デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第11回)議事録

1.日時

令和3年5月27日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 第一次報告に向けた審議について
  2. その他

4.出席者

委員

青山委員、石戸委員、赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、黒川委員、齋藤委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員

文部科学省

瀧本初等中等教育局長、塩見大臣官房学習基盤審議官、浅野初等中等教育企画課長、板倉学びの先端技術活用推進室長、佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐、高橋情報教育・外国語教育課課長補佐、神山教科書課長、度會教科書課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第11回)

令和3年5月27日



【堀田座長】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第11回を開催させていただきます。
本日も御出席いただきまして,誠にありがとうございます。今回も新型コロナウイルスの感染状況も踏まえまして,ウェブ会議方式としております。
本日の議題は1件でございまして,第一次報告案について皆様に御議論をいただくことになっております。
それでは,資料の確認を事務局よりお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。議事次第を御覧ください。本日の資料は資料1から3の3点でございます。過不足等ございましたら事務局までご連絡願います。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。では,まず議事に入る前に事務局より報告事項がございます。資料1を基に事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1は,令和3年度「学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業」の令和3年5月時点での実施状況でございます。現在,導入に当たり調整中の学校があることから,暫定的なものとなります。参加自治体数,参加学校数,教科等の実施状況をお示ししております。
まず,参加自治体数でございますが,全都道府県において実施されており,全1,788自治体のうち,1,377自治体が参加しております。
続きまして,参加学校数でございますが,小学校段階で約7,900校,中学校段階で約4,300校,計約12,200校が参加しておりまして,それぞれ全体の約40%で実施されております。
続きまして,教科等の実施状況でございますが,まず,小学校では算数が最も多く,次いで社会,国語,理科,英語での導入が多い状況となっております。
続いて中学校では,英語が最も多く,次いで数学,理科,国語での導入が多い状況になっております。
以上,御報告でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。一点質問ですが,学校につきどれか1教科と決められて参加しているのでしょうか
【度會課長補佐】 基本的には学校の御希望に基づいて選定しておりますが,なるべく全ての教科において実施されている状況をつくりたかったため,学校数が多い自治体においては,教科がばらけるように,希望を出していただくときにご調整いただきました。例えば小学校で言えば,重点校という形で一から六年生が参加しているところもございますが,生活科であれば一,二年生しかないところもございますので,三年生より上は別の教科といった形で取っているところもございます。
【堀田座長】 分かりました。そのような状況で,今小学校では算数が32%で一番多く実施されており,中学校は英語が最も多く実施されているといった状況だということです。
こちらの御報告に関しまして御質問はございますでしょうか。まだこれは1,788分の1,377の途中状況でございますし,何よりも,こういう割合で実施していただいた学校がどのように利用してどのように感じるかこそが重要なところだと思いますが,今日は速報をお示しいただいたということです。ありがとうございました。
それでは議事に入ります。今日も事務局資料に基づいて御議論いただきますが,委員の皆様には事前にお送りしてございますけど,第一次報告案につきまして,資料2と資料3を基に事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料3をご覧ください。資料2と3は内容的には同じですが,中間まとめからの修正履歴がついております資料3に基づいて御説明をいたします。
