生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第4回) 議事要旨

1.日時

令和3年10月15日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 生徒指導上の課題(不登校)に係るヒアリングについて
  2. 生徒指導上の課題(いじめ)に係るヒアリングについて
  3. 生徒指導提要(改訂)の目次構成案
  4. その他

4.出席者

委員

   浅野委員,池辺委員,石隈委員,伊野委員,大字委員,岡田 俊委員,岡田 弘委員,奥村委員,栗原委員,笹森委員,七條委員,髙田委員,土田委員,野田委員,針谷委員,藤田委員,丸山委員,三田村委員,三村委員,宮寺委員,八並座長,山下委員

ヒアリング協力者

   新井委員, 伊藤委員

オブザーバー

   小野 オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー  

文部科学省

   伯井初等中等教育局長,淵上大臣官房審議官(初等中等教育局担当),鈴木生徒指導室長

5.議事要旨

【座長】 定刻になったので、第4回生徒指導提要の改訂に関する協力者会議を開催する。
本日、生徒指導上の課題に関してヒアリングを行う。まず、不登校の問題について、奈良女子大学の伊藤委員よりヒアリングを行い、第2部第1章のいじめの章について、関西外国語大学の新井委員にサンプルを作成していただいたので、ヒアリングを兼ねて御説明いただく。その後、フリートーキングを行う。
次に、前回会議後に事務局の方から委員の皆様にメールで照会させていただいた目次構成案について、いただいた御意見をまとめているので、事務局から御報告させていただく。その後、残りの時間を2回目のフリートーキングとして、全体を通して御意見をいただく。
まず、会に先立ち、事務局より2点、御連絡をお願いしたい。
【事務局】 9月21日付で人事異動があり、御連絡させていただく。
まず、初等中等教育局長の伯井美徳から。
【事務局】 生徒指導提要の改訂は極めて重要な話であり、よろしくお願いする。
【事務局】 続いて、初等中等教育局担当審議官の淵上孝である。
【事務局】 よろしくお願いする。
【事務局】 続いて、文部科学省では、児童生徒の問題行動・不登校と生徒指導上の諸課題に関する調査結果を一昨日の13日に公表した。文部科学省のホームページにおいて、調査結果及びその概要を参照できるので、御覧いただければと思う。
【座長】 それでは、議題に入る。生徒指導上の課題に関して、不登校の問題について、伊藤委員に資料1につき20分程度で御説明をいただく。
【伊藤委員】 不登校に関しては、1950年代後半から日本の社会では話題になってきたが、その頃から80年代にかけて不登校の数が増加していった。当時は登校拒否という呼び方が中心であったが、心の病気から教育問題へと広がり、教育現場ではカウンセリング・マインドという言葉が広がっていった。
92年の報告の中では、不登校はどの子にも起こり得る等、当時が神経症的な不登校が多かったということもあり、待つことや見守ることの大切さが強調された。
その後、2000年代にかけて不登校が多様化し、教育問題から社会問題へと広がっていった時代に入る。2002年9月から不登校問題に関する調査研究協力者会議というのが立ち上がった。議論の中心としては、待つという対応でいいのかというところがあり、結果として、ただ待つのみではなく、正しいアセスメントに基づく適切な関わりや働きかけが必要であるという方向に舵がきられた。
その背景としては、不登校が多様化し、虐待や発達的な課題を抱えた不登校など、待っていてはいけない性質の不登校が増え、このように方向転換がなされた。
その後、2000年以降不登校というだけで問題行動とはみなさないという見方が出され、2016年には教育機会確保法が公布された。教育機会確保法の不登校に関するところを見ると、まず1番には、不登校の児童生徒に対する教育の機会の確保が強調されている。魅力ある学校づくり、それから、登校という結果のみを目標としない、あるいは、不登校児童生徒の社会的自立を目指すこと。
それから、2番目で、夜間中学にも言及され、3番目では、民間団体、特にフリースクールなどとの連携が強調されて盛り込まれている法律となっている。
次に、問題行動等とはみなさないという見方に対する現場の反応をまとめた。
一つとしては、そのように言ってもらうことでゆっくり休める、ほっとするという保護者もいた。しかし、それだけでは不登校の子供や保護者の不安、心配は完全には払拭されていないのが現状。さらに、問題ではないということを、何もしなくていいと誤解する方もおいる。また、学校復帰ではないとすれば、その先にある答えを教えてほしいという親御さんの声も聞いた。
このようなことを踏まえ、不登校の子供たちの個に応じた支援は必要であるということが認識できる。
不登校については、年間30日以上欠席という定義そのものが漠然としており、いろいろなものが含み込まれている。例えば、いじめなどの人間関係、トランスジェンダーを抱えた子供たち、ゲーム依存の子供、それから、定義の中に経済的な理由は含まないと言われつつも、不登校の背景には見え隠れする虐待、貧困、さらに、ヤングケアラーの問題がクローズアップされている。
こうした不登校に対して、生物・心理・社会モデルという見方に基づいた多面的なアセスメントと、多職種、学校教員だけではなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、病院、そういった多職種による支援が必要であると再確認されているところ。
不登校の子供たちは学校に行きたくない、行くのがしんどいと言っていると聞くけれども、面接していくと、行けるものなら行きたい、安全な学校なら行きたい、しかし、行きたいと言ったらプレッシャーがかかるから、それも言えないと苦しんでいる子供たちもいる。それから、なぜ行けないのかは、子供たち自身なかなか言葉にできないので、そこを追い詰めないでほしいという言葉もよく聞こえてくる。
それから、学校がしんどいから学校を休むということもあると思うが、家にいるからといって必ずしも心から安らいではいない。昼夜逆転でのめり込んで楽しそうに見えても、それは本当に楽しんでいるのではなくて、時間があると悩んでしまうからであって、ゲーム依存も、一種の隠れ蓑であるということを子供たちから聞いた。
それから、よく親への思いとして、分かってほしいけれどもそれを言語化するのは難しく、その結果、行動化、身体化に出るということが不登校の中にも多く見えている。
