多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関するワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

令和3年11月5日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関するワーキンググループにおける審議結果の報告内容(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

浅野委員,岡田委員,奥村委員,笹森委員,野田主査,藤田委員,八並委員

オブザーバー

小野オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー  
 

文部科学省

鈴木生徒指導室長
 

5.議事要旨

【主査】 第3回の多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関するワーキングを開催する。今日のワーキングで多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関して取りまとめ、親会議のほうに提案させていただく。
まず、全体として、一旦、この章の場合、多様な課題をということで、その下に発達とか健康とか家族とか入るため、他の章とディレクトリーが異なる。また、ほかの領域の根っこで理解しておく必要のある側面もある。
ほかと重なる部分があるけれども、一応、資料にあるように、関連法規から対応、それから関係機関までという構成で示していただきつつ、どこまで細かくこの章で書く必要があるかということが出てくるかと思う。この辺りのすみ分けについては、作業の入り口、あるいは途中のあらあらの構想が立ったところで何らかの形で、親会議を含めて、ほかの章、あるいは1部、2部との関係で調整できるようになればと思う。
【委員】 参考資料の1回目、2回目の主な意見を読むと、第1部でもある程度書けそうな部分がある。第10章に関しては、まさに極めて困難なケースなので、ほかの第2部の各章のように、関係法規から組織体制、未然防止や連携という形は取りづらい。
それよりは、項のところで特定のトピックを扱って、そこで関連法規や現場での連携の仕方といったものを書くほうが書きやすく、ほかの部分との重複も避けられると思う。
【主査】 今までの提要に入っていなかったこともしっかり受け止めていくとことは必要と思う反面、例えばヤングケアラーなどは、制度的に新たな概念として入ってきているので、構成をつくりにくい。この辺は、また児相サイドとの関係でも議論の余地がある。全体としては、各トピック、テーマを意識しながら記述していただくということで合意いただければと思う。
次に、第10章の内容について。全体としては、項のところは、このような立てつけを考えつつも、どれをどこに当てはめるかというのは、今の話のように若干悩ましいところもあった。しかし、10章の中の大きなカテゴリーとしては、発達と、それから健康あるいは医療問題と、家庭、家族という、大きな3カテゴリーで特段動かす必要がないのではないかということであった。
例えば、LGBTQを含む性的な問題等も幾つか出たが、これも第1部、あるいはほかの章のところで吸収できる部分と、今後のことを考えれば、逆に1章とか、1部とか2部のほかの章で扱い切れない部分で10章に回ってくるものもあり得る。一旦は、この3部構成そのままで、発達関係と健康・医療関係と、それから多様な家族という部分で進めさせていただきたい。
第10章第1節については、発達障害とその周辺域の障害について記述してはどうか。また、学習障害を含む特別支援に係る対応、特に合理的配慮などの記述も要るのではないか。検査機関へのつなぎ方をどうするか。それから、校内連携体制のつくり方。文部科学省のほうで令和3年6月に「障害のある子供の教育支援の手引」を作成しているので、ここへリンクを飛ばすと同時に、手引との間でのつなぎも考える必要があるのではないかというような御意見をいただいた。この点について、御意見をいただきたい。
【委員】 第10章の第1節については、「発達」という言葉が広い。発達段階を押さえていくわけではないので、個別の課題に対する対応ということで、タイトルそのものも「発達障害に関する課題と対応」としていただけると見やすいのではないか。
内容については、まずは、現状認識、課題認識として、どういった課題があるのか認識すること。また、その課題について、どのように対応のための分析をしたらいいか。学校の体制づくりがあって、外部とのつながりがあって、関連法規や基本方針については、数多く出てくるけれども、4つの柱といった形だと、発達障害に関する課題と対応というところでは、内容的には書けるかと。
