生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年7月30日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 生徒指導上の課題に係るヒアリングについて 大字 弘一郎 世田谷区立下北沢小学校長 
  2. 積極的な生徒指導に係るヒアリングについて 中村 豊 東京理科大学 教育支援機構教職教育センター教授 日本特別活動学会 事務局長・研究推進委員
  3. 生徒指導提要(改訂)の目次構成案
  4. その他

4.出席者

委員

   浅野委員,新井委員,石隈委員,伊藤委員,伊野委員,岡田 俊委員,岡田 弘委員,奥村委員,栗原委員,笹森委員,七條委員,土田委員,野田委員,針谷委員,藤田委員,丸山委員,三田村委員,三村委員,宮寺委員,八並座長,山下委員

ヒアリング協力者

      大字委員,中村教授 

オブザーバー

      小野 オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー  

文部科学省

   瀧本初等中等教育局長,髙口文部科学戦略官,江口児童生徒課長,鈴木生徒指導室長


 



 

5.議事要旨

【座長】 第2回「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」を開催する。
本日は、全国連合小学校長会長・世田谷区立下北沢小学校長の大字委員より生徒指導上の課題に係るヒアリングを行った後、前回会議の「改訂にあたっての基本的な考え方」にも示された積極的な生徒指導に関連して、東京理科大学教育支援機構教職教育センターの中村教授よりヒアリングを行う。その後、目次構成(案)などについて御説明をさせていただき、残り時間をフリートーキングという流れとさせていただく。
それでは、小学校における生徒指導上の課題等につきまして、大字委員より資料1につき、20分程度で御説明をしていただく。
【大字委員】 生徒指導上の今日的な小学校の課題について。本資料は、全国連合小学校長会が毎年実施している健全育成委員会の報告より作成している。健全育成委員会では、全国47都道府県の全ての都道府県の校長各10名、計470名に調査を行っており、その結果をまとめている。
(1)いじめについて。「学校では、疑わしいものを含め、いじめの実態がありましたか」という設問に対して、平成29年度の81%から令和元年度の90%まで年々増加の傾向にある。いじめを把握する方法としては、アンケート調査の取組、被害児童自身からの直接的な訴えや相談、被害者の保護者からの訴え・相談、教員が発見する場合が多い。
いじめに対する学校の対応としては、いじめ件数の増加に伴い、生徒指導主事等を中心に指導体制を組んで、組織的に指導を行ったという項目の回答数が年々増加している。学校が組織的に取組を進めていることが分かる。
続いて、(2)暴力行為について。「学校では、児童による暴力行為がありましたか」という設問に対して、平成29年度の24%から、令和元年度は27%となっている。発生した学校の割合は増加傾向にある。令和元年度の学年別の発生件数は、低学年が全体の22%、中学年は32%、高学年が46%という割合になっており、低学年の割合が年々増加する傾向にあることを示している。
学校が考える暴力行為の背景や原因としては、特別な支援を必要とする児童の増加が最も多い。この傾向は本調査を開始した平成27年度より5年間変わっていない。次に、子供の気質の変化、家庭環境の変化や親子関係の問題、家庭生活の乱れや基本的な生活習慣の未定着、この順に続く傾向もこの3年間変わっていない。これらを踏まえると、家庭へのアプローチが必要であると考えている。
(3)不登校について。「学校では、不登校の実態がありましたか」という設問に対して、平成29年度の59%から令和元年度の65%と年々増加する傾向にある。適応指導教室や保健室等の利用、または民間団体の施設等の活用をしている不登校の児童も年々増えている。
学校が考える不登校の背景や原因としては、家庭環境の変化や親子関係の問題、家庭生活の乱れや基本的生活習慣の未定着等、家庭に起因するものが多い。不登校児童への対応とともに、保護者への働きかけが必要であることが分かる。
(4)児童虐待について。「学校では、疑わしいものを含め、児童虐待の実態がありましたか」という設問に対して、平成29年度の49%から令和元年度の55%と増加傾向にある。29、30年度は横ばいだが、令和元年度は前年度よりも6%増加という状況。
学校における虐待の発見については、学級担任からの報告・連絡が最も多く、次いで公的機関からの連絡、児童本人からの相談となっている。保育園や幼稚園・前籍校からの連絡・相談も1割程度ある。虐待が幼少期から行われているケースが見られ、早期発見に向けて、幼・保・小の連携がより一層重要になっている。
(5)携帯電話やインターネット等に関わる犯罪やネット依存に対する現状と課題について。まずトラブル等の事例「6年生がSNS等で中傷されたり、脅かされたりしたことがありましたか」という設問に対して、調査対象469校中、「あった」と回答した学校が、平成29年度は124件、令和元年度は143件と、前年度よりも20件増加している。また、「インターネット上に画像や動画等をアップされたか」という設問については、45件報告があった。
