教育データの利活用に関する有識者会議(第3回)議事要旨

1.日時

令和2年11月24日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データ標準について
  2. 教育データの利活用について

4.出席者

委員

堀田座長,藤村座長代理,梅屋委員,緒方委員,楠委員,小崎委員,佐藤委員,白水委員,高橋委員,田村委員,中村委員
 

文部科学省

瀧本初等中等教育局長,塩見大臣官房審議官(初等中等教育局担当),浅野初等中等教育企画課長,桐生学びの先端技術活用推進室長,佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐,神山教科書課長,中川初等中等教育局視学委員

岸本総合教育政策局調査企画課長

中川国立教育政策研究所所長
 

オブザーバー

内閣官房IT総合戦略室,経済産業省サービス政策課教育産業室,個人情報保護委員会事務局


一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC),一般社団法人 ICT CONNECT 21,一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの利活用について


※教育データ分析であるラーニングアナリティクスの観点から、3人の委員が以下のテーマで発表を行い、質疑応答・意見交換を行った。
・緒方委員:教育データの利活用について(【資料1】緒方委員発表資料)
・田村委員:学習履歴の活用:研究成果を現場展開するには(【資料2】田村委員発表資料)
・白水委員:学びと教育の改善に資する「教育データ」標準化に向けて(【資料3】白水委員発表資料)

(発表内容)

【緒方委員】 教育データの利活用ということで、社会的な動向ですけれども、コロナ禍の影響でオンライン授業というのが、大学を中心にたくさん行われていまして、そこで1人1台の情報端末の環境で、自然と大量の教育データというのが蓄積されつつありますが、教育データの取扱いについては、明確な指針というのがない状態であります。一方研究の動向としては、いわゆるAI、ビッグデータということで、教育工学の分野でもラーニングアナリティクスという研究が盛んに行われており、教育データの分析をして教育改善・学習支援に生かすという効果を出し始めているところでございます。こういった中で、社会全体で教育データの取扱いに関する指針を定めて、教育改善や学習支援にうまく有効活用するための指針を提示することが急務であるというような状況がございます。
 そうした中で、学術会議から、教育のデジタル化を踏まえた学習データの利活用に関する提言ということで、9月30日に公開がされました。
その概要ですけれども、まずは1点目が、学習データの種類とその必要性を整理しましょうということ、それから2点目が、学習データの利活用をするための制度設計ということで、まずは小学校、中学校、高校から大学までの公教育を対象に、各教育機関で学習データを収集して、教育改善や授業改善に役立てるということが先決であると。次に、次の段階として、学校や自治体などの法人内で収集した学習データを、各法人が個人情報に適切に配慮した形で加工して、国全体で共有しましょうということが提言されています。そのためには後で出てきますけれども、教育データの利活用ポリシーなどが必要になってきます。それから企業などが学習データを囲い込まないように、学習データを学校に提供してくれるように契約時に盛り込むなどの注意が必要になってきます。それから、倫理委員会などの第三者機関を設けて、学習データの悪用を防ぎつつ、適切に利活用が進むように、定期的に見直していくということも必要かと思います。それから学習データの共有というのを全国で考えたときには、書式、そのフォーマットや意味などのデータをちゃんと標準化すべきであろうということでございます。3点目が、学習データを蓄積するための環境整備ということで、これはGIGAスクール構想で進んでいるところですけれども、1人1台の情報端末を実現して、常時ネットワーク接続をしましょうと。その学習データを収集・利活用するためには、情報基盤というのをしっかりとつくる必要がありますということです。     それから4点目が、教員やラーニングアナリティクス、学習データの利活用をサポートする専門の方、それから研究者を育成するというのが大事になってきますということでございます。
 それで、どのようなデータを収集するかということですが、まずは学習系のデータが蓄積されているという状況ですので、それを利活用しましょうという1番から3番があります。こういうデータをうまく分析して教育改善に役立てるためには、やはり校務系のデータも必要ですので、4番から9番を中心に集めましょうということを提言しております。
こういったデータをどのように利用するかということですけれども、まずは先生や学習者、それから保護者の方の個人を対象に利活用しましょうと。それから、学校の中でのカリキュラムの最適化などに使いましょう。それから国全体で、エビデンスに基づく教育政策の立案などに使いましょうということを提言しております。
 こういったことを実現するために、「まず、考えないといけないこと」ということで、これは個人的な意見ですけれども、まとめてみました。まずは諸外国での教育データの収集状況をまとめて、日本がどういうふうな方向に進むべきなのか考える必要があります。アメリカやイギリスですと、校務データ、成績を中心にデータの標準化を行って集めているという状況かと思います。アメリカは各州で集めているということです。それからフィンランドやシンガポールは、共通のLMSを導入して、成績データや一部学習系データを集めているという状況でございます。日本はどういった方向に進むべきかということで、諸外国は校務データを中心に、一部学習系データを集めているという状況、日本は両方ともないという状況ですが、こういった方向で学習系と校務系を集めようと。しかも2つの世界初ということで、まずは小学校から高等教育、大学までのデータを、しかも学習系データを細かく集めていこうということであります。それから2つ目が、やはり共通のLMSを提供するというのは難しいでしょうから、教育データの標準化をログデータの標準化をして、その標準化を基にデータを共有していこうというアプローチはどうかということでございます。
 全てデータを集めるのではなく、OSや一般ツール、例えばOfficeなどのそういったデータは集めない。集めるのはあくまで学習系、学習をするとき、あるいは教育活動をするときのデータを対象にします。それから、それらを使ってエビデンスというのを蓄積して、それを共有しましょうということです。
 教育データの収集方法はということですが、1つ目が分散方式ということで、各学校にLRS、ランニングレコードストアという教育データを1つに集めるところを持って、そこでしっかりと管理して利活用をしていく。その後、教育委員会などの自治体で共有して、その外に出るときは匿名加工情報に変換して、国全体で共有しましょうということを提案しています。
 2つ目がクラウドで、このように教育用クラウドを作って、そこにLMSやLRSを1校につき1つ提供して、データを収集していきましょうというようなアプローチです。この方法でいくと、地域や国全体でできるかどうか分かりませんけれども、共同調達により、そのクラウドなどの調達をすると安く済むのではないかという話でございます。
そういったことをしようと思うと、やはりそのLMSというのにある程度共通の機能が必要になるということですけれども、例えばデジタル教材の閲覧システムなど、いろいろなAIドリルなどがありますが、そういったものとLMSがうまく連携できるようなインターフェース、例えばLTIとかいうのがありますけれども、そういったものを持つ必要があるのではないかと考えています。それから、当然ログをLRSに出力するためのインターフェースというのをLMSが持つ必要があると思っています。そういった条件を満たす、オープンソースのLMSとして、例えばMoodleといったものがあります。
 その集めるための手順ですが、まずはしっかりと標準化をして、教育データの標準化を行って制度設計をするということが大事になってくるかと思います。それから、公教育を対象に教育データの利活用をしっかりして、そこで教育データを各学校で集めて利活用していくということが必要になってきます。そのためにはLMSやLRSを各学校に導入していく必要があります。その次に国でデータを共有するということです。データの共有を考えると、当然教育データの標準化というのが重要になってきます。その後で民間教育のデータを扱うことを考えてはどうかということを考えています。
 教育データの標準化についてですけれども、我々の今やっていますのはxAPIという形式で、LRSにデータを蓄積するというのを提案しています。具体的なのでいえば、この右側にあるんですけれども、例えば、こういうLRSを導入すると、何がいいかというと、いろいろなシステム、どういうシステムを使っていろいろ変わったとしても、長期にわたっていろいろなシステムを使ったとしても、このLRSに1つのデータとして保存していけるので、後から何十年とデータがたまっても分析ができますということでございます。こういった標準化を行うに当たり、基本的にはIEEEなどで既に、例えばe-Bookの閲覧ログの標準化に従ったログの出力の例ですけれども、こういったものが提案されていますので、このような ものに準拠していくべきであるということです。
 国全体で共有したデータを用いて何ができるかということですが、まずはエビデンスに基づく教育ということで、個人、先生や学生さんなどに対して、エビデンスに基づく教育方法や学習方法を推薦するということができます。それから民間の、例えば教材の会社に対しては、教科書で分かりにくいところを会社にフィードバックして、教材の改善に役立てるということもできるでしょう。それから我々研究者も、このデジタル時代における効果的な学習方法や教育方法というのが分かっていくのではないかということでございます。
 海外のほうは、WWCとか、EEFというふうに例がありますけれども、エビデンスの共有検索サイトというのがあるんですが、日本に同様なものがないということで、もしLRSを全国でデータを共有していくと、これは海外のものは手動で、手入力でこのエビデンスを登録していますが、日本がこれからやる場合は、データが自動的にエビデンスを発見して、共有して利用しようということができるのではないかということで、現在そのような研究を行っているところでございます。
 こういったことができると、うまく研究者と実践する方、それから政策立案をする人とかをエビデンスというデータに基づいて、関連、リンク、連携をうまく取れるようにできるのではないかということでございます。
 学校現場で教育データの収集と利活用を始めるにはということで、ここに手順が書いていますけれども、ちょっと時間がないので飛ばします。
 それから大事になってくるのが教育データの利活用のポリシーですが、ここはアメリカやイギリス、EUの例を書いていますけれども、日本ですと、大学を対象にしていますがそのポリシーのひな形が、AXISという団体から公開されていますので、見ていただければと思います。
 それから体制です。どういった体制で教育データを収集・利活用するかというところで、研究者とか、参加、学校とか、企業の方などがうまく連携できるように、こういった協議会というのをつくってはどうかというのを考えています。
 それから、まだまだ解決するべき問題はたくさんあるんですけれども、こういった問題を解決しながら進めていく必要があるのではないかと思っています。次は時間の関係で割愛させていただきます。
 GIGAスクール構想により、端末やネットワークができたので、これから次のステップの学習ログをうまく活用した授業をしていく必要があります。そして、その先のエビデンスに基づく教育というふうに進めることができたらなと思っております。
 私からは以上です。


