デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第10回)議事録

1.日時

令和3年4月26日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 報告に向けた審議について
  2. その他

4.出席者

委員

赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、河嶌委員、黒川委員、齋藤委員、柴田委員、清水委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、平方委員、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員

文部科学省

瀧本初等中等教育局長、塩見大臣官房学習基盤審議官、桐生調査企画課教育DX推進室長、佐藤初等中等教育企画課専門官、中川初等中等教育局視学委員、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、度會教科書課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第10回)

令和3年4月26日

【堀田座長】 ただいまからデジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第10回会議を開催させていただきます。
本日も御出席いただきましてありがとうございます。
今回も新型コロナウイルスの感染状況も踏まえまして,ウェブ会議方式とさせていただきます。
本日は文部科学省より報告の後,審議が2件ございます。一つは令和3年度の予算事業について,もう一つは,この検討会議で夏に出すこととなっております報告に向けた審議についての2点でございます。
では,事務局より,資料の確認をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。議事次第を御覧ください。本日の資料は資料1から資料7と参考資料が2つございます。過不足等ございましたら事務局まで御連絡いただけますと幸いです。
以上です。
【堀田座長】 それでは,早速中身に入りたいと思います。
今回はまずは事務局より報告事項があるということです。資料1と資料2につきまして,事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1を御覧ください。
こちらは令和2年度に教科書課において実施させていただきました「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」の成果についての御説明資料でございます。
資料4ページ目をご覧ください。調査の概要でございますけれども,デジタル教科書の効果・影響について,教育面・健康面等の多様な観点から分析をさせていただきました。
調査の目的といたしましては,1点目が,紙の教科書をデジタル教科書に代えて使用することによる効果・影響を明らかにすること,2点目が,デジタル教科書の効果をより高める方法を明らかにすることでございます。
調査内容といたしましては,研究協力校5校で実証を行いまして,その中で学校への訪問や,学校の先生へのヒアリング,児童に対するアンケート調査を実施いたしました。
調査の観点といたしまして,2つの目的それぞれについて,AからEの5つの観点から分析を行いました。具体的には,資質・能力の三つの柱の育成,健康面の配慮,授業方法の検討,教師の負担軽減,特別な配慮を必要とする児童生徒の学習上の負担軽減の5つの観点を,先ほど申し上げた目的それぞれについて,つまり10の観点から分析を実施させていただきました。
調査設計概要といたしましては,「紙」,「デジタル」の使用期間を設け,それぞれの期間における効果・影響を比較・分析させていただきましたところ,実証は「紙の教科書使用期間」と「学習者用デジタル教科書使用期間」に分けて,それぞれ3週間程度以上,具体的には一単元分同士を比較した,実証を行いました。
研究協力校の概要といたしまして,富山県の朝日町立さみさと小学校様とあさひ野小学校様,東京都荒川区立第一日暮里小学校様,さらに発達障害のある児童が対象の学校様と,日本語指導が必要な児童が対象である学校様の5校を対象に,実証研究を進めさせていただきました。
次のページからアンケート結果について御説明をさせていただきます。
まず,授業方法について,具体的には主体的な学び,対話的な学び,深い学びの視点からの授業の実現度の実感について,児童に対してアンケートを実施いたしました。結果は,項目にはよりますが,例えば対話的な学びの観点から行ったアンケートにおいては,いろいろな情報を集める活動ができる授業だったという項目や,自分の考えたことを文字や図にして書いたり,ほかの人に話したりすることができる授業だったという項目,あるいは,友だちとお互いの考えを比べることのできる授業だったという項目においては,デジタル教科書のほうがそう感じると回答した児童が4割,デジタル教科書も紙も同じぐらいだったと感じたと回答した児童が4割という結果が得られたところでございます。
続きまして,健康面への影響についてのアンケートでございます。こちらは実証期間を通して3回,児童に対してアンケートを行いました。1回目が紙の教科書での実証期間後,2回目がデジタル教科書の実証期間中,3回目がデジタル教科書の実証期間後に,健康への影響の実感についてのアンケートを実施いたしました。
もちろんサンプル数が少ない中での結果であるという前提にはなりますが,例えば紙の教科書よりも,デジタル教科書①,つまりデジタル教科書の実証期間中のほうが頭,首・肩,手に疲れを感じた児童の割合は少なかったという結果が出ています。
一方で,紙の教科書よりもデジタル教科書②,つまりデジタル教科書の実証期間終了後のほうが目の乾きを感じた児童の割合が多かったという結果が出ています。また,最後に,全ての健康面に関する項目において,姿勢がよいと感じている児童や,紙面・画面と目の距離を30cm以上離せたと感じている児童のほうが,健康面の影響を感じにくい傾向が見られたところでございます。
昨今,健康面への影響は,デジタル教科書に限らずICTの観点から,議論になっておりますが,このように適切に姿勢をよくすることや,画面との距離を保つということをすれば,健康面への影響を軽減できるというような傾向が見られる結果だと思われます。
次は保護者からの意見をアンケートにて取らせていただいた結果です。保護者の学習者用デジタル教科書に期待する声は多くありますが,一方で,学習の充実面や健康影響等の理解醸成が必要だという結果が出ております。
続きまして,12ページからは実際に授業を行っているところの観察や,学校の先生からのヒアリングを行った結果をまとめたものでございます。
13ページは資質・能力の三つの柱の育成について,どのような事例が見られたかということを表したものです。国語においては,教科書本文の色分けにより,文章構造が把握しやすくなるとともに共有活動の質も向上したという事例や,色分けで気づきを可視化することにより,自分の考えの自覚と,根拠を明確にした表現が可能になるといった事例が見られました。
社会科に関しましては,比較・書き込みや,それらの活動の共有を容易に行えることにより,情報を適切にまとめる技能や自身の考えを表現する力を育成することができるという意見がございました。
算数におきましては,学習のねらいを視覚的に確認にすることにより,問題の正しい理解が促進されることや,書き込み・削除が容易であることにより試行錯誤が可能となり,積極的な学習態度を涵養することができたという事例がございました。
最後に,外国語におきましては,朗読機能で繰り返し音声を聞くことにより,自分のペースで着実に語彙力向上をさせることが可能になるという意見や,「聞くこと」「読むこと」を関連づけた活動により,一層の語彙力向上に資するという意見がございました。さらに,必要なときに音声を自分で確認しながら英語を自己表現するといった活動により,思考力や表現力の育成を促進できるといった事例が見られたところでございます。
次のページは授業方法の観点からヒアリングを行った結果です。先ほどの資質・能力の三つの柱の育成と若干似通った部分があり,代表的なところで言えば国語でございますが,共通ルールに基づいた書き込みを比較することにより,他者との考えの違いが見えやすくなり共有活動を促進することが可能になるという結果がございます。また,学習者用デジタル教科書と他の教材との適切な組合せにより,単元全体での考えの深化やその考えの共有,内容の振り返り等を効果的に実現できるという結果もございます。
また,社会科でございますが,資料の拡大やカラーでの読み取りにより,資料の詳細な把握・比較が可能になるといったことが考えられるところでございます。
次は学校の先生の負担軽減の観点でございますが,こちらは実際の教科書しかり,ICTの活用の観点から,例えば,学習課題提示のために手作りしていた素材を手元の画面上に容易に表示できるため,準備のための負担が軽減されるといった声が聞かれました。
二つ目といたしましして,全体に提示すべき重要な事項を大型提示装置に映すことにより,これまで手作りしていた素材を準備する教師の負担が軽減するといった声が聞かれました。
続いて特別な配慮を必要とする児童生徒の学習上の困難の低減についてです。まず発達障害のある児童に対して,例えば自立課題等の利用で切れ目のない学習を行うことにより,集中力を持続できることや,文章の構造を可視化することにより,文書全体の内容の把握や文章をまとめる活動が可能になること,線を真っすぐ引くことへのこだわりが強い児童には,直線を書き込める機能が有効であるといった声が聞かれました。また,黒板を書き写すことに集中してしまう児童に対しては,文書の抜き出しを行えるデジタル教材が有効であること,また,動画コンテンツは有効ではあるが,それぞれの個々の学習ニーズなど児童の特性に応じた教材の使い分けも重要であるという声が聞かれたところです。
そして,日本語指導が必要な児童に対しては,拡大機能やルビ機能により,日本語の文章を読む際の困難を低減できる,また,朗読機能により,日本語の発音の確認等が可能になる,さらに,教科書本文を容易に抜き出す機能の活用により,日本語を書くことの困難を低減できるといった声が聞かれました。
