教育データの利活用に関する有識者会議(第18回)議事要旨

1.日時

令和5年7月19日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データの利活用の推進について
  2. 中央教育審議会の最近の動向について
  3. その他

4.出席者

委員

堀田座長、藤村座長代理、石井委員、緒方委員、小﨑委員、佐藤委員、白水委員、高橋委員、田村委員、戸ヶ﨑委員、中村委員、橋田委員、渡邉委員

文部科学省

藤江総合教育政策局長、里見官房審議官、森友社会教育振興総括官、藤原教育DX推進室長、野口教育DX推進室室長補佐、稲葉教育DX推進室室長補佐 

オブザーバー

一般社団法人ICT CONNECT 21、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、デジタル庁 、総務省、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)、一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの利活用の推進について

※資料1-1「MEXCBT・EduSurveyの現状について」について事務局、資料1-2「学習eポータル標準化推進事業に関する報告」について一般社団法人ICT CONNECT 21、資料1-3「教育データの効果的な分析活用事業に関する報告」についてみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、資料1-4「令和5年度の教育データ利活用に関する取組について」について事務局よりそれぞれ説明を行い、委員から質問が出された。

(質問)
  
【委員】  資料1-3 19ページの中にある、目的設定、仮説設定、分析設計、データ収集という辺りまで、まだデータ分析して得られた結果が本当に役に立つかどうか分かっていない状態でやっているわけですよね。なので、そこは研究だと思うのですが、現場に導入するときの例題として挙がっていたものはいずれも研究としてやっていることと理解していいですか。
 
【みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社】  おっしゃるとおりで、教育現場の方々において強烈なインセンティブがあるような、実績があるアプローチといったところは、これからつくり上げていくものなのかなというふうに認識しておりますので、資料1-3 19ページの図ももしかすると少しミスリードかもしれませんが、目的設定をしっかりやった上で分析まで行ったとしても、結局目的設定に戻ってブラッシュアップしていくというサイクルは、一定あるかなとは思っております。
 
【委員】  そういうことを何回かやって、仮説検証を回して、モデルができて、これで役に立つということが確認されたら、実際に運用するというフェーズに移っていくんだと思うんですけど、その前にまずは研究としてしっかり説明して、本人同意を取るというようなフェーズから始まるんだと思うんです。なので、そういうものだということを、現場での教育データの使い方に関するガイドラインとかにも書けるといいなという気がしました。
 特に資料1-3 13ページについてはまだ、この分析をしてどう役に立つのか分からないとのことだったので、いきなりこれをやることはできないと思うんです。だからちゃんとこういうことは研究としてやりましょう、その上で役に立つことが分かったら実際の運用に移行しましょうというような、一般的なユースケースとして、こういう事例をガイドラインに入れられるといいような気がしました。
 
【座長】  資料1-3 19ページの件は、非常に重要な御指摘をいただいたかと思います。当然ながら実用のフェーズでは、目的が明確で、仮説が明確で、設計をちゃんとして行うべきだというのはそのとおりですが、現状はまだ実用がほぼされていない状況では、探索的にやらざるを得ないところがあって、そのことを研究としてやっているというふうにご指摘いただいたのだと思います。
 現在実践例として出てきているものの多くも、取りあえずまずこういうことが出るかもしれないのでやってみました、そうしたらうまく結果が出てきたので、これは今後こういうふうに多くの自治体で進めていってはどうでしょうかという提案で、今出てきている部分があるのかなと思います。
 ですから、これが全部はっきりしていないとデータ分析をやってはならないみたいに捉えないように、研究としてもちろん本人同意とかは必要ですが、研究的なフェーズというのをまだしばらくは大事にする必要があるかなというふうに、今感じております。
 

議事2.中央教育審議会の最近の動向について

※資料2「中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会について」について事務局より説明を行い、座長から補足があった。
 
