令和6年6月5日(水曜日)10時00分~12時00分
WEB会議での開催
堀田座長、大久保委員、木田委員、小﨑委員、佐藤委員、讃井委員、高橋委員、戸ヶ崎委員、中川委員、春山委員、平田委員
望月総合教育政策局長、淵上大臣官房審議官、八木社会教育振興総括官、寺島学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、藤原教育DX推進室長、白井教育DX推進室室長補佐、稲葉教育DX推進室室長補佐
デジタル庁、総務省、経済産業省、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)、一般社団法人ICT CONNECT 21、一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)
※資料1-1「委員からの主な意見(第21回分)」、資料1-2「本会議の今後の進め方イメージ」について事務局より説明を行った。
※資料2-1「地方自治体における教育データの利活用の状況」、資料2-2「教育データ利活用ケース例(たたき台)」について事務局より説明を行い、委員から意見、質問が出された。
(意見)
【委員】 大変詳細な資料をありがとうございました。一つ、少し勉強不足で分からなかったので、教えてください。資料2-1の「④の教育データ利活用に期待すること」について、自治体が教育データ利活用の貢献を期待しているもので4つほど挙がっておりす。1番が児童生徒への学習指導の参考、2番が教員の校務負担の軽減等ございますが、そのことでよろしいでしょうか。例えば資料2-1の「④教育データ利活用に期待すること」の1番の学習指導の参考で、さらにこの下の項目というのもございますか。例えば授業そのものだとか、評価とか、採点とか、そのようなことで効果が期待できる等。
【事務局】 今回の調査につきましては、これをさらにブレークダウンしたようなお聞きの仕方はしておりませんので、一般的に学習指導に使っていきたいというところまでのデータになっております。これ以上先のところにつきましては、いろいろな自治体からの例を伺う等、そのようなところで補足できるものを御紹介していけるように、情報収集に努めていきたいと思います。
【委員】 最後に、その下の校務負担の軽減。私は教育データの利活用と校務負担の軽減は、非常に重要な関連があると思うのですが、実際に教員は、校務負担で何が一番負担に思っているのか。その一番に思っているものを軽減するためにはどういった利活用が必要かというのがこれから必要になってくるかなと思いますので、質問させていただきました。
【座長】 全くおっしゃるとおりで、期待はこの辺に多くあるということを、これから皆さんと議論してまいりたいと思いますし、そのために、まずはユースケースを7つ整理してみたという話になります。
※資料3-1「木田委員提出資料(教育データの利活用に関する鹿児島市の取組)」について木田委員、資料3-2「高橋委員提出資料(個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた授業づくりと教育データの利活用)」について高橋委員よりそれぞれ説明を行い、委員から意見、質問が出された。
(意見)
【座長】 資料3-1の6ページの保護者の画面を見ていらっしゃる保護者は、大体どのくらいなのでしょうか。まずは認知していただくために、見ていただくことが必要であるようにも思います、一度見たら、あとは時々見ればいいのかなとも思いますし、人によっては、毎日見る人がいるのか、あるいは無関心な方がもしかしたらいらっしゃるのか等、この辺りを体感で結構ですので、いかがでしょうか。
【委員】 正確な数字というのは実は、この保護者が自分のお子さんの学習eポータルをどのくらい見たかというのを把握することは、現状ではできない状況です。ただ、保護者が見られるログのページは、保護者の欠席連絡や、学校から来る学級通信の連絡等と同じメニューの中に入っております。常に目につくところ、使用するところに、ここの閲覧画面があります。ある学校の例を言いますと、保護者が学級通信等を見る割合が8割、9割になっております。それ全部とは言いませんが、ある一定割合の保護者が、自分のお子さんのeポータル画面を見ることができているのではないかと考えております。
【委員】 1点お伺いしたいのは、資料3-1の10ページにありましたが、「③いじめ・不登校等の課題に対する早期対処の実現」というページに関連してのところです。学習系のデータに関しては、子供たちも先生も結構見られているのかなと思ったのですが、いわゆる生活であるとか、心理的な面についてのデータというのは、子供たちも見て振り返りをしたりするケースがあるか、学級の先生だけ見られているかというと、このようなデータはどなたが見られるようにされているのでしょうか。
【委員】 少なくとも学校では見られるようになっております。学級担任や、学校の管理者関係のような職員も見られることになっております。子供たちは自分が入力した部分については見ることができておりますので、そこは把握できていると思いますけれども、現状のところ、そのくらいの閲覧者、閲覧できる権限があるというところです。
【委員】 保護者は、今は見られないですか。
