多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導に関するワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年10月8日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 生徒指導上の課題(家庭的背景)について
  2. 第1回会議における主なご意見
  3. その他

4.出席者

委員

浅野委員,岡田委員,笹森委員,八並委員


ヒアリング協力者

野田主査,奥村委員,藤田委員
 

オブザーバー

小野オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー  
 

文部科学省

鈴木生徒指導室長
 

5.議事要旨

【主査】 今日は大きな3本柱の課題のうち、3つ目の家庭背景を考える。家庭や保護者に関わる話になると、極めて膨大となる。ワーキンググループにおいては、文章化して親会議に報告するということが目標であり、レジュメのような形で幾つかの課題提示をさせていただき、御議論いただきたい。
まず私からイントロの話をして、その後、改めて現行の生徒指導提要において家庭や保護者への支援についてどのように言及されているのか、藤田委員に御説明いただく。その後、特に支援介入の困難な子供とその家族に関わって一つ独立した法体系を持っている要保護児童等を含む要保護児童対策地域協議会を中心として、奥村委員から御説明いただく。
私のほうで申し上げたいのは、1つは、まずそもそも保護者とどのような関係や協力体制を取るかという基本姿勢である。
それから、保護者との連携の前提として、子供の生活基盤としての家庭をどう捉えるか。不登校を例に取れば、ここに課題があるという先生の反応は非常に多いが、その課題をどう見立て、理解していくのか。この問題については、子どもの貧困対策推進法の制定や、ヤングケアラー、虐待や要支援児童・要保護児童に関する法制度も変わっている。こうしたことを踏まえ、基盤としての家庭生活を検討していく。
その中でも具体的に困難を抱えている子供がいた場合に、その保護者とどのように関わるか。積極的に関わるか、むしろ情報を提供してはいけないといったかかわりがよいか非常に難しいかじ取りを必要とする。また、必ず関係機関との連携を求められる分野でもあり、手厚く示す必要があると思う。
また、予防的な指導を強調してきた経過との関係で、本人に問題が出る前の段階で、学校が何をしなければならないか、あるいは何に気づいてどう動かなければならないか、こうした点も課題である。
さらに、困難を抱えている子供の家庭とどのように連携するか、例えば相談姿勢である等、支援や助言というようなことをどのように考えていくか。
特に家庭訪問やアウトリーチについても、令和元年10月の不登校通知では、プライバシーを保護しつつ、意図と目的を明確にし、効果を検証することとしている。しかし、このような視点がほとんどないまま、とにかく訪問するという現場実践もある。こうした制度を、不登校に限らず、しっかりと周知していくことも、効果のある支援であると同時に、保護者とのトラブルを必要以上に深刻化させないという意味でも重要である。
それから、支援連携の困難なケースに関してどう対応するか。学校のスタッフが悩み疲弊した結果、子供にとって適切ではない状況が発生する。チーム体制、あるいはSC・SSWの活用もあり、それから他機関との連携が重要。
次に、藤田委員に、現行の生徒指導提要をもう一度読み込んでいただき、どのような点の指摘があるかまとめていただいく。
【藤田委員】 現行の生徒指導提要に見る家庭や保護者の対応について。生徒指導提要では、学校との相互関係の大切さや各種の問題、非行、虐待、不登校などが起こった場合の家庭との連携や、問題の伝え方、情報提供の仕方、情報収集の仕方、ラポールの築き方、聞き取り時における配慮の必要性、保護者を貴重な連携先と考えて学校がよい関係を築いていくこと、日頃から良い関係性を保つ必要性について述べられていた。また、基本的生活習慣など、家庭生活でどのように子供を健全に育成していくかという点についても言及されている。
そして、生徒指導が必要な問題行動が学校で起こった場合に、どのように保護者に事実を説明し、指導や支援などを納得を促し、協力を要請し、どのように解決に導いていくかについての記載もある。また、保護者と協働し、適切な対応について一緒に考えていく重要性についても記載があった。
さらに、近年、家庭環境、家族関係が変化しているため、そのような家族への理解や孤立を防ぐための方策や、過干渉や過保護になってしまう親にどのように関わったらいいか、また、地域を含む広い範囲で子供たちの安全や安心を守っていく、家庭や学校の機能が健全に果たされる環境整備についても述べられていた。
次に、今後の提要改訂に当たり、必要と考える点について述べさせていただく。
児童生徒を中心として、学校現場で心や体の健全な育成を促進するために必要な指導や支援について記載があったが、そのためには、家庭力の健全な強化、学校との連携という点で、学校が果たす役割についても整理が必要と考える。
そして、子供たちが置かれている環境や家庭の背景を理解するため、社会的養護の中で育っている子供たちについての記述も必要である。特に児童養護施設や児童自立支援施設、心理治療施設心理治療施設、や母子生活支援施設、また、里親のもとで育つ子供たちについて、どのような環境で生活しているのかといった施設名称や概要の理解。また、特に施設によっては自宅から遠方の地で、アイデンティティーにも関係する本名ではなく、仮の名前で生活していることへの理解や配慮も必要であり、個人情報保護や安全という点で、学校が共通理解やプライバシー保護などの徹底について知識基盤が必要である。