第一次報告案として,これまで教育関係団体をはじめとする様々な関係者からの意見や,意見募集に寄せられた意見,そして令和2年度事業の成果などを踏まえまして,今般,御提示をさせていただきます。
主な変更点を御説明いたします。5ページ目の上のところでございますが,前段で元年度の事業の成果報告を書いておりましたので,令和2年度の事業の成果も書かせていただきました。読み上げますと,「令和2年度に実施した『学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業』における調査結果によれば,例えば,『いろいろな情報を集める活動ができる授業だった』,『自分の考えたことを,文字や図にして書いたり,他の人に話したりすることができる授業だった』,『友だちとお互いの考えを比べることのできる授業だった』の項目について,『デジタル教科書の方がそう感じる』と回答した児童が約4割,『デジタル教科書と紙の教科書も同じくらい』と回答した児童が約4割みられた」ということを追記しております。こちらの点につきましては,前回の会議で事業の成果を報告させていただいたとおりでございます。
続きまして,10ページでは同じく実証研究事業の成果のうち,健康面についてを書かせていただいております。「令和2年度に実施した事業における調査結果によれば,姿勢が良いと感じている児童,紙面・画面と目の距離を30センチメートル以上離せたと感じている児童の方が,健康面への影響を感じにくい傾向がみられた」というところでございます。健康面に関しては当課に限らず,文部科学省初等中等教育局としても周知のほうを図っているところでございます。当課としては,この検討会議でも議論いただいた,「デジタル教科書の効果的な活用の在り方に関するガイドライン」を令和3年3月に改定して学校現場に周知しております。また,別途,「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について」という通知や,端末利用に当たっての児童生徒の健康への配慮等に関する啓発リーフレットなどを通じて,学校や家庭においてICT機器を使用する際の留意事項について周知をしているところでございます。
続いて,12ページは環境整備に関する箇所ですが,追記させていただいているところの関係で申し上げますと,デジタル教科書の学校における活用が進むことによって,今後,家庭における学習での使用も進むことが考えられ,それに伴い,通信環境のない家庭への環境整備の配慮が必要となってまいります。GIGAスクール構想においては,児童生徒1人1台端末環境の整備を目指しまして,家庭への持ち帰りを含めて活用できる環境の整備を図ることとしておりますが,意見募集等で意見をいただく中で,格差に気をつけるべきという趣旨の意見を多くいただきました。そこで自治体,学校,家庭の状況によって教育環境の格差につながることのないように留意する必要があるということで追記をしているところでございます。
続いて,16ページでは2ページにわたり追記しております。今後検討を進めるに当たって留意すべき事項ということで書かいておりますが,デジタル教科書の今後の在り方については,教育上の効果や健康面への影響も含めた全国的な実証研究の成果等を踏まえつつ,更には財政負担も考慮しながら,今後詳細に検討する必要があり,引き続き,デジタル教科書の普及状況や活用状況も注視しつつ,検討を進めていくことが求められます。
また,令和6年度からの本格的な導入を目指すに当たり,例えば,以下に挙げるような技術的な課題については,実証研究と並行して,ワーキンググループで専門的に検討することが必要であるとして記載しております。
例えば,デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等,デジタル教科書の供給をクラウド配信により行う場合,一時的にオフラインでも使用できるようにするための仕組み,過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策(ライセンスの期間や費用の在り方等)を挙げております。
なお,その下に記載しております点については,デジタル教科書の普及促進の観点から視野に入れることが重要であるが,その在り方については,教育データ利活用をはじめとする他の分野の検討状況を踏まえる必要があると考えており,その項目といたしまして,デジタル教科書やデジタル教材の連携に資する「学習eポータル」等のシステムと連携するために,デジタル教科書に共通に備えるべき規格や,デジタル教科書における学習指導要領コード等の付帯情報の付与の在り方,デジタル教科書の使用に伴う学習や操作の履歴等の記録の方法や保存場所の在り方がありますことを前回の会議でお示しさせていただいた資料を基に執筆しております。