不登校の子供たちから、そっとしておいてという話をよく聞くが、それは、何もしないでということではなく、普通に接してほしいということである。親御さんからそのような話を聞くが、それ自体すごく難しいと、親御さんの面接をしていて感じるところ。
最後に、問題解決に奮闘していくということも大事だけれども、一方で、完全な解決ではないにしても、問題、悩み、いろいろな不安を抱えながらの前進もあり得ると感じている。
不登校への支援ということで、多職種による支援が必要になっている。不登校の中身が多様化しているので、教育的な支援だけでなく、心理的、医療的な支援、それから、福祉、司法矯正の力を借りるケースも出ている。
学校内においては、教職員だけではなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを交えたチーム支援、それから、学外の専門機関とのネットワークも大変重要になってきている。
不登校はどの子にも起こり得るため、不登校があるということを前提とした、いつでも相談できる学校内の体制が求められている。相談することへの偏見や抵抗をなくす工夫も大切で、ニュースレターを全校生徒に配付する、全員面接を行う、給食で学級を訪問するといった形で、カウンセリングを受けること、相談をするということは、弱い人間がすることではないということを、子供たちに周知徹底していくこと、そのような空気づくりをすることが求められている。また、子供だけではなく、保護者や先生方へのコンサルテーションも重要である。
チーム学校はもう当たり前のことになってきているが、学校内で組織的に対応するときに、フォーマルな組織に加えて、臨機応変に対応できるインフォーマルな組織というのも大切。
その目的としては、子供達の問題、悩み、ストレスに気づいて、それをアセスメントして、学校として共有し、さらには、家庭訪問、専門機関につなげる、スクールカウンセラーに任せるといった具体的な次の一歩を考えることが大事と思う。
総務省の不登校政策の評価の会議の議論の中で、学校復帰は絶対視はできないが、通学することの意味を見直すことも大切ではないかという意見があった。つまり、学校が全てではなくて、行きたくなる学校を考えるということにもつながる。
もう一つ、社会的自立という言葉が一人一人で異なるのではないかという論点があった。経済的な自立、心理社会的自立ではなかなか片づけられず、子供によっては、誰かにSOSを出すことも自立の一歩になるということもあり、問題や悩みを抱えながらの前進もあるという視点も臨床の場から求められている。
不登校に対するきっかけについて、データを3つ紹介する。1つ目は、不登校のきっかけについて学校側が回答した結果である。小学校、中学校のいずれも家庭に係る状況をきっかけとして挙げている答えが多く、中学校は友人関係も多い、そして、3番手に学業ということが不登校のきっかけと認識されていることが分かる。
ところが、追跡調査として文科省が行った結果を見ると、中3で不登校だった子の5年後に本人に聞いたところ、一番不登校のきっかけとして多く挙がってきたのは友人との関係で、2番目が生活リズムの変化、それから、3番目に勉強であり、家庭の状況はあまり上位には挙げられてなかったというのが結果として見える。
3つ目は、文科省の不登校に関する調査研究協力者会議の中で配付された不登校の調査の結果である。
これはその前の年に中1で不登校だった子供が、自分がなぜ不登校になったかというきっかけを、中2の子供本人が答えた結果である。一番多い原因が、身体の不調で、それから、学校関係が次に続く。そして、生活リズムの乱れも多い。一方、自分でもよく分からないと回答した子も多く、その前の追跡調査の結果では約5%であったものが、20%を超えている。不登校直後や渦中であるときというのは、自分で不登校の理由をなかなか言えないということもこの結果から見えてくる。
理由や原因は見る人の立場によって異なり、本人には語られないことも多い。したがって、他職種の目も加えたアセスメントが必要ということが分かる。
不登校に対する対応の実際ということで、未然防止について、普段からの観察、子供理解、学級づくり、相談体制、それから、身近な先生方のキャッチする力と共有する学校の空気が必要と思う。
早期発見については、休み始めのところでの介入と気になる生徒についての普段からの情報共有が大変重要である。アセスメントシート、アセスメントツールについては、いろいろな書類があるが、実施し、その後放置という場合もある。その活用の仕方、学校でどうやって共有するのかしっかりと考えていかなければならず、2回、3回と縦断で見ていくということも大事である。
不登校の対応については、家庭訪問、それから、別室、放課後登校がある。資料には専門機関も幾つか並べた。それと、コロナでクローズアップされた、オンライン、訪問型支援もある。特にオンラインによる教育は広がってきたが、全部オンラインにするわけではなく、不登校の子がそれを選択したいときに選択できるような、多様な選択肢の一つとして盛り込んでいくことが大事と思う。また、学力補償、進路相談も大変重要なテーマである。
保護者の支援については、保護者が悩んでいるということが大変多く、それが子供と負の連鎖になっていくということもある。不登校は親に原因があるというわけでは決してないと思っている。しかし、保護者が変わることで子供が変わることは多い。したがって、保護者を支える力が大事になっている。
高等学校についても多様化しているので、その子に合った進路を選ぶ、転学とか編入とかも含めて進路を考えていくことが大切と思っている。
今後に向けて、一番大事なのはアセスメントだと思う。不登校とは何かではなくて、目の前の子をアセスメントすること。どのようなしんどさを抱えているのか、あるいは、どのような強みがあるのか、どのような支援が必要か、誰を支援したらいいのかというところをアセスメントしていくためにも、チームによって組織的に対応するということが求められている。
保護者や先生を支える仕組みも求められており、社会的自立は多様な自立があり得るので、その子に合ったゴールの選択をしっかりとしていかないといけない。
それから、不登校を自分や自分の将来を考えるためのターニングポイントである、休憩地点と考えることも大切だと思うが、それに寄り添ってくれる先生や、スクールカウンセラー等とチームを組んで支援していく体制が不可欠である。
【座長】 続いて、いじめの問題について、新井委員より、資料2のサンプル原稿資料を基に、30分程度で御説明をしていただく。
