生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第9回)議事要旨

1.日時

令和4年8月26日(金曜日)13時30分~15時00分

2.場所

Web開催(Zoom)

3.議題

  1. 生徒指導提要の改訂案について
  2. その他

4.出席者

委員

   浅野委員,新井委員,池辺委員,石隈委員,伊藤委員,井上委員,大字委員,岡田 俊委員,岡田 弘委員,奥村委員,栗原委員,七條委員,髙田委員,土田委員,野田委員,針谷委員,藤田委員,三田村委員,三村委員,宮寺委員,八並座長,山下委員
   

オブザーバー

   髙橋オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー  

文部科学省

   伯井初等中等教育局長,茂里学習基盤審議官,清重児童生徒課長

5.議事要旨

【事務局】  ただいまから第9回生徒指導提要の改訂に関する協力者会議を開催する。
【座長】  前回会議において改訂素案をお示しした。前回会議での委員の御意見を踏まえて、幾つか修正を行っている。また、事務局及び各委員には、体裁面あるいは内容面を含めて御修正いただき、生徒指導提要改訂版(案)としてお示ししている。資料については、事前に委員の皆様にお送りしているので、説明は省略させていただく。
 なお、本日は本会議の最終回となる予定である。私から今後のスケジュール及び提要デジタルテキスト化について説明する。
 今お示ししている改訂版の案は、執筆者の原稿を集めて、ワードをPDF化したものである。最終形態としては、デジタルテキストで公開となる。このデジタルテキストがどのような手順で作られて、どういう外見になるか、サンプル原稿でお示しする。
 本日の会議の終了以降に、編集作業は、私と副座長の新井先生、事務局で、ワード原稿をベースにデジタルテキストを作成する。
 まず、ワードをテキストファイルに落とし込む。次に、LaTeX、これはラテックまたはラテフという科学論文作成専用のオープンソースソフトウェアを使用して、組版をして、デジタルテキスト化する。
 このデジタルテキスト作成は、高度の専門的知識と技能が要求され、なおかつ、作業自体は大変なので、私が行う。デジタルテキストのチェック等に関しては、副座長の新井先生、事務局で対応する。作業は、膨大な時間を要する。なるべく早い段階で公開したいと思うが、我々も本務があるので、その兼ね合いも見ながら進めていく。
 完成すると、しおり、目次、本文中の字句、脚注の字句から、本文中の該当箇所へのジャンプやリンク先のホームページにジャンプできる。索引に関しては、カスタマイズして、あいうえお順に並んでいる。索引から今度は逆に該当箇所にジャンプできる。
 今後のスケジュールとしては、今回の皆さんのお力添えで案はできたので、それをデジタルテキスト化する作業に相当期間いただきたい。
 それでは、これから意見交換を行う。本日は、これまでの議論を振り返っての総括的な御感想、御意見、あるいは、その今後の取組や活用方法、その他今後の期待等について、各委員お1人ずつ御意見をいただきたい。
【委員】  学校現場の立場としてお話しさせていただく。
 このたびの改訂によって生徒指導提要がより分かりやすく、より活用しやすいものとなったと感じている。そして、現代的な課題への対応はもとより教育活動のあらゆる場面において活用できるものになったと思う。現場にとっては、大変ありがたい。
 今後広く周知されると思うし、デジタルテキストということで、全ての教育に携わる方々の手に届くということになっていると思うが、懸念されることが2つある。1つは、中身の確認が生徒指導主事をはじめとする担当の方に限られてしまう可能性があるということ。校内研修を行うなどして、校内で広く周知をするという対応が必要。
 2つ目は、改訂された年は周知に力が入るが、その翌年やその後というところで、忘れられていくという懸念がある。例えば新採研修など、あらゆる場面で取り上げていただくというような、継続した周知、取組が必要。
 できれば、要点をまとめた説明動画などがあると、内容に偏りや抜けがなく一律になる上、すぐに研修しやすくなり大変ありがたい。そういったものがあれば、継続して研修ができていくのではないか。
【委員】  本当に今、学校は疲弊している。いろいろな多様な問題が山積していて、しかも、正解が見えないような問いが、生徒指導だけに限らないが、満ちあふれている。そうした状況の中で、少しでも光が見えてこないかという願いを持ちながら、改訂に臨んできたつもりだ。そうした観点から、特徴と言えることの一つは、第II部の13章に、多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導という新しい項目を設けたことだ。子供たちを内面的に理解することはもとより、それだけではなくて環境面から理解していくことの大切さが強調されていると思う。
 それから、この10年間で法令も大きく変わったり、あるいは新たにつくられたりした。学校現場で、ややもすれば法に対する理解が進んでいないところも見受けられるが、教職員は法の下で仕事をしているということを再確認し、法の理解を進めていくことが必要だろう。第II部は各トピックにおいて、先ず、そのトピックに関連する法がどうなっているのか、関連した通知等がどうなっているのかというところから書き起こされている。ここに、二つ目の特徴がある。