ただし、その中で、1回目のヒアリングの中で、コミュニケーション障害やチックといった診断名、障害名が上がってくると難しい。いわゆる発達障害の領域にある子供たちが、うまく適応できていない状態像を示し、その背景には、例えば、LDやADHD、知的障害があるといった形で触れることはできると思う。章の書き方としては、先ほど示していただいた現状認識と、課題の分析と、学校での先生方の対応というつながりだと、ここの発達障害というところでまとめやすいと思う。
【主査】 発達障害に集中していただくとして、その際に、発達課題を発達障害から除いたときに、例えば、愛着系の課題などの扱いをどうするか。
【委員】 発達障害のある方たちも、幼児期、学童期、思春期、青年期で抱えている課題は、いわゆる通常の発達の子たちが抱えるものより深くなる。発達障害を基本として、発達障害のある子供においてもというふうな書き方で、発達の様々な発達課題を追っていくことはできるが、発達課題として、1個取り上げていくと拡散してしまう。
【委員】 日本もようやく、ギフテッドやタレンテッドチャイルドの子たちに注目されるようになってきた。そういう意味では、発達障害に限定してしまうと、今度はそういったギフテッドとかタレンテッドの子たちがカバーできるのかという懸念がある。
それから、発達障害となると、ここ数年、2E(Twice-Exceptional)という、発達障害を持ちながらも非常に優れた特性を持っている子について日本で議論が始まり、その異才や異能教育と連動して取り組んでいる。あまり今まで注目もされず、特にタレンテッドやギフテッドの子に関しては、ほとんど書かれているものはなく、現行の提要でも記載はない。そのようなギフテッド、あるいはタレンテッド、2Eに関して、記述してもらうほうがいいのではないか。
【委員】 トピックス的に、ギフテッド、2Eを触れることはできるが、生徒指導とか学校教育に絡むと、集団の一斉指導の問題がリスクとして出てくる。現状として、そういったものも話題になっているという押さえまでにしておかないと、対応とか具体的な手立てとなったときには、個別の対応ということに書きぶりとしてはなっていくことになる。
【委員】 そこまでで結構だと思う。そういった子がいることを先生に認識してもらうほうがいい。
【オブザーバー】 教師の生徒指導の専門性という範疇で考えたときに、教師がこの発達的な問題に対してアセスメントをするというのは、具体的に何を意味しているのか、曖昧であるため、明確にしたほうがよい。例えば、教師が、自分の学級の子供たちについて、この子は軽度知的障害であるとか、この子は反抗挑戦性障害であるとか、教師だけでそこまで踏み込んだアセスメントができるようになることをイメージされているのか。それとも、そこは別の専門職が担当するということで、あくまで、教師は行動観察等から何かしらの発達の偏りについて気づくことができ、適切な検査機関、あるいは、スクールカウンセラー等につなぐということを求めているのか、明確にした方がよい。生徒指導提要の改訂で求める今後の教師の生徒指導に関する専門性については、現在の大学の教員養成の生徒指導関係の教職科目にも影響する可能性もあるため、発達に関するアセスメントについて、教師にどのレベルのアセスメントを求めているのか、一旦合意形成したほうがいい。
【委員】 私が最初に申し上げたレベルは、気づきと実態把握のレベル。専門的なアセスメントについては、関係機関との連携の下でやっていくということで、チームでそれを支えていくイメージ。学校の先生としては、そういった子供に対して気づき、そして外部の機関と連携して、それをアセスメントにつなげていく。教員が例えば発達検査のようなことを読み取って分析をしていくというところまでは、生徒指導提要の先生の役割としては、広過ぎるのではないか。
【委員】 発達の問題を発達障害の項目の中で扱うと逆に語弊もあると思う。しかし、精神的な健康というところに落とし込んでしまうと、これもまたぼやけてしまう部分もある。それで、同時に、また家族のところへ落とし込むと、またぼやけるところもあって、扱い方が難しい。ただ、それぞれの項目に、発達という視点は全て含まれてくるべきものなので、例えば、発達障害のところが、発達障害についての知的なアセスメント、あるいは特別支援だけで書かれているとすると、生徒指導提要の中に含まれるものとしては、浅くなってしまう。つまり、発達的な特性を持っている人が、どのような不適応を呈し、発達期において、どのような心理的課題を持つのかというところまでを含めてのアセスメントではないかと思う。
知的なアセスメントも、知能検査がどれだけ読めるかということを要求しているわけではなく、知的な偏りを持っている人が、どういう発達期の障害を抱えているのか、あるいは学校生活の中で困難を抱えているのかというところを主眼に置くのがいいと思う。
【主査】 この提要自体は、学校の教師に限定するのではなくて、SCやSSWも読むことがある。それから、やはり目的は生徒指導が的確に実現できることがゴールなので、教師ができる部分の知識と、それから教師がやるやらないは一旦置いておいて、チーム体制で多職種と連携する必要があるという意味で知見は持っておく必要がある機能が大きい。
