令和6年12月19日(木曜日)10時00分~12時00分
WEB会議での開催
堀田座長、藤村座長代理、大久保委員、木田委員、小﨑委員、佐藤委員、讃井委員、高橋委員、戸ヶ﨑委員、中川委員、春山委員
茂里総合教育政策局長、江﨑大臣官房審議官、神山政策課長、寺島学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、木村教育DX推進室長、白井教育DX推進室室長補佐、稲葉教育DX推進室室長補佐
デジタル庁、総務省、経済産業省、個人情報保護委員会事務局、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)、一般社団法人ICT CONNECT 21、一般社団法人日本教育日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)
※資料1-1「効果的な教育データ利活用に向けた推進方策について(令和6年度議論のまとめ)(案)」、資料1-2「効果的な教育データ利活用に向けた推進方策について(令和6年度議論のまとめ)(案)参考資料集」について事務局より説明を行い、委員・オブザーバーから意見、質問が出された。
(意見)
【座長】 これから議論に入りますが、議論の方向について確認をしておきます。
この会議は今日で27回目です。令和2年からずっとやっています。そもそも教育データとは何か、どのように使うべきか、学習eポータルのようなものをどう構想するか、あるいは教育データ標準をどうしていくかみたいな話もあり、また、個人情報との関係とか、あとデジタル庁が進めていらっしゃるような教育に限らないデジタル化との進み具合の調整みたいなこともあります。
この間に、民間企業の方々は様々な御努力をいただいて、優れたデジタル教材等も出されておりますし、様々なツールが子供たちによって使われることによって、様々な教育データが蓄積されているという現状があります。
こういう現状の中、これからしばらくの間、私たちはこれをしっかりと各学校、各自治体に御理解いただきながら、教育データを使っていくと教育の向上に大変意味があるよということを啓発するようなことをやってきたわけですけども、残念ながら、意欲ある教育委員会と、まだこれからだというところの地域間格差というのは結構大きいということになります。
国としては、様々なデータの標準化とかそういうことを進めると同時に、望ましい教育データの利活用についていろいろ提示するということをやってきたわけです。
ただ、今年だけで7回目ですけども、この間、各自治体が学習eポータルをしっかり選べているのかということと、各自治体がしっかり選ぶための自由な選択を前提にしたときに、その選択が狭められているような商慣行、商習慣がないかどうかみたいなことがいろいろ話題になって、皆さんから御意見をいただいたところです。
前回の会議から、事務局と各委員の皆様といろいろ御調整、御相談をさせていただいたわけですけど、いよいよ今期の第3期のまとめということで、常に中間まとめに過ぎないわけですけど、私どもとしては今期こういうふうに進めてきたね、これから大事なことはここだねということをまとめていこうとしているわけでございます。
これから大体60分、70分ぐらいでしょうかね、全ての委員にできれば御意見をいただきたいところでございますけども、この今期のまとめについて、議論されたことを基に、こうしておくべきじゃないかという御意見と、また今後の課題について、今期は十分に検討し切れなかったけども、今後こういう方向でちゃんと検討していくべきではないかというようなことにつきまして、皆さんから縷々御意見をいただければと思うところでございます。
それでは、委員の皆様、挙手ボタンを押していただきまして、私のほうで指名さしあげたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【委員】 大変な資料のおまとめ、事務局にいただきましてありがとうございます。資料1-1を読みながら気になっていたところが2点ありまして、1点目が目的についてなのですが、「目的」という言葉がたくさんこの中にも出てくるのですが、目的が何なのかというのが出てくるのが、資料1-1の7ページや15ページとか、目的が何なのかの理解がないまま「目的」という言葉が使われているところが見られるかなと思っていまして、しっかり読み込むと分かるところなんですけれども、少し早い段階で、この「目的」は何なのかというのをもう一度しっかりと宣言しておいたほうがより読みやすくなるなと思ったのが1点目です。
2点目が、「標準」という言葉もたくさん出ているんですけれども、読みほぐすと、データのスキーマに対する標準の話と、それから、取り扱うプロトコルとか技術要素に対する標準という話と、それからシステム構成に対する標準という話がありまして、しっかり読むと分かるところだと思うんですけれども、何の標準について話しているところなのか、読み手により分かりやすくなるようにお示しできるといいかなと思っています。
データ標準と技術要素の標準については、資料1-1の10ページの注5や注6に記載されているところで大きな違和感はないのですが、システム標準については、少し私は違和感がございまして、まだ始まったばかりの取組というか、座長も前回の会議でもおっしゃっていましたけれども、取り組みながら、よりよいものを改善しながら前に進んでいる取組だということを考えたときに、実際現場もそうだと思うんですけれども、果たしてシステム標準があるのだろうかというのは思っていまして、こうしたらよいという提案はもちろんいっぱいあると思うんですけれども、現段階で、国が「これが標準です」と宣言し切れるような標準的な構成というのがあるのだろうかというのは、私は正直疑問には思っております。もちろん、よいもの、よい組合せによるパッケージがあることも承知はしておりますが、それが、国が果たして標準と言い切れるものなのだろうかと。
一方、前々回、委員からも御発表があったように、資料1-2の中にもそういった例が書かれていますけれども、自分のところで要素を組み合わせてシステムを構築するということが実際に行われていて、先進事例としてあると考えると、これは何度も繰り返しになりますが、システム標準たり得るものがステートできるんだろうかというのは、私は疑問に思っていまして、この点は読み手に大きく誤解を与えるリスクもあることを考えると、少し慎重に書きぶりを修正していただいたほうがよいのではないかなというのが私の意見でございます。
【座長】 ありがとうございました。文章の改善も含めて、誤解のないような表現にしていく必要もあるわけですから、大変貴重な御意見をいただいたかと思います。
【委員】 よろしくお願いします。まず、これまで本会議におきまして、各回において各面から多様な協議がなされた中で、このような形でお取りまとめいただいたことにつきまして、事務局にまずは御礼を申し上げたいと思います。
今回の取りまとめにつきましては、資料1-1に、教育データの利活用に関する基本的な考え方、とりわけ今後の学びの方向性について、3ページから4ページの部分でしょうか、パラグラフの5番目に、「児童生徒が」を主語として、学びのスタイルを作っていくといったことの重要性に関する記述が加えられたということは、今後やはり学校や自治体及び民間事業者様を含めまして、データ利活用の方向性を改めて確認し、その認識を一にしていくといったことを考える上で、非常に重要なポイントであろうかと考えております。