 そして、一番大きいのは、子供が主体であるということを改めて認識したという点である。学習指導要領が大きく変わったこと受け、生徒指導も、子供たちが主体的、能動的に成長発達していく過程を支えていくという視点に立ち、日常的な教育活動を通じて全ての児童生徒に対して働きかけていく基盤となる生徒指導を、「発達支持的生徒指導」という言葉で表すことになった。これが三つ目の特徴である。この、発達支持的生徒指導」においては、事後対応ではなく、先手を打って、全ての児童生徒が様々な力を身につけるように働きかけていくことが目指されている。
さらに、四つ目の特徴として、これからの生徒指導は、1人で、また、学校だけでは解決することが難しい課題が多く見られるので、「社会に開かれたチームとしての学校」で生徒指導を進めていくという方向性が強く打ち出されている。
 今後、活用に当たっては、デジタルテキストであるということを存分に生かしていただければと思う。生徒指導提要改訂版に基づいて、先ずは、学校現場で、生徒指導とは一体何かということを改めて問い直してほしい。そして、何か問題の予兆が出てきたときには、例えばいじめの予兆が見えたときには、どう対応するのか、4章のいじめの章をみんなで捲りながら、対応の方向性について検討してほしい。改訂版を一つの参考指針にしながら取組を進めていくというような、課題解決のために繙くマニュアルとして活用していただければと思う。
 また、校内研修において、今日は1章のここのところをやりましょう、夏休みは少し時間があるのでここをやりましょうというような形で、研修の教材として活用し、教職員間での学び合いを通じて、学校の中に備えをつくり出すために生かしてしていただきたいと思っている。
【委員】  本当にこれからの生徒指導の、全国の全ての先生、それを通して子供、家庭そして社会にいい影響があるということを願っている。またそのためには我々現場、私は現場として、これをどう持っていくのかというところは、簡単なことではないと考えている。
 現場も一生懸命やっているけれども、実態はどうかというところがあった。今回の改訂は、さらに現在の状況が本当に反映されているし、大変心強いものになると思う。生徒指導はそもそもどういうものなのかというところに、もう一度立ち返って、生徒の未来に直結させていくということを、強いメッセージとして学校が出せるのか。家庭を巻き込み、社会を巻き込んでいけるのかというところで、これから課せられた課題はますます大きくなってきた。
 このパンデミックでこの生徒指導提要の改訂が行われたということは意味を持ってくると思う。このパンデミックの中で、生徒は本当に成長しており、学校とは一体何なのかというところを口にして、それを行動に移し、いろんな人に勇気を与えられるような児童生徒が増えているというのが私の個人的な感想である。
 パンデミックという、我々側にとってものを本質的に考える機会が減ったときに、戻してはいけない。優先度が本当に重要なことと、それからその次に置くべきものとか、混同されてしまっていたのではないか。教育現場はいい意味でピュアに教育に立ち向かっていくものがあって、この生徒指導提要が響くと思っている。
 教育の使命が、学校それから行政だけではなくて、社会に深く入っていくことがこの生徒指導提要の使命だと思う。10年後に、あれはいい改訂だったと言えるかどうかは、この後の一日一日の積み重ねに全てかかっていると考えている。
【委員】  児童生徒、学校の変化、社会の変化、法制度の変化に応じて、新しい生徒指導提要を作るということで出発したが、一定の方向性ができたと思う。
 現場では、生徒指導は特別な生徒に対して特別な先生が特別な場所でやるという思いがまだ一部残っているが、今回の生徒指導で示せた方針では、全ての児童生徒、本当に多様で、いじめ不登校も含めて、多様な子供たち、誰一人取り残さない児童生徒ということを対象に、全ての教育課程を通してチーム学校で生徒指導を行うということが示せたと思う。
 チーム学校は校内の連携だけでなく、家庭や地域のサポーターとの連携でもあり、そういう意味でチーム学校の図のところに、児童生徒というのが真ん中に入り、かつ地域の援助機関が入ったというのは、とても大きな象徴である。
 また、発達支持的生徒指導を基盤とする「2軸3類4層」、の生徒指導や、機能的連携型支援チーム、校内連携型支援チーム、ネットワーク型支援チーム等々、現場で説明するのに少し説明は必要だが、これからのキーワードになる言葉ができたと思う。
 まとめて言えば、令和の日本型生徒指導の指針ができたのではないか。アメリカは分業型だが、日本は学校の先生が学習指導と生徒指導を両方やっている。加えて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが専門スタッフとして参加しているという状況を生かして、令和の日本型生徒指導を目指したいと思う。今回の生徒指導が特色や方向性を示したので、実現は、日々の我々の実践にかかっている それから、デジタルテキストになるというのは今後の活用にとっては本当に大きいと思う。活用では、これから私の提案としては3つ。1つは解説動画をぜひ作っていただいて、例えば1部は30分、2部は各章ごとに15分など、我々や執筆者も協力して作る。そうすれば、いろいろな研修に生かし、現場の先生や、これから現場の先生になる人に必ず見てほしいと思う。
 今回スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーがこの中に出てきたというのはとても意味があることで、ぜひスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの職能団体や関連団体にも、今回の提要と、動画ができたら動画の案内を送っていただきたい。日本公認心理師協会、公認心理師の会、日本臨床心理士会、日本学校心理士会、日本スクールカウンセリング推進協議会、幾つかスクールカウンセラーの現場の先生方の団体があるので、ぜひスクールカウンセラーにも全員見てほしいと思う。