【田村委員】 私も学習履歴分析の研究者ということで、緒方先生と立ち位置が非常に近いので、重複する部分もあると思うんですが、御容赦ください。
 今回は、研究成果を現場展開する、特に個別最適化をどうするかという話にフォーカスして話をしていきたいと思います。
 この学習履歴分析は、このように2010年頃から少しずつ盛り上がってきています。研究は国際会議も立ち上がり、それから技術的に、例えばxAPIとか、Caliperとか、そういったものがここら辺で立ち上がってきました。一方で、左下にありますイギリスのRAISEOnlineというのは、これは学習の到達度、達成度を学校ごとに全部まとめて、学校や地域の評価をするというような話ですけれども、これは学校評価に近い目的があったように思います。それに対して2010年代後半になりますと、今度はカナダ、それからアメリカ、オランダでも、少しずつ履歴を取り、それをどう使うかというナショナルプロジェクトも走り始めているという状況でございます。
 これは少し古い2014年の論文なんですけれども、学習履歴を使うことによって何ができるかということは、例えばこういう形で分類されています。そしてこのうち、例えば学習者の振る舞いのモデリングということで、この子はどういうことをしそうかとか、どこに行きそうかとかいうこともありますし、それから、評価とかフィードバックの改善ということで、ここら辺が多分個別最適化に近い、次の教材リコメンデーションのところも、リコメンデーションに近いお話が出てくるだろうと思っています。
 これを実際に行うために、どういう種類の情報を使えばいいかという、これも以前お出しした表と同じなんですけれども、多分一番使いやすいのは、LMSとかCBTに蓄積してあるログを使うのが適切だろうというふうに個人的には考えています。この表は、左側が粒度の粗いもの、右側に行くにつれて粒度の細かいものになっていきますけれども、右側になるにつれて、そのデータをためるのはいいが、どう使ったらいいかというところの知見がまだ十分たまっておらず、一部こういった細粒度のデータにトライしておられるベンチャーの方とかもおられますが、そのデータの解釈の仕方というのがまだ十分落ち着いていない部分があります。そういう意味で、LMSとかCBTの履歴というのは、割と活用しやすいデータになっています。それから、これから例えばGIGAスクールが実現していく中で、一番最初に多分取得できるのが、そういったデータだろうと思います。
 こういったデータをどういうふうに、例えば個別最適化につなげていくかということについても、実はかなり昔から、研究の中では話が出ております。これは授業のスライドですが、例えば適応シーケンスという、その子に合ったシーケンスで勉強させるとかというような研究というのは、1960年代から実はあるんです。それから、いわゆる適応型テスト、アダプティブテストというのも、1980年代研究として随分あったですし、それから現在は、例えばTOEFLみたいな実用化された例もあるというような流れでした。
 現在いろいろなところで議論されております、例えばLMSが必要だよねとか、CBTが必要だよねというような議論の中で、この個別最適化、あるいはアダプティブな学習をするにはどうしたらいいかということをちょっと個人的に考えてみたんですけれども、もちろん、例えばCBTや学習eポータル、LMSといったものも当然必要になりますが、現在議論の中で結構抜けているのが、このリコメンドの仕掛けかなというふうに、個人的に考えています。つまり、ある子、ある学習者が、例えば何かを勉強する、あるクイズを解きましたといったことに対して、次に何を解かせたらいいのか、何を勉強させたらいいのかというようなことを計算して、考えて、その学習者に与えていくというようなアダプティブなプロセスが、その中で必要になってきます。これを考えるときに、当然、例えばどういうクイズとか、どういう教材が世の中にあるのかというような情報を集めなければならないんです。その集めた情報の中で、その学習者に最適なものはどれかということを計算するということが必要になります。ところが現在、例えばいろいろな学習のリソースとか、クイズとかというものに対して、メタデータを付与して整備していきましょうという話があると思いますが、それを使ってある学習者にどのようにリコメンドしていくかというところの議論というのが、まだ成熟していないと感じています。ただ、ここはいわゆる従来の教育研究の中で議論されている部分があるので、もちろんそれを現場展開するときに規模の大きさというのは全く違うので、そこに対するハードルもありますが、こういうリコメンドをするということを、機能をきちんとこれから考えていく必要があるのではないか感じています。
 もちろんこのリコメンドをするに当たって、例えばどういう教材があります、どういうクイズがあります、この学習者はどういう履歴をたどってきていますということをきちんとコンピューター間で理解するために、私はこのデータインフラというふうに勝手に呼んでいますけれども、今日の後半のところでお話が出てきます、例えば学校IDとか、学習内容ID、学習要素とか、それから学習指導要領のIDとか、それから学習者のID、こういったものがきちんとデータとして整理されてくると、これを紐づけた形で、例えば、様々な履歴を集めて、で、リコメンデーションに触れるということが可能になる。そういう意味でも、今日の後半のいろいろなデータの標準化というのが、非常に重要なステップになってくると思います。
 そういったデータインフラを整備、それから標準化していくという作業がこれから必要になりますし、現在リコメンデーションというのは、例えば1つの教科書とか、1つのドリルとか、あるいは1つの私教育のベンダーのコンテンツの中で閉じている形になっているケースが多いと思います。ただ、もっとオープンなリコメンデーションを考えた場合には、例えば各々のクイズとか、リソースとかを、いわゆるマイクロコンテンツ化する、個別の個々のものとして扱って、それをアダプティブに提示していくというようなフレームワークが必要になってくる。しかもそのマイクロコンテンツに、先ほどの、いわゆるデータインフラを紐づけていく必要があるということです。ただ、これは非常に労力を要します。当然マンパワーとか、お金をかけないと実現できない。これは標準化の世界でも、こういうメタデータを付与して、結局挫折したというような先例が数限りなくありますので、いわゆるキャッシュフローの流れも含めた設計というのがきちんとされていないと、長続きをしないのではないかと考えます。
 こういったマイクロコンテンツを集めた、今度リコメンデーションサーバーと勝手に名付けておりますが、こういったものにいろいろな情報を集約して、適応的な学習、最適化の学習に向けて公開していくということも必要になってくると思いますし、それから最後に、この個別最適化に対してどういうキャッシュフローをもって、いわゆる民間で自走していくシステムというのは一体どんなものがあるのかということも考えていく必要があるのかなと思います。
 以上です。


