教育データの利活用に関する有識者会議(第12回)議事要旨

1.日時

令和4年9月5日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データの利活用の推進について
  2. 教育データの利活用に係る留意点について
  3. その他

4.出席者

委員

堀田座長、梅屋委員、緒方委員、小﨑委員、佐藤委員、三部委員、白水委員、高橋委員、田村委員、中村委員、橋田委員、藤村委員、石井委員、渡邉委員
 

文部科学省

里見官房審議官、森友社会教育振興総括官、山田修学支援・教材課長、武藤学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、桐生教育DX推進室長、野口教育DX推進室室長補佐

オブザーバー

篠原 渋谷区教育委員会事務局教育DX政策推進特命部長、EY新日本有限責任監査法人、個人情報保護委員会事務局、一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC)、一般社団法人 ICT CONNECT 21、一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの利活用の推進について

※資料1-1「教育データ利活用の取組」について篠原渋谷区教育委員会事務局教育DX政策推進特命部長、資料1-2「教育データ標準化推進事業取組状況」について一般社団法人 ICT CONNECT 21、資料1-3「GIGAスクール構想・学校DX関係(R5概算要求)」について武藤学校デジタル化プロジェクトチームリーダーよりそれぞれ説明を行い、委員から意見、質問が出された。

(意見)

【委員】  前半の心のSOSのようなものをはかるという取組というのは非常に興味深く、それがある程度いろいろな自治体で行われつつあるということだと認識していますが、そのうちの代表的な一つとして渋谷区さんの取組というのも聞けて、大変興味深く思いました。
 先ほどスライドに映し出されていたようなデータを取り扱うのは誰なのか。つまり、担任の教師だけなのか、それともほかにいるのかとか、そこに何か縛りがかけられているのか。また、AIによる評価について、児童生徒ないし保護者が、どういうような条件で見ることができて、どういうような条件で異議を申し立てることができるのかなど、そういった具体的な取扱いについて、どのようにしていらっしゃるのか、あるいは今後しようとしていらっしゃるのかについて伺えたらと思います。
 
【渋谷区教育委員会】  2点御質問いただきました。まずデータの取扱いでございますけれども、こちらについては、それぞれの子供が属する当該校の校長、副校長、あと担任等の教員のみという取扱いとしてございます。それ以外に、教育委員会事務局内の関係者という取扱いとなってございます。
 2点目の傾向分類のところですけれども、こちらは、あくまでもクラス全体の傾向を把握するためのものというふうに認識をしてございます。したがいまして、これを学校に展開するに当たっても、これはあくまでもクラス全体の傾向を把握したものであって、個人の決めつけにならないように、あくまでも個人、それぞれの子供たちとの対話を重視するよう、周知をしているところでございます。
 
【委員】  ありがとうございます。そうすると、かなり明確なSOSを個別に突き止めるというよりは、クラスの傾向を把握して、クラスについてどういう対策を立てていくかの指標とするということですね。
 
【渋谷区教育委員会】  全体で三つのシートを御覧いただいたかと思いますけれども、最初のシートに関しては、まさに傾向分類を示しているもので、これは先生にクラス運営に生かしていただくということを目的としたもの。次のシートに関しては、実際に個々のクラスを見たときに、クラス全体の中で何か気になる子はいないかということを抽出する、明らかにしていくということのために使うシート。もう一つの個人用のシートに関しては、これはまさに、時と場合にはよりますけれども、場合によっては、この内容を保護者とも共有しながら、家庭とともに、学校と家庭が連携をしながら、その対応に当たる場合も想定され得ると考えております。
 
【座長】  ありがとうございます。大変、今後大事になる論点、(2)番の留意点につながる論点も含まれているかと思っております。
 
【委員】  1点伺いたいのは、遅刻回数等についての入力についてです。これは、どのタイミングで行っているのか。例えば、これは校務支援システムからの入力なのか。その点だけ質問させてください。
 
【渋谷区教育委員会】  ただいまいただいた御質問でございますけれども、こちら、まさにおっしゃるとおり、校務支援システムで入力された情報を連携させているところでございます。
 