次に、ネット依存と思われる事例で、「ア、夜遅くまでインターネットを利用している」は、平成29年度から比べ、大きく増加している。そのほか、イ、ウ、エの事例についても年々増加している。
このようなネット依存によって、児童の心身の健康を損ないかねない状況が発生しており、対策を講じる必要があると考えている。ネットモラルだけではなく、健康教育の観点からのアプローチや低学年からのネット依存に関する情報教育を、家庭と連携して実施するなどの対策を講じることが急務。
ネットトラブルに関しては、「インターネット上のゲームサイトを利用し、高額な料金を請求された」が、平成29年に比べて倍増している。また、ゲームでトラブル、オンラインゲーム漬けなどの事例もあり、インターネット上のゲームサイトに関連した問題が多様化している状況にある。
続いて、生徒指導提要の改訂に関して幾つか意見を申し上げる。
「生徒指導提要の改訂にあたっての基本的な考え方」には賛成。
ただし、生徒指導提要は小学校の教員には認知度が低いというのが現状。教員に積極的な活用してもらうことを考えると、例えば小学校の教員が保護者会、または地域懇談会などの資料で活用しやすいものであるとよい。例えばA3、1枚程度の見開きでポイントがまとまっていることや、具体的な事例が記載されていることなどの工夫があると、より活用されるのではないか。
また、生徒指導提要の内容については評価が高い。生活指導に課題を抱えている学校の教員や指導主事等からは、参考になったという声も多い。例えば理論編と資料編といったような分冊も有効ではないかと思う。
さらに、早期発見、早期対応、早期支援等の視点から、就学前教育と就学時の教育の連携や接続等についても記述があるとよいのではないかと思う。また、保・幼と小、小と中、中と高等の異校種間の接続等についても記述があるとよい。
次に、生徒指導上の問題の背景や原因として、家庭に起因するものを挙げる学校が多い現状を踏まえ、家庭との連携や働きかけについて、具体的な取組事例等を含めて内容の充実をお願いしたい。
さらに、特別支援校内委員会やいじめ防止対策委員会をはじめ、各校では組織での対応が進んできている。「チーム学校」という視点から、組織を活用した有効な対応策等の具体例があるといいのではないか。
生徒指導に関しては、ますます学校への比重が増してきたように思う。学校外のトラブル等の解決も学校に持ち込まれ、保護者間で解決に至らないということが多い。働き方改革という視点からも、例えば、主に学校が担うもの、家庭や地域が担うもの、関係機関が担うものなどについて、社会に対してメッセージが出せるとよいのではないかとも思う。
最後に、コラムは、大変活用範囲が広いという声が多い。例えば保護者会資料、教員研修用の資料等での活用に向けて、充実をお願いしたい。
【座長】 続いて、第1回の会議で提示した改訂に当たっての基本的な考え方の記載のとおり、積極的な生徒指導の充実に関連して本会議でも共通理解を図るため、中村教授より20分程度で御説明をしていただく。
【中村教授】 初めに、研究について説明させていただく。研究テーマは特別活動と積極的な生徒指導。研究会では、「生徒指導提要」をテキストとして生徒指導の機能に関する学習会を持つことで、生徒指導の用語と概念の共通理解を図り、調査の研究準備を進めてきた。
研究では、生徒指導の機能に関する捉え方は必ずしも統一されていないことが明らかとなった。「生徒指導提要」において、生徒指導の概念は定義されているが、その他については分かりやすく示されていないところに要因があると思う。
「生徒指導」という用語は多義的に解釈されている現状がある。生徒指導という用語が見られる法令について、年代順に整理したものが表1。生徒指導の用語について、解釈は見られないため、具体的な内容や取組については、国の各種諮問会議等の答申や学習指導要領、その他通知などによって示されている。
表2に学習指導要領における生徒指導の用語並びに、生徒指導関連事項の記載を年代順に示した。生徒指導という用語が使われているところもあれば、関連する用語は使われているけれども、生徒指導という用語は使われていないところも見られる。
次に、生徒指導における用語・概念の整理をさせていただく。表3では「生徒指導の手びき」から「生徒指導提要」までの4つの資料を挙げている。積極的、消極的という言葉が多用されているが、「生徒指導提要」ではこれがなくなっていることが確認できる。
ただし、「生徒指導提要」では、「各学校においては、生徒指導が、教育課程の内外において一人一人の児童生徒の健全な成長を促し」というところから始まり、「積極的な意義を踏まえ、学校の教育活動全体を通じ、その一層の充実を図っていくことが必要です。」として、生徒指導の本来の意義を積極的に求める記述が見られる。
また、「学習指導の場におけるこれらの指導は、単に各教科等における指導上の工夫ということに留まらず、まさに積極的に生徒指導を行うことでもあります。」と、生徒指導に取り組む教師の姿勢や態度の積極さを求めるものへと変化してきていることを確認できる。
最後に「生徒指導リーフ」を挙げている。Leaf.1では、「生徒指導とは、社会の中で自分らしく生きることができる」というように、ここでは「生徒指導提要」とは異なる定義、または解説が見られる。
法令及び学習指導要領等における生徒指導の用例・関連事項を整理すると、法令以外にも生徒指導関連資料においても、必ずしも統一されているわけではないということを確認できる。