先ほどのIQ140あるいはギフテッドも、配慮が要するようなことがあって、それが集団になじめないとか、ほかの子とテンポが合わず、結果的に、ある角度から見れば不適応となってしまう。しかし、その子が生き生きと生きられる空間とか対応があるならば、能力は存分に発揮できる。そういう子供がいたときに、それをどう見るかというのは、児童生徒理解、あるいはBPSモデルを使いたいけれども、そこのbioの部分をどういう形で読み取りながら学校の中で生徒指導の対応をしていくか、その辺にも還元されると思う。
「発達障害」と「発達課題」をどのように切り分けるのか、先生方、一人一人で違う可能性がある。2021年の時点で教育のトピックとして書いたほうがいいという項目については、入れられる分なら入れていけばいいのかなと思う。
一応こういう項目も入れたらみたいなものを、対応まで書くかどうかはともかくとして、お出しいただき、また議論の俎上に、次回の親会で戻せたらと思う。
【委員】 今までの議論の中で、「発達課題」と「発達障害」とあるけれども、「発達障害」という看板を上げると、発達障害というカテゴリーの子供たちのことをよく知ってくださいという流れになる。発達障害は、発達の特性がある子で、ある意味で発達にアンバランスがあるために適応の困難な状態にある人たちである。発達にアンバランスがある子供たちの中で、例えば発達障害という子供たちがいて、ギフテッドのIQの高い子供たちがいると、「発達障害」という看板を上げることがいいかどうか。あるいは、「発達障害等に関連する課題と対応」といった形で、包括的にしていくのはどうか。
【主査】 第1節はここまでにさせていただき、第2節のところの議論に移る。
第2節は、「健康問題・精神疾患等」というタイトルにしている。二次障害をどう考えるかについては、少し慎重に扱ったほうがいいということと、それから、現在、医療分野というのは、精神疾患を中心に御説明いただいているけれども、健康問題ということになると、少し広くなる。
それから、精神疾患系でも、例えば神経症をどうするかという御意見もあったけれども、現在では、精神疾患という概念で全体を包含できる。ただ、リストカット、摂食障害、希死念慮、それから性の問題、ゲーム依存、飲酒、薬物などへの対応がここに入ってくるが、当然ほかの章とかぶる部分もある。
それから、医療機関につなぐ際の留意事項、服薬管理、それから受診や投薬情報などの確認は、学校保健安全法との関連でも、学校が指導できると項目に該当する。
また、精神疾患以外の健康問題の扱いをどうするか。
さらに、小児うつ、起立性調節障害などの問題が出ると、医者からも学校は手を出すなと言われてしまって、学校がフリーズするという事例がある。その辺りの扱いについても言及する必要があるのではないか。
それから、これも学校保健安全などと関わるけれども、必要な医療や検査を受けない場合の対応についてどうするかというような意見が上がっていた。
【委員】 この精神疾患問題には、2つの問題があると思う。1つは、精神疾患というのは、その発達障害の人の二次障害として、あるいは家庭内に様々な問題のある人に起こってくる心理的な障害であるという認識がよくあると思うけれども、そうなってしまうと、精神疾患が非常に狭められてしまう。また、そういう精神疾患が出てきたときに、何かきっと原因があり、問題があるはずだ、あるいは、逆にその教員自体の関わりが不適切だったために、それを予防できなかったという形になってしまう。それは教員が自分自身を責めることにもなるし、同時に、子供が抱えている心の問題というものを過小評価してしまうことにもつながっている。
精神疾患も、生物学的な状況で起こってくるほうが多いわけで、何も家庭問題や発達障害を背景にして起こってくるものばかりではない。したがって、児童生徒がその発達段階において、どういう時期で、その中で心理的にも揺さぶられる時期にあるのか。それと同時に、それは何も家庭に難しさがある、あるいは発達の課題を抱えているような人でなくても非常にあふれた障害であって、それに気づき、適切な手当てをしていくことが学校には求められるということが最初になる。
第2項として出てくるのは、どういう兆候があって、どこから気づいていくのかという問題。例えばリストカットであれば、表情をどう読み解くか、あるいは摂食障害、あるいは課題が突然提出できなくなったなど、いろいろな兆候を扱えるのではないか。
どのように対応するのかというときに、1つは、校内連携をきちんと取っていくということ、あるいは、カウンセリングマインドの問題、守秘の問題等、あるいは、どういう体制でそれに対処していくのかといったことが書ける。
そして最後に、第4項として、関係機関との連携という中で、病院に紹介したからといって学校の役割が終わるのではなく、それからまた、病院に行かないからと家族に苛立つだけでもうまくいかないというような、様々なケースを含めていくことができる。