【委員】  私からは2点あります。1点目は、結局、クラス全体の傾向を知ることにとどまるのではなく、個人の気になる行動、具体的なSOSを把握して対処するということに使うと、そういう取組であるという認識でよろしいですかという点です。
 2点目は、その分析、学習するデータというのが、例えば心の天気であっても、先生側の評価が含まれるものであったとしても、多分に主観的なデータが多いという点を、どのように評価するか、という点です。クラスごとに傾向が変わるというのも、データの主観的な面が大いに影響している可能性があるのではないか。学習データの偏りなどへの配慮をどのようにされるかについて、お聞きできればと思います。
 
【渋谷区教育委員会】  2点御質問いただきました。まず1点目でございますけれども、こちら1ページ目のシートでも御説明させていただきましたとおり、まさに子供たちの興味・関心、悩みを丁寧に見取る、それを目的として活用していくというようなものとなってございます。
 もう一つにつきましては、先ほどの傾向分類のところかと存じますけれども、この傾向分類は、子供たちにアンケートを取ってございまして、そのアンケートの結果を分類したものというような形になってございますので、そういった意味では、多分に子供たちの主観的な気持ちのようなものは、この学校全体の俯瞰シートの中では、反映されているということになります。
 
【委員】  結局、主観的な偏りは是正することはできない、方法はないということになるのでしょうか。そのような分析だという前提で取り扱うという理解でよろしいですか。
 
【渋谷区教育委員会】  まず基本的に、こちらのデータは、子供たちのアンケートの結果であったり、また子供たちが日常的にタブレットに入力をしているようなデータを、それぞれ集約をして可視化をしているというところがあります。そういった中で、当然アンケートは、子供たちの回答をそのままダイレクトにレーダーチャートにして表示をしているところです。そういった子供たちの一人一人の思いを、いろんな多面的な視点で見ていくことによって、課題を把握していこうという考え方になっているところです。
 
【座長】  本当に詳細な的確な御回答ありがとうございました。私どもも、まだたくさん議論しなければいけないことにつながるような、非常に先進的なお取組を御披露いただいたと思っております。また後ほど、いろいろ議論しますので、そこにまた入っていただければと思います。ありがとうございました。
 
【委員】  質問の趣旨を先に説明しておくと、渋谷区さんのお取組について何か批判したいとか、そういう趣旨では全くありません。具体的にどういうステークホルダーが関わって、どういうことを考えておかなければいけないのかということの素材にしたいというだけですので、一応その質問の趣旨だけ誤解なさらないようにお願いします。
 関わるステークホルダーとして、先ほどSOSをどういうふうに把握するかということで質問させていただいたわけですが、そのSOSの情報というのが多分、具体的にやるとなると、例えば対応しなければいけない児童生徒が出てきた場合には、先ほどおっしゃった校長、副校長、あと担任以外にも共有される人が恐らく出てくるのかなとも思いました。なので、関わるステークホルダーが大体どういう方々なのかを知りたいというのが1点でございます。
 もう一つは、保護者や児童生徒としては、いや、そういう取扱いはしてもらいたくないんだよねというようなことも出てくるのかもしれない。あるいは、そもそもそういう情報の取扱い自体しないでほしいと。自分がSOS対象になっているかどうかを問わず、そもそもそういうところにデータ載せないでほしいというような、そういう児童生徒、保護者が出てくる可能性もあるのかなということを考えています。なので、そういうような場合に、渋谷区さんがどういうふうな対応をされている、あるいはされようとしているということなのかについて伺えたらと思います。
 以上2点、よろしくお願いします。
 
【渋谷区教育委員会】  2点御質問いただきました。まず1点目、ステークホルダーが誰かということですけれども、先ほど私、担任というふうなことを申し上げましたが、この当該校に属する教員が全て閲覧をすることが可能となっております。したがいまして、何かしらクラス内の子供に課題があったときに、それを担任や校長、副校長だけで解決をしていくということではなくて、そこに、例えば学年主任であったり、様々な形での教員が関与していくということが当然想定され得るだろうということから、そういった学校内に属する教員に全て、この権限を与えているという形になっております。
 そういった意味で、こちらとしても、あらかじめその活用方法を明確にするということではなくて、むしろ学校側のほうで、活用の事例というものをどんどん生み出していただきたいと。それは、やはり学校現場のほうに一定の判断を委ねたほうが適当だろうという考え方になります。
 2点目、保護者や児童生徒の懸念というようなお話でしたが、私ども、特に今回の取組の中で重要なことは、やはり教育データを活用する目的、理念というものをきちんと子供たちや保護者に伝えて、それを共有して、理解を得ながら進めていくということだと思ってございます。
 私ども、これら情報を子供、保護者が知らずに取得をしているというわけではなくて、これまでも再三にわたって、保護者の方、子供たちには、利用履歴の収集、管理をしているということは伝えてきております。その上で、これに御理解をいただいた上でタブレット端末の利用開始をしていただきたいということを再三、やはり伝えてきていると。さらにまた今回のダッシュボードの展開に当たりまして、近日中には改めて保護者、児童生徒に対して、今回の取組が子供たちへのきめ細かな対応や指導・支援に生かすことを目的として利活用すること、また児童生徒のプライバシー保護に十分留意をして目的外の利用は行わないこと、これをきちんと伝えていこうと、こういった思いをきちんと保護者や子供たちと共有をしていこうと考えております。
 以上でございます。
 