そして,最後に,デジタル教科書は,よりよい授業を構築し,児童生徒の学びの充実を図るための新たなツールとして期待されるものであります。デジタル教科書の使用は,あくまで教育の質を高めることが目的であり,その使用自体を目的としたり,紙かデジタルかといった,いわゆる「二項対立」の議論に陥ったりすることのないよう,留意しなければならないと考えております。今後,発達の段階や教科等の特性を踏まえつつ,どの学習場面において,どのような方法でデジタル教科書を使用することが効果的であるかをさらに検証し,実績を積み重ねていく必要があると考えております。その際,読み書きの基本を身に付けることの大切さやこれまでの実践の中で積み上げられてきた学びの在り方をおろそかにすることなく,児童生徒のよりよい学びの実現に向けて,紙とデジタルのそれぞれのよさをどう適切に組み合わせるかという視点を常に持ちながら,検討を進めるべきであると締めさせていただいております。
今般,第一次報告という形で取りまとめるものでございますが,本検討会議については,当初,今年の夏までの開催としていたところではございますけれども,デジタル教科書の今後の在り方に関しまして,全国的な実証研究の成果等を踏まえ,改めてこの検討会議でご議論いただいたうえで,別途報告書を取りまとめることを考えているところでございます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。資料2と資料3の内容は同じものですので,修正履歴のついております資料3で御説明をいただいたところでございます。
こちらについて御意見をいただきたいと思います。御意見のある方から挙手をお願いいたします。
では,清水委員,まずお願いいたします。
【清水委員】 日本PTAの清水です。
第一次報告案に関しまして,特に私は保護者の立場で申し上げます。先ほども事務局の方から御説明がありましたとおり,義務教育課程においては,不平等なく子供たちに一律の教育という観点で,12ページに「自治体や学校,家庭の状況によって教育環境の格差につながることのないように」という文言を入れていただき,本当にありがとうございます。
また,同様の観点から,14ページの教科書の無償のところでございます。「今後も義務教育段階において教科書が無償であることを前提としつつ」というこの言葉も非常に大切なところだと思いますし,非常にありがたく感じました。
以上2点,意見でございます。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,東原委員,お願いいたします。
【東原座長代理】
二つございます。まず資料3の7ページの一番下の丸にデジタル教科書と教材の連携に関する記述がございます。その下から6行目に,「学習指導要領のコード付与による連携のほか」とございますが,ここにできれば付け加えていただきたい言葉があります。最初に意味合いをお伝えしますと,学習指導要領のコードというのは,学習指導要領の項目でありますので,教科書の片側ページに対応するというよりも,むしろ教科書の複数ページに対応するようなものもあるいわば粗い項目でございます。したがって,学習指導要領コードだけですと,きめ細かな連携ができないという問題が生じることが予測されます。さらに,その後ろにあります学習eポータル等を使っていくという,これも今の段階では割と大きな枠での連携になると思っております。
それで,提案は次のとおりです。「学習指導要領のコード付与による連携のほか,」の続きに,「よりきめ細かな連携の方式や」というような言葉を追加していただいて,その後ろに学習eポータルの話を出してくるというような構造にしていただくと,学びのイノベーション事業以来行っております学習者用デジタル教科書と教材の連携に関して,吸収できると思うので,一言発言させていただきました。
もう一つは,11ページにの一番上の教員養成のところです。11ページの一番上のまとまりの最後に「機会の確保が望まれる」と書いていただきました。先生になりたい大学生が学習者用デジタル教科書を体験できるということを入れていただいたことは大変よいのですが,全体を通して読んでみますと,ほかの言葉の語尾が,必要である,必要不可欠である,重要であるとなっている中に,「望まれる」と書いてあると,「まあ,望まれるレベルか」と取れてしまうので,「望まれる」よりももう一つ上の重要度を表す書き方にしていただくと,教員養成課程での体験がよりスムーズできると思います。これはできればということでお願いいたします。
以上でございます。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございます。
中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 16ページの「検討を進めるに当たって留意すべき事項」のところでお願いがございます。前回の会議でも提案させていただきましたが,特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティ,ユーザビリティの観点を必ず入れていただきたいと思います。また,障害特性に基づいた検討も必要ですので,検討会議を開催する際には,外部の専門家を入れていただくようにお願いいたします。これは最初の点にある「デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等」に含まれていると理解すべきだとは思いますが,これに関しては明記していただくようにお願いを改めていたします。
