デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第9回)議事録

1.日時

令和3年2月22日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 中間まとめに向けた審議について
  2. その他

4.出席者

委員

青山委員、赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、河嶌委員、黒川委員、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員

文部科学省

瀧本初等中等教育局長、塩見大臣官房審議官、桐生学びの先端技術活用推進室長、佐藤学びの先端技術活用推進室室長補佐、中川初等中等教育局視学委員、木南文化庁著作権課著作物流通推進室室長補佐、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、度會教科書課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第9回)

令和3年2月22日



【堀田座長】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第9回会議を開催させていただきます。
本日も御出席いただきまして,誠にありがとうございます。今回も新型コロナウイルスの感染状況を踏まえまして,ウェブ会議方式としております。本日は私もオンラインで参加しておりますので,委員の先生方の御発言等の際には事務局より指名させていただきます。
本日の議題は2件ございます。一つ目は,前回も御議論いただいた「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」の改訂案について,もう一つは,年度内に取りまとめることとなっております本検討会議の中間まとめについてです。とりわけ後者については多くの御意見をいただければと思います。
それでは,事務局より資料確認をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。議事次第を御覧ください。本日の資料は,資料1と2から構成されております。不足等ございましたら事務局まで御連絡いただけますと幸いです。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございます。
それでは,議事に入ります。まず,ガイドラインの改訂案につきまして,資料1に基づき,事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1を御覧ください。前回に引き続き,ガイドラインの改訂案でございます。今回の資料は,前回,既定のガイドラインからの修正点を赤字でお示ししたものを溶け込ませた上で,前回お示ししたものからの修正点が分かるよう,赤字で示した資料になります。
主要な修正点について御説明いたします。
まず7ページを御覧ください。著作権法関係の記載についてです。前回の会議において,学習者用デジタル教科書に係る掲載補償金制度や,授業目的公衆送信補償金制度について,誤解のないよう分かりやすく記載すべきという御意見をいただき,委員の先生方からの文案の御提案を踏まえ,著作権の担当課とも調整の上,改訂案を作成いたしました。
学習者用デジタル教科書の制度化に当たり,著作権法の一部が改正され,「学習者用デジタル教科書掲載補償金制度」が創設されました。本制度では,紙の教科書に掲載された著作物について,学習者用デジタル教科書の発行者による補償金の支払いを条件に,学習者用デジタル教科書への掲載とともに,その供給や学校現場での使用に伴った公衆送信などの掲載後の利用行為を可能としております。
そして,掲載時において教科書発行者から権利者に対して,掲載後の利用行為の対価を含む補償金が一括して支払われる仕組みであるため,学校現場での使用に伴った学習者用デジタル教科書の公衆送信について,改めて学習者用デジタル教科書掲載補償金を支払うことは不要であり,後述いたします「授業目的公衆送信補償金」の支払いも不要となっております。
一方,本制度はあくまで学習者用デジタル教科書をその本来の目的で使用することに伴った著作物の利用を認めるものであり,例えば,学習者用デジタル教科書に掲載された一部の作品や写真等を抜粋して,別途教材を作成したり,その教材を学習者に向けて配信したりするなど,「学習者用デジタル教科書の使用」とは言えないような場合や,学習者用デジタル教科書と一体的に使用されているデジタル教材,指導者用デジタル教科書,紙の教科書をスキャンした電子媒体を授業目的で公衆送信する場合には,本制度は適用されません。
なお,授業の過程における著作物一般の公衆送信による利用については,著作権法において「授業目的公衆送信補償金制度」が規定されております。「学習者用デジタル教科書掲載補償金制度」が適用される公衆送信を除く,学校等の事業の過程における著作物の公衆送信については,教育機関の設置者が文化庁長官の指定管理団体に補償金を支払うことで,原則として,教育の現場において個別の許諾を要することなく,授業の過程において必要な限度で,様々な著作物をより円滑に利用することができることとなっております。
なお,例えば,著作物の利用が授業の過程において必要な限度を超える場合や著作権者の利益を不当に害することとなる場合など「授業目的公衆送信補償金制度」が適用されない場合においては,個別に権利者の許諾を得る必要がございます。
続いて,10ページ上段を御覧ください。前回の会議におきまして,「一体的に」という言葉が,教科書発行者が製作している,デジタル教科書と一体になったデジタル教材を指しているように読めてしまうため,整理する必要があるのではないかという御意見をいただいたところでございます。
そのため,広く誤解なく読めるよう,「組み合わせて」という文言に修正しております。本ガイドライン上に出てまいりますその他の同旨の文言についても,全て同じように修正をさせていただいております。
続いて13ページの下段の「コ」を御覧ください。前回御意見いただいた御意見を踏まえ,「学習者用デジタル教科書は,障害のある教師にとってもアクセシブルであるため,他の学習者用デジタル教材や教科用特定図書等と組み合わせて使用することにより,より多くの時間を児童生徒への指導や授業研究の充実に費やす」と追記させていただいております。
主要な修正点は以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。委員の皆様から,前回の会議でいただいた御意見を踏まえ,修正いただいております。
これにつきまして,皆様より御意見をいただければと思います。
【事務局】 柴田委員,お願いします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。15ページの(3)①「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」に係る記載についてです。表現の話になりますが,末尾に「これを参考にすることが考えられること」とありますところ,この点に関しては,私だけでなく,本検討会議でヒアリングを行った専門家の先生方も参考とすべきである旨おっしゃっていましたので,「参考にすること」としてよいのではないかと思います。