【委員】 保護者画面は、最近追加されましたので、確認できておりませんので、後で確認をしておきたいと思います。
【委員】 スタディログに注目した先進的な取組だと思って拝見しておりました。
お伺いしたいのは、今は学習eポータルを活用されているということなのですが、コンテンツも限定的であったり、取得できるデータも、利用時間や、立ち上げた回数等、ある種限定的に思えるのですが、それも活用しながら、児童生徒との面談にうまく使われていると思うのですが、ほかに、学習eポータルという前提条件を少し外していただいて、どのようなデータがあったら、さらによいスタディログや、学習者のリフレクションや指導に使えると思いますか。
【委員】 先ほど申し上げたように、学習eポータルに接続できるアプリ、サービスしか今は見られないというところがあります。こちらが求めるものが全て連携できるようになるというのが、学校や自治体としては一番ありがたいなと思っておりますし、それでこそ意味があると思っております。
例えば、先ほどありましたように、学習のツールごとにいろいろなサービスがあります。例えばデジタルドリルで申し上げますと、その問題を何回かかって回答できたのか、あるいは、それをその子は家に持ち帰ってから、大体何時くらいにそれをやっているのかどうかというところ。そこについては保護者も、割と家の中にいながら、確認できないところがあるという話を聞きます。保護者が、例えば、うちの子供はこの時間にすごくこれを頑張ったなということを把握することによって、家庭内で子供たちとの不要なトラブルというのも多分少なくなって、もっと親子間の理解が進んだりするという部分もあるかと思います。
もちろん、それを担任が把握することによって、この子は割と深夜に学習に取り組んでいるとか、あるいは、それにどのくらい時間をかけているかということを把握することによって、個別の指導・支援や、その子の特性ということに生かしていけると思います。これは既にデジタルドリルで、一つのサービスの中では見られるのですが、これを複数、例えばかけ合わせて見られることによって、もう少し総合的な理解ができるのではないかなと思っております。
【委員】 資料3-1の4ページと5ページの子供が見るデータと、それから教師が見るデータ、委員からの御説明で、まだまだこれからだというところがありました。これが実際、現場の教員にどれぐらい見られているのかなというところが興味があるところと、そこが見られて、実際にこれにあるように指導がなされているということだとすると、そこから何かよい知見が出てきていたりして、共有いただけるかなというのが一つ。
それと、資料3-1の11ページのアラートは、なるほどなと思って聞いていました。現場の忙しい教員が、データをゆっくり眺める時間というのもなかなかないかなと思うと、アラートでどんどん知らせてくれるというのが、リアリティーがあるのかなと思って聞いていました。このアラートなのか、ダッシュボードとしてまとめて見せるのか、両方必要なのか、どちらか、アラートのほうが有効なのではないかなと聞きながら思っていたのですが、委員の御知見を教えていただけますか。
【委員】 アラートのお話からさせていただきますと、アラートをもう一歩踏み込んで、プッシュ通知まであればいいかなと思っております。つまり、ダッシュボードを見ればアラートが上がっていても、なかなかそこのダッシュボードまで見に行く余裕がないというのも、現実的にはあるかと思います。プッシュ通知で、アラートが上がっているというのがデスクトップ等に表示されることになれば、もっと気づきやすくなるかと思います。
結果、アラートが空振りであったとしても、それを機に、子供たちと何かしら会話する機会が生まれれば、それはそれで意味があります。アラートを上げることにあまり慎重にならずに、ある程度システムとして上げてくれるということのほうが、あまりにも頻度が大き過ぎると信用性に欠ける部分が出てくるかもしれませんが、アラート通知あるいはプッシュ通知というのは非常に必要かなと思っております。
あと、学習データです。教師がどのくらい見ているかということだと思います。実は、学校の先生あるいは学校によって濃淡があるのは、正直なところございます。ただ、一回使ってみると、例えば先ほどのScTNという、個別最適な学びですとか、主体的・対話的で深い学びの実現状況を見ることによって、先生方は今行っている授業の評価というのを、非常にメタ認知的に見ることができると思っております。こういったところの有効性がもう少し理解が進んでいくと、もっと活用が進んでいくのではないかなと思っております。
【委員】 民間が学習事実を取得し、提示しているのは事実です。実はアルゴリズムとしては、理解度も、独自の理解、いわゆる評価基準、例えば高橋委員のおっしゃるBの領域、答えが一つのものであれば、独自の評価基準を持ち、ここまでできたら次のステップに進ませようとか、何を間違えたらどこに戻ろうというアルゴリズムを持っており、独自の評価基準があります。
