デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第8回)議事録

1.日時

令和3年1月27日(水曜日)9時00分~11時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室 ※Web会議での開催

3.議題

  1. 中間まとめに向けた審議について
  2. その他

4.出席者

委員

赤堀委員、片山(敏)委員、片山(弘)委員、加藤委員、河嶌委員、黒川委員、齋藤委員、柴田委員、清水委員、白鳥委員、中川委員、中野委員、東原座長代理、平方委員、福山委員、堀田座長、宮原委員、森委員

文部科学省

瀧本初等中等教育局長、塩見大臣官房審議官、浅野初等中等教育局企画課長、桐生学びの先端技術活用推進室長、中川初等中等教育局視学委員、齋藤情報教育・外国語教育課課長補佐、神山教科書課長、高見教科書課教科書企画官、度會教科書課課長補佐

5.議事録

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議(第8回)

令和3年1月27日



【堀田座長】 ただいまから,デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議の第8回会議を開催させていただきます。
本日も御出席いただきまして,誠にありがとうございます。今回も新型コロナウイルスの感染状況を踏まえまして,ウェブ会議方式とさせていただいております。
本日の審議は2件ございます。
一つ目は,今般の様々な議論に合わせた,既存の「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」の改訂案について,御議論いただきます。
二つ目は,本検討会議の中間まとめを今年度中に行うこととなっておりますので,その骨子案について御意見をいただきます。
それでは,事務局より資料確認をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。議事次第を御覧ください。本日の資料は,資料1から4,参考資料1と2となっております。過不足等ございましたら,事務局まで御連絡いただけますと幸いです。よろしくお願いします。
【堀田座長】 ありがとうございます。それでは早速議題に入ってまいりたいと思います。
まず,事務局より報告事項があるということですので,資料1について事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料1を御覧ください。こちらは諸外国におけるデジタル教科書・教材の使用状況について,今年度,文部科学省委託事業として実施している「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証事業」のうち,諸外国の実態調査に係る1月時点の暫定報告を基に作成しているものでございます。具体的には,韓国,オーストラリアのクイーンズランド州,デンマーク,シンガポール,アメリカ,エストニアについて調査をしたものでございます。
2ページを御覧ください。まず,韓国においては,デジタル教科書は法的根拠のある教科書の一つでございまして,2015年より,全ての学校においてデジタル教科書の使用が解禁されております。「その他」に記載のとおり,初等学校の中学年・高学年,中学校及び高等学校の一部教科で,デジタル教科書が配布されております。
3ページを御覧ください。韓国におけるICT環境の特徴として,三つ目に記載のとおり,政府が無線LANの整備に注力しており,2021年までに全ての初等学校及び中学校への無線LANポイントを1校当たり最大4か所と,タブレット端末1校当たり最大60台の整備を目指しております。
4ページを御覧ください。韓国では,ICTに関する講師養成研修を中央で行っており,その受講者が地方や学校で研修を実施しています。そして,教育部,首都・州の教育オフィス,学校やKERIS―――韓国教育学習情報院という政府組織の協力により,オンライン・オフラインの研修を実施しております。
6ページを御覧ください。韓国におけるデジタル教科書等を使用することによる児童生徒への効果・影響でございますが,2014年から2016年のデジタル教科書継続使用の縦断的研究によれば,デジタル教科書と紙の教科書の併用の学習効果が高いという報告がございます。また,129校の小学校5・6年生を対象とした研究によれば,学力は,農山漁村地域,成績下位グループ,男子は国語,女子は理科で有効であり,学習態度は,2年以上デジタル教科書を活用している研究校においてより有意に有効で,自己学習能力は,総合的に肯定的な影響があったという結果が出ております。
また,図1に関連して,2014年から2017年のデジタル教科書使用前後を比較した研究によれば,自己主導的学習能力,創造力・イノベーション能力,情報活用能力,協働力,批判的思考力等が向上したという結果が出ております。
続きまして,資料8ページを御覧ください。オーストラリアのクイーンズランド州についてです。デジタル教科書は教材としての位置づけであり,教科書としては位置づけられておりません。
9ページを御覧ください。ICT環境につきまして,2008年から2013年にかけて,連邦政府・州政府等の共同で実施されたICT教育推進プログラムにより,公立・私立等を問わず,第9学年から12学年(14歳から17歳)の全生徒に1人1台の教育用PCが整備されました。また,政府と民間の連携により,国内の全家庭・事業所からブロードバンドへのアクセスを可能にする環境整備を進めているとのことでございます。
続いて,11ページを御覧ください。デンマークについてです。こちらもデジタル教科書はデジタル教材の一つという位置づけになっております。
13ページを御覧ください。デンマークにおける特徴として,児童生徒,教員,保護者,学校,デジタル教材をつなぐUni-Loginというサービスにより,デジタル教科書を無償で利用可能としていることが挙げられます。
続きまして,15ページを御覧ください。シンガポールについてです。デジタル教科書は,認可された教科書の電子版という位置づけでございます。
16ページを御覧ください。特徴として,教育省によるICT Connectionというウェブサイトがあり,教員が教育省やNIE(National Institute of Education,教員養成系の政府組織)が開発した教材や,教育省が民間から購入したeラーニング・コンテンツ等を入手することが可能となっております。
17ページを御覧ください。デジタル教科書等の質の保障に関して,2015年から開始された第4期のICT教育マスタープランにおいて,優良なデジタル教材の認証事業というものも実施されております。
18ページを御覧ください。デジタル教科書等の活用に関する教員研修に関しましては,第3期ICT教育マスタープランにおいて,フューチャースクール事業の研究校や,ICT教育開発校の管理職や教員が,各校当たり4人の教員に対してICT指導教員の研修を実施しております。
続いて,20ページを御覧ください。アメリカについてです。州の教育テクノロジー担当者の全国団体による2015年の調査では,24州が教科書の中にデジタル教科書を含むと定義しているとのことでございます。
21ページを御覧ください。ICT環境の整備状況について,2017年時点で,全米の学校のうち97%に光ファイバーが整備されており,88%にWi-Fiが整備されているということでございます。また,2008年時点と少し古い情報にはなりますが,教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は3.1人となっているところでございます。
22ページを御覧ください。特別なニーズへの対応として,オンラインの電子ファイルレポジトリである全米教材センターが設置されております。このセンターでは,NIMASという特定の規格で教科書・教材の電子ファイルを保管しており,センターに登録されたメディア制作者が,点字,デジタルオーディオ教材,拡大印刷等の形式に加工・再編し,州や専門団体を通じて,それらが必要な児童生徒に提供をしております。
25ページを御覧ください。最後に,エストニアについてです。デジタル教科書は,デジタル教材の一つとされております。
26ページを御覧ください。特徴として,2000年には全学校にPCを,2001年にはインターネットを整備しており,教員研修に関しては,HITSAというエストニア政府や大学等が設立しました非営利団体により,教員のデジタル技能向上のための研修が実施されております。また,ポータルサイト等のプラットフォームも整備されておりまして,教育研究省がOpiqという教材データベースの設置やe-schoolbagというポータルサイトの開発をしております。これを通じてほかの複数のポータルサイトのデジタル教材にアクセスが可能となっております。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変興味深く重要な御報告だったと思います。御覧いただいて分かるように,先進諸国においては,国によって教科書制度が非常に違いますので,デジタル教科書の位置づけも様々です。
また,ICT環境整備の状況については,データが少し古いものもございましたが,現在は国による整備やBYODの普及等により,数字が変わっている部分もあろうかと思います。さらに,組織的配信を行うための仕組みがあるというのが特徴的かと思います。
これは御報告ということですので,ここまでとさせていただきます。