 3つ目の提案としては、1年に1回か、2年に1回、このチームで集まって、これがどう使われているのか、どこに改善点があるのか、法律のどこが変わったのかを確認して、今回のものを生徒指導提要バージョン1として、2年後はバージョン2、3年後はバージョン3としていくと、現場にも伝わっていくと思う。
【委員】  今回は全体的な目次立てから、それから個々の内容、そしてそれの活用の仕方、現場の声と、様々なものを聞かせていただく機会があった。生徒指導は難しいと、簡単ではないというのを身に染みて感じたところ。
 生徒指導の根幹はぶれずに残しながら、でも新しい視点とか必要なテーマを加えて、物すごく中身が増えて、豊かになったという実感を持っている。前の版の生徒指導の生徒指導提要を読み返してみると、それに比べても、中身の大事なところはもちろん変わらないけれども、いろんな形で充実しているというのは身に染みて感じた。
 しかもその時代の変化にも、それも取り入れて、かつ先ほども先生方のコメントがありましたように、ネット社会に即してデジタル版でいろんなところにすぐ飛んでいけるというのは、本当に今の時代にマッチした新しい形だというのを感じている。
 不登校については、この5年10年の間に大きな変化があった。この会議と同時に委員会もあり、それがどう決着するか感じながら、考えないといけないというところが難しかった。
 今後への活用について、来年度はこの新しい版を学生たちにもぜひとも勧めたいし、現場に出てからはもちろんだが、出る前や、あるいは現場に関わる多職種の人たちにも、本当に知っていただきたい内容だと思っている。
【委員】  この生徒指導提要は、現場の先生方にとっては非常に活用しやすい、読みやすい。デジタルテキストということになれば、さらに有効に活用されると思っている。
主に特別活動あたりのところを中心に全部読ませていただいたが、今後、実践活動や体験活動として集団活動のよさや社会の中で果たしていく役割、自己の在り方や生き方の関連で、集団活動の価値を理解することにつながっていけばと期待している。
 また、生徒指導の観点からは、発達段階に応じて、自発的、自主的な活動を重んじつつ、自信の獲得に向けて、そういう指導や援助につながっていくものになるのではないかと期待している。
 提要を基に、学校全体での生徒指導に関しての共通理解が図られ、学校全体として、組織的、計画的に生徒指導が行われていくということを願っている。この生徒指導提要は、今後の生徒指導のすばらしいガイドラインとして、有効に活用される。
【委員】  現行の生徒指導提要も非常に内容の評価が現場からは高いものであった。ただ小学校の教員にとっては、なかなか認知度が低くて活用が十分ではないという状況もあり、今回のこのすばらしい改訂に合わせて、まさに日本全国全ての教員一人一人にしっかりとこの生徒指導提要を周知し十分に活用できるように全力で活動していきたいと思っている。
 生徒指導の取組上の留意点の中に、児童の権利の理解とあって、まず、第一は、教職員の児童の権利に関する条約についての理解であると明確に述べられている。まずは教職員がしっかりと子供の人権も含めて、この生徒指導提要の示すところを理解して指導に当たることを改めて考えたところ。
 もう一点は、デジタルテキスト化をどのように学校現場で効果的に生かすかということ。教員は1人1台端末を持っているので、その中にデジタルテキストが入って、誰もが同じようにワンクリックでそこに飛んで共通な学習ができる、研修ができるという環境は早急に整えていきたいと思っている。また、教職員だけではなく、保護者や地域の方にも広く、このデジタルテキストをダウンロードしていただいて、学校、保護者、地域、教育関係者全てで同じような視点で生徒指導を考えていけるといいと考えている。
【委員】  従前の生徒指導提要も非常に優れた内容ではあったけれども、生徒指導の在り方、現実をめぐっては、時に国民からも厳しい目が向けられることがあったと思う。今回の改訂の内容は、ある意味それを超えて、生徒指導の在り方の枠組みがどうあるべきかを示すことができたと思う。
 生徒指導が特別な子供たちを対象にしたものではなくて、全ての子供の発達の支援を考えていく。それは、多様な背景を持つというような子供たちにも言えることで、メンタルヘルスの問題あるいは発達の問題は非常に専門性の高い領域であるけれども、それは専門性の高く、専門性の高い先生にお願いをするということで、チーム学校があった。では、どうやって支えればいいのかとなったときに、実際のノウハウはまだまだ経験値が少ないという課題があった。
 それを、そういう事例に対してどう対処するのかではなくて、そういう事例になる前の子、あるいはならない子供たちにも、そういういろいろな背景やレジリエンスの低さとかそういうものがあって、そこを支えていくことが大事であるということも含めて対応していただけたというのは非常に大きな変化と思う。
 多様な背景の子供を支えなければいけないという背景には、一人一人の子供の権利を大切にするという法的枠組みの上に立つという一貫した理念が貫かれている。
 現場への普及では、デジタルテキストであるということを考えれば、第2.1版、2.2版というような変更も可能だと思うので、かゆいところに手が届くような改訂を今後もしていただけたらと思う。