続いて、生徒指導関連資料では、一番古いものが昭和24年の「新制中学校新制高等学校望ましい運営の指針」であり、次が「生徒指導の手びき」、または改訂版、直近のもので言うと「生徒指導提要」等、代表的な資料8点を分析した。
その結果は、生徒指導をめぐる解釈は、その対象とする児童生徒像に、社会的集団調和と幸福な個人、人格が正常で健康な発達という代表的な捉え方から変わってきており、生徒指導という用語の意味は時代とともに変化している可能性がある。
生徒指導資料の内容として一貫して求められているのは社会的資質であるということは間違いないが、生徒指導に求められてきた意義を推察していく中では、教育自体が働きかける人格を核としながら、個の幸福が社会や他者との関わりの中で生まれているものであることを踏まえれば、個と社会との2つの視点に支えられた感覚の上に成り立つ概念であることが示されているとまとめた。
生徒指導は、一般的に解釈される人格に視点を当てることを不変のものとして概念構成の中心に置いている。その上で、時代が抱える教育課題に合わせ、結果的に多義的に用いられてきたのではないか。そのことによって、生徒指導の異なる概念がつくり上げられるとともに、イメージの中での積極的、消極的、受動的、能動的などの修辞句が生まれてきたのではないか。しかし、生徒指導提要においては、積極的、消極的が生徒指導の直接的な修辞句から消え、積極的な意義と置き換えられた。
日本の学校教育では、一人一人の児童生徒に内在する様々な個性を発見し磨く機会と、教育活動の単位として準備される多様な集団活動において、個別の活動による指導と集団活動による集団と個別の指導との中で、生徒指導が強力に推進されることが期待されている。この意味において、積極的に生徒指導を行っているとし、効果的に生徒指導の原理が作用するさまを、積極的な生徒指導と呼ぶこととしている。
さらに、生徒指導の機能とは、いわゆる生徒指導の三機能に限定されるものではなく、児童生徒一人一人に、自分らしく生きるための力の源となる肯定的な自己概念を育むことを目指して行う、人間教育としての営為であることを確認した。
したがって、積極的な生徒指導とは、未来の社会の構成員となる児童生徒に教育的愛情を持って積極的に教育活動の個別・集団の指導に当たることを意味すると研究会ではまとめている。
なお、生徒指導の三機能につきましては、その3つだけをやっていれば生徒指導をしていると誤解されている傾向もあると思う。本来、生徒指導の三機能と言われているもの、または生徒指導のポイントと言われるものは、教師の指導上の留意点であったはずのものが、近年多様な解釈がされていると思う。
続いて、「特別活動の実践と生徒指導の積極的な意義」に関する資料の説明をさせていただく。ここでは、社会的な自立に関わる主な生徒指導の文言等について整理し、特別活動の実践に関わる生徒指導の理論的考察を行った。
初めに積極的生徒指導、消極的生徒指導から生徒指導の積極的な意義へという変遷について確認する。
生徒指導の意義で述べられているのは、積極的生徒指導、消極的生徒指導の二項対立的考え方の排除による、生徒指導の積極的な意義の強調にあると理解している。
消極的という文言が使われたのは、「生徒指導の手びき」が1965年に作成されたときに、非行対策の側面があるということで前書きに出てきた文言だが、この言葉が積極的と二項対立になって、教育現場の中でも使われていると思う。
二項対立の形で示したことによって、生徒指導の意義が理論と実態に分けられてしまい、理論的な自己指導能力の育成に関わる積極的な生徒指導と、教育現場の実態である非行対策としての消極的な生徒指導という、あたかも生徒指導が二種類あるかのような誤解、または生徒指導概念の多様性から、生徒指導本来の意義を狭く理解した実践、または機能の留意点を曖昧にしたままの実践に偏ることも多く、教育課程の内外で実施される統合的な機能に対する危惧を課題としたままの現状になっている。
「生徒指導提要」はこのような危惧を是正する観点から、あえて積極的な生徒指導、消極的な生徒指導の概念、文言を意図的に排除し、自己実現を図る自己指導能力の育成を目指すという本来的な意義を積極的な意義と確認し、生徒指導の充実を期したものと理解している。
特別活動と生徒指導の関連について、歴史的な経緯について、いわゆるガイダンスが入ってきてからの生徒指導という理解と、それからそもそも明治期から行われている日本型生徒指導の発祥という視点で資料に書いた。
ここでは、生徒指導の積極的な意義が、最近の学習指導要領等でどのように使われているかというところを確認させていただく。
自己決定と「いじめ」未然防止について、特別活動は、学習指導要領第3の1の(3)には次のような規定がある。「学級活動における生徒の自発的、自主的な活動を中心として学級経営の充実を図ること、その際、特に、いじめの未然防止等を含めた生徒指導との関連を図るようにすること」と、このような使われ方が最近ではされている。
学習指導の改訂では、いじめの未然防止と生徒指導の関連を特別活動に示している。その実現には、学級活動、学級経営の課題解決において、個々人の本音、課題意識を十分に反映させた話合い活動を踏まえた指導・援助が未然防止への大きな期待として挙げられている。
積極的な意義を踏まえた生徒指導とは、社会的な自己実現を目指した本来的な生徒指導であるが、本来的な生徒指導については、「生徒指導の手びき」の中でも、「生徒指導は統合的な活動であるが、学業指導、個人的適応指導、社会性・公民性指導、道徳性指導、進路指導等の部分に分けて考えることができる」という記述がある。生徒指導の中でも学業指導を内容の冒頭に示している。中学校、高等学校の特別活動編の中でも、例えば「生徒指導の視点から学業指導と呼ぶ」という文言等も使われている。
