教育データの利活用に関する有識者会議(第4回)議事要旨

1.日時

令和3年1月27日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データの利活用に向けた最近の主な動向
  2. 論点整理に向けて

4.出席者

委員

堀田座長,藤村座長代理,梅屋委員,緒方委員,楠委員,小崎委員,佐藤委員,白水委員,田村委員,戸ヶ崎委員,中村委員,橋田委員
 

文部科学省

瀧本初等中等教育局長,塩見大臣官房審議官(初等中等教育局担当),浅野初等中等教育企画課長,桐生学びの先端技術活用推進室長,佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐,三木健康教育・食育課長,度會教科書課課長補佐,齋藤情報教育・外国語教育課課長補佐

岸本総合教育政策局調査企画課長

オブザーバー

内閣官房IT総合戦略室,経済産業省サービス政策課教育産業室,総務省情報流通振興課,個人情報保護委員会事務局


一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC),一般社団法人 ICT CONNECT 21,一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの利活用に向けた最近の主な動向


※資料1-1「教育データの利活用に向けた最近の主な動向」及び資料1-2「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめ骨子案」に基づき、事務局及び情報教育・外国語教育課、教科書課から説明を行い、委員から意見・質問が出された。

(意見・質疑応答)

【委員】 デジタル教科書のところで、現在、私の研究でも閲覧履歴の利活用ということをやっていますけれども、コンテンツ、デジタル教科書の内容のデータというのは分かるのですが、それにどうアクセスしたか、どういうところで難しいと感じたとか、そういう履歴情報というのを使っていこうということは考えられているのでしょうか。

【教科書課】 学習履歴の活用につきましては、当然ながら教科書発行者ごとによって学習履歴をどこに保存するだとか、どういうふうに活用していくのか、活用できる形で取ることはできますけれども、今後、来年度の実証研究をする中で、学習履歴ないしログをどう活用するかということも含めて検討していきたいと考えております。

【委員】 そのときに、現在も議論している教育データの標準化、ログデータの標準化というのも大事になってくるのではないかと思います。各社が異なる形式でログを記録しても、後で分析するときに困るというか、集約して分析できなくなるということになりますので、ご検討いただければと思います。

【座長】 今の件は全くおっしゃるとおりで、一方で今、そのログの形式を明確に決められるかというと、取るログが十分にまだ想定できていないというところもあるので、これはやりながら早めのうちに決めていくという形にならざるを得ないかなと思います。デジタル教科書の学習履歴、学習ログについては、そのログだけ見て何かが分かるわけではなさそうで、おそらく教科書の中身との対応づけで分かっていくということです。教科書の中身の情報を今度は逆にどういうデータ形式でどういう形で持っていて、それを誰がどこまで参照できるようにしておくかということですね。教科書は採択されて使われますので、そのような様々な制度との関係の中で明らかにしていくという形になっていくかと思います。ですので、しばらく実践しながらということと、あと研究と同時に走りながらということになろうかと思っておりますが、そういう実証研究が来年度は動くということになります。

【座長代理】 デジタル教科書について、要望を2点お話しさせていただきたいと思います。
 1点目は、今のデータを取るということと同時に、現在、データ取得の中心として、ハブとして文部科学省で考えていただいている学びのeポータルとデジタル教科書の連携は大変重要だと考えておりまして、そこの間でデータのやり取りができるようなインターフェースをぜひ最初から計画に入れていただけるとありがたい、というのが1点でございます。
 2点目は、学校現場とそれから教育学の専門家から寄せられている要望で、実は、特に算数とか理科の関係で要望が多いのですが、教師用のデジタル教科書、指導者用デジタル教科書ですと、教師がある部分隠しておいて順に見せて、というのは可能ですが、学習者用デジタル教科書が最初に開いた状態で丸ごと見えてしまうと、算数であれば解き方から答えまで全部出ているというようなものでは「主体的・対話的で深い学び」が構築できないので、そこも配慮した設計にお願いしたいという、デジタルならデジタルのよさを生かした学習者用デジタル教科書の作りにして、その部分からどう学びを進めていったかというデータをうまく取っていけるような仕掛けにしていただきたいという強い御要望をいただいているものですから、ここでちょっと少しお話しさせていただきました。
以上でございます。

【委員】 先ほど座長のほうからお話があった点にも重なると思います。実は本市のほうでも参加を希望しているところなのですが、実は持ち帰り端末による家庭でのデジタル教科書の利用を考えております。このような場合、家庭でのアクセスと学校からのアクセスとのログの取り方というのは、例えば区別することができるのかというのが1つ気になるところです。
 そうすることによって、例えば家庭の中で知識・理解の部分は、反転学習のような形で理解をし、次の日、学校に来て、コミュニケーションの中で学習を深めるといったような学習形態にしていきたいと考えておりますが、その家庭からのアクセスと学校からのアクセスというのが区別できるのかどうかが知りたいなと思ったところです。

【教科書課】 若干不案内なところもありますが、今御質問いただいた履歴のログなどがどこに保存されるのかというところは、教科書発行者によって、例えばどこに保存するのかというその仕組みが違っていたりするものですから、現時点で、文科省から家庭で学んだ場合のログはここです、学校で学んだ場合のログはここですというのをお示しすることは少し難しいかと思っております。

【事務局】 私から2点です。eポータルとデジタル教科書のつなぎのお話がございました。こちらは今、eポータルの仕様を検討しており、文科省の事業の中でCBTとeポータルをつなぐということでやっておりますが、来年度以降、汎用的にデジタル教科書・教材等でもつなげられるような形での設計を考えておりますので、なるべく汎用的に各ツールとつながっていくといった中に当然デジタル教科書も入るような設計で考えていきたいと思っておりますので、そこら辺の連携はまた文科省内でもよく検討していきたいと思っております。
 もう一点、ログは、汎用的に教育データの標準化の中で、主体情報と内容情報とコード情報と区分して庁内でも準備を進めておりますし、こちらでも御議論いただいていますけれども、例えばコード情報の中で定義として、「どこで」「いつ」といったようなことの定義をきちんとしていく必要があれば、その定義をした上で、あとは各ツールごとにそれができるところとできないところとあると思うんですけれども、それは当然、こちらの有識者会議の議論の範疇に入ってくると思います。そういうものが必要であるということでしたら、そういうことをいただいた上でそのことを標準化していき、ツールごとに適用できるできないといったところはございますが、必要性があるのではないかといった御意見等を伺えれば、それをまた仕組みに反映させるようにして議論を進めていきたいと考えております。

