教育データの利活用に関する有識者会議(第16回)議事要旨

1.日時

令和5年2月6日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データの利活用の推進について
  2. その他

4.出席者

委員

堀田座長、藤村座長代理、石井委員、梅屋委員、緒方委員、小﨑委員、三部委員、白水委員、高橋委員、田村委員、戸ヶ﨑委員、中村委員、橋田委員、渡邉委員 

文部科学省

里見官房審議官、森友社会教育振興総括官、山田修学支援・教材課長、武藤学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、桐生教育DX推進室長、伊藤学校デジタル化プロジェクトチーム専門官、野口教育DX推進室室長補佐 
 

オブザーバー

松丸 福岡県春日市教育委員会指導主事、石田 福岡県春日市教育委員会学校ICTコーディネーター、一般社団法人ICT CONNECT 21、EY新日本有限責任監査法人、個人情報保護委員会事務局、デジタル庁 、経済産業省、総務省、国立教育政策研究所、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)
 

5.議事要旨

議事1.教育データの利活用の推進について

※資料1-1① 「学習eポータル標準化の推進について」について事務局、資料1-1② 「学習eポータルに関する専門家会議に関する報告」について一般社団法人ICT CONNECT 21よりそれぞれ説明を行い、委員から意見、質問が出された。
 
(意見)
 
【委員】  そもそも学習eポータルを民間企業に別々に開発させて運営させようという話になったのはなぜなのかという質問です。価値を生むのは個々のツールですよね。MEXCBTとかデジタル教科書とかそういうサービスのところなので、そこは一般に競争領域にすべきであるということはよく分かりますけど、学習eポータルはほぼ協調領域のものなので、オープンソースのパブリックドメインにして、これみんな使ってくださいというのがいいんじゃないかという気がするんですけど、いかがでしょうか。
 もう一つの質問は、その学習eポータルの間でのデータポータビリティに関しては、技術的にはどういうふうな検討が進んでいるのかということです。何らかのアプリがLTIプロバイダーとして、LTIコンシューマーとしての学習eポータルのAPIをたたいてデータをもらっていく、あるいはデータをアップロードするというようなことは、LTIの認証の仕組みと組み合わせれば可能なのではないかと思うんですが、おおよそそういう方向で議論が進んでいるかということをお聞きしたいと思います。
 
【ICT CONNECT 21】  最初のポイントですが、各国いろいろなアプローチがございます。国や州の教育省がつくってそれをみんなで使ってくださいというようなやり方もありますし、民間がそれぞれで開発するというものもございます。日本はこれまで民間がそれぞれ開発するという形でやってきておりますので、MEXCBTは国が一つのものということで作り始めたわけなんですけれども、これも一つのトライアルかとは思っております。ただ、事業者の意見のすり合わせをかなり密度濃くやっており、そこには省庁の皆さんにも入っていただいておりますので、両方のアプローチは可能かと思います。
 
【委員】  学習eポータルそのものにはあまり利益追求の要素がないというか、それを民間が運用するインセンティブがあまりないような気がするので、かえって民間企業にとってそれをやらされると重荷になるんじゃないかという気もします。もしメリットがあるとすれば、学習データを囲い込めるという間違ったメリットなので、あまりよろしくないので、何とかうまく調整いただければと思います。
 
【ICT CONNECT 21】  まさにそのルールの部分の整理を今やっているところでございます。 それから、二つ目の御質問なんですけれども、LTIのいろいろなことで相互運用性を確保するというのは一つのアプローチです。
 それから、もう一つは、名簿情報、属性情報をどう共有化するか。これはOne Rosterですとか校務システムの仕組みも含めて今検討がいろんなところで行われているところということです。
 それから、ログの標準化、これもまた非常に重要な部分での標準化と活用をどうしようかという多方面からの検討が進んでいるというのが現状でございます。
 
【委員】  いつ頃、その検討の結果はリリースされそうでしょうか。
 
【ICT CONNECT 21】  順々によくしていくということですので、今年は学習eポータル標準モデルVer.3.00のレベルをできるだけ高いところを目指しながら、今動いていると御理解いただければと思います。
 