多岐にわたる生徒指導の内容を今日的な教育課程の視点で識別・考察すると、生徒指導の本質として今日まで継続されている本来的な生徒指導の中核は、学業指導にあるというところも踏まえておかなくてはいけないと考えている。
生徒指導の積極的な使い方については、きちんとこれを定義する等、解説、説明をしっかりしておくことが必要ではないかと。
特に、消極的な生徒指導が持つネガティブなイメージや、学校現場の先生たちが苦心されている部分に、消極的という概念を復活させるとなると、なぜ消極的な文言を復活させるのか、丁寧な説明が必要ではないか。
また、生徒指導の機能を生かしたという研究、実践レベルでの様々な取組等を見ていく中で、生徒指導の三機能という表現が独り歩きしてしまって、「生徒指導リーフ」等では、指導上の留意点やポイントが十分には理解されていないのではないかと考えている。
最後に、生徒指導の開発促進とか、または未然防止の機能、または課題解決的な機能があるという点は、生徒指導資料集の20章から継続されており、今後継続されることについては賛成。
【座長】 ただいまの大字委員、中村教授からの御説明につきまして、フリートーキングを行う。
まずは座長から。特に今、小学校のいじめの認知件数に関して、小学校1、2、3年でも約9万件を上下しているという状況で、暴力行為発生件数に関しても、児童数1,000人当たりで見ると中学校と接近している状況である。その点では異校種の連携、幼・保・小の連携は必要だと思うが、例えば中教審でも、幼児教育スタートプランの検討が始まっている。それ以前にも、例えば幼稚園、保育園でのアプローチカリキュラムや、小学校でのスタートカリキュラムが実践されてきたと思う。
そこで、小学校でのスタートカリキュラムの教育効果に関する情報やデータをお持ちであれば、教えいただきたい。
【大字委員】 そのようなデータはないが、各校で、スタートカリキュラムの定着が進んでいると考えている。
【座長】 埼玉県では以前、平成24年に、アプローチカリキュラムやスタートカリキュラムの指針を示された接続期プログラムというものが公表されている。プログラムの事例集も、現在まで公開されているが、このような小学校段階でのスタートカリキュラムの教育効果に関して、何かコメントはおありか。
【委員】 川崎の例だが、1年生から人間関係をどうつくっていくかという視点から、小学校1年生から中学3年生までを対象に、「共生共育プログラム」という取組をスタートさせている。
また、さいたま市の例では、さいたま市は生徒指導の総合的な視点に立ったときに、コミュニケーションに視点を置いた指導を行っており、それを基にしたプログラムをつくっている。
【委員】 積極的な生徒指導の充実には、目の前の問題に対応するといった課題解決的な指導だけではなく、成長を促す指導等の積極的な生徒指導の充実がある。
積極的な生徒指導とは、従来の積極的な生徒指導、消極的な指導という二項対立ではなく、全ての子供を対象とした生徒指導を大事にしているという意味と理解している。
【座長】 1960年の文部省『生徒指導の手びき』の第7章の「教育相談」では、生徒指導は生徒一人一人の全人的な発達を目指すものであるが、大きく2つの側面に分けて考えられる。1つはいわゆる積極的な面で、生徒の人格あるいは精神的健康をより望ましい方向へ推し進めようとするものである。もう一つは、いわゆる消極的な面で適応上の問題や心理的な障害などを持つ生徒に対する指導である。学校における生徒指導としては、この2つが調和的に行われることが必要であるという記述がある。
また、第9章の「学校における非行対策」では、積極面の指導こそが学校の非行対策として一層基本的なものであり、これは生徒に基本的な欲求を充足することを意味する。学校教育の中での指導としてはもとより、基本的には学業を中心とする学校生活に生徒を適応させたり、進路指導を充実したりするなどの配慮が重要なことは言うまでもないが、生徒の自主的な集団活動を助長しているような指導、例えば特別教育活動、学校行事等の一部などが大事であるという記述もある。
現行の生徒指導提要では、既に生徒指導は対象、方法別に、成長を促す生徒指導、あるいは予防的な指導、あるいは課題解決的な指導と、3つの方法論を示している。恐らくこのことを踏まえ、あえて積極的という文言を使っていないのでないかと思う。
それから、米国のスクールカウンセラー協会、通称ASCAの2003年のスクールカウンセリング国家モデルでは、スクールカウンセリングプログラムは範囲において総合的であり、これは学業やキャリア発達等、個人的、社会的発達を意味している。意図において予防的であり、性質において開発的、発達的、ディベロップメンタルだと述べている。
そして、それ以前の1997年の国家基準では、スクールカウンセリングプログラムの本来の目標は、子供たちの学習を進歩させ、向上させることであると明記している。
積極的、消極的に関しては、アメリカのスクールカウンセリングの中で、プロアクティブとリアクティブというアプローチがある。
プロアクティブというのは、先手型、あるいは事前対策型、予防型と呼ばれるもの。学習指導や生徒指導の問題が起こる前に積極的な指導を行い、問題を未然に防ぐというアプローチ。リアクティブというのは、事後対策型、後追い型と呼ばれる、いじめや暴力行為などを起こした子供に個別に対応するというアプローチ。
