「高校生のための学びの基礎診断」に関する有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和2年12月21日(月曜日)

2.場所

文部科学省15F1会議室(オンライン会議システム使用)

3.議題

  1. 「高校生のための学びの基礎診断」の活用状況について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬座長】 皆さん、おはようございます。荒瀬でございます。定刻となりましたので、ただいまから第2回「高校生のための学びの基礎診断」に関する有識者会議を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
それではまず会議に入ります前に、委員の出欠状況について、事務局、齊藤参事官補佐から御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【齊藤参事官補佐】 それでは本日の出席状況でございますけれども、欠席の委員は宇佐美彗委員、岡本和夫委員、清水実憲委員、前川眞一委員の4名でございます。萩原聡委員におかれましては本日出席予定でございますけれども、今のところログインがなされていない状況でございます。
よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
では、本日の配付資料について、齊藤参事官補佐、続けてお願いいたします。
【齊藤参事官補佐】 本日の配付資料につきましては、今、画面で共有させていただいていますが、式次第がございまして、式次第のほかに、事例発表いただく学校の発表資料として資料1-1から1-3を用意してございます。資料につきましてはペーパーレス化の取組を促進するために、委員の先生方には事前にメールで送信しておりますほか、先ほど表示しておりました文部科学省ホームページにも掲載しておりますので、そちらを参照いただければと思います。
よろしくお願いします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。それでは議事に入りたいと思います。議題の1番目は「高校生のための学びの基礎診断」の活用状況について、高等学校へのヒアリングを行いたいと思います。前回は大分県、高知県、北海道の各教育委員会から御報告を頂きました。今回は学校現場ということで、三重県立桑名北高等学校、広島県立西条農業高等学校、岐阜県立岐阜商業高等学校の3校からお話を承りたいと思います。各校15分程度で御説明を頂きまして、その後、質疑応答をやはり15分程度で行いたいと思っております。今日は3校の先生方、お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。
ではまず、桑名北高等学校の御説明をよろしくお願いしたいと思います。山北校長先生、よろしくお願いいたします。
【桑名北高等学校】 おはようございます。三重県立桑名北高等学校の校長の山北と申します。本日は貴重な時間を頂きましてありがとうございます。桑名北高等学校での「学びの基礎診断」の取組状況について、学校の概要は私から、あと中身については主幹教諭の井上から説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
まず本校、桑名北高等学校でございますけれども、普通科各学年5クラスの学校でございます。進路としては丸4に書かせていただいていますように就職60%、進学40%で、どちらかというと、普通科ではありますけれども就職がメインの学校になっております。丸6にありますように、一定期間、荒れを経験している学校でありまして、現在でも三重県の北部の、どちらかというと学力、学校の勉強が苦手な層を中心に受け入れている普通科の学校ではございますけれども、「学びの基礎診断」を使いながら、キャリア教育等々様々取り組んでいる最中でございます。具体的には今から井上から説明させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【桑名北高等学校】 失礼いたします。三重県の桑名北高校、井上と申します。「学びの基礎診断」について私から御説明いたします。
まず本校のスケジュールですけれども、ベネッセの基礎力診断テスト及び実力診断テストを主なツールとして使っておりまして、「学びの基礎診断」対応は実力診断テストです。受験回についてですけれども、基礎力診断テストは1、2年生とも5月・9月・1月、3年生については5月回ということで、3か年で7回の受験です。実力診断テストが「学びの基礎診断」版ということで、1年生が6月・10月、2年生が6月で、都合3回の受験予定で枠組みをこさえております。一方で今年度はコロナ禍の影響もありまして、実力診断テストの6月回が受験できなかったことはあらかじめ御了知願います。
本校ではPDCAサイクルをこのような形で、特に中サイクルということで基礎力診断テスト及び実力診断テストを位置づけて、こちらを学校の改善の軸として使っております。
委員の皆様、念のためということで御説明いたしますが、ベネッセのほうで学習到達ゾーンといった指標、省略してGTZという指標で学力の状況を見る数値があります。左側の数値を御覧いただきまして、また赤字の部分を御覧いただきますと、D3の部分、こちらが進学でも就職でもかなり困難を極めると。義務教育範囲が定着していないことも想定されるということでして、本校はまずはこのD3の学力を減らすことで注力してまいりました。
そうはいいましても、実は平成28年までは受けるだけのテストに成り下がっておりまして、丸1から丸5までありますとおり、もともとベースがなかなか低い、意欲も低いという子たちがいる中で、事前指導も事後指導もせず、どうかすると成績帳票も返却しなかったり、未受験者がいてもほったらかしであったりとかということで形骸化しておりました。必然として、成績は下降するという現象が起こったわけです。
こちらが実際手つかずだった頃の本校の状況です。画面上でピンク色の帯、また赤字を施したところ以下がD3になりますけれども、D3が、1年1回から50%を数え、徐々に増えていき、また成績上位、仮にC以上を上位としましたところ、54名いたものが最終3回目については5人にまで減じている状況でした。
ここをてこ入れしようということで、28年度より改善を図っていきました。どのように改善をしたかということですけれども、まず本校の校時をいじりまして、朝学の時間を確保し、またベネッセのOne-Weekトライアルという事前教材を試験前に受診し、またそれ以外の時間帯においても学力伸長を図るような取組を行ってまいりました。また、提出物についても成績に加味したり、動機づけの事前指導、あるいは振り返りの機会を設けたり、解答を転記するなどの機会を設けて、生徒にテストの重要性を迫るような取組を重ねてまいりました。
また、本校は就職者が6割ということもありまして、就職選考の際の資料にすることを告知し、生徒にとってはこの基礎力診断テストを、非日常、年1回だけのテストから日常的に定点観測するための指標と格上げしていったわけです。
実際、こちらが生徒が振り返りということで基礎力診断テストを自己採点しているときの様子ですけれども、これ以外にもスライドには隠れておるのですが、表彰を施して、上位層だけでなく下位層、中位層にも刺激を与えるような取組を行ってまいりました。
こちらがその様子でして、左側の画面が成績3教科合計のトップ3の子たちについて、校長より表彰。右側はクラスの最高得点賞を担任より表彰という光景です。
また、成績上位者、上位30名までの生徒を、学年の廊下にこのように名前入り・点数入りで掲示しまして、中・上位層の刺激を与えるような取組もしております。
こちらが表彰のラインナップですけれども、先ほど御紹介したものが上の2つです。3つ目以降ですけれども、各教科単位のトップ賞ベスト3について、あるいは担任推薦ということで様々な子たちがターゲットになるような施しをし、また成績最下位のD3から脱出した生徒についてもジャンプ賞という名称の賞状を施すなどして、生徒の意識向上を図ってまいりました。
そうはいっても、D3を取る生徒については固定化してくる問題もございますし、個別支援が必要です。ということで、教頭以下全職員がD3の生徒二、三名に対応するように、このように放課後、学習会を設けて、勉強の苦手部分についての解きほぐしをするようなことを行ってまいりました。
その結果を受けて、このように変わりましたというのが次のスライドです。平成27年度入学生においては途中まで、つまり2年1回までは成績が順調に悪くなっておったのですけれども、年度内に3回受験ということを決めて、そして取組を重ねていった結果、増えていったD3が2年2回においては半減以下まで減じることに成功しました。また青い帯、C以上についても入学時以上に伸ばすことに成功したわけです。
続きまして28年度入学生。こちらが現在行っております7回フルセット受験の最初の学年になります。1年1回は入学前課題として渡し、そして入学直後にテストをするということで、生徒のもともとの学力で勝負した試験だったわけですが、1年2回以降は事前指導・事後指導をかましていった結果、徐々にD3が低減傾向にありまして、またC以上についても4割からの生徒を確保することに成功しております。
