教育データの利活用に関する有識者会議(第20回)議事要旨

1.日時

令和6年3月13日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データの利活用に係る留意事項について
  2. 「教育データ利活用の実現に向けた実効的な方策について(議論のまとめ)(案)」について

4.出席者

委員

堀田座長、藤村座長代理、石井委員、梅屋委員、緒方委員、小﨑委員、佐藤委員、白水委員、神内委員、高橋委員、田村委員、戸ヶ﨑委員、中村委員、橋田委員、渡邉委員

文部科学省

淵上官房審議官、八木社会教育振興総括官、伊藤教育改革調整官、武藤学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、藤原教育DX推進室長、野口教育DX推進室室長補佐、稲葉教育DX推進室室長補佐

オブザーバー

デジタル庁 、総務省、経済産業省、個人情報保護委員会、一般社団法人ICT CONNECT 21、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)、一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの利活用に係る留意事項について

※資料1「教育データの利活用に係る留意事項について」について事務局より説明を行った。
 

議事2.「教育データ利活用の実現に向けた実効的な方策について(議論のまとめ)(案)」について

※資料2-2「教育データ利活用の実現に向けた実効的な方策について(議論のまとめ)(案)【本文】」について事務局より説明を行い、委員から意見、質問が出された。

 (意見)
 
【座長】  この分野、特にGIGAスクール構想の一人一台端末が入りまして約3年、コロナ禍が明ける頃から利活用は一層進んできていまして、地域による差は確かにありますが、多くの地域で実践化が進んでいます。次はどのような学習状況なのかということを子供自身が振り返ったり、教師がそれを把握したり、あるいは教育委員会が、不適切な利活用がないいかどうかも含めて、端末利活用の状況をきちんと把握するといった様々な形で、この教育データを指導に使うということが現実化してきたタイミングかと思います。
 この間に、先ほど事務局の説明にもありましたように、国の動きも、自治体の動きも様々な形でございますので、それらを踏まえて、本会議の一段落のまとめとして、今後一、二年で必要な方策やさらに検討が必要な事項についてという観点で整理してございます。事務局案では3つに分けて整理をいただいており、それに合わせて、章構成も「はじめに」から1、2、3、4という形になっております。この後、全ての時間をこの議論に振り向けたいですが、大部になりますので、まず3つに分けて議論したいと思います。
 最初に、「はじめに」と「1. 教育データ利活用によって目指す姿」、「2. これまでの成果」について議論をしたいと思います。その次に、「3. 今後に向けた課題」について意見交換をし、最後に「4. まとめ」について議論するという形で、3段階で議論していきたいと思います。ですので、まずは「はじめに」と1番と2番、現状把握のところについて御意見をいただきたいと思います。
 
【委員】  具体的にどれという項目ではなく、現状の認識としてここにない観点ということで、一般的な問題ですが、デジタル・ディバイドがかなり大きいのではないかと思っています。私も首都圏の2つの高校で実証実験をしていて、協力してくださる先生方は比較的若い方々で、特に支障もなくアプリを使いこなされて、生徒たちにも教えているということなんですが、やはり一般には、特に年配の先生方はなかなかそうもいかないということらしいです。ですので、そういう意味でのデジタル・ディバイドがかなり、このDXや教育データの活用を阻んでいる面があるのではないかという気がしていますが、その辺りの観点に関しては、この会議で、これまであまり議論していなかったような気もするんですが、いかがでしょうか。そういった問題に、この会議としてどういうスタンスを取ればよいかというのを、特にAIを使うとどうなるかというような観点で取り上げるということはあり得るのではないかと考えています。
 
【座長】  今回の議題は議論のまとめですが、議論の背景として委員御指摘のような、例えばジェネレーションによる課題というのは学校の中にも当然ありますので、うまく文章の中に入れられることがあれば、そのようにしたいと思います。
 
【委員】  議論の取りまとめのほう、きれいに整理いただいていると思いました。
 ただ、教育データの利活用の政策を進める上で大前提となることについてコメントをさせていただこうと思います。本日の新聞報道で出ておりましたが、学習用端末について子供の個人情報の取扱いに不備があるという指摘が大きく取り上げられていました。74ほどの自治体に調査をした結果が公表されていまして、個人情報の利用目的を定めていないと回答した自治体が2割強あるということ、利用目的を定めていると回答した自治体の中でも多くは抽象的な利用目的にとどまっていると。それから児童生徒や保護者に利用目的を明示していない自治体が45%、そして業者と契約する際の利用目的外の使用も禁じていない自治体が24%ある、このような記事がインターネット上で公表されているという状況があります。
 教育データの利活用に係る留意事項の第2版に向けた取組が進められているということではあるんですけれども、肝腎な教育委員会の対応が、基本的な義務すら遵守できていないということが、こういう報道記事から表れているのではないかと思いました。違法状態が生じているということですので、非常に深刻な状態だという指摘も上がっているところです。
 教育データの利活用の前提として、教育委員会には早急に違法状態を解消していただくということを求めたいと思いますし、文部科学省のほうでも必要な指導等を行っていただきたいと考えています。
 議論のまとめにどう書くかということとは少し違う観点ですが、非常に基本的な義務を守るというところが、足元がおぼつかないということだと、この議論は適切な形で進んでいかないと思いますので、その点お願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
【座長】  今朝ほどの新聞にも、そのこと掲載されていましたし、私も把握しております。やはり、この利用目的を教育委員会等が定め切れない、まだその程度の周知徹底でもあるのかなと思いますし、少し使って、様々な自治体が教育データの利活用をやっていただいた結果、利用目的もはっきりしてくるということもあろうかと思います。一般のところから見ると、利用目的はそういうことなのかとはっきりしてくるという部分があろうかと思うので、まだそういう意味では過渡期であり、今の御指摘は非常に貴重な御指摘かと思います。文章の中にも現状として、うまくそのことを文章に入れていくような形にさせていただきたいと思います。
 
【委員】  具体的にどうやったら教育の中でデータが利活用していくのかというところを見据えたまとめをしていただいて大変ありがたいなと思うところです。
 一方で、今回のこの議論のまとめの中で、まず「1. 教育データ利活用によって目指す姿」の中に2ポツあるんですけれども、2ポツの部分を読み解くと、データを利用する姿としては、まず1つとして、児童が自分自身のために使うということ。もう1つが、教師が一人一人の児童生徒に対してよりきめ細かい指導・支援をすることに寄与するものだというふうに書かれております。
 ただ、本会議の中間まとめのときには、もう一つ、学校設置者であったり、要はマネジメントする側も、こちらを利用することにより、より良い教育を行っていくというような視点も大きく柱としてあったと思っております。自分自身も学校運営であったり、または自治体が学校教育をよりよくしていくために教育データを活用していくというような認識で、これまでも活用させていただいてきました。
 そういった意味で、今回ここ入って、自治体とかそういったマネジメントする側の   視点が入っていないように見受けられるのですが、この点について伺いたいです。
 この後の資料2-2については、行政側の視点だったりとか、また二次利用という言葉が入っており、やはり一人一人の児童生徒、それから指導者である教師以外の視点も、データ利活用の姿とされていくと書かれているように感じるところなのですが、その辺りをこの議論のまとめには表記しないのはどうしてなのか、伺えればと思います。
 
