GIGAスクール構想に基づく1人1台端末の円滑な利活用に関する調査協力者会議(第3回)議事録

1.日時

令和3年8月30日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web会議による開催

3.議題

  1. 関係分野のヒアリング(安全・安心な利活用に関すること、健康面に配慮した活用に関すること、特別支援教育に関すること)
  2. その他

4.出席者

委員

安藤委員、國香委員、佐藤委員、佐和委員、柴田委員、高橋委員、中村委員、東原座長、堀田座長代理、三井委員、山本委員、渡邊委員

文部科学省

塩見大臣官房学習基盤審議官、板倉情報教育・外国語教育課長、水間情報教育振興室長、大塚情報教育振興室長補佐

オブザーバー

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授・主幹研究員 豊福晋平氏、日本大学教授 中橋雄氏、全国養護教諭連絡協議会会長 小林幸恵氏、全国特別支援学校校長会会長/東京都立あきる野学園校長 市川裕二氏、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会会長/江東区立豊洲北小学校 統括校長 喜多好一氏



 

5.議事録

GIGAスクール構想に基づく1人1台端末の円滑な利活用に関する調査協力者会議(第3回)

令和3年8月30日

 
 
【東原座長】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから「GIGAスクール構想に基づく1人1台端末の円滑な利活用に関する調査協力者会議」の第3回を開催させていただきます。
 また、本日の会議についても、前回に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、Webexによる開催とし、事前に登録のあったメディア、一般の方にも御覧いただいております。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【大塚室長補佐】  本日の配付資料は議事次第のとおりとなっておりますが、御参加の委員におかれましては、不足等ございましたら事務局へお申し付けください。
【東原座長】  それでは、ここから議題に移らせていただきます。本日は議題1として、関係する分野の有識者からヒアリングを行いたいと思います。なお、本日の会議は議題が多いため、円滑な議事運営に御協力いただきますようお願いいたします。また、終了予定時刻の12時を過ぎる可能性もありますが、御了承ください。
 まず、安全・安心な利活用の観点として、資料3-1に沿って、国際大学の豊福晋平先生から15分程度で御発表いただき、その後、意見交換にしたいと思います。
 なお、資料につきましては、事務局側で提示するのを原則といたしますが、御自身で操作を御希望される場合にはお知らせいただきますよう、お願いいたします。
 それでは、豊福先生、お願いいたします。
【豊福氏】  国際大学GLOCOMの豊福です。本日はよろしくお願いいたします。
 基本的にはプレゼンの資料に沿った形でお話をしたいと思います。「安心安全な利活用とデジタル・シティズンシップ教育」ということですが、まずはGIGAスクール構想とデジタル・シティズンシップ教育がどのようにつながっているかという前提についてお話しようと思います。
 こちらは、フィンランドの研究者でありますPuentedulaが2010年頃から提唱していますSAMRモデルというものです。こちらは、情報革新が教育の革新にどのように影響を与えるのかというモデルになっていますが、ここで注目すべき点は2つあります。1つは、このSAMRのSからAに当たる段階で情報量の圧倒的な増加が見られるということです。これが達成されることで、M(変容)、R(再定義)というところに質的な変化がもたらされるという前提に立っていると、私は解釈をしております。しかしながら残念なことに、日本の多くの学校さんはこのS(代替)の段階で止まっておりまして、圧倒的な情報量の変化というところに至っていないということになります。
 GIGAスクール端末の利用に関して、これまで文部科学省でやられてきた3人に1台体制の実践というのは、主に先生がコントロールをしつつ、しかも、分かる授業中心の展開がなされてきたことになります。しかしながら、朝、学校に子供たちがやってきて、保管庫から出してずっと使っているという状況になりますと、こちらの先生が指導している時間以外の使い方というものも前提に立って考えなければいけないということになります。例えば、左側にあります知識・技能の習得、特に今回、個別最適な学びと言われている個別化に当たる部分と、緑で書いてあります思考力・判断力・表現力に値しますけれども、知的な生産や協働、公表発表といった用途が考えられます。一番右側にありますけれども、情報ライフラインとして、公的なコミュニケーションがオンラインコミュニケーションで学校の中に入ってくるのが大きな変化になるかと思います。
 そうなってきますと、基本的には、「学校日常のデジタル化」と私は言っておりますが、学校がこれまで非日常的に扱ってきた機材がどんどん学校の中に入ってくることを前提に立って考えなくてはいけないということになります。そうなると、基本的には、子供たちが文房具のように使うというのが今のキーワードになっておりますが、この道具立てをする、自分で道具を選択して、良かったか悪かったか考えていくといったことの余地を持たなくてはいけないということになります。
 もう一つは、情報ライフラインがデジタル化されることになりますので、今まで紙ベースでやっていたもの、対面を中心にしていたものをデジタルに置き換えていくことになってきます。これと同時に、家庭でのデジタルの使い方の在り方も変わってきます。これまではどちらかといえば、学習面というよりは、むしろプライベートで遊びに使うといった認識がメインであったわけですけれども、これが学びにも生活にも役に立つという使い方になってくると、子供たちも四六時中家の中でパソコンを開けて使う状態になっていくわけで、これを使うなとか禁止するとかという形の指導をすると、子供たちの中にジレンマが生じてしまいます。
 もう一つの重要な点は、大人が常に関わって子供たちに使い方を指導する状況がもはやかなえ切れなくなってくるということであります。つまり、子供たちのある程度自律に任せなければいけない。そういった形の教育を考えていく必要があるということです。
 こうなったときに必要になってくるのが、この2つのデジタル・デバイドの解消であります。デジタル・デバイドというのは、もともとは総務省でやっていたことで、地域的あるいは経済的なインフラの格差がデバイドを生むという考え方ですけれども、実は学校と家庭間にも認識の差というものが非常に大きくあります。残念ながら学校はまだ裸一貫主義でありますので、デジタルを使うことに対してあまり積極的な価値づけをしていないということになります。一方で子供たちはデジタル生活にどっぷりつかっており、ふだん家で使われているものがなぜ学校で使えないのかということに対してはかなりストレスをためているということになります。
 もう一つは、世代間のデバイドということで、大人世代は子供たちが使っているデバイスの重要性ですとか、あるいは友達同士がLINEでつながっていて、それが切実な手段になっているということをなかなか理解できないという状況にあります。そうしますと、教育的な指導というものが、むしろ世代間のデバイドを強調するものになっていないかということです。大人世代の言っていることが子供たちには分からない、何で僕たちのことを理解してくれないのかといったことにもつながってまいります。そういったことを解消することは急務であるということです。
 そこで、デジタル・シティズンシップに関して説明をしていきたいと思います。基本的にはこれは(肩書を記す必要はないか?)坂本旬先生がおまとめになった欧州議会のものですけれども、定義としては、「デジタル技術の利用を通じて、社会に積極的に関与し、参加する能力のこと」ということで、「社会参加」が一つのキーワードになっているということは分かります。
 では、デジタル・シティズンシップ教育とは何かということですけれども、優れたデジタル市民になるために必要な能力を身につけることと定義されています。ただし、下の文章に書いてあるとおり、オンライン上の特定の政治参加を促すようなものではなくて、むしろテクノロジーがもたらす、いろいろなことを考えていくといったことが必要ということです。情報に基づいた選択ができることを目指しているところが強調されております。
 なぜデジタル・シティズンシップ教育を学校でやる必要があるのか、家でやっても構わないのではないかという話もよく聞きますが、これについては、デジタルネイティブである子供たちもバランスよく、いろいろな知識、あるいはスキルを身につけているとは限らないという前提に立つことが必要です。そういったことは格差にもつながっているという現状があります。それを是正する、あるいは底上げをするといったことを、やはり学校が積極的に関わる必要があるということが指摘されます。
 こちらがデジタル・シティズンシップの10個の領域になります。オンラインであること、快適なオンライン生活、オンラインの権利といった形で3つ大ざっぱに捉えられているのですが、特に日本の情報モラルとの大きな違いとして、例えば1番目に「アクセスと包摂」と書いています。デジタルの環境にアクセスできること、できないことが格差を生むことを社会的に学ぶことは必要だということです。
 もう一つは「消費者」というキーワードで出てまいります。例えばアメリカのISTEが提唱しているようなデジタル・シティズンシップの領域もあるのですが、この中にはデジタルコマースも入っています。つまり、ポイントとかオンラインの決済を前提とすることが、実は教育の中では十分扱えていないという反省があるということです。
 そこで、デジタル・シティズンシップをどのように教育していくのかということですけれども、「学校の責任はインフォーマル教育の基盤を構築・構造化し、学習者を高水準の理解と実践へ導くこと」であります。このインフォーマルな教育が、実はGIGAスクールともつながっています。実は学校のカリキュラムの中、いわゆる学習目標として構造化されているものの外側にオンラインのコミュニケーションがあり、あるいは家族や仲間、地域社会とのつながりといったものを前提にしていくことであります。こういったものが実はベースになっていて、保護者と協力しながらオンライン・オフライン双方で展開をする必要があると述べられているわけです。
 次に、学校がアプローチすべき方法ですが、デジタル・シティズンシップ教育は学校の統合的なアプローチとして捉えるべきだということです。それはなぜかというと、カリキュラムの中で扱いやすいようなスキル・知識だけではなく、実は価値観とか態度といったものも中に入ってくるからです。情報モラルが道徳と不可分であるのは議論になっているとは思いますけれども、いわゆる普段の生活や、広い学校の生活、教育活動の中にこういったものが織り込まれていることを前提にしなくてはいけないと言われています。
 そこで、情報モラルの定義について、あえてこちらで申し上げるまでもありませんが、実はこの情報モラルの定義の中にも、必要な能力や知識、あるいは価値観についてはきちんと述べられている、と念のため述べておきたいと思います。しかしながら、(肩書を記す必要はないか?)稲垣忠先生がおっしゃっている通りなのですが、理念として体系化されてきた情報モラル教育と実際の指導との間にはこれまでギャップがあり続けてきたのが課題です。なぜかというと、情報モラルの十分な時間を学校で取ることができない、あるいは学校の中に十分な知見がないので外に頼らざるを得ないといった状況がいろいろな課題を生んでいるからです。
 情報モラル教育の指導上の課題に関して、ここに挙げているのは4点になります。例えば、今回はGIGAスクールの端末は小学校の低学年から配付されるケースになっておりますけれども、情報モラルで通常扱っている学年は、少なくとも小学校高学年頃からになるかと思います。メインは中高生になっているわけです。そうなってくると、子供たちの年齢に応じたメディア生活への共感をしっかり考えていかないといけないということです。もう一つは、指導する側の指導前提認識よりも子供の経験の方が先に行ってしまっているので、子供が日々直面している課題に十分対処できるようになっていないといった問題が挙げられます。
