生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

令和3年11月26日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関するワーキンググループ における審議結果の報告について
  2. 生徒指導提要の改訂に係る執筆スケジュール案について
  3. その他

4.出席者

委員

   浅野委員,新井委員,石隈委員,伊藤委員,伊野委員,岡田 俊委員,岡田 弘委員,奥村委員,栗原委員,笹森委員,七條委員,土田委員,野田委員,針谷委員,藤田委員,丸山委員,三田村委員,三村委員,八並座長,山下委員
   

オブザーバー

   滝オブザーバー,宮古オブザーバー  

文部科学省

   鈴木生徒指導室長

5.議事要旨

【座長】  第5回生徒指導提要の改訂に関する協力者会議を開催する。
 本日は、目次構成の第Ⅱ部第10章に当たる「多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導」に関して、第3回会議において設置したワーキンググループで盛り込むべき内容等をワーキンググループの主査より御説明いただく。その後、執筆に当たってのスケジュールや方針について、事務局から御説明いただく。
 まずは事務局より資料1の目次構成案について改めて触れていていただく。
【事務局】  目次構成案についてはお示しのとおり。
 第Ⅰ部は3章構成になっており、第1章の積極的な生徒指導の基礎、第2章は発達の支援に基づく教育課程と生徒指導、第3章のチーム学校による生徒指導の体制、という形で、第Ⅰ部第1章のところに関して、学校、教育のデジタル化があるので、1-2の生徒指導の課題に、デジタル化社会と生徒指導を加えた。
 また、第Ⅱ部については、各個別課題ということで、第1章から第10章、いじめ、暴力行為、少年非行、児童虐待、自殺、中途退学、不登校、インターネット・携帯電話に関わる課題、性に関する課題、そして多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導となっている。
 次に、参考資料2について、生徒指導提要の改訂に係る御意見という資料を用意させていただいた。今御覧になっているところだけでも5つの団体から意見書が届いており、御参考に見ていただければと思う。
【委員】  第2章の2-3について、特別の教科道徳における生徒指導となっているが、教科の道徳を強調するとしたら、「特別の教科道徳を要とした」道徳教育における生徒指導というタイトルでいかがか。
【座長】  この部分を検討したいと思う。
【事務局】  御意見を踏まえてまた御相談をさせていただく。
【委員】  第Ⅱ部では、未然防止・早期発見・対応となっていて、1-3では発達促進的指導・予防的指導・課題解決になっている。これが積極的な生徒指導の根幹のキーワードであり、未然防止は発達促進の一部で、早期発見も予防の一部で、対応も課題解決の一部で、特に発達障害やいろいろな子供のことを考えるときに、未然防止というのは考えにくいと思う。この内容が同じなので、Ⅰ部とⅡ部同じ言葉にしていただけないか。
【委員】  私も同じ考えで、全く同じでⅡ部の3)のところを、第Ⅰ部の1-3の発達促進的指導・予防的指導・課題解決的指導と明記したほうが、今回の改訂の趣旨が非常によく伝わると思う。
【座長】  次に、それでは主査よりご報告いただく。
【委員】  第10章については、当初、第1節で、第2節として、精神疾患と健康問題とを合体させていたが、議論の経過の中で、一つでくくるのは難しいということから、2つに分けた。
 第4節も家庭状況をどう表現するかということはほかの章との関係があるが、多様な家庭状況が今日影響を及ぼしているというところもあり、この4節立てを想定している。ほかの章では、一つの章で扱う以上の分量が節に下りてきているということで、その階層やディレクトリの考え方は、ボリュームも含めて調整が要ると議論になった。
 次の各項の構成について。1ページ目の一番下のところで、第10章の各節に記載する主な事項等として、基本骨格は基本的知識、現状認識、それからアセスメントの部分、それから学校内対応、それで未然防止・早期発見・対応というもの。
 この未然防止といったときに、子供本人の発達促進的な部分のほかに、例えば関係機関のネットワークをどのようにつくっておくかというような、システムに関わる部分も入ってくる可能性がある。
 場合によっては、ここの未然と言ったときに、本人自身へのふだんからの発達促進的な支援のほかに、例えば要対協とのネットワークの構築など、システムの整備、あるいは学校体制の充実のようなことも入ってくる可能性があって、要検討と感じている。