【委員】  第1回目の会議のときに改訂の基本的な考え方ということで示してされた積極的な生徒指導の充実がしっかり入り、成長を促す指導が示されていることはとても大切だと思う。また、関係法規の変化を反映していること、それから新学習指導要領やチーム学校の考え方が反映されていること、生徒の発達の支援ということ、学校における働き方改革、多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導、生徒指導上の課題に関するデータの活用ということが示された。
 これからさらに現場に役立っていくためには、マイナーチェンジとメジャーチェンジを10年のスパンではなく、もう少し短いスパンで、今のバージョン1とか2というのでもいいのではないか。リユニオンのようなものも考えていっていいのではないか。
 現場の先生方に役立ってこその生徒指導提要でないと、生きていかず読まれない。今、学校が始まっているところがある。特別な日を迎えているわけで、例えば自殺の防止といったときに積極的な生徒指導が生きてくると考えている。同時に、教員採用試験の2次試験が今進行している。そこで、教員になろうとしている方々が、大学の中で既にこの生徒指導提要をしっかり学んでいるということが大事だと思う。
 コロナパンデミック、それからデジタルトランスフォーメーションの急速な流れ、そしてグローバル化ということを考えたときに、学校現場でより活用していただくためには、例えばALTの方がいるので、ALTの方々にも分かっていただくため、英語版が必要ではないか。スチューデントガイダンス、メインポイントのような分かりやすいものを示すことによって、ALTの方々も理解でき、同じように多様な背景を持つ方々にとって分かりやすくなる可能性もあるのではないかと。
 諸外国で経験されて日本に戻ってきて教員になられる方もたくさんいるので、そういう方々に日本語以外で英語バージョンがあるとより分かりやすい。また、生徒指導提要を世界にお見せすることで、いろんな視点で、御批判や賛同をいただき、日本の教育をよりよくしていくものにつながるのではないか。
 例えばBPSモデルがあるけども、今私の頭の中では、BPSC、キャリアを当然入れないと学校現場では駄目だろうという発想になっており、不登校に関してもさらなる別の視点とかが出てくるのではないかと考えている。
【委員】  児童相談所は多くの課題を抱えている。御批判や御意見をいただく中で、子供の権利とか子供の安全・安心を守るという福祉的な立場ではあるが、教育現場の皆様と同じと感じたのは、まずは子供が主体であること、子供の人権を第一に考えるということである。保護者の方、親族の方も含めて支援していくこと。職員一人一人を、管理職も含めてバックアップしていく体制がとても重要だと感じている。また、関係機関をはじめ地域の方と連携をして、チームということを利用しながら、考えていく必要がある。
 デジタルテキストということで、多くの教職員の方々にバイブルになり得るものだと感じている。そのためには教職員の研修の場において利用していただくとか、テキストとして使っていただくことが大切。教職員を目指す学校の教科書として位置づけていただくようなものになるといいと感じている。
 今後、子供を取り巻く中では、法がこれからも変わっていくと思うので、バージョンアップを定期的に繰り返しながら、使えるものを目指していけるといいと思う。
 実際に発行されて職員の方の手元に届くようになれば、ぜひアンケートなどを取っていただいて、使いやすいところ、使いにくいところというような生の声を拾いながら次のバージョンにつなげられるといいと思う。
【委員】  これからの生徒指導は後追いではどうにもならないという指摘があって、会議も、積極的な生徒指導を進めるということで、それをチームとして進めるということで方向性が定まり、改訂が進んだと理解している。
 日本の生徒指導は分業型ではなくて教職員を中心としてチーム体制を組んで対応することが日本の特徴と思う。そうでないと日本の生徒指導は多分回らない。それほど専門家がいるわけではない。また、その方向性の基盤として児童の子供権利条約がきちんと示されていることは意味のあったことなのではないかと思う。
今後は、10年後改善というようなことではなく、小規模改善を少しずつ積み重ねていくような在り方を考えていただけるといい。改善小委員会があればいいのではないか。
 また、いいものができたら使われるというものではないとも思っている。普及委員会のような、普及を促進するためのミーティングが必要ではないかと個人的には考えている。
【委員】  各教科、あるいは道徳教育、特別活動等と、生徒指導との関係についていろいろ考えるとともに、生徒指導そのものの在り方について、改めて考えを深めることができた。
 このような形で生徒指導提要の改訂版がまとめられて、学校現場に広がっていくことで、恐らく生徒指導の改善充実が図られることが期待されているわけだが、今後の課題になってくるのは、いかに学校現場でこの生徒指導提要改訂版を活用していただけるのかである。
 どんなにすばらしいものを作ってもそれが使われなければ何にもならないので、活用の在り方について、今後検討していく必要があろうかと思う。
 例えば学校現場での活用の仕方についていろいろと周知徹底していく。それから、教員養成等の大学での活用の仕方、あるいは教員研修や校内研修でどう活用するか。また活用の仕方の好事例を示していくことも学校現場で生かしていくことにつながる。活用の仕方についていろいろと御検討いただければありがたい。また、発達支持的生徒指導など新しいキーワードが、学校現場で早くなじんでいけるように、生徒指導提要の活用を進めていただければありがたい。