【座長】 ありがとうございました。今、ここ数か月の国の動きをそれぞれ担当の方々から説明いただき、それに対して質問をいただきました。この質問は非常にクリティカルなもので、この後の審議の内容と非常にオーバーラップしております。
 今の段階でコメントをしますと、デジタル教科書と、文部科学省が始めたCBTのファーストシステムがどういうふうにつながっていくかというのも、やりながら決めていくのですが、そのときに色々な立場の人がいるわけです。教科書会社は教科書制度の下で動いていますし、各自治体、各学校もいるわけです。またログとして一定のアクセスログがいい意味で管理されなければいけないといったときに、委員がおっしゃったようなデータ形式の話のほかにもストレージをどこに置くかという話や、そもそもどういう仕組みでそういうことをやるべきか、自治体を超えたデータ管理、データ流通をどうすればいいかというようなこと、条例などのさまざまな課題が横たわっているわけで、そういうことも含めてトータルに検討する必要があるということになろうかと思います。私どもがこれから審議する論点整理の中に、本当に必要であれば論点として入れていくべきことであろうかと思いますので、次なる議題のところでそのことはまた改めて論じたいと思います。
 御報告の次は、先ほども申し上げましたが、座長代理にお願いします。政府の教育再生実行会議の中に初等中等教育ワーキンググループというのがあります。それと並行して高等教育のワーキンググループがありますが、2つのワーキンググループからそれぞれ数名の委員が出てきて、デジタル化タスクフォースというデジタルの部分だけを中心に議論しています。これは大臣とも膝を交えての議論なのですが、そういう状況の中で出てきた様々な課題、あるいは課題の整理について、本日は座長代理から御紹介いただきたいと思います。


※藤村座長代理より、資料2-1「藤村委員提出資料」及び資料2-2「教育再生実行会議デジタル化タスクフォース 主な課題の整理(案)」に基づき、教育再生実行会議デジタル化タスクフォースにおける検討状況の説明を行った。

(説明内容)

【藤村座長代理】 私どもが教育再生実行会議で検討してまいりましたことを御報告させていただきます。
 まず、デジタル化の方向性ということで、大きな話でいきますと、1点目の左上の丸にありますように、やはり教育のデータ駆動化でございます。今まで感覚論で行われてきたものをエビデンス・ベースドなものにしようということです。そのようなことが必要でしょうし、特に教育分野は、医療分野と比べるとその部分が弱いだろうということです。そこで右上にありますように、個別最適な学びと協働的な学びの実現のためにこの教育データを活用し、そしてまた、せっかく1人1台端末が整備され、今回、MEXCBTというCBTを文科省が構築しましたので、それらをうまく使いながら、データ駆動で教育システムを変革していくということを目指すことを考えております。
 また、個人情報の取扱いについてはどのようにあるべきなのかということを明確化し、データの標準化やコンテンツの共有等についても考えていこうということになりました。
そこで、大きく分けていくと、急ぐべき課題と、それから中・長期的な課題の2つに分けて検討させていただきました。「急ぐべき課題」、これは2021年3月末までにぜひやりたいものとして、1点目はチェックリストや手引き等の作成でございます。現場でどのように1人1台端末を運用し、クラウド・バイ・デフォルトでどのように整備したらいいのか、また家庭に持ち帰ったりしても有害情報からちゃんと守られるような方策ですとか、先進的自治体のガイドラインを例示して、例えば持ち帰りを規制しているところも、こうすれば大丈夫ですよというようなことも示したいということでございます。
 2点目は、教師のICT活用促進と指導充実に向けた支援ということで、今回、1人1台で文房具として活用していくようなことになるわけですけれども、そうしたときのメリット等についても周知するとともに、教育改革の意図もお知らせするということです。また、効果的な活用はこんなイメージ、というのを実感できないと先生方はなかなかお使いいただけないので、そういう情報提供もしようということになりました。
 3点目は個人情報の取扱いです。これは後ろのほうで御説明させていただきます。
次に、教育データの標準化は、先ほど、事務局から説明のあったとおりでございます。
 5点目が、分析・研究体制ということで、先生方はデータの読み取りの専門知識を持っていないことがごく普通です。それをデータだけ示して何とかしてくださいというのは、かえって負担増になりますので、そういった部分の支援を考えていきましょうということになっております。
 2ページを御覧ください。中・長期的な課題でございます。学習履歴、これはスタディ・ログと呼んでいますけど、そういった各種のデータの利活用をしましょうということです。新たな学びに対応したラーニング・マネジメント・システムの活用を促進するということで、先ほど事務局から御説明のあった学習eポータルの標準仕様を策定し、その普及を後押しします。ここがハブになって様々な教育データも収集するし、いろんなコンテンツですとか、CBT等についても活用していくということです。
 そしてまた、往々にしてスタディ・ログ、学習履歴だけ見ていくことがあるのですが、大阪市等で実践されました文部科学省事業で、スマートスクールでデータを取っていくということ、学習系と校務系のデータを連携させて先生方の役に立つ情報を可視化するという事業で、スタディ・ログ(学習履歴)、ライフ・ログとして生活・健康情報、そして教師の指導情報とその効果の情報であるアシスト・ログをうまく取得して活用しましょうということになりました。
先ほど御説明のあったデジタル教科書の普及促進、そして統合型校務支援システムの100%普及を目指し、そのために、なかなか導入ビジョンを描けないところのためには、小規模教育委員会に対しては一部事務組合的な運用も促進していくということです。
 また、2番目に教育ビッグデータの効果的な分析・利活用の促進ということで、これはAPPLICにも御協力いただきながら検討を進められています学校健康診断情報を活用したパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の実現です。
また、個人情報保護制度に係る学校教育の情報の取扱いの明確化、これは後ほど御説明します。
また、分析・研究体制、フィードバックをどうするか。その他、マイナンバーとかユニバーサルID等の認証との絡みも検討を進めようということになっております。
 3番目です。ICT活用の抜本的拡充に対応した情報通信基盤、先ほど座長からもお話がありましたけれども、この辺は大きく検討が必要となっております。今、具体的な説明は省略させていただきますが、ここは大きな課題だろうと考えております。
 4番目、デジタル技術による教育手法や学務の高度化・効率化ということで、学習履歴証明書のデジタル化、これは高等教育等におきましてデジタルバッジという形で、どういう資格を取得したとか、どういうものを学んだとかという情報を生涯にわたって持ち歩けるようにするということです。
また、日本発の大学オンライン教育プラットフォームということで、今まで以上に、この電子化によって単位互換を進めていくとか、そういうことをしましょうという話になっております。大学教育のデジタライゼーション・イニシアチブということで、現在、既に公募が出ておりますけれども、大学のデジタル化の促進や小規模大学等へのサポート、eポートフォリオ等も出てございます。
 次に、デジタル化の担い手となる人材の育成ですが、ここはデータサイエンスが重要になってくるけれども、その人材が不足しているということで、その育成がうたわれております。
 6点目は、注意点というような形で、子供の視力低下など健康問題への配慮ということで挙げさせていただきました。
次に、デジタル化タスクフォースの審議経過は省略させていただきます。
 4ページ目です。個人情報保護制度の見直しに向けた中間整理でございます。こちらは内閣官房IT総合戦略室から提供があった資料でございますが、現在、自治体の数だけ個人情報保護条例が異なっており、クラウド・バイ・デフォルトでクラウドを使いたいけど認められていないなどの問題点がございます。そこで、ここにありますように、現行のそれぞれにある法律を見直して、共通部分と独自の部分というようにするというものでございます。それをもっと分かりやすくしたのが5ページ目の資料でございます。
バラバラなものから共通ルールに基づいて共通部分にさらに上乗せする部分があったら入れましょうというような、そういうイメージでございます。
 次、6ページ目を御覧ください。こちらは先ほど申し上げた「スマートスクール」という略称で呼ばれていますけれども、「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業-エビデンスに基づいた学校教育の改善に向けた実証事業-」で、実際に今、この有識者会議で検討しているような教育データの利活用を進めてまいりました。
 7ページ目を御覧ください。これは大阪市の事例でございますけれども、左側にあります「活用するデータ」は、統合型校務支援システムのデータ、デジタルドリルの学習履歴、それからデジタルテストシステム、CBTの結果、そして、ここでは学習履歴以外に、先ほど申し上げたライフ・ログ、生活健康情報等として「心の天気図」、今日の心の状態は晴れだよとか、雨ですとか、雷ですとかを可視化して、先生方が子供の心理情報を毎日把握しながら学習との関連等を見て、不登校傾向のあるお子さんとか、少し悩みのある子供の早期発見をしたりするなど、有効な活用をされていました。
 8ページを御覧ください。こちらが具体的な画面イメージです。特に右側のところを御覧いただきますと、4番の部分に「心の天気図」がございますし、6番の部分には様々な学習系の情報、7番には成績情報、そして3番の部分には、学習や生活の様子の先生方の記録が出ていたりします。様々な情報をこのように可視化することによって教育に役立てるということで、大変大きな成果を上げております。
 9ページ目を御覧ください。先ほど申し上げたデジタルバッジと通称されているもので、「デジタル学修履歴証明書」でございます。このようなものを高等教育で導入して、せっかく得られた情報を有効活用するとともに、就職後もこういったものを客観的に就職先の企業が見られて有効活用できるというようなことも考えております。
 10ページ目を御覧ください。これは日本初大学オンライン教育プラットフォームという形で、様々な大学に属する学生が国内外の大学とコンソーシアムを組んで単位互換協定を結んで、オンライン教育プラットフォーム場でよりよい学びを実現していくということを構想しております。
以上が、デジタル化タスクフォースで検討してまいりました話題でございます。座長から何か補足があればお願いします。