先ほどの健康問題という中で、例えばリストカット、摂食障害、希死念慮、性の問題、ゲーム依存と、各論的に述べられていない中で、どの範囲まで述べ切れるのかというところが、実際に原稿を作ってみないと難しい。例えば、飲酒や薬物まで同じようにして論じられるのかと考えたときに、例えば、その他の問題といった形で、第5章か何かつくって述べないといけないということもあると思う。
なお、LGBTは精神疾患として扱わない方向になっていると思うので、ここの中に含めるということが語弊を招く可能性があり、別のところで扱っていただきたい。
【事務局】 第8章で、「インターネット・携帯電話にかかわる課題」がある。ゲーム依存もそうだが、ネット依存も課題になっているということと、家庭の支援というところも大きく、この部分については、第8章のほうで深く触れていいただく必要がある。
【委員】 インターネット・ゲーム障害については、診断基準の中には取り上げられたということもあって、受診される方も、うちの子はこれではないかということが非常に多くある。精神疾患の中として、全く触れないわけにはいかないけれども、医学概念としては全く確立してなく、治療法も決まったものがあるわけではない。例えば、抑うつであるとか、あるいは家庭内の不適応の結果として、インターネット・ゲームの依存の状態が起こっているということは多くても、それを独立して、この病気に対してはどんな対処があるのかという書き方はとても難しい。8章のほうで扱っていただけるのであれば非常にありがたく、こちらはそういうふうな状態にある人もいるぐらいの触れ方で終えられるかと。
【事務局】 第8章を担当していただける先生からは、学校だけではなく、家庭のバックアップも必要だというところがあって、条件背景も一緒に書かないと解決できず、学校側も対処し切れないだろうというところもあるので、そちらの中心に少し書かせていただければという感じであった。
【委員】 結局、健康問題・精神疾患から見たときには、インターネット・ゲーム依存をいかに解決するのかというのがメインに置かれるのではなく、ゲームやインターネットの中で誰かとつながる以外のつながり方が持てない状況に置かれてしまっていることをまず解決するという順序。逆に言うと、8章と少し齟齬があるような状況の触れ方をする可能性もあるので、最終的なところで通読していただいて、その中でまた議論ができればと思う。
【委員】 精神疾患という観点から見るとそのようになると思うが、健康問題として捉えた場合には、やはりゲーム依存が生活リズムを乱し、視力、体力の低下ということで関わっている。このことは、現場として、養護教諭としても非常に問題だと捉えているので、もしそれを8章のほうで書かれるのであれば、そういったことも含めていただきたい。
【委員】 もし身体的健康ということで言うならば、小児科医会は、例えば整形外科的な、あるいは眼科的な点も考え、ゲームはやらせるべきではないと、スマホはもう渡すべきではないという話になる。あくまでも、健康問題とは言いつつも、精神的なウェルビーイングの話と思っていたけれども、もし養護教諭的なところまで全部含めた意味での健康問題であれば、分担するなどしないといけないと思うので、御検討いただきたい。
【委員】 現場においては、それも全て生徒指導と捉えているので発言させていただいた。全てが精神疾患となってしまうよりはそうしたものも健康問題の1つとして捉え、子供たちを健康で安全に過ごせるための1つの考え方として、お話しさせていただいた。
【委員】 例えば、家庭問題などでも、う歯が多発しているというケースであるとか、あるいは、痩せが進行しているケース、身なりがなかなか補正が保てていないケースをどう扱うかということは、生徒指導上も重要な課題だと思うけれども、そこまでを2節の中に含めると拡散してしまうので、もしそういった問題を扱うのだとしたら、何か扱い方を工夫しないといけない。
【主査】 学校内で生活リズムが崩れて昼夜逆転で不登校傾向が進んでいるというケース会議をすると、生徒指導系の先生は、どう生活を規律するかという話になり、養護教諭は、まさに健康問題全体として、スクールソーシャルワーカーは、その家庭の看護力等として、そこにスクールカウンセラーなども来るので、折り合いをつけながら対応するとなる。そういったときに、生徒指導提要を引っ張り出してもらって使っていただきたいということをイメージすると、専門職それぞれの視点から立体的に見えていくものにする必要がある。混乱すると言えば混乱するけれども、多職種連携というのは、そういう中で、それぞれのキーを出していくプロセスが必要。
そうしたときには、8章にしっかりと書いていただくと同時に、やはり健康問題あるいは精神のほうから光を当てたときにはこういう問題になるとリンクしていただけるような豊かな資料になればいいと思っている。執筆に入る手前の、やや書き込んだレジュメくらいのところで、もう一度すり合わせが要るだろう。