次のスライドより本調査から得られた示唆をご説明いたします。
これまでの御説明と重複する部分もございますが,例えば資質・能力の三つの柱の育成から,デジタル教科書は,多様な資質・能力の育成について,紙と同等またはそれ以上の効果を生む可能性があると言える一方で,児童生徒にあわせて適切な機能を使うなどの指導上の留意が必要な点も存在するという示唆がえられました。
健康面の影響に関しまして,紙の教科書よりもデジタル教科書のほうが目の乾きを感じた児童の割合が多かったという結果でした。二つ目に,デジタル教科書の使用による目の乾きをはじめとする各種健康影響を軽減するため,姿勢や目と教科書画面との距離を離すように指導することが重要であると言えます。
続いて最後のスライドをご覧ください。学校の先生の負担軽減という点においては,学習者用デジタル教科書の使用初期は,効果的な授業設計のための検討の負担が大きくなるという指摘はありつつも,慣れてくると負担が軽減するという声が多数聞かれました。
また,特別な配慮を必要とする児童生徒の観点からは,各児童生徒の学習上の困難を踏まえた機能の利用をすることが前提になる,集中力が持続しない児童生徒が切れ目なく活動することや,動画教材等のコンテンツを使用することにより集中力が持続する可能性があるといった示唆が得られたところでございます。
資料1は以上でございます。続いて資料2を御説明いたします。
こちらにつきましては,昨年度EBPMを担当する総務省の担当部局と連携して行いました,視覚障害のある児童・生徒に対するデジタル教科書等の教育効果に関する調査・分析でございます。スライドの2ページをご覧ください。
調査の背景といたしまして,視覚障害のある児童生徒の学習環境の保障のため,紙の拡大教科書が無償給与されておりますが,紙の拡大教科書は,文字の拡大範囲が限定的であったり,大判・分冊による不便さがあったりするなど,必ずしも全ての視覚障害のある児童生徒にとって最適な形態となっていない可能性がございます。
他方で,デジタル教科書等は,児童生徒の障害の程度に応じて文字の大きさを自由に変更できる,デジタル端末1台で何冊分も使用できる等のメリットがあると考えられます。
これらを踏まえ,視覚障害のある児童生徒の学習環境の保障の観点から,より適切な方法による教科書の提供ができるのではないかといった背景の下に,本調査は,視覚障害のある児童生徒に対し,デジタル教科書を用いた授業や家庭学習を行った場合,従来の紙の拡大教科書を使用する授業や家庭学習と比較して,授業や家庭学習が支障なく実施できるかなどを検証することにより,視覚障害のある児童生徒の学習環境の保障の観点から,より適切な方法による教科書の提供に関する示唆を得ることを目的としております。
次のスライドの調査設計といたしましては,児童生徒や学校の先生に対するアンケート調査やヒアリング調査とともに,児童生徒に対して書き込みや音読,検索の課題を行う形で事業を進めたところでございます。
次のスライドから調査結果の御説明に入りますけれども,「デジタル教科書等の利用のしやすさに違いがあるのではないか」についてですが,デジタル教科書の利用のしやすさは,学校種や学年別,視覚障害の程度や内容別といった児童生徒のセグメントの項目により違いがあると考えられます。高学年や特定範囲の視力障害や子供たち自身が学校内外でICT環境に触れる機会の多い児童生徒ほど,デジタル教科書の利用が進んでいると考えられます。
次のスライドの「デジタル教科書等は,紙の拡大教科書と同等以上に有効なのではないか」につきまして,デジタル教科書と紙の拡大教科書を比較した調査において,まず作業効率は同等程度であること,またデジタル教科書等のメリットについては多数の指摘があるが,デメリットの指摘は限定的であることから,視覚障害のある児童生徒における教科書内容へのアクセスの観点で,デジタル教科書等は,紙の拡大教科書と同等以上に有効と考えられます。
また,多くの教員や児童生徒は,デジタル教科書等により紙の拡大教科書を使用せずとも指導・学習できると考えているといった意見が聞かれました。
この点について,詳細は次のページからご説明いたします。まず作業効率について御説明申し上げますが,子供たちに対して実施した実験において,「書き込んだ内容を削除する」「指定場所を検索する」といった学習場面においては,紙の拡大教科書よりデジタル教科書等のほうが作業効率がよかったといった結果が出ております。
具体的にはグラフになっているところの赤い丸で囲ってある部分でございますが,指定の箇所につけた丸を削除する課題だとか,指定の箇所に引いた線を削除する課題,指定の図等を検索する課題のいずれにおいても,紙の拡大教科書よりデジタル教科書のほうが所要時間が短い傾向にあるという結果が得られたところでございます。
次のスライドをご覧ください。同じく作業効率について「書き込みを行う」という学習場面においては,デジタル教科書よりも紙の拡大教科書のほうが作業効率がよいという結果がございます。しかし,これはデジタル教科書等では,書き込みを行うモードと画面をスクロールするモードの切替えが必要になる場合があることと,加えてまだデジタル教科書等の書き込み機能が十分に認知・活用されていない可能性があるといったことが考えられることが,作業に時間がかかる一つの要因として挙げられるのではないかという示唆をいただいております。
次のスライドも,今説明申し上げました結果をグラフ化したものでございます。
次のスライドは同じ作業効率に関してですが,「指定箇所を音読する」という学習場面について,デジタル教科書と紙の拡大教科書の作業効率はほぼ同程度である一方で,紙の拡大教科書のほうがやや作業効率がよい実験協力者も複数存在したところでございます。
この結果は,デジタル教科書等では文章の改行位置において,次の行の先頭まで画面をスクロールしなければ円滑に読めない場合があることが,1分当たりの読み上げ文字数が少なくなる一因である可能性があるといった示唆が得られたところでございます。
次のスライドは,「紙の拡大教科書の必要性はあるのか」について,児童生徒の回答も,学校段階や学年が上がるほど,「デジタル教科書により紙の拡大教科書を使用せずとも学習ができる」と考える児童生徒の割合が高かったという結果が得られております。ただし,同じ学校種でも,特別支援学校ではその割合が低かっという傾向も見られまして,また,スマートデバイスとの親和性が高いほど,その割合が高いという結果が得られております。
次のスライドは学校の先生に対するアンケートですが,「デジタル教科書等により紙の拡大教科書を使用せずとも指導できる」と考えている教員は全体の56.2%ほどで,全ての学校種において,過半数を占めておりました。
デジタル教科書等だけによる指導の可能性は,学校段階が上がるほど,また,教員のICT機器への親和性が高いほど高まりますが,特別支援学校では制約が存在すると考えられるという結果が得られております。
今ご説明しましたような結果が得られたところで,今後検討・対応すべき課題といたしまして,利用頻度の低い層に対しては,個別具体的な要因はさらに掘り下げた上で,より手厚い支援やデジタル教科書等の機能改善・拡充による普及方策を検討する必要があるのではないかと考えられます。
また一方で,デジタル教科書等の利用意向が高い,必要の認識が高い層においては,利用による効果も見込まれますので,早期に活用できるよう環境面における課題を解決するなどの集中的な支援をしてはどうかといった課題が見られているところでございます。
14枚目のスライドをご覧ください。将来的な展開方策として,御示唆いただいたものが三つございます。一つ目が,学習者用デジタル教科書については,視覚障害のある児童生徒にも使いやすいインターフェースや機能を検証し,実装するとともに,その規格化を推進することも考えられることでございます。
二つ目は,現在,学習者用デジタル教科書の普及のごくまだ初期でございまして,まだ個人の端末の普及も半ばの段階であり,実際,端末に関してはGIGAスクール構想で進んでいるところでございますが,そういった状況を踏まえまして,数年後に視覚障害のある児童生徒におけるデジタル教科書等の利用状況を再度調査して,その利用実態や今回指摘した課題の対応状況を確認する必要があるということでございます。
最後に,それぞれ子供たちの学習特性に,学習のニーズをはじめとして個々の特性がございますので,現場の多様性を把握して,先進事例でのノウハウを収集するため,例えば研究拠点校みたいなものを指定して,その成果を広く普及することが未利用の学校への認知や普及に有効と考えられるのではないかという示唆を得られたところでございます。
御説明は以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。この二つは御報告ですけれども,何か質問があれば取りますが,いかがでしょうか。
私から先に一つお聞きします。最初の資料1の実証研究事業というのは,例えば今まで令和元年度までデジタル教科書を使っている教室でどうだったかというようなことも幾つか実証しているはずですが,それの延長と考えたほうがいいでしょうか。
【度會課長補佐】 ありがとうございます。延長と捉えていただいて構いませんが,研究を継続してできたかというと,対象となっている学校が違いますので,経年変化は取れておりませんが,研究内容は継続させていただいており,令和元年度から令和2年度にかけてブラッシュアップした形で実施させていただいたところでございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。もう一つの視覚障害のほうは,視覚障害のあるお子さんたちに今まで紙の拡大教科書は提供してきたけれども,デジタル教科書等でどこまでできるかということの検証ということで,これは総務省と一緒にやったということですよね。
【度會課長補佐】 そのとおりでございます。
【堀田座長】 何か御質問ありますか。
中野先生,お願いします。
【中野委員】 二つあります。まず資料1についてですが,コロナ禍の中でこのような調査を実施するのは大変な中で,調査を実施していただいたことに敬意を払いたいと思います。
その上で質問でございますが,発達障害のある児童生徒が利用したデジタル教科書というのは,発行者による学習者用デジタル教科書と理解してよいのでしょうか。それから,特別な配慮が必要な児童生徒についての調査として,今回6名でなおかつ発達障害に限定されているので,その点については限定的に理解すべきだと思いますが,そういう理解でよろしいでしょうかというのが1番目の質問です。