【座長】 資料2-2の1ページ目に当たる「急ぐべき課題」のところです。教育再生実行会議で萩生田大臣が強くお話しされたのは、このデジタル化タスクフォースというのは別にGIGAスクール構想のためにつくられたものではないけれども、初等中等教育においては、GIGAスクール構想というかなり今までにない整備が、しかも一斉に進む中、それを以前から準備していて受け止め切れる自治体と、そうではなく、急に来たように見えている自治体があろうかと思います。自治体内の条例整備やルールの設定、運用の色々な経験があるところと経験がないところがあるので、そういうようなところでもうまくやっていけるような、ある程度の一定の指針を国として何か出せないものかというような話がこの「急ぐべき課題」の中の1の(1)です。
それ以外のことは、喫緊できることはやるけれども、全部はこの3月までにやれるわけではないので、まずできるところから始めるという課題になりますが、(1)については、3月までに、とにかく新しい端末が来たときにこうしなければならない、という何らかの国の姿勢を見せるべきだということです。
 でも、これは例えば昨日の中教審の答申にも、持ち帰りが望まれると書いてあったり、クラウドを使うことを前提としてとか書いてあったりしますので、ほかの文書も含めて国の姿勢は出されているところですけども、設置者である自治体がそれを、その前提ができるような運用体制になっているかということが1つの課題になっているということです。
私からの補足は以上です。

【藤村座長代理】 それでは、資料2-1をご覧ください。
 今、デジタル化タスクフォースの5名の委員と萩生田文部科学大臣で毎回熱心に話し合ってきたことについて座長からも補足いただいたところですが、実際にそれらを基にしながら、既に、先ほど学びの先端技術活用推進室のほうでCBTシステムを開発していたり、それから学習eポータルの検討を進めたりということで、特に学習eポータルについては、本有識者会議の委員等にも一緒に参加していただきながら実際に検討を進めております。
それらの中でちょっと見えてきて検討しなければならないなと感じている部分について簡単に御説明させていただきます。まず、この教育データの利活用というときに、学習者・教職員・設置者に負担をかけずに効果を最大化するデータの利活用という視点が大事だと考えております。データだけ出しても、それをどうしていいか分からないと、本当に利活用ではなく、ただ出しているだけということではまずいなと思いましたので、これから申し上げるようなことを御検討いただくといいのかなということで少し話題提供をさせていただきます。
まず、3月末までにGIGAスクールの端末整備が行われることになっておりますけれども、それがこういう教育データを上手に利活用しながら、またデジタルの学びをうまく生かしながら教育改革するという共通理解がどうもされておらず、単なる端末整備だと捉えている自治体も結構多いという課題が見えてきております。
 また、パソコン教室の活用と同じように、月に数回使えばよく、それ以外のときは保管庫にしまっておくんだというイメージの先生も多くいらっしゃるという話を聞いております。したがって1人1台タブレット端末の文房具化、つまり筆入れとかと同じように、しまわずに毎回出しておき、フィンランドやその他の教育先進地域でそうなっているようなことを考えつつ、その中でうまくデータを取って教育改善に資するということを早めに啓発する必要があるかなと考えております。
また、学校設置者側では、ただ端末しか整備していない自治体があると、漏れ聞こえてきております。したがって、今後データの利活用をするためにはソフトや整備が必要ですよ、国でこういうことを考えていますよということを含めてモデル提示もしていく必要があり、それをできるだけ早くする必要があると考えております。
 次に、これから申し上げますのは、ユースケースの明確化ということ、それからデータの利活用に必要な法制面の検討についてお話しさせていただきます。
いろいろなところで活用が進んでまいりまして、ユースケースが結構出てまいりました。どういうデータをどう活用すればどういう効果が生まれるのかを一度整理してみる必要が早い段階であるのではないかと考えております。実際に私も関わっております「学びの保障オンライン学習システム導入に係る調査研究事業」では、実証校は300校ほどありますので、そこにうまく質問紙を設計して、そして時にはヒアリング、面接調査を行うことによって、こういうことがあるとありがたいんだけれどもというのをできるだけ早く拾っていただくといいのではないかと思います。
また、ネット上でブレーンストーミング的オンライン調査からこういうことを期待したいというような意見もやって、それを構造的に整理することをできるだけ早いうちにしていただけるとありがたいなと思っております。
次に、データの利活用に必要な法制面の検討です。これはとても大きな話だと思っておりまして、「データオーナーの明確化」がないと、データ利活用そのものが認められる認められないの話になってしまうと考えております。これは私の個人的な考えでもありますけれども、これまで公教育では、子供のノートを見て採点してアドバイスしてだとか、学びの足跡を見てここをサポートしなきゃなとかを考えたりしていたんですけれども、そういう公教育の中、学校教育の中での子供たちの学習成果物や様々なデータについては、これは子供の許諾を取らなくても学校がちゃんと活用できるようにしないと、公教育が成立しないと思っていますので、公教育データという概念を新たにきちんと整理していく必要があると思います。
そしてまた今回、教育データの利活用では、家庭での学習や塾での学習ですとか様々な公教育以外の私的なデータ、公教育がパブリックだとすれば、私的データはプライベートと言っていいのかもしれませんけれども、そういうのをきちんと区別して、データの法的な整備をしていく必要があると思っています。
 また、現在、各事業者さんからヒアリングしており、見えてきましたのが、教育情報セキュリティポリシーガイドラインの改訂の必要性です。もう間もなくこの検討が始まりますけれども、強い要望としては、今、3回線、3システム分離しているために校務系、学習系の間でのデータのやり取りが極めて困難であるという話が出ています。3回線分離し、データのやり取りを行うためには、中間サーバーを必ず置かなければならないみたいな高コスト化が発生していると聞いております。そこで民間企業等、今、テレワーク等もしながら家から安全に業務ができるようになっていますけれども、そういうようなゼロトラスト、そもそもセキュリティーも最大限に考えて、セキュアに情報流出を制御するという発想でもう一度考え直したらいかがかなと思っております。1回線でも十分安全は担保できるということで、最新技術の導入をお考えいただく必要があるかと思います。
 また、安全かつ低コストで個人を認証して、これは誰のデータだよということをひもづけることがデータの利活用では絶対条件になりますので、できればユニバーサルIDが使えればいいのですが、難しければユニークIDなどの何らかのものを考えたり、それを国がコントロールするのではなくて、Decentralized IDといいまして、個人が自由に使うIDを選んで活用できるみたいなことも最近の技術としてありますので、それについて御検討いただければと思います。
 2ページをお願いします。
 ハードウェアでは、共通データの保存・流通基盤が必要だということです。
ソフトフェアでは、現在スタディ・ログのみ取ることを考えているけれども、ライフ・ログ、アシスト・ログを考えるということと、教員へのリコメンドとして、教員支援システムの開発というのが必要だろうと考えております。
人的支援として、「ICT支援員」じゃなくてではなく「ICT活用教育支援員」にしていく必要があると考えております。
 3ページ目を御覧ください。現在、学習eポータルでは、スタディ・ログを取ることを考えていますが、実はライフ・ログを取るということがこれまでの研究で出てきました。それを取ると同時に、教師がどんな教材を設定したのか、どんな活動指示をしたのかというアシスト・ログを取り、その分析を介して教員支援システムでリコメンドとして提示することを考えるということです。
 4ページを御覧ください。これは先ほど座長がお話しされたデータの置場の話です。左下の赤四角の部分の箇所について、学校の公教育データと私的データとビッグデータの流通基盤をどう整備するのかをぜひ御検討いただかなければならないということを考えております。
私のほうからは以上でございます。