【委員】  社会の変化に伴って子供たちの状況は日々変化をしており、同時に保護者の意識も日々変化をしている。また、学校には新たな教育課題が次々と現れ、教員がその対応に追われているという状況がある。学校が疲弊しているという話があったが、まさにそのとおりだと思う。
 そうした中で、これまでの生徒指導上の諸課題に加えて、例えば12章のところに、性的マイノリティに関する課題と対応の項目が新たに加わった。LGBTQについての指導・支援をどうするかは今学校で大きな課題の一つ。さらに13章には、多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導ということで、発達障害をはじめとする特別な支援を必要としている子供たちへの支援、それから精神疾患、メンタルヘルス、健康課題を有しているような子供たちへの支援が書かれている。加えて、経済的困難を抱えている児童生徒への支援や、さらに最近は日常的に家族の介護・看護を行っていて、学校生活に支障を来している児童生徒に、どう支援の手を差し伸べるかということも大きな課題になっている。さらに外国人、日本語指導が必要な子供たちに対してどう支援をするかということも大きなテーマになっている。
 このような今日的な課題について、生徒指導の観点から切り口をまとめていただいたことは学校にとって非常にありがたい。
 これからは、生徒指導提要をどう活用して、現場に根差したものにしていくかということが問われると思っている。
 埼玉県では、教職員の大量退職、大量採用の状況が続いている。来年度採用予定も、小中高特合わせて2,000人程度の教職員を新たに採用しなければならない状況がある。教育活動のベテランの知見・経験がうまく若手に継承していくということも大きな課題だが、生徒指導に関する経験や知見が、ベテランからうまく若手に継承していくことをどう担保するかということも、教育委員会にとっては大きな課題となっている。
 生徒指導提要はデジタル版も作っていただけるということなので、例えば初任者研修や5年次研修、教育委員会が実施している研修などがあるので、そのような場でデジタル版を活用させていただいて、しっかり定着していくことが大事と思っている。
 教員も今なかなか忙しい状況であり、法令なり通知なり、根拠となる元データを当たることがなかなか厳しい状況がある。このデジタル版のテキストをクリックすることで、元データがその場で確認できるということも、活用に当たっての大きなメリットである。
 学校でも働き方改革の推進が叫ばれており、例えば15分程度、短い研修を繰り返し行うということが定着に向けて有効なのではないかと考える。1つのテーマごとに15分ぐらいで勉強できるような動画が活用できるようになれば、ちょっとした時間で、今日はこのLGBTQに関する生徒指導上の問題について勉強しようということが、職員会議の一つのテーマとして設定できるのではないかと思っている。
 委員の皆様の御協力で大変立派な提要を作っていただいたので、あとは現場を預かる教育委員会として、現場の隅々にまで、一人一人の教職員にまで届くような活用の仕方を検討していく。
【委員】  生徒は特に主体的にいろんなことに取り組んでいくという今の教育の中で、指導も生徒が主体的に取り組んでいくのを支援していけるような提要になったことがとてもすばらしいと思う。法律的なものはもう日常の中にいろいろ入ってきているので、そういった視点で捉えていくことが必要。
 今後の期待することとして、チーム学校ということで、保護者、家庭や地域が学校と共に子供たちを育んでいくという観点から言えば、チームで共有する、この生徒指導提要を学校だけのものではなくて、共有していくことが必要なのではないかと思う。
 子供たちを見ていると、今、動画がすごく簡単に作れるような社会になったということもあって、いろんなコンテンツを動画で学ぶことができる。
 今後この子供たちが先生方になっていくことを考えれば、クリックすると、幾つかのコンテンツも見られるようになれば、活用が進んでいくと思う。
【事務局】  パソコンの通信が不安定ということで事務局から紹介させていただく。1つ目が、前回の提要では教員研修の在り方報告も併せて示しており、今回も必要ではないか。2つ目が教員免許更新制の変更もあって、各段階の教員への研修の体系化が望まれるのではないか。3つ目が、バージョンの変化とともに、それぞれ領域が広いので、他省庁の通知変更などがある場合に、それを受け付ける文科省の窓口を明示して、アップデートに心がけるシステムをお願いできないか。4つ目が、関連して文科省のサイトを整備して、生徒指導提要のページを作っていただきたいということ。
【委員】  保護司会と学校のつながりはまずない。そういったことがある中で、これだけ保護司というものを重んじていただき、現指導提要でもかなりの部分を割いてある中で、今回もすごく優しくチーム学校として扱っていただいた。
 社会の一員としてその子供たちを育て上げているという意識を学校の先生が持っていただければ、より気持ち的にも楽になっていく。いろんな手段があるということを理解していただくことが大事。
 生徒指導提要は研修を行う上でも、研修をやること自体が非常にテーマとしては楽に扱える。教員の中で討論を広げる。これは大事だと思うので、ぜひこれを多くの教員に読んでもらいたい。
 教員一人一人に果たしてこれが改訂されたという情報が行くのかどうかというのが心配。動画で発信という話もあるけれども、提要が改訂されたので、ぜひ読んでくださいというリーフレットのようなものでも各学校全部、全教員に配れるような形で、まず初回は配って読んでもらうのはどうか。その中でもって学校で取り上げて、一つ一つ研修を開いてもらって、一つずつテーマを取り上げて勉強していけばいいと思う。
