教育データの利活用に関する有識者会議(第19回)議事要旨

1.日時

令和6年1月12日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育DXに係る令和6年度予算(案)等について
  2. 教育データの利活用の推進に係る取組について
  3. 教育データの利活用に係る留意事項について
  4. 教育データ利活用に向けた実効的な方策について

4.出席者

委員

堀田座長、藤村座長代理、石井委員、緒方委員、小﨑委員、佐藤委員、白水委員、神内委員、高橋委員、田村委員、戸ヶ﨑委員、中村委員、橋田委員、渡邉委員

文部科学省

望月総合教育政策局長、淵上官房審議官、八木社会教育振興総括官、伊藤教育改革調整官、藤原教育DX推進室長、野口教育DX推進室室長補佐、稲葉教育DX推進室室長補佐、中嶋修学支援・教材課課長補佐

オブザーバー

髙田 埼玉県教育局市町村支援部義務教育指導課長、脇 三重県松阪市教育委員会事務局子供支援研究センター研修・ICT教育係長、デジタル庁 、総務省、経済産業省、個人情報保護委員会、一般社団法人ICT CONNECT 21、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)、一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育DXに係る令和6年度予算(案)等について

※資料1-1「令和6年度教育DX・GIGAスクール構想関係予算(案)の内容」について事務局より説明を行った。
 

議事2.教育データの利活用の推進に係る取組について

※資料2-1「地方自治体におけるMEXCBTの活用について」について事務局、資料2-2「MEXCBTを活用した埼玉県学力・学習状況調査の取組(埼玉県)」について埼玉県、資料2-3「教育データの効果的な分析活用に関する取組について」について事務局、資料2-4「令和5年度「教育データの効果的な分析活用に関する調査研究」事業について(三重県松阪市)」について三重県松阪市よりそれぞれ説明を行い、委員から意見、質問が出された。

 (意見)
 
【座長代理】  今までの説明を聞いて、とうとう日本もここまで来たかと大変うれしく思いました。イングランドでは、約10年前にこれをRAISEonlineで実現していたので、日本はもうそれを追い越すことがもう可能だということが見えてきました。
 質問です。1点目は、松阪市にお聞きしたいんですけれども、先ほどから、Power BIツールなども使って分析等もしているということでしたが、ネットワークを分離していて、それぞれのシステムで全部別々のファイルフォーマットでやっていて、先ほどのような分析が困難だというのがデータ利活用のネックだと思っているんですが、それはどう乗り越えられたのか。私はゼロトラスト・セキュリティのネットワーク統合や、データ標準、教育データ標準などもこれから考えるんだと思うので、それをどうやって乗り越えたのか、教えていただきたいというのが1点でございます。
 2点目です。埼玉県に御質問させていただきたいと思います。埼玉県は本当にすばらしいのは、従来型の学力調査だけではなく非認知能力とか、それから、学習方略についても調査したことだと思うんです。これは実は中央教育審議会のデジタル学習基盤特別委員会でも話題になっている全国学調といった学力調査の枠組みを根本的に変えるということが、MEXCBT下でもできるというようなことをお示しいただいたかなと思っています。なぜ全国学調のようなものだけにとどまらず、独自の学力調査を導入したのか、その熱い思いをお聞きしたいというのが2点目でございます。
 3点目です。事務局にお伺いしたいと思います。先ほどダッシュボードのテンプレートのようなものを共有しようということをされていて、大変ありがたいと思いました。今、私たちも大学でも実はダッシュボードをつくり込むようにしているんですが、最近見えてきたのは、それ以外のデータで非常に意味のあるデータがあるということが分かってきました。先ほどの松阪市のようにBIツール、ビジネスインテリジェンスツールと生成AIを組み合わせると、あらかじめつくり込まないデータも分析できるという、つくり込むダッシュボードはもちろん仮説に基づいてあっていいけども、柔軟な分析とか気づいていない、仮説にすら上がっていない要素を見つけるという分析について、先ほどの説明で汎用的フローというキーワードが出ていたと思うんですが、その部分についてどういうことを具体的に考えていらっしゃるか教えていただければと思いました。
 
【松阪市】  まず、ネットワークの問題も含めて乗り越えていきたいのか、どう乗り越えたのかという御質問でした。松阪市は乗り越えていないです。本当にお恥ずかしながら、ネットワークの部分では大分後手を踏んでおりまして、実は校務支援関係もしっかりと整備できていない部分があります。近々、ゼロトラストも含めた部分を検討しているところですが、今回の事業におきましては、それぞれ学校から集約するのも大変でしたので、教育委員会として持っているデータに限り集約するということで、それをPower BIのようなものを使って見える化するというところにとどまっているところです。
 
