生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

令和3年7月7日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 生徒指導提要の改訂について
  2. 生徒指導上の課題に係るヒアリングについて ・中学校 三田村裕委員(八王子市立上柚木中学校長) ・ 高等学校 池辺直孝委員(神奈川県立湘南高等学校長)  
  3. その他

4.出席者

委員

   浅野委員,新井委員,石隈委員,伊藤委員,大字委員,岡田 俊委員,岡田 弘委員,奥村委員,栗原委員,笹森委員,七條委員,髙田委員,土田委員,野田委員,針谷委員,藤田委員,丸山委員,三村委員,宮寺委員,八並座長,山下委員

ヒアリング協力者

   池辺委員,三田村委員

オブザーバー

      小野 オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー  

 

文部科学省

   瀧本初等中等教育局長,髙口文部科学戦略官,鈴木生徒指導室長
 

5.議事要旨

【事務局】 生徒指導提要の改訂に関する協力者会議の第1回を開催する。開催に当たり、初等中等教育局長より挨拶を申し上げる。
【事務局】 近年、いじめの重大事態や暴力行為の件数、さらには不登校児童生徒数や児童生徒の自殺者数が増加傾向にあるなど、課題は深刻化しているところ。
また、生徒指導提要が平成22年に作成されて以来、いじめ防止対策推進法をはじめ、関連法令が整備されるなど、学校を取り巻く社会状況も大きく変化している。
こうした状況の中で、児童生徒の成長を促し、問題行動を未然に防止する積極的な生徒指導を充実させること、また、多様な背景を持つ児童生徒に寄り添った支援、指導体制を確立し、全ての子供たちが安心して通える学校を実現することが、より一層重要となっている。
本協力者会議においては、教育委員会や学校現場における生徒指導の取組のさらなる充実を図るため、生徒指導提要の改訂に向けて、積極的な御議論を賜りたい。
【事務局】 それでは、ここから座長に進行をお願いしたい。
【座長】 生徒指導提要が2010年に刊行されてから、生徒指導を取り巻く教育環境や社会的環境も大きく変化した。具体的には、学習指導要領において児童生徒の発達の支援が新設され、学級経営の充実、生徒指導の充実、キャリア教育の充実の3本柱が小中高で貫徹される。
中央教育審議会からは、いわゆるチーム学校あるいは令和の日本型学校教育の答申が出ており、前者では、働き方改革と関連して、学校の教職員の専門を生かした協働体制、あるいは学校と関係機関、地域との連携・協働体制の構築の重要性が指摘されている。後者の令和の日本型学校教育では、不登校や特別な支援を必要とする子供を含め、誰一人取り残さない、すなわち全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指すとしているところ。また、GIGAスクール構想にみられるように、ICTを活用した教育や不登校の子供の支援も今後の教育的課題となっている。コロナ禍の生徒指導も含め、共通する課題意識としては、いじめ重大事態、暴力行為、不登校の増加、児童虐待や自死の増加が挙げられる。生徒指導については、教育の革新の流れとはうらはらに、調査データ上は、まさに危機に立つ国家、“Nation at Risk”といえる。
その一方で、生徒指導に関連する法律も、2013年に「いじめ防止対策推進法」が公布された。2016年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が公布され、第三章で「不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等」が明文化された。2015年には、少年法の改正により少年院が改称された。また、来年2022年には民法が一部改正され、「未成年者喫煙・飲酒禁止法」は、「二十歳未満ノ者ノ喫煙・飲酒ノ禁止ニ関スル法律」に改称される。生徒指導は、教職員の教育愛・使命感・経験だけではなく、実務的には「法律を背にした指導・援助」だといえる。地方公務員法が規定する服務の遵守を含め、法律に関する正確な知識をもって生徒指導に臨む必要がある。