【座長】  非常に難しいのは、もし国がツールを開発しようとしたときに、それを便利な形で持続可能でずっとサステーナブルにこうやっていけるのかという課題が一つあります。技術はどんどん変わっていくし、新しい仕組みが出てくるし、これを文部科学省としてずっと追い続けることができるかといったら、それも非常に難しいだろうと思います。
 もう一つは、デジタル教材そのものもツールも競争領域なので、これを国がある形で縛るということの、その民業に対する課題というのがあるかもしれないということで、それで業界の方々にいろいろ御相談いただいて、それを国と調整しながら進めていただいているということです。
 だから、そういう意味ではICT CONNECT 21にはかなり御苦労をおかけしていると私は認識していますし、一番大変なところをやっていただいているんだろうなと思うところです。しかし、これも一度によくはならないので、学習eポータル標準モデルVer.3.00が出た後で、次はVer.4.00に向けて進めていかれるんだと思いますし、そのVer.3.00の段階でできそうなことをいろんな企業が学習eポータルに向かってやっていくことになりますので、そうすると実際の運用が進んでいき、次の世界が見えてくるという形で進めていくということになります。そういう意味で、今、段階を追って進めているということを御理解いただければと思います。
 
※、資料1-2「複数アプリの学習ログを用いた分析について」について緒方委員より説明を行い、委員から意見、質問が出された。
 
(意見)
 
【委員】  資料の5、6ページでは、各アプリから学校LRSにデータを集めるような絵になっていて、学習eポータルから集める形になっていないように思えたんですけど、これはなぜでしょうか。学習eポータルから集めたほうが早いんじゃないかじゃないかという気がするんですけど。デジタル教科書やMEXCBT、AIドリルからxAPIで学校LRSに矢印が伸びているので、これらの各アプリからデータを集めると理解したんですけども、それらのデータが学習eポータルに集約されているはずなので、学習eポータルから集めたほうが簡単なんじゃないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
 
【委員】  MEXCBTとかそういったシステムはそのサーバー内にログデータがまず蓄積されると理解しておりまして、学習eポータル側には現状データが入っていないという状態で、AIドリルでしたらAIドリルの会社が持っているサーバーというか、クラウド側にデータがたまっているんですけども、学習eポータル側にはまだ来ていない場合が多いと理解してます。
 
【委員】  本来の趣旨としては学習eポータルに集約することが想定されてるんですよね。
 
【委員】  そうですね。しかしながら、学校メールアドレスにデータが入ってくると、学校には成績や出席状況などいろんなデータがありますので、そこで十分データが分析できるという趣旨です。
 
【委員】  なので本来の想定どおり、学習eポータルにデータが集約されていれば、学校LRSにはもっと簡単にデータが集められるということだと思うので、その辺りも進め方が難しいですね。
 
【事務局】  今の御質問の点なんですけども、資料1-丸1 4ページの上の方の図の真ん中の点線に囲まれているところを御覧いただきたいと思うんですけども、現状この点線で囲まれているeポータルとLRSを合わせて概念として学習eポータルと呼んでおります。ですので、MEXCBTから学習eポータルに返すというのは、結局のところLRSには返っているんですけども、その大きい概念としての学習eポータル、全体としての学習eポータルに返っているといった立て付けになっています。
 今回学習eポータル標準モデルVer.3.00をつくっていく上で、学習eポータルという概念とLRSという概念をきちんと規定した上で、それぞれ提供をきちんとしていこうといったことから、概念としては別個の規定をちゃんとしていこうといったところがこの学習eポータル標準モデルVer.3.00に向けての検討状況になっていまして、概念として広く捉えればeポータルなんですけども、細かく分析して捉えるとeポータルとLRSと考えられると捉えていただけるといいかなと思います。
 
【委員】  現状提供されている8社の学習eポータルはこのLRSを含んでいるんでしょうか。
 
【事務局】  そうですね、資料1-1丸1 4ページの広い点線で覆われているところの、学習eポータルとLRSがセットになっているものを学習eポータルと今言っております。
 
【座長】  これは標準モデルのところで、ルールをいろいろ策定していかなくてはいけないという話は先ほどありましたけども、その途上において、現状の課題として緒方先生はこのように克服すべきだというお話をされたので、今の現実と私たちが今検討している在り方みたいな話とのずれが今現れたのかなと思います。
 
【委員】  
 複数アプリログの分析において、学習指導要領の標準化のコードが足りないとおっしゃったのは、粒度があれ以上もっと細かいほうがよいという意味なのか、それとも教科書会社などのたくさんのバリエーションをもう少し追加できるようなものがあればよいのか、どういう意味でおっしゃったかというのを教えていただけますでしょうか。
 