【座長】  デジタル学習基盤特別委員会というのは、中教審の中にできまして、この中教審ではこれから、次の学習指導要領に向けていろんな諮問や答申の検討がされていきます。そのときに前提となるべきデジタル学習基盤というのが、このGIGAスクール構想で大きく変わりましたので、今後これをどのように維持していくか、あるいは教育データの利活用促進にはどのような体制が必要か、あるいは個別に検討されてきたデジタル教科書やデジタル教材というものと、教育データの利活用とフィードバックについて、総合的に検討していこうという委員会でございまして、この委員会では、本有識者会議は別に、本有識者会議がこの委員会の下にあるわけではありませんけれども、本有識者会議で検討した事項も必要に応じてきちんと御報告さしあげて、検討いただくことにしていきたいということでございます。
 

※議事全体を通じて、委員から意見が出された。 

(意見)
 
【委員】  まず、資料1-4について事務局から説明があったように、専門的、技術的な内容については、今後はワーキンググループ等で議論して、本有識者会議そのものでは大きな視点で、データの利活用の目指すものについて共通認識を図る場にできたらよいのではないかと感じました。
 本有識者会議が始まった当初から申し上げておりますが、「教育データの利活用の意義や目的について、学校現場を含めた教育関係者で広く共通認識できるように明文化していく必要がある」と考えております。その目的の達成のために、国としてどのような全体像を構想するのかという点、そして全国の教育委員会や学校が腹落ちして浸透していくために、具体的にどのように展開していくかという点は、引き続きこの会議の重要な論点になっていくと感じています。
 デジタル庁の「教育データ利活用ロードマップ」においては、教育のデジタル化のミッションを、「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」と掲げています。このミッションを上位概念として位置づけて、「教育データ利活用の目指すべき姿(to be)」として個別のメリットが示されています。
 そこで意見ですが、本有識者会議では、そのブリッジとなる中間程度の抽象度での記述があるといいと思っています。その記述の中に、GIGAスクール構想の第2フェーズ、いわゆる「Next GIGA」においての端末の整備だけではなく、それを使うデジタル教材等の整備や、そこで取得したデータをどういうふうに活用していくかの検討も含めて、国が構想する全体像の中にそれらをどう位置づけていくのかというイメージが広く教育関係者に見えるようにしていく必要があると考えています。
 また今後を含めて、本有識者会議で議論される内容は、中教審のデジタル学習基盤特別委員会ともよく連携しながら、学習指導要領や教育課程を含めたメルクマールの中で、共通理解を図っていただきたいと思います。
 次に資料1-2についてです。これはあくまでも現時点の話として捉えていただきたいのですが、学習eポータルだからこそできることや、将来的に実現したらぜひ使ってみたいような機能がまだまだ少なく、正直なところ多くの学校現場では、この学習eポータルを利用する意味があまり感じられていないのが現状かと思います。
 全国学調とか埼玉県学力・学習状況調査の実施を、このMEXCBTを利用したCBTで行ったわけですが、現状の課題として、学習eポータルを挟むために、学力調査実施に間に合うようなアカウントの年度更新作業などを含めて、担当者の負担が非常に大きかったことが挙げられています。2次元コード等で、MEXCBTに直接アクセスすることも可能だと認識しています。
 今後本気でこの学習eポータルを国のシステムとして位置づけていくのであれば、今申し上げたように、学習eポータルを教育データ利活用の全体像の中に、どのような目的で位置づけられるかという検討と、それに見合った機能、そしてほかのシステムとの連携等も含めた導入のメリットが生まれるような整備を早急に進めていくべきではないかなと思います。
 学習eポータル標準化推進事業の報告内容にもよりますが、事業者によって利用可能なサービスが異なるのも、ある意味自治体にとっては動きづらい要因なので、標準化の基準は、ぜひ今後しっかりと検討していただく必要があると強く思います。
 次に、資料1-3については、非常に参考になる取りまとめだと思いました。データ利活用のステップにおける目的設定の重要性については、大いに共感するところで、整理していただいたことをありがたく思っています。
 ただ、基礎自治体の視点で申し上げていきますと、やはりデータの収集のための環境が整備されているかどうかで、着手に向けたある種のハードルの高さが大きく変わってきます。実践のためには、まずこの環境整備を進めることも考えていく必要があると思います。また教師や学校管理職が主体になるケースについては、その前提として、目的設定がしっかりと自分事になっている必要があることも、改めて認識したほうがよいと思います。
 さらに申し上げますと、この事業の目的についても確認したいと思います。分析活用のイメージをまとめて、これを参照して、あとは各自治体がそれぞれ取り組んでください、では、データ利活用で不可欠な、線の取組や自治体間の横のつながりはもちろんのこと、点の広がりさえも期待できなくなってしまうのではないかと思います。
 本市においても、昨年度はデジタル庁、今年度はこども家庭庁の「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」において、教育委員会だけではなく市長部局にも分散している、一人一人の子供に関わるデータについて、「教育総合データベース」を構築しています。それを基にして、不登校やいじめ、さらには虐待、ヤングケアラー等に対して、子供たちの発する小さなSOSや、変化を事前にキャッチするための分析を行おうとしていますが、n、いわゆる母集団や分子の数が少ないためにデータの信頼度が弱いことが、やればやるほど悩みの種になっています。
 このようなデータ利活用の取組を全国の学校現場に広めていくという点では、単独で様々な取組を進めていても、それが都道府県や市区町村、また市区町村間でのつながりや一貫性がなく進められていることが、どうしてもネックになっています。これは国のトップダウンでもなかなか進みませんし、かといって自治体任せにされても進みません。やはり意欲ある自治体がタッグを組んでいく横連携の仕組みを、ぜひ国が主導して形作っていってほしいと思います。
 最後に、大変細かいことで恐縮ですが、文言表示等で少し気になっていることがあります。経験と勘に「偏重した」や、客観的指標を「以て」検討という、いわゆるエビデンスベースが採用されていますが、やはり大事なことはエビデンスインフォームドです。さらには「学校運営」という言葉と「学校経営」という言葉が混在しているのと、「教員」と「教師」という言葉の区別、さらには基礎自治体の主体が学級経営の分類となっているなど、このようなところも改めて御検討ください。
 
