教育データの利活用に関する有識者会議(第2回)議事要旨

1.日時

令和2年10月19日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 教育データ標準について
  2. 教育データの利活用について

4.出席者

委員

堀田座長,藤村座長代理,梅屋委員,緒方委員,楠委員,小崎委員,佐藤委員,三部委員,白水委員,田村委員,戸ヶ崎委員,中村委員,橋田委員
 

文部科学省

瀧本初等中等教育局長,塩見大臣官房審議官(初等中等教育局担当),浅野初等中等教育企画課長,桐生学びの先端技術活用推進室長,佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐,平山健康教育・食育課長,田島教育課程課課長補佐,度會教科書課課長補佐,齋藤情報教育・外国語教育課課長補佐,中川初等中等教育局視学委員

岸本総合教育政策局調査企画課長

中川国立教育政策研究所所長

オブザーバー

内閣官房IT総合戦略室,経済産業省サービス政策課教育産業室,個人情報保護委員会事務局

一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC),一般社団法人 ICT CONNECT 21,一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)

5.議事要旨

議事1.教育データの標準について


 ※事務局から、資料1「教育データ標準(第1版)の公表等について」の説明、総合教育政策局調査企画課から、資料2-1「学校コードの取り扱い(案)」及び資料2-2「(中間報告)学校における働き方改革に資する負担軽減の取組について」の説明、初等中等教育局健康教育・食育課から、資料3「学校健康診断情報の利活用について」の説明があり、委員から意見・質問が出された。

 (意見・質疑応答)

【委員】 今お話を伺っていた中で意見を、大きく資料2-2について1つと、資料3について1つ申し上げたいと思います。
 まず資料2-2の働き方改革に資する負担軽減の取組について、学校基本調査などの各調査の回答の準備期間を長くすることや、ワンソース・ワンマスタの考えで重複の調査を避けること、また、オンライン化を推進すること、一言で言うと全体的なボリューム感を減少させるという負担軽減の取組としての効果を、大変大きく期待しています。
この調査の見直しに当たり学校現場等で負担と感じていることを1つに絞って申し上げますと、用語や定義の考え方が分かりにくいものが多々見受けられるということです。例えば、講師とか非常勤講師、また、本務者や兼務者などの定義が、国の調査と県の調査とで食い違いがあることや、また、教職員の数などについての調査によって数値のカウントの仕方が異なることなどで混乱が生じてしまいます。ぜひ用語、定義等の御検討をよろしくお願いいたします。
 資料3についてですが、これも大変よい取組だと思います。何よりも、日々蓄積したデータを活用することで、1週間、1か月といったスパンで流行状況を把握することができて、保護者への情報提供も効果的に行うことが可能になると思っています。また、今後、就学前の健康情報やアレルギー情報などを蓄積・活用することで、ちょうど今、本市でも始まったところですが、就学時健診の実施方法等を改善することもできます。特定の期間に個々人での医療機関を受診し、結果をシステムに集約することが可能になると、現在の集合型健診の簡素化にもつながっていき、このことで、学校、保護者、学校医の負担軽減を図ることも期待できると思っています。
 なお、1点だけ、システム構築に係る懸念がございます。それは、資料にもありますが、LGWAN外の校務支援システムが連携サーバーによるインターネットへの対応ができないとなった場合についてです。このLGWAN外の校務支援システムは、ネットワークの切替えなど大変煩雑な作業が必要になる可能性があります。そのことで、学校や教育委員会の負担にならないように御検討をよろしくお願いいたします。

【委員】 資料3についてですが、先ほどの校務支援のデータと、この資料3では民間事業者からのデータのいわゆる接合の難しさがあるというお話でしたけれども、主に個人情報保護条例とか2,000個問題に関わるところが大きいのかなというように聞こえましたけれども、例えば先行する自治体、そこの個人情報保護条例の特例をしっかり取っている自治体に係る、いわゆる国としての共通としての何か課題、つまり、国全体としての課題と自治体としての課題を分けるとするならば、どういう関係性になるのか。それとも、ここで議論しなければいけない、共通で解決しなければいけない国の課題というのは何なのかということを少し教えていただければと思います。

【座長代理】 私からの質問は、それぞれの資料について1点ずつ3点ございます。
 1点目ですけれども、従来、文部科学省様から出ていた教育データの標準化、これは資料1についてですけれども、2ページ目を拝見しますと、従来、スタディ・ログという形で活動情報の言葉が出ていたわけですけれども、ここの2ページ目で、大阪市等でも使っていらっしゃるように、児童生徒のスタディ・ログ(学習情報)とライフ・ログ(生活・健康情報)、教師のアシスト・ログ(指導情報とその効果の評価)と、活動情報が3種類あるんだということを明示していただきました。これについて、ほかの資料等でも、スタディ・ログを取るだけじゃなくて、心の天気図等生活活動、PHRとの関係で健康情報等も取る。また、教師側の指導活動にも取る、そういうふうな整理でよろしいかどうかというのが1点目でございます。
 それから2点目でございます。2点目は、今回、負担軽減ということで、学校コードの話とか学校基本調査等の校務支援システム等からの入力ということのご提案がございましたが、これは、先ほど事務局からご提案のありました教育データの標準化のほうに含むというようなことで考えてよろしいのかどうか。もし含むのであれば、日本中がそれに従ってそのシステムを実装してくれるかと思ったものですから、それが2点目の質問でございます。
 3点目は、PHRの絡みでマイナポータルを使うというお話が出ました。子供たちユニークにIDを振らないと、恐らく個に応じた学びをつなげて分析したり、小・中・高とデータを追ったりすることはできないと思うんですが、そのユニークIDとしてマイナポータルを使うということは、ユニバーサルIDとしてのマイナンバーもしくはマイキーIDを使われることなのかなと想像しながらお聞きしました。実はマイキーIDですと、任意に変更ができてしまうので、学校が把握し切れないということを心配したりですとか、マイナンバーであれば、マイナンバーカードを取得しなくても番号が振られていますがセキュリティ管理が大変ですし、慎重に検討する必要があると思います。マイキーIDはマイナンバーカードを取得しないと振られないということで、その辺どうなっているのか、お聞かせいただければ幸いです。

【事務局】 御質問ありがとうございました。委員からお話ありました2,000個問題ですが、これは教育分野に限らず一般論として申し上げますと、例えばオンライン結合制限があるといった課題があるときに、国として法令等で全国統一で扱うべきではないかといったような課題が国全体の課題でございます。これは現在、内閣官房を中心に来年度の新たな法案を検討しているところであり、この中でどのような扱いをするかといったところを政府全体で検討しているところでございます。したがいまして、今回のこの有識者会議の中での議論というよりも、今そちらでの全体の枠組みの中での議論となっておりますが、ただ、こちらの有識者会議の中でも、こういった課題があるですとか、こういった点から見直していくべきだといった声がもしありましたら、そのような声をまとめて、そのような場に反映させていくこともできるかと思いますので、御意見をいただければと思います。ですので、2,000個問題は、国としての課題が今整理されているところと、あとは今の枠組みの中で自治体ごとに条例やその条例の解釈としてクリアしていく問題の2点がございますが、国の問題、国全体の課題といった場合には、今申したようなお話でございます。
 それから、座長代理からご質問のありました、まず1点目のスタディ・ログに関しましては、生活活動も入れていこうということで、学習データの標準の枠組みの中に含めてこれを捉えていこうということで、今後、どういったものが入るのか、議論させていただければと思っております。
 もう一点、学校コード等はまた教育データの標準化の中に最終的に入るのかということですが、このデータ標準の中には、教育データの標準を見れば初等中等教育のデータに関してどういったデータが標準化されていて、共通で使っていけばいいのかといったことを一覧的に見られるといったことをやっていきたいと考えていますので、学校コードも対象としていきたいと考えております。