ただ、資料1-1の4ページ、一番上のパラグラフに書かれております表現、「デジタルに全面的に置き換えるのではなく、アナログも使いながらデジタルで補完する」ですとか、「デジタルによってアナログの部分的な置き換え」といったような部分の表現が、若干、アナログが主であり、足りない部分をデジタルで補完するという文脈にも読めるかと考えましたので、ここはアナログとデジタルのそれぞれの強みを生かした相互補完といったようなニュアンスの表現にできないかなと考えたところであります。
次に資料1-1の8ページ、2-3.今後の基本的な考え方・方向性におきましては、学習eポータルの基本的な位置づけの維持が示されていることにつきまして、自治体の担当者の1人としましては、非常に安堵するところでございます。
これまで学習eポータルに関しましては、令和5年度全国学力・学習状況調査における、中学校英語「話すこと」調査がMEXCBTにおいて実施されるに当たりまして、実証も含めまして、その前年度までにほぼ全ての学校において学習eポータルが導入されました。
それ以来、学校や自治体においては、学習eポータルの機能や理解、それから操作に加えまして、教育データの利活用に向けた研修や取組が行われてきております。
資料1-1の10ページにも示されております、教育委員会の職員が任意に参加できる教育データの利活用に関するコミュニティ、これにつきましては私も毎回参加しておりますけれども、本当に多くの自治体の担当者が参加しております。また、私は学校DX戦略アドバイザーとして、これまで多くの自治体の支援に関わらせていただいておりますけれども、近年、教育データの利活用に関する相談というのがとみに増えてきております。
しかも、これらの自治体の多くが、まだ独自のダッシュボードを構築しているというわけではなく、まずは教育データの利活用をどこからどのように進めるかについて、所管の学校を含めて、試行ですとか検証を進めているところです。
そしてその中でも、まずは学習eポータルの活用を中心に進めようとしている自治体も多く、例えば、主体的・対話的で深い学びの実現状況、これはなかなかその実現状況を可視化、数値化していくことが難しい、評価しにくい面がありますけれども、そこでMEXCBTに登録されている児童生徒へのScTN質問紙(主体的・対話的で深い学びのための意識・実態調査質問紙)、こういったものを利用して授業評価や学校評価に生かし、授業改善を図ろうとしている学校や自治体も多くあります。これらの結果の集計や閲覧に、現在も学習eポータルの機能が活用されているというところです。
このように、もちろん、先ほども取りまとめの中にもありましたように、自治体によって取組や活用には差はあるといたしましても、既に教育データの利活用の入り口として学習eポータルが使われ始めている現状におきましては、今の枠組みや位置づけというのが維持されるということは非常に望ましいことだと考えております。
当然ながら、今後も多様な学習eポータルでのサービスが提案されることというのは非常に期待されることでもありますし、自治体がそれらをやはり主体的に選択でき、かつ、場合によっては異なる学習eポータルに乗り換えるということも簡易で、かつ、そのコストも極力少なくできる、そういった制度や仕組みについても担保されるということも必要だろうというふうに考えているところでございます。
【座長】 ありがとうございました。委員におかれましては、鹿児島市や鹿児島県のみならず、全国のいろいろ御指導もしていただいているところでございまして、学校現場で学習eポータルの利活用や、あるいはそれに伴う様々な教育データの利活用について、自治体主体でやっていかなきゃいけないということと、であるからこそ、それぞれの試行錯誤が必要であるということで、この時期を今、御指導いただいているのかなと思っております。
格差はありますが、機運はだんだん高まってきている状況かと思います。貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
【委員】 ありがとうございました。非常に難しい議論を丁寧に取りまとめいただきまして、また御説明いただきまして、ありがとうございました。
私からは3点ぐらいお話しできればというふうに思います。特に、まずは先ほど委員も話題にされていたと思いますが、目的の部分だと思います。
資料1-1の15ページに、「教育データの利活用の大目的は、誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限引き出すことであり」という部分は非常に私も同意するところであるのですが、この「誰一人」の部分を見ていくと、例えば資料1-1の7ページのところでは、「誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限引き出すということがその目的の中心にあるということは当然ともいうべき大前提である」と、少し強調しているのか、書きぶりがちょっと違うなと感じることもあるんですけど、もっと書きぶりが違うというか、順番が変わってしまっているなと思うのは、資料1-1の9ページの「このような各自治体等の実態やニーズに応じた主体的な選択こそが、自治体等それぞれの教育データの効果的な利活用を促進し、ひいては児童生徒一人一人が、誰一人取り残されることなく」というふうになってしまって、これはまた少し順番が、そもそも誰一人取り残されないというところを目的に主体的な選択をしてもらって、その結果、利用が欠かせなくて活用が促進されるというのが順番ではないのかという、この目的の部分の記述がより丁寧にあったほうがいいんじゃないのかというふうに感じたところです。
私がどうしてここにすごく着目したのかというと、やはり教育データの考え方が、それぞれ学校を支える人々を中心に考えていくべきだろうと思っているわけです。
子供一人一人が中心になってデータが集められるとか、例えば先生も、多様な働き方が必要ですから、先生にとっても先生中心にデータが集まっていくとか、やっぱり人が中心でデータが集まっていくとか処理されていくべきだろうというふうに思うわけです。
今、既存のシステムを触らせていただくと、大体まずは教育委員会を設定して、学校を設定して、学級を設定して、そこに子供をひもづけるみたいな形だと思うんですけども、多様なニーズ、多様な子供たちを包摂していこうと考えれば、まず子供があって、さらに子供が所属するものが学級だけに限らず、様々なものに所属する可能性があって、それも学校なのか教育委員会なのかというふうに考えていくと、やはりどうしても子供中心でやっていくしかないし、それができることが、紙とは違う、大量なデータを扱えるデジタル処理のよさだというふうに思うわけです。なので、この辺りの技術に少しこだわってコメントしてしまったということになります。
ちょっと長くなって申し訳ありません、2つ目なのですが、資料1-1の4ページに、「目的達成のためにどのようなデータが必要なのかを見極めることが重要」と書いてあるんですけども、こう書いてしまうと多分教育委員会の人は、どんなデータが必要か見極める議論をし出して、一向に先に進まないんだと思うんですけど、そういうことの割には、資料1-1の15ページに、「様々な優良事例を創出する段階」とか「創意工夫によって」というふうに書かれていますので、あまりここが目的的ということと、この創意工夫ということに少し齟齬がないのかというところが心配だということになります。
最後、3つ目なのですが、行ったり来たりで申し訳ありませんが、僕が大事だと思う順番で話させていただいていますけど、資料1-1の4ページ、先ほど委員も指摘された、アナログ・デジタルのこの部分なんですけども、従来の指導法をアナログという方もいるとは思うんですけども、データもアナログだ、デジタルだというのが、もちろんデータの話のほうが元祖アナログ・デジタルなので、ここでもアナログ・デジタルって書かれると、データの利活用の話なのか指導法の話なのか少し分かりにくいなと思って、多分まずそこで何人かの方が引っかかるんじゃないのかと感じるところです。