【座長】 このご説明いただいた議論が教育再生実行会議のデジタル化タスクフォースで始まっており、それをこちらの委員でもある藤村先生が後半のほうはお考えとして述べられたということになります。
 特に後半のお考えの話は、この後の検討の内容とも重なってまいりますので、その論点整理に向けた検討の中で、また何か適宜こちらに戻っていただければと思います。ありがとうございました。

議事2.論点整理に向けて


※事務局から、資料3-1「教育データの利活用に係る論点整理に向けた検討資料」に基づき説明を行い、委員から意見が出された。


(委員からのご意見等)

【座長】 皆さんにまず座長として少しお話ししておきたいことは、この委員会はそもそもタイトルが、「教育データの利活用に関する有識者会議」という非常に漠とした名前の会議になっております。それは、これが発足した7月7日の時点では、教育データというものはどこからどこまでするか、どう利活用するか、ユースケースはどうか、その標準化、あるいは仕組み、こういうようなことについて、他省庁のあるいは他分野のいろんな動きとうまく対応づけしながらやっていかなければならないという状況の中で、ふだんの文部科学省の色々な検討会議に比べると、非常に多様な位置から委員の方々に御参加いただいているところでございます。
 だからこそ出てくる意見は非常に多岐にわたっておりまして、簡単に取りまとめというのができる状況ではないということで、今まで3回いろんな情報提供も含めてやってきたわけですが、ここら辺でひとつ、論点をきちんと整理する必要があるだろうということで、事務局の方々が鋭意まとめていただいたということになります。
 この論点も、スモールスタートできるようなものもあれば、これはかなり先まで考えなければならないですよねというようなものまでいろいろあろうかと思いますが、そのことも含めて本日は、できれば全員の委員の方々に御発言をいただければと思うところです。その際には、それぞれの御専門の立場から、何ページのどの項目についてどのようにお考えかというようなことについて具体的にご発言いただきまして、この論点整理を公表するときには、できるだけ具体的な論点を、そして急ぐものはどれなのか、少し中期的に、あるいは中長期的に考えていくものはどれなのかということも、ある程度の切り分けをして出していければいいかなと思っているところでございますので、御協力をよろしくお願いいたします。
それでは、ここから先は、挙手いただき御発言をお願いします。

【委員】 先ほど座長代理、または論点整理の中で出ておりましたけれども、公教育データの部分についてお話しさせていただければと思います。
 まず、公教育データがなぜ必要かということについて、データのオーナーが学習者であった場合、例えば学校活動、教育活動において、先生たちが一々その学習者の承諾を得て使うということは大変だという、その利活用の不便さからおっしゃっているのかなというように受け取りました。もし違っていたら御指摘ください。
 もしそうだとするならば、僕はそのデータについては、今、3種類ぐらいあるのかなと思っています。1つは、学習者が学習のために自ら学んでいるいわゆる学習データ、そして学校のデータ、例えば学校が安全・安心で、または教育活動がスムーズに行くように、教員がFDのような形で動いているかどうかというような教員のデータとか、学校の活用に必要なデータ、そして今申し上げた1と2、これを足した3つ目のデータというのもあるのかなと。これは先生が学習者に指導するときのいわゆるアシスト・データ、きちんと使えるようなアシスト・データなんじゃないかなというふうに思っています。
 まず、3つ目の先生のアシスト・データというのは、学習者の権利として、権利というか、データを借り受けてそれを使う場合、利便性が悪いようであれば、例えば最初に入学の段階で、学校で取られる学習データについては学校が利用できるという許諾を最初に取っておくとか、そういった形の方法が考えられるので、オーナーシップに関してはやはり学習者にあるべきだと思います。なぜなら、学習者が学校で学んだデータを、例えばインターナショナル・スクールのようなところ、各種学校とかに自分の学んだデータを持ち出したい、または塾などを含めた民間のところに持ち出したいといった場合、学校の承諾を得て自分のデータを取らないといけないということになります。これは本当に正しいことなのか疑問があります。
 例ですが、フィンテックが、デジタルテクノロジーを活用した各業界、今すごく大きく活況に動いています。医療もその1つですし、金融もその1つです。金融においてはフィンテックというものが動いているんですが、もともと預金者のデータというのはメガバンクがずっと持っていたわけですけれども、そのメガバンクが持っていたデータはメガバンクのものだから外に出さないというような動きにもなりました。これは学校に当たるのかなと思います。でも、金融庁がそこのデータは誰のものか、預金者のものだろうということで公開することによって、そのデータを自ら用い、そして自分の、例えば資産状況を分析したり加工したりするための二次利用に使えるような形になって、民間でフィンテックなどがさらに活況になりました。同じように、学習者のデータは学習者のものであり、学校はそれを利用して使うものであり、その利便性に関しては最初のパーミッションを取ればいいだけの話かなというふうに思います。
 最後に、原則の部分があったんですけれども、Pedagogy First,Technology Secondというのがございました。僕はLearner First,Pedagogy Second,Technology Thirdという形で考えるべきじゃないかなと思っておりまして、やはり教育は何のためにあるのかということを、テクノロジーはあぶり出すというか、もう一度原点に立ち返り考える、教育は学習者の成長のためにあるんだ、主体的学習者のためにあるんだということを、もう一度立ち返るいい機会になってきたんじゃないかなと思います。
以上です。