【総合教育政策局調査企画課】 それではまず、委員から御指摘をいただきました点についてお答え申し上げます。それぞれの定義そのものは各統計調査を行う中で、それぞれの必要性に応じて定義が決まり、調査が実施されてきたという状況がございますけれども、今般、電子化、デジタル化が進む中で、これらのデータを統合的に扱っていくという中で、やはり定義がまちまちな部分もあるというのは、支障が生じてくる部分というのはあると思います。こういった点につきましては、今後のこの調査等の標準化等も踏まえながら、この辺りの問題について、どのような形が最適なのか、すぐに解が出るものではないのですけれども、十分考慮していくべき課題であると思っております。
 また、座長代理から御指摘いただきました点、先ほど学校コードの部分につきまして桐生室長のほうからもお答えいただきました。学校基本調査、教員統計調査などにつきましても、回答内容のかなりの部分は学校として持つべき標準的な、基本的なデータが多いというふうに考えております。今般、教育データ標準の取組の中で、それらの中でも特に主要な大切なものというのは、今回、今年度内に進められます取組の中に入れていきたいと思いますし、それ以外のものにつきましても、ほかの調査等も含めて、どのようなものが教育データ標準の中に入るべきか、そこをよく皆様の御意見を伺いながら検討して進めていきたいと考えております。

【初等中等教育局健康教育・食育課】 まず、委員から、校務支援システムはインターネットへの接続ができないという御指摘がございましたが、LGWANにつながっている自治体はもしかしたら少数かもしれませんが、幾つかございます。それ以外の校務支援システムの校務系は、恐らく今インターネットにつながっていないところがほとんどかと思います。この感染症システムを実現するためには、LGWANにつなげていただくか、もしくはインターネットにつなげていただくか、どちらかが必要になります。インターネットへの接続については、非常に今セキュリティポリシーの関係でいろいろな制限がかかっておりますけれども、今の我々の検討としては、暗号化通信等を用いればつなぐことは可能ではないかと思っており、その接続に係る費用等については国でも一定程度支援したいと思っております。
 それから、何が難しいのか、国としての課題は何かということがございましたけれども、個人情報保護との関係というよりも、物理的なこととして、まずネットワークが全くつながっていない。各自治体間の横のつながりもありませんし、国ともつながっておりませんので、いくら電子化を進めても、それは学校の中のサーバーの中にたまるだけです。設置者間でネットワークをつくってあるのであれば、教育センターのサーバーにたまるだけです。そこを分析して、おそらく設置者の中でいろいろなEBPMをやったり、先進的な取組を既にされている自治体がございますけれども、それを国レベルで情報を集めてという場合には、そのデータが通る道筋というのが全く今立っていないというのが非常に難しいところでございます。健康といっても、学校の中の数多ある情報の中のほんの一部分でございますので、この健康の情報のためにどれだけ道を引けるのかというのは、これは一つの大きな課題かと思っておりますが、なるべくコストがかからない、お金がかからないような形で、一回道を通すのであれば、それがずっと使えるような道をつくりたいと思っております。
 最後、マイナポータルの件ですが、ここは、説明を省いてしまったところなのですが、実はこのPHRサーバーに情報をためてマイナポータルで見るためにはIDが必要です。このIDについては、今マイナンバーを使うことは想定しておりません。といいますのは、マイナンバーは非常に法律上の制約が厳しく、税や福祉に使うものとして設計されているため、教育現場で、教員や校長先生、養護教諭などのいろいろな主体が使うには非常に制限が厳し過ぎるものでございますので、マイナンバーを使うことは考えておりません。しかし、IDが必要ということで、今現時点で私どもが考えているのは、このPHRサーバーの運営主体から健康IDというものを発行していただくことを予定しております。本来、児童生徒にIDを発行するのであれば、それはいろいろなところで扱えるべきものだと思いますけれども、今、先行的に走っているPHRで取りあえず児童生徒の健康IDというのを発行して、実証実験を重ねてやってみようと思っております。
 マイキーIDにつきましては、これはマイナンバーカードを持っている児童生徒しか発行できませんので、まずその時点で、既に10数%しか持っていないマイナンバーカードを基礎とするマイキーIDを全ての子供たちに適用しようとしてPHRのIDにはできないということで、マイキーIDは使わないこととしております。
 マイナポータルで見るというのは、マイナポータルはあくまでインターフェースでございまして、マイナンバーカードを持っている児童生徒がマイナポータルの画面に入って、そのPHRサーバーを呼び出して自分のIDを入れて、そして自分の健康診断情報を見るということを想定しております。
 また、マイキーIDは御指摘のとおり自分で任意に変更することができるというデメリットもございますので、本当に使うならもう少し検証が必要かなと思っております。この健康IDは、小学校、中学校、高校、大学まで健康診断を受けますので、その際に自分のIDとして、このIDを使って常にマイナポータルで自分の健康診断情報を呼び出すということを想定してIDを付与していきたいとい思っております。

 
 ※次に、清水康敬東京工業大学名誉教授から、「NICER-LOMの概要と今後の支援システムの在り方について」(【資料4】清水名誉教授提供資料)のテーマでご発表いただき、その後、質疑応答・意見交換を行った。

 (発表内容)