【座長代理】  大きく2点申し上げたいと思います。
 1点目は、教育データ利活用の目的と方向性に関する話です。
 まずデータ利活用が実用段階に入ってきて、様々な賛否両論が渦巻いている、そんな状況かと思います。そこでデータ利活用の在り方や実施の可否について判断する際に、やはり原点に立ち戻って考えたいのです。つまり私たちは子供たち一人一人のウェルビーイングとか、それから教職員のウェルビーイングを目指すんだ、そのために、個人情報、プライバシー、情報セキュリティ等に十二分に配慮しながらも、積極的にこのデータを利活用して、適切な運用をしていくんだと、そういった考え方について、ぜひ現場でも、そして行政でも共通理解できたらいいなと考えております。
 そのような方向性の下で、実は子供たちのウェルビーイングの実現に関しては、学習系の諸システムなどを通じて随分進んできましたし、教育委員会や学校のスクールマネジメントという部分については進んでまいりましたけれども、教職員のウェルビーイングの実現に関しては遅れているのではないかという危機感を持っています。現在教員という仕事がブラックな仕事で、教員希望者が減り、随分困っているという話も聞きます。
 そのためには、働き方改革に資することはもちろんですけれども、教員が様々なデータを基にしてリコメンドを受けながら、よりよい教育を子供たちに実施できるような、そういう教員支援システムというものの研究開発みたいなものも、ぜひ積極的に国が関与しながら進めていただきたいというふうに考えております。
 2点目は、実態を踏まえた実現方策に関することです。
 その中の1つ目は、子供のタブレット端末は1人1台あるけれども、実際に教員にはない、教員の端末はデスクトップだという自治体がまだあるみたいなことを聞いております。そこでぜひ教員のタブレット端末も整備し、データの利活用がしやすくしていただきたいと思います。また2つ目としては、少なくとも次回のNext GIGAの端末について、子供たちの分も、やはりあと1度だけは全額国費で整備していただきたいというふうに考えています。
 実は各基礎自治体の中には、各自治体任せでは無理ですとか、ICTの活用に反対ですというような自治体まであって、子供たちがどこに住んでいるかによって受けられる教育に大きな差が出てはいけないと考えていますので、以上2点、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それから3点目ですけれども、学習eポータルで全てのツールズが連携して、シングルサインオンできるだけではなくて、データの利活用ができる、データ連携できるという、そこを目指していたのに、実は学習eポータル事業者を通して調達したツールズはちゃんと連携するけれども、それ以外の業者から調達したツールについては、リンクを貼るだけというような実態があることを、教育委員会側から多々聞いております。これはやはり私たちの目指す方向性と違うので、それについて改善をぜひお願いしたいなというふうに思っております。
 最後に4点目です。せっかく学習系、校務系のデータ連携、名簿連携がうまくできるようになったのに、各自治体がこのことを知らないので、実際に楽に年度更新ができるはずができていない、そういう問題がありましたが、ぜひこれは自治体に通知をしていただきたいと思います。同時に、学習eポータルはほとんど入っているけど、校務系は入っていないというところがあるので、実はUUIDという個を識別するIDを、学習eポータルから校務系に書き戻すということが必要ですし、両方とも入っているというところもそれを統一する必要がありますので、これについてもぜひ施策を打っていただきたいと思います。
 これら4点で、ぜひ積極的に教育データの利活用が進められるような、そういう環境を整備していただきたいと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【委員】  技術標準を検討するに当たり、民間企業との連携について少し意見をさせていただきたいと思います。
 教育データ利活用を含めた教育DXというのは、先端技術や海外の動向、あるいはコンテンツなどがすごく多様化してきていて、国だけではなく、やはり多様な先進的な事業者、例えば学習eポータルに今回参画しているような事業者など、民間企業との連携というのは必須になってきますし、これからもさらに強化していくべきだと思っています。
 しかしながら実態としては、今回のビジョンや標準化において、先ほど試験的な実装とか試験的なテストというお話もありましたが、やはりトライアルアンドエラーの要素も多く、想定外の予算なども発生することも多いと聞いております。具体的には技術的な接続コストなど、実際にやっている事業者からすると、ログイン基盤から改修しなければいけないとか、いろいろ試行錯誤しなければなりません。これは仕方がないことですけれども、必要になってくると思っています。
 私見なのですが、このトライアルアンドエラーに民間企業が、現状大きな先行投資をしているように見えています。結局のところ、その先行投資ができないような体力のない事業者がどんどん降りていって、体力のある事業者のみが、将来のビジネスモデルを前提に、標準化プランを書いているように見えているところがあります。将来のビジネスモデルを前提にということですから、やはりどこかで先行投資を回収しなければいけないというところもあると思います。
 そのビジネスモデルに関しては、現状、文科省はあまり関わらないというスタンスでいるように見ております。これはもちろんビジネス領域ということで自由であるところではあると思うのですが、やはりグレーゾーンを生むところでもあって、新たな利権や特権の潮流が生まれる可能性や誤解もあると思います。ひいては学習者の利便性にも大きく影響が出てくるものだと思っています。やはり国の予算の問題はあるにしても、今回の資料1-4の取組のところにも入れてほしいとは思っているんですが、しっかり予算を取って標準化を図って、そのロールモデルをしっかりつくって、それを民間に公開し、自由で公平・公正な競争の下に、国と民間の連携モデルというのがつくれないかなと、改めて思っております。
 やはり公的なデータを特別なポジションで扱うことになるので、この時点で、ビジネスモデルに関しては公平・公正であるよう、積極的に関わっていく必要性があるのではないかと思っています。
 また、現状の学習eポータル事業者の参入条件についてです。現状では、技術標準だけ満たしていれば、誰でも参入できると理解しておりますが、やはりセキュリティ要件とか、今例えばEdTech事業者とか民間事業者も、本当に玉石混交と言うと言葉が悪いですが、いろいろおりますので、その辺りの審査、場合によっては報告義務なども必要になってくるのではと思っております。
 いずれにしても、公平な民間の知恵とスピード、民間との連携モデルというのもうまく使いながら、新しい技術標準が作られるべきだと思っております。
 