現行の『生徒指導提要』では、生徒指導を次のように定義している。「生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。」つまり、生徒指導は、人間教育に他ならない。教育の実践という観点から言い換えると、「生徒指導とは、子供一人ひとりのよさや違いを大切にしながら、彼らの発達に伴う学習面、心理・社会面、進路面、健康面などの悩みの解決と夢や希望の実現を目指す総合的な個別発達援助」ではないかと、個人的には思っている。
今後の生徒指導の視点としては、問題行動の未然防止、積極的な生徒指導の充実、背景要因の困難の緩和、教育相談体制の整備、SOSの出し方に関する自死予防の取組等が必要である。
生徒指導は、学際的・実践的で、多職種連携・協働が前提である。今回は、現行の『生徒指導提要』の改訂なので、変えなくてもいい不易の部分と、修正を要する部分、新たに書き加える部分など、多様な教育現場の方々や専門家の方々から御意見を伺いながら、委員の皆様と御一緒に検討していきたい。
それでは議事に入る。本日は、生徒指導提要の改訂に当たっての基本的な考え方及び生徒指導提要改訂の今後のスケジュールについて、事務局説明と質疑応答を行った後、両委員より、生徒指導上の課題に関するヒアリングを行う。その後、全体に関するフリートーキングを行う。
初めに、資料2及び資料3につきまして、事務局より御説明をお願いしたい。
【事務局】 資料2について。
各学校、教育委員会を取り巻く状況が変化していることを踏まえ、生徒指導の概念・取組の方向性というものを再整理し、今までの生徒指導提要にあった考え方を継承しながら、時代に合った新しいものを取り入れながら改訂していきたい。
改訂の基本的な考え方は、中央教育審議会の提言や学習指導要領の改訂を踏まえ、必要に応じて、学校段階別に内容を書き分けるというもの。その中でも特に、単なる対症療法的なものではなく、成長を促す指導、すなわち、「積極的な生徒指導」を、改訂に当たって充実してはどうかというのが1つ。また、関連法規等の設置や改定を反映させるというものが2つ。近年、様々な課題の一つとなっている多様な背景を持つ児童生徒に対する生徒指導をどうするかが3点目。また、生徒指導上の課題に関するデータを活用することについて対応を考えるというところを大きなポイントとして考えていただきたい。
また、その他の点について。生徒指導提要が現場で一層活用されるように、読み手を意識した表現を考えたい。関連して、利用者が参照しやすくなるように、生徒指導提要上のデータを関連情報とリンクさせるなど工夫してはどうか。また、先生方がデジタル端末を使って、生徒指導提要を索引し、ポイントを得られるようにするために、デジタルテキストというもので作成できないか。その際、必要な情報についてある程度アップデートしたものを御覧になった先生方に届けられるようにしたいと考えている。
次に、資料3について。第1回では、改訂に当たっての基本的な考え方について、中学校、高校を対象に、関係の先生にヒアリングを行う。それ以降は、令和3年度内に6回程度、議論をしていただきたいと考えている。執筆の際には、ある程度、先生方を選定させていただきたい。執筆の時期的には秋あたりを検討しており、今回の改訂は、年度内に取りまとめられればと思っている。
【座長】 ただいま御説明のあった、特に生徒指導提要の改訂に当たっての基本的な考え方に関連して、改訂のポイントになっている多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導の在り方に関しては、集中的に検討して御議論いただくという機会を設けていく。
続いて、生徒指導上の課題に関するヒアリングを行う。まず、中学校における現状等及び、高等学校における現状等につきまして20分程度で御説明いただく。
初めに、資料4について、御説明をお願いしたい。
【三田村委員】 生徒指導提要が世に出た年度が、私が校長としての1年目の年であったが、中学校籍であった私にとって、中学校と小学校で異なる生徒指導、生徒指導観、また、具体的な指導の方法は小学校内の学級担任によっても様々違いがあり、大きな戸惑いを感じた。
その矢先に生徒指導提要が世に出て、私は本当に感動して、教職員に、これに基づいて、改めて生徒指導を構築していこうと言ったのを今でも鮮明に覚えている。
しかし、生徒指導提要は思っていたほど認知が上がらず、今日に至ってしまったということを今後の改善の1つのポイントにしたいというのが中学校長会の意見である。
本日、この場に臨むに当たり、全日中の会長、そして、全日中の組織において副会長である北海道、東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国、四国、九州の8つの地区の中学校長会長、また、全日本中学校長会が行っている各事業の責任者である部長に対し、生徒主指導提要について、現状と改善点についてあらかじめ意見聴取をしているので、資料は全日中の役員の意見とお受け止め頂きたい。