【委員】  今回の改訂版が、現場の忙しさを加速させるものではなく、正しく読み込み活用することで、児童生徒や保護者、教職員自身を守るもの、教員の専門性をスキルアップし子どもに関わる土台、共通基盤、関わる手立てのバリエーションを増やす素晴らしい内容となっている。
新採教員や「チーム学校」の多職種メンバーにも共通基盤となり得る知識であり、教育委員会との連携でSCやSSW採用時に提要熟読を徹底することがスキルアップに役立つ。地域で学校連携の機会がある専門職も知るべき内容である。
学校に来ることができない児童生徒への意識を向上させ、子どもたちを傷つけることなくエンパワーメントする重要性、地域の大人が連携する意味を再度問う機会となった。提要を通して得た知識は、活用する関係者双方の益となり、実践の勇気を賦活する。
【委員】  まず1点目、社会の変化が急速であるので、それに応じ、古くならないようにやっていくことが大事。
 次に、2点目だが、周知について3点ほどある。先ほどリーフレットのお話があった。普及のための委員会をという話もあったが、ここが一つ大きな肝になるのかと思う。A3判の折ったもの程度でいいので、例えば学習指導要領が変わったときに、内容を分かりやすく平易な言葉で説明したものが出るが、そういったものが幅広く配られ、QRコードか何かたくさん貼り付けておいたりすると、活用が進むのではないかと思う。ぜひ若い職員の方たちにも意見を聞いて御検討いただけたらと思う。
 それから、周知の2点目だが、国の省庁でいえば、文部科学省ではない、例えば厚労省だとか、法務省だとか、警察庁だとか、そういった省庁のラインの機関もあるので、ぜひこういったところの方たちにも学校の指導の在り方を御理解いただくために読んでいただきたい。当然それには周知の工夫が必要。
 そして周知の3点目だが、これは若干先の話になるけれども、中学校長として今、非常に心配をしていることの一つに部活動の地域移行がある。地域の移行をスムーズに行わないと、子供が犠牲になってしまう。そうすると、例えば学校が平日、地域が土日という指導スタイル、移行中にそうなったときに、その指導観だとか、指導目標、指導計画、ここを地域指導者と私たち教員がいかにシェアするかが大きなポイントだと思う。
 当然、指導があれば、問題が起きたときの対応も出てくるわけで、地域の指導者が「全く学校は」みたいになってしまうと元も子もないわけで、足並みをそろえた指導を行っていくことが本当に一人一人のためになる。今後課題としては、この部活動の地域移行に伴って、生徒指導するのは教職員だけではなく、そういった方たちにも分かっていただき、歩調を合わせて指導していただくという周知や普及が今後の大きなテーマと思っている。
 そして最後に大きな3点目だが、活用について、短い動画等は私も有効だと思う。このパンデミックによって、教職員が自分の学校に居ながら、往復の時間をかけずに質の高い研修を受けるという機会がとても増えている。
 一つの動画配信の研修を複数の教員で見て、いろいろ議論し合いながら見ることははいい形だと思っているので、ぜひ文部科学省になるのか、あるいは教職員支援機構というようなところになるのか、全国一律で受け入れられる、この生徒指導提要の内容をかみ砕いたプログラムが幾つもできるととてもいいと願っている。
【委員】  新提要ではキャリア教育という語句が、検索機能で見てみましたら、30か所以上盛り込まれたことは、量的なものであるけれども大変うれしく思っている。生き方の教育として、生徒指導とキャリア教育の連携は積年の課題だったと思う。その基盤に立ち、学習指導が展開されることで、学校教育が極めて効果的に推進されるものと信じており、本提要がその端緒となることを期待している。
 最後に、課題予防的生徒指導における課題未然防止教育を徹底し、課題早期発見レベルへの移行を抑止していくことに、生徒指導とキャリア教育の連携が機能し、学習指導を支えていく実践事例をエビデンスとして、教職大学院の実習を通し収集していければと思う。
【委員】  新提要作成に関わる中で、学校教員の先生方がどういった配慮が求められ、どういった責務があるのかを認識するにつけて、その大変さが想像以上だということを改めて感じさせられた。
 ほかの委員の先生方が話されていた動画の案は非常にいいと思う。好事例という話もあったが私もそれは賛成で、特にチーム学校を含めて多機関連携の重要さが各章に書かれているところだが、実際具体的にどういう機関連携をすることでうまくいっているかという実例も、個人情報に配慮しながら紹介ができるようなものがアーカイブとして蓄積されていくとよいのではないか。
 適切に活用するという観点での今後の詳細な情報のフォローアップもできるといい。例えば、子供たちにアンケートを実施するというのが結構いっぱい出てくるが、実際はアンケート一つ取っても、どう教示して実施するのか、集団なのか個別の実施なのか、どうアンケートを回収するのか、保護者にどう許可を得るのか、回収したアンケート票を誰が責任を持ってどのように保管し、いつ誰が廃棄するのか、それぞれに注意が必要である一方、忙しい現場では抜けてしまうこともあるかもしれない。提要には書き切れなかったけれども、もっと細かく配慮しなければいけないことについても、今後フォローができるとよいのではないか。
 ホームページでもそういった情報を蓄積して、適宜改善する形で情報の更新ができるといい。逆に各現場から、この辺は提要にここまでしか書かれてないが、もう少し知りたいとか、こういったトピックはどうか、というニーズを拾い上げられるといい。
