児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和3年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年6月25日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催

3.議題

  1. 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議審議まとめ(案)
  2. その他

4.出席者

委員

    新井委員,内野委員,川井委員,窪田主査,阪中委員,中馬委員,坪井委員,松本委員

文部科学省

 瀧本初等中等教育局長,蝦名大臣官房審議官(初等中等教育局担当),江口児童生徒課長,鈴木生徒指導室長

5.議事要旨

【事務局】 今日の会議では、これまで御議論いただいた内容を踏まえ、審議をまとめていく。
【主査】 審議まとめは、現状を分析して、それに対してどういう施策が必要かという第1部と、それから、SOSの出し方を含む自殺予防教育の在り方に関してのまとめという第2部の構成になっている。
第1部としてコロナ禍における児童生徒の自殺等に関する課題と対策として、第1章が現状と課題、第2章で具体的に必要な今後の施策について整理をしている。そして、第2部にSOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防の在り方ということで、これまでの取組を整理した上で、SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の在り方について具体的に示す内容となっている。
まず第1章だが、令和2年の自殺者数の推移と過去の増減との比較で、前年に比較して100名増加している。特に8月、11月を中心に非常に多くなっている。特に女子の増加ということが昨年際立っており、病気、精神疾患のところ、親子関係の不和、これまでそれほど多くなかった進路に関する悩みというところ、学業不振といったところが大きく増えているところが特徴である。男子は全体を見ると、それほど増えておらず、ほぼ前年度と同じような傾向で、学業不振、進路、親子関係となっている。女子における鬱、その他精神疾患の多さ、それから、男子における学業不振の多さが見受けられるが、進路に関しては、これまで女子は少なかったが、大きく増えているというところが特徴。親子関係というところは大体3番目ぐらいに多いが、特に女子の増加が際立っている。
大変な深刻な状況であるが、その背景として、原因・動機のところは、上位3位自体はそれほど変化していない。やはりコロナ禍における家庭環境の変化において、親子関係の不和は常に挙がっていたが、コロナ禍における生活・社会全体の混乱とか経済状況の悪化等による、各世帯、親への影響というのが子供に波及していて、家庭が子供にとって安全な居場所でなくなっているということは既に多方面で指摘されているが、本会議の分析においてもその辺りについて触れている。
もう一つはコロナ禍における学校環境の変化について。昨年3月から5月にかけての長期休業で、子供たちにとっては居場所であった学校での何げない日常が失われた。そこで息抜きや、いろいろなことを達成したりするような機会がなくなり、自分を支える場所となる学校環境が大きく変化したということがあると分析している。
(4)について。特に女子児童生徒の自殺の原因の上位に病気の悩み、精神疾患だが、非常に増えている。それに限らず、心のケアを要する、非常に精神科的なケアが必要な児童生徒の増加は多く指摘されている。それらに適切に対応するには、関係機関との連携・協働が機能するような体制を整える必要があると分析している。
次に、課題だが、コロナ禍における子供を支える環境整備ということが重要である。学校は大分前から子供を支えるプラットフォームと言われてきているが、その学校が機能できるための環境整備ということが極めて重要。教員との信頼関係や児童生徒の相互の人間関係の上で、これまで議論してきたSOSの出し方に関する教育を含む自殺予防教育が、適切に機能する環境整備が必要である。
それから、2つ目には、危機的な状況に直面している子供たちを早い段階で支援につなげる体制の強化。ICT等を活用したツール、そして、表現されたSOSを適切につなぐような体制を整備する必要がある。
3つ目、非常に厳しい状況に置かれている家庭等、多様な背景を持った児童生徒の自殺の課題に対応していくには、これまで以上に関係機関が連携して取り組む必要がある。関係機関の連携が必要ということは従来から言われてきているが、それが機能する体制を整える必要がある。