例えばいじめが起きてから対応する以上に、起きないようにどうするか。いじめの多くは生徒指導調査でも、言葉による侵害行為である。だとすると、人を傷つけない言葉や励ます言葉の使い方、あるいは書き方の学習がいじめ防止やキャリア教育にも効果をもたらすのではないか。特にいじめの根絶、いじめ重大事態ゼロ、いじめ自死ゼロを目指す上では、プロアクティブな、積極的な生徒指導の充実が今後強く求められると思う。
日本の生徒指導でいえば、消極的な生徒指導は特定の子供を対象としたリアクティブな、つまり事後対応的で治療的、介入的な「治す生徒指導」、あるいは「治す教育相談」であり、一方で積極的な生徒指導は、全ての子供を対象としたプロアクティブな、つまり開発的で予防的な「育てる生徒指導」、あるいは「育てる教育相談」を指していると思う。
その点では、対象、方法での差異であって、生徒指導ではどちらも重要ではあるが、生徒指導の目標である児童生徒の社会的実現や自己指導能力の育成という観点からは、全ての児童生徒を対象とした成長を促す生徒指導、積極的な生徒指導が基本になると思う。
ただし、積極的、消去的という表現が、直感的であり、具体的には分かりにくい。その点では、表現の工夫や補足説明も必要があると思う。
なお特別活動に関しては、生徒指導にとって集団指導の場として重要であって、特に体験活動等を通して、自治的能力、自己理解や他者理解能力、あるいは人間関係形成能力、課題発見・解決能力、社会形成能力等の社会的資質の育成、キャリア教育における基礎的・汎用的能力の育成という点では、ほかに見られない特徴を持っていると思う。特別活動は成長を促す生徒指導、プロアクティブな生徒指導と不即不離の関係にあると思う。
【委員】 小学校段階におけるキャリア教育の視点についてお伺いしたい。
【大字委員】 今は小学校でもキャリア教育を重要視している。例えば、キャリアパスポートを各学校で積極的に活用して、子供が自分の成長を実感し、将来にわたってどんな生き方をしようかというようなことを考える機会を、様々な場面で設けている。進路指導だけではなく、小学校段階からキャリアについて考えることは重要と考えている。
【委員】 現行の生徒指導提要では、キャリア教育に関わる例示がなかったと思う。今度の改訂の中でキャリア教育の視点も入れていくべきではないか。
【座長】 特に児童生徒の心身面のケア、あるいは不登校関係では、養護教諭の先生がサポートしていただいていると思うが、その点でコメントをいただきたい。
【委員】 家庭の問題を背景にした課題は増えてきている。
特にネット依存では、睡眠不足、視力低下、体力低下、それに伴う肥満という問題もあり、また、学校生活におけるさまざまなトラブルにも結びついており、学校だけで解決できない問題が広がってきているように思う。
また、未然防止について、心身の健康の保持増進を教育活動の基盤とすることが大事であり、基盤が実現した上で、自己有用感や自らの意思決定、他者とのコミュニケーション等が養われるのではないかと考えている。
それから早期発見という意味では、学校保健安全法に、健康観察の重要性が明示された。それは教育活動全般で行われることであって、心身の健康問題の早期発見、早期対応に結びつくと思う。生徒指導的な視点というものを持って観察を行うことによって、ふだんの状態を把握し、そして変化に気づくということが、早期発見に結びつくのではないかと。
まずは担任の先生がこれらを常時行うことが大事であり、そして養護教諭としては、情報交換及び保健室の対応において、早期発見を行う、それを問題解決等に結びつけていくことが大事と思う。
【座長】 今後のチーム学校で、学校内の教員、あるいはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの連携も必要であり、家庭をどのように巻き込んでいくか、連携していくかは重要課題と思う。
【委員】 家庭と学校の連携が常に重要。ただ、地域や家庭の状況がいろいろあり、一遍にうまくいくということではないと思うが、常に心がけていきたい。PTAでも、研修会やそういった中でも、学校と家庭の連携の重要性については常に訴えているところ。
【オブザーバー】 なぜ先回の生徒指導提要で積極的、消極的という二項対立が消えたかという点を明確にすると、消極的という言葉がつくと、要らないもの、後ろ向きなものと言われてしまうのがよくないと。つまり問題対応や未然防止であっても、積極的にやっていただきたいために、その文言は避けて言葉を変えた。そこで成長を促す生徒指導という言い方をつくった。
その際、ディベロップメントというのを発達と捉えるか、開発と捉えるか、これは子供を主体と見るのか客体と捉えるかというところの問題が大きいので、基本的には子供の発達が主体的に行われる。ただ教師はそれを促し、支えていくという趣旨で、成長を促すという言い方のほうがいいという経緯になっている。
【座長】 それでは、次の議題に移らせていただく。事務局とも相談の上、生徒指導提要の目次構成改訂(案)を作成した。資料3につきまして、事務局より説明させていただく。
【事務局】 目次案は、先生方へのインタビューや座長との相談を踏まえた上で再構成したものである。
構成としては、第1章から第13章まであり、章の中には下に節があり、節の下にはそれぞれさらに細かい項がある、現生徒指導提要と同じ形だが、項目については再整理をさせていただいた。