2番目の質問は,資料2に関して,これもウェブ調査とはいえコロナ禍で約1,200人を調査したというのは非常にすばらしいことだと思います。この調査の中でデジタル教科書等と書いてありますけれども,学習者用デジタル教科書以外にどんなデジタル教科書が利用されていたのかということと,それから学習者用デジタル教科書が,その中でどの程度活用されていたのか,もし分かるようであればお教えください。
以上です。
【度會課長補佐】 ありがとうございます。1点目につきましては,発行者が発行している学習者用デジタル教科書を活用しております。発達障害に限定させていただいたのは,できるのであればいろいろな障害種のお子様方を対象にやりたかったのですが昨年度においてはコロナの状況もございまして,内部の事情ではございますが学校選定するのに結構苦労したという事情がございました。
今年度も同じような調査研究を実施しますのでその中で特別な配慮を必要とするお子様方を対象とした調査研究も行いたいと考えておりますので,引き続き今御指摘いただいた点も留意しながら進めていく所存でございます。
2点目の資料2の調査研究では,学習者用デジタル教科書の他に中野先生にも御協力いただいていますPDF版拡大教科書を使用させていただいております。デジタル教科書等のこの調査における定義上は,発行者による学習者用デジタル教科書とPDF版拡大図書を含むため,「等」と御説明をさせていただいておりました。
どのぐらいの割合で使用していたかという点は,報告書等をしっかりと拝見しなければいけない部分もございますので,追って個別に御連絡をさせていただければと思います。
【中野委員】 分かりました。ありがとうございました。以上です。
【堀田座長】 中野委員,ありがとうございました。ほかにございますか。よろしいですかね。
最近も新聞等で,デジタル教科書にかじを切っていいのか,紙の教科書のほうがいいのではないか,実証実験が必要だなどと指摘されていますが,私どもは文部科学省を中心にこの実証研究を複数年やってきているわけです。このたびも学習者用デジタル教科書を使っているお子さんたちにいろいろ聞いたり,先生たちに聞いたり,保護者に聞いたりといったものと,もう一つは特定の障害のあるお子さんたちにどうかということもウェブ調査も含めていろいろやってきているということで,こういうことを積み上げていくことが重要なのかなと思っております。御報告ありがとうございました。
では,議事に入りたいと思います。
議事は二つあるうちの一つ目,令和3年度に予算事業として引き続き実証を行うことになっておりますので,その進め方につきまして事務局より御報告をいただいて,委員の皆様から何かアドバイスをいただきたいと思っております。
資料3に沿って事務局から御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料3をお願いします。
資料3の2ページ目を先に御説明致します。以前もこの会議で御説明をさせていただきましたが,今年度実施させていただく学習者用デジタル教科書普及促進事業について,大枠を簡単に御説明させていただければと思います。
事業内容のところですが,大きく三つの事業がございまして,まず1つめが学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業でございます。内容といたしましては,1人1台端末などの環境が整っている小・中学校等を対象として,デジタル教科書を提供し,普及促進を図るということを考えております。
下の緑色の枠のところの二つ目ですが,基本的には小学校5・6年生及び中学校全学年の1教科分のデジタル教科書を提供させていただくための経費を計上しております。現在,事業を順次進めているところで,全国の4割から5割の学校を対象としておりまして,教科については多くの教科でやっていただきたいと考えておりまして,全ての教科で行われる形で自治体内の調整していただきつつ,学校が希望する教科をふまえて実施をさせていただくこととしております。現在17の教科書発行者に御協力いただきまして,順次学校現場にアカウントの提供が行われているところでございます。
二つ目の右上ですけれども,デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証事業につきましては,デジタル教科書を多くの子供たちが同時に利用する際のネットワーク環境を検証するものでございまして,どれぐらいの通信容量,通信速度が必要なのか,今年度から初めて取り組むデジタル教科書を活用した事業になります。クラウド配信が本格的に導入されるのが初めてなので今後何かしらの支障は出てくるかと思いますが,そのときの子供たちの端末の使い勝手はどうなのかといったところも含めて,検証をしていきたいと考えております。
本日,委員の先生方にアドバイスをいただきたいと考えておりますのが,3つめのデジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究でございます。1ページ目に戻っていただければと思いますが,目的といたしましては,デジタル教科書の使用による教育上の効果・影響等を把握・検証するための実証研究でございまして,本検討会議の中間まとめを踏まえつつ,今後の教科書制度の在り方の検討に資するよう,紙の教科書とデジタル教科書との関係や特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティ,そして健康面等への影響について調査研究を行うものでございます。また,学校の先生の指導力の向上に資するような事例集や研修動画を作成することを目的としております。
実証内容については,ICT機器を使用した授業の実績がある学校を約10校程度選定させていただきまして,デジタル教科書を使用した授業を行います。その実証の中で教員,児童生徒,保護者を対象としたアンケートやヒアリング,テストや評価等の分析を行うことを想定しております。研究の観点といたしましては,学習指導要領における資質・能力の三つの柱に関する効果・影響,発達段階ごとの効果・影響の相違,教科特性に応じたデジタル教科書の有効性,健康面等への影響や授業改善や教師の負担軽減を考えております。
また,全国規模のアンケート調査の実施及び分析に関しては,先ほど御説明差し上げました1つ目の事業で対象となっている多くの学校の児童生徒や学校の先生に対しても,デジタル教科書の使用状況や使用による効果・影響,初めてデジタル教科書を使用する際の課題に関してアンケートを行い,デジタル教科書の使用状況や教科,発達段階ごとにグルーピングした上で,結果について分析を行っていきたいと考えております。加えて事例集や研修動画の製作といったこと実施します。
当方からの御説明は以上になりますが,実証研究を進めていく上の観点や視点のみならず,アンケートに盛り込んだほうがいい内容や,実証研究を進める上で,気をつけたほうがいい点がございましたら,忌憚なくアドバイスや御意見をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。これが今日の審議事項の一つ目でございます。
先ほどから申し上げているように効果や影響についての実証研究というのはこれまでも少しずつ進んでいたところでございまして,先ほども昨年度の結果を御報告いただいたところですが,このたびGIGAスクール構想により端末が大規模に導入されたこともありますので,デジタル教科書を多くの学校で使っていただくことと同時に,使った感触を収集してそれを評価していこうということになります。
先ほど説明があった,資料2枚目では3つの内容を今年実証研究としてやりますが,1つめは約20億かける予定です。去年の予算規模が約2,000万だということを考えると,信じられない額がここに使われているわけです。ですから,ここはぜひ広く使っていただくと同時に,使ってどうだったかあるいは使えたかとか効果があるのはどこか,紙のほうがいいなと思ったのはどういうところかとかいろんなことを聞いてみたいということで,そこに御意見をいただきたいのが一つです。
あと2つ目のクラウド配信に関する事業は,これはこれで御意見いただいたらありがたいなと思いますし,3つ目の効果・影響の事業は,また10校選んでやりますので,今回踏み込んでここまで聞いたらどうかということの御意見等をいただければというところでございます。
これもフリーにお話しいただきたいと思います。御意見ある方は,時間の許す限りですけども,挙手いただいて,いろんな観点をできれば具体的にお示しいただければ,事務局としてはありがたいのかなと思います。
挙手を待つ間私からお話ししますけど,1つ目の実証のために,既に自治体に対して発行者がデジタル教科書を提供していると聞いていますが,教科書会社によってIDが違うとか,いろいろなことが起こっていて現場は少し困っているということを聞きます。
この認識がもし間違ってなければ,デジタル教科書を使う前の認証やインターフェース,利用の準備,利用の準備に対する子供の指導に関することも何かうまく質問項目に入れて聞ければいいのではないか。つまりデジタル教科書そのもののみではなく,デジタル教科書にまつわるいろんな授業準備等々があるといいのかなと思いました。
では,中野委員,お願いします。
【中野委員】 よろしくお願いします。特別支援の観点からなのですが,実証研究事業の3つの内容についていずれも特別な配慮を必要とする児童生徒を対象とされると思います。その際,視覚障害,発達障害,肢体不自由等の多様な障害の特性がありますので,その障害の特性による違いも考慮して実施していただきたいと思いますので,よろしくお願いします。
【堀田座長】 ありがとうございました。
柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 東海大学の柴田でございます。4月から所属が変更いたしました。
健康面に関するところで,特に3つ目の効果・影響の実証研究事業になると思いますが,これまでにこの会議の中間まとめやガイドラインなど幾つかの指針がある中で,目と端末の距離を30センチ以上離すということと, もう一つ,30分に1回は20秒以上目を休めるというところが重要だと考えております。