第2章では、これまでの分析と課題を受けた施策について述べている。まず1つ目として、健康な児童生徒も含め全ての児童生徒を対象とする、心の健康の保持増進に係る教育及び啓発の推進。改正後の自殺対策基本法第17条に心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等規定されている。そこには、各人が共に尊重し合う意識の涵養と、心理的負担を受けた場合の対処の方法に関する教育・啓発、広く心の健康の保持に関わる教育・啓発の推進が挙げられている。この自殺対策のところでは、いわゆるSOSの出し方に関する教育ということで、心理的負担を受けた場合の対処の方法の教育のところのみが注目されているところがあるが、広く心の健康の保持に関わる教育を学校全体で全ての児童生徒を対象に実施していくことが環境整備として重要である。
これが実質的に機能するために、必要なマンパワーの確保や体制整備をより具体的に示したのが今回の審議のまとめである。心の健康教育、互いの尊重とか心理的負担の場合の対処方法というのは、自殺予防にかかわらず、いじめ防止とか不登校の未然防止等、子供たちの不適応の予防等、全てに関わる問題である。心の健康教育を自殺予防教育やいじめ防止教育と分けて、五月雨式に実施する体制でなく、体系化をして行える体制をつくることが重要である。
それから、これも現在体育や保健体育等が中心であるが、それ以外にも総合的な学習の時間等、教科横断的に行えるような実施時間の確保という点が重要。
また、このような教育は、児童生徒の最も身近な存在である担任の教師が中心となって実施することが日々の活動の中で伝えられるため重要であるが、そのために、スクールカウンセラー等、それから、地域の専門家等が様々な形で支援することで日常的に先生方が負担なく実施できる体制といった点をより具体的に整備する必要がある。
それから、1の部分は健康な児童生徒を含めた全ての児童生徒に対する対応となるが、2としては、リスクを抱えた児童生徒を可能な限り、早期に発見し、適切な対応につなぐために、ICTを効果的に活用する。GIGAスクール構想において、1人1台端末が実現してきている中で、ICTは、児童生徒の危機を発信する場合、今の児童生徒にとって電話等、直接的な面談よりもSNS等のICTを使用するほうが、非常にハードルが低いので、発信する場合、それから、それに基づいて、児童生徒の現在の状態を把握するときに非常に有効であるということが、既にこの会議の中でもヒアリングをさせていただいた幾つかの例からも分かっている。それをさらに具体的な支援、先生方とかスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーその他の支援につなげるために、どういった仕組みで行っていくか等、そのようなことが実現するような形でICTを活用していくことの重要性について指摘している。
3つ目、これも課題のところで出た、自殺予防のあらゆる段階における関係機関等の連携体制の構築について。子供たちを追い詰めているということなので、医療・保健・福祉とか関係機関や、地域の例えば民生委員さんとか児童委員を含めて地域との連携が不可欠。連携を促すだけでは実際学校は難しく、例えば校内に教育相談コーディネーターといった人材を十分に確保する、教育委員会がバックアップできる体制をつくる、それから、各学校や教育委員会に配置されているスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が関係機関とのつなぎ役を担う体制をつくるというような形で実効的に連携・協働が成り立つための仕組みということも含めて補強していくことが重要であると指摘している。
それから、第2部は、児童生徒の自殺予防に関するこれまでの取組を整理したもの。これまで2008年にこの会議の前身である会議体が構成されて以降、2009年に「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」が作られた。何より児童生徒の周囲に一番身近なところにいる学校で先生方に理解をしていただいて、ゲートキーパーとして機能していただくために作成された冊子である。
それから、2010年に「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」。事後対応ではあるが、年齢が低いほど周囲の自殺に影響を受けて、後追いというか群発の危険が高いということから、不幸にも自殺が起きたときにいかにきちんと事後対応をやるかということが自殺予防にとって非常に重要であるということは、この会議の最初の座長もおっしゃってきたことである。
また、2014年に「子供に伝えたい自殺予防」という形で自殺予防教育導入の手引きを出しており、これは、これまで行ってきたことについての整理と今後の課題をまとめている。
第2章、SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の在り方について。SOSの出し方に関する教育は、2016年の自殺対策基本法の改正、そして、それを受けて策定された自殺対策大綱の中で、「SOSの出し方に関する教育」と言われてきたが、2014年にこの協力者会議の下に出された「子供に伝えたい自殺予防」として文科省で進めてきた自殺予防教育というのがどういう関係にあるのか、どこが共通していて、どこが違うのかをヒアリング等に基づいて整理した。