【委員】 私からは、全ページにわたって意見をさせていただきます。
 まず、1ページです。1番の「年齢・段階」で、学校外におけるデータをどこまで対象とするかは要検討とありますが、ここは是非とも取り扱っていってほしいです。
 2番の「主体」の3つの中で、世間の関心も高く当面中心となるのは、1の児童生徒(学習者)に関するデータだろうと思います。その際、現場感覚としては定性的データも対象とすることは大いに賛成ですが、「定量的なスタディ・ログの収集」に特化させた取組など、領域別に分けた議論や検討チームの設置が必要になるのではないかと思います。
 3ページです。一次利用と二次利用では、教育委員会や学校の関心は一次利用のデータにあるわけですが、データ分析は疎か、収集・蓄積についてもまだ踏み出せていません。「一次利用を優先的に議論」とありますが、一次利用のデータ利活用で得られる効果等については、根拠や仮説が必要です。その根拠は学術的に得られるわけで、二次利用の研究等の成果から、一次利用で取得すべきデータや収集・蓄積方法が明らかになってくる場合もあるかもしれません。この2つの利用目的が分断されないように、同時並行で進めていくべきと思います。
 4ページです。2の「記録の範囲」は、5ページにもありますが、GIGAスクール構想の充実の視点からも早急に着手すべきと思います。具体的な活用場面をイメージすれば、必然的に収集すべきデータが見えてきますが、日々の評価のためのデータ活用なのか、将来的に、高校や大学の入試での学習履歴の活用なのか、活用場面によって収集データ等も異なります。ここは皆で議論するよりは検討チームで議論する方が効率的かと思います。
 5ページです。2の「学校現場におけるデータ利活用の在り方」ですが、教師が納得感を持って理解できるようにするためのサポートとしては、教師だけへの支援では限界があります。下の〇とも関係しますが、学校現場を身近で指導する教育委員会事務局職員のスキルアップ、そして、教員養成段階においても、データを利活用できる最低限データリテラシーの育成が急務であると考えます。
また、極論すれば、教育データはすべて過去のものです。evidence-informedで過去のデータを常に変化している現在やさらには未来に向けて解釈し、どのように活用するのか、納得感を得るだけではなく利活用方法を具体的に創造できる、一歩進んだデータリテラシーも課題だと思います。
 6ページです。2番の「ビッグデータの利活用の在り方」ですが、ここで重要なのは、「学びの成果をどう測定するのか」といった視点です。現在は、主に全国学調や都道府県ごとの学力調査等を使用していますが、それだけでいいのか、標準化された定量的データを収集・蓄積するための国としての基幹となる調査等についての検討も必要かと思います。また、ビッグデータの結果や知見を学校現場で生かすためにも、今後は教室をフィールドに、研究者と実践者が議論する場作りも必要と思います。
 7ページです。学習指導要領コードの活用についても、学校や教育委員会と産官学が連携し積極的に議論を進める必要があります。各自治体等で発信している優れた授業の動画や学習指導案、また、オンラインでの家庭学習で活用できる教材や反転学習で用いる教材などのコード化やデータベース化ができるといった様々なメリットも考えられると思います。
 最後に8ページです。ここでまとめているような教育データの利活用の意義や目的が、全国の教育委員会や学校に浸透することが重要だと思います。手段の目的化が起こらないよう、また、教育委員会や学校のデータ利活用の自立した取組が広がるよう支援する意味でも、ここでの議論や取組の途中経過等も含め丁寧に教育委員会や学校に伝えていってほしいと思います。

【委員】 座長代理からの御説明と前の委員もお話しされましたけれども、データのオーナーという言い方で少し気になったのですが、データは物ではなく、コピーしたりできるので、あまりオーナーという考え方は使わないほうがいいんじゃないかと思います。
 例えば、学習者本人は、当然自分のデータを自由に活用できる権利を持つべきだというのは全く大賛成ですけれども、特に一次利用の場面で、そのデータを何らかの仕切りの下で当然教員も使わないといけないし、学校も保護者も使わないといけないかもしれないということなので、オーナーではなくて、誰がどういうふうに使うかということにフォーカスして議論をしたほうがいいのではないかというのが1つです。これはコメントです。
 それから、一次利用と二次利用という話、事務局から御説明いただきましたけれども、ここでもう一つ付け加えておくならば、データを一次利用すべき人は全員なんです。あらゆる学習者とか教師とかがデータを一次利用するべきだと思うのですが、二次利用はそうではなくて、母集団の一部でいいんです。だから、二次利用のためにいきなり全員のデータを集めるというのは大いなる無駄なんです。
 一方、一次利用は全員がやらないといけないので、どの学習者も自分のデータをフル活用できるということをまず担保する。それは学校からもらったデータでもいいし、教材を使ったときのブラウジングの履歴とか、デジタル教科書でどこに線を引いたかとか、どこでどういう疑問が生じたかみたいな、そのようなデータを含めて自分が管理できて、それと日頃の生活習慣とか生活行動とか、何時に寝て何時に起きたみたいな話も、PHRという話も出てきましたが、そういう生活行動全般のデータも含めて、本人が自由にフル活用できるというのが一番重要で、それが本人の同意とか、あるいは入学したときの取決めに基づいて、教育のために教員が当然使うというような体制をまずつくるということが一次利用ということだと思います。
 そうすると学校で生じたデータ以外のいろんなデータが本人のところに集まって、集まるということは即名寄せされるということなので、名寄せされたデータを誰かが集めて、ビッグデータとして統計・分析するというのが二次利用ということになるわけですが、そういうやり方のほうが、学校の仕組みだけを使って集めたビッグデータよりもいろんな種類のデータが含まれていて、かつ名寄せされているわけですから、はるかに価値が高いと思います。
 ですから、まずは一次利用のために本人にあらゆるデータを集約すると同時に、そのデータを、おそらく本人の同意に基づいて、あるいは保護者の同意に基づいて集めることができる。そういうことを並行して考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
同意で集めるというのは大変だということをおっしゃる方が時々いらっしゃいますが、決してそんなことはなくて、例えば臓器のドナー登録とか、この間、LINEでやっている新型コロナのアンケートみたいのを見ると、臓器のドナー登録は、免許証とか保険証の裏に、してくださいというのを書いているとかそういうのでチェックするわけですけれども、そういう保険証とかを持っている人の2割ぐらいがオプトインしているそうですし、LINEのアンケートだって、八千何百万人のユーザーのうち、千五、六百万人がオプトインしているわけですから、十分な量のデータは簡単に集まると思います。
以上です。