具体的な提案としまして,この中に「特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティ,ユーザビリティ等」という項目を別立てしていただくか,もしくは最初の点である「デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等」の後に,括弧づきで特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティ・ユーザビリティ等を含むというふうに記載していただければと思います。御検討よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。
加藤委員,お願いします。
【加藤委員】 学芸大の加藤です。
2点,内容というよりも,字面的な,表面的な部分ですが,まず,資料3の12ページ最初の丸のところに「パブリッククラウド方式による配信を行うことが考えられる」という文がございますが,既にこの春からはクラウドからの配信が主として動いており,それを前提として以後に書いてあることを検討していく必要があるので,例えば「行うことが必須である」というような,既にクラウドが中心になっているとわかる言葉に置き換えたほうが良いと思います。
2点目は,最後の「検討を進めるに当たって留意すべき事項」のところにございます,過年度のデジタル教科書を使用するための方策という課題は,技術的な課題ではなく普及促進の観点から視野に入れることだと思います。これは費用の話だと思いますので,2番目の「その在り方については,教育データ利活用をはじめとする他の分野の検討状況を踏まえる必要がある」を,例えば「その在り方については,教育データ利活用をはじめとする他の分野の検討状況やクラウド配信等に係る費用の検討などを踏まえる必要がある」のように費用の項を入れることで,普及促進の観点から視野に入れることが重要な課題としたほうが良いと考え,意見しました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。ご指摘のところは,最初に三点デジタル教科書の検討会議としてできることが書いてあり,その後ろは私どもの会議体だけでは難しく,ほかの会議体や部局と調整する必要があるものが書いてあるという区分けになっているのだと思いますが,それが十分に伝わらない書き方になっているということかと思いますので,今の御意見を踏まえて書き方を検討いたします。
【加藤委員】 1番目のほうに技術と費用という感じに入れても良いかもしれないです。
【堀田座長】 費用負担も含めた検討はデジタル教科書の在り方に関する検討ですので,私たちの明確な所掌範囲だと思います。もちろんそれを実現できる財政負担がちゃんとされるかどうかというのはまた私たちでは決め切れないことはありますが、ということです。ありがとうございます。
では,続きまして中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 放送大学の中川です。3点ございます。
まず一つ目ですが,令和2年度実施の学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業を3か所にわたって引き合いに出していただいていることに感謝します。その上で,資料3の5ページ目の赤字部分に三つの回答項目を例に挙げていますが,さらに「知っていることやできることが増える授業だった」という回答についても,取り上げていただきたいと思います。これは知識だけでなく,技能向上的なニュアンスも入っていて,現在取り上げられている三つの回答とは少し意味合いが違うと思うからです。また,この回答については「そう感じる」「ややそう感じる」が39.6%になりますので,約4割という文言とも齟齬はないと思います。
次に,2点目ですが,新たに加えられた16ページ目の後半の2点の二つ目,デジタル教科書の使用に伴う学習や操作の履歴等の記録の方法や保存場所の在り方について,ぜひ「活用の在り方」という文言も含めていただきたく,例えば,「学習の操作や履歴等の記録の方法や活用の在り方」とすることで,技術的な検討は活用の在り方と強く関連しているということを文言でも示していただければと思います。ぜひ御検討ください。
そして三つ目は,今回の報告書案からはちょっと外れてしまうかもしれませんが今後のことです。今回,第一次報告案としては,直近の現状や留意点についてとても丁寧に整理されたものになっていると思います。ただ今後,デジタル教科書の意義をさらに検討して整理していくことを盛り込むことが重要であると思います。そもそも教科書の在り方がどう変わっていくのか,なぜそうするのか,そしてその中でデジタル教科書がどうあるべきなのか。そこをさらに議論して,次の報告書に盛り込んでいく必要があると思っています。
