教育データの利活用に関する有識者会議(第7回)議事要旨

1.日時

令和4年2月21日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データの分析等の利活用について
  2. その他

4.出席者

委員

堀田座長、藤村座長代理、梅屋委員、緒方委員、小崎委員、佐藤委員、三部委員、白水委員、高橋委員、田村委員、中村委員、橋田委員
 

文部科学省

藤原総合教育政策局長、出倉大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、桐生教育DX推進室長、大野国立教育政策研究所データサイエンスセンター長、松本教育DX推進室室長補佐、大根田教育DX推進室室長補佐
 

オブザーバー

デジタル庁 横田統括官付参事官付参事官補佐

一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC),一般社団法人 ICT CONNECT 21,一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの分析等の利活用について

※資料1-1「教育データの利活用に関する有識者会議(第6回)における主な意見」、資料1-2「教育データの利活用に係る論点整理(中間まとめ)抜粋」について教育DX推進室、資料2-1「教育データ利活用ロードマップ(令和4年1月7日デジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省)」、資料2-2「教育データ利活用ロードマップに関するQ&A」、資料2-3「国民からの意見募集結果・有識者との意見交換について」、資料2-4「こどもに関する各種データの連携について」についてデジタル庁よりそれぞれ説明を行い、委員から意見が出された。

(意見)
 
【座長】  3月頃に私たちが中間まとめを出した後、世の中で教育データの利活用について、話題がいろいろ出てきたと思います。1つは、GIGAスクール構想によって、学校現場が具体的に教育データを触ったり、扱ったりする経験をしたので、さて、これはどのように使えばいいかということの意識が高まったことがあると思います。
 もう一つは、デジタル庁が非常に注目された省庁であると同時に、期待も非常にあるわけで、そのようなところから教育データのロードマップが出たことによって世間の注目が大きく集まったということになります。
 このロードマップは非常によくできていると私は思いますが、私たちの議論も含めて書いてございますので、急に何かすごい、国民がびっくりするようなことが書いてあるわけではないと思いますが、これを急に見た人は少し驚いて、いろいろな御意見が国民から出た。それで大臣がいろいろお話しされたという経緯があったのかと思います。
 今、それだけ注目が集まっているということは、私たちが議論を整理して、考え方を提示するよい機会というふうに考えられますので、ぜひ先生方の御意見等をいただければと思うところです。
 
【委員】  今年の1月にこの話が出たときに、いろいろ騒ぎがあって、集中管理のところが最も問題になったわけです。もちろん何回も確認していただいているように、国が集中管理することはないということは当然ではあるのですが、それ以上、あまり何も言っていないではないかという話も聞こえてしまいます。
 つまり、学校や自治体が個人情報取扱い事業者になるでしょう。では、その委託先はどこになって、どういう業務をするために、どういうふうな管理をするのかということは、具体的にはまだ明確でないので、それを明確にする必要はあるのではないでしょうか。
 それと同時に、ユースケースも明確になってくると思います。このようなデータを分析して、こういうことをやるために、誰がデータコントローラーになって、誰がプロセッサーになって、どうするというような、具体的なユースケースが出てくると皆さん納得していただけるのではないか、協力も得られるのではないかという気がしています。
 そのためにも効果が分かりやすいユースケースがいいと思います。もちろん、ビッグデータを集めて分析したら何か出てくるのかもしれないですが、やってみないと分からないので、一次利用の場面でのユースケースの方が分かりやすいと思います。そのようなところからしっかり説明をして、その一方でデータを集めて研究して、それを将来使っていく道筋も描いた上で、誰しも納得するようなユースケースをデータの管理の仕方とともに説明していくということが重要なのではないかと思います。
 以上です。
 
【座長】  ありがとうございました。確かに何となく教育のビッグデータを集めると何かいいことがあるという期待と同時に、個人情報は大丈夫なのかという何となくの不安があると思います。なぜ何となくなのかは、明確に御理解いただけるような形で私たちが示し切れていないという現実もあるのかなと思います。
 一度に全ては示し切れないのと、やってみないと分からないことがあるので、ユースケースを示すのですが、そのユースケースは具体的に示していく必要があります。
 この辺りを今回御指摘いただいたと思っております。具体的にどんなデータがあれば、誰がどういう分析ができて、誰のためになるかという辺りをはっきりさせていくという明確なユースケース、そして、できれば望ましいユースケースが先出しされるとよいということだと思います。ありがとうございます。
 