【委員】  もっと細かなものがあったほうがいいのではないかという意味です。実際、AIドリルとかの会社の方と話をしていると、各社独自にそういった細かなタグを各問題につけているというのが分かってきていますので、そういったものをもし共有できるのであれば共有させていただいて、それを使ってコードを振るというのもできるのではないかという話です。
 
【委員】  コードのほうから言うと、ある種の単元ごとに束になっているようなドリルのさらに細かいコードがあると思うんですけれども、束になっているほうをボトムアップに実際にあるもののコードのほうから変えていったほうがいいという話なのか、それとも、別途ボトムアップにたくさんのコードを共有してグループ化するようなことをAIか何か使ってやっていくといいという話なのか、どちらでしょうか。
 
【委員】  両方できるかと思っていますけども、どちらがいいかというのは結果を見て決めるという、とにかくその検討材料としてそういったデータを出していただけると機械的にできるのではないかと、技術的には考えられます。
 
【委員】  もしかすると問題が解ける、解けないみたいなデータからボトムアップに行ったときに、指導要領で考えているような教育する側で考えたカテゴリーとは違うカテゴリーが浮かび上がってくるかもしれないなと受け止めました。
 
【座長】  この学習指導要領コードは、学習指導要領の桁なので非常に大綱的で、細かな子供たちにどう介入するかみたいなことも含めて検討すると粒度が粗いというのは当初から言われていることで、これをどこまで国が細かく決めるのかというのはいろいろな課題もあります。その中で、でもやっぱり教科書の単元レベルの辺りの情報は、教科書が主たる教材として無償給与を特に義務教育でされていることを鑑みると、ある程度標準的に共有されるべきではないかという意見は、いろいろなところで強く聞かれるところだと思います。そうするともう一段きめ細かい処遇ができるようになるのではないかということで、期待されているというところかと思います。
 
【委員】  大きく分けて3点御質問させていただきたいと思います。
 1点目は、学校に全データを集約するといった御説明があったところですが、学校ごとにそのデータベースを用意されるのでしょうか。その学校単位でセキュリティの対応を委ねてしまう形になるのか、セキュリティ面でどのようなデータの管理体制というのをお考えかということをお聞きできればと思います。
 2点目は、データを活用しないと意味がないという御説明ではありましたが、データを活用するリスクについてはどのようにお考えですかという質問です。特に名寄せをすることに伴うプライバシー的な観点も必要かと思いまして、例えば学習者の理解度や行動を精緻に把握できるようになりますと、学習支援に必要なもの以外のデータとして例えば情緒面の特徴が見て取れてしまうというような場合には、プライバシー的な配慮が必要になってくるだろうと思います。
 それから、データがいつまで保存される前提での話なのかということについてもお聞きできればと思いました。
 3点目は、もしかしたら事務局に教えていただいたほうがいいのかなと思いつつの御質問ですが、資料1-2の17ページのところでよく分からなかったのが、アプリ提供者が本人同意を得た学習ログを取得するという点です。学校は学校で学習ログを統合していくとなったときの、教育委員会でしょうか、学校側とアプリ提供者の個人情報の取扱いに関してどういう関係性があるのかということをお聞きできればと思いました。全く独立にそのデータを集めて分析するという話なのかどうかがよく分からなかったという質問です。アプリ提供者もいろいろあると思いますが、学校側の情報管理体制というのは、誰がどのように担保するのかということも、その関係で確認させていただければと思います。
 
【委員】  まず、一つ目の学校LRSは誰が管理するのかという話ですが、学習eポータルと今のところ一体で導入されているものだと理解しておりますので、学習eポータルを運営する学校と教育委員会の委託を受けて運営するところがしっかりと管理するものだと思っております。
 それから、二つ目のデータを活用する場合のリスクですけど、もちろんこれは個人情報でありますのできちんとその扱うためのルール作りというのをしないといけないと思いますし、全てを集めるという意図ではありません。もちろん必要ないものは集めないといったことも必要かと思います。
 それから、いつまでこのデータを保存するというのは、これはいろんな議論があるかと思いますけど、例として我々のところでは10年間データを保存するということにしております。
 それから、三つ目の御質問、学校にデータを集めたりするというところで、各アプリのデータというのは各アプリが提供する事業者のほうが責任を持って管理するということかと思います。
 