それでは,議事に入ってまいります。まず本日の議事の一つ目,「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」の改訂案につきまして,資料2に沿って事務局より御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料2を御覧ください。「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」は,デジタル教科書の制度化に当たり,平成30年12月に,学校現場にお示しするものとして作成したものです。今般のGIGAスクール構想の進展や,昨年12月に本検討会議で取りまとめいただきました「学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準の見直しについて」を踏まえ,2分の1の基準を定める文科省告示を改正し,来年度から運用できるようにする予定であること等の観点から,来年度に向け,こちらのガイドラインも時点更新したいと考えております。
資料上,時点更新を考えている箇所は赤字となっております。主な更新箇所について御説明をさせていただきます。
まず,目次を御覧ください。大きく4部構成になっていまして,一つ目がガイドラインの趣旨等,二つ目が学習者用デジタル教科書の制度概要,三つ目が学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方について,四つ目が学習者用デジタル教科書の使用に当たり留意すべき点についてという構成になっております。
2ページ中段以降の「2.学習者用デジタル教科書の制度概要」を御覧ください。先ほど申し上げましたとおり,2分の1の基準の改正を予定していることを踏まえ,赤字のとおり追記案を記しておりますので読み上げさせていただきます。「令和2年7月より開催している『デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議』において,学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準の見直しについての議論がなされ,撤廃の方向性が取りまとめられた。これを踏まえ,児童生徒の健康に関する留意事項について周知・徹底を図り,必要な対応方策を講じるとともに,ICTの活用に係る教員の指導力の向上のための施策等を講じていくことを前提として,デジタル教科書の活用の可能性を広げて児童生徒の学びの充実を図るために,学校教育法第34条第2項に規定する教材の使用について定める件の一部改正を行った。これにより,学習者用デジタル教科書を各教科等の授業時数の制限なく使用することが可能となった。なお,これは学習者用デジタル教科書を各教科等の授業時数の2分の1以上において必ず使用しなければならないということを意味するものではなく,あくまでも必要に応じて学習者用デジタル教科書をより有効に使用できる環境を整えるための措置である。」と記載させていただいております。
このガイドラインは,2分の1の基準を定める文部科学省告示の改正後に改訂版として公表する予定であることから,「一部改正を行った」,「可能となった」等,完了形での記載としております。
続きまして,6ページを御覧ください。著作権法の関係について御説明をさせていただければと思います。学習者用デジタル教科書の制度化に当たり,著作権法の一部も改正されておりまして,著作権法第33条の2により,紙の教科書に掲載された著作物については,学習者用デジタル教科書の発行者による補償金の支払いを条件に,学習者用デジタル教科書へ掲載することのほか,その供給や学校現場での使用に伴って様々な形態で利用することが可能となっております。
一方,これはあくまで学習者用デジタル教科書をその本来の目的で使用することに伴う著作物の利用を認めるものでございます。したがって,例えば,学習者用デジタル教科書に掲載された一部の作品や写真等を抜粋して別途教材を作成したり,その教材を学習者に向けて配信したりする等,学習者用デジタル教科書の使用と言えないような場合や,学習者用デジタル教科書と一体的に使用されているデジタル教材を授業目的で公衆送信する場合は,著作権法第33条の2の適用の範囲外となっております。
(4)の3点目を御覧ください。授業の過程における著作物一般の利用については,著作権法第35条に「授業目的公衆送信補償金制度」が規定されているところ,先ほど申しあげたとおり,学習者用デジタル教科書に掲載された著作物に関しては,著作権法第33条の2に基づいて,学習者用デジタル教科書に掲載する段階で教科書発行者から権利者に対して掲載後の利用行為への対価も含めて一括して補償金が支払われる仕組みとなっておりますので,学校現場における学習者用デジタル教科書の授業目的での公衆送信に当たり,改めて授業目的公衆送信補償金を支払う必要はないこととなっております。
続きまして,12ページを御覧ください。「4.学習者用デジタル教科書の使用に当たり留意すべき点について」において,学習者用デジタル教科書を使用した指導上の留意点を挙げております。1点目に,紙の教科書を使用する授業と,学習者用デジタル教科書を使用する授業を適切に組み合わせることが重要です。なお,先ほど申し上げました告示改正によって学習者用デジタル教科書を各教科等の授業時数の制限なく使用できることとなっております。
2点目以降は,既に現在のガイドラインに記載させていただいている内容ではありますが,改めて何点か申し上げます。2点目に,デジタル教科書を使用する授業においても,常に紙の教科書を使用できるようにしておくこと,4点目に,デジタル教科書やデジタル教材を単に視聴させるだけではなく,「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善に資するように活用すること,加えて,児童生徒が自分の考えを発表する際に,必要に応じて具体的なもの等を用いたり,黒板に書いたりする等,デジタル教科書の使用に固執しないことを挙げています。また,5点目に,文字を手書きすることや,実験や実習等の体験的な学習活動がおろそかになることは避けること,6点目に,児童生徒が授業と関係のない内容を閲覧して授業に集中しないことがないよう,例えば学習者用デジタル教科書を使わないときはパソコンの画面を閉じる等,児童生徒が授業において適切に学習者用デジタル教科書を使用できるように指導すること等といった学習上の留意点を示しております。
14ページを御覧ください。児童生徒の健康に関する留意点についてです。昨年12月の会議において2分の1基準の見直しの方向性を取りまとめた際に御議論いただいた内容については,こちらの項目に全て盛り込んでおります。1点目に,「『児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」において,ICT機器の画面の見えにくさの原因やその改善方策,児童生徒の姿勢に関する指導の充実など,教師や児童生徒が授業においてICTを円滑に活用するための留意事項について,専門家の知見なども踏まえて掲載しているため,これを参考にすることが考えられること。」2点目に,「これに加え,学習者用デジタル教科書に関して,専門家から提示された以下の点についても留意すること。」とし,一つ目に「学習者用デジタル教科書を使用する際には,姿勢に関する指導を適切に行い,目と学習者用コンピュータの画面との距離を30センチメートル程度以上離すように指導すること。」二つ目に,新たな記載として,「授業において,児童生徒が長時間にわたって学習者用コンピュータの画面を注視しないよう,30分に1回,20秒程度,画面から目を離して目を休めるよう指導したり,学習者用コンピュータを見続ける一度の学習活動が長くならないようにしたりするなど,健康面にも配慮した授業展開とすること。」三つ目に,こちらも新たな記載として,「学習者コンピュータの画面の反射を抑えることや,画面への映り込みを防止することも重要であるため,児童生徒に対し,学習者用コンピュータの画面の角度を調整するよう指導すること。」最後に,「心身への影響が生じないよう,日常観察や学校健診等を通して,学校医とも連携の上,児童生徒の状況を確認するよう努めること。必要に応じて,眼精疲労の有無やその程度など心身の状況について,児童生徒にアンケート調査を行うことも考えられること。」としております。
3点目に,家庭における学習者用デジタル教科書の使用に当たっても,今申し上げました目と学習者用コンピュータの画面との距離,目を休めること等に留意するように指導すること,また,睡眠前のICT機器の利用を控えることが適切であること等も指導すること,としております。
4点目に,「健康に関する意識を醸成するため,『健康面に留意する』という視点を,まずは教員が理解して,授業等における指導によって児童生徒に伝えるとともに,保護者にも適切に説明をすることによって,児童生徒がデジタル教科書を含むICT機器を使用するに当たっての配慮を,学校と家庭が協働して行うこと。また,児童生徒が自らの健康について自覚を持ち,例えば,目の疲労を感じたら目を休める,遠くを見る等の行為がとれるようになるように,リテラシーとして習得した上で学習に取り組めるよう指導すること。」といった内容を追記させていただいております。
主な時点更新の箇所は以上となりますが,委員の先生方におかれましては,お気づきの点や,「こういうことを加筆したらどうか」という御意見をいただけますと幸いです。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございました。更新されている主な点は,今御説明があったように,GIGAスクール構想により端末が入ることや,著作権法の改正のこと,今般の様々な動きに対応したこと,加えて私たちが本検討会議で検討してきたこと,とりわけ健康への留意点や2分の1基準の話を書いていただいております。その他,多少の文言の修正が入っております。
これにつきまして,「ここをこうしたほうがよいのではないか」等の御意見がございましたら,御発表いただければと思います。
