大事だと思いました。
一方、市川委員のお話の中で私がなるほどと思ったのは、地域で様々なオリンピア的な学びんピックのようなものに出るということで、そこの実績が、評価として役立つかです。、このギフテッドの問題で考えなきゃいけないところの一つが、進学や進路選択です。比較的、大学は推薦入試等AO入試も枠も広くなっていますが、高校の内申書、調査書というようなところで縛られていると、この子たちにとっては大変に生きづらい部分というのが、やはり出てきているだろうと思います。その辺りについて、より今後、地域の人が認めてくれることの活用とか、子供自身が今後やっぱり最終的には学校を出て社会に貢献していくと奈須委員が言われたところの場合のように、地域や社会の中でありようを自分でも見いだしていく機会として、市川委員が言われたような方向性をさらに促進していくとか、そうした機能に力点を置いていくことが大切だと思います。特定の個人だけが優秀でないかということ以上に、そうした子たちも互いにつながり合える、そういう地域の場が学校以外にも、企業や、地域の方々によってつくられていく可能性を御示唆いただけたのかなと、私自身は伺っていて思っておりました。
やはり、どうしても進路指導ですね。そこの部分で、今後やはり公立校の先生等が、こうした子供たちに、どう対応していったらいいのかというようなところについては、ある程度示唆ということが、子供たちの生きづらさを、より可能性のある進路が選べる形にしていけるとよいのではないかと思う次第です。
以上になります。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。私もちょっと見込みが甘かったんですけれども、一問一答式だと、今手を挙げていただいている方全てはとても終わりませんので、恐縮なんですけれども、奈須先生、市川先生、テイクノートしておいていただいて、皆さんの御意見なり御質問を一通り聞いてから、お二人のお話を伺いたいなと思いますが、進め方としては、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは続きまして、中島委員から手が挙がっておりますので、よろしくお願いします。
【中島委員】 ありがとうございます。ちょっとうるさいかもしれなくて恐縮なんですけれども。しかも、ちょっと遅れてきまして大変恐縮です。ただ、資料のほうを拝見させていただきまして、全部見ています。非常に興味深いお話ありがとうございました。
改めて、私は文部科学省さんとのこの委員としてのところというのはまだ経験が浅いなと思っているんですけれども、ただ、やっぱり文部科学省さんからこういう発信をするというのは物すごく、現場の先生方にとって大きいので、ここでどういうことが語られるかということはすごく大事なことなんだなということを改めて思っていまして。その中で、できることが2つあるなと。思想とか、何かこういうことがこれから大事なんだよというのを見せるという意味で多分、今回の御発表もあると。もう一つは、本当に支援をするというところかなと思っています。
その辺りで、私もちょっと、今伺ったことで私見を述べさせていただくので、ぜひそれに対する御意見とか、皆さんがどういうふうにお考えになるかを伺えたらと思っています。
思想を見せるというところでは、今日、資料でも拝見させていただいた指導案を見せるとか、子供たちに授業をさせるというのはすごく面白いなと思っていて、これはどこの学校でも、やろうと思えばできることなので、あえて今までは隠していたところを見せるというのは、私はすごく子供たちにとってやりがいというか、役割もいろいろ考えてやるんじゃないかなと思いました。
あと異学年のグループでやってみるということも、これもいろんな学校でできること、あと凸凹の大事さ。やっぱり今でも、私の周りでも、よくいろんな話を聞くんですけれど、意外に特別な支援のところとかでも、逆に凸凹であることをなるべく避けようというような意見が出たり、やっぱり凸凹があり過ぎるので来るとか、何か問題があったというよりも、そういうことから、何となく普通の学校には凸凹は似合わないみたいなことが起こったりもしているみたいです。なので、そういう、でも凸凹があるということ自体が悪いことでは全然ないと思いますので、何かその辺りの発信。
あと環境とか時間割とかも、もしかしたら、その柔軟にできるというのが、カリキュラムというだけじゃなくて、いろんなやり方があるんだよということが文科省さんから発信されるということは結構大きいのかなと思っていまして、ちょっと試してみようかなと、いろんな学校が思えるようなことは大事かなというのが、まず思いました。