【清水名誉教授】 それでは、いただきましたテーマ、NICER-LOMの概要と今後の支援システムの在り方について御説明させていただきたいと思います。
 NICERの経緯につきましては、資料1ページ目の下に書いたとおりでございますが、私は平成12年から大学で教育情報ナショナルセンターLOM検索システムの開発を始め、翌年の平成13年4月に国立教育政策研究所に異動して、その年の8月にNICERという名称をつけてLOM検索システムを開設しました。
 2ページ目です。NICERにおけるLOM検索システムの仕組みですが、インターネット上の学習指導コンテンツを調査して、LOM登録をします。主に自治体が開発されたコンテンツを中心にして、了解を得てNICERにリンクすることにしました。このようにリンクしたコンテンツを国語、算数、社会など各教科に分類しますが、例えば、国語、算数、社会のコンテンツは、この図のように、LOMに記述された学習指導要領の分類コードによって分類します。
 それでは、主なNICER-LOMの項目について御説明します。この表に示しますように、例えば、左側の部分ですが、LOMの項番1-1にはタイトル、1-2には概要、1-3にはキーワードとなっておりますので、そこに入力することになります。
次の表ですけれども、ここで御説明したいのは2-4の部分です。IEEEのLOMでは、この2.4はTypical Age Range、対象年齢となっているわけですけれども、NICERでは対象学年としました。登録したコンテンツが使われる学年という意味です。また、コンテンツは教員も活用しますので、IEEEの例に合わせまして、20歳代、30歳代、そして60歳代以上ということから選択するようになっております。
 次のスライド5ですけれども、これは、権利に関する項目になっております。ここで示しました、真ん中に赤くポップアップと書いてあると思いますけれども、それにつきましては、後ほど具体例で説明させていただきます。
 最後のこの表がスライド6ですけれども、一番下に示しております項番8-2-1、分類コードです。この分類コードは、学習指導要領分類体系に基づいて、当時の学習指導要領で7,752コードから選択するということになります。一番下の右側に小学校、算数、第4学年、A、(3)、エとなっております。これは学習指導要領コードと同じ形になっているということであります。
 それでは、スライド7になりますが、このスライドでは学習者のためのNICERのLOM検索の特徴を説明しています。平成18年2月の時点で11万1,784のコンテンツにLOM登録をしています。また、学年によって異なる未習漢字、習っていない漢字には振り仮名をつける、こういった機能も設けていますが、これは、真ん中辺りに書いていますが、「学年別漢字配当表」と、「音訓の小・中・高等学校段階別割り振り表」というのが昔から出ておりまして、それに基づいて未習漢字に振り仮名をつけています。
 スライド8です。これは小学校のトップページです。1年生の最初に見る画面ですので、全ての漢字に振り仮名がついています。小学校1年生がこの画面で最初に、「教科書の目次から調べる」が上にありますが、それを選んで、「1年」を選んで、この場合には教科を選ぶわけですけれども、例えば「図画工作」を選んだとします。そうしますと、9のスライドでありますように、自分が使っている教科書の目次が出てきます。この目次の中から今日の授業の単元といいますか、学習するところを選ぶということになります。選びますと、その表示が出るわけですが、こういったような画面になります。「ような」というのは、これは実は、子供に示す画面というのがどう探しても出てこなかったので、教員が、子供たちがどういうコンテンツが見られるのかを確認する教員用の画面です。ただ、この中で、真ん中に、平仮名で「いちねん」、「小学2年」、3年、4年と学年のところに振り仮名を振っていますね。この振り仮名を振っている学年と、「のびるよ」とかと書いてあるタイトルと、その下に振り仮名を振ってある、これは概要ですが、これだけが子供には示されるということになるわけです。上のほうの学年にありますけれども、例えば小学校4年を選んだとしますと、4年以上に習う漢字については振り仮名を振りますけれども、3年以下に習う漢字に関しては振り仮名を振らない、こういう形にしているわけであります。全てに振り仮名をつけるという考え方もありますけれども、そうすることは文章理解に支障をきたすという先生方の御意見をいただいたためにつくったものでございます。
 LOMから出てくる項番との関係はそこに示しているとおりです。
 その次、スライド11になりますけれども、この画面は教員用の画面で、上のほうの枠に「跳び箱 首」と書いてありますね。これが入力した用語です。これで検索した結果が、ここに示しますようにサムネイルつきでタイトルと概要100字程度、その他いろいろな形でLOMに書いている情報で上がっている、制作者の条件とか無料か有料かとかですね。こういうふうになるわけです。
 ここでスライド12に行きますが、今までの説明に加えまして、教員のためのLOM検索について説明しています。この点につきましては、これ以降のスライドで具体的に説明します。
 スライド13です。これは、先生が例えばこれから指導する教科、学年に対してどのようなコンテンツがあるかということを調べたい場合に、この画面で先生は、例えば中学校の社会科の地理という3つをクリックしたとします。そうしますと、このような形(スライド14)になりまして、中学校社会科の、赤字で228と書いてありますね、これは、地理的分野の教育コンテンツが228件ありますということです。その下の項目は、世界と日本の地域構成ですが、これには14件ある、こういうような形で出ていますが、この下の項目は学習指導要領の文言そのものを挙げています。これはここにコードが書いてありますが、このコードからそのまま吐き出されてきているということになります。これで1つクリックしますと、スライド15のようになりまして、コンテンツとともに授業計画や教育実践事例なども含めて結果が出るということであります。例えばここで項番4.3と黒字で書いた上に利用許諾とありますが、そこに小さく「教育を目的とした利用に限る」と制作者は書いているわけですね。このように書いているということは、授業だけでなく教員研修においても許諾なく使ってもいいということを示しているということであります。また、右側の「この学習情報の説明」をクリックすると、著者が書いた説明が出てくるというような形になります。
 スライド16です。また、著者は使うための条件というのを書いている人がいます。この場合には非常に慎重にやらなきゃいけないので、ポップアップで示すことにしています。字が小さいので、上に拡大した文字を私が入れておりますけれども、こういうような注意をしてくださいというのが出るわけです。ここの注意というのは、条件をいろいろ書いていますから、その条件に従ってしなきゃいけないということに注意して使うということになります。このようにしないと、うっかりすると、この著作物が誰のものか分からなくなったりします。また、著者によっては、今これは写真が出ていますが、この写真は自分が描いたイラストで、簡単に写真なんか撮られたら困るということが書いてあれば、画面自体を示さないというような形にしているというところでございます。NICERでは、このように著作権についても十分に配慮しながら検索結果を表示しているということでございます。
 17に移ります。これは先生用の教育実践事例の検索と登録ということであります。これは平成18年2月の時点で1万1,385が登録されているわけですけれども、これは先生方が登録してくださったのに加えて、御協力いただいた教育委員会が作成したものをNICERのほうでLOM登録させていただいた数も含んだものであります。非常に多くの先生が利用されたということであります。
 その次に、これは振り仮名をつける支援をつくったわけですけれども、つくる前に、小学校五、六年生に「とびばこ」と書いてもらいましたら、「とび箱」という箱だけ漢字というのが53.5%、半数以上ですが、飛行機の「飛」の「飛び箱」が36.4%もいるということであります。したがって、学年によって異なる未習漢字に振り仮名をつけるということにしたわけですけれども、じゃあ誤った漢字を書いた場合に全く出ないということではなくて、一部合っているわけですから、それをこれから説明するような形で正しい漢字を示して確認させてから、その漢字で検索し直すということを求めているわけです。自動的に正しい形だということで、これですと結果だけを示すのではないということであります。
 スライド19ですが、NICERでは学習指導要領の記述から学習用語辞書を作成しています。この学習用語辞書の作成手順ですが、指導要領で用いられている学習用語を、学校種、教科、学年、領域、項目ごとに抽出しますと、そこにありますように3万9,325語になります。重複用語をチェックして1万8,819になって、学年別漢字変換をして、同じ意味の言葉であるというものを抽出しています。例えば、跳び箱という正しいものに対しての同じ意味というのは、平仮名の「とび箱」も同じ意味ですし、全て平仮名の「とびばこ」も同じ意味ですから、そういうものを関連づけて定義した上で加えています。更に類似語も加えていまして、その結果、一番下にありますように、5万183の学習用語の辞書ができているということであります。これは、この用語でないと検索ができないということもありまして、有害情報や不適切情報は検索できない。例えば江戸の風俗というのを今検索したら、とんでもない、学校ではとても扱えない、授業で扱うと困るものがありますので、ホワイトリストになるわけですね。
 用語インデックス・テーブルの作成します。スライド20になります。このインデックス・テーブルは、その時点で登録していたものが9万件ありまして、その9万件の中で入力されたタイトル、概要、キーワードの用語を全て用語に分解するということなんですけれども、その作り方は、例えば「とび箱「台上前転」」というようなものが文章の中に入ってきたとしますと、それを単語に区切って括弧を取るとかしまして、学習用語の漢字に変換して「跳び箱 台上前転」というのがインデックス・テーブルに入る。教育コンテンツのLOM登録が新しく入ってきますので、システムへのアクセスが少ない夜にこのインデックス・テーブルをつくり替えているところであります。
 次に21です。これは入力された文字を変換してLOM検索する手順を説明しています。ここでは平仮名の「とびばこ」と入れた場合のことですけれども、「とびばこ」を漢字変換すると、正しい「跳び箱」がインデックス・テーブルにありますので、結果を出すんですが、先ほど申しましたように同じ意味の言葉がありますから、その言葉を全てキーワードにあれば結果を表示するということであります。
 22のスライドは、誤った入力に対してですけれども、学習用語辞書にある平仮名、漢字が入力されれば、そのまま検索結果が出ますけれども、1字違いあるいは2文字違いの用語までは正しいものがありそうな、この候補はこれだけどどれですか、あるいは先ほどの跳び箱ですと、「飛」でなく「跳」、あるいは平仮名の「とびばこ」ですかということを聞いて、それで検索してもらうというような形を取っているということであります。
 23であります。ここで今後のコンテンツ登録・活用と支援システムについてまとめたスライドです。結論は、指導用のコンテンツと学習用のコンテンツを活用する対象学年を支援システムに設ける必要があるということになります。そうすれば、NICERと同じようにコンテンツの登録と検索が容易にできるということになります。
 資料の24になります。今回の学習指導要領で、学校のカリキュラム・マネジメントについて書いてありますが、それを支援するシステムを同様の学習指導要領の考え方でつくった学校のカリキュラム・マネジメント支援システムを考えまして、それを提案させていただきたいと思います。このシステムの説明は資料2に書いておりますので、御覧いただきたいと思います。
右側に小学校・中学校の場合のリストがありますけれども、学校では一番下の計画学年、今年度のどの教科で何を指導するかという計画をした学年のものと、実際にどのような指導をしたか、例えばコロナで授業ができなかったとしたら、その学習項目のある項目は今年度指導できなかったということになりますし、長期欠席の子供のことも次のところに関係することであります。
 もう一つは、児童生徒の学習履歴の保存管理システムです。スライド25になります。この点につきましては、資料3に説明を書いていますので、御覧いただきたいと思います。時間がないので御説明はなしにさせていただきたいんですが、具体的な文章で書いています。
 本日のまとめはこのスライドですけれども、最後にこの図が、今の3つのシステム、すなわち教育コンテンツ検索支援システム、カリキュラム・マネジメント支援システム、児童生徒の学習履歴保存・管理システムという3つがありますが、真ん中の丸に書いてありますように、全て学習指導要領の分類体系が同じわけです。したがいまして、システム上ではかなりの部分が全く同一ということになります。したがって、一緒に運用していくということが重要です。というのは、それぞれのコンテンツシステムの先生が利用した項目と、デジタルコンテンツで学習したら自動的に学習履歴が登録されますけれども、それは同じ学習指導要領分類になりますし、それが右下の学習履歴保存システムになります。このシステムといっているのは、左側のカリキュラム・マネジメントは学校ごとにつくっていますけれども、右下のものは個々の児童生徒自身のもので、年度ごとにそれが変わっていくというものであります。以上です。

 (質疑応答)