【埼玉県】  埼玉県学調を導入した経緯という御質問かと思いますが、一言で申し上げるならば、旧来型のテストについて平均点主義と言われるようなところからの脱却を目指したということになるかと思います。私どもでは、よく徒競走の平均タイムの例などを用いながら話しています。あるクラスで50メートル走、7.5秒が平均というときに、Aさんはもともと7秒で走れたものの、2回目走ったら7.4秒でした。でも、Aさんは平均の7.5秒より早いので、今までだと問題ない子として、そのままよく走れたね、という見方で終わってしまっていたのではないかと考えられます。
 他方で、Bさんはもともと8.0秒だったけれど、頑張って2回目走ったら7.6秒になりました。それは平均よりは遅いかもしれないけれども、Bさんは頑張って伸ばしているよね、という見方ができます。そのように、他人と比較してではなく個々に着目して、その子がどれだけ伸ばしたかを認めていこうと、そういう理念で導入が始まったものと考えております。
 
【座長代理】  個々の伸びに着目した、ということでよく分かりました。あとは学校ごとに状況が違うのは配慮されているのか、準要保護が多い学校とそうじゃない学校とかというのも対応されているのか教えていただけますか。
 
【埼玉県】  この調査方法は各学校で同じですが、学校を対象とする質問調査において、就学援助の状況は確認しております。調査結果から、例えば就学援助の割合が高いような学校などは、どうしても学力的に厳しいといった状況なども見られます。そこで、埼玉県学調から出てきたデータを用いて、経済的に厳しい環境にある学校や、学力も厳しい学校に対しては、例えば、加配を手厚くつけるなど手厚く支援をするということもやっております。
 
【座長代理】  よく分かりました。Pupil Achievement Tracker、PATだけじゃなくてContextual Value Added、個々の学校の状況にも応じて支援するって本当にすばらしいと思いました。ありがとうございました。
 
【事務局】  御質問の件でございます。
 まず、本事業の内容だけ御説明させていただくと、今年度については、まずは自治体と一緒にデータ分析の仮説をつくり、ダッシュボードをつくって、それを共有するという仕組みをつくるというところから始めたところでございます。そういった意味で分析のやり方、あるいは仮説をつくる部分について、今回はそういう意味でアナログ的な形でやってまいりましたけれども、今後はもっと最新の技術、ご発言のあった生成AIとかを使って、より効率的に簡単にできるやり方といった御指摘かなと思ったんですけど、まだそこは正直申し上げて検討できていないところもございます。今日のお話も踏まえながら我々もより便利に、簡単にデジタルの力を使って取組ができるような検討を進めていきたいと思っております。
 
【委員】  少し先の話になりますが事務局に質問です。先ほどのダッシュボードのデータですが、埼玉県や松阪市のように、まずは自治体で校務からということで理解はしておるのですが、まだ、過渡期であるとはいえ、すばらしいお取組であると理解しました。
 お話の中に、まさに先ほどお話しいただいた自治体のデータ利活用というのは、保護者も含め児童生徒の理解を深めていく。そういう意味でまずは自治体からということで理解しているんですが、例えば、積極的にデータを活用したい学習者や保護者が出てきた場合、こちらのダッシュボードのデータというよりも学習者に起因する素データを提供するということを考えていらっしゃるんでしょうか。
 先ほど、まだまずは自治体で、ということでしたので、ちょっと先の質問になって恐縮なんですけれども、例えば自立的な学びの達成においてはリフレクションとか自己内省はとても重要だということは、皆さん、御理解だと思います。具体的には自身のデータを生成AIに分析させたり、または民間事業者に自身のデータを提供するというようなことも、先ほど言った汎用的フローの中に入るのかなと思うのですが、今回の話は、まずは自治体ということは重々理解している上で、学習者へ提供し始めるという議論も早々に起こってくるのかなと思いましたので、現状の御意見を伺えればと思っております。
 
【事務局】  そういう意味では繰り返しの説明になってしまう部分もあるかもしれませんが、この事業の中ではどちらかというとまず国でそういった自治体のダッシュボード作成を一緒に実施していくということで、個人情報も入るようなデータは我々は持ちづらいところもございますので、まずは統計情報レベルのデータを集めて、ダッシュボードをつくり、それを共有するという仕組みをまず始めているというところでございます。
 それとは別に、どちらかというと児童生徒、個々の子供たちに対してそのデータの活用を使って、指導したり改善を進めたりというところは非常に大事な点だと思っておりますので、これはこれでまたどちらかというとこの事業というよりもDX全体の取組の中でどういったことができるかということは検討する必要があると思っているところでございます。
 
【委員】  本当に児童生徒がその生成AIを活用して何ができるのかということを考えるシーンがパラレルで起こってくると思っております。その際に、データの素となるのはこういったデータになるのかなと思いましたので、こちらの検討も同時に行っていただけるとうれしく思います。
 