【事務局】  今の委員の御指摘について、「1. 教育データ利活用によって目指す姿」で、教育委員会をはじめ自治体での活用という観点が書かれていないのではないでしょうかという御指摘だったかと思いますが、御指摘の部分の最後に、「教育委員会(学校設置者)が、各学校や当該自治体全体の状況に関するデータをもとに、域内の実態把握に係る業務の効率化や具体的な施策改善、学校への支援等をできるようになること」というようにまとめさせていただいておりました。
 もし、今御指摘の点がここに含まれない、さらなるところだったと、何か追加すべきキーワードがあるとしたら、再度お聞かせいただければと思います。
 
【委員】  資料2-1の概要資料の「1. 教育データ利活用によって目指す姿」とある部分の中に、先ほど指摘した学校運営の記載というものを読み取ることができなかったということです。
 
【事務局】  承知しました。ありがとうございます。この部分の書きぶりは工夫したいと思います。
 
【座長】  資料2-1と資料2-2の関係としては、資料2-2の本文を概要化したものが2-1ということですが、資料2-1において論点を拾い損ねているのはよくないかもしれないということでした。今の御指摘のように、誰のための教育データの利活用かといったときに、やはり今後はとりわけ、この設置者としての教育委員会における教育データの利活用というのは大変重要になろうかと思いますので、そういう観点からも、この資料2-1でもうまく拾えるようにしたいと思います。
 
【委員】  これから新しい学習指導要領の検討というものが非常に推進されていくというように考えております。このように考えますと、これから議論が始まるところだと思いますが、一般的に考えても、これまで以上に高い資質・能力をいかに子供に育んでいくのかとか、一人一人多様な子供のニーズをどのように受け止めていくのかということが基本的な路線であるということは間違いないだろうと思っております。
 子供一人一人に対応し、より高い資質・能力をつけていこうとなると、やはり子供一人一人がたくさんの学習資料等の情報を扱うことになりますから、必然的にコンピューターなどの支援を受けなければ、一人一人に対応した高い資質・能力に関わる指導というのは難しかろうと思っています。
 今、そういったことに果敢にチャレンジしている学校の様子を拝見しますと、教師が話せば子供に身につくというような考え方ではなく、やはり子供自身が自分で動いて学んでいくということが必要になると思います。そうなってくると、教師の話し方とか支援の仕方、助言の仕方というのが、やはり従来とは随分異なってきているなと思います。漠然と、これとこれを比べたらどうというような一斉指導としての指導技術から、A君はこことここを比べたんだね、だけどB君のほうを見ると、もっと違う比べ方をしているから、少し相談に乗ってきたらというような個々の子供に対応した個別指導の会話が、教室中で何か所も同時多発的に起こっているわけです。
 今のGIGAスクール構想のシステムでも、器用に使う先生は、それで把握できます。これは比較的簡単な使い方なので使い方としては流通するのですが、そのデータを見取って、よい助言ができる先生はと考えると、先ほどベテランの先生のデジタル・ディバイドという話がありましたがむしろ逆で、やはりベテランの先生に一日の長があるということです。この授業スタイルになったときのクラス全体の育ちというのは、やはり経験豊富で、たくさんの子供を見てきた先生の助言というものがクラスを盛り上げているなというように思います。
 なので、そういった先生、子供一人一人の様子を速やかに把握して、場合によってはベテランの先生の助言が何となく表示されるような話とか、多分そういったことが徐々に求められていくなと思っています。ですので、一つ次期学習指導要領に対応したデータ活用が重要になってくるということだと思います。
 また、現在の学習指導要領の段階でも、やはり非常に高い資質・能力を育もうということで、ルーブリックを使った学習評価等の研究や検討が進んできて、それに関する評価基準なども当時たくさんつくられたとは思っておりますが、現状ではあまり使われていないというようなところがあると思います。やはり情報量が多過ぎて、これまでの紙や鉛筆だと手間がかかり過ぎて、手帳などでは評価し切れなかったのだと思います。
 この評価基準のようなものをしっかりネットワークで、GIGAスクール構想の一人一台端末で流通させて、子供の自己評価、先生の学習者評価などに使っていくと。それらが蓄積されていくことで、より適切な学習評価が行われるであるとか、そういったことも考えられるだろうと思います。
 なので、現状の学習指導要領もそうですし、次期学習指導要領もそうですが、それらの理念をしっかり実現するためのアシストという意味でのデータの活用ということを、しっかり今後取り組んでいく必要があるというように思っているところです。
 
【座長】  今の御意見、確かにそうで、既に私ども教育データの利活用を進めておりますけども、これは現行の学習指導要領の中で、この一人一台端末が、ある程度の前提になって進めていることですので、教育の方向といいましょうか、理念といいましょうか、そこを間違えないようにするという意味でも、この議論のまとめの「1」と「2」の辺りに、きちんとそのことが分かるように触れておくというのは大切なことかと思いました。そしてまた同時に、この後の議論になりますけど、今後に向けた課題のところの御指摘でもあろうかと思いました。
 では、この後、「3. 今後に向けた課題」のところから進めます。
 