評価の部分について、学習事実を基に、先生が独自に評価をしながら指導に当たっていると理解しています。この部分をある種、Bの領域であれば、一つ定量化し、評価基準のようなものを、例えばオープンデータのような形で出していただく、これは答えが一つなので、そんなに難しいわけではないかなと思っているんですが、出せれば、さらにBの領域が効率化し、そしてCにたくさんの時間を使える。そのような教育が実現できるのではないかなと思います。Bの領域の評価をいわゆる定量化する、可視化するということは難しいものなのでしょうか。
【委員】 私は企業の秘密だと思うので、出していただけるのであれば出していただいたらいいと思います。私自身もこのようなアプリで毎日勉強していますが、裏で評価、評定されていることは、すごく感じます。僕の理解度が落ちていれば、そういう易しい問題に変化するということは実感として分かっていますので、裏で必ずそのようなテストのようなことが、毎回問題を解くたびに行われているということが分かっていますけれども、結構、欧米系のソフトは出さないんです。つまり、意欲とか継続みたいな態度形成との関係で、僕は出していないんだと思います。どんなに一生懸命やっても、できなかったらやめてしまうので、頑張っているということを称賛していくという戦略なのだと思っています。
結果的に、こういうことでできるようになっているということが確認できれば、僕は定期テストみたいなものは少なくなるか、なくなっていくと思います。実際に学校で、このようなアプリを使って習得状況も確認できれば、もうテストを半分にしているという学校は実際にあります。この辺は、意欲みたいな面と、最後の総括的な評価をどのように考えていくのか、そういうことの複合的なところで、データをいただきたいとか、いただきたくないという話が決まってくるかなと私は思っています。
【委員】 評価を学習者に対してフィードバックするかどうかという話ではなく、いわゆる定量的な評価をデータとして保持できるかどうかの部分で、例えば指導において評価を伝えるとか伝えないとかというのは、指導の部分として自由にできますが、評価自体を、例えば学習指導要領という国の学ぶべきマップがありますので、道筋があるので、それに合わせて、このBの領域に関しては、ある種の評価基準があれば、全国民がというとおこがましいですが、民間・学校ともに、ある種の評価基準を基にデータを活用していく、指導、伝えるかどうかは別の問題ですが、そういったデータ流通の仕組みがつくれるのではないかなと思って質問させていただきました。
【委員】 データ流通に関しては、いろいろ利害関係もあると思うので、僕はそこについては特に思いません。とにかくこういうもので、自分のペースで習得が確認できるような時代にあって、どこまで到達度というものを、今までみたいなテストで、緊張感を持って測定する必要があるのかというのは、非常に思います。
つまり、いろいろな資料にテストと出ます。僕は、テストというのは、テストのために、テストのときにしかやらないことを勉強し、テストされるのだと思います。スピーキングとかリスニングのテストとかであれば、そういうのは実際の場面でもスピーキングやリスニングをするわけですし、プレゼンテーションなども、そういうものは実際の場面でやるわけですので、今回のこういうもので指導していくというのが、単なるテスト対策みたいにならなければいいなというのは、根本的には思うところです。
【委員】 重要なことなので、1点だけ。テスト、アセスメントというのは、日々、定点観測のように緊張を持ってテストをするというわけではなく、最近のアプリやデジタルツールですと、いわゆる常時観測的にテスト、アセスメントしていますので、テストのためにとか、そういうことではなく、日々の行動が全てアセスメントにつながっているということです。
【座長】 今のは意見交換ですけれども、意見が対立しているわけではないように私は感じました。Bのようなことが、これから端末を持って、あと、デジタル教材等が発達していけば、私たちは、人間がBを一生懸命今までやっていたわけですけれども、ある程度それをツール等に委ねられるわけで、ならば、学校こそやるべきことは、むしろCのほうに向かうべきではないかというお話の中での話かなと思います。
私たちは今までCになかなか至らず、多様性が高まって、Bに躍起にならざるを得ない現実があったので、Bを一生懸命考えてしまうわけですけれども、この辺りがもう少し突き抜けると変わっていくかもしれないという議論かなと思いました。
【委員】 主体的・対話的で深い学びというときに、主体的というところで、自由進度学習を考えると、事前にテーマは決まっているかもしれないけれども、例えば1人で端末でとか、友達と一緒にとか、先生に教えてもらうとか、子供がいろいろな学び方を選んで、しかもペースを自由にということであるかと思います。さらに進んだ形が、高橋委員が細かくされている、テーマ自体も自由にという、探究がいつも行われているようなものなのかなと理解をいたしました。
そのときに、子供自身が今までの学びの中で、どんなことを学んできて、こういう学び方をすると、自分はちょっと楽しいんだとか、あるいはこういうところが多かったんだとか、もちろん発達段階によると思いますが、自分の様子を把握しながら次の学びを選んでいくということが必要になって、そのときに、教育データというのは非常に大事であると私は認識しています。
質問というよりは意見になるかもしれないですが、例えば資料2-1の11ページのデータの利活用に期待することという教育委員会への質問を見ると、児童生徒自身が自分の履歴を見るということについては、入っていないように思いました。