【委員】  2点申し上げたいと思います。
 まず教育データの利活用の姿ということで、資料1-3でみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社から御発表がありました。これは大変貴重な検討、実施をいろいろされているというふうに考えます。
 例えば資料1-3の9ページのところに、学習の計画を立てるというようなお話があって、ここに自己調整学習とかメタ認知というキーワードが入っていることが非常に大きいと思っています。いわゆる主体的な学びを、こういうシステム、あるいはログによってサポートしていくという姿が見え始めているというふうに、私は捉えました。それからもちろんそれ以外にも、例えば個別最適な学びを実現するためにこういう教育データを使うというような出口の姿も当然あり得ると思います。
 ただ、そこでいきなり現場に導入するということのリスクも当然あるわけで、そこはいわゆる学習分析、ラーニングアナリティクスの専門家、あるいは研究者の方々から、いろいろ知見を移転していただいて、これは確かに効果があるようだというようなものを優先的に導入していく、そういった研究と現場、開発の橋渡しをすることが、これから必要になるのではないかというふうに考えました。これが1点です。
 2点目なんですけれども、ビジネスモデルという言葉を先ほど委員が使っていらっしゃいましたけれども、この教育データを使うということに今非常に焦点が当たっていて、各社非常に注目しております。デジタル庁の事業などでも、いろいろな事業者さんが関心を持って参入していただいているんですけれども、ただ、それだけで終わってしまうというふうになっては、せっかくここまで基盤を築いたものが無駄になってしまう可能性があると思います。
 ですので、例えばログを集めて、それをきちんと学習者なり先生方にフィードバックしていく、あるいは学校教育委員会にフィードバックしていくというところの中の、いわゆるエコシステムをどういうふうに考えていくか、これはこの有識者会議でするべきかどうかという御議論がもちろんあると思いますけれども、どこかでそういった議論が必要になってくるのではないかと考えました。
 