【座長代理】  私のほうから資料2-2 5ページ目、6ページ目についてお話をさせていただきたいと考えております。
 まず資料2-2の「3-1」から「3-3」までのところは課題という形になっているかと思うんですけれども、ここのところで、国、地方自治体、民間等の役割分担に関わって、「3」の冒頭部分の書き方について、ぜひお願いしたいことがございます。それは何かといいますと、ステークホルダーの3つそれぞれに課題があって、それをクリアしないとうまくいかないということが、これまで実証研究等で分かっていますので、その点をぜひ含めていただきたいということでございます。
 1つ目は、調達側である教育委員会や学校についてです。前回会議にて委員から発言のあった「腹落ち」というキーワードで、納得できるというようなことですので、その言葉が①の教育データ利活用の意義の周知となっていますけれども、その意義というのは誰も否定しないと思う一方、どういう姿になると良いのかという、そういうメリットの共有とビジョンの共有という2つのことを、もう少し強く言っていただいたほうが良いのかなと思います。恐らく今は、メリットという意味での意義が抽象的なことと、どんな姿になるからどういう具体的に良いことがあるのか、そしてここを目指すというビジョンが共有できていないところがあるので、①辺りをもう少しお考えいただけると良いかなということです。
 それと、①にすべきか②にすべきか悩むところですが、ここでデータのオーナーの話が補説されないと危ないと思っております。現状で言うと、各事業者が自分たちのシステムの中に入っているデータを自由に使っていたり、これは自分のデータだから外には出したくないということでデータの利活用が進まないということがありますが、公教育データに関してはデータのオーナーは学校設置者や学校であるということをきちんと明示して、それらがきちんと、一定の条件の下で公正に活用されるということが保障される仕組みをつくることが大事だと思うので、データのオーナーの話と、その利用に関する話は、ここでも課題として挙げてほしいと思いました。
 2点目は、提供事業者側のことについてです。令和6年度以降の課題になっているなと感じているのは、例えば学習eポータル系の事業者とツールズ系の事業者の間でのビジョンの共有がまだうまくいっていないのではないかと思う部分もありますし、それから何よりも、このデータの利活用はあくまでも相互流通ですから、そういった意味では、データ標準とデータ連携標準がきちんと合意形成できるということがまだまだ課題で、実際にはうまくいっていないというふうに思います。標準的なシステム構成だけではなく、そういうデータ流通の在り方の合意形成という点も、②辺りで触れていただくとうれしいかなと思いました。
 それから、3点目は開発側に関することです。教育データ標準などは既に示していただいているところですが、実はマシンリーダブル、つまり開発する人たちによっては、機械的に読み取ることができないような標準になっておりますので、この部分は何桁か、平仮名なのか片仮名なのか、数字なのか、そういったことまで含めて多義的に捉えられないような、そういうデータ標準とデータ連携標準の開発と実装支援ということが出てくるのではないかと思っておりました。
 
【委員】  まず資料2の「3-1」について、この教育データ利活用の意義や目的について、一言で理解されていないというようまず資料2の「3-1」について、この教育データ利活用の意義や目的について、「理解されていない」という記載がありますが、まだ現実は、ほとんど「知られていない」段階ではないかと思います。一概に「理解する」と一言で言っても、知ること、分かること、また腹落ちすることなどというステップがあると思っていて、大事なのは腹落ちする、つまりそのものの持っている良さや価値、効果を実感したり、必要性を感じたり、自分ごととして捉える段階までいかないと、なかなか効果的な教育データ利活用は進まないのかなと思います。
 まずは、当然周知から始まっていいわけですけれども、今どこまでそれが進んでいるのかという現状の認識、そして今後踏まえるべきステップ、これらを正確に捉えていかないと、適切な方策はなかなか検討できていかないと思いますので、現状認識と今後のステップをしっかりと捉えるべきと思います。
 次に、資料2-2の「3-3」に関連して5点申し上げます。1つ目は、先ほど申し上げましたように、現場で教育データ利活用の効果を実感したり、必要性というものを感じたりするためには、まずは教師が体験してみること、またその環境を整えることが重要だと思います。その一つの方策としては、データを見える化していくダッシュボードを個人情報にはしっかりとアクセスコントロールをかけた上で、全国の自治体で共有化していくことが考えられます。
 例えばExcelやGoogle formがあればできるような簡単な事例からで良いので、データを見える化するフォーマットを集めて、全国の自治体からアクセスして使えるような環境をぜひ国につくってほしいと思います。そのような仕組みがあれば、本市のダッシュボードも提供して役立ててもらえる可能性もあります。これを通じてデータの利活用の効果を実感できる、きっかけづくりが創出されていくと思います。将来的には、自治体同士で知見を共有して、より質の高いダッシュボードができていくことを期待したいと思います。
 2つ目に、そういった実践を重ねて、腹落ちのステップに上げる際に必要になるのが、教育データを学校現場で活用できるように翻訳したり、活用方法を一緒に検討できるというアンバサダーのような人材です。研究機関等の役割として期待という言葉で整理されていますが、学校現場の実態も理解しつつデータ利活用の意義を伝えられるアプローチを、国に今後お願いしたいと思います。
 3つ目に、データの利活用は、小さな自治体だけで取り組んでいても信頼性に欠けるわけで、広域で取り組んでいくことが大事なことだと思います。そのためにも、先ほども話がありましたけれども、都道府県のリーダーシップが非常に重要になってくると思います。現場の課題・目標に沿ったデータの分析とともに、より広域で分析に取り組むことで、データの量も増え分析の精度も上がっていくことが期待できると思います。
 4つ目に、国立教育政策研究所で、公教育データ・プラットフォームというものも作られたと思いますけれども、そうしたものができることで、学校が得たい知見と研究機関が深めたい研究のマッチングによる共同研究が推進されて、データの一次利用と二次利用の往還、言わば私がこだわっている1.5次利用という取組にも今後活用できるのではないかなと思っています。
 最後の5点目に、これからの教師には、ICTのスキルと同様に、データリテラシーも標準的に備えてもらうことになっていると思います。そういうものが教員養成段階でどのような現状にあるのか、また今後の育成の見通しなどについても明らかにしていく必要があると思います。
 
【委員】  資料2-2の「3-1」、「3-2」、「3-3」に共通するところなので、少し大枠でお話しさせていただきたいと思いますが、データの利活用や、そのシステム導入が進んでいない理由というのが、その有用性の認識共有やシステム構成の理解、費用面という形で推測されて、仮説として進んでいるんですけれども、私は本質的に使えるデータがあるかどうかだと思っております。先ほどのお話に出てきました利用目的などに通じるんですけれども、感覚や経験よりもデータによる指導のほうが良いというのが既に分かっている方も多いと思っています。問題は、そのデータが本当に使えるのかということ、子供たちにどう使えるのかなどです。実際には使えないデータであれば、まだ経験や感覚のほうが良いだろうというような感覚で、まだデータ利活用が進んでいないのではないかなというふうに思います。
 では、その使えるデータをどうやって収集、蓄積して分析、提示するのかということですが、まず、その使えるデータとは何か、何をどう収集したら、教育の何に寄与するのか、例えば学習の理解度など、何にどう寄与するのかといったところの議論も、どうしても使えるデータという意味では必要になってくると思います。
 現状の学習指導要領も、以前に作られていますので、このデータ利活用に対応しているものでは当然ないですし、児童生徒の日々のデータをどう蓄積していくのか、学習者が自ら振り返ることができるようなLMSやダッシュボードを様々民間企業で出していますけれども、本当にあるのか、デジタル教科書はこういったデータ利活用に対応していくのか、民間サービスと連携するための仕組みはどうなのかなど、本当にデータが使えるというところをセットで見せていかなければいけないのかなとも思っています。つまり、データ利活用に対応した既存の教育の仕組みや、その制度の見直し。これも指導方法とか評価も含めてだと思いますが、そこに踏み込んでいくことが不可欠なのではないかというふうに思います。それができるのが国の役割なのではないかと思います。
 資料の中にも「実現可能なところから」というようにありましたけれども、教育の仕組みの見直し自体が実現不可能だとは思いませんし、ここ一、二年で仮にそれが実装できないとしても、中長期的にこの議論を始めていくということ、つまりデータと教育、既存の教育の仕組みの見直しというところを、やっぱりセットで議論していく必要というのが、今後に向けた課題には必要なのではないかなというふうに思います。
 