今、世の中はものすごく動いていて、例えば自由進度学習ということを取っても、群馬県でもやっているところがあり、鹿児島市でもやっていると理解したのですが、学びの形が一斉の授業では、子供たちに寄り添った学びというのがもうできなくなっている時代にあるのではないかと思います。
ということは、例えば教育データを教師が丁寧に見るということが、ケース1以外は特に記載がなかったので、もしかしたら陰でやっているのかもしれないのですが、子供自体が自分の学びの状態を見るということも必要になってくるのではないかと思います。例えばデジタル庁が、文科省等とともにつくっている現行の教育データ利活用のロードマップを見ると、第2段階に制度設計があって、第3段階に来て、個別最適な学び、子供が自分で使うということになっていました。
ですが、今の状態で、もう学校自体もさらに進んでいるのではないか。もちろん問題もありますが、子供が自分のデータを確認しながら自分で選んでいくという時代が、既に来ているとまでは言えないかもしれないが、私が想像していたよりは、世の中はそのように動いているように思えたところです。そのため、子供が自分のデータを参照していく、自分の教育データの利活用を、子供自体が発達段階に応じてやっていくということも必要なのではないかと思った次第です。
高橋委員の御発表では、子供が見るというところは、自分のデータを見るというところが聴き取れなかったのですが、例えばこの事例でも、そのようなことは行われているのでしょうか。
【委員】 スプレッドシートの画像をお見せしたと思いますけれども、あれは先生も子供同士もずっと見られて、子供同士、学び方や学ぶ内容の両方の情報を得ています。
このスプレッドシートが多くの子供、いろいろなタイプの子供にとっての非常に大きな足場になっていて、今回の1人1台コンピュータの端末活用は、先生よりというのもあります。誰がどういうコメントをつけられたかというのもお互い見えるようになっていたりして、これが非常に大きな足場になって、探究的な活動が自分のペースでできるようになっているなと思います。これがないと、これまでどおりできなかったと本当に思います。
【事務局】 資料2-1に関するところの御指摘をいただきましたので、1点補足させていただきます。
先生からの御指摘は、資料2-1の11番目にありましたデータの利活用に関する期待のところに、児童生徒が自分の学びの形を見られるという選択肢がなかったのではないかという御指摘だったかと思います。
おっしゃるとおりで、この質問をつくりました際には、問いが学校や教育委員会が抱えるどういう課題に対しての期待ですかということでしたので、今のような選択肢はございませんでしたが、別の趣旨で聞いた問いではございますが、資料2-1の8ページ目、ダッシュボード機能をどういう目的で使っていますかというところに対しては、3番目に、児童生徒が自身の学びや成長の記録を振り返るということが選ばれております。これを見ますと、先生がおっしゃるとおり、現場においては、児童生徒が自分たちの学びを把握するということに対するニーズも高いんだなということを、これを通じて改めて確認したところでございました。
【委員】 現場の腹落ちということや、学校がどんどん変わっているところを考えると、子供が自分のデータをどうやって見るかという視点も大切なのではないかと思った次第でした。
【座長】 委員が出されたスプレッドシートのようなものをクラウドで比較的簡単に実現するわけですが、そういうものを使って授業をしたことがある人には、結構腹落ちするのですが、したことがない人には、何回説明してもなかなか伝わらないものです。今までは教師が各子供たちの様子を把握して、それをほかの子供に伝えるという間接的なことをやってきました。現在はダイレクトに子供同士がやり取りできますので、かなり学習はすごいスピードで進んでいきます。このようなことを子供が自覚的に確認できるようにすることの重要性を、今、委員が御指摘されているのかなと思いました。
【委員】 質問したいこととしては、深い学びを見るデータというのは今あるのか、そのデータをデジタルに分析している事例はあるのかという質問です。
富山県の小学校での事例とかが、私はまさにそうかなと思っているのですが、ここにある、特に振り返りの文章とかというのは、子供たちがビフォー・アフターの比較で深い理解に到達したということを判断するような、非常に大事な材料になっているのかなと思います。一般的な学習データの利活用においては、デジタルに学習頻度とか進捗とか点数みたいなものは見えていても、深い学びを判断するデータにそれがなり得るのかというのは、少し難しいところもあるなと思っています。アカデミック・研究の分野で、深い学びをデータとしてどう見るかというところについてのお考えがあればお聞きしたいです。
【委員】 これも様々な意見がございますが、具体例としてお話ししますと、基本的に、深い学びというものを絶対値で評価・評定するというよりは、本人の過去と比較して、より一層深く学べたということを見ていくようにしています。