同時に、やはり支援ということがちょっと出てくるかと思っています。やっぱり格差の問題とか、参考資料にも書いていましたが。先ほど、確かに一斉に、例えばこの市とか県とかは、これをやりなさいと渡しちゃうのは、私もあまりよくないと思っているんですけど、同時に、私がアメリカに住んでいるときは結構、学校にいろんなプラットフォームとか、学校に行くと本当に無料で使えるようなものがたくさんあって、そういうものって先生たちでは決して手に出せない、自分たちで作っていたら間に合わないようなものがたくさんありました。それを、だから一律で。アメリカでもいろんな試行錯誤があったみたいで、やろうとして失敗したこととか、いろいろあるみたいなんですけれど、ただ、やっぱり経済格差のこととか、いろいろ地域格差のことも考えると、一つ思っているのが、多様なオプションを地方自治体とかが例えば見せて、各学校とかが選べるようにするとか、何かそういう。やっぱりどうしても先生たちだけで、いろいろカリマネをしていては結構大変な中で、何か利用できるリソースが図書館のようにあるという状況で、そこに多少なりとも金銭的な部分の予算とかを地方自治体とかが持って、でも一律に渡すのではなくて、オプション的に選べるというような、何かしら条件を決めるのか分からないんですけど、何かそういうやり方がないのかなということがちょっと思った次第です。
特にそれは、本当に地域格差とか、経済格差とか。学校に来たら、ある程度のものがある。それは学校に行けない子たちにも何か考えなきゃいけないと思うんですけれど、そんなことができないかなと思いました。
あとは、秋田先生からのお話、ちょっと近いんですけれども、やっぱり先生方の研修、体験の場、それは本当にこれから大事になるんじゃないかと思ったことと、あと、いろんなコンテスト、さっきの学びんピックの話で、私も同じことをちょっと思いまして。ああいう場がたくさん出るというのはすごくいいなと思って、それがやっぱり受験とか、今後に、多分これから活動報告書とか、いろいろ出ると思うんですけれども、高校受験もそうですし、もしかしたらその後も、結構海外だと、そういういろんな地域のいろんなコンテストを出ることが、毎回それが履歴書とか、企業に至るまで書いている子たちも多くて、結構皆さん主張されるので。でも、何かそういうことを、逆にそれが多様な形であって、その子たちの誇りになっているならば、何か少ないコンテストで限られた人だけが書けるものじゃなくて、いろんな多様な形であって、その人の個性が、それを通じて見えるようなものがあればいいんじゃないかなということを思っていまして、すみません、長くなったかもしれません、そんなことを思っていました。
なので、どういうふうな支援ができるかということについても伺えればと思いました。ありがとうございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。では続きまして、福本委員から手が挙がっております。お願いします。
【福本委員】 ありがとうございます。奈須先生、市川先生、御発表どうもありがとうございました。
奈須先生の指導の個別化と、それから学習の個性化のところに関しまして、やはり先生もおっしゃっていましたけれども、全ての児童生徒と、それから環境とのマッチングという考え方が非常に重要なのかなというところは本当にそのとおりだなと思っておりまして、その際に、特に学習の個性化のほうなんですけれども、子供たちが自分の学びを進めていこうとしたときに、どの領域に興味があったり、どんな方法が試していけるといいのかというところに、やはりメタ認知的な、自分のことをきちんと知っていく、どういう状態なのかということをモニタリングしていくような、そういう新しい自己評価というものが必要になってくるのかなと思っています。
その辺り、先ほど、昔からあれだけの個性化と個別化の現場があったということも非常に驚きだったんですけれども、今のICTを使いながら、そうしたモニタリングの部分ですね。子供たちの自己評価と、それから先生方が見取っていらっしゃるアセスメントの部分というのが、どのような連携をしてくると、より子供たちの学習の個性化が進んでいくのかというところに、ちょっと御意見頂きたいなと思いました。
市川先生のほうに関しましては、本当にすばらしい取組、15年間でやっていらっしゃったということで、本当にこれからますます必要になってくるだろうと私も感じています。
私も学校になじめない子供たちに関わってきましたけれども、やはりみんな学ぶ場所がないという声を多く聞くんですね。聞くんですけれども、実は地域の中に存在している。ただそれを知らないだけというケースもかなりありまして、その地域のリソースをきちんと拾い上げて、それがポータルサイトなのか、どこかに本当に一元化される形で、地域外のものも拾えていくようなものがないと、なかなか情報格差と、それから機会はあるけれどもマッチングはうまくいっていないという状況が緩和していかないのかなと思いました。
その中で、地域のリソースを開放していくということが結局、学校の中の先生という立場や家庭の中の親御さんだけではなくて、いろんな方々と関わり合いをする中で、子供たちがいろんな人たちに存在を認めてもらえる、自分のいいところを拾い上げてくれるというところで、自分自身を見詰めていく視点が非常に多角的になるんじゃないかなというところでも、学びの拡充、学びを多様化していって、子供たちを支えていくというネットワークが強固になっていくんじゃないかなと非常に期待しています。