【委員】   3点目のところですが、学校側とは全く関係なく、アプリはアプリで独自にデータを取って分析しますということですか。
 
【委員】  それは多分学校側とは関係なく、アプリはアプリで許可を取ってデータを分析、ドリルの推薦などで使っている、これは既にそういうところかと思います。
 
【事務局】  3点目でちょっと補足的な御説明をさせていただきたいと思います。
 様々な自治体とアプリ事業者の関係は、契約で決まっていることも結構多いのでかなり多種多様かと思うんですけども、原則的にどのような考え方かということで、現状文科省でまとめている考え方としましては、学習アプリなり学習eポータルを使うのは、公立学校の場合は自治体ということになります。資料1-2内で言うと自治体が出てこないんですけど、本来は自治体と学習eポータル、自治体と各アプリがそれぞれ契約をするという形です。しかもそれは自治体の意図の下にそのデータを扱ってよいです、あくまで委任の範囲内としてデータを扱ってよいですということで契約をして、その範囲でのデータの取扱いをするというのが原則になるかと思います。
 ですので、自治体の意図の下に学習eポータル、学習eポータル事業者、それからアプリ事業者がデータを扱うということです。その場として自治体の中に各学校がありますけども、各学校からデータをそれぞれ学習eポータル事業者とアプリにその委任した範囲内で扱うといった、これが原則的な考え方として我々は捉えております。
 
【委員】  今の点、確認ですが、そのアプリ側で同意を取って勝手にデータを取るというのは委託の範囲を超えるので、基本、駄目だということでよろしいですね。
 
【事務局】  そうですね、ここの契約の仕方がそれぞれどのようなやり方でやられているのかもあるんですけども、原則的な考え方としては、今の場合は個人情報保護条例等にになりますが、法令や条例に基づきましてどのようなルール設定をしているのかというのは、今の時点ですと自治体によって変わってくるところはあるかと思うんですけれども、基本的に自分たちの範囲内、業務の範囲内でやるということです。それ以外にやる場合には当然必要があればしかるべき手続を取ってくださいと、その範囲内できちんとやってくださいといった形になっております。
 
【委員】 そのような措置要求などを講じることができるのではないかとも思いましたので、自治体には基本、責任があるという前提で考えておく必要がありますよね。
 
【事務局】  学校のデータに関しては自治体が当然、学校の設置者としてのデータを取り扱う責任もございます。それは自治体がどのような形で契約するかといったことに負ってくるので、当然自治体側にそのデータをどのように扱うかという責任が第一義的にはもちろん生じてきます。
 
【委員】  今の点に関連する質問なんですけども、現状各アプリってどういう仕立てになっていることが多いんでしょうか。つまりLTIプロバイダー側、各アプリとしては別にユーザーがどこの誰かということを気にせずに、この一つのセッションは一人のユーザーが使っているんだということさえ分かればいいはずなのでそういうふうになっているのか。そうすると各アプリのところにたまるデータは誰のデータかよく分からないけど、100人分のデータがそれぞれあるという形になっているというのが一つの可能性かと思います。一方でそうではなくて、多くのアプリは住所とか氏名とかそういう情報も取得しているのかどうかというのが第一の質問です。そういうデータをLMSの側では名寄せが可能な形で保管していて、学校の義務としてそのデータを管理する責任があるということかと思います。一方、そのデータの使い方に関しては、学習者のためになるかどうかよく分からないような使い方をしてはいけないんだろうと思いますが、その辺りのガバナンスというか管理のために毎回議論しているガイドラインのようなものがあるんだろうと考えています。
 一方、先ほどの緒方先生の御報告のような学術研究は基本的に割と自由にできるべきなので、何らかの仕方で学校からデータをもらって分析するということは可能になっているという仕組みがあるという話を以前の議論で伺ったような気がしますけども、それで大体合っていますでしょうか。
 