ここは、今後に向けての学びの方向性ということで、データに触れる場所ではないとは思うんですが、それにしてもこういう選択肢をどのように生かしていくか考えていくことが肝要という、この選択を考えていく上でも、このデータというものが使えるんだと思います。だから、いわゆる、ここでいうアナログ的なこれまでの指導法をやっているからデータは要らないというわけじゃなくて、そういう指導法を今後もやるのかやらないのかという判断にもデータが使えるわけなので、その指導のアナログ・デジタルという話とデータがデジタルだという話が分かりにくくなるとこのことが伝わらないなと思いますので、ここで根拠を持って選択肢をどのように生かしていく、根拠を持ってどのように生かしていくかみたいなところの根拠という言葉とか、その根拠という言葉が、実はデータで資料1-1の4ページの1-2.教育データの位置付けと利活用に当たって意識すべきポイントにつながっていくみたいな、そういうような書きぶりだといいんじゃないのかと感じたところです。
【座長】 ありがとうございました。大変丁寧に読み込んでいただきまして、ありがとうございます。
アナログとデジタルのことはこの会議のみならず様々なところで、こういう使い分けはかえって誤解を生むんじゃないかという話が出ていまして、今、委員の御指摘のとおりですけれども、データとの関係で言えば、今日これをやる予定の人みたいな感じで、子供に手を挙げさせるみたいなことはあったわけで、だからアナログ的指導かもしれませんけど、でも誰と誰がこれを今日やる予定なんだなというデータが得られていたわけで、これをアナログかデジタルかとか言い出すともう切りがなくて、私たちは子供たちにしっかりした指導あるいは支援をしていく、そのための方法に様々な手法があるということかと思いますし、得られた情報も、教師による勘も見極めも含めて、そういう部分と、データが先に取れているというような、これをどうやって判断するかという話もあるわけで、このアナログかデジタルかという形式の問題はあまり意味がないかもしれないということかと私も思っておりました。
ありがとうございました。
【委員】 ありがとうございます。まず、事務局に感謝申し上げます。一言一句、本当に難易度の高い取りまとめだったと思いますので、本当に感謝申し上げます。
今期委員会の一つの目標だったユースケースを出していこうというお話があったかと思うんですけれども、私としては現場の皆さんや学習者が本当に必要だと、利便性を実感していただけるようなユースケースを現状出せるのかというのはすごく疑問でした。やっぱり効果を出すためにはしっかりとした準備が必要だということをずっと考えていたところでありまして、現状、自責の念として準備不足であるということは否めないと思っています。
前回、前々回、本会議で、議案として扱うべきかどうかというややビジネスモデルのような、論点が違うであろうと僕も思った議論が出ましたけれども、この議論というのは、やはり目標である学習者や教員たちがしっかりこのデータを有効活用していく、メリットを感じていただくための一つの準備、例えば運営としてサステナブルにしていくために必要な議論だったのかなと僕は理解しています。
ただ1点あるとすれば、課題解決というのが、目の前の喫緊の課題から着手すべきではなくて、もっと俯瞰して課題の本質から大きな全体像を見た上での課題ということで、もっとほかにも大きな準備としての課題点はたくさんあったので、そういったところからやるべきだったのかなと思ったところです。
それを踏まえて今回読ませていただいたところ、自治体の自由な選択肢というところがすごく気になりました。現状のMEXCBTと学習eポータルと自治体の接続という観点でいうと、何か制限することなく自由に今の段階で選ぶことが重要だと思っているんですけれども、各自治体が自由にシステム構築をしてしまうと、やっぱり閉じたシステムになってしまうなど、せっかくの共通データが生きてこない、また安全性の問題なんかも出てくるかもしれません。そして、一度つくってしまうと後戻りが難しいというシステムの負の側面もありますので、この自由というところについてはやはりもろ刃の剣というか、慎重に考えるべきじゃないかな、自由というのはとても難易度が高いのかなと思っています。結果、自治体における教育格差につながってしまうこともありますので、僕は少し慎重な書きぶりをするべきかなと感じています。
先ほどの準備という観点で教育データのところですけれども、先ほど委員が、本当にシステムとしてのあるべき姿というか、標準化というものがあるんだろうかという問題提起をさせていただきましたけれども、現状、例えば、技術標準についてはデジ庁も含めて動いているところもあり、またはデジタル学習基盤という形で一つのモデルケースというか、形を提示しようとしていることから、やはり国としてのあるべき姿というのをしっかりと提示していくことが大事なんじゃないかなと思っています。
そのデジタル学習基盤というのは、今のMEXCBT、学習eポータル、自治体の関係以上の、もう少し上の段階にビジョンというのがあるんじゃないかと思います。例えば、資料1-1の6ページの児童生徒・保護者の視点の中にもありますけれども、データを用いて自分自身の学びを振り返りながら自立した学びにも効果があると書かれておりますので、学習者、児童生徒一人一人にちゃんとデータが集まるというか、先ほど委員も似たようなお話があったのかなと思いますけれども、例えば僕なりの言い方として考えるのであれば、1人1アカウントのLMSの提供、例えばデバイス1人1台となったとき、次のデータ利活用のハブである個々の、LMSがいいのか、LRSなのか分かりませんけれども、個々のデータが個人に集まるようなものが必要になってくるのではないかなと思っております。そういった点を強調したいと思う。LMS的な表現はいいんですけれども、学習者一人一人の学習データが1人に集まるような状態、こういったものが僕は重要なのかなと思っています。
あと、最後、提案なんですけれども、資料1-1の8ページの2-3.今後の基本的な考え方・方向性に関してですけれども、今後ということがどの程度の時間軸の今後なのかちょっと分からないんですけれども、内容がやや近視眼的になっているように見えました。例えば次期の会議体において、国における標準的な一つのロールモデルというか、システム構成を示す必要があるという視点に立ち返り、自治体の選択肢と、あと、この中にも書いてありましたけれども、国において標準的なシステム構成を示す必要性があるこの両軸があるとするならば、やっぱり国として中長期のあるべき姿をより具体的な標準的なデータ活用のビジョンなどを示していくとか、かなり踏み込んでおりますけれども、そういった文言を記載していくとか、そういったことはいかがかなと思っておりまして提案をさせていただきたいと思います。
【委員】 おはようございます。
まずはこれまでの様々な議論、いろんな立場の意見、御考量いただきまして、こういった取りまとめをいただきまして本当にありがとうございました。特にお聞きをしていて感じたのが、今後自治体において主体的な決定、判断をしていくに当たってというところに関連して、今使っている学習リソースを使い続けられるように接続拒否の禁止と、あとは学習eポータル間におけるデータ移行の保障というところを明記いただいたことはすごくありがたいなと思いました。
まとめ(案)に関しては出てきたばかりのため業界全体の声の取りまとめが現状できているわけではないというところがありますので、あくまで今回は私見ということで意見を述べさせていただけたらと思っているところです。