その中で課題として先生も挙げていらっしゃったところなんですけれども、継続していくために、例えばどういう予算が必要なのかというところと、それから、どのような仕組みが必要なのか、認定制度なのか、それとも検証していくような質の担保というものが必要なのかというような議論があると思うんですけれども、その辺りで、どういった、そこは仕組み化というところで、ある程度トップダウン的なものも必要になってくるのかもしれないんですけれども、どんな仕組み化が、先生が考えていらっしゃるその課題を解決する上で一番重要になってくるのかという辺りなんかも御意見をお聞かせいただけるとありがたい。
もう一点だけ、すみません。学校と、その際に、地域との連携がかなり密に一応なってくると思うんですけれども、そのときにハードルになってしまうところがどこにあるのか。お互いに生徒児童を取り合うのではなくて、お互いに情報を共有しながら、その情報連携がスムーズにいくというところで、何がハードルになってしまっているのかというところなんかも御経験の中から教えていただけるとありがたいです。
私のほうからは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【岩永座長】 ありがとうございました。具体的な御質問をいただいて、すぐにというほうがいいのでしょうけれども、列が長くなっておりまして、申し訳ございません。一通りお話を、御意見、御質問を受けた後で、お二方にまとめて御回答いただく、あるいは御意見を頂くという形にしたいと思います。今のところ、あとお三方、手を挙げておりますが、今村委員から次お願いできますか。
【今村委員】 発言させていただきます。すみません、いっぱいお聞きしたいことがあり過ぎるので、ちょっと奈須先生と市川先生には感謝にとどめて、質問は、ほかの方とかぶっていたので、別の点をさせていただきたいと思います。
奈須先生の自律の概念が変わっているんだ、進化しているんだというメッセージと、国民を統合するという考え方、そもそもここからどうするのという問いは、かなりこの問題の本質だと思いましたし、市川先生の学校以外の学びの場というところ含めて可能性を伸ばしていくということを戦略的ちゃんと考えよう、にというところは本当、重要な観点だと思いました。
その上で、事務局の方が初めに御説明をされていたアンケートについて私からはお聞きしたいところです。今、全国学調の結果がそろそろオープンになるのかなと思うんですけれども、今度このアンケートと全国学調の結果等は、ひもづいて分析される御予定があるのかというところが、すごく重要だと思っています。
今この、特にギフテッドと呼ばれている子供たちとか、特異な才能がなかなか社会に受け入れられずに苦しい思いをしている子たちの支援を主にしてきたのは、やっぱり保護者の方がメインだと思います。特に学校でうまくいかなかった子というのは、とにかく保護者の方のソーシャルネットワークや経済的な支援や時間にといった伴走によって、何とか才能を開く子もいれば苦しい思いをしている子もいるという現状だと思います。その中で、私としては、このアンケートが保護者の方にきちんと届くものになっているのかというところと、その保護者の方のどういう家庭環境等がこういう支援につながっているのかという分析が入らないといけないと思っています。そうすると、このアンケートだけだと、どこまで分析し切れるのかなと疑問に思いました。
特に、まず簡単なところから言うと、質問の仕方も、保護者の方にはいろんなリテラシーの方がいらっしゃる中で、当該児童生徒とか言われても、親としては、うちの子のことなのかみたいに思ってしまったりしますし、おたくのお子様ぐらいの言い方にしていただいたほうが、伴走してきた中で、もしかしたら、とても苦労されている方々が答えやすい聞き方になると思います。特異な才能というのもすごく難しい言葉で、多分、多くの人は困った子と思っているかもしれない中で、この質問の聞き方が、一般親にはとても難しいです。ただ、学校の先生方とか支援者の方も対象にされているということなので、その方々には、ぎりぎり届くのかなとは思うんですけれども、やっぱりメインで困ってきたのは保護者の方だと思うので、その方々が答えられるものにしていただく必要があると思います。
もう一つ、情報提供としてなんですけれども、8月に、才能はみだしっ子フォーラムというのがありました。私は視聴者でしかないんですけれども、ギフテッドのお子さんをお持ちの御家庭の方々がつくられているチームを運営されている方々が、当事者にアンケートを取られたそうで、いろんな分かりやすい質問をされて、約300件ぐらい回答が集まったというように聞いています。
そこにはまさに、ここのアンケートの中で見えてきたらいいなと思うようなことも回答に入っていたので、もし可能ならば、私のほうからその団体にお声がけをさせていただいて、この会議に資料提出させていただけたらなと思っていまして。もちろん文科省さんが独自で取られるアンケートというのは、そういった支援が届いていない人に届けるという意味でとても重要なものなんですけれども、ちょっとこの聞き方だと届かないなということも踏まえて、当事者団体が行ったアンケートというのも参考にしたほうがいいかなと思いました。