【委員】  もう何人かの方がおっしゃったようなことと関係する話というか、ビジネスモデルとか民間のサービスとどういうふうに連携していくのかという話なんですけれども、学習eポータルのところで、例えば転校した場合に、どうやってその子供の学習ログ、ラーニングレコードを移転するのかみたいな話が言及されていて、いまだに解がないような印象を受けました。それから、各サービスと学習eポータルはつながるけど、データは学習eポータル側で集められないというような御指摘もありました。
 ですので、基盤の側、サービスとか学習eポータルの側で、データが集まって、それがちゃんと活用されるという流れが、なかなかできにくい状況にあるというふうに認識をしております。
 一方、この半年ぐらいで大規模言語モデルのようなものが現れて、いろいろ今議論なされていますけど、恐らくああいうものでビジネスモデルが変わるんだろうと思うんです。ChatGPTやGoogleのBardなどを見ると、知識を集約する能力においては人間を圧倒しています。その知識を活用するとか、それを使って何かを評価するとか、新しいアイデアをクリエートするという能力においては、かなり人間よりも劣っているんですけれども、とにかく大量の知識を集約する能力はずば抜けているというか、人間をはるかにしのいでいるので、単に教科書を教えるみたいなことであれば、もうAIで十分できてしまうだろうという気がします。
 それからもう一つは、知識というのは教科書に載っている知識だけではなくて、いろんなサービスに関する知識、いろんなコンテンツの知識というのも含むと思うんです。ということは、ビル・ゲイツなども言っているように、そういうAIはパーソナルエージェントになるというか、パーソナライズされて、恐らく各個人に対して、あらゆるデジタルなサービスとかコンテンツの個人向けのポータルとして働くという流れになっていくと思います。
 そうすると、学習eポータルという名前がついていながら、その学習eポータル間のデータポータビリティが怪しいみたいな話が今懸念されているわけですが、学校単位で学習eポータルを使うということとは全く関係なく、各個人が自分専用のAIエージェントを使って、様々な教材、サービスにアクセスするという流れができていくのではないかと思います。そうすると、学校の側でのデータの共有や活用は遅々として進まないけど、それとは関係ない、民間の側での個人向けサービスではデータの集約とか活用が一層進んでいくということが、十分に起こり得るのではないかと思います。
 そうすると、学習eポータルの間でのデータの移転も、恐らく個人のウォレットを介してやるみたいなことにならざるを得ないというか、それが一番安くて確実な方法、かつ安全な方法なので、そうなるだろうという気がしますけど、それがAIと連携すると、学習eポータル側で束ねようとしているいろんなサービスも含めて、個人用のAIが束ねて各個人に提供するという流れに行くんじゃないかという気がしています。
 それがいいことか悪いことかというのは一概には言えないと思うんですけれども、教科書にないようなことを、AIというか、民間の事業者が子供に教えて、その内容は必ずしも検定されていないみたいなことも考えられますし、いろんな可能性とかリスクなどがあると思います。その辺りはちょっと予見できない部分が大きいんですけれども、とにかくそういう可能性が十分にあるということを考えて、学校側の基盤も早くきちんとデータ連携できて、データの活用ができるという体制を整える必要があるのではないか、そうでないと足をすくわれるみたいな状況になるのではないかというふうに少し危惧をしています。
 