 次にシティズンシップの視点になりますけれども、現在、市民社会への参画、あるいは多様性への寛容性といったものが、題材として使われているものの中に含まれにくいといったことが問題になっています。
 3つ目が、メディア・リテラシーの視点で、例えばメッセージのクリティカルな読み解き、受け取る側のバイアスの問題、あるいは情報をつくったり消費したりといった責任、こういったオンラインのコミュニケーションに求められる知識・スキルが十分扱い切れていないという問題がございます。
 最後は実践的な課題について、先ほど申し上げたとおり、一番大きな問題は、校内でブログとかSNSを使うことを前提にしていないことです。
 そうすると、GIGA端末を活用する前後で指導重点が変わってくると思います。ごく簡単に申し上げますと、これまでは基本的に利用を抑制させる、あるいはルールに従わせる、それから、心情の規範といったものを教育の中心に置いていたところから、これからは、子供たちにある程度任せて使うということを考えつつ、活用・自律・行動規範の教育に変えていく必要が出てきているということです。
 その上で、デジタル・シティズンシップを指導していく要点について述べたいと思います。我々研究のチームでよく、テクノロジーのよき使い手になるための教育ですよということを強調しています。
 以下の5点がポイントになりますが、まずは積極的な道具的、社会的な意義を認めているということで、学校は今までデジタルコミュニケーションをほとんど排除した状態で、子供たちのプライベートに押しつけていたものを学校のど真ん中で捉え直さなくてはいけない現状があるということです。
 2つ目は、先ほどから申し上げているとおりですけれども、学習者の自律と問題解決を促す必要があるということです。
 3つ目に、「デジタルジレンマ」というものがキーワードで出てまいりますが、便利なもの、魅力的なもの、そういったものと自分たちの生活のバランスを常に考えていかなくてはいけないということです。これは、実は子供に限らず、大人も同じ問題に直面しています。実態に即した幅広い発達視点で考える必要があること、総合的・合理的な指導方法を選択するといったことにポイントがございます。
 そこで、ごくごく簡単ですけれども、デジタル・シティズンシップ教育の段階的な育成として、アメリカのCommon Sense財団がつくっている、事実上アメリカではデファクト教材になっているものを御紹介いたします。こちらに並んでいます6つの領域、特に上の4つは基礎的な領域になっていて、子供たちがオンラインデビューをして、お互いにやり取りをしていくためには必要なものだと捉えています。下の2つに関しては、より高度な活用になってきます。ネットいじめなどの、揉め事に関してはかなり深刻な話題も扱いますが、これは子供たちのリスクに直面する度合いに合わせて調整していくことになります。
 重要なのは、例えば3年に1回とか体育館に30分集めて怖がらせて終わりというような、そういった頻度ではなくて、むしろ毎年毎年、この4つないしは6つの領域を扱っていく必要がある、それなりの時数を確保する必要があるということであります。
 最後に御紹介したいのが、利用のルール、規約、AUPと呼ばれているものですけれども、これは、GIGAの端末を学校に導入するときに、保護者あるいは学習者との間で契約を結ぶといった考え方であります。ルールも、「べからず集」が並んでしまって、読むのが大変でうんざりするような内容になってしまうことは多いのですが、こちらに挙げているのは、あくまで行動の規範として、何を原則に考えたらいいのか、それを基にするならば自分たちはどう行動しなければいけないのかというものをできるだけシンプルに表そうと思ってつくったものであります。
 こんなような形で、デジタル・シティズンシップ教育の要点というところをお話しいたしました。ありがとうございました。
【東原座長】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御発表について意見交換に移ります。なお、恐縮ですが、オンラインでの御参加の委員におかれては、御発言時のみ挙手機能でお知らせいただき、こちらから指名させていただいた後にマイクのミュートを解除いただき、御発言後は再びミュートにしていただければ幸いでございます。
 それでは、三井委員からお願いいたします。
【三井委員】  常葉大学の三井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。御発表ありがとうございました。
 私は小学校教員をしていた経歴、また、日頃から学校現場へ足を運ぶ機会が多い立場から質問をさせていただきたいと思います。先生が御発表されたデジタル・シティズンシップ教育の段階的育成は今後必要になってくることだと思います。一方で、このデジタル・シティズンシップというものが日本の学校現場では比較的新しい概念ではないかと思います。御発表をうかがい、主権者教育に近い部分もあるかと感じました。そのような中、日本の学校教育の中で今後どのような点に留意し、これを推進していけばよいのか、また、予想される困難さも当然あると思いますが、今の日本の学校教育におけるデジタル・シティズンシップを取り入れる中での困難さはどんなところにあるのか、先生のお考えを少しうかがえればと思います。よろしくお願いいたします。
【豊福氏】  現状では、デジタル・シティズンシップ教育の教材は国内発のものがほとんどない状況ですので、アメリカの先ほどちょっと御紹介したCommon Senseの財団の作っている教材を翻訳する形で試行錯誤している状況であります。そうなってきますと、やはりアメリカを基準に作られているものですので、日本の授業にはなかなか馴染みにくいといった懸念といいますか、不満は出てきている現状があります。一番差し迫った問題は、Common Senseの教材は、非常によくできているのですが、フルセットでやろうと思うと2時間以上使わなくてはいけないということです。そうなると、45分とかモジュールの15分でやろうと思ってもできないといった不満をいただく機会が多くございます。これはテクニカルな問題ですので、要点をきちんと整理した上で、学校でも適用しやすい形にしていく必要があると思っています。
 もう一つの課題は、社会参加ですとか、あるいは政治といったものに関わっていくといったところが日本の常識とはなかなか合いにくいところがございます。先ほど御指摘をいただいたとおり、公民教育と関わっている部分もございます。ただし、デジタル・シティズンシップ、先ほど欧州議会の定義でも申し上げたとおりですけれども、政治参加とか特定のセクターに参加することを目的にしているわけじゃなくて、むしろ日常的な生活の中でどう使っていくかというところに重点がありますので、そこは履き違えないようにしたいということです。
 社会参加といっても、日本の今の情報モラルの教育の教材自体は、どちらかというと子供たちのプライベートなコミュニケーションというところに偏り過ぎているといった面もございます。そういったものをパブリックなもの、あるいは学校のコミュニケーションの真ん中に捉え直すことはやや時間がかかると考えております。
【三井委員】  ありがとうございました。大変分かりました。
【東原座長】  それでは、次は、佐和先生、佐藤先生、安藤先生と3人で一区切りにさせていただきたいと思います。
 佐和先生、お願いいたします。
【佐和委員】  柏市手賀東小学校校長の佐和です。豊福先生、ありがとうございました。大変参考になりました。この質問は、もしかしたらよくあるものかもしれないのですが、優れたデジタル市民になるために必要な能力を身につけさせる、そのために子供たちの自律に任せる教育が必要だということは大変よく分かります。そうなると、授業中、子供たちが必要に応じて自由に端末を使うことであるとか、今、話題になっている家庭への持ち帰りとか、こういうことを推進していく必要があると思うのですが、現場の教師の悩みとしては、子供たちが自由に使っていて、問題が発生したとき、それに対応できるのか、場合によっては、それで自分自身が責任を問われるようなことになるのではないかという懸念、なかなか進んでいかない現状があります。このような教師の不安にどう応えていくのか、また、教職員の意識を変えていくことについて豊福先生の御意見がございましたら伺いたいと思います。よろしくお願いします。
【豊福氏】  おっしゃるところは非常に難しい問題だと思っています。ただし、デジタル・シティズンシップの立場として考えているのは、子供の自律と問題解決を前提に置かなくてはいけないということです。それは、取りも直さず、異論があるところは承知の上で申し上げますけれども、今までのICTの活用というのは、先生が基本的に主導してコントロール下に置くことを前提にしてまいりました。ですから、先生がいろいろな、責任を取るといったところで考えると、当然、いろんな手段や方法、段取りというものを子供たちに丁寧に示すことを前提にしているわけですけれども、それをやり続けている以上は先生の負担が大きくなってきます。これは考え方の違いかと思いますが、我々はむしろそれは子供たちの自律、あるいは考え方、アイデアというところに任せたほうが先生の負担も軽くなるし、四六時中使っているという実情をうまくこなす方向に導いてくれるのではないかという考えに立っているわけです。
 その上で、情報モラルがうまく機能しない、指導としてうまくいっていなかったところで、子供たちの自律をどうやって段階的に引き上げていくのかというものをカリキュラムの中にうまく入れないと、恐らく糸の切れた凧のようになってしまうということです。そこは多分、トランジションに結構時間がかかると思うのですが、GIGAの端末が入って子供たちが使うことを前提にすれば、乗り越えなくてはいけない課題ではないかなと思います。
【佐和委員】  どうもありがとうございました。
【東原座長】  続きまして、佐藤先生、お願いします。
【佐藤委員】  豊福先生、ありがとうございました。信州大学の佐藤と申します。よろしくお願いいたします。先生のスライドの中で、日常で端末を活用していくことが語られていましたけれども、そこについては大きく賛同を感じております。
 私からの質問としては、デジタル・シティズンシップが日本で取り組まれている学校、そういった学校の事例についてお聞きしたいと考えております。特に学校はこれまでの現実とのギャップがあると思うのですが、そういったものをどう乗り越えてきたのか、そして、実践後、取組は続くものですけども、子供たちがどのように変わってきたのかというような、そういった具体的な事例がございましたら教えていただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
【豊福氏】  これは、1人1台端末の展開とほぼ並行して行われているケースだと思っていただいてよいと思います。デジタル・シティズンシップだけを先行させても、多分子供たちにも先生たちにも実感がありませんが、目の前に端末が来て、さあどうするよと考えたときに、同時に取り入れられているケースがうまくいっているかと思います。自治体のレベルの話では、今年からこれに取り組まれた自治体が幾つかございまして、現状はまだ試行レベルですので、まだ具体的に機能しているとは言い切れない状態だと思います。
 ただし、単校のレベルですと、例えば軽井沢の風越学園では、開校当時から1人1台端末を始めていて、当然子供たちが使う時間が長いので、例えばYouTubeを長時間見てしまうといった課題は日々直面するわけです。そういったものと併せてシティズンシップをやっているということで、子供たちにどうやったらバランスが取れるのか、あるいは使い方が工夫できるのかといったことは、日々、いろいろな気づきがあるとおっしゃっておりました。
 それから、これは中学校、高等学校のケースではありますが、例えば子供たちに、ある程度クラスルームであるとか共有の機能といったものを任せたときに、どういったことがあり得るのかといったことです。これは、ダイレクトにデジタル・シティズンシップということではないのですが、例えば生徒会でクラスルームの機能を使って、役員選挙のための会議室を生徒会で運用するとか、そういったことを自分たちでできるようになってきたということは事例として御紹介いただきました。
【佐藤委員】  ありがとうございました。
【東原座長】  続いて安藤委員、お願いします。
【安藤委員】  お世話になります。蓮田市立黒浜中学校校長の安藤でございます。大変参考になるお話をありがとうございました。佐和委員からもお話がありましたが、中学校の現場としてはなかなか指導が難しいところがあり、お伺いしたいことが2つございます。