【事務局】  今前提として学習eポータルとLTI連携したアプリが存在しないという前提なので、現状、資料1-2、17ページの図については、緒方先生が手がけられているシステムとしては存在しているんですけれども学習eポータルとアプリという関係でいくとまだこの関係はなくて、まさにそこの技術的要素と非技術的なルールの部分を学習eポータル標準モデルVer.3.00として今議論している最中ということです。
 一方で、ごく一般論として学習eポータルとか関係なく、各アプリにはどのような形でデータを保管しているのかについては、それは専ら学校のデータの取扱責任者、学校設置者とそれぞれのアプリ事業者がどのような形でその情報を活用することを認めているかということになります。国の法令なり条例に基づいて必要な手続を取ってやっているということで今理解しておりますけど、それは各アプリ事業者との関係で、各地方自治体がどのような形でやっているのかということに負ってくるということになります。
 もう1点、eポータルの名寄せの今後の可能性ということですが、アプリ事業者からその各ログがLRSに行くと、広い意味での学習eポータルになるわけですけども、LRSになると当然そこにはそれぞれの名前とか、人が特定できるような形の記録があるので名寄せということは可能になっていくと考えております。
 最後の点はまさに御指摘のとおり、むやみに使ってはいけないのでそのためのガイドラインとかQ&A集のような形で、文科省ももちろん取り組んでいきますし、今後さらに事例収集してまた来年度以降というのは、またこの次のセッションでお話があるかと思いますけども、取り組んでいく途中にあるということで考えております。
 
※資料1-3① 「MEXCBTを活用した地方学調等の実施について」について事務局、資料1-3② 「MEXCBTを活用した春日市通過テストの実施について」について福岡県春日市教育委員会よりそれぞれ説明を行い、委員から意見、質問が出された。
 
(意見)
 
【座長】  春日市では通過テストという言い方をされていますけど、この言葉に込められている考え方のようなものはございますでしょうか。
 
【福岡県春日市教育委員会】  こちらに関しては教育長から、その学年に必要な内容をきちんと学んで、習得して、次に進んでほしいという願いが込められていると考えております。
 
【座長】  CBTだからこその出題というのもあるし、CBTのような例えば4択のようなものの問題の作り方や組合せ方で、例えば思考力の一部を測るみたいなことも、作題技術としては可能で、大学入学共通テスト等もそうやって作られているわけですね。結構なことが私はできるようになるのではないかと思いますし、何より日本の子供たちはCBTでテストを受けるという経験値が非常に少ないので、そういう意味でこういうお取組が全国的に広がっていくことが重要かなと私は感じました。
 
※議事1全体を通じて、委員から意見、質問が出された。
 
(意見)
 
【委員】  私のほうは資料1-2と、資料1-3の1、2について分けて御意見を申し上げます。
 まず、資料1-2については、以前から大変注目しておりましたので、非常に興味深くお話を伺いました。本市でも、教育委員会などが保有するデータを一元化していく、データベースの構築事業を今現在進めており、データを集約して活用していくことの重要性はやればやるほど感じています。
 ただ、本市の場合は日常の学習データの集約については、そこまで及んでいませんので、LEAFシステムは実際に現場で活用されて広がりを見せているということで、モデルとしてぜひとも今後参考にさせていただきたいと思いました。機会がありましたら、是非導入されている小中学校にお伺いし、拝見させていただけるとありがたいです。
 そしてこういった取組をスムーズに活用できるよう、教員養成の段階からデータ利活用に関するリテラシーの向上に寄与するカリキュラムを組み込んでいくなど、早い段階から教師にその重要性を伝えていく必要があるだろうと感じました。それが大きな一つです。
 次にもう一つが、CBT化についてです。学力調査のCBT化については、ICTの利活用を進めるという点で大変重要であると思いますし、全国の自治体への横展開という観点からも情報整理されていて、国の方向性や只今の春日市の実践とともに大変ありがたいと思いました。
 このCBTとPBTで、測定結果にどう違いが出るのかについても純粋に検証が進むとよりいいと思います。CBTで受検したほうが効果があるという結果はあるようでないため、こういうものもできれば活用がさらに進むのかなと感じました。
 また、導入時は現状のようなやり方でいいとして、今後の課題を考えていったときに、どうしても現状としては導入しやすい知識、技能だけでもいいと思いますが、やはり今後は思考・判断・表現の観点、また見方・考え方の習熟度をCBTでどう評価するかも、やはり喫緊の課題として検討を進めていく必要があると思います。特に義務教育、小中学校の場合には学校現場の実態として、どうしても分かりやすいもの、取り組みやすいものに力を入れていってしまうという傾向があります。教育データが知識、技能に偏ってしまうと、それを活用した日々の指導も頭の中では分かっていてもどうしても結果が見えているとそちらのほうの指導に偏っていってしまうということも、正直危惧をしているところであります。
 最近、チャットGPTの話題になっていますが、こういうAIや、最新のテクノロジーなどの活用も視野に入れつつ、大事なことは、学習科学の視点から、専門の方々にCBTにおける作問の質の向上、場合によっては問題の順番を入れ替えるだけでも見えてくるものがあると思います。そういった学習科学の視点から作問の御協力をいただくようなシステムを進めていく必要があると思いました。
 また、教育データ利活用を進めていく点においては、得られたデータを用いた具体的な検証が大事だと思っています。先ほどの御発表等を聞いて、私なりに五つほど感じたことがありますので、短めに申し上げます。
 一つ目は、CBTであれば受検の結果を即時に閲覧できたとして、その復習の指示や見取りは、誰がどこまで行うのが効果的なのかという視点です。
二つ目が、個に応じた支援を行うために、学校への返却の資料については、「誰がどのように作成してどの程度のマンパワーを割いているのか」という視点です。本来的には、そういったことも含めてシステムの中の機能に実装されていくのが理想的だと思いますが、やはりそういう視点も大事だと思います。
 三つ目は、個に応じた支援を実際に行うときに、学校がどのような体制でやるのかという視点です。つまり担任に任せてあるのか、少人数指導でできる人員や時間、場所があったのかなどの問題があります。
 四つ目は、その支援の結果、本当にそのつまずきは解消されているかという視点です。
 最後に五つ目は、そのデータで分かったことはどこまで実態に即しているのかという視点です。つまりデータを基に検討した支援策は、実際の子供に対して適切なものであったのかなどです。
そういったことも情報としてセットであれば、教育データの利活用の好事例として、より一層現場の中に受け入れられるのではないかと思います。目的はそこだということが見えてくると、どんどん実装が進んでいくのかなという感想を持ちました。
 