詳しくは審議のまとめの付録の部分を見ていただきたい。文部科学省の自殺予防教育として、ポイントとして大きく2点ある。自分の心の危機等の早期の問題認識について、思春期や若い世代の子供たちは、教師や親等の大人に打ち明けるより前に、周囲の子供たちに相談をし、その結果、周囲の子供たちから見るといつもと様子が違うことが分かることもあるので、自身の心の危機に気づいて援助を求めるのももちろん重要だが、周囲の友達・周囲のクラスメートの危機に気づくということも含めて早期の問題認識、心の危機への気づきという点が1点。それから、そのときに適切に援助希求、援助要請をしていくということが2つ目のポイント。
しかし、突然SOSを出しましょうと言われてもなかなか難しい。下地づくりの教育として、教師や児童生徒間の温かい人間関係づくりや、心身の健康を育む教育等を行うこと。さらに、ベースとして学校の環境づくりが必要で、学校の中で適切に児童生徒の様子がしっかりと把握されており、相談する体制があることが自殺予防教育の土台としては重要である。
SOSの出し方に関する教育に関しては、法17条の中で3つ挙げられている強い心理的困難に対する対処法に関して学ぶ教育に該当し、援助希求的態度の育成というところに関わるものと位置づけている。
SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育を進めていく上での留意点としては、子供がSOSを出してきたときに周囲の大人がそれを適切に受け止めて、支援につなぐにあたり、教職員、保護者にも重要性について合意を形成していくこと。
一人一人の保護者に合意を取らなくてはいけないという誤解によって自殺予防教育が浸透しないという議論もあったので補足すると、子供たちに自分の心の危機に気づき、周囲の大人にSOSを出すことの重要性について、理解をしてもらう教育の重要性を周囲の先生方、保護者に十分理解をしていただきたいという趣旨の合意形成である。
また、適切な教育内容について。自死を美化するようなこと、逆に、自死を自分に負けたと考え、亡くなった方をおとしめるようなことがあってはならない。
自分の心を見詰めることで心が揺らいでしまうような不安定な生徒や、身近な方を自死で亡くした生徒等、リスクの高い子供たちをしっかりフォローアップするという点は、留意が必要。
その他の重要な点として、例えば周囲の人が信じられない、あるいは自分のことを大切に思えない子供たちは、危機に陥ったときにSOSを当然出せないこともある。自らを傷つけるような子供たちは、自尊感情の低さや周囲に対する不信感を抱えているので、校内の関係づくり、下地づくりの教育等で自殺予防教育をしていくことが大切。
学級集団とか個人レベルでのアセスメントと、それに基づく配慮についても大切。例えば、学級が非常に荒れているときには、友達の話を聞いて下さいという授業は成立し難く、ただやればいいということではない。以上、審議まとめの概要にて改めて整理を行ったところ。
それでは、この後の議論に入る。審議のまとめについては、この委員会で議論しながら進めてきた。改めて強調しておきたい点等、自由に御意見をいただきたい。
【委員】 全般的に方向性が打ち出せたと思う。強調すべき点は、ICTを利活用した自殺予防を進めていく、子供たちにとって発信するチャネルを増やすということである。また、ICTを利活用した教員や大人がどう気づき、受け止め、支えていくかが非常に重要である。
SOSを出せということだけではなく受け止めること。その前に必要になる信頼関係をつくっていくためにも、教員同士の学び合い、文部科学省あるいは教育委員会等が開催する研修を大事にし、学校の中で子供の命や死に対する意識を教員間で話し合い、教員側で受け止める素地をつくっておくということを強く強調しておきたい。
【委員】 学校の立場で考えたときに、指導の体系化は非常に大事な点である。いじめ問題と自殺予防を分けずに、心の健康の保持の教育ということに一体的に取り組んでいく重要性、また、子供の心の健康の保持に焦点を当てて考える道筋をつけていくことが大事なことかと。
2点目は、時間の確保とマンパワー、さらに3点目は、コーディネーターの役割と、研修を含めた体制の整備。大きくこの3点が学校という立場で考えたときに大事な視点かと思う。
その他にもICTについて。子供たちの様子を見ると、ICTが不登校の子供やひきこもりの子供、コロナ禍で自宅待機を余儀なくされている子供たちは、学校に行けないけれども、学びたいと思っている、友達と関わりたいという思いは共通にあるだろうと強く感じる。そのようなときに、休業中の全ての子供たちも含めて、顔をお互いに見ながら学習活動をし、交流していくことが、友達あるいは学校、教員も含めて、つながりを確保するための1つの手段かと、心の健康にもつながると思う。
【主査】 ICTが入るからこそ、より生のつながりが重要になってくる。ICTを通じてのつながり、それを活用できるようになるための先生同士の学び合いや研修をより強調していただいた。学校がうまく取り組めるための環境整備という点で踏み込めたかと思う。