同一回で比較したものが次のスライドでございます。左側3か年は手つかずのまま受験したものたちです。赤で帯がありますけれども、ここから改善取組をしていった以降の学年ということです。御覧いただきましてお分かりのとおり、5割前後いたD3が、取組をすることによって3割以下まで減じることに成功し、またC以上の学力層も4割近くまで伸びる、そういった学年も出てくるようになってまいりました。
続きまして、2年1回相当ですけれども、当然ながら何もしていなかった左側の3か年に対し、きちっと手厚くフォローした学年といい意味の落差が大きくなっておりまして、2年1回ではこのような様子。
また、3年1回におきましては、全く別の学校だというふうな御指摘を頂くような、いい意味での変わりようが出てきたところです。これはベネッセの担当をして短期間でこれだけ変わった学校は全国的にないということで、荒瀬先生を前にしてちょっと恐縮ですけれども、堀川の奇跡よりも今は桑名北の奇跡ということで、いろいろ視察依頼も舞い込んでいるような状況です。
こちらは我々の共通理解としまして、基礎力診断テストはどちらかというと生徒向け、つまり生徒還元を主とする教材。実力診断テストはどちらかというと教員向け、つまり学力保障のための授業改善のためのツールとして使っておるところです。
一方で、この「学びの基礎診断」、実力診断テストについてですけれども、こちらはベネッセによりますと基礎力診断テスト、実力診断テストともに同レベルの範囲という設定ではあるものの、生徒からすると初見の問題であったり、また記述の問題であったり、あるいは複合的な問題が多いこともありまして、やはりD3という生徒は一定数、基礎力診断に比べると多い状況です。
こちらは昨年の1年6月回の受験データで、左が3教科の合計値、右側で国数英をそれぞれGTZ別に区切ったものです。この1年6月回から1年10月回に至るに至って、成績は一定伸びました。これを基に改善をさらに図っていこうと思っておったところですが、今年度6月回におきましてはコロナの影響がありまして実力診断テストは受験しませんでした。
ということで、今年度は10月回受験となるのですが、御覧いただきまして、先ほどの学年は揺り戻しがあり、D3が3教科合計で98人まで増え、また1年生におきましてもさきの学年に比べても少し悪い傾向であったところです。きちっと定点観測をしていきたいと思ったところ、ちょっとこういったつまずきがあったのですけれども、こちらを「学びの基礎診断」ということで分析して、生徒還元を図っていきたいと思っております。
現時点で分析したものがこの丸1から丸5です。こちらはお手元の資料を御覧いただきまして、スライドでその根拠についてお示ししたいと思います。
まず丸1、丸2についてですが、縦軸が実力診断テスト、左側が6月回、右側が10月回です。これに対して下のほうにあります横軸は基礎力診断テストの義務教育範囲の正解率ですけれども、義務教育範囲については基礎力・実力を見た上でも、一定高校在学中に定着してきている傾向は見てとれるかと思います。
次のスライド、3番、4番の根拠に当たりますが、自宅学習と学習の悩みについてです。縦軸が自宅学習の様子、右側横軸が学習の悩みで、左側は6月回、右側は10月回です。見ていただきますと、オレンジの囲みの部分はよくなっている部分。これに対し、紫の部分はちょっと残念ながら後退しているかという部分でございます。
丸5番の根拠です。知識・技能については、横軸が義務教育範囲の定着率で測ったものですけれども、知識・技能については、難易度が高い実力診断テストでも一定の知識量は蓄えている部分がありますが、左側の思考力・判断力・表現力におきましては、右側のスライドが生徒の度数分布が右側に寄っているのに対し、左側の表はかなりばらばらに分かれていることがお分かりいただけるかと思います。この辺が本校の課題です。
生徒の変容、PDCAの部分でどう変わったかということですが、入社試験の結果で申しますと、改善取組後、入社試験で落ちる子が減ってまいりました。特に今年度コロナの影響で近隣の学校ではかなり不採用率が上がっている中で、本校はかなり踏みとどまったことが言えるかと思います。
また、卒業時の進路未定者ですけれども、進路未定のまま卒業していく、生きる力を育めないままという子たちがほとんどいなくなりましたし、スライドにはございませんが、遅刻あるいは単位を取れないこと、あるいは退学・休学という生徒もかなり減りましたことを御報告いたします。
最後のスライドになりますけれども、こういったメリットが生徒にも職員にもありましたということで、私からの報告に代えさせていただきます。御清聴いただきましてありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
ただいま御発表いただきました桑名北高校の内容につきまして、委員の皆様から御質問いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。御質問あるいは御発言になります方は挙手ボタンを押していただきますようによろしくお願いいたします。
【桑名北高等学校】 すいません。失礼します。実は音声が乱れておりまして、ほとんど聞き取れない状況なのですが。
【荒瀬座長】 私の声は届いていますでしょうか。
【桑名北高等学校】 今の声はクリアに聞こえました。
【荒瀬座長】 すいません。こんな感じでしゃべればいいでしょうか。
【藤森委員】 すいません。よく聞こえません。
【荒瀬座長】 藤森先生、聞こえづらいとおっしゃいました?
【藤森委員】 今の桑名北高校の先生の御説明はよく聞こえたのですが、事務局、マイクの設定がおかしいのではないでしょうか。キンキンしていて恐らく全ての先生方が同じことだと思うのですけれども、聞き取ることができません。
【荒瀬座長】 ちょっとお待ちください。これならどうでしょうか。聞こえますでしょうか。藤森先生、いかがでしょう。
【藤森委員】 見違えるようによくなりました。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ところが、今度は藤森先生のお声がとても小さくなってしまっています。ちょっとお待ちください。
藤森先生、もう一度御発言いただけますでしょうか。
【藤森委員】 よろしければ、今の御発表についての感想も含めてお話しさせてもらってよろしいでしょうか。
【荒瀬座長】 よく聞こえるようになりました。藤森先生、どうぞ御発言ください。
【藤森委員】 大変すばらしい成果が出て、まずは感動いたしました。ありがとうございました。
それで、恐らくその背景には子供たちの意識の変化と先生方の意識の変化があると思うのですけれども、それが今回のこの取組の中でどういう変化が手応えとして意識の上で学校の中に起きたのか。その辺について主観的で結構ですのでお教えいただければ幸いです。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。
ほかの御質問はございますでしょうか。では長塚委員、田村委員の順でお願いします。長塚委員、まずどうぞ。
【長塚委員】 ありがとうございました。以前からの綿密な計画に基づいた取組で、成果も着々と上がっている様子を伺いまして、ありがとうございました。
1つだけお伺いしたいのですが、「基礎診断」の認定となったのは比較的ここ最近なのでございますが、この認定された「基礎診断」のツールになったことで、何か先生方の取組、生徒の取組などにも意識の変化あるいは実際のやり方の変化などがあったのかどうかをお伺いしたいと思います。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。では田村委員、お願いします。
【田村委員】 どうもありがとうございました。同じような試験を使っても、取組の前と後でこんなに違うということで、使うほうの取組の違いによってこんなに結果が出てくるものだということに、非常に感銘を受けました。
それで具体的なことを教えていただきたいのですけれども。最初のほうのスライドで、外部テストの実施スケジュールで、例えば基礎力、事前講話と学習とか、振り返りとか、表彰は具体的に分かりやすいのですが、どのような事前講話やどのような学習のポイントによって生徒さんたちのモチベーションが上がって、このテストに取り組んでいこうというところを喚起できたのでしょうか。そこを教えてください。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。
桑名北高校の先生方はこの後、用務の関係で最後まではいていただけないと聞いております。御質問のおありの委員方がいらっしゃいましたら、今まとめてお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
では、まずは今お三方から頂きました御質問にお答えいただきまして、再度また御質問がおありのようでしたら、御発言いただくことにしたいと思います。では、こちらは井上先生でしょうか、よろしくお願いいたします。
【桑名北高等学校】 御質問ありがとうございます。順次回答させていただきます。