【委員】 20年前にここまでシステムができていたということに非常に感銘を受けました。2点、お知恵をいただければと思います。
 1点目は、1万以上あるという教員用の教材が実際に先生方に使われたかどうか、そして、このアップされている教材の活用度を上げていくために御経験を踏まえて、こんなふうに教材が提案してあると次の先生が使いやすくなるのではないかというような御示唆をいただければと思います。
 2点目、新しく御提案されているシステムの構想に「習得度」というものがありましたが、この習得度を、一体どんな指標をもって習得したとみなすかどうかを教えてください。学力・学習状況調査のようなテストだけではないだろうと考えると、この習得度をどんなふうに見極めていくか、統一的にできるものなのか、あるいは自治体、学校あるいは先生方それぞれが習得度というものの達成基準を決めて判定していくようなものがいいのか、そこに関する御示唆をいただければと思います。

【清水名誉教授】 御説明させていただきます。まず、学習コンテンツがあまりなかった時代でしたので、集める仕組みをつくるとともに、文部科学省にお願いして、コンテンツを学校または教育委員会で開発してもらう予算を取ってもらい、特別に公募型でつくってくれる教育委員会にまとめて開発していただいたというところです。そういうこともあり、各教育委員会でいろいろつくってくださるところが出てきまして、ただし、その自治体の子どもたち用に作っていますので、それを全国に共有されるということは、市長が拒否されるところも多々ありましたが、全国行脚してお願いし、全国で使えるようにしたということであります。
 委員の御質問の教員の教材ですけれども、これも、ある教育委員会は、教育研究所でしょうけれども、集中的に研修で指導案とかそういうものをつくってくださいました。特に私が力を入れたのは情報教育ですので、ICT、コンピューターを使っていかに質の高い授業をするかというところに集中的につくっていただきまして、それを公開したということから、今までにないような指導案がいろいろ上がりましたので、多くの先生方がアクセスしてくださったということであります。
 NICERのアクセスの件数ですけど、年間550万アクセスですから、1日にしますと1万4,000アクセスという非常に多くの先生方がアクセスしてくださったというところであります。
 使いやすいということに関しましては、それぞれ登録された後、また議論する場というようなことを、これは集合ですけれども、そういうミーティングを開いたりということで、私は指導できませんけども、先生方同士がディスカッションしていただくというようなところも仕組みとしては作ったわけです。
 習得度ですけれども、これについては、私は、学校の先生にお任せするという今のスタンスです。というのは、それぞれの指導項目の細かいところまで決まっていますから、それについてまでは大変ですので、場合によったら、「はい」「いいえ」レベルの「1」「0」かもしれませんし、三択であるかもしれませんし、5段階評価かもしれません。それはそれぞれのやりやすいところでやればいいのではないかと思います。ただ、教科に対する評価というのはつけていますし、統合型校務支援システムの中に入っていますから、そういったものが入ってくると思います。習得度はそういう形で。ただ、高等学校に関しては、科目レベルでの習得ということですから、単位が取れたがどうかということも含めて、点数ということかなと思っております。

【座長】 これは国立教育政策研究所の中にこういうセンターをつくっていたということでしょうか。

【清水名誉教授】 組織としてではなくて、教育情報ナショナルセンターという組織でなくて名前だけです。組織は従来からの国立教育政策研究所の教育研究情報センターの中で行ったということです。

【座長】 様々なデータが標準化され、それが相互に利活用されるために、それを促進する仕組みをもしどこかがやらなければならないとしたときの組織は一体どういうふうにするのがよいのかというのが今我々の課題ですが、何か御意見はありますでしょうか。

【清水名誉教授】 まず、コンテンツに関しましては、NICERの知見がありますので、それを参考にしてもらい、今の技術が新しくなっていますから、検索システムも大幅に変わっていますので今の技術に変えれば、基本的には開発できると思います。組織的に考えてどこかがやるということを決めていただければできるものだと思います。昔はそういう人材はあまりいなかったので、私が私の研究室で、国立教育政策研究所に移った後も私の研究室の学生たちが来てつくっていったというところがあるわけです。ですから、組織として決まれば間違いなくできるという、そんなに難しいものではないと考えております。

【座長代理】 今大きく2つの御示唆をいただいたように思います。まず1つは、堀田座長がおっしゃったように、こういうLOMをつくったら、運営いく組織が必要だということと、もう一つすごく大きな学びを得たのは、新しくこの3つのシステムが必要だということです。つまり、LOM単体に意味があるのではなくて、それを使って教育改善するためには、先ほどおっしゃっていただいたように、コンテンツを検索して生かす、それからカリキュラム・マネジメントするとか、3つのシステムが必要だというご示唆をいただきました。この辺、私たちが教育データの利活用というときに、国のご支援を得てそのシステムがこのように出て、コンテンツが有効に使われるというのが清水先生の一番のお志だったなというふうに受け止めさせていただきましたので、ぜひ今後に生かさせていただければと思いました。

【清水名誉教授】 NICERでは、コンテンツの検索・活用というところを主にしたわけですけれども、カリキュラム・マネジメントにしても、学習履歴にしても、それとは同じ概念でつくれる、更に下に示すほうが簡単にできるシステムです。総合的に考えたときに、コンテンツの利用促進を目的にするのではなくて、今までにない教育ができる。例えば、実際にデータが入ってきて、学習履歴が入力されていれば、どこの段階でつまずいたかというのが分かり、個別に指導して、それで非常に効果があったということは、実際、座長代理も参加していただいた事業の授業で実証されています。そのような教育の質の改善ということであります。
 それからもう一つは、LOMを中心として説明しましたが、私の場合には、LOMは国際標準にしたわけです。それはなぜかというと、アメリカ、カナダ、EU、韓国と国の同様の機関同士がコンテンツを共有化するというシステムを実際につくったわけです。そのためには国際標準でないとまずいわけです。しかし今回は、国際標準は意識しないほうがいいと思います。というのは、国際標準に縛られて、必要以上の項目まで入力するようになってしまったわけです。ですから、本来の教育に必要なものというのをよくよく議論して、それに限定して、分かりやすいLOM構造にしたほうがいいと考えています。

【座長】 ありがとうございました。今の時代の今のデータの連携の在り方と標準化の在り方、どこまで世界標準と合わせるかということについても、あるいは働き方改革の観点から先生方の負荷を下げるという観点でも、いろいろな形から検討してまいりたいと思います。

議事2.教育データの利活用について


※自治体での実践について、3人の委員が以下のテーマで発表を行い、質疑応答・意見交換を行った。
 ・小崎委員:学校におけるデータ標準化や利活用に求める視点でのデータ標準化の考え方のヒント(【資料5】小崎委員提出資料)
 ・戸ヶ崎委員:教育データ利活用の実践等について(【資料6】戸ヶ崎委員提出資料)
 ・中村委員:自治体における教育データ利活用の実践と課題と展望(【資料7】中村委員提出資料)

 (発表内容)