【委員】  この話は今の委員のお話をさらに敷衍するというか、質問というよりはコメントに近いのですが、今、チャットに共有した最初のリンクは新しい個人端末のお話で、今までのようにアプリやOSのコマンドやウェブサイトなどを人間が操作するのではなくて、人間がAIと話をすると、そのAIがアプリやOSやウェブサイトを操作してくれて、人間のニーズを満たしてくれるという種類の端末で、将来的に絶対このようになりますよね。つまりこの先にR2-D2とかドラえもんがいるわけですが、きっと5年以内にほぼこうなると思います。つまりスマホもPCも今のようなものではなくなって、もちろんGIGAスクール端末も今みたいなタブレットではなくなりますよね。各学習者個人の目の前にはその人専用のAIがいて、そのAIが例えばMEXCBTにアクセスして、試験問題を引っ張り出してくるみたいな、そういうこともやってくれるわけで、つまり学習eポータルもきっと意味をなさなくなって、AIが様々な教材と各学習者をつないでくれるというような未来がすぐそこに来ているんだと思います。それが20年などではなくて、5年や10年後ぐらいのタイミングでそういうことになるんだろうと思うんです。
 そうすると、先ほど委員の御質問にありました、個人にデータを渡して使わせるということがむしろ民間主導でどんどん動いていくのではないか。そういう各個人専属のAIを提供する事業者にとって、どうすればその付加価値を最大化できるかというと、個人の手元に本人のあらゆるデータを集めて、それをこのパーソナルAIにフル活用させるということです。ということはその事業者は、それによってあらゆる仲介業務をAIにやらせることができるわけで、仲介の対象はMEXCBTのような様々な教材とか、あるいはもっと一般に医療や宿泊などというサービス全てを含んで、そういうサービスや商品全てに関して個人との仲介をするという役割をAIが果たすようになると一番利益が出るわけで、その仲介業務プラスアルファできっとGDPの10%以上の産業になると思います。先ほどお送りしたリンクは個人端末と車の話ですが、そのほかの端末も姿を変えていって、そういうパーソナルAIの時代になるというようなことは、生成AIが出てきてからより一層近づいてきているんだと思います。
 このように考えると、そもそもGIGAスクールの設計の仕方や、学習eポータルはどうあるべきか、あとどうやってそのデータを集めるのかというようなことを早いところ再設計する必要があるのではないかという気がしています。恐らく基本的にこのAIを中心として各個人のところにあらゆるデータが集まって、そうして名寄せされたデータを学校などが集めて分析して、ダッシュボードを運営するというような方向になるのが現実的ではないかと思います。
 
【事務局】  技術の発展はすごくスピード速く進んでいるということはそのとおりでございますし、御指摘のようにAIがこれからどう介在してくるかということもあるというのは、改めて意を強くしたところでございます。具体的にどのような接続の仕方あるいはデータの渡し方というところにつきましては、これからの課題ではありますけれども、今日の御意見も踏まえまして、また考えてまいりたいと思います。
 
【委員】  それでついでに申し上げますと、AIが様々な教材との仲介をしてくれるというところにはもちろん学習者本人がどこまで習得しているか、どこが不得意かみたいなことをAIが把握していて、ここが足りないからもう少し頑張りなさいというような、ある種の学習指導までAIがやってくれるというのは十分技術的にもフィージブルですので、これもやはり5年以内には実現すると思います。ということで、教育そのもの再設計が必要なのではないかと考えています。
 
【委員】  今の委員の発言がかなり大きな問題提起だったと思いますので、今の世界の動向も含めて少しお答えして、最後に松阪市にごく簡単な質問をしたいと思います。
 今の委員が言及された動きというのは実は世界でもかなりはっきりしてきていて、問題なのは、AIが仲介してパーソナルデータとしてどういうものを集めて、どういうものを個人に活用させるかという点が、基本的にはマーケティングの原理で動いてしまっているということです。というのは学習の質というものは非常に見極めにくくて、短期的にしか捉えられず、長期的にどういう支援を行うとどういう効果が出てくるかというところが視野に入り難しいからです。だから、短期的に成果が出て、それだけ売れるものが顧客のニーズに合っているように見えてしまうことになります。そこで、民間主導の生成AIを使った支援が、このマーケティングの原理で基本的に動いてしまっていくときに、例えば今回松阪市さんがやったような結果を基にして、クラスの中でどういうアクションをかけていくと子供たちの学びの質とウェルビーイング等が上がっていくかということの原理をはっきりさせていくというのが、今後の公教育の在り方を考えていくときに非常に重要じゃないかなと思いました。
 その点から少し難しい質問を松阪市にしてしまうのですけれども、今回あれだけデータを集められて、しっかり分析されたことによって、例えばクラスの雰囲気がよいほうが不登校率が少なくなるとか、先生が学校の中での先生の関係性というのが不登校率と関係ありそう、学力と関係ありそうという相関関係が見えてきたというお話の一方で、それはもしかするとデータを分析しなくてもわかることかという気もします。こういうデータ分析から、直感としていた以上に、こんなところが新しくはっきり見えてきて、実際の具体的な打ち手につながっていくと、先ほどの委員がお話ししたようなAIがやるのではないサイクルで、公教育が集団を預かって子供たちのウェルビーイングと学力の質を上げていくときに何ができるかという話のヒントになり、データ利活用に意味があるというサイクルが生まれてくるのではないかと思います。
 その点で、どんなことを今回発見されて、どういうアクションにつなげていくことになったかというのを松阪市より教えていただければと思います。
 