まず最初の先生からの御質問ですけれども、私が着任したときから実はこの改善取組が始まりまして、当初は生徒指導でもって生徒を引っ張ると。どちらかというと、生徒をしっかり導くために強い指導をする。学力は二の次という部分がありました。したがって、しつけ的な要素で生徒を導くということではあったのですが、背景としては、生徒にいろいろな荒れがあったりですとか、遅刻が多かったりということもあったのですけれども、ただ、詳しく見ていきますと自己肯定感が低いこともあったわけです。
先生のほうも半ば諦めた感じがありまして、うちの子たちにこういった取組をしても無理だよといった半ば諦めがあったわけですけれども、いやそんなことはないよということで私が旗振り役をさせていただきつつ、生徒にモチベーションアップにつながるような話をしていって、生徒も職員も徐々にこういうふうに成績が上がってきたことを受けて、自己肯定感が大きく高まったことは間違いないかと思います。
2点目の御質問について回答させていただきます。「学びの基礎診断」について、基礎力診断テストでも実は受診はできました。ただ、基礎力診断テストはマークシート式であったもので、4限分相当の時間を使うのですけれども、5限目相当に複合した問題で難しいテストとなりますと、うちの生徒はよくなってきたとはいいましても、やはりなかなか5限目に意欲的に取り組めないこともあります。また、痩せても枯れても普通科高校ということもありまして、一定の進学希望者もおります。といったこともありまして、基礎力診断テストは今までの生徒報奨のためのツールとして使いつつ、実力診断テストを授業改善等につなげる取組にしていきたいというふうに踏み切ったわけです。
授業改善におきましては、「学びの基礎診断」を入れるよりも前から、生徒に授業をちゃんと受けるようにどういうふうに声かけをしていけばいいか、どういう仕掛けを施せばいいのかということを非常に前向きに取り組む職員が多くおりましたので、「学びの基礎診断」ありきで授業改善が始まったわけではなく、元からあったところにこれが乗っかったような形で運営しておるというところです。
3つ目の質問について御回答いたします。事前指導についてですけれども、これは私が1年生の最初の集会で基礎力診断テストの意義について話をします。全国でこれぐらい受験者がいて、D3というものを取ったらこういう困難が伴うと。例えばD3という学力層はこんな問題が解けないんだよということをクイズ方式で確かめていったりしながら、生徒をくすぐりつつ、勉強に向かうような取組をしております。
事前教材、One-Weekトライアルをやりますと6割程度は取れると。1教科60点掛ける3教科で180点取ればD2以上、つまりD3にはならないということ。それでもって、順位よりもむしろGTZ、得点率に注意した上で受けましょうと、そんな落とし込みをして、そして朝学の時間に担任と副担任とでOne-Weekトライアルを取り組ませるような、解答もするようなことでやっております。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。御質問いただきました3人の先生方、いかがですか。よろしいでしょうか。
【藤森委員】 よろしいですか。
【荒瀬座長】 どうぞ。
【藤森委員】 ありがとうございました。
事前からの取組が言わば功を奏して、そこに「基礎診断」が乗ってきて、相乗効果でよくなったという印象を受けました。やはり先生方が子供たちを信頼するという、その基本的なモチベーションが子供たちにやればできるんだという意欲を与えたのではないかと、伺っていて感じました。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。
1つ、私からお尋ねしたいのですけれども。もともと荒れがなかなか激しかったというお話を最初校長先生がおっしゃいましたが、この荒れの原因はどういうものであると捉えていらっしゃるのでしょうか。
【桑名北高等学校】 なかなか背景的に難しい部分はあるのですけれども、荒れが始まる前は、本校と桑名西高校という学校が学区制でもってすみ分けして学校運営をしておったところなんです。それが全県受験できるようになりまして、エリアによって受験できる・できない地域が一律受験できるようになっていったところ、結果的に桑名北高校のほうが不人気校になっていき、桑名西高校が安定した落ち着いた学校になっていったということで、全日制の普通科の中ではどうしても高校を卒業したかったら桑名北しか受けられないよという、そんな地域での位置づけに成り下がっていたのが2000年前後という状況です。
背景がどこまでというのはちょっと分かりかねる部分はあるのですが、今それを克服しつつあることは申し添えさせていただきます。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。今のお話を聞いていましても、先ほど井上先生から御説明がありました自己肯定感の低さというのでしょうか、そういったことがあるのかなと思って承りました。ありがとうございます。
委員の皆さん、ほかによろしいでしょうか。
では時間もちょうどですので、桑名北高校のお二人、ありがとうございました。井上先生、懐かしい言葉も聞かせていただきまして、20年ぐらい前のことを思い出しました。ありがとうございます。
それでは桑名北高校の校長先生、井上先生、ここで御退室になるということで、本当にお忙しい中、ありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
それでは続きまして、広島県立西条農業高校、澄川校長先生、聞こえますでしょうか。
【西条農業高等学校】 はい、おはようございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 大変お世話になっております。よろしくお願いします。
【西条農業高等学校】 お世話になっております。画面を共有させていただきます。
本日は本当に貴重な機会を頂き、ありがとうございます。本校SSH総務主任の大平教諭と御説明をさせていただきます。私からはまず学校の概要、それから本校で取り組んでおりますというレベルですけれども「学びの基礎診断」によるPDCAについて少し。そしてここが本日のメインになろうかと思いますが、多様な評価によるPDCAの中のSSH事業概要までを私から御説明をさせていただき、その後につきましては大平主任から御説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、本校の概要です。7つの学科を有する本県農業高校の拠点校です。SSH指定校事業及びWWL事業連携校としても取り組んでいます。SSHは第2期4年目となり、WWLは2年目となります。海外姉妹校を3校有しております。進路状況につきまして、あるいは部活動等につきましてはそこに書いてあるとおりであります。
続きまして、「学びの基礎診断」です。ただ、これは恐らくどこの学校さんでもこの診断を活用している場合であれば取り組んでおられるような事例ではありますけれども、少しだけ触れさせていただきます。
本校では進路マップ、基礎力診断テスト、それからGTEC、それから今年から1年生ですけれどもLiterasということで活用させていただいております。それから、そうではないのですけれども、県教育委員会主宰の生徒質問紙調査についても評価の一つと捉えて、改善を図るツールとしておるところです。
まず進路マップ、基礎力診断テスト。例えばこれは数学の活用状況ですけれども、ここに示したデータはごく一部のデータで、これ以外にいろいろなデータが参りますが、やはり思考力・判断力がまだ低いとか、こういったところを数学科が分析をいたします。
これは2年生です。アップしているとはいえ、全然数値的にまだまだ低いということで、こういう分析を繰り返しております。
数学のほうで、例えば授業の中でのどういうところを改善していくか、あるいは定期考査等でどういうところを改善していくかを協議・審議し、それを今度は授業の中に反映していくという、小さいサイクルでのPDCAについては回していると把握しております。
これは英語に係る基礎力診断テストです。
これは2年生です。
英語につきましてもこういった形で、教科によってばらつきはありますけれども、的を絞った形で、洗い出したものにつきまして、授業等、教科を通じて意識を統一して授業改善に取り組んでいるところで回しております。
今年度初めてLiterasという形で、読む力とか情報理解力がコミュニケーション能力につながっていくことができないかということでの数値指標として活用できないかということでやっております。まだ今、分析をしながら、これから方向性を探っている状況でございます。もちろん、先ほどの英語や数学のような進路マップ、基礎力診断テストの分析等もやりながら進めているところでございます。
それではいよいよ本校の本題になるかもしれません。多様な評価によるPDCAということで、SSHにおける中身についてお話をさせていただきます。
まず、第2期の取組概要についてです。研究開発課題名は、農業・食料問題を科学技術の力で解決するグローバル人材育成プログラムの開発です。これにつきまして、科学人材育成の基盤となる豊かな土壌づくりとしてのグリットにも着目いたしまして、取組を進めています。このグリットを、目的を達成するために情熱を持って継続的に粘り強く努力し、物事を最後までやり遂げる力と捉えまして、生徒アンケートあるいは卒業生へのアンケートを通しまして、望ましいキャリア形成モデルの構築に向けて、指導の在り方についても研究を進めているところでございます。