【新井委員】 目次の構成案では、第2部の第1章がいじめとなっている。構成もモデル案が示されており、まず1節が関連法規・基本方針、2節が学校の組織体制と計画、3節が未然防止・早期発見・対応、4節が関係機関等との連携体制となっている。
この構成に従い、各節を4項ずつ立て、そこに内容を入れていくと、何を書けばいいのかということは見えてくるが、つながりが難しい。どこで何を入れるのか、例えば、関連法規でどこまで踏み込むのか、そこには未然防止や、早期発見、対応に関わるようなものもあり、それをどこに入れるのか、非常に難しく感じた。
構成では、最初にリード文が必ず入ることとなっている。現状がどうなっているのかということについての記載で、改訂されたものがどのくらいのスパンで続いていくのかを踏まえたうえで、具体的な数字をどう出すのか難しく感じた。
ここのリード文では、いじめの認知件数が増加してきている状況と意味について記載した。昨年度に関してはいじめの認知件数は減っているが、これまで一貫してみられる増加傾向について示し、その一方で、重大事態の発生が後を絶たないという課題に言及した。
このような状況の下で、法の定義に則り、積極的にいじめの認知を進めることの重要性と、そのためには一人一人のいじめ防止のための生徒指導力の向上が必要であることを記載した。
いじめの認知が進んできた次の段階として、学校が取り組むべき4つの重要な課題を挙げた。学校のいじめ防止基本方針の策定はされたが、見直しに基づいて具体的な展開を一層進めていくこと、それから、児童生徒、保護者、地域の人が、その内容を共有化していくという問題。また、いじめ対策組織も、全ての学校に作られたが、重大事態の対応に際して、実効的な機能を果たしていないところもあり、学校内外の連携を基盤にして組織的対応を進めていくこと。そして、事案が発生した後の課題解決的な生徒指導から、未然防止、予防という開発的な予防的な生徒指導へのシフトが今後の大きな課題であること。さらに、それに基づいて、いじめを生まない環境を作り、いじめをしない児童生徒の育成を目指すということ。以上のことを本文で書いていくということを、リード文で示した。
次に、具体的な内容に入っていく。1節が関連法規・基本方針等となっている。文科省の重要な通知もあり、そういうものをどこまで取り上げるのかということも難しかったが、大きなところに絞って取り上げるようにした。
まず第1項では、いじめ防止対策推進法が成立した背景について書いた。青字はクリックすればリンクが張ってあって、例えば、いじめ防止対策推進法の中身が見られるようになっているところで、このような示し方をさせていただいた。
法の制定によって、いじめ問題への法的介入が行われるということの意味を学校はどう考えたらよいのか。大きな質的転換を迫るものという認識をもたなければならないが、既に8年を経過しているにもかかわらず、まだ不十分であるということについて、書かせていただいた。
第2項では、いじめ防止対策推進法の目的といじめの定義、さらに法の目指すところについて、第1条のほぼ全文を示しながら説明している。
このところも、いじめ防止対策推進法に飛んで読めば内容は分かるものである。それをどこまで提要の本文中に示すのかも難しいところであった。法の理念を示した上で、教職員間、児童生徒の間、保護者の間、あるいは、地域の人々の間で定義を共通理解していくことが極めて重要と考え、定義に関する条文を示して、説明を加えた。法の基本的な方向性としては大きく2点、社会総がかりでいじめの防止に取り組むことと、重大事態への対応や調査に関しては公平性、中立性を確保することの重要性について言及した。さらに、学校の取組として必ずやらなければならないこととして、基本方針の策定、見直し、組織の構築、そして、いじめが確認された後での適切かつ迅速な対応があることを説明した。
なお、いまだに、社会通念上のいじめの捉え方、あるいは、古い問題行動調査のいじめの調査基準にとらわれており、学校の中で加害行為の質や量によって判断するところがあることの問題点にも言及した。法によるいじめの定義についての共通理解を一層浸透していくことが大事なのではないかという視点からこのような書き方をした。前の定義がどうなのか、そして、それがどう変遷して今にいたっているのかについては、注のとおりで、1985年に示された調査基準と2006年に改訂された基準を示し、後者の基準が法の定義につながっているということについて説明した。
次に、国の基本方針の策定が、法の成立を受けて、2013年に行われた。基本方針についても、当然リンクを張ればその内容は見えるが、3年後の見直し規定があり、2017年に最終改訂が行われ、その中で示された重要な視点を4つ挙げた。
それから、何をもっていじめの解消とするのか。この点は大きく補充された部分であるので言及したが、ここで示すのがよいのか、後で出てくる対応の中で示すほうがよいのか、迷った。対応のほうでも簡単に触れているが、両方に出てくる内容であるため、ここでどこまでふれるのか書きづらさがあった。
それから、(3)では、教職員間の情報の共有の徹底を図ること。いまだに抱え込みがあるということの問題点について言及した。
また、学校の基本方針は、2013年には学校のHP等でできるだけ公開するようにということであったが、改訂において、児童生徒、保護者に年度当初や入学時に必ず説明をするようにと変更された。そのような具体的なものも書き込んでおく必要があると考え、国の基本方針の重要点として、以上の4点を書かせていただいた。
重大事態をめぐっては、どのように調査委員会を作るか、そして、調査をどう進めるか。調査の期間が長い、あるいは、調査委員の選定から困難に直面し、また、作られた調査報告書が十分でなく再調査になるなど、様々な状況がみられる。そのことをふまえ、2017年に出たガイドラインについて、まずは、法の第28条第1項第1号事案と第2号事案の内容を示した上で、重大事態が発生したとき迅速に、また、不登校に関しては、重大事態に至る前に深刻な状況が見え始めたところで対応するということの重要性を指摘した。また、重大事態の調査というのは、何があったのかという真実を知りたいという被害児童生徒側の思いに応えることと、学校や教育委員会の対応を検証し再発防止に役立てることという2つの目的をもっているということ、そのことを実現するためにはどう展開していけばよいのかということについて細かく書いた。
そして、図示をしてビジュアル化を図っていくことも今回の改訂の一つの大きな方針でもあることから、ここで書いた内容をフロー図でも示す必要があると考えている。
また、調査を、学校がするのか、教育委員会がするのか。そして、学校がする場合でも、教育委員会はサポートして、専門家を派遣するなどして、公平性、中立性、そして、外部からの専門性ということを確保することが望まれることも示した。しかし現実には、教育委員会の規模や人員により、具体化が難しいところもあるかとは思う。