基本的には、資料2で文科省よりお示しいただいた生徒指導提要の改訂に当たっての基本的な考え方に同意しており、現場の声としても、同じ点の改善の必要性を感じていると受け止めていただきたい。
「生徒指導提要」に関する教員の認知度や活用度というところで、教員のレベルだと、あまり知らないという者も多い点が課題と考えている。
ただし、(4)のとおり、現場の教員が使っている生徒指導に関する冊子、リーフレット等は、生徒指導提要を基にしていると考えれば、誰もが間接的に活用はしている状況ではあるが、今後は直接的な活用を目指したいと考えている。
次に、時代の変化とともに内容が付け加えられるべき点について。まず、一番多く意見が挙がったものとしては、積極的な生徒指導について、現行の生徒指導提要は、現状に対してどう対処していくか、規律、規範意識をどう高めるかといういわゆる生徒指導の範疇で終わっているが、改訂にあたっては、子供一人一人の生き方を育成するもの、また、現行の学習指導要領との関連性もさらに高めるものとしていただきたい。
2点目はいわゆる校内委員会について。校内委員会の取組等が、現状様々であるため、一定程度、基本的な在り方が示されるといいのではないか。その際、情報交換で終わってしまっている現状もあるようなので、情報を共有したその先が大事であるという視点を盛り込んでいただきたい。
次が、外部機関や教員以外の専門職との連携について。現在の生徒指導提要がつくられたときに比べて大きく変化しており、関係諸機関や専門職との連携等については、ウエートを置いて、ページを割く必要があると思っている。全てを学校が担うという時代がかつてはあったと思うが、今後は、貧困問題、ヤングケアラーの問題等の福祉的側面も加え、関係諸機関や関係専門職がどう連携するか、また、家庭教育支援をどう行うかという観点での記述が望ましいのではないか。
あえて文字にはしていないが、(3)を考えるに当たって大切にしたいのは、生徒指導という範囲においては、働き方改革と相入れない部分があると思っている。「働き方改革」という言葉を前面に出さずに、今まで学校、教員が担ってきた部分を、関係諸機関や関係専門職との連携において、学校の役割をどう軽減するかが重要である。
(4)は、いわゆるインターネットの問題について。中学校の生徒指導上の問題としては非常に件数が多く、最近も増加の傾向にある。また、本来的には家庭で保護者が行うべきこととの区別に関して様々な試行錯誤を繰り返しており、この点も重要である。
(5)が性的指向、性自認、LGBT、性的マイノリティーに関する問題。
6番目が自殺予防教育について。(6)の下から3行目に、「また、自殺をしない・させないという点だけを注視するのではなく」と書いたが、何々をしないというのは、教育の目的、目標にそぐわない。例えば、いじめをしない子を育てるのではなくて、心の豊かな子、人間性豊かな子を育てることがいじめをしない子につながるということと同じように、自殺をしない・させないということは喫緊の課題ではあるけれども、その先の教育を行って、心を育んでいくという視点が必要ではないか。
7点目が校則の扱いについて。昨今、校則はあってはおかしいものという声もあるようだが、社会性、規範意識を育むためには、そして、集団生活を営む上では、ルールや規則は必要であり、それを守らせるということは絶対なくてはならないというのが私たちの認識。ただし、理不尽な校則は学校がなくす、見直す努力をしていくことが必要と思う。その際に、生徒の自主性、自立性を育む、また、生徒の自治能力を高めるという観点から、教員が見直していくのではなく、特別活動や児童会・生徒会活動等をうまく活用して、その中で、自分たちのルール、決まりを考えるというスタイルで検討していくことが望ましいと思っているので、その点に関して記載いただきたい。
次に修正点について。いじめの防止対策、それから不登校対策について、時代の変化、現状の変化とともに必要ということで記載している。
5のその他については、幾つかこうなるといいというような声を、特に分類することなく記載している。特に、容易にいつでも見られるような電子版の配信等があるといいというような声が強かった。それから、ダイジェスト版のようなものと本編とを分けるという声、つまり学習指導要領で言えば学習指導要領と解説、そういうような二部構成であるといいという声がかなり多く見られた。他には、国研が出している生徒指導リーフとそごがあってもよくないという声もあった。