 まず実態として、生徒指導の割合が非常に増えてくるということで、1人1台端末を始めている学校から情報をいただくと、ウインドウの裏側でチャットで会話をしているとか、動画を見ているとかの問題だけでなく、遠方の大人と会う約束を取り付けて放課後に動かれてしまうなど、具体的な大きな被害につながるような状態が授業の中でも生み出されてしまう可能性があるということです。先生がおっしゃるように、自律的に利用する力は大至急育てなくてはいけないのですが、安全なレベルまで教育するために必要なカリキュラムにどのぐらい時間を要するのかというところでございます。コロナ禍でもあり、学習指導要領の授業時数を確保するために必死になっている状態があり、6時間目、7時間目、土曜授業等も行う学校があるわけですけども、そういった状況にこれを組み入れていく必要があるとは思いつつ、どのぐらいの時間が必要かということについてうかがいたいと思います。
 もう一つ、実際に読んだり書いたりすること以外に、見て聞いて考えていくことが多くなるので、対面して話をする能力が落ちてきてしまうというようなところが報告されています。一時的なものなのでしょうか、それとも、これもデジタルの枠の中で何か育てていけることがあるのでしょうか。その辺り、もし情報がありましたらお教えいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【豊福氏】  まず、生徒指導に関して、これは先ほど申し上げました学校の中にデジタルコミュニケーションを本格的に入れるかどうかという判断に迷われるところだと思います。今までは、実は子供たちはプライベートでインフォーマルな領域でやり取りをし、お互いに学んできたものを使っていたので、当然、外でいろいろな問題が起これば、これを生徒指導事案として取り扱うことになったわけです。でも、今回は、これが学校の中に入ってくるということは、例えば校長先生からの名前で、角印がついたものが紙で届くのと同じレベルでデジタルのコミュニケーションをやるということです。友達同士のやり取り以上に、担任の先生や外の人とのやり取りをする可能性が出てくるということです。
 そのときに、例えばタメ口のようなやり取りでいいのかというと、そうではあり得ないわけですね。当然相手の状況に応じて作法が変わるわけで、そういったことを学校の中できちんと教育の内容として扱うのかなどがおそらく判断基準になります。これが外側にある状態で、たまに火消しのような形で対応されると、あまり負荷が変わらない、むしろ大変になってしまうのではないかと思います。
 そういった意味で、時数確保には、先ほど4領域あるいは6領域を扱うので、4時間あるいは6時間必要ですということは申し上げましたが、これについては、今年、取り組んでいらっしゃる自治体で、道徳の時間で同様の領域を扱っているものを読み替えるということをお考えになっているケースがあります。
 もう一つは、パブリックなコミュニケーションを学校の中に取り入れていくことでありますので、特別な時間を設けるというよりは、むしろ学級指導や特活の時間で使うといった性格に変わってくることは強調したいと思います。
 対面が減るのではないかという話は、御懸念としてよく分かるのですが、むしろ授業の中で手が挙げられない子供が、意見を共有するときはチャットで書いてくれるとかいった面もありますので、オフライン、オンライン、デジタル、アナログというものを取り合わせた考え方はもう少し柔軟に捉えてもよいかと思います。
【東原座長】  豊福先生、今日はお忙しいところ御協力くださいまして、どうもありがとうございました。
 それでは、続いて、資料3-2に沿って、メディア・リテラシーの観点も踏まえながら、日本大学の中橋雄先生から15分程度で御発表いただき、その後、意見交換したいと思います。それでは、お願いいたします。
【中橋氏】  皆さん、こんにちは。日本大学の中橋です。
 本日は、「1人1台端末時代に求められるメディア・リテラシー」ということで、特に安全・安心な利活用という観点からのお話をさせていただきます。1人1台端末、これとメディア・リテラシーがどう関わってくるのかといったところで、いろいろな面で関わってくるとは思いますが、特に1人1台端末が整備されると、子供たちはこれまで以上にネット上の情報に触れる機会が増加していくと考えられます。なぜなら、学習指導要領で求められているような主体的・対話的で深い学びといったようなキーワードを実現していくためには、必ず協働的な学習を行ったりだとか、あるいは探究的な学習を行っていったりだとかということが行われるからです。
 その際、やはり疑問を持ち、調べ、考えたことを人に伝えるのが基本的な活動として不可欠だということになります。その際、メディアを活用することになるわけなので、メディア・リテラシーを育成することが必要になると思います。
 安心・安全といったときに、情報モラルという概念があり、そこでの対応がこれまで教育としては考えられてきました。情報モラルとメディア・リテラシーが結構混同されてしまうことがあるわけです。重なる部分はもちろんあるのですが、もともとは別の概念ということもありますし、少し別の概念として捉えてみることに意味があるのではないかと考えて、今日はお話をしたいと思います。
 例えばここに9つ挙げましたけれども、情報の発信と受容する際の判断であるとか、コミュニケーショントラブルであるとか、知的財産権の問題、情報資産を脅かす脅威とセキュリティ、電子商取引でのトラブル、トラフィックに関するような問題あります。それから、有害情報の公開と受容、ネット中毒、出会い系サイトに関わるような犯罪の問題、こういった様々な事が起こるたびに、教育でどう扱っていくのか考えていかれる中で、情報モラルも幅が広いものになってきています。
 さらに言うなら、ソーシャルメディアでのコミュニケーションがどうかといったところまで発展していくわけですけれども、そこで扱われてきた情報モラル教育とは異なるものとして、このメディア・リテラシーを一旦捉えていただいて、教育を充実させていく必要があるのではないかと考えています。
 どう違うかを考えていくことをこの後お話ししたいと思います。メディア・リテラシーというのは、メディアの意味と特性を理解した上で、受け手として情報を読み解き、送り手として情報を表現・発信するとともにメディアの在り方を考え、行動していくことができる能力です。リテラシーは読み書きの能力を指すわけですけれど、何のための読み書き能力なのかといったら、社会を開発していくための読み書き能力になります。そして、単に文字が理解できる、言葉が理解できるというだけでなく、その裏にある社会や文化の背景を理解して、さらには、メディアが持つ構造的な問題、それによって隠されてしまうような事象に対して想像力を働かせて判断できるかどうかとか、そういったことも含めてリテラシーとして考えていく必要があることがこれまで言われてきました。
 学校教育におけるICTを活用した場面については、「教育の情報化に関する手引」の中でこのようなイメージが示されているわけですけれども、まさに調べたり伝えたりする活動がここに全部位置づいているわけですよね。そもそも、ICTのCはCommunicationのCなので、送り手から受け手に対してコミュニケーションを取る際に用いられ、送り手と受け手の間に入るものが全てメディアになるわけなので、もちろん1人1台端末もメディアということになります。そして、そこで扱われる言葉であるとか映像であるとか、そうしたものを通じて、何かコミュニケーションを取る際に間に入るものは全てメディアになるわけです。つまり、端末、機械だけを取ってメディアと言うわけではなくて、そこで生じる様々な社会的な相互作用の部分に目を向けていくところがメディア・リテラシーの視点だということになると思います。
 そこで、具体的に安心・安全の切り口で考えていくこととします。1人1台情報端末を使い、学ぶ際に、どんな危険があるのかを考え、それを回避する、そのような能力を身につけていく必要があると考えることができると思います。
 どのようなメディア・リテラシーを育む教育や学習が必要になるのかということを、幾つかの例を基に考えていきたいと思います。こういったことはもう既に出てきていることだと思いますが、調べ学習などをしようと思ったときに、上位にある検索結果ほど価値があると勝手に判断してしまって、コピペして、学習終了としてしまうようなことがあるかもしれません。そうやって調べた内容を他の人に伝えてしまう危険性もあります。
あたかもそれが重要かのように、自分の考えのようにほかの人に伝えていってしまうようなことが教室内でどんどん行われていくかもしれません。それらについて考えるならば、検索エンジンの特性を知ることは重要です。
 さらに言うなら、ランキングに依存して、これを当たり前にしてしまうところがあるので、その当たり前から脱却するために自分に疑いを持つべきであるということを学ぶ必要があると思います。こうした指導が既に全国の学校で1人1台端末が入り、情報検索が行われるような学習を始めているわけですから、このような指導も既に実施されていると思いますが、これまで以上に気をつけていく必要があると思います。
 そのほかの例として、例えばSNSのことに関して考えてみたいと思います。SNSに関しては、小学生だと年齢制限があって使えないのに、それを学習する意味はないのではないかと思われるかもしれませんが、中学校、高校になっていくと、その枠を外れて使うようになるわけです。情報モラル教育とかそういった教育も十分受けることなく使っていってしまう、そこでトラブルが生じる現状があるということだと思います。その中で、使う前から、どういったものなのか、どういう特性を持っていて、どういう危険性があって、それをどう回避していけばいいのかということを考えていく教育は早いうちから必要だと思います。
 例えば、閲覧履歴によってカスタマイズされた情報を見ているかもしれないのに、自分でそれを選んで見ている、主体的に見ている、選び取っている、と勘違いしてしまっている人はやはりいます。勝手に解釈してしまう危険性があるとともに、やはりそこで得られた情報をどんどん伝えていってしまう危険性があります。実は、自分がコンピュータのアルゴリズムによってパーソナライズされた情報に囲まれているフィルターバブルに包まれている状況にあることを学ばないと自然には気づきにくいわけです。見えないところでフィルタリングされるわけなので、自分からは気づきにくい。つまり、やはりそれをしっかりとネット、SNSの特性として学んでいくことが重要になるのではないかと思います。
 また、別の例ですけれども、ニュースサイト、これも調べ学習において参照される資料となりえます。ニュースサイトに限りませんが、何かしらメディアというのは、そもそも単純化された調査結果とか専門家の考えを根拠にして、表現、発信された何かを伝えたいがためのものなので、それを自分の都合のいいように解釈してしまう危険性があります。また、それを伝えてしまう危険性もあります。メディアは分かりやすくするために、単純化して伝えます。送り手の意図によって構成されていることを踏まえて解釈する必要があることを早くから学んでいく必要があると思います。
 具体的な例を1つ出したいと思いますが、皆さんはどういうふうに考えますでしょうか。考えていきたいこととしては、情報端末でニュースを読んでいると、国際的な学力テストの結果について書かれた記事があったとして、記事には、日本の子供たちは読解力の得点が低く、前回より順位が下がったというようなことが書かれており、また、スマートフォンが普及し、短文のやり取りが増えたことや本を読む時間が減ったためではないかという専門家のコメントも掲載されているような記事があったときに、読者はどうこれを読むでしょうかという話です。皆さんがそうだということではなくて、世の中にはこんな解釈をする読者がいるかもしれないということを踏まえて考える必要があるかと思います。
 どういうことかというと、最近の子供は昔の子よりも成績が悪いのか。そして、順位を上げるために、スマホを禁止にして、もっと本を読ませることにしようという対策つきで情報発信をするような人もいるかもしれません。でも、この解釈は妥当でしょうか。この考えを発信したらどうなるのかという想像力を欠いてないだろうかと考えていく必要があると思います。これは下手をすると、偏見とか差別とか的外れな対処の実施を生みかねません。それでは、その根拠をどこに求めていくのかということを考えていく必要があるということです。