そうしないと、子供がやる気をなくしてしまいますので、だから、よくスポーツ選手がベストを出したいとか、最大のパフォーマンスを出したいというような、最大のパフォーマンスを出し続けている間に、だんだん深まってくるだろうということで励ましています。そういう意味で、毎日の振り返りのデータの蓄積から、子供がだんだん深まっている様子というのを先生が確認して、先生と子供で話し合いながら、もっといい深まりについて考えていこうというような、向上目標とか方向目標的に、到達目標としてはあまり考えていないというところが、もちろん到達目標として何か考えている方がいて、研究していらっしゃることは十分知っていますが、授業での運営上は、そういうことのほうが非常にうまく回っているという実感がございます。
【座長】 ありがとうございました。
ここまでにしたいと思います。大変有効な、有用な議論が質疑応答の範囲で随分出て、深まった部分もあるかなと思います。私が当初、御説明したとおり、この後、総合討論的にしたいわけですけれども、残り時間が25分、20分ちょっとになってございますので、それぞれの方、まだ発言していない方も含めて、お話をいただければと思うところです。
確認なんですが、事務局は資料1-2の2ページ目で、検討事項として5つ挙げてくれています。これは前回の、第3期の1回目のところで挙げてくれているわけですが、この①から⑤のうち、今日は特に①や②をお願いしたいというのが事務局の意向でございます。すなわち、①というのは、利用実態あるいはニーズのようなことについて、整理したいのだということ。②のところは、教員あるいは教育委員会が、この意義とか効果とか必要性みたいなことを理解しやすくしたいのだということです。ほかの③、④、⑤もいいんですが、こういう①や②の観点を中心に議論できればと思うところです。
【委員】 観点が若干異なってしまうかなと思いますが、私は資料2-2を中心にして、意見を申し上げます。
これは事例を掘り下げて、全国展開のモデル事例とするためであるという前提で、お話させていただきますが、この議論が何のためのものなのかが整理されていると、ビジョンがもっと共有化できると思いました。大枠でのロードマップはデジタル庁にて作成したものがあって、その中で現状がどうなっていて、文科省としてはいつまでにどのような状態を目指し、そして具体的にどのような手順で進めていくかを整理できると、よりいいのかなと感じました。
また、これまで複数の省庁や担当課で様々な実証事業が行われてきているわけですので、目指すべきところに対して何が明らかになっていて、何が不足なのかということなどの整理も必要だと感じました。
総論的な感想になってしまいますが、まずは教育データの利活用という手段が目的化してしまうのは、よくないことだろうと思います。あくまでもインフォームド、参照することが大切であって、データの海に溺れてしまうと、ちょうど先月の13日の審議のまとめではないですが、教師の働き方改革に逆行する可能性もあります。私は教育データの利活用とは、あくまでも、これまでの教育の様々な課題等を補完して充実させていくための手段であるという認識なのですが、ここも何かもっと大きなものをするのであれば、国としての、そういったスタンスがいま一つ見えない感じがしました。
ただ、文科省はこれまで教育データ利活用の推進に向けて、MEXCBTとか、EduSurveyとか、学習eポータルの実装、また活用事例、さらには、データの標準化のトライアルだとかということを実現し、現在これらを活用して全国で教育データの利活用をどんどん進めている、実装されているのですから、それらのデータを分析・統合して、文科省が主体となる「利活用ケース」として、教育政策の立案に生かす方向性も、ぜひ今後は示していただくといいのかなと思いました。
先ほどの資料2-2の最初のページの部分について、先ほど出た子供の利用、さらには保護者の利用という話は、非常に重要なことですが、一方で私は慎重になるべきだと思っています。
理由としては、こういったデータをうまく使える子供はまだまだ一部ですし、そうでない子をどうやってサポートするか、また、そもそも使い方をどのように指導していくのかとか、さらには、どのように子供を教師が見取っていくのかといったことを考えていくと、教師の側に新たな負担が生まれることを危惧しているところです。
また、保護者へのデータ提供というのはもっと危険をはらんでいて、「個人情報の利用目的の特定」といった観点や「こどもまんなか」という考え方のほうで、追加の配慮をしっかりやっていかないといけないと思います。今後は、何のためにどのデータ項目を提供するのかということも、よく検討していく必要があると思いました。
次に、細かなことですが、「学級運営」という言葉がありますが、現場ではあまり聞き慣れない言葉なので、これは多分、「学級経営」なのだろうなと思います。もっと大切なこととしては、学年や学校という視点がなくてはいけないと思います。特に、データを学校経営に生かす視点は極めて重要だろうなと思います。
私から前回意見を提出させていただきましたが、残念ながら前回の会議でも、今回の資料1-1にも入っていないのですが、教師のIDについて早急に検討していく必要があると思っています。本市においても、教育総合データベースの構築に加えて、学習系と校務系をネットワークで完全一元化したことで、どうしても教員のIDの研究というのが必須になってきています。どの教師が、どの子供に、何の教科等を、いつ、何年の頃に指導したのかという情報を蓄積・分析することで、教師の効果的な指導法や研修の在り方の研究の役に立つものと考えているところです。