【委員】  私も様々思うところがありますが。まず1点だけです。教育データ利活用が進んでいないというところは、先ほどのお話もあったように、自治体や学校がまだデータを企業から出してもらって分析できるようになっていないというのが一つ大きくあると思いますが、データを出してもらったとしても、それを学校や自治体で分析してフィードバックするにはどうしたら良いのかというところも困っているところだと思います。
 そういった意味では、「4. まとめ」に、今までのことにあまりとらわれず柔軟にと書いていますが、一つ提案としては、もう自治体や学校任せにするのは限界があるというか、結局は自治体や学校では、言葉を選ばずに言えば民間企業に丸投げになってしまうところもあるわけで、そういう分かっている人が現場に入って助言をできれば良いですが、先ほどアンバサダーという話もありましたが、そういう人が周辺にいない場合はそれでいいのかという問題もあります。例えば台湾などでは、国がそういうプラットフォームを無償で提供して、全ての子供がそのプラットフォームの中で、様々なツールを選んで学習をして、そのデータというのが分析されてフィードバックできるような仕組みをつくっています。それは一つの例ですが、そういうところの動向も参考にしつつ、今後、検討していく必要があるのかなと思いました。
 端末を整備したのは日本がかなり早かったですが、一、二年経ってデータ利活用が進まなければ、もう後進国になってしまう可能性もあるわけなので、これはそうならないように早く、ソフトウェアの基盤をどう整備して、教育のデジタルエコシステムをどうつくるかというところを早く考えていく必要があるのではないかと思います。
 しかし、全体最適に見ると、各自治体がばらばらにシステムを構築すると、非常に予算も人的コストもかかります。それでデータ利活用が進まなくなってしまうので、ある程度シンプルなもので、スタンダードなところは国が、MEXCBTと同じように提供してもいいのではないかと、全体最適を考えるなら、そう思います。
 
【委員】  資料2-1をベースにコメントをします。「はじめに」のところに、「全ての教育委員会や学校における教育データ利活用を実現するために」というのが今回の主題になっておりますので、教育委員会、学校を主体にするのであれば、その主体だという意味がもう少し出てくるとよいかなと思いました。
 具体的には「1. 教育データ利活用によって目指す姿」の2点目で、例えば児童生徒が自分の強み弱みを振り返ることや、教師が一人一人の児童生徒にきめ細かい指導・支援ができるようになることに寄与すると書かれているんですが、難しいのは、先ほど委員もおっしゃったように、本当にそうなのか、実際にどういうデータをどう使っていったらそれが実現できるのかということが、まだよく分かっていないということかと思います。
 そう考えますと、教育データを利活用することによって、学校や教育委員会自らが、本当に子供一人一人のためになっているのか、先生の一人一人の児童生徒に応じた指導を可能にしているのかというのを検証していくことが可能になるというのが、教育データ利活用の本来的な大きな意義ではないかなと思います。
 例えば、資料2-1の「3-3」に行きますと、例えば民間企業の取組を期待というところに、創意工夫を生かしたより良いサービスの提供を期待とだけ書いてありますが、「提供を期待」ですとそのサービスを提供して終わりになりかねません。そのサービスの裏にどんな原理があるのか、その有効性を示すためにどういうデータを取って、どこで効果を検証して、何をもって良いサービスと言っているのかという検証の責務があるということをはっきりさせた方がよいのではないか。その上で、例えば研究機関等の取組が、今はそれぞれ別個に書かれているんですけれども、その検証に強みを持っています、だからこそ、各所が力を合わせて、この教育データ利活用の意義を検証していくということが必要なのではないかと、そんな図式が浮かんでくるとよいと思いました。
 ひいては、ここの「はじめに」の2点目が、一人一人の児童生徒というよりもう少し学校全体、自治体全体の原因があるのではないかという委員の話もありました。一人一人の児童生徒個人の話をすると内面情報を取得するという話とどうしても関わってしまうので、どういう原因があるから、利得があるから、データを活用するかという、そのリスクも含めて勘案するために、検証の視点がエッセンスとして随所に入ってくると良いのではないかと思いました。
 
【委員】  大きく4点ほどあります。
 まず、資料2-1を基にお話ししますと、今日のこの議題の前でお話ししました、教育データの利活用に係る留意事項の話がありました。この留意事項は、様々議論されていると思いますけども、まだ十分な周知が図られていないというのが私の実感です。例えば、今行われておりますデジタル庁の事業で、事業者へのアンケートを取りましたところ、自分が取ったデータなのだから自分のものである、というようなことをおっしゃる事業者も実はいらっしゃるのです。先ほどから御議論ありますデータホルダーが一体誰なのか、オーナーが誰かということが、まだ十分伝わっていないというのが現状です。
 そういう意味で、今後の課題として、この留意事項を徹底していくということが、どこかにあっても良いのではないかと思いました。
 その一つのやり方として、例えば来年度行われる国の事業、それから民間で行われる事業において、この留意事項に基づいてルールづくりをして、実際にデータを回していくということをやってみるというようなことが、どこかであっても良いのではないかと感じています。これが1点目です。
 それから2点目です。「3-3」のところで、教育データ利活用の推進ということがあります。この中の「国の取組を期待」として記載のある「共通ルール」のところに入るかもしれないですが、これからこういう教育データの利活用というのは、国が例えば実証事業で展開していくという段階から、民間で自走していくという段階に入っていかなければいけない時期だと私は思っています。その中で、例えばデータを取る、保管する、分析するのにそれぞれコストがかかる中、そのコストを一体どのように負担していくのかというような、そのビジネスモデルやキャッシュフローのモデルが必要になってきます。
 ただ、まだ全然その議論が成熟していないというのが個人的な感想なので、そういったことをどこかで議論していくということが必要です。これは、なかなか民間ではしにくくて、国、文科省で、ぜひリードして議論を進めていっていただければと思います。
 それから、同じく「3-3」の3点目で、研究機関ということについて、これはコメントですが、例えば私が今おります学習分析学会などでも、自分が研究をする、オリジナルの成果を出すということ以外に、今までの学習分析の研究の中で、こういう知見が蓄積されてきたというのが多くあります。例えば、LMSのこのデータを使うと、学習時間をこういうふうに測れるというようなこと、それから、どれぐらいのエンゲージメントがあるんだということを推測するという研究は数多くあるわけです。
 こういったものを、ここでは教育、学校現場等に伝えていくというふうに書かれていますが、学校現場だけではなくて、もちろん教育委員会の方など、様々な方に、こういった先行研究も含めた、今までの知見というのをより一層広めていくというのが、学会なり、それから学習分析の研究者の一つの責務ではないかなと思っていますので、そういった知見も含めて、何らかの形で情報共有できる場があるといいなと思いました。
 それから最後、4点目です。この留意事項なども含めますが、私立の小中高、それから私立大学において、例えばどのようなデータ利活用のルールがあるのか、あるいは留意事項があるのかということです。公教育ですと、例えば地方自治体あるいは教育委員会がデータ管理の責任を持つということになっていますが、では私立の場合はどうか、どういうルールに従って運用しているのだということが十分はっきり書かれていない可能性があると思います。そこについても補足していく必要があるのかなと思いました。
 