【委員】  1点目は、今回の改訂というのは本当に課題予防的生徒指導、発達支持的生徒指導の内容が充実しているということが挙げられる。それから2点目は、現場の先生、それから教師を目指す学生にとっても、さらに多くの広く関係者にとっても、非常に読みやすくて、活用してもらえる内容であるというように、非常にすばらしいものと思っている。
 3点目が、デジタル版の開発というような、より広く、より深く活用してもらえるものになるということ。
 4点目は、今回の提言の原点が「生徒指導の手引き」で、1965年、昭和40年に発行されて、多くの大学で教科書として採用されて使われていた。しかし提要のほうはあまり使われていないのではないか。ぜひ今回の改訂版が大学の教科書として使われることを期待している。
 それから5点目は、道徳や総合的な学習、特活をはじめ全ての教科授業に生徒指導が関わっていることを確認できたということ。各教科の関係者が授業方法だけでなくて授業内容も見直しを進めていただけたらということを願っている。
 それから最後になるが、ぜひ何年かに1回マイナーチェンジというようなことを期待している。
【オブザーバー】  従前から本来生徒指導というのは積極的に行うものであるというのは言われ続けていたが、現場はどうしても事後対応というか、問題行動に対する指導が生徒指導であるという理解をしがちであって、そこの間に忙殺されているというのが正直なところだと思う。
 今回の提要の改訂が改めて本来の生徒指導の姿を取り戻す、特に全ての教育活動の中に生徒指導が生きているというところを取り戻すきっかけになるものであったと思っている。
 その実現、具現化に向けて様々な事業の中で活用を促していくなど、先ほど御意見の中にあった実践例、実証的な研究の辺りを担っていくという仕事をしなければいけないと改めて決意を新たにしたところ。
【オブザーバー】  前回の提要の積み残し、やり残しをどうにかしていかないといけないということで、生徒指導の目的や定義ついて、日常的に当たり前のように使っていながら、共通の視点がない。それは何とかやめて、共通の文言、共通の表現で語れるものを提示できるようにしたいという思いがあり、そのような形になったというところだけでもすごいと思っている。
 これが原点で、原則であるというところをしっかり提示できたということに関して言うなら、やっと生徒指導提要として誇れるものになったという感想は持っている。
 動画を作ってという話もあったが、それよりも、デジタルテキストということの意味合いをもう一つ考えてみると、例えばLGBTQの話なんかは、我々が中途半端なものを作るよりも、団体や個人が作っているすばらしい動画とか資料があったりする。
 そういうものが、例えば文科省のホームページに、こういうものがあると、自薦他薦を問わず出していただいて、そこの中で使えるようなもの、これはみんなで共有したいというものに関しては参考として示すのはどうか。この生徒指導提要をきっかけにして、うまくつながっていくということができるということは考えてもいいのではないか。
【オブザーバー】  普及啓発というところは非常に重要な関心事として捉えており、例えば調査研究等を企画実施することを通して、提要改訂の社会的な普及を後方から支援していくことができたらと考えている。
【座長】  協力者の委員の皆様並びにオブザーバーの皆様、御指導、御助言、御協力に心から感謝申し上げる。また傍聴の皆様や御要望いただいた団体等の皆様にも御関心いただき貴重な御意見を賜り、これに関しても御礼申し上げる。私としても、それらの御意見は非常に重要だ、大切だと判断して反映をしていった次第である。
 個人的な思いを少しだけ述べさせていただく。私は長年生徒指導の研究をやってきて、生徒指導提要の改訂という事業に取り組むに当たっては、この生徒指導提要を生徒指導の羅針盤にしていただきたいと思っている。今、学校現場も生徒指導で、疲弊している。先生を希望する人たちも減ってきた。非常に苛酷な状況だが、これは我々教職員だけの力ではどうにもならず、学校を取り巻く保護者の方々、地域の方々がこれをお読みいただいて、生徒指導を理解していただき、地域社会総がかりで学校教育を展開していただければと願っている。
 また、私事だが、50年以上前に小学校で暴力的ないじめを受けて、命を守るために、今でいう不登校を選択した。それからその後、不幸は続くもので、親の難病もあって、小学校低学年から今でいうヤングケアラーも20年超経験した。その結果、高校から大学まで日本育英会の奨学金を受けて、何とかここまで来た。
 この原体験から、私は大学の学部の卒論では、アメリカの少年非行を研究し、大学院では当時、生徒指導では学問でなかったが、それを研究テーマにした。そして、40年近く研究をしてきた。その間に、アメリカに国費留学をして、そこでスクールカウンセリングという学問を学び、生徒指導に開眼したといういきさつがある。
 委員の皆さんからすると名もなき大学教員の下で、不安があったと思う。個人的には、自分の責任ではないことで、苦しんでいる子供たちや、大きな苦境に直面している子供たちの救いや希望の光に、この生徒指導提要がなればと思い、座長を引き受けた。
 また、いじめ防止対策推進法が公布されて、何人の子供が自ら命を絶ったか。自死された子供たち、あるいはその保護者、あるいは私のように、いじめられて進路や人生が大きく変わってしまった子供たち、さらに、保護者の皆様の悲しさや悔しさ、それらを常に心に抱きながら、その悲劇を繰り返さない、あるいは指導上の蹉跌を繰り返さないためにはどうするか。事が起きてからでは遅く、亡くなった子供たちはもう戻ってこない。
 問題が、起きないようにどうするか。あるいは、学校で子供が自分らしさを発揮できる、そのような学校や生徒指導とは何だろうかと悩み、考えながら、歩んできた。