【委員】  ありがとうございます。先ほどの理解を求めるという御姿勢は大変すばらしいと思うのですが、その結果として理解いただけなかった児童生徒あるいは保護者との関係では、データは使わないことにするのか、それとも、それでも使うということにするのかという点はいかがでしょうか。
 
【渋谷区教育委員会】  まだ現時点では実装はできていないところではありますけれども、場合によっては機能追加をすることによって、除外対象者というものを特定し、表示させないということも、選択肢の一つとしてはあり得るのかなとは思ってございます。
 ただ、この辺に関しては、まだ運用開始をしたばかりということもございますので、その運用を見ながら、またこういった、こちらの会議での様々な御意見なども伺いながら、その辺の運用を整理していこうと考えております。
 
【委員】  ありがとうございます。渋谷区様に、もう一度お聞きしたい点がございます。利用目的のところの御説明ですが、具体的にどこまで説明される御予定かをお聞きできればと思います。履歴の収集、管理を行いますというだけですと、今回御説明いただいたような教育データの利活用の場面で、クラスの状況変化を見るとか、個人のSOSを見つけて指導や支援に活用することまでは、使われる側には見えない説明の仕方になるのではないか、と思いました。どこまでブレークダウンして、きちんと説明しておられるのか、又は説明していかれるつもりであるのかについて、お聞きできればと思いました。
 また、そもそも使われたくないという人は一定数いるだろうと思いますが、それでも教育機関側でなお使うとした場合に、現状の個人情報保護条例上、どのような解釈の整理で、そういう取扱いを許容するのか。あるいは、先ほどおっしゃられたように、そもそも使われたくない人については除外することも考えて、除外する方針になるのか。条例の解釈の辺りをお聞きできればと思いました。
 データの偏りについて先ほどお聞きしましたけれども、例えばいじめを受けていることなどについて、問題のあるお子さんが心の天気で正直に情報発信するのか。必要な情報がうまく出てくるのかと。危険性を拾える程度の情報が集まるのかと。その辺りの見方について、お聞きできればと思います。
 
【渋谷区教育委員会】  まず1点目の保護者、子供たちへの理解というふうな部分ですけれども、近日中には周知をしていこうということで予定しておりますけれども、実際に先ほど御覧いただきました、このダッシュボードで活用されているデータの一覧などもお見せをする予定です。またさらにダッシュボードの中身についても、個人の個別シートの部分に関して、実際にその画面なども御覧いただこうと思ってございます。
 その上で、私どものほうでは、やはり一貫して主張しているところとしては、児童生徒へのきめ細かな指導・支援に生かすための教育データの利活用、そして、このダッシュボードを活用して、一人一人の児童生徒の状況を多面的に把握することによって、教育活動の各場面において、一人一人の力を最大限に引き出すためのきめ細かい支援が可能になると。ついては、これらの活用に関して御理解をいただきたいという趣旨のものをお伝えしていこうと考えているところでございます。
 2点目、個人情報との関係でございますけれども、個人情報保護条例との関係で言いますと、今回、タブレットの利用履歴等の収集に関して、法務担当者とも協議をし、タブレットを介して当該個人から直接収集をしていることから、特段本人同意を求めずに、本人外収集には当たらないと考えているところでございます。
 また、個人情報の収集に関しては、条例上、その目的を明確にして収集をすることが求められております。本区におきましては、先ほども申し上げましたように、児童生徒のセキュリティ上の安全確保、きめ細かい指導や学習の改善のためにタブレット端末の利用履歴を収集、管理していること、さらに、先ほど前段で申し上げました、改めてこのタイミングで周知をする内容、それによって保護者の方、子供たちに対して、その目的というものを明確にしていく、そして理解を得ていくということで考えているところでございます。
 3点目については、やはり子供によっては、例えば学校生活アンケートも、真面目に恐らく答えていないだろうと思われる子供も当然います。心の天気なども、その日の気分というものを何となく答えているということも当然あろうかなと思ってございます。
 ただ、それもそれでまた一つのデータとして生かしていくことができるのかなと思ってございまして、今回、その個別のデータをもって全ての物事を判断していくということではなくて、複合的にデータを集約することによって初めて見えてくるものがある。したがって、何かしらのデータが欠けていたとしても、それによって見えてくるものがあって、さらにそこに教員の経験と勘、それを補う形のものであるならば、そのダッシュボードの効果はあるのではないかなとは考えております。
 