そして、実際に調査を始め、どう進めていくのか。特に被害者に対して適切な説明をすること、その際に、個人情報保護を盾にして説明を怠るようなケースが見られるので、そうしないように気をつける必要があるということなどにも言及した。
さらに、調査を行っている間も被害児童生徒に対するケアや加害児童生徒に対する指導と成長支援を行う必要があること、さらに調査の報告書がまとまったら終わりではなく、報告書ができた後も、指導、支援、ケアを続けていかなければならないことについても言及した。
次に、学校の組織体制と計画ということで、いじめ防止等の対策のための組織を設置することは100%できているが、国のいじめ防止対策協議会が、法の施行状況、対策の見直しを図った中で、中核的に取り組む組織として十分に機能していない場合もあることを指摘した。小学校で重大事態になったケースでは、学級でいじめが起こっても、そのいじめを組織に上げずに、学級の担任と管理職だけで対応してしまう例も見られる。
そして、「いじめ防止等の対策のための組織」に求められる役割を、第2項で示した。組織の構成メンバーとしては、管理職、主幹教諭、生徒指導主事、教務主任、養護教諭、教育相談担当、特別支援教育コーディネーターなどから、学校規模や学校の実情に応じてメンバーを構成する。さらには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、あるいは、スクールロイヤー等、外部の専門家を加えることによって、多角的な視点に立つことが可能になることにもふれた。
学校の中で組織的な対応力を上げるとともに、個々の先生たちの生徒指導の力量を上げていくことも重要である。生徒指導の力量向上という点から考えると、対策委員会でのケース会議に出席することによって、力量の向上、そして、学校の真の意味での組織化が図れるのではないか。いろいろな人がその場にいて学んでいくというようなこともできる柔軟な組織の在り方が必要と思う。
対策委員会の役割については、箇条書ではなく、本文中に流し込む形で書いてみた。どのようなスタイルがよいか検討することも必要だと思う。
組織はできても、実効的に動いていない場合には、情報共有の方法やルートを明らかにして、システムをしっかりと示すということが大切である。重大事態の背景調査を行った経験からは、ケース会議の記録がないことが多い。アセスメントをどうしたのか、そして、対応方針を立てて実際にどう対応していくのかと、プランを可視化し、どこまで組織的な動きができたのか、メンバー全員が全体の動きを共有していくということが大事と思う。
それから、組織のメンバーが、自分が懸念していること、心配なこと、疑問に思うことを安心して発言できること、そして、それを管理職や生徒指導主事が取り上げて議論していくというような組織の空気も非常に重要と思う。
加えて、児童生徒がいじめ対策組織の存在を知らないこともあり、このような組織が窓口になっているということをアピールする必要性もあるのではないか。
そして、児童生徒に対しても自分の学校のいじめ基本方針を読んでもらう。学級活動やロングホームルームの時間、あるいは、道徳の時間等で読み合わせ、子供の意見を聞く。また、保護者の役員会等で意見を聞くことも大切だ。対話を通じて、教員の捉え方とは異質な外部の声を取り入れることで、基本方針を見直す機会になる。併せて、子供たちあるいは保護者が自分の学校の基本方針を知る機会にもなる。
さらに、管理職のリーダーシップが、年度の計画をどう回すか、学校がどう動くのかというところで非常に重要であると示させていただいた。
未然防止・早期発見・対応については、生徒指導の3局面として、問題解決的生徒指導、予防的生徒指導、成長を促す生徒指導の内容と重なること、いじめに関連して具体的に何を行うのかということについて本文でふれるとともに、図示した。
内容とは離れるが、書くうえで、例えばいじめの4層構造に触れたときに、個人の著作をどう引用するのかというようなところも検討すべき課題であると思われる。
未然防止においては、いじめをしない子を育てるということが重要であるが、そのことを考えるためには、なぜ加害行為が起こるのか、その背景を捉えた上で、未然防止に必要な取組を考える。さらに、解決に向けて、仲裁者、相談者が出るような開発的生徒指導を進めることも必要である。具体的な取組としては、アンガーマネジメントや様々な心理教育が必要だろう。
国研の取組や先進的な市町村、学校の取組があればリンクを張って学ぶことができるような形になるとよいのではないかと考えた。
次に、早期発見ということ。いじめに気づくには表面的な言動だけではなくて、その背後にあるものに思いを馳せ、子供たちが具体的にSOSを出せるような状況を作ることが大切。
いじめ発見のルートとして、文科省の問題行動調査の中で出てきているものを示した。アンケートが非常に大きい発見ルートになっているけれども、実際にどのようなアンケートが効果的か示す必要がある。また、アンケートをしたら必ずそのアンケートを子供たちに返すことによって、子供たちの信頼が得られるのではないか。家庭や地域関係機関と連携して、いじめに気づくネットワークを学校の内外で作ることの重要性も記載した。
加害者への指導について、法は厳罰主義に立っており、加害者やその保護者への指導はあるけれども、成長支援という視点が極めて弱い。したがって、加害者の保護者との連携がとれていない点も大きな課題と思う。文科省の問題行動調査では、加害者の保護者に報告している割合が5割を切っている。ここに大きな課題があるのではないか。
いじめの解消は2条件を満たしているかどうかなので、慎重にやってくださいということについても、国の基本方針の改定のとこれで既にふれていることではあるが、簡単には触れておいた。さらに、教職員自身の中にも、いじめに耐えることも必要だとか、いじめられる側に原因があるというような認識がゼロではなく、それがいじめを受けた子供を二重三重に苦しめていくということにも言及した。
最後が、関係機関等との連携体制。全体で、関係機関との連携、保護者との連携が、いじめ以外の全体の構成の中で出てくるので、どこまで書いたらよいのかということも悩んだ。多職種連携が重要だろうが、そのときどういう姿勢が必要なのかという点についても触れている。
具体的に、専門家を活用したいじめへの対応で、例えば、教員の専門性、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤーを活用して、連携、協働して、子供の問題の解決に向けて最善の努力をしていくことについて書いた。さらに、各学校の学校評議員会や地域のいじめ問題連絡対策協議会が、このような専門家の活用を広げていく場として非常に重要になるという指摘をした。