【白水委員】 緒方委員からは、データ収集の基盤、それから人員体制について、田村委員からは、データを何のために取るかというのを個別最適化に絞ってというお話だったかと思います。私からは、もう少し教育の全体像を考えたときに、データを何のために取って、どのように使っていけるかという話をしたいと思っております。
 その前に、この会議で最終的にはこういうポリシーというか、原則が提言されるといいなというのを勝手に3つ書かせていただきました。
1つ目、何のために集めるのか、誰のために集めるのかという原則です。1つ目は学習者のためだろうと。2つ目は、その学習者のために使えるように、民間事業がデータを囲い込まず提供する義務があるというような項目が1つ、3点目が、データを集めるのだとすると、その質を上げておく必要があるんじゃないか。教育は集団でなされる面がありますので、その集団でのデータの生成、それから活用というのをどうしていくかというのは大きな問題としてあるだろうなと。ペタゴジーファーストと文科省が言われているようなものに関わる原則を1つ入れておけるといいのではないかと思いました。
 のっけから少し穏やかではない話なんですけれども、今、学校教育というのは非常に岐路に立っているかなと思っております。「資質・能力の三つの柱」を断片化しないで、主体的・対話的で深く学んでいくということが大事というふうに言っているんですけれども、テクノロジーで個別最適化用のAIドリル、それ自体は悪くないんですが、これが、例えばPBLと分離してくると、その「三つの柱」というのの一体化というのは難しくなってくるのではないか。もう1点は、世界的にも同様の傾向ですが、対面状況では子供たちが自分たちの考えを外化して知識をつくっていくというのは自然にできていたところが、オンラインになって一挙に教授主義と言われるものが復権してきております。知識というのを頭に入れるのが先生の役目で、子供たちはそれを基礎から順に頭に入れて、成果はテストで評価するというようなモデルでございます。
 実はテクノロジーというのはそれだけではない、いろいろな使い方ができますので、本来は学校で学ぶだけではなくて、オンライン上で学べるようになると、先生、あるいは専門家から教えてもらうだけではなくて、いろいろな人とインタラクションして学びの空間を広げていく、そういう可能性があります。コリンズという人は、時代を徒弟制、公教育制、生涯学習というふうに移り変わってきていると分けているんですけれども、今、この公教育制度から、「子供が自分で学びたいことを決めていく」という生涯学習への転換期にあるんじゃないか、問題は、そうできる子とそうできない子の格差が広がりそうになっているというところでございます。そう考えてみますと、この生涯学習時代に入っていく前のところで、この教育データ標準化というのが、どうしてもインストラクショニズムとすごく相性がいいですので、それだけではないということをしっかりやれて、今後の学校教育の充実、そこからの生涯学習への接続というのにつながっていくのがいいんではないか。
 そう考えますと3点、学校教育でやるべきことがあるだろうと思います。1つは学びを追うということ、児童生徒、どんな場面で何を学んだかという成果を問題にすると。2点目は、その成果を生み出しているはずの教え方、そのモデルというのを見直していくということ、3点目はそれを社会全体がやっていく、その契機に教育データ標準化の会議が役立てばいいというふうに考えております。
 学びを追って仮説を見直すというのは、具体的にどういうことかというのをお話しします。例えば、文科省で展開されています先端技術導入実証事業からもたくさんの疑問が生まれてきています。AIドリルで問題を解けるということが本当に理解したということになるのか、子供のためにAIドリルで弱点が、自動的に同定され問題のリコメンドが出ているんだけれども、それを指導に生かそうと思うと、リコメンドが精緻化されればされるほどブラックボックスになるので、教え方に反映しづらい。感情というのは本当に顔のマークで反映できるのだろうか。あるいは、グルーピングで話量をうまく上げるようにしたということが本当に理解につながっていくのかなど、非常にたくさんの疑問が出てきて、こういう疑問をテクノロジーの導入と一緒に解消していく、そこにデータが利活用できるというのは非常に大事じゃないかと思います。
 1つ例を示しますと、例えば一人一人の児童生徒について、一人一人が1分間どれぐらいしゃべっているかというのを横軸、縦軸のほうに授業の最初から最後に向けてどれぐらい一人一人が学んでいるかというのをプロットしてみますと、話せば話すほど学ぶのだと、右肩上がりのデータになるはずなんですけれども、平均で割った4象限を見ると、左上の象限の「聞きながら学んでいる子供たち」がいるということが見えてくる。そうすると、先生方が本当にやりたいのは、ぽつぽつ何か話しているのを見取りたい、聞いているときにいろいろうなずいて何を考えているか、その成長を見取りたいということだろうと思います。そうなってくると大事なのは、各種のデータを集めていくときに、先ほど田村委員からもありましたけれども、学びの深まりをどうやって捉えていくかということです。
 そう考えてみますと、学びの深まりというのを学校教育の役割と照らして考えておくのが、先ほどの全体像を考えるのに役立つかと思います。いろいろな目的が学校にはあるのですけれども、1つは概念変化を引き起こすというところにあります。子供たちが経験からでは、地球ってどうしても平らなように思うんだけれども、学校へ行くと丸いと教えられる。この原理原則を自分たちの経験則と結びつけて自分の考えを人に言ってみたり、人の話を聞いてみて、それを一緒にして、「なるほどこういうことか」という納得をしていくというのが、集団的な、意図的な教授の場の必要性だろうと。そう考えますと、子供たちにはたくさんの単元に関して、素朴な概念というのがあります。レベル1で、例えば「ゼロと1の間に数字ってあると思う?」と小さい子に聞くと、数字はないというところからスタートするんですけれども、だんだん、「いや、実は数字というのは無限にある」というふうに思えるように変わっていく。この素朴概念というのが、実は大人でも根深いという事例を簡単に紹介したいと思います。
 中学1年生用に開発された授業だったんですが、これを文系の先生が子供の学びのプロセスの追体験のためにやってみる、それを理系の先生を観察しました。課題は2a、2a2、-2a2に好きな数字を入れて、何が一番大きいかなというのの場合分けをしてみるという問題でした。ゼロ、1だけではなくて、マイナスを入れると大小関係が逆転したりとか、1より少し小さい数字を入れると逆転したり、なかなか難しい問題なんですけれども、理系の先生はこの問題を見た途端、僕だったらこう解くなというので、こういう2aと2a2と-2a2を関数にして、どこで同値になるかとか、どこで上下、これが一発で論理的にも、数学的にも分かるやり方を出す。そこで手ぐすねを引いて文系の先生がやっているのを見ると、生徒の立場で問題に取り組む先生が、aに取りあえず何を入れようと相談しながら、「3」を入れたんです。理系の先生は大層、自分たちのこの(関数)グラフの世界とのギャップに驚いて、ゼロとか1を入れるんだったらまだしも、もちろん0.99…とか、そういうことは全く考えずに、正の自然数で「2」とかぶらないものを入れているという、いわば「算数の世界」に文系の先生がとどまっている。数学苦手というのはそういう学び方なのかというのが見えてきたと。
 簡単にまとめますと、レベル1の経験則の世界、すなわち「0、1、3を入れたらどうなるだろう?」という離散的な数の感覚、算数の世界で生きている子供たちに、先生としては連続的な数の感覚を前提に、関数で考えるというような、数学的な理解を求めているというギャップがある。この間に、実は子供たちが自分の言葉で、「これプラスだったらどうなるかな」「マイナスだったらどうなるかな」「0.999…など1より少しでも小さかったらどうなるかな」という話合いをすることによって、「数とは何か」という一番大切な学びが引き起こせるかもしれない。日本では、恐らく、小中高、大学、社会と同じようなテーマについて考えていくと、先ほどの問題だと解き方が変わるように、概念的な理解の形成を各教科等あるいは教科を超えて非常に大切にしてきたのではないか。
 そう考えますと、教育データ利活用でやりたいのは、単に問題を解いていって、たくさんのカプセル状のばらばらな知識を手に入れるだけではなくて、それを結びつけて一人一人が理解していくプロセスの支援と評価だろう。そうすると、データの標準化も含めた利活用がされると、学習のプロセスをその場で詳しく分析していく―特にインプットだけではなくて、本人のアウトプット、インタラクションを一緒に取っていく―ことができるとよい。2番目が学習のプロセスをロングスパンで追っていって、例えば先ほどのような「数の概念」といったビッグアイデアの理解がどういうふうに変わっていくか。3番目は、たくさんのビックデータにおける一人一人の学びの道筋と、それをまとめて理論が、「数を学ぶってどういうことだ」みたいなことが見えてきます。そうなってくると、後輩が、数学は大好きなんだけれども、ちょっとテストの点数が取れないなというような子供が、先輩の学びの姿を見て、「ああ、この人も同じようだったのに、ここから数学者になっていったんだな」といったケースから学べる、そんなビッグデータのケースができてくると、子供たちの学びにつながってくるんじゃないか。
 言いたいことをまとめてみますと、やりたいのは、もう1回原点に立ち戻って、詰め込みからせっかく子供主体の学びをしようとしてましたので、そのための教育データの標準化を考えるということ。名簿は普通、学習者のデータの単位というのは、学習者個人で考えることもできますが、それが教室で集まったものが「名簿」というものだろうと。出欠とか、成績に使われるイメージなんですが、この一つ一つに授業における一人一人の学びのプロセスというがあって、緒方先生の生涯にわたる学習のイメージがありましたけれども、たくさんの名簿のテーブルがつながって、あの先生のときにこの人と学んだなというようなプロセスを大量に保存して、その中で本人がどう学んでいるかというのを追っていくような、そんなイメージとして学習プロセスというのを記録していくというようなデータの取り方も1つあるのではないか。これは抽象化しますと、この子というのはビッグアイデアについてこう学んでいったなというだけではなくて、いろいろな教室の学びを合わせて、数の連続性というのはここら辺からこういう授業をやっていると分かるようになるんじゃないかというような学校横断の分析ですとか、それを超えて、こういうことをやっていると物理の得意な生徒が生まれてきますねというようなパターンが全体として生まれてくる、こんなことがやっていけるといいんじゃないかというのが提案でございます。
 以上でございます。


(意見・質疑応答)

【座長】  3人の委員から非常に中身の濃い御提案、お考えを出していただきました。この後、各委員の方々に挙手をいただいて、コメントや質問をいただき意見交換をしたいと思います。
 まず私から緒方委員に質問ですが、高等教育では随分とラーニングアナリティクスの知見がたまってきたように思いますが、例えば1大学の機関を超えて何かしようとか、あるいは学校現場と連携しようとかいった場合に、法律や条例といった決まり事が、組織によって異なるために、いろいろなことを邪魔しているようにも思いますが、先ほど委員が御提言された最後のほうの協議会のようなものは、運用レベルの話も、円滑になるようにということでしょうか。

【緒方委員】 そうです。ですので、小学校から大学までの、そのような実践をされている人を集めてノウハウの共有をするような場所が必要ではないかということを提言しております。例えば、現在NIIのサイバーシンポジウムというのが時々開かれています。あれは最初は大学の先生方を対象に、オンライン授業のノウハウを共有しようということで始めたのですが、徐々に小学校、中学校、高校の先生にも発表してもらうなど、そのノウハウがそこで共有できるようになっていると思います。そのような、オンラインでなくてもいいですが、そういったコミュニティーをうまくつくるということが、国全体で事業をする場合には大事になってくるのではないかということを提案させていただきました。

【座長】 ありがとうございました。大変よく分かりましたし、その重要性は私も痛感しているところでございます。実践していないところが大体いろいろと心配をしていますので、実践しているところの事例が共有されて、この部分さえ崩せばそれに乗っかれるんだというのを見せていくというのも大事なことかと思い、ご質問させていただきました。

【緒方委員】 それから研究者の方々も協議会に入っています。これは重要で、研究者も様々な研究をして、そのノウハウを蓄積しておりますので、現場にそれを役立てるためにも、中心的な役割を担ってほしいと思っております。

【委員】 田村委員の7枚目の階層の図のイメージについて、教育データを活用する実証プロジェクトのような、いろいろなプロジェクトに参加して、教育の学校現場の関わる人たちと一緒にやると、大抵サービス層の方ばかり検討して、このデータインフラ層とか、リソース層のほうの話題が少なめで、データの収集の段階をどうするのかということが若干少なめだなと思っていたのですが、今回の委員の方のお話を伺うと、どちらかというと今度は下側の話が中心で、サービス層のほうは、田村委員から、リコメンドの方法も含めて今後検討していく必要があるというお話がありました。
 この会議で決めるのは、サービス層というのは皆さんの創意工夫に任せていくべきで、あまり想定しないほうがいいのか、つまり、その下位層のほうをしっかり決めていくということが重要であるのか、について思ったところです。つまり、エビデンスに基づく情報提供とか、それに基づくリコメンドということはよく分かるのですが、白水委員がお話しされましたように、こういう学習を怠ったとか、こういう先生に習ったみたいな事実関係の情報でもかなり有益かもしれませんし、模擬テスト等でよくあるような、ここがあなたの強みです、ここが弱みですという話も、もちろんかなり有益だと思います。その上で、多分こうやって勉強したほうがいいというようなリコメンドの情報になるのかもしれないとか、それは学習者に対する情報提供なのか、指導者に対する情報提供、つまり教え方に関して修正を求めるような情報提供なのか、授業なのか、指導法に関する情報提供なのか、この辺りが、サービス層についてもまだまだ検討の余地があると思っております。