現行の生徒指導提要の全体の構成は第8章までとなっている。各課題については第6章の2項目にまとめ上げられており、生徒指導の意義や教育課程、学校における生徒指導体制は、それぞれの章に分散されている。また、第5章、教育相談も、章立てて分けられている。
ただし、関連法規、またそれに伴う基本方針が現在では明確になったため、それらを解説しなければならない。また教育相談に関しては、例えばスクールカウンセラーは、学校の体制において十分に浸透しているという状況でもある。
平成20年代から様々な社会状況の変化も踏まえ、項目を考えており、生徒指導提要はやはり学校現場で使っていただきたい、分かりやすいものになっていただきたいという前提のもと、ぱっと見て分かりやすいもの、学校の先生がすぐに逆引きのように使えるというものとなるよう、構成を検討しなければならない。
構成としては、第1章から第3章までは、生徒指導の基礎や体制、学習指導要領の関係性いう基盤になるところについて、まとめている。第4章以降については、前回の生徒指導提要の第6章の2節に記載されていた課題をそれぞれ章立てにしている。
より詳細には、現行の生徒指導提要の第1章の生徒指導の意義と原理、それから第3章の児童生徒の心理と児童生徒理解をまとめて、改訂案の第1章、生徒指導の基礎としている。
また第2章については、教育課程と生徒指導というところで、学校生活だけでなく、様々な教科科目において、生徒指導は反映されるというところ、現行の第2章とほとんど変わらない体制になっている。
第3章の生徒指導の体制は大きく再編した。特にチーム学校として、学校外との連携が強調されているところでもある。
これまでは教育相談を特別章立てていたが、教育相談に関するスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーはチーム学校という体制に不可欠であることも踏まえ、学校組織や校則、また教育相談体制における定義等、また、学校安全や安全教育、そして関係機関との連携をまとめている。
また、第4章については、実はいじめ、不登校、暴力行為、少年非行、児童虐待、自殺、中退、インターネット課題等を章立てで定義している。関連し、関係法規や通達があり、学校や教育委員会がやるべきことが示されているので、各章に共通のリード文を置き、現状等をある程度共通のものとしてまとめてはどうか。
1)では関係法規・基本方針、2)では組織体制と計画、3)では未然防止・早期発見・対応4)では関係機関等との連携体制と、それぞれの課題に共通する項目であるので、最初にリード文を置いて、そしてそれぞれの構成を同じにして、第4章以降に書いていただくということを考えている。
また、第12章に関しては、性に関する課題というものを含めた。第13章に関しては、多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導について別途議論したほうがよいと考え、ワーキングを設置させていただきたいと思う。
本会議の下にワーキンググループを設置し、特に13章の多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導ということについて御議論いただきたいと思う。
ワーキンググループの委員については、本会議の一部の委員の方に協力していただいて、検討中ではあるが、委員を選定させていただきたい。委員の人選、構成は、座長に相談し、一任させていただきたい。
【座長】 ただいまの目次構成(案)及びワーキンググループの設置について、フリートーキングを行う。また、冒頭の大字委員、中村教授の御説明についても、併せて御質問等あれば御発言いただきたい。
【委員】 第4章以降の目次構成が、4点、関係法規から関係機関との連携まであって、それについて各章で書くというアイデアはいいが、実はいじめ、不登校、暴力行為、それぞれに関して生徒指導で大事なことは、共通することもあると思う。
したがって、4章から12章まで項目が、章として立つと、何か生徒指導が問題ごとに対応するものとして、学校の先生方や社会から誤解される、あるいは生徒指導が目指している全ての子供の成長とずれると思う。仮提案としては、4章に関連法規、共通のもの、それから学校の組織体制と計画、それから未然防止・早期発見・対応、関連機関との連携等、全ての問題に共通するものを立てて、5章以降を、現4章から12章を1つの章にする、もしくは現4章から12章を少しグルーピングして幾つかの章で述べる等、項目別よりも、共通のものを明確にするという見せ方もあるかと。
また、生徒指導の大きな問題の一つとして、学級や学校の荒れがあるので、どこかで扱えるといい。
続いてもう1点。教育相談は、生徒指導の一環として行うということが現行の生徒指導提要で明確になっているが、現場では、生徒指導と教育相談が分けて捉えられているという心配もある。また、前回あった5章の教育相談を生徒指導の一環として行うということと、スクールカウンセラー、専門機関連携で行うという現行の提要の5章の明確であった点は、引き続き生かしていただければと。
まだ生徒指導と教育相談と分けて捉えられるところもあるのでその点工夫が必要。
【委員】 現行の目次案は、問題対応に見えてしまう。例えば資質・能力を伸ばす生徒指導や成長を促進する発達・促進の生徒指導を前面に出すのであれば、例えばキャリア発達やパーソナリティの発達を促す等の章があってもいいのではないか。生徒指導と教育相談の関係性を明確に示すということは必要と思う。