 別の見方もできるのではないかと想像力を膨らませることが非常に重要になってきます。最近の子は勉強ができなくなったのかというのは、もしかしたらほかの国の子が特に頑張っただけであって、日本の子供に問題があったわけではないかもしれない。むしろ昔の子供よりもレベルは高まっているのに、たまたま諸外国の子よりも順位が低かっただけかもしれないわけです。そのかもしれないというところをしっかりと読み解けるかどうかということによって、勝手な読み解き、誤解をしてしまうことが生じることを避けることができるのではないかと思います。スマホを禁止にしようという話も、スマホを使っていても読解力の高い人はもちろんいるかもしれません。それから、もっと本を読ませようという話も、読書をしてスコアが上がる出題内容ではないかもしれないのに、むやみやたらに読ませたからといって成果は出ないかもしれません。そのようなことから、実際はどうなのかと考えて、さらに確認していく、調べていくような、そんなしなやかな思考ができるといいのではないかと思うわけです。
 それができないと、やはり争いや人権侵害が起こる可能性があります。偏見によって言われのない差別を受けることがあるかもしれない。そして、それによって争いが生じるかもしれないということは社会にとっても望ましくないことです。放っておけば、そういった状況に子供たちは放り込まれるということです。ネットでのコミュニケーションが増える、頻度が増えるということは、実は社会の中と同時に、学校教育の「学ぶ」という場においても、同様のことが生じ得ることに注意をする必要があると思います。一方で、それは教育の機会だとも思われます。学校の学習の場でこういったことが教育できるとよいのではないかと思います。
 そこで、まとめといたしまして、安全・安心な利活用の観点からどのようなメディア・リテラシーが必要かといったときに、情報モラルとか真偽を見抜く力ももちろん大事なのですが、それとは別の力も必要になると考えています。それは、自分が勝手な解釈をしていないかということを疑う力、人を疑う力ではなく、自分の解釈を疑う力です。こうしたことであったり、自分が発信したことは受け手が勝手な解釈をするものだとして表現する力であったり、勝手な解釈をさせやすいものとしてメディアの構造や特性があることをしっかりと捉えることができる力が必要になると思います。
 とかく、ある人が楽しいと思っていることがほかの人にとっては不快に感じられることってたくさんあって、ネット社会の中でそういうこともあり、非常に攻撃的な争いが生じている現状もあります。それを踏まえて建設的にメディアの在り方を対話的に考えていく。こうした教育内容を、1人1台時代の学校教育の中で位置づけていくことが重要な課題なのではないかと考えているところです。
 私からの報告は以上になります。ありがとうございました。
【東原座長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表について意見交換に移りたいと思います。
 それでは、柴田委員、お願いいたします。
【柴田委員】  神奈川県立川崎北高校校長の柴田です。貴重なお話、ありがとうございました。メディア・リテラシーという指導が学校の感覚、印象としては、昔に比べて、情報を受信する際の指導と発信する際の指導のバランスがよくなってきたと思っています。実は学校の先生の中にはSNSをすごく警戒している人も多く、適切な指導ができていないというのを私はすごく感じており、これをさらに充実させていくためには、先生がSNSを上手に使っている姿を見せることで、生徒も上手にそれを使うことができるのではないかと思っています。教員のSNS嫌いというか、警戒心が強いことに対して、何か良い方策があれば教えていただきたいと思います。
【中橋氏】  ありがとうございます。これはなかなか難しいところで、大人もこれまで学んでこなかった社会システムに入り込んで、一から学んでいかないといけないところがあります。しかしながら、それをしっかりとやっていくことが、将来、多くの人々のためになる、社会に貢献することの一つになるという姿勢をやはり教員側も見せていただきたいと思うわけです。一方で、これまではやりたくなければやらないで済んでいた時代でした。しかし、今、実は同じような仕組みは学校教育の現場にシステムとして入ってきています。コンピュータでコミュニケーションを取る、自分で何かを表現して、ほかの人からコメントをもらう、そういうことを教室の中で学習の質を高めていくためにもやろうとしているところがあるわけです。その中で、きっと学校の先生方も、コンピュータを使ったコミュニケーションの特徴を学んでいってもらえると思うのです。だから、しっかりと教育に取り組んでいけば、SNSを学んでいくことにつながると私は思っていて、一方で、実際に経験値を積んでいったときに、それを振り返るような研修等が行われると、なおよいのではないかなと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【柴田委員】  ありがとうございました。
【東原座長】  では、佐藤委員、次に堀田委員、お願いします。
【佐藤委員】  信州大学の佐藤でございます。中橋先生、今日の御発表ありがとうございました。私からは、メディア・リテラシーのこれからの取組について、中橋先生のお考えをうかがいたいと考えています。
 以前からメディア・リテラシーについては、各教科の教科書で取り扱われてきていますので学習は進められてきているわけですが、一方で学習指導要領では文言自体は示されていないので、学校で取り組まれにくいというような議論がされてきたと考えています。その上で、情報モラル教育のみならずメディア・リテラシー教育に取り組んでいくためには、GIGAスクール構想を通して、学校はどのような工夫や手だてが必要になっていくのか、中橋先生のお考えをお聞かせいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
【中橋氏】  ありがとうございます。今、GIGA端末が入って、あるいは新しい学習指導要領になって、学びに対する考え方、学習観というものが変化している状況があります。さらに言うなら、コンピュータがそれをどう推進してくれるのかという議論が行われているところですよね。それに対して現場でも、経験を積んでいく中でしっかりとこれまでの教育をバージョンアップさせていくということが重要だと思います。特別な時間を作ってメディア・リテラシーを育成する教育に取り組むだけでなく、これまでの教科学習の延長として位置付けていくことも重要だと思います。例えば、教科の学習で学習者が探してきた資料に対して、「どんな立場の人がどんな意図をもって発信した資料なのか考えてごらん」と、ひとこと言うだけでもメディア・リテラシー教育になります。こうしたこれまでの実践を一歩進めれば十分メディア・リテラシー教育になるという事例をしっかりとストックしていきながら、そのための教員研修を行うことが重要だと思います。単なる操作技能であるとか教育方法の研修だけではなくて、やはりメディアとコミュニケーションの研修として、1人1台端末の研修を位置づけていくことが重要なんじゃないかと思います。
 以上です。
【佐藤委員】  ありがとうございました。
【東原座長】  堀田委員、お願いいたします。
【堀田座長代理】  東北大学の堀田です。できれば豊福先生、中橋先生のお二人にお尋ねしたいのですが、豊福先生が今日発表されたデジタル・シティズンシップの考え方とか、中橋先生が発表されたメディア・リテラシーの考え方というのは、GIGAスクール構想が動いたこれからの時代には改めて重要だと私は認識していますし、今日の発表も大変納得しながら聞かせていただきました。私は、情報端末やネットワークがそもそもどういう特性を持っていて、それで得られる情報はどういうものであるか、あるいは、そういう特性を持った道具を学び手としてどのように活用していけばいいのかということ自体が、教育内容としてちゃんと位置づくべきではないかと考えています。
 その上で1点質問です。若い先生たちの中には、既に情報端末の活用に随分慣れ、活用している方もいます。また、管理職やベテランの先生の中にも、必ずしも上からルールを与えるような教育ではない柔軟な対応をしている方もいらっしゃいます。一方で、機材の導入や制限について意思決定する層が、例えば御自身がSNS等になじみがないとか、あるいは役所の環境がデジタル中心になってないとか、そういう状況もあってのことだと思います。しかしながらデジタル・シティズンシップあるいはメディア・リテラシーについて、その必要性についての理解が不十分なため、昔の判断基準でいろんなことを判断してしまっているという現状もあるように感じます。
 日本の学校教育は設置者主義なので、文部科学省からいろいろ発信しても、なかなかそう動いてもらえないこともあるというジレンマがあります。各設置者や各学校の意思決定層に対して、デジタル・シティズンシップやメディア・リテラシーなどに関する考え方が重要であることを理解してもらうために、どのようなアプローチがよいとお二人はお考えかということについて御意見をいただければと思います。
 以上です。
【東原座長】  ありがとうございました。それでは、豊福先生からよろしいでしょうか。
【豊福氏】  かなり難しい問題だと思っています。明確にゴールを示す必要がありながら、実は佐藤委員にも御指摘いただいたとおり、実感あるいは成果として出ているケースが必ずしも多くないところが今の悩みだと思います。よく例え話をするのですが、「東京から品川まで新幹線に乗るか」という話で、ICTを使ってもコストがかかって、あまり成果が出ないもので、これが目標ですと言っても、あまり意味を成さないと思います。そこで、名古屋とか新大阪に行くようなものが、子供たちがここまで自分で判断して成果として出すものがあり、それが、将来の教育像としてこれは正しいものだということを事例として示す機会を設けていただくといったことが1つきっかけになるかとは思います。
【中橋氏】  設置者が動くための方法などがないかというようなこととして非常に単純化して言うと、多様なチャネルをつくっていくことが重要かなと思っています。つまり、設置者に対するコミュニケーションのチャネルですね。それは上から言われてやることももちろんあるかもしれませんけれども、現場レベルの先生方がボトムアップで、今こんなことが大事ですよねと声を上げていくことも重要だと思います。さらに言うなら、子供たちで、こんな学習してよかったよということを広く共有していくことが、やはり社会全体を変えていくためには重要なんじゃないかと思うのです。そういったところをしっかりと聞き取って、広く伝えていくことが重要なのではないかと思います。
 私からは以上です。
【堀田座長代理】  ありがとうございました。
【東原座長】  どうもありがとうございました。それでは、安全・安心な利活用に関することでは、以上とさせていただきます。豊福先生、中橋先生、どうもありがとうございました。
 では、次の話題に入らせていただきます。学校保健での利活用の観点として、資料3-3に沿って、全国養護教諭連絡協議会会長の小林様から15分程度で御発表いただき、その後、意見交換にしたいと思います。それでは、お願いいたします。
【小林氏】  よろしくお願いいたします。全国養護教諭連絡協議会の小林幸恵と申します。本日は、健康面に配慮した利活用について、養護教諭の視点から報告させていただきます。お願いします。内容は、ここにお示ししました3点でございます。
 1点目、ICTを活用した保健管理の実践と今後の展望について説明いたします。保健管理の実践では、健康観察に活用している事例としまして、毎朝生徒が登校後に自分の端末に体温や体調を入力、学級担任が確認、そして養護教諭が集約し、管理職に報告しております。また、健康観察アプリを活用している学校もあります。欠席の連絡の集約では、保護者がデータを送信すると、学校のパソコンで集約されるようになっております。部活動の健康管理、体調管理にアプリを活用している高等学校もあります。健康診断では、事前に検査の受け方などを、動画で視聴してから検査を受けるような事前指導に活用している学校もあります。体重や視力等、要観察を必要とする児童・生徒の個人データを個別指導や健康相談に活用している学校もあります。