また、トラウマや虐待を受けてきた子供もいるため、聞き取りや言葉がけなどにおいての配慮も必要である。多様な家庭環境で育つ子供たちとしては、親が身体や精神や知的に障害がある家庭で育つ子供もおり、ひとり親家庭やステップファミリー、外国ルーツの親、同性カップルの家庭で育つ子供もいる。多様な家庭で育つ子供たちへの知識や対応、そして貧困や生活保護、ヤングケアラーなどの理解や対応が必要である。
まずは言葉の理解、そして子供たちの置かれている生活環境に対する当事者感覚、子どもがどのような気持ちで生活しているのかに教員が寄り添うことも大切だが、一方で、家庭環境に巻き込まれ過ぎず、適切な距離感で指導や支援をしていくこと、また日頃から関わることに加え、何かがあったときにしっかり関わる大切さ、個別や集団に対する指導・支援を行い学級集団、学校として子供たちの環境を育てるため短い心理予防教育を積み重ねる必要性、また、校内で保護者を信頼し、リスペクトする風土を育てていくことが重要。
さらに、チーム対応として情報共有・連携し、また、必要な時には外部の力を借りる体制を整えていく道筋が見えるような提要になれば、実際的なものになると考える。
最近当人を入れたケース会議を積極的に校内で推し進めている。短い30分だけのものとして、保護者、当人、そして担任、学年主任、コーディネーターも入り、「応援会議」と名付けている。小さい取組ではあるが、本人が望む支援を具体的にどのようにすればよいのかについてヒントを与える複合的な対策、対応として有効である。
【主査】 引き続き、奥村委員より、要保護児童対策地域協議会の対象となる、学校として動き方に法的配慮を必要とする領域について、報告をお願いしたい。
【奥村委員】 要保護児童、これは非行・児童虐待も含まれるが、要支援児童、特定妊婦への福祉の支援ということで報告させていただく。
まず、要保護児童対策地域協議会、通称要対協と呼ばれるが、この協議会についての成り立ちについて説明する。平成16年に児童福祉法が改正され、複数の機関が連携して支援を進める場合には、連携の中核となるところが必要であり、また、関係機関相互の連携や役割分担の調整を行う機関を定めること、そして関係機関における情報共有と、その会議においての個人情報保護の要請との関係を法的に明確にしておく必要があるため、この協議会ができた。具体的には、児童福祉法第25条の2の規定により、要保護児童の適切な保護、また、要保護児童、特定妊婦への適切な支援を図るために地方公共団体に要保護児童対策地域協議会が設置されるとされている。
関係機関、団体と連携してネットワークを構築することで、支援対象の児童生徒を早期に発見して適切な保護や支援を図って、児童虐待についての防止を図ることが目的とされている。
関係機関等が連携し、共通認識の下に役割分担をしながら、要保護児童、要支援児童への支援体制を構築して、そして適切な支援を図るために必要な情報交換、また、支援の内容に関する協議を行う場となっている。そして、この協議会については守秘義務が課せられているということも法的に決まっている。
この協議会の対象となる児童は、まず要保護児童である。要保護児童の定義としては、保護者がいない児童、または保護者に監護させることが不適切であると認められる児童ということで、非行のお子さんも含まれている。例えば保護者が虐待をしている児童、保護者から放任されている児童、必要な監護を受けることができない児童、そして不良行為や犯罪行為、触法行為、またはそれらをなすおそれのある児童である。
要支援児童については、保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童ということで、今後虐待につながるリスクを減らすために支援が必要な児童を要支援児童と呼んでいる。
そして、特定妊婦については、出産後の養育について出産前に支援を行うことが特に必要と認められる妊婦ということで、若年出産や、予期せぬ妊娠、障害や疾病、妊婦検診未受診、経済的不安、または出産してからも支援者がいない、不在といった例が挙げられる。
要保護児童対策地域協議会の構成員については、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関する関連する職務に従事する者、その他の関係者であり、保育園、幼稚園、学校、学童保育所、福祉事務所、民生児童委員、保健所、医師会、警察、また、司法の場、児童相談所もなる。要保護児童対策地域協議会の構成員は、極めて多くの社会の団体の方が関係者となっている。そして、今は、民間団体やNPO、ボランティア団体の方にも構成員になっていただいている。
次に、協議会の運営体制について。これは通常、3層構造と呼ばれている。
まず親会議の代表者会議があり、その後の実務者会議が円滑に運営されるための環境整備を目的として、年に一、二回開催され、多くは管理職の方が参加している。
次に、実務者会議がある。この会議は実務に実際に当たっている方によって構成され、定期的な情報交換、その後の個別ケース検討会議で課題となった点のさらなる検討を行い、定期的に全てのケースについて状況を把握し、主担当機関の確認や方針の見直しを実施している。また、要保護児童対策を推進するための啓発活動を行っている場でもある。
最後に、個別ケース検討会議があり、実際に対応する児童についての個別の会議として、直接会議をしている担当者や今後関わる可能性のある関係機関等の担当者により、具体的な支援の内容の検討を行うもので、適時開催をされている。この場では、状況の把握、問題点の確認や援助方針の確立、役割分担の決定、認識の共有、主担当機関と主たる援助者を決定する。実際の援助、支援体制、計画の検討を行う場となっている。