【座長代理】  今の教員養成という話、重く受け止めております。私たちも教育のデータサイエンスというのを、もう既に教育の中で取り組む努力をしていますので、頑張りたいと思いますということをお伝えした上で、4点申し上げたいと思います。
 まず1点目、今回目玉になっているxAPIの標準化についてです。
 このxAPIと標準化について大事なことが2点あると考えています。当然のことながら、円滑に動作して目的を達成できることというのが一番でありますけども、2点目に大事なのが関係者の合意形成ができることだと考えております。これまでたくさんの標準仕様が出てきましたけども、この合意形成ができていないものは全て実際には機能しませんでした。そこでベンダーさん、要するに開発側はもちろんですけれども、調達側の学校設置者の方々、それから、有識者の方々も交えてこの検討をした上で標準化するということをお願いしたいと思います。また、文科省で行っている先端技術活用の実証事業でも、従来モデルのデータ以外にも新たなモデルのデータが出てきていて、その活用が非常に有効だということも見込まれていますので、御配慮いただければと思いました。
 2点目ですが、実はデータの利活用がちょっとミクロの視点に行き過ぎる嫌いがあって、最近心配しております。実はもっとマクロの視点からどういう方向での教育改革を目指しているのか。学習科学から言ったらここはこうすべきなのではないかということがありますので、やれるからやるという発想だけではなく、こういうことをするためにこういうデータが欲しいというようなことを考えていただきたいと思います。
 ともすると個別最適な学びというのはAIドリルを使うことだという誤解がありますが、本来は、変化が激しく予測困難な時代に問題発見し、みんなと力を合わせて問題解決できる子供を育てることが最優先なわけですから、そういった意味での目的を持った教育改革の在り方という視点で検討を是非していただきたいと思ったのが2点目でございます。
 3点目です。3点目は実は先ほど学習eポータル標準モデルVer.3.00の話がありましたけども、こちらの有識者会議のほうでも述べさせていただきましたが、NHKさんですとかいろんなコンテンツベンダーさんからSARTRAS、授業目的公衆送信補償金を支払っている学校に対して、実はこれは無償で使ってもらえるんですという話があって、そのSARTRASの補償金を払っているかどうかと、学校コードを対比したデータ、SARTRAS持っているそうですので、そのデータをver.3.00に入れていただくと、随分学校にとって有利な展開ができるんじゃないかと思うので、この辺も御配慮いただければと思いました。
 最後4点目です。4点目は、実は大きな学力テストのCBT化はもう非常にうまくいっているなと思っているんですが、諸外国では単元テストレベルのCBT化も進んでいます。この辺の議論が随分ないなと思っていまして心配しておりますし、これがあると、それこそ働き方改革でテストの素点を手入力するなんてばかなこともないですし、もっと粒度の細かな有効なデータが得られると思いますので、今後どこかで検討していただけるといいと思いました。
 以上でございます。
 