【委員】  今の話に続けて、もともと教室で先生が子供たちの学びの記録を取って、それによって子供たちがどう学ぶかを知ることが学校教育の基本だと考えると、学習科学の立場から言うと、人がどうやって学ぶかが実は全然分からなかったところが、データを取って少しでも詳細に分かろうとしていくということがデータをプロセスすることの第一のユースケースではないかというふうに思います。
 その点で申しますと、今回の例えば資料2-2のQ&AのQ1に対するA1の教育データ利活用により、例えば学習者にとっての自分に適した教材などの話が、どうしても個人を分断するような形での、個人を単位とした学びの例が挙がっているように見えるというのが、個人を単位としたデータの利用なのかという考えを呼ぶ、ピットフォールになっているというふうに思います。
 その意味では、教室で子供たちが学び合うというプロセスが分からないまま、実は教育がなされてきたというところに、サンプルでもいいのできちんとしたデータを取って、先生、生徒が教室の中でのデータの一次利用として学びを記録して振り返るところをまず立て直していくのが非常に大事なのではないかというのが、この教育データ利活用の出発点にあり、それが資料1-2の1枚目の「人が学ぶ過程」が分かっていなかったところが利活用によって分かるようになって、少しは教室の教育の質向上につながっていく、こういう機序だったのではないかと思っております。
 以上です。
 
【座長】  ありがとうございました。今の御意見は、言い方を少し変えると、先生が今まで長年の勘でやってきたところをきちんとデータで確認する、それで少しずつ前に進めていこうという部分も含まれていると思います。
 
【委員】  そうですね。本当に子供たちをマル・バツで振り分けているだけと思われないようにすることが大事ではないでしょうか。
 
【座長】  ありがとうございます。
 これは、私たちの立ち位置のようなことも含んでおりますので、非常に重要な部分かと思いますが、今日は各論として幾つかの情報提示をいただいた上で、また議論したいと思います。
 
【委員】  先ほど御説明いただいたデータ利活用の4層の考え方で、リソースのお話が出ました。これからはデジタル教科書が、実はこういうデータ利活用の大きなステークホルダーになる時代だと思います。こちらの方の議論も進んでいくと思いますが、私が少し懸念しているのは、データが分散していくなかでベンダーロックインのうまい材料として使われてしまうという力学が働く可能性があると思いました。つい最近デジタル庁で国のシステムの例えば発注が、ベンダーロックインの状態になっているものが割と多いという記事があったと記憶しています。(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00989/021700075/)
 我々が、こういうデータをうまく層分けしてリソース層で、例えばサブシステム間で連携できるようにするという工夫をしてきた背景は、実はこのベンダーロックインをなるべくなくす、みんなが平等な立場でデータを使えるようにするというイメージに向かって技術的に頑張ってきたというところも、実はこれから我々が発信していくべき話の一つだと思いました。
 以上です。
 
【座長】  これまた貴重な観点かと思います。ありがとうございました。
 私の方で、ここまでのことで少し押さえておきたいのは、議論に上がっていたとおり、教室で日頃から行われているいろんな授業、あるいは学び、学習、学習支援、学習指導、あるいは子供たち同士の人間関係の中で行われるいろんな生徒指導のようなことについては、先生たちは、今まで子供たちをよく見て、しっかりと指導してきたと思うのですが、これをデータによってもう少し科学的に、そして先生たちを少し楽に、そして、子供たちから見ればより適切に対応していくことに教育データをどの活かしていくか。それが個別最適な学びや協働的な学びの具体的な指導や支援にどのようにつながるかという観点。これは、学習指導要領が求める姿でもありますので、これを先にしっかりと見せていくことが重要かと私も思っております。
 一方で、ビッグデータになってから、いろんなことが明らかになる部分はあると思います。それは、研究のフィールドとしてもです。こちらでやるのは、個人情報が全部抜かれた形でのデータの分析です。そちらでいろんなことが行われる話と、教室で今日どうだった、明日どうだった、のような話をつなげて誤解されてしまうと、自分のよくない成績がずっと先まで参照されるのではないかという話になると思うのです。
 だから、ユースケースが、そもそも教室で日常的に起こっていることと、教育ビッグデータとして明らかになることをきちんと切り分けながら、私たちが示していくということも非常に重要なことだと思います。
 今までの言い方で言えば、一次利用と二次利用の区分けを文部科学省としてきちんと出していくことが重要だと考えております。ありがとうございました。