【委員】  今回のこの有識者会議の委員の中で、私が教育の分野から見ると一番の門外漢でございまして、どちらかというと私の仕事は、民間企業や国を含めた行政機関が新たな事業を起こすときに、その事業を着地させて実際に成果を生むというところをお手伝いすることでございます。ですので、残念ながら、正直に言いますと教育に関しては完全に門外漢ですが、その門外漢の立場から見ても、今までの20回に及ぶ議論というのは非常に興味深く、かつ刺激的であると同時に、特に前回の第19回にもありました埼玉県の取組も含めて、非常に先進的で前向きな事例が出てきて、非常に面白いというふうに思っています。
 ただ、先進的でうまくいっている事例があったからって、これが世の中に普及するかどうかはまた別な話でありまして、すばらしい取組が実際に世の中の様々なところに普及するというのは、非常に限られているというのが実態です。これは民間だけでなくて行政の支援をした経験においても、せっかく良い取組だが結局普及しませんでした、ということは山のようにあるというのも事実です。
 その観点から見ると、特に今回の今後に向けた課題というところでいうと、教育データ利活用が必ずしも全国的な動きになっているとは言えない現状があるというように書いていますが、これに関して、今までの議論でもこういう話が出ていた中で、ではこれはなぜなのかという、より詳しい分析が必要ではないかと思います。
 例えば、こちらの議論のまとめの中では、そもそもデータ利活用というすばらしいアイデアがきちんと伝わっていない、理解していない学校や自治体が多いということになっていますが、ステークホルダーは単に学校だけでなくて、特に学校教育ということでいうと、当事者としては当然1,700ある基礎自治体があり、そこには当然、議会というものもあります。あるいは、ステークホルダーとして保護者というものもいますが、そういった方々が見たときに、こういった取組を行う動機づけがそもそも不十分ではないか。以上のように、様々な理由が起こり得ると思います。その辺りに関する分析というのは必要ではないかなと思います。
 端的に言うと、そういった分析を行わず、すばらしい取組だからやりましょうという話だけでは、結果として望んでいた状況にならないというのは、他の事例でも多々あるということです。
 ですので、例えば今回の取りまとめの中で、教育データ利活用は必ずしも全国的な動きになっていると言えないというふうにまとめていただいていますけども、例えばこのような議論を5年後、10年後やったときに、取りまとめで同じような文言が載りかねないというのは、私としては一つ懸念点としてあります。
 そういう意味で、今回の会議は一旦区切りということで、4月以降どのような検討を進めるかというのはまだこれからというように思いますが、その中で、うまくいっている自治体の分析、それをどう周知徹底しているかということと同時に、導入をしていない自治体はなぜかという、そういう分析を改めて行うというのが必要でないかと思います。それは単に教育データ利活用について知らないだけなのか、お金がないのか、そもそもデータ利活用によって、そういう負担のようなものが起こり得るのかなど、そういう様々な理由が起こり得ると思います。ですから、そういったできない理由というものをきちんと調べて、それに対してどのような手を打つかというような分析を行うというのは有意義ではないかと思います。
 やはり、このせっかくの取組が普及しないままで続くというのは非常に残念なことになりかねないです。そのためにも、そういった改めての分析は、ぜひ今後お考えになっていただければなと思います。または、そういったことを今後の取組の中に組み込んでいただければなというふうに思います。
 
【委員】  教育データ利活用が普及しない原因は様々あるわけで、先ほど私が申し上げたデジタル・ディバイドもその一つですし、データが実際には流通していないというのも大きな課題だと思います。
 それで、先ほど委員がおっしゃっていましたが、教材ベンダーがデータを提供してくれないというような問題はかなり深刻ではないかと考えています。それで、留意事項に書くべきではないかと思うのは、一種のデータリテラシーの話です。
学習データをどのように使えば一番価値が高まるかというと、一次利用、つまり学習者自身に対する介入、あるいは学習者自身が関与するようなユースケースに関しては、本人に関する全てのデータを本人が利活用するということによって、学習者に対する価値が最適化されるというのは明らかです。
 一方、学校設置者とか教員にとってどのようにすれば価値が高まるかというと、学校設置者のレベルであれば、恐らく個別に学習者に介入するというよりも、統計的な分析によって全体がどうなっているかという傾向を把握して全体の施策を考える、いわゆる二次利用というのが一番良いのだろうと思います。
 それから、現場の教員にとっては、自分が担任する各学習者に個別に介入する必要があって、例えば合格、不合格を付けるようなことをやらなくてはならないので、集中管理に基づいて、そういう個別の介入をやるというのが恐らく最適であろう、というようなことは非常に基本的なデータリテラシーに入ると思います。
そういうことを留意事項等で踏まえた上で、少なくとも本人に全データを集約して、ある種のデータを現場の教員に集約し、また別種のデータを学校設置者に集約するというような体制をつくる必要があるということを、基本的な認識として共有する必要があるのではないかと思います。
 一方、教材ベンダーがデータを提供してくれないというのは、データを提供しても利益が出ないかもしれないと思っているからなわけで、そこはやはり何か新しいビジネスモデルが必要なのだろうと思います。それに関しては後ほど、また発言したいと思います。
 