まず確認をしたいなと思っていましたのが、今回、資料1-1の8ページに実証用学習eポータルと民間学習eポータルというところで2つ出てきていると思うんですけれども、基本的に実証用学習eポータルはMEXCBTの接続機能のみであって、いわゆるハブ機能とかダッシュボード機能みたいなものは、実証用学習eポータルにはついていないという理解でまずよろしかったでしょうか。
【事務局】 はい。
【委員】 ありがとうございます。
費用を低減するためにとか、MEXCBTの持続を保障するためにということで、自治体が無料で使えるのはあくまで実証用学習eポータルであって、民間学習eポータルについてはMEXCBT部分も含めて無料でなくなる可能性があるという理解を自治体としてはしておけばいいんでしょうか。
【事務局】 民間のサービスについて、例えば機能ごとに切り分けて、この部分について有償とか無償とかというような価格設定をしているというふうには承知していないですが、現状、民間学習eポータルについては有料のものも無料のものもあると承知しています。
【委員】 分かりました。ありがとうございます。MEXCBT部分も含めて有料になる可能性もあるということでお答えをいただいたかなと思います。言いたいこととしては、自治体の方がこれからこういったまとめを読むに当たって分かりやすいように文章をどう変えていくかという観点からなんですけれども、民間学習eポータルと実証用学習eポータルというところはやはりきれいに書き分けたほうがいいのかなと思いました。その中で、民間学習eポータルを使う場合については、MEXCBTの持続的な運用、これはもう絶対保障されなきゃいけないものと今回の資料1-1の中にも書いてありますが、MEXCBTの持続的運用に当たって、やはり個別の担当企業と学校設置者である自治体が費用負担についてきちんと協議し決定しておく必要があるということは明記いただいたほうがいいかなと思いました。これがまず1つ目です。
2つ目に行きます。今回資料1-1を読んでいて、どっちなのかな、どういうスタンスなのかなと僕自身よく分からなかったのが、MEXCBTについては全自治体で絶対保障してねという話だったと思うんですけれども、学習eポータルなどのデータのハブとなる仕組みというのは、全自治体で基本的には必須としてほしいというスタンスなのかという点です。必須で求めるにしても、一部なのであればどこまで求めるのか。一律で自治体に求めるところというのはどの部分になるんでしょうか。
【事務局】 現状、全ての自治体にハブ的機能も含めて必須とするというような形では、今回の議論のまとめ(案)の中では記載はしていません。
【委員】 MEXCBTは必須ということは明記いただきたいと思うんですけれども、データのハブについては必須とまでは言い切っていないというスタンスでしょうか。
【事務局】 言い切ってはいないです。MEXCBTについても、全国学力・学習状況調査に参加する場合について、MEXCBT、それからMEXCBTにアクセスする学習eポータルを何らか御準備いただくことが必要という前提になっています。
【委員】 分かりました。ありがとうございます。ハブ機能が必要ないのであれば、無料の国の実証用学習eポータル、今後名前が変わるかもしれないというものでも、文科省としては十分であるというか、必須条件を満たしているということで考えられていることで理解しました。
また、委員が先ほど触れたところに近いんですけれども、自治体のニーズに合わせる、主体性に対して合わせていきたいというところはすごくあるものの、一つ一つ合わせていくということを推奨してしまうと、基本的にほぼ全てが標準外の接続になってしまう可能性があって、そうすると、すごく接続の手間がかかるとか、その中で手数料を取ることがむしろ常態化、そちらのほうがレギュラーになってしまうという可能性があって、社会全体としてのデータ利活用のコストが増大していくような構造になる可能性があるかと思っていますので、その辺りやはりどこを統一していくのかということであるとか、個別性を求めた場合、そこでかかる接続手数料というのが、最終的には自治体や学校に返ってくる可能性があるということも自治体側には認識いただく必要があるのかなと思ったところです。これが2つ目です。
3つ目ですが、今回接続拒否の禁止とかデータ移行の保障のところは書いていただいたものの、ここ2回の有識者会議で触れてきた問題について課題がまだ残っていると思いました。まずお伝えしたいこととしては、今、何がツールズと学習eポータルの接続上問題になっているかというと、やっぱり接続の手間がすごくかかってしまっていたりとか、標準と言われる接続をしてもツールズがその後すぐ使える状態になっていなかったりするというふうな声とかが上がってきている中で、そういう接続の問題が今あるんだということと、そこを解決していくような議論を続けていくんだということは書いていただきたいと思っています。あとはもう一つ、やはり手数料を要求されることでビジネスが続けられないというふうな話も出てきている中ですので、資料1-1の8ページの2-2.の三つ目のパラグラフに「実態も多様」という言葉が出てくるんですけれども、まさに実態が多様である、その中でどんな問題が起きているかというところは、その部分、あるいは資料1-1の10ページの3-2.自治体等の主体的な選択に向けた課題及び今後の対応の中などに、今起こっている問題についても、この会議体で議論があったことについてはきちんと書いていただきたいと思っているところです。
今回、ビジネスモデル的なところで気になっているのは、資料1-1の11ページの3-3.様々な学習リソース等を提供する民間企業における健全な競争環境にある運用的な視点からの課題です。資料1-1の13ページの2つ目のパラグラフに当たるのかなと思うのですが、そこで手数料モデルも含めて、そこから先は民間の商習慣の中なのでということで、割と自由なビジネスモデルをやっていいというふうな書きぶりのように私のほうでは読めたんですけれども、果たしてそれで大丈夫なのかなということを気にしています。というのが、やっぱり最悪のパターンに備えておく必要があると思っているんですね。
どういうことかと申しますと、この資料は前回の有識者会議でもお見せしたものなんですけれども、まず前提として、学習eポータルは非常に公的な領域を背負っているシステムです。特に全国学力・学習状況調査では、MEXCBTとつながっていて、いろんなデータが入るハブ機能になるということですので、データセキュリティのところもすごく大事だというふうなお話とかも、まさにいただいたとおりだと思っています。
前回、私は性質によって議論を分けるべきで、丸3の「民間領域の競争領域」は自由でいいと思うんですけれども、丸1の「公的領域」や丸2の「民間領域の協調領域」についてはルールをもう少しちゃんと定めて、あとは収益事業化をそもそも不可にしたほうがいいんじゃないかというふうな話をさせていただきました。最悪のパターンでどういうことが起こるかということに対して、きちんとビジネスモデルの制限をかけるべきじゃないかということを考えています。
まず、受益者負担モデルはシンプルで一番リスクが少ないけど費用負担の話とか国の財源支援が必要だよねって話はあると思います。
2つ目が手数料モデルというところで、そもそも手数料が払えないEdTech企業ってどうするんですかね。無料で提供されるEdTechにも手数料を払ってとなった瞬間に、それは学習eポータルとつなげなくなるということです。あとは手数料が多く発生するビジネスモデルが残ることというのは接続コストが低減しなくなるので、結果としてツールズであるとか、あとはひょっとしたら教科書会社さんとかの参画機運が生まれないリスクがある。だからなるべくそういった手数料モデルでやるということに対して、文科省のスタンスとしては推奨しないとか原則やらないほうがいいという考えであることを明記したほうがいいと思うんです。