 

議事2:その他

※資料3「教育データの分析・利活用に向けた取組状況について」について教育DX推進室、資料4,5について出席委員より、資料6について教育DX推進室(代理)より説明を行い、委員から意見がだされた。

(意見)

【委員】  先ほどチャットの方にリンクを送らせていただきましたが、御参考情報です。
 先ほど資料3の御説明のところで、分析の目的として現状把握、予測、因果説明というお話がありました。これに関連する分析の枠組みとして、上半分でガートナーが4段階に分類できるということを言っています(Gartner. (2012). Analytics Value Escalator. In Magic Quadrant for BI platforms.)。これは、LAだけではなくて、分析一般の話です。これに対応して下半分のところで、LAにおけるアルティック・バリュー・エスカレーターというのをBonninという人が2017年に提案しています (Bonnin, G., & Boyer, A. (2017). Higher Education and the Revolution of Learning Analytics. In report of International Council For Open And Distance Education.)。今回の資料3に対して、一番下の処方的分析の段階が加わっているのではということで、御参考にしていただければと思います。
 以上です。
 
【座長】  ありがとうございました。大変貴重な御指摘かと思います。ぜひ、これも加えて今後検討していきたいと思います。
 
【委員】  先ほどのお話で、学習eポータルにつながる具体的なサービス、教材、教育システムの規格があまり統一されておらず、データが取り出せないということがありました。やはり学習eポータルにつながるシステムは、データポータビリティーを満たす必要があるのではないか思います。
 そのために何ができるかというと、例えばLTI1.3でつながって、APIでデータのやり取りができるというようなことを前提にして、そういうシステムであれば簡単につながるようなAPIライブラリーを用意しておくというような具体的な方策を考えていただけるといいのではないかと思いました。
 以上です。
 
【座長】  ありがとうございます。データの標準化としては、そうした方がいいという話と、それをもう既にビジネスとしていろいろやっている人たちが、どうやってそこに上手に乗れるかという話のせめぎ合いで、文科省はじめ、関係者がいろいろ御苦労されているところかと思います。非常に貴重な意見だったと思います。
 
【座長代理】  私もスマートスクールの助言などをして、全国でデータの利活用を見てきましたが、子供たちのデータ、生活情報や学習情報を収集して、ダッシュボードで先生方に返すところまでは、かなりうまくいくようになってきたと評価しています。
 それに対して、「勘はときに間違いもある」とか、「教員の経験値に左右される」とか、「詳細に見えない」。つまり、教員側がどんな指導をしてうまくいったのか、いかないのかといったデータがなく、ダッシュボードでどんなにデータを示されても、いい指導ができない教員が結構いるということが見えてきています。特に大都市圏においては若手の教員が劇的に増えて、ベテランの経験値が継承されていないところを継承しなければいけないということです。
 最後、ステップ1の授業力向上の授業力分析のデータが取れていないのが現状大きな問題だと思っています。というのは、学習eポータルができても、教員がどんな教材を提示したのか、結果、こういう子には効果があるが、こういう子には効果がないといったデータが取れるチャンスなのに、学習eポータル側は子供のデータだけを見ているということがある。教師側のデータを取って、それをどのように子供側のデータと掛け合わせてリコメンドとして出していくのか、教師の授業改善をどうサポートするのかという教師側のデータの利活用、アシストログ等の活用について御検討いただく必要があると思っています。
 そのためには、教師側のデータをどう取るかの標準化も必要であり処方に関する分析が次のステップだと私も強く思ったので、お話しさせていただきました。ありがとうございました。
 