特に自殺の背景部分を整理していただきたい。分析から今後の必要な点について強調しておきたいこと等についていかがか。
【委員】 下地づくりの点について。いろいろな教育が自殺予防教育の下地づくりに役立っている中で、重要な役割を果たしている教育が2つある。1つは、性教育。児童生徒の中で、危険な性行動をする子たち、特に女子の中で、家庭や教室での居場所のなさが、どこかで信頼できるつながりを求めることにつながる。例えばコンドームのことを言い出せなくなる等、相手の男性が求めに応じてしまう。この点で、性教育も自殺予防教育と密接に関わっているということを忘れてはならないと思う。
2つ目が薬物乱用防止教育。1回薬物をやったら人生が破滅とかと学校で教えられている。10代の薬物乱用の子たちは、実はほとんどが市販薬を使っている。典型的なパターンは、死にたい、消えたいと思って、リストカットを繰り返し、また、摂食障害を持っているなどして、自殺に関してもハイリスク群である。
大麻過量摂取で死ぬことはないが、市販薬過量摂取で死ぬ。そういうことを学校で教えているのか。基本的に違法薬物に特化した薬物乱用防止教育では、犯罪だから駄目と教えるが、捕まらない薬物にみんな熱中することもある。彼らは市販薬によって快感を得るためにやっているのではなく、死にたいぐらいつらい今を一時的に生き延びるのに使っている。駄目と言って直ちに取り上げることが彼らを幸せにするわけでもない。このことについて話し合える教師と生徒の関係をつくるためには、どんなメッセージを薬物乱用防止教育でやったらいいのかということを考えなければならない。
また、既に精神科にかかっている子たちは処方薬を飲んでいる。処方薬を不適切に乱用することもあるが、一方で駄目と言われてもなお薬を飲む自分は薬物依存症ではないかとで思い悩んで薬を飲まなくなることもあり、あるいは乱用防止教育の後から、自分が困っているということを先生や生徒に言えなくなって、逆に孤立を深めたりしている現状もある。
そう考えると、自殺予防教育が単独で動くのではなく、性教育や薬物乱用防止教育と有機的につながって、問題を持っている方たちが正直に相談しやすくなる文化をいかに教室や学校コミュニティーの中で充満させるかということを教育の方たち全体で考えていただきたい。
最後に、SOSの出し方教育に関して補足の意見があった。SOSの出し方教育の原理は、リスクの高い、問題を抱えた子たちに、大人たちに対してSOSを出しなさいというものだが、困っている子たちには異様にハードルが高い。
一番の子供たちのゲートキーパーは子供。だから、困っている子たちに対する子供たちの気づきの感度を高めて、困っている問題や、自分を傷つける行動をしている子供たちを発見したときに声をかけるということが大切。自殺予防教育を通じて、健康な子たちに対しても、メンタルヘルス問題に対する偏見を除去し、そういった子たちが将来大人になったときに、すごく悩んでいる人たちがSOSを出しやすい社会をつくる下地づくりでもあるという認識を持てるようにするべき。
【主査】 子供に対する自殺予防教育は、生涯を通じてのメンタルヘルスの基礎づくりであり、周囲がメンタルヘルスについての理解を高めることが重要。
また、性教育や薬物乱用防止教育の内容の精査は必要かと思う。委員、現場とのつながりが深いお立場で、学校における課題とか、今後より重要だと思われることはあるか。
【委員】 様々な部分で下地づくりの教育が学校のベースになると思う。
関係機関の連携については、ICTも活用し、どこの機関がどのような仕組みになっていて、どの機関につなげれば適切なのかということを教員と学校が知るということが大事かと。
相談室も、児童相談所等、様々な機関が同じフロアにあり、連携がしやすい状況にある。学校が相談室を介していろいろな機関と連携する場合もあるが、学校の教員自身にもノウハウや経験を蓄積させることにつながると思う。
【主査】 教育委員会と他の市長部局や県庁部局が行政の中でもつながりがないこともあるが、同じフロアであることも、現実的なところで機能する。
関係機関との連携が重要と言われてきたが、うまくいかないときには、どこかに綻びがある。ヒアリングさせていただいた教育コーディネーターがいることでどれだけうまく機能するのか教えていただいた。学校、教育委員会相談室とうまくつながり、そこを基に関係機関につながると良いと思う。
【委員】 問題行動を起こしたり、助けを求めたりする子供たちに日々関わる大人が、指導したいと思ったときにも、正論を言うのではなく、声をかけて、困っていることや生きづらさを分かろうとする姿勢をもつ事が大切だと思う。そのような姿勢をもつ大人同士が連携することによって、子供にとって意味のある連携が可能になるのではないか。
【主査】 委員の話と関係して、SOSの出し方教育という言葉だけが独り歩きすると、苦しんでいる子供に、SOSを出すという責任を負わせるというニュアンスもある。
委員の話と関連して、一見不適応な問題行動を示した子供の背景には、傷つきやトラウマ等、その子が困っているという問題があって、そこに目を向けずに指導し、いたずらに行動を変えるよう言うことは良くない。