それから、例えば被虐待の子供は虫歯が多いということは歯科医師会からも統計が出されているが、虫歯がたくさんある人に対して、学校が、それを直しなさいと言っても全く放ったらかしであれば、医療ネグレクトという話になり、そもそも虫歯がたくさんあるということ自体が、背景の家庭問題を反映している可能性があるという話にもなる。では、家庭で書くかというと、虫歯だけの話ならそちらはおかしいので、この健康問題に入れるのかというと、健康問題と言ったときに、やや精神のほうに振っているとなると、ここには落ち着きが悪いという話になる。精神以外の広い意味での健康問題で生徒指導に関わる基礎知識的なものは、この中に全部書くことは無理だと思うけれども、リンクさせるくらいのことでは入れたほうがいいと思う。
【委員】 平成29年3月に、文部科学省から、「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援~養護教諭の役割を中心として~」という冊子が出されている。これは養護教員を中心にはしているが、管理職から担任、それからスクールカウンセラー等々、全ての教職員の役割分担や連携の仕方が全部示されている。そういった冊子にリンクされるといいと思う。
【委員】 今の議論の中で、健康という切り口の問題と、それから、精神、心の健康とを2章の中で全部網羅するのは、内容が拡散してしまう。
第2節は、心の健康、精神という扱いの中だと、メンタルヘルスの問題や心の健康問題を生徒指導の中で意識していくものと思っていて、健康問題全般になると、生活管理や生活習慣といった要素が入る。2節は健康問題だけれど、精神や心の健康にシフトしたところをトピックス的に取り上げ、健康全般は家庭にも入るし、1部のほうでうまく整理できるといいと思う。
【主査】 2節は、心の健康と精神疾患等に特化したほうが、しっかりお書きいただけると思う。それから、校内体制を意識したときに、養護教諭が担う生徒指導、教育相談的な役割も非常に大きいので、特に投薬管理や学校保健安全法上指摘されているような項目について、チームとしてある程度意識しておく必要があるものについても、そちらでまとめて記述したほうがいいので、一旦分離する方向で考えたい。
【委員】 その方向で私もいいと思う。特に今、資料のリストカット等からの部分に関しては、第5章の自死のところでも扱う。性の問題に関しては、第9章でも扱っていく。ゲーム依存に関しては、先ほど説明があったように、第8章のインターネット関係のところで話し、飲酒、薬物に関しては第3章の少年非行で含めるので、この辺に関して、ここで広げて扱う必要はないと思う。
【主査】 続いて3節のほうに移らせていただく。家庭的背景としては、機能不全、それから貧困も含めた保護者、家庭支援など。それから、要保護児童、要支援児童、特定妊婦等について入るか。また、貧困、ひとり親支援、就学援助制度、それから無保険の場合、これもさっきの健康などのところに入るかもしれない。内科や歯科系の疾患と、それを受診・治療しない場合も健康とも絡む。そしてヤングケアラー。さらに、保護者の精神的課題。外国ルーツの児童生徒。社会的養護下で育つ子供、これは里親とか児童福祉施設関連。
それから、同性カップル、ひとり親、身体、精神、知的障害などがある親、祖父母や親戚の過干渉、DV、虐待、それから無職、貧困、生活保護家庭、家族の自死・事故死、ネグレクト、ゴミ屋敷、アルコール、薬物、性依存の親、ステップファミリー。
多様な項目を挙げていただいていた。セレクトが必要になると思うけれども、この部分に関わってコメントをいただきたい。
【委員】 この家庭的背景のところは、かなり広がってしまい、整理しないとかなり難しいところ。
まず先生が気づき、外部の機関とどう連携をしていくのかに焦点を当てていくような形になるので、例えば、受診・治療させないような場合は、虐待のところに入り、貧困等の問題に関しても、ネグレクトというところの線引きもある。
【主査】 最初に、ヤングケアラーの話をトピック的に扱うか。ヤングケアラーというのを因数分解的にばらしてみると、虐待水準のものから、要保護児童、要支援児童、そして、むしろけなげな、そして本人にさほど悪影響がないと思われるケースまで、分布が激しい構図だろう。法的なものがないということもさることながら、その現象を仮に法律的に整理するにしても、どこに落とし込むのか悩ましい。
【委員】 要保護児童に関しては必要かもしれないが、家庭的背景では、提要には扱っていない貧困問題は必要かと。あとは、ひとり親家庭。
【主査】 例えば、虐待なども未然防止という言い方がされるが、虐待の未然防止がまさに要支援児童、特定妊婦である。これは要対協の対象ケースでもあり、学校にも情報提供努力義務が法的に課せられていることを書いておく必要があるけれども、それは虐待の章の中で落とし込むか、最後のところで置くか、また全体立てつけで議論していただいたらいいかと。
次回の親会議までのところで、立てつけをどうするかというところでピックアップしておきたいのが、この一群である。特に要支援児童系、児童福祉法21条の10の5に関わる情報提供枠組み。これは平成28年に新設されている条文で、前の提要のときには当然制度としてなかった。