【委員】 まず1点目。学校現場の一つのウイークポイントとして、正しい記録というものがある。教員のノート等に記録が分散化され、再現できないような断片となっているため、問題対応するときに、聞き取った内容や事態が十分分からなくなってしまうことがある。このウイークポイント、学校が改善しなければならない。しかし、実際様々な対応や独自のやり方があるので、この点について範を示していけるといい。
それから2点目。生徒指導は子供の成長に関わることなので、学校における働き方改革推進の観点からやりませんとは言えない。今一番整理が必要なのは、そもそも学校ではなく家庭が担うことも学校が携わっている、あるいはほかの関係機関が対応したほうがよりよいということも学校が対応しているので、第4章以降では、学校のそもそもの守備範囲を明確にするとよいと思う。
一例としては、最近は一番多いSNSでのトラブル。保護者が買い与えた携帯、スマホを子供が自由に使って、SNSトラブルが起きる。ほとんどは生徒が学校にいない時間に学校外で起こるものであり、その点で学校が対応しなければならないことではないと思われるが、ほかに対応する機関がなく、学校における友達関係であること、時には複数の学校の生徒が関係するSNSトラブルということで、学校が対応している。
やはり家庭に意識啓発する意味でも、家庭にも頑張っていただくことが必要だと思う。家庭と学校の連携という話もあったが、学校の守備範囲がはっきりしなければ連携はできない。
それから最後、3点目。現行の生徒指導提要の第8章、学校と家庭・地域・関係機関との連携に関して、1つ新たな視点として設けていただきたいのは、学校運営協議会との連携である。今かなりの学校がコミュニティースクールになっていて、学校運営協議会がよく機能している。
また、生徒指導に困難を極めているようなところは、学校運営協議会が主体となって支援する等、様々な対応をしている実態があるので、地域運営学校、コミュニティースクールも大きなウエートを占めている点も大きなポイントになると思う。
【座長】 正しい記録というところは非常に大事。特にいじめ防止対策推進法以降、きちんと時系列で、いつ誰がどうしたという記録を残さないと、今後説明責任も果たしていけないし、生徒指導を初動段階から運営していくには、このような記録の保持が絶対的に必要だろうと思う。
守備範囲に関しては、どこまでが学校でどこまでが家庭かはケース・バイ・ケースのところもあるだろうが、何でも学校が、あるいは公立なら教育委員会が、という形で負担が増えてきていると思う。この点も意識して提要を作成する必要があろうと。
最後のコミュニティースクールに関しては、例えば校則等もそうだが、保護者や地域の人を巻き込んだ学校運営の中で、例えば土曜日の学習等、学校のマンパワーでは抱え切れないものに地域の人が参画するというコミュニティースクールの存在は非常に大きく、あるいは地域学校協働活動等も活用しながら、チーム学校という形で、地域全体で学校をつくっていく、そのような生徒指導が必要だろうと思う。
そのほかに何か御意見あるか。
【委員】 現行の第6章のところを、今回、改訂で第4章以下に章立てするという御提案をいただいた。今回の改訂目次案では、喫煙とか少年非行、暴力行為等、現行で書かれている順番と、入れ替わっているかと思うが、この章立ての順番は、何を基準に置いて御提案されたのか教えていただきたい。
【座長】 特に6章、7章、暴力行為、少年非行は極めて関連性があるので、6章、7章を続けたほうがいいのではないかと判断している。それから生徒指導上の課題としては、やはりいじめ、それから不登校が喫緊の課題であるため、いじめ、不登校という順番にしてはどうかと判断した。このような方針で少し並び替えをしたところ。
【事務局】 やはり順番が早いほうがある程度すぐ読める部分というところではあるが、基本的には順番はいろいろ先生方の御議論を踏まえながら変わってくるものであり、全体的に第4章以降の構成を見直してはどうかという御意見もあるので、先生方の御意見を踏まえ、構成を検討していきたいと思う。
ただ、学校の先生方に、すぐに分かるようにさせていただきたいという気持ちが強く、このような形としているということもある。現行の生徒指導提要は、アカデミックの方からとても評判がいい。学校現場でも、逆引き辞典ではないが、若い先生方が見てすぐ分かる構成ということを優先させて、項目を考えさせていただいたところ。もちろんこれは先生方の御議論でどんどん改編していくものだと思っていますので、活発に御議論いただければと思う。
【委員】 今回の改訂の基本的な考えとして、大きくは児童生徒の問題行動の発生を未然に防止するための積極的な生徒指導という形で、子供たちの成長を図っていくということを前面に出していきたいというお話でした。その中でも、特に特別活動においては、育成すべき資質・能力の視点として、人間関係形成や社会参画、自己実現を図ろうとしており、まさに生徒指導で必要な自己指導能力を、体験を通して学んでいくという点について、それぞれ4章以下でどのように入れていくか、未然防止策等として事例を示すなど工夫したらいいと思う。
もう一点は、生徒指導に関して、非常に先生方への比重、働き方改革も含めて、家庭・地域も含めて、関係機関とのすみ分けや連携という点について。
現行では第8章で、家庭・学校・地域との連携という形で記されているかと思うが、それぞれの問題ごとの連携として、4章以降に出すか、それとも大きく4章として、例えば子ども・若者育成支援推進法や子供・若者育成支援推進大綱も含めて、連携体制について、4章の大きな項目として記すのもよいと思う。