 2ページは各章の枠組み。第1節が発達障害等に関する課題ということで、実際、臨床的にも、DSM-Ⅳや5を使い、ICD-10や11のドラフトが出るなど、領域によって、用語の混乱、表現の多様さがあり、一旦はICD-11を中心に整合性をとっていく。また、法律の用語も違っているところがあるので、留意を要する。
 それから、発達障害とその周辺域の障害、学習障害を含む特別支援に係る対応についても記載し、またギフテッドなどについてもトピック的に触れられるといいのではないか。
 また、本年6月に「障害のある子供の教育支援の手引」が出ているので、リンクで飛び、参照していけるような仕組みとする。
 それから、小中から系統的にメンタルヘルスに関する教育プログラムを入れ、通常学級における対応を含む校内連携体制、検査機関へのつなぎ方の流儀、方法などのようなことも含めて記載していく。第Ⅱ部の特性上、学校の先生方がそういう事態に直面したときに、具体的な手引き機能も必要なので、書き方のバランスは調整しながらやらざるを得ない。
 第2節が精神疾患に関する部分で、発達障害の人の二次障害としての精神疾患という見方もあるが、二次障害というのは必ずしも限局するものだけでもない。精神疾患をどのように考えるかということについて、安易な二次障害という表現ということは、制限的なほうがいいという議論があった。
 学校での精神疾患とはありふれた障害であるという認識のもと、それに気づき適切な手当てを行うことが必要である。あるいは服薬管理、受診、投薬情報等、どんな兆候がありどこから気づいていくか。リストカット、摂食障害、身体化障害、それから希死念慮、飲酒、薬物、それから小児うつや起立性調節障害など、長期欠席の診断に挙がる事例への対応。起立性調節障害が精神疾患のカテゴリーなのか、次の3節とのすみ分けで、まだ十分吟味できてないところはある。
 それから校内連携、カウンセリングマインド、守秘、あるいは学校の体制といった点に留意する。
 インターネットやゲーム症といった最近のトレンドに対して、医学概念として確立してないので、主にはインターネット・携帯電話に関するⅡ部8章で扱ってもらいつつ、必要な部分についてこの節で書くこともある。
 それからLGBTやデートDVなどの性や、男女交際というか、そういう異性間交際等を含む暴力などに関しては、ほかの章で扱っていただく。
 被害者対応のこと、あるいは医療機関につなぐ際の留意点。特に先ほどの発達障害もそうだが、外部機関と連携するときの留意点のようなことが必要。
 例えば、弱視や色覚障害という視覚系のことや、肥満、身体疾患等。ただ当然、2節とのすみ分けが必要なものがあり、例えば、養護教諭の対応の学習手引であるなど、あるいは現代的健康課題を抱える子供たちへの支援というようなものが典型的だが、関連する数種類のところと共有できるようにする。
 それから学校保健安全法に基づく疾病の予防処置や治療指示が出された場合のフォロー、虫歯の治療していないなどというようなことをどう考えていくか。この3節については、やや積み残し課題があり、執筆に向けて精査する必要がある。
 第4節について、一つは、基本的姿勢としては、多様な背景、養育環境の子供たちを知り理解する。トピックについては、取捨選択が必要だけれども、取捨選択という意味ではここに入れるか入れないかという問題と、それから次の項目にあるが、ほかの部でどう扱っていただけるか。
 特に、今日の児童福祉法上の概念である要保護児童、要支援児童、特定妊婦、それから貧困、ひとり親支援、それから就学援助、それから健康保険等がない無保険、それから内科や歯科系の疾患と、受診・治療しない場合、先ほどの健康問題とどう絡むかということもある。
 トピック的な意味ではヤングケアラー、それから保護者の精神的な課題。特に下線を引いている辺りが必要な項目としてということであった。
 それから、「10章執筆に当たっての前提事項」の各項で扱う範囲に照らして、それぞれの事案の対処・対応に必要な関係機関等につなぐための手だてについて包括的に記載するということで、家庭がというだけではなくて、学校だけで対応するということが十分できない、あるいは学校だけでやることが不適切な事例もあり、法的な枠組みも含めて、整理する必要がある。その一つは社会的養護であり、要するに要保護児童に対して、家庭の代替機能として、里親や施設等でという話の部分。
 それから、家庭における多様な背景として想定される例として、全部書くかどうかというのは精査の対象という前提で、同性カップル、あるいはひとり親、それから身体、精神、知的障害などのある親、それから祖父母や親戚の過干渉、DV、それから無職の親、それから貧困、生活保護家庭、家族の自死・事故死、あるいはネグレクト、ごみ屋敷、アルコール、薬物、性依存の親、ステップファミリーなどがあげられた。