【松阪市】  おっしゃるように、実は今回は自分たちが予想していたとおりの結果、つまりは予想を超えなかったという部分が大半でした。そして、まずは教育委員会としてどう施策に役立てるかという視点でしたので、これをまた現場の視点で、現場の中での活用にというところは次のステップかもしれないです。また、今回、例えばQ-Uがメインでしたけども、Q-Uはそもそも現場でやっていたのを引き上げて、松阪市全体として初めてやったということには成果があったかなと思います。
 少し言葉は違うかもしれないですが、一番の成果と言えば、逆に予想外だった結果が出たというところです。どうしてそうなったのか、恐らく別の要因がもっと関わってくるんだろうなという新たな視点がありましたので、予想外の部分が一つの財産になったことは今回の発見の一つでございます。
 
【委員】 「Q-Uを高くしようと、学力を高くしたら不登校率が減る」と言われても現場の先生はすぐに学力を高くするのは難しいのでどうしようか、となってしまうかもしれないところで、実はその学校の先生方の雰囲気、管理職の先生が教職員の集団のウェルビーイングのクオリティーを上げていくというのが、間接的に子供たちに波及するかもしれないというような、そういうメカニズムを見せていけると良いのではないか。先生たちが「それならやれる」ということもわかってくると、データを使っていく意味がもっと伝わるのではないかと感じました。
 
【委員】  2点あります。1点目は、教育データ利活用をこれまで研究してきて一つ大事なのは、様々なデータを使うということで主にMEXCBTやテストのデータが使われているような気がしますけども、デジタル教科書や出席のデータなど、様々なデータを使う、あるいは学校の外の様々なツールを使った家庭の学習のデータを使うといったことができると良いと思いました。
 それから、授業の中でも毎回の授業でこういうデータを先生が使って教育の改善をしていくというのが見えたらもっと良いと思いました。というのは、今回の事例はとても良かったんですけども、今あるデータを分析したというところで、それをフィードバックして良くなったか悪くなったかというところまではまだまだできていないような気がします。それを毎日の授業で使っていくという普段使いができるようにしていくことこそが大事かなという気がしました。
 2点目は、こういった取組が自治体ごとに始まっていくと、自治体の格差というのも出てくるような気がしまして、初等中等教育をターゲットにした場合、義務教育ですから、共通のものを提供するといいますか、そのところもある程度必要になってくるのではないかと思います。デジタル教科書も全国でという話になっていますように、ダッシュボードもある程度のところは国が提供するという話にもなって良いのではないかと。これは検討しないといけないと思いますが、何かそういうところでもし方針とかお考えありましたら教えていただければと思います。
 
【事務局】  ダッシュボードも含めまして、共通的なものを国として提供していくべきではないかというようなことをどう考えますか、という御質問かと受け取りました。
 今回御紹介しました事業につきましても、ダッシュボードそのものというのとは少し違うかもしれないんですが、今回の松阪市でやっていただいたこういった分析について、ほかの自治体でも使っていただけるような形で共有をしていきたいと思っております。今年はまだ3自治体の取組を15自治体で活用していただくというぐらいの規模でスタートしておりますけれど、これをもう少し多くの自治体で共有できるフォーマットのようなものを増やしていき、また、ここにアクセスしていただける自治体の数を増やしていくという形で、共通化していくということをまずは取り組んでいきたいと思っております。
 その上で、もし将来的にこういった取組を進めていって何か共通でもっと共通化すべきものがあるのではないかというのが出てきた場合には、また次の方法を考えていけたらなと思っております。現時点ではこのような考え方でございます。
 