要保護児童対策地域協議会の利点ということで8点挙げている。
この中でも特に8、それぞれの機関の責任、限界や大変さを分かち合うことができる場であること。このような会議の場では、お互いを責め合ってしまうこともあるが、むしろ、お互いにできること、やれることを分かち合うことがとても大切である。
令和2年1月23日に、学校現場における虐待防止に関する研修教材という冊子がある。また、この中に研修教材用語集というのがあり、いわゆる児童虐待の子供に関する虐待関連の用語が載っている。
特に在宅支援の中で見守りというような言葉がよく使われるが、それが、誰が、いつ、何を、どのようにするのかということを決めなければならない。児童福祉司の新任の福祉司に対しても、研修では、具体的に何をするのかということを決めるよう、伝えている。
同様に、連携という言葉が多く使われるが、具体的に何をどのように連携するのかまで踏み込まないと、相互理解がうまくいかないのではと思うので、このようなことも提要に書かれると良いと思う。
【主査】 要保護児童対策地域協議会を法制度としてつくるときに、個人情報保護法や保護条例が施行され出した時期であった。子供のためといっても関係機関が持っている情報をどこまで出していいのかということで、お互いに二の足を踏むような状況を回避するためにつくられたのが、要保護児童対策地域協議会である。
それから、例えば虐待とか要保護児童の非行系は全て児童相談所という法体系が昭和23年から続いていたが、それ以来、市町村も例えば虐待の通告先になる等、大きくシステムが変わっている。
ただし、学校現場の管理職の先生方がかつて生徒指導その他で頑張ってきた時代、何かあったときにはとにかく児童相談所に相談するといった時代で、その後、相談先に市町村が入り、平成28年には、むしろ市町村のほうが先で、児童相談所が高度な専門性をもってバックアップするといった構造に変わっている。しかし、学校のほうには十分伝わっておらず、いまだに何かあると児童相談所ということもある。ところが、児童相談所のほうは守備範囲が狭まっているわけではないが、軽微な事案まで相談するなという感覚がないわけでもなく、現場的にはあつれきも生じているかと思う。
ただし、毎年のように法やガイドラインが変わっており、こうした動きを先生が十分に理解しなさいというのは悩ましい。検索したら見られるようにはしなければならないが、同時に、スクールソーシャルワーカーや要保護児童対策地域協議会の事務局に問い合せたときに、的確に回答してくれるということも重要と思う。
児童相談所、市町村、要保護児童対策地域協議会という構造を明確に学校が認識して、上手に子供を守るためにこうした機関を使える体制が大切だが、一方で、一次予防、二次予防、三次予防を家庭との関係ではどう置き換えるのか、難問である。委員の方々、質問や日頃から思っていること、あるいは提要に反映させるべきと思われる点について何かあればどうぞ。
【委員】 学校現場を見ていて特に強調していただきたいのは、こういう家庭対応というのは、学校の先生の一人一人のカウンセリングマインドの力量が非常に出やすく、また同時に、心理的にも非常に難しい対応の部分であるということ。
例えば家庭訪問にしても、家族が連携に非常に消極的である場合には、担任の先生が1人で、自分が第一線に立たされているという状況の中で、打開が見えず、極端なことをしてしまうということがあると思う。また、担任の先生が対応できない場合には、管理職が預かるような形で第一線に立っているというような形になる。
家庭対応は非常に難しいため、それを支える校内の連携が非常に大切で、その中で要保護児童対策地域協議会といったさまざまなシステムがあるとしても、誰がどのような役割をして、そして情報共有をして、チームとしてやっていくのかという部分をぜひ明確にし、強調していただきたい。
もう一つは、児童相談所への連絡は、ある程度システム化されると学校は対応できるけれども、しかしながら、学校がある程度家庭の状況をキャッチできているという状況でみなされてしまうと、全て学校側に対応を丸投げされてしまう印象を現場では持たれてしまっているケースが多いと思う。
前は児童相談所ワンストップであったのが、そうではないという状況になると、なおさらのこと、学校が孤立的に対応しないといけないような錯覚に陥ってしまうというケースも多いと思うので、常に連携がつながり続けている点を強調していただけるといいのではないかと思う。
【委員】 学校の組織的な対応というのは大事。子供がいて、学級担任等がいて、校内には生徒指導の担当主事がいる。さらに、外でも関係機関とつながっていく。提要が改訂されるにあたり、特定の生徒指導担当の教員だけでなく、全ての教員がそういう意識を持つという点がある。その中で、多くの教員が分かっていなければいけないことと、校内のキーパーソンの方が担う部分がある。また校外の関係機関とうまく連携をしていくということになると、教員の生徒指導に関する専門性については階層構造で考えていく必要がある。
それから、組織的な対応については、校内の組織と、要保護児童対策地域協議会における代表者、実務者と、あるいは個別の検討会議のおいても、学校の教員がつながり、また学校にそれがフィードバックされていけるということを考えると、特定の1人、2人というよりは、生徒指導の担当がチームとして動いていくことが大事だと思う。
先生方一人一人の意識と、一人一人が抱え込まないというところの両方を進めて行かなければ、生徒指導の体制はつくられていかないと思う。