それでは,東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 皆様おはようございます。以前の会議の際に申し上げたこととも関連いたしますが,13ページの丸2 の末尾にございます「常に紙の教科書を使用できるようにしておくこと」の意味合いをもう少し明確にできればよりありがたいと思います。仮にランドセルにタブレットと教科書の両方を入れて通うということを意味するとなると,荷物が重く,毎日の通学が非常に大変になってしまいますので,2人で1冊程度あればよいのかといった度合いや,前回の告示と今回の改正で解釈が異なってもよいのかといったことについて,御議論いただいた上で反映されるとよいのではないかと思いました。
以上でございます。
【堀田座長】 御指摘の点については,後ほどまとめて事務局にも伺いたいと思います。
続きまして,柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。健康面に関して,14ページの(3)の丸2 に,「30分に1回,20秒程度,画面から目を離して目を休める」と追記いただいております。こちらはエビデンスに基づいておりますので,内容としてはよいかと思うのですが,表現を,「30分に1回は」としてはどうかと思います。エビデンスとなっている論文において,近視になりやすい要因として「30分」という基準を設けていますけれども,例えば,目の疲労の軽減という点では,最近,「20分に1回,目を休める」ということも言われております。また,近視になりやすい要因も,目の疲労の軽減も,「29分までは問題がないけれども30分になったら気にする必要がある」ということではありません。そのため,「連続して見るのは,長くても30分」という趣旨が明らかになるように,「30分に1回は」としてはどうかと考えております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。誤読を防ぐ観点から,大変重要な御指摘かと思います。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 おはようございます。黒川でございます。6ページの(4)の著作権法の改正に関わる箇所について,誤読を防ぐ観点から申し上げます。(4)に挙げられている三つの丸のうち,最初の二つを前提として,三つ目に,学習者用デジタル教科書が授業目的公衆送信補償金制度にかかわらず活用できる旨記載されておりますが,この三つ目のみを読んでしまうと,何も制約なくいくらでも自由に使えると誤認されてしまうのではないかと感じます。デジタル教科書とデジタル教材の区別が一般にはなかなか伝わりづらいため,注意が必要ではないかと思います。
また,紙の教科書の場合,授業の過程でスキャン等をして公衆送信する際には,授業目的公衆送信補償金制度の適用を受け,発行者ではなく学校の設置者が補償金支払の対象になる場合がありますので,こういった点も誤解を受けやすいところかと思います。
加えて,学校現場では「デジタル教科書イコール指導者用デジタル教科書」というイメージが未だ強くありますので,現状の記載でも法的に間違いはございませんが,混同されないように,書き方を慎重に検討する必要があるかと思います。35条の考えを適用すべきところについて,これまで明確に記載されているものが見当たりませんので,「ガイドライン」の趣旨に鑑みて,もう少し補筆・修正が必要かと考えております。具体的な修正案については改めて御提案できればと考えております。以上でございます。
【堀田座長】 貴重な御指摘ありがとうございました。また文面は調整させてください。
平方委員,お願いします。
【平方委員】 今,黒川委員のお話の中に,補償金の話がございました。このことに関して,それぞれの団体に文化庁はどの程度説明を行ったのでしょうか。少なくとも,私立中高連はお聞きしておりませんでした。授業目的公衆送信補償金制度を使わない場合でも,学校独自に使った際に,その旨の報告をし,利用料を著作権者に支払えばよいはずですので,その点が伝わる書き方をお願いしたいと思います。
また,デジタル教科書を活用するということは,絶対にやらなければならないことだと思っております。それを前提として,そのデジタル教科書を使ってどのような教育をやっていこうとしているのか,どのような授業をしていこうとしているのかということが本当に議論されてきたのか,疑問に思っております。海外の例を見ても,プロジェクトベースの事業をやらなければ,未来の教育はどんどん遅れてしまいます。今ようやく,デジタル教科書も含め,ICTを活用した授業をやっていこうという動きがあります。中学入試や高校入試を見ても,日本はまだ知識・技能が中心という傾向がありますが,例えばアメリカの一部の学校では,クリエイティビティを伸ばす教育をやっていこうという動きがありますし,世界中のIBスクールもそうだ思います。どういうことを授業の中で展開していくためにデジタル教科書が必要なのかということを,ぜひ学校現場,教員に分かるよう,示していただきたいと思います。
令和3年度予算事業において,学習者用デジタル教科書の効果,影響等に関する実証研究を行うとのことですが,具体的にどのような成果物ができるのかといったことについても,ぜひ教えていただきたいと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。デジタル教科書のみならず,これからの時代の教育の在り方についての検討については,中教審においてしっかり行われており,昨日答申が出ております。その議論を受けて,様々な個別の検討会議が行われているところであり,そのうちの一つ,デジタル教科書を使うときの様々な留意点を含めた考え方について整理するのが本検討会議です。授業そのものについては,現場の先生方の裁量によるところも大きいので,現場における教育目標,授業の目標の実現に向けて,学習課程においてデジタル教科書を活かしていただくための検討の一部が実証授業として行われるものと理解しております。
したがって,本検討会議において全てを審議するわけではございませんが,大きな流れの中でデジタル教科書の在り方を議論していくことが本検討会議の役割と理解しております。また何かありましたら,ぜひ御指摘ください。
では,森委員,お願いいたします。
【森委員】 森でございます。学校教材を作っている立場から発言をさせていただきます。先ほど黒川委員もおっしゃったとおり,著作権について踏み込んだ記載があることについてはとても評価をしたいと思っておりますが,一方で,デジタル教科書だけではなく,デジタル教材については著作権の扱いがとても難しくなっておりまして,その辺りの混同がないように御配慮いただいた記載にしていただければと思っております。
また,私たちの立場からしますと,15ページの「(5)学習者用デジタル教材についての留意点」というところについて,元来,検定教科書と教材は,役割や法的な位置づけが全く異なると思っております。デジタルにおいてもその区分けを明確にしておくことが必要なのではないかと思います。現状の記載では,「デジタル教材」が「デジタル教科書と一体になっているもの」を指し示してしまっているように見えますので,デジタル教科書と連携してデジタル教材が使えるのだということがわかるような記載が必要なのではないかと思っております。
あわせて,教科書は教育委員会等が意思決定するものだと思いますが,教材は学校が主体的に採択することができます。その点についても追記いただけるとよいのではないかと思います。「一体的」という表現により,「一体になっていないとデジタル教材ではない」と思われてしまう危惧がありますので,「デジタル教科書と連携しているデジタル教材」といった表現に改めていただければと思っております。
以上です。
【堀田座長】 大変重要な御指摘をいただいたと思います。ありがとうございました。
片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 宮崎市教育情報研修センターの片山です。よろしくお願いいたします。2点ございます。
1点目に,これまでにも意見として出ております,6ページの著作権法の改正に関する記載についてです。文章ではなかなか理解が難しいところでございますので,この点につきましては,例えば図や表等で整理をしていただきますと,教育委員会や学校等もこのガイドラインをうまく使うことができるのではないかと考えているところです。
2点目に,3ページ,先ほど御説明があった追記箇所について,下から4行目に,「なお,これは学習者用デジタル教科書を各教科等の授業時数の2分の1以上において必ず使用しなければならないということを意味するものではなく」という表現があります。「2分の1以上」をあえてここで示しているのが,2分の1に満たないこととする基準の見直しがあったからなのか,ほかの意図があるのか,理解できておりませんが,ここであえて「2分の1以上において」とするのではなく,「授業時数の全てにおいて必ず使用しなければならないということを意味するものではなく」としたほうが分かりやすいのではないかと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
続きまして,清水委員,お願いいたします。
【清水委員】 PTAの清水です。14ページの児童生徒の健康に関する留意点の丸4 で,「児童生徒に伝えるとともに,保護者にも適切に説明をすること」という記載があります。当然のごとく,実際にデジタル教科書を使うのは子供たちですので,まずは子供たちがしっかりと留意事項を把握しなければなりませんが,我々保護者に対しても「適切に説明」という文言がありますので,様々な保護者にとってしっかりと分かりやすい説明をしていただけるようにお願いをしたいと思っております。
また,「学校と家庭が協働し」という言葉があります。学校と家庭が共にしっかりと子供たちを守っていくという部分でも,しっかりこの協働という意味合いも大切にしていきたいと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】 加藤です。よろしくお願いします。