 教育の世界では違和感のある表現も含んでいるが、福祉を含む各領域ではこれら一つ一つというのが議論にもなるので、今回の提要の中にどう入れるかということについて検討が要るかと思われた。
 それから家庭教育支援チームの活用など、アウトリーチ型の支援ということも視野に入れる。家庭対応に関しては、不登校児童生徒への支援の在り方について、令和元年10月の不登校児童生徒への支援の在り方についての通知においても、家庭訪問であるとか、あるいは安否確認できないときはどうするかというような記述もある。
 それから、ルーツが外国にある方のことも含めて日本語指導が必要な児童生徒の具体の対応については、「外国人児童生徒の受入れの手引」などを参照できるようにリンクづけしも検討する。
 いずれにしても10章で検討するものには、すみ分けで悩んでいただく部分というのが多く出てくる。特にその中でも、子供の理解とアセスメントの部分や、それから子供理解や配慮や生育歴などの個人情報をどう扱っていくか、それから「相談することは特別なこと」だという意識が出てしまうが、初期の発達促進的な部分からどう考えるか。
 また各機関の具体の役割や各機関における対応の優先順位の違いなど、関係機関がどうものの考え方をしているのかというようなところも大事であり、連携の前提となる重要な要素を確認すること。
 それから少年事件において、発達の課題や保護者、地域、学校との人間関係を構築できないことが、むしろ重大事件に結びついている場合もあり、大規模で家族等とのつながりをどのような意味で重要かということを記載すべきという意見もあったが、生徒指導の重要な柱である非行問題に関しても、もともと非常に荒れていたタイプの子供と、いきなり型の非行と言われるような、まさに第一次的なところから第三次的なところまでを含まざるを得ない。
 それから安否確認できない場合の対応。18歳越えについて、特に高等学校の生徒指導においては、来年の春から18歳が成人になるので、親権者あるいは保護者などという概念が変わってくる。この辺りどうするか。
 厚生労働省のほうで重層的支援体制というようなワンストップ型の相談システムが強く推進されていて、今構築の経過だと思うが、この部分などをどう取り込むか。
 それから、学齢を過ぎたあたりからの子ども若者育成支援推進法などに基づく支援システム、特に引きこもり防止のようなところでは、どことつないでいくのかという視座も必要となる。
 それから市区町村の子ども家庭総合支援拠点、これも設置が義務づけられて、間もなく完成ということになり、従来の市町村のものの考え方とまた変わってくる部分がある。
 引きこもりとの関係をどうするか、一部、あるいは他章で書いていただいて、そことリンクを飛ばすという形のものもあれば、この10章の中でしっかり書いていくということもあろうかと思う。
【座長】  それではただいまの御説明について、フリートーキングを行う。
【委員】  先ほどの続きで、簡単な整理と意見だが、発達促進というのは今回の積極的生徒指導の柱であるということで、キーワードだと思う。
 予防というのは、発達のところで予防を入れるところ、発生予防ということになるけれども、3つの整理を一緒にしていただいたときには、2番目に予防などが出てくる。
 これはある程度、苦戦やつまずきが始まっているところをより大きくしないで、生徒の発達に妨害を与えないようにという予防なので、とても大事だと思うが、予防早期発見、それから対応というところの予防は、発生予防ということになるので、ただ発生予防だけではなくて発達促進ということと、子供や環境に働きかけるという意味で、1章とⅡ部はそろえたほうがいいかと思い、付け加えさせていただく。
 それに絡めて、今の主査の御発表への感想だが、この多様性に関しての議論をしていただくことで、生徒指導の幅がすごく広がったと思う。それで現場により近づいて、現場には届きやすくなったと思って、とても勇気づけられた。また、子供本人の考えや子供本人の特性というのを、もう少し強調していただければいいなと。子供本人の意思や多様性に関わる強みというのをこの章で強調していただければいいと思う。
 もう一つは、家庭との連携、家庭もいろいろあるが、家庭を支援の対象だけではなくて、共同でやるという、家庭との協働というのも強調していただきたい。
 それに絡めて、アセスメントのところは、子供と環境のアセスメントというところにしていただくといいかと。
【委員】  今回の積極的な生徒指導をしっかり位置づけていくことを考えたとき、第Ⅰ部第1章の1-3の発達促進的生徒指導・予防的指導・課題解決的指導を第Ⅱ部の3)のところにもしっかり明記して、その流れの中で、次の第1章、2章というふうに行くというほうが、より明確に今回の改訂の趣旨が、先生方に伝わるのではないか。