【主査】 ベースの先生が分かっていなければならないこと、特別支援教育コーディネーター含むハイレベルの方がそれを下支えできるようにわかっていなければならないことという、組織的な問題。全体に共通する部分なので、この点を各論のところで示すことと、それから総論に記載する部分とが出てくると思う。
【委員】 もう1点、先ほどの要保護児童対策地域協議会に関して、地域の中でのシステムとして構築していくことが大事だと思うが、学校はどういう形で役割を担って動いているのか。また、別な視点から見ると、学校がなかなかうまく要保護児童対策地域協議会の中で連携の中心として動いていきにくい課題があるか教えていただきたい。
【奥村委員】 要保護児童対策地域協議会を開く場としては、特に中学校、小学校の場合には学校の校長室や会議室を借りることがあり、学校現場の児童生徒が日々生活している場所となる。うまく機能しているところは、管理職が問題意識を持ち、自分が中心になって対応していこうというものがある。
【主査】 課題があるパターンとしては、学校の先生の中には他機関連携の会議に慣れていない管理職の方もおり、学校と関係機関が対立関係となってしまう事例もある。したがって、チーム学校として学校の中で問題の整理を行うことが極めて重要である。また、管理職と生徒指導担当と担任とでそれぞれの思いが異なっており、それを関係機関会議で話してしまうこともある。当然、関係者はどうしたらいいのか分からないという話になってしまうので、校内でしっかりとその点を詰めているかということが重要である。
それから、要保護児童対策地域協議会自体は学校が中心になるものではないが、一方で、学校が支援の中心となるケースは非常に多い。要保護児童対策地域協議会下であれば、個人情報のことを気にせずに他機関連携の情報共有が可能であるため、その連絡の集約は、例えば、小学校の教頭先生といった、ほかの職種より席にいることが比較的多い職種に担っていただくこともある。それはまさに、個別ケース検討会議の中で連携し、役割分担を確認すればよく、例えば弟の保育園に行っている子供のことでも、場合によっては小学校に引き受けてもらうこともあると思う。要保護児童対策地域協議会と個別ケース検討会議のレベルが高い運営がされると、実に機能的に動ける。
これからの要保護児童対策地域協議会の使い方やその機能を、全職員でないにしても、ある程度はっきりとスキルも含めて伝えていくということが重要である。それから、現在、要保護児童対策地域協議会の管理ケースになっているものについては、原則1か月に1回、保育園、幼稚園、学校と要保護児童対策地域協議会とは情報共有することになっているが、非常に形骸化しているところがある。例えば深刻にネグレクトで時々暴力を振るわれている子は、全然状態が変わっていないので、変化なしとだけ書かれ、要保護児童対策地域協議会によっては、変化なしが4か月続いたらそのケースは終わってしまうというルールをつくっているところがあって、変化なしが4回あったということで、学校の知らないうちにケースが閉じているというようなことも実例としてある。
【オブザーバー】 1点は保護者との連携に関して、学校現場において多いケースが、学校は困っているが親御さんは困っていない、あるいはその逆といった、双方での認識にずれがある場合の対処である。
このような、学校が対応に苦慮することの多いケースについて、例えば野田主査の資料で言えば、「3-3 支援・連携の困難な場合の対応」というところで、例を出して盛り込んでいけるといいと思う。特に非行傾向や発達に課題がある児童生徒において、学校ではそういう様子が見えるが家庭では見えないため、それを保護者へ伝えてもなかなか理解いただけないということがある。そういったときに、担任の先生や学校は結構困っているが様子を見ようという言葉が使われて先延ばしになっていき、手後れになるというケースも多い。
2点目が、要保護児童対策地域協議会が形骸化しているという話があったが、その通りで、この会を開催することは、何か意味があるのか、といったことを会の終了後に管理職に言う生徒指導の担当もいると聞いている。学校現場の理解が足りないということももちろんあるが、その会自体が本当に形骸化していて、きちんと動いてないケースもある。組織が3層構造になっているのは非常にいいけれども、それぞれの層で何が行われるか、関係機関で共有されていないということが原因の1つと思う。したがって、提要を見れば、各層のそれぞれがどのような役割を持つ組織かが分かるといい。
その際、例えば奥村委員の資料でいうと、「適切な支援を図るために必要な情報の交換を行う」と書かれているが、この適切な支援を図るためにというのは、誰が適切な支援を図ると判断するのか曖昧であり、判断をする人によって、会議の場に出てくるべきケースが出てこないこともおきてくる。こういったことからも、各層の役割を記載する中に、支援の必要性の判断は、個人ではなくこの組織の中で行うと明記されることで、安心して学校は全ケースを出すことができるようになり、本来支援されるべきケースが見落とされることなく、個別ケース検討会議のほうに移行され、会自体の実効性も高まるのではないか。そのような流れまでを明確に記載しておく必要がある。
また、個人情報との絡みもあって非常にケースの出しにくさがある。しかし、要保護児童対策地域協議会の中では守秘義務が課せられているから、個人情報はフリーであるというところに関してははっきりと提要の中にも記載しておく必要がある。
最後に、連携をするというときに、前提としてこういうことが大事であるということを、提要の、連携の項目の最初の部分で確認しておく必要がある。