研究開発の方法としましては、大きく2つの柱を設けてやっております。一つは探究活動の深化です。1年生の時にアグリサイエンスという学校設定科目を設けまして、探究の方法を身につけさせます。それから2年生、3年生で課題研究1、課題研究2、そういった課題研究へつないでいく形での計画の構築をしているところです。第1期の時からこのPDCAサイクルにより、アグリサイエンスの改善を図りました。今日のメインはそこになろうかと思いますが、その詳細につきましては後ほどから大平から御説明申し上げます。
もう一本の柱といたしましては発信力の強化でございます。様々な機会を捉えて生徒と社会をつなぎ、研究の価値づけを図る工夫をしております。残念ながら今年度はコロナの影響により苦戦しておりますけれども、ウェブでの参加でありますとか論文発表など精力的に取り組んでいるところでございます。
評価方法等については、生徒の変容等につきまして、そして事業評価につきましてはこういった形を取り入れながら進めているところでございます。
【西条農業高等学校】 続いてSSH事業の学校設定科目、特にアグリサイエンスにおける取組について御説明いたします。
こちらは平成24年度から指定を受けた第1期の取組概要です。実施内容で大きく3つに分け、そのうちの研究レベルの高度化による科学技術リテラシーの向上、その中で学校設定科目を実施しておりました。
第1期では1年次1単位と2年次1単位で、農業と理科の少人数展開授業を行っておりました。また、オリジナルテキストは生命・遺伝子・バイオテクノロジー・環境の分野の知識を身につけさせる内容に加え、観察・実験や話合い、仮説設定から一通りの研究を体験するモデル研究から成りました。
私たちは第1期のアグリサイエンスの成果と課題を次のように整理しました。まず、授業を行った教員側の実感として、テキストが盛りだくさんだったことから、授業担当者にとっては時間が足りない大変な科目であるという認識でした。そこでまとまった時間を確保すること、内容を絞ることを課題として整理しました。また研究レベルが高度化するにつれ、2、3年次における研究において先輩から引き継ぐ継続研究のものが増えたことから、生徒が主体的に課題設定を行う必要性を強く感じるようになりました。そこで、課題設定能力を育成することを重点課題として捉えました。
これは本校で行っている科学技術に関する生徒の意識調査の結果です。第1期の最終年度の1年生は、アグリサイエンスを通して課題設定、仮説設定、発表などにおいて低い推移で上昇したにとどまり、先ほどの授業担当者の実感と併せて、さらなる改善の余地があるのではないかと考えました。
このようなことから、第2期では次のように改訂しました。繰り返しになりますが、アグリサイエンスは2、3年次の課題研究を行う上で必要な科学リテラシーの基礎を育成する科目です。そこで、1、2年次に1単位ずつ実施していたものを、1年次2単位、2時間連続の授業としました。農業と理科の少人数展開授業は変わらずです。また、科学技術リテラシーに係る能力も、重なりを避ける形で12能力から9能力に精選しました。
内容については、知識を身につけさせるような内容は全てカットし、第1期のモデル研究のみを発展させるような形で行うこととしました。そして1つの題材につき探究の過程を2周させることとしました。第1期のテキストは内容が盛りだくさんで分厚い力作でしたが、この第1期で作り上げたものを思い切って捨てたことが改善につながったと考えています。育成したい生徒像がはっきりしていれば、それに向かって何を残し何を捨てるべきかがはっきりすることを学びました。
続いて、アグリサイエンスにおいて探究の過程を2周させることのメリットについてお話しします。アグリサイエンスでは課題の発見、仮説の設定、実験計画の立案、実験、結果検討、検証結果のまとめ等の探究の過程を、1題材につき2周させる方法を用いています。農業分野、理科分野で計6題材ありますので、生徒は1年間に計12周の探究の過程を経験することになります。1周目はこちらが与えた課題について探究させ、2周目は1周目の探究の過程で見つけた疑問等から自分たちで課題を設定し、そこから探究します。
ちなみに農業分野と理科分野の内容は、理科で行った実験方法を農業での実験に応用させたり、またその逆であったりすることで、生徒が内容の関連づけを行っている場面が見受けられます。例えば、理科分野で行ったコドラート、統計学を用いた調査法を、農業分野の植物ホルモンの影響でできるシュガースポットの測定にも用いたり、作物の成長と養分のところで行った濃度調節を酵素の性質での実験に生かしたりしています。
このように探究の過程を2周させることのメリットとしては課題に親しみ、意欲が高まり、チャレンジ精神が生まれること。自分事として捉え、課題に対する責任感が高まることなど、マインドにおいてのメリットがあります。また、検証可能な課題を発見できる、具体的場面を想定して研究計画を立案するなど、課題発見や課題解決におけるスキルにおいてのメリットもあります。
次に、アグリサイエンスの効果についてです。特に、物事を最後までやり遂げる力、グリットについて御説明しました。左のグラフはアグリサイエンス、SS課題研究1、SS課題研究2の全てのルーブリック評価の平均値を表したものです。アグリサイエンスで高く、SS課題研究1で一度低くなり、SS課題研究2で再び高くなっていることが分かります。一方、右のグラフでは各科目が粘り強く取り組む力、グリットの向上に役立ったと回答した割合が、アグリサイエンスよりもSS課題研究1で高くなっていることを示しています。
これのことから、SS課題研究1では応用的な内容や主体性が一層求められることから生徒は葛藤に直面しますが、アグリサイエンスで身につけた科学技術リテラシーが葛藤を乗り越えるための研究の推進力として効果的に作用し、続いてSS課題研究2において継続的に研究を行うという一連の過程で、生徒の粘り強く取り組む力、グリットが向上すると分析しました。
これは生徒の自由記述です。アグリサイエンスで身につけた科学技術リテラシーの基礎が課題研究を行う際に役立っていることが分かります。
第1期からの質問事項は変えず、継続して行っている意識調査では、先ほどお示しした第1期の最終年度の1年生が、事前と事後の差が小さいものでは5%程度しか上昇しなかったのに対し、第2期の最初の年度の1年生、このグラフですが、こちらは10%から15%の上昇が見られました。
【西条農業高等学校】 このグラフにつきましては、SSHの運営指導委員会の中で教育委員会から提示されたものです。全県からのいわゆる仮説を立てて検証するかという質問に対しまして、本校生徒のいわゆる肯定的な回答の割合が多いという結果を頂き、今の本校のSSHで取り組んでいる中身についての評価を頂いたときの背景となる資料として頂いたものです。
残念ながら、過去のもの、SSH1期前、SSH1期の頃、そしてこの2期に入ってという、この3つを比較できればもう少しまた違う分析ができるのかも分かりませんが、申し訳ありません、本日はそのデータが間に合っていないということでございます。ただ、今のような形で課題研究を改善する中で、本校のSSHが深化していっているのかなとも思いますし、それからこのSSH事業が一つの大きな柱となりまして、各教科・科目がどう科学リテラシーを育成していくのか、こういったところに向けて一つにまとまろうというところが最近見受けられております。
現在、2期目の4年目ということで、3期獲得に向けて全校挙げて、教職員もぜひこの事業は本校の核となる大きな事業の一つとして捉えてくれております。全校体制的にも1期から随分変わってきた様子があるのかなと感じてくださっている先生方もたくさんいらっしゃるということで、このカリキュラムマネジメントをしっかりする中で、さらなる魅力あるカリキュラムづくりに今後も取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
時間的なものが短かったかも分かりませんが、本校の発表につきましては以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 どうもありがとうございました。
それでは、今、御発表いただきましたことに関しまして、まず藤森先生、どうぞお願いいたします。
【藤森委員】 ありがとうございました。SSHを受けて、かなり生徒諸君が未来の人材を担う大変すばらしい活動をしているということで感動いたしました。
伺いたいことが1点ありまして、伺っていますと、やはり生徒諸君の思考力・判断力・表現力が極めてこういう課題研究等を通して育成されているように感じましたが、これと「学びの基礎診断」との関連性を見たときに、「学びの基礎診断」を行うというこの営みがどういうふうにこれに相乗効果といいますか、関連性を持っているか。逆に、こんな「基礎診断」があってくれれば、これがより活性化されるというふうな感触がありますでしょうか。その点について伺いたいと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。それでは田村委員、中村委員の順でお願いします。田村先生、どうぞ。