もう1点,続く④の最後の一文にあります「目の疲労を感じたら目を休める,遠くを見る等の行為がとれるようになるように」というところについても,「なるように」という文言はなくとも文意は適切に伝わるのではないかと思います。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。森委員,よろしくお願いします。
【森委員】 日本図書教材協会の森です。「一体的」というところを「組み合わせて」に書き換えていただき,ありがとうございます。こちらの表現で異論はございません。それぞれが独立しているということも伝わりますし,組み合わせることによる一体的な活用を想起させることにもなるのではないかという点で,とてもよい表現であると思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。前回いただいた多くの御意見を反映していただきました。このガイドラインは,もともとデジタル教科書を様々な留意点に気をつけながら使っていただくという趣旨のガイドラインでございます。既に利用されているガイドラインではありますが,以前の会議で作成されて以来,著作権関係の動きがあったことや,GIGAスクール構想で端末が子供たちに行き届くことによって,学習者用デジタル教科書の急速な普及が見込まれることも考え,あらかじめ本検討会議においてガイドラインを見直しているところでございます。
本日は他に委員の皆様から御意見等ないようですので先に進ませていただきますが,今後御意見等ございましたら,事務局にメールでお寄せいただければと思います。
では,続きまして,二つ目の議題である中間まとめ(案)につきまして,事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料2を御覧ください。前回お示しさせていただきました中間まとめの骨子案に基づき,これまでの会議で先生方からいただいた御意見を踏まえ,中間まとめ(案)を作成させていただきました。
資料は,「1.デジタル教科書をめぐる現状」,「2.デジタル教科書導入の意義」,「3.デジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取組」の三つの項目で構成されております。「1.デジタル教科書をめぐる現状」につきましては,前回から大きく変わらないため,2ページの「2.デジタル教科書導入の意義」から御説明させていただきます。
前回の会議における,「この項目に総論的な内容を記載してはどうか」という御意見を踏まえ,これから申し上げます内容を記載しております。
「人工知能(AI),ビッグデータ,Internet of Things(IoT),ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられたSociety5.0時代が到来しつつあり,社会の在り方そのものがこれまでとは『非連続』と言えるほど劇的に変わる状況が生じつつある。
さらに,新型コロナウイルス感染症の感染拡大は,世の中全体のデジタル化,オンライン化を進める契機となり,社会全体のデジタルトランスフォーメーションが急激に進んでいる。これからの社会において,ICTを自在に使いこなす能力は必須のものである。
同時に,令和3年1月の中央教育審議会答申においても述べられているとおり,ICTは学校において「個別最適な学び」と「協働的な学び」を充実し,誰一人取り残すことなく,全ての子供たちの可能性を引き出す教育を実現するために不可欠のものである。
GIGAスクール構想により整備される1人1台端末において,デジタル教科書を効果的に活用した教育を進めることは,児童生徒の「個別最適な学び」と「協働的な学び」を充実させ,新学習指導要領の目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に資するものと考えられる。」
その後,デジタル教科書ならではの特性として期待される点として,前回お示しした骨子案と同様,メリットを記載させていただいております。
4ページの一番下に記載の点については,前回と同様ではございますが,重要な点ですので,改めて申し上げます。
GIGAスクール構想の実現を通じ,本格的に1人1台端末環境が整備される中,これからの学校教育を支える基盤的なツールとして,ICTを最大限に活用しつつ,児童生徒の学習環境をよりよいものに改善し,学校教育の質を高めていくためには,各学校におけるデジタル教科書の活用を一層推進する必要がございます。今後,次の小学校用教科書の改訂時期である令和6年度を,デジタル教科書を本格的に導入する最初の契機として捉え,この後の項目で御説明させていただくような視点から着実な取組を進めるべきであると考えます。
その際,現行の紙の教科書は,児童生徒に必要な基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するための各教科等の主たる教材として,長年にわたり学校教育の基盤を支え,使用されてきたこと,また,例えば,一覧性に優れている等の特性があることや,書籍に慣れ親しませる役割を果たしていることなども踏まえ,今後の教科書制度の在り方について,デジタル教科書と紙の教科書の関係や,検定などの制度面も含め,十分な検討を行う必要がございます。
続いて,「3.デジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取組」について,前回お示しした骨子案から変わらず,(1)と(2)と分かれております。まず,「(1)全国規模での実証的な研究を通じたデジタル教科書の改善や効果的な活用の検討」について,5ページ中段以降の「デジタル教科書に共通して求められる機能」の1点目の4行目からですが,今後,学校においてデジタル教科書を複数の教科等で使用するようになれば機能等が共通していることがより重要になると考えられ,異なるビューアを使用している場合であっても,児童生徒や教師が使用しやすい標準的な規格や機能等が備えられていることが求められます。
その下から6ページにかけて,デジタル教科書の機能を例示しておりますが,その後に,「標準的に備えることが望ましい最低限の機能や共通に備えるべき規格について,実証研究も踏まえ,ユニバーサルデザイン仕様の観点や技術の発展も考慮しつつ専門的に検討し,教科書発行者の製作を支援するためにも一定のガイドライン等を取りまとめることが望ましい」と記載しております。
続いて,「デジタル教材等との連携の在り方」について,全ての児童生徒が学習すべき学習指導要領の内容で適切に構成されたデジタル教科書と,教科書の内容をより深めたり広げたりするためのデジタル教材を組み合わせた活用は,児童生徒の学びの充実に資すると考えられます。
なお,デジタル教材の活用に当たっても,平成27年に文科省から発出しております「学校における補助教材の適切な取扱いについて」も踏まえた適正な取扱いが求められるところです。