既に皆様からも指摘がありましたが,6ページの著作権の項目の「教科書と一体的に使用されているデジタル教材」という記載がとても気になるので,そこを整理していただければと思っています。また,著作権法第38条への言及が消されているのがなぜなのか,この場でなくてもかまいませんので,後ほどお聞きできればと思っています。
最後に,教員養成の場にいると,デジタル教科書の法的な扱いが読み取りづらいので,ガイドラインの中で,教員養成や教員研修の場でのデジタル教科書の扱い方についても記載いただけると大変有り難いと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。昨日の中教審の総会でも,これから教員養成大学において,とりわけICTを活用した指導力をどうするかということが課題の一つになっておりました。一方で,無償給与の範囲の問題等もございますので,記載については検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
中野委員,お願いいたします。
【中野委員】 追記案について特に異論はありませんが,特別支援に関する部分で修正をお願いしたい箇所が2か所あります。
一つ目に,1ページの2点目の末尾に記載されている,「また,特別な配慮を必要とする児童生徒等が教科書の内容にアクセスしやすい環境を実現することが重要である。」という箇所について「アクセスしやすい環境」という文言は少し分かりにくいかと思いますので,「アクセスできる環境」に変更したほうがよいのではないかと思います。
また,なぜアクセスできる環境を実現することが重要なのかが明記されていないので,次のように変更することを提案します。案は二つあります。第1案は,「また,インクルーシブ教育を推進する上で特別な配慮を必要とする児童生徒……」と変更する案,第2案は,「また,SDGsの目標4に設定されている『質の高い教育をみんな』を実現する上で……」と変更する案です。この二つの案は,インクルーシブ教育を根拠にするのか,SDGsを根拠にするのかの違いです。御検討をよろしくお願いします。
二つ目に,12ページの(コ)に,「教師の教材準備や黒板への板書の時間を削減し,児童生徒に向き合う時間を増やす」とありますけれども,ここに障害のある教師に関する記述を入れていただくことを御検討いただきたいと思います。例えば3番目に,「学習者用デジタル教科書は,障害のある教師にとってもアクセシブルであるため,他の学習者用デジタル教材や教科用特定図書等と一体的に使用することにより,より多くの時間を児童生徒への指導の充実に費やす」といった記述を追加いただくことを御検討ください。
以上です。
【堀田座長】 いつも具体的にありがとうございます。
委員の皆様には非常に重要なポイントを幾つか御指摘いただきましたけれども,これ以外についても,ぜひ「ここをこう書き換えるとよい」という具体的な修文案でお示しいただければ幸いでございます。今御指摘いただいたことについて,事務局に少し整頓していただければと思いますが,いかがでしょうか。
【度會課長補佐】 事務局でございます。著作権の部分の記載も含めて多岐にわたる御意見をいただきました。こちらは学校現場で示すものでございますので,分かりやすく記載ができるように,今後調整したいと思います。
また,一部の委員の先生から御質問いただいた箇所につきましても,確認のうえ,個別に御連絡させていただければと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。それでは本議題については一旦ここまでとさせていただきます。次回,御意見を踏まえて修正を加えたものを御提示させていただくことといたします。
続いて,今年度中にとりまとめる予定となっております中間まとめの骨子案について,これまでの議論を基に事務局にて整理いただいていますので,資料3に沿って御説明をいただきたいと思います。
【度會課長補佐】 事務局でございます。資料3を御覧ください。「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめ骨子案」として示させていただいております。骨子案は,「1.デジタル教科書をめぐる現状」,「2.デジタル教科書導入の意義」,そして「3.デジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取組」から成っております。順番に御説明させていただければと思います。
まず,デジタル教科書をめぐる現状です。デジタル教科書の制度概要について,御案内のとおり,デジタル教科書は平成30年の学校教育法等の一部改正等により,令和元年度から紙の教科書に代えて使用することができることとなっております。その使用につきましては,各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととされておりますが,本検討会議において御議論いただきましたように,基準の見直しについて昨年12月に検討を行い,この基準を撤廃することが適当であるとの御提言をいただいたところでございます。
続きまして,デジタル教科書の発行・普及状況について,デジタル教科書の発行状況は,令和2年度においては小学校用教科書が約94%,中学校用教科書が約25%であるところ,令和3年度においては共に約95%に達する見込みとなっております。また,デジタル教科書の普及状況につきましては,文部科学省の「令和元年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によれば,令和2年3月1日現在で,公立学校全体としては7.9%となっております。
また,諸外国におけるデジタル教科書の状況について,先ほど御説明させていただいたとおり,諸外国の教科書制度は,教科書の定義,検定等の制度,使用義務の有無,有償であるか無償であるか等,様々な観点において異なっておりますところ,デジタル教科書についても同様に,国によって活用の状況が異なっております。
2ページを御覧ください。デジタル教科書導入の意義として,デジタルならではの特性を生かして児童生徒の学びの充実に貢献することが期待されております。以下,デジタル教科書のメリットの例を示させていただいておりますけれども,こちらは,11月の本検討会議で議論いたしましたデジタル教科書の利点を整理させていただいたものでございます。まず,ビューアの機能を含む教科書のデジタル化のメリットの例として,「直接画面に書き込みができ,その内容の消去や,やり直しを簡単に行うことができるため,作業に取りかかりやすく,繰り返し試行錯誤することが容易である。」,「ペア学習やグループ学習の際,デジタル教科書に書き込んだ内容を見せ合うことで対話的な学びを行うことができる。説明の際に書き足したり,消したりしながら視覚的に表現できるため,より説明が深まる。」,「紙の教科書の場合,細かい箇所を見る際,目を近づけるという行動をするが,拡大表示ができることによって,目を近づけなくても細かい箇所まで見ることができる。」,「ポップアップにより見せたいところのみを拡大することにより,教科書上の様々な情報に注意が向くことなく,児童生徒の集中力を持続させることができる。」,「機械音声読み上げ機能により,読み書きが困難な児童生徒の学習を容易にしたりすることができる。」,「アクセシビリティやユーザビリティが確保されれば,紙の教科書へのアクセスが困難だった障害のある児童生徒が教科書へアクセスできるようになる。」,「デジタル教科書の使用により,授業や家庭学習で用いる教科書の持ち運びの通学上の負担が軽減される可能性がある。」,以上7点を挙げております。
また,デジタル教材や他のICT機器・システムとの連携によるメリットの例といたしまして,「デジタル教材との連携がしやすく,学びの幅を広げたり,内容を深めたりすることがより容易になる。」,「デジタル教科書に書き込んだ内容を大型提示装置に提示することにより,どの部分の説明をしているのかが視覚的に分かるため,児童生徒の授業への参加度が上がる。」,「授業支援システムとの連携により,教師側の画面で児童生徒がデジタル教科書に書き込んだ内容を見ながらの授業の進行がしやすくなり,クラス全体に対して特定の生徒の書き込んだ内容を共有して指導を行うことなどができる。」,「デジタル教科書や一体的に使用するデジタル教材を活用することにより,教師の教材作成や児童生徒の学習状況の把握等に係る業務の効率化につながる」といったことを挙げております。
そして,GIGAスクール構想の実現を通じ,本格的に1人1台端末環境が整備される中,これからの学校教育を支える基盤的なツールとしてICTを最大限に活用しつつ,児童生徒の学習環境をよりよいものに改善し,学校教育の質を高めていくためには,各学校におけるデジタル教科書の活用を一層推進する必要がございます。今後,次の小学校用教科書の改訂時期である令和6年度を,デジタル教科書を本格的に導入する最初の契機として捉え,この後に申し上げるような視点から着実な取組を進めるべきであると考えます。
その際,現行の紙の教科書は,児童生徒に必要な基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するための各教科等の主たる教材として,長年にわたり学校教育の基盤を支え,使用されてきたこと,また,例えば,一覧性に優れているなどの特性があることや,書籍に慣れ親しませる役割を果たしていること等も踏まえまして,今後の教科書制度の在り方について,デジタル教科書と紙の教科書の関係や,検定などの制度面も含め,十分な検討を行う必要があると考えます。
先に述べましたデジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取組について御説明します。大きく二つのパートに分かれておりまして,一つ目が「全国規模での実証的な研究を通じたデジタル教科書の改善や効果的な活用の検討」,二つ目が「今後の教科書制度の在り方についての検討」です。