【田村委員】 田村です。よろしくお願いいたします。御発表ありがとうございました。
アグリサイエンス、それからSS科目等の実施体制についてお伺いしたいと思います。やはり理科とか農業科の先生方が中心になられているかと思うのですけれども、その他の教科の先生方はどのように関わっていらっしゃるのか。それから、アグリサイエンスやSS科目以外の授業改善にもこれがつながっているのかどうか。つながっていっているのであれば、どのような工夫を、体制であったり、授業改善の方針であったり、あるいは「学びの基礎診断」との関連であったりといったところで行っていらっしゃるのかについて教えてください。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。では中村先生、どうぞ。
【中村委員】 失礼します。中村です。
本当にSSHの授業、特に課題研究を中心として各教科の学びがまとまろうとしているという御発表を頂きまして、特に本件でも専門学科のいわゆる普通教科の学び、ここ部分の向上という部分の大きなヒントを頂いたように思っています。
特に国語や数学、英語、特に英語や数学の辺りが専門学科の学びの中でどのようにコラボしながら教科横断的に、そうやって普通教科の学びも引き上げられていっているのかという、その辺り、もし御知見があれば教えていただけたらと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。では長塚先生、どうぞ。
【長塚委員】 ありがとうございます。
もしかすると藤森先生と同じような質問になるかもしれません。「学びの基礎診断」は恐らく以前からされていたのではないかと思うのですが、このアグリサイエンスなどの探究的な課題研究などに取り組むようになって基礎力のほうに大きな変化があったのか、生徒の学ぶ意欲が向上したことによってそういう変化があったというようなことが言えるかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
では、今、4人の委員から御質問がありました。西条農業高校でお答えいただけますでしょうか。
【西条農業高等学校】 はい、失礼いたします。ではまず私から答えられる範囲でお答えします。
まず、ほかの教科とのコラボについてですけれども、2年生の学校設定科目としてSSグローバル英語という科目があります。そこではSS課題研究1で研究した内容を英語で説明できるようにしようということで、農業・理科・英語の融合を目指して行っています。それからデータサイエンス講座という、これは科目ではないのですけれども、課外での講座を行っていまして、ここでもSS課題研究1のデータの信頼性を高めるために統計を行っていて、農業・理科・英語・数学については融合を目指しているところです。
また、その他の教科・科目につきましても、相互授業参観等でSSHで決めている科学技術リテラシーのうちの1つを重点的な目標として捉えて、例えば本年度でしたら分析・説明能力を全教科の共通のテーマとして設けまして、授業改善をやっております。
それから、思考判断・表現力のところで、生徒のいろいろな意識調査とかルーブリックの結果を見ましたところ、伸びている力もあるのですけれども、それとこの「学びの基礎診断」の関連性についてはまだ分析し切れていないところが正直なところではあります。ただ、実感としまして、生徒が自分たちで研究を行い、大学に入ってもずっと研究を続けたいというモチベーションで海外に研修に行ったりしながら、進路実現に対する意欲も高まっているところはございますので、ぜひその辺をデータとして何か提示できるものができるように、今後も分析していきたいと思いました。
【西条農業高等学校】 今のとおりで、探究に対して、あるいは進学後のいわゆる研究意欲みたいなところには、結果、つながっていっているとは実感できております。ただ、今おっしゃいましたように、いわゆる「学びの基礎診断」の中の思考判断というところの向上と、今回のこのアグリサイエンスの向上の分析はこれからの課題だと思いますし、ただ、いろいろな教科の中で、例えば英語のほうでも英検受験者が増えてきたり、あるいは2級、準1級を受けようかというちょっとレベルの高いところでの生徒の意欲がここ一、二年のところで向上してきたというような数値データはございます。
あと、思考力等について、この「学びの基礎診断」の中でどんなものがあったらいいのかは、これは確かに本当に難しいと感じております。これで思考力がどこまでついたかが測れるもの、いわゆる課題研究等を通してついたものが測れるものがどんなものがいいのかは、ちょっと具体的にはまだイメージはできておりませんけれども、今ある既存のものを活用しながら、そういったところも測れることが必要になってくるのかとも考えております。
すいません。ちょっと取り留めのない回答で申し訳ありません。以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。理科とか農業以外の教科の関わりといったことについてももう少しお話しいただけると。
【西条農業高等学校】 今、大平も申しましたが、英語・理科・農業でSSグローバル英語とか、あるいはそれに数学が入ったデータサイエンス講座とか、こういった講座もありますが、学校一つとしていわゆる科学技術リテラシーの9つの力を分解しておりますが、その9つの力について、年度初めにシラバスの中にどういうところでその力をつけるかというところを計画的に教科のほうでも盛り込んでおりますし、これも全教科です。それから、今の公開研究授業においては、その9つの力のうちの1つを毎年テーマとして、これは順番ですけれども、今年で申しますと国語・数学・音楽・農業という教科が思考力の向上についてという大きなテーマを設けて、SSHに係るテーマを設けて、公開研究授業をやるということで、授業の中で科学技術リテラシーの育成に向けてというのは、皆、意識できていると把握しております。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ということは、科目との関係ということ以上に、各教科で先生方が授業改善に取り組んでいらっしゃるということとしていいのでしょうか。
【西条農業高等学校】 はい。
【荒瀬座長】 分かりました。ありがとうございます。
御質問いただきました先生方、いかがですか。藤森先生、どうぞ。
【藤森委員】 ありがとうございました。
私は国語の専門家なのですけれども、こんなことをしてみてはいかがということをちょっと申し上げたいと思います。この基礎診断でやはりいろいろな基礎的な知識・技能が育っていくわけですけれども、その一つに論理的思考を支える語彙力があると思うんです。恐らくこの3年の営みの中で子供たちの科学的リテラシーに関わる語彙力が相当拡充されると思いますので、それを追跡して経年的に見ていくと、思考力・判断力・表現力に生かされる知識及び技能等が関連づけられるのではないかと感じて伺っておりました。ありがとうございました。
【西条農業高等学校】 ありがとうございます。今の語彙力につきましても、先ほどのLiterasが何か数値的なもので役に立たないかなというのも少しにらんでおるところでございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。続きまして田村先生、どうぞ。
【田村委員】 田村です。ありがとうございました。
科学技術リテラシーを9つ設定されていらっしゃる。それをシラバスにも入れていらっしゃるところに着目いたしました。この観点で授業研究もされているということで、先生方の間では随分共有されていらっしゃると思うのですけれども、生徒さんはどれぐらい意識されているのでしょうか。シラバス以外にも生徒さんたちにこれを意識させるような手だてはお取りでしょうか、というところを教えてください。
【西条農業高等学校】 学校として科目の中ではルーブリック評価を行っています。この9能力に係るルーブリック評価は生徒に見える形で提示しておりまして、事業の初めに今日はこの能力を評価しますということで、必ず到達点を生徒に示すようにしています。ルーブリックについては生徒の自己評価に加え教員が評価を行うことで、何が求められているかは共通認識を持つようにして工夫しています。
以上です。
【荒瀬座長】 田村先生、よろしいでしょうか。
【田村委員】 ありがとうございました。また……。
【荒瀬座長】 どうぞ。
【田村委員】 さらなる発展としまして、そのルーブリック自体を生徒さんがさらに高めていくような話合いであったり、どうやったらこれが高まっていくだろうねといったことに、生徒さん自身がまた考えるという参加の機会もあると、さらに先に進まれるのではないかとは思いました。
どうもありがとうございました。
【西条農業高等学校】 ありがとうございます。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。竹内先生、どうぞ。