【委員】 私からは2点です。
 1つは、データを扱うのは、教員はもちろん子供たちが直接扱うということになりますから、教員のスキルアップというか、それを管理するような中身についてしっかりと理解して支えていくという意識を持ちながら全体を考えていく必要があるのかなと思っています。
 もう一つは、気になった言葉が、学校で使う「学校外」という表現ですが、今、持ち帰りということも始まっている奈良県の状況で見ますと、もともと学校の中でスタートしたものであっても、そのデータを子供が家に持って帰って使うということになったときは、当然親も関わります。学校内とか外とかいうのはちょっと今までの概念とは変えていただいて、基本的にはどこで扱ってもというベースでないと、考え方が難しくなるかなと考えたりしました。
 先月、県域で統一アカウントを利用していることを生かして、県内全ての小学校6年生を対象に自治体を超えて一斉に到達度調査をしてみました。奈良県全体にわたって一気にデータが集まり、紙では無理だったことがデータ処理で容易に行えたことと、何よりも答えた瞬間に、先生が採点しなくても本人に結果が見えている、終わったときに、まずは自分で自分の結果が見えているという状況で子供たちが喜んでいる姿を見ると、データの質の問題、扱いの問題というルールをしっかり決めなければならない。それこそ最初に申し上げた、先生、子供がどうやって扱っていくことになるのかということを見据えた、使いやすくて安心・安全なという視点はすごく大事かなと、そんなふうに感じています。
以上です。

【委員】 私のほうからは2点、簡単にコメントをさせていただきます。
 1点目は、先ほどの委員の御意見と対照的な形になりますが、2ページの「原則」についての1点目、Pedagogy First,Technology SecondにLearner Firstを入れるかどうかということについては、私は現状のままのほうがよいかと思います。
それから、3ページ目について、先ほどの委員の場合は、1点目の一次利用というところで、先生も子供も使うということを一緒にしているような形を分けたほうがいいのではないかということについても、現状のままのほうがよいかと思います。
 この2点は、理念的にもデータの使い方にも非常に一貫しているのですが、実は私も理念としては賛同するのですが、この時点での論点整理としては、現状のPedagogy First,Technology Second、それから、この一次利用に子供も先生も一緒に入れたような形にしておくのが賢明な判断ではないかなと考えております。
 理由は、子供たちが本当に一人一人、小学校1年生から保護者にも支えられていつどこで何を学ぶかを決められるような社会になっていけば、Learner Firstというのがどこでも充実して実現できるように思います。ところが、今現状そのように世の中がなっているかというと、やっぱり学校の中で教育として行われて、一人一人がLearner CenteredになるためのPedagogyというのを先生が一生懸命実現して、その中で一人一人が主体性を獲得していくのを支えている、それが今の時代なのかなと思います。このちょうどトランジションの転換期においては、まずはPedagogy Firstの原則でデータを使っていくと。その中で、先ほど委員がおっしゃっていたようなデータの具体的な承諾の取り方というのは、個人個人が自由に使えるような形のやり方というのを工夫して付加していくというのが賢明なやり方ではないかなと考えております。
 もう一つ、学びにおいて、例えば皆で知識をつくっていくとか、皆で知識を使っていくというときに、お金とか体というのは個人個人のもので、使ってしまえばなくなったりその分疲れたりするんですけれども、知識というのは使っていくと増えていく。そういう個人に帰属し難い面があると考えると、子供たちが学校の中で協働的に学んだ学びの成果は、一体誰に帰属するのかが難しいというのもあるので、今のこの現行の体制にフィットしたような形でスタートしていくのがいいのではないかと、そのように考えました。
 2点目のコメントは、原則の5つ目、「スモールスタート・逐次改善」と書いてあるところの「改善」というのをもっと強調していけるといいかなと思いました。
本日の前半のほうで、効果的なあるいは質の高い実践という話があれば、それを優良事例やモデルとして共有するという話をよくお聞きしました。ところが、この優良事例の「優良」を誰がどう決めるかと考えると、結構これは難しい問題になります。それに対して、これまでの教育実践研究の教材の共有の仕方の鍵は、事例を使ったときに一体何が起きたか―先ほど委員からあったような、教育の評価ですね―その効果も含めて、「この学校のこの教室で使うとこういうことが起きました」というユースケースを必ず一緒に提示していく。それによって、実際にこの教材を使ったり、あるいはこういうICTの活用をしてみると何が起きたかというエビデンスをまさに一緒に共有して、じゃあ、次にそれを参考にして使った人がちょうど商品のレビューのように、うちで使ってみたらこうだったというユースケースをお互いにためていくようなデータの共有と活用をしていく。それによってこの教育データ活用というところは、いろんな取組を自分で研さんしながら前に進んでいく、そういう取組をやっているんだ、教育の世界の難しさというのを踏まえて、その利活用というのを懸命に吟味しながらやっていくという原則を見せていけるといいのではないかなと思いました。
以上でございます。

【委員】 特に検討用の資料ということで、最後のスライドの活用イメージとかは、非常に明確にいろいろなイメージが出ていてとても参考になりました。
 1つ、この会議の範疇から少し外れるかもしれませんけれども、こういったことをこれから御検討いただければと思ってコメントいたします。文科省で、学習指導要領のIDを決めるということをしておられて、先ほどデジタル教科書の御説明があったときに、例えばそういったIDを中に埋め込んでいくと。それから、例えばCBTの中にもそういったものが埋め込まれていくというような、データのサプライヤーの側のお話というのが多分出てくると思うのですが、例えばキャッシュフローといいますか、埋め込むことはかなりコストがかかる話なんですね。
それに対する何らかの考えを決めておけば、教科書会社やドリル会社等もそういうところに乗ってくるだろう。そういうことを考えておくと、今こういったデータの利活用ということが、単なる議論とかあるいはナショナルプロジェクトだけではなくて、それが終了した後の民間での自走する形として成立し得るような気がします。
 1つの案としては、例えば現在、サートラスで教育目的の二次利用の補償金というものがあって、そういったものが小中高でこれから回り始める。そういった例えばキャッシュフローとかをいろいろ考えて、単にデータを活用する側が何かいいことがあるよねというイメージだけではなくて、そういったものを仕込む、データをサプライする側にとっても、きちんとビジネスとして回る仕掛けになっているというようなビジョンを示していくこともこれから必要ではないかなと思いました。
以上です。