販売プラットフォームというところについても、現在の代理販売を否定するものじゃないということは繰り返し言わせていただきますが、学習eポータルとつながった場合に、代理販売に載っている事業者と、代理販売には載りませんよ、うちは直接販売なのでという事業者で、明らかに取扱いに差が出るはずなんです。それは代理販売で連携している事業者のほうを優先したほうがビジネスとしていいからということは明確なので、そういったことが起きないように、そこで差をつけないとか、ましてやそういった定価に差が出ないようにするとかみたいなルールをやっぱり決める必要がここまで挙げてきたものでもあると思うんですね。
さらに言うと、いや、じゃあそういうことできませんってなったときに、いやいや、もう学習eポータル上に広告載せます、要は全国学力・学習状況調査に使っているシステムに広告が載る可能性があるとか、あとはそこで得ているデータを基にしてデータを2次利用していくモデルみたいなものもビジネスモデルとしては考えられるわけで、やはりこういったものについて、現在のまとめにおいて、きちんとビジネスモデルの制限というところについては書いていく必要があるんじゃないかと思いますし、あとはやはり接続最適化をしていくということがまだまだ必要なので、そういったものが議論の途上であるとか、今、問題があるということも明記をいただいたほうがいいと思っています。
資料1-1の15ページところですが、国の役割というところで気になっているのが、こういった問題がある中で、事務局的な機能であり、認証・監督をしていく機能というのを国が持たないと、まさにそういった公的領域における公共性というものが担保されないと思っています。ですので、問題が起こったときにやっぱり認証取消をしていくであるとか、そういった問題解決を常に現場の把握もしながらやっていくということを国の役割として明記いただきたいなと思っているというところになります。
ちなみに最後に細かい点ですが、先ほど申し上げたビジネスモデルについて、やはり基本的には受益者負担で考えていって、接続コストモデルとか販売モデルについては基本的には原則認めないというスタンスについてどこに書くかというところでいうと、資料1-1の8ページの2-3.今後の基本的な考え方・方向性とか、そういったところにお書きいただくのがいいんじゃないかなと思っているところでございました。そういったビジネスの話もありますが、何が言いたいかというと、要はすごく大事な部分だと思っているということです。学習eポータルは、この国においてデータ活用していくハブになるわけです。校務と学習データとのハブにもなる。そういったデータのハブを担う仕組みについては公共性の担保というところが非常に重要であって、それを保障するために、国としてのルールづくりとか、それを認証・監督していくような組織をつくっていくということはものすごく大事な部分だと思っていますので、今回のこの会議体で終わりではなくて、きちんと来年度含めて継続的により解像度を高めていく、具体的に決めていく議論を行っていくというところを最後お願いしたいというところでございます。ありがとうございました。
【座長】 ありがとうございました。大変貴重な御視点をいただいたと思います。
一方で文部科学省ができることには所掌の観点で限界があり、この会議体もビジネスモデルそのものまで踏み込むことは難しいと思います。このまとめにどこまで書けるかというのは、これから事務局と相談させていただこうと思いますが、委員の御意見としては、こういうのが出たということは何らかの形で残しておきたいと思います。
教育DX推進室が運営しているこの会議だけで決められない様々な話もありますので、これらについては、それこそ国の役割として資料1-1の15ページにも書いてありますけど、関係省庁が連携してやっていくことの一つを御指摘いただいていると思いますし、そのことの重要性は私も座長として大変強く認識しておりますので、この件について、どこでどういうふうに話し合っていくべきなのか、どこで定めていくべきなのかについては、今後の課題となるかと思っております。ありがとうございました。
【委員】 今のお話に付け加えるようなことになりますが、自治体における契約のあり方とか、個々の商習慣とか、過去からずっと続いてきたことの中で、今後見直したほうがいいものはたくさんあると以前から私自身も感じています。またデータの時代にはそういったことがより顕著になることもありえます。このことは学習eポータルだけに関わらないことでもありますし、教育データ活用を超えた話にもなることですから、これはこれで検討する部会をつくるとか、このテーマで検討する日を設けるなど、ぜひそうしたらどうでしょうかと思います。
今現在、自治体は基幹業務システムの標準化の取組を、2026年3月を期限として進めています。1,700超の自治体全てが期限までに対応できるわけではなく、一部の自治体においてはやむを得ず期限後の移行となる場合もあるようですが、どちらにしてもそういうことが全国で進んでいます。教育界としても遅れることなく教育データの利活用の準備を進めなくてはいけません。先ほど他の委員もおっしゃられましたが、今使っているシステムとデータのなかのことだけで考えるのではなく、広く考え、システムを超え、疎結合というやり方でお互いのデータをやり取りできるようにする、インターオペラビリティーとしてより繋ぎやすくしておく、そのためにはどういうふうにするかということを、まずは最低限のことはしっかりと考えておいて将来に向けて備える。このことが教育分野以外で自治体が進めようとしている中ではとても大事なことであります。教育データの利活用を考える際には、その観点を持っておく必要があると思っております。
ここで昔の話を紹介いたしますが、20年ぐらい前に視察したハワイの高校の授業で、外国語ここでは日本語の授業でしたが50分の授業の中で5分ごとにPCとか紙とか、使用する教材・教具をどんどん変えて新たな学びのシーンを創り、非常に効果的に語学が学べるように教えていて感心したことがありました。その中で先生は、手を挙げているのは誰かとかを日本でもあった黒い閻魔帳のようなところに都度メモされていた。他にも宿題の提出とか、単元ごとの学習の達成とか、自主研究とか、定期テスト以外にもある多くの個々の評価の積み重ねが最終的なその教科の評価につながります。アメリカでは実績のあるトップ校の場合その学校の成績が信頼できるということで、全米のトップ大学ではその評価と面接だけで合格が決まるという形があるので、先生も責任を持った評価をするわけですが、そのハワイの先生はルーブリックで全部の単元ごとの評価基準、ここまでいったらこうだというのを生徒が見えるホームページ上に公開し、また宿題だとか、プロジェクト学習とか、もちろん定期テストであるクオーターテスト、それらをどのように重みづけして計算するかも示し、全部合計して最終評価はどのように評価するかまで公開していました。手を挙げているかどうかなどは日本でも取り入れたら良いと思いましたが、日本の40人学級ではとても無理だよなと…あれはアメリカが20人学級だからできるんだよな、日本はどうしたらいいんだろうかなどと思いました。しかし、このような活動をデジタル機器が助けてくれるならば、日本でも実現可能性が出てきます。より適切な評価というのは子供たちの意欲を伸ばしますので、挑戦したいものです。
2022年のPISA調査では、日本はとても良い成績でした。その中でも私が注目したのは、習熟度レベル1の生徒が減少していること。これがよかった。もともと1人1台端末が実現すれば成績の低い子には効果が出やすいとある研究では言われていました。繰り返し学習するということがしやすいというのは過去から言われていましたので。