現状の利活用というのは、子供のアウトカムの指標ばかりの利用がメインになって、どのような指導をしたのかという、いわゆるインターベンションのデータはあまり取得・活用されておりません。このことは、先ほどからお話に出ている学習評価の在り方にも大いに関係していきます。資料の中の教職員の視点に、ここは「評価」という視点もなくてはならないと思っています。
ダッシュボード化に期待するというのは、委員からもありましたが、当然、総括的な評価だけではなく形成的な評価も大事であり、資料によく登場しているリアルタイムという言葉は、多分その意味なのだろうなと私は受け止めています。ダッシュボードという言葉の捉え方自体が、自治体ごとに多分まだまだ大きな差があるのだろうなと思います。現実は単にデータを集めているだけの場合も多いのだろうなと思います。そうした実態ですとか、今後のダッシュボードのニーズを設計に生かしていくためにぜひ次回以降はダッシュボードの構築について、技術的・具体的な課題についても議論をされるといいのかなと思いました。
最後ですが、教育委員会の⑥と⑦において、「児童生徒への個別支援」という言葉がありますが、教育委員会の領分としてそれを記載するのはいかがなものかなと思っています。学校への支援なら分かりますが、児童生徒の個別の支援まで教育委員会が行うものと誤解される可能性があると感じました。
【委員】 冒頭、事務局から今後の進め方の御説明がありましたが、この部分も含めて、ユースケースについてちょっと意見させていただきたいなと思います。
まず、調査に出てきた各自治体の取組や、現状の状況の中でできることを創意工夫していただいて取り組んだ点については、本当に敬意を払いたいと思います。その上で、今期、ユースケースを出していく目的が、学校現場を含めた社会に必要性の理解を得ようとすることを目的とするということならば、必要なステップがあるのかなと思っています。
まず、理解を得るために、私は最も重要なケースは、児童生徒の変容ではないかなと思っています。先ほど委員から注意をするようにという御指摘をいただきましたが、児童生徒の変容、スタディログを扱っている木田委員の御発表や、高橋委員からの御指摘もあるように、そこかなと思っています。発達段階など、おっしゃるとおり、注意すべき条件づけをする必要があると思いますが、児童生徒の大きな行動変容につながったというユースケースが、教育データ利活用にとって一番必要になってくるのかなと思っています。
つまり、自分自身の状況に気づき、リフレクションすることによって、学習習慣や理解度、興味関心、主体性などの行動変容につながったというユースケースを出すべきなのではないかなと。もちろん、全員一遍に出るものではございません。ごく限られた少数かもしれませんが、こういった学習者の変容、データを使った、こういったものを目指すべきではないかなと思っています。
そういった観点から、今、児童生徒の視点、ユースケースが少ないように感じています。ただ、現状でこれを出していくというのは非常に難しいと考えていて、リフレクションするためのデータが、先ほども御質問の中にも出していましたが、非常に限定的であるということです。教材も限定的ですし、各教材のアンケートに出てきましたが、各教材の表示機能を用いているというところからのリフレクションや指導に充てているということ、つまり、限定的なデータしか扱えていないというところです。
データ利活用のメリットはたくさんありますが、いずれも多様で大量なデータが必要になってきます。例えば、学校内外の環境をシームレスにつないで、自身の状況を統合的に正しく分析、レコメンドできるようなデータがないと、いけません。
非常に先の話に聞こえるかもしれませんが、そこに行くためにやるべきことは3つくらいあると思っています。1つは安心・安全・快適につながる技術や、法的なものも含めたデータ流通の仕組み化、標準化です。これは非常に難しいことを言っているように思いますが、今、着手はしておりますので、ここをしっかりやり切ることが重要かなと。2つ目が、学習者が目指すべきゴール。例えば、先ほども少しお話ししましたが、学習指導要領のようなものの、民間も含めた学内外のコンテンツ側、また評価の整備、標準化というところも必要になってくるかなと。3つ目なのですが、それらを正しく扱う個人のリテラシーと、デジタルケーパビリティーと言われている組織の持つべき力の育成。これらがそろって初めて、目指すべきユースケースになるのかなと思っています。
ただ、聞いていて思われると思うのですが、これには非常に時間がかかると思います。早く理解を得たいという気持ちは私も一緒なのですが、今できることとして、今回の学校、自治体の校務、働き方改革もありますので、校務を中心としたユースケースを出すということ自体はノーではないんですが、今後、民間の知恵を活用したり、連携するシーンというのもあると思います。