【委員】  資料2-2の「3-2」の2点目のところに関する私の意見になります。今も既に教育データ利活用を実現可能にするためにというようなこの会議の持ち方であって、さらに、そこからなぜ進まないのだろうかという議論がある中で、教職員がデータの良さに腹落ちしたり、そのデータから良さの気づきを得られないことも一つ、前進されていかない理由なのではないかというふうに私も思います。
 その中で、教職員側の立場に立ったときに、データを見る力、読み取る力というものをしっかりと学ぶ必要があるのかなと思っています。つまり、私たち教職員、私も教員なんですけども、統計教育であったり、専門的にデータを見て、データから何かを感じる、見取るというような知見をこれまで持っていない部分もあるのかというように思っています。
 だから、多くのデータが出てきても、ここから何を考えたらいいのか、何を見取ったらいいのか等々が、なかなかその良さまで「あーここね」と、腹落ちする、このデータからそういうことが分かるのだという実感が湧かないことが学校現場でデータ利活用が進まない原因の一つなのかなと思っています。
 国のほうにお願いしたいところとしては、教職員がデータの良さに気づくために、統計教育であったり、そういった研修の機会、有識者の方たちから、今ある学校のデータから実はこういうことが分かります、ここのデータをこういうふうに見てみると、実は子供たちのこういう動きというのが見えてくるでしょう、というようなお話を伺う、つまり聞いて研修の機会をいただけるだけでも、腹落ちしながら先生たちの気づき、そこから先生たち、すごくデータを読み取る力が備わっていくので、常に現場を見て、今もしかするとこういうことが起こるかもしれないという気づきがあり、その気づきから、ちゃんとしたデータを調べてみよう、ここまでの今日の子供たちの動きを見てみよう、というような意欲につながっていくのではないかなと思っています。
 なので、研修ということも併せて、一体的に気づきにつながるような手だてを、もし用意していただけたら良いかなと思います。
 2つ目です。二次利用についてです。実は私も、様々な企業がデータを利活用する、二次利用することに実証的に携わっている部分がありますが、実は企業自体も分析の視点や分類の視点について、自分たちの感覚で決めており、何らかの文献に沿ってその視点を取られたのか聞いても、何となく思ったのでこの分類にしてみましたという回答が返ってくることがあります。
 なので、今後、二次利用を進めていく上で、企業よりも研究者の先行研究に基づいた視点を与えるというようなアドバイス的な支援が必要ではないか、そうすることで正しい分析のシステム開発が行われていくのではないかというふうに思ったところです。
 
【委員】  私は2点お聞きしたいこと、気になっていることがあります。
 1点目は、もう先ほど委員から御指摘いただいたことと似ていますが、保護者の理解に関して、データ利活用に関する意義をどう浸透させる、周知させるかというのが、今回のこの文案の中で、どれだけ反映できているのかということが気になります。資料2-2の7ページにそのことが少し書いてあって、基礎自治体が保護者からの理解も丁寧に得ながらというようなことが書かれているんですけども、これは実際上はかなり難しいと思います。ですので、この辺りをどう具体的にしていくかということはあります。
 なぜ難しいかというと、決定的には、要するに保護者の世代は、教育データを利活用した教育を受けていないからです。保護者にとっては全然受けていない、自分が実体験していないものなので、何か意義が理解できず、子供がそれを受けているとしても、何がどうなるかが分かっていないということがあります。ですから、それでやはり様々な理解が浸透していないところもあると思うのですが、教員に対する理解としてはもちろん周知も大事だと思いますが、保護者に対する理解にもう少し重点を置いても良いのかなというのは思います。
 個別にやっている私の仕事とも関係しますが、スクールロイヤーや、そういった現場の法律相談の中で、タブレット端末が普及したら、タブレット端末に関連する法律相談が急増するのです。多くは、やはり保護者から様々指摘があって、学校にクレームや苦情があり、それで学校からまた相談が来るという形です。例えばタブレット端末を使っていじめが起きた、タブレット端末を使って盗撮したといった事案が出てきたときに、やはり保護者として見たら、何でそんなものを使わせるのかと感じるわけです。保護者がデータ利活用の意義を丁寧に理解できていないところが根底にあるわけですが、今回についても、新しい政策をやろうすると、必ずそういった現場での法律問題が出てくると思うので、そのときに保護者がきちんとこの意義を理解してくれているかどうかというのは重要になってくると思います。学校が、そういった保護者からの苦情などに対応する際に重要になってくると思いますので、そういう意味でその点を、この議論のまとめの文案にも盛り込んでもらうと良いのではないかと思います。
 2点目が、これは資料1の方と関連しますが、教育データ利活用については、今のところ、基本的には学習活動のほうでの話が主だと思いますが、資料1の事例編の中の事例5については、学習状況だけでなく、若干、生徒の安全面なども関わってくる話ですよね。少し実はベクトルが違うことでデータを使うというイメージがあるので、安全面や健康面といったところでも使えますというような点が、資料2-2の文案のほうにあまり入っていないのかなというところが少し気になりました。
 というのは、ここも非常に重要で、例えばデータの入手段階やデータの保有段階といったところと関わってくると思いますが、例えば生徒の健康や良くない行動、問題行動などを把握したり監視したりするというときに、このデータを使う自治体はやはり出てくると思います。実際に、例えば端末の利用履歴を監視しようという、そういった動きもあるぐらいですから、今後そういう問題も含まれてくると思います。
 ですので、資料1の事例5のような事例について、データはこういう場合も使いますということを、議論のまとめの文案のほうにも少し載せたほうが良いのかなというのは、感想として思いました。
 
【座長代理】  今までのお話、全くそのとおりだなと思って聞いておりましたが、1点、少し戻ってしまいますが、5ページに図1というのが出ております。この手の資料が出ていくときに、教育委員会や学校現場は、こういう図にすぐ目が行ってしまうものですから、少し大事にしたいなと思って、「3. 今後に向けた課題」との絡みで申し上げたいと思います。
 ここの図の中で、データレイクからダッシュボードにそのまま線が行っているところ、このように直してはどうかと思っているのは、先ほどからお話が出ているとおり、アナリティクスをかませて、価値ある情報にしてダッシュボードに表示するということをしているのです。
 特に先ほどから話も出ていましたように、従来は、あらかじめ決められた情報をそこに提示するだけだったのですが、今は生成AIも含めAIを活用して、こういうことを知りたいといったら、この情報とこの情報を掛け合わせるとこういうことが分かりますとか、そういうあらかじめ作り込まないで、必要に応じて可視化して表示するということが可能になっています。そういった意味では、データレイクとダッシュボードの間にAI等も活用したアナリティクス、あるいはアナリティクスだけでも良いと思いますが、それを入れていただきたいですし、ダッシュボード・BIツールによる柔軟な可視化などが入ると、今、既に渋谷区や奈良県など様々なところでされているようなことも反映できて、従来型のダッシュボードに縛られなくなるかなというのが1点目です。
 2点目は、表記の仕方と留意事項の関連です。図の右側の「窓口」という表現が、児童生徒という意味なのかなどが少し分かりづらいので、この辺りを御検討いただきたいということです。また、左側の行政系システムからの行政データは留意事項に反映すべきだと思っているのですが、個人情報保護条例でやっていたときは、個人情報保護審査会を通したから、納税情報などで生活困窮家庭に対して手厚い支援を教育でするというようなことを見直すだとかやっていましたが、個人情報保護法に一括化されてから、個人情報保護審査会ではなくて、利用目的の変更ということをきちんとやっていないと使えなくなっているのに、相変わらず昔のままやっているというところがありそうで懸念しています。
 したがって、ここについては、利用目的の変更等を行った上で適切に活用、また使い終わったら削除するといったことにもやはり気を付ける必要があると思っていますので、その辺り、この図をもう少し御検討いただけるとありがたいかなというふうに思いました。
 