【竹内委員】 英語などの面でパフォーマンステストなどをやられていると思うのですけれども、どのような形のものが進めてられているかお聞かせいただけると非常に参考になると思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 お願いいたします。
【西条農業高等学校】 SS課題研究1の内容を英語で説明するということで、実際に発表会のようなものを行って質疑応答にも答えていくことを評価したり。あと、ビデオ撮りをしまして、生徒のいろいろな英語によるコミュニケーション能力をALTが評価したり、そういうことを行っています。
【竹内委員】 ありがとうございます。その際、ルーブリックなどはどのような形でやられているか、追加でお聞かせいただけるとありがたいのですけれども。
【西条農業高等学校】 9能力とルーブリックだけで網羅できない部分もございますので、英語科の中でそれぞれ評価基準を決めております。それに基づいて、英語科のルーブリックに基づいて評価を行っています。
【竹内委員】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 では、よろしいでしょうか。
お聞きしていまして、アグリサイエンスなどで生徒の意見を受けてまとまった時間を用意するとか、内容を変えていくとか、2周なさったというのは、これは総合的な探究の時間でも基礎と具体的に探究に取り組む時間をちゃんと段階を経てやっていくことの重要性が言われているわけですけれども、そういったことを学校の中でいろいろ検討される中で改善してこられたのは非常に感銘を受けました。ありがとうございました。
今日は最後までいてくださるということでよろしいでしょうか。
【西条農業高等学校】 はい。
【荒瀬座長】 では西条農業のお二人には最後までいていただきますので、もし何か後から御質問等ありましたら、またよろしくお願いいたします。
それでは次に進みたいと思います。竹内先生、手が挙がっていますが、いいですか。先ほどのものでしょうか。
【竹内委員】 すいません。先ほどのものです。下げておきます。
【荒瀬座長】 それでは大変お待たせいたしました。岐阜県立岐阜商業高等学校、古田校長先生、よろしいでしょうか。
【岐阜商業高等学校】 古田です。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 いろいろありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。では御発表ください。
【岐阜商業高等学校】 コンテンツの共有をまずさせていただきます。
前の共有が終わっていないのですが。
【荒瀬座長】 そのまま操作していただくと変わるそうです。変わりました。
【岐阜商業高等学校】 すいません。本日はこのような貴重な機会を頂きましてありがとうございます。岐阜県立岐阜商業高等学校の古田憲司といいます。専門は保健体育で、商業高校での勤務は初めてです。
本校は地元では通称、県岐商と呼ばれていまして、起業家精神あふれるビジネスリーダーの育成を目指しておりまして、右下のマスコットキャラクターはその精神のリーダー・オブ・ビジネスの頭文字を取ってLOB君と名づけられています。
本日は最初に本校の概要を、次にこれまでの取組としまして2003年から2017年、これは私が着任する前までの大きな流れを説明いたします。最後に、自身が着任した2018年以降について時系列で説明させていただきます。
今年で創立116年、県内では2番目に古い商業高校でして、校訓は不撓不屈です。同窓生の母校愛が非常に強い学校で、毎年1,000人規模の同窓会を開催するようなところです。
学校規模は3年生だけ10クラスですが、1、2年生は9クラス、来年度の新入生も9クラスで、4つの商学科があります。生徒数は現在1,115名で、内訳は男子が522名、女子が593名。生徒の学力としましては、合格者の学検点の平均が例年県平均の20点ほど上、7割ぐらいの得点を取って入ってきています。
本校は3つの分野で日本一を目指すとうたっています。1つ目は商業教育、2つ目は部活動、そして進路達成といったところです。
商業教育では株式会社GIFUSHOというものの運営を通して実践的なビジネス教育と、もう一つ、高度な資格取得の2つの柱があります。
株式会社GIFUSHOの運営は、生徒全員が株主となり、CEOを筆頭に会社組織を全て高校生が運営しています。高校に株式会社があるのは全国でも3例、指宿商業さん、本校、金沢商業さんと伺っています。具体的な運営につきましては、3年生全員が授業の一環で各商学科の特色に応じた業務を分担して行っています。ちょっと見づらいかもしれませんけれども、例えば流通ビジネス科が物販、情報処理科がアプリの開発やネットビジネス、会計システム科が会計処理や経営分析、国際コミュニケーション科が海外物販といった具合です。そして、LOB部という部活動に所属している1年生から3年生が放課後の部活動で企画運営や総務を担っており、CEOはLOB部から選ばれることが多いです。年商は2,000万円程度で、主な収入は近くのショッピングセンターでの年間50日程度の販売実習や体操服の販売、ネットショッピング等です。
もう一つの柱の高度な資格取得は、情報分野、簿記分野ともに高い実績を上げております。数字は2019年のものですが、最下段の卒業生公認会計士云々というものの意味は、高校卒業後に大学や専門学校在学中に公認会計士資格を取得した者の数で、本校の卒業生は年平均10人程度合格しており、全国の商業高校卒の合格者のうち3分の1から4分の1を占めているところです。
部活動については運動系、文化系、生産系、生産系というのは商業系の部活動のことですが、全て活発です。運動系では高橋尚子さんを筆頭に、1988年のソウルから2016年のリオまで8大会連続9人のオリンピアンを輩出しており、現在の新体操のフェアリージャパンPOLAのメンバーである松原梨恵選手も本校出身で、東京オリンピックに出場できれば彼女自身としては3大会連続、本校としても9大会連続、10人目の出場となるところです。文化系では吹奏楽部がマーチングの全国大会金賞の常連校で、生産系では簿記部や情報処理部が全国優勝の常連といったところです。
硬式野球部は甲子園において公立高校としては全国トップの実績を誇っております。ただし優勝は全て戦前で、最近は出場もかなわず低迷していましたが、3年前に就任した本校OBである鍛治舎監督の手腕によって今年春の選抜出場を勝ち取り、来年春の出場も濃厚な状態です。
このような高校であるため、入学してくる生徒の一番の目的は部活動で、県岐商を選んだ一番の理由はという問いに対して、35%が部活動が盛んだから、続いて商業の勉強がしたい、15.7%、検定・資格を取りたい、14.2%といったところです。
進路実績は年によって多少変動しますが、進学は70%以上で、内訳は円グラフのとおりです。ただし、学校推薦型選抜や総合型選抜がほとんどで、センター利用等の一般受験者はおりません。就職は、これまで卒業生たちの頑張りで地元の優良企業からも信頼は厚く、求人数に応えられないような状況が続いています。昨年度の求人倍率は18.8倍でした。
本校の概要については以上です。
次に、これまでの取組として、まずは2003年から2005年の3年間、文部科学省の目指せスペシャリスト事業を活用した、資格取得の取組について説明いたします。研究テーマは御覧のとおりです。取り組んだ主な内容は、簿記は公認会計士資格取得への挑戦を最終目標に設定し、中央大学商学部と高大接続教育協定を結び、外部講師による講座を開設しました。同様に情報処理も応用情報技術者試験への挑戦を目標に掲げ、専門学校と連携し、外部講師を招聘し、指導を受けました。
取組の結果、資格取得を通して多くの学びがあり、実績としても2002年は基本情報の合格者が13人でありましたが、翌年以降倍増いたしました。日商簿記の1級も2002年は6人でありましたが、2003年以降は倍増いたしました。この事業を通して、生徒の学びはもちろん、教員の指導力が大きく向上したことにより、2005年の事業終了後も安定的に高水準を保つことになっていきます。
しかしながら、資格取得にシフトし過ぎたデメリットも散見されるようになり、一時期は本校の志願倍率の低下にまで影響が出る事態になっていきました。
そこで、資格取得とは違ったアプローチとして、実践的なビジネス教育を推進しようと試みました。2014年から3年間、文部科学省のスーパー・プロフェッショナル・ハイスクールに採択され、Be the CEO Projectと題して、起業家精神にあふれるビジネスリーダーの育成を目指しました。
具体的には、先ほど言いましたが2016年2月に株式会社GIFUSHOを立ち上げ、会社運営を通して実践的な学びに挑戦いたしました。国庫補助がなくなった2017年からは岐阜県のスーパーグローバルハイスクールという事業を活用して会社運営を継続し、現在に至っています。
取組の結果、生徒たちは会社運営の醍醐味や難しさはもちろん、資格取得での学びが実際の会社運営の中でどのように活用できるかを実体験することができました。さらに、多くの地元企業と商品開発等を行う中で、地元経済の状況を知り、県民の嗜好に気づくなどの学びを得ることができました。マスコミでも度々取り上げられることで生徒のモチベーションも向上し、志願倍率の向上にもつながっていきました。