【委員】  ありがとうございます。利用目的に含めているという点ですが、既に集めている情報を新しい取組に使うとなると、どこかに目的外利用の話が出てくるのではないかと思ったのですが、その辺りはどのような整理になってくるのでしょうか。
 
【渋谷区教育委員会】  もともと、私どものほうでは、タブレット導入当初から、その目的ということで、先ほど申し上げたような形で、保護者に周知、案内をしているというところ、また、それを御了承いただいた上で、御理解いただいた上で、利用の開始をしていただいているというところから、それに関しては目的外利用という概念には当たらないのではないと認識をしてございます。
 
【委員】  収集したときの利用目的が想定されていたものかどうかは精査が要ると思いました。
 
【渋谷区教育委員会】  今のお話で申し上げますと、私どもでは、もともとこういう仕組みを想定して、システムの設計から入ってきていたというところがあります。そういったものを想定した上で、これまで保護者のほうにも、子供たちに対しても周知をしてきたというところがあります。
 今回の情報に関しては、先ほど説明の中でも少し申し上げさせていただきましたけれども、これまでの学校が保有していた情報、また学校が知り得ることができた情報、これを集約したものという形での整理になってございますので、そういった意味では、これまで知り得た情報や保有していた情報を可視化したということで御理解をいただければなというふうに思います。
 
【委員】  ありがとうございます。想定外の利用になっていないことを、ぜひ御留意いただきつつ利活用していただければと思っています。
 
【委員】  私からは、2点、簡単な提案をさせていただきます。
 一つは、データの主観/客観という言い方が誤解を招いてしまう可能性があるので、文部科学省の資料でも、「データに主観的なものと客観的なものがあって、客観的なものを推奨セットとしていく」というようなロジックにならないように注意していただきたいと思いました。
 基本的に子供たちの見取りというのは常に主観的な解釈でしかなくて、例えば、「いじめられている子供はこんな心の働きをするのではないか」というモデルがあって、そのモデルに合うデータを見いだそうとして「観察の窓」を開けるというのがデータを収集することで、その収集したデータを解釈して、「こうなっているのではないか」という次の仮説となる結論を導く。仮説的なモデルなので、常に調べてみたら実態・実際と違う可能性もある。今日の児童の場合、「いじめられているんじゃないか」という仮説に基づくデータセットが色々集められていたと思うのですが、案外、実際に調べてみたら、このデータセットが意味することは、いじめている側に回ってしまったりとか、傍観者の立場にいて苦しんでいたりなどという可能性もあります。
 そう考えると、データは主観/客観的なものにわけられ、後者を推奨データセットにしようという話ではなくて、私たちがどんなデータを、どういう目的で取ったときに、一体そこから何が分かってきたか、この記録を今、集中的にためておくというのが、すごく大事じゃないかと思います。
 2点目の提案は、今このフェーズですと、とにかくどんなデータを取ったら、どういうことが見えましたというのを、推奨データセットだけではなくて、その推奨データセットで現場でこういうことを見てみたらこういうことが分かりました、という記録、たとえ、それが外れていてもその教訓の記録がたまっていくと、大事な基礎資料になると思います。今日の例ですと、ICTを協働で使っているかどうか。確かにTeamsの利用状況で分かるんですけれども、Teamsを使っていないところでアナログで協働やっているかもしれない。そういう教室の実際のデータを踏まえながら、電子的なデータの意味やこういうことが分かりましたという、その実際のデータの収集と解釈の結果と現場を見に行って観察したときのその結果との相違というのをセットとしてためていくというのが、今後の推奨セットを考えるときの一番大事な基礎資料になるのではないか。それが今すごく大切な作業じゃないかなというふうに思いました。
 