例えば、「福祉の言葉と教育の言葉の違い」を確認することや、各機関における優先順位の違いについての確認など、お互いの理解に関わることだったり、様子を見るというときには、具体的にそれぞれの機関は何をするといったところまでを確認するといった留意点などである。
【主査】 市町村への情報提供に関しては、個人情報のことは回避できるということが条文の中に明示されているので、制度として紹介しつつ、そのことを念押しする意味で、実情や制度を明確にする項目の中で指摘することは大事なことと思う。
【藤田委員】 先ほどの要保護児童対策地域協議会が中心として、学校が主体としてうまくいったパターンついて、付け加えさせていただく。
情報が一本化されていること、具体的にはコーディネーターなどのキーパーソンがおり、記録が蓄積・集約化されるとうまくいく。
また、ケース会議の開催時期が3ヶ月後、半年後など事前に展望できると支援目標が持ち易い。
さらに、保護者との良好な関係を築くことで、会議開催を事前事後に報告できるようになると、関係機関が連携し見守られているという安心感につながるケースがある。
課題としては、要対協ケース終結の根拠について関係機関の情報を持ち寄り、信頼関係に基づいた話し合いが重要になる。
【主査】 3層構造に関しては、各市町村の実務者会議には教育委員会の指導主事が入っている例が多い。市町村は、要保護児童対策地域協議会の調整機関の基幹職種は家庭相談員という嘱託でいいという厚生労働省の通知がある。昭和39年からある制度だが、人材も継続せず、また、自治体によって差がある。実務者会議には指導主事が入っており、代表者会議には、学校長や学校教育の担当課長が出席することが普通である。3層構造をしっかりと意識して、これは生徒指導提要だけに書くのがいいのかはあるが、そこに示すものは示していくということが重要と考えている。
【委員】 生徒指導提要では、家庭の問題に関しても、広範囲に扱うことは難しいと思う。生徒指導の中でも、要保護児童対策地域協議会で話題になっている虐待の問題、あるいは、少年非行の辺りに重点を置いて展開したほうがいい。
特に、虐待により子供たちが亡くなっていくことを防がなければならない。それから少年非行関係では、発達の問題は非常に大きいところもあり、子供たちが、個別最適な学びや関わりがあれば防げたかもしれない。
平成17年、内閣府で少年非行事例等に関する調査研究報告書を公表するときに、エスカレーション型と言われる少年非行を中心に、重大事件の実証的研究の中の事例をケーススタディーした。その中で、非行の非常に強い影響要因は何かみると、児童虐待、発達障害、有害環境、この3点を指摘している。
児童虐待あるいは発達障害も家庭とも関わってくる。この報告の後、様々な書物のなかで、少年非行はバックグラウンドに発達の課題を抱えていることもあるという指摘がなされた。過去においては、宇治少年院で発達障害の少年たちの新しい処遇プログラムも話題になった。
直近では、厚生労働省子ども家庭局あるいは厚生労働省社会援護局障害保健福祉部が令和2年1月に児童養護施設入所児童等調査を公表している。平成30年2月1日現在のデータを見てみると、児童養護施設あるいは児童自立支援施設の子供たちを調査した結果、児童養護施設で虐待を受けた児童生徒が66%いる。また、児童自立支援施設で65%いる。
児童生徒の問題行動の背景に、家庭での親子関係が大きく影響している。だから、教員から見たときに、この子は困った子だと思っても、子供自身はそれ以上に困っている。教員がどこまで家庭を見ることができるか。
虐待の場合は、家庭訪問してもシャットアウトされ、これ以上駄目と言われれば入れない。法改正で、もちろん警察の立会いで入り込めるが、そのような壁がある。
発達の課題では、例えば児童養護施設の子供たちがADHDやASDのケースが約9%いるというデータがある。児童自立支援施設は高くなって、ADHDで30%、ASDで25%となる。 広範囲に家庭の問題というよりも、虐待や少年非行を意識して、一番悲惨なケースをどうやって防ぐかということを考えた方がいいのではないか。
また大がかりな地域支援の前に、もう少し小回りの利く支援が必要ではないか。家庭教育支援チームがどの程度広がりがあり有効か、データはもっていない。しかし、教員のマンパワーは本当に限られ、また、働き方改革もあって、限られた教員のマンパワーの中で進めるのは大変である。
そうなると、地域の資源や地域のシステムを活用し、家庭教育支援チームを活用していくことが大切である。このような家庭は地域からも孤立してしまっている状況で、どのように学校がアクセスするのか、非常に難しい。アウトリーチ型の家庭教育支援チームを利用することも提言すべきと思う。
特別支援教育コーディネーターや教育相談コーディネーターがいるが、学校の中で、誰が外部機関との連携の実務を担うか、仕事を切り分けておかなければ、生徒指導主事担当に負担がかかり、大変なことになる。小中高で生徒指導体制も異なり、学校規模でも異なっているので、外部機関との連携役の生徒指導コーディネーターを誰が担うか、明確にすべき。教員の職階も階層化しており、例えば指導教諭や主幹教諭と生徒指導主事が連携した形でコーディネートをやっていくことも必要だと思う。
また、不登校でも切れ目のない支援と言われるが、これは、個人情報を小中高と譲り渡す、情報の継続性を持たせるということである。
そうなると、個人情報をどのように受け渡していくか。小から中、中から高、あるいは転校したときなどの情報共有の在り方も記載が必要だろうと思う。
GIGAスクールが始まっている。GIGAスクール下でいろいろな校務情報を蓄積するときに、生徒指導情報も仮に蓄積するとなれば、GIGAスクール下での生徒指導を想定したときの情報の管理や共有の仕方あるいは受渡し方も考えなければならない。