以上,3点申し上げました。
【堀田座長】 ありがとうございました。特に最後の一言は非常に重たい話だと思います。今回の第一次報告案にはそこまで盛り込めませんでしたが,継続してこれからも議論してまいります。ありがとうございました。
では,福山委員,お願いいたします。
【福山委員】 全日本中学校長会の福山です。
まず,健康面への影響につきまして,10ページ中段の「また,健康に関する意識を醸成するために」の箇所で,「保護者にも適切に説明をする」の後に,「ことによって,学校と家庭が協働して行うことが重要である」と入れていただきたいと考えております。「学校と家庭が協働して行う」,この短い文ですが,私は昨年度から「協働」という言葉がとても重要であると意見を述べさせていただいております。ぜひ「学校と家庭の協働」という言葉を入れていただければと思います。
毎年度,児童生徒の視力や睡眠状況,メンタル面などについて,学校検診での客観的なデータや日常の保健室来室状況,児童生徒へのアンケート調査を通して,健康の経過観察とデータの蓄積が重要であると考えています。
続きまして,資料3の16ページから17ページにかけて記載されておりますように,実証研究において,紙とデジタルのそれぞれが得意とする学習場面を検証したり,紙とデジタルの効果的な組合せを明らかにしたりすることによって,適切で効果的な使用についての理解が深まると考えています。今後教員には,紙の教科書とデジタル教科書の併用を基本として,学習内容や学習場面に応じて使い分けることのできる力,授業設計力が求められると考えていますので,実践事例とともに,より教員研修の充実が重要となってまいります。そして,知識・理解あるいは思考・判断・表現力などの資質・能力の観点につきましてもエビデンスが重要であり,実証研究も単年度ではなく複数年度,複数教科で検証していくことが必要であると考えています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変貴重な御指摘だと思います。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 資料3の赤字に関しましては,基本的に異論ございません。ただ,作り手の側から今後の検討で少々気になる点を3点ほど申し上げます。前回の発言と重なるところもありますけれども,御了承ください。
一つ目は,発行者として一番の関心事になりますが,確実な供給導入を実現するための検討です。目の前に迫ってきていると我々は認識しておりますので,大前提として,実使用を始める前までの整備と体制づくりについての検討をしっかりとしておく必要があると考えております。今年度から学習者用デジタル教科書普及促進事業がスタートしたばかりですが,現在,新学期から問題なく使い始められるようにすることに注力をすべきだと痛感をしているところです。例えば今回の事業は,原則1学校に1教科,1発行者という条件になります。これでも新年度の対応はかなり大変であったと感じています。これが複数発行者の採用になったらさらに大変だと感じております。
また,今回の導入過程で,学校の先生方がアカウント管理を行うケースが非常に多くあり,現実問題として,新年度にこの作業を行う大変さを何とかクリアしていかなければならないと強く感じているところです。
したがいまして,令和6年度に向けては,機能等の標準化やコード連携の問題もありますが,需要数の把握などを含めた供給や導入のルール化,それからアカウント管理の問題,シングルサインオンなどの標準化などを優先して検討すべき,と考えております。その上で,教科書協会としてデジタル教科書の供給管理システムの検討や提案をさせていただきたいと思っております。
それから,二つ目は,デジタル教科書とデジタル教材の位置づけについてです。普及促進事業におきましては,デジタル教科書と準拠のデジタル教材のセットで提供され,検証が進められております。これを連携して活用することは大変効果的なことですが,無償給与等の制度上の検討対象というのはデジタル教科書ですので,エビデンスの検討の際には,その点をよく留意しておく必要があると思います。また教材部分だけが先行して議論が進んでしまわないように留意する必要があります。
最後三つ目,最後の16ページのところでワーキンググループの課題で挙がっているオフラインでの使用の仕組みのことや,過年度使用等について,やはりこれもデジタル教科書の範囲だけでの検討ではなく,GIGAスクール構想などの全体的な観点から御検討いただきたいと思っているところです。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,森委員,お願いいたします。
【森委員】 日本図書教材協会の森です。
この報告書に関して異論はございません。加えて申し上げるとすれば,最後の留意すべき事項というところで,二項対立に関する議論を指摘している点,紙とデジタルそれぞれのよさをどう適切に組み合わせるかという視点を常に持つことが記載されていることに大いに賛同いたします。