【小崎委員】 奈良県教育委員会の小崎です。私のほうからは、少し議論を広げる形になりますが、今いろいろ始めていることでどのような課題が出ていて、これからどうしようとしているのかということを整理させていただこうと思います。
 まず、奈良県の先生たちは結局どういう状態にあって、何に困っていて、何が課題になっているのということを整理するために、働き方調査を行いました。2年前と昨年と2回行っています。また奈良県立教育研究所のウェブサイトでも公表されていますので、御覧いただいたらと思いますが、まずは勤務時間がどうだとか、教員の業務の中でいろいろなことに時間はかけていたりしているけれども、もっと時間をかけたいということもありますし、もうこれ以上時間はかけたくない、もしくはしたくないということもある。そのような中身について、いろいろと質問してみました。
 大まかに言うと、事務処理というところには負担感を感じていて、授業の準備であるとか部活動の部分とかの自分が力を注ぎたいということについては、むしろ時間が足りないというような感想を持っています。要するに、実際の時間のかけ方がどうこうということが問題なのではなく、負担感がどの辺りにあるのかということが課題になっているということを見取ることができました。情報の共有について、何かしてほしいことはないですか、今はないけれどもできたらいいということはないですかと問うてみると、今もできているけれども、デジタル化したらもっと手軽にであったり安心に扱えるよね、というところに視点があって、今はない情報を新たにつくり出して、それを生み出したい、ということではないのがわかります。
 改善が難しい理由も調べたのですが、今、奈良県で特徴的、他の都道府県ときっと違うのじゃないかなと思うところがありまして、それは、校務系と学習系がそれぞれ別々ですけれども、それぞれの中で県域で統一されていっているということです。
 まず校務系ですが、先ほどから話題になっている統合型の校務支援システムというのは、今御覧いただいているようなイメージで、就学前で何らかのデータ、これは学籍だったり役場の情報だったりするわけですけど、小学校でスタートしたら、それが持ち上がっていって、高校を出るときまでは県域で面倒を見ませんかというコンセプトです。その中で行われる高校入試とか、今もう既に始まっているんですが、転校、県内での異動、そういうデータを持ち上がる、管理するというか、子どもたちにひもづけてつくり上げていく、そこに出退勤とか公金とか図書情報とか健康情報・保健情報ということを結びつけていくのはどうだろうということです。その提案に対して、先生たちはどう捉えているかというと、当然前向きにとらえてくださっていて、それはいいことだとか、安心安全だからいい、一方で操作については不安もあるんですが、ということなんですけど、異動による負担とか、先ほどから出ているアンケートに対する答えとか、そもそも通知表のデータはどう扱うのとかいうルールとか、そういうことについては、学校によって違うという必要性はないんじゃないの、というあたりの意識については今までとは違う変化が見えてきています。
 今度は、校務系ではない学習系のほうですが、今奈良県では県域で同一ドメイン、e-net.nara.jpを立てまして、サブドメインも使わずに、県立の学校、市町村の学校・園、国立の大学法人・附属、それから私立も共有で使ってみようということで、早速本日から研修が始まるところですが、県域で、子供たちと先生に、一意のアカウントを付与してみようということで始めてみているわけです。これについては、非常に大きな反響があって、奈良県の中を歩いていれば、先生であれ子供であれ、e-net.nara.jpのアカウントを持っていて、これは持ち帰りの学習にもつながっていますから、保護者も知っているんですよね。奈良県中、このe-net.nara.jpというアカウントを持っているということを知っています。
 その状況を踏まえて、今度は、塾で使ってもいいですかとか問い合わせが来ていて、それから人材育成の研修、教育実習とつないでいくと、先ほど構想していた高校から大学へということを超えて、今度は教員になったときに、自分たちが学生時代に学んできたことというのも生かせるようになるとか、話題がそういうことにつながってきています。ですので、とにかくやってみようということで、もちろん、範囲は決めていかないといけないと思うんですけど、現実、いろいろ踏み出してみると、それだったらこんなこともできるよね、だからもっとこうしないと駄目だよねということが課題として出てきて、活用という点では皆さん前向きに、それだったらこんなことができるよねという話になってきています。
 話を整理しますと、学校にあるデータは、右側にありますように、もともと子供たちの情報だということで、本来子供たちが持っているべきものを、在学中にはこちらで教員とか学校で扱って、新しく作ったりもして、その後はまた終われば、どうぞとお返しする。転校のときのイメージですので、ちょっと今から整理しないと駄目で、何か情報銀行のような、お金を銀行に預けたら全然違うところのATMでも金を下ろせるのに近いような感じでしょうか。その情報は誰のものというときには、やはり児童生徒のアカウントにひもづけてしっかり管理していく。そのバックボーンとしては、教育委員会だったり学校であったりということが、つなげていくということですよね。このコンセプトがあると、じゃあ私立も参加できますよね、大学、法人とかの学生にも一緒にさせてください、一緒に勉強する機会を与えてくださいとなっている。お互い同じアカウントを持っているのであれば、つなげて教員研修しましょうよということが、今、現実として、強制しなくても勝手に動き出しているということですね。
 だから、データの分類としては、単純には2つ、学校に持ち込まれるデータと、学校にいる間につくっているデータ。それから、データについては、保持しておく必要があるずっと持っているべきものと、卒業後には不要となって削除してもよいデータ。一生何かを持ち続けるわけじゃないですから。あとは、校内だけで利用するデータと校外でも利用するデータ。そういう分け方で整理していく必要があると思っています。今、現状としては、奈良県では小学校1年生から高校3年生までと、全ての先生に一意のアカウントを利用してもらっているということです。
 私からは以上です。


【戸ヶ崎委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ崎でございます。前回と重複する内容もございますので、その部分は端的な御紹介とさせていただきますが、御了承いただければと思います。
 まず、データの利活用に向けた改革の視点や課題として大きく3点捉えています。3つの「つ」と呼んでいるわけですが、特に最後の、様々な実践やデータが蓄積されていても使われることが少なく、効率性や生産性が低い、ここを強く認識しています。
 2つ目、経験、勘、気合、この3Kから脱して、客観的な根拠に基づいた教育へということです。
 3つ目ですが、優れた教師の経験や勘、匠の指導技術を言語化、定量化等して若手に効率的に伝承していくべきで、最先端技術やデータサイエンスを教室に導入していく、一言で言うと、教室や授業を科学していくべきだということをずっと考えてきました。
 これは、エビデンスに基づいた教育施策についての私の根底にある思いです。
 ここからは本市の取組についてです。まずEBPMの取組をまとめたものです。多くの産官学と連携した共同研究を進めております。代表的な取組を紹介しますと、このコロナによる長期の臨時休業で痛感したのは、子供たちの基礎的・汎用的また自己調整スキル等の育成が必要ということです。その一環として、本市では4年前からリーディング・スキルの向上に向けて取り組んでいます。テストは当初からCBTによる受検をしています。
 埼玉県の学力調査とリーディング・スキルとの相関をずっと調べているわけですが、青い四角の部分、つまりリーディング・スキルが低くて学力調査の得点が高い子供たちが必ず現れる。この子供たちが将来つまずかないように、この4年間、リーディング・スキルの視点からの授業改善に取り組んできました。その結果、年々リーディング・スキルと学力との正の相関が強くなっており、要するに学力は高いがリーディング・スキルは低い子供の割合が少なくなってきています。詳細については、研究集録にまとめて市のホームページに掲載しています。
 同様に4年前から継続しているのは、埼玉県学調と独自の教員質問紙調査等の分析の結果の活用です。この取組では、どのような指導方法が成果を上げたのかを可視化・定量化するように努めてまいりました。毎年の分析結果を、同様にホームページにアップをしています。これは戸田型の授業改善モデルです。匠の技の可視化、つまり効果的な指導方法の在り方を追求するために、質的・量的双方のエビデンスを活用してきました。
 また、全国学力調査も日々の授業改善に生かしています。その際、データ活用リテラシーの育成研修や、S-P表の活用研修といったものを市独自で実施しています。こちらは企業との連携で、IGS株式会社との共同研究です。非認知能力、ビッグファイブやコンピテンシーに係る複数テーマで研究に取り組んでいます。コンピテンシーが定量化できると、学力とは異なる軸での評価指導が実現しやすくなってくる。児童生徒の多様な価値を認識しやすくなり、教師の指導の振り返りの視点も豊かになってきます。
 さらに、特別支援教育にこそデータの利活用が重要であると考えて、様々な産官学との共同研究も行っております。市役所内の他部局との連携も進めています。子供や保護者にとってより適切な対応が取れるように、情報やデータ共有を図ろうとしているところです。
 今まで紹介した取組を推進する組織として、教育政策シンクタンクを昨年の6月に教育委員会内に立ち上げました。赤枠のアドバイザリーボードのお一人に、この会議におられる田村先生、また、教育委員会ロイヤーのお一人に、同じく三部先生がいらっしゃいます。
 また、様々な教育課題に対応するために、一昨年度から教育行政プロ採用を開始して、シンクタンクの取組などを担ってもらっています。こちらは教育委員会のカリマネとして、私がこだわり続けている教室を科学する取組のまとめです。黒丸は既に実証等を行っている取組です。
 ここからが本会議で特にお伝えしたい内容になります。戸田市の実践を通した課題ですが、主に4点ございます。
 1つは、データリテラシーの向上です。基礎的なデータを正しく読み取れないと話になりませんし、それを教育活動に生かそうとする意識を学校に浸透していく必要があります。そうすることで、現場での気づきをEBPMに反映できるのではないかと考えています。
 2つ目は、自治体が持っている行政データの活用です。基礎自治体のデータは基本的に悉皆、経年のデータで、再生性が大きいという特徴があります。現在は学校現場での実践を重視しておりますが、今後、行政データ活用の余地が大きく残っていると思っています。
 3つ目ですが、データポータビリティーについてで、この点については大きく2つございます。まずは、先ほど小崎委員のほうから情報銀行という話がありましたが、それに似た考えで、学びのお薬手帳の実現です。自らのデータを、学校外でも有効活用できるような環境づくりを進めたい考えています。また、自治体間や産官学との連携を促進し、その教育効果を高めるために、いわゆる教育のオープンデータ化のための整備を少しずつでも進める必要があります。
 4つ目ですが、2,000個問題に象徴される様々な個人情報の扱いです。
 次に、今後に向けた期待などで、これは国レベルということになるのかもしれませんが、5つ申し上げます。
 1つ目は、何のために教育データを使うのか、その目的をこの会議等で共有する必要があるのではないか。教育活動の中にデータ活用がどう位置づくのかというしっかりした軸がないと、手段の目的化が起こりかねないと思っています。
 2つ目が評価の在り方の検証です。ICT活用によって今後評価指標が増えることが想定されて、評価の在り方がどのように変化するかの検証が必要と思っています。データの背景にどのような認知の過程があるのかを明らかにしていく、評価者の共通認識を作っていく必要があると思います。そして私が危惧しているのは、薄い個別最適化論、また、軽い授業論に現場が依存してしまうことです。改めて学習の本質に立ち戻ったエビデンスに基づく授業デザインが見えてくることに期待をしています。
 3つ目です。教育意志や納得感の共有です。全国各地で自治体や学校また大学や企業が連携して互いの教育意志や納得感を共有しながら研究をしていく必要があると思います。
 4つ目、マクロ的な政策レベルであれば、ビックデータを活用した量的エビデンスが果たす役割は大きいと思いますが、教室レベルでの教育的な営みとしての成立の度合いや、よい授業の秘訣を観察また分析することが何より大切であって、そのためには、日々の授業で得られるスモールデータや、より質的な教師の行動分析等も重要であると考えています。
 最後、5つ目です。データ活用を進める人材の確保です。基本的に、得られたデータは過去のものであるという認識を持たないといけないのかなと。それを現在や未来に生かすために解釈して策を講じられるデータと現場のつなぎ役が必要です。そのような人材を、単独でそういう人材を採用するのはなかなか難しいと思いますので、複数の自治体で共有できる仕組みも必要かと思っています。
 最後に、当面取り組みたいと考えていることです。太字のように動き始めた取組や、まだまだ構想段階のものもあります。一例として、一番上の「匠の技」の可視化について簡単に触れておきます。前回、この会議で文科省から説明のあった活動情報に整理されるものと思いますが、例えば発問や声かけといった教師の指導活動を記録して、子供の反応、つまり学習活動との関係を分析することで、優れた教師はどんなタイミングで誰にどんな内容を伝えているのか、それによって子供たちの学びはどう変容しているのかなどを可視化・分析できないかと考え、現在トライを始めています。その際、テクノロジーの活用が不可欠で、既に多くの大学、企業と共同研究を進めてきましたが、期限付での研究には限界があって、予算確保が必須です。また、このコロナの影響で財政が非常に厳しい状況でもあります。そこでクラウドファンディングに挑戦することにしました。今お話ししたようなことに賛同いただける全国の方々から、ぜひ御支援をいただきたいと考えています。教育は地方創生の有効な手段であると様々な機会を捉えて強調してきましたが、今回のふるさと納税を活用したクラウドファンディングというチャレンジは、田んぼも畑も、これといった資源もない戸田市だからこその挑戦だなと自分では認識しております。このプロジェクトで得られた成果は、様々な機会を通じて、自分たちだけではなく全国の自治体に共有していきたいと思いますし、活動記録に関するデータ標準をつくっていくという観点からも、微力ながら貢献したいと考えています。
 以上です。