教育委員会のサポートということも少し書かせていただいた。学校の先生が中心になるけれども、学校の力には限界があり、教育委員会のサポートが必要だということを指摘した。ただ、教育委員会も人材の確保が難しい。小さな教育委員会においては、重大事態が起きたらどう動いていいか分からないこともある。したがって、教育委員会のサポートが必要であるとして、それができるような人員の配置、さらには、指導主事の養成も必要ではないかと指摘している。
保護者との連携に基づくいじめへの対応については、改めて被害者の保護者のみならず、加害者の保護者との連携の重要性について触れている。
最後に地域ぐるみでいじめ防止の取組を展開していくことが大事だ。例えば、コミュニティスクールを取組の核にしていく。そのように記述したが、コミュニティスクールとは何かとなったら、リンクから飛ぶことができるようにしておく必要もあるだろう。
SOSを出すようにと子供に言う以上、困ったことがあると訴えたときに、教職員、親、大人がどれだけ受け止めることができるか。これが受け止められなければ、もともと大人に対する不信の強い子供たちがSOSを出すことは難しい。大人がSOSを受け止めるような力を身につけていくという意味で、研修等がとても大事であると指摘しておいた。
【座長】 ただいまの御説明について、フリートーキングを行う。御質問、御意見があれば、ミュートを解除して御発言いただきたい。
【委員】 体制やシステムの話は、恐らくいろいろな各論についても同じかと思う。例えば、チーム学校といった組織的な対応、相談体制が大事だが、その前提で、総論でも、一人一人の教員の意識についても書き込まれる必要があると思う。相談してよかった、話を聞いてもらえてよかったといった体制を作ることは、誰でもいつでも大人側が受け止められるというスタンスがないと難しいかと。
そうなると、教員一人一人のカウンセリング・マインドといった要素が基本の押さえとして大事と思うので、総論のところで書かれているとカバーできるところがあると思う。
特別支援のセクションで聞いていても重なるところがあり、発達障害をトピックスして書くときも、新井委員が示された部分が多分羅列される可能性がある。生徒指導というものが教員一人一人の意識としてどういったスタンスが大事であるか、その延長で組織やシステムという話になっていくといいと思う。
【委員】 不登校について、11ページの教員同士のフォーマル、インフォーマルな情報共有というところは、まさにそのとおりだと思う。情報の価値は相手が決めるものだが、先生一人一人が、自分で勝手にこれは大した情報ではないと抱え込むという傾向があり、ここはかなり意識して進める必要があるのではないか。
それから、20ページに関連して、情報共有する際に、不登校であっても、将来どのような方向性があるか、目線を合わせた上で情報の価値を自分で勝手に判断して誰にも言わないというようなことを防ぐということが、学校の一番重要な機能だと思う。
また、21ページで進路相談という言葉があったが、教育相談全体を一体化させるということが非常に重要で、自分たちの相談業務がつながっていることに強い意識を持つことで、効率的に生徒に働きかけられるのではないかと思う。
また、23ページの保護者が変わるというキーワードも非常に重要と思う。ただ、同時に学校が変わらなければならない。パートナーシップとして、それぞれがやるべきことを整理して、相互の作用を変えるというところが理解されない限り、学校は変わっていかない。
それから、いじめのほうについて、見える化という話があった。いじめの対策会議で何をするのか、見通しを立てた初動は大事だが、記録を残すというのが一番重要な業務である。指導主事が常にスクールロイヤーと相談して学校を支援し、その中で校長が見通しを立てて初期対応することによって重大事態を避けることが大切。
【座長】 アセスメントをいかに複眼的に深くやるか、アセスメントで次のプランニングも決まる。アセスメントの重要性が教育機会確保法の第3条第2項の趣旨である。
それから、支援の状況等に関わる情報共有の促進が非常に重要ではないかと思う。教育機会確保法の第12条でも、学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握が記されている。支援のプロセス、あるいは、アセスメント情報も含めて、学年をまたいでいく、あるいは、校種をまたいでいくという状況で的確な援助・指導に関する情報を共有する。
特に関係機関との連携では、校内の支援教室、例えば、校内適応指導教室であれば、学校の中にあるために情報共有を行いやすいが、教育支援センターやNPO等との連携において、どのように情報を共有化していくかは重要である。
これに関して、実は令和元年に文部科学省が教育支援センターに関する実態調査を出している。その中で、不登校の未然防止等のための学校との連携という質問項目がある。学校が主催している不登校の未然防止等を目的とする会議に教育支援センターの職員が参加している割合は僅か23.8%である。一方で、教育支援センターが主催する不登校の未然防止等を目的とする会議に教職員が参加している割合は約18%である。また、学校が主催する不登校の未然防止等を目的とする研修会に教育支援センター職員が講師や助言者等として参加している割合は約16%である。
公的に教育支援センターが外部にあって、そこで一体どのような支援が行われているか、そこでの子供たちの様子を学校が把握すること、あるいは関係機関との情報共有が重要。教育支援センターと学校の密な情報共有も非常に重要ではないかと思う。
また、今回の生徒指導調査では、ICTを活用した学習支援に関して、約3倍から4倍程度、ICT活用で出席扱いになっている。中学生の場合は、NPO等の外部に行って学習して、それが出席扱いになるかというのは高校受験や進路問題という点で非常に重要になる。単に外部に任せるのではなくて、いろいろな研修会や会議を通して、情報共有していくことが重要と思う。
【委員】 キャリア教育とつながることによって、生徒指導のいわゆるミクロの視点からマクロの視点へ視点を移行することができるのではないか。二人の発表は、ミクロな視点に焦点化されていた。子供たち一人一人が自分らしい生き方をするために、その道筋をどのように作っていくか、生徒指導もキャリア教育も全く同じ目的を持っている。