そのような状況の中で2018年、私が着任し、外からでは分からない日本のトップを走り続ける商業高校のすさまじさを目の当たりにしましたが、同時に専門外の私だからこそ、あるいは長年携わっていないからこそ感じた幾つかの課題を職員に伝え始めました。伝統の名の下に旧態依然とした校内の様子。前任者がやったことを踏襲することが最優先で、変えてはいけない雰囲気。いわゆる不易だらけの学校。チャレンジ精神の乏しさも気になりました。
生徒も教員も多忙の中で振り返りができていない。例えば2018年5月・6月の日程をちょっと口頭で紹介しますと、ゴールデンウイーク明けの5月12日土曜日・13日日曜日から県の高校総合体育大会、インターハイ予選が始まります。翌週の19日土曜日・20日日曜日も大会です。その週の5月24日木曜日から土日を挟んで29日火曜日までが前期の中間考査。その間の土日に27日には全国経理教育協会の簿記検定試験。6月に入りまして6月2日土曜日は実用英検。6月10日日曜日が本校が最も大事にしている日商簿記検定。6月16日・17日が東海の高等学校総合体育大会。本校から出場者は大体200名ぐらい毎年東海総体に出ます。さらに6月24日に全国商業高等学校協会の簿記検定。このように毎週何かあります。
3つ目、個々の教員の頑張りが全体に作用していない。本校の教員は非常に高い指導力を有しているのですが、クラスであるとか部といった自身が関わる集団を高みへ導くことはできるのですが、なかなか俯瞰して見られていないのではないかといったところでした。
これはチャレンジ精神の低下の一例として、本校の愛知大学と中京大学の受験者数の推移を表したグラフです。オレンジの線の中京大学はこのグラフの最大値が2015年で74人受験しております。55人合格でした。最小値が2019年で15人の受験です。7人合格です。ブルーのラインの愛知大学は最大値が2016年、2017年の51人受験です。合格はそれぞれ34人、29人。最小値が2020年で22人。22人の合格です。
これは日商簿記検定試験2級の合格者の推移を表したグラフです。文部科学省の目指せスペシャリスト事業以降、安定的に200人以上の合格者を輩出していましたが、2014年に一番落ち込んでいます。この要因は、この年から2級の範囲に1級の一部が下りてきて難易度が上がったことによります。翌年から対策を練り直して盛り返しましたが、2018年、私自身の着任の年ですが、大幅に下げました。この衝撃的な数値を突きつけられ、これまで教員主導で引っ張ってきた指導方法の限界を感じるとともに、後の日商簿記への明確なシフトと前期中間考査の商業科目の廃止へとつながっていくことになります。
ここまで説明しましたように、これまで資格取得と実践的な商業教育という大きな流れの中でハード面の整備は進みましたが、肝腎な生徒の主体性を伸ばす部分が欠けていると確信しております。せっかく高い志と高い能力を持って入学してきた生徒たちを伸ばし切れていないことを全教員で認識するとともに、大きく3つの目標を設定いたしました。
自分で考える力をつけるために、具体的にはルールを緩和したり、講師等を招聘して教員の意識改革を図ったり、荒瀬先生、その節は大変お世話になりました。ありがとうございました。株式会社GIFUSHOにおいても、これまで以上に生徒主体のプロジェクトに挑戦させています。
また、先ほどから紹介している5月・6月の猛烈な繁忙期を解消するために、2019年度から前期中間考査の商業科目を廃止し、試験期間も3日から4日に変更しました。簿記の検定は実務能力として実社会でも評価されている日商簿記にシフトし、全商検定はこれまで2級、1級を全員が受験していましたが、大学の推薦要件に必要な1級のみの受験としました。
教員のベクトルを整えるために、従来の教育目標等を改訂するとともに、1年以上かけて校内のミドルリーダーを中心に議論しながら、育てたい生徒像を作成しました。
この結果、部活動において例えば我慢して見守る教員が増え始めたり、商業科から探究型の授業が広がり始め、あるいは株式会社GIFUSHOでは生徒がトップセールスを物にしてくるなど、いい成果も出始めています。2020年の結果はまだ出ていませんけれども、日商へのシフトも徐々に成果を上げつつあり、学習時間の増加、職員会議前の活発な議論であるとかということがなされています。
まずは4つの学科全てで1年次に開講されるビジネス基礎という教科の中で、2020年度から探究型の授業を取り入れ始めました。校内の授業研究週間などで授業に参加した普通科の教員も刺激を受けて、授業の改善につながっていると思っています。
本校ではグローバル人材育成のために毎年何人かの生徒を海外に派遣しています。2018年に参加した台湾の観光物産展で商品販売をしているときに、台湾の高校生の中に訪日教育旅行のニーズが非常に高いことを知り、持ち帰って、台湾から岐阜県への教育旅行の企画を旅行社の方々とともにスタートしました。このビッグプロジェクトを成功させるために、県内のフィールドワークを行い、綿密な旅行プランを練り、魅力的かつ分かりやすいプレゼン資料の作成に取り組みました。2019年に台湾を訪問し、現地の旅行社5社、高校3校に直接セールスに回った結果、数校が興味を示し、その年の12月には1校40人ほどが視察を兼ねたショートステイで本校を訪問しました。また、2020年に岐阜県への旅行を申し出た学校が2校出てきました。残念ながら今年12月の来校は新型コロナウイルス感染症の関係でかないませんでしたが、関わった生徒にとっては何物にも代え難い経験となりました。この取組は昨年の全国高校生徒商業研究発表大会において高い評価を頂いております。
こちらは2018年、2019年に開催した岐阜県商業達人カップの様子です。2018年に本校の授業にお越しいただいていた外部講師の販売コンサルタントの方とのやり取りの中で、仕入れから販売までを競う高校生の大会を企画したら面白いのではないかということで、県内の商業関係の高校に呼びかけたところ、本校以外に岐阜市立の岐阜商業高校、大垣商業高校の2校が賛同し、初年は3校の戦いになりました。内容が各校10万円で商品を仕入れ、市内のショッピングセンターに店舗を設営し、販売後、利益や店舗設営の工夫、あるいは接客態度等を全てポイント化して順位を競うものです。他県からも情報を聞きつけて視察に訪れ、翌2019年には本県では参加校が7校に拡大、他県でも島根県や福岡県で同様の取組が始まったようです。
生徒の主体性を引き出し、伸ばそうとする様々な取組によって、生徒の商業に関する興味・関心も年々上がってきています。
学習習慣も少しずつついてきています。もっとも、今年度2020年は部活動ができず、ほぼ自宅にいる時間が長いので、来年の数値はちょっと心配ですが。
最後に、2021年度以降の目標について簡単に説明します。現在、職員全員で本校のキャリア教育の在り方について議論し始めており、それに向けて校内組織も整備していきたいと思っています。また、これだけ部活動が盛んな学校でもあり、今年度中には県内のプロスポーツチームがサッカーJ3のFC岐阜、バスケットボールB3の岐阜スゥープスとありますが、連携協定を結んで、スポーツビジネスを通しての学びに挑戦したいと考えています。当然育てたい生徒像についてもルーブリックの作成がまだできていませんし、グラデュエートポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーの作成につなげていきたいと考えています。
まだまだやりたいことは山ほどあるのですが、私自身、あと3か月ちょっとで退職です。しかし、校内にもミドルリーダーとして学校の改革や授業改革に向けて頼もしい人材が出始めており、次の方にバトンタッチして来年度以降の改革を非常に楽しみにしたいと思っています。
以上で県岐商のPDCAサイクルの構築について終わりますが、この発表をまとめながら、今さらながらではありますけれども、本校では資格取得を一つの物差しとしてPDCAサイクルを回してきていたんだなと感じた次第です。ちょっと長くなりました。本日は拙い発表をお聞きいただきありがとうございました。
以上で終わります。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。
それではただいまの御発表につきまして御質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
田村先生、どうぞ。
【田村委員】 田村です。どうもありがとうございました。大変戦略のはっきりした学校でいらっしゃって、興味深く拝聴いたしました。
今取り組んでいらっしゃることの中でとても難しそうだなと思ったのが、プランの2でしょうか、優先順位をつけて荷物を下ろそうというところですけれども、そこについてはどのような指導をされているのか、具体的に教えていただければと思います。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。では古田先生、お願いいたします。