【座長】 ありがとうございました。今の話は、既にあり、今すぐに取れるような事実関係の情報でさえも、このサービスの在り方いかんによっては役に立つこともありますし、そこは非常に多様性があるので、その基盤となるリソースとか、データインフラをきちんと議論し決めていく必要がある、というのが、この会議体の趣旨ではないかというように理解すればよろしいでしょうか。

【委員】 そうです。まず、この下位のほうのデータインフラ層であるとか、リソース層辺りもすごく弱いなと思っていて、例えば、出欠のデータそのものを見ても、出席か、欠席かのように、紙で処理できるレベルのデータで取るのか、もう少し何時何分何秒に登校したのか等、データの取り方も変わってくると思いますので、この下位層のほうのデータフォーマットとか、その辺を決めていくことでもやることがたくさんあると思っております。

【田村委員】 御指摘のとおり、現状いろいろ話題があるのは、例えばサービス層のインテリジェンス、うまくナビゲーションできるとかリコメンドできるということが、おそらく大きな話になっていると思いますが、この部分は私企業が入ってきた場合にも、当然いろいろな良い機能も提供していただく必要があって、そこが、例えば国としてこういう機能を提供するということももちろんありますが、個別の企業の競争領域として捉えてもいいのではないかと個人的には考えています。
 ただ、問題なのは、例えば先ほど言ったCBTの結果がリコメンドに来るとか、それからどんな教材があるかということがリコメンドに来るとかという、ここの情報の行き来というものをきちんと確保なければ、リコメンドそのものがうまくいかない。実験段階でしたら、非常に狭い範囲の教科書、教材やクイズ等で良いのですが、もっと広い範囲で考えてやる場合は、お互いにこういうコミュニケーションがあるということを議論していく必要があるというのが私の考えでございました。

【座長】ありがとうございました。ご質問ある方は挙手願います。

【委員】白水委員お話を伺っておりまして、現場として、これから本当に1人1台でデータを取っていく中で、本市は今後パフォーマンス課題に対してパフォーマンス評価を目指していきたい、プロジェクトベースの学習を目指していきたいと思っております。そうなると、データとして取れるもの、数値化されるデータばかりではなく、やはりデジタルポートフォリオというような、子供たちの製作物であったりとか、学習課程の中で作成されるような、そういった成果物を個々のアカウントの中で管理していくことになると思いますが、こういったもの、つまり、子供たちが対話をしながら自分の意見を変容させたりとか、他者との対話により思考が広がっていったりというような、そういった見取りをどのようにデータ化して、これから教育の中に利活用していこうとしているのか、こういった部分もデータ利活用されていくのか、それともそれとはまた別に、個別最適化できるような、数値化できるようなデータだけを見ていくのかというところについて、今後我々はどのように、どんな形でデータを取っていったらいいのかが、まだ見えていないところなので、ご教示いただければと思います。

【白水委員】 私も見えていないというのが正直なお答えになりますが、申し上げたかったことは、田村委員の7ページにも照らしてお話ししますと、この下位層と上位層のサービス層というのはインタラクションしていて、どういうことをやりたいからどういう下位層を用意するかというのが影響してくるだろう。そう考えると、まさに今御指摘いただいた御質問どおり、やりやすいのは個別最適化のところだけですが、それだけになると、たぶん教育現場の感覚と離れていく。そう考えると、一つには、今おっしゃったようにパフォーマンス課題みたいなものの状況込みで、その場での子供たちのビデオや音声を記録していけるようなサービス層でもあっていいんじゃないかということです。
 もう一つは、その個別最適化で問題の出来不出来みたいな、割と取りやすいところで取れるようになった世界と、今おっしゃったパフォーマンスの世界との間ぐらいに、たぶん全国学調の過去のB問題みたいな、考えて解くというタイプのものというのがあるのではないか。おそらくそこら辺のゾーンの評価と日頃の指導というのがどうなっているかという関係を見ていくと、日本の伝統的な授業の強みを生かして、このデータ利活用というのは教育の質につながっていくのではないかというのが私の今の全体像でございます。

【座長】 ありがとうございました。この教育データというのはどこからどこまでなのかといったときに、そのコンピューターのログとして取れるものに矮小化してはならないと思います。委員からのご意見の中にもありましたが、誰が担任の先生なのかとかいう、今ある事実のデータもまた、非常に有効に後ほどの分析には機能してくる可能性もあるわけで、ありとあらゆるそういう事実関係の情報、あるいは先生の見取りのようなものも、この教育データの利活用に入れていく必要があります。だからその仕組みをどうすればいいかという議論が大事であると思っております。

【委員】 この図のところで、これから個別最適化で、AIドリルなどいろいろ出てくるかと思うんですが、どういったツールをどういう単元や内容を教えるときにどう活用するとどういう結果になったか、というような授業の設計のデータというのが大事になってくると思います。
 というのは、どういった学生に対して、どういう内容を教えるときに、どういうふうなやり方を過去に他の学校でやっているかという、そういった情報を共有することは非常に重要かと思っております。そのようなメタデータ的なところが重要かと思っています。

【座長】 ありがとうございます。今のお話も大変貴重なお話だと思います。

【座長代理】先ほど田村委員、白水委員からお話しいただいていたように、やはりシステムというか、共通の基盤整備はどうしても必要になるだろうなと考えております。学習者のIDももちろんですし。
 あと、リコメンド等に結びついていくという、先ほど田村委員もおっしゃっていた、リコメンドに関する議論が落ちているというのは、私もそのとおりだと思っています。分析が大事というよりは、子供たちにそのデータをどう返していくかということが重要と考えています。もう一つステークホルダーがいると思っていまして、それは教員だと思っています。コンピューターが直接リコメンドを出すこともあるけれども、先生方にリコメンドを出して、そして対面の授業も改善していくという「教員支援システム」をつくるといった視点が大事だろうと思っております。

【座長】 ありがとうございました。
 次の議題に行く前に少し、少しお話させていただきたいと思います。
 この教育データの利活用というのは、非常に注目され始めたこともありまして、文科省がいろいろ標準化してくれるんじゃないかとか、いろいろ決めてくれるんじゃないかという期待があることは承知しておりますが、この会議のミッションは何を決めるべきかを決めるというか、考えるというか、検討するというか、まだその手前のところです。それはなぜかというと、教育データが独自にいろいろなことを独自性の強い形で決めてしまうことのリスクというのがあり、世の中今、デジタル庁とか、そういうのに向かっていろいろ動きがある中で、もちろん決して乗り遅れてはならないけれども、先進的な研究の知見を生かしながら、我が国の初等中等教育の強みを生かす形で、どのように何を検討しなければならないかを検討しているという、そこが少しまどろっこしいところがあるわけです。ただ、今日のような先進的な研究をされている委員方の御意見、御知見は非常に有効だと思いますし、これを基に次回、次々回ぐらいで、何らかの中間的なまとめ、これとこれは必ずやるべきだ、これについては今後継続的に審議していくべきだというようなことを出していくという形になろうかと思います。
 その種になるようなことを今日ご発表いただき、ご議論いただきましたが、例えば緒方委員がお話しされた、そのデータの利活用のための人間の組織あるいはコミュニティーという、いろいろな立場からいろいろな形で教育データの利活用に関わっている企業の方、研究者、現場の先生、いろいろ期待をしているだけの人や実践をしている人、商売にしようと思っている人など、いろいろなプレーヤーをうまくコンソーシアム化して、情報を共有するという仕組みが必要だろうと思います。これは国がそのままダイレクトにそれができるかというと限界があると思います。このようなことと、国の制度設計をどのようにリンクさせていくかが非常に重要です。
 さらに我が国にはたくさんの優れた教科書や教材等、いわゆる学習のリソースがあります。しかし、それらのデジタル化はまだ追いついていない部分もあります。そういうものが有効に働くためには、田村委員がお話しされたように、メタデータと情報、データの流通、レイヤー間のデータの相互利用のような乗り入れが非常に必要です。そのためのメタデータをどう付与するのか、付与に対する人件費や、あるいは金銭的コスト、あと時間、手間、そのようなことについて誰が負担するのかというのは、1つの大きな問題かなと思います。
 さらに白水委員がお話しされたように、学習の深まりということを見取れる、当面は教師ありのデータとして考えると、そこは人が見取るわけで、その人が見取った結果をうまくこの教育データの利活用に加えていくことによって、自動的に機械がある程度見取れるようになっていくという可能性はあると思うので、この人間教師のエキスパタイズのようなこととどのように組み合わせていくかという研究は、我が国の初等中等教育においては、これまでの教育の方法との接続の観点からも非常に重要なことかと思います。その観点では、委員から御質問いただいた学校の先生の普段の仕事の中でのことと、機械で取れるログということをどのようにつなげていくかということが非常に重要で、そこには委員からご意見いただいた事実関係情報の整理みたいなところも、非常にベーシックなことですけれども、忘れてはならないことだと理解しております。
一旦今のようにまとめましたが、もちろん更なる御意見あるかと思いますけれども、次の2つ目の教育データの標準化の議題に入らせていただきます。
 

議事2.教育データ標準について


※関係団体等の取り組みについて、以下のテーマでご説明いただき、質疑応答・意見交換を行った。
・一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC):学習要素リストについて(【資料4】日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)発表資料)
・一般社団法人 ICT CONNECT 21:教育データの標準化に関するICT CONNECT 21の活動(【資料5】ICT CONNECT 21 発表資料)
・一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC):APPLICの活動概要について(【資料6】一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC) 発表資料)
・下山政府CIO補佐官:学習内容情報の標準化に向けた検討(【資料7】下山政府CIO補佐官 発表資料)