【委員】 私は教育学の専門家でもないですし、教育の行政に直接携わっているわけではなですが、第三者の意見としてお聞きいただければと思います。
 その上で、私のほうから少しコメントさせていただくとすると、特に総論と原則の部分のところの話なのですが、年齢とか主体とか対象という形で書いてありますけれども、ぜひ1点考慮いただきたいのは、いわゆる受益者というか、利害関係者ということに関して明確にしてほしいと思います。
 これは結局、このデータを集めて何をやるのかということに関して誰のメリットなのかということ。当然、いろんな方々、いろんな利益があると思いますけれども、やはりまず教育学の研究をされる方、また教育の行政の方々、教師の方々、さらに言えば、実際の子供ですね、児童及びその保護者という者が多分、利害関係者になってきます。さらに言えば、教育データの利活用による最終的な受益者というのは、やはり本来的には児童及びその保護者であるべきだと思います。そこら辺の部分に関して明確にすると同時に、そのためには何を目標にするのか。要するに何を評価基準にするかという定量的なものも踏まえた言及をぜひお願いしたいと思います。
 さらに言えば、おそらく児童及び保護者という観点から見ると、やはり自分、または自分の子供がどの程度習熟しているのかということが、たぶん一番関心があるのではないかなと思います。ですから、その点で言うと、当然いろいろ言及があると思いますけれども、データの中に、習熟度に関する定量的なものを入れるということを明記していただきたいと思います。そうでないと、要するに何のためにやっているのか、単にこのカリキュラムをこうやりました、というだけでは意味がないわけなので、そういったものを、何らかの形で第三者が評価できるような形のポータビリティーというものも併せて御議論いただければと思います。
私のほうからは以上でございます。

【委員】 2ページのところで、特に最後にある「スモールスタート・逐次改善」というところが非常に重要だと思っておりまして、既に、そもそも本当に全数データは必要なのか、サンプルデータでも十分取れるのではないかという御指摘もあるところですけれども、やっぱりビッグデータという議論になると、目的を限定せずにできるだけ多くのデータを取ると、それから何か見えるものがあるのではないかと思われがちではありますが、逆に、例えば教育データというのも、これは大人になってから何ができるようになるかみたいなことは、色々な意味でプライバシー・インパクトのあるデータになるおそれもあるわけですから、当然教育として活用されるべき、あるいはどういった応用があるのかということをしっかりと研究していくことと並行して、そのデータがどのように悪用されるのかというところもしっかり見ていく必要があると考えております。
 例えばデータの種類によっては、これを長期間保存すること自体を制限したほうがよい場合というのもあると思います。そういうことは実際に使おうとして分析してみないと分からないものですから、やっぱりスモールスタートしながら、逐次改善しながら効果のあるものを全体に広げていくということは非常に重要でして、GIGAスクールそのものは全国の施策ではありますが、そこでのデータの取り方ですとか、あるいは取扱いのルールということはきちっとスモールスタートで考えていくことが重要なのではないかと思います。
 かねて、マイナンバーを使う使わないみたいな議論もありましたけれども、これもマイナンバーの12桁の番号の話ではなくて、マイナンバーカードの話をしていて、マイナンバーカードにつきましても、例えば証明書の有効期限を5年間にしていたり、ある程度意図してつなげない限りデータが簡単にはつながらない仕組みというのをいろいろ入れていまして、おそらく本人が利活用するためのデータポータビリティーを担保するということ、あるいは全体で見たデータにおける名寄せというものを制限するみたいなことが割と簡単に両立できることもありますので、一方で、おそらく学術的にここはちゃんと長期できちっと分析をしたいというニーズもあると思いますので、リンカブルにしておいて、後から切り離したりくっつけたりということもできないわけではないので、あまり取り返しがつかないような形で一気にデータを活用していくということではなくて、順番に実証しながら意図を持ってデータをハンドリングしていくということが重要ではないかと思います。
以上です。

【委員】 まず、早めにやってもらいたいところのみ、掻い摘んで話します。3ページ目の視点1のところですが、ここに書いていますように、まずは一次利用からというのは、そのとおりだと思います。まずは各学校でしっかりとデータを収集して利活用するというところが大事で、その後、この学習方法でいいのか、教え方でいいのかというのがあると思うので、やはり他と比較したりすることも必要になってくると思いますので、二次利用というか、全国で集めていくという流れになっていくのではないかということを考えています。
それで、委員もおっしゃっていたように、これは一次利用、二次利用、両輪であると思いますので、どういう教育方法をしていたり、どういうツールを使って、どういう端末を使ったりして、どういう科目を教えているとどんな効果があるかというようなエビデンスをしっかりと蓄積して共有していくということも併せて大事と思いますので、まずは一次を進めるんですけれども、二次のこともしっかり考えておくというのが大事だと思います。
 それから、視点2のところですけど、公教育のデータということで、今も各学校では成績等は管理していると思いますが、それにプラスアルファ、システムを使ったログデータだとか、そんなものが学校でしっかりと管理するというイメージを持っています。なので、成績データ自体を、学生さんから許可を得て成績つけますよとは言わないと思いますが、それと同じように、同意を得ずにしっかりと学校でデータを管理し、成績証明書等を学生が欲しい場合は、今も成績はもらえますが、その成績に至るまでどのように学習したかというような細かなログも、エビデンスとしてもらえるというようなイメージでもいいのではないかと思います。
 それから、4ページ目ですけれども、4ページの丸3のところの2つ目の項目に、現在できるところからということで書いていますけれども、まさしくそのとおりだと思います。これからいろんなシステムを使っていろんなデータが自然と蓄積されてくると思いますので、そのデータをいかに活用していくかということを考えていくべきではないかと思います。
 その下の4番目のところは、データの標準化というところですけれども、これは本当に早急に必要ではないかと思います。先ほども言いましたように、ほかの学校と比べたり、全国の平均を出したり、そういったことをしようと思うと、やはりデータが標準化されていないといけません。例えば先ほどの成績とかもそうですけど、そういったものもうまく標準化して共有していく必要があるのではないかと思います。これは急いでやるべきだと思います。
それから、5ページ目の最後に書いていますeポータルのところですが、これもこういうシステムが標準的に必要になってくるということを早く伝えてあげないと、もう既にGIGAスクールの端末が導入されていて、システムの導入というのが始まっているところもありますので、早急にこういう標準モデルというのを開示していく必要があると思いました。
 それから、6ページ目ですけれども、これも2番目のビッグデータの利活用のエビデンスに基づく教育というところで、先ほども言いましたように、これも非常に大事だと思いますので、ツールをどういうふうに使って学習者に対してどんな教育方法であれば、どんな効果があるかということは、1人1台の端末を使った学習で、これからいろんなノウハウが蓄積されてくるところだと思いますので、それをうまくエビデンスを共有していくという仕組みを早急に考えておいて、共有することが大事だと思います。
 それから、最後の6ページ目の下のプライバシー保護のところですけれども、このルールづくりをするための委員会、例えば学術会議の提言の中では倫理委員会をつくるというように言っていますけれども、そのような組織づくりを早急にして、うまくこのデータの利活用ができるようにしていく必要があると思いました。
以上です。