【委員】  1点だけ意見がございます。
 今日は様々な活用ができる基盤システム及び枠組みの話、それからそれを使った実例の話の2種類があったと理解しました。みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社のお話では、そのちょうどフックとなるような分析のモデルというのを提供していただきました。その分析・研究から実装に向けたモデル、これに対してどんな学びを目指すのかが大事という事務局からの冒頭の発言も併せて考えてみると、こういった分析例を考えるときに、子供たちの学習や発達に関して私たちが持つ無意識なモデルについて敏感になることや、それを吟味していくことがとても大事だと考えました。
 今後、学力以外のデータを収集していこうというトレンドも出てくると思うのですが、そうなってくると、当然その分析の結果から出てくるアウトプットの価値と、子供たちの個人情報も含めた倫理面のリスクのトレードオフというのは、真剣に検討していかなければいけない問題だと考えます。そうしたときに、果たして友達関係がよいことだけが学力向上につながっていくのか、議論とけんかというのは紙一重だったりしないのか、学校で四六時中いらいらせずに大人しくしておかなければいけないのか、あるいは話す機会があれば常に発話量を多くしなければいけないのか。今申し上げたことはすべて今日のお話の前提になっているモデルですが、こういった無意識なモデルというのを、私たちが見直していくことを、専門的にはダブルループと言いますけれども、私たちがどういう教育データを収集するか、どういう指標を取るか、どういう指標の間のモデルを立てるか、こういった点に関するダブルループ的な学習、見直しということこそが研究のフェーズで非常に大事になってきます。そう考えたときに、やはり踏み込み過ぎな、リスクがメリットを上回ってしまうようなデータ収集や利活用は抑制していくというような判断もしながら、民間事業者も一緒になって前に進んでいけるとよいのではないかと感じました。
 
【委員】  今までの委員の話の中身を踏まえて、今奈良県で行おうとしていること、行っていることの中身をちょっと整理したいと思います。
 今、教育データの議論をしていく中で、学校の先生たちも子供たちも、もうこの瞬間もそうですけれど、非常に悩んで苦しんでいます。それを手をこまねいて見ているだけではなく、今できることは何だろうということを奈良県は考えて、そういうことを活用した取組を進めていこうということで、県域での同一ドメインをメリットにして、例えばいじめ対策であれば気付き見守りアプリ、不登校であればフレキシスクールを、自治体を超えて運用しよう、全県で人権アンケートをしよう、それからヤングケアラーに対しては子供支援サイトを立ち上げよう、もちろん学力のことも含めて独自テストを県域でしようといった、自治体を超えて県域でやっていこうというチャレンジを、教育データの活用のベースとして行っています。
 これらを運用していくベースの中で整理しないといけないことは、EduSurveyや学習eポータル、みずほリサーチ&テクノロジーズの分析仮説に関する説明なども当然踏まえながら、資料1-3のようなフレームワークの目的からの流れだけではなくて、既にやっていること、もう今待ったなしで取り組んでいる実践をベースにして、そこから得ていく目的、やるべきことの整理を非常に大切にしようということで、市町村と協議をし、それからデータに関しては当然本人のものという立ち位置に立ち返って、ダッシュボードという形で統計情報から全体を見るということは当然取組としてやってはいっている一方で、まずは自分自身の情報を見ようということで、個人の情報を個人に返す取組ができないかということを、今研究者とも相談しながらやっています。
 ですから、今はまだ皆さんにお見せできる段階ではないんですけど、私のIDで入ったら、私の利用状況のことなどいろんなことが見えるという、個人ダッシュボードからスタートして、それを全体で共有しながら提供していく研究につなげていくという、探索的な取組、すなわち先ほどのフレームワークを逆から上がってくるような取組に奈良ではチャレンジしながら、研究者の皆さんの御意見とかも伺って、上からのフレームワークもつくっていくということで進めていっています。
 それで先ほど話にあった、無意識のデータというのが非常に大事だと思うところもあります。アンケートから見えてくる実態と、先生たちの経験や勘から見えてくることと、実際のデータの間に今まで不一致があったんですけれども、今県としては、県域で多様な情報を得ることによって、先生たちの経験とか勘と言われていたものを明確に可視化して、それをエビデンスとしながら先へ進んでいこうというところへ流れができてきています。また、データの蓄積が大事だということですので、それは継続して取り組めるようにということで、自治体を超えて今手を組もうと、そのチャレンジをやっていますので、ぜひとも皆さんもいろんな点で知見も貸していただいて、応援していただいて、支えていただけたらと思っております。
 またいずれそういうデータを見せられるときが来たら、ぜひ公表したいと思います。よろしくお願いします。
 