【中村委員】 つくば市教育委員会の中村です。では私のほうからは、自治体として、市町村として、そして私は現場の教員ですので、教師として、シンプルに何が教育データとして利活用できるのか、そういったところでお話しさせていただければと思います。自治体における教育データ利活用の実践と課題、そしてその展望ということでお話しいたします。
 まず、つくば市は、皆様が御存じのように、既にICT教育は40年かけてやっております。ということは、非常に様々なデータが既に取得できています。
 しかし、そのデータが各所に散在しているのが現状です。
 さらには、この散在したデータが、利活用するためにサイクルの中に定着していません。先生方が授業をつくるときのサイクル、または子供たちが家庭学習をする際のサイクル、そういった日常の中にデータ利活用が定着していません。
 そして3つ目として、学習履歴が取れているけれども、やはりここも適切に、つまり効果的に活用していないというのが課題となっております。
 今日はその部分を、もう目の前に来る1人1台端末の授業ということが現実的にありますので、その中でどう課題を解決していくかという具体的なつくばの取組を見ていただければと思います。
 まず、データプラットフォームが必要である。散在しているデータを1つに集約する。そしてその集約というのは、もう1人1台の新しい学校の生活様式の中に組み込まれているということが大事かなと思います。さらには、組み込まれたデータプラットフォームから吐き出されるデータを、  今度は分析して具体的にどの場面でどのように使っていくのかというところがつくば市の提案になってきます。これまでの知見を基に、新たな部分も出てきます。
 そして、これがその構想図になります。1つの教育支援システム、私どもは既に何十年も使ってきている教育支援システムがございます。先ほど、国のほうでこの一つのeポータルサイトといった提案も伺ったところですが、私が1つ課題と感じるのは、様々に自治体がこういった教育支援システムを導入していて、自治体が目指す教育を行っている。それらをどう標準化していって、本当にそれが一つの国の仕様になっていくのが可能なのかどうか、そこにかかる時間を待っていることで、私どもはもう既にまた新たな今持っている支援システムで先に進むわけですから、そこをどう整合性を取っていくのだろうかというところを、先ほど疑問に思いながら聞いていたところです。
 私どもは既に教育支援システムの中に、今後連携していきたいものとして、これまで特にコロナ禍で使ってきたOSアプリがありまして、オンラインで使ってきたOSアプリをシステムの中に取り込んでいきたいと思っています。また、プログラミングを、もう3年目になりますが、やっております。これらのWEBアプリも保存しながら、そして子供たちの作品もデータプラットフォームで共有していきたいと思っています。
 また、デジタル教科書といったものも、どういった形になるかはまだ具体案はありませんが、連携していくことで、子供たちの毎日の学習の中に定着化していくのではないかというふうに思っています。
 そして、ここを通して吐き出されるそれぞれのログを、何かの、CBTになるんでしょうか、そういったところからビッグデータを解析していただきまして、フィードバックしていただく。そしてまた、自分たちが持っているシステムの中でAI分析したものを、先生方と、そして子供と保護者、私どもはシンプルにこの3つにまず最初にフィードバックしていきたいと思っています。
 そして、先生たちは授業改善です。教えから学びへ、子供たちが1人1台を持って自ら学ぶ、学びにするための授業改善に使っていただきます。そして子供にとっては自己修正力、自己指導力、つまり自己マネジメントですね、自己を認知するために、データを見ておのれの学習を計画していく、そういったような子供たちを育てたいと思っております。
 さらに、保護者につきましては、それをサポートするような教師と保護者の関係の中で使っていく、これが本当にシンプルに具体的に使う活用場面というふうに思っております。
こちらは前回のときに紹介いたしましたので、こういった教育データが私どもは既に取れていますという御紹介です。これは前回の資料を御覧いただければと思います。
それから、つくばGIGAスクール構想の中で、1つだけ私どもが強みとしておりますのは、個別最適化のために、今、国の補助を受けながら、この青いほうの3つはどこの自治体も取り組んでいるところです。しかしながら、やはり教育データを利活用するには、そこからもう一つ教育を支援するソフトウエアというものが軸にあって、そこから教育データをきちっとマネジメントする必要があるのではないかというふうに考えております。
こういった風景がもう既にどこの自治体でも見られるようになります。ただし、この風景から何がデータとして蓄積され、どうフィードバックされていくのかというものを、新しい生活様式としてちょっと考えてみました。
ここが、先ほども何度か出てきています活動情報になってくるのかなと思います。私でも気づき切れないところがたくさんありますので、どうぞ、この新しい生活様式の中で、こんなデータも出てくるだろう、こういったデータも連携する必要があるだろうというのは、委員の皆様にもぜひ御教授いただきたいところです。
 まず、子供たちが登校してまいります。登校してきますと、まずログインをいたします。そして、ログイン後にはすぐ起動した後に、教育システムが立ち上がります。その中で、最初に、先ほど言ったOSアプリを使いまして健康観察を行い、その後、私どもが持っている教育支援システムの中のAIドリル、チャレンジングスタディを行います。そうすることによって、スタディ・ログであったり、それから出欠確認の心理状態であったり、そういったものが取れるというふうに見えてきます。それから、朝自習のところでよくやっているのは読書です。読書データなどもひもづけていきますと、読書の状況と学習の相関を取ったりとか、また、県の事業で行っている読書推進とも連携することができるというふうに思っております。これが、Microsoft Formsで行う健康観察になってきます。
 さらには、今度、朝の会になってきますと、今日のスピーチというものをよくやるんですが、それが1分間スピーチなどでポートフォリオとして教育システムの中のファイルフォルダに子供たちがためていくことができます。また、日課表や連絡帳なども連携していくと、何かここから分析すること、それから保護者支援につながっていくことも考えられます。
 それから授業が始まります。授業においては、やはり1人1台端末を使ってよりよい教育をすることを目指していきますので、この中でも、各教育支援システムの中におけるフォルダを教科ごとに分けまして、子供たちが個人のデジタル・ポートフォリオ作成したり、さらには、いろいろなプログラミングのデータであったりスタディ・ログをここにためていくことができます。こうやって一日活動していくと出てくる、見えてくる活動データというものが明らかになってくるというふうに考えております。
 そしてつくば市は、これをすることで、教育支援システムを軸に様々なデータを集約していきます。これは国が出している教科でのICTの活用になります。これを参考にしながら、活用していきたいと思っております。
 そして、こういった場面で私どもが考えているデータの内容を最終的に何にフィードバックさせていくかというと、やはり効果的・効率的な授業の構築、そして、先生の発問であったり、授業の中の焦点化、どんな既有の知識があって、どこに不足している情報があるので、どんな発問でそこにひもづけていこう、もしくは授業の内容を焦点化していこうか、それから下位層の子供たちにはどんな支援を用意しておこうか、そこが重要になってくると思います。そして、授業後の理解度を確認することによって、子供たちは自分の理解度を知り、家庭学習に反映する、そして保護者はその様子を可視化された情報で確認することができる、そういったフィードバックをしていきたいと思います。
 ただし、先生方がそれを意識できるようにする仕組みづくりが必要だと思っています。ですので、これは子供たちに授業をつくる際に必ず位置づけていきたい授業デザインといったものを定着化させていくのが、これからの取組の一つの目玉になってくるかなと思っております。先ほども出てきましたが、データリテラシー研修も併せて行っていく必要があるというふうに考えております。
 このように、インプットがある中で、今度はアウトプットの部分が今後は課題になってくると思っております。インプットは、教育支援システムで十分に一本化することができると考えております。しかし、その(音声途切れ)全てのデータをデータリテラシーで分析することはできませんので、そこにはAI分析のシステムをやはり構築していただいて、そこをフィードバックさせていきたいというふうに考えております。
 このようにして、つくば市は、授業改善、それから子供の自己マネージメントといったところで、データ利活用をしていけたらと思っているところです。
 以上となります。