【座長】  埼玉県の学力調査の取組は全国的にも大変有名ですけども、MEXCBTをプラットフォームとしてここまで取り組むことができるというのは、ほかの自治体から見ても非常に重要な情報かと思います。また、後半のデータ分析の件もダッシュボードの共有というよりも、ダッシュボードをつくるときにどんなことが悩んだか、どんなことがもっと便利になりそうなのになっていなかったかといった苦労や工夫の共有のようなことまでいくことが大事かなと思っていますし、委員から発言があったように、普段使いにしていくためにあと何が必要かというようなデータを集めて、ある時点のスナップショットを克明に可視化するというのは、これはこれで意味がありますけど、それを受けてどうするかというところが一周回るような話です。
 そういうのが大事かなと思いますし、あとはまた、委員から発言のあったAIの件です。これから技術がますます発展しますから、そういうものをどうやって使っていけば良いかということはしっかりと考えていかなくてはならないと思います。しかし、実はその前に、ネットワーク分離していてデータが集められない、データの形式がみんな違って困っているなど、もう何年も前からこの会議では議論してきたことが、なかなか様々なことで滞っているところがあるということが取り上げられたのかなと思っております。
 

議事3.教育データの利活用に係る留意事項について

※資料3「「教育データの利活用に係る留意事項」の検討状況について」について事務局より説明を行った。
 

議事4. 教育データ利活用に向けた実効的な方策について

※議事について座長から説明があった後、資料4「教育データ利活用に向けた実効的な方策について」について事務局より説明を行い、委員より意見、質問が出された。
 
【座長】  議題4は教育データ利活用に向けた実効的な方策という形になります。これは少し説明をしておきますが、本有識者会議は令和2年6月にスタートしており、令和3年3月に教育データの利活用に係る論点整理という中間まとめを一度出しています。
 それから、令和4年4月から2期目に入っていまして、教育データ標準をバージョンアップしているほか、教育データの利活用に係る留意事項をつくって公表、パブリックコメントなど様々なことをしています。専門的な御議論をそちらではしていただいているというところですが、この2期目も令和6年3月で終了になります。
 先ほどから様々な御意見が出ているように技術革新も激しいですし、いよいよ自治体ごとに様々なお取組も進んできている段階ですので、次の会議体をどうするかというのは文部科学省内で今様々御検討されているところかと聞いております。そういう観点で委員としては、この任期中の3月までに、これからこういうことをしておいたほうが良いのではないかというようなことを、それほど長期的ではなく、かといって今日明日でできることでもないこの中期的なサイズが難しいですが、例えば一、二年の間にこういう予算がついて、こういうことがあると良いのではないか、自治体では今こういうことが困っているから、ここに突破口が欲しいといった意見を今回の会議である程度いただいて、それをまた3月に事務局で整理して御提示して、またさらに議論するという形で、この実効的な方策という言い方で整理、まとめをしてまいれればと思うところでございます。
 
(意見)
 
【座長】  最初に私から少し申し上げておきますが、私ども、この会議体が始まって以来、考え方がそんなに変わっているわけではありませんが、個別の様々な進捗がありまして、それによって少し強弱がついてきているようなところはあるかと思っております。残りのあと1回の会議までの間で、次にこういうことをやったほうが良いということをある程度整理したいと思っておりますので、ぜひ自治体、研究者の様々な専門の視点から、御意見をいただければと思うところでございます。
 
【委員】  本市としてこれまで取組を進めてきたうえで課題と感じていることは、2点ございます。まず1点目は有用性の腹落ちです。これは当初から繰り返し重要とお伝えしていますが、データ利活用の有用性について、現場の教師や教育委員会事務局職員に、いかに腹落ちしてもらうかということです。
 そのためには、「実際にやってみる」というフェーズが必要なため、即時的かつ広範に渡って推進することは難しく、この点が原因で、自治体間、学校間で格差ができてしまうことはある程度仕方がないと思っています。本市では、教育委員会のみならず、市長部局が有する様々なデータを活用したダッシュボードが今年度構築できたところです。多くの学校は積極的に活用を始めていますが、一方で、なかなか活用が進まない学校も一部存在しています。
 次に2点目は、データ利活用の基盤整備です。これができていないとデータ利活用の有用性を体感しようと思っても不可能です。具体的に申しますと、ゼロトラストの考え方に基づいたシステム面、ネットワークやセキュリティ面の標準化や充実などが必要です。本市においては今年度から、校務用と学習用に分断されていたネットワークを一元化し、教師の端末をこれまでの2台から1人1台にすることで、データ利活用の日常的な活用が大変しやすくなりました。さらに、システム面だけ、などという部分最適な仕組みではなく、教師や学校、教育委員会の業務フローなどを含めて全体最適な仕組みを検討しながら教育DXを推し進めることで、教師が教育データを利活用するコスト面はもちろん、心理面のハードルも下げることができると考えています。
 それらを整備するためには、国の主導が必要であり、基礎自治体レベルではなく、都道府県教育委員会がイニシアチブを取ることが重要で、トップダウンで制度も含めて整備していただきたいと思っています。
また、こちらも以前から申し上げていることで、基盤整備にも含まれると思いますが、教育データの標準化は早めに進めていただけるとありがたいと思います。ダッシュボード等、教育データの利活用のためのシステムを全国展開していくために必要になったということで、後になって標準化された教育データの仕様等が決定すると、先行自治体がシステムの大幅な改修が必要になり、不利益を被ることになりますので、くれぐれもよろしくお願いしたいと思います。
そして、予算がないところに活動は生まれませんので、こういった活動を財政面でしっかりと支援していただきたいと思います。本市でこれまで構築したデータベースと活用のためのダッシュボードも、今年度まではデジタル庁やこども家庭庁の実証事業により新たな活用や継続的な改善を続けることができていますが、来年度以降の予算確保についてはっきりとした見通しが立っていません。この実証事業の参加自治体に教育委員会主体のところはほとんどなく、そういった点も踏まえて、文部科学省が主体で、財政面の優先度を高めていただけたらと思います。
 最後に、GIGAスクール構想の第2期、つまりセカンドギガに向けて、この会議の中間整理でもまとめてきたような教育データ利活用の意義や目的を改めて確認し、広く教育関係者に発信していくことを引き続きお願いしたいと思います。
 