【委員】  私からは1点なんですけど、ICT活用が進んでいるような自治体と遅れているような自治体といろいろある中で、特に先生方の意識の面というか考え方というような面で、積極的にデータを利活用していくにはどうしたらいいのかなということを少し考えました。
 ICT活用が遅れているほうの自治体と言っていいのか、難しいと思う自治体は、先生方に業務用の電子メールアドレスとかも配付されていないという自治体も結構あると思っています。こうした中で、こうしたデータの利活用というような先進的な取組を、先生方御自身が肌感覚として理解しやすいのか、できるのかということに、すごく心配をしております。
 また、電子メールアドレスが仮にあったとしても、学校に1アドレスとか、管理職だけとか、添付書類とかがあると指導案のやり取りすら不通になるというか、パスワードのメールはいつも来るが本体はいつまでたっても送られてこないとか、そういうような自治体がある中で、データを蓄積していくとか活用していくとかいうようなことを、使いやすさというような面で、どうハードルの低さをつくっていくのかということを、今日は一つ厳しさとして感じました。
 もう一つ、逆に活用の進んでいる自治体のほうで考えていきますと、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、こうしたことに挑戦して、かなり進んでいる地域の授業を見ますと、従来と授業の形がすごく違うなと思っております。
 今回お話しいただいたような授業は、古いタイプの授業と思っていて、そこで想定されているようなデータも必要といえば必要ですけれども、子供はそもそも教科書のみならず、様々なデータを取扱い、友人のデータを参照したり、それに書換えなどの反応をしたり、いろんなことをしている中で、先生にとっても欲しいデータはもっと動的で高速で、業務は多いなというふうに感じております。したがってこれまでにないようなデータを授業で欲しているなと肌感覚で思っております。
 またAIドリルとかAIアプリによる学習、これは裏側で生成AIが動いているようなものが最近出てきて、こういうもので勉強していくと、定期テストなどで、入試とかで出題される問題をこれらで繰り返し学ぶことができて、そうなっていくと、あえて試験をする必要があるのかということになります。従来のように、テストをして、採点して、それを入力していくというような作業そのものが消えていくような過程の中で、どういうデータをこのシステムで取り扱っていくのかということを、少し考えていかなくてはいけないなと思っています。
 最近見ていると、非常に動的、高速、大量というようなデータの流れが学校内で起こっている気がしますので、そういう先進的な自治体にも耐え得る、そういうようなデータの活用の仕方や、保管というか、蓄積の仕方などを考えていく必要があるのかなと、私は思ったところです。
 
【座長】  ありがとうございました。今日は久しぶりの会議だったこともあって、たくさんの御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
 予定していた時刻になりますので、今日はここまでにしたいと思います。言い足りないこと等ございましたら、事務局にメールでお伝えください。
 次回の会議の日程なんですけれども、秋から冬頃が予定されております。その間に各論等についてのいろんな動きがあると思いますし、もしかしたら委員からご発言があったような、ビジネスモデルの急速な変化というのがやってくるかもしれない、そういう状況の動きを見ながらこの議論を進めてまいりたいと思います。日程等につきましては事務局より、また別途御連絡さしあげます。
 皆さん、本日は御協力ありがとうございました。これでお開きといたします。

(以上)

お問合せ先

 総合教育政策局教育DX推進室

(総合教育政策局教育DX推進室)