 その意味で、生徒指導における、また教育相談という言葉の中におけるカウンセリングとガイダンスという概念をどのように私たちが捉えるのかということで、リアクティブ及びプロアクティブのこの考え方が中心である。このことを生かしていく意味でも、今申し上げた第Ⅱ部のところの3)は、委員が御説明した文言に変えていくほうが、より明確になるのではないか。
【オブザーバー】  今の話に関して、なぜそもそも第Ⅰ部と第Ⅱ部で使い分けていたのかというところにも関わると思う。
 基本的に第Ⅱ部というのは、ある種問題や課題を想定している。それに対して第Ⅰ部は、特定の課題をも含めながら全体をということだと思っている。
 例えばコロナならコロナ、インフルエンザならインフルエンザと考えたときに、そのワクチンの接種というのは明らかに予防である。だけど、このワクチンの接種というのはインフルエンザの型によって、当然ワクチンも変わってくるわけで、不登校の予防といじめの予防とは違う可能性がある。ワクチンに種類の違いがある。
 例えばインフルエンザなどそういうウイルス感染の問題であれば、手指の消毒やうがい、あるいはマスクというのができる。これも問題を想定している、つまりウイルスだと分かっているからこそ、ウイルスに向けたマスクである。
 実は私どもがずっと、居場所づくり、絆づくりなど言っていたときに想定しているのは、実はそのマスクよりもさらに前、早寝早起き朝御飯のようなレベルの話。この早寝早起き朝御飯というのは、別に相手がウイルスだろうが熱中症だろうが関係がない。つまり熱中症向けの早寝早起き朝御飯やインフルエンザの早寝早起き朝御飯があるわけではないので、そういう意味でいうと、課題の想定はしていない。
 そうすると例えば、朝自分で起きられる、あるいは朝、校門のところで、校長先生に元気よく挨拶ができる、あるいは朝の会で挨拶ができる、先生の目を見て挨拶ができる、私と話をするときに目をそらさずに話ができるなどのような話のことは、いじめにも不登校にも関係はするものの、いじめ対策用の挨拶の仕方があるわけでもない。
 したがって、前の提要の時は、成長を促すとかいうような言い方をしていた時も、その未然防止のレベルの話というのは非常に広い。一方、第Ⅱ部はそこからさらに、その段階を超えたところで、成長を促すではなく未然防止にという、あえて成長を促すことを持ってこなかった理由は、当然そこにはもう、早寝早起き朝御飯はもうⅠ部で書かれていて、第Ⅱ部では早寝早起き朝御飯ではなく、それぞれの課題に即した予防、だから治療的予防しか書かなくていいので、その治療的予防を多分未然防止と言っていたのではないかと私は解釈している。
 第Ⅱ部にまた成長を促すということになっていくと、もう極端なことを言うと、病院に行けば学校は要らないぐらいの議論にすらなっていくということだと思う。
 私は病院と学校とは違っていると思うし、病院でももちろん本人自身の治りたい、健康になりたいという気持ちが大事だよとは言うものの、むしろもっと積極的に、治りたい以前のもっと元気に運動場を走りたい、もっとたくさん友達をつくりたいなど、そういう話の部分、特に、結果的にはいじめや不登校や暴力行為の未然防止につながってはいくけれども、もっとそれ以前の子供自身の力や、子供自身の持っている一緒につながりたいという思いを高めていくということを強調しているのが第Ⅰ部と思っていた。
 だから、第Ⅰ部と第Ⅱ部の見出しがもし同じになってしまうと第Ⅰ部と第Ⅱ部を分ける理由がどこにもなくなってしまうのではないか。
【委員】  学校と病院は違うし、今回のまず組立ては、Ⅰ部で基本的なことを考えて、Ⅱ部で具体的なこと、だからⅡ部の中にも全ての子供への積極的な援助を入れるというのが最初の確認であったと思うので、Ⅰ部とⅡ部は同じ言い方の方がつながりやすい。Ⅰ部に発達促進的なことを具体的には書き込んではいないと思う。
2つ目は、コロナ対策と不登校の対策は全く違う。コロナの場合には、かからないほうがいいという意味で未然防止である。しかし、不登校やいじめは、そうではなくて、そうなる状況もあるわけで、それをゼロにするのではなくて、それを少しでもゼロに近づけながら、そうなったときにどうやって子供が成長しながら解決していくか、我々が環境をよくするかということである。
 未然防止というと不登校やいじめ、例えば不登校そのものがよくないということになってしまう。教育機会確保法にもあるように、不登校というのは一人一人が違う状況というところで、そういう状況の中でも子供がどう成長できるか、発達できるかということが大事だと思っているので、生徒指導では、未然防止というよりも、二次的な支援の、今の状況がより悪くならないということの予防的指導ということで収まりがいいと思う。構造的には、Ⅰ部が理論編、基礎編でⅡ部が具体的なので、3段階を入れようと私は理解している。
【オブザーバー】  第Ⅰ部と第Ⅱ部が理論と応用なのか、課題対応的な側面を意識したものと全体なのかという、その分け方が問題になろうかと思う。