デジタル教科書を利用する大きなメリットの一つが,デジタル教科書を起点としつつ広くデジタル教材等との連携を行い,学びの充実を図るための様々な授業の展開が可能になることでございます。
今後,従来の教材のノウハウを生かした教材や,デジタルの良さを生かした新しい教材など,多様なデジタル教材が,広くかつ容易にデジタル教科書と連携した形で活用されるようになることが期待されます。
これまでのデジタル教科書とデジタル教材との連携の現状といたしましては,教科書発行者がデジタル教材部分を製作し,デジタル教科書と一体的に販売しているケースがほとんどでございますが,今後はより多様な製作主体によるデジタル教材との連携が進むことが考えられます。
このため,学習指導要領のコード付与による連携のほか,学習eポータルを含め,連携が望まれるシステム間の共通規格の整備が必要になると考えられるところでございます。
デジタル教科書とデジタル教材等の効率的な連携について,学習履歴等の教育データの利活用の観点も含め,実証も進めながら総合的な検討を行う必要があります。
続きまして,「障害のある児童生徒や外国人児童生徒等への対応」についてです。まず,障害のある児童生徒に対する配慮といたしまして,アクセシビリティやユーザビリティが確保されていれば,紙の教科書へのアクセスが困難であった障害のある児童生徒が教科書へアクセスできるようになると考えられます。
そのため,ユーザーインターフェースや障害のある児童生徒にニーズのある機能の一定の標準化が行われることが望ましいと考えられ,将来的にはユニバーサルデザイン仕様になることが期待されるところです。
続いて,教科用特定図書等との関係ですけれども,児童生徒の個々の障害の程度や特性,学習ニーズにより,デジタル教科書では対応できない部分については,教科用特定図書等に対しても引き続きニーズが見込まれます。
特に,点字教科書については,現在の点字ディスプレイでは図形等を表示することができず,点字教科書をデジタル化することは現時点での技術では難しいことから,今後も製作することが不可欠であると考えられます。
続いて,外国人児童生徒等に対する配慮といたしまして,外国人児童生徒等は,個人の置かれた環境や日本での滞在歴等により抱える困難が異なる上,在籍学級での授業や取出し指導など,学ぶ場所も多様であるため,状況に応じたデジタル教科書の活用が望ましいと考えられます。
滞在歴が長くなれば,日本語能力が伸びていき,教科等についての知識及び技能も日本語を介して習得し,活用することができるようになってまいります。それに伴い,児童生徒の学習参加の状況も変わってくるため,その様子をしっかり見取り,その状況に合った形でデジタル教科書やデジタル教材の機能をうまく活用していくことが求められます。
次に9ページの「児童生徒の健康面への配慮」を御覧ください。12月に本検討会議で取りまとめいただきました「学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準の見直しについて」におきまして,デジタル教科書を使用する際の健康に関する留意事項や,それを踏まえ必要となる対応方策について,専門家の御意見等を踏まえて示させていただいており,授業や家庭においてこれらに配慮すべきことについて周知・徹底を図るなど,必要な対応方策を講じていく必要がございます。
続いて,「教師の指導力向上の方策」について,デジタル教科書のメリットを最大限発揮するためには,教師のデジタル教科書を含むICT活用指導力の向上を図ることが必要不可欠であります。
そのためには,国においても,好事例の収集,発信などの支援や,デジタル教科書を含むICTを効果的に活用するための指導事例等の教師向けオンライン研修プログラムの作成を行うことが重要です。さらに,大学の教職課程におきましても,カリキュラムの充実や,学生がデジタル教科書を活用したり体験したりする機会の確保が望まれます。
指導に当たっては,例えば,書き込みや消去などデジタル教科書の機能を生かし試行錯誤を行う活動を取り入れたり,試行錯誤を通じて得られた考えを紙に書き込み整理させることで確かな理解につなげたりするなど,紙とデジタルを適切に組み合わせた指導や,観察・実験等の実際の体験を伴う活動と組み合わせた指導の重要性にも留意する必要がございます。
また,障害のある児童生徒がデジタル教科書の特別支援機能を効果的に利用するための指導ができるようにする観点からも,教師の指導力の向上を図る必要がございます。
続いて,「デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保」について,デジタル教科書を広く学校現場に導入するに当たり,情報セキュリティの確保等の課題を解決した上で,パブリッククラウド方式による配信を行うことが考えられます。このためには,安定的な運用体制を確立することが求められるところ,来年度文科省で実施いたしますデジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証事業も活用しつつ,十分に検討すべきであると考えます。
また,デジタル教科書の学校における活用が進むことによって,今後,家庭における学習での使用も進むことが考えられ,それに伴い,通信環境のない家庭への環境整備への配慮が必要となってまいります。
GIGAスクール構想においては,児童生徒1人1台端末環境の整備を目指し,家庭への持ち帰りも含めて活用できる環境の整備を図ることとしておりまして,その取組が着実に進むことが望まれます。
また,デジタル教科書の供給をクラウド配信により行う場合,紙の教科書と異なり,教科書が手元に常に残るわけではないという課題がございます。このため,オフラインでも使用できるようにするための仕組みの検討や,過年度の教科書を使用できるようにするための観点から,デジタル教科書のライセンス期間の在り方について検討することが求められます。
次に,「(2)今後の教科書制度の在り方についての検討」についてです。まず,「デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討」について,デジタル教科書であっても,その内容の正確性・適切性を確保するための検定制度が必要であることは紙の教科書と変わりはございませんが,現状と同様に,デジタル教科書の内容は,検定を経た紙の教科書の内容と同一であることとされるのであれば,デジタル教科書について改めて検討を経る必要はございません。
一方,将来的には,デジタル教科書の内容としてデジタルの特性を生かした動画や音声等を取り入れることも考えられるところであり,今後のデジタル教科書の本格的な導入に向けて,新たな教科書検定の在り方の検討が求められます。そのため,実証研究の成果も踏まえつつ,今後,そのより具体的・専門的な検討を行うことが必要でございます。また,デジタル教科書については内容に関する検定のほか,標準的な機能や企画に関する基準を満たすことの確認をどのように行うか,さらに障害のある児童生徒のアクセシビリティについても一定の水準をどのように確保するかなどの点も含めて検討することが必要です。