困難を抱えている子供たちに、一番身近な大人である先生方がいかに寄り添えるために、国やいろいろな機関が支援していきたい。
【委員】 SOSの出し方、困っている子供、困難を抱えている子供に声を上げることを強いるのではないかという点について、子供の場合に限らず、大人であっても、長時間労働等からメンタルヘルスの問題になるケースにおいて、声を上げるよう言ったところで、なかなか声が上がらない。
その上で、子供であれ、大人であれ、SOSを出せということではなく少し寄り添うこと、そして、もう少し積極的にアウトリーチするという方法が大前提になると思う。
SOSの出し方教育、自殺予防教育においては、前提ではアウトリーチというスタンス、また、何か困ったことがありそうな子供や大人がいたら、積極的に気持ちをくみ取り、「どうですか」と声をかけるなどするのが基本。この点を改めて実際に今回のまとめを現場に伝えていくときに留意しなければならないと思う。
また、自殺防止、自殺対策に限らず、連携という言葉は、何か問題があるときに、必ず出てきて、何かを実践した気になってしまいかねない。
前回会議でもBONDの方が連携の話をしていた。新聞記事には、彼女は、自治体等に声をかけたが、態勢が整っていないという理由で、自治体のほうから連携を見合わせたいという反応があったと書いてあった。コロナの中で連携しにくいというのがあるかもしれないが、コロナの下であるからこそ、どういった連携ができるかということを具体的に進めていかないといけないのではないか。
【委員】 危険の高い子が、例えば学校の中でも意外な人にSOSを出すこともある。相談の受け手が、担任や養護教諭等、いかにも発信すべきところに行くと思うと、そこに行かずに、掃除監督でたまに会っていた先生等に行く。ところが、その人たちは、その子が非常に危機的な状況にあることを知らない。もしもSOSを受けた方がその子のリスクについて少しでも情報を得ていたら、対応が違ったのではと思うこともある。
委員からリスクの高い子は子供にSOSを出すという話があった。また、なぜこの人にと思うような人に言う。非常に微妙な言い方で、口パクで言葉にせずに何か言うこともある。あるいは、ふだん来ない子がたまたま来た、駄菓子屋さんで長くいたということもある。このような状況に対して、アンテナを高くするだけなく、ソナーで電波を発して寄っていくみたいなことがあってもいいかと。システムをきちんとつくるという大前提のもと、システムから漏れているリスクの高い子をみんなで支えていくということを改めて考える必要がある。
【主査】 アメリカのNASPという、自殺予防に限らず、危機対応のプログラムでは、スクールバスの運転手さんといった人たちも含めて訓練等しているということを連想した。校務員少し学校に適応できない子がなつき、支えてもらう例はとても多い。
【事務局】 途中で御退席された委員がチャット機能でコメントを寄せていただいたので、こちらから代読をさせていただく。
多くの学校現場で、また保護者に、関係機関に読んでもらうこと、熟読吟味をして、自分たちに何ができるのかを真剣に考えてもらうことが重要と思う。子供たちにも共有していただきたい。このまとめ案の周知、そして、対話と連携により子供たちの危機に寄り添うことのできる人垣が厚くなることを願う。
弁護士会をはじめ、関係する子供支援の活動をする人々にこのまとめの存在と、読んでいただきたいことを伝えていく。
【事務局】 非常に高い目的を目指しつつ、他方で非常に具体的な御指摘をいただいた。これまで現場のほうで抱えていたものも明確化し、それに対する解決へ向けての方向性も出していただいた。今後は、予防教育の充実あるいは早期発見の局面、あるいは関係機関との連携について、具体的に現場のほうで取組が進むようにまた後押しをしてまいりたい。
【主査】 審議のまとめに修正が必要な場合については、基本的には事務局と主査に一任いただきたい。
【事務局】 令和2年は、コロナ禍という未曽有の危機が様々な形で社会に影響を及ぼした年であり、このことは令和3年になった今も同様の状況の真っただ中にある。こうした社会の状況も踏まえ、この協力者会議では、コロナ禍における児童生徒の自殺に関する現状や対策等について集中的に分析と検討を進めていただいた。文部科学省はもとより、教育委員会や学校現場において、自殺予防教育の充実や、悩みや困難を抱える児童生徒の早期発見、あるいは関係機関との連携強化を図る上で、大変有意義な御示唆をいただいた。
文部科学省としては、今回取りまとめていただいた審議のまとめを踏まえて、例えば通知とか研修会などを通じて、学校現場における取組のさらなる推進を図りたい。このことによって、コロナ禍において悩みや不安を抱える児童生徒を1人でも多く守りたいと考えている。
【主査】 以上をもって、今年度第2回の会議を閉会する。
―― 了 ――

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初等中等教育局児童生徒課