特にこれからの実証研究事業において,デジタル教科書あるいは端末を1回の学習活動にどのぐらいの時間使うのかということが分かる有益だと思います。恐らく30分連続して子供たちが端末を見続けるということは少ないのではないかと思います。実際に授業の中で,連続してデジタル機器を見る時間がどのぐらいの長さなのかということが分かると有益になろうかと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 ありがとうございます。ファイザーの宮原です。
実証研究かつ教育の現場なので,できるかどうか分からないのですが,二つほど申し上げたいと思います。
一つは,ある程度コントロール群と幾つか新しい取組をした群で分けて比較研究ができると,よりデジタル教科書あるいはデジタルツールがどのような形で使われるべきなのかということが分かるのではないかと思います。これは教育に差がつくことになりかねないので,難しいかもしれませんが,本来であればそういった形である程度サンプルをしっかりと分けて,オペレーションを分けて実証研究ができると,より説得力のある研究になるかなと思いました。特に1つ目の事業では,予算の関係があったとは記憶をしておりますが,デジタル教科書の予算が1学年分1教科という形で,ある程度制限されているので,実証研究をされる学校においては,教科をうまくばらけさせて使用してみると,コントロール群がなくてもある程度教科ごとの特性や学年ごとの特性が明確に見えるのではないかと思いました。
2点目は一部入っているので恐らく検証されるのではないかと思うのですが,教員がどう質を上げたかとか,準備の負担が減ったかということも大事のですが,教員がデジタル教科書に慣れるための時間がどのくらいかかったのか,準備のためにどのくらい紙の教科書に比べてかかったのかということについては,少し定量的に押さえたほうがよいと思います。その結果よってどんなサポートを具体的に行うべきかが見えてくるのと思うので,紙からデジタルになったからすぐ,即効率化するわけではなくて,多くの場合はデジタルツールが入っていくと,想定しない様々なトラブルが現場で起こって,意外と時間がかかってしまうということがあり得ますので,その辺りがしっかりと定量的に把握できると導入期にどんなサポートが要るかということについても,ある程度実証的な成果が得られるのではないかと思いました。
【堀田座長】 ありがとうございました。宮原委員の後半のお話はIDとパスワードとか,認証にどのぐらい時間がかかって何が混乱していたかというような,準備段階のいろんな負担をちゃんと測ったほうがいいだろうということでもあります。
前半の実験群,対称群に分けた分析は,学校現場,特に公教育では,文部科学省の研究ではかなり難しいかなと思いますが,できる範囲で比較できるような形で行うべきということと思っております。ありがとうございました。
森委員,お願いいたします。
【森委員】 日本図書教材協会の森と申します。
教材の観点から話をさせていただきます。デジタル教科書のメリットの一つとして,デジタル教材等の連携による有効性についていろいろなところで言われています。
しかし,この実証研究の観点の中に,デジタル教材等の活用についての観点が抜けているような印象があります。できれば,教科書と教材の行き来がどのぐらいあったのか、例えば、宿題を出すときは教材を使用すると思うのですが,この頻度がどの程度あったのかを把握するだけでも,連携の有効性を示唆できると思います。
また,今回は教科書発行者が製作するデジタル教科書が実証研究の対象になると思いますが,発行者以外が製作するデジタル教材との行き来があるのかどうかというところも一緒に把握すると,今後のデジタル教材の活用の観点から有効ではないかと思います。
あと1点,デジタル教科書を使った後の学習評価が必要な場合,学校教材で使われている「ワークテスト」を活用して,同じ単元でデジタル教科書を使った群と,従来の紙の教科書を使った群でその有効性を比較するということができるのではないかと考えています。
以上です。ありがとうございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。森委員がおっしゃったデジタル教材の観点で言えば,デジタル教科書を使うことになった対象校では,どういうデジタル教材を今まで使っていたのか,今年使っているかということを聞くだけでも,何と何が親和性がありそうかみたいなことを求めるのにはいいかもしれません。森委員は行き来とおっしゃっていましたけど,行き来というのはリンクとは限らないと思うので,使い分けも含めてかと思いました。ありがとうございました。
片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 宮崎県教育庁南部教育事務所の片山と申します。4月より所属が変わっていますので,よろしくお願いいたします。
資料3の2の実施内容の研究の観点の5点目,授業改善や教師の負担軽減に関して意見を述べたいと思います。
やはりデジタル教科書を使用して授業を進めていくということは,多くの先生方にとってはハードルの高いものであると私は考えております。実証研究を行われた学校の中で,導入期に大きなハードルに感じた先生方は多いと思いますし,それを乗り越えてきた経験があると思います。
ですので,デジタル教科書を使うことが,先生方にとってどのようなハードルがあるのかといったことや,そのハードルを越えた事例があるとすれば,どのような要因でそうなったのかということを明らかにしていけるとよいと思いますし,明らかになったことを基に,研修動画とか事例集,その辺りのことをまとめられると,より多くの先生方がデジタル教科書を使えるようになるのではないかなと考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山弘喜委員,質問なのですが,そこで言うハードルとそれを乗り越えるというのは,例えばどういうことですかね。事務局が質問集をつくるのにハードルはありましたかって聞いても,ありました,ありませんとか,何がハードルかというのはクロームブックだからとかiPadだからとかお金がないからとかデジタル教科書以外の回答を得ても困ると思うので,片山委員が想定されているものはどういうものかということを教えてください。
【片山(弘)委員】 先ほど堀田先生が言われたとおりで,もちろんIDとかパスワード,アカウント管理に関することもそうですし,実際の授業の中で言語活動として行う中で教科書を使うというときに,ふだん先生方は紙の教科書を使われていると思うのですが,それをデジタルに置き換えたときに同じことができるのか,そもそも紙のほうがやりやすいと言われる先生ももちろんいると思います。ただ,それをデジタル教科書でやるといったときに,どのようなことを経てそれが可能になるのかとか,そのようなことを,実際ICT機器を活用した授業の実績がある学校の先生方にお伺いできるといいのかなと考えているところです。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,加藤委員,お願いします。
【加藤委員】 東京学芸大学の加藤です。よろしくお願いします。
利用頻度が少ない場合と高い場合でかなり意見が変わるような気もしていますので,パラメーターとして,利用頻度をしっかり取っておいていただければと思います。先ほど特別な配慮を要する児童生徒を対象とした実証研究でも,機能が分からなかった,使われてなかったというものがあったと思います。ある機能を使わなかった,あることが分からなかった場合と,ちゃんと使ったときで意見はかなり変わると思いますので,パラメーターとして取ってもらえばなと思います。
また,実証事業の3つ目の規模と形態がちょっとよく分からないのですが,1つめの事業では大勢の児童生徒が1教科だけ使うわけですよね。おそらく2つ目のフィージビリティ事業は対象校が少ないと思いますが,全教科近くデジタル教科書を使うことになるので,先ほど1のほうはちゃんとアンケートを取るということを言われたのですが,2のところもうまく使えるといいのかなと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,齋藤委員,お願いいたします。
【齋藤委員】 齋藤です。よろしくお願いします。
特別な配慮が必要な子供と外国人の子供,日本語指導に困難がある子供について,日本語の習得状況は非常に加速度的に変化していくためその効果について考える際,日本語の習得の程度がどのぐらいの子供だとどういう効果があるのかとか,効果がどのような側面で出やすいのかということを,日本語のレベル別に検討するような観点も,3つめの検証の中で検討する視点が必要かなというのが1点です。
それからもう1点,日本語と子どもたちの母語の親和性が高い場合,その言語の種類によって文字で理解する力が相当に違う可能性が出てきます。中国語や韓国語とそうではない言語ではかなり違いますので,そのような点でその背景にある母語,あるいはその子供が母語でどのぐらいの力があるということとも併せて効果,あるいはその効果的な活用の方法,そして,デジタル教材との併用でデジタル教材としてどのようなものが有効なのかというところも実証の中で併せて検討していただけると,活用のときに教師にとって非常に有益な資料が得られるかなと思いました。
あともう1点,親御さんの言語の力というところで見ると,家庭での利用ということについてどの程度可能なのかということも併せて検討の対象に,実証の項目に入れていただけると,先生方が家庭学習の中での利用についても特別な配慮の子供,外国の子供の場合の有利点として意識できるかなと思いますので,そのような点を検討いただければと思います。
以上です。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
赤堀委員お願いいたします。
【赤堀委員】 赤堀でございます。よろしくお願いいたします。
2点になります。まず,教師側への質問事項になりますが,それぞれの実証検証校における先生方への質問事項として,それぞれの教科で,どのような場面でデジタル教科書を使った指導が有効と感じたか,例えば国語であれば読み書きなのか言語事項なのか深く考えさせる活動なのかといったようなことを確認できるといいなと思います。それぞれ教科によって有効な場面は様々かなと思っています。