【座長】  ありがとうございます。
 
【委員】  事前に資料を読ませていただいて少し検討したことがあります。資料3に関連して、中間での検討があまりされていないような気がしました。
 まず、情報の収集のようなことが必要で、最後はこういう成果があって、結構大きめの成果が書いてある書類が多いですが、多分、ここには相当な時間と繰り返しみたいなものが必要だと思っています。
 何のデータを何の形式で取得するのかという意味で標準化が必要で、資料3を見ると、現状把握とか予測とか因果説明ということで分析の話が出ていて、ただ、これは目的に応じた精密な分析、場合によっては、これを標準化しようというお話だと感じています。
 今、いろいろ読んでみて感じたのは、これぐらいの桁の見やすく大まかな分析、何に役に立つか分からないが役に立つかもしれないぐらいな大まかなデータというステップがあるのではないかという気がしています。
 それは、例えばグーグルマップでストリートビューが最初何の役に立つか全然分からなかったけれども、複雑なデータが見やすく整理されているだけで、そのうちいろんなアイデアが生まれてきて、予想外のアイデアで、比較的早めに反映したデータとしてみんなに提供できるので、収集されたデータがそのまま役立った感が出てきやすい気がしています。
 多分、目的に応じた分析をしてしまうと、取られたデータが何に使われているのか分かりにくくなって、特定の人たちの分析のように感じてしまうので、みんなにデータを開放するという印象があると、僕はいいのではないかと思います。いろんなアイデアを皆さんからいただくような、整理されたデータ提供があったらいいと思っています。
 あと、全体的にいろんな資料を見て、先生がどこにいるのかというのが少ない気がしています。結果的にデータを見て判断したり実行したりするのは、子供とか、先生とか教育委員会とか保護者であって、データをそろえたら勝手にこういう成果が得られるというようなことはないようには書かれているのですが、そのような誤解を招かないように、我々はきちんとやっていかなければいけないと感じたところです。
 私からは以上になります。ありがとうございました。
 
【座長】  大変適切な整理をいただきまして、ありがとうございました。さっきの整理の部分を取りあえずいろいろやってみようと言うと、目的が決まっていないと、どんな成果が出るのか分かっていないと集められないみたいな話が横たわっているというようなことですが、まずアジャイルでいろいろやってみる段階では、先生がおっしゃったような整理が非常に重要ではないかということかと思います。これについては、ぜひ資料の提供をまた後ほどいただければと思います。
 
【委員】  私の方から各論を踏まえての全体的なコメントというか、感想に近いお話をさせていただきます。
 今日、全体のお話を聞きながら杞憂かもしれないですが、学びとデータ活用に関する一般的な人々が持つイメージ、マインドセット、メンタルモデルが背後にあって、それが影響して、こちらはそういうつもりではないのに、「こういう目的に使うのではないか」と誤解されるのではと思いました。
 具体的にはどういうことかというと、「学びは基本的に個人単位で行われるものである。学んだときに、できる子とできない子がいるから、評価は評定を意味して序列化を意味する。そうするとデータは個人個人のふるい分け、学べていない子供が悪いのでその子供をどう支援していくかというのに使われる」、このマインドセットはあると思います。
 それに対して、学習指導要領ですとか、答申ですとか、今回のロードマップの背景にあるものは、実は全ての子供が学ぶ力、ポテンシャルを持っている、その力を生かせていないのは学習環境が悪いせいだ。学習環境を評価するために評価はあって、そのためにデータも使う。だからこそ、データを一番使って責任を持って場を変えていくのは、その学びの場をデザインしている、教室の場合だと先生ということになるのではないか。
 そのようにデータが位置づくとなると、データは、デザイナーにとってのReflectionの材料であって、子供を責めるのではなくて、学習環境というのはどうあるといいのかを常に考え続けるための材料ではないか。
 そう考えてみますと、これは簡単にはいかないことなので、今回御提示いただいた2SQ3Rですとか、自己説明ですとか、つくば市の例ですと、ステップ1とステップ2が実はどうやってつながっていくかというようなところについて、それぞれ学習の場をデザインしている教育者の側は仮説を持っていると思います。
 その仮説が果たしてこれでよいのかというのも、データを取って検証していかないと見えてこない。子供の学びを中心にして、先生が反省し、研究者も反省する。そのためにデータを使わせてほしいというのが伝わっていくと、いろんなところで、本当にデータの有意義な利活用になってくるのではないか。
 先ほどお話にあったぐるぐる回す時間は、確かに1回では終わらないので、そこを回しながらReflectionかけて、次にもっと質のいい教育をやっていくために学習データが必要なんだ、必須なんだ、こういう見方で皆さんが各種提言を解釈していただけるといいのではないかと全般的に思いました。
 以上でございます。
 