【座長】 続いて、資料5について、御説明をお願いしたい。
【池辺委員】 全国高等学校長協会の生徒指導研究会の委員長の立場も踏まえながら、全国の校長の声を聞き、また、それに対して、一定程度の研究している中で、それを基に、御説明させていただく。
まず、1番目。生徒指導における学校と家庭の連携について、現行の生徒指導提要にも非常にすばらしいまとめがあるが、時代が変わり、誤解を恐れずに言えば、生徒、保護者に対して、学校が何かをやり続けるという状況が一部見られる。少し極端な言い方だが、本来は、学校と家庭がパートナーシップということで、役割分担ということを明確にしていく必要がある。学校と家庭、それぞれの教育の機能を果たしていくこと。また、生徒の多様性について、それぞれ状況も異なる中で、パートナーシップをうまく築けるかどうか。学校と家庭があまりよくない関係に陥ってしまうということがあるが、そうではなくて、1人の生徒、1人の人間の未来に対して、学校と家庭が分業しながらアクションを起こしていけるか。それができている学校とできていない学校が、かなり散見される。
2点目について。学校は法律にのっとって運営して、教育活動を行っているが、弁護士、代理人を立てて対応されるケースもある。高等学校の場合には、いじめ防止対策推進法による事案によって学校に登校しづらくなったケース等様々ある。いじめたと思われる方と、いじめられたと思われる方、それぞれの立場で、それぞれ学校に通いにくい状況があり、法的な弁護士と、学校で対応していくケースがある。この初期対応が非常に大きく、どれだけ見通しを立てられるか、幾つかの道筋があると思う。ある事象が起きたときに、どういうケースで、どう進んでいくのか幾つか場合が分けられるはずで、それを全て校長が把握していないと、結局、後で法的に窮地に追い込まれる、あるいは具体的には間違ったことを言ってしまうことがある。法的支援が必要な場合が学校側にもある。教育委員会ごとに取組が違っていて、例えば、教育委員会の生徒指導のセクションのところに、経験のある法曹有資格者、元弁護士の方が職員として常駐しているケースもある。指導主事の法的な知識が上がり、明確な法的なリスク、法的な価値を根拠に対応できるようになる。他にも、学校が相談するというパターンのところもあるが、限られた人材の資源をどう活用していくのかが重要。学校に法的な知識が落とし込めれば大分楽だが、法的な価値を見極めながら生徒、保護者を支援していける学校が全てではなくて、場合によっては訴訟に発展するということも実際に起きている。いろいろな意味での法的な対応については、もう少し現場とうまく機能できるようなものを御提言いただきたい。
3番目の校則について。不断の見直しは当然必要なことである。ポイントは、人権に配慮することであり、校則自体がその時代では受け入れられていたものであっても、現代においては受け入れられなくなるということもある。今の社会の中で考えると、場合によっては人権を無視していると誤解されるようなものについて見直すということは、今後も必要になってくるということ。
4の最近の問題行動の傾向について。いじめ防止対策推進法やいじめというものに対する認知は上がっている。特に、SNS、誹謗中傷も非常に悲惨なことにつながる可能性がある。それから、盗撮などのわいせつ行為については、このような事態が起こることも大きな問題だけれども、高等学校の場合はスマホを持っているということもあって、これがいろいろな事態を招く。盗撮事案が起きた後のプロセスは非常に多様であって、かなり多くの学校で、この対応で苦慮している場合がある。盗撮をしてしまった生徒と、それをされたという生徒、その関係性の対応や、学習支援をする義務が学校には出てきている。その辺の整理が十分できていない現場がかなりあるのではないか。弁護士と学校長が法的なやり取りをしながら、場合によっては、校長が指導方針を変更せざるを得ない等の現状がある。
5番目、学校が行う様々な指導や支援について。やはり、初期対応から見通しを立てられるかということにかかっている。そして組織的な対応として、生徒に寄り添っていくという部分で個別の対応、そして、学校組織がしっかりとチームとして機能する全体の対応をとらなければならない。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの活用が進んでいるところ。ケース会議においては、情報共有をすることによって経験値は上がっていく。それぞれの職員が考える機会になるので、似たようなケースが出たときに、経験した教員として対応できるという意味もあると思う。