加害生徒も被害生徒もそれぞれ自分らしい生き方をする権利を持っている。それをどう保障するかという視点というのは非常に重要。いじめはそうした権利への侵害であり、不登校は自分らしい生き方をつかめない子供たちに対する支援の必要性という視点を、キャリア教育を取り入れることによって生むのではないだろうか。このようなマクロな視点も、先生方、関係機関に伝えていくことも重要ではないかと思う。
【委員】 大前提として、この提要が5年後に見直しを図るのか、10年後になるのかということによって、書き方が違うのではないかと思う。
一例で挙げると、いじめ重大事態の調査に関するガイドライン、及び子供の自殺が起きたときの背景調査の指針、改訂版が出ているが、これらが出たときと今ではSNSの普及が全く違っている。自殺ということに対しても、SNSで既に広まってしまっている場合には、調査しようとしたときも、そこでいろいろな情報共有がされている中から事実を見つけ出していくために時間がかかる。それから、法律家の方が、法律の視点に立って調査した上で、さらに学校教育でどのように見ていくか、そして、それが最終的に再発防止にどうつながるかといったとき、期間が長くなっていってしまう。
このようなことを踏まえても、5年とするのか、10年とするのかというのは、やはり共通理解を持った上でないと書きづらいのではないかと思う。
それから、不登校については、個に応じた支援が非常に大事だと思っているが、例えば、不登校という言葉だと、登校しているとしてないという二項対立的な捉え方をしてしまうので、もう時代的にもこれで捉えるのは厳しくて、今回のこの改訂で、発達成長を促す生徒指導という視点に立ってどう書いていくのかという視点もとても大切なのではないか。
それは、性に対しての性スペクトラムという捉え方で男性性、女性性ということに対する見直しや、父性や母性という捉え方に対して、親性という捉え方が今出ており、男性が父性で女性が母性でという形ではない捉え方で見ていくことも大事な視点ではないか。
そして、初期段階で極めて大事なのが、保護者への支援だと思っており、保護者の安定が欠かせないが、今までそれができてこなかったのではないかと思う。
もう一つ、新しい流れとして、実は栄養教諭が学校に配置され出して、給食ということが不登校の未然防止につながるというような事例も発表され始めている。ただ、これは今回の改訂の中で書けるほどのエビデンスがないので、そのことには触れられないと思うが、そのような今後の視点を入れる必要があるのかという点もある。
それから、アセスメントの問題につながっていく話として、幼稚園と小学校の連携、小学校と中学校の連携を考えたときに、アセスメントされたもの等をどのように引き継いでいくか、eポートフォリオのようなものをどう活用していくかという視点も必要なのではないかと思う。
いかに未然防止をしていくか、開発的な視点に立って不登校にどう対応すればよいかというのが私の視点で、大きく発達と成長を促す生徒指導という視点に立って見ていくことが個に応じた支援につながるのではないかと思う。
【伊藤委員】 不登校というくくりが大ざっぱであり、そこに全部入り込むようなネーミングである。登校拒否が不登校に変わって、次にどのように変えるのか、考えないといけないかもしれない。不登校というくくりではなく、その中にいじめもあれば、虐待もあれば、ジェンダーの問題もある。いろいろなことが含まれているので、もう不登校を見るというよりかはその子を見るという、一人一人のアセスメントということが不登校そのものを超えた大事な視点と考えた。
時代とともに常識、見方、文化も変わってきている。それらを学校教育にどこまで取り込んでいけばよいのか、それらも踏まえてこの生徒指導提要をどう書いていけばよいのか難しい課題と思っている。
それと、幼、小、中、高という校種間を超えた連携については、児童生徒理解教育支援シートを使って情報を送っていくというシステムもできている。その活用の仕方や注意点といった内容を盛り込んでいかないといけないと感じた。
【新井委員】 5年か10年かということで、前回から11年経っているので、10年ぐらいのスパンで見るのかなと思っている。10年というスパンを考えたときに、抽象度を高めていくしかないと思い、細かいデータは落とした。アップデートできるという前提で、例えば、リンクを張って、法律が改正されればそれを反映させる、新たな通知が出てきたらそこに飛べるようにしておけば、10年を見通して、その間に変化が出てきたときに対応できるかと思う。
SNSによる誹謗中傷にも触れているけれども、SNS、インターネットに対する課題が第8章にあり、そこに飛ぶというようなリンクを作り、不易の部分を中心に置きながら、10年ぐらいを見通して、その間の変化についてはリンクを張ってアップデートしていくという仕組みができるといいと思いながら書いていった次第である。
【座長】 例えば、これ学習指導要領と同じように10年ぐらいのスパンで使うとなったときに、今回はデジタルテキストでもあり、大きな法改正や通知があったときには、マイナーバージョンアップした形ですぐ載せられる。特に生徒指導は、時代性に影響される部分が多い。通知、法律の改正に関してはデジタルテキストで挿入できると思っている。ただ、スパンに関しては、文部科学省の考えもあると思うので、また検討させていただきたい。
【委員】 新井先生のサンプル原稿は、内容的に非常に良くまとめられていると感心した。しかし、表現面で優し過ぎるのではないかという箇所がある。例えば、新井先生も言及されているように、平成25年の「いじめの防止等のための基本的な方針」が平成29年に改定されたとき、「学校いじめ防止基本方針」について次のように見直された。PDCAサイクルを方針に盛り込んでおく「ことが望ましい。」から「必要がある。」に変わった。そして、「ホームページなどで公開する」という記載が、「ホームページへの掲載その他の方法により、保護者や地域住民が学校いじめ防止基本方針の内容を容易に確認できるような措置を講ずるとともに、その内容を必ず入学時・各年度の開始時に、児童生徒、保護者、関係機関等に説明する。」と変わった。一歩も二歩も踏み込んだ改訂になっている。しかし、実際そのように行っている学校はそれほど多くなく、マンネリになっている学校が多いように思う。そこで、新井先生の原稿の「向上を図ることが望まれる」というところを、「向上を図る必要がある」ぐらい強く書いてはどうか。
【座長】 次の議題に移らせていただく。事務局から委員の皆様にメールで照会させていただいた目次構成案について、いただいた御意見を踏まえて事務局から御報告していただく。
【事務局】 資料3-1は、この提要の改訂版の目次構成案である。皆さんの、前回の御議論の内容を反映した。御意見については資料3-2のほうにまとめた。