なお,令和6年度の小学校用教科書の改訂については,教科書の編集・検定・採択をそれぞれ令和3年度,4年度,5年度に行う必要があり,実際には教科書発行者において既に準備が進められている状況でございます。これを踏まえれば,本格的な見直しについては,次々回の検定サイクルを念頭に検討することが適当と考えられ,令和6年度時点においては,デジタル教科書の内容は,紙の教科書の内容と同一であることを維持することが基本と考えられます。
この方針によるとしても,デジタル教科書は,文字や図表等の拡大や書き込み等をはじめとする様々な機能がつくとともに,インターネットに接続した状態であればURLやQRコード等を通じて動画や音声等を含めて教科書の内容と関連のある様々な教材に円滑にアクセスできるようになっており,児童生徒の学びの充実に相当程度資するものと考えられます。また,多様で迅速な提供が可能なデジタル教材との連携が期待されるところでございます。
続きまして,「紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討」に関して,令和6年度からのデジタル教科書の本格的な導入を目指すに当たり,児童生徒に対する教育の質を高める上で,紙の教科書との関係をどのようにすべきかについて,全国的な実証研究や関連分野における研究の成果等を踏まえつつ,さらには財政負担も考慮しながら,今後詳細に検討する必要がございます。
紙の教科書とデジタル教科書の使用については,前回の骨子案にも示させていただいた組合せの例が考えられます。
なお,紙の教科書とデジタル教科書との関係を検討するに当たりましては,特別な配慮を必要とする児童生徒に対する対応を考慮する必要がございます。障害のある児童生徒の中には,教科書にアクセスする際に,発達の段階や教科特性にかかわらず,デジタル教科書が必要不可欠なケースがございまして,外国人児童生徒等も同様のニーズがございます。このため,特別な配慮を必要とする児童生徒の場合は,デジタル教科書を必要に応じて利用できるように配慮することが重要でございます。
また,教科書無償給与制度との関係については,全国的な実証研究の成果や,デジタル教科書の普及状況を踏まえながら,先ほど申し上げました紙の教科書とデジタル教科書との関係に関する検討と併せて,義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律に基づく無償措置の対象について検討することが望まれます。
最後に,「将来に向けた検討課題」について,本検討会議におきましては,デジタル教科書の内容として,デジタルの特性を生かした動画や音声等を取り入れることやそのための検討の在り方については,将来的に検討すべき事項といたしました。これらをはじめとする将来的な課題については,デジタル教科書や学校のICT環境の整備状況,社会全体のデジタル化や今後の技術革新,それに対応した教師のICT活用指導力向上の状況,デジタル教科書と連携して使用されるデジタル教材の整備及び活用の状況,学校現場における実践活動や実証研究等を通じて蓄積される知見や課題など,様々な状況を見極めながら,引き続き,検討していくことが必要であると考えます。
事務局からは以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
改めて,状況の整理をさせていただきます。
まず,本検討会議は,三つ目のデジタル教科書に関する文科省の検討会議になります。最初の会議では,デジタル教科書というもの自体をどのように考えればよいかということを検討し,そこでの議論を踏まえて学校教育法が改正され,学習者用デジタル教科書が使用できることとなりました。二つ目の会議では,ガイドラインの内容について検討し,本日も議論いたしました改訂版の元となるガイドラインが策定されました。
三つ目の本検討会議が立ち上がった頃には,GIGAスクール構想等の動きもありましたし,学習者用デジタル教科書を学校現場で使っていただいた令和元年度の実証研究の報告書も公表されておりました。それを基に私たちは検討を進めてまいりました。
前回,事務局から骨子案を出していただき,皆様からそれぞれの御専門の立場からの御意見を多数いただきました。今回示されている中間まとめ(案)には,医学的知見や特別支援,あるいは外国人児童生徒等の立場からの御意見も組み込まれております。こちらは,中間まとめとして年度内に公表いたします。
中間まとめが公表されましたら,パブリックコメント等で広く皆様の御意見をいただくことになりますので,それに向けて,本日,委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。
それでは,御意見のある方は挙手をお願いいたします。
【事務局】 清水委員,よろしくお願いします。
【清水委員】 PTAの清水です。よろしくお願いいたします。3ページの最下部に,「教科書の持ち運びの通学上の負担が軽減される」という文言があります。以前もこちらの関係ついて意見を申し上げましたけれども,例えば「教科書の持ち運びの通学における健康上の負担が軽減される」等,もう少し具体的な文言を付け加えていただけるとより分かりやすいのではないかと思います。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。続いて,宮原委員,よろしくお願いいたします。
【宮原委員】 ありがとうございます。9ページの「教師の指導力向上の方策」について,かなりしっかりと書き込んでいただけているとは思ったのですが,デジタル教科書を使った多様な教育の実現には,教師の皆様の指導力の底上げが非常に重要だと感じております。既に重要であるとは書かれておりますが,もう少し強調していただいてもよいのではないかと思いました。
これから教職に就かれる学生の皆様への教育も重要ですが,今現場にいらっしゃる教師の皆様がデジタル教科書を活用していくためには,トレーニングやロールプレイング等,相当な時間の確保をした研修を継続的に繰り返していかないとなかなか難しいだろうと思いますので,その辺りの重要性をもう少し書き込んでもよいのではないかと思いました。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。続いて,片山敏郎委員,よろしくお願いいたします。
【片山(敏)委員】 お願いいたします。2点申し上げます。
1点目は,宮原委員と同じく9ページの「教師の指導力向上の方策」についてです。GIGAスクール構想の一環で,StuDXというポータルサイトが立ち上がっております。こちらは非常に使い勝手がよく,現場支援にもなっていると思います。
このことを踏まえて,一つ目の7行目から記載されている好事例の収集・発信と研修プログラムに加え,例えば,「デジタル教科書の活用を支援するポータルサイトの充実」等,教師向けの支援サイトについても明示されるとよいのではないかと思っています。