【委員】  つくば市のほうでは簡便にデータを読み取るということに割と集中しているところなんですが、例えば今、渋谷区さんでは、先生が簡便にデータを受け取ることができるようなアラート的な仕組みというのは、今、実装されているのか、または今後そのようなことを考えているのか。つまり、データを解釈する前に、ある程度のアラートを先生方に発出してもらえるような仕組みは考えていらっしゃるかどうか聞いてもよろしいでしょうか。お願いいたします。
 
【渋谷区教育委員会】  私どものほうで運用しているシステムの中では、そういった仕組みがあるというのも事実でございます。ただ、今回のダッシュボードの中で、そういった仕組みをつくるかどうかについては、これからの検討とはなりますけれども、ただ、基本的に先ほどの事例の中で、御紹介の中で申し上げましたように、例えば遅刻日数が一定以上のものがアラートになるといったときに、とはいっても、そこまでの日数に至らないことであったとしても、例えばそれが一日、二日の遅刻、欠席であったとしても、その情報自体が非常に重要な場合というのもあり得るのかなと思ってございます。
 そういった中で、特段、今すぐにアラートということではなくて、まずは私どもの取組としては、学校長をはじめとした教員の先生方に、こういったダッシュボードを見ることによって、どういった情報を見いだすことができるのか、その情報の読み取り方などを、研修をしながら活用促進を図っていこうと考えているところでございます。
 
【座長】  では、ここまでとさせていただきますが、渋谷区さんには非常に具体的な、そして先進的な事例を御紹介いただきました。私ども、ここまでやっている例を具体的にこうやって見せていただくことは今までなかなかありませんでした。そういう意味で、いろいろな疑問が湧いてくるようなところはあったと思いますし、これから恐らく全国で同様のことが進められるときに課題になることが、今、質問の中からいろいろ出てきたのかなと思います。
私もかつて小学校の教員でしたが、大体、先生が子供たちを見取るときのいろんなやり方の多くは、ほぼ主観です。これを教師の勘と言えば、そのとおりなんですけど、子供たちの回答も、授業中の発表も、例えばアンケートへの回答も、もっと言えばテストへの回答も、どうしても誤差を含んだデータになります。
 なので、目視で分かる範囲以上のデータが何らかの形で追加されることによって、少しでも正確な支援につなげることができるのではないかという形で、こういう取組がされているのかなと思います。
 個人情報的に解決しなければいけないことはいろいろあると思いますし、そこに私たちが何らかの提案をしていく部分は、もちろんこれから検討してまいりたいと思いますが、私は教師だった立場から考えれば、こういうものに助けてもらいながら、先生たちが忙しい中で一生懸命、子供たちを育てていくということが大事なのかなと思います。
 そういう意味では、非常に先進的な取組をわざわざ見せていただきましたこと、心より感謝申し上げたいと思います。篠原様、どうもありがとうございました。

 

議事2:教育データの利活用に係る留意点について

※資料2-1「Q&A構成イメージ(案)(教育データの利活用に係る留意事項等に関する調査研究状況報告)」についてEY新日本有限責任監査法人、資料2-2「教育データの利活用にあたっての安全・安心の確保に向けた検討」、資料2-3「「GIGAStuDXメールマガジン」における意見募集結果」について事務局よりそれぞれ説明を行い、委員から意見が出された。
 
(意見)