【座長】  それでは、最後に「4. まとめ」が残っております。ここには総括として、可能な部分から取組を進めましょうということや、役割分担に関すること、またAIのや二次利用のことはまだ今回は十分に検討できていないというようなことが書いてございます。さらに、検討の仕方も不断の見直しで進めていくということです。そういう意味では、最初に想定していたとおりにはいかない、あるいは新しい目線が見えてきたというようなことが、取組を進めているうちに出てくるということも、ここには組み込まれる必要があるのかなと思っております。
 この部分について御意見のある方、お願いしたいと思います。
 
【委員】  最後に、2点ほど申し上げておきたいと思います。
 まず1点目です。これまでの20回の会議ですが、技術面、個人情報保護やプライバシー、学校現場の実践など、極めて多岐にわたるテーマで議論をされてきました。次期は、テーマごとの議論の整理が必要になってくると考えています。
 加えて、現場の実践だけを取っても、先ほど委員の御発言にもありましたように、校務系、学習系などを合わせると、学習だけではなくて、生徒指導や教職員の人事管理など、様々な利活用が考えられます。まずは、繰り返し今までも出てきていますが、「何のために、どのようなデータを活用するのか」を共有して議論をしていく必要があると思います。
 2点目です。これも先ほどの委員の御発言にも関連しますが、本日の新聞報道にありました端末の利用目的についての明示に関してです。本市においては2022年の12月に教育データ利活用全般に関するガイドラインを定めて公表し、保護者に提示する「学習用端末利用ガイドライン」の中でも、端末の利用目的を明記しています。あわせて、学校生活に係る記録等を教育クラウドに保存したり、それらを教育の質向上のために利用したりすることがあることについて明記をしています。
 ただ、少し心配なのは、この会議で定められている先ほどの留意事項など、国の議論を全く知らない自治体も多いのではないかと思っていて、今回の議論の資料を含めて、これまでも文科省から通知やホームページで公表するだけでなく、やはり知られていない自治体にどのように伝えていくかという、戦略的な広報についても今後考えていかなくてはならないと思います。
 
【座長】  委員にお尋ねですが、そういう自治体に、どうやったら届くのでしょうね。
 
【委員】  そこが一番問題なのですが、結局、「困っているところ」は、何にも困っていないのだろうと思います。ですから、今データ利活用をしなければならないという必要感も何にも感じていないため、少しでも、こういうようなものが必要なのだということをお互いに啓発することが必要で、まずは教育長会などで話題にし、啓発をすることです。トップが意識を持たないと、やりたいという部下職員がいてもうまくいかない可能性が考えられます。
 
【委員】  前回や前々回の会議で申し上げたことを繰り返すことになりますが、冒頭に少し触れたデジタル・ディバイドの問題などは、今台頭しつつある生成AIで恐らく解消してしまうのだろうと思います。人間はAIに話しかけさえすれば、あとはAIが全部やってくれるので、アプリやWebサイトを扱わなくて良いですよね、ということです。このようになってくると、現場のベテランの先生でも普通に情報機器を使いこなして、ベテラン教師の本領を発揮できるというふうなことになっていくのではないかと思います。
 それはもちろん教育だけの話ではなくて、福祉、医療など、あらゆる公的サービス、私的サービスもそうです。あらゆるサービスの提供がもっと広く簡単にできるようになるということなので、教育のみならず、そういう様々なサービスの提供と組み合わせて全体最適化を考えていくということが、政府の立場からすると、非常に重要になりつつあるのではないかというふうに思います。
 その中で、様々な教育上のメリットもあるわけですが、そのようなAIが教育を含む様々なサービスのゲートキーパーになってくれると、例えば複数の教材の利用ログなどを本人のところに集約すれば、そのログに基づいて教育的な指導をしてくれるようなAIのサービスというのも考えられたりするわけですが、恐らくそういうものが、重要なステークホルダーである保護者には響きやすいのだろうと思います。
 先ほど資料1の教育データの利活用に係る留意事項の中で5つ事例が挙がっていまして、上の3つほどは学習者にとって学習が進むということで、保護者にも響きそうな話ですが、よりその方向で明らかなメリットがあるような事例を考えようとすると、やはり情報を集約して、それをAIがフル活用して本人を支援してくれるというような事例が必要なのではないかと考えています。
 それからもう一つ、そういう前提の下で考えると、教材ベンダーにとってデータをきちんと学校設置者や本人に渡したほうが利益が出ますという、そういうようなビジネスモデルも構想できるのではないかと思います。
 
【座長代理】  私から2点申し上げたいと思います。
 1点目は、半分は質問と言ったほうが良いかもしれません。文部科学省からの情報発信を、先ほど委員がおっしゃったように教育長会にするときに、政令市と、それから市の教育長会、町村教育長会と複層的になっていますが、そのいずれにもちゃんとしっかりしていくのは、とても大事なことかと思います。
 それと同時に、もう一つは、もっと広くアピールできないかなということを考えています。それは何かというと、学校現場や教育委員会の一般職員から見ると、文科省は一つに見えます。ところが、文科省の中でも、初等中等教育局の学校デジタル化プロジェクトチームもあって、GIGAスクール構想ですごく注目されて、StuDX Styleという非常に良いサイトも持っています。それに対して、教育DX推進室は総合教育政策局にあり、情報発信の窓口はというと、ウェブページでの広報はできるが、皆が見るページにはなっていないので、できればそのStuDX Styleのところに、役立つ情報は併せて連携して載せていく、情報発信していくということが考えられます。
 それともう一つ、国立教育政策研究所のほうにある教育データサイエンスセンターの中に、自治体に対するデータ活用の支援というのが業務に入っていたかと思うので、そういった意味でのサポートもStuDX Styleを窓口にリーチできるとか、あのサイトに説明のビデオもあったりするので、そういった文科省のポータルのようなものがあって、そこから情報発信はできるものなのかどうなのかという質問です。
 2点目です。新しいビジネスモデルの必要性をすごく感じているのですが、データ活用のネックになっていることとして、学習eポータルにツール事業者が登録してもらってデータの利活用できるように、相互連携できるように作っているが、学習eポータル事業者に費用を払わないと、リンクを貼ってあってもデータ連携できないというような現実的なことがあり、データ流通の妨げになっています。そういったところは国も関与しながら、こういうルールでやりましょうとか、事業者間の合意形成でもうまく国が音頭を取ってやるなど、何かしないと現実には進まないのではないかなということ、合意形成の重要性というものを、ぜひお願いしたいと思いました。
 