学校と保護者が泥沼にはまっていくケースもある。校長が保護者に対して、あなたが間違っていますよというようなことを言ってしまう場合、要すれば、説得して学校の考えに従わせようとしてしまうということがある。考え方が違うということは実際には起こり得ることなので、この部分の進め方は非常に重要で、学校は学校として、やるべきことをやり、家庭としても、それぞれの考えで家庭の教育をやっていくこと。それが必ずしも一致しない場合に、お互いを尊重しつつ、しかしながら、学校の教育方針に従ってやらせていただくけれども、やむを得ないですねという運びをしないとどうしようもない場合がある。最終的に合意形成できないケースにおいて、うまく対応できないという学校は、かなり散見される。
結局、最後の丸に記載のコンプライアンスの支援という、その両方をきちんと両立させ、ぶれることなく、また、生徒の人権を尊重しながら、最終的に完全に合意ができなくても、一定の学校の役割を果たしていくということも、一番大事な部分になっていくのかなと。
6番目の様々な課題や状況を抱えた生徒への支援について。虐待、DV、ネグレクト、ヤングケアラー等、いろいろな問題もあるが、避難すべき状況と学校が見た場合には、児相と連携する。ただし、児童相談所も、高校生よりもう少し年齢の低い方を保護することが多いので、この辺の学校との関わりについては、いろいろな機関と連携してやらなければいけない。
発達の特性に関して、高等学校の場合、外国につながりのある方ということがある。いろいろな文化の問題等あるので、いかに支援していくのかというところも1つの課題。
最後に、高校生の自死の問題について。今、非常に厳しい状況にあると思うが、ゲートキーパー、そして、生徒のストレスコントロールというところで、生徒のストレスをどうやったらこちらが見えるのか考えなければならない。突然亡くなってしまうということが本当にありこういう理由でストレスがあったのかもしれないという非常に悲しい結果論が続いている。この点ついては、専門家の皆様にいろいろと情報をいただきながら、よりよい学校運営につなげていくべきと思う。
【座長】 では続いて、ただいまの両委員からの御説明への質疑応答も兼ねて、フリートーキングを行う。
冒頭に事務局より御説明のあった生徒指導提要の改訂に関する基本的な考え方、生徒指導提要改訂の今後のスケジュール及び両委員からのヒアリング内容について、御質問、御意見があれば、挙手をお願いしたい。
【委員】 今、全体の中でも、チーム学校ということが強調されている。ケース会議だけではなくて、校内委員会、校内支援会等のこと、学校全体、チーム学校全体で、組織ぐるみで検討する会について記述したほうがいいという御指摘があった。情報共有だけではなくて、行動連携まで、生徒指導という軸でどこまでやれるかという具体的な記述が必要だと思う。
職員集団の経験値を高めることにつながるケース会議を実施する話があった。いわゆる研修会、職員会議や校内支援会等をやることによって、職員の能力が高まると思う。この2つに関連して、この10年間の生徒指導の経験値や学校心理学など関連する領域の研究成果があり、チーム学校の活動をまとめる会議と整理して、それらの蓄積を今後の生徒指導の在り方に生かせればと。
例えば、生徒指導部会等の校内支援委員会に定期的に出席することで、全ての子供への指導、援助のクオリティー、態度がよくなったという調査結果もある。この10年間の社会の変化、法制度の変化をしっかり踏まえつつ、また、10年間、各学校で行われてきた生徒指導の実践知あるいは研究成果を新しい生徒指導提要に生かせればと思う。
【座長】 今の御発言に関連して、生徒指導でよく使われる組織的対応について、私が関わった平成15年度頃の「学校と関係機関等との行動連携」から、状況は変わってきたと思う。とりわけ、スクールソーシャルワーカーの導入以降、組織的対応の流れとしては、その事案の実態把握等のアセスメントから、個別の指導計画を立てるプランニングへ、それから、チームを編成してチーム支援をやっていくというもの。その中でケース会議もやっていく、という一連の流れになっている。
また、関係機関等といったときに、やはり、児童相談所、警察、教育センター等々以外も、例えば、地域をどう活用していくか。先ほど委員が言われたように、働き方改革をどうやって実現するか、担当者にとっては難しいところ。特に関係機関等との連携・協働部分どう進めていくか、記述が必要であろう。