【主査】 非行問題や虐待は各論だが、それに対しての予防も視野に入れましょうという話になれば、母親が育児不安となり、あるいは子供が思うとおりに育ってくれないといった状況があった時点で、家庭に対してどのように対応すべきかについては、要保護や要支援というレベルでないところで相談システムを動かすことが必要になる。
その辺は各論に落としにくく、一方で、発達課題といったときに、発達障害だけで非行の話を説明するより、不適切養育や虐待的な要因が大きくかかわっている。例えば幼少期に身体的虐待を受けている子は、小学校の低学年で万引きし、また、家庭の金品持ち出しをする割合が5倍以上高い。小学校の校内暴力や児童自立支援施設に入所している小学生の数が増えてきている。
やはり初期の問題行動、特に非行というラベルが貼られる手前の問題行動を的確にキャッチアップする。ただ、各論の部分でどう考えるかといったとき、例えば虐待なら虐待、非行なら非行の予防といったときに、それはどの辺りで立てつけていくかという辺りは、調整がいる。
【委員】 少年事件においては、グレーゾーンレベルの発達の課題があり、親御さんとの間で十分な理解が得られない中で大人に対する信頼ができていない、そして地域、学校との人間関係も構築できなかったときに重大事件に結びついていると思う。
だから、総論のところで、そのことのつながり、家族とのつながりを持っておくということがどういう意味で大事なのか、しっかりと扱うことが大切と思う。
【委員】 スクールカウンセラーの専門性の担保の仕方とSSWの専門性の担保の仕方について。専門性といったときに、SSWのライセンス保持者は、当初は社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を持った人であると思うが、構成を見ると、例えば元校長先生といった方も多い。SSWの専門性といったときに、実態はどうか。SSWで社会福祉士や精神保健福祉士のライセンス保有者はどのくらいいるか。
【主査】 現在、社会福祉士で6割近くいっていると思う。もともと2005年に制度をつくったときに、当然ソーシャルワーカーなので、国家資格の社会福祉士、精神保健福祉士を第一番に、ちょうどスクールカウンセラーの臨床心理士のように挙げたかったが、福祉の専門職といっても、児童を専門にやっている人はほとんどいない。人材供給が難しいということから、教育と福祉の両方にブリッジできる何らかの経験を持った人を入れつつ、ソーシャルワークの資格を持っている人が入るといった要綱となっている。
その後、明確に定着していく中では、社会福祉士、精神保健福祉士を第一選択という形になり、それ以外の経験のある人もとなった。ただ、各地で、ソーシャルワークということ自体が心理に比べると動き方とか社会資源の使い方が多様なので、どんどん拡散しているというところをどういうふうに整理するか。
資格との関係でいうと、実は社会福祉士は、子ども家庭福祉の試験科目というか受験科目にもあるが、精神保健福祉士の場合には、児童福祉法体系を勉強しない。少なくとも今日の要保護児童対策地域協議会の話を含む内容ついては、勉強しなくても学ぶ機会はあり、SSWのスタンダードとしてそういうものは必要だということを、特に社会福祉士会は強調しているが、全員がそれを経由しているわけではないので、明確に示していくことは必要。
【委員】 例えばスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの場合、いじめ防止対策推進法をよく理解していないということは、十分あり得る。
少なくともスクールという冠がつく以上は、スクールカウンセラーであってもスクールソーシャルワーカーであっても、教育系の基本研修を受ける必要がある。それを校内研修で行うのか、それともいろいろな職能団体でやるのかは別としても、生徒指導関連の研修というのは必須と思う。
【主査】 臨床心理士会、都道府県の連絡協議会では、研修はそれぞれの職種にしていると思うが、カリキュラム的に安定しているか、あるいは質が担保できているかというところでいうと、生徒指導提要等で明確にされた部分を教材にしながら、どのように標準化していくかは、配慮がいる。
次に、資料2を見ていただき、遠慮なく御発言いただきたい。まず私から。要保護児童対策地域協議会でも、対立する最大理由は、やり方で調整しようとすることである。そうではなくて、その子はなぜそのような状態になっているのかという、アセスメントをしっかりすること。アセスメントは、所属機関によってぶれないもの。
このアセスメントは随所に重要事項として入れていく必要があり、それから、BPSモデルを積極的に推すという方向は、それでよろしいか。
というのは、発達でも精神医療でも、福祉のほうでもこのモデルが下敷きになっており、少年非行に関連しては、家庭裁判所の調査官の研修所がこれを進めていて、少年非行に関しての少年審判もBPSモデルを強調されていることがあるため、他機関連携にも使いやすいと思っている。
【委員】 現行の提要では、アセスメントという言葉に関して、コラムで臨床心理士の見立てという言葉で出ているに過ぎず、具体的にアセスメントというのはどのような手順でやるのか、ケース会議の持ち方、あるいはどのような角度から実態把握をやっていくのか明確でない。どのような援助仮説を導くのか、一連の流れや観点を出さないと、実務的には難しいと思う。