 それからもう一つ、Ⅱ部の冒頭の部分に、成長発達を促すところの具体を書くのであれば、不登校のための成長発達を促すと、いじめのための成長発達を促すというものを書いていくと、重複する部分が多くなる。
 皆さんが具体と想定しているのは、ある程度いじめならいじめを想定しているからこその具体であって、あるいは、教育相談というもの、カウンセリングというものをベースにしているからその具体というのが限られているとお思いだと思うが、私は例えば、成長発達を促すようなことで言うなら、みんなでお花見に行く、あるいは、朝、日が昇るところを見たことがあるなど、そのようなことまで含めて全部入ってしまうので、限りなく具体を書き続けることは不可能だろうと思っている。
 むしろ、そうやって積極的に人と関わる場をつくり、あとの部分は実は学校教育そのものが提供するものなので、生徒指導全体として視野に入れていかなければいけないということはⅠ部で書ける。その次に、課題がある程度意識されるようになってきてからは、生徒指導が積極的に引き受けていかなければいけないところがⅡ部になる。
 例えば、道徳教育との関係のようなものは第Ⅰ部で書くが、第Ⅱ部のところで、いじめのところで改めて、いじめをなくすためには道徳教育の充実が必要であるということを書くとなると、繰り返しになってしまうので、全体に共通する部分は、第Ⅰ部でまとめておく。
 むしろ第Ⅰ部で、成長発達を促す部分の中でも、漏れていく子供たちへの働きかけはというところは、後ろに持っていくという構成と理解した。
【委員】  教育現場を考えると、教育というのは、バイオ・サイコ・ソーシャルモデルではないかなと思う。一方で、チーム支援という視点に立ったとき、個別の課題に対応するときにも、バイオ・サイコ・ソーシャルモデルを踏まえながら、チーム支援というスタンスがより良いとは思っている。
【委員】  特に各論的課題という意味で言えば第Ⅱ部のものにおけるアセスメントというのもいずれも、バイオ・サイコ・ソーシャルを念頭に置いたものである必要がある。ただ、10章などは、学校教育だけの枠の中に収まるかというと、例えば虐待などは関係機関との連携を先にとり、必要なときは警察と相談することなど、様々な外部との関わりを考えなければならない。中身によってはむしろ外部のほうが、その課題についてのイニシアチブをとりつつも、学校が丸投げして終わりというものはないので、学校の中で何を引き受けつつやるかという問題だと思う。
 どのステージでもバイオ・サイコ・ソーシャルが必要。例えば家庭裁判所の少年非行の担当たちは、今BPSモデルでアセスメントをするよう、研修所などでもそのように切り替えている。一方で、第Ⅱ部の部分はそれぞれの課題に関わるかもしれないと先生たちには目が肥えていただき、日常の手引きとして、横に置いておいて助かるものにする必要もあるということになると、この手引き自体が第Ⅰ部から順に読んでいくものとは限らず、むしろ課題があったときに、それを手がかりにして読み解いていくということになる。
 そのような逆引きのほうがむしろ普通の使い方になる可能性があり、Ⅰ部のところでの段階的な立てつけと、それからⅡ部の立てつけ、そしてそのゴールというのは先生方が実践において役立つもの、というところまで届いていないといけない。その道筋が長過ぎると、現場では避けられ、後手に回り、その辺りのバランスが悩ましい。
【座長】  第Ⅰ部・第1章の児童生徒理解で、BPSモデルに関しては触れようと思う。生徒指導の問題は、初動段階である。初動段階での判断が、その後のチーム支援にも響いてくる。最初の段階はアセスメントで、子供自身が持っている強みや長所などの自助資源、発達の程度、環境面からの支援資源などに関して、第1章でBPSモデルを示す。
 チーム支援では、子供個人を見る、学級やホームルームという集団を見る、あるいは学年を見るなど、理解の深さと広がりが、その後の目標設定やチーム編成に影響する。
 特に、中教審のほうでも、生徒指導ではなくて生徒支援のほうがいいのではないかという御意見も出ているが、最終的には子供自身が、自己の持っている可能性や強みを引き出し、伸ばす、あるいは発見することが大切である。また、児童生徒理解に関しては、発達といっても、一人一人が発達の程度が違うので、かつての発達心理学的な見方で子供たちを捉え切れない。
 そういう意味で、児童生徒理解におけるBPSモデルに基づくアセスメントは、第Ⅰ部・1章で書きたいと思う。個別の章で、先ほど言われたように関係機関との連携の中で、アセスメントを扱うので、基本的なものは第Ⅰ部・第1章で書いて、第Ⅱ部のほうでは個別的なものを書いていただければと思う。