2点目に,12ページの「紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討」の二つ目に列記されている例示の中に,「設置者ごとに当該年度で使用する教科書を紙の教科書とするかデジタル教科書とするかを選択できるようにする」とあります。今,GIGAスクール構想により端末が1人1台に行き届いているということと,デジタル教科書のメリットを踏まえてこの検討がなされていることを踏まえると,この例示についてはなくしてもよいのではないかと思います。残すとしても,「デジタルに置き換えるよさや特性を考慮した上で選択する」等の文言を入れておかないと,全ての学校において紙を選択する自治体と,全ての学校においてデジタルを選択する自治体が発生することも有り得ますし,あまりに大きな差が生じてしまうことはよくないのではないかと考えています。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。それでは,東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 具体的な表現について申し上げます。先ほどお示しいただいたガイドラインにおいては,「一体的」,「連携」といった言葉が出ていたのを整理していただき,「組み合わせて」という分かりやすい表現に統一していただきました。現状,中間まとめには,「組み合わせた」という表現もあれば,「連携した」という表現もございます。必ずしも全て「組合せ」にしなければならないというわけではございませんが,ニュアンスとしては,「活用」という言葉とつながるときには,「組合せ」を使い,「システムの仕組み」という意味では,「連携」が合うかと思います。例えば,6ページの「デジタル教材等との連携の在り方」の二つ目の最後の一文に記載のある「連携」は,「組合せ」に変えたほうがよいのではないかと思います。こういった点について,もう一度御検討いただければと思います。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。中川委員,よろしくお願いいたします。
【中川委員】 よろしくお願いします。放送大学の中川です。内容については非常によく書き込まれてきていると感じております。一方で,「そもそもなぜデジタル教科書なのか」ということが,私はとても重要だと思っているのですが,現在の「2.デジタル教科書導入の意義」の記載は,まだ少しアンバランスのように感じております。前半には社会の状況,後半にはデジタル化の利点が数多く書かれておりますが,これらがこれからの学びにどう関連するのかというところが,私自身はとても重要だと思っております。現状,3ページに中教審の答申を引用して「個別最適な学び」と「協働的な学び」に触れられている程度ですが,この中教審の答申には,指導の個別化や学習の個性化についても書かれております。個々の活動の保障というのは非常に重要な要素ですので,こうしたことにデジタル教科書が大きく寄与することを追記することも考えられますし,協働的な学びについても,個々の活動が充実しているからこそ,協働の深まりがデジタル教科書の活用においても非常に期待されるということを追記することも考えられます。こういったことについても検討いただければと思っています。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 教育委員会の河嶌でございます。まず初めに,中間のまとめ案の作成をありがとうございました。前回の会議と同様の意見になってしまいますが,4ページと12ページにある,令和6年度からのデジタル教科書の本格的な導入という記載について,その内容の程度等,具体の姿が見えてこないため,戸惑いを感じています。自治体においては,令和5年度には採択や令和6年度予算の確保が必要になってまいります。今後詳細に検討する必要があると書かれておりますが,ぜひとも次のまとめには,令和6年4月時点の目指す姿について,年次ごとの指標を示してほしいと思います。よろしくお願いします。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 教科書協会の黒川でございます。まず,前回会議後に申し上げたことも含め,意見の反映につき真摯に御検討いただきまして,事務局の皆様には深く感謝申し上げます。
その上で改めてコメントと質問をさせていただきたいと思います。3点ございます。
一つ目に,2,3ページにございます「2.デジタル教科書導入の意義」の総論的記述の4点目についてです。以前,プレゼンをさせていただいた際にも申し上げたのですが,デジタル教科書には二つの大きな目的があると考えております。一つは,既に本文に記載のある「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善,もう一つは,教科書へのアクセシビリティの向上です。この二つはきっちりと書いておく必要があるのではないかと思います。
したがって,現状,授業改善には触れられておりますが,それとともに,「特別な配慮を必要とする児童生徒の困難の低減に資するものと考えられる」ということも同じ箇所に追記してはどうかと思います。
二つ目に,10ページの「デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保」の4点目についてです。「オフラインでも使用できるようにするための仕組みの検討」と記述されておりますが,これ自体は,紙からデジタルへ移行した場合の話と理解しております。紙とデジタルが併用される場合には,手元に紙も置ける環境がありますので,この点は問題にはならないのではないかと考えております。紙と併用の場合でも,休業要請等の緊急時や通信障害等の特例的な場合の課題はございますが,「オフラインでも使用できるようにする」というのはクラウド配信という前提に少々反するのではないかと思いますし,もしオフラインにしたとしても,紙のように永久にその使用が保障されるわけではなく,表示等についてはメンテナンスが必要になりますので,その辺りについての考えを整理いただければと思います。
また,オフラインでの使用を認めた場合,ライセンスや運用に関する費用の問題が発生いたしますので,「このため,紙の教科書からデジタル教科書に移行した場合,オフラインでも使用できるようにするための仕組みの検討や,過年度の教科書を使用できるようにするための観点から,デジタル教科書のライセンスの期間や費用の在り方について検討することが求められる」といった文言に修正してはどうかと思います。
最後に,質問と意見を申し上げます。これまでも河嶌委員が御指摘されていますが,12ページの「紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討」の四つ目についてです。こちらの末尾に,「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律に基づく無償措置の対象について検討することが望まれる」という文言があるところ,令和3年度の普及促進事業等を踏まえて,改めて検討が行われるという方向をイメージしてよいのか,あるいは令和4年度頃には法律が改正され,無償措置の対象が変わるのかといったことが,我々発行者にとっても分かりづらいと感じております。
もし今後,デジタル教科書の改善が進んでいくとしても,現状と同様に,一般の有償教材のままだとすれば,紙の教科書を発行しながら,全ての発行者が全ての教科において,デジタル教科書やデジタル教材を紙の教科書の定価並みの価格で発行し続けることはかなり困難を伴うのではないかと予想されます。