【委員】 SC、それからSSWというような新しい仕組みが、チーム学校の中では、まさに、学校内スタッフとしてしっかり関わる必要がある。SC、SSWにとっても、学校を知るということでは非常に重要な機能を持てるものにしていくことを意識する必要があるという点が1点。
それから、来年春から18歳からが成人になり、選挙権が付与されるだけでなく、親が親権を持っているのか持っていないのか、つまり、法定代理できるかどうかということが家庭においても非常に大きなポイントになると思う。要すれば、家庭との連携をどう見ていくかという点で、今までと法構造が変わりますので、提要に盛り込むかどうかは別として、高校の場合には意識しておいてもらう必要がある。
一方で、従来の要保護児童あるいは虐待として対応すべきものについて、平成28年の児童福祉法改正に伴って、市町村の役割の軸が児相との関係で変化してきている。現行の生徒指導提要や学校現場の先生方は福祉との連携となると第一番に児相を想定するが、市町村とどう連携するかも重要である。法的関係を前提とする連携が結構あり、関係機関という中でも特に、市町村と児童相談所は項目を立てて、しっかり説明したほうがいいかと。
【座長】 スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーに関しては、専門家で学校に入ってこられる方が、生徒指導提要を読まれて、基本的な知識を得られること。それから、必ずしも学校教育の専門的な知識を持たれているわけではない公認心理士資格のスクールカウンセラーの方も学校に入ってこられるので、スムーズに入っていけるように、こういった提要を活用していただければと思う。
【委員】 まず、この提要の改訂版は、現場の先生がもっと使いやすく、扱いやすいものにしていくこと。読みやすい、分かりやすいものというのが大前提の中で、例えばいじめとか、不登校だとか、これまでの生徒指導のセクションで積み上げてきたものと、インターネット依存やSNSの書き込み、性的マイノリティー話題、特別支援の障害のある子供についてのニーズ等、現場の先生にとって、新たな課題として見えてきて、トピックス的にアクセスしたい部分があると思う。したがって、これまでの積み上げている部分と新たな課題として挙げられたものに対して、分かりやすいデザインや構成を考えることが重要かと。
もう1点目、校則について。いわゆる規範意識や社会のルールとしての校則の部分もありつつ、最近は、生徒会との話合いの中で校則を考える、あるいは、生徒手帳の中でいろいろなことを書き込んでいくという学校もあると聞いているので、校則の取扱い方を生徒指導の中でどう整理をしていったらいいのかと思う。冒頭で、積極的な生徒指導という中には、生徒自らが校則の設計をしていくような、生徒指導の在り方という視点もあるのかなと。
【委員】 資質、能力の育成や積極的生徒指導の実践には一体何が必要なのか考える必要がある。例えば、教科だったらカリキュラムがある。一体、何の資質、能力を育てるのかということを明確にしないと育てることはできないと思う。
そして、それを育てるためには、カリキュラムが必要だと思う。生徒指導のカリキュラムあるいは教育相談のカリキュラムが必要で、これまでの日本の生徒指導、教育相談がどちらかというと問題対処が中心だったために、生徒指導、教育相談はカリキュラムという視点が欠落していたのではないのか。
生徒指導には旅行でいうガイドブックや教科でいうカリキュラムがないため、先生方が、どうしたらいいか分からず、結局、動けない。学習指導要領のような生徒指導のカリキュラムやプログラムを示すという視点、あるいはモデルコースを示すというような視点が必要なのではないか。
その中で、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの方々がどんどん入ってきて活躍していただく一方で、どうしていいか分からないから、丸投げをしてしまっている学校が、実際に、多かれ少なかれ、ある。カリキュラムが見えず、その中で教師がどういう働きをすればいいのかが見えないからできないとなっていると思う。だから、カリキュラムを示し、教師の役割はここですよということを、教師に対するリスペクトを含めて明らかにすることが必要なのではないか。そうしないと、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーが不登校や虐待の専門家だから私たちはノータッチというスタンスの教師が増えてしまうと思う。