(発表内容)

【JAPET&CEC】 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)の第1プロジェクトから学習要素リストについて御説明させていただきます。
 私ども第1プロジェクト(1プロ)において長年取り組んでいる研究テーマですが、どのような教育、学習コンテンツをどのように届けるのかということを日夜研究しております。参加企業には、教科書会社、教材会社をはじめ、電気メーカーやシステム会社など、教育に関わる様々な企業に御参加いただいております。この1プロの研究テーマのキーとなるものが、これも10年近くやっておりますが、やはり標準化ということだろうと考えております。2013年には総務省の調査研究で、今でこそ当たり前になっておりますけれども、教材コンテンツをHTML5で作ってクラウド上に上げて、それを利用するための認証情報、あとは異なるシステムを連携させるためのSSOの研究、学習履歴についても、先ほど委員の方々の御説明にも少し出てきましたが、履歴もxAPIの規格を採用していろいろな研究をしてきたという流れがございます。ここ数年では、2016年から、かなりこれも長い間やっていることになりますが、学習要素リストの研究ということを進めてまいりました。
 では学習要素リストとは何かについてですが、こちらは平成29年度に文部科学省の委託事業での調査研究の報告書にも書かせていただいております。この調査研究には、本日の座長である堀田先生にも御指導いただきながら、まとめさせていただいたというものです。やはり学習指導要領があり、私ども、教科書会社、教材会社がそれに基づいた教材を作っているというような流れでございますので、学習指導要領の学習内容や教科書の説明内容を、単元などの学習のまとまりを踏まえながら、学習内容を教科書や教材の連携、学習進度の把握、指導計画の作成などのいろいろな目的のために、最適な粒度で細分化したものということで定義させていただきました。
 学習要素リストは「最適な粒度」、これがポイントなります。どこを今学習しているかというところを示すための、番地の役割を示すものでございます。
 学習指導要領をベースに、ちょっと小さくて恐縮ですけれども、青い枠で囲ってあるところが学習指導要領で、そこにぶら下がる、もう少し粒度を細かくしたものが学習要素というところで定義しております。
 学習要素リストの基本的な考え方なんですが、この3つで考え方をまとめました。まず、学習指導要領は学年、教科、領域などの階層を持つものですけれども、私どもの学習要素は、指導要領にはぶら下がってはいるものの、教科、学年などの階層を持たない要素の集合というふうに考えました。そして、評価の観点や学習段階ではなく、あくまで学習対象、何を学習するかというところで区別いたしました。そこに書いてあるような例でございます。また、大枠を示すことだけにとどめて、細かい部分は教材会社、教科書会社の競争領域ということで残しておくというところで、大枠を決めていけばいいんじゃないかというところで範囲をとどめたという考え方でございます。

【座長】 ありがとうございました。学習指導要領のコード化というのは、文部科学省がこの間公表しましたが、その公表している学習指導要領の粒度というのは、当然ながら教科書や教材の一つ一つの粒度に比べたら随分と桁の粗いものになります。その細かい部分を業界団体で、まず学習要素リストとして検討したというお話をいただきました。


【ICT CONNECT 21】 ICT CONNECT 21は、2015年に始まった比較的若い団体ですが、このような目的で活動しております。教育の情報化の関連、様々なすばらしい仕事をされていらっしゃいます組織、団体あるいは個人の方たち、たくさんいらっしゃいます。そういう方たちをつなげる、コネクトする。先ほどコミュニティーというキーワードが出てきましたけれども、コミュニティーをつくろうという活動をしているのがICT CONNECT 21です。
 事業としてはこういうことをしておりますが、最近最も活発に動いているのがGIGAスクール構想推進委員会と申しておりますけれども、メーカーの方たちに集まっていただいて、いろいろな活動しております。様々な活動を1か所で集めて情報をまとめられるように、GIGA HUB Webというウェブサイトを日々更新しておりますので、ぜひ御参照いただければと思います。
 それから会員が集まり、ワーキンググループの活動をしております。テーマを決めて関心のある方たちが集まって、検討、研究、提案のような活動をしております。技術標準と普及推進に大きく分けられます。
 技術標準の中心になっている国際連携サブワーキングという集まりは、例えばISOのSC36ですとか、IMS、あるいはW3Cのように、教育に関しても様々な標準化団体が活動されていますけれども、そこに日本から参画されているような方たちに集まっていただいて、まず国内外の技術動向を把握しています。そこでの議論は、日本で教育の情報化を進めていくにはどういう形がいいんだろうということで、技術的な連携は国際標準に則ることができますが、国の制度や文化に依存する部分というのは必ずございます。そういうものは国内できちんと標準化を進めるべきだということで、文部科学省にも提案をする活動をしてきたのがこのグループです。
 それを受けまして、ラーニングリソースメタデータSIGというところが、去年の初めに各国の教育データの標準化に対する動向の調査を行いました。アメリカ、イギリス、オーストラリアなど、国でどういうことをやっているのか、どんな項目の標準化を行っているのかというレポートをまとめております。
 それから校務系-学習系情報連携サブワーキンググループというのは、例えば校務支援システムメーカーですとか、あるいは学習系の教材メーカーのようなたくさんの方たちに集まっていただいて、情報連携の方法を検討しております。そうすると、やはり基盤となる、先ほどのデータインフラ層に相当する部分の児童生徒や学校のID体系などが必要じゃないかということで、この有識者会議の座長代理の藤村先生をリーダーにいろいろな議論を行っているのがこのグループです。
 それからこれは普及推進の観点なんですけれども、スタディ・ログの推進サブワーキンググループというチームもございます。最近いろいろなところで話題になっておりますけれども、これはスタディ・ログについて、どういうメリットを目指すべきなのか、じゃあそれを利活用する課題は何なのかという整理を行っているグループです。
 それから最も新しいのが、学習eポータルサブワーキンググループというのを2か月ぐらい前に組織いたしました。これはデータの標準化というよりも、むしろそれをどう利活用するかの側、次のステップかもしれませんが、日本の初等中等教育にはLMSがなかなか普及しておりませんでした。やはり相互運用性を確保するためには、ハブの役割を示す仕掛けが必要だろうということで、それを学習eポータルと名づけて、どんな機能が必要なんだろうという議論をしております。
 ICT CONNECT 21の活動の御紹介は以上です。

【座長】 ありがとうございました。もう既にICT CONNECT 21では、いろいろな関係者をつなげて、コネクトして、こういうコミュニティーをつくって動き始めているというお話をいただきました。


【APPLIC】 一般財団法人全国地域情報化推進協会、略称APPLICといいます。本日は簡単にAPPLICの取組の概要について御説明させていただきます。
 APPLICは、国、自治体と連携して、自治体業務システムに関わる標準化の推進等を促進している団体でございます。主な活動の内容の1つのポイントとして、自治体の情報システムの地域における多数の情報システムをオープンに連携させるための基盤、これを、私どもは、地域情報プラットフォーム標準仕様と呼んでいますが、それの開発・普及に取り組んでおります。
 地域情報プラットフォームとは、自治体の庁内における業務システムのマルチベンダー化を進めるために、庁内の様々な業務システム間の情報連携を可能とする標準仕様ということで、自治体業務のうち、現在、住民基本台帳、個人住民税といった業務26業務、あとGIS、教育、防災といった4業務の情報システムについて標準化を進めているところでございます。これはあくまでアプリケーション、機能の標準化をやっているというものではなくて、それぞれシステムをつなぐ、連携させるときの通信の規約ですとか、あと連携するときのインターフェース、そういったものを規定している標準仕様でございます。
 その中で教育に関するところでいいますと、今参加いただいている藤村先生にも、当活動のアドバイザーとして御助言をいただきながら、教育情報アプリケーションユニット標準仕様を策定しております。校務には、学籍、成績、保健、それぞれいろいろな業務があるかと思いますが、本仕様では、その中でも法的に定められている指導要録、健康診断票、この2つについてデータ連携の標準化を策定しております。なお、今策定している標準仕様では、現在SOAP通信は使用しておりませんので、ワンストップのオンラインでメッセージ交換ができる仕様については、今現在は定義をしていないところでございます。
 少し中身を見ていきますと、標準仕様で記載している資料一覧は、資料右のほう、黄色の四角で囲っているところ、機能一覧からコード辞書になります。その中で、今日ちょっと簡単に抜粋して御紹介するのが、データ一覧と項目セット辞書でございます。データ一覧は、このユニットが所管するデータの中で、ほかの業務ユニットから参照されるデータを集約してまとめたものでございます。四角で囲っていますが、例えば学籍に関する記録という情報では、児童生徒の国籍、保護者、あと在学する学年等のデータの型、桁数等を規定しています。
 その中で共通的なリファレンスとなるデータ項目は別途定義しています。児童生徒情報ですとか、あと学校情報等は、こちらで示す項目セット辞書で、共通的なリファレンスとなるデータ項目の集合体の型を定義しております。項目セット辞書でも同じく児童生徒情報の児童生徒ID、氏名等のデータ型を定義しております。
 参考にはなりますけれども、APPLICの標準仕様準拠製品の認定については、毎年各ベンダーが自社の製品を持ち寄って、実際データが連携できるかといった相互接続確認テストを行っております。それでデータ連携の確認がとれれば、APPLICの標準仕様に準拠として認定しています。
 新たな法律改定があったときにも、標準仕様の維持管理は必要になりますので、今回新しくなりました学習指導要領への対応として、小学校の外国語教育への対応、指導要領の観点コード値の追加等、法律改正に伴って項目の追加・修正を行い、その都度タイムリーに標準仕様の改定を実施しています。