我々としても,紙とデジタルをトレードオフの関係にしてはいけないと考えています。我々も今デジタル教材を開発しておりますが,教材としてデジタル化できるところはまだまだ狭い範囲です。テクノロジーが進んだとはいえ,例えば書く部分では,現状の精度は我々の期待に応えられるものではまだまだありません。したがって,デジタル化するとできない学習が多く出てきてしまいます。
ただ,一部地域では,デジタル教材を導入したということを理由に,紙の教材の採用を控えるよう通達が出ています。こうしますと,本当の意味で教材が良質化したとは言えず,よい学びの実現には向かっていないのではないかと憂いております。デジタルだからよいというわけではなく,手段が目的化してしまったとすれば憂うべきことであり,導入後の利活用を焦っているのではないかと感じております。このような大人の都合のように感じられる事例もありますので,デジタル教科書を導入していくに当たっては,しっかりと目的を踏まえた上で次のステージに移る必要があると考えております。次のステージになったときには,必ず教材との連携がまた議論されることになると思いますので,意見させていただいきました。
加えて,弊協会としては,学習eポータルの議論を進めており,教材業界として何かお役に立てることはないかということを検討,勉強しておりますので,今後機会があれば,教科書発行社様とも一緒に研究をしたいと思っている次第でございます。
以上です。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして石戸委員,お願いいたします。
【石戸委員】 石戸です。
内容については特に異論はありません。強いて言うならば,5ページ等を筆頭に,デジタルと紙の比較をしていますが,デジタルにしかないメリット,よさがあるはずだと思っています。デジタル教科書の導入というのは,デジタル化のみならず,教育DXを念頭に置いたものであるはずで,その辺りの発信が,今後もっとあってもいいのではないかと思います。
なお,内容については異論ありませんが,発信方法に関しては気になっています。今もなおメディアでは,デジタル教科書に対する否定的な論調が多々見られます。それに対してしっかりと反論を出すことも時に必要であると思っております。そのためにも,報告書の内容の充実もさることながら,どのようにこの報告書を普及啓発させるのかにも力を入れるべきであると考えます。
教育の分野は時に,教育ムラだと感じることがあります。このような報告書ができると,そのコミュニティーではよく読まれているが,そのコミュニティーの外に出ると理解がされていないということが,ほかの分野と比較しても多いと感じます。ですので,分かりやすいメッセージをどのように発信していくかというアウトリーチ方法をしっかりと検討するということも,内容と同等に大事であると思っています。
以上です。

【堀田座長】 ありがとうございます。大変貴重な御意見だと思います。検討してまいります。
片山弘喜委員,お願いします。
【片山(弘)委員】 宮崎県教育庁南部教育事務所の片山です。
16ページに,「検討を進めるに当たって留意すべき事項」として今後の課題等について整理されていることについては,本当にありがたく感じているところです。この報告案については,デジタル教科書が子供たちの学びの充実に資するものであるという考え方の下に,最終的にはデジタルと紙の組合せということに言及されており,このことを記載していただけたことがありがたいと考えております。恐らくデジタル教科書につきましては,実証研究の中でよさが見えてくるものであると考えておりますので,このことを踏まえて今後の検討が進められていくとよいと考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
片山敏郎委員,お願いいたします。
【片山(敏)委員】 新潟市教育委員会の片山です。
1点,黒川委員の御指摘と似ている部分で一つ,教員の負担というところについてのお話をさせていただきます。今GIGAスクール構想で端末の導入をはじめ様々なものの導入に関わって,推進リーダーのような方の負担が増えているところがあります。先ほど黒川委員がおっしゃったように,多くの教科書会社のアカウントの管理等の業務にかかる負担が,教員にかかっております。設計にあたってそのような教員の管理の負担もコストの中に入れていただきたく,それがICT支援員のように人的サポートでできるものなのか,そもそも設計の技術的なところでかなり簡易にクリアできるようなものなのかというところも,今後検討していく必要があると感じております。
以上です。ありがとうございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。
青山委員,お願いいたします。
【青山委員】