【委員】  BPSモデルについて、どのような情報が生物・心理・社会面でのアセスメントに当てはまるか具体例があると良い。アレルギー体質、愛着の課題、遠距離通学など、それぞれの情報を振り分けモデル化する具体例により、学校現場での使いやすさ、問題の早期発見、支援に繋ぐために役立つ視点を持つことができる。
 児童生徒の心理面を理解するため、現行生徒指導提要第3章で見出しに「心理」の表記がある。今回も第Ⅰ部、第2章の発達の項目などで「心理」発達の重要性が見出しなどで明記されるなら、BPSモデル活用の意義がより理解しやすい。
【委員】  「多様な背景を持つ児童生徒」という語句は、第Ⅱ部の6章や7章辺りに重複して登場すると思う。この語句の内容を整理しておかないと、読み手も混乱すると思う。調整しておく必要があるのではないか。
【座長】  かなり重複する部分があると思う。第Ⅰ部との関連性や第Ⅱ部の各トピックとの関連性で、可能な限り重複を避ける。作成や編集過程で、その点に配慮しておかないと、大きな障壁になるだろうと認識している。
【委員】  Ⅰ部でいう発達促進的な指導の部分と、この第Ⅱ部で書かれる具体的なもの、それを先生がすぐに対応したいという形で御活用されるとなると、第Ⅰ部では総論的なもの、Ⅱ部のほうは、より具体的な対応の仕方という部分が主になってくると思う。
 子供の意見であったり、保護者の意見であったり、あとまた地域の意見という形で、関係機関との連携、外部とどう関わっていくか。第Ⅰ部の第3章のチーム学校の中の関係機関との連携もあり、学校内での体制というところも、重複する部分が出てくる。Ⅱ部の1章から9章までもそうですし、10章はさらに重なる部分もあると思って、整理が難しくなる。
【座長】  次の議題に移らせていただく。これまでお示した目次構成案、サンプル原稿などをもとに、事前に御連絡をしていた担当者の方々には執筆を開始していただくことになるが、執筆に当たってのスケジュールや方針について、事務局から御説明いただく。
【事務局】  生徒指導提要の改訂に係る執筆スケジュール案について、各先生方には御依頼しているところだが、執筆いただくものについては、重複する部分、またバランス、それぞれを見る必要がある。編さん作業の時間もきちんと設けるということも、全体的に考えているところ。
 また、今回の執筆方針をある程度先生方に御議論いただき、執筆に入っていただくということを考えている。執筆の期限に関しては、大体1月の中下旬までに原稿を書いていただく。原稿に関しては、主筆とサブの筆者がいて、二方の間で、ある程度チェック、議論をしていただきながら、各章を執筆していただくという形を考えている。
 執筆に関しては、第Ⅰ部、第Ⅱ部のサンプルがあるので、参照しながら、各分野の先生方に書いていただく。中下旬に締めさせていただいたものに関しては、1月中には、編さん者のメンバーを複数名、御指名させていただき、その編さん者グループによって、各章の横並びや必要な記載が書かれているかチェックを行う。
 中にはもう御執筆いただいている方もいらっしゃって、具体的に事務局に相談をされている方もいらっしゃるが、1からの歴史を書いてしまって、相当なページになってしまうという御相談もある。しっかりとこの編さんグループにおいて作業させていただきたい。
 必要なところを横並びというものを見ながら、場合によっては分量などについて、原稿執筆者の書いていただいたところからばっさりと、ある程度精査していただくということも、編さん者の権限でさせていただくということを考えている。また、今回デジタルテキストとさせていただくため、リンクの張りつけ等についても体裁を整えたいと思う。
 これが1月の下旬までで、編さんについては、1か月程度時間をかけていただいて、次の会議は、原稿執筆と編さんを経た上で、大体3月の初旬に開催し、そこで改訂の素案をお示ししたいと思う。
 第6回において協議を経た上で、この素案を協議していただき、3月下旬を予定している第7回会議で最終調整としたいと思っている。最終調整の結果については、3月下旬、年度内には公表したい。
 また、執筆方針については、積極的な生徒指導の充実、個別の重要課題を取り巻く関連法規等の変化の反映、そしてチーム学校の考え方、新学習指導要領の考え方の反映、また読みやすいものにする、その学校の現場の先生が使いやすくなるようにということを基本的な考え方とする。
 また、目次構成案については、ある程度御議論いただいたと考えており、資料1をもとに執筆をしていただく形になると考えている。
【座長】  参考資料1は、私のほうで前回発表していただいた原稿も組み入れて、あらかたのデジタルテキストのイメージをつかんでいただくために作成したものである。今回は、第Ⅰ部、第Ⅱ部の二部構成になっている。第Ⅰ部・第1章は、8月25日の第3回で出したサンプル原稿であり、第Ⅱ部・第1章は、10月15日の第4回に出されたサンプル現行である。両者を、一緒に組み込んでいる。