【委員】  お疲れさまです。こういう現場でよく理解できるものをまとめるというのは非常に重要で、私もこの作業の成果に大いに期待しています。具体的な場面に即したQ&Aというのが本体になるであろうということはいいと思うんですが、一方で、その全体の体系性というか、法律の考え方はこうなっていて、それ以外に各組織、学校とか何とかのセキュリティー基準とかもあるし、あと技術的な制約もあるというような構造を全体としてはしていると思うので、その構造に従って、まず概要を押さえるということと、それを理解するための各論としてQ&Aがあるという、そういう立てつけがいいんじゃないかという気がしています。
 全体の法律的な側面の確認としては、何回も申し上げているように、教育ですから、どうしても選別はするわけですけど、その選別が果たして教育の範囲にとどまっている正当なものなのか、それとも教育を逸脱した不当なものなのかという、そういうことはちゃんとどこかでルールとして定める必要があるということで、それは、どちらかというと、一人一人の教員が考えるというよりは、学校設置者とか学校のレベルで考えるべき話だと思うんですね。
 そのそれぞれのルールに基づいて、よしとされた目的のために、どういうデータをどう使うかということに関しては、その目的に対して関係のないデータを使ってはいけないということが非常に重要で、じゃあ例えば、こういう選別をするために、どのデータが関係あって、どのデータが関係ないかということは、それは個別のケースによるわけですから、これはQ&Aでカバーすべきことだろうというふうに思います。
 例えば、本当は学力でクラス分けをするみたいなことをやるべきなのに、そこで親の年収を持ってきたりしちゃいけないわけですね。イレレバントなデータなわけですよね。
 というふうなことが個別のQ&Aでカバーされるというふうに、全体の体系と、その中身を理解していただくためのQ&Aという構成になっているといいんじゃないかという意見でした。
 
【座長代理】  今御説明いただいたQ&A、基本的にとても分かりやすいなと思っておりました。
 実はインデックスのつけ方が、私は複数あっていいのかなと思っています。私もいろんな冊子作ったときに、目次的な今の主体別の整理もできますが、索引的に、例えばセキュリティーの件だとか、それから先ほどから渋谷区さんで随分御意見いただいていた、保護者に対する説明をどうしたらいいんですかだとか、そういったトピックで探せるというような工夫も、同じものを使いながらできるのかなと思って聞いておりました。
 それから、大きく申し上げて2点目なんですけども、私は先ほど堀田座長さんがすごく大事なことをおっしゃったと思っていまして、実は子供たちを直接助けるというのはもちろん大事なんですけど、それだけじゃなくて、先生方をデータの力で支援していくんだ、いい教育できるように支援するんだという、そういう目的に関するような、恐らくこんな点はQ&A、現場で聞いても出てこないと思うので、何のためにやるんですかみたいな、そういった教員支援システムみたいなことのために、このデータ、とても大事なんですみたいなものを付加するだとか、ボトムアップだけじゃなくて私たちのほうから伝えたいことを明確にしていくことも大事なのかなと考えておりました。
 
【委員】  ありがとうございます。大変分かりやすい整理をしていただいているかと思います。
 資料2-2の留意事項のところで、資料を拝見していますと、プライバシーへの配慮という言葉が数多く出てきています。個人情報保護条例や個人情報保護法に抵触しないようにすることは当然必要ですが、それではカバーし切れないプライバシーへの配慮事項として、具体的にこの議論においては何が必要なのか、何を議論すべきなのかを明らかにしておく必要があると思います。
 例えばデータを分析することによって本人にとって知られたくない内面の一部が明らかになるなど、その辺りは、個人情報保護の法令というよりは、プライバシーで保護される側面が大きくなってくるところがあるかと思います。
 プロファイリングについては、先ほど教育現場においてはどうしても選別する行為が伴うという御意見をお聞きしたところですが、それが許容し得ない、許容すべきでないレッテル貼りにつながったりしないのか、という点を常に留意しておく必要があるだろうと考えた次第です。
 議論のスタンスとして、最初に教育データを使うのは教員側であって、教育を施す側に直接的なメリットが還元されるということになりますと、結局、教員側の負担を軽減するというスタンスでの議論に偏りがちになるのではないかと思うところがあります。子供さんや保護者の方から見た場合に、データを分析されたくない場合どうするのかという御質問がありましたけれども、データを分析されること自体が余計なお世話であったり、迷惑だと思う人たちも一定数いるだろうということにも十分配慮する必要があると思います。また、保護者と児童の利益が必ずしも一致するとは限らないという点への配慮も必要で、保護者の同意を取ったとしても、それが児童からすると望ましくないことであった場合にどうするのかとか、なかなか難しい論点が多いのかなとは思います。
 それから、保護者や児童生徒の方に御説明されるときに、教育データを使うことによってこういうメリットがあるんだという説明の仕方だけではなく、どういうリスクが生じるのかということも率直に説明していただいた上で承諾を得るというのが真の承諾になってきます。いいことばかりを説明するということではなくて、リスクをきちんと伝えた上で承諾を取るという取組といいますか、そのような考えで進めていただくことが必要かと思いました。
 