【下山政府CIO補佐官】私は政府CIO補佐官として、IT室の担当になりますが、特に政府全体で今、データ戦略、そしてデータ標準化を進めようとしている中で、今回の文部科学省の教育データの標準化に関しても、やはり政府全体との整合性を取りながら、より有効活用していけるようなデータを作っていくために、関わらせていただいているという位置づけになります。特にこの学習内容情報の標準化ということで、御説明させていただきたいと思います。
 まず、政府全体の標準化推進の取組と今回の教育分野の標準化の関係について、ここから御説明させていただきます。
 現在、特にデジタル社会を構築するに当たって、データというものが国家間の競争力の基盤にもなっている状況があるわけです。データ基盤がいかに盤石な、充実したものがあるかどうかによって、国の豊かさや国際的な競争力が決まるような状況があるというわけです。そういった中で、国内においても、21世紀のデジタル国家にふさわしいデジタル基盤構築、そのためにデータ戦略を今策定しようとしている段階です。特にコロナ危機において、本当にいろいろな問題が浮上したわけです。迅速で的確な対応ができなかった場面がたくさんあったと思います。そういった中で、やはりデータ活用基盤が、特にデジタル化に向けての整備であったり、あと、ここでは標準化と明記されているんですけれども、データの取扱いルールなど、これが官民ともに不十分であることが露呈しました。こういった状況を踏まえて、今、データ戦略タスクフォースを政府でも設置をして、2020年の11月末まで、本当に今月末までに、一気に3回のタスクフォースを行いまして、データ戦略の方向を取りまとめるという段階にきています。特にこのデータ戦略のビジョンとしては、データがつながることで価値を創造し、誰もが活躍できる社会というふうに定義をされているんです。こちらの図や文言は、全てこのデータ戦略タスクフォースの中からの引用ですが、こういった位置づけできちんとつながるような形でデータを整理していくということが、分野ごとではなく、分野間で連携がちゃんとできるような形にしていくということが定められているわけです。これを目指そうとしている段階です。
 そういった中で、教育分野についても、やはり他分野との連携も可能な形で標準化を進める必要性があるわけです。特にこのタスクフォースにおけるデータ標準化の検討内容としては、データのライフサイクル、つまり、作成されて、利用されて、そして最終的には廃棄されるわけですが、そのライフサイクルを効率的に運用し、サービス間の情報連携を容易にするためには、技術的なデータ標準を整備していく必要があるだろうと。そして、使用すべきデータ標準をきちんと明確化して、さらに国際連携も推進できるような状態にしていくということが挙げられています。そういった点から、特に政府で推進をしていこうと。標準化して推進しようとしているもの、汎用的なデータ標準として幾つかあるんですけれども、例えば人とか、組織とか、建物、コンテンツ、アクティビティーといったものがあるんですが、これらはそのまま教育分野のほうでも、必要なデータ標準を策定する上で、一部転用可能なものや、ほとんどそのまま転用可能なものがあったりします。例えば人という概念は、そのまま学習者や指導者に当てはめられますし、また、この組織は教育機関、そして建物、教育施設とか、そしてコンテンツに関しては教材とか、そういった形で、政府で標準するデータ標準をそのまま生かしながら、そして、この教育分野に特に必要なものを拡張していくような形で進められると考えております。特にこういった標準的なデータ体系を参照するメリットとしては、まず、既に検討済みの標準があれば、それをベースに過不足を、特にこれは不要であるとか、あとは、こういったものは逆に必要だから新しく作るとか、そういった形でたたき台にしながら、新しい分野別の標準というものを作っていけるわけです。そして、特に教育分野においては、教材の充実化という観点でも、他分野で作られた電子コンテンツと連携をしやすくすることで、他分野で作られたものも教育分野で活用しやすくなる場合があると思います。例えば、エンターテインメント目的で作られたものが教育分野でも使いやすかったりとか、そういった他分野のデータとも連携をしやすくするための標準という考え方もあるんです。そしてさらには、データが標準化されていると、同じツールをそのまま共有したり、転用したりということも可能になってくるので、非常に効率的にサービス化ができるということがあるわけです。
 特に我々と一般的にこのデータの設計を行う方々が留意している点としては、特に標準的な、汎用的な標準を作るときに留意していることとして、まず、このデータを一番最初に作成する現場の方に負担を与えないことというのを念頭に置いて設計をしています。特に、まず汎用的な標準がない場合は、必要なデータ項目を一から検討しなければいけないわけですが、もう既に標準があれば、それをそのまま使えるので、検討する部分のコストはまず下げられます。ただ、最低限データを分離して記述するとか、そういったルールを合わせるところの対応が発生するということになります。例えば、こういった教材の名称として、「伝統的祭り図鑑(東日本編)」みたいなものがあった場合に、これは今2つの概念が入ってしまっている状態なんです。教材の名称と対象地域の概念が合わさって1つの文字列になってしまっている場合に、これは分けて書いていただいたほうが、より検索性とか、サービスを作るときの汎用性というか、柔軟性が上がることになります。こういった形で、標準モデルとして教材名称と、対象地域を入れるためのデータ項目等を作っておくと、分割して記述ができたりします。そして、2つ目です。現場の目的に合わせて拡張を可能にしておくという点も、きちんと設計しておく必要があるわけです。例えば、標準モデルがあるからといって、もともと持っているデータをわざわざ情報量を落として公開するということはもったいないので、柔軟に拡張できるようにしておく必要があります。例えば、もしアクセシビリティー対応状況とかも情報として持っているコンテンツであれば、そうすると新しくアクセシビリティー対応状況とか、そういった項目を設けて「点字あり」とか入れられるわけです。こういった形で現場に負担を与えず、さらに拡張可能なモデルにしておくという点を今回も留意した上で検討を進めておりました。
 そこで実際の教育分野のデータ標準化の内容なんですけれども、特にこちらは第1回会議の資料と引用になるんですが、この標準化対象、3分野あります。主体情報と内容情報と活動情報、この3点のうち、2番目の、2点目の内容情報から、データ標準化を進める形を取っております。こちらは文部科学省とIT室、そしてシビックテック団体とも連携しながら、このモデル案を作るだけではなく、検証も並行して進めるようなかたちを取ってまいりました。
 特にこの学習内容情報、この標準化で期待される効果としては、主に4つ考えているんですけれども、1つ目は学習活動の効果の最大化です。この辺り、第1回の検討内容から、文科省さんの資料のほうからも、そのまま踏襲をしているんですけれども、特に現場の知見であったり、実践の蓄積、こちらをちゃんと可視化していくとか、あとは成果だけではなく、教員の方の指導や、あとは学習プロセスの可視化をしていくという点で標準化をすることで蓄積はしやすくなるなとか、あとはこれまでどうしてもいろいろなサービスとか、特定の基盤に依存していた部分がありましたが、そういったサービスや媒体に依存せずに、相互にデータを交換可能になってくるという点もメリットの1つになります。そして、特に組織や地域を越えた学習コンテンツの共有、特に電子コンテンツになってくると、どの地域で等の物理的な制約はなくなるので、インターネット上で誰でも使える状態にできるわけです。そういったときに、より多様な社会の主体の力を学校の教育現場に活用可能にしていくという観点で、標準化をすることでより広くコンテンツを共有できるというところが、すごくメリットとして期待できるところかと思います。この点では、特に教育分野に限定せず、また分野を越えたコンテンツの活用というところにも広がってくるはずです。
 この学習内容情報、この標準化の対象としては、こういった内容を挙げています。教材、指導案、イベント、事例といったところです。こういったものが学習内容オブジェクト、特にラーニングオブジェクトといいますが、この標準化の対象として検討を進めています。
 特にこのラーニングオブジェクトのメタデータ、学習内容情報のメタデータというものが非常に重要だと考えています。このメタデータというのが少し分かりづらい概念ではあるんですけれども、データの管理情報、これを一覧にまとめたデータというイメージなんです。例えば、データのタイトルとか、データ自体の説明とか、最終更新日、URLといったものがあるのですが、よく施設の管理台帳とか、物品の管理台帳を作られると思いますが、データに関しても管理台帳を作っておきましょうという考え方です。例えばこの学習コンテンツの場合も、学習コンテンツ本体、例えば動画とか、スライドとか、音声データとかありますが、こういったデータ本体があるのに対して、管理台帳を作っておく場合に、例えば、このタイトルは何々ですとか、メディア形式は動画です、教科は理科です、といった形で、こういった一覧表で整理ができるはずです。こういったメタデータを作っておくことが、1つ重要になってくると考えております。
 ここで、このメタデータを先に整備して標準化をしようというのが、今回の事業で進めている内容です。特にこのメリットとしては3つ挙げています。1つ目は利用者から検索性を向上させることができるというメリットがあります。現在実際に起こっている状況としては、学習支援コンテンツ、今、非常に優れたものがたくさん流通していますが、利用者の方がなかなか発見できない状況があるわけです。特に一般的な検索エンジンから良質なコンテンツを探してくるというのは、非常に困難です。ここで教材のメタデータ、これが定められた標準的なフォーマットで提供されている場合に、学習支援サービスなど、いろいろなサービス側でそれを取り込んで検索可能にすることは、容易にできるわけです。そうすることで、利用者にとってコンテンツが探しやすくなる状況がつくれるはずだと考えています。このメリットとしては、このコンテンツそのものを標準化する場合、非常に大変ですけれども、まず、このメタデータ、管理情報だけを標準化するというのは、非常にコストとしては簡単にできるわけです。さらにこの方法を取る場合、著作権に配慮しながら利用を促進できるというメリットも出てきます。このコンテンツは著作物でもあるので、そのものをなかなか公開はしにくいんですけれども、このメタデータ、管理情報だけをオープンにしておけば、利用者からその存在があることはきちんと発見できるわけです。そういった形で、著作権に配慮しつつ利用を促進するという意味でも、メタデータの整理を進めることは非常に重要だと考えております。
 特に、データ戦略でもあったように、国際的な連携を可能にするという方針の下、やはり国際的にデファクトスタンダードになっている規格を採用していくという方針を考えているわけです。特に、これまで教育分野ではIEEEによるLOM、Learning Object Metadataであるとか、第2回で清水先生が御発表されていたNICER LOMという優れた先行事例もあるわけですけれども、こちらは最終版の公開日とか、最近ではあまりアクティブに更新がされていないものも出てきたりするので、とにかくこの技術の進歩が早い昨今は、なるべく最新の情報を取り入れたりとか、こういった国際標準にしても、中でもなるべくアクティブに検討が進められていて、さらに多数の機関に利用されているものを採用したいということで、特にこの一番右のDCAT、これは汎用的なデータカタログの相互運用性を高めるために整備された語彙なんですけれども、W3Cが整備しているものですが、こちらは世界中の行政機関や民間でのデータカタログで標準的に用いられているものになるので、これを組み合わせて採用する方針が、恐らく一番最新の情報も取り入れながら、きちんと教育の情報も整理するという形が取れると考えたわけです。
 実際に今MEXT-LOMという形で、この9つの分野に分けてデータ整備を進めているところです。実際のデータ項目、62項目あるんですけれども、ここは入力負荷を考慮して、62項目全部埋めるわけではなくて、この基準に分けて必要なものだけ選んで使えるように、そして拡張もできるようにという形で運用を可能にしています。
 そして実際検証も進めておりまして、生涯学習推進課で整理されたものを、実際にこの標準に従って作ってみたところまで進めているところです。
 そして、このメタデータの教材の公開をした上でしばらく検証を行って、初版の公開につなげられればというスケジュールで考えているところです。
 最後になりますが、シビックテックによる支援の可能性というのも考えていきたいところです。特にこのコロナ禍においては、シビックテックによって学習の支援を進めようという取組もあるので、こういったところと連携するためにも、オープンデータ化、標準化を進めていきたいということになります。
 説明は以上です。