2点ございますが,1点目は,中川委員からお話がありました5ページのところです。私は6年生の担任なので,本日学力・学習状況調査を行いましたが,その中の児童質問紙に,5年生までに受けた授業でコンピューターなどのICT機器をどの程度使ったかという選択肢がありました。ほぼ毎日から月1回程度まで4段階ありましたが,児童たちは,休校中は,学校教育ではありませんがほぼ毎日オンライン授業で使っておりましたし実際困ったときにはしなやかに使っております。ですので,大人だけの議論ではなく,学習者である子供たちにとってデジタル教科書がどういうものなのかという,実際に使う学び手の意識をより細やかに取っていかなくてはいけないと思います。中川委員のお話もありましたが,引き続き少し丁寧に,今後も学習者の意識に立ってデジタル教科書の在り方を考えていく必要があると思っている次第です。
2点目は,森委員のお話もありましたが,最後の16ページにおまとめいただいたデジタルかそれとも紙かという二項対立ではないという点に関しまして,今後は指導者側の視点で,デジタル教科書の活用の在り方が語られていくにあたり,指導者側の検証というのも必要になるのではないかと思われます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
白鳥委員,お願いいたします。
【白鳥委員】
私も16ページの最終の段落にございます紙かデジタルかといった二項対立議論に陥らないよう留意しなければならないという記述は,まさにそのとおりだと感じました。今年度の学習者用デジタル教科書普及促進事業を通じて,実際にデジタル教科書を使っていただき,授業における具体的な活用法や好事例が広く伝わってデジタル教科書が普及していくことがポイントであると改めて考えております。
これから行われますワーキンググループにおいて技術的な観点で検討いただくことには賛成で,今後のデジタル教科書の在り方を機能面から考える上では,ワーキンググループはとても重要になると考えております。ただ仮に,紙かデジタルかの二項対立の対立論と同じように,技術論や方法論だけに陥ってしまいますと,デジタル教科書を利用する先生や児童生徒,発行者,開発会社が置き去りになってしまいかねないと思います。導入の作業負担の削減などの課題もありますが,利用者の使い勝手や操作感,開発のコスト,インフラの費用という側面もございます。また技術の普及度合や,難易度,機能の表面に現れてこない点も加味して検討を進めていただけるとよりよいと考えております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
赤堀委員,お願いいたします。
【赤堀委員】 全連小の赤堀でございます。
先ほどもお話がございました紙かデジタルかといった二項対立の議論に陥らないというその視点を盛り込んでいただいたこと,大変ありがたく思っております。現在の学習者,現在の指導者,そして目下求められているGIGAスクール構想の実現という大切な部分を踏まえて進んでおりますが,長期的な視点に立って,子供たちの本当の学力をどのようにつけていくのか,そのためにデジタル教科書がどのように活用されていくのがよろしいのかといったところを,この後ぜひ御議論の中で深めていっていただけたらありがたいと思っているところでございます。基礎基本の読み書きのところはしっかりノートと鉛筆で,さらに習熟のところについて様々なデジタル教材,教科書などを使っていく。そのような柔軟な対応ができる学校教育の場であったらありがたいと思っているところでございます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
それでは,座長として,一言お話ししますが,この報告案については,第9回に中間まとめが議論され,そこからいろんな方々の御意見を意見募集や関係団体へのヒアリングでお聞きしました。そのため,網羅的に御意見を反映させているという意味で,現段階では特に異論が出ないということと思います。
一方で,文部科学省内では,教育データの利活用の会議が動いており,政府においては,教育再生実行会議でこれからの初等中等教育の在り方として,誰一人取り残すことのない学びを確実に保障するにはどうすればよいか,あるいはニューノーマルでの学びについての検討が行われ,それを実現するためにデジタル教科書をどうするか,あるいは教育データの収集や分析や利活用をもっと加速化し,データ駆動型の教育にしていくべきだという意見交換もされています。この教育再生実行会議は,間もなく提言の取りまとめが行われることになりますので,その政府の意向ともうまく調整していただいて,報告案の最終調整をしていただければと思っております。
このような点の調整や,皆様から今日いただいた御意見を組み込んでいくという前提で,今日の報告案につきましては座長一任とさせていただいてもよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【堀田座長】 ありがとうございます。ここで言う座長一任というのは,もちろん個別に先生方にも御相談すると思いますが,内容の修正や公表日程等につきまして私と事務局のほうで最終調整をするということになります。