なので、今は、先ほど申し上げた3つをしっかりできているのか、中途半端ではないかや、再度本質を見直し、中長期的な視点で、焦らずに、地道にやり切ることが必要なのかなと思います。短期的な視点と中長期的な視点でユースケース、本当にキラーユースケースになり得るようなことを出していかなければいけないのかなと思います。
【委員】 資料2-2、教育データ利活用のケース例の資料のことについて、まずお話ができたらと思います。
先の委員の発言とかなり重なるところがある考えではありますが、目的をすごく大事にしてほしいなということを感じています。今日の委員の発表資料がまさにそうなっていたなと思いますが、利活用事例を出すにしても、目的をまず最初に明記する必要があるのではないかと思いました。今、目的に関連するような内容が、期待される効果というところにありますが、データ利活用してみたらこういう効果が出ましたみたいな話ではなく、意図を持って、目的を持って、必要なデータを結びつけていくということが大事だと思います。目的の明示をぜひこのケース例の資料では最初にやっていただきたいと思っています。
若干俯瞰した視点で言うと、教育データの利活用に関する議論全体が、本来手段であるはずのデータ利活用の推進が前提となっていて、それを何のためにやるかという目的が常に議論から外れてしまっている。だからこそ、そこに関わっていく関係者、特に学校の関係者、自治体の関係者から出される、なぜこれをやらなければいけないのか、大変になるだけではないかという、疑問に答えられないという構造にぶち当たってしまっているのだと思っています。とにかく目的を大事にしてほしいというところが1点目です。
そこに少し関わる形で、目的が明確になったケースにおいては、今、資料2-2の事例集の中で「考えられるデータ」と書かれて、データの種類を羅列いただいているところがあると思いますが、そこが目的変数と説明変数で分かれるケースが今後出てくるのではないかと思っています。これはデータを掛け合わせて見ていくという事例にもなっていくと思います。その場合は、例えば不登校の傾向がある子たちの状況というところを見るために、複数の説明変数を使いながら分析をしていくということになると思いますので、利活用するデータの中でも違いが出てくるのではないかというところが2点目です。
次に、今回、利活用ケースを全体的に俯瞰して分類いただいていると思いますが、もしこれを、より構造的に整理するとすればというところでの御提案です。大きくは、今、資料2-2のP.1で赤字・太字で書いていただいている「視点軸」と、あとは、どういうデータを使っているかという「利用するデータ軸」の2軸で、漏れなく整理ができるのではないかと感じています。
まず視点軸に関連してですが、今ここにある観点以外のところで言うと、一つは、他の委員の方からこちらも御指摘あったかと思いますが、学校管理職視点というものが追加であるのかなと思っています。一般の学級で子供たちを教えている職員ではなくて、複数の学級とか学年とか学校全体を見るような管理職視点が、恐らく入ってくるだろうというところと、もう一つ保護者視点もあるのかなと思いました。
また、利用するデータ軸というのは何かといったときには、学習系のデータと生活系のデータと、その2つを掛け合わせているケースがあるのかなと。今この資料でも、まさに生活指導・学習指導とに分かれていて、さらにその掛け合わせが発生するところだと思います。視点軸と利用するデータ軸の2軸で利活用ケースを整理していただけると、MECEに漏れなく構造的に整理できるのではないかなと思ったところです。
さらに、今の2軸で整理した場合に、抜け落ちている観点というのはどこなのかというところが大きく3つあります。
一つが、生活系のデータ×(かける)児童生徒視点というところは、事例がまだ出ていないと思いました。そもそもこのようなものがあるのかなという議論もあるでしょうが、これは特にtoC、いわゆる個人利用の観点で言うと、今、若い世代で流行っていますが、自己分析データを自分で見るみたいなものというのは、まさにそういったところに当てはまると思いました。そこが1点目です。
2つ目が、生活系データと学習系データの掛け合わせをする事例がまだ少ないという点です。利用ケースの6の松阪市さんの教育委員会視点での事例で一部出ているかなと思いますが、ほかの視点においてもそういった事例が今後出てくる、あるいは、そういった事例をつくっていくための実証事業を設けていくことが大事かなと思います。
最後は、利用について、私は少し慎重さを求めたほうがいいのではないかと思っていますが、保護者視点での利用という1点もあるかなと思います。保護者利用については、子供たちのいろいろなデータが保護者に筒抜けになるということが、子供たちからすると、すごく生きづらさや学びづらさになるケースもあると思いますので、特に慎重な議論が必要な部分ではないかなと思いました。
次に、少し細かいところなのですが、利活用ケースの5についての情報提供です。自治体・教育委員会が学校の状況を見られるケースの中で、活用ログの部分は利用回数とか利用頻度のデータが出されていると思いますが、我々ライフイズテックでは実際こういったツールを使っていただく上では、どちらかというと、利用の前の段階、つまり、事前準備や、オンボーディングにおける状態を把握するということがとても大事だと考えています。具体的には、そもそも先生が自身の教師用アカウントを発行したかとか、生徒のアカウントを全員分発行できているか、あとは授業のどこで使うかというところの授業準備ができているか、最後に授業開始ができているかといった授業準備段階におけるログデータのようなところが、教育委員会の視点としては、ICTの活用率を高めていく上で非常に重要な点ではないかなということでプラスの情報提供でした。