【座長】  ありがとうございます。今のような考え方をどうやって国民に届けるかは、私たちの一つの大きな課題かと思っております。ありがとうございます。
 
【委員】  最近、私が回らせてもらっているのは、いわゆる先進校ではない学校です。ICTを重視するとか、今後推進していこうという研究もしていない学校を回ると、デジタル化に対してものすごく強いハレーションがある。
 「教育データを賢い人たちがいろいろ議論してくださるのはいいんですけど」と言いながら、不安に思っていることを整理しますと、1つは、期待はすごく大きいが、やはりそれと同じぐらいの不安があって、昔はセキュリティのことが心配だったが、今は、データコントローラーは私たちのはずなのに、業者が入ってきたら困る、ベンダーロックインの話もあって、「肝心の私たち教員が話から置いていかれていませんか」となるということです。「子供と教員でやろうとしているところに、知らない人たちが乗り込んできて、これ、いいですよねと言って、自分たちの手元にあるものがさっと持っていかれるような、そんな不安があるんです」とおっしゃっている先生たちがいます。
 2つ目は、誰のために役立つのかというのがあまりはっきりしていないのではないかということです。何となく話を聞いていると、自分たちの都合のいい優秀な人材を見つけ出そうとして、いろんなデータをとって、「この子、こんなのできるよね、じゃあ、引っ張っていこう」としているのではないか。私たち教員が、埋もれていきそうな子供、十分に力を発揮できていない子を一生懸命引き上げようとしていることにはきちんと役立つのだろうかという疑問があります。
 3つ目は、いろいろなことをデータ化していくには、何となく気持ち悪いという感覚があって、そこをきちんと説明してほしいと思っている。例えば、マイナンバーも便利だし、ぜひともやりたいとは思うが、なんとなく手を出せないという人たちが一定数いる。そこを考えたときに、子供の立場になってみると、自分自身のことが、全部先生にデータとして取られたり、業者や大人たちが見えないところで何かやっているとしたら、他人事だと感じてしまうからすごく不安なんですという話が出ていますので、そういう意見も、今後の参考にしていかないといけないと思いました。
 以上です。
 
【座長】  ありがとうございます。今の話は、学校という場が持つナチュラルセッティングのようなことをデータが破壊していくように感じられてしまっているということかと思います。教育データは先生方の実践の改善に必要で、子供たちのために寄与するということをしっかりと具体的なユースケースを持って私たちは伝えていかなければいけないということかと思います。貴重な現場の声をありがとうございます。
 
【委員】  今日の話を聞いて、先ほどお話がありました国が一元的にデータを持つのかということの議論が沸いたときには、私も振出しに戻るような感覚になって愕然とした覚えがあります。
 こういう無駄な議論につながらないように、いつでもどこでも誰でもということを実現するためにデータ利活用の目的を明確に、そして、分かりやすいユースケースをしっかりと抽出することだというのが今日の議論の始まりだったと思います。つまり、そういう無駄な議論が沸いてしまうというのは、社会と教育の課題があまり共有できていないというふうに思っています。
 文科省の方で提示いただきました資料の1-2、利活用の目的の具体的イメージというのが幾つか網羅的にありましたが、やはり全部一遍に実現するのは少し難しいと感じています。
 その上で、社会と課題を共有するためには何が最優先なのか。つまり、スタートアップのサービス開発における課題抽出の手法ですが、nice to haveではなくてmust haveなものをつくりなさい。つまり、あったらいいなではなくて、なくてはならないものだということを共通認識として社会と握らないと、データ利活用に関する共感は得られないのではないかと思っています。
 それは何なのかというのは、恐らく各お立場などによっていろいろ違うと思いますが、そこをしっかり議論してはいかがかと思っています。ちなみに私は、前回も少し申し上げましたが、やはり不登校、病気療養中とか、あとはコロナで実際に学校に行けないという社会における喫緊の課題が目の前に迫っているものを、データ利活用すると、不登校という概念自体がなくなりますとか、病気療養中であっても、コロナであっても、いつでもどこでも学べるプラットフォームがありますとか、もちろんReflectionや教育側の意義というのはあると思いますが、もっと喫緊の課題として共有できるものなのではないかと思っています。
 もちろん、これが不登校を助長するというわけではなく、「この科目は」というように、いろんな限定条件の中で認めていく。こういった遠隔であっても授業の一環として認めていくという教育側の姿勢が必要かと思います。デジタル庁が用意しているデータの流れについては、技術的には特に問題ないと思いますが、教育側の制度のアップデートが必要になってくると改めて感じました。
 もう一個、 医療と教育のデータの仕組みを比較してみたものを画面共有します。EHRというのは病院が持っているものです。それぞれ病院間の情報共有はオーケーで、医療の発展に役立つためのビッグデータ活用などに使われます。
 EMRというのは、その中でも先生たちが電子カルテのような形で持っていて、外部との共有はできません。医療従事者が閲覧しやすいことを前提として記録されているので、患者にとって見やすいようにはなっていません。最近話題になっているPHRというのは、患者自身の健康管理のためのもので、EHRとの違いは患者自らがデータを管理するということです。
 これを教育に当てはめてみたときに、病院と同じような学校間という形で考えたときには、これがELRと言われるものなのかと思います。教育の発展に役立つようなビッグデータ活用というのは、ELRを通じてできるのではないか。エデュケーショナルレコードという形でEERとした場合、これは教育版電子カルテ、先ほどできているような教員のナレッジシェアについては、例えば教職従事者同士で見たり、学習者が閲覧するものではない。つまり、これは成績管理と同じで学校が中心的に管理するべきものであって、学校が個人の情報を全部、順列をつけるのかという話ではない。
 今、話題になっているのは学習データというかPLR、パーソナルの方かと思っていまして、先ほどの違いは、学習者自らが持つ部分で、この辺が民間と共有する部分で、民間との連携についてはまだまだ先か思いますが、さっきの不登校とか家、学校外で学んだものをしっかり見取るというものに関してはPLRとか、あとは学校で両方を持つようなELR、EER、この辺の連携の話なのかなと思っていて、この辺を明確に区分けしながら議論していくべきではないかと改めて感じました。
 以上です。
 