ごめんなさい。時間がないこと大前提なんですけど、先ほど市川先生がされた学校外の学びをどう扱うかという議論が出てくるならば、現状のフリースクール、オルタナティブスクールは、憲法上、公の支配の中にのっとっていない学校なのですが、これをどうしていくのか、どう扱っていくのかということをまさに今後議論していくべきだと思います。ここでは、困っている子たち、不登校になった子、中にはギフテッドと言えるような子たちが受け入れられていて、例えば療育センターに通っていたみたいな経験をお持ちの方が、ちゃんとカリキュラムのあるオルタナティブスクールに入ることによって、すごく伸びていたり、生き生き学んでいたりするという実態もあります。そういったところに対しての経済的負担を完全に家庭に負わせてしまっているということも含めて、今後どうしていくべきなのかということも、この委員会では検討していくべきかなと思っています。
ちょっとずれた点になっていて申し訳ありませんが、私からは以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。今いろいろなことを、御意見を頂き、質問も頂いたんですが、お二人の先生に対する御意見とは別に、事務局のほうでというか、こちらの文科省の有識者会議を主催する側で答えなければいけない、特にアンケートに関することについては答えなければいけないところがありますので。今村先生の今の御意見等、御質問については、最後に回してよろしいでしょうか。事務局のほうから、あるいは私のほうからお答えしたいと思います。すみません、ということで、後回しになりますけれども、ちょっとお待ちください。
続きまして、大島委員からお手が挙がっておりますが。
【大島委員】 ありがとうございます。2人の先生方のお話、私も非常に感銘を受けました。
ちょっとお時間がないので、私はいろいろコメントもあるんですけれども、質問を2つさせていただきたいと思います。
個人的には、やはり学校、特にいわゆるフォーマルエデュケーション以外の学びの場ということで、特に、あとギフテッドも含めて、学校教育に、私、大学なので、大学からどのように貢献できるかということに大変興味を持っております。
市川先生に、まず御質問なんですけれども、議論の方向性として最初に、2ページ目に3つ挙げられておりましたけれども、一方で今、来年度から高校では、理数探究であったりとか、総合的な探究の時間ということで、カリキュラムの中に、そういう探究の時間が入っていくということで、これからだと思うんですね。
そういう中で、先生がやっていらっしゃった取組であったりとか、そういうのが結構、いわゆるフォーマルエデュケーションの中で、学校の現場の中で取り込まれるような形にだんだんなってきていると思うんですね。ですけれども、一方で課題があると思うんですね。
なので、そういうことを含めて、そういう学校外の先生がやっているような取組も含めて、うまく、これから起こる、そういう探究の時間を利用しながら、いわゆる資質・能力も含めて、学習者である、いわゆる児童生徒にどうやって関わっていけるかということですね。それについてお聞きしたいということが1点目です。
2つ目は奈須先生なんですけれども、奈須先生も、指導の個別化であったりとか学習の個性化ということで、小学校を中心に、いろいろと事例も含めて御説明いただいたということで、ちょっと同様の質問なんですけれども、実際に学校で、そういうふうな形で、いろいろなカリキュラムなどを含めてやっていて、そこでも、やはりヒットしないというんですかね、本当のギフテッドの子がいると思うんですね。そういう子というのは、かえって外に、いろいろ場を見つけたいということもあるのかなと思っていて、そうなったときに、それこそ学校外でのそういう場というのが結構、今いろんな形で提供されていると思うんですね。
なので、そういうところは、でも、うまく連携をしながら、そういう拡張したということですかね。学びの場が本当に、地域も含めて、カリキュラムだけじゃなくて、そういう人、あと場所も含めて拡張するということも可能になってきていると思うんですね。
あと、特に今オンラインも含めて、今度バーチャルでも拡張ができるようになってきていると思うんですね。
なので、そういうのって、でも、口で言うのは非常に簡単ですけれども、なかなかそれがうまい形でいかないジレンマというのも結構、学校現場であったりとか、あと学校の外での現場というのも課題として抱えていると思うんですね。
なので、それを何かうまく連携していくためには、今後どういうことが、多分一口で、すぐにはできることではないと思うんですけれども、どうしていけば、そういうことがうまく解決できるような方向が双方で見つけることができるのかなということで、もし、指針などでも結構なので、御提示いただけると非常にありがたく思います。
私からは以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。もう一方だけ御意見を、御質問を伺って、それからお二人の先生に、まとめて御回答いただく、あるいは御意見を頂くという形にしたいと思います。藤田委員から手が挙がっております。
【藤田委員】 ありがとうございます。お願いいたします。ほかの委員の先生方おっしゃったとおりだと思いますけれども、お二人の先生方からお伺いしたこと、とても感銘深くお聞きしました。