また,関連するのですがもう1点,長ければ1年間使うと思うのですが,どのような単元で有効と感じたかという傾向を知っておきたいと思います。今後,本格的に全てがデジタルに変えられるのかということも含めて検討課題かなと思っています。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 御意見,ありがとうございました。今の意見は私も大変賛同するところでございます。紙かデジタルかってよく言われますけど,当然紙もデジタルも使うのが普通で,無償給与がどちらなのかというのは課題としてはあるにしても,教材としてのデジタルの特性,紙の特性がありますから,どういうときに紙,どういうときにデジタルのほうが有効かということを,先生たちの指導経験から拾っていくということは非常に貴重なことかと思います。ありがとうございました。
白鳥委員,お願いいたします。
【白鳥委員】 Lentranceの白鳥です。よろしくお願いいたします。
今回の学習者用デジタル教科書なのですが,クラウド環境から配信されていますので,学校の中でも学校外からでも利用できる状態だと思います。そのため,家庭での利用にどのような課題があるのかを実証できるとよいのかなと思いました。例えば学習者用端末を学校から持ち帰ったときでしたり,御自宅にある端末でアクセスして使ってみたときに,通信環境やシステムに問題があるのかということや,学校で利用しているときと同じように家庭でも使えるのかなどの実証ができるとよりよいと思いました。
【堀田座長】 ありがとうございました。見落としがちなところでした。
黒川委員,お願いします。
【黒川委員】 黒川でございます。
今日の資料3の効果・影響に関する実証事業に関して,資料1で報告された内容については,私も事業の委員ですので関わっておりました。今年度は10校程度というお話ですが,教科,学年の範囲を令和2年度とは異なる範囲に広げていただきたいというのが希望です。
特に,特別支援に関しましては,今回国語だけになっており,リーダビリティーという面からいうと国語に集中しがちですが,我々つくり手の側からすると様々な教科で実証すべきです。例えば英語では,特別支援としてどのように対応したらいいのかということを,実際に研究できていません。これをぜひ進めていただきたいと思っております。
それから,1つめの事業に関しましては対象範囲が広く,当事者なので発言しにくいところがございますが,堀田座長のお話のとおりログインの方法については,既に発行者も大変な思いをして対応しております。目標はまず完全供給ということがございますので,当面はこの導入トラブルの調査を行い,しっかり記録を残して,御報告をさせていただきたいと思います。そして,今は様々な方法でログインしていますが,シングルサインオンの方向性等も含めて,あるべき導入方法について資料提供しつつ議論できればと思っております。よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。黒川委員おっしゃったように,私は先ほどログインの大変さを現場目線でお話ししましたけど,資料には書いていない調査として文部科学省から発行者にいくと思いますが,事業者側がどういうふうにされていて,提供する側はこんなふうに大変だというのも現実問題としては把握する必要があると思っております。ありがとうございました。
続きまして,中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 よろしくお願いします。私もこの調査研究に関わってきた側なのでなかなか言いにくいところもあるのですが,R元年度,R2年度と調査研究を行いまして,R元年度のときには,対象が本時授業時間で,R2年度は,単元で実施しました。ですので,R3はもっと長いスパンでできるといいなということをまず思っています。
それから2点目は,令和2年度は協力をいただける学校が少なかったということがあるので,母数も少なかったわけですね。ですので,この母数を広げ多くの学校で調査できるということがポイントかと思っています。
R1,2年度でデータを取り切れていない点としては,授業方法の違いにより有効になるのかならないのかということが違ってくるので,その辺りをより取っていくことがまず一つ必要かなと思っています。
それから二つ目は,教師・児童生徒の慣れが大きく左右するということが分かってきています。ですから,どのぐらいの慣れの子供たち,どのぐらいの慣れの先生がどう使っているのかという関連をはっきりさせていくことがR3の課題になるかなと思っています。
ただ,このコロナ禍で,やはりかなり無理をして協力していただいたということがあるので,どこまでできるのかということも含めてR3の調査が行われるということは,我々共通理解しておかなくてはならないと思っています。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。継続的に関わっていただいておりますので,大変貴重な意見をいただいたと思います。ありがとうございました。
では,最後に東原委員,お願いいたします。
【東原座長代理】 信州大学の東原でございます。私は少し違った観点から二つぐらいお話しさせていただければと思います。
データの取り方に関することに絞ります。まず,アンケートについて,特に大規模アンケートのほうはなかなか大変だと思いますので,それを可能にするための案としまして,デジタル教科書を動かすプラットフォームの会社の方とかブラウザ,ビューアをつくっていらっしゃる会社の方に御協力いただいて,簡単にアンケート取れる,つまり学習者から直接授業の延長でアンケートが取れてしまうような仕組みを入れていただくと,大規模児童生徒を対象とするアンケートはよりやりやすくなるのではないかなと思うので,それは一度御検討していただけたらと思います。
ビューアに手を入れるのが無理だったらコンテンツとして何かボタンを押してアンケートを取れる形にすることもできるかもしれません。
二つ目も似たような話です。加藤先生から利用頻度のようなお話がございました。児童生徒や先生方が記録を取るという方法もありますが,ビューア等が記録を取る機能を持っているならば,全数でなく,何らかの制限の中でもいいので,ある時間帯はログを取る機能をオンにして,データをためて、どういう機能が使われるかサンプリングでもいいから調べられるといいと思うのです。
前から話題になっておりますように,ビューアのよく使われる機能については画面上のアイコンや記号を統一することが望ましく,標準的な機能を決める参考資料となるので,どのような機能がよく使われるのかのデータが取れるといいと思います。
もう一つ,ネットワークの負荷に関するログが必要だと思っています。どのぐらいのクラスでどのように使った場合に機能したのか否か,フューチャースクール,学びのイノベーションのときはデジタル教科書を動かすことは結構大変でした。今回は,全国くまなくいろんな市町村,学校でやっていただけるので,うまくいっているところといかないところでネットワーク系にどういう特徴があるかということが明らかになるといいのではないかと思いました。
私はいわゆるアンケートと違ったデータの取り方について意見を述べさせていただきました。
以上でございます。ありがとうございます。
【堀田座長】 大変ありがとうございました。
今いただいた意見を元に,私のほうでも3点お話ししようと思うのですが,1点目は皆さんから意見いただいた,質問を,ぜひ具体的な文章で事務局にお寄せいただくと実現可能性が少し高まるのではないかということです。
例えばこういうことについて聞いたほうがいいと言われたときに,文部科学省や,受託した事業者の人たちは,日々授業をやっているわけではないので,それをどう聞けばいいかが,分かりにくいということがありますので,ぜひ聞き方の具体をお示しいただければというお願いが1点目です。
2点目は東原先生が今言われましたログについてです。これを全てやる必要は負荷が高いので難しいですけども,教科書会社に,もしかしたら御協力いただきつつ,何らかの形で,このログから分かることを,調査の一部に入れてはどうかと思います。
三つ目,そう言いながも,この手の国の実証事業は予算にも限界があり,文部科学省が実施することの限界もあります。私もいろいろ今まで関わってきて,研究者としてはいろいろ知りたいことがあるのだけど,それは国の調査としては難しいということは当然存在します。
そのため,私達が知りたいことを文部科学省が全部やってくれるということはないので,そこは先生方にもぜひ御理解いただきまして,文部科学省が行う今回の実証で漏れた部分はむしろ研究者としてそれぞれの人がそれぞれの専門性でやっていただく。それぞれに実証する際の協力を文部科学省がするという形ならできるのかなと思いますので,御理解いただければと思うところです。たくさんの具体的な御意見をいただきまして,大変ありがとうございました。
事務局はこの件はいいですか。1点お願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。貴重な御意見ありがとうございました。例えば,健康面の観点から連続して画面を見る時間はどれぐらいだったのか,また,コントロール群,対称群,非対称群を設けるか,学校の先生方がデジタル教科書に慣れるための時間がどれぐらいかかったのか,それをもとにどうサポートしていけばいいのかを検討する,更に利用頻度をしっかり取る,実際デジタル教科書を使用するに当たってどのような場面,どのような単元で使用することが有効なのかというのは,当方でもとても重要な視点と捉えているところではございましたけれども,改めて御意見いただきまして,今後の調査設計において十分に参考にさせていただきたいと考えております。先ほど堀田座長がおっしゃったように,もし具体の文書でいただけるのであれば,事務局までお寄せいただきますと幸いでございます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
では,二つ目の議題にまいりたいと思います。私どものこの検討会議では,この夏の早い時期を見据え何らかの報告を世の中に向けて出すということになります。そのための中間まとめを先般出したところです。中間まとめの意味は,中間であるというのと同時に,それに対しての意見募集や関係団体へのヒアリングを行い,そこで何か強い意見,強い反発等がどのぐらいあるかということを調べるということでもあります。