スクールソーシャルワーカー実践活動事例集を出したとき、アセスメントからプランニングという手順をしっかり示してきた。平成7年のスクールカウンセラーの導入時点の際、スクールカウンセラーは一体どういうことをやるのか明確ではなかった。だから、個人の見立てが重視されたと思うが、平成20年のときのスクールソーシャルワーカーが導入された際は、アセスメントというのはこういうもので、そこからプランニングしていくという手順があった。
今からの生徒指導というのは、チーム支援がベースになってくるので、児童生徒をその時点でどのくらい深く広く見て、援助仮説を立てて、援助チームを編成して、役割分担しながら動くか。やはり鍵はアセスメントと思う。
何のためにアセスメントをやり、どうやるのか。どのように実務的に運用していくかは、改訂版で明確にしたほうがいいと思う。
【主査】 疾病関連や発達のことも、実は虐待の影響による多動系の子も発達とみなされ、あるいは、その逆も起こりえて、かえってミスマッチとなるから、理念的に複眼的とか多面的ということにとどまらず、もう一歩踏み込んで、各論と全体でリードする部分と、見通しを持ちたいと思う。
【オブザーバー】 学校目線で言えば、アセスメントといったときに、最近は多くの先生方が個別支援のアセスメントとをイメージする。その子どもを取り巻く周りの集団が同時に存在しているにもかかわらず、その子ども個人のアセスメントにばかり注力してしまい、結果、その子どもの支援ばかりになっていくと、その子どもを取り巻く集団から別の課題が噴出してくることも多くある。
したがって、個別のアセスメントだけでなく、集団のアセスメントもしていかないといけないということ、個別のアセスメントと同時に、その子どもを取り巻く集団への配慮や支援をセットで意識しなければならないということも併せて記載しておく必要がある。
【主査】 学校現場に特別支援教育を含む心理アセスメントが、心理という言葉を冠せずにアセスメントという形で定着している側面があり、本人を取り巻く家庭やクラスメートの状況、ネット環境、あるいはコミュニティーの状況も当然このアセスメントの中では重要な要素として入る。アセスメントという言葉も、多様に使われているので整理しながら、総論のところで示していただく部分と、各論のところで配慮すべきことを明確にしなければならない。
個別化された課題に関してはBPSモデルでしっかりと、個も見て、なおかつ環境との関係性もしっかり見ていこうという立場はアセスメントという形で示したらいいかと。
【委員】 例えば学校心理学という学問において、ある行動は個人と環境の相互作用の結果という見方であり、環境というのは、家庭、学校、地域である。
今対象にしている子供個人のいろいろな心理的側面や社会性、学力と、その子が所属している学級やホームルーム、学校、家庭環境、地域関係といった環境をセットで情報収集を行うので、単にその子だけに注力するということは、今のアセスメントでは少ないと思う。
【主査】 BPSはもともとそれを読み込んでいるものと思うが、先ほどの学級や学校、特に最近、スクールカウンセラーの様々な専門誌の中には学校アセスメントという言い方が特集になっていることもあるため、支援をする土壌をどう理解するかということもいるが、総論の部分と各論の部分での記載はいるのかなと。
【委員】 BPSモデルは大事で、発達障害の分野はまさにそれがないと進まないと思う。いわゆる障害の状態についても、国際生活機能分類(ICF)という考え方で、個人因子と関係因子の相互作用によって障害が成り立つということである。今日の発達障害の課題であれば、結果的に適切な支援がないと、不登校、虐待、少年非行という状態になるリスクがある。つまり、発達障害そのものが直接的な原因になるということではないので、そこの発達障害に対して環境がどのように機能するかによって課題を未然に防げるところはたくさんあるということを考えている。不登校、少年非行、虐待という現象面と、発達障害の障害特性の問題では、軸が異なっている。
二次的な障害の考え方や、特性理解と予防的な支援のウエートが多くなってくることから、BPSというと、環境因があって、やはり心理的な側面が影響して、本来の特性に対してマイナスの要因としてなっていくという考え方かなと思っている。
【オブザーバー】 予防的という言葉を,私は治療的予防とか教育的予防と細かく分けてきた。それは考え方としては、一次支援、二次支援、三次支援と似ている。生徒指導では,どうしても課題がある、問題があるというところから出発する。それに対してどう対応するかという話も出てくる。その予防といったときでも、家庭で子供が問題行動を起こしていないが、そういう問題を起こしそうといったところも予防的という中に入っている。ところが、ここまでの範囲で言っている予防的というのは、明らかにある課題を想定しての予防となる。
ところが,今日の話よりもずっと日常的なレベルのところでの予防、要するに子供たちが生き生きと活躍するといった話を予防という表現でも使っている。ただ、このときは、別に特定の課題や問題を想定しているわけではなく、何となくこっちのほうが望ましい、社会で期待されているといったものを目指していこう意味でも予防という言葉を使っている。
クラスアセスメントに関しても、治療的な発想でのアセスメントではなくて、例えば,国研の魅力ある学校づくり調査研究事業でやっているPDCAサイクルにおけるアセスメントは、特定の課題を想定してはいない。
この辺の切り分けを意識して議論していかないと難しいと思う。生徒指導提要を読んだときに、ごく普通の先生たちにも基本的な知識をもってもらうときの共通理解といっている話は、健全な部分含め、問題となる子供も含む。ただ、問題がある子供についても,その子供だけを責めるというよりは、問題を抱えている子供たちを取り巻く背景もあることは知っておいてもらわなければならない。