特に奈須先生からは、1971年46答申の時代から既に同じような発想で教育を捉えられていたこと、そして市川先生から、学びんピックにはじめとする様々な取組ということは既になされていたということ、特に奈須先生から御紹介いただいた緒川小学校の実践は、本当に私も目を見開きながら聞かせていただきました。
そういうことをお伺いして思ったことを、感想だけ述べさせていただきたいと思います。ということは、これまで私たちの先輩たちがつくり上げてきた取組、例えば大学への飛び入学であるとか、大学の早期卒業であるとか、大学院の早期修了であるとか、あるいは、もっと身近でいきますと、習熟度別や少人数の指導であるとか、そういった一人一人の子供たちの特性に合わせた取組というのが、どういった成果を上げ、またどういう課題に直面してきたのかということを、きちんとここで整理すべきだと思うということは一つ感想として持ちました。
また、あと福本委員、今村委員がおっしゃったように、学校だけではとてもできない。そういった意味では、秋田先生もおっしゃったことですけれども、学校や家庭との連携が大切になってくるわけですが、これもまた学社連携という形で、かつてから言われてきたわけです。
そういう目で見てまいりますと、例えば、これもここ10年ぐらいのものですけれども、子供・若者育成支援推進法であるとか、あるいは子供・若者育成推進大綱であるとか、全ての子供・若者というキーワードで、先ほど今村委員がとてもすてきな言い方をなさっていましたが、はみ出しっ子。どちらにはみ出すかは別にしても、ちょっとしんどい思いをしている子供たちの、みんなで居場所をつくろうじゃないか、みんなでその個性を伸ばそうじゃないかという枠組みはあると思うんですね。
例えば通級にしてもそうだと思います。2Eという言葉があって、どっちかにはみ出してしまって、しんどい思いをしている子供たちを、何か一緒に学べないか、一緒に同じ方向を向けないかという試みはあったんだろう。そういったものを1回棚卸しをして、どこに課題があって、どういう成果があったのかという議論をきちんと整理しておかないと、多分、今後の施策というのも打ちにくくなりますし、議論も蓄積しにくくなるだろうということを改めて感じました。
特に先ほどの学びんピック、市川先生から御紹介されたことですけれども、もちろんこの中にも当事者はいらっしゃいますけれども、国際科学オリンピック、様々な分野、数学であるとか、物理であるとか、そういう場でも恐らく、学校と連携を取りながら、子供たちの輝く才能を伸ばしてきたんだろうと。そういう取組が果たしてどうだったんだろうかという過去をきちんと整理し、棚卸しをするということが、きちんと私たちの中でして、そして消化をした上で議論を積み上げていくことが大切だなと改めて思った次第です。
感想でございました。以上です。
【岩永座長】 ありがとうございました。それでは、事務局からの回答は最後に回させていただいて、奈須先生、市川先生から、全体としてで結構ですので、御回答、御意見を頂きたいと思います。まず、どっちがいいかな。御発表の順序で、奈須先生からお願いできますか。
【奈須教授】 先生方ありがとうございます。
まず、秋田委員から出た、教えるということから学ぶということに移行する、学ぶということを支援する。これは、もともと子供は学ぶ力を持っているし、学ぼうとしているという、全ての子供、障害を抱えている子も全てですね。そういう基盤に立っていきたいわけです。でも、これは現行の指導要領の議論が、もうそういうところから出発していますので、だんだんそっちに行けるんじゃないかと思っています。
教員養成についても、そういうことだと思います。教えるための技術ということで教員養成をしてきたと思うんですけど、子供の多様な学びを多様に支援する技術としてやっていく。
ICTはチャンスなんですね。コンピューターって教えたら、かえってうまくいかない。むしろ子供たちに上手に使わせて任せるということが大事なのが今回のGIGAのICTで、これが一つ起爆剤というか、路線変更の契機になればいいなと思っています。
それから大島委員から出たこと、秋田委員から出たことを含めてですが、結局、自由度とか選択肢をどんどん広げ、もちろん学校の外にも出していくと。その際、秋田委員が言われたように、学校が一つのプラットフォームになり、仲立となっていくという機能を果たしつつ、多様な外部リソースを上手に使っていくということが大事かと思っています。
ただ、そのときに、やっぱり議論に必ずなってくるのが、学校の持つ公共性をどうやって担保するかという話だろうと思います。かつて、高校なんかで選択の授業をどんどん増やしていくということが出たときに、やっぱり国民教養とか、学校が持つ公共性というのが、どうなるんだと。むしろ、それは格差を拡大するんじゃないかという議論も当時あったと思うんですね。この辺りをどう考えるかということだろうと思います。
自由度とか選択肢を拡大するということと学校教育、先ほど国民統合という言い方を申し上げましたが、その共通性あるいは公共性との関係です。国民教養という言い方ではなくて、今日的には市民教育、シティズンシップということで考えれば私はいいと思いますけれども、その意味でも、何らかの公共性を新たにどう構築するかということが一つ問われてくるんだろうと思っています。