 保健管理の今後の展望といたしまして、健康観察では、登校前に体温や体調を端末に入力することにより、迅速かつ正確にデータを集約、保存、分析することができ、現状の紙の健康観察表以上に、感染症などの疾病の早期発見、早期対応が可能になると思います。健康診断では、データの個人管理や個人記録としての活用ができ、児童・生徒の心身の状況の変化への気づき、エビデンスに基づく個別最適な指導・支援の充実などに有効だと考えられます。そのほか、保健記録としての活用も考えられます。保健管理に関する記録が一元化されることにより、救急対応時に既往歴や保健室来室記録が瞬時に把握でき、速やかに正確かつ適切な対応や判断が取れるなど、有効な活用が図れると思います。また、オンライン健康相談を開設することが可能になり、メンタルの支援が必要な児童・生徒が、いつでもどこからでも健康相談を受けることは可能になると思います。保健管理では、個人情報の扱いに細心の注意を払い、個人情報の管理の徹底を図ることが重要であると思います。
 次に、2点目のICTを活用した保健教育の実践と今後の展望について説明いたします。実践では、保健の学習時や健康診断の事前指導にプレゼンテーションソフトや動画等を活用している学校があります。学級活動での保健の指導実施時に活用している学校では、端末内のアプリを授業で使用したり、指導の途中に振り返りの質問などを取り入れたりしております。おのおのの回答が把握でき、児童・生徒がどのように理解しているか、考えているか確認をしております。そのほか、生徒委員会活動に連絡、報告等に活用している学校や睡眠教育の指導に睡眠状況を入力し、活用している学校もあります。
 これは、本校で今年の6月に6年生を対象に実施しました保健指導の様子です。本校では、今年の4月に端末が配付されました。この時点ではまだ電子黒板が配備されておりませんでしたので、このような形で授業をしました。授業では端末内のアプリを使用し、健康な歯肉と歯周炎の歯肉の画像を各自端末で比較したり、端末のカメラを使用して自分の歯肉を撮影し、観察したりする内容でした。
 保健教育の今後の展望としましては、画像や動画等を鮮明に提示できることや、児童・生徒の考えや意見集約が授業内にできることなど、保健教育に活用し、教育効果を上げることができると思います。また、紙面で行っていた生活リズムチェックなども端末を活用することで個人データを蓄積し、迅速かつ正確に集計することができ、公務の効率化にもつながると思いました。ほけんだよりも、現在は紙面で配付したりホームページに掲載したりしておりますが、端末を活用し、配信することで、今まで学校からの一方的な発信に対し、児童・生徒や保護者からの意見、感想、質問等返信も可能になり、双方向での意見交換ができ、個別の指導、支援の充実につながると思います。
 次に、3点目の1人1台端末の利活用に伴う課題などについて説明いたします。
 初めに、端末の持ち帰りによる荷物の重さ等についてですが、荷物の重量化につきましては、端末導入以前から各学校で検討されており、改善に向けた対策が取られておりました。今回の端末の持ち帰りに当たり、小中学校では、負担の軽減について試行しているところが多いように聞いております。また、高等学校では、今現在、10キロぐらいある重さが、端末により参考書等の量が減るのであれば荷物の軽量化につながるという意見もありました。
 利活用に伴う課題につきまして、予想される健康課題として、視力低下、脳への影響、ネット依存、姿勢、ドライアイ、睡眠不足、運動不足による健康被害、また、ネット上での人間関係づくりの問題、コミュニケーション力の低下等、メンタルの面でも影響が考えられます。文部科学省から3月12日付の通知の中にも、健康への配慮等について書かれておりますが、今後、どのように指導していくとよいのか検討していく必要があると思いました。
 そのほかの課題としましては、端末の使用についてのルールの確認と家族の協力が考えられます。家庭の協力によって差が生じることが懸念され、啓発の難しさがあります。また、本来の目的とは異なる使用、ゲーム機になったり、休み時間にアイドルの動画を視聴していたりするなどの事案があり、それらの発生、課題への対応や情報モラル教育の充実などが課題として考えられます。
 最後に、ICTを活用して保健管理や保健教育を実践し、教育効果を上げている養護教諭もいれば、ICT環境が保健室に整備されていない養護教諭まで、指導者用の端末が配備されてない等の現状もあります。ぜひ環境整備の促進、ICT活用指導力の向上を図る研修機会の設定をお願いし、報告を終わりにさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
【東原座長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表につきまして意見交換に移ります。いかがでしょうか。
 國香先生、まずお願いいたします。
【國香委員】  富山市立芝園小学校校長の國香でございます。よろしくお願いします。今、小林先生がお話ししてくださった課題が、学校現場でも切実な課題としてありまして、本当に納得して伺いました。1人1台端末活用の以前から、学校ではネット依存の問題、それから、コロナ禍における運動不足による体力低下、家に籠もりがちであるということで、肥満傾向等の課題が山積しております。1人1台端末の活用に伴って、学校課題では、今までのこれらの課題がさらに顕在化してくるのではないかという懸念を持っています。今までの課題と1人1台端末の課題と重なるところも多々あるのではないかと思っています。それを一つ一つ課題として指導することによって、保健指導の時数も増加するという心配もありまして、それを軽減するために、今まであった課題と1人1台端末の導入による課題とを統括的に指導することは可能なのかどうかということで、もしよいアイデアがあれば教えていただければと思います。
 以上です。
【小林氏】  ありがとうございます。その指導につきましては、視力につきましても人間関係づくりにつきましても、各学校ではもう指導が行われているにもかかわらず、視力もここ10年間、毎回、視力低下の子供が増加傾向にあるというような改善が図られないこともありますので、今後もいかに効果的な指導ができるかというところは検討していく必要があると思っております。
【國香委員】  ありがとうございます。またよろしくお願いいたします。
【東原座長】  次、安藤委員、お願いいたします。
【安藤委員】  大変貴重なお話、ありがとうございました。個人情報の管理の徹底が重要だというお話を伺っております。具体的にこのようにやるとうまくいくといった事例がありましたら教えていただきたいと思っております。保健室の個人情報管理、非常に重要であると考えております。よろしくお願いします。
【小林氏】  ありがとうございます。保健室の個人情報管理につきましては、まずは1人1人の、やはりセキュリティの問題とかいろいろなこともありますし、基本的なこととして、これから1人1人の意識、個人情報管理について意識を高めることはもとより、今までもやってきておりますけれども、さらに端末を使うということに関して、セキュリティの面もしっかり整備してから安全に使えるようにしていくのがよいかと思っております。
【安藤委員】  ありがとうございました。
【東原座長】  続きまして、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】  東京学芸大学の高橋でございます。御発表ありがとうございました。プラスというか、非常にポジティブな保健管理の話題から、我々が常々心配している現場で幅広く情報提供、そして多くの視点をいただいたと思っております。
 特に、最後のほうにお話しされた健康の問題であるとか依存の問題が、結局ポジティブに使っていくことよりも多くの方の関心を集めるところだと思います。この点について、これからいろいろと情報を収集して、分析し、確かにどの程度どういう影響があるか、どんな出来事が起こるかを調べていく必要があるとは我々も感じているところです。
 その際に、保健の情報、健康データに関しては、先ほど個人情報というお話もありましたけども、教育委員会で集めたり、国で集約したりして、それを分析することを通して、様々な課題について早期に探知したり早期に対策したりするような取組が行われているとか行われつつあるということでした。例えば、マイナンバーカードを使ったデータ提供といった実証が行われていると思います。先生から見て、個人情報ということを考えれば、保健室でデータをしっかり守っていくことが大事だと思うのですが、情報をお互いに共有しながら早期にいろいろな課題を探知していくといった取組についてどのようにお考えか、御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
【小林氏】  ありがとうございます。やはりエビデンスに基づいた、課題解決等々ができることが一番よいかと思いますので、本当に安全面を確保してから、そういうものを共有して、今後いろいろな対策等を考えていければよいのかと思っております。
【高橋委員】  ありがとうございます。最初のほうの御発表のデータが集約されて、分析されて、様々なエビデンスベースの対策につながればと願っているところです。ありがとうございました。
【東原座長】  小林先生、ありがとうございました。健康面につきましては、日本医師会様より書面で意見招請を行っておりますので、ここで資料3-4に沿って、その内容を紹介していただきます。よろしくお願いします。
【大塚室長補佐】  それでは、資料3-4を御覧ください。日本医師会様より御意見をいただいております。
 まず、1パラグラフ目ですが、学校医に求められることとして、学校医にGIGAスクール構想をもっと理解してもらうべきと、それから、法定の学校健診といったものを介して、1人1台端末の影響を分析する必要があるのではないかということでございます。
 続きまして2パラグラフ目ですが、これは3月12日に発出文部科学省の通知などについて御意見をいただきました。おおむねチェックリストですとかガイドライン、ハンドブックについては肯定的に捉えられていながら、留意点を学校医がまだ把握してないので把握する必要があるのではないかということです。
 それから、ICT教育、政府の方針の流れなどを理解して、地元の学校の現状把握に努められるように、学校医、教育委員会、教職員が協議できる体制を整えること、このほか、いわゆる視力以外の健康影響、先ほど全国養護教諭連絡協議会の小林様からも話がありましたが、目以外の健康影響にも留意していく必要があるということです。
 3パラグラフ目としまして、その他の観点からいただいた御意見を紹介させていただきます。
 まず、教師のICTに関する知識と指導レベルを標準化し、教師のICTを使った指導内容が地域によって異なることを避けるべきである、いわゆる指導力をきちんと一定にさせる必要があるのではないかということです。
 続きまして、現在の法定で行っている学校健診でございますが、端末をこれだけの台数を長時間利用する環境を想定したもので設計されてないものですから、視力とか乱視以外にも睡眠障害ですとか使用時の姿勢、生活習慣の乱れなど、健診や保健調査票というのがありますが、こういったものを使って、よりきめ細やかな管理体制を求める必要があるのではないかということです。
 最後になりますが、視力については国民の関心も高いことから、調査事業を行い、実態を把握し、その結果を提出する必要があるということです。これについては、今年度、文部科学省で視力の関係について調査を行っているところでございます。
 医師会様からの御意見については以上でございます。
【東原座長】  御説明ありがとうございました。
 それでは、次に進めさせていただきます。特別支援教育の観点として、資料3-5、資料3-6に沿って、全国特別支援学校長会の市川様、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の喜多様からお一人10分ずつ御発表いただき、その後、意見交換をしたいと思います。
 まず、市川様からよろしくお願いいたします。
【市川氏】  全国特別支援学校長会の市川でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、特別支援学校における使用状況と活用を促進するための必要な事項について、全国の調査ができませんでしたが、校長会から聞き取りをした状況をまとめております。
 まず、特別支援学校についてですが、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、また病弱者、これ、身体虚弱の方も含みますが、5つの障害種があるということで、特別支援学校1つとしても非常に幅があるということを御理解ください。また、一つ一つの学校には、ほぼ通常の小中学校の教育課程に準ずる教育課程と、知的障害のある児童・生徒のための教育課程と、非常に障害の重たい方を対象にした自立活動を主とする教育課程の3つがあるということです。学級編制については、小学部・中学部においては6人で1学級、高等部においては8人ということ、重複障害のあるお子さんについては3人が標準ということで、学級は非常に少ない人数で動いています。これを踏まえて、各障害種別の校長会からいただいた意見についてお話をしていきます。