【委員】  2年前につくば市が細々と始めたことから考えると、今日の御発表を聞いてすごくデータ利活用の世界が開けてきたなという実感を持っているところです。それについては、本当に事務局努力、様々な発信があってからこそなのかなと思っております。
 ただ、その上で私も3点、ぜひ今後について思うところがありますので、お伝えさせてください。今日の委員のご発言から、さすが研究者の方はこのようにデータを見るんだなというような御示唆がありましたが、学校現場としてはデータは持っているんです。実はアクセスログがあったり、スタディ・ログがあったりするんですけれども、そのデータが何を示しているのか、実はこのデータからこんなことも言えるのではないかとかというような、研究者による示唆のある根拠となるような議論というのをどこかで何か得られたり、現場に簡単な御示唆が得られるようなアプローチがあると、このデータはそういうことを言っているんだなとデータの価値に気づくことができるような気がしました。
 今日のアドバイスいただけるような場面があると、現場としても自治体としても、「だからデータ利活用が必要なんだ、なので予算を取りにいこう」という気持ちになるような気がしておりました。
 2点目です。先ほど資料4で、事務局が説明に注釈をつけていましたが、実はこの会議について、システム構築について語られる場面だったり、逆に学校現場の先生がデータにどのような有用性を感じるかと語ったりと、非常に多岐にわたるな視点が入っている会議だと思っていました。なので、もし可能であればシステム構築、いわゆるビッグデータのようなものを見通している議論と、学校現場で始める小さな取組の議論というものを少し分けて発信していくと、学校の先生に届くメッセージもクリアになっていくのかなと思っています。
 非常に難しいシステムのところの話だと、自治体にとっては必要なのですが、学校の先生たちはどうしても難しさというものが見えてきてしまって、小さなデータの意味するもの、それが学校教育にどう良い影響を与えるのかというところがどうしても見えなくなってしまう、キーワードばかり見えてしまうという思いがあります。そのあたりの切り分けができると良いのではないかと感じたところです。
 最後に、先ほど委員がおっしゃられていたように、データ利活用にはとても予算がかかります。例えばダッシュボードの構築に当たっては、協賛いただく企業のAPI仕様の変更やシステム開発というところに、企業にも費用がかかります。また、自治体がダッシュボードの構築をするときの初期投資費用、また、それをランニングコストとして持ち続けることの費用、データを全員に見せるのか、子供にまでに見せるのか、一部で良いのかというデータを見るためのライセンスにも、また費用がかかってきます。
 それをやるには本当にどんな効果があるのかを示さないと、どうしても財政の予算を取りにいくことが難しくなっていますので、これから、なかなか予算が取りにくいというのもありますので、ぜひその辺りの御支援と予算化に向けた、今度恒常的な取組ができるようなサポートをしていただけるとありがたいなと思います。
 
【委員】  今後一、二年の方策ということで、私としては協調領域をどのように民間で自走させていくかということにフォーカスしても良いのではないかと思っております。例えば今日の御発表でもいろいろなデータ利活用の事例、あるいはその知見というのが出ています。それから、例えば研究などでもそういったものが出ています。そういったものを各自治体や学校の先生方に、こういうデータを集めるとこういう効果があるということをカタログとして見せていくというような取組をしてはいかがでしょうか、ということを提案します。
 先ほどからもお話ありましたように、例えばこういうふうにデータを切るとこういうことが見えるんだということが分かると実際の取組にも弾みがつくと思いますし、また、そのためにはこういうふうにデータを標準化していかないと実は集められないという、その標準化というのが効果を生み出すための要件にもなると思います。そういったものをまとめていくことで一つ良いことがあるし、それから、今まで例えば国などの公的なお金を使って展開していただいた事業のノウハウというのは様々なほかの方々にも横展開する価値があると思いますので、そういった情報をカタログ化して提供するということをしてはいかがでしょうかという御提案でした。
 