構成としては、第1部と第2部の二部構成にする。そして、第1部のほうは生徒指導の基本的な進め方として、これに3章の構成とし、また、第2部に関しては、個別の課題に関する児童生徒への対応ということで、基本的な基本姿勢を踏まえながら、第1章から第10章までとする。
また、第1部、第2部の初めにリード文を書いていただき、改訂の趣旨や、それぞれの1部、2部との関係性を書いていただく。
また、第1部第1章の書き方としては、生徒指導の基礎というところに積極的な生徒指導の基礎ということで、今回の方向性を明確にさせていただいた。また、第1章も4節まであるが、生徒指導の定義と特色に関しては、生徒指導と教育相談、キャリア教育との関係で構成している。
生徒指導上の課題、1章の2節では、児童生徒理解の深化だけでなく、望ましい人間関係の形成、また、地域社会総がかりで進める生徒指導を明記するという御意見があり、追記させていただいた。
次の生徒指導の方法では、自己指導能力の育成、次の生徒指導の階層的支援構造という形で、発達を促す指導、予防的指導、そして、課題解決的指導ということを1章3節には明記させていただいている。
また、次の1章4節では、生徒指導の基礎ということで、学校経営・ホームルーム経営の充実、守秘義務と説明責任、記録と情報共有・情報活用と、情報の取扱い方について書かせていただいているところ。
次の第2章では、学習指導要領との関係性を示すということで、発達の支援に基づく教育課程と生徒指導について、2章の1節から3節まで総則、教科、特別の教科道徳と、そして、総合的な学習の時間、特別活動における生徒指導を示させていただいた。
また、第3章では、生徒指導の体制というところに、チーム学校による生徒指導の体制ということを明確に書くということで、題名につけさせていただいた。
3章の1節の生徒指導体制については、学校組織、そして、教職員の研修も入れており、そのほか、年間指導計画、校則等について書く。
また、次の教育相談体制については、定義だけでなく、組織、その協働というところで、教育相談コーディネーターやスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを含む協働というところで示させていただいた。
3章の3節に関しては、危機管理体制ということで、学校安全、安全教育。
3章の4節に関しては、学校・家庭・地域、関係機関との連携ということを明記させていただいた。具体的な連携先ということで、教育、医療、福祉、司法、警察、家庭、地域NPO等を示させていただいているところ。そして関係機関の記載にあたっては、児童生徒の触法、それから、福祉支援の際の仕組み・関係機関の役割について明記をするということを言われている。
第2部の各課題については、個別の課題に関する児童生徒への対応ということで、第2部の題名とさせていただいた。
あまり特定の時点の状況、具体的な数字、その時点だけのものではなく、中長期的な状況について全体的に書いていただくというところ、注釈で書かせていただいた。
【座長】 ただいまの目次構成案への委員の皆様からの御意見、内容について、フリートーキングを行う。また、冒頭の伊藤委員、新井委員の御説明についても、併せて御質問等あれば御発言いただきたい。
【オブザーバー】 どんどん内容が肥大化していく点に非常に懸念を感じている。
また、重なりも随分多いという話になっていったときに、本来だったらそれは第1部で記載したほうがいいという話にはなる。
極端に言えば、改訂版として既存の枠組を引き継ぐというのが大前提だと思うが、仮に今から生徒指導提要を新たに作るとなったとしたら、例えば、生徒指導は成長を促す、あるいは、支えていくための働きかけであるという内容があり、それでキャリア教育があり、そこの中では集団指導や個人の発達の保障も必要という話がある。しかし、いろいろな意味で課題を抱えたりする子供に対しては、個別の支援といった手だてを考えていかなければならない。あるいは、その予兆を早期に把握していくことも必要。さらに,そこの中で早期に予兆を把握するためには、いかに学校の中で情報共有ができる体制を作っていくか。その中で鍵になるのはアセスメントであるということを打ち出す必要がある。
3つ目として、従来以上に必要になるのが法的な問題で、法律だけでなく、国の基本方針等も含ませた上でやっていかなければならないが、以上の大きい3本柱を打ち出してしまったほうがいいのかなと思う。そのことによって、いじめや不登校の個別論のところから、多くの部分を持っていけて、いじめや不登校特有の話を第2部に持っていけるのではないかと思って話を聞いていた。
アセスメント、専門家との連携をしっかりと取り組んでいくという話が繰り返し出ると、今の目次の項目としても入っているけれども、例えば、コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー含むというところで、相談体制の中に入ってくるのだろう。しかし、相談体制として書くのではなくて、個の可能性を保障していくためのアセスメントが必要で、そのための連携といった書き方が望ましいと考えている人が多いのではないかと思う。
【委員】 児童生徒をしっかりと理解した上でそれに応じた取組の手段として、アセスメントがあると思う。状況を正確に把握し、児童生徒をしっかりと理解して有効な手だてを選択できているかが生徒指導全体にも問われる。
前回の不登校の調査研究協力者会議の報告のサブタイトルは、一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な対応ということであったが、これは、不登校だけでなく、まさに生徒指導全般に共通することだと思う。
この生徒指導の改訂作業と並行して不登校の会議が動くので、どうリンクしていくか。いじめはいじめ、不登校は不登校で一つの委員会があるくらい奥深く幅広い話であり、それらをどのように提要のほうと並行しながら持ってくるか、考えなければならない。
いずれにしても、児童生徒理解とアセスメントというところをしっかりと柱は立てていただきたい。キャリア教育の話、あるいは、全体としての積極的な生徒指導というマスで支えていく部分と、不登校やいじめという個別の部分で、その潮目の変わるところで、どちらに入れるのがよいかという問題が出てくる。アセスメントも、一人一人を理解しようというとこであれば、第2部の頭に持っていったほうがいいのか、その辺りどうするかということが気がかり。