【委員】 アメリカのスクールカウンセリングが下敷きになっている。ガイダンス・アンド・カウンセリングを生徒指導と呼んでいる。教育課程と生徒指導というところで、教科、あるいは道徳、特別活動等の関連は示されるけれども、3章では生徒指導体制、教育相談体制と並列のように出てくる。生徒指導って一体何なのか。生徒指導と教育相談、そしてキャリア教育、広義の生徒指導と狭義の生徒指導等、生徒指導の構造をどう捉えたらいいのかということを、定義と絡めて明確に示すことが必要だと思う。
そして学級経営と生徒指導の関係について、小・中学校の場合は学級経営、高校の場合はホームルーム経営だが、生徒指導と学級経営をどう捉えたらいいのかという構造を明らかに示せるといいと思う。
2点目は、関係機関との連携について、教育委員会と学校とが生徒指導に関してどのように連携していくのかという点についても示してほしい。日常の指導助言、危機対応におけるサポート等、教育委員会が、いじめの重大事態を含め、危機対応の際に、学校と連携して動いている。小さな市町の教育委員会は指導主事の数も限られており、学校の現場の先生と同じように、対応が本当に大変と思う。
教育委員会と学校がどういう関係にあって、どのように生徒指導に関して連携していけばいいのかという点についても、指導主事の方が見ても参考になるような形で示す、あるいは学校が教育委員会を媒介にして関連機関と連携しサポートを受けるシステム等、その辺の関係性も示せるといいと思う。
【座長】 1点目で、私が幾つかアメリカのスクールカウンセリングの例を挙げているのは、それをベースにしては提要の改訂をしようという意図はない。
また、その定義に関しては、特に今回学習指導要領の総則の児童生徒の発達の支援で、学級経営の充実、生徒指導の充実、キャリア教育の充実が小中高の3本柱で貫徹されるため、この点を書き込む必要があると思う。
【委員】 提要は従来から、生徒指導全体のテキストとして使われる場合と、個別目の前に困った事態が起こったときに、個別ケース検討会議等で使われる場合がある。学校の先生が子供たちに対してどう向き合うのか、特に、保護者とどう関係するのかについての基本的な姿勢は、従来の5章の部分を今日的に深掘りした形で提示することが必要ではないかと思う。
学校側の見方として家庭の課題が大きいことも事実と思うが、家庭側としても貧困等の課題も含めて限界を感じている。不登校の調査等においても、学校側としては家庭の問題と考えているが、ほかの要素もあるというケースもあり、丁寧な見立てに基づいて、どういう姿勢で関わるのかが重要かと。
したがって、3章までと、それから各課題に移るところの間で、もう一つ先生方の姿勢として何を学んでもらうかという軸は置いたほうがよいのではないか。
また、今回4章以降で細分化されたが、例えばヤングケアラー等、いろいろな課題が出てきたとき、例えば、後から入れ込むようなことを考えたときに、章の機能がかなり異なるので、その辺はレベルを変えるということもあってもいいのかなと思う。
あわせて先ほど順番の話があったけれども、学校にとっての大きな課題であるのは、なかなか減らない不登校ではあるが、義務教育機会確保法等の関係等を踏まえ、誤解を招くことがないよう、順番その他については、また丁寧な議論をさせていただきたい。
【委員】 「第2章 教育課程と生徒指導」について、現行の第2章では、すぐに「教科における生徒指導」との記述ではじまり、各教科及び領域が続いている。学習指導要領も総則で総論があって、各教科、領域の各論が続くように、提要でも、教育課程全体における生徒指導の位置づけについての総論で示し、続けて各論に入っていくのはいかがか。
【委員】 児童生徒の自発的、主体的な成長・発達を支援するために、子供についての複合的な情報収集とアセスメントが重要である。子供の話の聞き取りの方法の工夫や配慮、アプローチの仕方等も必要な情報と思われる。
【オブザーバー】 今回の改訂の方向性として、学校現場の先生方に使っていただきやすいものにということが重要。
学習指導要領の中にも、集団指導と個別支援の両面で子供たちの生徒指導の充実を図っていくということが書かれており、学校の先生方は恐らくその学習指導要領を一番見て動いている。
この点を踏まえ、学習指導要領に書かれている生徒指導の部分と生徒指導提要がうまくリンクされると、積極的な生徒指導という点を今までよりも厚くするという趣旨が分かりやすくなる。また、先生方にとって普段の授業の改善や行事の改善等、子供たちへの関わり方が未然防止に極めて大きな意味をもつことが伝わるような構成になっている良い。
目次の構成に関しても、個別支援の事案対応というイメージが強く入ることで、積極的な生徒指導についてを厚くするという、今回大事にしたいこととしていた部分が曲がって伝わっていくのはよくない。もう少し構成に工夫をすると先生方には伝わりやすい。
また、授業の改善や行事の改善が、実は極めて生徒指導にとっても重要であるということが改訂された生徒指導提要の中で改めて感じられると、現場の先生方は自信を持って動いていけると思う。
【座長】 時間になったので、フリートーキングはここまでにする。 ワーキングについては設置するという方向で進めさせていただく。以上で第2回の会議を閉会する。
―― 了 ――

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