一つ目に,現状では,デジタル教科書の活用についての実践例が少ないことに鑑み,デジタル教科書の本格的な導入に向けて,これから御説明します点について,全国規模で実証的な研究を行いつつ検討することが必要であると考えます。
1点目に,デジタル教科書に共通して求められる機能や,デジタル教材等との連携の在り方についてです。まず,共通して求められる機能について,教科書は,通常,教科等によって異なる教科書発行者の教科書が使用されております。一方で,現在,デジタル教科書はそれぞれの教科書発行者において,教科特性等に応じて,ビューアや配信システムを開発している状況であり,規格や機能が異なっております。今後,学校においてデジタル教科書を複数の教科等で使用するようになれば,操作性が共通していることがより重要になると考えられ,異なるビューアを使用している場合であっても,児童生徒や教師が使用しやすい標準的な規格や機能等が備えられていることが求められます。
デジタル教科書の機能の例を4ページに挙げておりますが,標準的に備えることが望ましい最低限の機能について,実証研究も踏まえ,技術の発展も考慮しつつ専門的に検討し,一定のガイドライン等を取りまとめることが望ましいのではないかと考えます。
続きまして,デジタル教材等との連携の在り方について,連携により,学びの充実を図るための様々な授業の展開が可能になると考えられますところ,デジタル教科書とデジタル教材の連携には,学習指導要領のコード付与による連携のほか,児童生徒ごとの様々な学習ツールの窓口となるシステム,例えば学習eポータル等を含め,連携が望まれるシステム間の共通規格の整備が必要になります。先般,学習指導要領のコード化が実現したところであり,今後,学習指導要領,教科書,教材という一連のつながりを分かりやすくするため,相互の連携を進めることが必要であります。それに当たっては,教育データの利活用の観点も含め,実証も進めながら総合的な検討を行う必要があると考えます。
続いて,教師の指導力向上の方策についてです。デジタル教科書のメリットを最大限発揮するためには,教師のデジタル教科書を含むICT活用指導力の向上を図ることが必要不可欠になります。デジタル教科書の導入によって,個々の教師の指導力に大きな差が生じることのないよう,令和6年度に向けて,大学の教員養成課程や,教育委員会や学校内で行われる研修等を通じて,こうした教師の指導力の向上を図る必要がございます。
そのためには,好事例の収集,整理,発信等の支援を行うことが重要でございますが,そもそも,現状デジタル教科書の普及率が低いということを踏まえれば,まずは,令和3年度からの実証研究も活用しながら,教師が実際に使用する機会を確保し,好事例の発信等を行うとともに,効果的な学習活動の実現に必要な教師の指導力について明確化することが重要であると考えます。
その際,例えば,デジタル教科書の利点を生かした試行錯誤を行う活動を取り入れたり,試行錯誤した考えを紙に書き込み整理させることで,確かな理解につなげたりする等,紙とデジタルを適切に組み合わせた指導の重要性にも留意することが適当であります。
続きまして,障害のある児童生徒や外国人児童生徒等への対応についてです。まず,障害のある児童生徒に対する配慮として,アクセシビリティやユーザビリティが確保されていれば,紙の教科書へのアクセスが困難だった障害のある児童生徒が,教科書へアクセスできるようになり,その結果,文章等の理解や把握がしやすくなったり,操作が容易になったり,障害等による学習上の困難が軽減されると考えられます。これらにより,児童生徒の自主的な教材へのアクセスが容易となり,学習意欲の増進,学力の向上につながると期待されます。なお,デジタル教科書と連携して使用するデジタル教材に関しましても,アクセシビリティやユーザビリティに配慮する必要があると考えます。
また,ユーザーインターフェースについて,特別な配慮が必要な児童生徒の場合,教科ごとに操作方法が異なることによる混乱が生じやすい可能性もありますため,一定の標準化を図る必要があると考えられ,その際,ユニバーサルデザインに配慮した仕様であることにつきましても考慮する必要がございます。
デジタル教科書が備えるべき特別支援機能については,障害のある児童生徒が支障なく使用することができるよう,デジタル教科書に実装されている主な機能のほか,障害のある児童生徒にニーズのある機能の標準化が行われることが望ましいと考えられます。
そして,教科用特定図書等との関係について,デジタル教科書は,拡大教科書,点字教科書,音声教材といった教科用特定図書等の機能の一部を包含するため,これらを使用している児童生徒がデジタル教科書の使用を希望することも考えられます。その場合には積極的かつ円滑に使用することが望まれる一方,児童生徒の個々の障害の程度や特性,学習ニーズによってデジタル教科書では対応できない部分については,教科用特定図書等に対しても引き続きニーズが見込まれると考えます。
続いて,外国人児童生徒等に対する配慮についてです。外国人児童生徒等は,個人の置かれた環境や日本での滞在歴等によって抱えている困難が異なる上,在籍学級での授業や取り出し指導など,学ぶ場所も多様でございますため,状況に応じたデジタル教科書の活用が望ましいと考えます。
また,例えばルビ振り,読み上げ,拡大表示,書き込み,マーキング等の機能により,効率よく内容理解に進むことができ,指導する側の教材準備の負担軽減にもなり得ます。児童生徒の学びをより充実させるために,操作が簡単で自律した学びを支える機能の付加や,指導方法の研究により,さらなる成果へとつながることが考えられます。
続いて,児童生徒の健康面への配慮について,昨年12月にとりまとめいただきました「学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準の見直しについて」におきまして,デジタル教科書を見る時間の考え方や,目と端末の画面との距離等,デジタル教科書を使用する際の健康に関する留意事項や,それを踏まえ必要となる対応方策について,専門家の意見等を踏まえて示させていただいており,これらについて周知・徹底を図り,必要な対応方策を講じていく必要がございます。
なお,デジタル教科書を含めたICT機器の使用による健康面への影響に関しては,引き続き,最新の科学的知見も注視し,必要に応じて新たな知見を踏まえた対策を講じていくことも必要であると考えます。
続いて,デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保についてです。GIGAスクール構想により整備される1人1台端末につきましては,この端末からネットワークを通じてクラウドにアクセスし,クラウド上のデータ,各種サービスを活用することを前提としております。このため,学校内のみならず,学校外とつなぐネットワークが高速大容量であること,自治体等の学校の設置者が整備する教育情報セキュリティーポリシー等において,クラウドの活用を禁止せず,必要なセキュリティ対策を講じた上でその活用を進めることが必要であります。
また,デジタル教科書を広く学校現場に導入するに当たりましては,情報セキュリティの確保等の課題を解決した上で,パブリッククラウド方式による配信を行うことが考えられます。このためには,安定的な運用体制を確立することが求められるところであり,その在り方について,文部科学省が令和3年度に実施する予定のデジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証事業も活用しつつ,十分に検討すべきであると考えます。
そして,デジタル教科書の学校における活用が進むことによって,今後,家庭における学習での使用も進むことが考えられ,それに伴い,通信環境のない家庭への環境整備への配慮が必要となってきます。GIGAスクール構想におきましては,児童生徒1人1台端末環境の整備を目指し,家庭への持ち帰りを含めて活用できる環境の整備を図ることとしており,その取組が着実に進むことが望まれます。
続きまして,「(2)今後の教科書制度の在り方についての検討」です。まず,デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討でございますけれども,デジタル教科書の本格的な導入に向けて,新たな教科書検定の在り方の検討が求められます。そして将来的には,教科書の範囲にデジタルの特性を生かして動画や音声等を取り入れることも考えられるところであり,実証研究の成果も踏まえつつ,今後,そのより具体的・専門的な検討を行うことが必要であります。
なお,令和6年度の小学校用教科書の改訂につきましては,教科書の編集・検定・採択をそれぞれ令和3年度,4年度,5年度に行う必要がありまして,実際には,教科書発行者において既に準備が進められている状況にあることから,本格的な見直しについては次々回の検定サイクルを念頭に検討することが適当であると考えます。
最後に,紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討について,令和6年度からのデジタル教科書の本格的な導入を目指すに当たりまして,児童生徒に対する教育の質を高める上で,紙の教科書との関係をどのようにすべきかについては,全国的な実証研究や関連分野における研究の成果等を踏まえつつ,さらには財政負担も考慮しながら,今後,詳細に検討する必要があると考えます。
紙の教科書とデジタル教科書の使用については,前回の会議でもお示ししましたが,おおむね,8ページに記載しているような組合せの例が考えられます。一つ目に,全ての教科等において,デジタル教科書を主たる教材として使用する。二つ目に,全てまたは一部の教科等において,紙の教科書とデジタル教科書を併用する。三つ目に,発達の段階や教科等の特性の観点を踏まえ,一部の学年または教科等においてデジタル教科書を主たる教材として導入する。四つ目に,設置者ごとに当該年度で使用する教科書を紙の教科書とするかデジタル教科書とするかを選択できるようにする。五つ目に,全ての教科等において,デジタル教科書を主たる教材として使用し,必要に応じて,例えば学校に備え付けた紙の教科書を貸与する,紙の教科書で学習するほうが教育効果が高いと考えられる部分に限定した紙の教科書を配布する等の形で紙の教科書を使用できるようにする。以上のような組合せの例が考えられるところでございます。