 目次が青色の文字になっている。章、節、項をクリックしていただくと、該当ページに飛ぶようになっている。最後に、索引もつけている。索引からも、ジャンプできる。
 次の第Ⅰ部の表紙を見ていただくと、第Ⅰ部は生徒指導の基本的な進め方ということで、これは前にお示ししたものとなっている。デジタルテキストは、カラー版とモノクロ版を作成する。カラー版で御説明すると、本文の青色の文字は、脚注で説明するようにしている。また、日本国憲法という赤色の文字は、外部リンクを張っているので、クリックしていただくと外部の該当のホームページが開く。第Ⅱ部も基本的には、同様である。
 現行の生徒指導よりはページ数もある程度少なく、各トピックから関連する法規や必須の知識を得ることができる。そのため、各章の分量をある程度限定して、その中で執筆をしていただく。
【委員】  フォント、特にポイントはこれでいく予定か。
【座長】  ポイントに関しては12ポイントである。デジタルテキストで見る場合には拡大・縮小は見る方が簡単にコントロールできるので、脚注なども拡大してもらえばきれいに見える。文部科学省とは議論していないが、デジタル版と現行のような紙版の両方を作成するか考える必要がある。
【委員】  今回の改訂で、チーム学校というのが一つの大きな柱というか、新しく入ってくる概念と思う。それから教育相談コーディネーターをどう位置づけるのか。
 発達促進、予防、課題解決的とどう絡めるのか基本的な方針があれば、そういう枠組みで書いていけばいいと分かると思う。例えば教育相談コーディネーターの報告書の中で、三次的支援を中心にやると書かれている。一方で不登校の報告書では、これから予防的なことをやるとも書かれていて、教育相談コーディネーターとその発達促進が絡むのかなど、その辺りの基本的な方針が分かると書きやすい。
 個人的には、その三次支援だけに教育相談コーディネーターが特化してしまうと、分業になってしまってよくないと思う。生徒指導は教育相談コーディネーターと生徒指導主事が協力しながら、一次も二次も三次もやっていくという枠組みが一番いいと考えている。
【座長】  学校教育法施行規則の一部改正により、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーも、未然防止から早期発見、支援・対応まで一貫して業務に当たっていくとなっている。発達促進的指導において、例えば、いじめ防止プログラムを作成する場合、生徒指導担当と教育相談コーディネーターが連携しながら、チームで学校全体のいじめ防止プログラムを作成、実践する。
 個人的な意見だが、教育相談コーディネーターも、三次的支援という課題解決だけではなくて、発達促進の一次的支援から、生徒指導担当と連携する。あるいは、特別支援教育コーディネーターと連携しながら、学校全体の生徒指導を運営していくというイメージを持っている。
【事務局】  基本的にはチーム学校としての連携は、今は各教職員が主となるので、そういった書き方がある程度統一感はあるのかと思う。
【座長】  今、委員が言われたことは、大問題で、ある程度の方針が示されずに、この内容で書いてくださいと言われても難しいと思う。そういう意味では、執筆者が決まった段階で、疑問点を出していただく。それに対して、編さんチームが、回答する。あるいは、各章において、必要なキーワードを示すなど、事前に方向性を提示することは必要だと思う。
【委員】  予防は、きちんと対応して子供を成長させようといった形で、何か悪いことをなくそうというトーンは避けたい。それから、課題解決はその子の発達課題に子供自身が対応できるように応援するという意味で、その課題がなくなるということではないということは、確認をしたい。
 例えば、発達障害のある子供の課題がなくなるわけではなくて、課題のニーズは大きいけれども、その子供がチーム支援も活用してきちんと成長できるということなので、この解決というのは問題がゼロになるわけではなくて、子供が課題に対応して成長するということである。
 もう一つは、家庭や他機関との連携ということを考えて、またチーム学校の中教審の方針の基本に立ち戻ると、チーム学校は2つの側面がある。一つは学校内の組織連携の強化、もう一つは学校・家庭・地域の連携強化。校内の連携の部分と、学校・家庭・地域の連携の部分と、2つ側面があるというのを確認できる。
【座長】  一つは、教員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの各専門性を生かしてチーム連携するという、校内のチーム連携、チーム支援がある。
 他方、子供や家庭の多様化に対して、教員のマンパワーが不足している。地域の方のボランティアや大学の学生ボランティアなど、いろいろな地域のリソースを、生徒指導にうまく取り組みながらやっていかないといけない。