【委員】  まず、1点目が、何のために一体教育データを利活用するのかというお話をはっきり打ち出したほうがいいと思います。それはQ&Aの中で、はっきり言ったほうがいいと思うんですね。
 今、直前におっしゃっていたと思いますけど、当然リスクもあるわけですから、そのリスクを踏まえた上で、やはり例えば、文科省がおっしゃっている個別最適化に向けての道筋になるとか、深い学びをきちんと把握できる道具になり得るというようなことも含めて言及いただけるといいかなと思いました。これが1点目です。
 2点目ですけども、項目に関してですが、資料2-2の7ページ目、8ページ目、それから資料2-3のスライドの2枚目のところで、かなり核心をついた質問が出てきていると個人的には思っています。
 この中で、教員に聞かれても困るんだよねという、そういう質問も多分出てきていると思うんですね。つまり、教員が個々に何か判断して対応するのではなくて、教育委員会とか、それから私立の場合ですと学校法人として判断するシステムを備えていくという必要がある項目も見受けられます。
 先ほどEYさんから御説明があったように、先生方に対して、こうしてください、こういうふうにすればいいですよということも、もちろんナビゲーションは必要なんですけども、2-3のスライドでいうと、教育委員会とか、この上のほうに関する項目というのを、もっと充実していったほうがいいのではないかなと思いました。
 また外国の事例も含めて、何か気がついた点があれば言っていきたいと思います。
 
【委員】  基本的には御提案に賛成です。学校の先生のことを考えますと、基本的には教員養成の段階でも、採用の段階でも、その後も、法律に関する勉強はずっとしてきているわけですし、判例集なんていうのも、管理職であれば当然、読み込んでいらっしゃる方が普通だというふうに考えますと、そういった判例集によく見られるような構成になっているなと思います。Qがあって、Aがあって、具体的な考え方や解説があるということは、非常に先生方にとって分かりやすいんじゃないかと思います。
 なので、その後、StuDXのほうの質問を見ますと、非常に多岐に及ぶことが質問になっておりますので、多分、個人情報保護法の説明というQ&Aが一番作りやすいんだと思いますけども、ああいうアンケートの結果等を見ますと、非常に多岐にわたる問題を、この話はこっちの問題、この話はこっちの問題という、ほぐすところから含めてQ、Aをやっていかなければいけないんだなというふうに思いますと、やはりここは、事務局には大変な御苦労になるかもしれませんが、具体例や先生方からの質問に答える形の、そういうようなQ&A集にチャレンジしていただきたいなというふうに私自身、思うところでございます。
 
【委員】  Q&Aのことで言いますと、最近学校で一気に広がったのが著作権に関する公衆送信に関することで、32条に関してQ&Aを作ったんですけれども、結局、最終的にそのデータを扱う子供たちと先生が、理解している、していないということが1番の理由で、結局、やろうとしていることが実現できたかできていないかという結果になっているんですね。
 そういう点で、Q&AのAの部分ということに関しては、先生自身がよく理解できるものでないといけないと思います。法的な背景なども含めてのことなんですけれども、やっぱり書きぶりは、第1段階としては非常に易しいものがあって、より複雑な難しいことも加えていくという流れのほうがいいのかなと感じています。
 個人情報に関しては、先生方は非常に敏感に感じておられますから、Q&Aも、先生や子どもたちからの視点はもちろんですが、学校外の方々に見ていただいたときにも、学校の先生への関わり方や子供たちへの関わり方はこうですよね、という具体例が入っていることによって、理解が深まっていって、広まるんじゃないかなと思いました。
 
【座長】  資料2-3の2ページの先ほどのプロットは、GIGAStuDXのメールマガジン、これをやっているチームに御協力いただいて、募集して、今日こうやって公開しているわけですけど、この資料が公開されているということを、答えた人が分からないかもしれないので、できればGIGAStuDXのメールマガジンに、ここに皆さんの声を載せました、会議でもこういうのを広めましたと。ついては、さらにほかにQがあるような方、あるいはほかの人のQを見て何かこれも知りたくなった方は、ぜひまたお寄せくださいみたいなことをすると、皆さんの声が文部科学省に届いているということや、そして皆さんのためにこのQ&Aを作っているのでお待ちくださいねというような期待感につながるかなと思いますので、ぜひ事務局にはそういうことを、ちょっと大変な中、恐縮ですけども、お願いしたいと思うところでございます。
 