したがいまして,発行形態の組合せ例が5点示されておりますけれども,あくまでも予算を踏まえ,令和6年度までと令和6年度以降でフェーズを区切り,できる限り「いつ頃までに決めることが考えられる」といった指針を示すべきではないかと感じました。大変判断が難しいところですけれども,発行者サイドとしては,デジタル教科書の改善に向けて全力で努力を重ねてまいりたいと思う一方,着地点が見えづらく感じております。この点についてはぜひお考えを聞かせていただけると有難く思っております。
以上でございます。
【度會課長補佐】 事務局でございます。先ほどの河嶌委員,今の黒川委員の御指摘のとおり,現状,将来の確定的な道行きはお示しできていないところでございます。この点に関しましては,実証研究を踏まえて検討させていただくということにさせていただいており,また改めてこのような検討の場を設けさせていただくことも考えております。大変判断が難しいところではございますけれども,いずれにせよ,まだエビデンスが不十分なところがありますので,実証研究等を踏まえて早急に検討させていただくことになると思っております。
以上でございます。
【事務局】 続いて,中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 中野でございます。コメントを一つと質問を一つ申し上げます。
まず,8ページの「教科用特定図書等との関係」についてです。「特に,点字教科書については,現在の点字ディスプレイでは図形等を表示することができず、点字教科書をデジタル化することは現時点での技術では難しい」という記述がありますが,こちらを,「完全にデジタル化することは現時点での技術では難しい」と修正いただいた上で,「なお,点字教科書と併用すると効果的なデジタルデータ等については今後検討が必要だと考えられる」といった旨の言葉を追記していただければと思います。
現在の特別支援機能の音声だけでは,点字教科書をデジタルに完全に変えることがなかなか難しい状況になっております。一方で,「点字教科書を残す」というだけになってしまうと,「点字教科書を使っている場合には,デジタルの恩恵を受けることができない」ということになってしまいますので,そうならないために,「効果的なデジタルデータ等について,今後検討が必要だ」という旨の文言が加えられると,より適切ではないかと考えています。
次に質問です。今回の議論の対象となっているデジタル教科書は,文部科学省検定済教科書ですけれども,教科書と言われているものの中には,特別支援学校で使用する教科書として発行されている文部科学省著作教科書や,学校教育法第34条附則9条に該当する,いわゆる附則9条図書もあります。こういったもののデジタル化について,今後議論される可能性はあるのでしょうか。特別支援学校では,今申し上げた文部科学省著作教科書や,附則9条図書に関するデジタル化について,様々な疑問が出てきておりますので,今後の検討の可能性についてぜひお教えいただきたいと思います。
加えて,特別支援学校には,高等部に職業コースを持っているところが幾つかあります。例えば盲学校の場合は理療科という職業コースがあるのですが,初等中等教育においてデジタル教科書が進んでいる中で,職業教育においてはデジタル化が遅れているのではないかと思っております。
こうした課程で使用される教科書についても,同じ「教科書」と呼ばれているのだからぜひともデジタル化してほしいという声は多数聞いておりますので,将来的に,このような職業コースの教科書についても検討する必要性があるのではないかと思っております。今回,なお書き,もしくはどこかの注意事項等で,今後の検討課題としてこういった問題もあるということを記載していただくことができないかどうかを含めて,質問させていただきます。
以上です。
【神山課長】 教科書課長の神山でございます。中野委員から御指摘をいただきました文部科学省著作教科書に関しましては,予算の関係等もございますけれども,現在の検定済教科書を念頭に置いた議論を踏まえてどのようにしていくか検討する必要があろうと思ってございます。附則9条本につきましては,一般の図書を教科書として使うという仕組みでございますので,そもそもの教科書・デジタル教科書の在り方を踏まえた上でということではございますけれども,その対象をデジタル書籍に広げるといったことも検討課題ではあろうかと思います。
それに加えて,先ほどお話のありました高校段階での職業教育や,職業教育に限らず,高校段階でのデジタル教科書に関わる方向性ついても今後きちんと議論していかなくてはなりませんし,特に職業教育については,様々な教科・科目に分化されておりますので,そういったものをどのようにデジタル化するか,あるいは発行者がそれに対応できるのかといったところも大きな検討課題の一つだと思っております。したがいまして,本中間まとめにおいても,文面等はまた御相談させていただければと思いますが,今後の検討課題といった形で触れることは検討させていただこうと思っております。
以上です。
【中野委員】 ありがとうございました。
【事務局】 続いて,白鳥委員,お願いいたします。
【白鳥委員】 白鳥です。よろしくお願いいたします。4ページ目の「デジタル教材や他のICT機器・システムとの連携によるメリットの例」の2点目の最後に,「業務の効率化に繋がる」と示されておりますけれども,この「業務の効率化」の部分がいま一つはっきりしていないような気がしております。「教師の教材作成」に関しては,発行者等が作成されたデジタル教材が利用できることで業務の効率化につながる部分があるとも考えられますが,「児童生徒の学習状況の把握」に関しましては,デジタル教科書と教育データの活用が密接に連携できる環境が実現した上での話になると思いますし,業務の効率化に寄与できるかどうかは,今後,実証によりエビデンスを取っていく必要がある部分だとも思っております。
学習状況の把握は教育データの活用とともに重要な要素になってくると思いますし,業務の効率化につながっていくことを期待していますけれども,中間まとめを読まれた方が誤解されないよう,例えば「可能性がある」,「期待される」,あるいは「実現を目指す」といった書き方にするのがよいのではないかと思いました。
以上でございます。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,森委員,お願いいたします。
【森委員】 森でございます。6ページの「デジタル教材等との連携の在り方」について,とても充実した記述を書いていただき,感謝申し上げます。
一つだけ加えるとしますと,ガイドラインの16ページ末から17ページ冒頭の「(5)学習者用デジタル教材についての留意点」では,デジタル教材は「学校教育法第34条第4項に規定する教材」であるということが明記されているところ,この点は中間まとめにおいても書いておいたほうがよいのではないかと思います。また,ガイドラインの同じ箇所では「各学校において児童生徒の実態等に応じて使用することが適当である」ということが書いてありますが,この点も中間まとめに記載があるとよいのではないかと思っております。