もう1つが、貧困というのは、貧困対策推進法がその後できたということで、触れる必要はあるかと。
それから、社会的養護について、福祉の側で言えば、社会的ビジョンを含めてトレンドなので、入れて当然ではあるが、教育の世界では、非常に困難を抱えた子供たちが施設へ入ってきて地域の学校に通うとなると、学校との連携が悪い場合、迷惑施設的な扱いになってしまうような事例もある。
児童自立支援施設の中の学校というのが全国に約55校あるけれども、子供たち全般を視野に入れたときに、先生方の理解として、家族との分離、トラウマ、あるいは施設に入った子供たちへのまなざし等、最低限知っておいてもらいたいと思っている。
これは最後のところを全部入れるというのは想定していなくて、取捨選択はするつもり。
【オブザーバー】 家庭的背景というところで、この1節、2節、3節の並びで家庭的背景と来ると、ぱっと見て、発達に関する課題と、精神疾患や健康問題のある子供たちの家庭的背景というふうに取られかねないのではないか。あくまで1節、2節、3節が、積極的生徒指導に多くの学校で関わるトピックという考え方でいくならば、家庭的背景というよりも、特に積極的な生徒指導として多くの学校で求められる家庭的な課題といった形で特化したほうがよいのではないか。
【主査】 現場でどう使われるかというところでいうと、第2部のほうはインデックスとして見るという感覚はあるけれども、10章という中でまとめている中では、大きな売りだろう。ただ一方で、第2部としては、先生方が対応まで含めて読むことがあり得るので、書きぶりのところでは悩ましい。
【委員】 家庭のところに書かれているところは全部重要だが、知的な部分であるなど、幾つかの分け方ができると思いつつ、SC、SSWのサイドからすると、いろいろ専門的な資料がたくさんある。学校の先生が、そういった関係機関とつながりながらやらなければいけない3節だと思っていて、初めて教員になった者にとっても手に取って参考になるレベルから考えると、基本的な知識や現状把握といったピックアップが要る。家族的な背景があるので、家族と対応するための基本が示されて、関係機関との連携は必須で不可欠である。また、福祉制度、ほとんどサービスのことは御存じない先生もいるので、そういった家庭の子供については、こういったサービスが受けられるという、制度を利用していくことが大事という押さえ方ではどうだろうか。3節についてはボリュームがあるので、整理の仕方を工夫したほうがいい。
【主査】 例えば、制度の骨格で分けると言っても、柱は四、五本立つ。市町村児相型のところや経済的な関係で、子供の貧困との関係で、それから最近だと、多層的支援などという文科省のほうからも通知等が出ている。今までにないような枠組みや、特に高校を意識したときの出口としての自立支援的なこと、子供・若者育成支援。しっかりアセスメントして、課題の所在が分かったら、学校内の専門職間で協働すると同時に、関係機関へつなぐというアウトプットを強調していくと思っている。
【委員】 「家庭的背景」と言ったときの、「背景」という言葉が何をイメージさせるかというときに、何か問題があって、その問題の背景には家庭的な問題があるというのではなく、児童生徒の暮らしの背後には、様々な家庭、背景があるという意味だと思うけれども、取りようによっては、問題の背景に家庭があると結びつけてしまうような表現に聞こえる。
それから、課題と言われると、今度は解決しなければいけないと見えるので、ニュートラルに書くならば、「家庭や生活の状況」というように、「背景」という言葉を使わないほうが、むしろ幅を広げられると思う。
【オブザーバー】 今の第3節の表記の仕方については、私も賛成。
学校現場でということを考えると、今、世の中でいろいろ使われている言葉や諸問題を、学校が外部から指摘をされ、あるいは保護者から相談を受けるといったときに、そのことを知らないと言うことはまずい。この提要に広く浅くで良いので必要なことが網羅されていることは、学校や先生方としてはありがたいと思う。
【主査】 生徒指導提要の索引は非常に使えるということと、大学で教材に使うときも、最低限ここからここまでの用語は把握しなさいということがあるので、そういう意味でのスタンダードの意味はあると思う。一方で、定義が定まっていないものをどう扱っていくか。
やはり法制度も含めて基本骨格がかなりクリアになっているもの、あるいは、さっきの社会的養育や社会的養護などという深刻なケースに関しては、その概念を知っておいてもらわないと、ケース会議その他が成立しない。
それから、昨今の社会状況を反映してどう考えるか。その辺は整理していきたいと思う。
先ほどの名称については、「家庭状況」だけでいいか。