骨子案についての事務局からの説明は以上でございますけれども,今後,中間まとめに向けて,どのように記載内容を肉づけしていくとよいかといった観点から御意見をいただけますと幸いでございます。
以上でございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。委員の皆様それぞれの立場から,「ここにこのように書き足してはどうか」,「こういう内容はこちらのほうがよいのではないか」といったことを,具体的に御指摘いただければと思います。中間まとめは今年度中にとりまとめることになっておりますところ,デジタル教科書の普及や多くの学校での利活用がこれから進むことになりますので,今の段階でどこまで提示できるかということを慎重に考えながらも,方向感を示していきたいと考えております。
それでは,委員の皆様,挙手をいただければと思います。
まず宮原委員,お願いいたします。
【宮原委員】 中間まとめ骨子案の取りまとめ,ありがとうございます。産業界の立場から,「1.デジタル教科書をめぐる現状」について申し上げたいと思います。「(2)デジタル教科書導入の意義」に,具体的なデジタル教科書のメリットが羅列されています。もちろん,デジタル教科書の導入は,教育自体の質の向上や多様性の確保という観点から大変意義深いと思いますが,これから子供たちが出ていく社会において,現在デジタル・トランスフォーメーションが一気に進んでいる中,社会全体としてデジタル・リテラシーを底上げするという意味でも,非常に重要な起爆剤になると感じております。今,1人1台端末環境の整備は進んでおりますけれども,これまでに何度か申し上げたとおり,端末を配っただけでは使われませんので,中身をどのように使うかということが非常に重要です。教科書は教育の基本ですので,デジタル教科書の活用は,デジタル・トランスフォーメーションを見据えたときに,これから社会へ出ていく子供たちのデジタル・リテラシーを飛躍的に底上げできる大きなチャンスだと思っています。このような意義をぜひ強調していただければと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変貴重な御指摘をいただきました。GIGAスクール構想をはじめ,端末の配備が進んでいる背景には,これからの時代,ICTを用いながら学習を進めていくことがこれからの資質・能力を育む上で重要だということがありますので,そのことに触れながら,そこにおいて質保証された教科書という主たる教材がデジタルになっていることの意義を書き込めるようにしたいと思います。ありがとうございます。
では,清水委員,お願いいたします。
【清水委員】 2ページ目の「デジタル教科書導入の意義」のうち,「教科書のデジタル化によるメリットの例」の最後の点について,現状,「デジタル教科書の使用により,授業や家庭学習で用いる教科書の持ち運びの通学上の負担が軽減される可能性がある。」という表現になっております。以前,本検討会議の中で,中学生の子供たちが毎日大変重い教科書を持っているという観点から指摘しておりましたが,「軽減される可能性がある」という表現ではなく,「軽減される」というところで切られてはどうかと思っております。ぜひ御検討ください。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございます。
続きまして,中川委員,お願いいたします。
【中川委員】 放送大学の中川です。よろしくお願いします。今までの議論を踏まえながら非常に明快にまとめられている骨子案だと感じました。
私からは4点あります。まず,2ページ目の「デジタル教材や他のICT機器・システムとの連携によるメリットの例」について,直前の「教科書のデジタル化によるメリットの例」に比べて少し桁が大きいように感じますので,ぜひこれまでに出たデジタル教材の活用の際のメリットも入れてほしいと思いました。本検討会議でも議論されてきましたし,令和元年度,2年度の実証研究でも知見が得られていますので,例えば,先ほどのガイドラインから少し抜粋する,4ページの「デジタル教材等との連携の在り方」に盛り込む等,こちらの中間まとめは様々な立場の方がお読みになりますので,もう少し具体例を入れていただければと思いました。
2点目に,2ページ末から3ページ頭にかけて記載のある授業支援システム関係の記述について,3行目の「特定の生徒の」という箇所は「特定の児童生徒の」に直していただければと思います。
また,同じ行に「指導を行うことなどができる」という表現がありますが,教師主導に見えてしまうので,例えば「議論を行う」,「話合いを行う」等児童生徒が中心の言葉のほうがよいのではないかと思います。
3点目に,3ページから5ページにかけて記載のある「全国規模での実証的な研究を通じたデジタル教科書の改善や効果的な活用の検討」について,当面は,デジタル教科書を使い始めるという段階の学校がこの実証に参加することになると思いますので,活用における促進要因及び阻害要因の抽出等も,こちらの実証研究の中には項目として入れたほうがよいのではないかと思います。また,4ページの「デジタル教材等との連携の在り方」の最後に「実証も進めながら」と書いてありますが,実際には令和元年度,今年度にも実証研究を行っていますので,こうした研究も「含め」あるいは「踏まえ」等の表現により入れていただけるとありがたく思います。
最後に,5ページの上から三つ目に,「紙とデジタルを適切に組み合わせた」という記載がありますが,紙だけではなく,実際には例えば実験や観察,見学等,非ICT・非デジタルとの組合せもありますので,その点も含めたほうがよいのではないかと思いました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。大変具体的で,現場志向の御指摘だったと思います。
続きまして,白鳥委員,お願いいたします。
【白鳥委員】 よろしくお願いいたします。中間まとめの骨子案,ありがとうございます。システムを開発している立場から申し上げますと,検討会議の論点にありましたデジタル教科書・教材の連携と標準化は,今後より重要な要素になってくると考えておりますので,中間まとめの骨子案の3ページ目に,「デジタル教科書に共通して求められる機能や,デジタル教材等との連携」として論点の記載がある点についてはよかったと思います。また,4ページ目の後半の「デジタル教材等との連携の在り方」の二つ目に,デジタル教科書・教材について「連携が望まれるシステム間の共通規格の整備が必要になる」という記載がありますが,多様な教材との横断的な連携や一体的な活用を実現するには,この整備は必須条件になる部分だと捉えております。
加えて,3ページ末から4ページ頭にかけて,「デジタル教科書に共通して求められる機能」に関し,「児童生徒や教師が使用しやすい標準的な規格や機能等が備えられていることが求められる」との記述がありますが,まさに,ビューアをそろえて使いたいという要望や議論もありましたし,著作権や教科特性に応じた機能の実装を各社が実現する上でも重要な要素ですので,デジタル教科書・教材の連携に関する記載のように,「共通の規格の整備が必要」もしくは「共通に備えるべき規格の整備が必要」等,一歩踏み込んで記載いただく必要があるのではないかと捉えております。また,可能ならば,共通規格の整備に向けた中長期的なステップや進行表まで示せると,よりよいのではないかと思いました。
以上になります。
【堀田座長】 ありがとうございました。今の白鳥委員の御指摘は大変重要でして,本検討会議はデジタル教科書に関する会議体でありつつ,教育データの標準化に関わる部分とのつながりもございますので,そちらの会議と連携して調整してまいりたいと思います。
齋藤委員,お願いいたします。
【齋藤委員】 齋藤です。外国人児童生徒に関わる項目のところで少し御提案させていただきたいと思っているのですが,その前に2点ほど,質問させてください。
1点目は,呼び名についてです。これまでは「日本語習得に困難がある児童生徒」ということで議論してきたかと思います。一方,先ほど御説明いただいたガイドラインでは,注に「日本語が通じない子供」という表現がありました。そしてこちらの中間まとめ骨子案では「外国人児童生徒等」という呼び名になっているのですが,こうした用語を,今後統一していかれるのか,あるいは使い分けということもありうるのかどうか,こちらは少し大きな問題だと思いますので,この場でなくでも構いませんが,御教示いただければと思います。
2点目に,中野委員からもこの後御意見があるかとは思いますが,特別な配慮を必要とする子供たちに対する教科書支援に関して,著作権法33条の3においては,障害のある児童生徒のための音声教材の作成と提供を著作権者の許諾なく行うことができることになっております。昨年「外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議」において,現状外国人の子供たちは著作権法33条の3の対象に含まれていないけれども,この規定を見直すこと,公衆送信を可能とすることを今後検討していく,という方向で取りまとめられたのですが,今回の議論でそれについて検討されるのか,御教示いただければと思います。
中間まとめの骨子案に関しては,皆様もおっしゃっていたとおり,これまでの議論を反映していただいて,ありがたく拝見しておりますが,6ページの「外国人児童生徒等に対する配慮」の二つ目において,3つの事柄が一つにくくられているようですので,分けていただけるとうれしく思います。