【事務局】  ここまで数多くの御意見をいただきましたこと全部に対して、お答えやコメントができないところもあると思いますが、複数の方から御指摘いただいた点を、簡単に振り返ってまいりたいと思います。
 まず最初に、国の役割というところについての様々な御意見を頂戴したかと思います。例えば台湾の例とかも出していただいたかと思います。国がどういう役割を果たしていくかというようなこと、それから途中でありましたビジネスモデル、あるいはツール事業者と学習eポータル事業者との間の役割分担など、これから進めていく上で、それも持続可能な形で進めていく上では本当に大事な論点だと思っております。今回の議論のまとめの中でも、引き続き議論というふうにさせていただいておりますけれども、ここは本当にしっかりやっていきたいと思っております。
 それから、同じように現状の把握ということをしっかりやっていくべきではないかというような御指摘も何人かの委員からいただいたかと思います。そこも本当におっしゃるとおりでして、GIGAスクール構想の一人一台端末が配られて3年ほど経ちますが、その中で、現状、学校で、あるいは教育委員会で、どういった活動がされているのか、されていないとしたらどこが課題なのか、そういったところは次期会議において、しっかり把握しながら議論、検討をさせていただきたいと思っております。
 それから、多くの方からいただいた教育的な意義というようなこと、キーワードがございました。先生方へ伝えていくということ、それから実際にアプリ等を開発している企業の方にも伝えていくというような御意見だったかと思います。この点については、この議論のまとめの中でもうまく、もう少し見えるようにしていけたら良いかなと思ってございます。
 それから教育データの利活用に係る留意事項に関して、いくつか御意見をいただいておりました。留意事項そのものにつきましては、議題1のほうで御説明しましたように第2版をまとめている途中でございますが、まとまり次第、学校や教育委員会等に対して伝えていくようにしっかり取り組んでいきたいと思います。
 これに関連して先ほど、文科省のPRをもう少し一元的にやってはどうかというような御指摘があったと思います。発信力が十分ではないというところ、胸に手を当てて本当にそのとおりだなと思いますので、どういうやり方がいいか考えてまいりますが、発信のほうはしっかり届くように工夫をしてまいりたいと思ってございます。
 今、本当にたくさんの御意見をいただいた中、全部には触れられておりませんけれども、こんな形で対応したり、あるいはこの議論のまとめの中の記述のほうも工夫してまいりたいと思います。
 
【委員】  ここまでの議論で、皆さんのおっしゃっていることなどを踏まえながら、例えば本県でしたら、県域でたくさんの情報を扱ってみたり、様々なチャレンジをして、探索的にまずデータ集めてみるということをやってみた結果、基本的につまずくというか、うまくデータを活用できていないということが、今日の議論でも挙がりました、要するにデータはあるものの、それはどう扱っていいのかが分からないということです。そもそもそのデータの所在がどこなのかということについてもはっきりしません。気を遣うのは保護者に対して、要するに、直接のデータは子供や先生のことであるものの、子供のことに関しては責任を持っておくべき保護者というのが、さらにその先にいるということを考えたときに、大人の情報の扱い方と学校教育の中での子供の情報を扱うということでは、高いハードルがいくつもあるように感じました。
 そこについては、今トータルで考えると、例えば、産官学連携という、研究者と学校、それからその当事者である本人たちというところがしっかり結びついた全体の体制を整えていくということが大事だと思ったのが一つです。
 もう一つは、個別に研究者の方や各自治体が非常にチャレンジングにデータを集めたり取り組んでいるのが横展開になっていないですが、それぞれの取組が結びついていくことになってやっとその全体像とか、やっていくべき方向が見えると思うので、次の段階としては、ぜひ、それぞれの取組が横につながるような提案であったり、仕組みであったり、そういうことをしっかり進めていきましょうというようなニュアンスが含まれていれば良いのではないかと思いました。
 
【委員】  今お伺いしていて、一つ効果があるのかなと思ったことについて述べます。ちょうどGIGAスクール構想のときに文科省が導入した学校DX戦略アドバイザーについては、大成功だったのではないかと思います。そういうことで考えていくと、今後は教育データ活用のアドバイザーを委嘱し、なかなかそれだけの人材がいるかどうかは難しい部分もあると思いますが、こういう方に積極的に自治体や学校に入ってもらうことも必要になるのではないかと思いました。
 
【座長】  ありがとうございました。大切な視点をたくさんいただきました。この議論のまとめの案については、文部科学省のほうで、皆さんの御意見を踏まえた反映をできるだけしていただきたいのですが、今日が最後の会議ですし、年度はもうすぐ終わりますので、どのように反映するかにつきましては、それぞれの先生にお尋ねすることはあるかもしれませんが、原則としては、この座長の私に御一任いただくことでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。
 では、お時間も迫ってきておりますので、まとめたいと思います。冒頭にも申し上げましたとおり、この会議は、この令和6年3月までが任期となります。任期中のこの会議は本日が最後となります。委員の皆様におかれましては、令和4年4月からの2年間の任期中、大変お世話になりました。たくさんの前向きな御意見をいただきまして、また各種の専門的な会議体でも御活躍いただきまして、本当に感謝しております。
 私としては、座長として2年間やってまいりましたが、最初に述べましたように、一人一台端末の活用率は、自治体による様々な違いはあるものの、総じて上がってきています。これは全国学力・学習状況調査などでも結果として出ていますし、そうなると、この学びの様相をデータで把握するというニーズは、これからますます高まろうかと思います。課題はまだたくさんありますが、次なる会議で、この課題をしっかりと御検討いただければというふうに思うところです。
 そのためにも、今期のこの会議で、この議論のまとめをしっかりしておく、それが、できればこの一、二年の間にきちんとやるべきことという形でまとめられればというふうに思うところでございます。
 本当に皆さん、2年間ありがとうございました。
 最後に、事務局から一言御挨拶をいただこうと思います。
 
【事務局】  改めまして委員の皆様、2年間、様々な御議論、御審議いただきましてありがとうございました。皆様方からの御助言等踏まえまして私どもも取組を進めてまいりましたし、また学校現場のほうでも、端末を活用したり、またデータの利活用というところの認識も、少しずつではあるかと思いますけども、広まってきているかなと思います。先進的な事例も蓄積されてまいりました。
 こういった現状がある一方で、今日もいくつか御指摘ございましたが、全国でそれが進んでいるかというと、やはりまだ困っていらっしゃる、あるいはどうしていったら良いのだろうという学校もあるというのが現状だと思っております。文科省としましても、本日いただいた議論のまとめを踏まえまして、データの利活用の意義やシステム構成、役割分担といったところにつきまして、すぐに取り組めることには着手してまいりたいと思いますし、検討が必要なものにつきましては、来期4月以降、また新しい体制で検討を進めていければと思ってございます。
 本日が今期の会議としては最後になりますが、このデータの利活用の実現という意味では、皆様方からの御協力というのは引き続き大事と思っております。引き続き御指導、御助言のほど、よろしくお願いいたします。
 2年間にわたりまして皆様からいただきました御助言、御議論に感謝申し上げます。ありがとうございました。
 
【座長】  ありがとうございました。今後の文部科学省のさらなる発信に期待して、この会議も閉めたいと思います。皆さん、本当にありがとうございました。


(以上)

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