ある先進地域では、PISA調査における習熟度レベル1の生徒をどうやって上げていくかに力を入れたいとして、全国学力・学習状況調査だけではなくて、ほかのデータを組合せながら進め、いかにその生徒の習熟度レベルを2、3に持っていくかということを最大限進めてきたとの発表がありました。これらのような工夫をする自治体が増加したので、今回のPISA調査の結果の中で成果が出たのではないか。大変うれしいことだなと思っております。
一方で、従来の評価方法だけでいいのかという疑問もあります。慶応義塾大学の今井むつみ教授は、正誤だけではなく、どの概念が理解されていないのかといった観点でもデータを取る必要があるとおっしゃっています。そういう分析評価方法も出て来たようです。このようなデータもどう生かすか。
また、自治体の中では、子供のために自治体が持つ多くのデータを生かそうと研究しているところがあります。その研究所の人のお話をお聞きしたときに、「実は残念ながら、教育分野のデータが一番ふぞろいで使えないんですよ」とのことでした。個人の名簿が統一されていない、データがどのような形でいつ出たのか属性と一緒に付随していないなどの理由で使えない場合が多くあります。毎回、データをクリーニングするのにものすごく手をかけているとのことでした。自治体のほかの部局でも同じような課題はあるのだけれど、教育分野のデータは一番ひどいと。それは非常に頭が痛いことです。
そういう話が出ますと、昔から機器やOSやアプリとかの栄枯盛衰がある中で、統一したらいいのではないかという話が出ます。他の委員がおっしゃられたように、システムの標準化ではなくて、データの標準化とインターオペラビリティーの標準化をぜひ、この機会に最低限はしっかり固めて、次に禍根を残さないように進めていきたいものです。
学習eポータルについては、学習eポータルで使うことが決められている、OneRosterですとか、LTIとかxAPI、これはデータの形式をどうするか、データをツール同士でどう交換し合うか、そして名簿等をそろえましょう、これらが標準要件になっているので、MEXCBTにつなぐときに結果として標準化がされているということです。これは学習eポータルと学習リソースの間だけではなくて、学習リソース同士でもデータ交換できるということです。まずは、そこに近づけながら、その中で、先ほど、たまたま今井教授のお話を出しましたが、認知科学的とか、それ以外にも新たなデータが産み出されるなか、過去のデータとも組み合わせることが出来る。学習eポータルだけではなくて、学習リソース同士をもっとつなぎ合わせましょう。校務とかデジタル教科書とかをもっとつなげやすくするお話や、そのデータをどう使ったらいいかというお話があったと思うんですが、まだ限定する段階ではなくて、もっと、いろいろな自治体が、あるいは研究者がチャレンジして、こんなふうに使ったらこんな結果を引き出せた、それはPISA調査における習熟度レベル1の子を引き上げられたというだけでもいいですし、違う形でもいいでしょうし、ぜひ、データ活用の可能性を拡げる形の議論に次回以降も進むことを切にお願いしたいと思います。
資料の個々の点では、デジタルやアナログの使い方とか、私も少し気にはなったところはありますが、本当に事務局の方がご苦労されてたたき台としてまとめていただきました。この上で次の進展があるのだろうということで大いに期待しております。どうもありがとうございます。
【委員】 よろしくお願いいたします。ここまでの委員の皆さんの御意見も踏まえて、この資料1-1の内容、基本的にバランスを取って、細かいところまでよく検討された書きぶりになっているなと感謝申し上げます。全体的な内容につきましては、私としても賛同させていただきます。
私からは書きぶりのことなんですけれども、例えば、資料1-1の3ページに「デジタル学習基盤というのはインフラ」という表現があるときに、教育委員会、教育行政側の捉え方としては、そのデジタル学習基盤が学習eポータルであったり校務支援システムであったり、いわゆる何かの仕組みという具体的なツールのようなものをイメージしがちなんですけれども、もう少し大きい書きぶりとして、デジタルの学習基盤というのはモノの話ではなく環境だというような示し方があったほうがいいのではないかと思います。
あと、学校設置者としての教育委員会の業務として捉えるのか、学校設置者がすることではあるけれど国の方針として主体性を求めているのか、これはどちらだろうねという議論になることがあると思います。とにかく国が大きい方針を示してやると言ってくれたらそれでいいんだよという内容のときと、いやいや、自分たちの実態とかやりたいことがあるから、国はあまり口出しをしないでもう少し自分たちの自由にしたいという内容のときがあって、自分たちの思いで何かをしようとしたときの根拠をこういう中間まとめとかに求めたときに、本来、書かれてあることの解釈にぶれはあってはいけない、誤解はあってはいけないんですけれども、自由に解釈する余地があって、うちはこうしたい、ああしたいということが実現できるものである指針、よりどころとしての書きぶりであれば、大変心強いと思います。
多分今は、十何ページという膨大なページ数、これでも絞って十何ページになっていると思うんですけれども、これをまた概要として数枚にまとめたりとか、誰が利活用するのかという点なども含めた方針になっていくとは思うんですけれども、急がば回れなのか、先んずれば人を制すなのか、いわゆる可視化したりデータ化したりするということを誰かが決めてどんどん標準化に向かいましょうという方向性と、それぞれの創意工夫でそれぞれがデータの扱いについて、も考えていきましょうという方向性があると思います。標準化は大事な基本的な考え方としてわかるのですが、創意工夫したいんですよね。私の県や市などで見ていると、自分たちでやりたいことがここに書かれてある、その根拠をこれに求めたいというときにも使いたいし、独自性をいい意味で出したいというときに書かれてあることよりももっとチャレンジしたいという思いを支える言葉にもなったりするので、表現としては、難しい判断は、難しいですよね、今後に委ねましょう、これから考えましょうではなくて、できれば、併記してもらうと、私たちはこっちでいきましょうか、私たちは、この考え方でいきましょうかみたいな話がしやすくなると思います。
あと、書きぶりとして、誰一人取り残さないとか、学校の現状、自治体の現状がこうですよねという書きぶりのところが、ちょっとマイナスというんですか、ネガティブな印象を受けます。現状が悪いからデータを利活用してより良くしようというニュアンスの書きぶりになっているような気もするのですが、多様ということは、困難なこととか難しい問題を生じるものではなくて、多様性とか多様化というのはいいことなんだと。そういうことがあるから、たくさんのいろいろな考え方があって議論ができるから多様性があれば今より良くなるんだよねという、多様化とか個別にいろいろなことが起こっていることが悪いことじゃなくて、そういう社会、時代に応じた生き方をするために、データを積極的に活用していきましょう、そういう表現になればいいのかなと思います。
研究者の皆さんのいろいろな知見とか積み上げてきたものということを参考にしながら、「デジタル学習基盤」の「学習」が取れて学習だけのためではない「デジタル教育基盤」となるべきではないかと。今、私たちがやっている議論も、いよいよ外の学校外のシステムや社会と結びついていくということですから、どちらかというとこういう方針は、内向きに、学校の中はこうですよね、こんなふうに扱いましょう、という部分も大事ですが教育データはしっかりデジタル基盤と結びつけていきましょう、という視点が大事だと思いました。