これらのことについて,今日は議題の2番にしております。中間まとめに対する意見聴取を行った結果が出ておりまして,これを基に今後私どもの検討会でどういうことをやっていけばいいのかということにつなげていくために,御報告をいただければと思います。
では,事務局,お願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料4を御覧ください。
資料4は任意の意見募集ということで,広く国民の皆様から御意見の募集を行いまして,合計310件の御意見をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
資料2ページ目以降に,文部科学省の考え方も含めて記載しておりますが,この場ではこのような御意見をいただきましたということを御紹介させていただければと思います。
まず,一つ目,教科書無償給与制度はしっかりと堅持すべきであると。
二つ目,紙の教科書と学習者用デジタル教科書の関係については,デジタル教科書は,紙媒体の教科書に代わる学習用の教材として賛成であるだとか,デジタル教科書と紙の教科書のそれぞれの有用性を生かしながら併用することが望ましいであるとか,教科書は紙であるべきといった御意見をいただいたところでございます。
続きまして,三つ目,学習効果については,デジタル教科書によって学習効果が上がる科学的根拠がなく,デジタルよりも紙のほうが記憶に残りやすいという指摘もある。また,文章を深く読むことや書くことがおろそかになり,読解力の低下につながる可能性がある旨の指摘がありました。
四つ目ですけれども,デジタル教科書に関する更なる検証の重要性についてですが,デジタル教科書の導入に当たっては,その効果が十分に検証されていないことから拙速に進めるのではなく,十分な研究を行って効果を見極める必要があるといった御意見をいただきました。
五つ目,特別な配慮が必要な児童生徒への対応については,障害のある児童生徒や外国人児童生徒等を含め,全ての子供たちにとって豊かな学びが保障されなければならないだとか,ICT端末を使用することが難しい児童生徒への配慮が必要であるといった御意見をいただきました。
六つ目,健康面への影響に対する配慮については,視力や姿勢等への影響に加えまして,家庭での利用による睡眠への影響も懸念される。また,電磁波の影響や脳への影響も懸念され,慎重に議論をしていくべきとの見解があるといった御意見をいただきました。
次のページでございますけれども,七つ目,教員の負担増及び研修・授業研究の必要性については,ICT端末の導入に加えてデジタル教科書を本格的に導入するには,教員の負担が大きく,ICT支援員やGIGAスクールサポーター等の人的配置を実施・継続してほしいということ,研修の機会の充実を図り,活用事例等を広く現場に周知すべきであるといった御意見をいただきました。
5ページ目,環境整備や災害時の対応についてですが,学校と家庭でのICT環境整備や学校における通信環境の整備,家庭における通信環境の整備や通信料の補償を進める必要がある。また,端末の故障や紛失,データの破損等による補償が必要。さらに,デジタル機器は電気が必要で,災害等で停電が発生すれば継続的な利用が不可能であり,紙の教科書が必要であるといった御意見をいただきました。
九つ目,格差への配慮については,家庭環境や地域環境によって,教育を受ける機会に格差が生じないようにすべき旨の指摘がありました。
そして最後でございますが,情報セキュリティやデータの管理については,児童生徒の学習履歴等の教育データが第三者に悪用されないような仕組みづくりが不可欠であるといった御意見をいただいたところでございます。
続きまして,資料5でございますが,こちらは任意の意見募集と並行いたしまして,資料に記載させていただいております25の団体に対して書面のヒアリングを実施させていただきました。この場を借りまして御礼申し上げます。
資料が大部にわたるため,主立ったもののみについて御紹介させていただきます。
まず,2ページ目,デジタル教科書の活用についての全般的な意見から御紹介させていただければと思いますが,まず,冒頭ですけれども,Society5.0時代の進行に伴うICT教育の推進及び情報活用能力向上の見地から見て,紙の教科書に比べ,教科書としての自在な活用の可能性が一段と高くなる。また一人一人に合った学びへの支援や「主体的・対話的で深い学び」の推進を図る上で,協働学習のサポートやほかのデジタル教材と連携活用することで,相当な効果が期待できる。
また,二つ目ですけれども,デジタル教科書には効率の面を中心に優れた点があると思われ,今後,各学校で教師がよりよい授業を構築するためのツールが増えるという点で大きな期待をしている。
また,三つ目ですが,さきに示された中教審答申において,いわゆる二項対立の陥穽に陥らないことに留意すべきであると書かれているように,教科書や教材等についても,児童生徒一人一人の発達段階や,集団の特性等によって使い分けられることが重要であるといった御意見をいただいております。
二つ飛びまして,この点も大事な点でして,デジタル教科書に含まれるコンテンツが充実することが見通されますが,それらを活用した調査や観察・実験が増えることで,問題解決の見通しを持って調査や観察・実験の方法を考えたり試行錯誤しながら調査や観察・実験に取り組んだりする機会が減ることは避けたいといった御意見や,その下でございますけれども,ノートに書く,写す,まとめることのほか,ノートを見て振り返るなど,これまでノートは教科書と一体として授業で活用されてきておりますので,デジタル教科書の特性により,ノートが軽視されないよう,紙媒体の利点としての活用を図りたいといった御意見をいただきました。
次のページ,デジタル教科書の導入に当たって留意すべき点ですけれども,1点目から4点目は主に自治体間格差や学校間格差,家庭間格差に関する御意見でございまして,例えば,一つ目の2行目の終わりから,デジタル教科書の購入に関わる予算措置やネットワーク環境等の状況は,地区によって大きな差があるだとか,二つ目,自治体間の格差により公平な導入が行われなくなることのないような予算措置を図っていただきたい。
四つ目ですけれども,家庭での学習の際には,児童生徒の各家庭における通信環境の未整備や通信料金の負担の問題等が,児童生徒間で教育の格差を生じさせかねないといった御意見をいただいております。
その下,自分の行ったことを記録することも思考をまとめたり,記憶したりする上で大切である,特に低学年のうちに身につけたい能力の一つであり,デジタル教科書の扱い方は発達段階を十分に考慮して考えるべきであるといった御意見をいただいております。
次のページに移りまして,デジタル教科書に関する実証研究について,まず一つ目,効果検証の際には,その評価方法や観点を明確にすることが必要であると考えるが,予算や利便性等と併せて,児童生徒の学力向上にどのように効果があるかについても検証していただきたい。それは授業の一場面の効率で判断できるものではなく,いわゆる「知識・技能」,「思考力・判断力・表現力」,「学びに向かう力・人間性」の観点についての検証である。
一つ飛びまして,通常の学級に在籍する発達障害も含め特別な配慮を必要とする児童生徒に対して,デジタル教科書に求められる学習上の困難の軽減や学習内容の理解の促進に寄与できているかどうかも検証していただきたい。
二つ飛びまして,デジタル教科書の導入に当たっては,児童生徒の健康面,学力の定着への影響などについて,全国規模の実証研究を通じての検討が不可欠である。そして,これらの研究については,一定期間継続して検証することを要望したいといった御意見をいただきました。
続いてデジタル教科書に共通して求められる機能やデジタル教材等との連携につきまして,発行者毎のデジタル教科書や教材の機能及び規格の不統一によって,教職員や児童生徒の使用に不便が生じないよう,標準的機能や共通規格を整備すること。
最低限必要な標準的機能や共通の規格について一定のガイドライン等取りまとめるべきである。その一方で,このガイドラインが教科特性に応じた機能など,発行者の創意工夫の意欲を削ぐことのないようお願いしたい。
二つ目ですけども,異なる教科であってもビューアを含め,中間まとめに示されている機能のボタンデザイン,ボタンの位置などを国が統一するような仕様書を作成することが必要である。
三つ目ですけども,教材出版社がデジタル教科書と連携した多種多様なデジタル教材開発を積極的に進めていくためにも,また,学校においてデジタル教科書の複数の教科等で使用する上でも,教科書のビューアや教科書と教材が連携しやすい配信システムの統一が望ましい。
最後になりますけれども,デジタル教科書とデジタル教材等の効率的な連携についての実証においては,児童生徒の学びの充実に資することを第一義的に捉えて,デジタルとともに紙の教科書,または紙の教材との組合せも含めて進めていくことが必要である。
続いて,特別な配慮を必要とする児童生徒への対応について,デジタル教科書の作成に当たっては,デジタル教科書の操作方法が教科ごとに異なることは,特段障害のある児童生徒にとっては混乱の基になるため,一定の標準化を図ることが重要である。
二つ目ですけども,障害のある児童生徒の状況は多様であるため,多様な障害に応じたデジタル教科書等の活用に関する好事例を収集するとともに,教師の指導力向上に向け,好事例の発信や研修の機会の拡充をお願いしたい。
三つ目ですけれども,検定教科書と並行して文部科学省著作教科書や教科用特定図書のデジタル化を鋭意進めていただきたいといった御意見をいただきました。
次のページお願いいたします。健康面への配慮についてですが,一つ目,児童生徒の健康面への影響については,デジタル教科書の導入に当たって重要視する必要があるため,持ち運びに関するメリットや視覚等に及ぼす影響などの多様な面から検討するとともに,専門家の意見や最新の科学的知見から発達段階に応じた必要な対応策について具体的に明示していただきたい。
二つ目ですが,子供たちや保護者に対するメディアリテラシー教育や健康面等への影響に関する教育は日々最新情報がアップデートされるため,継続的に実施していく必要があるといった御意見をいただきました。
次に,教師の指導力向上の方策について,一つ目,1人1台タブレット端末環境でのデジタル教科書を効果的に使用できるスキルを身につけるために,研修の機会の設定や研修内容の充実が必要となってくる。