 視覚障害特別支援学校ですが、これに限らず、使用状況について、学校によって配置の遅れている学校、進んでいる学校があり、非常に幅があるということです。視覚障害者の支援のアプリについて、もしくはアクセシビリティのインストール等の準備を視覚障害では進めています。視覚障害特別支援学校の障害特性に応じた活用としては、カメラ機能の活用や、単眼鏡、拡大読書器の代用になります。それとPDFの拡大教科書、UDブラウザでフォントや配色の変更ができます。デジタル教科書の閲覧とパワーポイントを使った、追視とか注視の教材ということです。
 もう一つ、視覚障害特別支援学校においては、学校によっては児童・生徒が減少しているところがあるので、集団学習のために、近県の視覚障害特別支援学校とオンラインで、音楽や英語等の集団活動を実施しているところもあると聞いています。
 活用を促進するために必要な事項ですが、どこの学校でもありますが、校内の高速ネットワークは必要であるということです。また、視覚障害について言うと、タブレット端末だけではない周辺機器、例えば拡大ソフト等、こういうものの購入が非常に困難であるので支援が必要だということも言われています。それと、全盲児童・生徒への支援、もしくは重複障害の児童・生徒と障害の重たい方の活用の具体例など、一人一人の障害の実態に応じた端末利用の活用方法の開発が必要であるということでございます。
 聴覚障害の特別支援学校についても、非常に幅があるということで、全ての児童・生徒への配置が終わった学校から、まだ数がそろってない学校、2学期からやろうと思っている学校もあるということです。各教科等の活用については、小中学校とほぼ同じような内容になってくると思いますが、ここに書いてあるとおり、行われている学校もあると聞いています。
 聴覚障害のお子さんの特性に応じた活用については、UDトークという音声を文字で変換するアプリがありまして、先生の音声によった説明等を文字で変換することで児童・生徒が読むような活用をしているところもあります。
 聴覚障害についても寄宿舎がありますので、寄宿舎も含めたWi-Fiの環境は非常に重要になってきます。それと、聴覚障害の場合には、音声だけではなくて、動画等を使っていかなくてはいけませんので、字幕や手話がついているような各教科等の学習動画の蓄積が必要であるということが上がってきていました。
 肢体不自由のお子さんのための肢体不自由特別支援学校ですが、状況について幅があるということでございます。肢体不自由の特別支援学校は障害の状況に非常に幅があり、活用状況が一言では言いにくい部分があります。準ずる教育課程、知的障害の教育課程、自立活動を主とした教育課程があり、非常に幅があります。準ずる教育課程については、小中学校の教科学習の活用に準じた活用が可能ですが、一斉授業というより個別学習の機会が多いと思います。知的障害のお子さんについては、選択肢をタッチしてコミュニケーションの指導とか動画を活用したものを行っているところもあるということです。それと、視線入力装置という高度な器具を使う場合がありますが、これについては扱いに専門性が必要となってきています。
 活用を促進するための必要な事項として、障害の重たい児童・生徒の場合には動画の活用が有効になりますが、教科書に対応した動画教材ソフトの配信や動画教材作成に長けたICT支援員等の配置が必要であると思います。また、人工呼吸器等を使っているお子さんもいらっしゃいますので、電波による誤動作の可能性がある医療機器について、ICTの活用がどのような影響を与えるかについては今後検証が必要ではないかという意見も上がっております。
 知的障害特別支援学校の状況については、これも遅れている学校、進んでいる学校がございます。知的障害の子供については、操作が可能な児童・生徒から操作に支援が必要な児童・生徒まで非常に幅があるということを踏まえている必要があり、そのような障害の特性を踏まえた活用を、今検討、模索をしている学校が多いということです。活用を図り始めた学校では、資料以下のような内容を進めているところがあります。
 あと、知的障害のところで意見が多数あったのが、障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒の共同及び交流学習ということで、通常の小中学校との学校間交流などで、Zoom(←固有名詞を出しても良いか?)等の機能を利用した間接交流をし始めた学校があると聞いています。
 知的障害の子供について活用を促進するための必要な事項ですが、知的障害のある児童・生徒が活用する教科用図書の充実が重要で、今、文部科学省で文部科学省著作教科書を全ての教科で作成することで進めていただいていますが、これが第一であると思います。次に、それをデジタル化する必要があり、デジタル化した後にデジタル教材を作っていかなくてはいけないということがあります。また、知的障害のある児童・生徒が活用するアプリについて、一人一人幅がありますので、教員がある程度修正できて、個に応じた活用ができるようなものが必要であると思います。また、一斉指導での活用というよりも、個別の課題学習での活用が中心になっていくことを考えなければいけないと考えております。
 これらを考えた上で、知的障害特別支援学校における活用事例の収集等、優良事例の情報提供が必要ではないかと。また、児童・生徒への情報モラルの指導については、知的障害のお子さんの場合には指導だけでは難しい部分もありますので、端末を使う場合、最初からセキュリティ対策を図っていくような必要もあるかと考えております。
 病弱・虚弱の子供については、病院に入院しているお子さんをイメージしていただければと思いますが、これも様々な幅がありまして、病院隣接の学校とか院内学級とかベッドサイドでお勉強なさっている方、また、全寮制の特別支援学校というところもございます。ベッドサイドでの活用について、ベッドサイドで配信授業や遠隔授業をしているところや、タブレット端末による指導をしていたり、自宅療養や新型コロナウイルス感染症対策のために登校を控える場合の授業を配信したりしているところもあるということでございます。
 病弱だけではなく、自宅への遠隔授業とか授業配信のことを考えますと、家庭のネットワークの充実が不可欠であるということ、また、Zoom(←固有名詞を出しても良いか?)等の有料ソフトの使用のための予算措置が必要であるということがあります。あと、病弱の場合には、病院に隣接しているところもそうですが、病棟内で電子機器や通信機器の制限があると、地域の端末を持ち込むことができないことも多く、病院内でのネットワークの活用方法が非常に課題になると聞いています。また、原籍校に戻るお子さんの不安軽減のために、原籍校で活用している端末や学習クラウドやアプリも含む活用方法との調整が必要で、設置団体によって学習クラウドやアプリが違ってきますと、特別支援学校の場合、それに応じた調整を全部やっていかなければならないところが大きな課題になると考えております。
 私立の特別支援学校です。私立についても、支援をしていただかなければいけない部分があると校長からは聞いております。特に次期端末機の導入の切替えにおいても、費用の継続的保障が必要になるということでございます。
 最後に、共通の意見をまとめました。まず、校内ネットワークの充実が不可欠であるということ、さらに、障害の重い児童・生徒に対する活用方法や自立活動に関する利用方法の研究・開発が必要であるということです。特別支援学校の場合には、一人一人の児童・生徒の状況に応じたICTの活用が不可欠なのですが、教育委員会が契約した授業支援クラウドによる活用とか、端末に同一のアプリ等をインストールしての活用など、全ての学校が同様の仕様で活用することはなじまないことがあります。個々の学校ごとに学習システムが使えるような支援が必要です。これは、学校設置者とシステムの提供企業との契約についての調整が必要になってくることが大きな課題です。
 同様に、特別支援学校の場合には、一斉指導の活用よりも個別の活用が重要になるため、児童・生徒の障害種別とか特性、状態、生活環境等を十分に把握した上での構想の実現が望まれます。一人一人の児童・生徒ごとに教員が適切なアプリ等をインストールできるなどの柔軟な対応が必要で、この場合はそのようなアプリを購入できるような予算措置や支援員の配置等が不可欠になると思っています。
 さらに、学校外での破損について保護者負担になることが心配だという声が多いです。持ち帰りを望まない保護者もいると聞いています。また、特別支援学校の場合は、下校後、スクールバスを利用して、その中で破損した場合にはどちらの責任になるのか。また、放課後デイサービス等を利用する場合も多いのですが、その場合でも、破損の場合、どちらの責任なのか、家庭以外での破損の場合の取扱いが心配だという意見を聞いています。破損について、どのような補償をしていくかということが今後の課題になってくると思います。
 最後になりますが、家庭での活用の推進のためには、家庭でのネットワーク環境等の充実が不可欠になりましたが、そうした費用について、就学奨励費の対象とすることの検討も必要ではないかと考えております。
 特別支援学校長会といたしましては、以上でございます。
【東原座長】  続きまして、喜多様よりお願いいたします。
【喜多氏】  全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長会の喜多と申します。
 では、私からお伝えしたいことといたしましては、本協会で調査をしている全国調査があるのですが、そこでGIGAスクール構想に係る全国調査をしていますので、1つ目にそれに基づいた現状と課題について、2つ目に利活用の事例について、3つ目に今後に向けてということでお話をさせていただきたいと思います。
 1つ目は、全国調査についてです。全国に小中学校3万校近くありますけども、その中で、特別支援学級・通級指導教室を設置している学校1万7,500弱あります。本協会はその学校の校長が入っている協会です。その校長に対して約10%、1,750近くの学校に以下の期間で調査をしています。内容といたしましては、特別支援学級等のGIGAスクール構想の進捗状況、デジタル教科書活用状況等について調べています。これから発表させていただくのは、8月23日現在の速報値を基に作成していますので、御了承ください。
 調査の中で、学級と教室の1日のタブレット端末の使用状況の平均時間を調査したものについては、63%が大体1日当たり15分から60分弱と回答しています。調査によると、高速大容量ネットワーク工事が進んでないところが多く、まだまだこれからということがこの調査から見えてきました。
 続いて、タブレット端末活用状況なのですが、左下の円グラフを見てください。持ち帰りをしないで、学級での活用が約8割になっています。持ち帰りは5.3%です。家庭との連携について聞いたところ、6割、7割ぐらいが、何かしら課題があると書いてあります。自由記述の中に、持ち帰りが少ない背景として3つ挙がりました。自宅に持って帰るに当たって、何かしら障害のある子供ですので、破損がとても心配であるという声、あとは保護者が家庭でなかなか学習支援が難しいという声です。あとは家庭でのネットワーク環境が未整備というのが大きいと思います。
 学校生活での活用場面ですけども、5割、7割と、ある程度教科の指導、領域・教科を併せた指導の中で活用されています。ただ、特別支援学級・通級指導教室は自立活動を主に行いますが、その部分はまだまだ伸びていないので、今後、活用の時間が必要になるかと思っています。日常生活の指導、朝の会でも良い報告はあるのですが、まだまだこれからだと思っています。特別支援学級・通級指導教室自体に大容量の回線が未整備という自治体はかなりあるようで、全ての学級にLAN環境が必要だということが、この調査からも読めてきました。
 デジタル教科書に関しては、学習者用が必要であるという回答が約6割ありました。障害のある子供にとって、文字や文章、絵や図の拡大、ルビ振り、切取りができ、読み上げができるデジタル教科書はとても有効なので、多くの学校で今後の整備を望んでいるということが分かりました。