(意見交換・質疑応答)

【委員】 先ほどのお話を聞いて意見を述べさせていただきます。
 まず、情報の一次利用と二次利用の整理をすべきではないかと思っております。一次利用というのは、学習者のため、スタディ・ログだと思います。二次利用というのは学校や社会のためにという活用の方向になるんですけれども、今回、冒頭、清水先生のNICERのお話を伺いまして、これは、Googleが創業した辺りからこういったシステムをつくられているというのは本当に敬意を表します。それと、指導要領のコード化、または学校コード、この話も出てきましたけど、これは明らかに二次利用になります。最近の、先ほどのPHRとか医療の進化の部分、個人情報をセキュアにポータビリティーのある形で動かせているというのは、やはり技術の進化の背景がありまして、これはあくまでも一次利用を上手に活用しましょうという発想だと思います。スタディ・ログというのもそこにあったかと思います。
 小崎委員、戸ヶ崎委員、中村委員のお話の中にも、やはりデータは学習者のものというお話もあったり、自治体は結局、既に今、一次利用の試行錯誤を実践している状態であるというのが、今日の御発表の中でも分かったと思います。私はその一次利用を定義していかないと、二次利用の形が大きく変わってしまうんじゃないかということを懸念しておりまして、確かに、その一次利用の定義というのは非常に難しいところではあるので、まず順番の問題で二次利用、そして次に一次利用というお話かもしれません。座長からも、冒頭、どこまでこの議論の範囲を広げるのかという話もございました。私の要望としては、ぜひ一次利用まで定義をして議論をしていただきたいというのが要望です。医療がこれだけ進んでいると言われて、同じように個人の情報を扱っていくわけですから、医療は進むけれども教育は進まないというようなことはぜひ避けていただきたいなと思っています。そして、その一次利用の情報を定義し、学習者にとっての個別最適化が進むことを願って会議に参加しておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【委員】 私の話は前の委員のご意見の補足になります。何と言っても一次利用が重要なので、そこを文字どおりプライマリーに考えるべきだと思いますが、特に資料3の一番最後のページのところで少し気になったのは、これは一次利用を主目的にしているのか、二次利用を主目的にしているのかよく分からないなという気がしました。一次利用が主目的であるべきなので、まずどこかに集めようということではなくて、本人にデータを提供するというのが最初にやるべきことではないでしょうか。そうすると、いろいろな学校とかいろいろなシステムとか様々なサービスがありますけれども、それらのサービスを全部一気通貫で統一するようなID、例えばさっきマイナンバーみたいな話がありましたが、そのようなIDがなくても、各サービスから本人にデータを提供すればそれが即名寄せなんですよね。本人はそれで十分に一次利用はできるわけです。まずそこからやりませんかというのが、工学的には当たり前の話だと思うんですけれども、先ほどの文科省のサーバーを通して集約するみたいなあの絵は、その辺り、何か二次利用が先行しているような感じがして少し気になりました。
以上です。

【委員】先ほど清水先生からNICER-LOMのお話があって、座長代理との質疑応答があったときのお話にすごく賛同します。例えば、IEEEのLOM、国際の場で議論したときに何が起こったかというと、メガデータでこんなものもあったほうがいい、これを入れたほうがいいといろいろな方がいろいろな意見をおっしゃって、どんどんデータ項目が増えていきます。今58項目あるんですけども。ただ、それらのうち使われるものというのはそんなに多くないわけです。御提案としては、今回御提案いただいた、例えば単元のIDとか、そういったものは非常にコアな部分なので、そこを含めた、データの利活用のユースケース、ミニマムのユースケースは一体どこなんだろうか、もっとこんなケースもあるよねという発展的なものもいろいろあると思いますが、その使い方のケースを洗い出して優先順位をつけて、それに従ってメタデータをつけていくというのが、現実的な路線だと思います。

【委員】 まず意見として申し上げたいことは、非常に単純で、「教育のデータ標準化は一回やって終わりにはならない」ということだと思いました。特に活動情報のところは、どういう情報を取ることが実践の現場にどういう影響を及ぼすかというのを注意深く見ながら、何度も標準化をやり直していくということが必要だろうと思いました。
 関連して、戸ヶ崎先生に質問があります。20ページにあった「今後に向けた期待」というのが非常に的を射ていて、大事なポイントだと思いましたので、これがどこから来たか、どのような経緯でこう考えるようになったのかを教えてください。例えば戸田市の教育委員会の優れた実践に見えるいろいろなものを実際やってみると、指標として決めたところを先生方が一生懸命向上させようとしてしまうとか、あるいは、ああいうふうにデータをたくさん取るとなると、先生方がオーバーウェルミングになって圧倒されて、様々な実践をやり過ごしてしまうので、なかなか地に足がついた実践にならないなど、そうした負の側面があってああいう御提言が出てきたのでしょうか。そうすると、データの標準化が現場に及ぼしてしまう悪影響も見ながら前に進んでいけると、先ほどの委員のお話ともリンクしてくるのかと思いました。
 一言だけ一次利用と二次利用の話でコメントさせていただきますと、個人の健康、個人の体という物理的なものは個人のものだと判定しやすいのですけど、学びというのは本当に個人1人のものかというところが難しくて、「一次利用を考えて学習者のために」というときに、学習者が教室の中で集団で学んでいるという側面があるので、それをその個人にどう返すかが複雑になります。そうすると、逆説的に、学習者が自分の学びを使うと考えたときに、どうしても成績など個人化しやすいものだけがデータとなってしまう可能性があります。そこの折り合いをどうつけていくかというところが一次利用と二次利用の難しさかなというふうに思いました。