1点目の「効率よく内容理解に進むことができ」ることは学習者にとってのメリットである一方,続く「指導する側の教材準備の負担軽減になり得る」というのは教える側にとってのメリットですので,分けていただいたほうがよいのではないかと思います。さらに,「より充実させるために」というまた違った内容加わっていますので,そちらも分けていただき,その中に,「自律した学びを支える機能」として,デジタル教科書ではなく教材のことにはなってしまいますが,先ほどの音声教材の活用等に関することを言えるとよいのではないかと思います。
最後に,母語訳が機能の中に加えられるのか,今後検討いただく可能性があるのであれば,そのことも例えば「母語訳の表示等」といった形で加えていただければと思います。
以上です。ありがとうございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
黒川委員,お願いいたします。
【黒川委員】 黒川です。まとめていただきありがとうございます。堀田座長からは「具体的に」という御指示がありましたが,初めに全体的な意見を述べさせていただきます。
全体を拝見して,最初のポイントとなる令和6年度の本格導入の姿や目標が少し見えづらいという印象を持ちました。こちらには様々な議論が集約されていますが,どこへ向かっていくのかということが第三者から見るとやや分かりにくいのではないかと感じます。この点は,宮原委員がおっしゃったことと同意見なのですが,本会議の目的として,効果・影響を検証しつつ,学びの充実の観点から検討を行うという前提がございますので,「2.デジタル教科書導入の意義」という項目には,宮原委員が指摘した点に加えて,「主体的・対話的で深い学び」や「個別最適化された学習に資する」等,もう少し桁の大きな話が最初にあるとよいのではないかと思います。
また,8ページに,制度の問題として,紙からデジタルへの移行なのか,選択型なのか,併用型なのか,あるいは移行に向けた折衷型なのかといったことを,整理はしていただいているのですが,もう少し明瞭にしていく必要があるのではないかと感じました。
以前本検討会議で議論しましたように,作り手の立場としては,中長期的なビジョンや目的を示した上で,令和6年度までにやるべきことと,令和6年度以降に進めていくことを,切り分けて記述していったほうが分かりやすいのではないかと感じます。
標準化等についても,令和6年度までという時間のない中で無理をすると,かえって混乱をきたすのではないかと危惧するところです。法改正も必要になると思いますが,検定制度上,教科用図書としてデジタル教科書が位置づけられる際の在り方の検討に加え,現在,デジタル教科書自体も教材として進化を続けていますので,その問題と切り分けて慎重に進めていく必要があると思います。これを一緒にしてしまうと,かなり無理があるのではないかという気がしております。
その上で,3ページ目からの3.(1)にも記述されていますが,令和3年度以降に行う検証や実証事業を通したエビデンスの蓄積に当たっての課題として整理して示していくことになると思います。こちらは別途,教科書協会からも,教科書課様に御提案させていただいているので,そちらも御参考にしていただければと思っております。
また,発行者の立場から申し上げますと,本格導入のために,まずは紙の教科書と同様,全国津々浦々でデジタル教科書が当たり前に使えることを実現することに目を向けていくことが重要かと思います。そのためには,発行者だけでは乗り越え難い学校や家庭の環境整備とその維持が大前提になるところ,この点については記述されているのですが,改めて強調していただきたいと思います。
加えて,2ページ目の「教科書のデジタル化によるメリットの例」の4点目にポップアップの例が挙がっていますが,こちらは指導者用デジタル教科書のメリットかと思いますので,この項目に掲載することには違和感を覚えます。
また,4ページの上部に挙がっているデジタル教科書の機能例のうち,主に五つ目から九つ目に関しては,紙の教科書と同一の内容を表示している画面上で使用できる機能として実装しているビューアもありますけれども,主にリフロー画面での話なので,そちらにくくって表示していただいたほうがよいのではないかと思います。
最後に,4ページの「デジタル教材等との連携の在り方」についてです。学習指導要領コードや学習システムとの連携について示されていますが,まずはデジタル教科書からダイレクトに連携する教材との一体的な活用について記載いただいたほうがよいのではないかと思います。先ほどの森委員の御意見とは異なる部分もございますが,7ページの「デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討」において,将来的に,音声や動画をデジタル教科書に含む構想があるということが示されているだけに,一体的な活用に関する記載は外せないのではないかと感じたところでございます。
以上です。よろしくお願いします。
【堀田座長】 ありがとうございました。発行者の立場から非常に重要な視点で御指摘いただきました。私自身,様々な事情もあるとは思いますが,短期的な目標と中長期的な目標の切り分けがまだ十分に書き込まれていないと思っておりますので,引き続き整理してまいります。
続きまして,中野委員,お願いします。
【中野委員】 今回の資料について,特別支援の観点から提案をさせていただきたいと思います。まず全体的に,ユニバーサルデザインやインクルーシブ教育の視点を盛り込んでいただきありがとうございました。その上で,次に述べます5点の追加・修正を提案いたします。
まず,4ページから5ページの「教師の指導力向上の方策」という項目に,2点追記していただきたいと思います。1点目は,「障害のある児童生徒が学習者用デジタル教科書の特別支援機能を効果的に利用できる環境整備や指導ができるように,教師の指導力の向上を図る必要がある」という記述です。そして2点目に,「アクセシビリティが確保されたデジタル教科書・教材や教科用特定図書等は,障害のある児童生徒だけではなく,障害のある教師の指導力を向上させる上で効果的だと考えられる。そのため,障害のある教師がデジタル教科書等を使用しやすい環境整備をしたり,活用方法等に関する研修を受けられるようにしたりすることが重要である」という記述です。以上2点の追記をお願いいたします。
二つ目に,5ページの「障害のある児童生徒に対する配慮」の四つ目に,「デジタル教科書が備えるべき特別支援機能」についての記述があるところ,その最後に,「将来的には,デジタル教科書の全ての機能が障害の有無に関わらず利用できるよう,ユニバーサルデザイン仕様になることが期待される」という記述を追加していただくようにお願いしたいと思います。UDのことについては様々な箇所で書いていただいておりますが,ここで改めてお願いいたします。
三つ目に,7ページの「デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討」の一つ目の最後のところに,「なお,検定に際しては,障害のある児童生徒のアクセシビリティに関する確認も必要だと考えられる」という文言を追加していただくようお願いします。
四つ目に,8ページの「紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討」の組合せの例として,「点字教科書や拡大教科書のような紙の教科用特定図書等は,重くて分量が多く,持ち運びが困難であるため,デジタル教科書と併用できる環境を整える」という文言の追記をお願いします。こちらには括弧書きで,「学校では両教科書を併用し,家庭学習では持ち運びが容易なデジタル教科書を活用する」といった活用事例が示されるとよいかと思います。
最後に,「誰一人取り残さないユニバーサルデザイン仕様のデジタル教科書や教材の製作を推進するために,ビューアのアクセシビリティ,ガイドラインの作成や,全ての教科書発行者が無償で利用できるUDフォントの提供等,教科書発行者の製作を支援する取組が必要である」という記載をどこかに入れていただくよう,御検討いただければと思います。
以上でございます。
【堀田座長】 いつも具体的な御指摘をありがとうございます。
河嶌委員,お願いいたします。
【河嶌委員】 柏市教育委員会の河嶌でございます。2点ございます。
1点目に,「デジタル教科書」という文言が使われておりますが,これが学習者用を指すものなのか,指導者用を指すものなのか,下段のほうでも結構ですので,定義づけていただければと思います。読む側によって捉え方がかなり異なるのではないかと思います。
2点目に,8ページに「令和6年度からのデジタル教科書の本格的な導入」という文言が入っていますが,この「本格的な導入」というのは,具体的にどのような姿を目指しているのか,ぜひ示していただきたいと思います。現在,ガイドラインにおいても設置者負担という考えで動いていますが,設置者としては予算の獲得をしなくてはなりません。そのときに目指す姿がわからないと,財政当局との関係もかなり厳しくなってしまいます。来年度,本市で小学校5・6年生,中学校全学年の算数・数学について,学習者用のデジタル教科書の導入を検討して動いておりますが,これだけでも数千万円という費用がかかります。そういうことも踏まえ,ぜひとも「本格的な導入」の姿,目標を示していただきたいと思います。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
森委員,お願いいたします。
【森委員】 森です。中間まとめ骨子案,ありがとうございました。私からは,3点申し上げます。
まず,2ページから3ページに「デジタル教材や他のICT機器・システムとの連携によるメリットの例」が挙がっているところ,先ほど黒川委員等がおっしゃった一体的な連携の問題に少し関連して,一つ目には「デジタル教材との連携がしやすく」と,「連携」という言葉を使われているのですが,四つ目には,「デジタル教科書や一体的に使用するデジタル教材」と,「一体的に使用するデジタル教材」という言葉が使われています。何をもって「一体」なのかという議論をあまりしてきておりませんので,黒川委員がおっしゃっている「一体的」と,我々が申し上げている「一体的」は少し意味合いが違うのではないかと思っております。デジタル教科書を使用するときに一体的に使われる,いわゆる教材というのはあってしかるべきだと思っていますので,例えば,「デジタル教科書と連携したデジタル教材を一体的に活用する」といった書きぶりに変えると,何をもって一体なのかということが少し明確になるのではないかと思います。