【委員】  先ほどの発達促進的、予防的、課題解決的というのを、課題別のところに持ってくるのか持ってこないのか。
 法の中では、いじめの未然防止、早期発見、そして確認された後の迅速かつ適切な対応ということが示されている。いじめに対して未然防止、いじめの予防、そしていじめが確認された後の対応と書いている。
 サンプル原稿では、冒頭に、3局面、児童生徒支援の階層的な構造と、いじめの未然防止、予防、早期発見、対応がどう重なるのかを書いて、その後、未然防止、早期発見、対応と言う項目で書いている。その最初のところを、全体でまとめてⅡ部の冒頭に書いていただいたほうが書きやすいのではないか。
 課題別に書いていくときに、例えば法でも、いじめに関しては法に未然防止、早期発見、対応という言葉が出てくる。教職員の皆さんの感覚では、未然防止、早期発見、対応というほうが分かりやすく、実態に即していると思うので、執筆にあたって、そこははっきりさせておいたほうがいいかと。
 例えばいじめ防止対策組織も、社会に開かれたチームとしての学校の在り方を具現化している。具体的なことを書いていく中で、例えば、チームとしての学校のありようを下敷きにしているから、あえてそこで言葉として出す必要はないのか、改めて出すのか、実際に原稿を書く段になると難しいと思う。
【座長】  第Ⅱ部を書く場合も、方針として、書く時にこういうことを念頭に置いて書いてくださいとするほうが書きやすいと思う。
【事務局】  早々にその編さんチームをメール会議なりである程度招集して、各章の大まかな方向性について編さんチームにも御議論いただくという形はどうか。
【座長】  執筆要領の中に、執筆の方針という形で、編さんチームで議論したことを書いてお渡しし、さらに疑問があれば、また個別に回答していく。
【委員】  教育相談コーディネーターをどう位置づけるのか。いじめのところで、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーには触れているが、教育相談コーディネーターには触れてない。生徒指導主事には触れている。教育相談主任という言葉は使っている。いじめのときに教育相談コーディネーターがどう関わるのかは、明確にはできなかった。
 教育相談コーディネーターについて、例えば、いじめの中で触れないでいいのかどうかを統一しないと、読んでいるほうもばらばらになってしまうので、方針を出したほうが書きやすく、学校現場にとっても、読みやすく、動きやすいものになるのではないか。
【座長】  教育相談コーディネーターは、法には位置づけられてないが、第Ⅰ部で取り上げておくのがよい。その辺りも編さんチームのほうで、執筆依頼をする時に、具体的な執筆方針を入れ込んでいきたい。
【委員】  平成29年2月の教育相談の充実の通知の中に書いていただいていて、その前提となる報告書をまとめた経過からいうと、文章自体が、学校の体制を維持するということにも、教育相談コーディネーターにひと働きしてもらうという書きぶりになっている。
 ただ、中学校の生徒指導主事のように、クラス担当を外して独立した校務分掌として位置づけるには時期が早いだろうという配慮もあり、やや三次的に着目するような書きぶりにせざるを得なかったといった経過はあったと思う。
【委員】  組織の位置づけや、あるいは校内の会議の名前もいろいろ行われていることもあり、読む側が混乱なく読めるような工夫がいると感じていた。書く時も、それが誤っていると全然伝わらないということもある。
【委員】  1点目は、キャリア教育について、進路指導との関係について最初のところで記載していただければと思う。
 2点目は、コロナ感染症の影響で、通常のデータと乖離したデータを示さなくてはならないのではないか。
【座長】  
データに関しては、提要の性質上、生徒指導の諸課題調査のデータなど提示することはしない。
 キャリア教育・進路指導に関しては、今回、学習指導要領の総則で、児童生徒の発達の支援が新設された。その3本柱の一つが、キャリア教育である。生徒指導とキャリア教育・進路指導というのは表裏一体だと思う。
 また、子供たちが自ら望む進路、それが就職であっても進学であっても、子供自身が望む生き方を選択決定してほしいということも共通していると思う。
【事務局】  早急に、こういうところは方向性で示していただきたい、こういう懸念についてきちんと考えて示してほしいということをメールで送っていただきたい。
【座長】  次回の第6回会議は、執筆や編さんを経て、3月上旬を予定している。第6回で生徒指導提要の素案をお示しして、皆様より御意見いただければと考えている。
以上をもち、第5回会議を閉会とする。
―― 了 ――
 

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