 私は、公教育に救われた。公立学校や国立大学があったから、何とかここまで来られた。学校教育に携わる教職員の力というのは、非常に私は大きいと思っている。ただ、現行の生徒提要もそうであるように、生徒指導の見方、考え方、あるいは実践方法など、時代に応じて見直し、整理することが必要だと思っている。
 アメリカでは教育の分業体制が進んでいる。生徒指導に関してはスクールカウンセラー、学習に関してはティーチャーと。日本の場合、教員は、半分がティーチャー、半分がスクールカウンセラーという中で働かなくてはいけない。マンパワーも少ない。そうなると、限界は明らかで、周囲の理解や支えが必要だと強く思っている。
 今回の生徒指導提要のポイントは、第一に、生徒指導の定義や目的を明確にした。教職員の立ち位置も明確にした。教職員は確かに、子供たちに教える、ティーチングする。しかし、実は、教職員は、子供が本来的に持っている、子供の中に内在する力を引き出し、見いだしている。子供の力はすごい。
 大学生の授業で、生きる、学ぶ、働く、共に生きるというテーマで3分ほどのプレゼンを実施している。学生の方々は、本当にすばらしいプレゼンする。教えるという一方通行で、発見できない気づきや個人の創造性に感動する。自分に内在する力を、子供自身が発見し、引き出していく。そのような子供との相互作用が、教員の仕事ではと思っている。
 第二に、「2軸3類4層」構造、すなわち生徒指導の重層的支援構造という考え方を打ち出した。中でも、大切なポイントは、発達支持的生徒指導だと思っている。私は、体験活動も含めて、授業即生徒指導だと思っている。
 確かに、生徒指導の方法論は、多様である。私は下手でも、授業では1時間1感動を心がけてきた。授業に感動や発見、知的な驚きや創造の喜びがあるのか、自問し、見直してみてはどうだろうか。
 学校で多くの時間を過ごす授業の中で、子供たちが、知的な発見でも、あるいは友達の意外な発想でもよい。お互いで何かを一緒に創り上げたという感動が、問題行動の抑止力になり、よき学校生活の思い出になっていくのではないか。
 要するに、私が申し上げたいことは、生徒指導だけでなく、授業や日常生活での感動・発見・創造こそが子供を変えるということ、子供が変わることによって、我々も変わるという点を、見落とさないようにしていただければと思う。
 このような多職種の専門家、実践家で構成された会議を運営するのは、非常に難しい。しかし、委員の皆様の専門的知識や経験的かつ実践的知識に基づいた建設的な議論ができ感謝している。また、各方面の専門家の方々にも御協力をいただき、緻密な編集作業ができたことは、座長として本当に幸運だったと思う。その意味でも、心から感謝している。
 次の段階は委員が言われたように英語版である。可能ならば、英語版はぜひ作りたい。英語版を作成することで、国内にいる外国籍の方々への理解の一助になると思う。また、英語で発信すれば必ず海外からのアクセスはあるので、彼らに理解してもらう。さらに生徒指導ポータルサイトを同時に作って、多くの方々に周知をしていければと思う。
 最後に、抽象的で申し訳ないが、当然、私を含め教職員の方々、保護者は、一年一年歳をとる。子供も、歳をとる。子供たちは歳を重ねながらも、同時に、私たちの未来を創る。私たちの仕事は、未来志向である。
 故湯川秀樹先生が言われている。「一日生きることは一歩進むことでありたい。」と。予測不可能な時代に入っていくが、生徒指導提要にかけた気持ちを述べさせていただいた。改訂案の執筆の方々も、これまでの経験の中で出会った、子供たちの顔、先生方の顔、お父さんの顔、お母さんの顔を思い浮かべて文字にされただろうと思う。そうした思いを受け止めて、あとはデジタルテキストに命をかけて取り組もうと思っている。
 一期一会であるわけだが、私自身の人生にとっても思い出深いものになった。また、40年以上生徒指導を研究してきて、知らないことも多く、本当に勉強になった。皆様に、本当に支えていただき感謝申し上げる。
 皆様からいただいた本日の意見を踏まえつつ、最終的な改訂版、デジタルテキスト版を作っていこうと思う。これに関しては座長、それから副座長、事務局でさせていただきたいと思うが、よろしいか。
(「異議なし」の声あり)
【座長】  それでは、最後に事務局から御挨拶を頂戴する。
【伯井局長】  本日も非常に活発な御議論をいただき感謝申し上げる。
 生徒指導提要の改訂は、昨年6月から、児童生徒の発達を支え、問題行動を未然に防止する積極的な生徒指導を充実させること、あるいは多様な背景を持つ児童生徒に寄り添った支援・指導体制を確立し、全ての子供たちが安心して通える学校を実現することを目指して、約1年という期間であったが、八並座長、新井副座長をはじめ各委員の皆様に合計9回にわたり、精力的、活発に御議論をいただいた。
 そして会議での議論を踏まえ、委員の先生方や外部の方に執筆作業、具体的に御協力をいただき、本日、生徒指導提要の改訂案を取りまとめいただいた。委員の皆様及び執筆協力者の皆様には重ねて感謝を申し上げる。
 文科省としては、この改訂生徒指導提要について、学校現場の先生方にしっかりと御理解いただき、活用いただけるよう、その普及啓発に努めて、より一層子供たちに寄り添った学校運営がなされるよう、取り組んでまいりたいと考えている。引き続き、先生方の御指導よろしくお願いしたいと思う。
【事務局】  1年以上にわたって御議論に御協力いただきましたことを事務局からも深く御礼申し上げる。これをもって第9回生徒指導提要の改訂に関する協力者会議を閉会とさせていただく。
―― 了 ――

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