【座長】 今、委員から言われたカリキュラムに関して、私がいたインディアナ大学では、学問としてガイダンス&カウンセリングがあった。アメリカのスクールカウンセラーの重要な業務として、ガイダンスカリキュラムあるいはガイダンスプログラムの提供がある。具体的には、学業的発達ではこのような能力、キャリア的発達ではこのような能力、個人的・社会的発達ではこのような能力と、コンピテンシーが特定されて、それに対して、スクールカウンセラーが、いつ、誰に、どういった内容を教えるか、スコープとシークエンスが決まっている。
また、ここで強調しようとする積極的な生徒指導というのは、やはり社会性や非認知的能力の育成にかかわる。子供の非認知的能力を高めていくことに、生徒指導が寄与していければと思う。日本の生徒指導では、生徒指導における育成したい能力、コンピテンシーとは何か、あるいはそれを小中高と、系統的にどのように育成するかという方法論を考えていかなければならない。それに関しては、横浜市教育委員会の子どもの社会的スキル横浜プログラムや、さいたま市の人間関係プログラムが先導していると思う。その点についてコメントをいただきたい。
【委員】 今、座長がおっしゃった意味では、さいたま市では、人間関係プログラム、ハートプログラムを先行して進めている。どういう子供たちを育てるかというところを明確にしながら、毎年改定を重ねながら進んでいるところ。
また、横浜でもやっているが、その隣の川崎市でも、教育プログラムという形で同様に進めており、1つの先行事例としてお示しできるのではないかなと思う。
【委員】 生徒指導提要を二部構成にするというのも手かなと思う。提要を精選してというよりも、ぐっと絞ったダイジェスト版と解説版があると読みやすいのではないかなと。
それから、教えていただきたいのが、法的な問題と保護者会、PTAの問題。スクールカウンセラーだけでなくてソーシャルワーカーも入り、問題解決型だけでなくて予防や成長を促す指導も行われてきていると実感しているけれども、法的な支援に関しての示唆があればいいなと思うのでどなたか教えていただきたい。
それから、保護者会、PTAと連携を密にしていると非常にうまいこといくというのが分かっていて、その辺も、何か記述なりアイデアがあったら教えていただけたらと。
【座長】 特に今回、自死の問題やいじめの問題がテーマになっているが、このテーマについてコメントをいただきたい。
【委員】 まず、極めて深刻な状況にある自死の問題について。先ほど、生徒指導のカリキュラムという問題が出てきたが、どこまでカリキュラム化するのかというところと、実際に目の前で起こっている問題にどう対応していくのかという、その2側面を考える必要がある。自死に関して、自殺予防教育を文科省で示しているが、私自身は、子供たちが、将来、大人になって社会に出ていく、その中で未来を生き抜く教育と捉えている。今、文科省で示しているプログラムの目標の一つは、自他の心の危機を理解するということであり、高校の保健体育の新しい学習指導要領の単元にも入った。そして、もう一つは、援助を求めるということ。適切に依存することが自立につながっていくという視点を全ての児童生徒が持つようにということで、開発的、予防的な生徒指導に当たる積極的な生徒指導を考えている。この辺をガイダンスプログラムとして、コンテンツとカリキュラムをしっかり示せれば、未来を生き抜く教育につながると考えている。あわせて、リスクの高い子が大人への信頼が弱いから、なかなか相談できないという状況において、教員がそこにどう気づいて、どう関わっていくのかという問題解決的な部分をどのようなプロセスで進めていけばいいのか、アセスメント、プランニング、インターベンション、モニタリング、という流れを示す必要がある。危険の高い子に、どう気づき、そして、気づいたらどう関わるのか。そして、子供たち自身が、リスクの高い子は友達に言うことが多い。その友達がそれをどう受け止めて、関わって、そして、大人につなげていくのか。そういう子供たちの力を育てる関わりというのを教師としてどうやっていけばよいのかというようなことも示す必要がある。ガイダンスプログラム的なところと問題解決的なところと仕分し、それぞれの局面で何をすればよいのかが見取れるように書いていくことが求められると思う。
次にいじめについて。いじめをしない子を育てるという人権教育、これを生徒指導のガイダンスプログラム的なものとしてしっかり位置づけた上で、認知して、具体的にどう関わり、重篤化を防いでいくのか、という問題解決的な局面も示す必要がある。認知を上げることは上げること、重大化させないことはさせないことと切り分けられて認識されているところがあるように思う。したがって、認知をして、それをいかに深刻化させないところにつなげていくのかという見取図を示すことが大事なのかなと。取組の方向性が見て分かって、その背景にある理論がつかめるという構成になるといいのかなと思う。