【委員】  今日の発表の中身では、データ利活用の目的をはっきりさせることが大事だということが明確になりましたので、非常に参考になりました。
2点意見があります。1点目は、都道府県教育委員会からの立場からです。自治体を超えてデータを集めたり、複数のデータを突き合わせるような作業を行っていると、それぞれの自治体での頑張りや特徴がよく見えて、それを関連づけてお互いに共有することを完璧にやりきるということは、自治体間では非常に難しいと感じます。やはりこういう自治体を超えて何かを行うときは、都道府県の教育委員会がしっかりリードして、自治体をつなぐ役割を果たしながら、できるだけ広い範囲で、場合によっては都道府県教育委員会間でより積極的につながって、情報交換しながらデータを見ていかないと、小さな規模ですと、一つ一つの事例が例外も多いですし、そもそもその取組のよさが、タイプや規模によって違いますので、たくさんの自治体の中から自分たちに近いところを見る、という視点もすごく大事だと思います。国が何かを示す場合には、都道府県のリードというところをより一層明確にしていってもいいのではないかと感じています。
 2点目は、みなさまのお話にもありましたとおり、教育データを活用している中で先生たちが何に気づいて、何でモチベーションが上がって子供たちに良い影響を与えていくのかということも、少しずつではありますが見えてきています。そのときに、意見や思いが違う場合には、先生たちはお互いに「これは子供たちのためだ」という言い方をして対立することがあります。そういうときには、どちらが正しい、良いということではなく、そもそもの原点に返って、例えば、今の通知表が、本来は子供たちの学びを促進して励ましたいものであったのが、一部ではありますけれど、どちらかといえばできていないところの指摘になっていて、子供にとって通知表を見るのが嫌だ、という傾向に陥ってきているという流れもあったりしますから、本来、教育データがより良いものとして共有、活用していたのが、何かマイナスの点を探したり暴くものとなったために、肝心の効果的なデータもろともつながらないという可能性も出てくるということが心配されます。そういう点に関しても、やはり常に一つの突出した外れ値のデータ探しということよりも、できるだけ俯瞰的に広く探索的に全体を見るという視点を大事にしながら、しっかり目的を明確にしてデータを扱っていきましょうという点を強調しておいても良いのではないかと思いました。
 
【委員】  先ほど技術が非常に進歩しているというお話がございましたが、授業の形も大分GIGAスクール構想で変わってきておりますので、技術も授業も変わってきている中で、標準化を考えながらこの一、二年で、効果の得るようなデータの分析をどう考えるかというのは非常に難しい問いだなと感じています。
 授業や学習指導、校務等、教員養成研修等で、3観点で少しお話しさせていただきますと、授業は、先ほど申し上げたとおり非常に形が変わっていると感じていて、個別最適な学びと協働的な学びが行き着いた先の授業の安定を拝見しますと、不登校がなくなるとは言わないまでも、不登校に対する考え方が非常に変わってきています。ということはつまり不登校の予兆を見つけるというデータの探し方というのは従来の一斉指導だから、そういう調べ方をしていたものの、一斉指導がなくなってしまったときに、もう根底から考え方が変わってくる可能性があるということです。また、ドリル、AIドリルのうち最新の学習観に基づいたものを勝手に第3世代と言っていますが、最新の世代のものではかなり子供の習得状況が確認できるので、あえてそこを試験やCBTなどで習得状況を確認する必要があるのかというような問いすら、もう起こっていると思っています。
 そういう中で、このデータをどのように考えていくかということですが、こうした授業の変化は、コンテンツや教材を除けば、GIGAスクール構想の標準ツールで、無償で提供されているツールをフル活用している範囲で起こっている現象であるという感触を得ています。この無償で得られているツールの中でも、見えてはいないものの実は相当ログが取れていて、このログを可視化していくということがあり得るのではないかと思います。
 もちろん、これを有償版にした場合にはもっと複雑なログが取れているとは思いますが、そのことができるのではないかと思います。場合によっては、全国共通のシステムを標準化してつくっていくという考え方もありますが、仮置きで各GIGAスクール構想の標準システム、OSと言ったら良いのかクラウドシステムと言ったら良いのか、その範囲の中で標準的にそれらをダッシュボード化したりするツールもございますので、ある程度そのプログラムのようなものをつくってしまい、積極的な自治体にはそれらを提供してもらって、そういうもので仮にダッシュボードみたいなものをつくって、ブラッシュアップしていって良いものを全国標準の、どんな標準システムでも動くようなものにしていくという考え方があるのではないかと感じました。
 もう一つ、校務も同様で、校務支援システムだけではなくて汎用的なツールを使っていこう、GIGAスクール構想の標準システムを使っていこうということが一つの流れで、これも同時にログが取れていると、先ほどと同じ論理が成り立つと思っております。先日、校務DX調査の結果が発表されました。これはEduSurveyを使って非常にスムーズに調査ができて、大変喜ばしいことだと思うんですけども、その質問の多くはGIGAスクール構想の標準の環境でできているかどうかを確認するような問いが多かったわけで、もしもこれがもうログとして取れるようになっていて、自治体で常に確認できるようになっていれば、場合によってはそれを目指して校務のDX化を各自治体が取り組む指標として常に使えるような、そういうような可視化するようなものにもなり得たんのではないかと思っています。
 最後に、教員養成研修あるいは教員の採用のことに関わっての意見です。昨今、教員の研修の仕組みがすごく変わっていて、教員研修のシステムがつくられていたりしますが、そこでもログが取れているはずで、このログをもう少し資格認証として使っていくというようなこと以外に、先生たちが楽しく勉強していけるような、研修していくようなことなどに使えるのではないか、あるいは教員養成CBTと言いまして、北海道教育大学とかがつくられているかもしれませんが、試験対策用のある意味基礎的な知識技能をCBTで確認するようなものを独自でつくっていたり、動画を使った確認テストとか様々なものが今できていますので、こういう場面でも積極的にMEXCBTなど使っていただいて、標準的にデータを集めて統合していくというような考え方もあるのではないかと思っております。
 