学習指導要領上で「個別最適な学び」ということが言われておりますが,教材がこの観点に果たす役割は大きいのではないかと思っております。「児童生徒の実態等に応じて使用することが適当」という文言が入ると,デジタル教材の活用意義が出てくるのではないかと思っております。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。よろしくお願いします。9ページ目の「児童生徒の健康面への配慮」に関しまして,まず前回の会議において申し上げました「授業や家庭において」という文言を追記いただき,ありがとうございます。授業の中で健康面に関して配慮することが重要であることに加えて,「家庭でも」という点が重要だと思っておりますので,有難く思っております。
この点に関連して,子供たちがデジタル教科書を活用していく,あるいは広くICTを活用していくということを考えますと,子供たち自身が健康について考えるということが重要になっていくと思いますので,ガイドラインの16ページで書かれているのと同様に,中間まとめにおいても「児童生徒が自らの健康について自覚を持ち,健康面についてもリテラシーとして習得して学習に取り組めるよう指導することが望まれる」等といった内容の文言が入るとよいのではないかと思いますので,御検討いただけますと幸いです。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 宮崎市教育情報研修センターの片山です。よろしくお願いいたします。12ページと13ページに記載の動画や音声等に関することです。12ページの冒頭では,「URLやQRコード等を通じて動画や音声等を含めて教科書の内容と関連のある様々な教材に円滑にアクセスできるように」なっているとまとめられておりますが,13ページでは,「動画や音声等を取り入れることやそのための検討の在り方については,将来的に検討すべき事項」としていると述べられています。きちんと理解していれば書いてあることの意味も分かると思うのですが,「動画や音声は教材である」ということを明確にした上で,それを今後の検討課題とする,としたほうがより分かりやすいのではないかと思っております。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】 加藤直樹です。よろしくお願いします。教職課程における機会の確保についても書き加えていただきありがとうございました。もう1点,5ページの「デジタル教科書に共通して求められる機能」のところで,既に標準化についてはおおよそ記載されているのですが,各発行者の認証方法が異なると,使用する教科書を切り替えるたびに改めて認証しなくてはならなくなってしまうのではないかと思います。どのように記載するべきなのか考えあぐねているのですが,こうした認証の話についても記載があるとよいのではないかと思っております。
以上です。
【事務局】 ありがとうございます。
続いて,青山委員,お願いいたします。
【青山委員】 よろしくお願いいたします。私は小学校の教諭をしておりますが,大学の教職課程で教科指導法も受け持っております。その観点から,加藤委員もおっしゃっていましたが,9ページの「教師の指導力向上の方策」の関係で申し上げます。教育実習に行った際にすぐデジタル教科書を活用するということを考えると,現在は大学が紙の教科書を買っており,その他にも紙の教科書は図書館等様々な場所に置かれておりますので,それを使うことができるのですが,デジタル教科書についても,教職課程で使えるようにするための方策を示していただけるとよいのではないかと思います。教職課程の教科指導法等では,この一,二年の間に「デジタル教科書に触れてから教育実習に行きたい」という声が大きくなるのではないかと思っておりますので,こうしたことについてももう少し踏み込んだ記述にしていただくと,大学も動きやすいですし,こちらも「教職課程にはこういう方策があります」ということをお示しできるのではないかと思いました。
また,13ページの「将来に向けた検討課題」について,紙の教科書は,「最低限きちんと教えましょう」という内容で構成されており,その内容の全てが学習の対象となっておりましたが,デジタル教科書では,児童生徒が主体的に学習者となり,数多くある素材の中から自分で選んで組み立てていくことになります。紙で示せるものではない動画や音声といったものが入って,必ず教えなくてはならない素材と,そうではない素材の両方が教科書の中に含まれることになり,学びの姿が大きく変わってまいります。教科書そのものの概念を変えていかなくてはいけないことと,紙には載せられない素材も活用して教えなければならないということを整理して,最後に示していただけるとよいのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。ほかに御意見等ないようですので,私から述べさせていただきます。
前回の会議と同じタイミングで中教審の答申が出ましたので,そのことにも鑑みて総論として幾つかの文言を付け足していただいたところではございますが,本日,中川委員からも御指摘いただいた説明が足りない部分については,今後付け加えたいと思います。ぜひ会議後にも修文案を事務局までお寄せいただければと思います。
大きく3点コメントさせていただきます。一つ目に,中川委員がおっしゃった中教審答申に関しまして,答申では必ずしもデジタル教科書のことだけ書いてあるわけではなく,総体的な令和の教育のイメージが書かれていますので,そこに踏み込み,「デジタル教科書がこの部分とこの部分に大いに役立つ」ということをもう少しアピールしてもよいのではないかというのはもっともな御指摘かと思いますので,その点については付け足すことを検討いたします。
二つ目に,河嶌委員や黒川委員が御指摘された費用負担に絡む部分については,とりわけ学校設置者としてもはっきりしないと非常に動きづらいですし,ひいては教科書発行者においても動きづらい状態が続いてしまうことになるかと思いますので,今後きちんと示していかなければならないことだと思います。一方で,例えば無償給与の在り方については,文部科学省だけではなく,政府全体で決定しなければなりません。ようやく端末が行き届くという段階にあって,宮原委員や加藤委員,青山委員もおっしゃったように,学校や教職課程における研修等を充実させながら,先生方がデジタル教科書を使うことに慣れ,子供たちがデジタル教科書で学ぶことに慣れていくことが大切で,そのためには同時に情報活用能力を身につけることが必要になります。
このような状況に鑑みると,大事なこととはいえ,国として結論を急ぐことは賢明ではないのであろうと思います。したがって,河嶌委員や黒川委員の御指摘の事項については,大事なこととはいえ,現時点で明記することは難しいという状況の中で,最大限書き得ることは書いていただくということを事務局にはお願いしたいと思います。
三つ目に,デジタル教科書とデジタル教材の,とりわけ学習指導要領コードをはじめとする連携については,今後プラットフォームの標準化等が進む中でできるようになってくることだと思っております。現在は,指導者用デジタル教科書にしても学習者用デジタル教科書にしても,教科書に本当に必要な,教科書と非常に近いデジタル教材が一体的に提供されており,そうしたものの活用の効果も上がっております。