一つ飛びまして,教職員のデジタル教科書等を含むICT活用指導力に格差が生じないよう,指導力向上のための研修等の実施や活用事例の周知等支援を行うこと。
一つ飛びまして,研修等による指導力向上にとどまらず,ICT支援員の配置に係る人的・財政的措置の方策も合わせて進めていただきたい。
次のページの上から二つ目,教員に必要なのは単なるICT活用スキルだけではなく,子供たちの確かな学力向上につなげるために,場面に応じてあるシーンではデジタルを活用し,また別のシーンでは,観察や実験その他の教材教具を活用するなど,授業内容に応じて使い分けることのできる授業展開のスキルである。
そして,三つ飛びまして,教育実習において実習生自身がタブレットを使用し,デジタル教科書を問題なく活用できることが前提条件になると考えられる。教職課程で学ぶ学生が全てのデジタル教科書に等しくアクセスできるよう配慮していただきたい。
また,効果的なデジタル教科書の活用に関する研究について,教員養成系大学や学部及び附属学校が積極的に取り組むことができるよう,予算措置も含めた環境の整備をしていただきたいといった御意見をいただきました。
そして,7ページ下からの環境整備につきまして,環境整備などの面で家庭の理解・協力が不可欠である。子供の端末の準備がこれからの時代では,“文房具”の準備と等しいものであるという認識に立ち,デジタル教科書を従来の紙の教科書と同様に“当たり前のもの”として捉えられるよう,家庭の理解・協力を促していきたい。
8ページ目の上から三つ目について,クラウド配信のデジタル教科書の使用が同一時間帯に集中しても,使用に支障が生じないよう環境整備をするべきである。
一つ飛んでいただきまして,将来に向かってICT機器等の維持管理をしていくためには,国公私立学校を問わず,財政措置をはじめICT活用教育アドバイザーや支援員のきめ細かい配置などの方策が図られる必要がある。
一つ飛んで,児童生徒へのデジタル教科書アカウント付与については,学びの保障・充実及び家庭学習等における振り返りを考えると,単年の利用ではなく,長期的な利用を可能とする必要があると考える。
また,デジタル教科書が手元に前の学年のものが残らないことで,既習事項の振り返りに不便さが残る。デジタル教科書のライセンス期間等を検討し,数年間利用できるようにすることで有効活用が図れる。
二つ飛んでいただきまして,8ページ目の最後ですが,過年度のデジタル教科書の使用を目指すのであれば,掲載補償金制度の趣旨や教科書目的外使用にならないことに留意した上で,複数年にわたるクラウド配信費用をデジタル教科書のコストに適切に反映することで対応は可能になるのではないかと考える。
また,その次ですが,紙の教科書の納入業者である教科書取次店は,長年地域の教育を陰で支え続け,学校現場にとっては必要不可欠な存在である。これから教科書がデジタルになれば,取次店も淘汰される可能性がある。しかし,取次店によっては,デジタルが進んでいく中で,学校現場で起きている様々な問題や要望を先生方から吸い上げ,報告することも可能であると考えるといった御意見をいただきました。
続いて,デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討につきましては,デジタル教科書の定義を可能な限り明らかにするとともに,ふさわしい検定制度の在り方についても,今後,詳細に検討していただきたいといった御意見をいただきました。
そして,紙の教科書とデジタル教科書の関係については,紙の教科書とデジタル教科書の併用を基本として検討を進めていただきたい,紙とデジタルはそれぞれの特性や長所・短所があることを踏まえ,基本的には義務教育段階の全ての学年で両方使用できる環境を整備していただきたいといった御意見がございます。
10ページ目に移りまして,上から二つ目ですが,特に小学校低学年は,バーチャルな体験よりも様々な実体験を大切にすべき時期であることから,主たる教材は紙の教科書とし,デジタル教科書は補助的な位置づけとするなどの配慮が必要と考える。一方,中学生はデジタル教科書を効果的に使うことで学習効果を高めることにつながると見込まれるため,将来的にはデジタル教科書を主たる教材とし,紙の教科書は補助的な役割とすることも考えられる。
一つ目飛んでいただきまして,紙とデジタルのそれぞれの良さを生かし,バランスの取れた学校教育を実現するため,紙の教科書を主たる教材とし,デジタルは補助的な教材として活用することを提案する。また,紙の教科書を読むことは読書体験の元になる。紙の本の手触りや重み,ページをめくる高揚感や記憶に残るページの挿絵など,紙の本ならでの楽しみがあるといった御意見をいただきました。
その下ですが,今後さらに高度化する情報化社会を見据え,公教育で用いる教科書について,デジタル化を推進していくことは必要であり,デジタル教科書を主たる教材とし,紙の教科書とのバランスも図りながら導入していくことが望ましいといった御意見や,導入に当たっては全ての教科等において,デジタル教科書を主たる教材として使用し,必要に応じて,紙の教科書を使用できるようにすることが望ましいといった御意見をいただきました。
11ページの四つ目,この項目の最後ですが,教科や単元によって紙とデジタルの併用が効果的な場合,いずれかを使用したほうが効果的な場合が異なる。そのため,令和3年度のデジタル教科書実証事業の結果等を考察し,今回の中間まとめで示されたように,どのような組合せが効果的なのかを検討していく必要があるといった御意見をいただきました。
最後の教科書無償給与については,一つ目,紙の教科書もデジタル教科書もどちらも必要であり,デジタルか紙かの二者択一ではなく,子供たちの実態や学習内容によって,併用して使用することが効果的であると考える。どちらか一方を無償とするのではなく,両者とも無償措置の対象とするよう検討いただきたい。
一つ飛びまして,デジタル教科書も紙の教科書と同様国庫負担による無償給与とすること。仮に市町村の財政負担によるとなれば,その負担に耐えられない自治体が出ることも十分予想され,自治体間格差を引き起こす可能性が大きい。
最後のページの二つ目ですが,義務教育段階において,デジタル教科書を主たる教材として位置づけるのであれば,子供たちが平等に学習できるよう無償給与となるよう財源措置を行っていただきたい。
最後が,教科書無償措置等の詳細については,各自治体や学校の実践状況等を参考にして決定する必要があるといった御意見をいただいたところでございます。
資料4と5の御説明は以上となります。
【堀田座長】 ありがとうございました。たくさんの意見が寄せられたことはお分かりいただけたと思います。
私どもが出した中間まとめに対するたくさんの方の御意見が寄せられたことは大変望ましいことかと思います。一方で,寄せられた意見がデジタル教科書そのものの話もあれば,あるいはそもそも1人1台のGIGA端末をどうするか,ネット回線に関するようなデジタル教科書に関係があるが直接的ではない話など,この検討会議で解決すべき守備範囲を超えているものも多数ございます。その中でもデジタル教科書に興味を持っていただいて,多くの人にその周辺事項も含めて懸念材料をお示しいただいたというのは非常に望ましいことかと思います。
特にデータの連携,利活用についての御意見がたくさんございますので,この辺りは別の検討会議でしっかりと進めていただくということになろうかと思います。
いただいた御意見について,今後私どもがどのように検討を進めていけばいいかということについての案を資料6として事務局にまとめていただいております。それを御提案いただいた上で,委員の皆様にいろいろと御意見をいただければと思います。
では,事務局,お願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料6を御覧いただければと思います。
中間まとめを3月に公表させていただきまして,夏頃までに報告書としてまとめさせていただき,その後,デジタル教科書の本格的な導入に向けた課題を検討するために,今後さらに検討を要する事項についての案を,資料6という形で提示させていただいております。
デジタル教科書に関する技術的な課題について,2月の会議において既に申し上げましたとおり,今年の夏以降,ワーキンググループを開催していきたいと考えております。このワーキンググループで専門的に検討することが必要な事項として,例えば以下に挙げる点が考えられるかどうかということで,皆様から御意見をいただきたいと思っております。
3点ございまして,デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等,デジタル教科書の供給をクラウド配信により行う場合,一時的にオフラインでも使用できるようにするための仕組み,過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策(ライセンスの期間や費用の在り方等)についてでございます。
これらの点について御意見をいただければと思いますが,「なお」として書かせていただいた点,デジタル教科書やデジタル教材の連携に資する「学習eポータル」等のシステムと連携するために,デジタル教科書に共通に備えるべき規格や,デジタル教科書における学習指導要領コード等の付帯情報(メタデータ)の付与の在り方や,デジタル教科書の使用に伴う学習や操作の履歴等の記録の方法や保存場所の在り方については,デジタル教科書の普及促進の観点から視野に入れることは重要ではございますが,その在り方については,デジタル教科書の議論に閉じる話ではなく,教育データ利活用をはじめとする分野の検討状況を踏まえる必要があると考えております。

事務局からの説明は以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。一応整理しておくと,この資料4や資料5で出てきたたくさんの意見を集約して,それを夏頃出る報告書に掲載します。また,令和3年度予算でついている実証研究をしっかりと行うというのも先ほどの審議のとおりです。
一方で,技術的な課題をそろそろ整理したほうが良いという御意見は2月から出ておりますし,それに関する意見を資料4,資料5でもいただいていますので,これについてワーキングをつくって専門的に検討すべきではないか。その際に検討すべき課題はこういうことがあるのではないかという提案をいただきました。