(意見・質疑応答)

【委員】 JAPET&CECに2点質問があります。
 1つは、こちらのグループに教科書会社が参加して作っておられたと思いますので、今回お決めになった学習要素というのを実際に使ってみられたかどうかという、成果について教えていただければと思います。具体的に申しますと、単元を細分化して学習要素に番号をつけていくというのは、その中でどういう教え方をしていても同じ要素が振られてしまうので違いが見えにくい。ところが、ロングスパンで見てみると、この学校というのは先取りして学んでいるとか、先生が教え込まなくても子供たちが勝手にこっちの単元を学んでいるみたいな、ビッグデータの強みが出てくるかと思います。そのように使っていて、成果が出てきているのかというのが1つ。
 もう1つは、こういうのを1回決めて使ってみて、使ってみた結果を参考に変えてきたような経緯があるかどうかというのが知れれば、こちらのほうで教育データを標準化した後に、実際に実践してみて成果を見ながら作り替えていくのに役立つかと思います。そのサイクルについて教えていただければと思います。以上2点です。

【JAPET&CEC】 まず1番目の、教科書会社が実際に、例えばデジタル教科書等で学習要素を使ったかという御質問については、正直なところまだそこまでは至っておりません。サンプルで、何社かの教科書会社にコードを振っていただいて、我々JAPETのデモ用のサイトで1回教材連携をやってみたというところまででございます。
 次の2番目の学習要素を使って、またフィードバックして、このコードの粒度を変えたりとか、作り方を変えたりというようなところまではまだ至っておりませんので、なかなかプロジェクトの中でも、ユースケースによっていろいろな粒度の要望が出てくるだろうというところまでの議論は進んではいるんですけれども、実際学校現場で実施をしていただくとかいうところまでは、残念ながら、まだそこまでは至っていないという状況でございます。

【委員】 先ほどの3団体の皆さま、前半の3委員の御発表も含めて、全体的に意見を述べさせていただきます。
 まず、前半3委員には、今回学習者のために、何のために教育データが必要なのかということに関してお話ししていただいたと思っています。そしてそれが今、民間各団体で今どうやってやろうとしているのかというお話をいただいたのかなと思っています。その上で、やはり、「何のために・誰のために」というところが、データを設計する上でとても重要であると思っております。そして、「学習者のために」というところについては、共通の見解であると思っています。そして、私が問題だと感じているところが、現在の公教育と民間教育の分断が学習者に対して不利益を与えているという点です。長い歴史から、民間と学校というところは相反したところがあったと思いますが、今回の教育データの利活用を機に、先ほど下山政府CIO補佐官もお話しされておりましたが、データのオープン化を図り、民間教育の知恵を公教育に取り込むという視点で、データ設計が必要なのではないかと思っております。前段のお話の中で「民間データの囲い込みの禁止」的な話が出ていたと思うのですが、私はEdTechの推進という立場で、多少民間の代弁のような意見になりますが、民間データの囲い込みを禁止するために、相互のメリットを構築したうえで、どうやってデータを利活用するかという議論を深めていかないといけないと思っています。また、その教育データは、先ほども申し上げましたが学習者のために、学習者自らが主体的に活用し、例えばLMSの自身のデータを自ら振り返り、リフレクションを起こすことによって、主体的で能動的な学習者になっていくために使っていくということを目的にしております。現状、AIドリルのLMSがまだまだ稚拙であるというところの課題が大きいのかなと思いますが、AIドリルは何も、問題が解ければ理解したことになるなど、いわゆる注入主義、注入教育の再来を推奨しているということではなくて、効果的な知識習得とリフレクションによる主体的学習者になるということをうまく融合させていく段階なのかなと思っています。1つ問題点として、民間教育と公教育の分断というところを問題提起させていただきます。

【座長】 ありがとうございました。貴重な視点だと思います。

【委員】 先ほどの委員の御意見に関してコメントですけれども、多分データは、特に大学教育の場合のラーニングアナリティクスという視点からいくと、教育は学校教育を中心に回り、LMSを導入して、そこで蓄積されたデータをうまく共有、活用しようという話からスタートしていると思います。なので、もちろん学生のためでもありますが、教育を行っている先生のためでもあって、その先生の教育をいかに支援するかという視点も重要になってくると思います。特に公教育においては、どういったデータをどう活用するかというのは、まず先生のほうが決めていかないといけない部分も出ると思うんです。そういう意味では、まずは先生をサポートするために教育データを使うということが、学校教育においては特に重要かと思います。

【座長】 ありがとうございます。これは多分先ほどご意見を出された委員もそのように思っておられて、しかしながら現状では、データの相互流通ができていないということについての問題提起をされていると理解しておりますが、いかがでしょうか。

【委員】 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。ただ、前回も申し上げたのですが、データの1次利用と2次利用の問題があって、まず、その学習者のために1次利用のデータの整理をした上で、2次利用として学校がどう使うか。当然その学校がどう使うかというところを抜きに語っているわけではなくて、そこに至るまでに学習者のためのデータをしっかり整備するべきだという意見でございます。

【白水委員】 ご意見をいただいた委員に返事を一言だけさせていただければと思います。先ほどお言葉にあった「AIドリルというのは注入主義の復権ではない」というおっしゃり方自体が、結構今アメリカなんかでは、AIドリルを推進する人から出るものだと言われています。推進派はそうである「はずがない」という議論をしがちなのに対して、懐疑派というのは実際にどうなっているか見ていこうと、そういう違うがあります。私が考えるのは、「AIドリルが実際に注入主義になっていない」ということを実際に先生方、あるいは子供たちが評価をしながら前に進んでいく―そのサイクルが生まれてくると非常にいいのではないかということです。ドリルを使いながら、一緒にみんなで学習の評価も行っていく、そのために教育データ標準化というのがうまく働けばいいかなというふうに考えております。

【委員】 民間教育のクリエイティビティーやスピードと、研究、学会というアカデミックが融合することがとても重要なのではないかなと思っています。

【座長代理】 今の御議論ですが、私もAIドリル等について非常に有効だと考えていますが、実は教育現場というのを考えてみますと、教育学的にいうと、「EdTechを活用しての個別化」、これはあくまでも本当に個別、一人一人で対応する部分と、もう一方主体的・対話的で深い学びという「協働的な学び」というのがありまして、どちらかというと対面授業ですと、こちらの「協働的な学び」が中心になってくると考えられています。そのときに「教員支援システム」が必要になると考えています。AIドリルはリコメンド先が直接児童生徒です。つまり児童生徒は受動的・非協働的になり、主体的・対話的にはなれません。それに対して、教員を介して、児童生徒の「主体的・対話的で深い学び」「協働的な学び」を支援するということが必要だと考えております。そうしますと、今後「教員支援システム」がLMSと並んで大事なものになると考えております。「主体的・対話的で深い学び」「協働的な学び」に関するリコメンドを教員に提示し、子供たちを支援していくことがこれから必要です。そのためには、スタディ・ログだけではなくて、アシスト・ログという形で、教員がどういう支援をどういう子供にしてどういう効果があったのかということも、ログ化していくのが必要ではないかと考えております。そこで、今、議論から抜け落ちている「教員に対する支援」という視点について、お話をさせていただきました。