最後になりますが、全体に関わるところで、特に高橋委員のお話を聞いて思いましたが、データを見る目と学びを見る目の両立ということが非常に重要になると思いました。例えば、進捗が悪くても一つの問題をじっくり理解するために考えている子もいたり、進捗がよくても作業みたいにやっていて、実は考えていないというような子もいたりするということを我々も見てきました。データ利活用を進めていく上で、そういった一人一人の学びを見る目と同時に、データを見る目をかけあわせていくことが大事です。そのためのガイドラインを示すことや、教員研修を促進していくことも大事にしていただけたらと思いました。
【委員】 ニーズと意義と、今回は短期的と中期的に論点をということを最初にいただいていますので、全体を見たときに、ケース1から7を挙げていただいたものやダッシュボードの議論というのが、先進地域においては割と実行されているところかなと思います。多くの地域においては、かなり中長期なイメージがあるのではないかなと思っております。
私は、短期的な、もう少し取り組みやすいデータの利活用のケースというのも入れるべきかなと思っております。具体的に申し上げますと、端末の利活用、学校内と学校外でどのように利用されているのかということを教師に示すだけでも、非常に有効なデータになるかなと思っております。
あと、委員のスプレッドシートのケースを見ておりますと、学習者にキーボード入力能力というのが非常に高く求められているかなと思います。実際の学校現場でどれくらいこの力が養われているんだろうかと考えると、例えば、今、うちの学校の子供たちは1分間に何文字くらい打てるのだろうということがダッシュボードに表示されるというだけでも、教師は、もう少し頑張ってキーボード練習しようかとかいうところにつながり、そういった身近なケースがデータの利活用として取り扱いやすいのではないかなと思っております。
【デジタル庁】 本日、当庁統括官が急な用務で欠席となり、代理で恐縮ですが、コメントを預かりましたので、少しお時間をいただきます。預かった内容には、どのような学びをデジタルの力で実現していくのか先生方にお聞きしたいとか、既に出ているものもございますので、2点のみに絞らせていただきます。
1点目が、利活用ケース例の中で、児童生徒・保護者が自らのデータで振り返り、次の学びにつなげるという点についてです。この点は、学校運営協議会に関わっている立場として、まさにそのとおりだと感じております。その上で、データ利活用を進めていく際、児童生徒・保護者の視点からは、自らのデータがどのように用いられているのか、具体的には誰が何のデータをどのように閲覧できるのかといったところを、必要に応じて把握できるようにしておくことも同時に大切です。文部科学省でも、教育データの利活用に関わる留意事項等が整備されて、各自治体に対して周知されておりますが、デジタル庁が担当している、行政手続を簡便に行えるプラットフォームであるマイナポータル、これは行政手続に関するシステムでございますので、あくまで一例でございますが、このシステムは行政機関が保有する情報をユーザー本人が確認できることが、整備における大きな思想の一つとなっております。そのような思想を、教育DXにおいても大切にしておくことが必要ではないかと考えます。
もう1点が、今年度初めに年次更新作業の中で、負担が大きかったということが一部SNSで出されておりました。先を見据えつつ議論していくに当たって、会議の場に限らず、委員の皆様方が把握されているID管理、アカウント管理についてのお困り事やお考えを伺い、課題を把握しておくことが重要ではないかと考えます。
この2点を預かりましたので、最後、お時間いただきました。
【座長】 ありがとうございました。時間になっておりますので、ここまでとしたいと思います。
最後にデジタル庁や、委員から発言があったように、どれぐらいのことを中長期と呼ぶかというのは見ている人によって違うように思うという状況で、ユースケースを私たちは具体的に出そうとしていますが、ユースケースが具体的に見える、これでなるほどと思う人はどういう人であり、こういうのはとっくに通り過ぎている人に次に何を見せればいいのかということがあり、必ずしも一気に全体が進むわけではないということです。それが非常に難しいなと思います。
先ほどの目的論の話でもそうですが、これはICT活用も全部そうですが、使ってみたこともない人に目的を上げることができないので、まずは目的を明示するところは当たり前のことですが、まずはやってみる、いざなうところに、まずやっていただくということもまた重要であり、一方で、これは個人情報等の観点で、そのように何でも好きにやっていいわけでもない。この辺りの難しさが、教育データの利活用のところにはあるなと思っております。
ここまでといたします。どうもありがとうございました。
(以上)
総合教育政策局教育DX推進室