それから、中島委員が言われたことですけれども、私も外部からのリソースやプラットフォームをどんどん学校に取り込むということ自体は賛成です。いわゆるオープンエデュケーションなんかがアメリカでかつて展開したときに、ティーチャーズセンターがいろんなものを持っていて、それこそ学校から電話すれば、さっきの個別のプログラムやパッケージ、ライトバンで配達してくれるんですね。そういったことが、私は日本でもあっていいかと思います。
先ほどの緒川小学校とか天童の学校のパッケージは、私たちが一緒になって実は作るんですけれども、ワークシートを私も一緒に相談しながら作りますが、やっぱり全部オーダーメードで一つ一つ作ると大変です。蓄積すると使い回しもできますけれども、少しこれ組織化した取組が必要です。
その意味でも、先ほど申し上げましたが、いろんな企業の参画ということも、私は歓迎したいなと思います。その場合、その先の運用の問題が大事かなと思っています。
それから、福本委員が言われたメタ認知とかモニタリングということが当然大事になってきます。先ほどのATIとかのようなシステムも、先生がアサインするんじゃなくて子供が選ぶと。すると個性化になるということを申し上げましたが、先生から見れば、あなたはこのやり方が一番いいんだよというのが分かっていても、子供があえて違うのを選んだりするんですね。それを許容することが大事で、すると、やっぱりうまくいかないという経験をしたり、思いがけずうまくいくという経験をするんですね。
こういったことを、やっぱり試す、いろいろ試してみる。それによって自分の得意を知る、自分のスタイルを知る。
それから、契約という概念が大事だと申し上げました。やっぱり子供がいいかげんな考えでスタートして、うまくやれなかったと。それについては、やっぱり教師は多少厳しく対していくと。何でもいいわけじゃないわけですね。こういった中で、ある種の、やはりスキルが身についてくるということがすごく大事なことで、自由に委ねるわけですが、それが長期的に子供たちの学ぶ力になっていくためには、一定の訓練は必要です。
子供が学ぶ力を育てるというのは、奈良の女子附属が大正時代から学習法という考え方でやってきていますが、奈良女に行けば分かりますが、学習法は訓練するものだと彼らは言います。
その訓練の機会を与える中で、子供たちに自由に存分に試し、それを自分で振り返るという場を与え、それと子供、先生が一緒に寄り添い、一緒に悩むと、そういうことがやっぱり大事だろうと。これはNPOとか、いろんなところでお取組になっている先生方が本当にやっていらっしゃることだと思う。保護者がやっていらっしゃることだと思う。
これを学校の先生も公共的な枠組みの中で少しやっていくということに踏み込んでいくということじゃないのかなと思います。
以上でございます。
【岩永座長】 ありがとうございました。大分時間もなくなってきました。市川先生、お願いします。
【市川委員】 教育改革の中で目指してきたことというのは、共通する基本的な学力をしっかり身につけたいと同時に、もっと子供たちの多様な学び、子供たちの個性に応じた多様な学びも保障していきたいということだったと思うんですね。それを、基本的には学校に担ってほしいんだけれども、どうも学校の先生方も非常に忙しくて、どちらかというと得意なのは教科の基本的な知識を身につけること、そのプラスアルファとして多様な学びをということでやっているわけですけれども、どうしても学校だけでは限界があると。
かといって、民間の教育産業とか、塾とか、習い事とかですと、これは経済的な格差がくっきりと出てしまう。その中で、地域でのいろんな学び、自治体とか、大学とか、NPOとかが、経済的な格差にとらわれずに多様な学びができるようにということを保障したいと。それによって、学校と民間の教育と地域教育とで一緒になって豊かな環境をできるだけつくっていこうと、こういう話だと思うんですね。
それをするためにということで、例えば、まず学校のカリキュラムも豊かにしていきましょう、探究的な学びをということで、これは先ほど大島委員もおっしゃったんですけど、今度、理数探究とか○○探究をいろいろできるよと。しかし、やはり限界はあると思います。
例えば、さっき公立、私立の話が出ましたけれども、学校によっては、これは例えば東大に入ってきた学生に聞いてみると、うちは総合の時間などありませんでしたとか、探究などやっていませんとはっきり言う生徒もいるんです。
総合的な学習の時間が始まってからかなり経ちますが、文科省が言っても、教育委員会が言っても、結局、どれだけ進学実績を上げるか、そのためにはどんな教育をすればいいかということになってしまうと、なかなかこれが、指導要領を改訂しただけでは届かない。それは日本の実情として、一方ではあるわけです。
そのためにということで、こういういろんな地域のリソースというものがあったときに、それがどう活用されるか。私は2つの側面から見ていく必要あると思うんですけど、1つは学習者評価ですね。そういう多様な学びをしてきたことも評価するということです。