 指導者用のデジタル教科書の整備状況について調査をしました。整備されているのは大体3割ぐらいで、活用については6割が有効であると回答されてきました。ただ、通級については、この資料では数値が低いですが、今は伸びていて特別支援学級と変わらない数値が出ています。いずれにしても、早急な整備が求められると思います。
 教員の専門性向上のための研修に関しては、84%がまだまだ課題であると言っています。支援体制の整備も同じ程度で、人的な支援に関しても、やはり7割近く必要である、課題であると回答してあります。
 各学校にはタブレット端末の活用に長けた教員がおりますがまだまだ多くの学校が試行錯誤している状況が見えてきます。ICT支援員等の増員であるとか専門性のある企業との連携が今後の課題だと思います。
 アプリケーションソフトに関しては、「教育ソフトの充実が必要である」「課題である」という回答が8割弱ありました。今、自治体には主にOSが3つあり、iPad、Windows、Chrome book、その他、自治体ごとに選定しています。ただ、特別支援教育で活用できるアプリというのは、iPadに非常に多く、偏りがあると思っています。
OSが違っても教室で共通で活用できるアプリが必要だと思っています。そしてアプリのインストール制限は、自治体によってかなりあるそうです。また、先ほど、教育支援クラウド、ソフトに関して、学校でもありましたけれども、自治体格差がかなり生じている状況が出ています。
 次に、周辺機器、主に電子黒板や大型モニタ、書画カメラ、周辺機器を含めたICTの環境整備について調査をしました。8割以上がやはり課題であると言っています。報告の中には、タブレットと併用して活用することで非常に効果的にできているという報告もたくさんありますので、さらに整備が求められると思います。
 実践事例や指導法などの情報収集については、かなりの学校で課題があると感じています。情報モラルについても同様だと思っています。指導事例が本当に特別支援学級・通級指導教室で少ないものですから、情報モラル教育の実践事例も含めて事例集が求められるというのは見えてきました。
 タブレット端末の特性を生かした利活用について、2番目です。今回は、特別支援学級では知的障害と自閉症、情緒が全国で主ですので、その学級から調査をしています。通級指導教室は、主に発達障害をメインにしながら聞いています。知的障害と発達障害に関わる特性はそれぞれに抱えているものがあるのですが、これをリカバーし、うまく生かすといった特性がタブレット端末にはあると思っています。今、7つほど出ていますけれども、提示ツールであるとか記録ツール、検索ツール、発表ツール、共有ツール、アプリによる支援ツールなど、特に今は赤色の部分の4つに関して利活用の報告が上がってきています。
 具体的に申し上げます。特別支援学級における利活用については、記録ツールでは、カメラ機能を活用し、コメントを入れて作品を作る、動きを動画に撮る、発音なども動画に撮る、漢字などを撮影して、トメ、ハネ、ハライなどの確認をするという報告が上がっています。
 共有ツールとしては、学級で野菜作りをした動画を全校で紹介するために活用するなど、先ほども特別支援学校でもありましたけども、交流教育が盛んですので、学級等でGoogle Meetを使って、交流学習を継続するというケースもありました。アプリによる支援では、音楽アプリを活用したもの、あとはスクラッチソフトを活用したものがありました。
 通級指導教室における利活用については、不器用さや感覚の過敏さを改善するために、模範運動を動画視聴して個別支援するという記録ツールの活用がありました。アプリによる支援ツールでは、ノートに書き込むことに困難さのある子供に対して、キーボードを打ち込むことで書画学習をする、板書をカメラ機能で記録するというのもありました。視覚の情報処理が苦手な子には、デイジーの教科書を活用したことがありました。共有ツールでは、コミュニケーションボックスを設定したということもございました。
 今後に向けては、これまでの結果を踏まえて大きく7つ書かせていただきました。1つ目は、全ての特別支援学級児童・生徒が使用できる1人1台端末の配付が必要だと思います。2つ目は、全ての特別支援学級・通級指導教室にネットワーク回線の整備、3つ目は専門家等の人的支援、ICT支援員などの増員が求められると思います。4つ目は、どのタブレットでも無料で安全にダウンロードできるアプリの開発が必要かと思います。5つ目は、今、文部科学省でも考えていらっしゃると思いますが、学習者用・指導者用デジタル教科書の配付が学級や教室にも求められます。6つ目は、タブレットを生かす周辺機器のさらなる整備、7つ目は、タブレットを活用した実践事例集とデータベースの充実をさらにしていただけると、ICTの次世代活用、利活用が本当に進むと思います。
 以上となります。
【東原座長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表について意見交換に移ります。なお、御質問いただく場合には、市川様か喜多様、どちらへの御質問かということもお示しいただけるとありがたいです。
 では、最初に三井委員からお願いします。
【三井委員】  常葉大学の三井でございます。御発表ありがとうございました。喜多先生へ質問をさせてください。
 特別支援教育では個に応じた指導がより一層求められていると思います。だからこそ、アプリケーションソフトの充実を感じている教員が多いという結果にもなっていると思います。特別支援教育に携わられている先生方も、日々御苦労されながら、様々な実践を行っていることと推察いたします。特別支援教育での端末を活用した実践例というのは、通常学級で特別な支援を要する児童・生徒への支援、また、ユニバーサルデザインの視点からもとても参考になると思いますので、実践の積み重ねと、その共有を強力に推進していく必要性を強く感じております。
 現在、地域によっては、教員同士がオンライン上で日々の実践を共有するという事例がありますが、特別支援教育と通常の学級で行われている事例を地域の特性に応じて共有し合う、このような事例が先生の身近にあるか、また、この実践を蓄積、共有していく仕組みについて先生のお考えをお聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。
【喜多氏】  ありがとうございます。御指摘いただいたように、今、情報共有がとても大事になってきています。東京都の事例、また本区の事例でもありますが、特別支援学級の学級で集まる会というのが東京都の多くの地域で開催されています。その中で、オンラインでつながって情報共有して、本区であれば区のクラウドの中に実践をためて、みんなで共有するという活動を今、地道に取り組んでいるというのが実践としてあります。今後進める必要があると思います。
 以上です。
【三井委員】  ありがとうございます。特別支援学級ではなく、通常学級の中にも特別な支援を要する子供たちもいると思います。そこに在籍していなくても情報共有とか実践の共有が推進されると良いと思い、質問させていただきました。ありがとうございました。
【東原座長】  
 高橋委員、どうぞお願いします。
【高橋委員】  お二人にうかがいたいのですが、特別支援教育に関わる先生方の創意工夫には、私自身大変敬意を持っています。この後のソフトウェアとかツールの開発において、いろいろ考えて作れば作るほど、非常に何かに特化したものになってしまうような気がする一方で、先生方お二人のお話によると、現場の創意工夫も必要なんだと、それらを保障するようなソフトウェアも必要なんだという御発言もあったと思います。今後、コンテンツやツールを作っていく上で、何かに特化したものと汎用的なもののバランスは非常に難しいように感じるのですが、その辺りについて先生のお考えを聞かせていただけますでしょうか。
【市川氏】  特別支援学校長会の市川でございます。ありがとうございます。基本的には、私の個人的な思いで言えば、個別学習が基本になりますので、まず、教科学習の数の勉強でも文字の勉強でも、もしくは教科以前の認知学習でもいいのですが、個別学習ができるようなアプリの開発が最初だろうと思っています。そのアプリを開発した上で、そのアプリの上で学習を進めていきたいと思っています。ただ、中には、そのアプリから少し発展したものが必要になるのであれば、それを教員が少し修正できればありがたいなと思っています。ただ、正直に言うと、私の学校でもiPadが配られていますが、iPadの中に入れるものがないから動かないということがあります。それは、通常の学級でやっている学習クラウドを使った一斉指導の中で、みんなの意見を集めてどうこうというよりも、まさにiPadを使った個別の学習が特別支援学校の場合は重要だと思っています。ですから、個別の学習ができるようなアプリをいかに開発し、学校に提供してくれるか、それが重要だと思っています。
 以上です。
【喜多氏】  特別支援学級・通級指導教室の喜多です。今の御質問に関して、個別に特化したという部分に関しては、特に自立活動のアプリ、ソフトウェアが今開発中だと思っており、これが肝になってくるので、その部分はさらに進めていく必要があるかと思っています。汎用性に関しては、特別支援学級によっては、将来、日常的な生活の中で使える、社会生活で使えるアプリ、ソフト等のツールは今後大いに有効だと思っています。先ほど通常学級の話がありましたけども、ユニバーサルデザインのことを考えたときに、グレーゾーンのお子さんもかなりいらっしゃると思います。そういったお子さんでも活用できる、多様性のあるアプリが必要だと思います。
 以上です。
【東原座長】  ありがとうございました。市川先生、喜多先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、議題の(2)に移ります。資料3-7-1、資料3-7-2に沿って、GIGAスクール構想に関する各種調査の結果について、事務局から説明をお願いいたします。
【水間室長】  事務局でございます。時間が限られている中での御説明となりますので、一部の概要のみとなりますことを御了承いただければと思います。若干順序が逆となりますけれども、資料3-7-2は情報化の実態等に関する調査結果速報値です。
 こちらは、統計法に基づく定例的な調査でございまして、調査基準日が例年3月1日であるため、3月1日以降各自治体等によって整備された端末やネットワークなどの整備状況については反映されておりません。そのため、この調査結果のうち、例えば端末の整備もしくは校内通信ネットワークの状況、統合型校務支援システムの状況につきましては、この後説明いたします3-7-1の、関連の調査結果も御参照ください。
 それでは、資料3-7-1を御覧ください。こちら、GIGAスクール構想に関する種々の現状について分野ごとに取りまとめたもので、5種類ございますが、1ページ目がハイライトとなりますので、このページを中心に説明申し上げます。
 1番目です。今年7月時点の公立小中学校における端末の利活用状況です。全国の公立小学校等の96.1%、中学校等の96.5%が全学年または一部の学年で端末の利活用を開始している状況でした。
 2番目になります。公立高校における端末の整備状況になります。こちらは8月時点の状況ですが、1人1台端末を整備済み、または整備の方向性を明示し検討している自治体様が全47都道府県になっております。
 3番目です。校内通信ネットワークの環境ということで、5月時点の状況です。前回の2月時点の調査と比較して、校内ネットワーク環境であるとかインターネット環境に改善が見られます。一方で、通信速度に課題が見られる事例がありますので、専門家によるアセスメントなどを通じた原因特定と、適切な対処に役立つ資料も併せて公表しております。
 4番目です。5月時点の自治体におけるGIGAスクール構想に関連する課題です。まず、義務教育段階、市区町村については、学校の学習指導での活用、教員のICT活用指導力、持ち帰り関連などが主な課題として挙げられておりました。また、高等学校段階では、都道府県レベルになりますけれども、端末整備、学校の学習指導以外の活用などが主な課題として挙げられておりました。
 5番目になります。5月時点の統合型校務支援システムの導入状況でございまして、校務支援システムのサーバーがインターネットに接続されている割合が48.7%、また、校務系と学習系のデータ連携が実施されているところが4.2%になっています。非常に短時間での一部の抜粋になり、大変恐縮でございますが、説明は以上でございます。
【東原座長】  ありがとうございました。5分程度しかございませんので、質問は1つか2つと限られてしまうかと思いますが、今日まだ御発言いただいてない方を優先で、いかがでしょうか。
 