【委員】 よろしくお願いします。これまでの教育データ利活用に関する議論について、いろいろおまとめいただきまして、ありがとうございます。
私が思うには、大変よくまとめていただいているんですけれども、どうしてもシステムに関わる内容に重点が置かれていて、実際に現場で利活用する側の視点が薄いのではないか、現場の利用や活用に関する議論が取り残されているのではないかと思います。データ利活用に関しては、これまでの会議において、教員の負担軽減、子供たちの学習指導に生かせるという期待が現場から上がっているということをデータで示していただきました。ただ、その具体的な内容はどのようなものなのかということをいろいろ議論していただけるとありがたいなと思います。
例えば、これまで私は、学校現場にもいましたが、学校現場では4月に学級編制がございます。始業式・入学式に向けてベストな学級編制を行うのですが、大規模校では数百人の小学校から上がってきた子供たちを、入学式までに一番ベストな学級編制にしなければなりません。そのためには、過去のいじめ、友人関係、不登校歴、生徒指導、食物アレルギー、病歴、学習成績、経済状況、などについて、小学校、保健室、相談室等から集約した多様なデータを基に職員でいろいろ分析しながら最良の学級編制をするわけです。こういった業務にこそ教育データの利活用、例えばダッシュボード機能等で一人の子供について大量の情報を教員が一画面で把握できるといった活用ができれば教員の負担軽減に繋がると思います。一つの事例を出しましたが、そういった意味で、システムに関する内容も非常に大事なんですけれども、データをどのように現場で活用できるかということを議論していただけると非常にありがたいなと思いました。
【座長】 ありがとうございました。
大変貴重な視点でございまして、今期の有識者会議はビジネスモデルの話も出たこともあって、データとかシステムの話が多くなってしまったところがあります。今の御意見を踏まえまして、何らかの書き込みをしていきたいと思います。ありがとうございます。
【座長代理】 まずは、これまでの議論、たくさんの議論がありましたけれども、対立する意見があっても非常にうまく最終まとめのほうに入れていただいたなということ、それと、ビジネスモデル、今、座長もお話ししましたけれども、国の役割なのか、それ以外の何らか関係者の団体でやるべきことなのかとか、そういったところもきちんとまとめていただいたのは非常にすばらしいなと思います。また、ユースケースに関しても、委員が最初におっしゃっていただいた現場が腹落ちするという点からいうと、まず第一歩として、かなり分かりやすくまとめていただいたこと、御礼申し上げます。
私のほうから、これまでユースケースですとかデータ標準、データ連携標準等についての議論が多かったので、落としていた視点があったものですから、おわびを兼ねて、少し申し上げたいと思います。
まず、私が申し上げたいのは、これまでの議論の中で、デジタルデータの真正性を確保するための認証局の必要性という議論が落ちていたなということをおわび申し上げたいと思っています。今後、進学とか転校とか、いろいろな場面でのデータ活用が広がっていくと思うんですけれども、そういった現在、進学、転校等の手続のデジタル化とか、またPHRなど、医療や防災などの他分野も含めたデジタル連携が行われる社会になっていく、その中に教育があるんだと考えるべきだと思っています。
その際、実は、大学関係者だと分かるかと思うんですが、留学生などの卒業証明書とか成績証明書とかそういったものが偽造されたものが大量に出回っていて、真正性の確保ができていません。したがって、誰がつくったデータか、誰に関するデータなのかといった真正性の確保が必要だと考えています。
これは私がロンドンの国際学会で、2010年に教育クラウドの在り方を提言したときにも、最初からこれは考えなければということで、認証局、真正性の確保ということを言っていたんですが、例を挙げれば、卒業証書や成績証明書のような学習成果証明がデジタル化していって、それをどんどん活用しようという中で、今のままでは真正性を確認できないということを非常に憂慮していまして、このままそれがないままデータ利活用が進むと、いろいろトラブルが発生すると考えています。
ただ、これは自治体やベンダーがそれぞれで対応できる範囲を超えている話と認識していますので、認証の仕組みを検討、整備していく必要が絶対あると思います。しかし、ニーズが顕在化してから検討するのでは遅いのではないかという危惧を大変強く覚えている次第です。
そこで、既に国で整備されているデジタル基盤との整合性もありますので、本日、先ほど御紹介があった会議に参加されているデジタル庁のほうに、この辺の状況とか可能性について御意見を頂戴し、それをまとめのほうにも入れていただければ幸いです。デジタル庁さん、いかがなものでございましょうか。
【デジタル庁】 貴重な示唆と機会をいただいて本当にありがとうございます。
デジタル庁では、組織認証、個人認証、学校単位であろうと、子供、先生単位であろうと、それに相当するような認証基盤を、医療であるとか防災であるとか様々な分野で整備をして活用していただいております。
例えば組織単位ということであれば、もう広く事業主の補助金申請等で使われているGビズIDというものがございますし、個人認証であれば、マイナンバーカードを、認証アプリを通じて、民間企業やJリーグ、ゴルフ場など、いろいろな方にも使っていただくといった整備が進んでおります。
デジタル行財政改革の場でも、国はきちっとデジタル公共インフラを整備していけということで、教育分野でも基盤整備を進めるという期待は、既に方向性として示されております。委員からお話があったような認証基盤の整備、まさにDPI、デジタル公共インフラでありますし、まさに委員がおっしゃったとおり、教育による教育のための認証基盤であると同時に、より幅広い分野の中で教育の認証基盤がどうあるべきかという視点も含めて全体的に設計をしていくことが必要になります。それがうまくいけば、教育分野の中での転校、進学時の手続のオンライン化やなりすましの防止、教職員の業務負担の軽減、自治体のコスト削減といった教育分野の中でのデータ連携、自治体を越えても機関を越えてもつないでいくことができますし、その先の他の分野との連携などでも重要なアンカーになっていくと思います。
ぜひ、私どもデジタル庁としては、こうした話を他分野との関係も含めて技術的な観点から検討させていただいて、文部科学省とよく連携をして貢献をしてまいりたいと思ってございますので、ぜひいろいろな検討の視点やリクエストを御指示いただければ、すぐに動きたい、このように考えてございます。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【座長】 大変貴重な御意見と、もう既にいろいろ検討がスタートし、実装が始まっているという御意見というか情報をいただきまして、ありがとうございました。大変参考になりますので、私どものこの有識者会議の推進方策の中に情報として組み込めればと思うところでございます。
また、座長代理におかれましては、ちょっと漏れていた論点について御指摘いただきましたこと、ありがとうございました。
学習データのみならず、教育データですから、様々な校務のあたりもしっかり視野に入れていく必要があり、そのことが、それぞれのデータ標準とその運用のインターオペラビリティーの話とか、そういうあたりと関係していくし、先ほどのビジネスモデルの話を委員がおっしゃいましたけれども、このこととも関係する非常に重要な観点かと思います。ありがとうございました。
【委員】 大変多様な意見をうまく取りまとめていただいて、ありがとうございます。