それから、いじめのほうは法律ができて、各学校の中も学校システムとして基準に基づいて明確にこう動きなさいというのが、法的規範としてしっかりと出来上がっている枠組みである一方、不登校は、平成4年以来、明らかにその実態も変わってきており、しっかりとした法律があるわけでもない。両者は、非常に定型的な極端なサンプルだと思った。
そのような中で、この提要自体は、教職員が中心として見るけれども、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、スクールロイヤーも読む。保護者も場合によっては見るし、教育委員会、学校の管理職宛てのメッセージをこの中にどのように入れていくのか、使い手も整理しておく必要があると思う。
【委員】 階層的な生徒指導が第1章に入っているけれども、発達を促す、それから、予防的、それから、問題解決的というのもこれから繰り返し使っていく言葉だろうと思う。段階的ということがはっきりしてきているので、具体的に3段階の生徒指導というように、3という数字を入れたらどうか。
それから、第2部に関して、未然防止・早期発見・対応となっているが、ここは言葉を統一して、発達を促す、発達促進であるなど、より悪くしないという意味での予防的である、あるいは、この対応を問題解決的と合わせたらどうかというのが1つ目の意見。
2つ目としては、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育相談コーディネーターが入って、きちんとアセスメント、援助を行うということは極めて重要なところで、教育相談に入るのもいいが、生徒指導のリーダー、コーディネーターとしての主な担い手というところで、生徒指導主事や教育相談コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを置くという方法もあると思う。
【オブザーバー】 いじめにしても不登校にしても、それから、この目次構成にしても、「積極的な生徒指導」ということをしっかり打ち出そうという話だったはずである。この提要をいろいろな先生が見るということを考えたときに、日常的に教員は具体的には一体何をすればいいのか、何を大事にしていけばいいのかが、ストレートに分かるような表現で明記する必要がある。例えば、普段は、「学級(集団)づくり」が大事である。それと同時に、「分かる授業をしっかりとすること」も未然防止の重要な部分であるなどである。授業づくりと言うと何となく生徒指導とは違う次元の話しというような雰囲気がある。そうすると提要からははじき出されてしまう。問行調査等のデータでも勉強が分からないということが不登校の要因と出ている。いじめの要因にもなる妬みだったり人との違いといったことについても、勉強が分からないということが影響することもある。生徒指導の基盤という部分で、授業や行事を集団指導という視点でしっかりと行っていくことも大事だと明記することが必要である。
【委員】 一人一人の教員にとって、積極的な生徒指導につながる学級経営について、具体的に何をどのように指導・支援すればいいのかがわかるように記載するとといいと思う。例えば、学級経営として、児童理解のために意識して児童生徒を見ていく、向き合っていく具体的な方法にいて記載があるといい。また、特別活動で自発的・自治的な活動を進め、自分たちの学級の問題などを自分たちで発見し、解決策を話し合い実践していくことが、支え合い認め合える学級につながり、予防的な指導、発達を促す指導になると思う。このように具体的に先生方が何をしたらいいか分かるような書き方があるといい。
【新井委員】 前回の会議で私は自殺予防のことについて報告をさせていただいた。もしも自殺についてのサンプル原稿を私が書くとしたときに、例えば、関係機関等との連携や、学校の組織体制について、同じようなことを書くことになるのではないかと思っている。
いじめの問題と自殺の問題については、重なりを前提にするのか、そこを削いでいくのか、全体の作り方として考えないと、書くときに非常に難しいと思う。
それから、全体を見通していって、もう既にこれは第1部で触れられているから、ここはこのぐらいの触れ方でいいということが分からないと書けないということを、実際に書きながら強く感じたので、その点を明確に会議の中で示していかないとならないと思う。
【座長】 編纂チームを作って、御指摘いただいた点を整理して、方針を定めた上で、章を書くよう依頼しないと難しい。
さらに、量的にも現行より削減したいという方向性を踏まえなければならない。デジタルテキストで情報のリンクや更新ができるので、その点も編纂チームで一度議論して、方向性を示すことが必要と思っている。
【委員】 担任として一体具体的にどうしたらいいのということが分からないと読んでもらえないのではないかと思う。したがって、考え方を示すことと具体を示すということのバランスが取れないといけないのが一つ。
それから、教育相談コーディネーターの役割に関しては、教育相談コーディネーターを中心としたチーム学校を作っていくことはコンセンサスが得られていると思うけれども、以前の報告書では、教育相談コーディネーターの役割として8つのことが例示されていたが、全て3次支援の話であった。つまり、前回の報告書では、積極的な生徒指導を展開するということに、教育相談コーディネーターは関わらないことになっている。
そこで、例えば、生徒指導主事と教育相談コーディネーターがチームを組んで、教育相談コーディネーターも生徒指導の運営等に関わっていくという、今までの報告書にはない方向性を出すのか。
報告書では3次支援のことが書かれているけれども、別の報告書では不登校に対して積極的にとも書かれているので、私はその点も入れ込んだ体制を提案していく必要があるのではないかと思う。
【座長】 現行のいじめの章は2ページである。理念的なことと、現場の先生が使える具体性のバランスを考えていくことは必要と思う。
今日、愛知県弁護士会のほうから、子供の権利条約に基づく生徒指導が行えるようにという要望があった。それに関しては、私が作成した第1章サンプル原稿の3ページに記載している。現行の提要にはない子供の権利条約に関する記述もあり、それを参考にしていただければと思う。
それでは、フリートーキングに関してはここまでにしたいと思う。
以上をもって、第4回の会議を閉会する。本日の会議を踏まえつつ、次回、第5回会議においては、執筆に向けた最終調整を行い、それ以降、執筆を開始できればと思う。執筆に当たっては、事務局と相談の上、必要な人数で執筆及び編集を進めていきたい。
第5回の開催については、追って事務局より御連絡をお願いする。
―― 了 ――
 

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