【委員】 事務局の御説明のPHRとの連携の話のところで、IDに健康IDというものを払い出すという御説明がありまして、マイナンバーカードの普及率もろもろ多くの課題があることは理解しつつ、現状、マイナポータルの技術的な仕様としては、マイナンバーカードでのログインしかできないということや、また、特にPHR連携に関しては、後ろのデータ連携の識別子のハンドリングのところで、どのみち何がしかいろいろな識別子の取替え、変換が必要になってくるので、どこかで恐らくマイナンバーカードに依存した仕組みになってしまっていまして、この辺、別途またきちんと関連部局とのすり合わせ等は必要になってくるのかなというふうに思います。

【座長】先ほど質問がありましたので、戸ヶ崎委員に一言、それから事務局のほうに回答できる範囲で御説明をさせていただきたいと思います。

【戸ヶ崎委員】 先ほどの20ページの資料にある評価の在り方、エビデンスに基づく授業デザインという部分ですが、特にこだわっているのが、データに振り回されないようにするよう必要がある、つまり数字が出てくると大変優れていて、それがない曖昧なものは優れていない、そういう風潮になるのはおかしいということです。現場といろいろ授業のことをやり取りしているなかで、やはりそれぞれの現場が持っている知見はとにかく大事にしなくてはいけないということは教育委員会と現場で共有しています。そこで、先ほどのビックデータも重要だがスモールデータもという話はそこに通じているわけです。量的なエビデンスは優れていて、質的なエビデンスは曖昧だからあまり優れていないという考え方はよろしくないと。現場で、目の前の子供と日々対峙して、授業をやっている中で生まれてくるものについては、教師の非常に優れた認知機能の結果ですから、やはり現場主体のデータを蓄積して活用する必要があります。先ほどデータは過去のものと言いましたが、今現在で起こっていることを少しでもエビデンスに基づきながら現在・未来につなげるのは、やはり現場感覚をしっかり持っていないとできないと思いますので、そういったところを大事にして、あまり数字にだけ振り回されないようにやっていきたいと思っています。

【健康教育・食育課】 まず、PHRの一次利用の件ですが、健康診断は毎年終わったら本人と保護者に通知するというのが法律で決まっていますので、まず、御本人のデータを本人にお返しするというのは、今、紙ベースでやられています。これから1人1台パソコンが配布されますので、家にも持ち帰れる、もしくは家庭とのコミュニケーションツールが中心になるとなれば、紙ではなくて電子的媒体で返すというのは当然の流れだと思いますので、それはやれることだというふうに思っております。
 ただ、ここでやらなければならないことは、マイナポータルというので見せるというのが今の国全体の方針になっておりまして、本人に返すというのでは本人がデータを持っているのですが、要するに、生まれてから受ける健診と、学校の健診と、卒業してからの健診、とにかく健診の情報は全部マイナポータルを見れば見られますというふうにしようというのが今の方針ですので、このデータを個人に返すという一次利用に加えて、このマイナポータルで見せるという操作も必要なのが今の課題です。ただ、このマイナポータルで見せるというのは技術的に非常に難しくて、では一つ一つ学校にあるもしくは設置者ごと、サーバーごと全部マイナポータルで見せられるようにしますかというと、これまた膨大なお金と膨大なシステムが必要になります。このため、国のほうで一元的にこのシステムを整えて、各設置者、学校は、その国が設置するサーバーに情報を送ればマイナポータルで見られるようにするという共通のシステムを国がつくることによって、コストダウンと現場の技術的作業の負担軽減を図るという趣旨でこういう形にしているものです。
 また、これと同時に、保健は学校保健統計という統計を毎年取っております。このシステムでは、今現時点ではそこまで実現できておりませんけれども、将来的には、今、学校保健統計という別途健康診断の情報を入力していただいて毎年統計を取っておりますので、このシステムを使って、将来的には学校保健統計というサーバーをつくれば、校務支援システムから同時に統計に情報が流れていけるということも将来的な目標として考えているシステムでございます。
 それから、識別子のハンドリングなんですけれども、マイナポータルは確かにマイナンバーカードがないと入れません。ただ、今、マイナンバーカードを持っていない人には、このPHRサービスそのものができないというふうになると困りますので、今持っていなくても、将来マイナンバーカードを入手して、そしてマイナポータルにログインしたら、自分の小学校1年生から6年生までの健康診断情報が見られますというふうにしておくためには、やはり現時点で何らかのIDを全員に発行しなければいけないということと、それから、マイナポータルでカードでログインして、そしてPHRサーバーを呼び出して、自分のIDを入れて情報を見たら、その時点でマイナンバーカードが持っている識別子であるマイキーとPHRサーバーのIDが結びつくことによって、次回からはマイナポータルにログインしさえすれば、わざわざIDを入れなくても見られるという環境になることを想定しております。


【座長】 最後に、私のほうで一通りまとめをさせていただきます。この会議の第1回が7月7日に行われた同じ日に、デジタル教科書の検討会議も立ち上がりました。そちらは、GIGAスクール構想で今年度中に端末が1人1台義務教育に配分されることもありまして、デジタル教科書の利用想定が急に高まったと。学習ログはどうするのだとか、デジタル教科書のデータ形式はどうするのだとか、そういうことが今、にわかに課題となっております。これらのことは、この教育データ利活用の様々なデータ標準との関係が非常に強いものです。デジタル教科書やデジタル教材で取得された学習ログは、子供たちに一次データとして返すというのは、まずそれは当然ですが、取得しているのは学校なので,取得したデータを一旦校務支援システムに入れてから個人に分配するというような、データの逆流に見えるようなことが起こってしまうという現実があります。理想的な形はどんなものか、現実今すぐに利用できるような形は何で,どう移行していくのかというのことをいろいろ考えていかなければならないというのがこの辺りの難しいところであると思います。
 もう一つは、デジタル・トランスフォーメーションの観点からすると、教育データの利活用は今まであまりされていなかったわけです。さまざまな教育データがつながっていっていろいろなことができるようになると、新たな利用想定がまた出てきてというふうに変わっていくと。ある委員がおっしゃったように、これは一回で終わらないよねという話にやはりなるのかなというふうに思います。ですので、時限的に、ここまでにこういうことを大体公表しますということも含めて、私たちは先々を構想していく必要があるんだろうと感じている次第でございます。
 そして、今日、清水先生にお越しいただきましたけれども、かつて、まだ技術が十分に発展していない段階で行われていたことに学ぶことが実はたくさんあるし、それがローカライズしていろいろな教育委員会でそれぞれに行われていて、それぞれの先進的な事例をどういうふうに全国に横展開していくかという観点からも、データが標準化されていくということはとても大事なことだというふうに私は感じました。
 この後、次回以降のことにつきまして、事務局よりお願いいたします。

【事務局】 本日はありがとうございました。第1回の際にも御説明したのですが、今後の段取りと見通しについて御説明いたしますと、この会議は、データ標準の中身のコンテンツのお話と、それからデータ利活用の話の大きく分けてその2つを両方とも審議していっていただくといった形になっていくかと思います。データ標準のほうは、先週第1版を発表しまして、第2版を来年春に発表することになっておりますので、また第2版に向けての作業を行っていますが、またこちらについて御意見を伺いたいと思いますので、次回以降、またその状況を御報告して御意見をいただきたいと思っています。
 もう一方のほうのデータの利活用そのもの、本体の部分に関しましては、今年度中に論点整理をいたしまして、方向性として打ち出せるところは打ち出して、論点としてまだ引き続き審議していただくことは審議が必要だということで、論点整理というような段取りで進ませていただきたいと思います。
 第3回、次回は11月下旬から12月頃に開催する予定でおりますが、具体的な日程はまた調整させていただきたいと思います。内容に関しましては、データ標準の内容としまして、また進捗状況を御報告させていただく点と、それから、今回は自治体や学校の現場からの視点ということで、そこからの示唆というお話を伺いましたけれども、次回は研究や、あるいは高等教育での視点といった点からの今後の初中教育におけるデータ標準あるいはデータの利活用に関する御示唆といった点でまた御議論いただきたいと思っております。

【座長】 それでは、これにて本日の会議は終わりにしたいと思います。

(以上)

お問合せ先

 初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)