本日は議題は以上です。今後のことにつきまして私から一言お話をし,それから神山課長に御挨拶をいただきたいと思います。まず今後のことについては,先ほど度會補佐がおっしゃったように,この会議は,デジタル教科書の今後の在り方を審議するもので,この第一次報告案では,現状でのメリットや課題,そして留意点が整理されたと思います。
しかし,これまでは実証をやっているとはいえ,それは既に前向きにデジタル教科書を導入した学校での実証でした。今年度やっている実証は,日本中の小中学校の4割が,たとえ1教科であってもデジタル教科書を使うというものです。それでも混乱が起きているという黒川委員のお話にもあったように,現実に運用してみるというのが今年度だと思います。また,クラウド配信についての実証も行われますので,今年度は現場の先生方の意見,あるいは混乱を含めて広く情報を集めるタイミングであり,それが行われ始めた今の段階で今後の在り方を語ってしまうのは,政策立案としては難しいということで第一次報告案はここまでとなりましたが,来年度の今頃までには恐らく実証実験の結果が出て,GIGAスクールの端末の活用も落ち着きを見せるのではないかと考えております。
二項対立の話が出ていますが,それは例えば教科書の無償給与を紙にするかデジタルにするかという点において,両方は難しく,片方になるかもしれないという意味では,シビアなことはあるかもしれません。ですが現場で利用するのは,仮に片方が有償だったとしても,紙とデジタル両方使えるほうが恐らく子供たちには優しく必要であり,先ほど赤堀委員がおっしゃったように,学習内容とか学習目標によっても変わってくるかと思います。
さらには,学びに向かう力をしっかりと育てていくという学習指導要領の趣旨から考えますと,端末やデジタル教科書をどのように利活用していくのかは,今後描いていく必要があると思います。それはまさに石戸委員がおっしゃったように,紙をどのようにしてデジタルにするかという話ではなく,初等中等教育のDXとしてしっかりとやっていく話だと思います。そうしますと,今は各社の努力にお任せしてしまっていますが,今後,アカウント管理やシングルサインオン,データ形式や,データ連携,インターフェースなどについて国として行う一定の標準化と,どこから先は各企業にお任せするかということの見極めを技術的にしっかりと行う必要があると考えています。これはこの検討会議でも早い時期から始めるべきだという意見が出ておりましたが,いよいよ多くの先生方が使うタイミングとなり,これからその検討ができるということになります。
今日,全国学力・学習状況調査は全国で行われていますが,その一部についてはCBTで行うということも実証として始まっています。一方で,教科書発行者におかれましては,責任を持ってよいものを作り,しっかりと供給するということを非常に御努力されています。そのような方々にご準備していただくためにも、文部科学省としては,単年度予算のため難しいことは重々承知ですが,初等中等教育のDXの先を見越したビジョンを見せながら進めていただければ幸いです。
長々とお話ししましたが,座長として,11回まで切り回ししてきて感じたことでございました。
では,神山課長,よろしくお願いします。
【神山課長】 神山でございます。本検討会議は昨年の7月から本日で11回ということで,座長をはじめ委員の皆様におかれましては,大変精力的な御議論をいただきまして,本当にありがとうございました。
報告案の内容につきましては,先ほど座長から話がございましたように,本日いただいた御意見,あるいはこの後の御意見を含めて座長と御相談いたしながら取りまとめをさせていただくということになろうかと思ってございます。また,それがまとまりましたら,石戸委員からも御指摘がありましたように,報告の考え方について,広く様々な方々に御理解いただけるようにしっかり対応していきたいと考えてございます。
それから,今後の議論に資するように,今年度予算の実証事業も文部科学省としてしっかりと進めていきたいと考えてございます。検討会議はこの後も引き続き設置されておりますけれども,ワーキングを設置させていただいて,第一次報告の最後の部分でも追記されていましたような,専門的・技術的な事項を中心的に議論するという流れになろうかと思いますので,ワーキングでの議論を親会議に当たります検討会議にも適宜御報告をさせていただこうと思ってございます。
いずれにいたしましても,大臣がデジタル教科書について御発言をされるときに,デジタル教科書についてはスモールステップで丁寧に検討を進めることが重要だとよくおっしゃっていますが,この検討会議がその要の会議でございますので,引き続き皆様方の御協力をいただければと考えております。これまで本当にありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【堀田座長】 神山課長,ありがとうございました。

それでは,ここまでといたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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