【委員】 第3節に入っている要素の中で、例えば、かなり学校や教員がサポートできる、支援に介入ができるようなものと、本当に外とつながっていかないと、専門的な機関のサポートを仰がなければいけないものというもので、仮に分けられるとすると、10章の1に、発達と、心の健康と、精神と、家庭的な部分での何か課題がある部分を扱っていき、11章に、家庭の状況、生活状況のまとまりとして挙げることはできないだろうか。3節に全部当てはめ込むよりは、3節で少し整理をして、それ以外のものは、全体的にもう1つのくくりで整理できないか。
【主査】 イメージとしては、先生方が何らか支援、介入できるとか、あるいは他機関のほうへ能動的につなげられるというようなものをここに残し、やや家庭全体への解説的な部分というのは外そうというお考えか。1部のほうで、それに関するものをどこまで書けるかということも要調整のように思うので、現状のようなところを意識して考えておきたい。
【オブザーバー】 例えば、実際に子供たちが学校で何らかのトラブルを起こしたときに、従来は、その子供が悪いという話であったのが、そうではなくて、何か理由があるのではないか、ここに発達上の課題等があるのではないのかということを知っているか知らないかは非常に大きく、そういうところを理解するための最低限の知識が必要であるというところまでは共通の認識だと思う。
そのときに、そういう背景となった要因に対する「介入」や「支援」という言い方をされている部分をどこまで書くのか。その支援をすべきで、支援の在り方というところまで、提要で書く必要があるのか。そこはなくていいのではないか、あるいは、そういう支援、介入に関して必要な場合には、リンクに丸投げぐらいで、そこまで立ち入らなくていいのではないかと思っていて、あえて11章を立ち上げる以前に、そこまで書かなくていいと思っている。
専門家的な立場からすると、そこまで書いておいてほしい、そこまでも先生たちに分かってほしいという思いがあるとは思うけれども、それを全部入れていくと、本当に膨大な話になってしまう。本来、学校の先生が子供や子供の起こす問題を見たときに、あるいは、その子供の起こす問題を未然に防ぐために、こういう知識がないと無用なトラブルが起きてしまうまでを提要では書くのではないかと思って聞いていた。
【主査】 用語の使い方でいうと、少なくとも様々な手引きに出てくる、例えば市町村に通報しなさいとか、警察と相談しなさい等、少なくともそれをどこかの機関が発動できるようなところへの適切な、個人情報のことも意識しながらつなぐというそのレベル。
一方で、家庭訪問というのをどの水準で行うかは地域差が極端にあると認識しているので、この辺り、それぞれの項目ごとに、どう整理しておくかということは示す必要がある。実はソーシャルワークの世界だと、面接することも含めて介入ということになるので、その辺りの言葉遣いについて、また調整させていただきたい。
【委員】 例えば虐待で児童相談所につなぐ、それで児童相談所でどんな支援が行われているのか、知識として必要で、そこで支援が行われ始めてからも学校の先生は関わり続けるので、どんなことが支援先で行われているのか知りたいことだと思う。例えば注釈のような形でついているのか、あるいはリンクをどこかに張ることによってその情報が得られるのか、何らかの形で得られるようにしていただけたらと思う。
【主査】 虐待に関して言えば、手引き、あるいは学校現場における教職員の虐待研修教材などが出ていて、児相その他の権限等についても詳細に書いてあるので、リンクを張りつつ、ミニマムなところだけ指摘させていただくという全体のイメージでいいかと。
その他のところ、1つはひきこもりについて。それから、不登校以外の長期欠席について。不登校が多様化していて、長期欠席と不登校の関係性が、平成4年にニュータイプとしての不登校を指摘した時期から、かなり変化している。それから、様々な被害者になった人への対応。また、デートDVに関して、どこかには入れたいけれども、置きどころの話。
同じように、10章で扱うというよりはほかへ振る可能性が高いものとして、子供の理解とアセスメント、LGBTQ、それから安否確認ができない場合の対応。それから、子供への理解・配慮、生育歴などの個人情報の扱い。18歳超えの生徒。特に高校3年生とか、それから夜間中学校などの問題が出てくると、児童はいないけれども、18歳以上の生徒ということが発生し得るので、ここへの特段の配慮。児童福祉法、それから虐待防止法の適用が外れるということ、少年法改正に伴う特定少年の扱い、それから、重層的支援体制ということが最近厚労省のほうから言われていて、要保護児童対策地域協議会はもともとあるけれども、子供・若者育成支援というような新たな支援システムが構築されている。市区町村の子ども家庭総合支援拠点と言われるワンストップ型の支援システムが、法律上も置かれた。家庭並びにコミュニティにおける支援体制という、新しいものが上がってきている。
【委員】 ひきこもりは精神医学的背景というのはばらばらで、少し触れるぐらいでしか第2節のところでは難しいと思う。