次に,4ページについて,学習者用デジタル教科書の前提,例えば学校教育法34条4項等の法的根拠を指し示しておく必要があるのではないかと思っています。
その上で,先ほどのガイドラインの15ページ,(5)の1の冒頭の文章を1文だけでも入れておくと,デジタル教科書とデジタル教材の区別に関する理解が進むのではないかと思っております。
最後に,同じく4ページの「デジタル教材等との連携の在り方」の三つ目に「教育データの利活用」の話が出ていますけれども,こちらはとても大事な話だと思っております。我々が発行し,全国の多くの小学校で活用していただいているワークテストのデータは,まさにこの具体例ではないかと思うのですが,この「教育データ」とは何なのか,学習履歴なのか評価データなのかといったことを少し説明しておいたほうがよいのではないかと思っております。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
片山弘喜委員,お願いいたします。
【片山(弘)委員】 宮崎市教育情報研修センターの片山です。2点ございます。
1点目に,2ページの「2.デジタル教科書導入の意義」は,デジタル教科書の特性を生かすことでメリットが発生するということが書かれており,その後4ページにおいて,デジタル教科書の機能の例が挙げられています。本来は,デジタル教科書の機能があり,その特性が発揮され,メリットが発生するという流れになると思うので,デジタル教科書の機能を先に述べた上でメリットを整理したほうがよいのではないかという気がいたします。
また,デジタル教科書を使うことのメリットについては,可能な限り,指導者側のメリットと児童生徒側のメリットを分けて整理すると,より読みやすいのではないかと考えております。
2点目に,2ページの「デジタル教科書や他のICT機器・システムとの連携によるメリットの例」の二つ目の文末に,「児童生徒の授業への参加度が上がる」と表記されておりますけれども,「参加度が上がる」という表現が適するかどうかは少し疑問が残るので,この表現については修正したほうがよいのではないかと考えているところです。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。片山委員から御覧になって,どのように修正するのが適切だとお考えですか。
【片山(弘)委員】 「児童生徒の授業への集中度が上がる」等,そのような感じかと思っています。そもそも児童生徒は授業へ参加しているわけであって,「参加度が上がる」という表現では,「そもそも参加していないのではないか」という誤解を与えかねないと思っております。よい表現が見つかりましたら,会議後,別途お伝えしたいと思います。
【堀田座長】 ありがとうございます。大変助かります。
柴田委員,お願いいたします。
【柴田委員】 東京福祉大学の柴田でございます。
6ページ目の「児童生徒の健康面への配慮」という項目について,議論されたことが非常に簡潔にまとめられてよいと思います。
ただ1点,児童生徒の健康面を考えることは,授業の学習活動と非常に密接に関係しているところだと思いますので,一つ目の2行目からの「デジタル教科書を見る時間の考え方や,目と端末の画面との距離など」という部分に,「それらを授業の中で配慮すること」といった文言が入るとよいと考えました。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。
それでは,東原座長代理,お願いいたします。
【東原座長代理】 最初に,個人の意見を言わせていただきたいと思います。ガイドラインについての議論の際,教員養成に関わっておられる加藤委員が御指摘されたことを,私からもお願いしたいと思っております。骨子案の4ページ末から記載されている「教師の指導力向上の方策」の一つ目の終わりに,例えば,「教師の指導力の向上を図る必要があり,そのため,学生がデジタル教科書にアクセスし,体験したり活用したりできる環境を整備する必要がある」等の文言を加えてはどうかと考えております。現状,学生が学習者用デジタル教科書を入手することは難しくなっているところ,教科書発行者と大学が連携を取っているという例もございますけれども,それをもっと一般的にできるような仕組みが必要だということを具体的に中間まとめの中で表現しておくのがよいだろうと思っております。
座長代理として申し上げますと,まず,この短い期間に皆様方が精力的にとても重要な御意見を整理して御発言くださったことで,そしてまた,事務局の御努力,座長との調整等々で,この期間にこれだけのものが出来上がりました。令和6年に向けてということにつきましては,まとめに向けて十分な準備が進んだのではないかということで,きれいにまとまってきており大変よかったと思います。
一方,幾つか課題として残っていることがございました。骨子案では,7ページの「今後の教科書制度の在り方について」において,検定制度に関しては今後検討を行う旨が書かれているのですが,そのほかのことに関しては,特段今後検討するということも書いてありませんので,最後に,今後近いうちに検討することと,もう少し長期的に,教科書全体に関して考えていったほうがよいことを,例えば「次のようなことも話題になった」等,何らかの表現で載せられるとよいのではないかと思いました。
以上でございます。ありがとうございました。
【堀田座長】 ありがとうございました。私からも,座長として少しお話しさせていただきたいと思います。
一つ目に,先ほども申し上げましたが,昨日の中教審総会において答申が出ております。大きな教育の流れとして,学習指導要領の改訂が行われ,全面実施が始まり,そしてGIGAスクール構想がICTを活用した学習環境の整備という観点から言えば非常に進んできている中で,これからの教育の考え方が答申に整理されているところですが,その流れにおけるデジタル教科書の存在意義や価値,在り方の変遷もあるのではないかと思いますので,そういう大きな流れを受け止める形で導入部分を書く必要があるだろうと,皆様の御意見を伺いながら感じました。
二つ目に,ガイドラインについて,こちらは既存のガイドラインを修正するために,本検討会議において私たちが話し合ったことを修正点として具体的に入れているところ,その一部は,中間まとめにもきちんと書いておいたほうがよいのかもしれないなと思いました。
三つ目に,「教育データの利活用に関する有識者会議」は,「教育データとは何か」ということと,教育データの利活用の進んでいる方向という,大きな桁のことを議論している会議ですので,具体的なビューアのフォーマットをどうするかというところまで検討することは恐らく難しいと思います。
いずれにしても,様々な教育データが相互に参照し合えることで,例えばデジタル教科書とデジタル教材が合理的に連携でき,それにより,子供が一体的に活用できているように感じられるということが大事だと思います。このことは,技術開発も含めてまだ少し時間をかけてやっていくことになりますが,恐らくここ数年の間に様々な連携が行われ,子供にとって何と何が一体的に見えると学習指導として望ましいのかということが検討されることになると思いますので,そういうことを見越した書きぶりにしておく必要があるだろうと感じました。
最後に,令和6年度までに何ができるか,そして,そこから先は何ができるのかという点は,政府全体の動きにも関係しますし,デジタル庁等の動きにも関係しますし,また,文部科学省の様々な施策のプライオリティーにも関わってくる部分かと思いますので,なかなか確約が難しい部分があろうかと思います。私個人としては,主たる教材として,諸外国に誇る教科書制度を持っている我が国として,このデジタル教科書ができるだけ早急に,できるだけ全ての教科等で,全ての子供たちがいつでも利用できるようになることは大変望まれることだと思いますし,それが出遅れてしまうと,必ずしも質保証されていないインターネット上のデータを含むあらゆるデジタル教材によって学習が混乱する可能性もゼロではないと思っております。
そのような観点から,我々は「デジタル教科書をこのように進めていくのだ」ということをしっかりと書き込みつつ,その段階的な話をできるだけ具体的に書くことが求められます。一方,必ずしも予算面等の制約上保証ができないという現実がある中で,書き方が非常に難しいところだと思いますが,文部科学省の事務局にも調整をお願いしたいと思います。できるだけ中間まとめの段階で少し先が見えるようになることが,皆様,とりわけ教科書を作る側の皆様,あるいは導入するときの予算を準備しなければならない設置者の皆様の安心につながると考えております。
それでは,二つ目の議題はここまでとさせていただきます。
中間まとめに向けて,本日皆様から様々な御意見をいただきましたが,ぜひ具体的な文言を事務局までお寄せいただければと思います。具体的にお示しいただいたことを踏まえて修正したものについては,次回の会議で提示させていただきたいと思います。
では,次回以降のスケジュールにつきまして,事務局より,資料4に沿って御説明をお願いいたします。
【度會課長補佐】 事務局でございます。次回は,来月2月22日月曜日の16時から18時となっております。議題は,引き続き「中間まとめに向けた審議について」とさせていただきます。
それ以後の会議につきましては,日程調整の上,改めて御連絡をさせていただきます。
以上です。
【堀田座長】 ありがとうございました。今日の会議はここまでとさせていただきます。本日もありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教科書課