 
【座長】  ありがとうございました。今の図、大変分かりやすかったので、ぜひまた提供いただいて、議論の蓄積に入れていただければと思います。
 では、ここで皆さんから出た御意見に対して文部科学省側から現在の見解をお願いしたいと思います。
 
【事務局】  ありがとうございます。
 データ利活用に関して、様々御意見いただきありがとうございました。また、我々の方でも、今日いただいた意見を踏まえて、図や概念整理をさらに進めていきたいと思っています。
 1点、学習eポータルに関して御議論いただいたところですが、事実関係だけですが、現在、eポータル側の標準は整備していますが、それとつなぐツール側の整備はまだこれからであり、学習eポータルとつながっているツールは、現在、まだMEXCBTしか存在していませんので、それ以外のツール、実際にeポータルの標準に基づいてつながっているツールはない状態です。
 ですので、恐らくおっしゃっているのは、eポータルを提供している事業者がサービスとして提供しているソフトのそれぞれのデータの型が違っているという話ではないかと思います。eポータルの標準と、ツール側の標準をつくっていって、デジタル教材とつながってきちんと連携していくという前提で議論は進めていますが、現状で言いますと、eポータルの標準に基づいてつながっているツールはまだありませんので、ツールをうまくつなげて、きちんとデータをお互いに連携できるような世界にしようということが、そもそもスタートでした。ですので、まだ学習eポータルとMEXCBT以外のツールがeポータルの標準に基づいてつながっている状態ではなく、個々提供されているツールは、恐らく今現在はそれぞれのデータの型が違ったものがあるという状態を前提として、これからeポータルの世界でツールをつなげていくことが現在、議論されている状況だということを共通認識とさせていただければと思います。ありがとうございました。
 
 
【座長】  というわけですが、今日は第7回ではありますが、私たちは、これまで何を決めていけばいいのか、どのように決めていけばいいのかを決めてきた段階から、このデジタル庁のロードマップのおかげもあって、あるいは振出しに戻るのではないかという佐藤委員の懸念もあって、国民の声もあって、もう少し具体的に今の段階でできること、見せられることを決めていく、見せていくタイミングに来たということが今日はいろいろ確認できたかと思います。
 文部科学省としての案も出てまいりましたし、医療との関係や、まずは取りあえずやってみるというところの共有が重要だろうという議論もしていただきました。
 つくば市では、そういうことを取り組み始めていますし、何か答えが決まるまで動かないではなくて、やりながら、よりよい方向に改善していくということに踏み出すタイミングに今、来たのかなと思います。
 そのときに教室、あるいは学校の中で学習者が一生懸命学習し、先生が一生懸命教えている、そういうことを支援する教育データと、教育ビッグデータになることによって様々な日本の実態が分かるという話とを上手に区別しながら、ユースケースとして整理していくことが必要だと感じたところでございます。


(以上)

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 総合教育政策局教育DX推進室

(総合教育政策局教育DX推進室)