【事務局】  ありがとうございます。いただいた意見の中で、特に今後のQ、Aの作り方の主として留意しなければいけない点が幾つかあると理解しました。
 特に総論と各論という分け方は必要だと我々も考えておりまして、全部がQ、AだとQの数が多くなり過ぎてしまうので、やはりその前提としての総論と各論としてのQ、Aといった立て方は必要だと思います。
 ただ、その際に作るときに、総論を殊さら長く複雑にしてしまうと、なかなか読まれないと思うので、どのような形で総論を作って、総論と各論の振り分けをどうするかというのは、またこちらでも案を作ってみたいと思いました。
 あと中身の点に関して、プライバシーの問題、要は個情法だけでなくて、個情法からはみ出る部分というのは恐らく、今日の2-3の中でもありました、システム的な話ですとか、セキュリティポリシーの話ですとか、それから政策的な話というのも入ってくると思いますので、個情法を中心に、その周辺のもので、やはり現場からの疑問にちゃんと答えられる、真正面から答えられるような範囲をきちんとカバーしていくといったスタンスで作成していくことが必要かと思っております。
 
【座長】  ありがとうございました。非常に大事なお取組になろうかと思いますので、ぜひ委員の皆様方も、さらに、この件、できるだけ現場の声を事務局に届けていただきますよう、御協力を何とぞよろしくお願いいたします。
 今日、渋谷区の御説明をいただくところから始まりまして、具体的なものをいろいろ見せていただきました。最初にやる人たちはいろいろ慎重になりながらも、挑戦的にやられている部分あると思うんですね。まだ不確かなまま何かをやるということもあるのかもしれませんけども、できるだけよいものになるように私たち、そこに協力的でありたいと思います。
 一方で、先生方の多くの気持ちは不安なんですよね。何で不安かというと、知らないから、分からないから、今までやったことがないから不安。ですので、このQ&Aが、その不安を少しでも払拭する形につながればありがたいなと思うところでございます。
 
【委員】  瑣末な話かもしれませんが、ちょっと疑問を感じたので。今日の絵は紙で出されるんでしょうか。僕は勝手にウェブか何かかと。要は、さっきの質問量が多いというお話、多くなってしまうという質問、懸念が、ウェブであればタグとか検索機能などで、多くても分類ができたり、総論、各論という形でも分類できるのかなと思っておりまして、勝手にウェブなのかなと思っておったんですけれども、紙でお考えでしょうか。
 
【事務局】  今のところ、まだ媒体をどうするかというのは決めてはいないので、ウェブと紙の両面で考えたいなと思っているんですけど、どちらにしても分量が多過ぎると。Q&Aのところは、確かにおっしゃるように検索できるかと思うんですけど、総論の部分で、ある程度ストーリー仕立てで、1から10まで読んでいくような形だと、その分量が多過ぎると、またなかなかそこも読んでもらえないかなと思っていまして、そこの辺りのバランスをどうするかというふうな話かと思います。
 
【委員】  そうですね。おっしゃるとおりで、あまり長々としていてもしようがないので、Q&Aなどはウェブ。更新頻度が恐らく、試行錯誤の中でいうと、かなり増えてくるんじゃないかなと思っておりまして、それであれば何版、何版、何版という形で紙で出すよりも、ウェブで適宜更新されていくほうが、間違いももしかしたらあるかもしれない、そういったものも含めて臨機応変に対応できるようなウェブ形式のほうがよろしいのではないかなと思います。
 
【座長】  それでは、ここまでとしたいと思うんですが、前回同様、今日のこの会議で十分に言い足りないというようなことがございましたら、事務局までぜひ御連絡ください。しかも、このQ&Aの、とりわけQのところは、事務局としてもいろいろ悩んでいるところでございますので、ぜひ現場の先生の声をお届けいただきたいと思います。
 それと同時に、先ほど申し上げたように、GIGAStuDXのメールマガジン等でまたフィードバックをして、またさらに情報を集めるというお取組にもしていただければと思うところでございます。
 次回、第13回になるんですが、この次回の会議日程、委員の皆様方には既に御連絡しておりますが、10月11日火曜日の14時から16時となっておりますので、御確認をお願いいたします。
 それでは、今日は少し早いですが、ここまでとさせていただきたいと思います。皆さん、いつもながら御協力ありがとうございました。
 

(以上)

お問合せ先

 総合教育政策局教育DX推進室

(総合教育政策局教育DX推進室)