【座長】 ありがとうございました。貴重な視点でございます。

【委員】 先ほどご意見を出されていた委員のお話などを伺っていて思ったのですが、この教育データが標準化して流通していったときに、どこまで、どこの誰まで流通させていいのかということも決めていかなければならないと思いました。学習者に返す場合は、既に学習者の紐付きのデータになっているわけですが、そういうデータを今度先生が活用するというのもいいのですが、教材を作っていたり、教科書を作っている民間の方も当然使いたいわけで、そこは匿名化するというような提案が前半になされたとは思いますが、ではそのような匿名化されたデータでどこまで役に立つのかという話がありますし、かといって、誰かが紐付きになっていたときに、子供のときはいろいろ苦手だったけれども、大人になって随分回復したのに、そのデータが、例えば就職活動とか、そういうところに使われてしまうとか、そういうことを考えていくと、どういうデータを誰まで開示して、どういう責任で使っていいかみたいなことを決めていく必要も出てくるんじゃないかと思います。これは座長が、何を決めるかというところを決めることも必要だということに、対応している意見となります。

【座長】 ありがとうございます。今の指摘も非常に重要な御指摘でございます。

【委員】 前半の議論、後半の議論を通して、本県では、子供たちには校務系の1人1アカウントと、学習系の1人1アカウントはできているわけです。これは別々のもので、連携できていない。先生も同じ状態になっています。そこで出てきた課題なのですが、今日の議論の中で出てこなかったのですが、未成年のアカウントいろいろなところに課題が出ています。例えば教材と連携するとか、学校の子供たちの場合は年次更新、先生と違って年次更新がある等です。学校を変わる、進級するというときにどうやって紐づくのということとかが影響してきたりとか、パスワード1つにしても、子供が管理するんじゃなくて、親とか先生が管理する等もあります。のぞかれたらどうなのという議論になったりとか、いわゆるデータそのものの扱い方というところも、非常にこのインプットの時点でたくさんの課題が出ているので、当然使うべき点、こういうのがあればこう活用できるということは、大前提として大事なんですけれども、そもそも、教育データというのは他のデータと違って、未成年というところの視点が、少し変わってくる、影響が出てくる、と思っています。ですので、データの扱いの合意とかも、すごく今手間取っているというか、そこにすごい時間をかけながら丁寧にやっているところです。

【座長】 ありがとうございました。現場からの貴重な報告でございました。

【委員】 今の委員の話に少し絡みますが、データの活用ということを民間の立場で見ると、やはり教育データというのはたぶん親の、保護者から見ても非常に貴重な話だと思いますし、それを使って自分の子供を、例えば民間の塾などにその情報をフィードバックしたいというような話になってくると思います。その場合の扱いということでいうと、やはり1つはきちんとした入り口というか、未成年という話もありましたけれども、データのやり取りするところに関するルールというのは非常に重要になってくると思います。そうすると、以前の議論もありましたけど、マイナポータルを使って本人を特定して、なおかつそこに保護者としての観念をどうやって入れるのかという話が出てくるのかなと思います。ここはたぶん下山政府CIO補佐官の専門分野かもしれないですが、そこら辺の管理の部分をぜひ、どこかのタイミングで御提案いただけるとありがたいなと思います。

【座長】 ありがとうございます。個人情報といいますか、本人の情報で、本人がもちろん最も重要な権利者なんですけれども、それが未成年の場合、子供の場合、保護者との関係、その辺について下山政府CIO補佐官から何かコメントをお願いします。

【下山補佐官】 今、政府全体でも、特にワンスオンリーとワンストップを実現するためのデータ整備というところで、例えば同じ情報を何度も入力しないでよいように、また、きちんと安全な状態、自分でコントロールできる形で流通できるようにという、そのデータガバナンスの部分もデータ戦略に含めて検討を進めているところです。それが今月末でタスクフォース全3回が終わって、そして、第1次取りまとめ案というのが、おそらく来月くらいですか、その辺りには1回出る予定なので、そちらをまた踏まえて、きちんと整備をしていく方向を議論していければと思っております。

【座長】 ありがとうございました。これまた貴重な情報を御提供いただいたと思います。

【委員】皆さまのお話を伺って、もう1点重要だと思ったのが、今の公教育を小学校1年生と中学校3年生で、同じように語るのは、少し乱暴ではないかなということです。よくデータの利活用に関して、発達段階に応じてという意見があると思いますが、一緒に語られることが非常に多いので、やはり発達段階というところをどう見るのか、個別最適化に見ていくべきではと思っており、これが可能になるのはデータ利活用なのではないかと感じています。
 もう一つ今のお話にも関係するのですが、アメリカですとCOPPAというのがあって、13歳未満とそれ以上で分けているところがあります。なので、その辺りでどう分けていくのかというところも、この場で議論をしてもいいのかなと思っております。


【座長】 今日はたくさんの情報提供をいただき、そしてまたいろいろな御意見をいただきました。多くの方々の御意見を基に、私なりに少し整理したいと思います。後半の標準化のところでは、そもそも自治体間のデータ連携のやり方については、APPLICが随分いろいろ御検討されてきたということ、そういう違うタイプのプレーヤーをコミュニティー化していくというのは、ICT CONNECTさんがいろいろやられてきたということです。これも非常にありがたいことをもう既にやられていて、その御知見を私たちはいろいろ活用させていただくことになるのかなと思いますし、JAPET&CECさんは、学習データに絞っていくと、どういう粒度のものをどのように運用すれば、各塾とか、教科書とか、そういうものがうまく連携するのかという粒度の研究を始めていらっしゃる。コストのかかる、手間のかかる話だと思うので、これから実証が必要だとは思うけれども、そこにはコストがかかるという現実があろうかと思いますが、そのようなお取組のお話をいただきましたし、下山政府CIO補佐官からは、政府全体の動きと、その中での教育データの在り方を内閣官房と文部科学省がどういうふうに調整しているかというのを、政府側の立場からいろいろ情報提供をいただいたところでございます。
 皆さまの御意見を聞いていて思うのは、いろいろな学習の履歴が取れたということと、それが誰のものなのかという権利の問題と、どのように利活用されれば教育が良くなるのかというようなことが、全部絡み合って議論しなければならないという現実があるということです。学習者のためであるというのは、それは第一前提で、それは当然だけれども、指導している教師と、あと学校の指導改善にそれは使われなければならないし、保護者は評価情報として欲しがるし、あるいは塾等の、私的な教育とつなげることによって、自分の子供の教育をさらに良くしようと、学習状態をさらに良くしようというふうに考えられると思いますし、国は教科書を検定までしていますから、その教科書の質が本当に良いものだったのか、学習者に合っているのかみたいなことの、教科書へのフィードバックとか、教材はもちろんですけれども、教材へのフィードバックとかいうのが、当然あり得ることだと思いますし、そういうものが総じてどういうふうに連携すればよいのかという、そのガバナンス的なところの検討も、これからできるようになるのかなと思いました。
 私が認識している最大の問題は、このログを取得するのは、多くの場合学校だということです。学校というのは設置者がいて、その設置者は自治体で、その自治体のルールの下で取ることになっていて、もしそれが塾に使うというふうに今宣言してしまうと、おそらく、学校では取らせませんとなる場合も多いのではないかということです。設置者が学校、自治体である以上、国がどこまでこれを決めて動かせるのかという現実もあります。一方でログを取ってみないと、大体何歳ぐらいになったらどこまでやらせていいのかみたいなことが分からないという現実もまたあります。今は言うほどログが取られていなくて、今最先端の奈良県でも、ようやくそういう混乱があるということが経験される段階に今あるということです。佐藤委員もおっしゃったように、発達段階との関係というのは非常に重要で、小学校の何年生と、これ明示的に決められるのかも含めて、私たちはそういう発達段階に応じて、保護者の介入とか、教師の介入とかをある程度制度設計しなければならないということですが、これもまた、今のところ何もログが取られていないので、何の経験もできない自治体がほとんどの中で、この民意をどうやってつくっていくかという、ここが非常に大きな課題かなと思います。
 ですので、まずは先進的な地区や先進的な考え方の自治体、あるいは学校にどんどんお取組いただいて、そしてそういう経験を私たちはコミュニティーで共有し、ネックになる部分を洗い出して、データ形式、データ連携、あるいはそういう制度でそれをカバーしていくというような形でやっていくしかないと思いますし、国としては、大きなデジタル庁の動き等がありますので、そこにうまく追従しながらやっていくという形を取りたいと思います。
 私どものこの会議体も、今日ようやくこの3回目ができまして、このあと4回目、5回目でいろいろ論点を整理して、一度世の中に公表するタイミングにございますので、そういうようなことにつきまして、皆さんの御意見を少し事務局に整理していただいて、それからまた次、議論に入っていきたいと思います。
 次回以降のことにつきましては、事務局から御案内いただければと思います。

【事務局】 本日も御議論ありがとうございました。
 資料8を御覧いただきたいと思います。先ほど座長からもありましたとおり、今後の進め方について案をお示ししております。第4回は来年1月、第5回は来年3月に予定しておりまして、具体的な日時、開催日時については、後日改めて詳細を御連絡したいと思います。
 第4回は標準化と利活用に関して、それから論点整理を事務局で御提示させていただきたいと思います。第5回は、それを踏まえまして、論点を今年度中に一旦まとめて、何をどこまでどのように議論していくかといった点で論点を整理していくといった段取りで進めさせていただきたいと考えております。

【座長】 4回目では、皆さまにいただいた情報提供と御意見を踏まえて、論点整理をしっかりと事務局のほうでしていただいて、そこに付け加える形で、あるいはそれをシャープにする形で審議を進めてまいりたいというのが次回、1月の予定ですということです。
 3月にはそれを踏まえて、また春頃には教育データ標準の第2回目という、第2版ということで、いろいろな情報、例えば主体情報とか、そういうものについても、今省内で検討進んでいますので、そういうようなことについていろいろ検討していくということでございまして、そこに書いてあるとおりでございます。
 本日もたくさんの御意見をいただきました。私どもこの皆さんの御知見を生かしまして、大枠を整理していくのがミッションということになりますので、これからも進めてまいりたいと思います。
 お時間になりましたので、本日の会議はここまでとさせていただきます。

(以上)

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