【委員】  今日はシステムに関する難しいお話があって、これからはこういう世界に進んでいくんだなと思ったところです。皆様の御尽力に敬服しているところなんですが、1点、教員出身の人からすると、こういう感覚を持つであろうなという部分で感想をお伝えしようかなと思っております。
 今日はデータの利活用の推進というところで、システムに視点が当たったお話をたくさんいただいているかと思うんですが、やはりその中でデータの主体である児童生徒を啓発するとかデータを使う側の先生方の良さというものがどうしても見えにくくなりつつあるなと感じています。
例えば複数のデータを一つにまとめて、AIからこういうレスポンスが返ってきたら面白いなと思いつつも、AIがメッセージを出していくことを受け止められるぐらいの先生方のデータの受け止め方だったり、子供たちのデータの受け止め方というのが醸成しないままに、AIのレスポンスを全てと思って受け止めてしまうと怖いなと思うところもあります。それから、私たちは二つのデータすらも相関して見るということにようやく慣れてきたという段階にいるので、そういった意味で先生たちのデータ利活用のスキルというものが上がっていない中で、本当に複数のデータを見ることの良さを感じるのかなと思っています。
 そういった意味では推進するというシステムが段々とよくなっていく、長期的にこういう世界が広がっていくんだということを示すと同時に、人間側の良さを示すことや、データを読み取る力の育成を一緒にやっていただけるといいなというのがすごく感じたところです。
学習eポータルについてはとても私は便利と感じています。学習eポータルはハブであるという機能に非常に良さを感じています。その上で、ハブとして機能するにはデータを管理するという、LRSのデータが一括で更新できたり同期できたりという部分の機能が私が今の段階で使っている中では十分ではない感じがしているので、せっかくデータを一つにまとめるというのであれば、データの同期や更新が一度にできるという面でもう少し機能が向上するといいなと思います。
 
【委員】  春日市の発表はMEXCBTをどんな風に各自治体が使っていくか、そして
マクロな視点を考えてみたときに私たちがこういう取組をどうやって使っていけばいいか、そのヒントをいただいたような気がします。
ミクロというのは言い換えるとフィージブルなもの、実行可能なものをとにかく一つの単元や問題単位で積み上げていく。
マクロなものというのは子供たちの資質能力の育成を考えたときに、教科あるいは教科を超えてどういう学びを引き起こしていくか、この大きなマップをつくるということかなと思います。
学習科学的な視点で考えますと、資料1―3丸2 4ページの先ほどのグラフの読み取りにおいて手書きでアイスクリームを食べた人数を書き入れるという問題を、右のます目だけあって、何の話かも分からずに、これは何を示しているかという棒フラグの見取りをする問題に変えたときに、一体何が損なわれるかということを考えていくような、つぶさな、教科教育とも連動した見取りをしていけるといいのではないか。
具体的には左側の問題ですと、アイスクリームの人数をどこに書けばいいかな、縦軸は一体何を表しているのかな、この一つ一つのます目は何かなというのを考えるような問題になっているのが、右の問題になると当てずっぽうでも合ってしまう問題になってしまうかもしれない。
一つの目安として、子供たちが問題を解き終わった後で、「この間違えた問題、隣の人と話したら問題をもう一回解けるかな」みたいなことをやったときに、算数的な学びが起きてくるかと考える方法があります。それによって、左側の紙の問題をCBTの4択の制約に合わせて変えてしまうことによって、私たちは一体何を失うのかということを検討するような営みを積み重ねていく必要があるんじゃないかと思います。
 国研でも文科省でもCBT化に向けて、PBTとどういう違いが出るかという大型の検証をやっておりますけれども、これは問題をそのまま移したような形の検証事業ですので、問題の意味を変えていったときに子供の学びのどこを見落としてしまうかということを考える必要があると思います。現状できている教育データの利活用の範囲はどこまでか、まだまだやらなければいけないところはどこか、紙の強みはどこにあるのか、多様な強みはどこにあるのかという全体の見取図の上で、教育データ利活用を考えていけるといいのではないかと思いました。
 