その先でどうアセスメントするのがいいか、どこの関係機関とつなぐのがいいか、といった話は各論のほうに持っていくと思うが、普通の先生たちが共通に持っていなければならない知識や理解の範囲も、ややもすれば問題寄りに引っ張られている。
また、プライベートな、日常的な学級をアセスメントする視野みたいなものを実は先生たち同士が学年で共有していくということが重要であり、そのときにも連携とか協力と言われるが、ここでの連携や協力は、数段、健康な領域の話となる。問題に対する共有とは限らない。
問題や課題、個人指導、医療的な話、医学的な話、心理学的な話、課題解決的な話に引っ張られてしまうが、若干気になっても、本人の免疫力や治癒力に任せようという部分が学校にはあってもいいはず。
【主査】 1,000人に1人、1万人に1人かもしれないが、大事にならないようなことをどれだけ配慮するか、あるいは、1,000人に1人とか1万人に1人のことが起こって、1つの学校がダメになってしまうということも起こる。今日のワーキングは、そのようなことをまとめるところだと認識している。ただ、本当に何の問題もない、本当の健全育成の見本みたいな御家庭から、1960年代のマルチプロブレムファミリーのような、多問題で、本人たちには救援ニーズがないので、アグレッシブに介入しなければならない御家庭までというスペクトラムの中で、どこまでを扱うか、親会議のほうでしっかりと仕分してもらいながら、逆にワーキングとしては、中核としてのかなり個別的、また、深刻な状況も想定しつつ、そこから順次、その前段階までイメージしていくという話になる。どこまで広げるかについては、むしろ親会議あるいは生徒指導の枠組みから一般教育のほうへといったこともあり得るので、親会議の場で整理してもらう。
ワーキングでそれを議論すると、肝心の中核の議論が進まないので、細かい部分に着目して、まとめさせていただきたいと思う。虐待であれ非行であれ、1つの理由で何かが起こっているというよりは、様々なものが複合的にあるということをどのようにひもときながら示すか。
その他、何かあるか。
【委員】 情報の記録、保存、受渡しが必要になると思う。今、不登校であれば、児童生徒理解支援シートが使われ、特別支援教育では個別の指導計画があるが、どちらにしてもこういった関係機関と支援する場合、アセスメントの情報や援助プロセスの記録に関しても、紙ベースで残すか、あるいは電子媒体というか電子ファイルで残すかのどっちかになると思う。
それから、切れ目のない支援といったときに、どうしても情報を校種別に渡さなければならない。特に公立の場合は教員の異動もあるので、情報がきちんと管理されておかないと、引継ぎもできない。
また、場合によっては裁判になるケースもある。特に教員は適切にやっていると思いながらも、プロセスで何か悲劇的なことが起こってしまうと、今度は指導責任が生じ、その指導責任を証明しなさいとなったときに、そのエビデンスは記録となる。
だから、関係機関、マンパワーとか地域の資源を活用するのは賛成だが、情報をシートという形で残すのか、それをどうやって受け渡すのかという、情報の管理運営の仕方につついてもアドバイスが必要と思う。
【主査】 実は要保護児童対策地域協議会については、個人情報保護法を意識してつくられた児童福祉法25条の2なので法的な枠組みというのはつくられている。
それから、児童生徒理解支援シートについては、教育行政、それから個人情報保護との関係でクリアしている部分はあり、それは通知にも反映しているが、例えば開示請求がかかったときにどこまで開示したか。指導要録の扱い等々も含めて、現場における感覚と、それから生徒指導の枠だけではない学校保存情報の管理の問題や保存期間の問題などある。このワーキングとしては、課題についての情報共有の仕方、あるいはそこにおける留意点、記述の仕方といったことは必要な場合には書いてもいいと思うが、一方で、個人情報だから守秘義務というだけじゃなくて、個人情報というのは子供の最善の利益のために使うために持っているわけで、有効に使うことも必要で、有効に伝えることも、あるいは有効にもらうことも必要。
使うほうも視野に入れた管理という問題に関しては総論のところで別途議論したい。場合によっては、ワーキングという形でないにしても、詳しい先生方に、親会議のところで調整するみたいなこともいるかと。
【委員】 ちょっとしたサインの裏に問題が隠れている、あるいは大きな医学的問題があるというようなこともあり、ここで扱っているようなことが、今そういう兆候で見ているものと非常に一線を画すような問題であるとは限らないというところにこれらの問題の難しさがあると思う。
それと、教育における予防と医学的な予防というものとの表現というものは違う可能性があり、曖昧な予防という言葉を盛り込む際にはかなり慎重でなければならないと思う。もし医学的予防だと考えた場合に、例えば二次障害を予防する、あるいは非行を予防しても、それがもし出てきてしまった場合には、何らかの取組の失敗なのかという話になる。そうならないために私たちは取り組むのではなくて、今必要としていることに取り組むことが結局二次障害の予防につながるとういう書きぶりをしていかないと、現場も苦しくなり、また、障害のスティグマも持っていることになるのではないか。
【主査】 最後に、第3回の方向性について、事務局より何かあるか。
【事務局】 次回は全体的な目次、全体像を御議論いただきたい。日程に関しては、委員の皆様方と調整し、後ほど御連絡する。
【主査】 第3回においても、また忌憚のない御意見をお願いする。
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