例えば、これ何も全員じゃなくていいんですけれども、学びのポイントラリーの認定証を中学校入試のところにくっつけてアピールしたら受かったという話もあります。そういう子はやっぱり評価するよと。あと高校入試でも一時、東京では自己アピールという制度がありまして、自分でこんな活動してきたということをアピールすると、それはそれで評価してもらうルートがあると。
大学でも、例えば東大の推薦入試が始まりましたけど、私がいた頃、教育学部だけは探究活動の実績を評価することにしました。枠は5人程度で少ないんですけれども、どんな分野でもいいから、自分でテーマを設定して、それを探究してきて、エビデンスとしては、何らかのコンテストとか、そういうところで入賞したと。実際に入試のときにはプレゼンもして、質疑応答もして、そういう生徒も採るということです。
一般入試では、いわゆるペーパーテスト学力ですけれども、そういう生徒も採る。これは教育学部だけなんですけど、でも一つの風穴だったと思っています。
ですから、そういう学習者の評価を多様化していくということと、もう一つは学校評価です。これは今日の話でいいますと、大阪のグローバルリーダーズハイスクールにも関連しますけれども、どの高校はいい高校だからというような評価をするときに、どうしても普通ですと、週刊誌にも出ているような有力大学に何人合格したという、それしかなければ、それしか見られないですよね。別の評価軸があって、もっとトータルに豊かな学びをどれだけしているかということも学校評価としてあるというものがあれば、そういうものに着目してくれる生徒さんや保護者もいるだろうと。また大学もそれを評価するというようなことがだんだん起こってくれば、それはやっぱり社会が全体がどういう学びを目指しているかということのイメージも変わってくるんだろうと思います。
そういうことを一方でやっていく必要はあるかなと思います。フォーマルな制度だけの問題ではなくて、その活性化していくための補助的な仕組みというのをつくっていく必要があるかなと思っています。
【岩永座長】 よろしいですか。ありがとうございました。
それでは、先ほどの御意見があったものについて、これは石田室長のほうから、お願いします。
【石田教育課程企画室長】 今村先生ありがとうございます。今回、有識者会議ということで、まずもって特異な才能のあるお子さんが置かれている状況につきまして、しっかり情報を共有しながら、あるいは立体的に実態を分析していくというところの御指摘、御指摘のとおりかと思います。
ただ一方で、全国学力・学習状況調査、これは家庭の蔵書数を含めて、きめ細かに実施している調査でございますけれども、一方で今回かけるアンケートというのは、そもそも年度が計れない仕組みとなっております。既に全国学力・学習状況調査は実施しておりまして、そこでデータは取っておるところなんですけれども、今回のアンケートは文科省のホームページで匿名の形で、なるべく多くの方から御意見をお寄せいただくということで、本日から開始したものでございまして、そもそも連動性を図るような形になってございませんことを御理解をいただければと考えてございます。
ただ、多くの方にこちらのアンケートを御覧いただくことを文科省としても非常に大切と考えておりますので、文科省の様々な媒体を使いまして、現在募集しておりますということを広く周知させていただきまして、また、頂きました回答を、より精緻に分析した上で、後日、結果ということで御報告をさせていただきたいと考えてございます。
様々御期待に沿えない部分もありますけれども、事務局としましても、しっかり実態を把握しながら、先生方と一緒に議論を進めていくことができればと考えてございます。どうぞよろしくお願いします。
【松村委員】 ちょっといいですか。すみません。
【岩永座長】 はい、どうぞ。松村委員。
【松村委員】 すみません、ちょっと今のに追加コメントをさせていただいていいでしょうか。私、このアンケートの擁護派なんですけれども。先ほどの委員の方々のお話でも、例えば秋田先生、大島先生がギフテッドと言われたときに、それはトップレベルの高学力の子のことを指して、一方、今村先生がおっしゃったときには、困難を抱えている才能児を指しているわけですね。ここの段階でも指しておられることが違う。
私、前回この委員会では、ギフテッドという言い方をやめましょうと言ったわけですけれども、一般ではやっぱり、いずれかの特定の集団に偏って、ギフテッドは解釈されていることがあります。
このアンケートは、だからギフテッドと言わないで、特異な才能のある児童生徒で、それに注釈もつけていますけれども、そういうふうに尋ねたときに、どれぐらいの、どのような集団から、どのようなことがイメージされて、多様な反応が集まるかということを見られているので、これは結構、最初の取っかかりとしては意味があるかと思います。
困難を持っている才能児をギフテッドと言うことが多いわけですが、そこからいろんな本当に困っている問題をたくさん挙げてくださることを私も期待していますけれども、それだけじゃなくて、もっと広い層、全体から、そういう才能のある子の支援について、指導について、どういうような多様なイメージが挙がってくるかなというところに興味を持っています。