被害者への対応というところでは、サイコロジカル・ファーストエイドという考え方があるが、そういうトラウマに遭遇する可能性のある全ての人々が身につけるものというレベルの問題として抽出されている。児童生徒が何かに遭ったときに最初に対応するのは、恐らく担任の先生や養護教員の先生という事情があり、これについては、やはり2節の中で触れておく必要がある。
【主査】 似た問題として、フォレンジック・インタビューという被害を受けた人へのヒアリングの仕方の基礎編で、聞き過ぎないというようなことも、今はやっと児童相談所に広がって、一部学校の先生が研修をやっている。10年のスパンで考えると、基礎基本というところはある。
【オブザーバー】 不登校以外の長期欠席というところで、第7章に「不登校」があり、問題行動等調査でも、今、小見出し「長期欠席」と使っているので、「長期欠席」にして、その中で不登校や経済的理由や病気などを扱うということも思った。
【主査】 学校に来ていない子供たち、そして不登校で切り出したときにという問題は1つの今日的課題でもあるので、それはまた不登校あるいはそこの部分で、また、ひきこもりの部分も、不登校の延長としてのひきこもりという視点も発生すると思うので、幾つかのところに分散せざるを得ないというよりは、それぞれのところで当然触れることになる。
【委員】 第2節のところで、「健康問題」から「心」というふうに変えようかというような話が出たが、心身を切り離すという感覚がどうなのか。保健室には、不定愁訴といって、小学生などは、心の問題がうまく表現できないで体に出てくる。心と最初から限定してしまうのはどうかと疑問に思う。例えば、ここを「健康問題」と残しておいて、どちらかといえば心のほうに特化し、関連したものとしておいたほうがいいのではないか。
【主査】 「心の健康・精神疾患」にするか、あるいは「精神疾患等」にするかというのは、御相談させていただきたいと思うが、健康問題はかなり裾野が広くなるので、提要として考えたときに、どういうものが必要か、そこにリンク先としてこういう資料があるということも、教えていただけたらありがたい。
ただ「疾患」と言うよりも、もうちょっと裾野の広いいろいろな課題もあるだろうということで、そこがむしろ先にあって、多分「心の健康」という用語に落ち着くという話になったかと思うので、節構造もちょっと動く可能性があり、御相談させていただきたい。
【委員】 「心の健康」という中に体の症状が出ているものも含めて、心身一体での心ということだと私は理解している。ただ、表題についてはお任せする。
ほかのところについて、「課題と対応」と書いてあり、ここは「課題と対応」というのは、精神疾患に対応するのは学校ではないということがあるけれども、例えば、心の健康、精神疾患に、精神疾患と学校でできる対応としても構わないかと。
【主査】 そもそも生徒指導提要なので、前提として、対応と言っても、医療機関や、あるいは心理専門機関がやるということではなくて、むしろそこにつなぐまで。つないだらどういうことがあるのか示したらいいと思うが、一方で、ページ数は抑圧しなければならず、どの水準でお示しできるか具体に詰めていきたい。
【委員】 家庭的背景のところで一番困るのは、家庭へのアクセス方法、どうやって家庭の状況自体を知るかということ。例えば、家庭教育支援チームの活用などアウトリーチ型の支援も入れてもらうといいと思う。保護者が会えないけれども何かが起きているという状況で、どうやってアクセスするかという訪問指導、訪問支援も書いていただけないか。もちろん第1部のほうでも、家庭教育支援チームの活用やそれ以外の病院等の地域資源を結びつけて、何とかその家庭の孤立を解決する努力が必要という記載は要る。アウトリーチ型の支援にどうつなぐか、アウトリーチ型になったときに、一体どういった資源を使えるか書くことが重要。
【主査】 一番強いのは児童相談所の臨検・捜索で、あるいは29条の立入調査という手続もある。悩ましいのは、学校としては、善意で保護者とアクセスしたいけれども、もう言外に拒否されているという状況。それに対してアウトリーチサービスと言って行う家庭訪問は、決して状況を好転はさせない。
これについては令和元年10月に国のほうから出していただいた不登校に関する通知の家庭訪問の項では上手にまとめていただいている。要するに、プライバシーに配慮し、意図と目的がはっきりして、効果検証をしなさいということに尽きる。家庭へのアプローチの方法は、法的なことも含めて数通りあり、考えつく資源と手続に触れられたらいいかと。
また皆さんにメールしておきたいと思うので、御意見等があれば追加でいただきたい。
【事務局】 ワーキングの御議論については、本日の第3回の会で、ある程度おまとめいただいた。主査とも打合せしながら、また言い足りなかったところも集約しながら、この10章部分についての構成等について事務局と主査の相談の上で、まとめるための照会等々もさせていただきたい。
―― 了 ――

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