 では、渡邊委員、よろしくお願いいたします。
【渡邊委員】  相模原市の渡邊です。御説明ありがとうございます。今日はいろいろな話を聞かせていただきまして、どうもありがとうございました。質問というか、今後のことについての要望も含んだ、今回の調査結果に対する感想のようなことを発言させていただきます。現在、緊急事態宣言等を受けて、本市でも一斉臨時休校がありましたが、その期間中に、各校がオンライン授業などに取り組むなど、教育の情報化が今回の数値以上に、ますます加速していることはとても良いことだと思っています。ただ、その中で、保護者や地域の方々から、今後はオンライン授業だけでいいのではないかといったような声をいただくなど、世の中のいろんなニュースのコメント等を見ると、そのような風潮になっていくのではないかと、危惧を覚えているところが少しございます。
 1人1台環境の整備というのは、本当は今まで学校で実現が難しかったような学びとか、授業改善が行われるのが本来の目的であると思っております。よって今回の全国で進んでいる様子の結果を受けて、今後の調査、吸い上げる情報等については、ぜひいろいろな方々に周知できるような形で発信していただきたいという期待を持っております。よろしくお願いいたします。
 以上です。
【東原座長】  
 続きまして、中村委員、お願いします。
【中村委員】  つくば市の中村でございます。つくば市では、今、ネット投票といったものも実際に取り組んでおります。これの流れといいますのは、やはり今、先生方から御示唆を受け、これが大事であるだという情報を私のほうで、首長、教育長と相談しながら、市として必要なことをどのように取り入れていったらいいのかを今、つくば市では実証をしているところです。そういった取組の流れがどうやって一般化されていくのか、ぜひ御示唆いただければと思っております。
 まだまだカリキュラムができていない中での取組ですので、今ある教科横断的にカリキュラムの中で行っているところです。それが正しいのかどうかについても、今後、ぜひ御教示いただきたいと思って今日聞いておりました。大変ためになるお話、ありがとうございました。感想となります。
 以上です。
【東原座長】  ありがとうございます。
 山本委員、いかがでしょう。
【山本委員】  今日はありがとうございました。特別支援の調査については、実は私も関わっておりまして、全国からアンケートを取りました。非常に短時間の調査だったのですが、各県とも関心が非常に高くて、参考になる意見をたくさんいただきました。今日は全特長からのお話ということで、大分集約された形でのお話だったので、できればそれぞれ各校の御意見をぜひ文部科学省にも届けさせていただけたらと思っております。特別支援でもICTについては非常に期待が大きくなっておりますので、今後ともぜひ、いろいろな御意見を参考に進めていきたいと考えております。ありがとうございました。
【東原座長】  ありがとうございました。今日は、各分野の御専門の方々からいろんな情報とか御意見等を承り、また、委員の先生方から御質問していただくことによりまして、より一層理解を深めることができたと思います。本日の会議はこの辺りまでとしたいと思います。事務局より何かございますでしょうか。
【大塚室長補佐】  次回についてですが、都道府県教育委員会が担う役割等に関してのヒアリングの実施等を予定しております。日程につきましては、事務局より追って御連絡させていただきます。
 以上です。
【東原座長】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで閉会としたいと思います。御協力ありがとうございました。

―― 了 ――

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