2EとかGDFとか、困難を抱える才能児については、また後日、これは集中して別途、調査が必要な大事な問題と思いますので、だから手始めとしては、この辺りで、ぜひ、どんな反応が出るか楽しみにして見ていただいたらいいかと思いますが、今村先生いかがでしょう。
【今村委員】 すみません。私の言い方がちょっと分かりづらくなってしまっていて申し訳ないんですけど、率直に見て、どういう家庭の親御さんであっても、保護者の視点から見ると非常に回答しづらいなという印象なんですね。これは教育関係者とか支援者であれば、いけると思うんですけど、現状、困って当事者で応援しているのは、やっぱり保護者の方がメインといいますか、多いんじゃないかなと思うんですよね。そうなったときに、この状態で、こんなに大切なアンケートがオープンされるのは、言葉遣いだけでも直したほうがいいんじゃないかと。もしくは保護者向けという形で、また保護者の方はこちらというのを、同じ質問だけども聞き方が違うという形でやったほうがいいんじゃないかと。
【松村委員】 その困難を持つ保護者については、……。
【今村委員】 一般保護者全体のことを指しています。
【松村委員】 だから、今の聞き方では、当事者本人や学校の先生とか支援団体含めて多くの方を想定していますので、当該児童生徒という言い方が一番適切じゃないかと。それで理解していただきたいと願っているんですけれども、どんなものでしょうか。
【今村委員】 私も母親なので同じといいますか、一般人の立場から見ると、ちょっとこれを拡散するというのが難しいかなと思いました。
ただ、支援団体や先生を対象にするならいいと思います。困難な子だけのことではないです。すみません。
【岩永座長】 分かりました。ごめんなさい。司会の権限で割り込ませていただきますが、実はこれ、そこにも、参考資料2の表にも書いてありますように、8月26日にウェブページに、もう掲載しているんですね、本日。それで、9月17日回答締切りということでお願いしておりますので、今からその文言を変えるということは現実的にできなくて、この文言がおかしいということであれば、恐らく回答に偏りが出てきたり、そういう方たちの保護者からの回答が極端に少なかったりするというようなことがあるかもしれませんので、それはこのアンケートの反省点として、今後追加でアンケートが必要になった場合には、それを考えるということで、このアンケートに関しましては、一旦、委員の先生方にもお回ししたと思いますので。回してあったんですね。これでさせていただいているということで、今回は御容赦いただきたいと思います。
出た結果について、先ほどの文科省のほうで全国的にやっている調査ですね。そろそろ結果が出る調査については、そもそも一対一対応ができる話ではないので、恐らく集団で比較するということはあると思いますが、片方は量的に出てくる結果で、片方は質的に出てくる結果ですので、これは突合するというよりは、両方を結果として眺めながら、そこから出てくるものを拾っていく、理解していくという形になろうかと思いますので、その辺は今の、先ほどの今村委員の御意見も十分に勘案しまして進めていきたいと思います。
取りあえずは、こういう調査をしていると。結果を9月半ばまでで集めているので、その結果を御報告したいということで、今回は御理解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは、時間が過ぎてしまいました。私の不手際というか、皆さんの御意見や、それから両先生のお話を聞いているうちに、どんどん、どんどん私自身も時間を忘れておりましたけれども、今回は何か結論を得るとか、ここで今回の意見を集約するとかいうことではなくて、様々な考え方が出てきて、議論や、あるいは思考のきっかけを頂いたということで御理解いただければなと思います。到底この2時間だけで話がまとまる話ではないので、この次のヒアリングも続きますので、こういうような情報やお考えを承った上で、委員の先生方の中でも、御自分の考え、あるいは御自分のこの問題に対する見立てというものを進めていただければなと思いますので、今回はこのような形で、ちょっと時間の関係で中途半端になってしまいましたけれども、収めさせていただきたいと思います。
ということで、少し時間が過ぎてしまいましたが、事務局から、この次の回等について御連絡をしていただきます。よろしくお願いします。
【川口学校教育官】 次回、第3回会議につきましては、9月13日月曜日15時から17時で行うことを予定しております。
なお、先ほど来、話のありますアンケートですけれども、文部科学省のホームページに掲載してございます。ぜひ御協力をいただければと思っております。
また、このウェブページには、これまでの会議資料や議事録なども、これから掲載してまいりますので、ぜひこちらも御参照いただけたらありがたいと思っております。
事務局としては以上です。
【岩永座長】 よろしくお願いします。ありがとうございました。
それでは、本日予定した議事は以上で全て終了しましたので、これで閉会とさせていただきます。皆様、本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──