【座長】 ICT活用の出席扱いについて。ICT活用した不登校支援というのは、どの程度されているのか。
【三田村委員】 端末の整備状況や環境の問題があり、自治体によって大きな差がある。また、活用についても、まだ取組が始まったばかりというところが多い。
【座長】 教育支援センター等に関しては、かなり活用はされているか。いわゆる学校と適応指導教室との連携はどうか。
【三田村委員】 それは従来からやってきている。
【座長】 例えば葛飾区では、校内に適応指導教室をつくり登校するという取組もあるが、そのような取組も他であるか。
【三田村委員】 はい。
【委員】 いじめの問題に関して、道徳が教科になって、教科書の教材の中にもいじめ教材が入ったが、道徳、特活、その他を総合して、いじめに関してどのように取り組むべきか、カリキュラム的な指導の仕方を考える上で、押さえる必要があるのではないか。
その際には、全国にすばらしい実践事例があると思うし、各県教育委員会等で事例集を出しているかもしれないので、そういうものを調べて、生徒指導提要とリンクさせて、アクセスしていけるような形がいいのではないか。
【座長】 道徳の教科化の背景にいじめ問題があったわけなので、今後、特別の教科道徳・特別活動・総合的な学習の時間等を含めた中で、生徒指導とどのように関連づけるか課題だと思う。
【委員】 カリキュラムについて、生徒に対して、どんなステップで何を伝えていくかというものと、それから、先生が生徒指導に関わるものを体得というか、学んでいくかというところでのカリキュラム的なものがあると考えられる。今回、生徒指導提要改訂と併せて、開発的な生徒指導も含めての生徒向けの部分も意識することは重要だが、一方では、初任の先生からベテランの先生まで、あるいは管理職の方々まで、生徒指導提要に付随する話ではあるが、考えていくことが必要ではないか。
【委員】 スクールカウンセラーはこう動いてください、ソーシャルワーカーはこう動いてください、学校の先生はこう動いてください、管理職はこう動いてくださいというものをきちんと提示しないと、あるいは提示しても、それを実効的な形に移していかないと、結局うまくいかない。
私は、岡山県の総社市でプログラムをやっているが、総社市内で生まれた子供の不登校の発生率は0.91%まで落ち、1%を切った。国の4分の1である。非行は警察の補導、検挙は95%減少。教員研修プログラムと子供のためのプログラムを両方ともカリキュラム化して、きちんと実効的に回すということが一番重要だろうと思う。
【座長】 今回の学習指導要領でも、学級経営の充実、生徒指導の充実、キャリア教育の充実の3本柱が貫徹されることを踏まえ、キャリア教育の視点から何か御意見いただけないか。
【委員】 積極的な生徒指導という側面では、「一人一人のキャリア形成と自己実現」という形で、小中高12年間が今回の学習指導要領でつながった。先ほどカリキュラム化の話もありましたが、キャリア形成という「社会の中で自分の役割を果たしながら,自分らしい生き方を実現していくための働きかけ,その連なりや積み重ね」を、12年間のカリキュラムの一つの指標として位置づけていくというのも考え方かなと。
座長から、アメリカのスクールカウンセリング協会の話がでましたが、キャリアというのは、同協会の3つのドメインの重要な1つとなっている。米国のスクールカウンセラーは、キャリアカウンセラーと言われるぐらいにキャリアには造詣が深いので、今回の提要の改訂の中で、キャリア教育というものが充実した形で盛り込まれればと期待。
【座長】 両委員から、本当に貴重な御意見をいただいた。特に修正が必要な部分、あるいは新たに書き加えなければいけない部分など、具体的に見えてきたのではないかと思う。
記載したい内容をどんどん盛り込んでいくと、分量が膨大になってしまうという懸念がある。それを回避していく方法としては、既に御指摘のあったように、紙版の生徒指導に関しては必要最小限とし、別冊版や詳細なものを作る、あるいはデジタルテキストを作る等、方向性の検討も今後の課題と思う。
【事務局】 今日は、いろいろ忌憚のない御意見、活発な御議論をいただいた。次回、第2回に関しては、早めにお知らせできればと思う。
【座長】 それでは、以上をもって第1回の会議を閉会する。

―― 了 ――
 

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