【座長】 ありがとうございました。それでは、大体御意見は出尽くしたというふうに考えますので、この議論はここまでとさせていただきまして、座長から一言だけ申し上げておきたいと思います。
 この分野は非常に広範な分野で、様々なレイヤーがありますし、プレーヤーも様々ですので、簡単にこうすべきだ、ああすべきだというようにはなかなかできないし、巨大な検討空間だと考えれば、やっぱり少しずつできるところからやっていくしかないということになるかと思います。
その観点から申し上げると、学校あるいは学校教育、公教育と言ってもいいですけど、そこにおいて取得されるデータをどう考えるかということを何よりも急いで検討することが必要です。それに比べると、そこで取られた個人データを、パーソナルなデータとして取り扱うということ、ほかで取られたパーソナルなデータと合わせてどうしていくかということは、文部科学省だけでできることではないことも考えられますので、もちろんそれは公教育で得られたデータをパーソナルなデータにしていくという手続がちゃんとできるような仕組みも検討していくという前提で他機関と調整しながら丁寧に進めていく必要があります。この検討会議においては、まずは学校教育の中で取得されるデータを、どういうデータをどのように取得し、どういうユースケースがあるのかについて、学校教育の範囲の中でまずは急いで検討すべきではないかと私は思っております。
 そのことと、今パーソナルデータの話をしましたけど、一方でビッグデータ化して二次利用という話ももちろん重要なことですし、ラーニング・アナルティクス研究も高等教育では進んでいますし、名寄せの仕方とか技術的なこともいろいろあると思いますし、抽出のサイズもあると思いますが、そういうことをすることを前提に学校教育のデータをどうやって進めていくかということを先に検討するということでございます。
 つまり、全部一度にやるということよりも、何のプライオリティーを高くしておくかということで言えば、先ほどから皆さまの御意見に出ているような、全ての学習者や全ての学校、全ての保護者が、この学習データあるいは教育データというのが有益だと思うような世界を文部科学省としてしっかり見せていくということを最優先すべきではないかと考えているということです。
 その際に、子供がデータの羅列されたものを見て何かが分かるなんていうことはほぼないわけですから、そこに何かサマライズする技術や、あるいはそれを使って見せるダッシュボードというような技術は当然必要になります。だから、先生が分析するときも同じで、一定の何かツールとかそういうものが持ち込まれる前提で、そのツールが読み込むデータの内容や形式をある程度決めていくということが重要なのかなと思います。これが1つ目です。
 2つ目は、この仕事は、やはり各自治体です。特に学校教育においては、設置者が1,700以上あるわけで、いわゆる公立学校だけで考えてもそういう状況ですから、各自治体の努力、追従していただくような仕組みが不可欠です。そういう自治体設置者、あるいは民間の教育産業の方々の御協力も不可欠ですので、そういう方々に協力していただきやすくする仕組みを考えたときに、やはりいつ頃にはこういうことを出すよというような、少し先を見た段階的なアピールを私たちはしていく必要があるだろうと思います。全部大事なんだけど、まずここを急ぎますと、今年度中には大体こういうこととこういうことを明らかにするように審議します。審議した結果、それがはっきりできないかもしれないけど、そういう検討をまず先にやりますみたいな検討課題のプライオリティーみたいなことをしっかりと検討していく必要があるのかなということを感じます。
また国民の理解を得ることも必要ですし、これは委員の皆さんがおっしゃったとおりで、場合によっては、今のところ非常に断片的な誤解をしている場合もたくさんあるんですね。あるいは非常に怖がるという意味での懸念が大きいみたいなことがあると思いますので、早く役に立つ事例も含めて、見通しを少しずつしっかりと公表して提供していくことが重要なのかなと思いました。
 今、2つ申し上げましたけど、1つ目の公教育ファーストというのか分かりませんけど、そういう学校教育の中でのデータ利活用の在り方を先に考え、具体をいろいろ示し、そして2つ目ですけど、そういうものをいろいろ見せていくことによって、設置者や民間の会社の御協力をいただいていくような形で進めていくということが大事かと思っております。
 皆さまから非常に多岐にわたる御意見をいただきましたし、論点が整理されてもこれだけあるということですから、つまり、これは相当大変な仕事だということになります。この会議体で一度、年度内に中間まとめのようなものを公表することになりますので、もし本日の発言で十分発言し切れなかったようなこと等がございましたら、ぜひメール等で事務局に御連絡いただければと思います。
 特に8ページの活用イメージのところは、実際に学校現場の先生方、あるいは教育委員会の方々、保護者の方々にご認識いただかなければならないないものです。ですので、ここについては、ぜひ現場の先生方の目線もしっかり入れてまいりたいと思いますので、そういう観点からも御協力をお願いしたいところでございます。
それでは、次回以降の会議につきまして、事務局から御案内をお願いいたします。

【事務局】 資料4を御覧いただきたいと思います。今後の進め方でございますが、次回、第5回は3月19日(金)15時~17時を予定しております。本日いただきました意見を基に論点整理をさらに進めさせていただきまして、年度内に一定の論点整理のまとめをしていきたいと考えておりますし、来年度、来年3月までの有識者会議として一定の議論のまとめというものを目指しまして、以後、3月以降も一、二か月に1回程度開催いたしまして、来年度末のまとめに向けて議論を進めさせていただきたいと思います。
 参考2には、今後の政府全体の主な予定ということで書いてありますけれども、例年のスケジュールからいきますと、6~7月頃に骨太の方針を決定いたします。今年は9月にデジタル庁発足が予定されておりますので、ここもまた連動する動きが出てくるかと思いますので、ここで記させていただいております。
 また、12月の令和4年度予算、こちらの検討に受けて、当有識者会議でもさらに議論を進めさせていただきまして、来年度末のまとめに向けてまた議論させていただければと思います。

【座長】 ありがとうございました。予算の話まで出ましたが、予算が取れないと、やりたくてもできないわけで、そういう意味で、どのように進めていくかというのは非常にこれは難しいところでございますが、年度内にということを考えると、次回の会議にはある程度中間まとめをフィックスする必要がございますので、ぜひ今のうちにいろんな御意見をお寄せいただければと思うところでございます。
 それでは、これにて本日の会議を終了します。

(以上)

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 初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)