【委員】  先ほど委員もおっしゃっていましたが、実際にやってみるというところが大事だというところで、事務局からも紹介があったように標準モデル、窓口やデータレイクがあってといったモデルはあるものの、実際それが全て実現できたものというのがなかなか世の中にはなくて、それを一から各自治体でつくるとなるととても大変だというところがあるかと思います。そういったところ、やはり標準的な、最低限のものでもいいので、これを使えばその標準モデルにのっとって簡単にデータ利活用を始めることができるというものがあれば良いのではないかと思いました。そういったものには、これからの教育データの標準化といったところはもういち早く乗せていって、全国に広げていくということができれば良いのではないかと思いました。
 また、それをするためにはやはり企業や研究者とも連携をしていくという観点で言うと、本会議のような委員会があてはまるかもしれませんが少し時間も足りませんので、そういう連携ができるようなコンソーシアムといったことがもっとできたら良いのではないかと思いました。もちろんその中では、当然事例の共有や教員の先生方の研修といったことも必要になってくるのかなと思いました。
 
【座長代理】  私のほうからこの6年を見通した上で最後にお話ししたいと思います。
 座長代理の立場で見せていただいていて、今回の会議のまとめで気をつけていただきたいなと思ったのは、今回は重点的に開発が遅れていた教育委員会ダッシュボードの話が中心になってしまっていますが、本来これを始めたときは子供一人一人のウェルビーイングのためにデータを活用しようということだったと思います。
 したがって、今回あまり中心に出てこなかった一人一人の子供の児童ダッシュボードだとか、それから学校管理職も読める学校ダッシュボードだとか、先生方や管理職が毎朝見て、この子にこういう声かけをしなくては、この辺を少し注意しなくてはなど、イングランドはデータを見ることから毎朝始まると言っていましたので、そういうものになるといいなと思っています。
 子供一人のウェルビーイングのために、全部をつなげて考えるような報告書にぜひしていただければありがたいと思いました。
 
【座長】  ありがとうございました。大変貴重な御意見をいただいたと思います。大切な視点をいただいたと思いますので、これをまた事務局でまとめていただきまして、3月、次回の会議で御提供したいと思います。
 私も一言申し上げますと、先ほど資料4においてシステム構成のイメージの図がありましたが、これを一から全部各自治体がつくると、やってみないといけない、分からないことがあるからまずやってみたいものの、全部つくらないとできないとなると、これはコスト的にまず無理があるし、負担が大きいというわけで、そういう意味では委員もおっしゃったような何か標準的な簡単なシンプルなパッケージが国から提供されて、それを使って試すことができるということに何らかの応援の予算がつくようなこともあっても良いのかなと感じました。
 先んじてやっていただいている自治体の取組をもっと情報共有していくことも、また大事なことかなと思います。もう時間を過ぎてしまって大変申し訳ございませんでした。今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。

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