そこで上の三つがこの会議体としては一番優先すべきで,下の二つはほかの会議体とうまく連携し,全体の動向を見ながら,私たちが主体的に決めるのではなく横目で見ながら検討していくということかと思います。
これらについて,御意見あればいただきたいというのが最後の議題ということになります。挙手をいただきまして,お時間許す限り御指名してまいりたいと思いますが,いかがでしょうか。
中野委員,お願いします。
【中野委員】 慶應の中野です。
デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等について,ワーキンググループを設置することに関して大賛成です。その際にもう想定されているとは思いますが,特別な配慮を必要とする児童生徒のアクセシビリティ,ユーザビリティの観点を必ず入れていただきたいと思います。
また,障害特性に基づいた検討も必要なので,外部の専門家も必要に応じて入れていただけるようにお願いします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
特になければ検討内容はこれで確定し,ワーキングの委員を御指名して,報告書の後になりますけど,検討を進めるということになります。どういう方を含めるべきかの確定のためにも,議論すべき点を先に明らかにしておくほうがよかろうというのがこの議題でございますので,御協力をお願いします。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 黒川でございます。資料6について,そもそもの前提になりますが,技術的な課題を検討していきますと,学校の端末やネットワーク,セキュリティーポリシー,アカウント管理など,本検討会議で検討していること以外にも関連していくことが大変多いと思います。
本検討会議だけでなく,文部科学省の各組織において行われているGIGAスクール構想による整備や教育データの標準化に関する検討も含め,横断的に連携して検討する必要があると思われます。
具体的にどういう形がいいのかという点は,今は申し上げにくいのですが,単独の検討では限定的な効果にとどまることを意識する必要があると思います。また,技術的な課題の解決には時間や費用がかかるため,全体の技術的な課題に対しては,令和6年までと,さらにその次の改訂期までに対応すべき課題の優先度を明確化しながら,横断的・総合的に検討する流れをまず設定する必要があるのではないかと思います。
個別の三つの点ですが,一つ目の「標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等」は当然必要であることは重々承知しているのですが,何度も申し上げていますように,今回できたばかりのデジタル教科書については,教科による教科特性等も踏まえて,実証事業等の調査を通して検討を行うこと大前提になるので,理論上だけで決定するのは危険ではないかと思います。
また,学習上使用する最低限必要な機能や操作性等については,手前みそながら,平成30年4月に教科書協会でガイドラインを作成しておりまして,現在それらの更新を夏頃までに行うという予定でおります。
そして操作性に関しては,デジタル教科書以外に,プレゼンソフトや授業支援システムなどの様々なソフトを教師も児童生徒も使いこなす中で,デジタル教科書だけの操作性をどこまでそろえていくことが妥当なのかということも,実証事業での検証を待ちたいと思います。
ただ,先ほども出た導入のログイン方法,アカウント管理,シングルサインオン等の問題,学校や教育委員会での設定方法などをそろえるという点のニーズや優先度というのは,これにも増してより高いと思いますので,その検討をぜひ進めていただきたいと考えます。
二つ目,「オフラインでも使用できるようにするための仕組み」に関しては,GIGAスクール構想のクラウド・バイ・デフォルトの考え方があり,その環境の中でデジタル教科書を使用する以上,デジタル教科書のみが例外というわけではなく,ネットワークの不調の心配があるとすれば,GIGAスクール構想の整備の大きな桁での課題解決を検討することが必要ではないかと思います。
最後の過年度の使用については著作権の問題が大きく関わってまいります。技術的なことよりも,教科書の目的外使用にならない期間がいつまでなのか。教科書の掲載補償金で使用してよい期間がいつまでなのか。いつまでデジタル教科書を児童生徒に使わせたいのか。そうした要件を明確にすることが優先ではないかと感じます。
以上とさせていただきます。
【堀田座長】 ありがとうございました。ほかにある方は挙手をお願いします。
河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 柏市教育委員会の河嶌でございます。過年度のデジタル教科書の使用はぜひ検討願いたいと思います。
ライセンスを1年ごとで更新していくという方法でいきますと,やはり自治体の負担が物すごい大きな部分がありますので,費用の在り方等について,検討方よろしくお願いいたします。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
中川委員,お願いします。
【中川委員】 内容的には異論ないのですが,今回技術的な課題として検討するものの結局どう使われるかということと切って切り離せないことだと思います。特に一つ目と二つ目の問題というのは,どう使われるかということ連携する必要があるので,先ほどの調査研究等との連携も視野に入れて進めていただければなと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
では,最後に私のほうで一言だけ申し上げますが,先ほど黒川委員がおっしゃったことが非常に重たい話だと思っております。そもそもこの会議は,デジタル教科書の今後の在り方の検討会議ですが,現段階では在り方まで十分に検討できてないなと私は思います。なぜ検討できてないかというと,これからGIGAの端末がどう使われるのかや,実証実験がどうなるのか,実際の供給側はどれぐらいできるのか,クラウドで配信どこまでいけるのかというようなことがまだ十分に検証できてないので,在り方まで述べることができないというのが現実かと思います。
一方で,技術的にはクリアされている課題も,それぞれの場面であるため,それらについて整理しておくことは,今私たちがしておかないといけないことかなとも思います。
そのため,専門的なワーキンググループをつくって検討しようとしておりますが,御指摘のとおり,ここで決めたことがある意味研究的な理想だとしても,発行者が対応できるかという観点では,現実的に予算やヒューマンリソース等のいろいろな課題がありますし,そもそも制度上どこまで担保されるのか,予算的にどこまで担保されるのか等,大げさに言うと文部科学省のビジョンとの関係があるかと思います。
ただし検討を先送りすればするほど様々な事業者がいろいろなことをやるので,統一できなくなることがきっといろいろ出てくるだろうという点のあんばいが非常に難しく,早くやらなければならないことと,やってみながら決めなければいけないこととそれの連続で今決まるのかなと思います。
そのため,ほかの会議体でも検討しながら,そろそろデジタル教科書の形式あるいはメリットを十分に保障するためのデータの利活用の仕方,そのためのデータの形式の標準化,それに対して,文部科学省が考えるこれからの学校教育のあるべき姿,あるいは教科書制度・検定も含めて,にわかには決められないし,このワーキングで決めることでもないのですが,大きな絵をきちんと見据えながら,小さなことを丁寧に決めていくしかないと私は思っております。
この点は座長としても,どうしたらいいのかといつも悩みながら行っている部分でもありますので,私としても,事務局と丁寧に議論しながら,どこまで今の段階でやるべきかということを検討してまいりたいと思いますが,ぜひワーキングでは,今分かっていること等を整理するという形でまずは進めさせていただいて,一方で,ワーキングで決め切れない多様なことをしっかりと洗い出して,それについては今黒川委員もおっしゃったように,実際に発行している側の現実とうまく突き合わせながら,検討を進めていくということをやっていきたいと思います。
一方で,例えばデジタル庁ができたり,規制改革が起きたりすると,私たちが想像している以上のスピードで様々なことが進むということもあり得ますので,私たちとしては,それにもどうやって備えておくかということは考えておく必要があるかと思います。
現場は今まだGIGAの端末が来たばかりで,デジタル教科書を使ってみるぐらいの現実ですけども,使用頻度が上がれば,最初は課題だと思っていたことは何でもなくなるということは幾つも見られます。だから,例えば1年後どこまでのことが課題なのかと考えると,それは実は杞憂の部分もいろいろあるかと思います。
一方で,1年使ってみると,やっぱりここがボトルネックだというのがはっきりするということもあると思いますので令和3年度中にどこまでのことが決められるかは分からないのですが,このワーキングで一応議論していただくということと,先ほど中川委員もおっしゃったように継続的にいろんな実証をしていくということ,事業者と対話していくということを含めて,令和3年度に進めてまいりたいと思っているところです。
長々とお話して大変恐縮でございますが,今日の議題はここまでとさせていただきまして,次回以降のスケジュールにつきまして,事務局よりお願いできればと思います。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料7を御覧ください。
次回は5月27日木曜日の14時から16時報告に向けた審議について,を議題として,ウェブでの開催を想定しております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。最後多少大きな話になった部分もありますので,もし言いそびれたこと等ありましたら,また,いつものようにメールで事務局にお寄せいただければと思います。次回5月27日にまたお会いしたいと思います。
本日はここまでとさせていただきます。皆さん,今日もありがとうございました。

―― 了 ――

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