【座長】  まず、学習eポータルの件は、業界のいろんな企業等の調整も必要で、大変なお仕事かと思います。これは事務局とも協力して検討を加速していただくと同時に、標準モデルのバージョンアップと、そういうものが決まっていく様をできるだけオープンにしていただくということを今後もお願いしたいと思います。
 2つ目の複数アプリのデータ収集・分析については、やっぱり学術的にはいろんなことが可能性としてはもうできつつあるのかなと思います。一方で、このシステム、学術研究とはいえ自治体としてはちょっと協力しにくいみたいな現実がやはりあるなと思います。なので、学術だったら何でもできるということにはなっていないなと思うし、何ができるかが明らかになっていないので入れられないみたいな、マイナスのループに入っているところもあるかなと思います。このデータ分析はもちろん個人情報に十分に気をつけて行うなど、考えなきゃいけない検討課題はいっぱいあるという一方で、こういう効果があるということもやっぱり示していかないと、心配ばっかりして前に進まないみたいなことも起こり得るんじゃないかと思います。ここが難しいところかなと思っております。
 最後に春日市の教育委員会さんには、MEXCBTを活用した現実的で、そしてほかのところもすぐにできそうな好事例をお示しいただいたと思っております。
 全てのテストをCBTでやるというわけではないので、CBTと紙の使い分けを上手に、何らかの方針で進められているんだと思いますし、通過テストが1年に1回じゃなくてもいいわけだとも思います。これは運用の大変さを今無視して申し上げていますけど、こういうものがいつでも対応できればとか、あと単元レベルのCBTというのは恐らくこれから民間の教材会社のCBT学習経験をするような評価教材として出てくるんじゃないかと思いますし、こういうものが充実してきたときに、教育データというのは貯まっていくわけで、これをどうやって使えばいいかという現実的な議論にまたなっていこうかと思っております。
 皆さんのおかげで随分前向きな事例も、そして、そのときに検討しなくてはいけないこともいろいろ浮き彫りになってきたかと思います。

議事2:その他

※資料2「教育データの利活用に係る留意事項の今後の道行き(令和5年2月6日時点)」について事務局より説明を行った。
 
【座長】  議題の2にその他で1点だけございますので、この教育データ利活用に係る留意事項集、留意事項の検討をこれ皆さんに何度も御協力いただいていますが、これについて事務局より一言お願いいたします。
 
【事務局】  資料2を御覧ください。状況の報告をさせていただきます。
 これまでも何度か本会議でも御議論いただいておりました、教育データ利活用に係る留意事項の今後の道行きとなっております。現時点では昨年の12月の認識者会議で一部Q&A、提出させていただきましたが、その後も個人情報委員会の助言や、それから各委員の皆様への今、御確認依頼をさせていただいておりまして、今現状、調整をしている段階でございます。
 今後の道行きですけれども、しかるべきまとまった時点でパブリックコメントをさせていただきまして、今年度中のなるべく早い段階で留意事項公表、これは前から申し上げておりますけども、この方向で進めさせていただきたいと思っております。
 また、これも何度もお話しさせていただいておりますけど、留意事項、今回だけで終わりではなくて、来年度以降さらにバージョンアップを考えておりますので、3月までには少なくとも留意事項の第1版という形での公表をさせていただきまして、その後、また追加・改訂に向けて進めていければと考えております。現状報告です。
 
【座長】  ありがとうございました。この教育データの利活用には色々なことが不安なので進まないという部分があります。確実にできることと、確実にやってはいけないことを少しずつ現場に向けて提示していくということが、一つの大きな課題だと思っています。法令としてどうか、解釈をどうかという難しいところがたくさんありまして、個人情報保護委員会とか、あとはこういう内容にお詳しい委員の方々には大変御苦労をおかけして、御相談差し上げているところですけども、そういう御相談を進めながら、公開できる範囲を早く公開し、少しでも各教育委員会等が安心してできる範囲を広げていきたいと考えております。
 今日は時間の関係でここまでとさせていただきますが、もし発言不足等ございましたら、事務局までメール等で御連絡いただければ幸いでございます。
 また、次回というのは第17回になりますけど、委員の皆様には会議日程、既にお知らせしておりますが、3月22日水曜日の14時から16時までとなってございます。年度末の大変なときに大変恐縮でございますけども、御参加よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、本日の会議、ここまでといたします。皆さん、御協力ありがとうございました。
 

(以上)

お問合せ先

 総合教育政策局教育DX推進室

(総合教育政策局教育DX推進室)