【岐阜商業高等学校】 先ほどの荷物を下ろすということですけれども、説明いたしましたように5月・6月に生徒は部活動、検定試験、学校の定期考査と3つの荷物を抱えているという話をしていまして、商業科主任と話をする中で、いわゆるうちの資格検定試験は物すごく大事な生命線なのですけれども、日商と全商とどちらが大事なのと聞いたら、日商のほうが大事ですと。では全商をちょっと下ろそうかという形で全商を下ろして。本当にうちの学校は、この文科の発表で言うべきではないかもしれないですけれども、働き方改革に逆行するような朝から晩まで生徒も職員もばりばりやっているところで、荷物を下ろすのは自分の責任だと思っているので、外から来てぱっと見た瞬間に、とにかくこの荷物を整理して考える時間も与えなければいけないしという形でやっています。
あと、いろいろな部局においても、今年などは特にコロナでゼロベースからの見直しがあったので、来年度の行事を考える際にも、これって本当にまたやらなければいけないのかどうかということも、今、見直しているところであります。
お答えになっているかどうか分かりませんが、以上です。
【田村委員】 ありがとうございます。大変重要な、そして勇気の要る取組だと思います。先生方がそうやって教育活動を整理されていったということなのですが、生徒さんのほうはどうなんでしょうか。いろいろ生徒自身もこれもやりたいとか意欲のある生徒さんだと思うのですが、その中で絞っていくといったような、生徒さん自身の力はどんな感じでついているでしょうか。
【岐阜商業高等学校】 生徒は例えばルールの緩和などで、これも皆さん驚かれるかもしれませんけれども、本校は校則で私が来たときには通学靴は例えば白でなければ駄目だったんですね。それと体育のグラウンドシューズも決まっていたという形で、靴を二、三足持ってくるような状況で、なぜ通学靴が白でなければいけないかは意味が分からないので、それはもうフリーにしようとか。要は言われたことだけしっかりやっていれば、何とか県岐商に入れば、指定校があったりとか何とかでいけるんじゃないかという、能力は高いけれども考えないような子たちをつくっていたのではないかということで、ルールの緩和という形、あるいは生徒会との校則の話合いでそういった議論をしていく中で、大分主体的に自ら動くという生徒が、まだ数値的にどうこうということは分からないですけれども、先ほどの授業へ臨む態度などについても上がってきているかなということは感じています。
以上です。
【田村委員】 どうもありがとうございました。生徒さんたちには、考えられる、判断できるチャンスをできるだけ多く用意されていることですね。ありがとうございました。
【荒瀬座長】 では藤森先生、どうぞ。
【藤森委員】 ありがとうございました。感動いたしました。
今の田村委員の最後のコメントともちょっと関連してくるのですけれども。古田先生のお話を伺っていて率直に感じたことを申し上げますと、いい意味でも悪い意味でもこれまでの伝統をずっと遵守するという方向性から、選択権をできるだけ生徒に移していって、自主的・主体的に自分たちの学校あるいは学校生活をクリエートしていく方向へと営まれていると感じました。今年度が先生の年限だと伺ってちょっと残念な気持ちもしましたけれども。
そこで伺いたいのは、今回のテーマである「学びの基礎診断」との関連性です。御校の場合にはこんな活用の仕方があるのだなと感じながら伺っていました。それは何かといいますと、一つの大きな特色が、社会参画の中で社会を体験しながらその中で有機的にいろいろな知識、技能、あるいは思考判断、表現の力が結集されていろいろなプロジェクトがなされていくと思うんです。その中で、生徒たちは自分には何がまだ足りないか、どういう基礎的な力が必要なのかということが遡る形で自覚されていくのではないかと思うんです。そういう辺りに「学びの基礎診断」がいい意味での自分自身をチェックする機能として働けるのではないかと感じていたのですけれども、その辺りについてどのような取組なのか、あるいはどのような見通しを持っていらっしゃるか伺えると幸いです。
【岐阜商業高等学校】 ありがとうございます。
私自身も今、商業高校ですので、その探究するような授業を商業から始めていますけれども、当然普通教科、一般教科にも必要だとは思っていますが、まだそこまでいけていないのが実情でして、先生がおっしゃられるように、もう少し進んでくると「学びの基礎診断」をどう活用してという形には本校でもなってくると思っています。探究型が普通教科にも広がりながらという形になっていくと思っていますし、逆に言えば「学びの基礎診断」の中でもう少し、例えばそれが商業高校向け、農業高校向け、工業高校向けのような要素があるのかどうか私はよく分からないのですけれども、そういうものもあるとありがたいという気はいたします。
以上です。
【荒瀬座長】 藤森先生、よろしいでしょうか。
【藤森委員】 ありがとうございました。ややもすると「基礎診断」は今、自分がどのぐらいの力があるのかということの査定に使われるような気がしているのですけれども、御校のようなこういう取組を見ると、子供たち自身がこれからの自分に今まだ自分の中で十分ではないのは何だろうかということを未来志向で考えていくような「基礎診断」になっていく可能性を持っていると思うんです。ぜひその辺りについても追求していただければありがたいと思います。ありがとうございました。
【岐阜商業高等学校】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。
古田先生、ありがとうございました。以前伺ったときにも申し上げたかもしれませんが、要は県立岐阜商業高校としての基礎学力という点でいうと、教科の学力はもちろんのことながら、社会との関わりの中でどんな力をつけるのかということは非常に熱心に取り組んでいらっしゃいまして、それと各教科とのつながりをどう考えていかれるのかというのが、多分このプラン3の教員のベクトルを整えようというところにも関わってくるのかなと思って伺っておりました。ありがとうございました。
そうしましたら、今まだ西条農業のお二人の先生方も残ってくださっていますし、古田先生ももちろん今いてくださっていますので、全体を通じまして両校に対する御質問がございましたら、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。では西条農業の澄川校長先生、大平先生、そして県立岐阜商業高校の古田校長先生、今日は本当にお忙しいところを御出席いただきましてありがとうございました。この後、もう御質問が出ないようでありますので、御退出いただいて結構でございます。本当にありがとうございました。
【西条農業高等学校】 ありがとうございました。
【岐阜商業高等学校】 ありがとうございました。
【荒瀬座長】 それでは、あとまだ少し時間がありますが、せっかくですので御意見等を頂ければと思っておりますけれども。これで冒頭申しましたように教育委員会1道2県、そして具体的に学校から3校、お話を伺いました。それぞれのお取組は多様でありまして、それぞれ独自にお考えになったお取組をなさっていらっしゃるわけです。我々のこの会としましては、具体的にはどういったPDCAのサイクルの回し方の好事例があるかとか、あるいはまたそういうものに資するような「基礎診断」の開発というのでしょうか、認定基準をどうしていくのかといったようなことの議論も出てまいります。
アンケートも文部科学省でこれから取っていただくということなのですが、ちょっと時間的に年度内にそれがどこまで集約できるか、集計できるかは分からないのですが。次回辺りで具体的に今後の検討の論点をまとめて御提示させていただいて、議論を深めていければと思っております。これは新しく始めましてから2回目ということで、まだまだ積み上げてきたものがあるわけではないのですけれども、今の時点でもし何か御意見がございましたらお聞かせいただけると幸いでございます。いかがでしょうか。
萩原先生が少し遅れて御参加くださいました。萩原先生、お忙しいところありがとうございます。
【萩原委員】 少し遅れての入室でしたが、今日の3校の事例につきましては、お話を伺わせていただきました。今後、「基礎診断」を使ってどうPDCAサイクルを回していくのかという好事例だと思いました。
また、各県でいろいろな事例があると思いますが、次回の論点整理でまとめていければとも思います。
以上です。
【荒瀬座長】 ありがとうございます。皆さん、いかがでしょうか。
もしよろしければ、今、萩原先生からも御発言いただきましたけれども、次回は論点整理を御提示させていただいた上で御意見を賜るということで進めさせていただければと思います。
そうしましたら、特段の御意見がございませんようでしたら、今日はこれで終了させていただきたいと思います。今後の予定につきまして、齊藤参事官補佐からお願いいたします。
【齊藤参事官補佐】 それでは次回の有識者会議につきましては、現在、先生方に日程を照会させていただいておりますので、日程調整後にまた御連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬座長】 ということであります。それでは本日の議事はこれで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。もう今年最後ですね。どうぞ皆さん、よいお年をお迎えください。ありがとうございました。

── 了 ──

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