一方で,技術の進展が非常に速く進んでいることを考えると,様々な形のデジタル教材がよりよい形で教育を支援していくということはあり得ると思います。こうした教材が教科書とうまく連携できないと,「教科書よりも教材のほうがよいのではないか」という話にもなりかねません。このことを考えると,東原座長代理が指摘された言葉の使い分けには留意しつつ,連携の在り方についてこれからさらに検討しなければいけないと思います。
引き続き実証研究を通じて効果・影響等を把握しつつ普及促進を図っていくことも必要になるかと思いますし,本検討会議でも何度か御意見いただいたように,既にある程度実現していることについてももう少し技術的な整備を進めていく必要がありますので,このようなことを考えると,中間まとめとしては今年度中に公表し,パブリックコメントを含め多方面から御意見をいただきながら,引き続きデジタル教科書の今後の在り方について議論を整頓していければと思います。
皆様から多くの御意見いただきましたけれども,対立しており今後も議論が必要という御意見は特になかったと思いますので,皆様に御賛成いただけるのであれば,本日の段階で座長一任とさせていただき,修正事項については皆様にそれぞれ相談させていただいて修正を行い,その後いつ公表するかということについては事務局と相談しながら検討していければと考えております。御異議はございますでしょうか。
特に反対はないようですので,座長一任とさせていただきます。少しでも早い公表が望まれると思いますので,そのためにもぜひ修文案を事務局までお寄せいただければと思います。
それでは,本日の議論は以上とさせていただきます。
次回以降のスケジュール等について,事務局より御説明お願いします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。本日も,お忙しいところ,御出席いただきありがとうございました。次回の会議は,4月26日月曜日の15時から17時でございます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。その間に中間まとめが公表され,パブリックコメントが行われることになるのですよね。
【度會課長補佐】 そうでございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。次回の会議まで2か月ほど空きますが,その間に様々な御意見が集まってまいりますので,それを踏まえ,皆様とさらなる議論をさせていただきたいと思います。
また,先ほど申し上げましたように,実証研究や技術的な整理等も動きますので,皆様には引き続き御協力をお願いすることとなるかと思います。
最後に,事務局より今後の動きについて御説明いただきます。
【神山課長】 教科書課長の神山でございます。本日は御議論ありがとうございました。次回の日程は先ほど御説明したとおりですが,今後の会議の進め方について御連絡させていただきたいと思います。
先ほど堀田座長からも御説明がございましたように,本日の御意見を踏まえて,座長とも御相談させていただいて修正をいたしました後,中間まとめという形で公表したいと考えております。
当初,本検討会議の開催期間を本年の7月までとしていたこともありまして,パブリックコメントののち,夏頃に最終的な取りまとめを行うと申し上げていたところでございます。
ただ,本日お示しいたしました中間まとめ(案)に記載のとおり,デジタル教科書の今後の在り方については,実証研究を踏まえ,詳細な検討を行う必要があるという方向性になってございますし,本日の御議論の中でも,その方向性自体に大きな変更はないものと考えてございます。
こうした方向性を踏まえますと,中間まとめについてパブリックコメントを通じて御意見をいただいた上で,改めて本検討会議にて御議論いただき,夏頃までに一定の報告として取りまとめるということ自体には変更ございませんが,来年度予算事業の実証研究中に再度本検討会議を開催させていただく,あるいは実証研究の成果を踏まえたさらなる検討をしていただくというようなことができるように,当該報告を「最終」という形にはせず,かつ,本検討会議自体も7月で終了ということにはぜずに,引き続き会議自体の設置は継続させていただきたいと考えてございます。
また,会議体は継続させつつ,先ほど座長からもお話がございましたように,中間まとめでも指摘をいただいております標準的な機能等をはじめとした専門的,技術的な検討事項等に関しましては,例えばワーキンググループのような形で御議論させていただくということができるのではないかと考えてございます。
こうした専門的な検討においても,本検討会議の委員の皆様の御専門の分野等に応じて,御協力をお願いさせていただくこともあるかと思います。こちらについては,どういった形で会議体を継続するのか,ワーキンググループをどのような形で置くのかといった事務的な部分について今後整理させていただいた上で,改めて御連絡,御相談させていただきたいと思っておりますが,今後の大きな流れ,見通しといたしましては,今申し上げたような形で進めさせていただきたいと考えてございます。
私からは以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。神山課長からありましたように,本検討会議で議論していることが非常に重要な内容であり,また,GIGAスクール構想による端末が導入されるに当たり,デジタル教科書に期待されている部分が非常に大きいといったことも踏まえ,今後,中間まとめを公表し,その後報告書を取りまとめつつ,さらなる検討を進めていくということになります。
会議体の継続に当たっては委員の皆様の御事情等もあると思いますが,そういった点については今後事務局より御連絡いたしますので,ぜひとも引き続き御協力いただければと思います。
東原座長代理,何か一言ございますでしょうか。
【東原座長代理】 ありがとうございます。先ほど神山課長よりお話しいただいたような方向性を私もお伝えしようと思っておりました。フィージビリティ・スタディ等,予定されている検証が進んでいくと,今回改訂に向けて検討しているガイドラインはデジタル教科書の活用に主眼を置いておりましたが,今後は機能面・技術面についても明確に書くことができるようになるのではないかと思います。堀田座長が並行して進められている教育データの利活用の今後の道行きも少しずつ見えてくる等,実証が進むにつれて具体化することもあるかと思います。前回の会議においては活用について議論し,今回の会議においてはそれに加え制度面について議論しました。この次にやるべきことは,神山課長が既におっしゃったように,技術面に関しての明確化なのではないかと感じております。
また,加藤委員や青山委員からも御指摘がございましたとおり,教員養成というのは非常に重要なところです。そのことを中間まとめに明確に書いていただきありがとうございます。もう少し充実させるとよいという御意見もございましたけれども,まず一歩進んだのではないかと思います。今後さらに充実させていけるとよいかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
本日はこれにて閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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