子供たちの学習環境、また、そこに直接関与する自治体に配慮していただいた内容になっているのかなと思っています。
まずは、もし可能なら、ぜひ追加していただきたいのは、この定めた技術指針の実装支援によって、自治体が学習eポータルを活用する上での業務負担軽減、ここにまでつなげるという点であります。これは以前も申し上げたところであり、年度初め早々に全国学力・学習状況調査に参加するためにMEXCBTを利用するということは、すなわちMEXCBTに接続するために学習eポータルを利用することになりますが、その年次更新のスケジュール感には正直厳しいところがあるのかなと思っています。
自治体によって、校務支援システム、学習eポータル、OSの利用状況等が異なるため、難しいとは思いますけれども、定めた技術標準が現場の負担軽減につながるように、システム整備の条件の整理や支援をしていただけるとありがたいと思っています。
そのほか、学習eポータルとは直接関係ないところで、少し気になった点について幾つか申し上げますと、1つは、教育データの標準化に関連して、学習指導要領のコードのアップデート等のメンテナンスや、その活用に向けた取組も強化できるといいのかなと思っています。各ツールでの実装・活用が進んでいけば、データ利活用の波及に一役買ってくれるのではないかなと期待をしています。
また、これまでも何度かこだわっていますけれども、ぜひ、教職員のIDについても検討を進めていただけるといいのではないかなということであります。特に都道府県規模で教職員の情報をデジタルで管理することは、基礎自治体まで含めて、間違いなく業務改善につながると思っています。適切な労務管理や、人事異動などに関するEBPMにも活用していける可能性も秘めていると思っています。これはなかなか文科省だけではというわけにもいかない部分もあると思いますので、省庁を挙げて対応していっていただきたいと思いました。
それから、資料1-1の3ページに、「近年、子供の多様性が顕在化し」とありますけれども、近年の子供が多様化しているわけではないと思います。子供の多様性は、どの時代にもあり、それに対して、学校に求められているニーズや期待が多様化しているのではないかなと思っています。そこは誤解しないようにしたほうがいいのかなと思います。
それから、資料1-1の10ページにある教職員のデータリテラシーの向上については、ほんの少しだけ触れられていますけれども、ここは教員養成の段階から研修に至るまで、加えて教員だけではなくて教育委員会事務局職員や学校管理職も含めて、そのスキルアップについて、もう少し膨らませていくべきではないかなと思っています。
それから、全体的に「学習データ」に偏り過ぎているように思っています。これまでこの会議において、スタディログだけではなくて、ライフログ、アシストログや、運営・行政データといったものを教育データとして定義してきたわけですけれども、本取りまとめでは、「1-3 目的に応じたデータ利活用」以外の箇所においては基本的に「学習データ」、いわゆるスタディログしか取り扱っておらず、本まとめが、本会議が掲げているスコープの一部分のまとめという印象を受けてしまいます。教育委員会事務局職員や教職員が子供への支援に必要なデータを利活用するという視点で考えていくと、学校現場のニーズは、どちらかというと生活や生徒指導に関するデータの利活用に対するニーズの方が高く、こちらの視点ももう少し加える必要があるのかなと感じています。
細かいことを含めていろいろと申し上げましたけれども、何より大切なことは、教育データの利活用が教育の質の向上を目指すための大変有効なツールであるということを、自治体や学校現場に様々な手を使って浸透させていくことです。そして、自治体の意思で実践がしやすいように自治体の選択を支えることが重要で、そのために、ここにもいらっしゃる産官学の皆さん方が協力し合ってそれぞれの役割を果たす必要があるのだろうと思っています。
他の複数の委員も本日もおっしゃっていたように、子供や教職員といった学校の現場が取り残されないように、他省庁ともぜひ連携していただいて、教育データ利活用の議論をまとめていけるとよいと思いました。
【座長】 ありがとうございます。
委員にはいつも大きな視点から、あるいは先進的な自治体の教育長というお立場から様々に御示唆いただいているところでございます。ありがとうございました。
私も座長として一言申し上げておきます。今日は12月19日ですが、25日に中教審で大臣から諮問があるということが、この間、公表されました。諮問の内容は、1つは、次の学習指導要領をどうするかということであり、もう一つは、教員の養成、研修、人員確保みたいな話だというふうに報道されております。
こういうタイミングで、私たちが今、この会議体で何をすべきかというのは非常に大事なことだと思います。今、皆さんからも御意見いただいたように多様性や包摂性の観点、学びやすさ、働きやすさの観点、人間同士が触れ合うことで得られる様々な情報、エキスパートの教師が専門職として持っている様々な判断と同時に、データで裏打ちできるような部分はどこかというようなこと、あるいは漏れがないかをしっかりと把握するすべとしてのデータの利活用というのがあるということでございます。
MEXCBTで全国学力・学習状況調査をやっていくということが公表されていることもあって、学習データを先に議論しているという部分もありまして、今、委員がまさにおっしゃったとおりですけれども、教育データというのは学習データのみならず、様々な附帯するデータの部分がありますし、そのことが、先ほどの大臣諮問で言えば2つ目が関わる教員の働きやすさのところに関係していく部分はあると思いますし、処遇改善の観点、教育委員会がそれをどう利用するか、人事等、あるいは生徒指導等、様々な形があろうかと思います。
今の話でもあったように、大きくは自治体がしっかりと責任を持って決めていただく。そして、自分のところの自治体の設置者として、どういう学習環境、学習基盤を提供するかを主体的に決めていただくということが非常に重要になる一方で、それを国が、あるいは民間企業がどう支援できるかというところに、まだ幾つかのきしみや無理解、あるいは情報が届いていない部分があろうと。第3期で整理できた部分と、あとまだ課題として残った部分があろうかと思います。
この第3期のまとめについては、また次回も御議論いただきたいと思いますし、それまで、今回も事務局には随分御苦労いただきましたけれども、今度またこれを加えて、よりブラッシュアップしていただくということをお願いしたいと思いますし、それでもなお、第3期の今期では、今年度中にはこのメンバーの委員会では十分に議論し切れなかった内容として、例えば学習指導要領が変われば、学習指導要領コードのアップデートは当然起こるわけで、こういうようなことに対して、どういうふうに準備していくかとか、先を見たことを第4期がもしあるのだとすれば、そういうものでちゃんと議論していくことが必要だろうということがあります。
私の不手際で十分に議論できていないことはたくさんあります。大変申し訳ございませんが、皆さんから貴重な御意見をいただいたおかげで、一旦、今日のところはここまでで、あとしばらく事務局にまた預かっていただくという形にしたいと思います。
そろそろ予定時間、ちょっと過ぎていますね、1分過ぎています。大変申し訳ございません。次回は1月31日の15時からとなっておりますので、よろしくお願いいたします。
また、今日、全員から御意見をいただいたものの、言い足りなかった部分等がありましたら、事務局までメール等でお知らせいただければ幸いでございます。
それでは、今日の会議はここまでといたします。皆さん、御協力ありがとうございました。
(以上)
総合教育政策局教育DX推進室